(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ノンロック係合における部分的に自動ロック式のねじ接続部
(51)【国際特許分類】
E21B 17/042 20060101AFI20250109BHJP
F16L 15/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E21B17/042
F16L15/04 A
(21)【出願番号】P 2023526127
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079122
(87)【国際公開番号】W WO2022090034
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-10-12
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ウェスリー オット
(72)【発明者】
【氏名】ローガン ファン ゴルプ
(72)【発明者】
【氏名】スコット グレンジャー
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530328(JP,A)
【文献】国際公開第2014/187873(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0186899(US,A1)
【文献】国際公開第2016/108141(WO,A1)
【文献】特表2016-522877(JP,A)
【文献】国際公開第2018/231769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
F16L 13/00-15/08
E02D 5/22-5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチューブ部品(1)及び第2のチューブ部品(2)を備えるねじ接続部であって、
前記第1のチューブ部品(1)は、第1のパイプ本体(3)と雄部材(4)とを備え、前記雄部材(4)は、前記第1のパイプ本体(3)の先端に配置され、前記雄部材(4)の外周面は、少なくとも1つの雄ねじ領域(9)を備え、前記少なくとも1つの雄ねじ領域(9)は、前記第1のパイプ本体(3)と雄端子面(7)との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸(X)に沿って、配置され、
前記第2のチューブ部品(2)は、第2のパイプ本体(5)と雌部材(6)とを備え、前記雌部材(6)は、前記第2のパイプ本体(5)の先端に配置され、前記雌部材(6)の内周面は、少なくとも1つの雌ねじ領域(10)を備え、前記少なくとも1つの雌ねじ領域(10)は、前記第2のパイプ本体(5)と雌端子面(8)との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸(X)に沿って配置され、
前記雄ねじ領域(9)は、第1の雄ねじ部(16)及び第2の雄ねじ部(17)を有し、前記第2の雄ねじ部(17)は、前記第1の雄ねじ部(16)と前記第1のパイプ本体(3)との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸(X)に沿って配置され、前記第1の雄ねじ部(16)のねじ谷底部の幅(WR
p1)は、前記雄端子面(7)から前記第1のパイプ本体(3)に向かう方向に減少し、前記第1の雄ねじ部(16)のねじ頂部の幅は、前記雄端子面(7)から前記第1のパイプ本体(3)に向かう方向に増大し、
前記第2の雄ねじ部(17)のねじ谷底部の幅(WR
p2)及びねじ頂部の幅は一定であり、前記第2の雄ねじ部(17)の前記ねじ谷底部の幅(WR
p2)は、前記雄ねじ領域(9)の最小のねじ谷底部の幅を呈し、前記第2の雄ねじ部(17)の前記ねじ頂部の幅は、前記雄ねじ領域(9)の最大のねじ頂部の幅を呈し、前記雄端子面(7)に最も近い雄ねじ山(18)は前記雄ねじ領域(9)の最大のねじ谷底部の幅値及び最小のねじ頂部の幅値を呈し、
前記雌ねじ領域(10)は、第1の雌ねじ部(19)及び第2の雌ねじ部(20)を備え、前記第2の雌ねじ部(20)は、前記第1の雌ねじ部(19)と前記第2のパイプ本体(5)との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸(X)に沿って配置され、前記第1の雌ねじ部(19)のねじ谷底部の幅(WR
b1)は、前記雌端子面(8)から前記第2のパイプ本体(5)に向かう方向に減少し、前記第1の雌ねじ部(19)のねじ頂部の幅は、前記雌端子面(8)から前記第2のパイプ本体(5)に向かう方向に増大し、
前記第2の雌ねじ部(20)のねじ谷底部の幅(WR
b2)及びねじ頂部の幅は一定であり、前記第2の雌ねじ部(20)の前記ねじ谷底部の幅(WR
b2)は、前記雌ねじ領域(10)の最小のねじ谷底部の幅を呈し、前記第2の雌ねじ部(20)の前記ねじ頂部の幅は、前記雌ねじ領域(10)の最大のねじ頂部の幅を呈し、前記雌端子面(8)に最も近い雌ねじ山は前記雌ねじ領域(10)の最大のねじ谷底部の幅値及び最小のねじ頂部の幅値を呈し、
前記第1の雄ねじ部(16)のねじ頂部の幅及びねじ谷底部の幅が前記第1の雌ねじ部(19)のねじ谷底部の幅及びねじ頂部の幅とそれぞれ等しくなり噛み合い係合するロック領域(21)を前記ねじ接続部に提供し、
前記第1の雄ねじ部(16)のねじ頂部の幅及びねじ谷底部の幅が前記第2の雌ねじ部(20)のねじ谷底部の幅及びねじ頂部の幅とそれぞれ係合する第1のノンロック領域(22)を前記ねじ接続部に提供し、
前記第2の雄ねじ部(17)のねじ頂部の幅及びねじ谷底部の幅が前記第1の雌ねじ部(19)のねじ谷底部の幅及びねじ頂部の幅とそれぞれ係合する第2のノンロック領域(23)を前記ねじ接続部に提供する、ねじ接続部。
【請求項2】
前記第1の雄ねじ部(16)は、前記雄ねじ領域(9)内の複数のねじ山において、少なくとも90%が一定の半径方向の高さを有する完全なねじ山(26)を備え、前記第1の雌ねじ部(19)は、前記雌ねじ領域(10)内の複数のねじ山において、少なくとも90%が前記完全なねじ山(26)を備える、請求項1に記載のねじ接続部。
【請求項3】
構成された接続部の前記ロック領域(21)は、前記ロック領域(21)の長さに、前記第1のノンロック領域(22)及び前記第2のノンロック領域(23)の両方の長さを加えた全体の構成された長さの少なくとも55%を表す、請求項1または2に記載のねじ接続部。
【請求項4】
前記ロック領域(21)は第1のノンロック領域(22)と第2のノンロック領域(23)との間に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項5】
前記雄ねじ領域(9)は、前記雄ねじ領域(9)上の単一の雄のスタブ側逃げ面の変化する位置で前記雄のスタブ側逃げ面(SFL_p)のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雌ねじ領域(10)は、前記雌ねじ領域(10)上の単一の雌のスタブ側逃げ面の変化する位置で前記雌のスタブ側逃げ面(SFL_b)のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雄のスタブ側逃げ面の変化する位置及び前記雌のスタブ側逃げ面の変化する位置は、ロック領域(21)が前記雄のスタブ側逃げ面の変化する位置と前記雌のスタブ側逃げ面の変化する位置との間に規定されるように、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸(X)に沿った異なる位置であり、
雄の負荷側逃げ面(LFL_p)のリードが前記雄ねじ領域(9)に沿って一定のままであり、雌の負荷側逃げ面(LFL_b)のリードが前記雌ねじ領域(10)に沿って一定のままである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項6】
前記雄ねじ領域(9)は、前記雄ねじ領域(9)上の単一の雄の負荷側逃げ面の変化する位置で前記雄の負荷側逃げ面(LFL_p)のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雌ねじ領域(10)は、前記雌ねじ領域(10)上の単一の雌の負荷側逃げ面の変化する位置で前記雌の負荷側逃げ面(LFL_b)のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雄の負荷側逃げ面の変化する位置及び前記雌の負荷側逃げ面の変化する位置は、ロック領域(21)が前記雄の負荷側逃げ面の変化する位置と前記雌の負荷側逃げ面の変化する位置との間に規定されるように、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸(X)に沿った異なる位置であり、
雄のスタブ側逃げ面(SFL_p)のリードが前記雄ねじ領域(9)に沿って一定のままであり、雌のスタブ側逃げ面(SFL_b)のリードが前記雌ねじ領域(10)に沿って一定のままである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項7】
ロック領域(21)におけるウェッジ比は0.2mm未満である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項8】
前記雄ねじ領域(9)及び前記雌ねじ領域(10)は、前記ねじ接続部の長手方向の軸(X)とテーパー角(θ)をなすテーパー母線を有し、tanθに対応するテーパーは、1/6~1/18の範囲内にあり
、前記雄ねじ領域(9)及び前記雌ねじ領域(10)の前記雄ねじ山11及び前記雌ねじ山11の谷底部(13)及び頂部(15)は、前記ロック領域(21)の前記テーパー母線と平行である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項9】
中間ロック位置(M)が、前記ロック領域(21)の軸方向半分の長さにおいて、前記中
間ロック位置(M)において、ピッチ線直径TDavgが以下の通りとなるように特定されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のねじ接続部。
(ODmin + IDmin) ÷ 2 < TDavg < (ODmax + IDmax) ÷ 2
ここで、ODmin は最小パイプ本体(3、5)外径、
ldmin は最小雄部材(4)内径、
ODmax は最大パイプ本体(3、5)外径、及び
Idmax は最大雄部材(4)内径である。
【請求項10】
中間ロック位置(M)が、前記ロック領域(21)の軸方向半分の長さにおいて、前記中
間ロック位置(M)から前記ロック領域(21)の長手方向の側部(24,25)までの長さLnlが以下の通りとなるように特定されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のねじ接続部。
Lnl ≧(TDavg - BCCSD - 2×THpitch)÷taper
ここで、THpitchは、ピッチ線からロック領域(21)の谷底部(15)又は頂部(13)までの半径方向距離であり、
BCCSDはボックスの臨界断面直径であり、
taperは、ねじ領域のテーパーである。
【請求項11】
前記雄ねじ領域(9)の最大谷底部幅値(WRpmax)は、前記雄ねじ領域(9)の最小谷底部幅値(WRpmin)の2倍未満に設定され、及び/又は、雌ねじ領域(10)の最大雌谷底部幅値(WRbmax)は、雌ねじ領域(10)の最小谷底部幅値(WRbmin)の2倍未満に設定される、
WRbmax ≦2×WRbmin
及び/又は
WRpmax ≦2×Wrpmin、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項12】
前記第2のパイプ本体(5)に最も近い雌ねじ山の谷底部(15)は、前記第1のパイプ本体(3)に最も近い雄ねじ山(18)の谷底部(15)と同じ谷底幅を有する、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項13】
前記第2の雄ねじ部(17)及び/又は前記第2の雌ねじ部(20)のそれぞれのねじ山(11)は、不完全なねじ山高さ及び/又は消失するねじ歯を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項14】
雌ねじ領域(10)は雌端子面(8)から始まり、雄ねじ領域(9)は雄端子面(7)から始まる、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項15】
前記雄ねじ領域(9)のねじ山(11)および前記雌ねじ領域(10)のねじ山は、ダブテール(蟻継ぎ)プロファイルを有し、α及びβは、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸に対して垂直な荷重及びそれぞれのスタブ逃げ角であり、α及びβは、共に5°未満である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項16】
雄ねじ山(11)の頂部(13)及び雌ねじ山(11)の頂部(13)が対応する前記ロック領域(21)の谷底部(15)と干渉しており、谷底部/頂部干渉での直径干渉は、前記パイプ本体(3、5)の公称外径の0.0020 ~0.0030倍になるようにする、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項17】
前記ねじ接続部は、いずれの先端の接触面がなく、雄端子面(7)は、雌部材(6)から軸方向に離れ、それぞれ、雌端子面(8)は、雄部材(4)から軸方向に離れている、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項18】
雄部材及び雌部材(4、6)の両方共、前記ロック領域(21)の横にある任意の追加の密封がない、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項19】
前記第1のチューブ部品(1)及び前記第2のチューブ部品(2)は一体であり、前記第1のチューブ部品(1)及び前記第2のチューブ部品(2)の各々は、雄部材(4)及び雌部材を備える、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【請求項20】
前記雄ねじ領域(9)及び前記雌ねじ領域(10)は、単一のスタートのねじでできている、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のねじ接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンロック係合における部分的に自動ロック式のねじ接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による接続部、パイプの外径及び内径とフラッシュにしたまま、エンドユーザは、より大きい生成ケーシングでドリルを行い、ドリル効率を高めることができ、高い張力及び圧縮荷重及び高いトルクに耐えることができる。また、フラッシュ接続部は、生成率を増加させるエンドユーザに利用可能な面積を増加させることになる。また、この接続部は、傾斜井戸及び横井戸のような複雑な構成を有する井戸においてさえも、ケーシングによるドリルのような特殊な用途に使用することができる。そこで、本発明は、引張り及び圧縮、内外圧、曲げ等の複合荷重の厳しい試験プログラムに耐えることができるケーシング用ねじ継ぎ手を提案するものである。
【0003】
本発明の設計は、中間ケーシングに特に適し、トラッキングに使用されるケーシングに特に適している。
【0004】
ねじ接続部は、通常、第1のチューブ部品及び第2のチューブ部品を備え、一方には、第1のパイプ本体の端部に雄部材が設けられ、他方には、第2のパイプ本体の端部に雌部材が設けられ、これらの部材の各々には、ねじ領域が設けられている。
【0005】
公知の方法では、雄ねじ領域と雌ねじ領域との作成によって雄部材および雌部材を接続することが従来の方法であり、アセンブリは接続部を画定する。
【0006】
ところで、一体接続型の場合、第1及び第2のパイプ本体は共に鋼管であり、互いに隣接する鋼管同士はカップリングを用いずに直接接続されている。そのような一体接続は、カップリングを使用する接続よりも井戸内に必要なスペースが少ない。
【0007】
しかし、隣接する鋼管は外径が同じで肉厚が同じであり、これらのネジ領域をそれらに提供するために、両管端部の端部形成が必要である。換言すれば、ねじ領域は、パイプの肉厚に形成され、したがって、限られた厚さを有する。このことは、作成されたねじ領域におけるねじ接続部の外径がパイプ本体の外径とまったく同じままである、特にフラッシュ接続部について、接続効率が低くなる結果となる。好ましくは、ねじ接続部の外径は、フラッシュ接続部においてパイプ本体の公称外径の101%より小さいままであるものとする。
【0008】
このように構成されたチューブ部品のストリングもまた、井戸のケーシングでドリルを行う場合、回転され得る。このため、ストリングを井戸内に進入させるのに十分である回転トルクを伝達することができ、また、それを破損しないようにするために、部品を高トルクと一緒に作成しなければならない。ストリングに回転運動を与えてパイプを進行させると、回転運動は、最大の直径を持つパイプ本体から、最も深い場所にあるストリングの小さい方へと次第に伝達される。
【0009】
従来の製品では、パイプ本体の自由端に設けられた接表面を締め付けて、構成位置において対応する肩表面に接することにより、構成トルクに到達するのが一般的である。しかし、接表面の範囲はチューブの厚さの分数であるため、特に小径のパイプ本体に関する場合、構成トルクが大きすぎると、接表面の臨界塑性しきい値に急速に達する。
【0010】
また、それらの接続部の主要な問題は、井戸内の適切な位置に配置した場合、十分な密封性能を提供することである。生成プロセスは、ケーシング内の内圧の強い変動を伴う流体に接続部をさらすことになる。したがって、一体接続部は、トルク容量と密封性能の両方を同時に最適化しなければならず、一方、液体密封性のニーズに対処しなければならない。
【0011】
米国文献US-7661728は、十分なトルク容量を有する一体ねじ接続部を教示しており、この接続部は、いかなる接表面も有していないが、低テーパーねじ付きの2つのねじ領域と、自動ロック構成になっていることとに依存している。スタブ側逃げ面のスタブ側リードは負荷側逃げ面の負荷側リードと等しくないため、両方のねじ領域は、雄型端部のねじ山(ピン部材とも呼ばれる)と、一定のリードであるがねじ幅が可変である雌型端部のねじ山(ボックス部材とも呼ばれる)とを備える。その種のねじ山は、ウェッジねじ山と言われている。その文献によれば、密封性能は、液体及び気体の両方に対する高品質密封性能に到達するために、金属-金属密封が設けられている。雄部材および雌部材はそれぞれ、ねじ領域が自動ロック構成に続いて協働するときに、互いに締め付け接触(また、干渉との接触と呼ばれる)で協働する密封面を備える。
【0012】
従来、雄型端部のねじ山(または歯)は、ピンねじ頂部、ピンねじ谷底部、ピン負荷側逃げ面、およびピンスタブ側逃げ面を有する。雌型端部のねじ山(または歯)には、ボックスねじ頂部、ボックスねじ谷底部、ボックス負荷側逃げ面、およびボックススタブ側逃げ面を有する。ロック用ウェッジねじ山をもっと正確にすれば、ねじ山(または歯)の頂部の幅は、雄型軸端部または雌型軸端部からの距離が増大するにつれて、雄型端部または雌型端部のねじ山について、それぞれ次第に増大する。
【0013】
ノンロックウェッジねじ山は、負荷側逃げ面リードLFLとスタブ側逃げ面リードSFLが同じである負荷側逃げ面リードLFLとスタブ側逃げ面リードSFLを有することを特徴とする。ロックウェッジねじ山は、負荷側逃げ面リードLFLとスタブ側逃げ面リードSFLとの間の非ゼロ差であるウェッジ比を有することを特徴とし、負荷側逃げ面リードLFLは、スタブ側逃げ面リードSFLより厳密に大きいか厳密に小さいかのいずれかであり、それぞれのリード値との差が計算される。従来のロックウェッジねじ山では、ピン部材とボックス部材の両方のLFLは等しく、それぞれ、ピン部材とボックス部材の両方のSFLも等しくなる。したがって、ウェッジ比は、ピン部材および箱部材の両方に対して同じである。構成時には、雄ねじ山と雌ねじ山(または歯)は、ロック点に対応する予測可能な位置で互いにロックすることによって仕上げる。
【0014】
より正確に言えば、スタブ側逃げ面および雄ネジ山(または歯)の負荷側逃げ面の両方が、それぞれスタブ側逃げ面および対応する雌ネジ山(または歯)の負荷側逃げ面に対してロックすると、自己ロックネジに対してロックが発生する。このため、構成トルクは、それらの逃げ面間の接触面のすべて、すなわち、従来技術の接触面によって構成されるものより非常に大きい全表面積によって占められている。
【0015】
文献US-7661728に開示される接続部は、密封部分用の空間を必要とし、高張力及び圧縮効率と高トルク性能を提供しない。
【0016】
ねじ領域に利用可能な肉厚が制限される76,2mm (3インチ)と152,4mm (6インチ)の間の特に小さなパイプ本体外径サイズに対して、より高いトルク、より速い作成、製造がより経済的であり、取扱い上の損傷リスクがより少ない、フラッシュ接続部が必要とされている。これらのニーズは、パイプ本体の70%を超える接続効率のニーズと結びついている。
【0017】
このため、特に346mm (13(5/8)インチ)より小さい外径のパイプ本体の場合、井戸の横断面にケーシングを設置する際のストリングの回転による周期的疲労、および、水圧破砕処理からの高い内圧、曲げおよび高温に後にさらされることなどの、例えば、シェールオイル特有の要求事項に対して、そのような張力およびトルク要求に耐えることができる解決手段に対する非常に特定のニーズがある。曲げ条件下でも行われる水密封試験を含む厳しい試験プログラムが実施された。これらのニーズはフラッシュ接続部において特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このため、本発明の課題は、ロックねじが液体に対する密封に十分耐える密封性を提供するが、十分な張力とトルク容量を提供するように、自動ロックねじを有する準高品質のフラッシュ接続部を提供することである。上記の解決すべき要件に加えて、ピン部材とボックス部材の両方に、機械加工インサート工具を有するパスの数の点で、合理的な製造コストでこのような接続部が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
より正確には、本発明は、第1のチューブ部品及び第2のチューブ部品を備えるねじ接続部を提供し、
前記第1のチューブ部品は、第1のパイプ本体と雄部材とを備え、前記雄部材は、前記第1のパイプ本体の先端に配置され、前記雄部材の外周面は、少なくとも1つの雄ねじ領域を備え、前記少なくとも1つの雄ねじ領域は、前記第1のパイプ本体と雄端子面との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸に沿って、配置され、
前記第2のチューブ部品は、第2のパイプ本体と雌部材とを備え、前記雌部材は、前記第2のパイプ本体の先端に配置され、前記雌部材の内周面は、少なくとも1つの雌ねじ領域を備え、前記少なくとも1つの雄ねじ領域は、前記第2のパイプ本体と雌端子面との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸に沿って配置され、
前記雄ねじ領域は、第1の雄ねじ部及び第2の雄ねじ部を有し、前記第1の雄ねじ部は、前記第2の雄ねじ部と前記第1のパイプ本体との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸に沿って配置され、前記第1の雄ねじ部のねじ谷底部の幅は、前記雄端子面から前記第1のパイプ本体に向かう方向に減少し、前記第2の雄ねじ部のねじ谷底部の幅は一定であり、前記第2の雄ねじ部の前記ねじ谷底部の幅は、前記雄ねじ領域の最小のねじ谷底部の幅を呈し、前記雄端子面に最も近い雄ねじ山は前記雄ねじ領域の最大のねじ谷底部の幅値を呈し、
前記雌ねじ領域は、第1の雌ねじ部及び第2の雌ねじ部を備え、前記第1の雌ねじ部は、前記第2の雌ねじ部と前記第2のパイプ本体との間の前記ねじ接続部の長手方向の軸に沿って配置され、前記第1の雌ねじ部のねじ谷底部の幅は、前記雌端子面から前記第2のパイプ本体に向かう方向に減少し、前記第2の雌ねじ部のねじ谷底部の幅は一定であり、前記第2の雄ねじ部の前記ねじ谷底部の幅は、前記雌ねじ領域の最小のねじ谷底部の幅を呈し、前記雌端子面に最も近い雌ねじ山は前記雌ねじ領域の最大のねじ谷底部の幅値を呈し、
前記第1の雄ねじ部及び前記第1の雌ねじ部は、前記ねじ接続部にロック領域を提供するために、部分的に自動ロック構成で作られ、前記ねじ接続部はフラッシュ接続部である。
【0020】
上記特徴に従ったねじ接続部は、例えばシェールオイル用途専用のセミプレミアムフラッシュ接続部を提供し、自動ロックねじを有し、その結果、ロックねじは、液体に対してシールするのに十分なシールを提供するが、十分なトルク容量を提供するにも十分なシールを提供する。
【0021】
このような接続は、ピン部材とボックス部材の両方にある加工インサートツールとのパス数の点で、妥当な製造コストで得られる。
【0022】
雄ねじ領域および雌ねじ領域が自動ロック配置で部分的にしか形成されていないロック領域のおかげで、本発明による接続部のためのトルク・チャートは、基本構成特徴、及び、従来技術の接続部の平均トルク窓より広い公差を可能にするので、組立中に追従するために特定の構成トルク・チャートは必要とされない。この利点は、そのタイプの接続を実行するためのコストを下げるために重要である。
【0023】
本発明によるこのような部分的に組み立てられた自動ロック配置を有する接続部の別の利点は、構成トルクがリグのトルク容量で達成可能であり、そして、接続部は、スタブ側逃げ面と負荷側逃げ面の両方が互いに接触しているときには、手締め後に1.5回転で形成されてもよく、本発明による接続部は、スタビングから最終的な構成位置まで5回転未満を必要とする。
【0024】
一実施形態によると、雌部材の外径は、第2のパイプ本体の外径の101%未満である。
【0025】
一実施形態によれば、第1の雄ねじ部のねじ頂部の幅は、雄端子面から第1のパイプ本体に向かう方向に増加し、第2の雄ねじ部のねじ頂部の幅は一定であり、第2の雄ねじ部のねじ頂部の幅は、雄ねじ部の最大頂部幅を示し、雄端末面に最も近い雄ねじは、雄ねじ領域の最小頂部幅値を示す。
【0026】
一実施形態によれば、第1の雌ねじ部のねじ頂部の幅は、雌端子面から第2のパイプ本体に向かう方向に増加し、第2の雌ねじ部のねじ頂部の幅は一定であり、第2の雄ねじ部のねじ頂部の幅は、雌ねじ部の最大頂部幅を示し、雌端子面に最も近い雌ねじは、雌ねじ領域の最小頂部幅値を示す。
【0027】
一実施形態によれば、前記第1の雄ねじ部は、少なくとも90%の完全なねじ山を備える。一実施形態によれば、前記第1の雌ねじ部は、少なくとも90%の完全なねじ山を備える。
【0028】
このような完全なねじ山は、ねじ領域に沿って同じ逃げ面高さを有する。これらの特徴のおかげで、ねじ接続部は、ねじ接続部の良好なベアリング効率を保証するために、ロック領域に十分な完全なねじ山を有する。
【0029】
一実施形態によれば、ロック領域は、完全なねじ山の少なくとも90%を備える。一実施形態によれば、第1の雄ねじ部は、雄ねじ領域の完全なねじ山の少なくとも90%を備える。一実施形態によれば、第1の雌ねじ部は、雌ねじ領域の完全なねじ山の少なくとも90%を備える。
【0030】
構成された状態における接続部のロック領域は、好ましくは、係合した雄ねじ山及び雌ねじ山の全体の構成長さの55%、例えば60%、より多く表してもよい。
【0031】
一実施形態によれば、前記ロック領域は第1のノンロック領域と第2のノンロック領域との間に位置する。
【0032】
第1のノンロック領域では、雄ねじ領域の負荷側逃げ面および/またはスタブ側逃げ面は、ねじ接続部の構成状態において雌ねじ領域の対応する負荷側逃げ面またはスタブ側逃げ面から離れている。第2のノンロック領域では、雌ねじ領域の負荷側逃げ面および/またはスタブ側逃げ面は、ねじ接続部の構成状態において雄ねじ領域の対応する負荷側逃げ面またはスタブ側逃げ面から離れている。一実施形態によれば、第1のノンロック領域は、ロック領域の長手方向の一方側に配置され、第2のノンロック領域は、ロック領域の長手方向の他方側に配置される。
【0033】
一実施形態によれば、前記雄ねじ領域は、前記雄ねじ領域上の単一の雄のスタブ側逃げ面の変化する位置で前記雄のスタブ側逃げ面のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雌ねじ領域は、前記雌ねじ領域上の単一の雌のスタブ側逃げ面の変化する位置で前記雌のスタブ側逃げ面のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雄のスタブ側逃げ面の変化する位置及び前記雌のスタブ側逃げ面の変化する位置は、ロック領域が前記雄のスタブ側逃げ面の変化する位置と前記雌のスタブ側逃げ面の変化する位置との間に規定されるように、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸に沿った異なる位置であり、
雄の負荷側逃げ面のリードが前記雄ねじ領域に沿って一定のままであり、雌の負荷側逃げ面のリードが前記雌ねじ領域に沿って一定のままである。
【0034】
一実施形態によれば、前記雄ねじ領域は、前記雄ねじ領域上の単一の雄の負荷側逃げ面の変化する位置で前記雄の負荷側逃げ面のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雌ねじ領域は、前記雌ねじ領域上の単一の雌の負荷側逃げ面の変化する位置で前記雌の負荷側逃げ面のリードが変化するように、単一の連続した螺旋を備え、前記雄の負荷側逃げ面の変化する位置及び前記雌の負荷側逃げ面の変化する位置は、ロック領域が前記雄の負荷側逃げ面の変化する位置と前記雌の負荷側逃げ面の変化する位置との間に規定されるように、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸に沿った異なる位置であり、
雄のスタブ側逃げ面のリードが前記雄ねじ領域に沿って一定のままであり、雌のスタブ側逃げ面のリードが前記雌ねじ領域に沿って一定のままである。
【0035】
例えば、ロック領域におけるウェッジ比は0.2mm未満である。
【0036】
一実施形態によると、ロック領域におけるウェッジ比は0.1~0.2mmの間にある。これらのウェッジ比のおかげで、ねじ領域を製造するために必要とされる中間パスが低減され、したがって、ねじ接続部を製造するために要求される時間とコストが低減される。
【0037】
一実施形態によれば、前記雄ねじ領域及び前記雌ねじ領域は、前記ねじ接続部の長手方向の軸とテーパー角(θ)をなすテーパー母線を有し、tanθに対応するテーパーは、1/6~1/18の範囲内にあり、好ましくは1/6~1/10の範囲内に、さらに好ましくは1/8付近に選択される。
【0038】
一実施形態によれば、前記雄ねじ領域及び前記雌ねじ領域の前記雄ねじ山及び前記雌ねじ山の谷底部及び頂部は、前記ロック領域の前記テーパー母線と平行である。
【0039】
一実施形態によれば、中間ロック位置Mが、前記ロック領域の軸方向半分の長さにおいて、前記中央ロック位置において、ピッチ線直径TDavgが以下の通りとなるように特定されている。
(ODmin + IDmin) ÷ 2 < TDavg < (ODmax + IDmax) ÷ 2
ここで、ODmin は最小パイプ本体外径、すなわち、例えばAPIによって規定される公称パイプ本体外径から製造公差を引いた場合であり、
ldmin は最小雄部材内径、すなわち、例えばAPIにおいて規定されるドリフト最小外径であり、
ODmax は最大パイプ本体外径、すなわち、例えばAPIによって規定される公称パイプ本体外径から製造公差を足した場合であり、および
Idmax は最大雄部材内径、すなわち、例えばAPIにおいて規定されるドリフト最大外径である。
【0040】
ピッチ線は、ねじ山の負荷側逃げ面のねじ山の頂部と谷底部との間の中間で定義される線である。したがって、中央ロック位置Mにおける平均ピッチ線直径TDavgは、ねじ接続部の長手方向の軸と中央ロック位置Mでのピッチ線との間の平均半径方向距離である。中央ロック位置Mでのピッチ線直径TDavgの上記提案された定義のおかげで、ロック領域に配置された完全なロックねじが最大化され、その結果、ねじ接続部の圧縮効率が改善される。さらに、ピッチ線直径TDavgの上記の定義は、中間ロック位置Mは、本発明によるねじ接続部の定義を全てのタイプのパイプ本体のサイズに適合させるのに有用である。
【0041】
一実施形態によれば、中間ロック位置Mが、前記ロック領域の軸方向半分の長さにおいて、前記中央ロック位置Mから前記ロック領域の長手方向の側部までの長さLnlが以下の通りとなるように特定されている。
Lnl≧(TDavg - BCCSD - 2×THpitch)÷taper
ここで、THpitchは、ピッチ線からロック領域の谷底部又は頂部までの半径方向距離であり、又は言い換えると、ロック領域のねじ山の谷底部と頂部との間の半径方向距離の半分であり、
BCCSDは雌4ねじ部材の臨界断面直径であり、ボックス臨界断面直径とも名前をつけられ、
taperは、ねじ領域のテーパーである。
【0042】
中間ロック位置Mからロック領域の長手方向側までの長さLnlの上記提案された定義は、ねじ接続部の圧縮効率を改善するために有用である。さらに、このような長さの定義は、雄ねじ領域および/または雌ねじ領域における端子面に近いねじ山の幅が、せん断またはジャンプアウトのいずれにおいても接続を損なわないほど十分に大きいままであることを保証する。前記長さのこの定義は、本発明によるねじ接続部の定義を、ねじ山の高さを考慮に入れて、全てのタイプのパイプ本体のサイズに適合させるのに有用である。
【0043】
一実施形態によれば、中間位置Mからロック領域の長手方向側までの長さLnlに関する上記式中の雌部材臨界断面直径BCCSDは、雄部材臨界断面直径PCCSDで置き換えられる。すなわち、上記式のCCSD(臨界断面直径)は、雄部材または雌部材に適用することができる。ボックスとも呼ばれる雌部材については、BCCSDは、構成後に雄ねじ山の頂部が係合した最後の雌部材のねじ山の谷底部の真上にある雌部材の第1の谷底部の外径である。ピンとも呼ばれる雄部材については、PCCSDは、構成後に雌部材のねじ山の頂部が係合した最後の雄部材のねじ山の谷底部の真下の雄部材の谷底部の内径である。
【0044】
好ましくは、前記雄ねじ領域の最大谷底部幅値は、前記雄ねじ領域の最小谷底部幅値の2倍未満に設定され、及び/又は、雌ねじ領域の最大雌谷底部幅値は、雌ねじ領域の最小谷底部幅値の2倍未満に設定される、つまり、
WRbmax ≦2×WRbmin
及び/又は
WRpmax ≦2×Wrpmin。
これは、製造のための中間パスの数を減らし、したがって、より安価な機械加工コストを可能にする。
【0045】
一実施形態によれば、前記第2のパイプ本体に最も近い雌ねじ山の谷底部は、前記第1のパイプ本体に最も近い雄ねじ山の谷底部と同じ谷底幅を有する。つまり、
一実施形態によれば、WRbmin = WRpminである。
【0046】
一実施形態によれば、前記第2の雄ねじ部(17)及び/又は前記第2の雌ねじ部(20)のそれぞれのねじ山(11)は、不完全なねじ山高さ及び/又は消失するねじ歯を有する。
【0047】
一実施形態によれば、雌ねじ領域は雌端子面から始まり、雄ねじ領域は雄端子面から始まる。
【0048】
好ましくは、飛び出しを避けるためには、前記雄ねじ領域のねじ山および前記雌ねじ領域のねじ山は、ダブテール(蟻継ぎ)プロファイルを有し、α及びβは、前記ねじ接続部の前記長手方向の軸に対して垂直な荷重及びそれぞれのスタブ逃げ角であり、α及びβは、共に5°未満である。
【0049】
一実施形態によれば、負荷逃げ角は、1°~3°の間である。フラッシュ接続部では、雄ねじ山は雄端子面に近く、雌ねじ山は雌端子面に近く、ほぼ完全に係合している。1°を超える負荷逃げ角のおかげで、ジャンプアウトの危険性は低減する。さらに、3°未満の負荷逃げ角のおかげで、頂部幅は、たとえ谷底幅が増大したとしても、ねじ領域を製造するために挿入物の中間パスを数回必要とするほどに十分に大きいままである。さらに、このような負荷逃げ角が3°未満であると、低いウェッジ比が可能となり、これにより、ねじ領域において利用可能な逃げ面面積が増大し、ねじ接続部のトルクおよびせん断における性能が向上する。一実施形態において、スタブ逃げ角は4°である。
【0050】
一実施形態によれば、雄ねじ山の頂部及び雌ねじ山の頂部の両方が対応する前記ロック領域の谷底部と干渉しており、谷底部/頂部干渉での直径干渉は、前記パイプ本体の公称外径の0.0020 ~0.0030倍になるようにする。
【0051】
一実施形態によれば、谷底部/頂部干渉における直径干渉は、0.4×((OD-2×Wtmin)×EUL)を上回るものとして定義される。
ここで、ODはパイプ本体の公称外径であり、
Wtminは、パイプ本体の最小肉厚であり、前記最小肉厚は、例えば、API 5CTにおいて、残りのパイプ本体の肉厚×肉厚として定義されている。
EULは、最小等級の負荷を受ける伸びであり、例えば、0.005である。
【0052】
このような最小の谷底部/頂部干渉Yiは、ねじ接続部の良好な密封挙動を保証する。
【0053】
一実施形態によれば、前記ねじ接続部は、いずれの先端の接触面がなく、雄端子面は、雌部材から軸方向に離れ、それぞれ、雌端子面は、雄部材から軸方向に離れている。
【0054】
一実施形態によれば、雄部材及び雌部材の両方共、前記ロック領域の横にある任意の追加の密封がない。
【0055】
一実施形態によれば、前記第1のチューブ部品及び前記第2のチューブ部品は一体であり、前記第1のチューブ部品及び前記第2のチューブ部品の各々は、雄部材及び雌部材を備える。
【0056】
一実施形態によれば、前記雄ねじ領域及び前記雌ねじ領域は、単一のスタートのねじでできている。
【0057】
添付図面を参照してなされる以下の説明において、本発明の特徴および利点をより詳細に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】構成された状態の本発明による自動ロックねじを備える接続部の半分の長手方向断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態によるグラフであり、接続部の構成がなされたときに、雄部材の遠位端面とそれぞれの雌部材との間における
図1に従って、雄部材および雌部材それぞれについて、負荷側逃げ面およびスタブ側逃げ面のリードの進展を、雄部材および雌部材のねじ山に沿って示す。それぞれ、x軸と共にy軸に沿った、雄のスタブ側逃げ面(SFL_p)、雄の負荷側逃げ面(LFL_p)、雌のスタブ側逃げ面(SFL_b)、および雌の負荷側逃げ面(LFL_b)のリード値は、チューブ部品の長手方向の軸に沿ったねじ山の位置を表す。
【
図3】本発明による接続部の雌部材の半分の長手方向断面図である。
【
図4】本発明による接続部の雌部材の半分の長手方向断面図である。
【
図5】本発明による接続部の代替実施形態による
図2のタイプのグラフである。
【
図6】本発明による接続部の実施形態による、雌の雌歯で構成された雄端部の雄ねじ山の詳細な縦断面図である。
【
図7】本発明による接続部の雄部材の遠位端の半分の詳細縦断面図である。
【
図8】本発明による接続部の雌部材の遠位端の半分の詳細縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
慣例として、「外側の」又は「外部の」及び「内側の」又は「内部の」という用語は、ねじ接続部の長手方向の軸Xを基準として、1つの要素の他の要素に対する相対的な位置又はそのような要素の向きを規定するために使用され、要素又は長手方向の軸Xに近い/面する面が「内側の」又は「内部の」と認定され、要素又は長手方向の軸Xから離れて/面する面が「外側の」又は「外部の」と認定される。半径方向は、ねじ接続部の縦軸Xに対して垂直と定義される。
【0060】
図1に示すねじ接続部、以降の名称は接続部、は、第1のチューブ部品1及び第2のチューブ部品2を備えている。第1のチューブ部品1及び第2のチューブ部品2の両方は、共に、それぞれのパイプ本体、パイプ本体の第1の先端部における雄部材及びパイプ本体の第2の先端部における雌部材を備えているので、一体である。これにより、
図1に示すように、第1のチューブ部品1は、第1のパイプ本体3と第1の雄部材4、以降の名称は雄部材4、とを備えている。雄部材4は、第1のパイプ本体3の第1の先端部から延びている。第2のチューブ部品2は、第2のパイプ本体5と第2の雌部材6、以降の名称は雌部材6、とを備えている。雌部材6は、第2のパイプ本体5の第2の先端部から延びている。
【0061】
図1に示すような接続部の構成状態では、雄部材4と雌部材6とは、接続部の長手方向の軸Xが第1のチューブ部品1及び第2のチューブ部品2と同軸ケーブルであるように、連結されており、長手方向の軸Xは接続部の軸方向を規定している。
【0062】
両方のチューブ部品1、2は鋼板から作られており、一例では、炭素マルテンサイト鋼板であり、降伏強さは80ksi(550MPa)~140ksi(965MPa)の範囲にし得る。
【0063】
たとえば、材料の等級は80ksi(550MPa)~140ksi(965MPa)である。たとえば、等級が100ksi(690MPa)を超える場合、たとえば125ksi(860MPa)に等しくなる。
【0064】
パイプ本体3、5は、公称外径が3(1/2)インチ(88、90mm)および13(5/8)インチ(346mm)の間であってもよく、8~22mmのパイプ本体の肉厚であってもよい。好ましくは、パイプ本体3、5は、10インチ(254mm)未満、さらに好ましくは6インチ(152.4mm)未満の公称外径を有する。
【0065】
第1のパイプ本体3に対向する雄部材4の端部は、雄端子面7で仕上げられている。この雄端子面7は、雄部材4の軸方向自由端部又はピン面を形成する。雄端子面7は、また、第1のチューブ部品1の自由軸面となっている。雌部材6の端部は、雌端子面8で仕上げられている。この雌端子面8は、雌部材6または箱面の軸方向自由端部を形成している。雌端子面8は、また、第2のチューブ部品2の自由軸面である。雄端子面7及び雌端子面8は、接続部の長手方向の軸Xに対して径方向に配向されている。雄端子面7及び雌端子面8はいずれも構成の端部に当接して配置されていない。すなわち、雄端子面7は、第2のチューブ部品2から軸方向に離れており、雌端子面8は、第1のチューブ部品1から軸方向に離れている。
【0066】
図7及び
図8に示すように、雄端子面7及び雌端子面8は、長手方向の軸Xに直交している。面取り部71、72、81及び82は、端子面7及び8からそれぞれ内面及び外面に向かって機械加工されている。例えば、本発明の好ましい実施形態によれば、全ての面取り部71、72、81、82は、それぞれの端子面7及び8の平面に対して45°の面取り部である。面取り部71は、雄端子面7から雄部材4の内面に向かって機械加工され、面取り部81は、雌端子面8から雌部材6の内面に向かって機械加工されている。面取り部72は雄端子面7から雄部材4の外面に向かって機械加工され、面取り部82は雌端子面8から雌部材6の外面に向かって機械加工される。
【0067】
図1、
図3及び
図4に示すように、雄部材4には雄ねじ領域9が設けられ、雌部材6には雌ねじ領域10が設けられている。雄ねじ領域9と雌ねじ領域10は、2つのチューブ部品1、2の組み立てによって、相互接続のために協働する。ねじ領域9、10はそれぞれ機械加工される。
図1では、ねじ式のチューブ接続部が完全に組み立てられて示されている。
【0068】
本発明によれば、接続効率はパイプ本体の降伏強さの70%を超える。
【0069】
雄ねじ領域9および雌ねじ領域10は、テーパー角θ(
図6参照)を有する先細であり、前記テーパー角8は、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10の両方に対して同一である。このテーパー角θは、雄ねじ領域9及び/又は雌ねじ領域10の母線と、接続部の長手方向の軸Xとの間の角度である。tan(θ)に対応するテーパーは、例えば、1/6~1/18の範囲内であり、好ましくは1/6~1/10の範囲内で、さらに好ましくは1/8付近で選択される。好ましくは、テーパー値は、それぞれ3.6°及び4.8°のテーパー角θに対応して、1/8又は1/6とすることができる。雄ねじ領域9及び雌ねじ領域10は、本発明の一実施形態による単一のスタートである。単一のスタートとは、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10のそれぞれが、連続した螺旋である、中断のない、それぞれ一意で単一のねじ状の螺旋を有することを意味する。
【0070】
図1又は
図4に示すように、雄ねじ領域9は雄端子面7から始まる。
図1又は3に示すように、雌ねじ領域10は雌端子面8から始まる。雄ねじ領域9及び雌ねじ領域10のそれぞれは、ねじ状の螺旋によって形成された複数の歯又はねじ山11を備える。各ねじ山11は、負荷側逃げ面12、頂部13、スタブ側逃げ面14及び谷底部15を備える。
【0071】
雄ねじ領域9は第1の雄ねじ部16と第2の雄ねじ部17とを有する。第2の雄ねじ部17は第1の雄ねじ部と第1のパイプ本体3との間に長手方向の軸Xに沿って配置されている。第1のねじ部16において、雄端子面7から第1のパイプ本体3に向かう方向に沿ってねじ谷底部の軸方向幅WRp1が小さくなり、雄端子面7から第1のパイプ本体3に向かう方向に沿って頂部の軸方向幅が大きくなる。第2のねじ部17において、ねじ谷底部の軸方向幅WRp2は最小一定幅値WRpminのままであり、頂部の軸方向幅は最大幅値で一定のままである。雄端子面7に最も近い雄ねじ領域9のねじ山18は、雄ねじ領域9の最大軸方向谷底部の幅値WRpmaxを呈する。
【0072】
雌ねじ領域10は、第1の雌ねじ部19および第2の雌ねじ部20を有する。第2の雌ねじ部20は、第1の雌ねじ部19と第2のパイプ本体5との間において長手方向の軸Xに沿って配置されている。第1の雌ねじ部19において、雌端子面8から第2のパイプ本体5に向かう方向に沿ってねじ谷底部の軸方向幅WRb1が小さくなり、雌端子面8から第2のパイプ本体5に向かう前記方向に沿って頂部の軸方向幅が大きくなる。第2の雌ねじ部20において、ねじ谷底部の軸方向幅WRb2は最小一定幅値WRbminのままであり、頂部の軸方向幅は最大幅値で一定のままである。雌端子面8に最も近い雌ねじ領域10のねじ山29は、雌ねじ領域10の最大軸方向谷底部の幅値WRbmaxを呈する。
【0073】
第1の雄ねじ部16及び第1の雌ねじ部19は部分的に自動ロック構成で作られており、これは、第1の雄ねじ部16及び第1の雌ねじ部19のいくつかのねじ山11が自動ロック構成であり、第1の雄ねじ部16及び第1の雌ねじ部19のいくつかのねじ山11が自動ロック構成でないことを意味する。
【0074】
このような「自動ロック」構成では、雄ねじ山11は、雌ねじ山11と同様に、一定のリードを有するが、それらの頂部幅は、それぞれの端子面7、8に向かってそれぞれ減少し、それらの谷底幅は、それぞれの端子面7、8に向かってそれぞれ増加する。構成時に、雄ねじ山および雌ねじ山11は、頂部および谷底部の幅のこの変動のおかげで、決められた位置で互いにロックすることによって仕上げる。
【0075】
構成されると、本発明の接続部は、ロック領域21、第1のノンロック領域22および第2のノンロック領域23を備える。
【0076】
ロック領域21は、接続部の構成状態において、第1の雄ねじ部16と第1の雌ねじ部19の両方のねじ山11が係合する長手方向の軸Xに沿った位置によって画定される。第1のノンロック領域22は、長手方向の軸Xに沿った位置によって画定され、接続部の構成状態において、第1の雄ねじ部16のねじ山11が第2の雌ねじ部20のねじ山11と係合する。第2のノンロック領域23は、長手方向の軸Xに沿った位置によって画定され、接続部の構成状態において、第2の雄ねじ部17のねじ山11が第1の雌ねじ部19のねじ山11と係合する。
【0077】
ロック領域21では、第1の雄ねじ部16および第1の雌ねじ部19の内部のように、軸方向頂部の幅の漸進的な変動があり、それに対応して軸方向谷底部の幅の漸進的な変動があり、最終ロック位置までの構成中に、第1の雄ねじ部16のねじ山11と第1の雌ねじ部19のねじ山11との間に漸進的な軸方向の締め付けが生じる。このような最終ロック位置では、第1の雄ねじ部16のねじ山11は、ロック領域21に位置する第1の雄ねじ部16のねじ山11の全てのスタブ側逃げ面14と全ての負荷側逃げ面12とが、それぞれ、ロック領域21の第1の雌ねじ部19の対応するねじ山11のスタブ側逃げ面14と負荷側逃げ面12とに対してお互いにロックする、ようにする。換言すれば、第1の雄ねじ部16のねじ山11及び第1の雌ねじ部19のねじ山は、ロック領域21内で「セルフロッキング」構成に係合される。
【0078】
構成の端部に、
図6に示すようなロック領域21では、ねじ山11の軸方向の逃げ面間、すなわち負荷側逃げ面12とスタブ側逃げ面14との両方の間に軸方向のギャップは存在しない。しかも、本発明による接続部の設計は、ロック領域21のねじ頂部13と雌ねじ谷底部15との間に半径方向のギャップがなく、雄部材4のねじ頂部13と雌部材6のねじ谷底部15との間にも、雌部材6のねじ頂部13と雄部材4のねじ谷底部との間にも半径方向のギャップがない。従って、ロック領域21は、ドープを吸着し、高圧に耐えるのに十分な接触を発生することにより密封を形成する。頂部13と谷底部15は干渉接触しており、軸方向逃げ面12、14も干渉している。ロック領域21の雄ねじ領域9及び雌ねじ領域10の頂部13及び谷底部15は、ねじ領域9、10のテーパー母線と平行である。
【0079】
接続部の良好な密封作用を確保するために、谷底部/頂部の干渉における直径の干渉は、パイプ本体(3、5)の公称外径の0.0020倍と0.0030倍との間とする。接続部の良好な密封挙動を保証するための実施形態において、谷底部/頂部の干渉における直径の干渉は、0.4×((OD-2×Wtmin)×EUL)を超えるものとして定義される。
ここで、ODはパイプ本体の公称外径であり、
Wtminは、パイプ本体の最小肉厚であり、前記最小肉厚は、例えばAPI 5CTにおいて残りのパイプ本体の肉厚×肉厚として定義されている。
EULは、最小等級の負荷を受ける伸びであり、例えば、0.005である。
【0080】
第1のノンロック領域では、第1の雄ねじ部16のねじ山11が第2の雌ねじ部20のねじ山11と係合する。前記第1のノンロック領域22において、第1の雄ねじ部16の頂部13が、ロック領域21から雄端子面7に向かって減少する間に、第2の雌ネジ部20における谷底部15の幅が一定に保たれるので、前記第1のノンロック領域22の第1の雄ねじ部16のねじ山11は、それらの負荷側逃げ面12および/またはそれらのスタブ側逃げ面14のいずれかを考慮すると、対応する第2の雌ネジ部20の負荷側逃げ面12および/またはスタブ側逃げ面14と接触していない。換言すれば、第1のノンロック領域22内の第1の雄ねじ部16のねじ山11は、それらの間に存在する軸方向クリアランスである雌ねじ領域10のいずれの対応する表面とも接触しない、それらの負荷側逃げ面12またはスタブ側逃げ面14のうちの少なくとも1つを有するので、自動ロック構成にはない。
【0081】
同様に、第2のノンロック領域23内の第1の雌ネジ部19の歯11は、それらの負荷側逃げ面12および/またはそれらのスタブ側逃げ面14のいずれかを考慮すると、第2の雄ネジ部17の対応するネジ山1と接触していない。換言すれば、第2のノンロック領域23内の第1の雌ねじ部19のねじ山11は、それらの間に存在する軸方向クリアランスである雄ねじ領域9のいずれの対応する表面とも接触しない、それらの負荷側逃げ面12またはスタブ側逃げ面14のうちの少なくとも1つを有するので、自動ロック構成にはない。
【0082】
好ましい実施形態では、第1のノンロック領域及び第2のノンロック領域の両方において、それぞれの雄のスタブ側逃げ面と雌のスタブ側逃げ面14との間に正のクリアランスが存在する。例えば、そのクリアランスは少なくとも1mmであり、例えば5mmより小さい。
【0083】
第2の雄ネジ部17は第1の雄ネジ部16よりも第1のパイプ本体3により近いので、第2の雄ネジ部17は、雌端子面8に近い雌ねじ領域10のねじ山11と係合する。これにより、第2のノンロック領域23はロック領域21と雌端子面8との間の長手方向の軸Xに沿って位置する。同様に、第2の雌ねじ部20は第1の雌ねじ部19よりも第2のパイプ本体5により近いので、第2の雌ねじ部20は、雄端子面7に近い雄ねじ領域9の雄ねじ山11に係合する。これにより、第1のノンロック領域22第2の部16はロック領域21と雄端子面7との間の長手方向の軸Xに沿って位置する。第1のノンロック領域22はロック領域20の第1の長手方向の側部24に隣接し、第2のロック領域23はロック領域21の第2の長手方向の側部25に隣接し、第2の長手方向の側部25はロック領域20の第1の長手方向の側部24に軸方向に対向する。
【0084】
有利なことに、かつ、
図6に示されるように、雄ねじ領域9のねじ山11および雌ねじ領域10のねじ山11はダブテール(蟻継ぎ)プロファイルを有する。このダブテール(蟻継ぎ)プロファイルは、接続部が大きな曲げ応力または20の引張応力を受けたときに、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10が離れることに対応する飛び出しのリスクを回避することを可能にする。より正確に言えば、ダブテール(蟻継ぎ)ねじの幾何学的形状は、それらの組立体の半径方向の剛性を、軸方向のねじ幅がねじ山の谷底部から頂部まで減少する、通例「台形」ねじと呼ばれるねじに比べて、増加させる。有利なことに、ねじ山11の負荷側逃げ面12は、ねじ山の頂部および負荷側逃げ面12の底部における隣接する集中係数に接続し、それによって、接続部の疲労挙動を改善する。
【0085】
接続部の長手方向の断面に沿って、負荷側逃げ面12とスタブ側逃げ面14の両方は、直線状のプロファイルを呈する。負荷側逃げ面12及びスタブ側逃げ面14は、長手方向の軸Xと直交する方向に、それぞれ、負の角度α、負の角度βを成す。負荷側逃げ面の角度の値αは、スタブ側逃げ面の角度の値βよりも劣るか、または等しく、長手方向の軸Xと直交する方向の両側に対向して定義されている。たとえば、角度α及びβは1°と5°の間で構成される。したがって、2つの隣接するねじ山11の間の間隔の底部における谷底部15の幅は、長手方向の軸Xに沿ったねじ山の幅を考慮した場合、常にそのねじ山の最大寸法である。
【0086】
図2に示すような第1の実施形態によれば、第1の雄ねじ部16におけるスタブ側逃げ面14間の第1の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_pは、値SFL_p1で一定である。第1の雄ねじ部16における負荷側逃げ面12間の第1の雄の負荷側逃げ面リードLFL_p1も、一定であるが、第1の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_p1とは異なる値LFL_p1である。
図6の実施例では、LFL_p1がSFL_p1よりも厳密に優れている。本発明の第1の実施形態の第1の例について、
LFL_p1=8.33mm
SFL_p1=8,20mm
本発明の第1の実施形態の第2の例について、
LFL_p1=10mm
SFl_p1=9,87mm
【0087】
したがって、負荷側逃げ面リードLFL_p1とスタブ側逃げ面リードSFL_p1との間の差である第1の雄ねじ部16のウェッジ比は、両方の例に対して、0,15mm未満である。
【0088】
お本発明の範囲内では、他のスタブ側逃げ面リードSFL_p1および負荷側逃げ面リードLFL_p1の値も許容される。
【0089】
同様に、第1の雌ねじ部19の負荷側逃げ面12間の第1の雌の負荷リードLFL_b1は、値LFL_b1で一定であり、第1の雌ねじ部19のスタブ側逃げ面14間の第1の雌のスタブ側逃げ面リードSFL_b1も、一定であるが、LFL_p1とは異なる値SFL_b1であり、第1の雌の負荷側逃げ面リードLFL_b1が第1の雌のスタブ側逃げ面リードSFL_b1よりも大きいという特徴を有する。
【0090】
さらに、
図2に示すように、第1の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_p1と第1の雌のスタブ側逃げ面リードSFL_b1とは等しく、それ自体が等しい、それぞれの第1の雄の負荷側逃げ面リードLFL_p1と第1の雌の負荷側逃げ面リードLFL_b1よりも小さい。
【0091】
もっと具体的には、LFL_b1=LFL__p1、SFL_b1=SFL__p1となる。
【0092】
図2によると、第2のノンロック領域23では、第2の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_p2と第2の雄の負荷側逃げ面リードLFL_p2とが互いに等しく、ロック領域10の第2の長手方向の側面25の位置と同じく、第1の雄の負荷側逃げ面リードLFL_p1と等しい。言い換えれば、雄のスタブ側逃げ面リードは、第1の雄のねじ部16と第2の雄のねじ部17との間で、第1の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_p1から第2の雄のスタブ側逃げ面リードSFL_p2までの位置を変える。雄の負荷側逃げ面リードが一定のままである間の雄のスタブ側逃げ面リードのこの変化は、第1の雄のねじ部16と第2の雄のねじ部17との間の遷移を規定し、結果的に第2のノンロック領域23とロック領域21との間の接合を規定する。
【0093】
同様に、第1のノンロック領域22内では、第2の雌のスタブ側逃げ面リードSFL_b2と第2の雌の負荷側逃げ面リードLFL_b2とが互いに等しく、また、ロック領域21の第1の長手方向側面24の15個の位置として、第1の雌負荷フランクリードLFL_b1と等しい。従って、第2のノンロック領域23と同様に、雌のスタブ側逃げ面リード変化位置は、第1の雌ねじ部19と第2の雌ねじ部20との間の遷移を規定し、結果的に第1のノンロック領域22とロック領域21との間の接合を規定する。
【0094】
ロック領域21の第1の長手方向の側面24とロック領域21の第2の長手方向の側面25とは、スタブ側逃げ面リードがそれぞれのねじ領域9、10上で変化する位置によって画定される。雄ねじ領域9と雌ねじ領域10の両方は、スタブ側逃げ面リード値に独特の変化を有し、一方、負荷側逃げ面リードは、ねじ領域9、10に沿ってすべて一定のままである。変化は急激で、1回転未満、好ましくは180°未満で現れる。
【0095】
あるいは、本発明の第2の実施形態によれば、
図5に表されるように、雄ねじ領域9と雌ねじ領域10は、一定のスタブ側逃げ面リードを有するが、負荷側逃げ面リード値に固有の変化を有し、それぞれの雄ねじ領域9および雌ねじ領域10における前記負荷側逃げ面変化位置は2個の別個の位置にある。
【0096】
本発明によれば、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10の各々の特定の数のねじ山のみ11が、特定のロックになっている構成であり、ロック領域21に関与する。ロック領域210は、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10の最初のねじ山および最後のねじ山から離れている。雄ねじ領域および雌ねじ領域の両方の少なくとも最初のねじ山および最後のねじ山はロック構成になっていない。ロック領域21は、係合した雄のねじ山11および雌のねじ山11全体の構成の長さ、すなわち、ロック領域21の長さに、ノンロック領域22および23の両方の長さを加えた長さ、の55%より多くを表し、好ましくは60%より多く、さらに好ましくは70%より多く、を表している。
【0097】
例えば、ロック領域21は6~16個のねじ山を備え、雌ねじ領域10は全部で少なくとも16個のねじ山を備え、雄ねじ領域9は全部で少なくとも16個のねじ山を備えている。
【0098】
雄ねじ領域9および雌ねじ領域10のねじ山11は完全なねじ山26および不完全なねじ山27を備える。
【0099】
完全なねじ山26は、テープの母線に平行なそれらの頂部13および谷底部15を有する。さらに、前記完全なねじ山は、ねじ領域9、10に沿って一定の半径方向の高さを有する。したがって、これらの完全なねじ山26の逃げ面12および14は、他のねじ山11と協働するための大きな表面を提供する。
【0100】
不完全なねじ山27は、例えば、雄ねじ領域9および雌ねじ領域10の頂部13が、肉厚内の材料が利用できなくなるにつれて接続部の長手方向の軸Xに対して平行になるように、肉厚内に利用できる材料がないため、接続部上に完全に形成されない。これにより、加工が容易になる。不完全なねじ山27は、第2の雄ねじ部17に配置されている。不完全なねじ山27は、第2の雌ねじ部20に配置されている。第2の雄ねじ部17および第2の雌ねじ部20内の不完全なねじ山27は、ねじチューブ接続部の張力効率を向上させる。
【0101】
最小の谷底幅を有するねじ山11は、パイプ本体3または5に向かうねじ部ではない部分を有する移行部の近くでは不完全である。不完全なねじ山27は、他方のねじ山、すなわち、ロック領域21内の完全なねじ山26、の正規の高さよりも低い高さを有する。
【0102】
ロック領域21の中間Mは、ロック領域21の軸方向半分の長さで識別される。接続部は、ピッチ線平均直径TDavgが以下のように定義される。TDavgは、中間ロック位置Mにおけるロック領域21内のねじ山11の負荷側逃げ面12の半径方向高さの中間を通過する長手方向の軸X及びピッチ線28(
図6参照)の間の平均半径方向距離である。
(ODmin + IDmin) ÷ 2 < TDavg < (ODmax + IDmax) ÷ 2
ここで、ODminは最小のパイプ本体3または5の外径、すなわち、例えばAPIによって定められる公称パイプ本体3または5の外径から製造公差を引いたものであり、ldminは最小の雄部材4の内径、すなわち、例えばAPIにおいて定められるドリフト最小の外径であり、ODmaxは最大パイプ本体3または5の外径、すなわち例えばAPIによって定められる公称パイプ本体3または5の外径に製造公差を足したものであり、そして、ldmaxは最大の雄部材4の内径、すなわち、例えばAPIにおいて定められるドリフト最大の外径である。
【0103】
本発明の第1の実施形態の1つの例によれば、OD=7.625インチまたは193.675mmである。
APIによって定められる公称パイプ本体の外径に製造公差を足したものであるODmaxは公称パイプ本体の外径の101%であり、ODminは公称パイプ本体の外径の99.5%である。
したがって、ODmax=193.675×1.01=195.61175、および
ODmin=193.675×0.995=192.706625である。
API最小肉厚公差WTminは残りのパイプ本体肉厚の87.5%である。
IDmax = ODmax - 2×WTmin =193.675×1.01-2×9.525×0.875=178.943
IDmin = ODmin - 2×WT =193.675×0.995-2×9.525=173.656625
【0104】
中間部Mを接続部の中間部に有するために、中間ロック位置Mにおける許容可能なピッチ線直径TDavgは、公称ODとIDの平均である。
183.181625 = (192.706625 + 173.656625)/2< TDavg <(195.61175 + 178.943)/2 = 187.277375
【0105】
本発明およびピッチ線平均直径TDavgの上記定義のおかげで、完全なねじ山26は、最悪の場合のAPIパイプ公差を考慮しても、ロック領域21に専用である。完全なねじ山の領域の長さがパイプパラメータおよび外径公差によって支配されるので、完全なねじ山の領域は、必要なロック領域21より長い長さにわたって完全なねじ山を有するように選択されることが好ましい。
【0106】
ロック領域21の長さは、ロック領域21の軸方向半分の長さで特定される中間ロック位置Mと、ロック領域21の第1および第2の側面24および25との間の距離に従ってさらに規定される。中央ロック位置Mから、ロック領域21の長手方向の側面24または25まで、すなわち、ロック領域21の第1の長手方向の側面24またはロック領域21の第2の長手方向の側面25のいずれかまで、の長さLnlは、以下のようになる。
Lnl≧(TDavg - BCCSD - 2×THpitch)÷taper
ここで、THpitchは、ピッチ線28からロック領域の谷底部15または頂部13までの半径方向直距離であり、BCCSDはボックスの臨界断面直径で、taperは、ねじ領域9または10のテーパーであり、すなわち、以下に説明するように、tan(θ)である。
【0107】
BCCSDは、谷底部15と、第2のパイプ本体5から最も近い係合するねじ山11の負荷側逃げ面12との間の接合部における雌部材の直径として定義され、言い換えれば、雌ねじ領域10のねじ山11は、雄ねじ領域9の対応する負荷側逃げ面12と接触し、かつ第2のパイプ本体5から最も近い、その負荷側逃げ面12を有する。
【0108】
中間ロック位置Mとロック領域21の側部との間の距離のこの定義は、ノンロック領域内のねじ山が、接続部がせん断またはジャンプアウトにおいて良好な挙動を提供することを保証するのに十分な大きさの軸方向のねじ山の幅を有したままである。実は、おかげでLnlの上記定義およびTDavgの上記定義により、中間ロック位置Mは、端子面7または8からあまり近づくことはなく、前記端子面7または8に向かってシフトする中間ロック位置は、雄部材4または雌部材6のいずれかの前部ねじ山が狭すぎるように導き、せん断またはジャンプアウトのいずれかで接続を妥協する。
【0109】
加工コストを低減するために、雄部材4及び雌部材6は、最初に、意図されたねじ領域9または10のテーパー角θでブランク加工され、ブランク加工されたテーパー角θがねじ山の頂部13の定義になる。したがって、ねじ山の頂部13を機械加工する必要はさらにない。その実施形態による頂部13は、
図5に示すように、ねじ領域9、10のテーパー軸に平行である。
【0110】
負荷側逃げ面12は、ねじ山のスタブ側逃げ面14と同様に、連続して加工済みである。負荷側逃げ面12及びスタブ側逃げ面14をそれぞれ機械加工するための機械加工インサートのための位置における稼働は、雄部材4のための面取り72及び雌部材6のための面取り81のそれぞれの内部で開始する。ねじ加工は端子面7及び8の高さに影響を与えず、したがって、雄部材4を雌部材6に導入する工程において補強公差を与え、第1の突き刺し表面の損傷を回避する。好ましくは、加工は、半径方向においてそれぞれの端子面7および8から0.15mm未満で開始する。
【0111】
ねじ山11の谷底部15は、少なくとも負荷側逃げ面12を機械加工するための第1の最終ねじ加工経路を連続的に使用することによって得られ、第1の最終ねじ加工経路は、ロード逃げ面12に隣接する谷底部15のプロファイルの一部を加工することも可能であり、次いで、スタブ側逃げ面14を加工するための第2の最終ねじ加工経路を使用し、第2の最終ねじ加工経路は、スタブ側逃げ面14に隣接する谷底部15のプロファイルの一部を加工することも可能である。谷底部15のプロァイルが、雄部材4についての最小幅値WRpmin から最大谷底部幅値WRpmax に進化するにつれて、そして、雌部材4についての最小幅値WRbmin から最大谷底部幅値WRbmax に進化するにつれて、谷底部15のプロファイルを機械加工するための第3のインサートの必要性はなく、以下のようにされる。
WRbmax ≦2×WRbmn
および
WRpmax ≦2×WRpmin
好ましくは
WRbmax≦4mm
および
WRbmax ≦4mm
好ましくは
WRbmax ≦2×WRbmin-0.5mm
および
WRpmax ≦2×WRpmin-0.5mm
WRpminは、本発明の一例において、約2.2mmであってもよい。
【0112】
図1に示されるように、WRpmaxおよびWRbmaxが構成物の端部において同一面内にない代替的なものもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0113】
構成を容易にするために、雌部材6のみに表面処理を施し、構成前に雄部材4の周囲にドープを追加的に配置する。あるいは、雄部材4及び雌部材6の両方を表面処理してもよい。例えば、表面処理はリン酸亜鉛処理であってもよい。