(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20250110BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
(21)【出願番号】P 2020016578
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 康夫
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043292(JP,A)
【文献】特開2012-153248(JP,A)
【文献】特開2011-154397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームを有するシートフレームと、
前記左右のサイドフレームの間に配置された送風機と、
前記シートフレームの外側を覆うカバー部と、
前記送風機と前記カバー部との間に配置され、共鳴空間を形成する共鳴空間形成部と、を備え、
前記共鳴空間形成部は、前記カバー部側から見て前記送風機の前面全体を覆うように形成され、複数の貫通孔を有する板部材と、前記板部材の縁部から前記カバー部に向けて延在する枠体と、を有する騒音低減ユニットにより構成され
、
前記騒音低減ユニットは、空隙を介して前記送風機の筐体と一体に設けられることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記板部材は、前記送風機と前記カバー部の乗員の着座面側における着座側カバー部との間に配置されることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記送風機と前記着座側カバー部に設けられた通気部とを接続する空気通路を形成する通路形成部をさらに備え、
前記通路形成部は、前記共鳴空間の左右方向外側に、前記共鳴空間に沿って延設されることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記板部材は、前記送風機と前記カバー部の乗員の着座面の反対側の非着座側カバー部との間に配置されることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記板部材は、前記送風機と前記カバー部の乗員の着座面側における着座側カバー部との間に配置される第1板部材と、前記送風機と前記カバー部の乗員の着座面の反対側の非着座側カバー部との間に配置される第2板部材と、を有し、
前記共鳴空間形成部は、前記第1板部材と前記第2板部材とを連結する連結部をさらに有することを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記送風機は、前記板部材の前記複数の貫通孔に面して吸気用または排気用の開口部を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記共鳴空間形成部は、前記シートフレームから前記板部材を支持する支持部をさらに有することを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記共鳴空間形成部は、前記送風機から前記板部材を支持する支持部をさらに有することを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記左右のサイドフレームの間に延設され、乗員を支持する略板状の受圧部材をさらに備え、
前記板部材は、前記受圧部材と一体に形成されることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シートバックの内部に送風機が配設されるとともに、送風機の作動音を低減するように構成された車両用シートが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載のシートでは、送風機の一部を覆うように板状の防音パネルが配置されるとともに、防音パネルの送風機と対向する部位に、送風機の作動音を乱反射させる凹凸面が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のシートのように防音パネルを設ける構成では、例えば送風機の作動音等、乗員側に発せられる特定の周波数帯域の音を効果的に低減することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両用シートは、左右のサイドフレームを有するシートフレームと、左右のサイドフレームの間に配置された送風機と、シートフレームの外側を覆うカバー部と、送風機とカバー部との間に配置され、共鳴空間を形成する共鳴空間形成部と、を備える。共鳴空間形成部は、カバー部側から見て送風機の前面全体を覆うように形成され、複数の貫通孔を有する板部材と、板部材の縁部からカバー部に向けて延在する枠体と、を有する騒音低減ユニットにより構成される。騒音低減ユニットは、空隙を介して送風機の筐体と一体に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乗員側に発せられる特定の周波数帯域の音を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの要部構成を示す斜視図。
【
図2】
図1のシートバックのパッドから上層パッドを取り外した状態を示す分解斜視図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの骨格を構成するシートフレームとシートフレームに取り付けられた空調ユニットの構成を示す斜視図。
【
図5】車両用シートに内蔵される空調ユニットの配置を示す断面図。
【
図6】
図3の空調ユニットを前方から見た拡大正面図。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの内部構成を示す正面図。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの内部構成を示す鉛直方向断面図。
【
図9】
図8の騒音低減ユニットの全体構成を示す斜視図。
【
図11】
図10の騒音低減ユニットを有する車両用シートの内部構成を示す正面図。
【
図14】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられる騒音低減ユニットの
図8とは異なる配置を示す断面図。
【
図15】本発明の実施形態に係る車両用シートに設けられる騒音低減ユニットの
図9とは異なる例を示す断面図。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る車両用シートの内部構成を示す正面図。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る車両用シートの斜視図。
【
図20】第2実施形態の変形例を概略的に示す要部斜視図。
【
図22】
図9のさらに他の変形例である騒音低減ユニットと送風機の要部構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1実施形態-
以下、
図1~
図15を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用シートは、例えば運転席または助手席に設けられ、送風機(例えばブロア)を内蔵する。車両用シートの表面は、例えば天然皮革などの表皮によって覆われる。
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両用シート(以下単にシートと呼ぶことがある)100の要部構成、特にシート100から表皮を取り除いた状態を示す斜視図である。
図1に示すように、シート100は、乗員の臀部を支持するシートクッション1と、乗員の腰部および背部を支持するシートバック2とを有する。図示は省略するが、シート100は、乗員の頭部を支持するヘッドレストも有する。以下では、シート100に着座した乗員を基準にして図示のように前後方向、左右方向および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。シートクッション1は上面に着座面を有し、シートバック2は前面に着座面を有する。
【0010】
シートバック2は、パッド21と、パッド21の前面(着座面)の上下一対の凹部211,212にそれぞれ嵌合される上下一対の上層パッド22とを有する。パッド21および上層パッド22はウレタンフォームなどにより形成される。上層パッド22には、空気が通過する複数の貫通孔220が穿設される。シートクッション1も、シートバック2と同様、パッド23と、パッド23の上面(着座面)の凹部230に嵌合される上層パッド24とを有し、上層パッド24に、空気が通過する複数の貫通孔240が穿設される。
【0011】
図2は、
図1のシートバック2のパッド21から上層パッド22を取り外した状態を示す分解斜視図である。
図2に示すように、パッド21の凹部211,212の底面(後面)には、貫通孔220に連通して空気が通過する断面略コ字状の複数の溝213が形成される。より詳しくは、溝213は、下側の凹部211に設けられ、上下方向および左右方向に梯子状に延在する溝213aと、上下の凹部211,212にわたって設けられ、溝213aの上端部かつ左右方向中央部から上方に延在する溝213bと、上側の凹部212に設けられ、溝213bの上端部から左右方向に延在する溝213cと、溝213bの上下方向中央部から右方に延在する溝213dとを有する。
【0012】
溝213dの右端部には、パッド21を前後方向に貫通する貫通孔214が穿設される。上側の凹部212の後方には、吸気用のブロア30とダクト40とが配置される。ダクト40の一端部(吸込口41)は、貫通孔214に連通し、他端部(吹出口42)はブロア30に接続される。これにより、ブロア30が回転すると、上層パッド22の貫通孔220、パッド21の溝213、貫通孔214およびダクト40を介してブロア30に空気が吸い込まれる。
【0013】
図3は、車両用シート100の骨格を構成するシートフレーム101とシートフレーム101に取り付けられた空調ユニット200の構成を示す斜視図であり、
図4は、
図3の分解斜視図である。
図3に示すように、シートフレーム101は、シートクッション1の骨格を形成するシートクッションフレーム110と、シートバック2の骨格を形成するシートバックフレーム120とを有する。
【0014】
シートクッションフレーム110は、前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム111,112と、サイドフレーム111,112の前端部同士および後端部同士をそれぞれ連結する前後一対の連結フレーム113,114とを有し、全体が平面視矩形枠状に構成される。シートバックフレーム120は、上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム121,122と、サイドフレーム121,122の上端部同士および下端部同士をそれぞれ連結する上下一対のアッパフレーム123およびロアフレーム124とを有し、全体が正面視矩形枠状に構成される。シートバックフレーム120のサイドフレーム121,122の下端部は、シートクッションフレーム110のサイドフレーム111,112の後端部に回動可能に軸支される。
【0015】
シートバックフレーム120の構成について、より詳しく説明する。アッパフレーム123は、略U字状に折り曲げられたパイプ部材の左右方向中央部により構成され、パイプ部材の左右両端部がサイドフレーム121,122の上部を構成する。より具体的には、パイプ部材の両端部は、左右方向外側に向けて傾斜し、サイドフレーム121,122の一部である傾斜部121a,122aが形成される。パイプ部材の両端部には、上下方向に延在し、前後方向に幅広である略板状の板金部材がそれぞれ溶接され、板金部材がサイドフレーム121,122の下部を構成する。
【0016】
図4に示すように、アッパフレーム123の下方には、左右の傾斜部121a,122aの下端部同士を連結する略板状の連結フレーム125が架設される。連結フレーム125には、連結フレーム125を前後方向に貫通する複数の貫通孔125aが穿設される。空調ユニット200は、貫通孔125aを介して連結フレーム125に取り付けられる。なお、アッパフレーム123の前面には、ヘッドレストを支持するための左右一対のホルダ123aが溶接などにより取り付けられる。
【0017】
空調ユニット200は、ブロア30と、ブロア30の後方に配置されたブラケット50と、ブラケット50を介してブロア30に接続されるダクト40と、連結フレーム125の後方に配置された固定プレート60とを有する。
図5は、シート100に内蔵される空調ユニット200の配置を示す断面図である。
図5に示すように、パッド21は、乗員の着座面側(前側)の前パッド21aと、乗員の着座面の反対側(後側)の後パッド21bと、前パッド21aの上端部と後パッド21bの上端部とを接続する上パッド21cとを有し、これらパッド21a~21cの内側の空間に、空調ユニット200が配置される。
【0018】
図4,5に示すように、固定プレート60は、板部61と、板部61の上端部から前方に延在し、アッパフレーム123に引っ掛けられるフック62とを有する。
図5に示すように、板部61の後面は後パッド21bで覆われ、上面は上パッド21cで覆われる。ブラケット50と固定プレート60とは、連結フレーム125を前後方向に挟んだ状態で配置される。
【0019】
図6は、
図3の空調ユニット200を前方から見た拡大正面図である。
図6に示すように、板部61は、前方から見ると、アッパフレーム123とサイドフレーム121,122の傾斜部121a,122aと連結フレーム125とに沿った外形形状を呈する。
図4,6に示すように、ブラケット50と固定プレート60とは、連結フレーム125の貫通孔125aを貫通するボルト5aを介して互いに締結される。これにより、ブラケット50と固定プレート60とが連結フレーム125に固定される。なお、ブラケット50と固定プレート60とは、例えば樹脂を構成材として形成される。
図4に示すように、ブラケット50の前面には、ブロア30の固定用の略円筒形状のボス50a,50b,50cが前方に向けて突設される。
【0020】
ダクト40は、一端部および他端部にそれぞれ吸込口41および吹出口42を有し、例えば樹脂を構成材として、吸込口41から吹出口42にかけて空気通路を形成するように構成される。より詳しくは、ダクト40は、上下方向に延在する縦ダクト部43と、縦ダクト部43の上端部から左方に延在する横ダクト部44とを有し、全体が正面視略L字状に構成される。縦ダクト部43の下端部は、前方に向けて屈曲され、その先端部の前面に吸込口41が形成される。横ダクト部44の左端部は、前方に向けて屈曲され、その先端部の前面に吹出口42が形成される。
【0021】
吹出口42の周囲には、略円形のフランジ部45が設けられる。ブラケット50は、前後方向に貫通する開口部51を有する。横ダクト部44の左端部は開口部51に挿通され、フランジ部45がブラケット50の前側に配置される。フランジ部45よりも右側の横ダクト部44は、ブラケット50の後面に沿って左右方向に延在する。ダクト40は、ブラケット50と固定プレート60とを締結することにより、フランジ部45が開口部51の周囲のブラケット50の前面に当接した状態で、ブラケット50により支持される。
【0022】
図6に示すように、ブロア30は、シロッコファンなどの遠心送風機であり、例えば樹脂を構成材として形成された筐体31と、前後方向に延在する軸部32aを中心にして筐体31内で回転する翼部材32とを有する。軸部32aは、筐体31の内部に配置された電動モータ33の出力軸に連結され、翼部材32は電動モータ33により回転駆動される。筐体31は、後面に軸部32aを中心とした略円形の吸込口34を有する。筐体31は、吸込口34がダクト40の吹出口42の位置に一致するようにダクト40のフランジ部45に面して配置される。
【0023】
筐体31は、翼部材32の径方向外側の通気路が徐々に広がるように形成され、通気路が最も広がった右下の部分に、右方に開放する吹出口35が設けられる。筐体31は、その外周面から径方向外側に突出した取付部31a,31b,31cを有する。取付部31a,31b,31cは、ブラケット50のボス50a,50b,50c(
図4)の位置に対応して設けられ、取付部31a,31b,31cには、それぞれボス50a,50b,50cが挿入される略円形の開口部が設けられる。筐体31は、ボス50a,50b,50cの前面中央部に設けられたねじ孔にボルト5bが螺合することで、ブラケット50に固定される。
【0024】
このような車両用シート100において、翼部材32は、例えば車室内の空調を管理する車両用空調装置の作動に連動して回転する。翼部材32が回転すると、
図5に示す上層パッド22の貫通孔220、パッド21の溝213、貫通孔214、および吸込口41を介してダクト40内に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ダクト40を通過した後、
図4に示す吹出口42、および
図6に示す吸込口34を介して筐体31内に流入し、左側の吹出口35から吹き出される。これによりシート100の表皮に沿って空気が流れ、シート着座面側の水分(汗など)を除去することができ、乗員の快適性が向上する。
【0025】
ところで、上述したように空調ユニット200がシートバック2の上部に設けられると、ブロア30の位置が乗員の頭部に接近するため、ブロア30の作動音を乗員が感じやすい。その結果、乗員はブロア30の作動音を騒音と感じ、乗員の快適性が損なわれる。そこで、本実施形態では、乗員が不快と感じる所定周波数帯域の音(例えばブロア30の作動音)を低減するため、以下のようにシートバック2内に騒音低減装置を設ける。
【0026】
図7、
図8は、それぞれ騒音低減装置を有するシート100の内部構成を示す正面図および鉛直方向断面図である。なお、
図8では、ブロア30よりも後方の図示を省略する。
図7,8に示すように、ブロア30の筐体31とパッド21との間の空間SP1には、騒音低減装置を構成する騒音低減ユニット70が配置される。
【0027】
図9は、騒音低減ユニット70の全体構成を示す斜視図である。
図9に示すように、騒音低減ユニット70は、上下左右方向に延在する正面視略矩形状のプレート71と、プレート71の上下左右の縁部から前方に延在する正面視略矩形状の枠体72と、プレート71の後面から後方に延在する上下一対の板状のステイ73とを有する。プレート71と枠体72とにより囲まれる領域は、前面が開放された略ボックス状の空間SP2を形成する。騒音低減ユニット70は、例えば樹脂を構成材とした一体成型により形成される。
【0028】
図7に示すように、プレート71は、前方から見てブロア30の前面全体を覆うように形成される。すなわち、シート100に着座する乗員に対しブロア30がプレート71によって遮蔽されるように(正面視でプレート71がブロア30に重なるように)プレート71が設けられる。このため、プレート71の上縁部および下縁部は、ブロア30の上端部および下端部よりもそれぞれ上方および下方に位置し、プレート71の右端部および左端部は、ブロア30(特に翼部材32)の右端部および左端部よりもそれぞれ右方および左方に位置する。
【0029】
図8に示すように、プレート71は、前面711および後面712と、前面711から後面712にかけて前後方向に貫通する互いに同一形状の複数の貫通孔71aとを有する。
図7に示すように、複数の貫通孔71aは、プレート71の全域にわたり上下左右方向に等間隔に設けられる。すなわち、貫通孔71aは、所定ピッチP毎に設けられる。貫通孔71aは、例えば半径rの円である。なお、貫通孔71aの個数や配置、形状はこれに限らない。例えば貫通孔71aが楕円形や矩形であってもよい。ダクト40は、騒音低減ユニット70と干渉しないように、すなわちブロア30の前方空間を回避するように前方から見ると略L字状に設けられ、縦ダクト部43はプレート71の右方を上下方向に延在する。
【0030】
図8に示すように、上下一対のステイ73は、ブロア30の筐体31の上面および底面に、例えば熱溶着によりそれぞれ接合される。これにより騒音低減ユニット70は、プレート71と筐体31との間に所定長さの空隙を介した状態で、ステイ73を介してブロア30に支持される。なお、ステイ73と筐体31との接合は、空調ユニット200の組立前に行い、騒音低減ユニット70と筐体31とを一体化しておくことが好ましい。騒音低減ユニット70の支持部の構成はこれに限らない。例えば、ステイ73の後端部に上下方向の貫通孔を設け、貫通孔に挿通されたボルトにより、ステイ73を筐体31に固定するようにしてもよい。騒音低減ユニット70を筐体31と一体に成型するようにしてもよい。
【0031】
ステイ73が、筐体31の取付部31a,31b,31c(
図6)に当接して取り付けられるようにしてもよい。
図10は、その一例を示す騒音低減ユニット70の斜視図であり、
図11は、
図10の騒音低減ユニット70を有するシート100の内部構成を示す正面図であり、
図12Aは、
図11のA-A線に沿った断面図である。
図10,11に示すように、プレート71の後面には、筐体31の取付部31a,31b,31c(
図6)の位置に対応して後方に向けて3つのステイ73(731~733)が突設される。ステイ731~733は、それぞれ取付部31a,31b,31cの周縁の形状に対応した断面形状を呈する筒状の脚部73aと、脚部73aの後端面に設けられた板部73bとを有する。
【0032】
より詳しくは、各脚部73aは、径方向外側に位置する略円弧状の外側壁部73a1と、径方向内側に位置する略円弧状の内側壁部73a2とを有する。外側壁部73a1と内側壁部73a2は、いずれも径方向外側に向けて凸状に形成される。外側壁部73a1と内側壁部73a2の両端縁部同士が互いに接続されることで、脚部73aが構成される。脚部73aは、例えば一体成型によりプレート71と一体に形成することができる。板部73bは、取付部31a,31b,31cと同一形状であり、板部73bに、取付部31a,31b,31cの開口部の位置に対応して略円形の貫通孔73cが設けられる。プレート71には、ステイ731~733の取付位置において板部73bと同一形状の貫通孔71cが開口され、貫通孔71cを介して枠体72の内部と脚部73aの内部とが連通する。
【0033】
脚部73aの内側壁部73a2が径方向外側に向けて凸状かつ円弧状に形成されることで、筐体31の周面と干渉することなく、ステイ73を取付部31a,31b,31cに取り付けることができる。ステイ73の板部73bが当接された状態で、各板部73bの貫通孔73cにはそれぞれ前方からボルト5bが挿入される。すなわち、
図12Aに示すように、ボルト5bは、プレートの貫通孔71c、各ステイ73の筒状の側壁部73aの内部、および取付部31a,31b,31cの開口部31dをそれぞれ通過し、ボス50a,50b,50cのねじ孔50dに螺合される。これによりステイ73の取付部を別途設ける必要がなく、簡易な構成で騒音低減ユニット70Aを固定することができる。
【0034】
図12Aの変形例である
図12Bに示すように、ステイ73を、ボス50a,50b,50cのねじ孔50dを用いることなく、筐体31の取付部31a,31b,31cに取り付けるようにしてもよい。すなわち、プレート71の貫通孔71c、ステイ73の板部73bの貫通孔73c、および筐体31の取付部31a,31b,31cの開口部31dを介して前方から挿通されたボルト5cの先端部にナット5dを螺合して、騒音低減ユニット70を筐体31に固定するようにしてもよい。
【0035】
ステイ73を、筐体31以外の支持部材に固定するようにしてもよい。
図13は、その一例を概略的に示す斜視図である。
図13では、プレート71の後面の左右両端部に左右一対のステイ73が設けられ、ステイ73が左右のサイドフレーム121,122の傾斜部121a,122aに、例えば図示しないボルトを介して固定される。なお、ステイ73を、例えばアッパフレーム123や連結フレーム125、あるいはブラケット50に固定するようにしてもよい。この場合、支持部材の形状に応じてステイ73を形成すればよい。
【0036】
図8に示すように、枠体72の前面は、前側のパッド21の後面に当接され、プレート71と枠体72との間の空間SP2は、貫通孔71aを開口部とした密閉空間とされる。この空間SP2は、騒音低減のための共鳴空間を構成する。すなわち、騒音低減ユニット70は、ヘルムホルツ共鳴器(レゾネータ)を構成する。このようなブロア30に面して設けられた管部(貫通孔71a)と、管部の奥側の容器(空間SP2)とを有する騒音低減ユニット70においては、所定周波数f0の音の発生を、共鳴効果により低減することができる。この場合の所定周波数f0は、簡易的に次式(I)で表される。
f0=c/(2π)・√(S/(t・V))・・・(I)
【0037】
図8には、共鳴管部の管長であるプレート71の板厚をt、プレート71からパッド21までの空間SP2の長さをLで表す。上式(I)で、cは音速、Sは貫通孔71aの開口面積、Vは空間SP2の容積である。単一の貫通孔71aに着目すると、Sはπ・r・r(但し、rは貫通孔71aの半径)で算出され、VはL・P・P(但し、Pは貫通孔71aのピッチ)で算出される。
【0038】
本実施形態では、上式(I)の所定周波数f0がブロア30の作動音を低減するための目標周波数に一致するように、貫通孔71aの半径r、空間SP2の長さL、プレート71の板厚t等が設定される。これにより、シート100に着座する乗員に到るブロア30の作動音を低減することができ、乗員の快適性が向上する。
【0039】
なお、
図8では、騒音低減ユニット70の枠体72の前方を開放し、枠体72の前面が前パッド21aの後面(内面)に当接するようにしたが、枠体72の前面に略矩形の前壁を接合し、枠体72の前面を、前パッド21aではなく前壁で閉塞するようにしてもよい。すなわち、プレート71の前面に対向する面を、前パッド21aではなく前壁が構成し、騒音低減ユニット70自体が、内部に共鳴空間を有するようにしてもよい。この場合、前壁と前パッド21aとの間に隙間があってもよい。前壁に面した前パッド21aの内面を、音を乱反射するように凹凸状に形成してもよい。
【0040】
騒音低減ユニット70を、ブロア30の後方に設けることもできる。
図14は、その一例を概略的に示すシート100の要部断面図である。なお、
図14では、ダクト40やブラケット50等の図示を省略する。
図14に示すように、騒音低減ユニット70は、ブロア30の筐体31と固定プレート60との間の空間SP3に、筐体31の後面から所定長さの空隙を介して配置される。プレート71は、筐体31の後面全体を覆うように、すなわち後方から見たときにプレート71が筐体31を遮蔽するように(プレート71が筐体31と重なるように)上下左右方向に延在する。
【0041】
枠体72の後端部は、固定プレート60の前面に接合され、騒音低減ユニット70は、固定プレート60から支持される。このため、騒音低減ユニット70を支持するためのステイ73(
図8)は不要である。プレート71と枠体72と固定プレート60との間の略ボックス状の空間SP2が共鳴空間となり、空間SP2は、貫通孔71aを介してブロア30とプレート71との間の空間に連通する。これにより、ブロア30の後方への作動音を騒音低減ユニット70により効果的に低減することができる。その結果、シート100の後席の乗員が騒音を感じにくくなり、乗員の快適性が向上する。
【0042】
なお、ブロア30の後方の騒音低減ユニット70を、固定プレート60以外の支持部材、例えばサイドフレーム121,122やアッパフレーム123や連結フレーム125、あるいはブラケット50に固定するようにしてもよい。固定プレート60とは別の支持部材を設ける場合、騒音低減ユニット70の枠体72の後面に略矩形の後壁を固定し、プレート71と後壁との間に共鳴空間を形成するようにしてもよい。すなわち、騒音低減ユニット70自体が、内部に共鳴空間を有するようにしてもよい。この場合、後壁と固定プレート60との間に隙間があってもよい。後壁に面した後パッド21bの内面を、音を乱反射するように凹凸状に形成してもよい。
【0043】
騒音低減ユニット70を、ブロア30の前方および後方の両方に設けるようにしてもよい。すなわち、
図8に示すように、ブロア30の前方に騒音低減ユニット70を配置するとともに、
図14に示すように、ブロア30の後方にも騒音低減ユニット70を配置するようにしてもよい。前後の騒音低減ユニット70を互いに連結するようにしてもよい。
図15は、その一例を概略的に示すシート100の要部断面図である。なお、
図15では、パッド21、ダクト40、ブラケット50、固定プレート60等の図示を省略する。
【0044】
図14に示すように、騒音低減ユニット70は、前後一対の騒音低減ユニット70A,70B、すなわち、ブロア30の前方に配置された前騒音低減ユニット70Aと、ブロア30の後方に配置された後騒音低減ユニット70Bとを有する。前騒音低減ユニット70Aは、ブロア30(筐体31)の前面に面して配置された、複数の貫通孔71aが開口されたプレート71と、プレート71から前方に突設された枠体72と、枠体72の前面を覆う前壁74とを有し、プレート71と枠体72と前壁74との間の空間SP2が、共鳴空間を構成する。後騒音低減ユニット70Bは、ブロア30(筐体31)の後面に面して配置された、複数の貫通孔71aが開口されたプレート71と、プレート71から後方に突設された枠体72と、枠体72の後面を覆う後壁75とを有し、プレート71と枠体72と後壁75との間の空間SP2が、共鳴空間を構成する。
【0045】
後騒音低減ユニット70Bのプレート71の上端部は、前方に屈曲される。その上端部の途中には、フック部71bが設けられ、フック部71bがアッパフレーム123に係合される。アッパフレーム123よりも前方におけるプレート71の前端部にはヒンジ76が設けられ、前騒音低減ユニット70Aのプレート71の上端部は、ヒンジ76を介して後騒音低減ユニット70Bのプレート71の前端部に連結される。これにより前騒音低減ユニット70Aは後騒音低減ユニット70Bに上下方向(矢印AB方向)に回転可能に支持される。
【0046】
前騒音低減ユニット70Aのプレート71の下端部は、後方に向けて屈曲され、その先端部に係合部77aが設けられる。後騒音低減ユニット70Bのプレート71の下端部は、前方に向けて屈曲され、その先端部に係合部77bが設けられる。係合部77a,77bは、互いに係合可能なように例えば凹凸状に形成され、係合部77a,77bを介して前騒音低減ユニット70Aと後騒音低減ユニット70Bとが連結される。なお、係合部77a,77bを介して連結するのではなく、例えばボルト等の締結部材を用いて前後の騒音低減ユニット70A,70Bを連結するようにしてもよい。
【0047】
このようにヒンジ76を介して前騒音低減ユニット70Aを後騒音低減ユニット70Bに対し回動可能に設けることで、ブロア30の前後に容易に一対の騒音低減ユニット70A,70Bを配置することができる。また、上部のフック部71bがアッパフレーム123に支持された後騒音低減ユニット70Bに、係合部77a,77bを介して前騒音低減ユニット70Aが連結されるので、ブロア30の前後に配置された一対の騒音低減ユニット70A,70Bの支持が容易である。なお、
図15では、前騒音低減ユニット70Aに前壁74を設けたが、前壁74を省略し、枠体72の前面を前パッド21aの内面等に当接させるようにしてもよい。また、
図15では、後騒音低減ユニット70Bに後壁75を設けたが、後壁75を省略し、枠体72の後面を固定プレート60の前面や後パッド21bの内面等に当接させるようにしてもよい。
【0048】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用シート100は、左右のサイドフレーム121,122を有するシートフレーム101と、左右のサイドフレーム121,122の間に配置されたブロア30と、シートフレーム101の外側を覆うカバー部としてのパッド21および上層パッド22と、ブロア30とパッド21との間(空間SP1、SP3)に配置され、共鳴空間SP2を形成する騒音低減ユニット70と、を備える(
図1,3,8,11,12)。この構成により、乗員にとって耳障りな所定周波数帯域の音(例えばブロア30の作動音)を効果的に低減することができ、乗員の快適性が向上する。
【0049】
(2)騒音低減ユニット70は、左右方向に延在するプレート71を有する(
図9)。プレート71は、前パッド21aに対向する前面711と、ブロア30に対向する後面712と、前面711から後面712にかけて貫通する複数の貫通孔71aと、を有する(
図8,9)。これにより、簡易な構成で、ブロア30の作動音等を効率よく低減することができる。
【0050】
(3)プレート71は、ブロア30と乗員の着座面側(前側)の前パッド21aとの間に配置される(
図8,12)。これにより、乗員側に発せられるブロア30の作動音等を効率よく低減することができる。
【0051】
(4)シート100は、ブロア30と着座側のパッド21に設けられた通気用の溝213とを接続する空気通路を形成するダクト40をさらに備える(
図2)。ダクト40は、共鳴空間SP2の左右方向外側に共鳴空間SP2に沿って延設される(
図7)。これにより、ダクト40が共鳴空間SP2と干渉することなく、良好な共鳴効果が得られる。
【0052】
(5)プレート71は、ブロア30と乗員の着座面の反対側(後側)の後パッド21bとの間に配置することもできる(
図14,15)。これにより、乗員の反対側に向けて発せられるブロア30の作動音等を効率よく低減することができ、シート100の後方の乗員にとっての快適性も向上する。
【0053】
(6)騒音低減ユニット70は、ブロア30を挟んで前後一対のプレート71、すなわち、ブロア30と前パッド21aとの間に配置される前騒音低減ユニット70Aのプレート71と、ブロア30と後パッド21bとの間に配置される後騒音低減ユニット70Bのプレート71と、を有する(
図15)。この騒音低減ユニット70は、前騒音低減ユニット70Aのプレート71と後騒音低減ユニット70Bのプレート71とを連結する係合部77a,77bをさらに有する(
図14)。これにより、シート100に着座した乗員およびシート100後方の乗員の双方にとって不快と感じる騒音を低減することができる。また、係合部77a,77bが設けられることで、前後一対のプレート71を有する騒音低減ユニット70A,70Bを容易に取り付けることができる。
【0054】
(7)騒音低減ユニット70は、ブロア30からプレート71を支持するステイ73をさらに有する(
図8,9)。これにより、ブロア30と騒音低減ユニット70とを一体に設けることができ、騒音低減ユニット70をシート100内に容易に組み込むことができる。
【0055】
(8)騒音低減ユニット70は、ステイ73を介してサイドフレーム121,122から支持することもできる(
図13)。この場合には、騒音低減ユニット70を簡易な構成で容易に取り付けることができる。
【0056】
-第2実施形態-
図16~
図20を参照して本発明の第2実施形態について説明する。なお、
図16~
図19において
図1~
図15と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では、第1実施形態との相違点を主に説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、主に騒音低減ユニット70の構成である。すなわち、第1実施形態(例えば
図5)では、騒音低減ユニット70をブロア30に取り付けるようにしたが、第2実施形態では、騒音低減ユニット70を受圧部材に設ける。
【0057】
図16は、第2実施形態に係る車両用シート100の内部構成を示す正面図であり、
図17は、車両用シート100の斜視図である。
図16に示すように、アッパフレーム123に固定された左右一対のホルダ123aには、下方に向けてステイ123bが延設され、左右のステイの内側にブロア30が配置される。ブロア30は、上端部および下端部がそれぞれアッパフレーム123および連結フレーム125にボルトを介して支持される。
【0058】
連結フレーム125とロアフレーム124との間には、左右一対のワイヤ127が延設される。左右のワイヤ127は、連結フレーム125の左右両端部に固定され、下方かつ左右方向内側に向けて斜めに延在する上ワイヤ部127aと、上ワイヤ部127aの下端から下方に延在する中央ワイヤ部127bと、中央ワイヤ部127bの下端から下方かつ左右方向外側に向けて斜めに延在し、ロアフレーム124に固定される下ワイヤ部127cとを有する。
【0059】
ワイヤ127の前方には、樹脂製の受圧部材126が配置される。受圧部材126は、上下左右方向に延在して乗員の背部を支持する略板状の弾性部材であり、その後面がワイヤ127に係合して支持される。受圧部材126は、シートバック2の表皮25およびパッド21の内側に配置されるが、
図17には、便宜上、受圧部材126を実線にて強調して示す。
図17に示すように、受圧部材126は、ワイヤ127により支持された受圧部126aと、受圧部126aの上方においてブロア30に面して配置されたプレート部126bと、受圧部126aとプレート部126bとを連結する連結部126cとを有する。
【0060】
受圧部126aは、正面視略矩形状に構成されるとともに、ワイヤ127全体を覆うように左右方向幅広に形成される。プレート部126bは、左右のステイ123bおよびアッパフレーム123に沿って正面視略矩形状に形成される。連結部126cは、プレート部126bと左右方向長さが同一ないし略同一であり、正面視略矩形状に形成される。連結部126cの下端部あるいは受圧部126aの上端部には、受圧部材126を前後方向に貫通する正面視略矩形の貫通孔126dが開口される。
【0061】
図18は、
図16のA-A線に沿った断面図である。
図18に示すように、受圧部材126の貫通孔126dには、受圧部材126の後方において上下方向に延在するダクト40の一端部が接続される。なお、ダクト40の他端部は、ブロア30に接続される。これにより、ブロア30から吹き出された空気がダクト40、貫通孔126d、受圧部材126の前方のパッド21に形成された溝213、およびパッド21を前後方向に貫通する貫通孔214を介して乗員に向けて吹き出される。あるいは、これとは反対に、貫通孔214、溝213、貫通孔126dおよびダクト40を介してブロア30に空気が吸い込まれる。
【0062】
受圧部材126のプレート部126bは、騒音低減ユニット70のプレート71(
図8)を構成する。したがって、
図16に示すように、プレート部126bには、前後方向にプレート部126bを貫通する複数の貫通孔71aが開口される。なお、プレート部126bの板厚を受圧部126aより厚くまたは薄く形成してもよい。すなわち、共鳴効果はプレート71の板厚がパラメータとなるため(上式(I))、板厚を適宜設定するようにしてもよい。
図16,17では図示を省略するが、
図18に示すようにプレート部126bの前面には、正面視略矩形の枠体72が設けられる。枠体72は、例えば一体成型によりプレート部126bと一体に形成される。
【0063】
これにより、プレート部126bとパッド21との間に、枠体72によって包囲された共鳴空間SP2が形成され、共鳴効果により所定周波数帯域の音(例えばブロア30の作動音)を低減することができる。特に第2実施形態では、騒音低減ユニット70が受圧部材126と一体に形成されるので、騒音低減ユニット70を支持するための部材(例えば
図8のステイ73)を別途設ける必要がなく、構成を簡素化できる。
【0064】
図18に示すように、受圧部材126のプレート部126bの上端部には、パッド21の内面および表皮25の内面に沿って後方に延在する上面部128が接続され、上面部128の後端部には、下方に延在する背面部129が接続される。上面部128と背面部129とは、例えば一体成型により受圧部材126と一体に形成される。なお、上面部128と背面部129の一方あるいは双方を、受圧部材126とは別に成型し、その後、受圧部材126に接合するようにてもよい。背面部129は、ブロア30の後面全体を覆うように上下左右方向にわたって延設される。背面部129の後面は、シートバック2の後部に配置されたパッド21の前面に接合される。
【0065】
図19は、背面部129を斜め前方から見た斜視図である。
図19に示すように、背面部129の前面には、その全域にわたって凹凸部1290が設けられる。より詳しくは、凹凸部1290は、上下方向に交互に、かつ、左右方向に交互に配置された正面視略矩形の凹部1291と凸部1292とを有し、全体が格子状に形成される。このように背面部129の前面に凹凸部1290を設けることで、背面部129が防音パネルとして機能し、シートバック2の後方への騒音の発生を抑制することができる。
【0066】
なお、上記第2実施形態では、受圧部材126の前方に共鳴空間SP2を形成するようにしたが、受圧部材126の後方に共鳴空間SP2を形成してもよい。
図20は、その一例を概略的に示す要部斜視図である。
図20では、左右のサイドフレーム121,122の間に、略板状の受圧部材126が配置される。受圧部材126は、例えばその左右両端部がサイドフレーム121,122により支持される。受圧部材126の後面に、ブロア30に面して、複数の貫通孔71aが開口されたプレート71を有する騒音低減ユニット70が一体に取り付けられる。すなわち、受圧部材126との一体成型により、騒音低減ユニット70が受圧部材126と一体に形成され、受圧部材126の後面とプレート71との間に共鳴空間が形成される。これにより、受圧部材126に騒音低減ユニット70を容易に取り付けることができるとともに、騒音低減ユニット70を取り付けるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減できる。
【0067】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、騒音低減ユニット70に枠体72を設けたが、
図9の変形例である
図21に示すように枠体72を省略してもよい。すなわち、プレート71と前パッド21aとの間の空間SP2(
図8)を密閉空間とせずに、貫通孔71aを有するプレート71を、単にパッド21の内面等から空隙を介して配置するようにしてもよい。この場合にも、上式(I)による共鳴効果を得ることができる。同様に、ブロア30の後方に配置された騒音低減ユニット70(
図14)から枠体72を省略し、プレート71と後パッド21bとの間に、密閉ではない共鳴空間SP2を形成するようにしてもよい。枠体72の全部を省略するのではなく、一部を残すようにしてもよい。例えば上下一対または左右一対の板部材により枠体72を構成してもよい。枠体72の代わりに、プレート71から前後方向に柱状部材を突設し、柱状部材の先端部がパッド21や固定プレート60に当接することで、共鳴空間SP2を確保するようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、前パッド21aに設けられた通気部としての溝213とブロア30とを接続する空気通路を形成するようにダクト40を設けたが、通路形成部としてのダクト40を省略することもできる。
図22は、その一例の要部を概略的に示す斜視図である。
図22では、ブロア30の筐体31の前面に、翼部材32の回転により筐体31内に空気を吸い込む吸込口34が設けられる。なお、筐体31の前面に筐体31内から空気を吹き出す吹出口を設けてもよい。
【0069】
ブロア30の前方かつ前パッド21a(不図示)の後方には、騒音低減ユニット70が配置される。なお、図示は省略するが、騒音低減ユニット70はステイ73(
図8,10)を介して筐体31やサイドフレーム121,122などから支持される。騒音低減ユニット70の枠体72の前面は前パッド21aの内面に当接し、騒音低減ユニット70のプレート71と前パッド21aとの間に共鳴空間SP2が形成される。枠体72には、共鳴空間SP2と連通する開口部72aが設けられる。例えば、図示のように枠体72の右面が開放されて開口部72aとされる。なお、開口部72aは、枠体72の右面以外であってもよい。
図21と同様に枠体72を省略し、SP2の全周が開放されるようにしてもよい。
【0070】
図21の構成では、翼部材32が回転すると、開口部72aおよび貫通孔71aを介して吸込口34から筐体31内に空気が吸い込まれる。すなわち、騒音低減ユニット70は、ブロア30に到る空気通路としても機能する。このように、ブロア30の吸込口34に面して、貫通孔71aを有するプレート71が配置されることで、空気の流れが阻害されることを抑制しつつ、騒音低減ユニット70による共鳴効果を得ることができる。なお、ブロア30の筐体31の後面に吸込口または吹出口を設けるとともに、吸込口または吹出口に面して、騒音低減ユニット70のプレート71を配置するようにしてもよい。換言すれば、プレート71の貫通孔71aに面して吸気用または排気用の開口部(吸込口または吹出口)が設けられるのであれば、開口部は送風機の前面および後面のいずれに設けられてもよい。
【0071】
なお、受圧部材126に複数の貫通孔71aを開口して受圧部材126を騒音低減ユニット70のプレート71として機能させるとともに、受圧部材126とその前方の前パッド21aとの間に、共鳴空間SP2を形成するようにしてもよい。受圧部材126を左右に分割して配置し、左右の受圧部材126の間にブロア30を配置してもよい。この場合、左右の受圧部材126に、プレート71の左右両端部がそれぞれ支持されるようにしてもよい。
【0072】
上記実施形態では、左右のサイドフレーム121,122の間にブロア30を配置したが、送風機はブロアでなくファンであってもよい。上記実施形態では、ブロア30(送風機)をシートバック2に配置したが、送風機をシートクッション1の左右のサイドフレーム111,112の間に配置するとともに、送風機に面して騒音低減ユニット70を設けるようにしてもよい。上記実施形態では、シートフレーム101の外側をパッド21,23、上層パッド22,24および表皮等により覆うようにしたが、カバー部の構成は上述したものに限らない。
【0073】
上記実施形態では、騒音低減ユニット70をブロア30とパッド21との間に配置するようにしたが、送風機とカバー部との間に配置されて共鳴空間を形成するのであれば、共鳴空間形成部の構成はいかなるものでもよい。換言すれば、送風機とカバー部との間に、貫通孔を有するプレートが送風機およびカバー部からそれぞれ空隙を介して配置されるのであれば、共鳴空間形成部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、送風機の作動音を低減するように騒音低減ユニット70を構成したが、乗員に発せられる他の周波数帯域の作動音を低減するように共鳴空間形成部を構成してもよい。
【0074】
上記実施形態では、共鳴空間形成部を構成する左右方向に延在するプレート71(板部材)を、ブロア30の全体を覆うように配置したが、ブロア30の一部を覆うように、つまり、前後方向から見て送風機と少なくとも一部が重なるように板部材を配置してもよい。すなわち、パッド21等のカバー部に対向する第1面(例えば前面711)と、送風機に対向する第2面(例えば後面712)と、第1面から第2面にかけて貫通する複数の貫通孔71aとを有するのであれば、板部材の構成はいかなるものでもよい。なお、第1面がカバー部に対向するとは、第1面がカバー部に向けて(カバー部の面と略平行に)設けられるという意味であり、第1面とカバー部との間に他の部材が配置されてもよい。また、第2面が送風機に対向するとは、第2面が送風機に向けて(送風機の面と略平行に)設けられるという意味であり、第2面と送風機との間に他の部材が配置されてもよい。
【0075】
上記実施形態(
図8)では、ブロア30と前パッド21aとの間、すなわち送風機と乗員の着座面側における着座側カバー部との間にプレート71を配置し、上記実施形態(
図14)では、ブロア30と後パッド21bとの間、すなわち送風機と乗員の着座面の反対側の非着座側カバー部との間にプレート71を配置するようにしたが、板部材を他の位置に配置してもよい。上記実施形態(
図15)では、前騒音低減ユニット70Aのプレート71(第1板部材)と後騒音低減ユニット70Bのプレート71(第2板部材)とを係合部77a,77bを介して連結したが、連結部の構成はいかなるものでもよい。
【0076】
上記実施形態では、騒音低減ユニット70のプレート71をブロア30またはシートフレーム101から支持するようにしたが、支持部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、騒音低減ユニット70を樹脂材により構成したが、これに代えて、金属や面状に成形された共重合体やエラストマーで構成してもよい。上記実施形態では、ブラケット50と固定プレート60とを介してシート100内にブロア30を支持するようにしたが、ブラケットや固定プレートを省略し、送風機をシートフレームから支持するようにしてもよい。上記実施形態では、パッド21の表側(着座面側)に通気用の溝を形成したが、パッド21の裏側(着座面の反対側)に通気用の溝を形成してもよい。
【0077】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 シートバック、21 パッド、30 ブロア、40 ダクト、70 騒音低減ユニット、71 プレート、71a 貫通孔、73 ステイ、100 シート、101 シートフレーム、121,122 サイドフレーム、200 空調ユニット