(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】多孔複合吸音材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/162 20060101AFI20250109BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20250109BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20250109BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20250109BHJP
D04H 1/08 20120101ALI20250109BHJP
D04H 1/4242 20120101ALI20250109BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G10K11/162
D06M15/263
D06M15/693
D06M15/564
D06M15/55
D06M15/643
D06M11/79
D04H1/08
D04H1/4242
H04R1/02 101E
(21)【出願番号】P 2022578752
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022119949
(87)【国際公開番号】W WO2024045233
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】202211070755.X
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522237667
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ (ナンジン) カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Technologies (Nanjing) Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ ▲圓▼▲圍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 和志
(72)【発明者】
【氏名】王 常▲亮▼
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110105745(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0124502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0354862(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0051280(US,A1)
【文献】中国実用新案第205029855(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114495883(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111135772(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0079660(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/162
D06M 15/263
D06M 15/693
D06M 15/564
D06M 15/55
D06M 15/643
D06M 11/79
D04H 1/08
D04H 1/4242
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔複合吸音材料であって、
前記多孔複合吸音材料は、活性炭綿フェルト、ゼオライト粒子及び接着剤を含み、
前記活性炭綿フェルトは、骨格材料とされ、前記ゼオライト粒子は、前記接着剤によって前記活性炭綿フェルトの繊維表面に接着されて
おり、
前記活性炭綿フェルトの活性炭繊維の間には、孔径が1μm~1000μmであるマクロ孔があり、且つ前記活性炭綿フェルトの活性炭繊維の表面には、孔径が2nm未満であるマイクロ孔が多数あり、前記活性炭綿フェルトの比表面積に対する前記マイクロ孔の比表面積の比率であるマイクロ孔比率が5%~95%であることを特徴とする多孔複合吸音材料。
【請求項2】
前記ゼオライト粒子の粒径は、50nm~1mmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔複合吸音材料。
【請求項3】
前記活性炭綿フェルトは、前記多孔複合吸音材料の5質量%~90質量%を占め、前記ゼオライト粒子は、前記多孔複合吸音材料の1質量%~85質量%を占め、前記接着剤は、前記多孔複合吸音材料の1質量%~30質量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の多孔複合吸音材料。
【請求項4】
前記接着剤は、アクリル酸エステル系接着剤、スチレンブタジエン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤及びシリコーン系接着剤のうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の多孔複合吸音材料。
【請求項5】
請求項1に記載の多孔複合吸音材料を製造する方法であって、
活性炭綿フェルトの表面処理を行うステップS1と、吸音原液の製造を行うステップS2と、浸漬するステップS3と、定型するステップS4と、分散剤の除去を行うステップS5と、硬化するステップS6と、洗浄するステップS7と、乾燥するステップS8と、を含み、
前記ステップS1では、
プラズマ処理、コロナ処理、酸化処理、還元処理、酸処理、アルカリ処理、界面活性剤溶液の浸漬及び溶媒浸漬から選択される一種又は複数種の方式を採用して活性炭綿フェルト
の表面に
対して処理を行うことにより
、吸音原液との濡れ性を増加させ、
前記ステップS2では、ゼオライト粒子、接着剤、分散助剤、発泡剤及び分散剤を混合し、吸音原液を取得し、
前記ステップS3では、前記ステップS2で取得された吸音原液を使用して前記ステップS1で処理された活性炭綿フェルトを浸漬して、ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を取得し、
前記ステップS4では、前記浸漬するステップS3で取得されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を急冷することにより、該ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を定型し、
前記ステップS5では、前記ステップS4で定型されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料に含まれる分散剤を凍結乾燥によって除去し、
前記ステップS6では、前記接着剤を硬化させ得る条件で、前記ステップS5で分散剤が除去されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を焼成することにより、ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料に含まれる接着剤を硬化させ、
前記ステップS7では、水で数回超音波洗浄し、残留した分散助剤、発泡剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去し、
前記ステップS8では、水分を乾かすと、前記多孔複合吸音材料を得ることを特徴とする多孔複合吸音材料を製造する方法。
【請求項6】
前記ステップS2では、ゼオライト粒子100部、接着剤1~200部、分散助剤1~50部、発泡剤1~50部、分散剤50~9900部を混合し、吸音原液を取得することを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記発泡剤は、物理的揮発型発泡剤、熱分解型発泡剤、二成分反応型発泡剤のうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記分散助剤は、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤のうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
スピーカであって、
前記スピーカのバックチャンバは、請求項1~
3の何れか一項に記載の多孔複合吸音材料を含むことを特徴とするスピーカ。
【請求項10】
スピーカであって、
前記スピーカのバックチャンバは、請求項4に記載の多孔複合吸音材料を含むことを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の分野に属し、具体的には、本発明は、多孔複合吸音材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費電子業界の急速な発展及び人々の生活水準の飛躍的な向上に伴い、消費電子製品の小型化、扁平化は、ますます消費者に好まれている。その一方、音声に対する人々の要求がますます高くなり、有効的な空間でより良好な音声品質を取得することが望ましい。これにより、スピーカに対する要求は、ますます厳しくなっている。
【0003】
一般的に、スピーカのバックチャンバの体積が小さければ小さいほど、低周波帯域の音響応答が悪くなり、音質などの音響表現も悪くなる。したがって、スピーカのバックチャンバを拡大するように工夫して更にその低周波帯域応答を向上させる必要がある。
【0004】
スピーカのバックチャンバを拡大するために、当業者は、様々な方法、例えば下記の方法を提供する。
1、空気音響整合性よりも高いガス、例えば二酸化炭素などを用いてバックチャンバを充填する。このような方法は、チャンバを密封する難度が高いため、長期信頼性が劣るという問題が存在する。
2、吸音綿、例えばメラミンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエステル吸音綿等を充填する。しかし、このような材料の孔径は大きく、音質改善の余地が限られる。
3、活性炭、ゼオライト、シリカなどの多孔質材料を充填し、仮想バックチャンバの体積を増加させ、バックチャンバのガスの音響整合性を向上させる。このような材料は、大量のマイクロ孔構造を有するため、効果が顕著に増加するが、2つの問題が存在する。第1に、吸音性能に優れたものが粒子状であることが多く、複雑なバックチャンバを有するスピーカ装置の使用が制限される。第2に、天然ゼオライトによる改善余地が限られ、二次成形が効果を顕著に向上させることができるが、コストが高い。
【0005】
以上の方法の限界に対して、当業者は、多くの試みを行い、例えば吸音綿又は吸音繊維構造材料にゼオライト又は活性炭粒子を添加してみた。このような方法は、性能を向上させるだけでなく、ブロック状材料であるため、使用されやすい。しかし、この方法には、明らかな限界が存在する。つまり、使用される骨格材料は、何れも一般的なマクロ孔構造材料であり、吸音粒子に対して分散、固定、支持などの作用を多く発揮するが、それ自体は、多孔複合吸音材料の吸音性能への貢献が非常に限られ、良い性能を得るために常に大量のゼオライト又は活性炭粒子等の吸音粒子を添加する必要があり、コストが大幅に増加するだけでなく、最終材料吸音性能の上限も高くない。
【0006】
したがって、この分野では、スピーカのバックチャンバを拡大することができる新たな方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術の不足について、本発明は、目的を絞って改善を行う。本発明は、従来の骨格材料に代えて、大量のマイクロ孔構造を含有する活性炭綿フェルトを用いて(大量のマイクロ孔がない骨格材料として、例えば吸音フォーム、吸音繊維などがある)、通常の骨格材料のようにゼオライト粒子を固定することができ、分散性が高く、ゼオライト粒子の吸音性能を最適化させるだけでなく、活性炭表面の大量のマイクロ孔構造がゼオライト粒子と協調的に作用することができるため、最終的な多孔複合吸音材料の吸音性能が両者を顕著に追い越させるとともに、コストが相対的に低く、コストパフォーマンスが極めて高い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明は、多孔複合吸音材料を提供する。前記多孔複合吸音材料は、活性炭綿フェルト、ゼオライト粒子及び接着剤を含み、
前記活性炭綿フェルトは、骨格材料とされ、ゼオライト粒子は、接着剤によって活性炭綿フェルトの繊維表面に接着され、ゼオライト粒子を均一に分散させ且つ固定するとともに、活性炭綿フェルトの繊維表面に大量のマイクロ孔構造が存在してゼオライト粒子と相乗効果を果たすことができ、多孔複合吸音材料の吸音性能が両者よりも顕著に優れる。
【0009】
本発明が採用する活性炭綿フェルトは、多孔質であり、その比表面積は、一般的に100~1800m2/gである。本発明の活性炭綿フェルトに適用可能な活性炭繊維の間には、豊富なマクロ孔構造があるだけでなく、活性炭綿フェルトの活性炭繊維表面には、大量のマイクロ孔があり、マクロ孔の孔径は、一般的に1μm~1000μmであり、好ましくは100μm~500μmであり、マイクロ孔の孔径は、2nm未満であり、且つマイクロ孔比率は、5%~95%である。
【0010】
本発明の採用可能なゼオライト粒子の粒径は、一般的に50nm~1mm、好ましくは50nm~500μm、より好ましくは100nm~100μmであり、前記ゼオライト粒子は、微粉であってもよく、粒子であってもよく、二次成形されたゼオライト粒子であってもよい。
【0011】
好ましい実施形態において、前記活性炭綿フェルトは、多孔複合吸音材料の5質量%~90質量%を占め、好ましくは10質量%~50質量%を占め、前記ゼオライト粒子は、多孔複合吸音材料の1質量%~85質量%を占め、好ましくは20質量%~60質量%を占め、前記接着剤は、多孔複合吸音材料の1質量%~30質量%を占め、好ましくは5質量%~20質量%を占める。
【0012】
本発明が採用する接着剤は、アクリル酸エステル系接着剤、スチレンブタジエン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤及びシリコーン系接着剤のうちの一種又は複数種であってもよく、前記アクリル酸エステル系接着剤は、アクリル酸メチル接着剤、アクリル酸エチル接着剤、アクリル酸ブチル接着剤、アクリル酸イソオクチル接着剤、メタクリル酸メチル接着剤、メタクリル酸エチル接着剤及びそれらの組み合わせから選択することができ、前記スチレンブタジエン系接着剤は、高温乳化重合スチレンブタジエンゴム及び低温乳化重合スチレンブタジエンゴム並びにそれらの組み合わせから選択することができ、前記ポリウレタン系接着剤は、ポリイソシアネート接着剤、イソシアネート基含有ポリウレタン接着剤、水酸基含有ポリウレタン接着剤、ポリウレタン樹脂接着剤及びそれらの組み合わせから選択することができ、前記エポキシ系接着剤は、冷硬化接着剤、熱硬化接着剤又は光硬化接着剤であってもよく、前記シリコーン系接着剤は、シリコーン樹脂を基材とする接着剤又はシリコーンゴムを基材とする接着剤である。
【0013】
本発明が採用する分散助剤は、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤のうちの一種又は複数種であってもよく、好ましくは、カチオン界面活性剤は、四級アンモニウム塩型界面活性剤であり、例えばオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等であるが、好ましくは、前記アニオン界面活性剤は、スルホン酸塩型界面活性剤又は硫酸エステル塩型界面活性剤であり、スルホン酸塩型界面活性剤は、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等であるがそれらに限定されず、硫酸エステル塩型界面活性剤は、例えばラウリル硫酸ナトリウム等であるがそれらに限定されず、両性イオン界面活性剤は、例えばドデシルアミノプロピオン酸、ヘキサデシルジメチルベタイン、オクタデシルジカルボキシベタイン、オクタデシルヒドロキシプロピルスルホベタイン、ドデシルスルホベタイン等であるがそれらに限定されず、ノニオン界面活性剤は、例えばモノステアリン酸グリセリン、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等であるがこれらに限定されない。
【0014】
本発明は、本発明の多孔複合吸音材料の製造方法を更に提供し、前記方法は、下記のステップS1~S8を含み、
S1:活性炭綿フェルト表面処理
活性炭綿フェルトに表面処理を行うことにより、吸音性能を向上させ、且つ吸音原液との濡れ性を増加させ、
S2:吸音原液の製造
ゼオライト粒子、接着剤、分散助剤、発泡剤及び分散剤を混合し、吸音原液を取得し、
S3:浸漬
ステップS2で取得された吸音原液を使用してステップS1で処理された活性炭綿フェルトを浸漬して、ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を取得し、
S4:定型
浸漬ステップS3で取得されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を急冷することにより、該ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を定型し、
S5:分散剤の除去
ステップS4で定型されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料に含まれる分散剤を凍結乾燥によって除去し、
S6:硬化
前記接着剤を硬化させ得る条件で、ステップS5で分散剤が除去されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を焼成することにより、ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料に含まれる接着剤を硬化させ、
S7:洗浄
水で数回超音波洗浄し、残留した分散助剤、発泡剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去し、
S8:乾燥
水分を乾かすと、前記多孔複合吸音材料を得る。
【0015】
本発明に係る多孔複合吸音材料は、スピーカに適用する場合に、好ましくは、表面処理ステップS1を行う前に、まず活性炭綿フェルトをスピーカのバックチャンバの形状に応じて切断する。
【0016】
本発明の方法によれば、表面処理ステップS1においてプラズマ処理、コロナ処理、酸化処理、還元処理、酸処理、アルカリ処理、界面活性剤溶液の浸漬及び溶媒浸漬から選択される一種又は複数種の方式を採用し、活性炭綿フェルトに表面処理を行うことができる。
【0017】
好ましくは、酸化処理の方式により、活性炭綿フェルトに表面処理を行う。好ましくは、焼成の方式で酸化処理を行い、例えば送風オーブンを用いて焼成することができ、焼成温度は、一般的に100~300℃であり、焼成時間は、一般的に0.5~5hである。
【0018】
表面処理を行う前に、活性炭綿フェルトは、まず溶媒できれいに洗浄することができ、例えば活性炭綿フェルトを溶媒に浸漬することにより洗浄することができ、浸漬時間は、一般的に1~24hであり、前記溶媒は、好ましくは、水と相溶する低沸点有機溶媒であり、このような有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン等のうちの一種又は複数種であってもよい。活性炭綿フェルトは、溶媒に浸漬完了した後、乾燥方式を採用して溶媒を除去することにより、乾燥した活性炭綿フェルトを得ることができる。
【0019】
本発明の方法によれば、吸音原液の製造ステップS2で採用されたゼオライト粒子、接着剤及び分散助剤の定義は、本発明の多孔複合吸音材料における定義と同じであり、ステップS2で採用された発泡剤は、物理的揮発型発泡剤、熱分解型発泡剤、アゾ化合物型発泡剤、炭酸水素塩型発泡剤及び二成分反応型発泡剤のうちの一種又は複数種であってもよく、ステップS2で採用された分散剤は、好ましくは、水である。
【0020】
本発明に適用可能な物理的揮発型発泡剤は、例えば水と相溶する低沸点有機溶媒であるが、これに限定されず、このような有機溶剤は、エタノール、アセトン、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランなどのうちの一種又は複数種であってもよい。
【0021】
本発明に適用可能な熱分解型発泡剤は、例えば、過硫化物発泡剤、アゾ化合物発泡剤、炭酸水素塩発泡剤等であるが、これらに限定されない。
【0022】
ここでこのような過硫化物は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等のうちの一種又は複数種であってもよく、ここでこのようなアゾ化合物は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のうちの一種又は複数種であってもよく、ここでこのような炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のうちの一種又は複数種であってもよい。
【0023】
本発明に適用可能な二成分反応型発泡剤は、例えば、炭酸塩+塩酸、炭酸水素塩+塩酸等の一種又は複数種に限定されない。
【0024】
ここで炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のうちの一種又は複数種であってもよいが、これらに限定されず、ここで炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム等のうちの一種又は複数種であってもよいが、これらに限定されない。
【0025】
吸音原液の調製ステップS2において、一般的にゼオライト粒子100部、接着剤1~200部、分散助剤1~50部、発泡剤1~50部、分散剤50~9900部を混合し、吸音原液を得る。好ましい実施形態において、ステップS2において、ゼオライト粒子100部、接着剤5~20部、分散助剤3~40部、発泡剤7~40部、分散剤135~1800部を混合し、吸音原液を得る。
【0026】
本発明の方法によれば、浸漬ステップS3において本分野の何れの方法を採用して浸漬を実現することができ、活性炭綿フェルトを吸音原液に完全に浸潤させることができればよく、例えば表面処理を行った活性炭綿フェルトを吸音原液に入れて1~24h浸漬することができ、超音波又は真空排気等の手段を利用する場合に、浸潤を加速し、浸漬時間を1~60minに短縮することができる。
【0027】
好ましくは、成形する前に、まずステップS3で取得されたゼオライト-活性炭綿フェルト面の余分な吸音原液を除去し、例えば軽く拭いて面の余分な吸音原液を迅速に拭き取る。
【0028】
本発明の方法によれば、定型ステップS4において本分野の一般的な何れの急冷技術も採用して、ステップS3で取得されたゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料を低温環境に存在させて急冷して定型することができる。急冷手段は、冷却装置を使用してもよく、冷媒を使用してもよい。
【0029】
本発明の方法によれば、分散剤を除去するステップS5において凍結乾燥機を利用して凍結乾燥を行うことができ、凍結温度及び時間は、特に限定されず、ゼオライト-活性炭綿フェルト複合材料中の分散剤、例えば水を完全に除去することができればよい。
【0030】
本発明の方法によれば、硬化ステップS6において採用された硬化条件、即ち焼成時間及び温度は、採用された具体的な接着剤に応じて決定され、一般的には、特に制限されず、接着剤を完全に硬化させることができれば、且つゼオライト粒子が活性炭綿フェルトの繊維表面に強固に接着すればよい。
【0031】
本発明の方法によれば、洗浄ステップS7において本分野の既知の何れの方法でも洗浄することができ、好ましくは、超音波洗浄器で洗浄し、洗浄回数及び時間が限定されず、残留した分散助剤、発泡剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去することができればよい。好ましくは、洗浄用の水は、脱イオン水である。
【0032】
本発明の方法によれば、乾燥ステップS8において本分野の既知の何れの方法も採用して水分を乾かすことができ、例えばオーブンで乾燥させることができ、乾燥温度は、一般的に80~150℃であり、乾燥時間は、一般的に0.5~2hである。
【0033】
更に、本発明は、スピーカを更に提供し、前記スピーカのバックチャンバは、本発明に係る多孔複合吸音材料を含む。
【0034】
本発明は、活性炭綿フェルトを骨格材料として採用し、従来の吸音綿、吸音繊維などの材料に比べて、活性炭綿フェルト中の大量のマイクロ孔構造の存在により、その吸音性能がより優れ、且つ少量のゼオライト材料を使用しても、吸音性能に非常に優れたため、コストパフォーマンスがより高い。
【0035】
また、本発明の多孔複合吸音材料の製造過程において、急冷定型及び凍結乾燥技術を採用することにより、ゼオライト粒子が活性炭綿フェルト内に均一に分布することができ、従来のプロセスが重力又は吸音原液の粘度等の原因によるゼオライトの分布が不均一であり、負荷深さが限られているという問題を解決し、それにより複合材料の吸音性能が大幅に向上するとともに、ゼオライトと活性炭などの粒子材料が複雑スピーカチャンバに適用できないという問題を解決する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の多孔複合吸音材料でスピーカのバックチャンバを充填した後、スピーカの低周波性能を大幅に向上させ且つその性能をより安定させることができる。音響スピーカが携帯電話、イヤホン、コンピュータ、自動車、テレビ、オーディオ等の分野に適用されるため、本発明は、幅広い分野に適用可能である。
【0037】
本開示の下記の記述及び図面に基づいて、本開示のこれら及び他の目的、態様及び利点は、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の多孔複合吸音材料の構造概略図である。
【
図2】酸化処理された活性炭綿フェルトのSEM写真であり、その中、左側の小さな図が正面を示し、右側の小さな図が側面を示す。
【
図3】本発明の実施例1において製造された多孔複合吸音材料のSEM写真であり、その中、左側の小さな図が正面を示し、右側の小さな図が側面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
活性炭綿フェルトを骨格材料として、ゼオライト粒子を接着剤によって前記活性炭綿フェルトの繊維表面に接着させ、且つ急冷定型、凍結乾燥及び高温処理を経て、本発明は、新たな多孔複合吸音材料を製造し、その構造概略図は、
図1に示す。
【0040】
本発明が採用する活性炭綿フェルト中には、大量のマイクロ孔が存在し、その吸音性能は、マクロポーラス構造のみを有する吸音綿及び吸音繊維よりも明らかに優れ、且つ吸音性能により優れたゼオライト変性を経て、且つゼオライトの分布均一性を顕著に改善させる急冷定型技術と結合し、本発明は、コストを大幅に低減し、ゼオライト等の粒子材料の使用が不便である技術課題を解決し、本発明に係る多孔複合吸音材料は、活性炭綿フェルトの吸音性能を更に向上させ、それにより本発明の多孔複合吸音材料をスピーカのバックチャンバに充填した後にその低周波性能を顕著に改善することが可能である。
【0041】
以下実施例によって更に説明し、理解すべきことは、ここで説明された具体的な実施例は、単に本発明を解釈するために用いられるものであり、本発明を限定するものではない。
【0042】
調製実施例
実施例1:
マクロ孔の孔径が1μm~1000μmであり、マイクロ孔の孔径が2nm未満の活性炭綿フェルトを採用し、該活性炭綿フェルトの比表面積が1300m
2/gであり、且つマイクロ孔の比率が80%である。
活性炭綿フェルトをスピーカのバックチャンバの形状に応じて切断し、質量で計算すると、切断された後の活性炭綿フェルトは、30部であり、それをエタノールに12h浸漬し、次に送風オーブンを採用し、110℃で2h焼成して、エタノールを除去する。
送風オーブンを使用し、200℃で2h焼成し、それを酸化処理する。該活性炭綿フェルトの正面及び側面をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で走査し、得られたSEM写真を
図2に示すように、ここで、左側の小さな図は、正面を示し、右側の小さな図は、側面を示す。その音響性能のデータを表1に示す。
磁気撹拌器によって、質量で計算すると、粒径が0.2~20μmのゼオライト粒子100部、スチレンブタジエン接着剤20部、ラウリル硫酸ナトリウム10部、過硫酸カリウム40部、水1800部を均一に混合し、吸音原液を製造し、使用に備える。
上記酸化処理された活性炭綿フェルトを吸音原液に入れ、1h超音波処理を行って、次に浸潤が完了した活性炭綿フェルトを取り出し、濾紙で表面における余分な吸音原液を軽く拭き、次に低温環境(冷却装置を使用してもよく、冷媒を使用してもよい)により、それを急冷して定型される。
急冷定型が完成した後、凍結乾燥機を利用して凍結乾燥を行い、材料中の水分を完全に除去する。
凍結乾燥が完成した後、温度が110℃のオーブンで2h焼成することにより、スチレンブタジエン接着剤を完全に硬化させる。
超音波洗浄器を利用し、脱イオン水で5回洗浄し、毎回洗浄時間が10minであり、残留した発泡剤、界面活性剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去し、温度110℃のオーブンで1h焼成し、ブロック状の多孔複合吸音材料を得る。
得られた多孔複合吸音材料の正面及び側面をそれぞれ走査型電子顕微鏡で走査し、得られたSEM写真を
図3に示す。図から明らかに分かるように、ゼオライト粒子は、既に活性炭綿フェルトの繊維表面に強固に接着されている。その音響性能のデータを表1に示す。
【0043】
実施例2
この実施例で採用された活性炭綿フェルトは、実施例1と全く同じである。
活性炭綿フェルトをスピーカのバックチャンバの形状に応じて切断し、質量で計算すると、切断された後の活性炭綿フェルトは、30部であり、それをエタノールに12h浸漬し、次にオーブンを採用し、110℃で2h焼成して、エタノールを除去する。
送風オーブンを使用し、200℃で2h焼成して酸化処理する。
磁気撹拌器により、質量で計算すると、粒径が0.2~20μmのゼオライト粒子100部、有機シリカゲル接着剤10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15部、過硫酸アンモニウム20部、水550部を均一に混合し、吸音原液を製造し、使用に備える。
上記酸化処理された活性炭綿フェルトを吸音原液に入れ、1h超音波処理を行って、次に、浸潤が完了した活性炭綿フェルトを取り出し、濾紙で表面における余分な吸音原液を軽く拭き、次に低温環境(冷却装置を使用してもよく、冷媒を使用してもよい)により、それを急冷して定型される。
急冷定型が完成した後、凍結乾燥機を利用して凍結乾燥を行い、材料中の水分を完全に除去する。
凍結乾燥が完成した後、温度が110℃のオーブンで2h焼成することにより、有機シリカゲル接着剤を完全に硬化させる。
超音波洗浄器を利用し、脱イオン水で5回洗浄し、毎回洗浄時間が10minであり、残留した発泡剤、界面活性剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去し、温度が110℃のオーブンで1h焼成し、ブロック状の多孔複合吸音材料を得る。
得られた多孔複合吸音材料の正面及び側面をそれぞれ走査型電子顕微鏡で走査し、得られたSEM写真(該SEM写真が表示されていない)は、実施例1の多孔複合吸音材料のSEM写真と基本的に同じであり、図から明らかに分かるように、ゼオライト粒子は、既に活性炭綿フェルトの繊維表面に強固に接着される。その音響性能の詳細なデータを表1に示す。
【0044】
実施例3
この実施例で採用された活性炭綿フェルトは、実施例1と全く同じである。
活性炭綿フェルトをスピーカのバックチャンバの形状に応じて切断し、質量で計算すると、切断された後の活性炭綿フェルトは、30部であり、それをエタノールに12h浸漬し、次に送風オーブンを採用し、110℃で2h焼成して、エタノールを除去する。
送風オーブンを使用し、200℃で2h焼成し、それを酸化処理する。
磁気撹拌器によって、質量で計算すると、粒径が0.2~20μmのゼオライト粒子100部、アクリル酸エステル接着剤15部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、炭酸水素ナトリウム7部、水135部を均一に混合し、吸音原液を製造し、使用に備える。
上記酸化処理された活性炭綿フェルトを吸音原液に入れ、1h超音波処理を行って、次に、浸潤が完了した活性炭綿フェルトを取り出し、濾紙で表面における余分な吸音原液を軽く拭き、次に低温環境(冷却装置を使用してもよく、冷媒を使用してもよい)により、それを急冷して定型する。
急冷定型が完成した後、凍結乾燥機を利用して凍結乾燥を行い、材料中の水分を完全に除去する。
凍結乾燥が完成した後、温度が110℃のオーブンで2h焼成することにより、スチレンブタジエン接着剤を完全に硬化させる。
超音波洗浄器を利用し、脱イオン水で5回洗浄し、毎回洗浄時間が10minであり、残留した発泡剤、界面活性剤及び強固に接着されていないゼオライト粒子を除去し、温度が110℃のオーブンで1h焼成し、ブロック状の多孔複合吸音材料を得る。
得られた多孔複合吸音材料の正面及び側面をそれぞれ走査型電子顕微鏡で走査し、得られたSEM写真(該SEM写真が表示されていない)は、実施例1の多孔複合吸音材料のSEM写真と基本的に同じであり、図から明らかに分かるように、ゼオライト粒子は、既に活性炭綿フェルトの繊維表面に強固に接着される。その音響性能の詳細なデータを表1に示す。
【0045】
<音響性能測定>
スピーカの共振周波数の測定方法に基づいて、実施例1、実施例2及び実施例3で製造された多孔複合吸音材料をそれぞれ適用ツールに入れ、インピーダンスアナライザーを用いてその共振周波数(F0)の低減値を測定し、落下試験によって多孔複合吸音材料の落下破損状況をテストする。ここで、F0低減値は、共振周波数が低周波へ移動する度合いを表す。一般的には、F0低減値が大きければ大きいほど、スピーカの低周波性能が高くなる。
音響性能測定に用いられるスピーカのツーリングバックチャンバの体積は、0.4立方センチメートル(0.4ccと略称する)であり、具体的な試験結果は、表1に示される。
【0046】
【0047】
表1の結果によれば、本発明における活性炭綿フェルト(骨格材料)は、マイクロ孔構造の出現により、自体の吸音性能が従来の骨格材料(吸音フォーム、吸音繊維)に対して非常に優れ、ツーリングバックチャンバに本発明の多孔複合吸音材料を充填した後、スピーカのF0の低減が何れも160Hz以上であり、バックチャンバに実施例3の多孔複合吸音材料を充填した後、スピーカF0が271Hz低減され、その性能が活性炭綿フェルト及びBass粒子(現在ではスピーカの商品化使用効果が最も良い吸音材料)よりも顕著に優れ、その低周波性能が顕著に改善されることを示すことが分かる。同時に本発明の材料価格は、Bassに対して大幅に低下し、コストパフォーマンスが極めて高い。また、実施例1の多孔複合吸音材料を採用したスピーカは、僅かな粉落ちが発生した一方、実施例2の多孔複合吸音材料及び実施例3の多孔複合吸音材料を採用したスピーカは、何れも粉落ちが発生しなかった。
【0048】
上述の内容は、本発明の目的、技術案及び有益な効果を詳細に説明し、理解すべきことは、上述の記載は、本発明の実施形態及び具体的な実施例だけであり、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の精神及び原則内で行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、何れも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1 多孔複合吸音材料における活性炭綿フェルトの活性炭繊維
2 ゼオライト粒子