(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20250109BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20250109BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B5/16
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2024566008
(86)(22)【出願日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2024022797
【審査請求日】2024-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023104438
(32)【優先日】2023-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】定永 周治郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096550(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130892(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/210154(WO,A1)
【文献】特表2004-508337(JP,A)
【文献】特表平02-500962(JP,A)
【文献】国際公開第2012/131971(WO,A1)
【文献】国際公開第2024/034516(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 5/16
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、フラックスと、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子とを含
み、
前記フラックスが、主鎖の炭素数が偶数である第1のフラックスと、主鎖の炭素数が奇数である第2のフラックスとを含み、
樹脂組成物100重量%中、前記第2のフラックスの含有量が、1重量%以上20重量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが、10MPa
1/2以上であり、
前記第1のフラックスの主鎖の炭素数が、4以上14以下の偶数であり、
前記第2のフラックスの主鎖の炭素数が、3以上11以下の奇数である、請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1のフラックスの平均粒子径が、10μm以下である、請求項
1又は
2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2のフラックスが、25℃で前記チクソトロピック剤に溶解可能である、請求項
1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記チクソトロピック剤が、グリセリンを含む、請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物100重量%中、前記フラックスの含有量が、5重量%以上25重量%以下である、請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記はんだ粒子の平均粒子径が、10μm以下である、請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載の樹脂組成物を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記樹脂組成物を配置する第1の配置工程と、
前記樹脂組成物の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように前記第2の接続対象部材を配置する第2の配置工程と、
前記はんだ粒子の融点以上に前記樹脂組成物を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記樹脂組成物により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する接続工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第2の配置工程において、前記樹脂組成物の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、前記第2の接続対象部材をレーザー転写法により1cm/s以上の速さで移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように前記第2の接続対象部材を配置する、請求項
8に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ粒子を含む樹脂組成物に関する。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いる接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー中に導電性粒子が分散されている。上記導電性粒子として、はんだ粒子が広く用いられている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために使用されている。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
近年、接続構造体を用いたデバイスの小型化及び軽量化が進んでいる。これに伴い、マイクロLED(micro-light emitting diode)チップ等の微細な半導体チップを用いた接続構造体の開発が求められている。マイクロLEDチップ等の微細な半導体チップを回路基板に配置する方法として、レーザー転写法が注目されている。
【0005】
下記の特許文献1には、レーザー転写装置が開示されている。該レーザー転写装置では、複数の素子が形成された転写元基板を、転写先基板の上方に配置する。該転写元基板にレーザー光を上方から照射することにより、前記複数の素子のうち転写対象である複数の転写対象素子を下方に移動させて、該転写対象素子を転写先基板に転写する。
【0006】
下記の特許文献2には、光硬化性の粘着層を介して転写基板に保持されたチップ部品を用いて、該チップ部品を転写先基板に転写する転写方法が開示されている。上記転写方法は、上記粘着層を硬化する波長の光により上記粘着層をパターン露光して、上記粘着層の粘着力を部分的に低下させる露光工程と、上記露光工程の後に、レーザーリフトオフ法により上記チップ部品を上記転写先基板に転写するレーザーリフトオフ工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2020/188780A1
【文献】特開2020-53558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レーザー転写法を用いて半導体チップを配置する方法では、複数の半導体チップをウエハ基板(転写元基板)から回路基板(転写先基板)に一括で移動及び搭載することができるため、接続構造体の生産性を高めることができる。
【0009】
しかしながら、レーザー転写法を用いて半導体チップを配置する方法では、高速で飛来する半導体チップが回路基板(接続対象部材)に着弾する際の衝撃により、回路基板(接続対象部材)上の所定の場所に、半導体チップを正確に配置することができないことがある。半導体チップの配置時に位置ずれが発生すると、上下の電極間を導電接続することができない場合がある。
【0010】
本発明の目的は、高速で飛来する半導体チップの捕捉性を高めることができる樹脂組成物を提供することである。また、本発明の目的は、上記樹脂組成物を用いる接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、回路基板(接続対象部材)の表面上に特定の樹脂組成物を配置することで、レーザー転写法等により高速で飛来する半導体チップを良好に捕捉することができることを見出した。
【0012】
本明細書において、以下の樹脂組成物、及び上記樹脂組成物を用いる接続構造体の製造方法を開示する。
【0013】
項1.熱硬化性成分と、フラックスと、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子とを含む、樹脂組成物。
【0014】
項2.前記フラックスが、主鎖の炭素数が偶数である第1のフラックスと、主鎖の炭素数が奇数である第2のフラックスとを含む、項1に記載の樹脂組成物。
【0015】
項3.前記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが、10MPa1/2以上であり、前記第1のフラックスの主鎖の炭素数が、4以上14以下の偶数であり、前記第2のフラックスの主鎖の炭素数が、3以上11以下の奇数である、項2に記載の樹脂組成物。
【0016】
項4.前記第1のフラックスの平均粒子径が、10μm以下である、項2又は3に記載の樹脂組成物。
【0017】
項5.前記第2のフラックスが、25℃で前記チクソトロピック剤に溶解可能である、項2~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0018】
項6.前記樹脂組成物100重量%中、前記第2のフラックスの含有量が、1重量%以上20重量%以下である、項2~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0019】
項7.前記チクソトロピック剤が、グリセリンを含む、項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0020】
項8.前記樹脂組成物100重量%中、前記フラックスの含有量が、5重量%以上25重量%以下である、項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0021】
項9.前記はんだ粒子の平均粒子径が、10μm以下である、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0022】
項10.項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記樹脂組成物を配置する第1の配置工程と、前記樹脂組成物の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように前記第2の接続対象部材を配置する第2の配置工程と、前記はんだ粒子の融点以上に前記樹脂組成物を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記樹脂組成物により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する接続工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【0023】
項11.前記第2の配置工程において、前記樹脂組成物の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、前記第2の接続対象部材をレーザー転写法により1cm/s以上の速さで移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように前記第2の接続対象部材を配置する、項10に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分と、フラックスと、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子とを含む。本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、高速で飛来する半導体チップの捕捉性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の工程を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の工程を説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の工程を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、接続構造体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0027】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分と、フラックスと、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子とを含む。
【0028】
従来、レーザー転写法を用いて半導体チップを配置する方法では、高速で飛来する半導体チップが回路基板(接続対象部材)に着弾する際の衝撃により、回路基板(接続対象部材)上の所定の場所に、半導体チップを正確に配置することができなかったりすることがある。半導体チップの配置時に位置ずれが発生すると、上下の電極間を導電接続することができない場合がある。
【0029】
本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、高速で飛来する半導体チップの捕捉性を高めることができる。特に、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性を高めることができる。結果として、飛来する半導体チップを回路基板(接続対象部材)上の所定の場所に正確に配置する(半導体チップの配置時の位置ずれを効果的に抑制する)ことができる。
【0030】
本発明では、上記のような効果を得るために、特定の樹脂組成物を用いることは大きく寄与する。
【0031】
上記樹脂組成物は、接続構造体の製造方法において、接続対象部材(回路基板、転写先基板)の表面上に配置されて用いられる。上記樹脂組成物は、接続構造体の製造方法において、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップを良好に捕捉するために好適に用いられる。上記樹脂組成物は、レーザー転写法による半導体チップ捕捉用樹脂組成物であることが好ましい。
【0032】
特に、本発明に係る樹脂組成物は、レーザー転写法による半導体チップの接続に好適に用いられる(レーザー転写法による半導体チップの接続のための樹脂組成物の使用)。より具体的には、本発明に係る樹脂組成物は、基板に対する、レーザー転写法による半導体チップの接続により好適に用いられる(基板に対する、レーザー転写法による半導体チップの接続のための樹脂組成物の使用)。
【0033】
上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角は、好ましくは65°以下、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは55°以下、特に好ましくは45°以下である。上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角が上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層高めることができる。具体的に、半導体チップの電極は、一般に、金、銅、又はこれらの合金を含むため、半導体チップの電極の表面は親水性を有することが多い。本発明に係る樹脂組成物の25℃での水に対する接触角が上記上限以下である場合には、樹脂組成物の表面が親水性を有するので、半導体チップの電極の表面との親和性が高く、接続対象部材(回路基板)の表面上に配置されたときに、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層高めることができる。上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角の下限は、特に限定されない。上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角は、0°以上であってもよく、0°を超えていてもよく、1°以上であってもよく、5°以上であってもよい。上記接触角の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0034】
上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角は、例えば、以下の方法で測定することができる。上記樹脂組成物の表面上に、1mlの水を滴下し、接触角測定装置を用いて、樹脂組成物の水に対する接触角を測定する。上記接触角測定装置としては、KYOWA社製「DMo-601」等が挙げられる。上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角は、上記水が上記樹脂組成物の表面上に配置されてから10秒経過後に測定される。
【0035】
上記樹脂組成物の25℃での水に対する接触角は、以下の方法等により、調整することができる。エポキシ樹脂等の熱硬化性成分の複数の骨格を組み合わせる方法。エポキシ樹脂等の熱硬化性成分の骨格を選択する方法。エポキシ樹脂等の熱硬化性成分の側鎖を選択する方法。25℃で液状の添加剤を樹脂組成物に分散させる方法。
【0036】
上記樹脂組成物は、25℃で液状であることが好ましい。ペースト状は、液状に含まれる。上記樹脂組成物は、25℃でペースト状であることが好ましい。上記樹脂組成物は、はんだ粒子を含むので、導電材料である。上記樹脂組成物は、導電ペーストであることが好ましい。上記樹脂組成物は、25℃で導電ペーストであることが好ましい。これらの場合には、樹脂組成物を接続対象部材の表面上により一層薄く良好に塗布することができ、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができ、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。
【0037】
25℃での上記樹脂組成物の粘度(η25)は、好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上であり、好ましくは250Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下である。上記粘度(η25)が上記下限以上であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができる。上記粘度(η25)が上記上限以下であると、樹脂組成物を接続対象部材の表面上に薄く良好に塗布することができ、導電接続時のはんだの凝集性を効果的に高めることができる。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0038】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE-22L」)等を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定することができる。
【0039】
上記はんだ粒子の融点での上記樹脂組成物の粘度(ηmp)は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは1Pa・s以上であり、好ましくは10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下である。上記粘度(ηmp)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。上記粘度(ηmp)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができ、接続部でのボイドをより一層効果的に抑制し、接続部以外への樹脂組成物のはみだしをより一層効果的に抑制することができる。上記粘度(ηmp)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0040】
上記粘度(ηmp)は、例えば、粘弾性測定装置(SCIENTIFIC社製「HAAKE」)を用いて、応力制御1Pa、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、及び測定温度範囲25℃~200℃の条件で測定することができる。但し、はんだ粒子の融点が200℃を超える場合には、温度上限をはんだ粒子の融点とする。この測定において、はんだ粒子の融点での粘度を読み取ることで、粘度(ηmp)を算出する。
【0041】
上記樹脂組成物は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましく、上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。接続対象部材の配置時の位置ずれをより一層効果的に抑制し、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記樹脂組成物は、ペースト状であることが好ましく、導電ペーストであることが好ましい。上記樹脂組成物は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記樹脂組成物は、回路接続材料であることが好ましい。
【0042】
以下、樹脂組成物に含まれる各成分を説明する。本明細書において、「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。「(メタ)アクリロイル」の用語は、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0043】
(熱硬化性成分)
本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性成分を含む。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記樹脂組成物は、熱硬化性成分として、熱硬化剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本発明に係る樹脂組成物では、上記の構成が備えられているので、樹脂組成物が熱硬化剤を含まない場合にも、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性を高めることができる。導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高める観点からは、上記樹脂組成物は、熱硬化剤を含まないことが好ましい。樹脂組成物をより一層良好に硬化させるために、上記樹脂組成物は、熱硬化性成分として、硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0044】
(熱硬化性成分:熱硬化性化合物)
本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、加熱により硬化可能な化合物である。上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。樹脂組成物の硬化性及び粘度をより一層良好にし、導通信頼性をより一層高める観点から、上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。上記樹脂組成物は、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物を含むことがより好ましい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物である。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
上記エポキシ化合物は、常温(25℃)で液状又は固体であり、上記エポキシ化合物が常温で固体である場合には、上記エポキシ化合物の溶融温度は、上記はんだ粒子の融点以下であることが好ましい。上記の好ましいエポキシ化合物を用いることで、接続対象部材を貼り合わせた段階では、粘度が高く、搬送等の衝撃により加速度が付与された際に、接続対象部材(回路基板)と、半導体チップとの位置ずれを抑制することができる。さらに、硬化時の熱により、樹脂組成物の粘度を大きく低下させることができ、導電接続時のはんだの凝集を効率よく進行させることができる。
【0047】
絶縁信頼性をより一層効果的に高め、導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性成分はエポキシ化合物を含むことが好ましく、上記熱硬化性化合物はエポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0048】
電極上にはんだをより一層効果的に配置する観点からは、上記熱硬化性化合物は、ポリエーテル骨格を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0049】
上記ポリエーテル骨格を有する熱硬化性化合物としては、炭素数3~12のアルキル鎖の両末端にグリシジルエーテル基を有する化合物、並びに炭素数2~4のポリエーテル骨格を有し、該ポリエーテル骨格2個~10個が連続して結合した構造単位を有するポリエーテル型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0050】
硬化物の耐熱性をより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、イソシアヌル骨格を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0051】
上記イソシアヌル骨格を有する熱硬化性化合物としてはトリイソシアヌレート型エポキシ化合物等が挙げられ、日産化学工業社製TEPICシリーズ(TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L、TEPIC-PAS、TEPIC-VL、及びTEPIC-UC)等が挙げられる。
【0052】
電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性をより一層効果的に高める観点、及び熱硬化性化合物の変色をより一層効果的に抑制する観点からは、上記熱硬化性化合物は、高い耐熱性を有することが好ましく、ノボラック型エポキシ化合物を含むことがより好ましい。ノボラック型エポキシ化合物は、比較的高い耐熱性を有する。
【0053】
上記樹脂組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。上記熱硬化性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができ、電極上にはんだをより一層効率的に配置し、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0054】
上記樹脂組成物100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができ、電極上にはんだをより一層効率的に配置し、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記エポキシ化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0055】
上記樹脂組成物100重量%中、上記ノボラック型エポキシ化合物の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。上記ノボラック型エポキシ化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができ、電極上にはんだをより一層効率的に配置し、電極間の絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。得られる接続構造体の耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記ノボラック型エポキシ化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0056】
(フラックス)
上記樹脂組成物は、フラックスを含む。フラックスを用いることで、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。
【0057】
上記フラックスとしては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機酸、有機酸アミン塩、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸アミン塩とは異なるアミン化合物、及び松脂等が挙げられる。上記フラックスは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
上記フラックスは、有機酸、又は有機酸アミン塩を含むことが好ましい。上記有機酸は、ジカルボン酸であることが好ましく、上記有機酸アミン塩は、ジカルボン酸アミン塩であることが好ましい。上記フラックスは、ジカルボン酸、又はジカルボン酸アミン塩を含むことが好ましく、ジカルボン酸とジカルボン酸アミン塩とを含むことがより好ましい。
【0059】
上記ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸及びピメリン酸等が挙げられる。
【0060】
上記ジカルボン酸アミン塩としては、グルタル酸ベンジルアミン塩、アジピン酸ベンジルアミン塩、アゼライン酸ベンジルアミン塩、グルタル酸ステアリルアミン塩、アジピン酸ステアリルアミン塩、及びアゼライン酸ステアリルアミン塩等が挙げられる。
【0061】
上記フラックスは、固体であることが好ましい。上記フラックスは、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。
【0062】
レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高める観点からは、上記フラックスは、主鎖の炭素数が互いに異なる2種以上のフラックスを含むことが好ましい。レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高める観点からは、上記フラックスは、主鎖の炭素数が偶数である第1のフラックスと、主鎖の炭素数が奇数である第2のフラックスとを含むことが好ましい。上記第1のフラックスは、1種のみのフラックスが用いられてもよく、2種以上のフラックスが用いられてもよい。上記第2のフラックスは、1種のみのフラックスが用いられてもよく、2種以上のフラックスが用いられてもよい。
【0063】
上記第1のフラックスの主鎖の炭素数は、偶数である。上記第1のフラックスの主鎖の炭素数は、偶数であり、かつ、上記第1のフラックスの主鎖の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。上記第1のフラックスの主鎖の炭素数は、4以上14以下の偶数であることが好ましい。上記第1のフラックスの主鎖の炭素数が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0064】
上記第2のフラックスの主鎖の炭素数は、奇数である。上記第2のフラックスの主鎖の炭素数は、奇数であり、かつ、上記第2のフラックスの主鎖の炭素数は、好ましくは3以上であり、好ましくは11以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは7以下である。上記第2のフラックスの主鎖の炭素数は、3以上11以下の奇数であることが好ましい。上記第2のフラックスの主鎖の炭素数が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0065】
上記フラックスの平均粒子径(フラックス全体での平均粒子径)は、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記フラックスの平均粒子径が上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができる。上記フラックスの平均粒子径の下限は、特に限定されない。上記フラックスの平均粒子径は、0.01μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。上記フラックスの平均粒子径の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0066】
上記第1のフラックスの平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。上記第1のフラックスの平均粒子径が上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができる。上記第1のフラックスの平均粒子径の下限は、特に限定されない。上記第1のフラックスの平均粒子径は、0.5μm以上であってもよく、1.0μm以上であってもよい。上記第1のフラックスの平均粒子径の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0067】
上記第2のフラックスの平均粒子径は、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。上記第2のフラックスの平均粒子径が上記上限以下であると、レーザー転写法により高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層効果的に高めることができる。上記第2のフラックスの平均粒子径の下限は、特に限定されない。上記第2のフラックスの平均粒子径は、0.01μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよい。上記第2のフラックスの平均粒子径の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0068】
上記フラックスの平均粒子径及び上記第1、第2のフラックスの平均粒子径は、数平均粒子径である。上記フラックスの平均粒子径及び上記第1、第2のフラックスの平均粒子径は、例えば、任意のフラックス50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各フラックスの粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりのフラックスの粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個のフラックスの円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりのフラックスの粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記フラックスの平均粒子径及び上記第1、第2のフラックスの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0069】
上記フラックス及び上記第1、第2のフラックスは、市販のフラックスの粉砕物であってもよい。市販のフラックスの粉砕方法としては、メノウ粉砕する方法、ジェットミル粉砕する方法、及びビーズミル粉砕する方法等が挙げられる。
【0070】
上記フラックスの粒子径の変動係数(CV値)(フラックス全体での粒子径の変動係数(CV値))は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記フラックスの粒子径の変動係数が、上記上限以下であると、電極上にフラックスをより一層効率的に配置することができる。上記フラックスの粒子径の変動係数(CV値)の下限は、特に限定されない。上記フラックスの粒子径の変動係数(CV値)は、0%以上であってもよく、1%以上であってもよく、5%以上であってもよい。上記フラックスの粒子径の変動係数の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0071】
上記フラックスの粒子径の変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0072】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:フラックスの粒子径の標準偏差
Dn:フラックスの粒子径の平均値
【0073】
上記フラックスの活性温度(融点)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは180℃以下である。上記フラックスの活性温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス効果がより一層効果的に発揮され、はんだが電極上により一層効率的に配置される。上記フラックスの活性温度(融点)は、70℃以上190℃以下であることが好ましく、80℃以上180℃以下であることが特に好ましい。
【0074】
上記フラックスの活性温度(融点)は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0075】
フラックスの活性温度(融点)が80℃以上180℃以下である上記フラックスとしては、グルタル酸(融点96℃)、グルタル酸ベンジルアミン塩(融点108℃)、アジピン酸(融点152℃)、アジピン酸ベンジルアミン塩(融点180℃)、ピメリン酸(融点104℃)、及びスベリン酸(融点142℃)等のジカルボン酸、安息香酸(融点122℃)、並びにリンゴ酸(融点130℃)等が挙げられる。
【0076】
また、上記フラックスの沸点は200℃以下であることが好ましい。
【0077】
上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスは、25℃で上記チクソトロピック剤に溶解可能であることが好ましい。上記第1のフラックスは、25℃で上記チクソトロピック剤に溶解可能であってもよく、溶解可能でなくてもよい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高め、かつ、はんだ粒子の凝集性を高める観点からは、上記第1のフラックスは、25℃で上記チクソトロピック剤に溶解可能でなく、かつ、上記第2のフラックスは、25℃で上記チクソトロピック剤に溶解可能であることが好ましい。なお、本明細書において、「フラックスがチクソトロピック剤に溶解可能である」とは、フラックス10gをチクソトロピック剤20g中に入れ、25℃で10分間保持したときに、チクソトロピック剤に溶けるフラックスの重量が4g以上であることを意味する。
【0078】
上記フラックス及び上記第1、第2のフラックスは、樹脂組成物中に分散されていてもよく、はんだ粒子の表面上に付着していてもよい。上記第2のフラックスは、チクソトロピック剤に溶解されて用いられてもよい。上記樹脂組成物の材料は、チクソトロピック剤に溶解された第2のフラックスを含んでいてもよい。
【0079】
電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記第1のフラックスは、1,10-デカンジカルボン酸、アジピン酸又はそれらの塩であることが好ましく、アジピン酸又はアジピン酸の塩であることがより好ましい。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記第1のフラックスは、1,10-デカンジカルボン酸、又はアジピン酸であることが好ましく、アジピン酸であることがより好ましい。
【0080】
電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記第2のフラックスは、ピメリン酸、アゼライン酸、グルタル酸又はそれらの塩であることが好ましく、アゼライン酸、アゼライン酸の塩、グルタル酸又はグルタル酸の塩であることがより好ましい。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記第2のフラックスは、ピメリン酸、グルタル酸又はそれらの塩であることが好ましく、グルタル酸又はグルタル酸の塩であることがより好ましい。電極上にはんだをより一層効率的に配置する観点からは、上記第2のフラックスは、ピメリン酸、又はグルタル酸であることが好ましく、グルタル酸であることがより好ましい。
【0081】
上記フラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。上記第1のフラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。上記第2のフラックスは、加熱によりカチオンを放出するフラックスであることが好ましい。加熱によりカチオンを放出するフラックスの使用により、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。
【0082】
上記樹脂組成物100重量%中、上記フラックスの含有量(フラックス全体での含有量)は、好ましくは5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。上記フラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ及び電極の表面に酸化被膜がより一層形成され難くなり、さらに、はんだ及び電極の表面に形成された酸化被膜をより一層効果的に除去することができる。なお、上記フラックスが上記第1のフラックス及び上記第2のフラックスを含む場合には、上記フラックスの含有量は、上記第1のフラックスの含有量と上記第2のフラックスの含有量との合計を示す(以下同様)。
【0083】
上記樹脂組成物100重量%中、上記第1のフラックスの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。上記第1のフラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ凝集性を良好にすることができる。
【0084】
上記樹脂組成物100重量%中、上記第2のフラックスの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。上記第2のフラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0085】
上記フラックス100重量%中、上記第1のフラックスの含有量は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上であり、好ましくは100重量%以下、より好ましくは100重量%未満、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下、最も好ましくは70重量%以下である。上記第1のフラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0086】
上記チクソトロピック剤100重量部に対して、上記フラックスの含有量(フラックス全体での含有量)は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは150重量部以上、さらに好ましくは200重量部以上であり、好ましくは500重量部以下、より好ましくは400重量部以下、さらに好ましくは300重量部以下である。上記フラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0087】
上記チクソトロピック剤100重量部に対して、上記第1のフラックスの含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、より一層好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは100重量部以上、特に好ましくは150重量部以上、最も好ましくは200重量部以上であり、好ましくは500重量部以下、より好ましくは400重量部以下、さらに好ましくは300重量部以下である。上記第1のフラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0088】
上記チクソトロピック剤100重量部に対して、上記第2のフラックスの含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。上記第2のフラックスの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0089】
(チクソトロピック剤)
上記樹脂組成物は、25℃で液状であるチクソトロピック剤を含む。
【0090】
上記チクソトロピック剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-フェニルエタノール、1,3-プロパンジオール、及びグリセリン等が挙げられる。上記チクソトロピック剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記チクソトロピック剤は、極性を有する化合物を含むことが好ましく、水酸基又はカルボキシル基を有する化合物を含むことがより好ましい。塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記チクソトロピック剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-フェニルエタノール、1,3-プロパンジオール、又はグリセリンを含むことが好ましく、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール又はグリセリンを含むことがより好ましい。塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記チクソトロピック剤は、グリセリンを含むことが特に好ましい。
【0092】
上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスが、アゼライン酸、アゼライン酸の塩、グルタル酸又はグルタル酸の塩を含み、上記チクソトロピック剤が、グリセリン又は1,3-プロパンジオールを含むことが好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスが、アゼライン酸、アゼライン酸の塩、グルタル酸又はグルタル酸の塩であり、上記チクソトロピック剤が、グリセリン又は1,3-プロパンジオールであることが好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスが、グルタル酸又はグルタル酸の塩を含み、上記チクソトロピック剤が、グリセリンを含むことが好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスが、グルタル酸又はグルタル酸の塩であり、上記チクソトロピック剤が、グリセリンであることが好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記第2のフラックスが、グルタル酸であり、上記チクソトロピック剤が、グリセリンであることが好ましい。
【0093】
上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記樹脂組成物は、アゼライン酸、アゼライン酸の塩、グルタル酸又はグルタル酸の塩がグリセリン又は1,3-プロパンジオールに溶解された状態で、アゼライン酸、アゼライン酸の塩、グルタル酸又はグルタル酸の塩とグリセリン又は1,3-プロパンジオールとを含むことが特に好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記樹脂組成物は、グルタル酸又はグルタル酸の塩がグリセリンに溶解された状態で、グルタル酸又はグルタル酸の塩とグリセリンとを含むことが特に好ましい。上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高める観点からは、上記樹脂組成物は、グルタル酸がグリセリンに溶解された状態で、グルタル酸及びグリセリンを含むことが特に好ましい。
【0094】
上記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、好ましくは10MPa1/2以上、より好ましくは12MPa1/2以上、さらに好ましくは14MPa1/2以上、特に好ましくは16MPa1/2以上である。上記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが上記下限以上であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。上記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHの上限は、特に限定されない。上記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、100MPa1/2以下であってもよく、50MPa1/2以下であってもよい。
【0095】
上記チクソトロピック剤のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、例えば、コンピュータソフトウエア「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)」を用いることにより、簡便に推算することができる。
【0096】
上記樹脂組成物100重量%中、上記チクソトロピック剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記チクソトロピック剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0097】
上記樹脂組成物100重量%中、上記グリセリンの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記グリセリンの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂組成物の塗布性及びスクリーン印刷性を高めることができる。
【0098】
(はんだ粒子)
上記樹脂組成物は、はんだ粒子を含む。上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだにより形成されている。上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだである粒子である。上記はんだ粒子の代わりに、はんだ以外の材料から形成された基材粒子と該基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子を用いた場合には、電極上に導電性粒子が集まり難くなる。また、上記導電性粒子では、導電性粒子同士のはんだ接合性が低いために、電極上に移動した導電性粒子が電極外に移動しやすくなる傾向がある。
【0099】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記はんだ粒子は、融点が450℃以下である金属粒子(低融点金属粒子)であることが好ましい。上記低融点金属粒子は、低融点金属を含む粒子である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。
【0100】
上記はんだ粒子の融点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは245℃以下である。上記はんだ粒子の融点が、上記下限以上及び上記上限以下であると、導電接続時のはんだの凝集性をより一層効果的に高めることができる。上記はんだ粒子の融点が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性をより一層効果的に高めることができ、かつ、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0101】
上記はんだ粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0102】
上記はんだ粒子は、該はんだ粒子100重量%中、はんだを90重量%以上含むことが好ましい。また、上記はんだ粒子は錫を含むことが好ましい。上記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記はんだ粒子における錫の含有量が、上記下限以上であると、はんだ部と電極との接続信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0103】
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP-AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX-800HS」)等を用いて測定することができる。
【0104】
上記はんだ粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだ部が電極間を導通させる。例えば、はんだ部と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、上記はんだ粒子の使用により、はんだ部と電極との接合強度が高くなる結果、はんだ部と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性及び接続信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0105】
上記はんだ粒子を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-亜鉛合金、及び錫-インジウム合金等が挙げられる。電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫-銀合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、又は錫-インジウム合金であることが好ましい。上記低融点金属は、錫-ビスマス合金、又は錫-インジウム合金であることがより好ましい。
【0106】
上記はんだ粒子は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだ粒子の組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウム等を含む金属組成が挙げられる。上記はんだ粒子は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むか、又は錫とビスマスとを含むことが好ましい。
【0107】
はんだ部と電極との接合強度をより一層効果的に高めるために、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、及びパラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、はんだ部と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。はんだ部と電極との接合強度をより一層効果的に高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0108】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上である。上記はんだ粒子の平均粒子径が、上記下限以上であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。上記はんだ粒子の平均粒子径の範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0109】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、数平均粒子径である。上記はんだ粒子の平均粒子径は、例えば、任意のはんだ粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各はんだ粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個のはんだ粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0110】
上記はんだ粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。上記はんだ粒子の粒子径の変動係数が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができる。但し、上記はんだ粒子の粒子径のCV値は、5%未満であってもよい。
【0111】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0112】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:はんだ粒子の粒子径の標準偏差
Dn:はんだ粒子の粒子径の平均値
【0113】
上記はんだ粒子の形状は特に限定されない。上記はんだ粒子の形状は、球状であってもよく、球形状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。
【0114】
上記樹脂組成物100重量%中、上記はんだ粒子の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。上記はんだ粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。導通信頼性をより一層効果的に高める観点からは、上記はんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0115】
(他の成分)
上記樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、増粘剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0116】
(接続構造体及び接続構造体の製造方法)
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した樹脂組成物である。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている。
【0117】
本発明に係る接続構造体では、特定の樹脂組成物を用いているので、はんだが第1の電極と第2の電極との間に集まりやすく、はんだを電極(ライン)上に効率的に配置することができる。また、はんだの一部が、電極が形成されていない領域(スペース)に配置され難く、電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくすることができる。従って、第1の電極と第2の電極との間の導通信頼性を高めることができる。しかも、接続されてはならない横方向に隣接する電極間の電気的な接続を防ぐことができ、絶縁信頼性を高めることができる。
【0118】
また、はんだを電極上に効率的に配置し、かつ電極が形成されていない領域に配置されるはんだの量をかなり少なくするためには、上記樹脂組成物は、導電フィルムではなく、導電ペーストを用いることが好ましい。
【0119】
上記接続構造体では、上記第1の接続対象部材が、回路基板であることが好ましい。上記接続構造体では、上記第2の接続対象部材が、半導体チップであることが好ましい。
【0120】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、以下の工程を備える。(1)上述した樹脂組成物を用いて、少なくとも1つの第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、上記樹脂組成物を配置する第1の配置工程。(2)上記樹脂組成物の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、少なくとも1つの第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させ、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように上記第2の接続対象部材を配置する第2の配置工程。(3)上記はんだ粒子の融点以上に上記樹脂組成物を加熱することで、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、上記樹脂組成物により形成し、かつ、上記第1の電極と上記第2の電極とを、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続する接続工程。
【0121】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記の構成が備えられているので、レーザー転写法により高速で飛来する第2の接続対象部材(半導体チップ)の捕捉性を高めることができる。
【0122】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0123】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0124】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4は、上述した樹脂組成物により形成されている。
【0125】
本実施形態では、上記樹脂組成物は、熱硬化性成分と、フラックスと、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子とを含む。本実施形態では、樹脂組成物として、導電ペーストが用いられている。
【0126】
接続部4は、複数のはんだ粒子が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性成分が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
【0127】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだは存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)では、はんだ部4Aと離れたはんだは存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだが存在していてもよい。
【0128】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接続面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、導電部の外表面部分がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このため、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、樹脂組成物に含まれるフラックス及びチクソトロピック剤は、一般に、加熱により次第に失活する。
【0129】
なお、
図1に示す接続構造体1では、はんだ部4Aの全てが、第1,第2の電極2a,3a間の対向している領域に位置している。
図5に示す変形例の接続構造体1Xは、接続部4Xのみが、
図1に示す接続構造体1と異なる。接続部4Xは、はんだ部4XAと硬化物部4XBとを有する。接続構造体1Xのように、はんだ部4XAの多くが、第1,第2の電極2a,3aの対向している領域に位置しており、はんだ部4XAの一部が第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出していてもよい。第1,第2の電極2a,3aの対向している領域から側方にはみ出しているはんだ部4XAは、はんだ部4XAの一部であり、はんだ部4XAから離れたはんだではない。なお、本実施形態では、はんだ部から離れたはんだの量を少なくすることができるが、はんだ部から離れたはんだが硬化物部中に存在していてもよい。
【0130】
はんだ粒子の使用量を少なくすれば、接続構造体1を得ることが容易になる。はんだ粒子の使用量を多くすれば、接続構造体1Xを得ることが容易になる。
【0131】
上記第1の電極と上記第2の電極との間におけるはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。上記第1の電極及び上記第2の電極において、電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、好ましくは100%以下である。上記接続部中の上記はんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0132】
接続構造体1,1Xでは、第1の電極2aと接続部4,4Xと第2の電極3aとの積層方向に第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分をみたときに、第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、接続部4,4X中のはんだ部4A,4XAが配置されていることが好ましい。接続部4,4X中のはんだ部4A,4XAが、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0133】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の60%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の70%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の80%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の90%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0134】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の60%以上が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の70%以上が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の90%以上が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の95%以上が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の99%以上が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0135】
次に、
図2~4を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて、接続構造体1を製造する方法の一例を説明する。
図2~4は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いて、接続構造体を製造する方法の一例の各工程を説明するための断面図である。
【0136】
先ず、第1の電極2aを表面(上面)に有する第1の接続対象部材(回路基板)2を用意する。次に、
図2に示すように、第1の接続対象部材(回路基板)2の表面上に、熱硬化性成分11Bと、はんだ粒子11Aと、フラックス11Cと、25℃で液状であるチクソトロピック剤(図示せず)とを含む樹脂組成物11を配置する(第1の配置工程)。熱硬化性成分11Bは、熱硬化性化合物を含む。
【0137】
第1の接続対象部材(回路基板)2の第1の電極2aが設けられた表面上に、樹脂組成物11を配置する。樹脂組成物11の配置の後に、はんだ粒子11A、フラックス11C、及びチクソトロピック剤は、第1の電極2a(ライン)上と、第1の電極2aが形成されていない領域(スペース)上との双方に配置されている。なお、上記樹脂組成物は、上記第1の電極の表面上にのみ配置されてもよい。
【0138】
樹脂組成物11の配置方法は、特に限定されない。樹脂組成物11の配置方法としては、ディスペンサーによる塗布、スクリーン印刷、及びインクジェット装置による吐出等が挙げられる。
【0139】
また、第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材(半導体チップ)3を用意する。第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材(半導体チップ)3は、支持部材5と支持フィルム6とを備える転写元基板の支持フィルム6側の表面上に配置されている。第2の電極3aを表面(下面)に有する第2の接続対象部材(半導体チップ)3は、支持フィルム6の表面上に配置されている。
【0140】
次に、
図3に示すように、第1の接続対象部材(回路基板)2の表面上の樹脂組成物11において、樹脂組成物11の第1の接続対象部材(回路基板)2側とは反対側の表面上に、第2の接続対象部材(半導体チップ)3をレーザー転写法により移動させ、第2の接続対象部材(半導体チップ)3を配置する(第2の配置工程)。樹脂組成物11の表面上に、第2の電極3a側から、第2の接続対象部材(半導体チップ)3を配置する。上記第2の配置工程では、レーザー照射装置51により転写元基板の支持部材5側からレーザーを照射することで、支持フィルム6中の硬化性成分(樹脂成分)の硬化反応が進行し、支持フィルム6の表面の粘着力が大きく低下する。結果として、第2の接続対象部材(半導体チップ)3が、転写元基板(特に、支持フィルム6)から剥離して、樹脂組成物11の第1の接続対象部材(回路基板)2側とは反対側の表面上に移動する。第2の接続対象部材(半導体チップ)3は、例えば、該第2の接続対象部材(半導体チップ)3の表面が他の部材に接していない状態(他の部材に保持されていない状態)で、該第2の接続対象部材(半導体チップ)3単体で移動する。このとき、第1の電極2aと第2の電極3aとを対向させる。
【0141】
本実施形態では、上記樹脂組成物が用いられているので、上記第2の配置工程において、レーザー転写法により高速で飛来する第2の接続対象部材(半導体チップ)3の捕捉性を高めることができる。結果として、飛来する第2の接続対象部材(半導体チップ)を第1の接続対象部材(回路基板)上の所定の場所に正確に配置する(半導体チップの配置時の位置ずれを効果的に抑制する)ことができる。
【0142】
次に、はんだ粒子11Aの融点以上に樹脂組成物11を加熱する。好ましくは、熱硬化性成分11B(熱硬化性化合物)の硬化温度以上に樹脂組成物11を加熱する。この加熱時には、電極が形成されていない領域に存在していたはんだ粒子11Aは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まる(自己凝集効果)。導電フィルムではなく、導電ペーストを用いた場合には、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。また、はんだ粒子11Aは溶融し、互いに接合する。また、熱硬化性成分11Bは熱硬化する。この結果、
図4に示すように、第1の接続対象部材(回路基板)2と第2の接続対象部材(半導体チップ)3とを接続している接続部4が、樹脂組成物11により形成される。樹脂組成物11により接続部4が形成され、複数のはんだ粒子11Aが接合することによってはんだ部4Aが形成され、熱硬化性成分11Bが熱硬化することによって硬化物部4Bが形成され、かつ、第1の電極2aと第2の電極3aとが、接続部4中のはんだ部4Aにより電気的に接続される(接続工程)。はんだ粒子11Aが十分に移動すれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に位置していないはんだ粒子11Aの移動が開始してから、第1の電極2aと第2の電極3aとの間にはんだ粒子11Aの移動が完了するまでに、温度を一定に保持しなくてもよい。
【0143】
上記第2の配置工程及び上記接続工程において、加圧を行わない方が好ましい。この場合には、樹脂組成物11には、第2の接続対象部材(半導体チップ)3の重量が加わる。このため、接続部4の形成時に、はんだ粒子11Aが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間により一層効果的に集まる。なお、上記第2の配置工程及び上記接続工程の内の少なくとも一方において、加圧を行えば、はんだ粒子11Aが第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まろうとする作用が阻害される傾向が高くなる。
【0144】
また、本実施形態では、加圧を行っていないため、第1の電極2aと第2の電極3aとのアライメントが僅かにずれた状態で、第1の接続対象部材(回路基板)2と第2の接続対象部材(半導体チップ)3とが重ね合わされた場合でも、その僅かなずれを補正して第1の電極2aと第2の電極3aとを接続させることができる(セルフアライメント効果)。これは、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に自己凝集している溶融したはんだが、第1の電極2aと第2の電極3aとの間のはんだと樹脂組成物のその他の成分とが接する面積が最小となる方がエネルギー的に安定になり、その最小の面積となる接続構造であるアライメントのあった接続構造にする力が働くためである。この際、樹脂組成物が硬化していないこと、及び、その温度、時間にて、樹脂組成物のはんだ粒子以外の成分の粘度が十分低いことが望ましい。
【0145】
このようにして、
図1に示す接続構造体1が得られる。なお、上記第2の配置工程と上記接続工程とは連続して行われてもよい。また、上記第2の配置工程を行った後に、得られる第1の接続対象部材2と樹脂組成物11と第2の接続対象部材3との積層体を、加熱部に移動させて、上記接続工程を行ってもよい。上記加熱を行うために、加熱部材上に上記積層体を配置してもよく、加熱された空間内に上記積層体を配置してもよい。
【0146】
上記第2の配置工程において、上記樹脂組成物の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、上記第2の接続対象部材をレーザー転写法により1cm/s以上の速さで移動させ、上記第1の電極と上記第2の電極とが対向するように上記第2の接続対象部材を配置することが好ましい。上記第2の配置工程において、上記樹脂組成物の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、上記第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させる速さは、好ましくは5cm/s以上、より好ましくは10cm/s以上、さらに好ましくは50cm/s以上である。上記第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させる速さの上限は、特に限定されない。上記第2の配置工程におけるレーザー転写法では、上記第2の接続対象部材を、上記樹脂組成物の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、500cm/s以下の速さで移動させてもよい。上記第2の配置工程において、上記樹脂組成物の上記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、上記第2の接続対象部材をレーザー転写法により移動させる速さの範囲は、上記下限値及び上記上限値を適宜選択して設定することができる。
【0147】
上記接続工程における上記加熱温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下である。上記接続工程における上記加熱温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだをより一層効率的に配置することができ、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性をより一層効果的に高めることができる。
【0148】
上記接続工程における加熱方法としては、はんだの融点以上及び熱硬化性成分の硬化温度以上に、接続構造体全体を、リフロー炉又はオーブンを用いて加熱する方法や、接続構造体の接続部のみを局所的に加熱する方法が挙げられる。
【0149】
局所的に加熱する方法に用いる器具としては、ホットプレート、熱風を付与するヒートガン、はんだゴテ、及び赤外線ヒーター等が挙げられる。
【0150】
また、ホットプレートにて局所的に加熱する際、接続部直下は、熱伝導性の高い金属にて、その他の加熱することが好ましくない個所は、フッ素樹脂等の熱伝導性の低い材質にて、ホットプレート上面を形成することが好ましい。
【0151】
上記第1、第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1、第2の接続対象部材としては、半導体チップ、半導体パッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記半導体チップは、LEDチップであってもよく、上記半導体パッケージは、LEDパッケージであってもよい。上記第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。上記第2の接続対象部材は、半導体チップであることが好ましく、LEDチップであることがより好ましく、マイクロLEDチップであることがさらに好ましい。
【0152】
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第1の接続対象部材は、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだが電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、導電ペーストを用いることで、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだを電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。
【0153】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0154】
上記支持部材は、特に限定されない。上記支持部材としては、ガラス基板、サファイヤ基板、シリコーン基板、金属基板、及び有機基板等が挙げられる。
【0155】
上記支持フィルムは、特に限定されない。上記支持フィルムとしては、シリコーン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、及びポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記支持フィルムは、粘着層を有することが好ましい。
【0156】
上記第2の配置工程において、照射されるレーザーの積算光量は、好ましくは100mJ/cm2以上、より好ましくは150mJ/cm2以上、さらに好ましくは200mJ/cm2以上であり、好ましくは400mJ/cm2以下、より好ましくは350mJ/cm2以下、さらに好ましくは300mJ/cm2以下である。上記第2の配置工程において照射されるレーザーの積算光量が上記下限以上及び上記上限以下であると、高速で飛来する半導体チップの捕捉性をより一層高めることができる。
【0157】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0158】
熱硬化性成分(熱硬化性化合物):
フェノールノボラック型エポキシ化合物(三菱ケミカル社製「JER152」)
ビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製「830-S」)
【0159】
フラックス:
アジピン酸ベンジルアミン塩(第1のフラックス(主鎖の炭素数4)、平均粒子径10μm、融点180℃、下記の合成例1に従って作製)
グルタル酸ベンジルアミン塩(第2のフラックス(主鎖の炭素数3)、平均粒子径10μm、融点108℃、下記の合成例2に従って作製)
アゼライン酸ステアリルアミン塩(第2のフラックス(主鎖の炭素数7)、平均粒子径10μm、融点110℃、下記の合成例3に従って作製)
【0160】
合成例1:
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、アジピン酸(富士フイルム和光純薬社製)14.612gとを入れ、100℃にて10分間加熱し溶解させた。その後、ベンジルアミン(富士フイルム和光純薬社製)10.715gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5℃~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、アジピン酸ベンジルアミン塩(平均粒子径30μm)を得た。得られたアジピン酸ベンジルアミン塩をジェットミル粉砕する方法により粉砕して、平均粒子径10μmのアジピン酸ベンジルアミン塩を得た。
【0161】
合成例2:
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、グルタル酸(富士フイルム和光純薬社製)13.212gとを入れ、室温で均一になるまで溶解させた。その後、ベンジルアミン(富士フイルム和光純薬社製)10.715gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5℃~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、グルタル酸ベンジルアミン塩を得た。得られたグルタル酸ベンジルアミン塩をジェットミル粉砕する方法により粉砕して、平均粒子径10μmのグルタル酸ベンジルアミン塩を得た。
【0162】
合成例3:
ガラスビンに、反応溶媒である水24gと、アゼライン酸(富士フイルム和光純薬社製)9.411gとを入れ、100℃にて10分間加熱し溶解させた。その後、ステアリルアミン(富士フイルム和光純薬社製)13.476gを入れて、約5分間撹拌し、混合液を得た。得られた混合液を5℃~10℃の冷蔵庫に入れて、一晩放置した。析出した結晶をろ過により分取し、水で洗浄し、真空乾燥し、アゼライン酸ステアリルアミン塩(平均粒子径30μm)を得た。得られたアゼライン酸ステアリルアミン塩をジェットミル粉砕する方法により粉砕して、平均粒子径10μmのアジピン酸ベンジルアミン塩を得た。
【0163】
フラックスが溶解したチクソトロピック剤:
グリセリンにグルタル酸が溶解されたチクソトロピック剤(ナカライテスク社製「グリセロール」、グルタル酸30重量%・グリセリン70重量%、グリセリンのハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH14.3MPa1/2)
【0164】
チクソトロピック剤:
エチレングリコール(Wako社製、25℃で液状、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH12.7MPa1/2)
1,3-プロパンジオール(TCI社製、25℃で液状、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH12.9MPa1/2)
【0165】
はんだ粒子:
SnAgCuはんだ粒子(融点220℃、三井金属鉱業社製「Sn96.5Ag3Cu0.5」を選別したはんだ粒子、平均粒子径3μm)
SnBiはんだ粒子(融点139℃、三井金属鉱業社製「Sn42Bi58」を選別したはんだ粒子、平均粒子径3μm)
【0166】
(フラックス、及びはんだ粒子の平均粒子径)
フラックス、及びはんだ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA-920」)を用いて測定した。
【0167】
(はんだ粒子及びフラックスの融点)
はんだ粒子及びフラックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて算出した。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」を用いた。
【0168】
(実施例4,6~8、参考例1~3,5及び比較例1~2)
(1)樹脂組成物(異方性導電ペースト)の作製
下記の表1~3に示す成分を下記の表1~3に示す配合量で配合して、樹脂組成物(異方性導電ペースト)を得た。
【0169】
(2)接続構造体の作製
第1の接続対象部材(回路基板)として、複数の電極(第1の電極、横23μm×縦30μm×厚み12μmの銅電極、14μmの電極間スペース)を表面に有するガラス基板(厚み:0.7mm)を用意した。
【0170】
第2の接続対象部材(半導体チップ)として、複数の電極(第2の電極、横20μm×縦20μm×厚み3μmの金電極、10μmの電極間スペース)を表面に有するマイクロLEDチップ(材質:GaN、厚み:0.01mm)を用意した。
【0171】
上記ガラス基板の上面に、スクリーン印刷により作製直後の樹脂組成物(異方性導電ペースト)を厚み10μmとなるように塗工し、樹脂組成物(異方性導電ペースト)層を形成した。次に、樹脂組成物(異方性導電ペースト)層の上面にレーザー転写法により半導体チップを電極同士が対向するように積層した。その状態から、樹脂組成物(異方性導電ペースト)層の温度が、昇温開始から5秒後にはんだ粒子の融点となるように加熱した。さらに、昇温開始から10秒後に樹脂組成物(異方性導電ペースト)層の温度が250℃となるように加熱し、樹脂組成物(異方性導電ペースト)層を硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0172】
(評価)
(1)25℃での水に対する接触角
得られた樹脂組成物について、上述した方法で、25℃での水に対する接触角を測定した。
【0173】
(2)スクリーン印刷性(塗布性)
得られた樹脂組成物(異方性導電ペースト)について、開口部1箇所当たりの寸法が114μm×60μm、厚みが10μmのメタルマスクを用いて、ガラス基板上にスクリーン印刷を行った。印刷されたパターン50箇所について、印刷直後の印刷面をレーザー顕微鏡で観察し、ガラス基板に塗布された樹脂組成物の体積を計算し、ガラス基板に塗布された樹脂組成物の体積の、メタルマスクの開口部1箇所当たりの容積に対する割合X(%)を計算した。スクリーン印刷性を、以下の基準で判定した。
【0174】
[スクリーン印刷性の判定基準]
○○:割合Xが、50%以上
○:割合Xが、40%以上50%未満
△:割合Xが、30%以上40%未満
×:割合Xが、30%未満
【0175】
(3)はんだの凝集性
得られた接続構造体(20個)において、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の、接続部中のはんだ部が配置されている面積の割合を評価した。20個の値を平均して、面積の割合Yを求めた。面積の割合Yから、導電接続時のはんだの凝集性を、以下の基準で判定した。
【0176】
[はんだの凝集性の判定基準]
○○:割合Yが70%以上
○:割合Yが60%以上70%未満
△:割合Yが50%以上60%未満
×:割合Yが50%未満
【0177】
(4)半導体チップの捕捉性
「(2)スクリーン印刷性」においてガラス基板上にスクリーン印刷により塗工された樹脂組成物のガラス基板とは反対の表面上に、半導体チップをレーザー転写法により1cm/sの速さで移動させ、ガラス基板の第1の電極と半導体チップの第2の電極とが対向するように20個の半導体チップを配置した。半導体チップ20個のうち、所定の位置から±3μm以内の位置で捕捉されている半導体チップの個数の割合Zを算出した。半導体チップの捕捉性を、以下の基準で判定した。
【0178】
[半導体チップの捕捉性の判定基準]
○○:割合Zが70%以上
○:割合Zが50%以上70%未満
×:割合Zが50%未満
【0179】
結果を下記の表1~3に示す。
【0180】
【0181】
【0182】
【符号の説明】
【0183】
1,1X…接続構造体
2…第1の接続対象部材(回路基板)
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材(半導体チップ)
3a…第2の電極
4,4X…接続部
4A,4XA…はんだ部
4B,4XB…硬化物部
5…支持部材(転写元基板)
6…支持フィルム(転写元基板)
11…樹脂組成物
11A…はんだ粒子
11B…熱硬化性成分
11C…フラックス
51…レーザー照射装置
【要約】
高速で飛来する半導体チップ(3)の捕捉性を高めることができる樹脂組成物(11)を提供する。
本発明に係る樹脂組成物(11)は、熱硬化性成分(11B)と、フラックス(11C)と、25℃で液状であるチクソトロピック剤と、はんだ粒子(11A)とを含む。