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特許7617147印刷配線板、積層型共振器および積層型フィルタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】印刷配線板、積層型共振器および積層型フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/06 20060101AFI20250109BHJP
   H01P 7/04 20060101ALI20250109BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01P7/06
H01P7/04
H05K1/02 P
H05K1/02 J
H05K1/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022572144
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045579
(87)【国際公開番号】W WO2022138242
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020217149
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川越 淳男
(72)【発明者】
【氏名】石岡 卓
(72)【発明者】
【氏名】内藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】上田 信幸
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-200783(JP,A)
【文献】特開2003-142905(JP,A)
【文献】特開平10-303618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 7/06
H01P 7/04
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、第1導体層と、第2導体層と、複数のビア導体とを有し、
前記誘電体層は、第1面と、該第1面の反対に位置する第2面とを有し、
前記第1導体層は、前記誘電体層の前記第1面に位置し、
前記第2導体層は、前記誘電体層の前記第2面に位置し、
前記複数のビア導体の各々は、前記誘電体層を前記第1面から前記第2面まで貫通し、前記第1導体層および前記第2導体層を繋いでおり、
前記複数のビア導体で囲まれ、平面透視で前記第1導体層および前記第2導体層が重なる部分を有し、
前記複数のビア導体は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状であり、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、前記長径が前記複数のビア導体の並びを結ぶ共振領域の外周に沿うものを含み、
前記第1導体層および前記第2導体層の間に、前記第1面に平行な第3導体層を有し、
前記複数のビア導体の各々は、前記第1方向についての端部の少なくとも一部が前記第3導体層に接しており、かつ、前記端部を除いた中央部の少なくとも一部が前記第3導体層から離間しており
前記第3導体層は、前記複数のビア導体に囲まれた部分に開口部を有している、印刷配線板。
【請求項2】
前記複数のビア導体は、前記第2方向に2以上のビア導体が隣り合う配置で設けられている、請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記複数のビア導体の各々は、前記第1面に平行な任意の断面において、前記中央部における前記第2方向の幅が、前記端部における前記第2方向の幅よりも狭い、請求項2に記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記複数のビア導体は、該複数のビア導体のうち第1ビア導体の一方の前記端部が、該第1ビア導体に対して前記第2方向に隣り合う第2ビア導体の前記中央部の少なくとも一部と、前記第2方向に対向する位置関係で設けられており、
前記第1ビア導体の前記端部のうち前記第2ビア導体の前記中央部と対向する面の少なくとも一部が前記第3導体層から離間している、請求項3に記載の印刷配線板。
【請求項5】
複数の前記第3導体層を有し、
前記複数のビア導体の各々は、前記中央部における前記第2方向についての幅が、前記第1面からの距離が増大するに従って漸減する形状を有する、請求項2~請求項4のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項6】
複数の前記第3導体層を有し、
前記複数のビア導体および前記複数の第3導体層は、前記第1面に平行な断面における前記ビア導体と前記第3導体層との距離の最大値が、前記第1面からの距離が増大するに従って漸増する位置関係で設けられている、請求項2~請求項5のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項7】
誘電体層と、第1導体層と、第2導体層と、複数のビア導体とを有し、
前記誘電体層は、第1面と、該第1面の反対に位置する第2面とを有し、
前記第1導体層は、前記誘電体層の前記第1面に位置し、
前記第2導体層は、前記誘電体層の前記第2面に位置し、
前記複数のビア導体の各々は、前記誘電体層を前記第1面から前記第2面まで貫通し、前記第1導体層および前記第2導体層を繋いでおり、
前記複数のビア導体で囲まれ、平面透視で前記第1導体層および前記第2導体層が重なる部分を有し、
前記複数のビア導体は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状であり、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、前記長径が前記複数のビア導体の並びを結ぶ共振領域の外周に沿うものを含み、
前記第1導体層および前記第2導体層の間に、前記第1面に平行な第3導体層を有し、
前記複数のビア導体の各々は、前記第1方向についての端部の少なくとも一部が前記第3導体層に接しており、かつ、前記端部を除いた中央部の少なくとも一部が前記第3導体層から離間しており
前記第3導体層は、前記複数のビア導体に囲まれた部分に開口部を有している、積層型共振器。
【請求項8】
前記複数のビア導体は、前記第2方向に2以上のビア導体が隣り合う配置で設けられている、請求項7に記載の積層型共振器。
【請求項9】
請求項7または8に記載の積層型共振器を有する積層型フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板、積層型共振器および積層型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体層および導体層を積層させる積層化技術を用いて、印刷配線板の内部に積層型共振器およびこれを用いた積層型フィルタを形成する技術が知られている。例えば特開平10-303618号公報には、印刷配線板における一対の導体層の間に、電磁波をシールドする側壁として機能するように複数のビア導体を配列させた構成の共振器が開示されている。この共振器では、一対の導体層および複数のビア導体により囲まれた領域が共振領域となる。ここで、各ビア導体は、導体層に平行な断面の形状が円形である。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様に係る印刷配線板は、誘電体層と、第1導体層と、第2導体層と、複数のビア導体とを有する。誘電体層は、第1面と、該第1面の反対に位置する第2面とを有する。第1導体層は、誘電体層の第1面に位置する。第2導体層は、誘電体層の第2面に位置する。複数のビア導体の各々は、誘電体層を第1面から第2面まで貫通し、第1導体層および第2導体層を繋いでいる。印刷配線板は、複数のビア導体で囲まれ、平面透視で第1導体層および第2導体層が重なる部分を有する。複数のビア導体は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状であり、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、長径が複数のビア導体の並びを結ぶ共振領域の外周に沿うものを含む。印刷配線板は、第1導体層および第2導体層の間に、第1面に平行な第3導体層を有する。複数のビア導体の各々は、第1方向についての端部の少なくとも一部が第3導体層に接しており、かつ、端部を除いた中央部の少なくとも一部が第3導体層から離間している。第3導体層は、複数のビア導体に囲まれた部分に開口部を有している。
【0004】
また、本開示の一態様に係る積層型共振器は、誘電体層と、第1導体層と、第2導体層と、複数のビア導体とを有する。誘電体層は、第1面と、該第1面の反対に位置する第2面とを有する。第1導体層は、誘電体層の第1面に位置する。第2導体層は、誘電体層の第2面に位置する。複数のビア導体の各々は、誘電体層を第1面から第2面まで貫通し、第1導体層および第2導体層を繋いでいる。積層型共振器は、複数のビア導体で囲まれ、平面透視で第1導体層および第2導体層が重なる部分を有する。複数のビア導体は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状であり、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、長径が複数のビア導体の並びを結ぶ共振領域の外周に沿うものを含む。積層型共振器は、第1導体層および第2導体層の間に、第1面に平行な第3導体層を有する。複数のビア導体の各々は、第1方向についての端部の少なくとも一部が第3導体層に接しており、かつ、端部を除いた中央部の少なくとも一部が第3導体層から離間している。第3導体層は、複数のビア導体に囲まれた部分に開口部を有している。
【0005】
また、本開示の積層型フィルタは、上記の積層型共振器を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る印刷配線板の透視斜視図である。
図2】楕円型のビア導体の断面を示す図である。
図3】変形例1に係る長円型のビア導体の断面を示す図である。
図4】変形例1に係るダンベル型のビア導体の断面を示す図である。
図5】変形例1に係るボウタイ型のビア導体の断面を示す図である。
図6】変形例2に係る印刷配線板の透視斜視図である。
図7】変形例3に係る印刷配線板のビア導体の配置を示す平面図である。
図8】変形例3に係る印刷配線板の第3導体層の位置における第1面に平行な断面を示す図である。
図9】変形例3に係る印刷配線板のY方向に垂直な断面を示す図である。
図10】変形例3に係る印刷配線板のX方向に垂直な断面を示す図である。
図11】変形例3に係る印刷配線板のX方向に垂直な断面の他の例を示す図である。
図12】変形例4に係る印刷配線板の第3導体層の位置における第1面に平行な断面を示す図である。
図13A】印刷配線板の製造方法を説明する平面図である。
図13B図13AのA1-A1線を通りY方向に垂直な断面を示す図である。
図13C図13AのB1-B1線を通りX方向に垂直な断面を示す図である。
図14A】印刷配線板の製造方法を説明する平面図である。
図14B図14AのA2-A2線を通りY方向に垂直な断面を示す図である。
図14C図14AのB2-B2線を通りX方向に垂直な断面を示す図である。
図15A】印刷配線板の製造方法を説明する平面図である。
図15B図15AのA3-A3線を通りY方向に垂直な断面を示す図である。
図15C図15AのB3-B3線を通りX方向に垂直な断面を示す図である。
図16A】印刷配線板の製造方法を説明する平面図である。
図16B図16AのA4-A4線を通りY方向に垂直な断面を示す図である。
図16C図16AのB4-B4線を通りX方向に垂直な断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の印刷配線板1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0008】
〔印刷配線板の構成〕
図1を参照して、本実施形態に係る印刷配線板1の構成を説明する。
印刷配線板1は、ミリ波レーダなどに用いられるアンテナ、および該アンテナにより受信された信号を伝送する伝送線路などが内蔵された多層アンテナ基板である。印刷配線板1の内部には、伝送信号のうち所定の周波数帯域の部分を通過させる積層型フィルタ200、および該積層型フィルタ200を構成する積層型共振器100が形成されている。図1では、積層型共振器100および積層型フィルタ200を除いたアンテナ電極等の構成は記載が省略されている。以下では、印刷配線板1の厚さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系により印刷配線板1の各部の向きを説明する。また、印刷配線板1を構成する各層の+Z方向を向く面を「上面」とも記し、-Z方向を向く面を「下面」とも記す。また、Z方向を印刷配線板1の「厚み方向」とも記す。
【0009】
印刷配線板1は、誘電体層10と、第1導体層21と、第2導体層22と、複数のビア導体30とを有する。
【0010】
誘電体層10は、誘電体からなる板状部材である。誘電体層10は、複数の誘電体材料がZ方向に積層された構成であってもよい。誘電体層10は直方体形状であってもよい。以下では、誘電体層10の上面を第1面S1とし、誘電体層10の下面(第1面S1とは反対側に位置する面)を第2面S2とする。また、第1面S1に垂直な方向から見ることを、平面視と記す。
【0011】
誘電体層10の材質は、絶縁性を有しているものであれば特に限定されない。誘電体層10の材質としては、例えば、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ケイ素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合してもよい。また、誘電体層10には、ガラスクロスなどの補強材が配合されていてもよい。また、誘電体層10には、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤、もしくはフェノール樹脂またはメタクリル樹脂などの有機充填材が配合されてもよい。
【0012】
第1導体層21は、誘電体層10の第1面S1のうち、平面視で共振領域R(所定領域)の少なくとも一部と重なる範囲に設けられている。図1では、第1導体層21が平面視で共振領域Rの全体にわたって設けられている構成が例示されている。第1導体層21の材質は、例えば銅とすることができるが、これに限らない。
【0013】
図1における共振領域Rは、直方体形状の領域である。共振領域Rは、平面視での外周RaがX方向に平行な辺およびY方向に平行な辺からなる矩形である。また、共振領域Rは、Z方向について第1面S1から第2面S2までの範囲にわたっている。言い換えると、共振領域Rは、複数のビア導体30で囲まれ、平面透視で第1導体層21および第2導体層22が重なる部分に位置する。なお、共振領域Rの形状は図1に示したものに限らず、例えば平面視した形状が矩形以外の多角形または円形等であってもよい。
【0014】
第2導体層22は、誘電体層10の第2面S2のうち、平面視で共振領域Rの少なくとも一部と重なる範囲に設けられている。図1では、第2導体層22が平面視で共振領域Rの全体にわたって設けられている構成が例示されている。第2導体層22の材質は、例えば銅とすることができるが、これに限らない。
【0015】
複数のビア導体30は、平面視で共振領域Rの外周Raに沿って共振領域Rを囲むように配置されている。各ビア導体30は、誘電体層10を第1面S1から第2面S2まで厚み方向に貫通しており、第1導体層21および第2導体層22と電気的に接続されている。言い換えると、ビア導体30は、第1導体層21および第2導体層22を繋いでいる。詳しくは、誘電体層10には、ビア導体30の形成位置に楕円柱形状のビアホールHが設けられており、ビア導体30は、該ビアホールHの内壁に形成された導体からなる。すなわち、ビア導体30は、楕円筒形状を有している。よって、各ビア導体30は、図2に示すように、第1面S1に平行な断面が楕円形を有している。ビア導体30の材質は、例えば銅とすることができるが、これに限らない。ビア導体30は、例えば接地電位とすることができる。ビア導体30により囲まれた空間は、絶縁体33により埋められている。絶縁体33の材質は、例えば樹脂とすることができるが、これに限らない。
【0016】
図2に示すように、ビア導体30は、第1面S1に平行な断面における共振領域Rの外周Raに沿う第1方向についての長さL1が、外周Raに垂直な第2方向についての長さL2よりも長い。図2の例では、外周RaがX方向に平行であるため、第1方向はX方向に平行であり、第2方向はY方向に平行である。言い換えると、複数のビア導体30の各々は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状である。複数のビア導体30は、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、長径が共振領域Rの複数のビア導体30の並びを結ぶ外周Raに沿うものを含む。
【0017】
なお、外周RaのうちY方向に平行な部分については、第1方向はY方向に平行であり、第2方向はX方向に平行である。よって、外周RaのうちY方向に平行な部分に沿って位置するビア導体30は、Y方向についての長さL1が、X方向についての長さL2よりも長い。
【0018】
また、第1方向について隣り合う2つのビア導体30同士の距離Dは、積層型共振器100の共振周波数に対応する信号波長λcの1/2未満とされている。ここで、距離Dについては、図2に示すように、隣り合う2つのビア導体の側面間の長さのうち、その長さの最も短い部分とする。
【0019】
このような構成の誘電体層10、第1導体層21、第2導体層22および複数のビア導体30により、積層型共振器100が構成される。このうち複数のビア導体30からなるビア導体群は、積層型共振器100の側壁として機能する。上述のとおり、第1方向についてのビア導体30同士の距離Dが信号波長λcの1/2未満とされているため、共振周波数の電磁波は複数のビア導体30による側壁を通過せずに反射する。よって、第1導体層21、第2導体層22および複数のビア導体30によって囲まれた共振領域Rの内部に、これらの各構成による容量成分およびインダクタンス成分から決定される振動周波数および振動モードで定在波が発生して共振する。第1導体層21および第2導体層22のうちの一方側から伝送信号が入射した場合に、共振周波数とは異なる周波数の信号が減衰し、共振周波数の信号が抽出されて他方側から取り出すことができる。よって、積層型共振器100は、積層型フィルタ200(バンドパスフィルタ)として機能する。
【0020】
積層型共振器100の第1導体層21および第2導体層22の構成は、図1に示したものに限らない。例えば、第1導体層21にコプレーナ線路を形成し、該コプレーナ線路を介して信号を伝送させてもよい。また、第1導体層21をマイクロストリップ線路の一部として用いてもよい。すなわち、第1導体層21の上面にさらに誘電体材料と導体層とを積層し、積層した導体層と第1導体層21によりマイクロストリップ線路を形成してもよい。また、第1導体層21をスロットアンテナ形状とし、第1導体層21の上面にさらに別個の共振器を形成して、スロットアンテナを介して電磁波を伝播させて2以上の共振器を電磁的に結合させてもよい。第1導体層21および/または第2導体層22に各種線路などのパターンを形成する場合には、第1導体層21および/または第2導体層22は、ビア導体30と電気的に接続されていない部分を有していてもよい。
【0021】
以上のように、本実施形態の印刷配線板1および積層型共振器100は、誘電体層10と、第1導体層21と、第2導体層22と、複数のビア導体30とを有する。誘電体層10は、第1面S1と、該第1面S1の反対に位置する第2面S2とを有する。第1導体層21は、誘電体層10の第1面S1に位置する。第2導体層22は、誘電体層10の第2面S2に位置する。複数のビア導体30の各々は、誘電体層10を第1面S1から第2面S2まで貫通し、第1導体層21および第2導体層22を繋いでいる。印刷配線板1は、複数のビア導体30で囲まれ、平面透視で第1導体層21および第2導体層22が重なる部分に共振領域Rを有する。複数のビア導体30は、平面視における形状のアスペクト比が1を超える形状であり、長径を第1方向、短径を第2方向としたとき、長径が共振領域Rの複数のビア導体30の並びを結ぶ外周Raに沿うものを含む。
別の観点では、本実施形態の印刷配線板1および積層型共振器100は、誘電体層10と、第1導体層21と、第2導体層22と、複数のビア導体30とを有する。第1導体層21は、誘電体層10の第1面S1のうち、該第1面S1に垂直な方向からの平面視で所定領域としての共振領域Rの少なくとも一部と重なる範囲に設けられている。第2導体層22は、誘電体層10の第1面S1とは反対側の第2面S2のうち、平面視で共振領域Rの少なくとも一部と重なる範囲に設けられている。複数のビア導体30は、平面視で共振領域Rの外周Raに沿って該共振領域Rを囲むように配置されている。複数のビア導体30の各々は、誘電体層10を第1面S1から第2面S2まで貫通している。複数のビア導体30の各々は、第1面S1に平行な断面における共振領域Rの外周Raに沿う第1方向についての長さが、外周Raに垂直な第2方向についての長さよりも長い。
これにより、複数のビア導体30により構成される側壁におけるビア導体30同士の距離Dを短縮できる。よって、共振領域Rを囲む側壁における電磁波のシールド性を高めることができる。また、本実施形態のビア導体30は、断面が円形である従来のビア導体(以下、丸穴ビア導体と記す)と比較して表面積が増大するため、放熱性能に優れるとともに、印刷配線板1の剛性を高めることができる。
【0022】
また、積層型フィルタ200は、上記構成の積層型共振器100を有する。この積層型フィルタ200は、積層型共振器100のシールド性が高いため、優れた波長選択性能を有する。
【0023】
次に、上記実施形態の各種変形例について説明する。以下の各変形例は、互いに組み合わせてもよい。
【0024】
〔変形例1〕
変形例1に係る印刷配線板1は、ビア導体30の断面形状が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0025】
ビア導体30の断面形状は、図2に示した楕円型に限らず、第1方向についての長さL1が第2方向についての長さL2より長い任意の形状とすることができる。
【0026】
例えば、図3に示すように、ビア導体30は、第1面S1に平行な断面が、第1方向(図3ではX方向)に延びる長円型(レーストラック型)であってもよい。
【0027】
また、図4に示すように、ビア導体30は、第1面S1に平行な断面がダンベル型であってもよい。ここで、ダンベル型は、第1方向についての一方側および他方側の端部31がいずれも円形であり、端部31を除いた中央部32が帯状となっている形状である。言い換えると、ダンベル型は、円形の2つの端部31を、該円形の直径より幅の狭いい帯状の中央部32で繋いだ形状である。ダンベル型のビア導体30は、第2方向(図4ではY方向)についての中央部32の幅(長さL3)が、第2方向についての端部31の幅(長さL2)よりも狭い。
ここで、図3に示したレーストラック型のビア導体30の場合の端部は、ビア導体30の中で外周の形状が湾曲状となった部分とする。中央部は端部に挟まれた、外周が直線状となった部分とする。
【0028】
また、図5に示すように、ビア導体30は、第1面S1に平行な断面がボウタイ型であってもよい。ここで、ボウタイ型は、第1方向についての一方側および他方側の端部31がいずれも台形状であり、端部31を除いた中央部32が帯状である。各端部31の台形状は、第1方向についての端に近いほど第2方向の幅が広い形状である。ボウタイ型のビア導体30は、第2方向(図5ではY方向)についての中央部32の幅(長さL3)が、第2方向についての端部31の幅(長さL2)よりも小さい。
【0029】
これらの本変形例の各ビア導体30を用いた場合でも、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0030】
〔変形例2〕
変形例2に係る印刷配線板1は、第3導体層23を有している点で上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0031】
図6に示すように、変形例2に係る印刷配線板1は、誘電体層10の内部のうち第1導体層21と第2導体層22との間に、第1面S1に平行な第3導体層23を有する。第3導体層23の材質は、例えば銅とすることができるが、これに限らない。第3導体層23は、誘電体層10の内部に位置するため内層導体と言い換えてもよい。また、第1導体層21および第2導体層22を主導体層と言い換えてもよい。ビア導体30は、第3導体層23を貫通しており、第3導体層23と電気的に接続されている。第3導体層23は、2層以上設けられていてもよい。このような第3導体層23を設けることにより、積層型共振器100の側壁における電磁波の反射効果を高めることができる。
【0032】
図6の例では、第3導体層23は、複数のビア導体30に囲まれた部分に開口部を有している。ただし、第3導体層23の形状は図6に示したものに限らない。例えば、第3導体層23をスロットアンテナ形状としてもよい。この場合には、第3導体層23を挟んで隣接する部分がそれぞれ共振器として機能し、第3導体層23の開口部を介して電磁波を伝播させることで2以上の共振器を電磁的に結合させることができる。これにより、積層型フィルタ200の周波数選択効果を高めることができる。
【0033】
〔変形例3〕
変形例3に係る印刷配線板1は、第2方向に2以上のビア導体30が隣り合う配置となっている点で上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0034】
図7に示すように、変形例3に係る印刷配線板1では、複数のビア導体30は、共振領域Rの外周Raに沿って二重の矩形をなすように配列されている。すなわち、外周Raに垂直な第2方向に、2つのビア導体30が隣り合うように配置されている。隣接数は2つに限らず、3つ以上のビア導体30が第2方向に隣り合う配置であってもよい。言い換えると、複数のビア導体30が三重以上の矩形をなす配置であってもよい。
【0035】
また、変形例3の印刷配線板1は、第1導体層21と第2導体層22との間に4層の第3導体層23が設けられているものとする。詳しくは、誘電体層10は、5層の誘電体材料11~15がZ方向に積層された構造を有し(図9参照)、これらの5層の誘電体材料11~15の界面にそれぞれ第3導体層23が形成されている。各ビア導体30は、これらの4層の第3導体層23を貫通している。
【0036】
以下、図8を参照して、各第3導体層23とビア導体30との接続状態について説明する。各ビア導体30の端部31は、第3導体層23に接している。図8では、端部31の外周全体が第3導体層23と接しているが、これに限らず、端部31の外周のうち一部が第3導体層23に接していてもよい。
【0037】
一方で、各ビア導体30の中央部32は、第3導体層23から離間している。言い換えると、第3導体層23は、ビア導体30の中央部32から所定の距離範囲内を除いた領域に形成されており、第3導体層23と中央部32との間には、第3導体層23が形成されていないクリアランス部23aが設けられている。クリアランス部23aは、例えば第3導体層23に設けられた開口部である。クリアランス部23aは、誘電体層10の材料により埋められている。なお、クリアランス部23aは、中央部32の一部と第3導体層23との間に設けられていてもよい。
【0038】
第3導体層23とビア導体30との位置関係について、図9および図10の断面図を参照してさらに説明する。図9は、図8のA-A線を通りY方向に垂直な断面を示す。A-A線は、ビア導体30の端部31の先端を通っている。図9に示すように、端部31は、各第3導体層23と接している。また、端部31を通る断面では、ビア導体30が形成されているビアホールHの壁面はZ方向と平行である。言い換えると、ビアホールHのうち端部31が形成されている部分は、厚み方向の各位置で第2方向の幅が同一となっている。ここで、同一とは、ビアホールHの上端における幅と下端における幅との差が、加工誤差を含めて20μm以内であることをいう。
【0039】
図10は、図8のB-B線を通りX方向に垂直な断面を示す。B-B線は、2つのビア導体30の中央部32を幅方向に横断している。図10に示すように、中央部32は、各第3導体層23から離間しており、中央部32と第3導体層23との間にクリアランス部23aが設けられている。
【0040】
また、各ビア導体30は、中央部32における第2方向(図10ではY方向)についての幅が、第1面S1からの距離が増大するに従って漸減する形状を有する。言い換えると、図10の断面において中央部32はテーパ形状を有している。一方で、複数の第3導体層23の形成範囲は、平面視で同一となっている。よって、ビア導体30と第3導体層23との距離の第2方向についての最大値は、第1面S1からの距離が増大するに従って漸増している。詳しくは、第1面S1に近い方から順に、4つの第3導体層23を第1層~第4層とした場合に、第1層とビア導体30との距離d1(クリアランス部23aの幅)よりも、第2層とビア導体30との距離d2の方が長い。また、距離d2よりも、第3層とビア導体30との距離d3の方が長い。また、距離d3よりも、第4層とビア導体30との距離d4の方が長い。距離d1~d4は、例えば共振周波数に対応する信号波長λcの1/10以下としてもよい。
【0041】
なお、図10の構成に代えて、図11の構成としてもよい。図11の各ビア導体30は、第2方向についての幅が、第1面S1から第1距離範囲内においては第1面S1からの距離が増大するに従って漸減し、かつ、第2面S2から第2距離範囲内においては第2面S2からの距離が増大するに従って漸減する形状を有する。ここで、第1距離範囲および第2距離範囲は、例えば誘電体層10の厚さの1/2とすることができるが、これに限らない。第1距離範囲および第2距離範囲が誘電体層10の厚さの1/2である場合には、ビア導体30の中央部32は、厚み方向の中間位置で最も幅が狭く、第1面S1および第2面S2に近いほど幅が広い形状を有する。
【0042】
また、第1面S1から第1距離範囲内においては、ビア導体30と第3導体層23との距離の第2方向についての最大値は、第1面S1からの距離が増大するに従って漸増しており、第2面S2から第2距離範囲内においては、ビア導体30と第3導体層23との距離の第2方向についての最大値は、第2面S2からの距離が増大するに従って漸増している。
【0043】
なお、第2方向についての中央部32の幅を、第1面S1からの距離によらず一定とし、第1面S1からの距離に応じてクリアランス部23aの形成範囲を変えることで、ビア導体30と第3導体層23との距離の第2方向についての最大値を、第1面S1からの距離が増大するに従って漸増させてもよい。
【0044】
以上のように、変形例3に係る印刷配線板1は、第1導体層21および第2導体層22の間に、第1面S1に平行な第3導体層23を有する。複数のビア導体30は、第2方向に2以上のビア導体30が隣り合う配置で設けられている。複数のビア導体30の各々は、第1方向についての端部31の少なくとも一部が第3導体層23に接しており、かつ、端部31を除いた中央部32の少なくとも一部が第3導体層23から離間している。
本実施形態のように、断面が第1方向に長いビア導体30を用いる場合、ビアホールHの形成後に残る第1導体層21は、ビア導体30の長手方向に隣接する部分よりも、ビア導体30の短手方向に隣接する部分の方が多くなる。このため、ビア導体30が第1導体層21から受ける長手方向の応力よりも、ビア導体30が第1導体層21から受ける短手方向の応力の方が大きくなり、応力分布が均衡しなくなる。この問題は、第2導体層22についても同様である。これらの応力は、例えば、印刷配線板1に温度変化が生じた場合に、材質間の熱膨張率の相違等に起因して生じ得る。
これに対し、本実施形態のように、誘電体層10の内部においてビア導体30の中央部32の少なくとも一部と第3導体層23とを離間させることで、ビア導体30が第3導体層23から受ける短手方向の応力を低減できる。よって、ビア導体30が第1導体層21および第2導体層22から受ける短手方向の応力が大きくなる分を、第3導体層23から受ける短手方向の応力を低減することで相殺できる。この結果、ビア導体30が第1導体層21、第2導体層22および第3導体層23から受ける短手方向および長手方向の応力を均衡させることができる。よって、印刷配線板1に温度変化が生じた場合であっても、応力の不均衡に起因する反りや断線の発生を低減できる。
【0045】
また、複数のビア導体30の各々は、第1面S1に平行な任意の断面において、中央部32における第2方向の幅が、端部31における第2方向の幅よりも狭い。
これにより、ビア導体30の占有面積を低減できる。また、中央部32に隣接する領域にクリアランス部23aを設けやすくなるため、ビア導体30が第3導体層23から受ける短手方向の応力をより効果的に低減できる。
【0046】
また、印刷配線板1は、複数の第3導体層23を有する。複数のビア導体30の各々は、中央部32における第2方向についての幅が、第1面S1からの距離が増大するに従って漸減する形状を有する。
また、複数のビア導体30および複数の第3導体層23は、第1面S1に平行な断面におけるビア導体30と第3導体層23との距離(クリアランス部23a)の最大値が、第1面S1からの距離が増大するに従って漸増する位置関係で設けられている。
印刷配線板1の第1面S1および第2面S2に近い部分は、印刷配線板1の反りおよびうねりなどの変形が起こりやすいため、これらの変形によってビア導体30が受ける応力は軽減されやすい。これに対し、印刷配線板1の内部は上記のような変形が生じにくいため、ビア導体30が受ける応力が維持されやすい。そこで、第1面S1からの距離が増大するに従って中央部32の幅が漸減する構成とすることで、印刷配線板1の内部でクリアランス部23aの幅を大きくできる。この結果、印刷配線板1の内部においてビア導体30が受ける応力を小さくできるため、断線などの欠陥の発生を低減できる。
【0047】
〔変形例4〕
変形例4に係る印刷配線板1は、第2方向に隣り合うビア導体30同士の位置関係等が変形例3と異なる。以下では、変形例3との相違点について説明する。
【0048】
図12では、図中の-Y方向側に位置するビア導体30を「第1ビア導体30A」とし、該第1ビア導体に対して第2方向(図12ではY方向)に隣り合うビア導体30を「第2ビア導体30B」としている。変形例4の印刷配線板1では、第1ビア導体30Aと第2ビア導体30Bとが第1方向(図12ではX方向)にずらされた千鳥配置となっている。詳しくは、第1ビア導体30Aの一方の最大幅端部31Aが、第2ビア導体30Bの中央部32の少なくとも一部と、第2方向に対向する位置関係で設けられている。また、この位置関係とすることで、第2ビア導体30Bの一方の端部31Bが、第1ビア導体30Aの中央部32の少なくとも一部と、第2方向に対向する。
【0049】
また、第1ビア導体30Aの端部31Aのうち第2ビア導体30Bの中央部32と対向する面の少なくとも一部は、第3導体層23から離間している。同様に、第2ビア導体30Bの端部31Bのうち第1ビア導体30Aの中央部32と対向する面の少なくとも一部は、第3導体層23から離間している。
言い換えると、第1ビア導体30Aの第2ビア導体30B側に隣接するクリアランス部23aは、中央部32から端部31Aにわたって延在している。また、第2ビア導体30Bの第1ビア導体30A側に隣接するクリアランス部23aは、中央部32から端部31Bにわたって延在している。
別の観点では、各ビア導体30のうち、第2方向に隣り合うビア導体30と対向する部分の全体にクリアランス部23aが隣接していてもよい。
【0050】
以上のように、変形例4に係る印刷配線板1では、複数のビア導体30は、該複数のビア導体30のうち第1ビア導体30の一方の端部31が、該第1ビア導体30に対して第2方向に隣り合う第2ビア導体30の中央部32の少なくとも一部と、第2方向に対向する位置関係で設けられている。第1ビア導体30の端部31のうち第2ビア導体30の中央部32と対向する面の少なくとも一部は、第3導体層23から離間している。
このような千鳥配置とすることで、第1方向に隣り合うビア導体30の間隙から漏れる電磁波を、第2方向に隣り合うビア導体30でシールドすることができる。よって、シールド性をより高めることができる。また、ビア導体30の端部31にもクリアランス部23aが隣接するため、ビア導体30が第3導体層23から受ける短手方向の応力をさらに低減できる。
【0051】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、印刷配線板1の製造方法について、ビア導体30がダンベル型である場合を例に挙げて説明する。
【0052】
まず、図13A図13Cに示すように、5層の誘電体材料11~15が積層された誘電体層10と、第1導体層21と、第2導体層22と、4層の第3導体層23とを有する積層体を製造する。
【0053】
詳しくは、両面に銅箔が形成された板状の誘電体材料11、13、15(銅張積層板)を用意する。誘電体材料11の上面の銅箔が第1導体層21となり、下面の銅箔が第1層の第3導体層23となる。また、誘電体材料13の上面の銅箔が第2層の第3導体層23となり、下面の銅箔が第3層の第3導体層23となる。また、誘電体材料15の上面の銅箔が第4層の第3導体層23となり、下面の銅箔が第2導体層22となる。このうち各第3導体層23となる銅箔にパターン加工を行い、クリアランス部23aとなる開口部を予め形成しておく。パターン加工は、例えばフォトリソグラフィによって行う。そして、誘電体材料11および誘電体材料13を、誘電体材料12となるプリプレグを介して積層し、誘電体材料13および誘電体材料15を、誘電体材料14となるプリプレグを介して積層する。ここで、プリプレグとは、ガラスクロスに樹脂を含浸させて半硬化させた部材である。この状態の構造体を加熱するとともにZ方向に加圧することにより、プリプレグに含侵された樹脂が一旦溶融した後に硬化し、硬化した誘電体材料12、14となって図13A図13Cに示す積層体が得られる。
【0054】
次に、図14A図14Cに示すように、ビア導体30の端部31に相当する位置にドリル加工により貫通孔30aを形成する。ここでは、壁面がZ方向に平行な貫通孔30aを形成する。
【0055】
次に、図15A図15Cに示すように、隣り合う貫通孔30aの間の位置、すなわちビア導体30の中央部32に相当する位置に対して複数回のドリル加工を行う。これにより、隣り合う貫通孔30a同士を繋げ、ビアホールHを形成する。詳しくは、図15Aにおいて破線の円で示す位置のそれぞれに、貫通孔30aよりも直径の小さい貫通孔を設け、これにより貫通孔30a同士を繋げる。また、図15Aにおける破線の円は、第3導体層23に設けられた開口部(クリアランス部23a)の幅より狭い。よって、図15Cに示すように、ビアホールHのうち中央部32に相当する部分の壁面は、第3導体層23と離間した状態となり、クリアランス部23aが形成される。また、ここでは、リーマ形状を有するドリルを用いて加工を行う。これにより、図15Cに示すように、ビアホールHのうち中央部32に相当する部分の第2方向(図15CではY方向)の幅を、第1面S1からの距離が増大するに従って漸減する形状とすることができる。この結果、クリアランス部23aの第2方向の幅を、第1面S1からの距離が増大するに従って漸増させることができる。また、図11に示したように厚み方向の中間で最も細くなる形状のビアホールHを形成する場合には、積層体の上面および下面からそれぞれリーマ形状を有するドリルを用いて加工を行えばよい。
【0056】
次に、図16A図16Cに示すように、積層体に対してめっき処理を行い、ビアホールHの壁面にビア導体30を形成する。その後、ビア導体30により囲まれた空間に絶縁体33(例えば、樹脂)を充填する。以上の工程により印刷配線板1が完成する。
【0057】
従来の丸穴ビア導体を用いた場合には、ビア導体の占有面積を低減するにはビア導体の直径を小さくする必要があるところ、このような小径化を行うと、丸穴ビア導体のZ方向の長さと直径とのアスペクト比が大きくなってしまう。この結果、めっき液が循環しにくくなり、ビアホールの内壁にめっき層を適正に形成できなくなる問題があった。
これに対し、本実施形態のようにビア導体30の断面の第1方向の長さを第2方向の長さより大きくすることで、短手方向の長さが丸穴ビア導体の直径と同一であったとしても、長手方向についてのアスペクト比が丸穴ビア導体よりも小さくなる。よって、ビアホールHにめっき液を供給しやすくなり、所望の厚さのめっき層(ビア導体30)を形成することができる。このため、断線等の欠陥が生じにくい。このように欠陥が生じにくい積層型共振器100を内蔵する積層型フィルタ200および印刷配線板1は、耐久性に優れる。
【0058】
上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、印刷配線板、積層型共振器および積層型フィルタに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 印刷配線板
10 誘電体層
11~15 誘電体材料
21 第1導体層
22 第2導体層
23 第3導体層
23a クリアランス部
30 ビア導体
30A 第1ビア導体
30B 第2ビア導体
30a 貫通孔
31、31A、31B 端部
311 突出部
32 中央部
33 絶縁体
100 積層型共振器
200 積層型フィルタ
H ビアホール
R 共振領域(所定領域)
Ra 外周
S1 第1面
S2 第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C