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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20250109BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20250109BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20250109BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B23K26/00 A
B23K26/082
G02B26/08 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024146552
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023131365の分割
【原出願日】2023-08-10
【審査請求日】2024-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛和
(72)【発明者】
【氏名】井上 紘一
(72)【発明者】
【氏名】安在 建治
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 淳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 栄朗
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0402071(US,A1)
【文献】特開2019-215496(JP,A)
【文献】特表2022-526435(JP,A)
【文献】特開2000-347113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0231843(US,A1)
【文献】米国特許第07404647(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0029289(US,A1)
【文献】特許第7241994(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08、26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、
前記コリメーションレンズより射出されたレーザビームが入射、加工対象の被加工材に照射るレーザビームを振動させるガルバノスキャナユニットと、
前記ガルバノスキャナユニットより射出するレーザビームを集束させて、前記被加工材に照射する集束レンズを有する加工ヘッドと、
を備え、
前記ガルバノスキャナユニットは、
前記コリメーションレンズより射出したレーザビームが入射し、入射したレーザビームを反射させる第1のガルバノミラーと、
前記第1のガルバノミラーを回転させるよう駆動する第1のガルバノモータと、
前記第1のガルバノミラーで反射したレーザビームが入射し入射したレーザビームを反射させる第2のガルバノミラーと、
前記第2のガルバノミラーを回転させるよう駆動する第2のガルバノモータと、
を有し、
前記第1及び第2のガルバノミラーは、それぞれ、
所定の波長帯域のレーザビームを反射するレーザビームの入射平面と、
前記第1及び第2のガルバノモータの軸の先端部と連結される端部側に位置し、前記入射平面と連結する第1の端面と、
前記軸の方向に沿った前記第1の端面とは反対側に位置し、前記入射平面と連結する第2の端面と、
前記第1の端面から前記第2の端面までの長さの中央よりも前記第2の端面側に位置する、前記軸と直交する方向の幅として最も幅の広い最幅広部と、
前記第1の端面の幅方向の両端と前記最幅広部の前記幅方向の両端とをそれぞれ連結し、前記第1の端面から前記最幅広部に向かうに従って前記幅方向の互いの間隔が広がっていく第1及び第2の側端面と、
前記第2の端面の前記幅方向の両端と前記最幅広部の前記幅方向の両端とをそれぞれ連結し、前記第2の端面から前記最幅広部に向かうに従って前記幅方向の互いの間隔が広がっていく第3及び第4の側端面と、
前記幅方向の中央部に位置する最も板厚の厚い最板厚部と、
前記最板厚部の前記幅方向の両側方に位置する、前記最板厚部から前記幅方向の両端に向かうに従って板厚が薄くなっていく第1及び第2の側方部と、
を有し、
前記第1及び第2のガルバノミラーは、前記入射平面に入射したレーザビームのうち、前記入射平面で反射せず、前記入射平面を透過して内部へと侵入したレーザビームを透過させる硝材で形成され、
前記第1及び第2のガルバノモータが前記第1及び第2のガルバノミラーをそれぞれ駆動していない状態で、前記第1のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射し、前記第2のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射したレーザビームが板金に照射されたときの、前記板金の表面での前記レーザビームの輝度を100%としたとき、前記第1及び第2のガルバノモータが前記第1及び第2のガルバノミラーをそれぞれ駆動して前記第1及び第2のガルバノミラーが変形した状態で、前記第1のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射し、前記第2のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射したレーザビームが前記板金に照射されたとき、前記最板厚部の板厚を、前記板金の表面での前記レーザビームの輝度として少なくとも98%の輝度が得られるような板厚に設定している
レーザ加工機。
【請求項2】
前記第1及び第2のガルバノミラーの前記入射平面には、前記所定の波長帯域のレーザビームを反射する反射コーティングが施されており、
前記第1及び第2のガルバノミラーの前記最板厚部及び前記第1及び第2の側方部における前記入射平面とは反対側の面には、前記所定の波長帯域のレーザビームの反射を防止する反射防止コーティングが施されている
請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記最板厚部は、前記第1の端面から前記第2の端面までの全範囲に形成されている請求項1または2に記載のレーザ加工機
【請求項4】
前記硝材はサファイアガラスである請求項1または2に記載のレーザ加工機
【請求項5】
前記硝材は合成石英である請求項1または2に記載のレーザ加工機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、加工ヘッドから射出されるレーザビームをガルバノスキャナユニットのガルバノミラーによって振動させて、被加工材を加工するレーザ加工機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5388948号公報
【文献】特許第6272587号公報
【文献】特許第6748150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザビームを高周波数で振動させるためには、ガルバノミラーを、その剛性を高めることができるケイ素(Si)または炭化ケイ素(SiC)を材料として形成するのが一般的である。ガルバノミラーの表面には反射コーティングが施されており、入射するレーザビームを反射する。近年、レーザ発振器が射出するレーザビームは高出力化している。反射コーティングによるレーザビームの反射率が例えば99.9%であったとしても、ケイ素または炭化ケイ素の光吸収率はほぼ100%であるので、反射コーティングで反射されずに透過する高出力のレーザビームによってガルバノミラーが発熱する。ガルバノミラーを大型化すれば、ガルバノミラーの発熱を抑えることができる。
【0005】
一方で、ガルバノミラーの振動周波数を1kHz以上の高周波数とすることが要求されることがある。ガルバノミラーを大型化するとイナーシャが大きくなるから、要求される高周波数でガルバノミラーを振動させることが困難となる。そこで、発熱を抑えることができ、高周波数で振動させることができるガルバノミラー、及び、そのようなガルバノミラーを有するガルバノスキャナユニットを備えるレーザ加工機の登場が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の態様は、発散光のレーザビームをコリメート光に変換するコリメーションレンズと、前記コリメーションレンズより射出されたレーザビームが入射し、加工対象の被加工材に照射するレーザビームを振動させるガルバノスキャナユニットと、前記ガルバノスキャナユニットより射出するレーザビームを集束させて、前記被加工材に照射する集束レンズを有する加工ヘッドとを備え、前記ガルバノスキャナユニットは、前記コリメーションレンズより射出したレーザビームが入射し、入射したレーザビームを反射させる第1のガルバノミラーと、前記第1のガルバノミラーを回転させるよう駆動する第1のガルバノモータと、前記第1のガルバノミラーで反射したレーザビームが入射し、入射したレーザビームを反射させる第2のガルバノミラーと、前記第2のガルバノミラーを回転させるよう駆動する第2のガルバノモータとを有するレーザ加工機を提供する。
上記のレーザ加工機において、前記第1及び第2のガルバノミラーは、それぞれ、所定の波長帯域のレーザビームを反射するレーザビームの入射平面と、前記第1及び第2のガルバノモータの軸の先端部と連結される端部側に位置し、前記入射平面と連結する第1の端面と、前記軸の方向に沿った前記第1の端面とは反対側に位置し、前記入射平面と連結する第2の端面と、前記第1の端面から前記第2の端面までの長さの中央よりも前記第2の端面側に位置する、前記軸と直交する方向の幅として最も幅の広い最幅広部と、前記第1の端面の幅方向の両端と前記最幅広部の前記幅方向の両端とをそれぞれ連結し、前記第1の端面から前記最幅広部に向かうに従って前記幅方向の互いの間隔が広がっていく第1及び第2の側端面と、前記第2の端面の前記幅方向の両端と前記最幅広部の前記幅方向の両端とをそれぞれ連結し、前記第2の端面から前記最幅広部に向かうに従って前記幅方向の互いの間隔が広がっていく第3及び第4の側端面と、前記幅方向の中央部に位置する最も板厚の厚い最板厚部と、前記最板厚部の前記幅方向の両側方に位置する、前記最板厚部から前記幅方向の両端に向かうに従って板厚が薄くなっていく第1及び第2の側方部とを有する。
【0007】
上記のレーザ加工機において、前記第1及び第2のガルバノミラーは、前記入射平面に入射したレーザビームのうち、前記入射平面で反射せず、前記入射平面を透過して内部へと侵入したレーザビームを透過させる硝材で形成されている。
前記第1及び第2のガルバノモータが前記第1及び第2のガルバノミラーをそれぞれ駆動していない状態で、前記第1のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射し、前記第2のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射したレーザビームが板金に照射されたときの、前記板金の表面での前記レーザビームの輝度を100%としたとき、前記第1及び第2のガルバノモータが前記第1及び第2のガルバノミラーをそれぞれ駆動して前記第1及び第2のガルバノミラーが変形した状態で、前記第1のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射し、前記第2のガルバノミラーの前記入射平面に入射して反射したレーザビームが前記板金に照射されたとき、前記最板厚部の板厚を、前記板金の表面での前記レーザビームの輝度として少なくとも98%の輝度が得られるような板厚に設定している。
【発明の効果】
【0008】
1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工機によれば、ガルバノミラーの発熱を抑えることができ、ガルバノミラーを高周波数で振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工機を示す図である。
図2図2は、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工機が備えるガルバノスキャナユニットを示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係るガルバノミラーを背面から見た斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係るガルバノミラーの正面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るガルバノミラーの背面図である。
図6A図6Aは、直方体のサファイアガラス板から第1実施形態に係るガルバノミラーを形成するための4つの角部の面取りを示す平面図である。
図6B図6Bは、直方体のサファイアガラス板から第1実施形態に係るガルバノミラーを形成するための部分的な厚みの面取りを示す側面図である。
図7図7は、第1実施形態に係るガルバノミラーのガルバノモータの軸への取り付け構造を示す斜視図である。
図8図8は、第2実施形態に係るガルバノミラーを背面から見た斜視図である。
図9図9は、第2実施形態に係るガルバノミラーの正面図である。
図10図10は、第2実施形態に係るガルバノミラーの背面図である。
図11図11は、直方体の合成石英板から第2実施形態に係るガルバノミラーを形成するための部分的な厚みの面取りを示す側面図である。
図12図12は、第2実施形態に係るガルバノミラーの変形例を背面から見た斜視図である。
図13図13は、第2実施形態に係るガルバノミラーの変形例の正面図である。
図14図14は、第2実施形態に係るガルバノミラーの変形例の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、1またはそれ以上の実施形態に係るガルバノミラー及びレーザ加工機について、添付図面を参照して説明する。まず、1またはそれ以上の実施形態に係るレーザ加工機の全体的な構成例を説明する。図1において、レーザ加工機100は、レーザ発振器10、プロセスファイバ12、レーザ加工ユニット20、NC装置50、アシストガス供給装置80を備える。
【0011】
レーザ発振器10はレーザビームを生成して射出し、プロセスファイバ12はレーザ発振器10より射出されたレーザビームをレーザ加工ユニット20へと伝送する。典型的には、レーザ発振器10は、波長1060nm~1080nmのレーザビームを射出するファイバレーザ発振器である。レーザ発振器10はファイバレーザ発振器に限定されない。NC装置50は、レーザ加工機100の各部を制御する制御装置の一例である。
【0012】
レーザ加工ユニット20は、加工対象の被加工材である板金Wを載せる加工テーブル21、門型のX軸キャリッジ22、Y軸キャリッジ23、Y軸キャリッジ23に固定されたコリメータユニット30、加工ヘッド35を有する。X軸キャリッジ22は、加工テーブル21上でX軸方向に移動自在に構成されている。Y軸キャリッジ23は、X軸キャリッジ22上でX軸に垂直なY軸方向に移動自在に構成されている。X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23は、加工ヘッド35を板金Wの面に沿って、X軸方向、Y軸方向、または、X軸方向とY軸方向との任意の合成方向に移動させる移動機構として機能する。
【0013】
加工ヘッド35を板金Wの面に沿って移動させる代わりに、加工ヘッド35は位置が固定されていて、板金Wが移動するように構成されていてもよい。レーザ加工機100は、板金Wの面に対して加工ヘッド35を相対的に移動させる移動機構を備えていればよい。
【0014】
加工ヘッド35には、先端部に円形の開口36aを有し、開口36aよりレーザビームを射出するノズル36が取り付けられている。ノズル36の開口36aより射出されたレーザビームは板金Wに照射される。アシストガス供給装置80は、アシストガスとして窒素または酸素等を加工ヘッド35に供給する。板金Wの加工時に、アシストガスは開口36aより板金Wへと吹き付けられる。
【0015】
図2に示すように、コリメータユニット30は、コリメーションレンズ301、ガルバノスキャナユニット302、ベンドミラー303を備える。コリメーションレンズ301は、プロセスファイバ12より射出された発散光のレーザビームを平行光(コリメート光)に変換する。ガルバノスキャナユニット302は、ガルバノミラー32a(第1のガルバノミラー)及びガルバノミラー32b(第2のガルバノミラー)をそれぞれ所定の角度の範囲で回転させるよう駆動するガルバノモータ33a(第1のガルバノモータ)及びガルバノモータ33b(第2のガルバノモータ)を有する。
【0016】
ガルバノミラー32aには、コリメーションレンズ301より射出されたコリメート光のレーザビームが入射して、入射するレーザビームを反射させる。ガルバノミラー32bにはガルバノミラー32aで反射したレーザビームが入射して、入射するレーザビームを反射させる。ガルバノミラー32bで反射したレーザビームはベンドミラー303に入射する。ベンドミラー303は、ガルバノスキャナユニット302より射出されたレーザビームをX軸及びY軸に垂直なZ軸方向下方に向けて反射させる。
【0017】
図2において、ガルバノモータ33a及び33bは、図示を省略している支持部材に固定され、ガルバノミラー32a及び32bのコリメータユニット30の空間内の位置が設定されている。ガルバノミラー32a及び32bをガルバノミラー32と総称し、ガルバノモータ33a及び33bをガルバノモータ33と総称することがある。
【0018】
加工ヘッド35は、ベンドミラー303で反射したレーザビームを集束させて、板金Wに照射する集束レンズ304を備える。
【0019】
レーザ加工機100は、ノズル36の開口36aより射出されるレーザビームが開口36aの中心に位置するように芯出しされている。基準の状態では、レーザビームは、開口36aの中心より射出する。ガルバノスキャナユニット302は、加工ヘッド35内を進行して開口36aより射出されるレーザビームを、開口36a内で振動させるビーム振動機構として機能する。NC装置50は、ガルバノミラー32aを回転させるようガルバノモータ33aを制御し、ガルバノミラー32bを回転させるようガルバノモータ33bを制御する。
【0020】
ガルバノスキャナユニット302は、NC装置50による制御に従って、板金Wに照射されるレーザビームを、X軸方向、Y軸方向、またはX軸方向とY軸方向との任意の合成方向に変位させることができる。これにより、ガルバノスキャナユニット302は、レーザビームを、加工ヘッド35(レーザビーム)の進行方向と平行方向に振動させたり、直交方向に振動させたり、ビームスポットが円を描くように振動させたりすることができる。
【0021】
次に、1またはそれ以上の実施形態に係るガルバノミラー32の構成を詳細に説明する。第1実施形態に係るガルバノミラー32は、硝材をサファイアガラスとしてガルバノミラー32が形成されている。第1実施形態に係るガルバノミラー32をガルバノミラー32Sと称することとする。第2実施形態に係るガルバノミラー32は、硝材を合成石英としてガルバノミラー32が形成されている。第2実施形態に係るガルバノミラー32をガルバノミラー32Q(または32Q’)と称することとする。図2におけるガルバノミラー32a及び32bとして、ガルバノミラー32S、32Q、32Q’のうちのいずれかが用いられる。ガルバノミラー32S、32Q、32Q’を順に詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図3図5は、それぞれ、ガルバノミラー32Sを背面から見た斜視図、正面図、背面図である。サファイアガラスは、高純度の酸化アルミニウムを人工的に大きく結晶化することによって形成される。ガルバノミラー32Sは、後述するように直方体のサファイアガラス板の複数の面を面取りすることによって、図3図5に示すような形状とされている。
【0023】
図3図5において、入射平面S11にはレーザビームが入射する。入射平面S11には所定の波長帯域のレーザビームを反射する、誘電体多層膜よりなる反射コーティングが施されている。入射平面S11は、波長1040nm~1150nmのレーザビームの反射率が99.5%以上である。よって、入射平面S11は入射したレーザビームを99.5%以上反射させる。
【0024】
後述するように、図3におけるガルバノミラー32Sの下端部は、ガルバノモータ33の軸331(図7参照)の先端部と連結される端部である。下端部側に位置する第1の端面321は、入射平面S11と連結している。軸331の方向に沿った第1の端面321とは反対側に位置する第2の端面322も、入射平面S11と連結している。第1の端面321と第2の端面322とを結ぶ方向を長さ方向とする。
【0025】
図4に示すように、第1の端面321から第2の端面322までの長さはL32である。最幅広部32WPは、長さ方向と直交する幅方向に最も幅が広い部分である。最幅広部32WPの幅はW32である。長さL32と幅W32とは、L32>W32の関係を有する。一例として、長さL32は33mm程度であり、幅W32は22mm程度である。最幅広部32WPは、ガルバノミラー32Sの長さL32の中央よりも第2の端面322側に位置している。最幅広部32WPの長さ方向の全範囲が、長さL32の中央よりも第2の端面322側に位置している。
【0026】
図3図5において、第1の側端面323及び第2の側端面324は、それぞれ、第1の端面321の幅方向の両端と最幅広部32WPの幅方向の両端とを連結する。第1の側端面323及び第2の側端面324は、第1の端面321から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。第3の側端面325及び第4の側端面326は、それぞれ、第2の端面322の幅方向の両端と最幅広部32WPの幅方向の両端とを連結する。第3の側端面325及び第4の側端面326は、第2の端面322から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。
【0027】
ガルバノミラー32Sの幅方向の中央部には、最も板厚の厚い最板厚部327が設けられている。一例として、最板厚部327の板厚は3mmである。ガルバノミラー32Sにおいては、最板厚部327は第1の端面321から第2の端面322までの全範囲に形成されている。最板厚部327の表面は平面S12となっている。第1の側方部328及び第2の側方部329は、最板厚部327の幅方向の両側方に設けられている。第1の側方部328及び第2の側方部329は、最板厚部327から幅方向の両端に向かうに従って板厚が薄くなっていく。第1の側方部328及び第2の側方部329それぞれの表面は平面S13及びS14となっている。
【0028】
以上のような形状を有するガルバノミラー32Sは、図6Aに示すように、直方体のサファイアガラス板320Sのハッチングを付している4つの角部C1~C4を面取りし、図6Bに示すように、サファイアガラス板320Sのハッチングを付している領域T1及びT2を厚み方向に面取りすることによって形成することができる。
【0029】
入射平面S11に入射したレーザビームのうち、反射コーティングで反射しなかったわずかなレーザビームは、反射コーティングを透過してガルバノミラー32Sの内部へと侵入する。ガルバノミラー32Sを形成する硝材であるサファイアガラスの光吸収率は1%未満であるので、ガルバノミラー32Sは内部へと侵入したレーザビームを99%以上透過させる。よって、ガルバノミラー32Sは、反射コーティングで反射されずに透過するレーザビームによってほとんど発熱しない。従って、コリメーションレンズ301より射出されるコリメート光のビーム径を細くしても発熱が抑えられるから、ガルバノミラー32Sを大型化する必要はなく、最小限の大きさとすることができる。
【0030】
平面S12~S14に、誘電体多層膜よりなる反射防止コーティングが施されているとよい。反射防止コーティングが施されている平面S12~S14は、波長1040nm~1150nmのレーザビームの透過率が98%以上である。
【0031】
図7に示すように、ガルバノモータ33の軸331の先端部には、ガルバノミラー32Sの第1の端面321側の端部を固定するための固定部332が設けられている。ガルバノミラー32Sは、第1の端面321側の端部が固定部332の一対の突出壁の間に挿入され、かつ接着剤によって接着されることによって、固定部332に固定される。このようにして、ガルバノミラー32Sはガルバノモータ33の軸331と連結されて、軸331の回転によりガルバノミラー32Sが一体的に回転する。
【0032】
第1実施形態に係るガルバノミラー32Sによれば、4つの角部C1~C4の面取り及び領域T1及びT2の厚み方向の面取りによって、直方体のサファイアガラス板320Sにおけるイナーシャと比較してイナーシャを大幅に小さくすることができる。第1実施形態に係るガルバノミラー32Sによれば、発熱を抑えることができるからガルバノミラー32Sを小型化することができ、小型化に伴ってイナーシャを小さくすることができる。よって、レーザ加工機100は、ガルバノミラー32として第1実施形態に係るガルバノミラー32Sを用いれば、ガルバノミラー32を高周波数で振動させることができる。なお、高周波数とは例えば1kHz以上である。
【0033】
ところで、ガルバノミラー32Sをガルバノモータ33によって所定の角度の範囲で回転させるとき、ガルバノミラー32Sの振動によってガルバノミラー32Sが変形すると、ガルバノミラー32Sから射出されるレーザビームのビームプロファイルが悪化する。レーザビームのビームプロファイルが悪化すると、板金Wの表面でのレーザビームの輝度が低くなる。ガルバノモータ33がガルバノミラー32Sを駆動していない状態でガルバノミラー32Sから射出されたレーザビームが板金Wに照射されたときの、板金Wの表面でのレーザビームの輝度を100%とする。最板厚部327の板厚を、ガルバノモータ33がガルバノミラー32Sを駆動してガルバノミラー32Sが変形した状態でガルバノミラー32Sから射出されたレーザビームが板金Wに照射されたとき、少なくとも98%の輝度が得られるような板厚とすることが好ましい。
【0034】
ガルバノミラー32Sは4つの角部C1~C4及び厚み方向の領域T1及びT2を面取りした形状であるので、直方体のサファイアガラス板320Sと比較すれば変形しやすい。最板厚部327の板厚を上記のように98%以上のレーザビームの輝度が得られるような板厚とすれば、ガルバノミラー32Sの変形は実質的には問題とならない。
【0035】
<第2実施形態>
図8図10は、それぞれ、ガルバノミラー32Qを背面から見た斜視図、正面図、背面図である。ガルバノミラー32Qは、後述するように直方体の合成石英板の複数の面を面取りすることによって、図8図10に示すような形状とされている。第2実施形態において、第1実施形態と実質的に同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0036】
図8図10において、入射平面S21にはレーザビームが入射する。入射平面S21には所定の波長帯域のレーザビームを反射する、誘電体多層膜よりなる反射コーティングが施されている。入射平面S21は、波長1040nm~1150nmのレーザビームの反射率が99.5%以上である。よって、入射平面S21は入射したレーザビームを99.5%以上反射させる。第1の端面321及び第2の端面322は、入射平面S21と連結している。
【0037】
図9に示すように、第1の端面321から第2の端面322までの長さはL32であり、最幅広部32WPの幅はW32である。ガルバノミラー32Sと同様に、長さL32と幅W32とは、L32>W32の関係を有する。一例として、長さL32は33mm程度であり、幅W32は22mm程度である。最幅広部32WPは、ガルバノミラー32Qの長さL32の中央よりも第2の端面322側に位置している。
【0038】
図8図10において、第1の側端面323及び第2の側端面324は、それぞれ、第1の端面321の幅方向の両端と最幅広部32WPの幅方向の両端とを連結する。第1の側端面323及び第2の側端面324は、第1の端面321から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。第3の側端面325及び第4の側端面326は、それぞれ、第2の端面322の幅方向の両端と最幅広部32WPの幅方向の両端とを連結する。第3の側端面325及び第4の側端面326は、第2の端面322から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。
【0039】
ガルバノミラー32Qの幅方向の中央部には、最も板厚の厚い最板厚部327が設けられている。一例として、最板厚部327の板厚は4.4mm程度である。ガルバノミラー32Qにおいては、最板厚部327は第1の端面321から第2の端面322までの全範囲ではなく、第1の端面321から第2の端面322までの範囲のうち、第1の端面321から最幅広部32WPまでの範囲に形成されている。最板厚部327の第2の端面322側の端部は、最幅広部32WPの長さ方向の所定の位置に位置している。最板厚部327の表面は平面S22となっている。
【0040】
第1の側方部328及び第2の側方部329は、最板厚部327の幅方向の両側方に設けられている。第1の側方部328及び第2の側方部329は、最板厚部327から幅方向の両端に向かうに従って板厚が薄くなっていく。第1の側方部328及び第2の側方部329それぞれの表面は平面S23及びS24となっている。
【0041】
ガルバノミラー32Qにおいては、第2の端面322側に傾斜先端部330が形成されている。傾斜先端部330は、最板厚部327の第2の端面322側の端部から第2の端面322に向かうに従って板厚が薄くなっていく。傾斜先端部330の表面は平面S25となっている。
【0042】
以上のような形状を有するガルバノミラー32Qは、図11に示す直方体の合成石英板320Qを、図6A及び図6Bに示すサファイアガラス板320Sと同様に面取りし、さらに、ハッチングを付している領域T3を厚み方向に面取りすることによって形成することができる。即ち、ガルバノミラー32Qは、直方体の合成石英板320Qの4つの角部C1~C4及び厚み方向の領域T1~T3を面取りすることによって形成することができる。
【0043】
入射平面S21に入射したレーザビームのうち、反射コーティングで反射しなかったわずかなレーザビームは、反射コーティングを透過してガルバノミラー32Qの内部へと侵入する。ガルバノミラー32Qを形成する硝材である合成石英の光吸収率はほぼ0%であるので、ガルバノミラー32Qは内部へと侵入したレーザビームをほぼ100%透過させる。よって、ガルバノミラー32Qは、反射コーティングで反射されずに透過するレーザビームによってほとんど発熱しない。従って、ガルバノミラー32Qを大型化する必要はなく、最小限の大きさでよい。
【0044】
平面S22~S25に、誘電体多層膜よりなる反射防止コーティングが施されているとよい。反射防止コーティングが施されている平面S22~S25は、波長1040nm~1150nmのレーザビームの透過率が98%以上である。
【0045】
ガルバノミラー32Qのガルバノモータ33の軸331への取り付け構造は、図7に示すガルバノミラー32Sのガルバノモータ33の軸331への取り付け構造と同じである。ガルバノミラー32Qは、第1の端面321側の端部が固定部332の一対の突出壁の間に挿入され、かつ接着剤によって接着されることによって、固定部332に固定される。ガルバノミラー32Qは、ガルバノモータ33の軸331と連結されて、軸331の回転によりガルバノミラー32Qが一体的に回転する。
【0046】
第2実施形態に係るガルバノミラー32Qによれば、4つの角部C1~C4の面取り及び領域T1~T3の厚み方向の面取りによって、直方体の合成石英板320Qにおけるイナーシャと比較してイナーシャを大幅に小さくすることができる。第2実施形態に係るガルバノミラー32Qによれば、発熱を抑えることができるからガルバノミラー32Qを小型化することができ、小型化に伴ってイナーシャを小さくすることができる。よって、レーザ加工機100は、ガルバノミラー32として第2実施形態に係るガルバノミラー32Qを用いれば、ガルバノミラー32を高周波数で振動させることができる。なお、高周波数とは例えば1kHz以上である。
【0047】
第2実施形態に係るガルバノミラー32Qにおいても、ガルバノモータ33がガルバノミラー32Qを駆動していない状態でガルバノミラー32Qから射出されたレーザビームが板金Wに照射されたときの、板金Wの表面でのレーザビームの輝度を100%とする。最板厚部327の板厚を、ガルバノモータ33がガルバノミラー32Qを駆動してガルバノミラー32Qが変形した状態でガルバノミラー32Qから射出されたレーザビームが板金Wに照射されたとき、少なくとも98%の輝度が得られるような板厚とすることが好ましい。
【0048】
ところで、硝材を合成石英としたガルバノミラー32Qにおいて、領域T3を厚み方向に面取りした傾斜先端部330を設けているのは、次の理由による。ガルバノミラー32を振動させると、硝材をサファイアガラスとしたガルバノミラー32Sよりも硝材を合成石英としたガルバノミラー32Qの方が変形しやすい。そこで、ガルバノミラー32Sよりもガルバノミラー32Qの方が、最板厚部327の板厚を厚くする必要がある場合がある。ガルバノミラー32Qの最板厚部327の板厚をガルバノミラー32Sの最板厚部327の板厚よりも厚くした場合には、イナーシャをより小さくするために傾斜先端部330を設けることが好ましい。
【0049】
<第2実施形態の変形例>
図12図14は、第2実施形態に係るガルバノミラー32Qの変形例であるガルバノミラー32Q’を示している。図12図14は、それぞれ、ガルバノミラー32Q’を背面から見た斜視図、正面図、背面図である。ガルバノミラー32Q’において、ガルバノミラー32Qと実質的に同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0050】
図12及び図14に示すように、ガルバノミラー32Q’においては、幅方向の中央部に位置する最板厚部を台形状の最板厚部327’としている。最板厚部327’の表面は台形状の平面S22’となっている。ガルバノミラー32Qにおける長方形状の最板厚部327及び平面S22を台形状の最板厚部327’及び平面S22’に変更することに伴って、第1の側方部328及び第2の側方部329はそれぞれ第1の側方部328’及び第2の側方部329’とされ、傾斜先端部330は傾斜先端部330’とされている。第1の側方部328’及び第2の側方部329’それぞれの表面は平面S23’及びS24’となっており、傾斜先端部330’の表面は平面S25’となっている。
【0051】
以上のような形状を有するガルバノミラー32Q’は、ガルバノミラー32Qと同様に直方体の合成石英板320Qの4つの角部を面取りし、第1の側方部328’、第2の側方部329’、及び傾斜先端部330’を形成するよう部分的な厚みを面取りすることによって形成することができる。ガルバノミラー32Q’のガルバノモータ33の軸331への取り付け構造は、ガルバノミラー32Qのガルバノモータ33の軸331への取り付け構造と同じである。
【0052】
ガルバノミラー32Q’によれば、長さL32、幅W32、及び最板厚部327’の板厚がガルバノミラー32Qにおける長さL32、幅W32、及び最板厚部327の板厚と同じであるとき、ガルバノミラー32Qにおけるイナーシャよりもイナーシャを小さくすることができる。
【0053】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。硝材をサファイアガラスとしたガルバノミラー32Sにおいては領域T3を厚み方向に面取りした傾斜先端部330を設けていないが、イナーシャをさらに小さくするために傾斜先端部330を設けてもよい。また、硝材を合成石英としたガルバノミラー32Qまたは32Q’において、傾斜先端部330または330’を設けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 レーザ発振器
12 プロセスファイバ
20 レーザ加工ユニット
21 加工テーブル
22 X軸キャリッジ
23 Y軸キャリッジ
30 コリメータユニット
35 加工ヘッド
32a,32b,32Q,32Q’,32S ガルバノミラー
32WP 最幅広部
33a,33b ガルバノモータ
36 ノズル
36a 開口
50 NC装置
80 アシストガス供給装置
100 レーザ加工機
301 コリメーションレンズ
302 ガルバノスキャナユニット
303 ベンドミラー
304 集束レンズ
321 第1の端面
322 第2の端面
323 第1の側端面
324 第2の側端面
325 第3の側端面
326 第4の側端面
327,327’ 最板厚部
328,328’ 第1の側方部
329,329’ 第2の側方部
330,330’ 傾斜先端部
S11,S21 入射平面
S12~S14,S22~S25,S22’~S25’ 平面
W 板金(被加工材)
【要約】
【課題】発熱を抑えることができ、高周波数で振動させることができるガルバノミラーを提供する。
【解決手段】入射平面S11にはレーザビームを反射する反射コーティングが施されている。最幅広部32WPは、第1の端面321から第2の端面322までの長さの中央よりも第2の端面322側に位置する。第1の側端面323及び第2の側端面324は、第1の端面321から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。第3の側端面325及び第4の側端面326は、第2の端面322から最幅広部32WPに向かうに従って幅方向の互いの間隔が広がっていく。最板厚部327は幅方向の中央部に位置する。第1の側方部328及び第2の側方部329は、最板厚部327から幅方向の両端に向かうに従って板厚が薄くなっていく。ガルバノミラー32Sは、内部へと侵入したレーザビームを透過させる硝材で形成されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14