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特許7617189マクロフィリン結合医薬アッセイに使用するための結合競合剤およびその使用方法
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  • 特許-マクロフィリン結合医薬アッセイに使用するための結合競合剤およびその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】マクロフィリン結合医薬アッセイに使用するための結合競合剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/566 20060101AFI20250109BHJP
   C07D 498/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01N33/566
C07D498/18
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117216
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2021523834の分割
【原出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2023139104
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】62/754,913
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ティエ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー・テン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドリナン
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・リ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509555(JP,A)
【文献】特表2007-512340(JP,A)
【文献】特表2016-501374(JP,A)
【文献】特表平09-502272(JP,A)
【文献】特表2011-506973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0176213(US,A1)
【文献】国際公開第2015/106283(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0015838(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスのうちの少なくとも1つであるマクロフィリン結合医薬の血中レベルをモニタリングするための前処理試薬であって、前処理試薬は、:
(a)式IVによって表される化合物:
【化1】
および
(b)式VIによって表される化合物:
【化2】
のうちの少なくとも1つを含む前記前処理試薬。
【請求項2】
化合物は、アッセイに利用されるマクロフィリン結合医薬に対する特異的結合パートナーと実質的に交差反応しない、請求項1に記載の前処理試薬。
【請求項3】
マクロフィリン結合医薬、ここでマクロフィリン結合医薬は、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスのうちの少なくとも1つである、の血中レベルをモニタリングする方法であって:
サンプルに結合競合剤を加えて、マクロフィリン結合医薬をそのイムノフィリン複合体から移動させる工程であって、結合競合剤は:
(a)式IVによって表される化合物:
【化3】
(b)式Vによって表される化合物:
【化4】
(c)式VIによって表される化合物:
【化5】
または
(d)式VIIによって表される化合物:
【化6】
のうちの少なくとも1つである、該工程と;
医薬と結合するマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナーを加えて結合パートナー/医薬複合体を形成する工程であって、特異的結合パートナーはマクロフィリン結合医薬に特異的な抗体であって、そして、結合パートナーは結合競合剤と有意に結合しない、該工程と;
結合パートナー/医薬複合体を検出し、検出をサンプル中に存在する医薬の量と相関させる工程と
を含む、前記方法。
【請求項4】
抗体は:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29-C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;
(b)C10-C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1-C26環のC19-C27から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;
(c)C22においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(d)C24においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(e)C32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(f)C24およびC32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(g)C32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;ならびに
(h)C26においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原およびC32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原の混合物に対して惹起されたモノクローナル抗体
のうちの少なくとも1つである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
結合競合剤は式IVによって表される化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
結合競合剤は式Vによって表される化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
結合競合剤は式VIによって表される化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
結合競合剤は式VIIによって表される化合物である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
マクロフィリン結合医薬、ここでマクロフィリン結合医薬は、エベロリムス、シロリムスおよびタクロリムスのうちの少なくとも1つである、の血中レベルをモニタリングするためのキットであって:
マクロフィリン結合医薬をそのイムノフィリン複合体から移動させる結合競合剤であって:
(a)式IVによって表される化合物:
【化7】
(b)式Vによって表される化合物:
【化8】
(c)式VIによって表される化合物:
【化9】
または
(d)式VIIによって表される化合物:
【化10】
のうちの少なくとも1つである、該結合競合剤と;
結合パートナー/医薬複合体を検出するための医薬と結合するマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナーであって、特異的結合パートナーはマクロフィリン結合医薬に特異的な抗体であって、そして、結合パートナーは結合競合剤と有意に結合しない、該結合パートナーと
を含む、前記キット。
【請求項10】
抗体は:
(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29-C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;
(b)C10-C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1-C26環のC19-C27から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;
(c)C22においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(d)C24においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(e)C32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(f)C24およびC32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;
(g)C32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;ならびに
(h)C26においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原およびC32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原の混合物に対して惹起されたモノクローナル抗体
のうちの少なくとも1つである、請求項に記載のキット。
【請求項11】
結合競合剤は式IVによって表される化合物である、請求項に記載のキット。
【請求項12】
結合競合剤は式Vによって表される化合物である、請求項に記載のキット。
【請求項13】
結合競合剤は式VIによって表される化合物である、請求項に記載のキット。
【請求項14】
結合競合剤は式VIIによって表される化合物である、請求項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照/参照の記述による組み入れ
対象の出願は、2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/754,913号に対し米国特許法第119条(e)の下で利益を主張する。上記参照の特許出願の全体の内容は参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0002】
連邦政府の支援による研究または開発に関する声明
適用なし。
【0003】
本開示は、薬物に対する特異的結合タンパク質を含有するサンプル中のある特定の種類の薬物のレベルを決定する際に使用するための化合物、キットおよびアッセイ手順に関する。本開示は、薬物をそれらの内因性結合タンパク質から移動させる(displace)のに有用なアナログ化合物、およびそれを含むキット、ならびに医薬アッセイにおける結合競合剤(binding competitor)としてのそれらのディスプレーサー(displacer)を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
身体は自己と非自己を区別するために複雑な免疫応答系に依存する。時には、不十分な応答を増強するため、または過剰応答を抑制するために身体の免疫系を制御しなければならない。例えば、腎臓、心臓、心肺、骨髄および肝臓のような臓器をヒトに移植すると、身体は、多くの場合、同種移植片拒絶と称されるプロセスによって移植組織を拒絶する。
【0005】
同種移植片拒絶を治療する際に、免疫系は薬物療法によって制御された様式で頻繁に抑制される。免疫抑制薬は、非自己組織の同種移植片拒絶を阻止するのに役立つように移植レシピエントに注意深く投与される治療薬である。免疫抑制薬には、(限定されないが):グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、抗体、イムノフィリンに作用する薬物、および(限定されないが)インターフェロン、アヘン剤INF結合タンパク質、ミコフェノレート、FTY720などのような他の薬物が含まれる。免疫抑制薬の特定のクラスはイムノフィリンに作用するそれらの薬物を含む。イムノフィリンは、生理学的意義を有する高親和性の特異的結合タンパク質の例である。イムノフィリンの2つの異なるファミリーが現在知られている:シクロフィリンおよびマクロフィリン(限定されないが、FKBP12のようなFK結合タンパク質またはFKBP)であり、その後者は、例えば(限定する目的ではないが)、タクロリムス、シロリムスまたはエベロリムスに特異的に結合する。
【0006】
移植患者における臓器拒絶を阻止するために2つの最も一般的に投与される免疫抑制薬はシクロスポリン(CSA)およびタクロリムス(FK506)である。米国および他の国々において免疫抑制剤としての使用が見出される別の薬物はラパマイシンとしても知られているシロリムスである。シロリムスの誘導体も免疫抑制剤として有用である;このような誘導体には、例えば(限定する目的ではないが)、エベロリムスなどが含まれる。
【0007】
FK506としても知られているタクロリムスは、免疫抑制活性を有し、細菌ストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No 9993の発酵産物から単離される、環状のポリ-N-メチル化ウンデカペプチドである。FK506の構造は以下の式Iに示される。
【0008】
【化1】
【0009】
タクロリムスは、多くの場合、免疫系を抑制することによって同種臓器移植における移植片拒絶を低減させるために、他の免疫抑制薬と共に一般的に使用される。タクロリムスは狭い治療濃度域を有するので、最適な効能のために血中薬物濃度をモニタリングすることが重要である。タクロリムス薬物モニタリングのために、単一抗体を利用する競合イムノアッセイが商業的に利用可能であり、競合フォーマットより高い分析感度および特異性ならびに広いダイナミックレンジを提供するはずであるサンドイッチイムノアッセイが記載されている(非特許文献1;および特許文献1)。
【0010】
ラパマイシンとしても知られているシロリムスは、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生されるマクロライド抗生物質であり、例えば、臓器移植拒絶および自己免疫疾患の治療および予防に使用するための、特に免疫抑制剤として、様々な適用において薬学的に有用であることが見出されている。シロリムス(ラパマイシン)の構造は以下の式IIに示される。
【0011】
【化2】
【0012】
しかしながら、シロリムスは、より高い投薬量で副作用を示し、それはいくらか可変的なバイオアベイラビリティを有する。したがって、ラパマイシンで治療されている患者におけるラパマイシンの血中レベルをモニタリングすることは、薬理学的活性のために十分な最低レベルを維持し、あらゆる副作用の過度のリスクを回避するように投薬量を調節することができるようにするために非常に望ましい。ラパマイシンアッセイは、最近、特許文献2;特許文献3;および特許文献4に記載されている。
【0013】
SDZ-RAD、RADおよびCERTICAN(登録商標)(Novartis)としても知られているエベロリムス[40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン]は、シロリムスを改善しようとしてNovartisによって開発された新規なマクロライド免疫抑制剤である(非特許文献2)。エベロリムスは、シロリムスより、高い安定性および有機溶媒中での向上した溶解度、ならびに副作用の少ない良好な薬物動態を有する。エベロリムスの構造は以下の式IIIに示される。
【0014】
【化3】
【0015】
しかしながら、タクロリムスおよびシロリムスと同様にエベロリムスでの治療薬物モニタリング(TDM)について同様の必要性が存在する。エベロリムスについてのイムノアッセイは、例えば、特許文献5に開示されている。
【0016】
本明細書で上記のように、これらの免疫抑制薬に関連する副作用は、患者に存在する薬物のレベルを注意深く制御することによって、部分的に制御することができる。最小限の毒性で最大限の免疫抑制を確保するための投与レジメンを最適化するために、生体サンプル中の免疫抑制薬および関連する薬物の濃度の治療モニタリングが必要とされる。免疫抑制薬は有効性の高い免疫抑制薬剤であるが、有効用量範囲が、多くの場合、狭く、過剰投薬により重篤な副作用を生じる可能性があるので、それらの使用は注意深く管理しなければならない。他方で、免疫抑制剤の投薬量が少なすぎると、組織拒絶につながる可能性がある。免疫抑制薬の分布および代謝は患者間で大きく異なる可能性があり、有害反応の広範な範囲および重症度のために、薬物レベルの正確なモニタリングが不可欠である。
【0017】
しかしながら、生体サンプル中に内因的に存在するイムノフィリンの結合がアッセイを干渉することを考慮すると、イムノフィリン結合薬物の治療薬物モニタリング(TDM)は特に困難である。この干渉を克服しようと試みるために利用されてきた1つの方法は、薬物をその内因性結合タンパク質から移動させることによって「ディスプレーサー」として作用する物質を加えることである。特に、タクロリムス、シロリムスおよびエベロリムスは非常に密接に関連しており、これらの薬物のうちの1つを使用して、別の薬物をその内因性結合タンパク質から移動させることが試みられている。例えば、特許文献6は、別のISDを移動させるための類似の化学構造を有するこれらの免疫抑制薬(ISD)の使用(すなわち、タクロリムスを移動させるためのシロリムスの使用、およびその逆もまた同様)を開示している。しかしながら、このアプローチは、試薬キャリーオーバーの可能性のためにランダムアクセス自動イムノアッセイシステムに適合できない;すなわち、タクロリムスイムノアッセイにおいてタクロリムスを移動させるためのシロリムスの使用は、(限定されないが)シロリムスイムノアッセイのような他のアッセイの質を低下させる場合がある。
【0018】
特許文献7は、FK506をその内因性結合タンパク質から移動させるための複数のFK506(タクロリムス)誘導体の使用を開示している。しかしながら、これらの化合物
は、親薬物およびアッセイのために開発された新たな抗体に対して様々な程度の交差反応性を示した。例えば、特許文献7に開示されているFKエステルは、新たなタクロリムスアッセイ(特許文献1)において使用される1E2抗体クローンによって認識される。その理由のために、1E2抗体クローンを利用する新たなタクロリムスアッセイは、ディスプレーサーとしてシロリムスを使用しなければならないが;上記のように、ディスプレーサーとしてシロリムスを使用することは試薬キャリーオーバーおよび他のアッセイ(シロリムスアッセイなど)の質の低下のリスクを冒す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第8,586,322号
【文献】米国特許第6,635,745号
【文献】米国特許第8,039,599号
【文献】米国特許第8,039,600号
【文献】米国特許第7,223,553号
【文献】米国特許第6,187,547号
【文献】米国特許第7,186,518号
【非特許文献】
【0020】
【文献】Weiら、Clinical Chemistry (2014) 60(4):621~630
【文献】Nashan,B.、Transplantation Proceedings (2001) 33:3215~3230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、従来技術の不都合な点および欠点を克服する、生体サンプル内のマクロフィリン結合医薬についてのアッセイに使用するための新規かつ改善された結合競合剤が、当該技術分野で必要とされている。このような組成物、ならびにそれを含有するキットおよびそれを使用する方法を、本開示は対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本特許または出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公報のコピーは、要求および必要な料金の支払いにより米国特許商標庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】当該技術分野で公知であり、本開示に従って構築された種々のディスプレーサーの不在および存在下で実行されたエベロリムスアッセイの標準曲線をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な言語および結果によって本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において以下の説明に記載される構成の詳細および構成要素の配列に限定されないことは理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であるか、または種々の手法で実践もしくは実行することができる。したがって、本明細書に使用される言語は、可能な限り最も広い範囲および意味を与えることを意図し;実施形態は包括的ではなく、例示的であることを意味する。また、本明細書に利用される表現および用語は、説明の目的のためであり、限定とみなされるべきではないことは理解されるべきである。
【0025】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野において周知であり、本明細書全体を通して引用され、論じられている種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実行される。本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬化学と関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。標準的な技術が化学合成および化学分析のために使用される。
【0026】
本明細書において述べられている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分に参照されている全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個々の特許または刊行物が参照によって組み入れることを具体的かつ個別に示している場合と同じ程度までそれらの全体を参照によって明示的に本明細書に組み入れる。
【0027】
本明細書に開示される組成物、キットおよび/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製され、実施される。組成物、キットおよび/または方法は特定の実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに、組成物、キットおよび/または方法に対して、ならびに本明細書に記載される方法の工程または一連の工程において変更を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかである全てのこのような同様の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の趣旨、範囲および概念内であるとみなされる。
【0028】
本開示に従って利用される場合、別段に示さない限り、以下の用語は以下の意味を有すると理解されるべきである:
【0029】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ(one)」を意味することがあるが、それはまた、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味と一致する。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その」という用語は、文脈が明確に別段を示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「化合物」に対する言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、またはより多い数の化合物を指すことがある。「複数」という用語は、「2つまたはそれ以上」を指す。
【0030】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1つおよび限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む1つより多い任意の量を含むと理解される。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100または1000またはそれ以上にまで及ぶことがある;さらに、より高い限界値も満足のいく結果をもたらす可能性があるため、100/1000の量は限定的と考えられるべきではない。さらに、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組合せを含むと理解される。序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つまたはそれ以上の項目を区別する目的のためのみであり、例えば、任意の順列もしくは順序または1つの項目の別の項目に対する重要性あるいは添加の任意の順序を意味することを意図するものではない。
【0031】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明示的に示されている場合を除きまたは選択肢が相互に排他的である場合を除き、包括的な「および/または」を意味するために使用される。例えば、条件「AまたはB」は、以下のいずれかによって満たされる:Aは真であり(または存在する)、かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)、かつBは真である(または存在する)、およびAとBは両方とも真である(または存在する)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「一部の実施形態」、「1つの例」、「例えば」または「ある例」に対するいずれかの言及は、実施形態に関連して記載される特定の要素、機能、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、明細書の種々の場所における「一部の実施形態では」または「1つの例」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、1つまたはそれ以上の実施形態または例に対する言及は、全て、特許請求の範囲を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0033】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が組成物/装置/デバイスについての誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、限定する目的ではないが、「約」という用語が利用される場合、指定された値は、特定された値から、プラスマイナス20パーセント、または15パーセント、または12パーセント、または11パーセント、または10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセント、または1パーセントだけ変化することがあり、このような変動は、開示された方法を実行するのに適切であり、当業者によって理解されている通りである。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」のような有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」のような含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」のような含有する(containing)の任意の形)という単語は、包括的であるかまたは無制限であり、追加の、引用されていない要素または方法工程を排除しない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「またはそれらの組合せ」という用語は、この用語に先立って列挙された項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は:A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも、含むことを意図する。この例に引き続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、典型的には、いかなる組合せにおいても項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0036】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象もしくは状況が完全に起きるか、またはそれに引き続いて記載される事象もしくは状況が大いにもしくはかなりの程度起きることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連する場合、「実質的に」という用語は、それに引き続いて記載される事象または状
況が少なくとも80%の確率で、または少なくとも85%の確率で、または少なくとも90%の確率で、または少なくとも95%の確率で起きることを意味する。「実質的に隣接している」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに近接している範囲内であるが、互いに100%隣接していないこと、または2つの項目のうちの1つの一部が他の項目に100%隣接していないが、他の項目に近接している範囲内であることを意味することがある。
【0037】
「アナログ」および「誘導体」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、所与の化合物と同じ基本的な炭素骨格およびその構造における炭素官能基を含むが、それらに対する1つまたはそれ以上の置換も含有することができる物質を指す。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、化合物における少なくとも1つの置換基の、残基Rとの置き換えを指すと理解される。ある特定の非限定的な実施形態では、Rは、H、ヒドロキシル、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物、以下:場合により置換されている、直鎖、分枝または環状アルキル、および直鎖、分枝または環状アルケニルのうちの1つから選択されるC1-C4化合物を含んでもよく、ここで、場合による置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキルのうちの1つまたはそれ以上から選択され、それらの各々は場合により置換されており、ここで、場合による置換基は、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニルアルキル、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、場合により置換されているヘテロシクロアルケニルアルキル、アリールシクロアルキル、およびアリールヘテロシクロアルキル、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、-NH(アルキル)、-NH(シクロアルキル)、カルボキシ、および-C(O)-アルキルのうちの1つまたはそれ以上から選択される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、本開示に従って利用することができる任意の種類の生体サンプルを含むことが理解される。利用することができる流体生体サンプルの例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、それらの組合せなどが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「特異的結合パートナー」という用語は、マクロフィリン結合医薬を検出する目的のためにマクロフィリン結合医薬と特異的に会合することができる任意の分子を指すことが理解される。例えば、限定する目的ではないが、特異的結合パートナーは、抗体、受容体、リガンド、アプタマー、分子インプリントポリマー(すなわち、無機マトリクス)、またはそれらの任意の組合せおよび/もしくは誘導体、ならびにマクロフィリン結合医薬と特異的に結合することができる任意の他の分子であってもよい。
【0040】
「抗体」という用語は、最も広い意味で本明細書において使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、検体結合の所望の生物活性を示す抗体断片およびそのコンジュゲート(限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、一本鎖抗体、ならびにインタクトな抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片およびそのコンジュゲートなど)、抗体置換タンパク質またはペプチド(すなわち、操作された結合タンパク質/ペプチド)、ならびにそれらの組合せまたは誘導体を指す。
抗体は、任意の種類またはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)もしくはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であってもよい。
【0041】
本開示のある特定の非限定的な実施形態は、以下の式IV、V、VIおよびVIIに表される化合物のうちの少なくとも1つを含む組成物を対象とする:
【0042】
【化4】
【化5】
【0043】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、組成物は少なくとも式IVによって表される化合物を含む。
【0044】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、組成物は少なくとも式Vによって表される化合物を含む。
【0045】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、組成物は少なくとも式VIによって表される化合物を含む。
【0046】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、組成物は少なくとも式VIIによって表される化合物を含む。
【0047】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、上記化合物の各々は、マクロフィリン結合医薬についてのアッセイに使用するための結合競合剤として定義される。例えば、限定する目的ではないが、マクロフィリン結合医薬は、エベロリムス、シロリムス(ラパマイシ
ン)、およびタクロリムス(FK506)のうちの少なくとも1つであってもよい。ある特定の非限定的な実施形態では、化合物は、アッセイに利用されるマクロフィリン結合医薬に対する特異的結合パートナーと実質的に交差反応しない。
【0048】
また、本開示のある特定の非限定的な実施形態は、サンプル中のマクロフィリン結合医薬の存在を決定する方法を対象とする。この方法において、本明細書に開示されるか、またはそうでなければ企図される結合競合剤のいずれかがサンプルに加えられて、マクロフィリン結合医薬をそのイムノフィリン複合体から移動させる。次いで、医薬と結合するが、結合競合剤と有意に結合しないマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナーが加えられて、結合パートナー/医薬複合体を形成する。次いで結合パートナー/医薬複合体が検出され、その検出はサンプルに存在する医薬の量と相関する。
【0049】
マクロフィリン結合医薬の存在についてのアッセイが望まれる任意のサンプルは、本開示の方法に従ったサンプルとして利用することができる。サンプルの非限定的な例には、限定されないが、全血またはそのいずれかの部分(すなわち、血漿または血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸膜液、鼻咽頭液、およびそれらの組合せのような生体サンプルが含まれる。
【0050】
ある特定の非限定的な実施形態では、結合競合剤は式IV~VIIのうちの少なくとも1つによって表されると定義される。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式IVによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式Vによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式VIによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式VIIによって表される化合物である。
【0051】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬は、エベロリムス、シロリムス(ラパマイシン)およびタクロリムス(FK506)のうちの少なくとも1つである。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はエベロリムスである。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はシロリムス(ラパマイシン)である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はタクロリムス(FK506)である。
【0052】
当該技術分野で公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図されるマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナーの任意の種類は、本開示に従って利用することができる。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、アッセイに利用される特異的結合パートナーは、マクロフィリン結合医薬に特異的な抗体である。方法に従って利用することができる抗体の非限定的な例は、当該技術分野で公知であり、米国特許第8,586,322号に開示されているタクロリムスに対する抗体;米国特許第6,635,745号;同第8,039,599号;および同第8,039,600号;ならびに米国特許出願公開第2017/0362305号に開示されているラパマイシン(シロリムス)に対する抗体;ならびに米国特許第7,223,553号および米国特許出願公開第2005/0208607号に開示されているエベロリムスに対する抗体が含まれる。
【0053】
特定の(しかし非限定的な)例では、アッセイに利用される抗体は、(限定されないが)米国特許第8,586,322号において以前に開示されている14H04もしくは1E2モノクローナル抗体クローン、または14H04と同じ免疫原に対して惹起された1H06クローンのような、タクロリムスに対するモノクローナル抗体である。‘322特許はこれらの2つの抗体クローンについて以下の定義を提供する:(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29-C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本
質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体(クローン14H04);(b)C10-C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1-C26環のC19-C27から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体(クローン1E2);(c)C22においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体(クローン14H04および1H06);(d)C24においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体(クローン1E2);(e)C32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体(クローン1E2);ならびに(f)C24およびC32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体(クローン1E2)。
【0054】
1H06クローンは、22位においてオキシムを介してカップリングしているFKを含有する免疫原に対して惹起され、C-22がカップリングしたアナログを必要とする。このモノクローナル抗体は、良好な交差反応パターンを有し、KD<3*10-9のLOCIアッセイにおいて確立された親和性を有する。
【0055】
別の特定の(しかし非限定的な)実施形態では、アッセイに利用される抗体はシロリムスに対するモノクローナル抗体である。その非限定的な例には、免疫原がC-32位にあるIgG2aKクローン;ならびにC26およびC32混合物を含む免疫原に対して惹起されたクローン3H9(IgG1λ)および165(IgG2aK)が含まれる。したがって、本開示に従って利用することができるモノクローナル抗体のさらなる非限定的な例には、(g)C32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;ならびに(h)C26においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原およびC32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原の混合物に対して惹起されたモノクローナル抗体が含まれる。
【0056】
本開示のある特定の非限定的な実施形態はまた、サンプル中のマクロフィリン結合医薬の存在を検出するためのキットを対象とする。キットは、本明細書に開示されるか、またはそうでなければ企図されるマクロフィリン結合医薬をそのイムノフィリン複合体から移動させる結合競合剤のいずれかの1つまたはそれ以上を含む。
【0057】
ある特定の非限定的な実施形態では、結合競合剤は式IV~VIIのうちの少なくとも1つによって表されると定義される。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式IVによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式Vによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式VIによって表される化合物である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、結合競合剤は式VIIによって表される化合物である。
【0058】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬は、エベロリムス、シロリムス(ラパマイシン)およびタクロリムス(FK506)のうちの少なくとも1つである。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はエベロリムスである。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はシロリムス(ラパマイシン)である。特定の(しかし非限定的な)実施形態では、マクロフィリン結合医薬はタクロリムス(FK506)である。
【0059】
特定の(しかし非限定的な)実施形態では、キットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される、結合パートナー/医薬複合体を検出するための医薬と結合するマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナー(ここで結合パートナーは結合競合剤と有意に結合しない)のいずれかの1つまたはそれ以上をさらに含んでもよい。
【0060】
当該技術分野で公知であるか、またはそうでなければ本明細書に企図されるマクロフィリン結合医薬特異的結合パートナーのいずれかの種類は本開示に従って利用することができる。特に(しかし非限定的な)実施形態では、アッセイに利用される特異的結合パートナーはマクロフィリン結合医薬に特異的な抗体である。方法に従って利用することができる抗体の非限定的な例は、当該技術分野において公知であり、米国特許第8,586,322号に開示されているタクロリムスに対する抗体;米国特許第6,635,745号;同第8,039,599号;および同第8,039,600号;ならびに米国特許出願公開第2017/0362305号に開示されているラパマイシン(シロリムス)に対する抗体;米国特許第7,223,553号および米国特許出願公開第2005/0208607号に開示されているエベロリムスに対する抗体が含まれる。
【0061】
特定の(しかし非限定的な)例では、アッセイに利用される抗体は、(限定されないが)米国特許第8,586,322号において以前に開示されている14H04もしくは1E2モノクローナル抗体クローン、または14H04と同じ免疫原に対して惹起された1H06クローンのような、タクロリムスに対するモノクローナル抗体である。本開示に従って利用することができる抗体の特定の非限定的な例には:(a)メトキシおよびヒドロキシル置換基を含むC29-C34環ならびにメトキシ置換基を含むC15から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;(b)C10-C14環のメトキシおよびC22ケト酸素を含むC1-C26環のC19-C27から本質的になるタクロリムスの一部と特異的に結合するモノクローナル抗体;(c)C22においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;(d)C24においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;(e)C32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;(f)C24およびC32においてタクロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;(g)C32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原に対して惹起されたモノクローナル抗体;ならびに(h)C26においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原およびC32においてシロリムスと連結している免疫原性担体を含む免疫原の混合物に対して惹起されたモノクローナル抗体が含まれる。
【0062】
組成物/キット/方法のアッセイ成分/試薬は、それらが本開示に従って機能することができる任意の形態で提供することができる。例えば、限定する目的ではないが、試薬の各々は、液体形態で提供でき、キット内にバルクおよび/または単一アリコート形態で配置することができる。あるいは、特定の(しかし非限定的な)実施形態では、試薬の1つまたはそれ以上は単一アリコートの凍結乾燥試薬の形態でキットに配置することができる。マイクロ流体デバイスにおける乾燥試薬の使用は米国特許第9,244,085号(Samproni)に詳細に記載されており、それらの全体の内容は参照によって本明細書に明示的に組み入れる。
【0063】
本明細書で上記に詳細に記載されるアッセイ成分/試薬に加えて、キットは、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される特定のアッセイのいずれかを行うための他の試薬をさらに含有してもよい。これらのさらなる試薬の性質は特定のアッセイフォーマットに依存し、その識別は十分に当業者の技能の範囲内であり;したがって、そのさらなる説明は必要とはみなされない。また、キットに存在する成分/試薬の各々は別個の容器/区画内にあってもよいか、または種々の成分/試薬を、成分/試薬の交差反応性および安定性に応じて、1つもしくはそれ以上の容器/区画内に合わせてもよい。さらに、キットは、成分/試薬が配置されるマイクロ流体デバイスを含んでもよい。
【0064】
キットにおける種々の成分/試薬の相対量は、アッセイ方法の間に発生する必要がある反応を実質的に最適化し、さらにアッセイの感度を実質的に最適化するための成分/試薬の濃度を提供するために広範に変化させてもよい。適切な状況下で、キットにおける成分/試薬の1つまたはそれ以上は、凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供することができ、キットは乾燥試薬を溶解するための賦形剤をさらに含んでもよく;このように、本開示に従って方法またはアッセイを実行するための適切な濃度を有する試薬溶液をこれらの成分から得ることができる。陽性および/または陰性対照もまた、キットと共に含んでもよい。さらに、キットは、キットの使用方法を説明している書面による説明書のセットをさらに含んでもよい。この性質のキットを、本明細書に記載されるか、またはそうでなければ企図される方法のいずれかに使用することができる。
【実施例
【0065】
実施例を本明細書で以下に提供する。しかしながら、本開示は、その適用において、本明細書に開示される特定の実験、結果、および実験手順に限定されないことは理解されるべきである。むしろ、実施例は種々の実施形態の1つとして単に提供され、包括的ではなく、例示的であることを意図する。
【実施例1】
【0066】
この実施例では、エベロリムスアッセイを、本明細書で以下に詳細に記載されるように、種々のディスプレーサーの不在下および存在下で行った。
【0067】
エベロリムス(EVRO)アッセイ法である自動DIMENSION(登録商標)アッセイシステム(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)は、遊離およびエベロリムスが結合した抗体-酵素コンジュゲートを、磁性粒子を使用して分離する、イムノアッセイ技術を使用する。このアッセイのために使用されるアッセイ抗体はマウスモノクローナル抗体(細胞系:155-M1)であった。方法に固有のFLEX(登録商標)試薬カートリッジ(Siemens
Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)を使用してこのアッセイを実行した。FLEX(登録商標)試薬カートリッジは、前処理試薬である、抗体-β-ガラクトシダーゼコンジュゲート、二酸化クロム粒子に固定化したエベロリムスアナログ、クロロフェノールレッドβ-d-ガラクトピラノシド(CPRG)基質、および錠剤を水和させるための希釈剤を含有した。EVROアッセイを実行するために、分析する全血サンプルおよびEVRO FLEX(登録商標)試薬カートリッジを含有するサンプルカップ(またはSSC)をDIMENSION(登録商標)システムに適切に置いた。DIMENSION(登録商標)システムは、洗浄剤およびディスプレーサー(以前に記載されるFK506またはFK506アナログ)を含有する前処理試薬の存在下で全血サンプルを混合し、溶解した。この試薬は、サンプル中のエベロリムスを内因性結合タンパク質(FKBPなどのようなイムノフィリン)から移動させるように作用するディスプレーサーを含有した。次いで溶解したサンプルを抗体酵素コンジュゲートと混合した。サンプルに存在するエベロリムスはエベロリムス抗体と結合した。エベロリムスアナログでコーティングした磁性粒子を加えて、遊離(非結合)抗体-酵素コンジュゲートに結合させた。次いで反応混合物を磁性により分離させた。分離後、エベロリムス-抗体-酵素複合体を含有する上清をキュベットに移し、基質である、クロロフェノールレッドβ-d-ガラクトピラノシド(CPRG)と混合した。β-ガラクトシダーゼはCPRGの加水分解を触媒して、最大で577nmにおいて光を吸収するクロロフェノールレッド(CPR)を生成する。CPRの形成に起因する577nmにおける吸光度の変化は、患者のサンプル中のエベロリムスの量と正比例し、重クロム酸(577nm、700nm)レート技術を使用して測定した。
【0068】
任意のディスプレーサーの不在下および以下のディスプレーサーの存在下でアッセイを
行った:タクロリムス(式Iによって表されるFK506)、FK506エステル(米国特許第7,186,518号に開示されている)、FK506 C24スクシネート(式VIIによって表される)、還元型FK506(式IVによって表される)、FK506
22-オキシム-32-イソシアナトアセテートエチルエステル(22-oxime-32-isocyanatoacetatethylエステル)(式VIによって表される)、およびFK506オキシム(式Vによって表される)。ディスプレーサーを用いたおよび用いていないエベロリムスアッセイについての標準曲線を、図1および表1に示すように作成した。
【0069】
【表1】
【0070】
図1および表1から理解することができるように、ディスプレーサーの各々は、アッセイした薬物(エベロリムス)をその内因性結合タンパク質から移動させるための結合競合剤として機能した。このように、結合タンパク質によって以前にブロックされていた遊離した薬物分子はここで、アッセイ抗体によってアクセス可能になり、それによってアッセイにおいて検出されるエベロリムスシグナルの量が増加した。
【0071】
ここで、本開示のディスプレーサーは結合競合剤として有効であることが示され、ディスプレーサーをまた、本開示のISDアッセイに利用した抗体とのいずれかの交差反応性について試験した。表2は、エベロリムスアッセイ抗体(155-M1)を用いて本開示の種々のディスプレーサーについて検出した交差反応性を示し、一方、表3は、タクロリムスアッセイ抗体(1E2クローン)を用いて本開示の種々のディスプレーサーについて検出した交差反応性を示す。
【0072】
表2に示すように、エベロリムスアッセイにおいて使用した抗体とのタクロリムスアナログの各々の交差反応性を試験して、エベロリムスに対する抗体間で実質的に交差反応性が存在しないことを確認し、親薬物(タクロリムス、FK506)だけでなく、そのアナログの各々もまた、エベロリムスアッセイにおいてディスプレーサーとして利用した。親薬物に対してなされた構造変化が、エベロリムスに「十分に近い」アナログが、エベロリムスアッセイ抗体と交差反応しないことを確実にすることが不可欠である。表2に見ることができるように、エベロリムスアッセイ抗体とタクロリムス(FK506)との間の交差反応性は実質的に存在せず、また、エベロリムスアッセイ抗体と、試験したFK506アナログの各々との間の交差反応性も実質的に存在しない。
【0073】
【表2】
【0074】
次に、エベロリムスアッセイに使用したアナログの各々の交差反応性を、タクロリムスアッセイに使用した抗体を用いて試験した(表3)。エベロリムスアッセイからタクロリムスアッセイへの試薬キャリーオーバーを最小限にする試みを行うことができるが、自動機器をエベロリムスおよびタクロリムス(またはシロリムス)アッセイの両方で同時に実施することができる。したがって、エベロリムスアッセイに存在する大量のディスプレーサー(タクロリムスアナログ)の使用に起因して、ディスプレーサーはタクロリムスアッセイに持ち込まれる可能性があり、これにより、交差反応を観察した場合、タクロリムスアッセイにおいて誤って上昇したシグナルが引き起こされる。したがって、タクロリムスアナログ(例えば、24-スクシネートFK506)が、タクロリムスアッセイ抗体とのより低い交差反応性を示した場合、エベロリムスアッセイにおけるディスプレーサーとしてタクロリムスアナログを使用すると、タクロリムスアッセイにおいて試薬キャリーオーバーおよび誤って上昇したシグナルのリスクを低下させることができる。
【0075】
表3に見ることができるように、‘518特許に開示されているアナログは、タクロリムスアッセイも実行する(エベロリムスアッセイと同時であるか、連続であるかにかかわらず)自動システムにおいてその使用を阻止するのに十分なレベルのタクロリムスアッセイ抗体との交差反応性を有する。対照的に、式IV、V、VIおよびVIIのアナログは全て非常に低い交差反応性を有していたので、両方のアッセイを実行する自動アッセイシステムでの使用に非常に良く適している。
【0076】
【表3】
【0077】
エベロリムスアッセイにおいてエベロリムス薬物を移動させるためのFKアナログの能力は、それらのFKBP(マクロフィリン)結合の機能である。したがって、ディスプレーサーを加えた後の曲線サイズはそれらのFKBP結合の能力を示す:曲線サイズが大きいほど、結合は良好になる。
【0078】
特定の機構または理論に束縛されることを望まないが、いくつかの化合物が、Van Duyneら(J.Am.Chem.Soc.(1991)113(19):7433~7434;およびJ.Mol.Biol.(1993)229:105~124)の教示に基づいて他の化合物より大きな曲線サイズを示した理由を説明することが可能になり得る。C32位において修飾されているFK506アナログも生成することができたが、このFK506アナログはほとんど結合を示さず(またはシグナル増強対ディスプレーサーなし;結果は示さず)、このことは、それらの参考文献に記載されている原子構造と一致している。したがって、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、曲線サイズをFK506分子における修飾部位に関連付けることが可能であり得ることに留意されたい。
【0079】
このように、本開示によれば、本明細書で上記に示した目的および利点を完全に満たす、組成物、キット、およびデバイス、ならびにそれらを製造し、使用する方法が提供される。本開示は、本明細書で上記に示した具体的な図面、実験、結果、および言語と併せて記載してきたが、多くの代替、修飾、および変更が当業者には明らかであることは自明である。したがって、本開示の趣旨および広い範囲内である全てのこのような代替、修飾、および変更を包含することを意図する。
図1