(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ハウジング及びアトマイザー
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20250109BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
(21)【出願番号】P 2023133972
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】202211179432.4
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517419906
【氏名又は名称】深▲せん▼麦克韋爾科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN SMOORE TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】16#, Dongcai Industrial Park, Gushu Town, Xixiang Street, Baoan District, Shenzhen, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】羅 永杰
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第215075516(CN,U)
【文献】中国実用新案第212678362(CN,U)
【文献】中国実用新案第213881761(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/40
A24F 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトマイザーに適用されるハウジングであって、
基板と、前記基板の第1の面に位置する第1の断熱層と、前記基板の第2の面に位置する第2の断熱層と、を含み、
前記ハウジングの内部には、霧化アセンブリを収容するための収容キャビティが形成され、
前記第1の面は、前記収容キャビティに向いており、
前記第2の面は、前記収容キャビティとは反対側に向いており、
前記ハウジングの厚さ方向における前記第1の断熱層の厚さは、前記第2の断熱層の厚さよりも大きい
ことを特徴とするハウジング。
【請求項2】
前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層は、いずれも前記基板の酸化によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記第1の断熱層の空隙率は、前記第2の断熱層の空隙率よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項4】
前記第1の断熱層の粗さは、前記第2の断熱層の粗さよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項5】
前記第1の断熱層の空隙率は、前記第2の断熱層の空隙率よりも大きく、
前記第1の断熱層の粗さは、前記第2の断熱層の粗さよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項6】
前記第1の断熱層には、均熱層が敷設され、
前記均熱層の熱伝導係数は、前記基板の熱伝導係数よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のハウジング。
【請求項7】
前記均熱層は、前記基板の
前記第1の面とは反対側に向いた前記第1の断熱層の一方側に敷設されることを特徴とする請求項
6に記載のハウジング。
【請求項8】
前記均熱層は、前記ハウジングの軸方向に沿って延在して設けられる
ことを特徴とする請求項
6に記載のハウジング。
【請求項9】
前記均熱層は、黒鉛製の構造又はコーティング層であり、
前記基板は、アルミニウム合金である
ことを特徴とする請求項
6に記載のハウジング。
【請求項10】
霧化アセンブリと請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のハウジングとを備え、
前記霧化アセンブリは、前記ハウジング内に設けられる
ことを特徴とするアトマイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトマイザーの技術分野に関し、特に、ハウジング及びアトマイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
HNB(HEAT NOT BURN,非燃焼加熱)装置は、エアロゾル発生基質を加熱・ベーキングすることにより、ユーザが吸入するためのエアロゾルを生成する装置である。
【0003】
HNB装置は、一般的に、ユーザによって手持ちで使用される。霧化温度は200℃以上に達することができるため、HNB製品はユーザ体験に影響を与えないように断熱を行う必要がある。
【0004】
HNB装置の小型化の傾向に伴い、その内部の断熱空間が限られており、HNB装置の内部の加熱による熱のハウジングの外表面への伝達が加速するため、ハウジングの温度の過度の上昇及び消費電力の増加等の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、従来のHNB装置のハウジングの温度の過度の上昇及び熱が急速に放出することによる消費電力の増加などの問題に対して、ハウジング及びアトマイザーを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アトマイザーに適用されるハウジングであって、前記ハウジングは、基板と、前記基板の第1の面に位置する第1の断熱層と、前記基板の第2の面に位置する第2の断熱層と、含み、前記ハウジングの厚さ方向において、前記第1の断熱層の厚さと前記第2の断熱層の厚さとが異なる。
【0007】
このように、基板内の第2の面の構造の厚さの違いを実現し、断熱効果を向上させ、アトマイザーの内部の熱が基板の第1の面から第2の面に伝達されることによるハウジングの温度の過度の上昇を回避するだけでなく、第2の断熱層を設けることにより、第2の面を再び熱から遮断することができ、第2の面に伝達される熱が直接空気に伝達されることによるエネルギー損失を回避することができる。
【0008】
一実施例において、前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層は、いずれも前記基板の酸化によって形成される。より多くの基板を酸化させて第1の断熱層又は第2の断熱層を形成することにより、ハウジングの厚さを増加させることなく、断熱効果を向上させることができる。
【0009】
一実施例において、第2の断熱層の厚さは、第1の断熱層の厚さよりも小さい。このように、断熱効果を強化すると同時に、アトマイザーの外観の効果に影響を与えない。
【0010】
一実施例において、第1の断熱層の空隙率は、第2の断熱層の空隙率よりも大きい。
【0011】
一実施例において、前記第1の断熱層の空隙率は、前記第2の断熱層の空隙率よりも大きく、前記第1の断熱層の粗さは、前記第2の断熱層の粗さよりも大きい。これにより、断熱効果を二重に強化する。
【0012】
一実施例において、前記第1の断熱層には、均熱層が敷設され、前記均熱層の熱伝導係数は、前記基板の熱伝導係数よりも大きい。
【0013】
一実施例において、前記均熱層は、前記基板の第1の面とは反対側に向いた前記第1の断熱層の一方側に敷設される。
【0014】
一実施例において、前記均熱層は、前記ハウジングの軸方向に沿って延在して設けられる。
【0015】
均熱層はアトマイザーの内部の霧化アセンブリに直接対向しており、霧化アセンブリによって発生した熱が、熱伝導係数がより高い均熱層に伝達されて、急速に均熱されて温度が下がるため、大量の熱がハウジングの一箇所から集中して伝達されるのを回避する。
【0016】
一実施例において、前記均熱層は、黒鉛製の構造又はコーティング層であり、前記基板は、アルミニウム合金である。
【0017】
本発明の別の態様は、霧化アセンブリと上記の任意の実施例のハウジングとを備えるアトマイザーを提供し、霧化アセンブリはハウジング内に設けられる。
【0018】
上記のハウジングによれば、基板の第1の面に位置する第1の断熱層の厚さとアトマイザーのハウジングの第2の面に位置する第2の断熱層の厚さとを異なるように設けることによって、基板の内表面と外表面の構造の厚さの違いを実現し、断熱効果を向上させ、アトマイザーの内部の熱が基板の内表面から外表面に伝達されることによるハウジングの温度の過度の上昇を回避するとともに、第1の断熱層及び第2の断熱層によって伝熱速度を低減し、消費電力の損失を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例によって提供されるアトマイザーの立体構造模式図である。
【
図2】本発明の一実施例によって提供されるアトマイザーのハウジングの局所構造模式図である。
【
図3】本発明の一実施例によって提供されるアトマイザーの局所断面の平面構造模式図である。
【
図4】本発明の一実施例によって提供されるアトマイザーの局所断面の立体構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明確に理解するために、以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、本発明を十分に理解するために、多くの具体的な細部を説明する。しかしながら、本発明は、ここで説明される実施形態とは異なる多くの他の形態で実施することができ、当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく類似な改善を行うことができる。したがって、本発明は以下に開示される具体的な実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明の説明において、理解すべきものとして、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などが指示する方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本発明を説明しやすく且つ説明を簡略化するためのものだけであり、言及される装置又は素子は特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作しなければならないことを意味又は示唆するものではなく、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0022】
なお、用語「第1」、「第2」は説明の目的だけであり、相対的な重要性を意味又は示唆し、又は説明された技術的特徴の数を示唆すると理解されるものではない。従って、「第1」、「第2」で限定された特徴は、少なくとも1つの該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、特に明示的かつ具体的に制限されない限り、「複数」の意味は少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどである。
【0023】
本発明において、特に明確に規定及び限定されない限り、「取り付け」、「連結」、「接続」、「固定」などの用語は、広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、着脱可能な接続であってもよいし、一体になってもよい。また、機械的接続であってもよいし、電気的に接続であってもよい。また、特に明確に限定されない限り、直接接続されてもよいし、中間媒体を介して間接的に接続されてもよいし、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の互相作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて本発明における上記の用語の具体的な意味を理解することができる。
【0024】
本発明において、特に明確に規定及び限定されない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上」又は「下」にあることは、第1及び第2の特徴が直接に接触してもよいし、第1及び第2の特徴が中間媒体を介して間接的に接触してもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上又は斜め上にあるか、あるいは第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも大きいことを示すだけであってもよい。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の直下又は斜め下にあるか、あるいは第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも小さいことを示すだけであってもよい。
【0025】
説明すべきものとして、一方の素子が他方の素子に「固定される」又は「設けられる」と呼ばれる場合、他方の素子に直接存在してもよく、又は介在する要素が存在してもよい。一方の素子が他方の素子に「接続される」と考えられる場合、他方の素子に直接接続されてもよく、又は介在する要素が存在してもよい。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「左」、「右」及び類似の表現は説明の目的だけであり、唯一の実施形態を示すものではない。
【0026】
エアロゾルは、固体又は液体の小さな粒子が気体媒体中に分散・浮遊して形成されるコロイド分散体であり、エアロゾルは呼吸器系から人体に吸収されるので、ユーザに新しい代替吸収手段を提供する。例えば、ハーブ又はペースト状のエアロゾル発生基質をベーキング・加熱することでエアロゾルを生成する電子霧化装置は、様々な分野に適用され、従来の電子霧化装置の形態及び吸収手段の代わりに、ユーザに吸入可能なエアロゾルを供給する。
【0027】
背景技術で述べたように、近年、HNB(HEAT NOT BURN,非燃焼加熱)装置はますます多くの消費者に愛用されている。HNB装置は、エアロゾル発生基質を加熱してベーキングすることにより、ユーザが吸入するためのエアロゾルを生成する装置であり、現在市版されているHNB装置は、一般的にアトマイザーと電気素子とを備え、アトマイザーのハウジングの内部には発熱体が設けられ、発熱体が発熱してエアロゾル発生基質を霧化して吸入可能なエアロゾルを形成する。
【0028】
エアロゾル生成装置の加熱霧化温度は一般的により高く、熱は通常加熱領域に集中するため、局所的な温度の集中をもたらし、HNB装置の体積が相対的に大きいと、空気層、真空層、及び断熱層等の様々な断熱手段を追加することにより、HNB装置のハウジングの外表面の温度を安全な規格以下に低下させることができる。
【0029】
しかしながら、人々の操作性と携帯性に対するより高い要求に従って、HNB装置は徐々に小型化に発展し、その内部の断熱空間が限られており、その内部で発生された熱のハウジングの外表面への伝達が加速するため、ハウジングの温度の過度の上昇及び消費電力の増加等の問題がある。
【0030】
上記の問題を解決するために、本発明は、アトマイザー100と電気素子とを備える電子霧化装置を提供する。電子霧化装置は、粉砕状、顆粒状、粉末状の形態の固体エアロゾル発生基質を霧化するために用いられる。アトマイザー100は、電気素子によって提供される電気エネルギーの作用によりエアロゾル発生基質を加熱して霧化する。
【0031】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施例は、電子霧化装置のアトマイザー100を提供し、アトマイザー100は、霧化アセンブリとハウジング10とを備え、ハウジング10の内部には、収容キャビティ14が形成され、霧化アセンブリは、収容キャビティ14内に設けられてエアロゾル発生基質を霧化してエアロゾルを形成する。
【0032】
電子霧化装置は、HNB装置であってもよい。HNB装置では、霧化アセンブリは発熱体を含み、エアロゾル発生基質は、収容キャビティ14内に収容されて発熱体によって加熱又はベーキングされ、それにより気化してエアロゾルを生成する。
【0033】
具体的に、
図2~
図4を参照すると、ハウジング10は、基板11と、第1の断熱層12と、第2の断熱層13と、を備え、第1の断熱層12は基板11の第1の面111に位置し、第2の断熱層13はハウジング10の第2の面112に位置し、ハウジング10の厚さ方向において、第1の断熱層12の厚さは第2の断熱層13の厚さと異なる。
【0034】
更に、基板11の第1の面111は、アトマイザー100の内部、即ち収容キャビティ14に向いており、これに応じて、第2の面112は、アトマイザー100の外部に向いており、即ち収容キャビティ14とは反対側に向いている。
【0035】
このようにすると、基板11の第1の面111に位置する第1の断熱層12の厚さとアトマイザー100のハウジング10の第2の面112に位置する第2の断熱層13の厚さとを異なるように設けることによって、基板11内の第2の面112の構造の厚さの違いを実現し、断熱効果を向上させ、アトマイザー100の内部の熱が基板11の第1の面111から第2の面112に伝達されることによるハウジング10の温度の過度の上昇を回避するだけでなく、第2の断熱層13を設けることにより、第2の面112を再び熱から遮断することができ、第2の面112に伝達された熱が空気に直接伝達されることによるエネルギー損失を回避することができる。
【0036】
他の実施例において、基板11の第2の面112も、アトマイザー100の内部、即ち収容キャビティ14に向いていてもよく、これに応じて、第1の面111は、アトマイザー100の外部に向いており、即ち、収容キャビティ14とは反対側に向いている。この場合、第2の断熱層13によって、アトマイザー100の内部の熱が基板11の第2の面112から第1の面111に伝達されることによるハウジング10の温度の過度の上昇を回避することができ、第1の断熱層12を設けることにより、第1の面111を再び熱から遮断することができ、第1の面111に伝達された熱が空気に直接伝達されることによるエネルギー損失を回避することができる。
【0037】
更に、第1の断熱層12及び第2の断熱層13が十分な断熱能力を提供できるため、断熱空間に対する要求が相対的に低下し、それによりアトマイザー100のハウジング10の構造をよりコンパクトに設計することができ、製品の小型化に有利であり、操作性及び携帯性がより高くなる。ユーザがアトマイザー100を使用する過程で、製品のハウジングの温度の過度の上昇によって使用感に影響を与えることがない。
【0038】
理解されるように、基板11内の第2の面112の構造の厚さの違いによって、最終的に形成されたハウジング10の厚さが厚すぎないことを前提に、断熱効果を確保することができる。
【0039】
具体的に、第1の断熱層12及び第2の断熱層13は、基板11が形成された後にその第1の面111及び第2の面112に敷設されてもよいし、基板11自体が酸化して形成されてもよく、即ち、基板11の第1の面111が酸素と反応して第1の断熱層12を生成し、基板11の第2の面112が酸素と反応して第2の断熱層13を生成する。
【0040】
このようにすると、第1の断熱層12及び第2の断熱層13の厚さの違いについては、基板11の第1の面111及び第2の面112を異なる程度に酸化させて、第1の断熱層12又は第2の断熱層13の片面肉厚化を実現し、ハウジング10の内側及び外側の第1の断熱層12及び第2の断熱層13の厚さの違いを達成することができる。また、片面肉厚化によってより多くの基板11を酸化させて第1の断熱層12又は第2の断熱層13を形成し、断熱効果を向上させることができる。
【0041】
具体的に、基板11の内側及び外側の厚さの違いについては、第1の断熱層12の厚さが第2の断熱層13の厚さよりも大きくてもよいし、第1の断熱層12の厚さが第2の断熱層13の厚さよりも小さくてもよい。
【0042】
第1の断熱層12の厚さが第2の断熱層13の厚さよりも大きい例を挙げると、基板11の第2の面112に1層の保護塗料を塗布した後、基板11の第1の面111のみに対して1回目の陽極酸化処理を行い、その後、第2の面112上の保護塗料を除去してから全体的に2回目の陽極酸化を行うことができる。この時、2回の陽極酸化を行うことにより、第1の面111上により厚い第1の断熱層12を形成し、1回の陽極酸化を行うことにより、第2の面112上により薄い第2の断熱層13を形成することができる。第1の断熱層12の厚さが第2の断熱層13の厚さよりも小さい場合には、上記の方法に従って逆の操作を行うことも可能であり、ここでは繰り返して説明しない。
【0043】
具体的に、基板11は、円柱、角柱、又は他の形状であってもよく、その内部が囲んで収容キャビティ14を形成し、収容キャビティ14の一端にはユーザが吸入するための開口部を形成し、他端には吸気口を形成して吸気によって収容キャビティ14の内部のエアロゾルを持ち去る。収容キャビティ14の内部には、電気素子、ミントヘッド等のアトマイザー100の他の従来の構造が設けられてもよく、ここでは繰り返して説明しない。
【0044】
いくつかの実施例において、選択的に、第2の断熱層13の厚さは、第1の断熱層12の厚さよりも小さく、即ち、第1の断熱層12の厚さは第2の断熱層13の厚さよりも大きい。
【0045】
作製過程において、上記の方式を採用するほか、基板11の第1の面111及び第2の面112に対して全体的に1回の陽極酸化を行った後、第2の面112を保護した後に2回目の陽極酸化を行ってもよい。或いは、基板11の第1の面111及び第2の面112に対して全体的に1回の陽極酸化を行った後、第2の面112上の第2の断熱層13の過剰な厚さを機械的研磨等の方法で除去して、より薄い第2の断熱層13を形成し、より厚い第1の断熱層12を維持してもよい。
【0046】
基板11の第2の面112は、外観、色、強度等の要求に制限され、その厚さの増加は多くの他の構造の変動をもたらすが、基板11の第1の面111には断熱効果のみを考慮することができる。このようにすると、基板11の第1の面111により厚い第1の断熱層12を形成することにより、作製が簡単であり、断熱効果を向上させる必要がある場合、第1の断熱層12の厚さをできるだけ高くすればよく、断熱効果を向上させると同時に第2の面112に対する外観の耐摩耗等の要求を満たし、消費電力を極力減少し、ハウジング10の温度を下げることができる。
【0047】
第1の断熱層12の厚さの処理については、第2の断熱層13の厚さを変えずに、陽極酸化処理により第1の断熱層12の厚さを増加して、より多くの基板11を第1の断熱層12に変換してもよい。陽極酸化処理は、酸化プロセスの電流密度の増加、酸化時間の増加、より腐食性の高い酸又は混酸電解質の使用、又は硬質酸化等の手段であってもよく、ここでは限定されない。
【0048】
これに応じて、第2の断熱層13の厚さの範囲は、一般的に5um~20umであり、第1の断熱層12の厚さの範囲は、一般的に5um~150umであり、好ましくは、50um~100umである。この範囲内では、ハウジング10の断熱効果だけでなく、ハウジング10の構造の小型化を確保することができる。
【0049】
いくつかの実施例において、選択的に、第1の断熱層12の空隙率は、第2の断熱層13の空隙率よりも大きい。
【0050】
空隙率とは、バルク材料における空隙の体積と材料の自然状態での総体積との割合を百分率で表したものである。第1の断熱層12を多孔質構造とし、第2の断熱層13中の孔をできる限り閉鎖し、複数の孔を有する第1の断熱層12は、アトマイザー100の内部の発熱体との接触面積を減少させることができ、第1の断熱層12の内部の空気の割合を向上させ、断熱効果を大幅に向上させることができる。
【0051】
更に、第1の断熱層12中の孔の孔径が小さいほど、孔密度が高いほど、断熱効果が高くなる。
【0052】
第1の断熱層12が多孔質構造であり、第2の断熱層13が少孔質構造である差異化設計の実現方法については、基板11の第1の面111及び第2の面112に同時に陽極酸化を行った後、第1の面111に1層の保護塗料を塗布し、第2の面112のみに対して着色して孔を閉鎖する処理を行ってもよい。この時、第2の断熱層13の内部の孔構造が大体閉鎖されて少孔質構造を形成し、その後、第1の面111の保護塗料を除去すると、第1の断熱層12の内部は複数の孔構造を有する。
【0053】
いくつかの実施例において、選択的に、第1の断熱層12の粗さは、第2の断熱層13の粗さよりも大きい。
【0054】
第1の断熱層12の粗さを大きくすると、第1の断熱層12とアトマイザー100の内部の霧化アセンブリとの接触面積を減少することができ、断熱効果を向上させることができる。第2の面112の第2の断熱層13には、外観の要求に応じて、粗さを最大限に大きくして、断熱効果を向上させることができる。
【0055】
更に、粗さの増加は、機械的研磨又は化学的エッチング等の方法で実現することができ、第1の面111に位置する第1の断熱層12の粗さを大きくすれば、断熱効果を向上させることができるとともに、ハウジング10の外観に対する影響を回避することができる。
【0056】
実際の適用において、第1の断熱層12の空隙率をより大きくすると同時に、その粗さを大きくして、二重に断熱効果を強化するととともに、アトマイザー100の外観効果に影響を与えない。他の実施例において、実際の要求に応じて設計することができ、ここでは限定されない。
【0057】
他の実施例において、厳密な外観の要求を考慮しない場合、第1の断熱層12と一致して断熱効果を向上させるように、第2の断熱層13の粗さ及び空隙率を同じ割合で大きくすることができる。
【0058】
いくつかの実施例において、選択的に、アトマイザー100は、均熱層15を更に含み、均熱層15は第1の断熱層12上に敷設され、且つ、均熱層15の熱伝導係数は基板11の熱伝導係数よりも大きい。
【0059】
均熱層15は、アトマイザー100の内部の霧化アセンブリに直接対向しており、霧化アセンブリによって発生した熱は、熱伝導係数がより高い均熱層15に伝達された後、急速に均熱されて温度が下がるため、大量の熱がハウジング10の一箇所から集中して伝達されるのを回避する。
【0060】
理解されるように、均熱層15は、一定の面積を有し、その上に伝達された熱は均熱層15の各箇所に急速に分散されて均熱を実現する。
【0061】
第1の断熱層12の表面に均熱層15を敷設する手段は多くあるが、好ましくは、均熱層15は第1の面111とは反対側に向いた第1の断熱層12の一方側に敷設される。この場合、均熱層15が収容キャビティ14に直接対向しており、収容キャビティ14内で発生した熱はまず均熱層15に接触して均熱された後、第1の断熱層12によって断熱され、その後に基板11に伝達されて、第2の断熱層13によって再度断熱される。
【0062】
このように、収容キャビティ14内で発生した熱が均熱されてから断熱を行うことにより、断熱効果がより良くなり、ある箇所での熱の集中を回避する。
【0063】
一実施例において、均熱層15は、ハウジング10の軸方向に沿って延在して設けられ、熱は均熱層15に伝達された後にハウジング10の軸方向に沿って急速に均熱され得る。
【0064】
具体的に、ハウジング10の軸方向において、均熱層15の長さは、基板11の長さ以下であり、好ましくは、基板11の長さに占める割合は、1/4~1であってもよく、更に好ましくは、2/3~1であり、それにより軸方向の均熱効果を確保できる。
【0065】
一実施例において、均熱層15は、黒鉛製の構造又はコーティング層であり、基板11は、アルミニウム合金である。基板11上に黒鉛コーティング層を塗布するか、又は黒鉛シート構造を貼り付けて均熱層15を形成する。黒鉛の熱伝導係数はより大きく、均熱能力がより良く、熱発生部位で発生した熱を急速に均熱することができ、それにより熱が1つの部位からハウジング10の第2の面112に集中して伝達されることによる温度の過度の上昇及び熱損失等の問題を回避することができる。
【0066】
本発明の実施例は、上記の特徴を有する、上記のアトマイザー100中のハウジング10を更に提供する。ハウジング10は、基材の第1の面111及び第2の面112で異なる程度に酸化して、第1の断熱層12又は第2の断熱層13の片面肉厚化を実現し、ハウジング10の内側及び外側の第1の断熱層12及び第2の断熱層13の厚さの違いを達成し、ハウジング10の断熱効果を向上させる。
【0067】
本発明の実施例は、上記の任意の実施例によって提供されるアトマイザー100を含む電子霧化装置を更に提供する。電子霧化装置は、上記の任意の実施例によって提供されるアトマイザー100のすべての技術的特徴を有するため、上記のアトマイザー100と同じ技術的効果を有する。
【0068】
一実施例において、電子霧化装置は、電気素子を更に含み、電気素子は、電気エネルギーを提供するために用いられ、例えば、アトマイザー100の内部の霧化アセンブリに電気エネルギーを提供することによって、エアロゾル発生基質を霧化する。
【0069】
このように、本発明によって提供されるハウジング10及びアトマイザー100は、以下の利点を有する。
(1)基板11の第1の面111の第1の断熱層12と第2の面112の第2の断熱層13との厚さの違いによって、断熱効果を向上させ、アトマイザー100の内部の熱が基板11の第1の面111から第2の面112に伝達されるのを回避する。
(2)より多くの基板11を酸化させて第1の断熱層12又は第2の断熱層13を形成し、ハウジング10の厚さを増加せずに、断熱効果を向上させる。
(3)第2の断熱層13の厚さは、第1の断熱層12の厚さよりも小さいため、ハウジング10の内部により厚い第1の断熱層12を形成することにより、作製が簡単であり、第1の断熱層12厚さをできるだけ向上させることで、断熱効果を向上させると同時に第2の面112に対する外観の耐摩耗等の要求を満たし、消費電力を極力減少し、ハウジング10の温度を下げることができる。
(4)第1の断熱層12の空隙率は、第2の断熱層13の空隙率よりも大きいため、アトマイザー100の内部の霧化アセンブリとの接触面積を減少し、第1の断熱層12の内部の空気の割合を向上させ、断熱効果を大幅に向上させることができる。
(5)第1の断熱層12の粗さは、第2の断熱層13の粗さよりも大きいため、第1の断熱層12の粗さを大きくすることによって、第1の断熱層12と、アトマイザー100の内部、例えば霧化アセンブリと、の接触面積を減少することができ、それにより断熱効果を向上させ、外観効果を確保することができる。
【0070】
以上説明した実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについては説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載される範囲内であると考えられるべきである。
【0071】
上記の実施例は、本願のいくつかの実施形態を示しているに過ぎず、その叙述は具体的かつ詳細であるが、本願の発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。当業者であれば、本願の思想から逸脱することなく、本願の範囲に含まれるいくつかの変形および改善を行うことができることに留意されたい。したがって、本願の特許の範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0072】
100 アトマイザー
10 ハウジング
11 基板
111 第1の面
112 第2の面
12 第1の断熱層
13 第2の断熱層
14 収容キャビティ
15 均熱層