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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】中押管セット
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20250109BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E21D9/06 311B
F16L1/028 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024098513
(22)【出願日】2024-06-19
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-147462(JP,U)
【文献】特開2006-336273(JP,A)
【文献】特開2014-020535(JP,A)
【文献】特開2002-276285(JP,A)
【文献】特開2004-324679(JP,A)
【文献】実開平06-037684(JP,U)
【文献】実開昭61-036788(JP,U)
【文献】実開昭54-094621(JP,U)
【文献】特開2012-246678(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1895806(KR,B1)
【文献】特開2000-054786(JP,A)
【文献】特開2013-108318(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197619(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
F16L 1/028
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
F16L 21/00-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿った中心軸をもつ筒状の標準管を地中で前進させる中押工法において用いられ、共に前記標準管と同軸の筒状の構造を具備する、前記標準管の後方に配置されて前記標準管を前進させる中押外管と、当該中押外管の後方に配置され、前記中押外管に対して前記中心軸に沿って移動可能とされて前記中押外管及び前記標準管を前進させる中押内管と、を有する中押管セットであって、
前記中押内管は、前記標準管と同軸の筒状とされた中押内管前方筒部を前方に、前記中押外管は、前記標準管と同軸の筒状とされた中押外管後方筒部を後方に、それぞれ具備し、
前記中押内管において前記中押内管前方筒部の前方に設けられた中押内管前方支持部と、前記中押外管において前記中押外管後方筒部の前方に設けられた中押外管後方支持部との間に設けられた加圧器具によって前記中押外管が前方側に、前記中押内管が後方側に、それぞれ加圧されることによって、前記中押外管において前記中押外管後方支持部よりも前方に設けられた中押外管前方支持部が前記標準管を前進させるように形成され、
前記中押内管は、前記中押内管前方筒部が前記中押外管後方筒部の内部にある状態で前記中押外管に対して前後方向で移動可能とされ、
前記中押内管前方筒部は、後方側に設けられた中押内管第1筒部と、前方側に設けられ前記中押内管第1筒部よりも外径が小さな中押内管第2筒部と、を具備し、
前記中押外管後方筒部は、後方側に設けられ内径が前記中押内管第1筒部の外径よりも大きな中押外管第1筒部と、前方側に設けられ、内径が前記中押外管第1筒部よりも小さく、かつ内径が前記中押内管第2筒部の外径よりも大きな中押外管第2筒部と、を具備し、
前記中押内管第1筒部の外面に装着された第1封止部材と、
前記中押内管第2筒部の外面に装着された第2封止部材と、
が設けられ、
前記中押外管の前記中押内管に対する前後方向での移動に際して、
前記中押外管第1筒部の内面が、前記中押内管第1筒部の外面における前記第1封止部材が装着された箇所及び前記中押内管第2筒部の外面における前記第2封止部材が装着された箇所と対向する第1の状態と、
前記中押外管第1筒部の内面が前記中押内管第1筒部の外面における前記第1封止部材が装着された箇所と対向すると共に前記中押外管第2筒部の内面が前記中押内管第2筒部の外面における前記第2封止部材が装着された箇所と対向する第2の状態と、
をとり、
前記第1の状態においては、前記中押外管第1筒部の内面と前記中押内管第1筒部の外面とは前記第1封止部材によって封止され、かつ前記中押外管第1筒部の内面と前記中押内管第2筒部の外面とは前記第2封止部材によっては封止されず、
前記第2の状態においては、前記中押外管第2筒部の内面と前記中押内管第2筒部の外面とは前記第2封止部材によって封止されることを特徴とする中押管セット。
【請求項2】
前記第1の状態において、前記第1封止部材が前記中押外管第1筒部の内面と当接し、前記第2封止部材は前記中押外管第1筒部の内面と当接しない設定とされたことを特徴とする請求項に記載の中押管セット。
【請求項3】
前記中押外管における前記中押外管後方支持部と前記中押内管における前記中押内管前方支持部とを当接させた場合に、前記第2の状態とされることを特徴とする請求項1又は2に記載の中押管セット。
【請求項4】
前記第2封止部材は、前記中心軸がある側と反対側の表面において、前方から後方に向かうに従って前記中押内管第2筒部の外面から離間するように傾斜した傾斜部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の中押管セット。
【請求項5】
前記第2封止部材は、弾性材料で構成され、前記傾斜部よりも後方に、
前記中押内管第2筒部の外面がある側と反対側において、力が加わっていない場合における前後方向に沿った断面形状において円弧形状とされた表面を有する後方封止部を具備することを特徴とする請求項に記載の中押管セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進管を敷設する推進工事における中押工法において組み合わせて用いられる2種類の中押管と、これらの間を封止する封止部材からなる中押管セットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート等で構成された円筒形状のヒューム管(推進管)は、中心軸方向で多数が連結された状態で土中等において設置されて用いられる。この際、地中に形成された立坑の側面から水平方向に多くの推進管を連結させた構造を構築する場合には、先端の推進管を順次前方に向けて前進させることが必要となる。このためには、ジャッキ等を用いてこの作業を行うことができるが、限られたスペースの立坑内にこのための機構を全て設置することは困難である場合が多い。
【0003】
このため、立坑の外側となる地中において既に設置された推進管等の内側にジャッキ等を設置し、これを用いて先頭の推進管を所定の位置まで前進させた後に、使用されたジャッキ等を撤去し、これよりも後方の推進管を連結するという作業を繰り返す中押工法が知られている。
【0004】
中押工法は、通常の推進管(標準管)とは異なる構造の中押管を用い、これをジャッキで加圧して間接的に標準管を加圧することによって行われる。すなわち、推進管は、施工後の主体となる標準管と、推進工事のために用いられる中押管に大別され、中押管には後述する2種類がある。中押管は、工事の終了後には標準管に付随した形態で残存するため、この標準管の使用時には障害とはならないような形状とされる。また、前記のように推進管を前進させる作業を行う際には、標準管や中押管の内部に水や泥の侵入がないように、これらの内部の空間と外部との間が封止されるように構成される。工事終了後においても中押管は前記の通りに残存するため、このように封止された状態は、工事終了後にも恒久的に維持される必要がある。このための具体的構造の例は、例えば特許文献1、2に記載されている。
【0005】
図5は、中押工法の全体構成を模式的に示す図である。図中において、地盤G中に形成された立坑Sから地中の左側に向けて複数の標準管80が連結されて延伸するように構成される。標準管80の構造はここでは簡略化されて示されている。標準管80は略円筒形状を呈し、各標準管80は中心軸方向で連結され、図5においてはその中心軸X方向に沿った断面が示されている。ここで、先頭(左側)の標準管80Aの先端には刃口85が装着され、これを図中左側に加圧することによって、前進させることができる。このために、図中で標準管80Bと標準管80Cの間に中押機構90が設けられる。中押機構90は、後方の標準管80Cに固定された上で前方の標準管80Bを前方に加圧することによって、先頭の標準管80Aを地中で前進させる。図5においては記載が省略されているが、立坑S内には立坑S側から推進を行う元押機構も設けられている。
【0006】
中押機構90は、具体的には、前方側の中押外管(S型管)と後方側の中押内管(T型管)、これらの間に挟持されるジャッキ等で構成される。ジャッキの伸縮に際して中押外管、中押内管は互いに中心軸Xに沿って摺動し、この動きによって、前方の標準管を前進させる。図6は、図5における標準管80の、図7図8は、それぞれ中押外管110、中押内管120の、中心軸Xに沿った、図5に対応した詳細な断面図である。図7図8においては、後述する弾性部材が装着された状態が示されている。
【0007】
図6において、標準管80は、略円筒形状のコンクリート(鉄筋コンクリート)で構成された標準管本体81と、その後方において後方側に突出するように装着された金属製のカラー82を具備する。標準管本体81の外径とカラー82の外径は等しくなるように設定されている。また、標準管本体81の先頭側はその前方にある標準管80のカラー82内に収容されるように僅かに小径化された小径部81Aとされており、これによってカラー82を用いて標準管80同士を連結し、内側(中心軸X側)からこれらの間を固定することができる。また、図示は省略されているが、小径部81Aには、小径部81Aの外面とその前方の標準管80のカラー82の間を封止するシール部材(封止部材)が装着されるが、その記載は省略されている。このため、地中において連結後に土砂や水分が標準管80の内部に侵入することが抑制される。
【0008】
図7の中押外管110において、後方側(図中右側)には、前記のカラー82に対応しこれと同じ外径である円筒形状の中押外管後方筒部111、前方側には、前記の推進管本体81における小径部81Aに対応する円筒形状の中押外管前方筒部112が設けられる。また、中押外管前方筒部112の前方側(図中左側)には、中心軸X側に延伸する中押外管前方支持部113が設けられる。前方からみて、中押外管前方支持部113は中心軸Xを中心とした円環形状に形成される。同様に、後方側(図中右側)には、円環形状の中押外管後方支持部114が設けられる。中押外管後方支持部114を介して中押外管前方筒部112と中押外管後方筒部111は連結される。このため、中押外管後方筒部111、中押外管前方筒部112、中押外管前方支持部113、中押外管後方支持部114は一体化されて金属で形成される。また、中押外管前方支持部113、中押外管後方支持部114の間はコンクリート等で充填された充填部115となっている。
【0009】
また、中押外管前方筒部112の外面には、後述するように前方の標準管80のカラー82の内面との間を封止する封止部材(前方封止部材)116が装着されている。
【0010】
図8の中押内管120も、中押外管110と同様に、中押内管後方筒部121、中押内管前方筒部122、中押内管前方支持部123、中押内管後方支持部124が一体化されて金属で形成される。また、中押内管前方支持部123、中押内管後方支持部124の間にコンクリート等で構成された充填部125が形成されている。
【0011】
中押内管前方筒部122の外面には、後述するように前方の中押外管110の中押外管後方筒部111の内面との間を封止する封止部材126が装着されている。ここで、封止部材126は中心軸X方向に沿って2つ設けられ、これらの間には、潤滑剤を内側から外側に向けて注入するための潤滑剤注入孔125Aが充填部125及び中押内管前方筒部122を貫通して形成されている。なお、図8において、潤滑剤注入孔125A以外については中心軸Xの周りで一様に設けられているが、実際には潤滑剤注入孔125Aだけは周方向で分散して複数設けられている。
【0012】
実際に上記の中押外管110、中押内管120を用いて標準管80を前進させる場合の具体的構成を図9に示す。ここでは、図6図8における上側の部分に対応した箇所のみについて記載され、標準管80の小径部81Aの記載は省略されている。
【0013】
図9においては、上側から下側に向けて時系列で上記の箇所の構造の変遷が示されている。まず、図9の(1)に示されるように、前進させる対象の標準管80が初期の位置に設置された後で、図9の(2)に示されるように、中押外管110、中押内管120が後方から挿入されて装着される。なお、実際には、中押内管120にはその後方において後方の標準管80が、その小径部81Aが中押内管後方筒部121に収容された状態で固定されている、あるいは更にこの後方にも前記のように他の標準管80が固定されているが、これらは本願発明には無関係であるため、その記載は省略されている。
【0014】
ここで、中押外管110における中押外管前方支持部113は前方の標準管80の標準管本体81と当接し、中押外管110における中押外管後方支持部114と中押内管120における中押内管前方支持部123との間にはジャッキ(加圧器具)200、当て輪210が挟持される。ここで、図9においては単純化された断面が示されているが、当て輪210は中押内管前方支持部123と同様の円環形状を呈しており、ジャッキ200は実際には周方向において均等に分散して複数(例えば16個)設けられている。ジャッキ200は中心軸X方向で伸縮するが、図9の(2)においてはこれが最も縮んだ状態とされている。
【0015】
この状態で後方の中押内管120の後端側を固定してジャッキ200を伸長させることによって、図9の(3)に示されるように、前方の標準管80(正確には図5における先頭の標準管80A)を前進させることができる。その後、図9の(4)に示されるようにジャッキ200を収縮させると共に中押内管120を前進させれば、図9の(2)の構造全体がジャッキ200の伸長量だけ前進した状態となる。その後に再び図9の(3)(4)の動作を繰り返した図9の(5)(6)によって更に標準管80を前進させることができる。すなわち、図9の(3)(4)の動作を繰り返すことによって、目的の位置まで標準管80を前進させることができる。
【0016】
その後、目的の位置まで標準管80を前進させた図9の(7)の状態において、ジャッキ200及び当て輪210を撤去し、図9の(8)に示されるように中押内管120を前進させて中押内管120の中押内管前方支持部123を中押外管110における中押外管後方支持部114と当接させた状態で、中押外管110とその前方の標準管80のカラー81、中押内管120と中押外管110を溶接等によって固定することができる。また、前記のように、中押内管120にはその後方側の標準管80が固定されているため、これによって、前方の標準管80、中押外管110、中押内管120、後方の標準管80が固定される。
【0017】
このため、図9の工法によれば、中押外管110、中押内管120、ジャッキ200等を用いて標準管80を地中における所定の位置まで前進させることができる。なお、図9においては、先頭側の標準管80を中押外管110、中押内管120を用いて前進させることのみが記載されているが、実際には図9の(2)の状態で、前記のように後方側に接続された標準管80を立坑S中の元押機構を用い、後方側の標準管80を介して先頭側の標準管80、中押外管110、中押内管120等を、所定の位置まで前進させる。その後、元押機構によってこれ以上の前進を行わせることが困難となった場合に、図9の(3)(ジャッキ200による前進)以降の工程が行われる。すなわち、実際には図9の工程と元押機構による前進とは組み合わせて用いられるが、本願発明において問題となるのは、先頭側の標準管80、中押外管110、中押内管120の相対的な位置関係の変動に関わる事項であり、元押機構を動作させる場合には基本的にはこれらの相対的位置関係は変動しないため、以下では元押機構の動作に関わる点については記載しない。最終的には、中押外管110、中押内管120等は、工事終了後においても撤去せずに、前後の標準管80と共に、複数の標準管80が連結された構造体の一部として用いることができる。
【0018】
前記の通り、上記の工事中においては、標準管80等の内部(中心軸X側の空間)に土砂や水分を侵入させないために、中押外管110側に封止部材116、中押内管120側に封止部材126がそれぞれ装着され、図9に記載された状態では、封止部材116は中押外管前方筒部112の外面と標準管80のカラー82の内面との間を封止し、封止部材126は中押内管前方筒部122の外面と中押外管110の中押外管後方筒部111の内面との間を封止する。これらの封止部材は弾性体で構成され、その弾性力によってこれらが当接する面との間を封止し、土砂や水分の侵入を抑制する。このように封止部材116、封止部材126によって中心軸X側の空間が封止された状態は、推進工事が終了した図9の(8)の状態においても維持される。図7図8に示されるように、これらの封止部材は中押外管110、中押内管120の設置前に予め装着される。
【0019】
ここで、図9の工程において、各封止部材にはこれを図中の上下方向(中心軸Xと垂直な方向)で圧縮する力に加え、標準管80、中押外管110、中押内管120の移動に際して水平方向(中心軸Xに沿った方向)に沿った力が働く。このため、図示は省略されているが、これらの封止部材が装着された面には、封止部材の横方向の移動を抑制するストッパとなる構造も形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2014-70479号公報
【文献】特開2012-246678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
図9においては、各工程の形態とする際に水平方向(中心軸Xに沿った方向)に沿って封止部材に加わる力の封止部材側からみた向き(封止部材側が上側で当接する面の相対的な移動方向)を示す矢印が記載されている。図9の(2)においては、中押外管110、中押内管120は後方側(右側)から挿入されるため、封止部材116に対しては矢印A1、封止部材126に対しては矢印B1で示されるように、共に後方側(右側)に向かう力が働く。図9の(3)以降においては、中押外管110と標準管80(カラー81)の位置関係は変わらないため、これ以降においては封止部材116には水平方向に沿った力は加わらない。
【0022】
一方、図9の(3)においては、ジャッキ200の伸長に伴って封止部材126には矢印B2で示されるように前方側(左側)に向かう力が働き、その後の(4)においては、矢印B3で示されるように後方側(右側)に向かう力が働く。図9の(5)、(6)については、図9の(3)、(4)と同様である。また、最終的な形態とする図9の(8)の際には、矢印B4で示されるように後方側(右側)に向かう力が働く。
【0023】
すなわち、上記の工程において封止部材116に対しては後方向きの力が1回のみ加わるのに対して、封止部材126に対しては、後方向き、前方向きの力が繰り返し加わる。特に、前記の通り、図9の(3)(4)の動作は複数回繰り返されるため、このサイクルは多数回繰り返される。このため、封止部材116に対する摩耗の影響は非常に小さくなるのに対して、封止部材126に対する摩耗の影響は大きくなり、その耐久性が問題となった。
【0024】
また、図10(a)、(b)は、図7図8における封止部材116、封止部材126及びこれらの周囲の構造を簡略化し拡大して示す、前後方向に沿った断面図である。ここで、前記のストッパとなる構造の記載は省略されている。前記の通り、封止部材116に対しては後方側に向かう(右向きの)力が1回のみ加わる。このような場合には、図10(a)に示されるように、後方側に向けてこれが装着された面(中押外管前方筒部112の外面)から離間するように傾斜した傾斜部116Aを複数具備するようにして、左右で非対称とされた形態の弾性体で構成された封止部材116を用いることができる。これによって、図9の(2)に示されるように中押外管110のカラー82に対する装着が容易になると共に、傾斜部116Aに働く弾性力によって、これによる封止も強固となる。
【0025】
一方、前記の通り、封止部材126には水平方向の力が交互に向きを変えて多数回加わるため、封止部材126を封止部材116と同様の形態とすることができない。このため、封止部材126は、図10(b)に示されるように左右対称な形状とされる。また、封止部材126は水平方向で2つ設けてられ、2つの封止部材126の間には潤滑剤注入孔125Aが設けられている。特に図9の(3)(4)等の工程においては、中押内管120の内部側から潤滑剤を注入して封止部材126の摺動を円滑に行わせて図9の工程を容易に行わせると共に、封止部材126の劣化を抑制することができる。
【0026】
この場合、封止部材126は、その上面と下面に働く弾性力によって中押内管内周部122の外面と中押外管110の中押外管外周部111の内面との間を封止するが、このような形状を有する封止部材126による封止の効果は前記の封止部材116と比べて小さい。更に、上記のように封止部材126に力が加わるサイクル数は場合により1000回を超えることもある。この場合には、上記のような潤滑剤を用いた場合でも、摩耗により封止部材126が劣化し、その封止能力が低下することがあった。
【0027】
中押内管前方筒部122と中押外管後方筒部111との間は、図9に示されたような施工時だけでなく、実際にはその後においても恒久的に封止されることが要求される。このため、図9の(8)の形態とされた後では、この時点における封止部材126の劣化を考慮して、中押内管前方筒部122と中押外管後方筒部111との間を中心軸Xの周囲の全方向にわたり溶接することによって封止するという作業が必要となった。
【0028】
このため、中押工法において、推進管の内部側と外部との間の封止を確実に行わせることができる技術が求められた。
【0029】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の中押管セットは、前後方向に沿った中心軸をもつ筒状の標準管を地中で前進させる中押工法において用いられ、共に前記標準管と同軸の筒状の構造を具備する、前記標準管の後方に配置されて前記標準管を前進させる中押外管と、当該中押外管の後方に配置され、前記中押外管に対して前記中心軸に沿って移動可能とされて前記中押外管及び前記標準管を前進させる中押内管と、を有する中押管セットであって、前記中押内管は、前記標準管と同軸の筒状とされた中押内管前方筒部を前方に、前記中押外管は、前記標準管と同軸の筒状とされた中押外管後方筒部を後方に、それぞれ具備し、前記中押内管において前記中押内管前方筒部の前方に設けられた中押内管前方支持部と、前記中押外管において前記中押外管後方筒部の前方に設けられた中押外管後方支持部との間に設けられた加圧器具によって前記中押外管が前方側に、前記中押内管が後方側に、それぞれ加圧されることによって、前記中押外管において前記中押外管後方支持部よりも前方に設けられた中押外管前方支持部が前記標準管を前進させるように形成され、前記中押内管は、前記中押内管前方筒部が前記中押外管後方筒部の内部にある状態で前記中押外管に対して前後方向で移動可能とされ、前記中押内管前方筒部は、後方側に設けられた中押内管第1筒部と、前方側に設けられ前記中押内管第1筒部よりも外径が小さな中押内管第2筒部と、を具備し、前記中押外管後方筒部は、後方側に設けられ内径が前記中押内管第1筒部の外径よりも大きな中押外管第1筒部と、前方側に設けられ、内径が前記中押外管第1筒部よりも小さく、かつ内径が前記中押内管第2筒部の外径よりも大きな中押外管第2筒部と、を具備し、前記中押内管第1筒部の外面に装着された第1封止部材と、前記中押内管第2筒部の外面に装着された第2封止部材と、が設けられ、前記中押外管の前記中押内管に対する前後方向での移動に際して、前記中押外管第1筒部の内面が、前記中押内管第1筒部の外面における前記第1封止部材が装着された箇所及び前記中押内管第2筒部の外面における前記第2封止部材が装着された箇所と対向する第1の状態と、前記中押外管第1筒部の内面が前記中押内管第1筒部の外面における前記第1封止部材が装着された箇所と対向すると共に前記中押外管第2筒部の内面が前記中押内管第2筒部の外面における前記第2封止部材が装着された箇所と対向する第2の状態と、をとり、前記第1の状態においては、前記中押外管第1筒部の内面と前記中押内管第1筒部の外面とは前記第1封止部材によって封止され、かつ前記中押外管第1筒部の内面と前記中押内管第2筒部の外面とは前記第2封止部材によっては封止されず、前記第2の状態においては、前記中押外管第2筒部の内面と前記中押内管第2筒部の外面とは前記第2封止部材によって封止されることを特徴とする
本発明の中押管セットは、前記第1の状態において、前記第1封止部材が前記中押外管第1筒部の内面と当接し、前記第2封止部材は前記中押外管第1筒部の内面と当接しない設定とされたことを特徴とする
本発明の中押管セットは、前記中押外管における前記中押外管後方支持部と前記中押内管における前記中押内管前方支持部とを当接させた場合に、前記第2の状態とされることを特徴とする。
本発明の中押管セットにおいて、前記第2封止部材は、前記中心軸がある側と反対側の表面において、前方から後方に向かうに従って前記中押内管第2筒部の外面から離間するように傾斜した傾斜部を有することを特徴とする。
本発明の中押管セットにおいて、前記第2封止部材は、弾性材料で構成され、前記傾斜部よりも後方に、前記中押内管第2筒部の外面がある側と反対側において、力が加わっていない場合における前後方向に沿った断面形状において円弧形状とされた表面を有する後方封止部を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、中押工法において、推進管の内部側と外部との間の封止を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係る中押管セットにおける中押外管の構造を示す、中心軸に沿った断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る中押管セットにおける中押内管の構造を示す、中心軸に沿った断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る中押管セットが用いられる推進工事の際の形態を示す工程断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る中押管セットにおいて用いられる第2封止部材の変形例の構造を示す断面図である。
図5】推進管を地中で前進させる中押工法の概要を示す図である。
図6】推進管の構造を示す、中心軸に沿った断面図である。
図7】従来の中押管セットにおける中押外管の構造を示す、中心軸に沿った断面図である。
図8】従来の中押管セットにおける中押内管の構造を示す、中心軸に沿った断面図である。
図9】従来の中押管セットが用いられる推進工事の際の形態を示す工程断面図である。
図10】封止部材における2種類の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態に係る中押管セットは、中押工法において前進させる対象となる標準管の後方に配される中押外管(S型管)と、中押外管の後方に配される中押内管(T型管)と、これらの間を封止するシール材(封止部材)からなる。中押外管と中押内管との間に設けられたジャッキの伸縮に際して、中押外管、中押内管は互いに中心軸Xに沿って摺動し、この動きによって、前方の標準管を前進させることができる。この中押管セットは、推進工事が終了した後も残存し、標準管が連結された構造内の一部となる。以上の点については、前記の従来の中押外管110、中押内管120等を用いた場合と同様である。
【0034】
ただし、本発明の実施の形態に係る中押管セットにおける中押外管、中押内管の構造が前記の中押外管110、中押内管120と異なり、これに伴って、使用されるシール材(弾性部材)の構成も異なる。これによって、推進工事の開始時から終了後まで、一貫して標準管等の内部の空間は外部から強固に封止される。
【0035】
図1、2は、それぞれこの中押外管(S型管)10、中押内管(T型管)20の中心軸Xに沿った断面図であり、それぞれ図7、8に対応し、ここでは弾性部材が装着された状態が示されている。ここで前進させる対象となる標準管80の構造は図6に示されたとおりである。
【0036】
図1の中押外管10においても、共に中心軸Xをその中心軸とした筒状である、後方側の中押外管後方筒部11、前方側の中押外管前方筒部12が設けられ、更に、共に中心軸Xを中心とした円環形状の、中押外管前方筒部12の前方側(図中左側)の中押外管前方支持部13、後方側(図中右側)の中押外管後方支持部14が、それぞれ設けられる。中押外管後方筒部11、中押外管前方筒部12、中押外管前方支持部13、中押外管後方支持部14が一体化されて金属で形成される点についても同様である。また、中押外管前方支持部13、中押外管後方支持部14の間はコンクリート等で充填された充填部15となっている。
【0037】
また、中押外管前方筒部12の外面には、後述するように前方の標準管80のカラー82の内面との間を封止する封止部材(前方封止部材)16が装着されている。封止部材16は、前記の封止部材116と同様の形状(図10(a))とされる。
【0038】
図2の中押内管20も、中押内管120と同様に、中押内管後方筒部21、中押内管前方筒部22、中押内管前方支持部23、中押内管後方支持部24が一体化されて金属で形成される。また、中押内管前方支持部23、中押内管後方支持部24の間にコンクリート等で構成された充填部25が形成されている。前記の中押内管120と中押外管110の場合と同様に、中押内管20における中押内管前方筒部22は、推進工事の際に中押外管10における中押外管後方筒部11の内部を移動する。
【0039】
ここで、中押内管前方筒部22は、後方側の中押内管第1筒部22Aと前方側の中押内管第2筒部22Bが連結して構成され、中押内管第2筒部22Bの外径は、中押内管第1筒部22Aよりも小さく設定される。このため、図2において、中押内管前方筒部22の外面には、前方側で外径が小さくなるような段差が形成されている。
【0040】
このような中押内管前方筒部22の構造に対応して、図1の中押外管10における中押外管後方筒部11も、後方側における中押外管第1筒部11Aと前方側の中押外管第2筒部11Bが連結して構成され、中押外管第2筒部11Bの内径は、中押外管第1筒部11Aよりも小さく設定される。このため、図1において、中押外管後方筒部11の内面には、前方側で内径が小さくなるような段差が形成されている。
【0041】
図2に示されるように、前記の中押内管120における中押内管前方筒部122には単一の種類の封止部材126が装着されていたのに対し、この中押内管20においては、このような中押内管前方筒部22の構造に対応して、中押内管第1筒部22Aに封止部材(第1封止部材)26が、中押内管第2筒部22Bに封止部材(第2封止部材)27がそれぞれ装着されている。図2において、封止部材26は2つ形成され、前記の中押内管120と同様に、2つの封止部材26の間には潤滑剤注入孔25Aが設けられている。ここで、封止部材26は前記の封止部材126と同様の形状(図10(b))とされるのに対し、封止部材27は前記の封止部材116あるいは封止部材16と同様の形状(図10(a))とされる。
【0042】
この場合、中押外管10と中押内管20とが組み合わされた状態で、封止部材26は中押外管第1筒部11Aと中押内管第1筒部22Aとの間を封止し、封止部材27は中押外管第2筒部11Bと中押内管第2筒部22Bとの間を封止する。ただし、中押外管第1筒部11Aと中押内管前方筒部22との間は、封止部材27によっては封止されないように構成される。特に、推進工事の途中において、封止部材27が装着された中押内管第2筒部22Bの外面と中押外管第1筒部11Aの内面とが対向する場合があるが、この際に、これらの面間は封止部材27によっては封止されない構成とされる。
【0043】
この構成により、推進工事中は標準管80、各中押管の内部の空間は封止部材26によって封止され、推進工事の終了後には、この空間は更に封止部材27によっても封止される。
【0044】
図3は、上記の中押外管10、中押内管20を用いて標準管80を前進させる際の状況を図9に対応させて示す。すなわち、図3の(1)に示されるように、前進させる対象の標準管80が初期の位置に設置された後で、図3の(2)に示されるように、中押外管10、中押内管20が後方から挿入されて装着される。ここで、中押外管10における中押外管前方支持部13は前方の標準管80の標準管本体81と当接し、中押外管10における中押外管後方支持部14と中押内管20における中押内管前方支持部23との間にはジャッキ200、当て輪210が挟持される。図3の(2)においてはジャッキ200が最も縮んだ状態とされている。後方側の標準管80に関する記載、元押機構の動作に関わる内容についての記載が省略されている点については、図9と同様である。
【0045】
この状態で後方の中押内管20の後端側を固定してジャッキ200を伸長させることによって、図3の(3)に示されるように、前方の推進管80を前進させることができる。その後、図3の(4)に示されるようにジャッキ200を収縮させると共に中押内管20を前進させれば、図3の(2)の構造全体がジャッキ200の伸長量だけ前進した状態となる。その後に再び図3の(3)(4)の動作を繰り返した図3の(5)(6)によって更に推進管80を前進させることができ、図3の(3)(4)の動作を繰り返すことによって、所定の位置まで推進管80を前進させることができる。その後、所定の位置まで推進管80を前進させた図3の(7)の状態において、ジャッキ200及び当て輪210を撤去して中押内管20を前進させ、図3の(8)に示されるように中押内管20の中押内管前方支持部23を中押外管10における中押外管後方支持部14と当接させた状態で、中押外管10とその前方の推進管80のカラー81、中押内管20と中押外管10を溶接等によって固定することができる。
【0046】
また、図3においては、図9と同様に、各封止部材に加わる水平方向の力の向きが矢印で示されている。図9の封止部材116と同様に、封止部材16に対しては、封止部材16に対しては矢印A1で示されるように後方向きの力が1回のみ働く。
【0047】
ここで、図3の(2)~(7)に示されるように、ジャッキ200及び当て輪210が設置された状態では、中押内管20における中押内管前方筒部22の中押内管第1筒部22A、中押内管第2筒部22Bは共に中押外管後方筒部11における中押外管第1筒部11Aと対向する。このため、これらの間は封止部材26によってのみ封止され、図示されるように、中押内管第2筒部22Bの外径は小さいため、封止部材27は中押外管第1筒部11A(中押外管後方筒部11)とは当接しない。
【0048】
図3の(2)~(7)の状態で封止部材26に働く力は図9における封止部材126と同様に、矢印B1~B4の向きとなる。すなわち、封止部材26には水平方向に沿った力が向きを変えて交互に多数回加わる。このため、この間に封止部材26が摩耗によって劣化することがある点についても、前記の封止部材126と同様である。また、このように交互に向きを変えた力が加わるため、封止部材26の形状は前記の通り図10(b)のとおりとされる。一方、封止部材27は、図3の(2)~(7)の状態では中押外管後方筒部11とは当接しないため、摩耗による劣化は全く発生しない。
【0049】
一方、図3の(8)の状態では、中押内管20における中押内管前方筒部22の中押内管第1筒部22Aが中押外管後方筒部11における中押外管第1筒部11Aと対向する点については前記の場合と変わらないが、その前方で中押内管第2筒部22Bは中押外管第2筒部11Bと対向するように設定され、これらの間は封止部材27で封止される。この場合に封止部材27に働く力の向きはC1で示されるように、後方向きとなる。図3において、封止部材27に水平方向に力が働くのはこの1回のみである。このため、封止部材27としては、前記の封止部材116あるいは封止部材16と同様の形状(図10(a))とされ、同様の傾斜部が設けられる。これにより、中押内管第2筒部22Bと中押外管第2筒部11Bの間を強く封止すると共に、図3の(8)の形態とすることも容易となる。この際に、封止部材27においては、封止部材26とは異なり、摩耗による劣化は発生していない。
【0050】
このため、仮に図3の(8)の状態で中押内管第1筒部22Aと中押外管第1筒部11Aとの間が封止部材26によって充分に封止されていない場合でも、その前方の封止部材27によって中心軸X側の空間は確実に封止される。このため、例えばその後において溶接によって中押内管前方筒部と中押外管後方筒部との間を封止するための溶接作業等(例えば全周にわたる溶接)が不要となる。この点については、標準管80同士、標準管80と中押管との間の接合と同様である。
【0051】
図4は、封止部材(第2封止部材)27の変形例となる封止部材28の形状を図10に対応させて示す図である。この封止部材28は弾性体で構成され、ここでは力が加わっていない(中押外管10側とは当接しない)場合の形状が示されている。この場合においても、前記の封止部材116等と同様に方向性が考慮され、傾斜部28Aが2つ設けられる。この際、その下側(中押内管第2筒部22B側)には、中押内管20が中押外管10に対して固定される図3の(8)の段階での傾斜部28A付近の変形を容易とするために、空洞28Bが形成される。
【0052】
また、固定後における中押外管第2筒部11Bと中押内管第2筒部22Bとの間を更に強固に封止するために、図4の断面において、上側(中押内管第2筒部22Bと反対側)の表面が略円弧形状とされた後方封止部28Cが後方に設けられる。中押内管第2筒部22Bを中押外管第2筒部11Bに挿入する際に、後方封止部28Cは、傾斜部28Aの後で中押外管第2筒部11Bの内面と当接する。このため、仮に中押外管第2筒部11Bの内面に異物が存在しても、これはその前の傾斜部28Aによって除去され、これによって後方封止部28Cが影響を受けることが抑止される。このため、封止部材28によって、施工後の中押外管10と中押内管との間の封止を更に確実に、強固に行うことができる。なお、同様の封止部材を標準管80同士の連結に用いてもよい。
【0053】
図3の工程において行う各作業は、使用する中押外管、中押内管を代えたこと以外には、実際には従来の中押管を用いた図9の工程において行う作業と変わるところはない。このため、上記の推進工事を容易に行わせることができる。
【0054】
なお、図3においては、(2)~(7)の状態で封止部材27は中押外管第1筒部11Aの内面とは当接しないものとしたが、摩耗による劣化が発生しない程度にこれらが軽く接触するような構成としてもよい。この場合においても、封止部材26によって内部の空間が封止される点は変わりがない。また、この場合には、封止部材26が推進工事の途中で劣化した場合に、前方に侵入した水分等を封止部材27で止めることができる。仮にこの際に封止部材27にも摩耗による劣化が発生した場合でも、中押内管前方筒部22を上記のような2段階の構造としたことによって、中押内管第2筒部22Bの外面と中押外管第1筒部11Aの内面との間の間隔は中押内管第1筒部22Aの外面と中押外管第1筒部11Aの内面との間の間隔よりも広いため、この劣化を封止部材26と比べて無視できる程度に小さくすることができる。
【0055】
また、上記の例では、標準管、中押外管、中押内管等は略円筒形状(中心軸Xに垂直な断面形状が円形)であるものとしたが、これらを上記と同様に組み合わせることができる限りにおいてこれらの断面形状は任意であり、この場合においても、内面、外面の同様の位置関係を実現し、同様の封止部材を用いることができることは明らかである。
【0056】
また、上記の例では、推進工事の際の中押外管、中押内管の加圧は、中押外管における中押外管後方支持部、中押内管における中押内管前方支持部の間のジャッキ等によって行われたが、このための構造は、中押外管、中押内管において適宜設定することができる。また、中押外管後方支持部、中押内管前方支持部は前後方向からみて円環形状であるものとしたが、図3の工程を実現できるように中心軸に垂直な表面を有し、かつこれらがその他の部分と一体的に形成できる形状であれば、これらの形状は適宜設定することができる。
【0057】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0058】
10、110 中押外管(S型管)
11、111 中押外管後方筒部
11A 中押外管第1筒部
11B 中押外管第2筒部
12、112 中押外管前方筒部
13、113 中押外管前方支持部
14、114 中押外管後方支持部
15、25、115、125 充填部
16、116 封止部材(前方封止部材)
20、120 中押内管(T型管)
21、121 中押内管後方筒部
22、122 中押内管前方筒部
22A 中押内管第1筒部
22B 中押内管第2筒部
23、123 中押内管前方支持部
24、124 中押内管後方支持部
25A、125A 潤滑剤注入孔
26 封止部材(第1封止部材)
28 封止部材(第2封止部材)
28A 傾斜部
28B 空洞
28C 後方封止部
80、80A~80C 標準管
81 標準管本体
81A 小径部
82 カラー
85 刃口
90 中押機構
116A 傾斜部
200 ジャッキ(加圧器具)
210 当て輪
G 地盤
S 立坑
X 中心軸
【要約】
【課題】中押工法において、標準管の内部側と外部との間の封止を確実に行わせる。
【解決手段】中押内管前方筒部22は、後方側の中押内管第1筒部22Aと前方側の中押内管第2筒部22Bが連結して構成され、中押内管第2筒部22Bの外径は、中押内管第1筒部よりも小さく設定される。このため、図2において、中押内管前方筒部22の外面には、前方側で外径が小さくなるような段差が形成されている。中押内管第1筒部22Aに封止部材26が、中押内管第2筒部22Bに封止部材27がそれぞれ装着されている。中押外管と中押内管20とが組み合わされた状態で、封止部材26は中押外管第1筒部と中押内管第1筒部22Aとの間を封止し、封止部材27は中押外管第2筒部と中押内管第2筒部22Bとの間を封止する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10