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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】半導体素子実装用基板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20250109BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L23/12 N
H01L23/12 Q
H01L23/12 E
H05K1/14 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023551565
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036055
(87)【国際公開番号】W WO2023054419
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021161493
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】杉本 好正
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120076(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021209(WO,A1)
【文献】特開2003-243556(JP,A)
【文献】特開2014-146759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を実装する実装領域と該実装領域を囲む周辺領域とが含まれる第1上面を有する第1基板と、
前記第1基板の前記周辺領域上に位置し、前記実装領域を囲む枠状の第2基板と、
前記第2基板上に位置し、前記実装領域を囲む枠状の第3基板と、
を備え、
前記第1基板、前記第2基板及び前記第3基板は、外方を向いた共通の第1外側面を有し、
前記第1外側面において前記第1基板の第1上面から第1下面にかけて位置する溝部と、
前記第2基板の第2上面に位置する信号線路と、
前記第2基板の内部に位置し、前記信号線路と接続された貫通導体と、
前記溝部の内面に位置し、前記貫通導体と電気的に接続された側面導体と、
前記第3基板の前記第1外側面に位置し、平面透視で前記溝部と重なる第1切欠き部と、
前記第1外側面において、前記第3基板の第3上面から前記第1基板の前記第1下面にかけて位置するとともに、前記溝部を挟んで並んで位置する第1凹部及び第2凹部と、
前記第1凹部及び前記第2凹部の内面にそれぞれ位置する第1側面接地導体及び第2側面接地導体と、
を更に備え、
前記第1凹部と前記第2凹部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部との間隔が上の方が下よりも狭い縮幅部が含まれる、
半導体素子実装用基板。
【請求項2】
前記第1基板における前記第1凹部と前記第2凹部との間隔W1と、
前記第2基板における前記第1凹部と前記第2凹部との間隔W2と、
前記第3基板における前記第1凹部と前記第2凹部との間隔W3とが、
W1≧W2、W2≧W3であり、かつ、W1、W2、W3の少なくとも1つの値が異なる、
請求項1記載の半導体素子実装用基板。
【請求項3】
W1>W2である、
請求項2記載の半導体素子実装用基板。
【請求項4】
W2=W3である、
請求項3記載の半導体素子実装用基板。
【請求項5】
前記第1基板は、前記第1外側面の反対側に第1内側面を有し、
更に、
前記第1基板の前記第1下面に拡がり前記側面導体に接続された信号電極と、
前記第1内側面に位置する第2切欠き部と、
を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体素子実装用基板。
【請求項6】
前記第2切欠き部は、前記第1外側面に垂直な方向から透視して前記溝部と重なって位置する、請求項5に記載の半導体素子実装用基板。
【請求項7】
前記第3基板の前記第3上面の外縁に沿った第1方向における前記第1切欠き部の幅が、当該第1方向における前記溝部の幅よりも大きい、
請求項5記載の半導体素子実装用基板。
【請求項8】
前記第3基板の前記第3上面の外縁に沿った第1方向における前記第2切欠き部の幅が、当該第1方向における前記第1切欠き部の幅よりも大きい、
請求項5記載の半導体素子実装用基板。
【請求項9】
前記第3基板の前記第3上面の外縁に沿った第1方向における前記第1切欠き部の幅が、当該第1方向における前記第3基板に位置する前記第1凹部の幅、あるいは、当該第1方向における前記第3基板に位置する前記第2凹部の幅よりも小さい、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体素子実装用基板。
【請求項10】
前記第3基板の前記第3上面は、金属層が位置する導体領域と、金属層が位置しない非導体領域とを含み、
前記非導体領域は、前記第1凹部と前記第1切欠き部との間から前記第1切欠き部と前記第2凹部との間にかけて前記第3基板の前記第3上面の外縁まで拡がる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体素子実装用基板。
【請求項11】
前記非導体領域は、前記第1外側面に垂直な方向における幅が前記第1切欠き部に近づくにつれて広くなる拡幅部を有する、
請求項10記載の半導体素子実装用基板。
【請求項12】
前記導体領域は、前記第3基板の前記第3上面に位置する前記第1凹部の辺の全域、並びに、前記第3基板の前記第3上面に位置する前記第2凹部の辺の全域に拡がる、
請求項10記載の半導体素子実装用基板。
【請求項13】
前記第1基板、前記第2基板及び前記第3基板は、前記第1外側面と隣り合う第2外側面を有し、
前記第1凹部又は前記第2凹部は、前記第2外側面と交差する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体素子実装用基板。
【請求項14】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体素子実装用基板と、
前記実装領域に実装され、前記信号線路と電気的に接続された半導体素子と、
を備える半導体装置。
【請求項15】
前記第1基板の前記第1下面と接合された実装基板を更に備える、
請求項14記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子実装用基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/021209号には、半導体素子を実装する実装領域と周辺領域とを含んだ上面を有する第1基板と、第1基板の周辺領域上に位置する枠状の第2基板と、第2基板上に位置する枠状の第3基板とを有する半導体素子実装用基板及び半導体装置が示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示に係る半導体素子実装用基板は、
半導体素子を実装する実装領域と該実装領域を囲む周辺領域とが含まれる第1上面を有する第1基板と、
前記第1基板の前記周辺領域上に位置し、前記実装領域を囲む枠状の第2基板と、
前記第2基板上に位置し、前記実装領域を囲む枠状の第3基板と、
を備え、
前記第1基板、前記第2基板及び前記第3基板は、外方を向いた共通の第1外側面を有し、
前記第1外側面において前記第1基板の第1上面から第1下面にかけて位置する溝部と、
前記第2基板の第2上面に位置する信号線路と、
前記第2基板の内部に位置し、前記信号線路と接続された貫通導体と、
前記溝部の内面に位置し、前記貫通導体と電気的に接続された側面導体と、
前記第3基板の前記第1外側面に位置し、平面透視で前記溝部と重なる第1切欠き部と、
前記第1外側面において、前記第3基板の第3上面から前記第1基板の前記第1下面にかけて位置するとともに、前記溝部を挟んで並んで位置する第1凹部及び第2凹部と、
前記第1凹部及び前記第2凹部の内面にそれぞれ位置する第1側面接地導体及び第2側面接地導体と、
を更に備え、
前記第1凹部と前記第2凹部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部との間隔が上の方が下よりも狭い縮幅部が含まれる。
【0004】
本開示に係る半導体装置は、
上記の半導体素子実装用基板と、
前記実装領域に実装され、前記信号線路と電気的に接続された半導体素子と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
図2A】本開示の実施形態1に係る半導体素子実装用基板を上方から見た斜視図である。
図2B】本開示の実施形態1に係る半導体素子実装用基板を下方から見た斜視図である。
図2C】本開示の実施形態1に係る半導体素子実装用基板を、第1基板の主部を外して下方から見た斜視図である。
図3図2AのA-A線における断面図である。
図4図2Aの一部分C1を拡大した図である。
図5図2Cの一部分C2を拡大した図である。
図6図2Cの部分C2において信号導体を主に示した図である。
図7図2Cの部分C2において内部の接地導体を主に示した図である。
図8】第1切欠き部の周辺を示す拡大斜視図である。
図9】変形例1の半導体素子実装用基板の一部を示す図である。
図10A】変形例2の半導体素子実装用基板を上方から見た斜視図である。
図10B】変形例2の半導体素子実装用基板を下方から見た斜視図である。
図10C図10AのA-A線における断面図である。
図11図1の半導体装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0007】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。図2A図2Cは、本開示の実施形態1に係る半導体素子実装用基板を示す。図2Aは実施形態1に係る半導体素子実装用基板1を上方から見た斜視図、図2Bは下方から見た斜視図、図2Cは第1基板の主部を外して下方から見た斜視図である。図3は、図2AのA-A線における断面図である。以下、第1基板101から第3基板103を向く方(Z方向)を上方、第1基板101の基板面に平行な方向(X-Y平面方向)を水平方向として、各部の方向を表わす。当該方向は半導体素子実装用基板1又は半導体装置20の使用時の方向と一致しなくてもよい。本明細書においては、混同を避けるため、第1基板101の上面を第1上面S101、第1基板101の下面を第1下面と記す。同様に、第2基板102の上面を第2上面、第2基板102の下面を第2下面、第3基板103の上面を第3上面、第3基板103の下面を第3下面と記す。
【0008】
半導体装置20及び半導体素子実装用基板1は、第1基板101、第2基板102及び第3基板103を備える。なお、第1基板101は、単一層の構造であってもよいし、複数の絶縁層が重なった積層構造を有してもよく、積層構造を有する場合、第1基板101は、複数の絶縁層の間に金属膜が位置してもよい。第2基板102及び第3基板103についても同様である。積層構造により、多層構造の信号配線を設計することができる。
【0009】
第1基板101は、半導体素子11を実装する実装領域aと実装領域aを取り囲んだ周辺領域bとを含んだ第1上面S101を有する。第1基板101は、たとえばアルミナ(Al)質焼結体(アルミナセラミックス)等のセラミックスから成る。
【0010】
第2基板102は、第1基板101の周辺領域b上に位置する。平面視したとき(Z方向から見たとき)、第2基板102の外縁は、一部を除いて、第1基板101の外縁と重なる。第2基板102は、実装領域aを取り囲んだ枠状である。第2基板102は、第1基板101と同様に、たとえばアルミナ(Al)質焼結体(アルミナセラミックス)等のセラミックスから成る。
【0011】
第3基板103は、実装領域aを取り囲んだ枠状である。第3基板103は、第2基板102上に位置する。平面視したとき、第3基板103の外縁は、一部を除いて、第2基板102の外縁と重なる。平面視で、第3基板103の内縁は、第2基板102の内縁よりも外方に位置していてもよい。第3基板103は、例えば第1基板101及び第2基板102を構成する材料と同じである。
【0012】
図2A図2B図3に示すように、第1基板101は、実装領域aを含む主部101aと、周辺領域bを含む枠部101bとを有し、主部101aと枠部101bとの間に空隙部30が位置してもよい。第1基板101は、主部101aと枠部101bとに分割された構成であってもよいし、主部101aの一部と枠部101bの一部とがつながった構成であってもよい。
【0013】
半導体素子実装用基板1または半導体装置20の製造工程において、あるいは、半導体装置20を作動させる際の半導体素子11の発熱によって、半導体素子実装用基板1内に温度変化や温度勾配が発生する。そして、半導体素子実装用基板1や半導体素子11の熱膨張や熱収縮に起因した応力が生じる場合がある。このような場合であっても、空隙部30が存在することによって半導体素子実装用基板1に生じる応力を緩和することができるので、半導体素子実装用基板1の破損やクラックの発生を低減することが可能となる。また、半導体素子実装用基板1の変形や反りに伴って生じる実装領域aの変形や反りを低減できるため、半導体素子11を実装領域aに安定して実装することができる。また、実装領域aの変形や反りに伴って生じる半導体素子11の破損を低減できる。
【0014】
第1基板101が主部101aと枠部101bとに分割される場合、主部101aは金属材料から構成されてもよい。金属材料としては、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、タングステン、モリブデン又はこれらの金属からなる合金を用いることができる。実装領域aは、後述する第1接地導体層7とはんだやろう材等の導電性の接合材で電気的に接続されてもよい。当該構成によって、半導体素子実装用基板1の放熱性が向上するとともに、後述する第1接地導体層7、第2接地導体層8、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bが、後述する外部の実装基板に設けられるグランド層25に実装領域aを介して接続され、それぞれの接地電位が安定する。また、半導体素子実装用基板1の接地電位が加わる実装領域aと外部の実装基板に設けられる接地導体との接合面積を大きくすることができることから、実装領域aを含む半導体素子実装用基板1の接地電位がさらに安定する。したがって、半導体素子実装用基板1の信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。
【0015】
第1基板101、第2基板102及び第3基板103は、外方を向いた共通の第1外側面S1aと、第1外側面S1aの反対側に位置する第1内側面S1bとを有する。第1内側面S1bは、半導体素子実装用基板1の内方を向く。図3に示すように、第1基板101における第1内側面S1bは空隙部30に面する。第2基板102における第1内側面S1bは、第1基板101の第1内側面S1b、並びに、第3基板103の第1内側面S1bよりも内方に張り出していてもよい。
【0016】
<信号伝送部>
半導体素子実装用基板1は、例えば、複数の信号伝送部1a~1fを有する。以下、第1外側面S1aと第1内側面S1bとの間に位置する1つの信号伝送部1bについて説明する。信号伝送部1bは、他の信号伝送部1a、1c~1fと同様の構成である。
【0017】
図4は、図2Aの一部分C1を拡大した図である。図5は、図2Cの一部分C2を拡大した図である。図6は、図2Cの部分C2において信号導体を主に示した図である。図2Cにおいて部分C2は信号伝送部1fを示しているが、図5図7では、信号伝送部1bを第1内側面S1bから見た図として説明する。図4及び図5においては導体部分を網掛けにより示す。
【0018】
半導体素子実装用基板1は、信号伝送部1bの構成要素として、信号線路2、溝部3、貫通導体4、側面導体5、電極6、接続端子28及び信号電極33を備える。
【0019】
信号線路2は、第2基板102の第2上面において第2基板102の内縁側の一方の端部から周辺領域b上にかけて位置する。信号線路2は、たとえば、鉄、銅、ニッケル、金、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、タングステン等、又は、これらの材料の合金から成る。信号線路2は、半導体素子11と接続される。
【0020】
溝部3は、第1基板101の第1外側面S1aにおいて第1基板101の第1上面S101から第1下面にかけて位置する。
【0021】
側面導体5は、溝部3の内面に拡がり、信号線路2、後述する電極6及び貫通導体4と電気的に接続され、高周波信号が導通する。側面導体5は、たとえば、鉄、銅、ニッケル、金、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、タングステン等、又は、これらの材料の合金から成る。
【0022】
溝部3は、平面透視したとき、第2基板102の外縁よりも内側に位置する。よって、溝部3がある箇所において、第2基板102が出っ張った状態になる。当該構成により、溝部3に形成された側面導体5が、外部からの影響によって損傷したり、ショートするおそれが低減し、側面導体5の電気的な導通を良好に維持した状態とすることができる。なお、平面透視で、第2基板102の外縁は、第1基板101の外縁よりも外側に位置していてもよい。当該構成により、溝部3の上面にある第2基板102が、より外側に出っ張るので、溝部3に形成された側面導体5が、外部からの影響によって損傷したり、ショートするおそれがより低減し、側面導体5の電気的な導通を良好に維持した状態とすることができる。
【0023】
溝部3内の側面導体5は、はんだ等の導電性の接合材を介して外部の実装基板に電気的に接続される。当該接続の際、接合材によるメニスカスが溝部3の内面の下端に形成される。当該作用によって、側面導体5は、外部の実装基板と電気的に安定して接続される。したがって、半導体素子実装用基板1は、信号伝送部分における特性インピーダンスの変動を低減することができ、周波数特性を向上させることができる。
【0024】
溝部3は、平面透視で、曲線部を有している。より具体的には、溝部3は、平面透視で、例えば半円状(半円、半楕円、半長円など)であってもよい。半導体素子実装用基板1または半導体装置20の製造工程や、半導体装置20を作動させる際の半導体素子11の発熱によって半導体素子実装用基板1内に温度変化や温度勾配が発生する。そして、半導体素子実装用基板1の熱膨張や熱収縮に起因した応力が生じる場合がある。このような場合にも、溝部3が曲線部を有していることによって、溝部3の局所に応力が集中することを低減することができ、第1基板101、側面導体5、電極6、第1下面の信号電極33、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの破損やクラックの発生を低減できる。
【0025】
貫通導体4(図6)は、信号線路2と電気的に接続され、第2基板102の第2上面から第2下面にかけて位置する。貫通導体4は、さらに、第1基板101の第1上面で溝部3の上端部の周囲に設けられる電極6を介して側面導体5と電気的に接続される。貫通導体4は、信号線路2の他方の端部と重なる位置にあり、電気的に接続される。この場合には、高周波の電気信号をより確実に貫通導体4から信号線路2に伝送させることができるとともに、伝送される高周波の電気信号の伝送損失や反射損失を低減させることができる。
【0026】
電極6(図6)は、第1基板101の第1上面、もしくは第2基板102の第2下面であって、第1基板101と第2基板102の間に位置し、側面導体5と電気的に接続される。電極6は、半導体素子実装用基板1の内部に位置した信号導体層である。より具体的には、電極6は、第1基板101の第1上面、もしくは第2基板102の第2下面に側面導体5が延びる方向と直交する方向(X-Y方向)で、溝部3の上端部(第2基板102側の端部)の周囲に設けられ、側面導体5に電気的に接続されてもよい。さらに、平面透視したとき、電極6の外縁は、側面導体5の外縁よりも半導体素子実装用基板1の内側に位置してもよい。つまり、電極6は、第2基板102の第2下面のうち溝部3の上方において露出した部分に位置しない、すなわち、電極6は第2基板102の第2下面において露出しない構成としてもよい。当該構成により、半導体装置20をはんだ等の導電性の接合材を介して実装基板に電気的に接続する際に、接合材が側面導体5を介して電極6に濡れ広がることを低減させることができる。その結果、第2基板102と接合材との熱膨張係数差に起因して生じる応力を低減できる。また、接合材の濡れ広がり方によって特性インピーダンスが不安定に変動する可能性を低減できる。その結果、信号伝送部分となる側面導体5及び電極6における周波数特性をさらに良好に維持することができる。
【0027】
電極6は、平面透視したときの外形線(実装領域a側の外形線)が半円状(半円、半楕円、半長円など)である。このような構成によって、半導体素子実装用基板1の製造工程において、電極6を容易に形成できるとともに、電極6の上記外形の部分において応力が局所的に生じる可能性を低減できる。さらに、半導体素子実装用基板1は、電極6の上記外形線近傍における電界分布の拡がりが偏ることを低減できる。したがって、半導体素子実装用基板1は、電極6の上記外形線の部分に生じる応力によって電極6が剥がれたり、第1基板101や第2基板102にクラックが生じたりするおそれを低減できるとともに、信号伝送部分の周波数特性をさらに向上させることができる。
【0028】
接続端子28(図6)は、電極6から溝部3とは反対方向に突出し、第1基板101の第1上面、もしくは第2基板102の第2下面に位置する。接続端子28は、内層の接続端子であり、接続端子の第2基板102側の面に貫通導体4が接続される。当該接続により、電極6が、接続端子28及び貫通導体4を介して信号線路2に電気的に接続される。接続端子28により、電極6及び接続端子28と第1接地導体層7(後述)との間に生じる静電容量が大きくなり、電極6及び接続端子28による信号伝送部分の特性インピーダンスが小さくなることを緩和できる。よって、当該信号伝送部分の特性インピーダンスを所望の値にすることが容易となり、半導体素子実装用基板1の小型化を実現できる。また、当該信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。
【0029】
接続端子28は、平面透視で、電極6の外縁(第2基板102の外周側の縁)の中央部から溝部3と反対方向に直線状に位置してもよい。当該構成により、半導体素子実装用基板1は、電極6及び接続端子28による信号伝送部分の長さを短くすることができ、当該信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。
【0030】
信号電極33(図6)は、第1基板101の第1下面において溝部3を囲うように溝部3の周囲に広がる膜状導体である。信号電極33は、溝部3内の側面導体5に接続する。信号電極33は、平面視したときの外形線(実装領域a側の外形線)が半円状(半円、半楕円、半長円等)である。当該構成によって、半導体素子実装用基板1の製造工程において、信号電極33を容易に形成できるとともに、信号電極33の外縁部分に応力が局所的に生じる可能性を低減できる。さらに、信号電極33を介して半導体装置20を外部の実装基板にはんだ等の導電性の接合材で実装する際に、信号電極33及び接合材の周辺に生じる応力が一部に集中することを低減できる。したがって、半導体素子実装用基板1は、電極6の上記外形線の部分に生じる応力によって信号電極33が剥がれたり、第1基板101にクラックが生じたりするおそれを低減できる。さらに、信号電極33の上記の構成によって、半導体素子実装用基板1は、信号電極33の上記外形線近傍における電界分布の拡がりが偏ることを低減できる。さらに、信号電極33により、半導体素子11と外部の実装基板との間の電気的な接続を安定させることができる。したがって、信号電極33を有する信号伝送部分の周波数特性を改善することができる。
【0031】
図7は、図2Cの一部分C2において内部の接地導体を主に示した図である。図7において第1接地導体層7は中央部分を破断して表わしている。
【0032】
半導体素子実装用基板1は、さらに、信号伝送部1bの構成要素として、第1接地導体層7、第2接地導体層8、金属層34、35、第1凹部10A、第2凹部10B、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bを備える。
【0033】
第1接地導体層7、第2接地導体層8及び金属層34、35は、複数の信号伝送部1a~1fにおいて一体的な構成であってもよい。
【0034】
第1接地導体層7は、第1基板101の第1上面、もしくは第2基板102の第2下面であって、第1基板101と第2基板102の間で、電極6と間をあけて位置する。第1接地導体層7は、半導体素子実装用基板1の内部に位置した接地導体層である。第1接地導体層7は、半導体素子実装用基板1の内部において、電極6を取り囲むように位置してもよく、当該構成により、側面導体5及び電極6における特性インピーダンスを低減できる。さらに、電極6を介した、側面導体5から貫通導体4に至る信号伝送部分に生じる電界が意図しない範囲に広がる可能性を低減することができ、当該電界を電極6と第1接地導体層7との間に結合させることができる。したがって、上記の信号伝送部分の電界分布の拡がりを低減できる。また、高周波の電気信号を電極6と第1接地導体層7との間で電界結合しながら伝送させることができる。また、上記の信号伝送部分における特性インピーダンスを安定化させることができる。
【0035】
第2接地導体層8は、第2基板102の第2上面において、信号線路2を挟むように位置する。当該構成によって、第2基板102の第2上面において、信号伝送部分が接地電位部分に挟まれる、いわゆるコプレーナ線路の構成とすることができる。よって、信号線路2を有する信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。第1接地導体層7は、Z方向から透視したときに、信号線路2及び第2接地導体層8と重なる箇所に位置してもよい。当該構成により、信号線路2を有する信号伝送部分がいわゆるグランド付きコプレーナ線路の構成となり、当該信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。第2接地導体層8の一部は、第2基板102と第3基板103との間に位置してもよい。
【0036】
金属層34は、第1側面接地導体31Aと第2側面接地導体31Bとに繋がり、第1基板101の第1下面に拡がる。金属層34は、第1基板101の第1下面において、平面透視で信号線路2を挟むように位置する。第1下面に金属層34があることによって、実装基板との電気的な接続がしやすくなる。また、金属層34を介した半導体素子実装用基板1の放熱性が向上する。
【0037】
金属層35は、第1側面接地導体31Aと第2側面接地導体31Bとに繋がり、第3基板103の第3上面に拡がる。金属層35があることによって、信号線路2に高周波の電気信号が伝送する際に生じる電界が第3上面の金属層35に結合され、よって信号線路2の周囲における不要かつ不安定な電界分布の拡がりを低減することができる。その結果、半導体素子実装用基板1は、信号伝送部分の周波数特性をさらに向上させることができる。
【0038】
第1凹部10A及び第2凹部10Bは、第1外側面S1aにおいて第3基板103の第3上面から第1基板101の第1下面にかけて位置する。Y方向(第1外側面S1aに垂直な方向)から見て、第1凹部10A及び第2凹部10Bは、溝部3を挟んで並んで位置する。第1凹部10A及び第2凹部10Bは、溝部3の両側に、溝部3と間をあけて位置する。
【0039】
第1側面接地導体31Aは、第1凹部10Aの内面に位置する。第2側面接地導体31Bは、第2凹部10Bの内面に位置する。当該構成により、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bは、高周波信号が導通する側面導体5を挟むように位置するので、第1外側面S1aにおいても、信号伝送部分が接地電位部分に挟まれる構成となり、半導体素子実装用基板1の信号伝送部分に生じる電界分布の不要かつ不安定な拡がりと特性インピーダンスの変動を低減できる。よって、半導体素子実装用基板1の周波数特性をさらに向上させることができる。
【0040】
第1側面接地導体31Aは、第1基板101、第2基板102及び第3基板103にわたって連続していてもよい。さらに、第1側面接地導体31Aは、第1凹部10Aの内面の全域に位置してもよい。第2側面接地導体31Bは、第1基板101、第2基板102及び第3基板103にわたって連続していてもよい。さらに、第2側面接地導体31Bは、第2凹部10Bの内面の全域に位置してもよい。当該構成により、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの面積を大きくすることができる。よって、半導体素子実装用基板1の接地電位を安定させることができ、側面導体5の周囲に生じる電界分布の不要かつ不安定な拡がりと特性インピーダンスの変動をより安定的に低減できる。
【0041】
第1側面接地導体31Aのうち、第1基板101に位置する部位と、第2基板102に位置する部位と、第3基板103に位置する部位とは、平面透視したとき、少なくとも一部の範囲で、互いに重なってもよい。当該構成により、半導体素子実装用基板1は、半導体素子実装用基板1の信号伝送部分に生じる電界分布の不要かつ不安定な拡がりと特性インピーダンスの変動をより低減できる。第2側面接地導体31Bについても同様である。
【0042】
半導体素子実装用基板1は、信号伝送部1bの構成要素として、さらに、第1切欠き部9、第2切欠き部41及び内面溝32を備える。
【0043】
第1切欠き部9(図4)は、第3基板103の第1外側面S1aに位置し、平面透視で溝部3と重なる。第1切欠き部9は、凹状で、第3基板103の第3上面から第3下面にかけて位置してもよい。第1切欠き部9の内面には接地導体が位置しない。半導体素子実装用基板1の小型化を図る場合、信号線路2と周囲の接地導体との間隔が狭くなることで、信号伝送部分と接地電位部分との間に生じる静電容量が大きくなり、特性インピーダンスが小さくなりかねない。しかしながら、第1切欠き部9により、上記の静電容量を小さくし、特性インピーダンスが小さくなることを緩和することができる。
【0044】
第1切欠き部9は、平面視において、外形が溝部3より大きくてもよい。当該構成により、半導体素子実装用基板1は、溝部3と第1切欠き部9との間に位置する第2基板102に応力が集中することを低減できる。よって、第2基板102にクラックや割れが生じる可能性を低減することができる。
【0045】
X方向(第3基板103の第3上面の外縁に沿った方向)における第1切欠き部9の幅W21(図4)は、第3基板103に位置する第1凹部10AのX方向における幅W25a(図4)、あるいは、第3基板103に位置する第2凹部10BのX方向における幅W25b(図4)よりも小さくてもよい。X方向は、第1外側面S1aに沿った水平方向(第1方向)と定義してもよい。第1凹部10Aおよび第2凹部10Bと第1切欠き部9との距離が近くなりすぎると、第3基板103の外方への張り出し部分が小さくなり破損しやすくなる。よって、第1切欠き部9の幅W21を小さくし、張り出し部分を確保することにより、第3基板103の強度を保持する加工が容易となる。
【0046】
第2切欠き部41(図5)は、第1基板101の第1内側面S1bに位置する。第2切欠き部41は、Y方向(第1外側面S1aに垂直な方向)から透視したとき、溝部3と重なってもよい。第2切欠き部41は、凹状で、第1基板101の第1上面から第1下面にかけて位置してもよい。第2切欠き部41の内面には接地導体が位置しない。第2切欠き部41により、溝部3のY方向に位置する第1基板101のセラミックス(誘電体)の厚みが減少する。よって、溝部3の側面導体5の周囲における実効誘電率が下がる。したがって、第2切欠き部41の厚み(Y方向の厚み)を調整することで、上記の信号伝送部分の特性インピーダンスを所望の値にすることが容易となり、低周波帯域における反射特性を低減できるなど、当該信号伝送部分における周波数特性をさらに向上させることができる。
【0047】
第2切欠き部41のX方向(第3基板103の第3上面の外縁に沿った方向)における幅W22(図5)は、溝部3のX方向における幅W23(図5)よりも大きくてよい。当該構成によれば、第2切欠き部41の幅W22を高周波信号が伝送される側面導体5の幅(幅W23に相当)よりも大きくすることでインピーダンスの低下をより容易に低減することができる。
【0048】
さらに、第2切欠き部41のX方向における幅W22(図5)は、第1切欠き部9のX方向における幅W21(図4)よりも大きくてもよい。
【0049】
内面溝32は、第3基板103の第1内側面S1bに位置し、平面視したときにX方向(第3基板103の第3上面の外縁に沿った方向)から信号線路2を間に挟む。内面溝32は、第3基板103の第3上面から第3下面にかけて位置する。内面溝32の内面には接地電位となる内面接地導体が位置する。内面接地導体が位置する内面溝32により、信号線路2の実装領域a側の端部における電界分布の不要かつ不安定な拡がりを低減でき、信号伝送部1bの特性インピーダンスの変動を低減できる。
【0050】
<第1凹部と第2凹部との間隔>
第1外側面S1aにおいて、溝部3は第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間に位置する。第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間には、第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔が上の方(Z軸の正方向)が下の方(Z軸の負方向)よりも狭い縮幅部H1(図4)が含まれる。
【0051】
縮幅部H1は、溝部3の上端を含む高さ範囲、あるいは、溝部3よりも上方の高さ範囲に位置してもよい。縮幅部H1において、第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔は段状に狭くなってもよいし、緩やかに狭くなってもよい。縮幅部H1により、縮幅部H1が無い場合と比較して、縮幅部H1の上部における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔が狭くなる。よって、縮幅部H1の上部において、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの間隔を狭くすることができる。そして、当該間隔が狭くなることにより、溝部3内の側面導体5、電極6、貫通導体4及び信号線路2を介して伝送される高周波信号のカットオフ周波数が高くなり、信号伝送部1bの周波数特性が広帯域化する。さらに、縮幅部H1があることで、第1基板101の第1下面において、溝部3と第1凹部10Aとの間隔、並びに、溝部3と第2凹部10Bとの間隔を広くとることができる。半導体素子実装用基板1を実装基板に実装する際、半導体素子実装用基板1の信号電極33及び金属層34が半田等の導電性接合材を介して実装基板の信号電極と接地電極とに接合される。したがって、溝部3と第1凹部10Aとの間隔、並びに、溝部3と第2凹部10Bとの間隔が広くなることで、上記接合の際に信号電極33と金属層34とが第1基板101の第1下面で広がった導電性接合材により短絡してしまう恐れを低減できる。よって、半導体素子実装用基板1の実装上の信頼性を向上できる。
【0052】
第1基板101における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W1と、第2基板102における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W2と、第3基板103における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W3とは、次の条件(1)、(2)を満たす構成であってもよい。
W1≧W2、W2≧W3 ・・・ (1)
W1、W2、W3の少なくとも1つの値が異なる ・・・ (2)
【0053】
当該構成により、第1基板101と第2基板102との間、あるいは、第2基板102と第3基板103との間において、第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔が上の方が狭くなる。そして、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの間隔が上の方が狭くなることで、溝部3内の側面導体5、電極6、貫通導体4及び信号線路2を介して伝送される高周波信号のカットオフ周波数が高くなり、信号伝送部1bの周波数特性が広帯域化する。さらに、広帯域化を実現しつつ、溝部3と第1凹部10Aとの間隔、並びに、溝部3と第2凹部10Bとの間隔を広くとることができることから、半導体素子実装用基板1の実装上の信頼性を向上できる。
【0054】
さらに、間隔W1~W3は、次の条件(3)を満たしてもよい。
W1>W2 ・・・ (3)
当該構成によれば、貫通導体4が位置する高さにおいて、第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔、すなわち、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの間隔を狭くすることができ、信号伝送部1bの周波数特性をより広帯域化できる。
【0055】
さらに、間隔W1~W3は、次の条件(4)を満たしてもよい。
W2=W3 ・・・ (4)
当該構成によれば、第2基板102に位置する第1凹部10A及び第2凹部10Bと、第3基板103に位置する第1凹部10A及び第2凹部10Bとが、平面視で重なる部分が多い構成を採用できる。そして、重なった部分において、第2基板102に位置する第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bと、第3基板103に位置する第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bとが連続する。したがって、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの形状の安定化を図り、信号伝送部1bの接地電位を安定させることができる。よって、信号伝送部1bの周波数特性の安定化が図れる。
【0056】
間隔W2を狭くしすぎると、特性インピーダンスの低下により、周波数特性の広帯域化に付随して低周波帯域の反射特性が劣化する。しかし、第2切欠き部41によって、側面導体5の周囲の特性インピーダンスを高くすることで、上記の反射特性の劣化を低減できる。
【0057】
第1凹部10Aの厚み(Y方向の最大寸法)は、第1基板101から第3基板103にかけて同一であってもよい。第2凹部10Bの厚み(Y方向の最大寸法)は、第1基板101から第3基板103にかけて同一であってもよい。
【0058】
<第3基板の第3上面>
図8は、第1切欠き部の周辺を示す拡大斜視図である。
【0059】
第3基板103の第3上面は、金属層35が位置する導体領域R1と、金属層35が位置しない非導体領域R2とを含む。非導体領域R2は、第1凹部10Aと第1切欠き部9との間の位置P1から第1切欠き部9と第2凹部10Bとの間の位置P2にかけて、第3基板103の第3上面の外縁E103(図8)まで拡がる。第3上面の外縁E103は、第3基板103の第3上面における第1外側面S1a側の縁を意味する。当該構成によれば、第1外側面S1aをダイシング等により形成する際、位置P1から位置P2までの第3上面の外縁E103において金属層35のバリの発生を低減できる。したがって、信号線路2が位置する近傍において第1外側面S1aにバリなどの導体が位置することが低減され、安定した周波数特性が得られる。さらに、非導体領域R2の面積の調整により、信号伝送部1bの特性インピーダンスの調整が容易になる。
【0060】
非導体領域R2は、Y方向(第1外側面S1aに垂直な方向)における幅D1が、第1切欠き部9に近づくにつれて広くなる拡幅部H11(図8)を有する。当該構成により、信号線路2から側面導体5にかけて導通する高周波信号のインピーダンスが低下しやすくなることを低減できる。
【0061】
導体領域R1は、第3基板103の第3上面に位置する第1凹部10Aの辺E10A(図4)の全域、並びに、第3基板103の第3上面に位置する第2凹部10Bの辺E10B(図4)の全域に拡がる。当該構成により、金属層35の接地電位が安定する。
【0062】
(変形例1)
図9は、変形例1の半導体素子実装用基板の一部を示す図である。図9が示す部分C1は図2Aの部分C1に相当する。
【0063】
図9に示すように、第1基板101における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W1と、第2基板102における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W2と、第3基板103における第1凹部10Aと第2凹部10Bとの間隔W3とは、条件(5)を満たしてもよい。
W2>W3 ・・・ (5)
さらに、条件(6)を満たしてもよい。
W1=W2 ・・・ (6)
【0064】
条件(5)を満たすことで、溝部3よりも上方で第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの間隔が狭くなる。よって、溝部3内の側面導体5、電極6、貫通導体4及び信号線路2を介して伝送される高周波信号のカットオフ周波数が高くなり、信号伝送部1bの周波数特性が広帯域化する。さらに、広帯域化を実現しつつ、溝部3と第1凹部10Aとの間隔、並びに、溝部3と第2凹部10Bとの間隔を広くとることができることから、半導体素子実装用基板1の実装上の信頼性を向上できる。
【0065】
条件(6)を満たすことで、第1基板101に位置する第1凹部10A及び第2凹部10Bと、第2基板102に位置する第1凹部10A及び第2凹部10Bとが、平面視で重なる部分を多くすることができる。平面視で重なった部分においては、第1基板101に位置する第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bと、第2基板102に位置する第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bとが連続する。したがって、第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bの形状の安定化を図り、信号伝送部1bの接地電位を安定させることができる。よって、信号伝送部1bの周波数特性の安定化が図れる。
【0066】
(変形例2)
図10A図10Cは、変形例2に係る半導体素子実装用基板を示す。図10Aは変形例2に係る半導体素子実装用基板1Aを上方から見た斜視図、図10Bは下方から見た斜視図、図10C図10AのA-A線における断面図である。図10A図10Cに示すように、第1基板101は、実装領域aと周辺領域bとを含めて一体的な構成であってもよい。当該構成を有する半導体素子実装用基板1Aは、図3に示した第1基板101の空隙部30、第1基板101の第1内側面S1b、並びに、図5に示した第2切欠き部41を有さない。その他の構成は、上述した実施形態の半導体素子実装用基板1と同様である。
【0067】
変形例2の半導体素子実装用基板1Aにおいても、実施形態1に示した半導体素子実装用基板1と共通の構成要素により、当該構成要素による効果が同様に奏される。
【0068】
(変形例3)
図2Aあるいは図10Aに示すように、第1基板101、第2基板102及び第3基板103は、第1外側面S1aと隣り合う外側面S2a、S3aと、第1外側面S1aと外側面S2aとの間に位置する角部T1と、第1外側面S1aと外側面S3aとの間に位置する角部T2とを有する。そして、図2Aあるいは図10Aの信号伝送部1dに示すように、第2凹部10Cは外側面S2aと交差してもよい。同様に、図2Aあるいは図10Aの信号伝送部1aに示すように、第1凹部10Dは外側面S3aに交差してもよい。外側面S2a、S3aは、本開示に係る第2外側面の一例に相当する。
【0069】
当該構成によれば、角部T1、T2の近傍の第1基板101、第2基板102及び第3基板103の形状が単純化され、角部T1、T2にクラック等の破損が生じる恐れを低減できる。
【0070】
(半導体装置の構成)
図11は、図1の半導体装置の分解斜視図である。半導体装置20を組み立てる場合、第1基板101の実装領域aに半導体素子11を載置して第1基板101に接着剤等を介して接着固定し、半導体素子11と信号線路2とをボンディングワイヤ等を介して電気的に接続する。このようにして、半導体素子実装用基板1に半導体素子11を実装することによって製品としての半導体装置20が完成する。また、図示しないが、半導体素子実装用基板1の上面に蓋体を有していてもよい。
【0071】
半導体装置20は、さらに、第1基板101の第1下面に接合された実装基板21を有してもよい。実装基板21は、例えば複数の絶縁層で構成されており、上層の上面には、はんだ等の導電性の接合材を介して側面導体5及び第1下面の信号電極33が電気的に接続されるとともに高周波の電気信号が伝送される、銅箔等の金属材料から成る信号導体26及び第2接続端子27が設けられる。さらに、実装基板21は、上層の上面に信号導体26を間に挟み、第2接続端子27を取り囲むように、所定の間隔が設けられた銅箔等の金属材料から成り、接地電位となるグランド層25が形成されている。
【0072】
グランド層25と、半導体素子実装用基板1の下面に設けられた金属層34、第1側面接地導体31A、第2側面接地導体31B、金属材料からなる実装領域aの下面とが、はんだ等の接合材を介して接合される。実装基板21は、上面に前述の第2接続端子27、信号導体26及びグランド層25が設けられることにより、平面伝送線路の1つである、いわゆる、コプレーナ線路が構成される。
【0073】
また、実装基板21は、内層に接地導体22が形成されていてもよい。接地導体22は、接地導体22が形成される形成領域23及び接地導体22が形成されない非形成領域24を有している。接地導体層の非形成領域24は、平面視において、少なくとも第1下面の信号電極33(図6)及び第2接続端子27と重なる位置に設けられない。当該構成によって、半導体装置20を実装基板21に実装した際に、所望の特性インピーダンスの範囲に調整し難くなることを緩和することができる。なぜならば、非形成領域24と信号電極33(図6)及び第2接続端子27とが重なると、第1下面の信号電極33と第2接続端子27とを電気的に接続する半田等の導電性の接合材や、この接合材によって側面導体5の側面に形成されるメニスカスにより、信号導体26と側面導体5との間の信号伝送部分において、接地電位部分との間に生じる静電容量が大きくなるとともに特性インピーダンスが小さくなるためである。
【0074】
また、非形成領域24は、平面視において、信号線路2の信号伝送方向(すなわち、信号線路2から半導体素子11の方向)と直交する方向において、側面導体5を間に挟む第1側面接地導体31A及び第2側面接地導体31Bよりも内側(側面導体5側)に位置してもよい。当該構成により、信号導体26と側面導体5との間の信号伝送部分における電界分布の不要かつ不安定な拡がりと特性インピーダンスの変動を低減できる。この結果、半導体素子実装用基板1は、信号伝送部分の周波数特性をさらに向上させることができる。
【0075】
以上に説明した、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更等が可能である。また、上述した間隔W1、W2、W3、並びに、幅W21、W22、W23、W25a、W25bは、該当部位の上端から下端にかけて一定でなくてもよい。計測する高さによって値が異なる場合、該当部位の上端から下端までを等分した複数の高さにおける計測値から代表値を求め、当該代表値を間隔W1、W2、W3、並びに、幅W21、W22、W23、W25a、W25bの値とすればよい。代表値としては、上記複数の高さにおける計測値から中央80%の計測値を抽出し、抽出した計測値の平均値を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、半導体素子実装用基板及び半導体装置に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 半導体素子実装用基板
1e~1f 信号伝送部
101 第1基板
102 第2基板
103 第3基板
a 実装領域
b 周辺領域
2 信号線路
3 溝部
4 貫通導体
5 側面導体
6 電極
7 第1接地導体層
8 第2接地導体層
9 第1切欠き部
10A、10D 第1凹部
10B、10C 第2凹部
11 半導体素子
20 半導体装置
21 実装基板
22 接地導体
23 形成領域
24 非形成領域
25 グランド層
26 信号導体
27 第2接続端子
28 接続端子
30 空隙部
31A 第1側面接地導体
31B 第2側面接地導体
32 内面溝
33 信号電極
34 金属層
35 金属層
41 第2切欠き部
S101 第1上面
S1a 第1外側面
S1b 第1内側面
S2a、S3a 外側面(第2外側面)
T1、T2 角部
H1 縮幅部
H11 拡幅部
W1~W3 間隔
W21~W23、W25a、W25b、D1 幅
R1 導体領域
R2 非導体領域
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11