(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】広視野荷電粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20250109BHJP
H01J 37/252 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01J37/147 Z
H01J37/252 A
(21)【出願番号】P 2022558136
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021024933
(87)【国際公開番号】W WO2021202562
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-15
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509027021
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン サイエンティフィック インストルメンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】モロー ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】フット スティーヴン
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0168887(US,A1)
【文献】特表2018-532238(JP,A)
【文献】特開昭62-89829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子フィルタであって、
検出器上の視野の中心からプラットフォーム上の視野の中心への線によって画定される平面に対するある角度の傾斜面をそれぞれが含む複数の磁石を備え、
前記傾斜面は、前記検出器に隣接する側の第1の開口部で最も強い磁場勾配を含むボアを形成するように配置されている、荷電粒子フィルタ。
【請求項2】
前記傾斜面は実質的に平面である、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項3】
前記傾斜面は実質的に円錐形である、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項4】
実質的に円錐形の前記面の半径は、前記角度に対する相対値である、請求項3に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項5】
前記傾斜面は、5~45°の範囲の角度を備える、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項6】
前記傾斜面は、15.4°の角度を備える、請求項5に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項7】
前記ボアは、前記プラットフォームに面する側の前記ボアの第2の開口部の直径によって画定される前記プラットフォーム上の視野を備える、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項8】
前記視野は直径が約128mmである、請求項7に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項9】
前記磁場勾配は、約1000ガウス~5000ガウスの範囲を含む、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項10】
前記磁石間の空間を埋めるように構成された1つ以上のインサートをさらに備える、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項11】
前記磁石を傾斜角に対して適切に配置する形状を備える磁束リングをさらに備える、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項12】
電子ビーム付加製造装置であって、
電子ビームを生成するように構成された電子ビーム源と、
前記電子ビーム付加製造装置が前記電子ビームに応答して製品を構築する支持体として構成されたプラットフォームと、
前記電子ビームに応答して前記製品から放出された1つ以上のX線光子に応答して信号を生成するように構成された検出器と、
前記電子ビームに応答して前記製品から放出された1つ以上の荷電粒子を偏向させて前記検出器から遠ざけるように構成された荷電粒子フィルタと、を備え、
前記荷電粒子フィルタは、検出器上の視野の中心からプラットフォーム上の視野の中心への線によって画定される平面に対するある角度の傾斜面をそれぞれが含む複数の磁石を備え、前記傾斜面は、前記検出器に隣接する側の第1の開口部で最も強い磁場勾配を含むボアを形成するように配置されている、電子ビーム付加製造装置。
【請求項13】
前記傾斜面は実質的に平面である、請求項12に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項14】
前記傾斜面は実質的に円錐形である、請求項12に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項15】
実質的に円錐形の前記面の半径は、前記角度に対する相対値である、請求項14に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項16】
前記傾斜面は、5~45°の範囲の角度を備える、請求項12に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項17】
前記傾斜面は、15.4°の角度を備える、請求項16に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項18】
前記ボアは、前記プラットフォームに面する側の前記ボアの第2の開口部の直径によって画定される前記プラットフォーム上の視野を備える、請求項12に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項19】
前記視野は直径が約128mmである、請求項18に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項20】
前記磁場勾配は、約1000ガウス~5000ガウスの範囲を含む、請求項12に記載の電子ビーム付加製造装置。
【請求項21】
前記磁石間の空間を埋めるように構成された1つ以上のインサートをさらに備える、請求項12に記載の電子ビーム溶解装置。
【請求項22】
前記磁石を傾斜角に対して適切に配置する形状を含む磁束リングをさらに備える、請求項12に記載の電子ビーム溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月1日に出願された米国特許出願第63/003,575から得られる優先権を主張し、これにより、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、視野に影響を与えることなくフィルタ内の磁場強度を最大化するように構成された荷電粒子フィルタを対象とする。
【背景技術】
【0003】
一般に、荷電粒子フィルタ(「電子トラップ」または「磁気偏向器」とも呼ばれる)は、電子ビームにさらされた材料から放出されたX線光子を検出するエネルギー分散型X線分光法(EDS)システムで広く使用されている。検出されたX線光子は、通常、材料の元素組成を特徴付けるために使用される。また、電子ビームは、信号データに望ましくないバックグラウンドノイズを引き起こすX線光子と同様の信号を生成する後方散乱電子(例えば、荷電粒子など)を生成することも一般的に認識されている。
【0004】
荷電粒子フィルタの典型的な実施形態は、十分に高い磁場強度を有する磁場を生成することによって、荷電粒子が検出器に到達するのを実質的に低減または防止するように構成される。一般に、EDSシステムは、走査型電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡用途で利用され、顕微鏡内の限られた空間のために荷電粒子フィルタのコンパクトな形状が非常に望ましい。顕微鏡用途で使用するための荷電粒子フィルタの例は、米国特許第9,697,984号および9,837,242号で説明され、これらのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
典型的な顕微鏡用途では、コンパクトな形状は、顕微鏡用途に関連する小さな走査領域(例えば、1mm×1mm)と互換性のある小さな視野を備えている。しかしながら、その小さな視野は、例えば、電子ビーム溶解または電子ビーム粉末床融合装置と呼ばれるものによって実施される電子ビーム付加製造(EBAM)用途などの他の用途での使用には有害である。一般に、EBAM装置には大きな走査領域(0.2メートル×0.2メートルなど)が含まれる。しかし、広い視野を持つ大きな開口部を備えた特大の粒子フィルタを単純に作成すると、荷電粒子が検出器に到達するのを効果的に防ぐには磁場強度が不十分になる。EBAMの荷電粒子は通常、SEMの通常の最大値である30keVの2倍の60keVのエネルギーを持っているため、これはEBAM用途では特に問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、荷電粒子が検出器に到達するのを効果的に防止するのに十分な磁場強度を備えた広い視野を備えた荷電粒子フィルタが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらおよび他の必要性に対処するシステム、方法、および製品は、例示的、非限定的な実装に関して本明細書に説明される。様々な代替、変更、および等価物が可能である。
【0008】
検出器上の視野の中心からプラットフォーム上の視野の中心までの線によって画定される平面に対してある角度で傾斜面をそれぞれが含む複数の磁石を備える、荷電粒子フィルタの実施形態が説明される。記載された実施形態では、傾斜面は、検出器に隣接したボアの側面の第1の開口部で最も強い磁場勾配を含むボアを形成するように配置されている。
【0009】
実施形態に応じて、傾斜面は実質的に平面または実質的に円錐形であり、実質的に円錐形の表面の半径は角度に対して相対的なものである。また、いくつかの実装形態では、傾斜面は、5~45°の範囲の角度を含み、より具体的には15.4°の角度を含むことができる。
【0010】
さらに、ボアは、プラットフォームに面するボアの側面の第2の開口部の直径によって画定されるプラットフォーム上の視野を有することができる。場合によっては、視野は直径約128mmである。また、磁場勾配は、約1000ガウス~5000ガウスである磁場強度の範囲を含み得る。
【0011】
さらに、場合によっては、荷電粒子フィルタは、磁石間の空間を満たすように構成された1つ以上のインサートを含むことができる。同様に、場合によっては、荷電粒子フィルタは、傾斜角に対して磁石を適切に配置する形状を備えた磁束リングを含むことができる。
【0012】
電子ビーム付加製造装置の実施形態はまた、電子ビームを生成するように構成された電子ビーム源と、電子ビーム付加製造装置が電子ビームに応答して製品を構築する支持体として構成されたプラットフォームと、電子ビームに応答して製品から放出された1つ以上のX線光子に応答して信号を生成するように構成された検出器と、電子ビームに応答して製品から放出された1つ以上の荷電粒子を偏向させて検出器から遠ざけるように構成された荷電粒子フィルタであって、荷電粒子フィルタは、検出器上の視野の中心からプラットフォーム上の視野の中心までの線によって画定される平面に対してある角度で傾斜面をそれぞれが含む複数の磁石を含む、荷電粒子フィルタと、を含むことを説明する。さらに、傾斜面は、検出器に隣接したボアの側面の第1の開口部で最も強い磁場勾配を含むボアを形成するように配置されている。
【0013】
実施形態に応じて、傾斜面は実質的に平面または実質的に円錐形であり、実質的に円錐形の表面の半径は角度に対して相対的である。また、いくつかの実装形態では、傾斜面は、5~45°の範囲の角度を含み、より具体的には15.4°の角度を含むことができる。
【0014】
さらに、ボアは、プラットフォームに面するボアの側面の第2の開口部の直径によって画定されるプラットフォーム上の視野を有することができる。場合によっては、視野は直径約128mmである。また、磁場勾配は、約1000ガウス~5000ガウスである磁場強度の範囲を含み得る。
【0015】
さらに、場合によっては、荷電粒子フィルタは、磁石間の空間を満たすように構成された1つ以上のインサートを含むことができる。同様に、場合によっては、荷電粒子フィルタは、傾斜角に対して磁石を適切に配置する形状を備えた磁束リングを含むことができる。
【0016】
上記の実施形態および実装は、必ずしも互いに包含的または排他的ではなく、それらが、同一または異なる、実施形態または実装と関連して提示されているか否かにかかわらず、矛盾せず、かつ別様に可能な任意の様式で組み合わせられ得る。一実施形態または実装の説明は、他の実施形態および/または実装に関して限定することを意図するものではない。また、本明細書の他の箇所に説明されているあらゆる1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術は、代替的な実装において、発明の概要に説明されたあらゆる1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術と組み合わせられてもよい。したがって、上記の実施形態および実装は、限定ではなく例示的である。
【0017】
上記およびさらなる特徴は、添付の図面と併せて読まれたときに、以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面において、類似の参照番号は、類似の構造、要素、または方法ステップを示し、参照番号の左端の数字は、参照要素が最初に現れる図の番号を示す(例えば、要素110は、
図1の最初に現れる)。しかしながら、これらの規則のすべては、限定ではなく、典型的または例示的であることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】コンピュータと通信する電子ビーム付加製造装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【
図2】荷電粒子フィルタを備えた
図1の電子ビーム付加製造装置の一実施形態の簡略化されたグラフ表示である。
【
図3】複数の磁石を有する
図2の荷電粒子フィルタの一実施形態の簡略化されたグラフ表示である。
【
図4A】複数の磁石が傾斜角を提供するように配置された、
図2の荷電粒子フィルタの一実施形態の簡略化されたグラフ表示である。
【
図4B】複数の磁石のそれぞれが傾斜角を含む形状を有する、
図2の荷電粒子フィルタの一実施形態の簡略化されたグラフ表示である。
【
図5A】複数の磁石を適切に位置決めする磁束リングを有する、
図2の荷電粒子フィルタの一実施形態の簡略化されたグラフ表示である。
【
図5B】磁束リングを有する
図2の荷電粒子フィルタの一実施形態の簡略図であり、複数の磁石は、ボア内に傾斜角を含む実質的に円錐形の表面を含む。 同様の参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下でより詳細に説明するように、説明した発明の実施形態は、広い視野を有し、荷電粒子が検出器に到達するのを効果的に防止するのに十分な磁場強度を備える荷電粒子フィルタを含む。より具体的には、荷電粒子フィルタは、粒子の移動に平行な平面に対して傾斜面を有する複数の磁石で構成され、磁石間の空間は、荷電粒子源に最も近い荷電粒子フィルタの側から検出器に最も近い側に減少する。
【0020】
図1は、コンピュータ110およびEBAM装置120と相互作用することができるユーザ101の例を簡略化して示す。EBAM装置120の実施形態は、様々な市販のEBAM装置を含むことができる。例えば、EBAM装置120は、Arcam AB(GE Additive社)から入手可能なQ10電子ビーム溶解装置を含むことができる。
図1はまた、コンピュータ110とEBAM装置120との間のネットワーク接続を示しているが、
図1は例示であることが意図され、追加またはより少ないネットワーク接続が含まれ得ることが理解されるであろう。さらに、要素間のネットワーク接続には、有線または無線データの「直接」送信(例えば、稲妻形で表される)や、他のデバイス(例えば、スイッチ、ルーター、コントローラ、コンピュータ等)を介した「間接」通信が含まれ得る。したがって、
図1の例は限定的なものと見なされるべきではない。
【0021】
コンピュータ110は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット、「スマートフォン」、1つ以上のサーバ、コンピュートクラスタ(ローカルまたはリモート)、または他の現在もしくは将来のコンピュータもしくはコンピュータのクラスタ等の、任意のタイプのコンピューティングプラットフォームを含んでもよい。コンピュータは、典型的には、1つ以上のプロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、入出力コントローラ、入出力デバイス、およびディスプレイデバイス等の既知の構成要素を含む。コンピュータ110の1つよりも多い実装が、異なる実施形態において様々な動作を実行するために使用されてもよく、したがって、
図1のコンピュータ110の表現が、限定と見なされるべきではないこともまた理解されよう。
【0022】
いくつかの実施形態において、コンピュータ110は、制御ロジック(例えば、プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)をその中に記憶しているコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品を採用し得る。制御ロジックは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに本明細書に説明されている一部またはすべての機能を実施させる。他の実施形態において、いくつかの機能は、例えば、ハードウェアステートマシンを使用して、主にハードウェアに実装される。本明細書に説明されている機能を実施するためのハードウェアステートマシンの実装は、当業者にとって明らかであろう。また同一または他の実施形態において、コンピュータ110は、ネットワークを介してリモート情報にアクセスすることを可能にされた専用ソフトウェア用途を含んでもよいインターネットクライアントを採用してもよい。ネットワークは、当業者に周知の様々なタイプのネットワークのうちの1つ以上を含んでもよい。例えば、ネットワークは、通信するために一般にTCP/IPプロトコルスイートと呼ばれるものを採用し得るローカルまたはワイドエリアネットワークを含んでもよい。ネットワークは、一般にインターネットと呼ばれる相互接続されたコンピュータネットワークのワールドワイドシステムを含んでもよく、または様々なイントラネットアーキテクチャを含んでもよい。当業者はまた、ネットワーク環境内の一部のユーザが、一般的に「ファイアウォール」(パケットフィルタ、または境界保護デバイスとも呼ばれる)と呼ばれるものを採用して、ハードウェアおよび/またはソフトウェアシステムに出入りする情報トラフィックを制御することを好み得ることを理解するであろう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアもしくはソフトウェア要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよく、典型的には、例えば、ネットワーク管理者等のユーザによって設定されたセキュリティポリシーを執行するように設計されている。
【0023】
本明細書に記載されるように、記載される発明の実施形態は、広い視野を含み、荷電粒子が検出器に到達するのを効果的に防止するために十分な磁場強度を含む複数の磁石を有する荷電粒子フィルタを含む。記載された実施形態では、荷電粒子フィルタは、検出器上の視野の中心からプラットフォーム上の視野の中心までの線によって画定される平面に対してある角度で傾斜面を有し、傾斜面は、検出器に近い荷電粒子フィルタの領域で最も強い磁場強度を持つ磁場強度の勾配を生成する。
【0024】
図2は、荷電粒子フィルタ210および検出器220を備えるEBAM装置120の簡略化された例示的な例を提供する。いくつかの実施形態では、検出器220は、シリコンドリフト検出器(SDD)と呼ばれるもの、または関連技術において既知の他のタイプの検出器を含み得る。また、いくつかの実施形態では、荷電粒子フィルタは、電子ビーム付加製造用途で通常使用される真空環境を含む真空室205内に配置される。また、同じまたは代替の実施形態では、検出器220は、EBAM装置120の外側の周囲環境と実質的に同様の環境を含む大気室207内に配置される。例えば、荷電粒子フィルタ210および検出器220は、X線光子を透過する気密仕切り(例えば「窓」)によって分離された異なる環境に配置され得る。いくつかの実施形態では、仕切りが薄いことが望ましく、それにより低エネルギーX線光子が通過できるようになり、場合によっては剛性を提供する追加の構造によって支持される。EDS用途で使用される典型的な仕切りは、ポリマーベースの材料、ベリリウム(Be)、またはナトリウム(Na)で構成される。しかしながら、望ましい特性を有する任意のタイプの仕切りを使用することができる。また、この例では、典型的な電子ビーム付加製造用途では、電子ビーム207は、プラットフォーム230の真上から発生する(例えば、電子ビーム207は、プラットフォーム230の平面に対して実質的に垂直であり得るが、電子ビーム207は、コンピュータ110の方向制御下で製品を構築し、垂直を超える角度に向けることができる)。さらに、検出器220および荷電粒子フィルタ210は両方とも、電子ビーム207の発生位置からの距離に依存する角度で傾斜された状態で、プラットフォーム230への直線の視線で真空室205の一方の側に配置されて、電子ビーム207が製品を構築するために使用されるプラットフォーム230の領域に検出器視野233を提供する。多くの実施形態では、位置検出器220および荷電粒子フィルタ210は、真空室205上の利用可能なポートに限定される。
【0025】
図2は、検出器220上の視野の中心からプラットフォーム230上の視野の中心までの平面を画定する中心線225も示している。いくつかの実施形態では、中心線225は、プラットフォーム230の上部(例えば、EBAM120が製品を構築する支持体)から真空室205の上部までの距離によって画定される電子ビーム207の高さ距離にも関連する、荷電粒子フィルタ210からプラットフォーム230までの距離を画定する。例えば、中心線225は約472mmの距離を含むことができ、電子ビーム207は約450mmの高さ距離を含むことができる。しかし、EBAM120は、様々な構成および寸法を含むことができ、したがって、本例の寸法は限定と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0026】
さらに、
図2は、検出器の視野233が最大視野235よりも小さいことを示している。本明細書で説明する実施形態では、最大視野235は荷電粒子フィルタ210の特性によって定義され、検出器視野233は1つ以上の他の要素の特性によって定義され、いくつかの例では、検出器視野233は、最大視野235の限界ではないことが望ましいことがある。あるいは、いくつかの用途では、検出器の視野233が最大視野235と実質的に同じであることが望ましいことがある。例えば、いくつかの実施形態では、検出器の視野は直径約128mmの領域を含むことができ、最大視野は直径約316mmの領域を含むことができる。また、場合によっては、プラットフォーム230は、直径または幅が約200mmの領域を含むことができ、プラットフォーム230の実施形態は実質的に正方形または長方形である。
【0027】
図3は、
図2の荷電粒子フィルタ210および検出器220の拡大図の単純化された例示的な例を提供する。まず、
図3は、検出器220に衝突するX線光子の数を選択的に制限するX線制限開口部305を示す。いくつかの実施形態では、X線制限開口部305は、電子ビーム207によって励起されている領域に関連する検出器視野233からX線光子を選択し、したがって、信号のノイズに寄与する可能性がある真空室205の他の部分から生じるX線光子の検出を低減する。重要なことは、記載された実施形態において、荷電粒子フィルタ210は、検出された信号におけるノイズ源となり得る最大視野235の全領域に由来する荷電粒子の検出を、実質的に低減または排除することである。
【0028】
いくつかの実施形態では、X線制限開口部305はまた、検出器220に衝突する光子の数を減らすことができ、これは、検出器220の要素を飽和または損傷させる可能性を減らすという利点を有する。また、EBAM装置120のいくつかの実施形態は、使用者がX線制限開口部305の寸法を変更して、検出器視野233の異なる体積の使用を可能にすることができることを理解されたい。
【0029】
図3は、複数の磁石310をさらに示し、各磁石は中心線225に対してある角度で傾斜した表面を有し、傾斜面は、X線光子が通過するボア313を画定する。磁石310は、ネオジムまたは望ましい特性を有する他の種類の磁石など、当技術分野で通常使用される任意の種類の磁石を含むことができる。例えば、様々な等級のSmCoおよび主に等級のNdFeを有する材料から構成された永久磁石を使用することができる。
【0030】
図3の実施形態では、磁石310は、実質的に平行な表面を有する実質的に長方形であり、傾斜角315は、ボア313の表面の傾斜角と実質的に同じである。
図3の例では、傾斜角は約15.4
°に等しいが、5~45°の範囲の傾斜角は本発明の範囲内であると考えられる。
【0031】
記載された実施形態では、磁石310の位置が最大視野235の領域を画定し、より具体的には、磁石310の特定の部分が、傾斜角に応じて最大視野235の領域を画定する。例えば、
図3に示されるように約15.4°の傾斜角の場合、プラットフォーム230に面する第2の開口部317(例えば、X線光子および荷電粒子が発生する場所)におけるボア313内の各磁石310の角は、最大視野235の領域を画定する。別の方法として、小さな傾斜角(例えば、<10°)について、検出器220に近接する第1の開口部315におけるボア313内の各磁石310の角は、最大視野235の領域を画定する。
【0032】
図3の例では、最大視野235は36.4°であるが、最大視野は10~90°の範囲の視野を含むことができる。さらに、検出器220および荷電粒子フィルタ210の傾斜角により(上述のように)、中心線225は、72.4°の角度を含み得るプラットフォーム入射角337でプラットフォーム230と相互作用する。また、検出器220および荷電粒子フィルタ210の傾斜角度により、中心線225から測定される角度、すなわち角度333(例えば7.7°)と角度335(例えば7.1°)はわずかに異なる。さらに、当業者は、
図3の例が、異なる視野角333および335につながる両方の磁石310について同様の傾斜値を有する対称構成を示すことを理解するであろう。しかしながら、角度333および335が類似(または任意の他の値)であることが望まれる場合、これは、非対称設計を含む傾斜構成を独立して有する磁石310で達成され得る(例えば、各磁石310は、他方とは異なる傾斜角を有する)。
【0033】
図3はまた、検出器220に隣接したボア313の側の第1の開口部315で最も強く、プラットフォーム230に面するボア313の側の第2の開口部317で最も弱い勾配を含む磁場320を示す(例えば、矢印の太さによって
図3に示す磁場強度)。説明した実施形態では、磁石310間の間隔は、開口部315、または特定の実施形態で適用される開口部315の直径を画定する。当業者は、磁場強度が磁石310の強度およびそれらの間の距離に比例することを理解するであろう。また、磁場320は、荷電粒子を効率的に偏向させるのに十分な磁場強度を含まなければならないが、磁場強度が過度に高い場合、検出器220内を移動する荷電粒子が磁場320の影響を受けるため、磁場強度は、電子ビーム207に影響を与えたり、検出器220の動作に著しく影響を与えたりするほど強くあるべきではない。例えば、磁場320は、約1000ガウス~5000ガウスの範囲(例えば、第2の開口部317から第1の開口部315へ)の磁場強度の勾配を含むことができる。しかしながら、磁場の強さは、磁石310に使用される材料の等級などの様々な要因に依存し、したがって、この例は限定と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0034】
図4Aは、上述のように、磁石310の各実施形態が傾斜角を提供するように傾斜されている、磁石310の実質的に長方形の構成の単純化されたグラフの例を提供する。しかしながら、他の構成も記載された発明の範囲内にあると考えられることが理解されるであろう。そのような例の1つが、構成に組み込まれた傾斜角を有する形状を含む磁石410として
図4Bに示されている。例えば、磁石410は、荷電粒子フィルタ210内の特定の位置に構成されることを必要としない。むしろ、磁石410は、荷電粒子210の設計の自由を可能にする任意の位置に対応するように設計することができる。さらに、
図4Bに示されるように、磁石410は、第1の開口部315において実質的に厚く(例えば、より広く)、したがって、厚さの薄い第2の開口部317よりも大きな磁場強度を有する。
【0035】
図5Aは、上述のように、磁石310を備える荷電粒子フィルタ210の一実施形態の断面図(例えば、約半分)を示している。
図5Aはまた、磁石310を所望の傾斜角に適切に位置決めする形状を備える磁束リング503を示している。いくつかの実施形態では、磁束リング503は、鋼または他の望ましい材料で構成することができる。例えば、磁束リング503は、空間の利用可能性、磁場320によって影響を受ける他の敏感なアイテムへの位置、または他の要因に応じて変化し得る任意の適切な強磁性透過性材料から構築され得る。この例では、特定の材料には、焼結コバルト(250)または軟鋼(2,000)が含まれるが、様々な特殊等級の鋼を使用することができる。
【0036】
さらに、
図5Aは、磁石310間の空間を満たすが、ボア313または開口部315および317と干渉しないインサート507を示す。いくつかの実施形態では、荷電粒子フィルタ210は、アルミニウムまたは他の望ましい材料で構築され得るインサート507の複数の実装を含み得る。例えば、インサート510は、非磁性材料または常磁性材料から構築されるべきである。通常、インサート510の材料は、X線の発生を最小限に抑えるために、アルミニウムまたは炭素などの軽元素を含むべきである。
【0037】
図5Bは、傾斜角を含む表面の湾曲形状を含む磁石510を含む荷電粒子フィルタ210の別の実施形態の断面図(例えば、約半分)を示す。記載された実施形態では、複数の磁石は、ボア313内に傾斜角を有する実質的に円錐形の表面を形成する。
図5Bに示される実施形態は、
図5Aについて説明されたインサート507と同様のインサート要素、ならびに磁石510を適切に配置する形状を有する磁束リング513を含んでも含まなくてもよい。
【0038】
様々な実施形態および実装を説明してきたが、上述のものが例示的なものにすぎず、限定ではなく、単なる例として提示されたものであることが当業者に理解されるべきである。例示された実施形態の様々な機能要素間で機能を分散するための多くの他の体系が可能である。任意の要素の機能は、代替的な実施形態において様々な方式で実行され得る。