(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】炉底煉瓦積み付け用作業架台
(51)【国際特許分類】
C21C 5/44 20060101AFI20250110BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C21C5/44 A
F27D1/16 Q
(21)【出願番号】P 2021024059
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
(72)【発明者】
【氏名】桑鶴 陽介
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-191733(JP,A)
【文献】特開昭62-293084(JP,A)
【文献】実公昭59-035566(JP,Y2)
【文献】特開昭63-000415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の炉底に設置される回転台と、
前記回転台に載せられ前記回転台によって鉛直軸線回りを回転可能なパレット載置部と、
前記パレット載置部に載せられるパレットであって、前記炉底に
縦姿勢で設置される
長尺状の炉底煉瓦が
横姿勢で載せられるパレットと、
前記パレットを挟むように配置され前記パレット載置部から立ち上がる一対の縦壁と、
一対の前記縦壁によって形成され、前記パレット上の前記炉底煉瓦を一対の前記縦壁の間から送り出すために水平方向のうち互いに反対向きの二方向に開口された一対の煉瓦取り出し間口と、
前記煉瓦取り出し間口から吊り上げられて縦姿勢で送り出される前記炉底煉瓦が、吊り上げ動作によって前記煉瓦取り出し間口を通して一対の前記縦壁間から飛び出すように振れ動作をすること、を抑えるための振れ止め機構と、
を備え
、
前記振れ止め機構は、
前記煉瓦取り出し間口から送り出された前記炉底煉瓦が当てられる当て物であって、前記煉瓦取り出し間口において一対の前記縦壁間に架け渡された可撓性部材である当て物と、
前記当て物に連結され、前記当て物に加えられた衝撃を減衰するために前記当て物の長手方向両側に設置された一対の減衰部と、
を有し、
一対の前記減衰部は、一対の前記縦壁に固定された一対の固定部と、一対の前記固定部に支持され前記当て物と連動して移動可能な一対の可動部と、を含み、
前記振れ動作する前記炉底煉瓦からの荷重を、前記当て物を介して受けた一対の前記可動部が、一対の前記固定部に対してスライド動作を行うことで、前記振れ動作を減衰する、炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項2】
前記当て物は、複数の鎖素子を組み合わせて形成された鎖チェーンを含む、請求項
1に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項3】
前記固定部は、筒を含み、
前記可動部は、前記筒に摩擦摺動可能に差し込まれた棒を含む、請求項
1または請求項2に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項4】
前記可動部は、
一対の前記煉瓦取り出し間口が並んでいる方向において前記固定部側から前記当て物側に進むに従い上側に傾斜する斜め上向きに配置されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項5】
前記縦壁の上端にはテーパーガイドが設けられており、
前記テーパーガイドは、上側に進むに従い前記パレットから遠ざかるように傾斜している、請求項1~請求項
4の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項6】
前記縦壁が傾斜することを抑制するためのリブをさらに備えている、請求項1~請求項
5の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【請求項7】
一対の前記縦壁間の間隔から前記パレットの幅を除した値としての隙間幅が、前記パレットに載せられる複数の前記炉底煉瓦のうち最も小さい幅を有する前記炉底煉瓦の前記幅未満に設定されている、請求項1~請求項
6の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉底煉瓦積み付け用作業架台に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄用転炉は、通常、鉄皮の内側面にパーマ煉瓦が取り付けられ、このパーマ煉瓦の内側にウェア煉瓦が設置された構成の、二層煉瓦の耐火構造を有している。ウェア煉瓦は、溶銑に直接曝される。このため、ウェア煉瓦は経年劣化し易く、所定の周期で更新される。そして、転炉内煉瓦の交換作業に用いられる煉瓦配設装置が知られている(例えば特許文献1,2参照)。ウェア煉瓦更新の際には、古い煉瓦を転炉内から取り除いた後に、新しい煉瓦が積み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-249498号公報
【文献】特開平1-152213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、転炉の炉底は一般に交換式炉底と非交換式炉底の大きく2種に分類され、各々煉瓦積み付け方法が異なる。
【0005】
交換式炉底の転炉では、交換式炉底と固定式炉底の2種類に分かれており、交換式炉底の中でも煉瓦積み付け方法は2パターンに大別される。1つ目は、鉄皮の外側であらかじめ煉瓦を積んだ交換炉底を転炉本体に繋ぎ、交換炉底脇から固定炉底の煉瓦を積む方法である。この方法では、固定炉床の煉瓦は電動チェーンブロック(ホイスト)を使用して積み付けられるのが一般的である。2つ目は、築炉タワーを使用して固定炉底から上部のすべてのレンガを積んだ後に交換炉底を転炉本体に繋ぎこむ方法である。
【0006】
非交換式炉底の転炉では、電動チェーンブロックを使用して炉底の煉瓦を積んだ後に、築炉タワーを使用して炉底より上部のレンガを積むのが一般的である。
【0007】
上述した炉底煉瓦の積み付け方法のうち、特に、交換式炉底にて電動チェーンブロックを使用した炉底煉瓦の積み付けでは、まず、炉底に最低限の炉底煉瓦を積み付けておく。そして、この積み付けられた炉底煉瓦上に、複数の炉底煉瓦が載せられたパレットを置く。そして、パレット上の炉底煉瓦を電動チェーンブロックで吊り上げた後、この炉底煉瓦を炉底に積み付ける。この積み付け作業において、炉底煉瓦がパレットから落下する荷崩れが生じると、荷崩れした炉底煉瓦をパレット上に再度載せ直す作業が必要であり、手間がかかる。このため、パレットの周囲に縦壁を設けて炉底煉瓦の荷崩れを防止することが考えられる。しかしながら、炉底煉瓦は、パレットを中心に上から見て炉底の円周方向に沿って多数組み付けられる。このため、荷崩れ防止用の縦壁があると、縦壁が存在する方向への炉底煉瓦の取り出しができず、炉底煉瓦の積み付け作業に手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、転炉炉底に設置されたパレットからの炉底煉瓦の荷崩れを抑制できるとともに、炉底煉瓦の積み付け作業にかかる手間が少なくて済む、炉底煉瓦積み付け用作業架台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の炉底煉瓦積み付け用作業架台を要旨とする。
【0010】
(1)転炉の炉底に設置される回転台と、
前記回転台に載せられ前記回転台によって鉛直軸線回りを回転可能なパレット載置部と、
前記パレット載置部に載せられるパレットであって、前記炉底に設置される炉底煉瓦が載せられるパレットと、
前記パレットを挟むように配置され前記パレット載置部から立ち上がる一対の縦壁と、
一対の前記縦壁によって形成され、前記パレット上の前記炉底煉瓦を一対の前記縦壁の間から送り出すために水平方向のうち互いに反対向きの二方向に開口された一対の煉瓦取り出し間口と、
を備えている、炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0011】
(2)前記煉瓦取り出し間口から吊り上げられて送り出される前記炉底煉瓦の振れ動作を抑えるための振れ止め機構をさらに備えている、前記(1)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0012】
(3)前記振れ止め機構は、
前記煉瓦取り出し間口から送り出された前記炉底煉瓦が当てられる当て物と、
前記当て物に連結され、前記当て物に加えられた衝撃を減衰する減衰部と、
を有している、前記(2)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0013】
(4)前記当て物は、複数の鎖素子を組み合わせて形成された鎖チェーンを含む、前記(3)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0014】
(5)前記減衰部は、
前記縦壁に固定された固定部と、
前記固定部に支持され前記当て物と連動して移動可能な可動部と、
を含む、前記(3)または前記(4)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0015】
(6)前記固定部は、筒を含み、
前記可動部は、前記筒に摩擦摺動可能に差し込まれた棒を含む、前記(5)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0016】
(7)前記可動部は、前記固定部側から前記当て物側に進むに従い上側に傾斜する斜め上向きに配置されている、前記(5)または前記(6)に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0017】
(8)前記縦壁の上端にはテーパーガイドが設けられており、
前記テーパーガイドは、上側に進むに従い前記パレットから遠ざかるように傾斜している、前記(1)~前記(7)の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0018】
(9)前記縦壁が傾斜することを抑制するためのリブをさらに備えている、前記(1)~前記(8)の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【0019】
(10)一対の前記縦壁間の間隔から前記パレットの幅を除した値としての隙間幅が、前記パレットに載せられる複数の前記炉底煉瓦のうち最も小さい幅を有する前記炉底煉瓦の前記幅未満に設定されている、前記(1)~前記(9)の何れか1項に記載の炉底煉瓦積み付け用作業架台。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、転炉炉底に設置されたパレットからの炉底煉瓦の荷崩れを抑制できるとともに、炉底煉瓦の積み付け作業にかかる手間が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る炉底煉瓦積み付け用作業架台を用いて煉瓦が積み付けられた転炉の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、炉底煉瓦部のウェア煉瓦の更新作業について説明するための断面図である。
【
図4】
図4は、炉底中心ウェア煉瓦上に、炉底煉瓦積み付け用作業架台が設置された状態を示す正面図であり、一部を断面で示している。
【
図7】
図7は、当て物の一例について示す図であり、当て物の一部のみを示している。
【
図8】
図8は、炉底周囲ウェア煉瓦の積み付け作業について説明するための図である。
【
図9】
図9は、炉底周囲ウェア煉瓦の積み付け作業について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る炉底煉瓦積み付け用作業架台を用いて煉瓦が積み付けられた転炉1の模式的な断面図である。
図2は、
図1の炉底部6の周囲の拡大図である。なお、各図において、断面より奥側の部分については、煉瓦同士の境界線等の図示を一部省略している。
【0024】
図1および
図2を参照して、転炉1は、例えば、高炉から取り出された溶銑を精錬(例えば脱炭)するために用いられる。なお、転炉1は、電気エネルギーによって鉄スクラップを溶解させる電気炉として用いられてもよい。本実施形態では、特に説明なき場合、転炉1が起立姿勢(精錬時の姿勢)にあるときを基準に説明する。
【0025】
転炉1は、鉄皮2と、鉄皮2に設置された耐火構造3と、を有している。
【0026】
鉄皮2は、中空の容器状に形成された金属部材である。鉄皮2の上端部は開口している。また、鉄皮2は、下方に進むに従い直径が大きくなるテーパ状部分、および、略円筒状部分を有している。鉄皮2の下端部は、中空部分を塞ぐように延びている。鉄皮2の内側面の略全域に、耐火構造3が設けられている。
【0027】
耐火構造3は、溶銑を受けるために設けられており、鉄皮2に隣接配置された複数のパーマ煉瓦4と、パーマ煉瓦4に対して転炉1の内側に配置された複数のウェア煉瓦5と、を有している。
【0028】
パーマ煉瓦4は、例えば、MgO煉瓦であり、ブロック状に形成されている。多数のパーマ煉瓦4が、鉄皮2の内側面に、転炉1の周方向C1および上下方向に沿って配列されている。
【0029】
ウェア煉瓦5は、溶銑に直接曝される煉瓦であり、例えば、MgO-C煉瓦であり、ブロック状に形成されている。多数のウェア煉瓦5が、パーマ煉瓦4の内側面に配置されている。ウェア煉瓦5は、パーマ煉瓦4と同様に、周方向C1および上下方向に沿って配列されている。
【0030】
上記の構成を有する転炉1は、炉底部6と、炉底部6の上方に配置された直胴部7と、直胴部7から当該直胴部7の上方へ延び直胴部7から遠ざかるに従い直径が小さくなるテーパ状に形成された傾斜部8と、含んでいる。
【0031】
炉底部6は、炉底鉄皮2aと、耐火構造3のうち炉底部6に設置された部分としての炉底煉瓦部10と、を有している。
【0032】
炉底鉄皮2aは、鉄皮2の一部分であり、溶銑貯留空間14の底を塞ぐように配置されている。炉底鉄皮2a上に、炉底煉瓦部10が設置されている。
【0033】
炉底煉瓦部10は、炉底部6に配置されたパーマ煉瓦4およびウェア煉瓦5によって構成された二層煉瓦構造を有している。
【0034】
また、炉底部6は、炉底中心部11と、炉底中心部11の周囲に形成された炉底周囲部12と、を有している。
【0035】
炉底中心部11は、炉底部6の中心に設けられている部分であり、直径が例えば1m~数m程度の大きさを有している。炉底中心部11における炉底鉄皮2aとしての炉底中心鉄皮2bは、炉底周囲部12における炉底鉄皮2aとしての炉底周囲鉄皮2cとは別部材で形成されており、炉底周囲鉄皮2cから分離可能である。
【0036】
炉底中心部11は、炉底中心鉄皮2bと、炉底中心鉄皮2b上に設置されたパーマ煉瓦4としての炉底中心パーマ煉瓦4aと、炉底中心パーマ煉瓦4a上に設置されたウェア煉瓦5としての炉底中心ウェア煉瓦5aと、を有している。
【0037】
炉底周囲部12は、炉底部6のうち炉底中心部11以外の部分である。炉底周囲部12における炉底鉄皮2aとしての炉底周囲鉄皮2cは、直胴部7における鉄皮2と一体に形成されている。
【0038】
炉底周囲部12は、炉底周囲鉄皮2cと、炉底周囲鉄皮2c上に設置されたパーマ煉瓦4としての炉底周囲パーマ煉瓦4bと、炉底周囲パーマ煉瓦4b上に設置されたウェア煉瓦5としての炉底周囲ウェア煉瓦5bと、を有している。上記の構成を有する炉底部6の上方に、上下に延びる筒状の直胴部7が配置されている。
【0039】
直胴部7は、直胴部7における鉄皮2と、耐火構造3のうち直胴部7に配置された部分としての直胴煉瓦部15と、を有している。
【0040】
直胴煉瓦部15は、直胴部7に配置されたパーマ煉瓦4と、このパーマ煉瓦4の内側面側に配置されたウェア煉瓦5と、によって構成されている。上記の構成を有する直胴部7の上方に、テーパ状に形成された傾斜部8が配置されている。
【0041】
傾斜部8は、傾斜状の鉄皮2と、耐火構造3のうち傾斜部8に配置された部分としての傾斜煉瓦部20と、を有している。傾斜部8に転炉1の開口部1aが形成されている。
【0042】
上記の構成を有する転炉1の炉底部6における炉底煉瓦部10のウェア煉瓦5(炉底周囲ウェア煉瓦5b)は、以下に示す方法によって更新される。
【0043】
図3は、炉底煉瓦部10のウェア煉瓦5の更新作業について説明するための断面図である。
図3を参照して、転炉1内のウェア煉瓦5を更新する際、まず、転炉1内のウェア煉瓦5が撤去される。その後、鉄皮2内に新しいウェア煉瓦5が積み付けられる。
【0044】
炉底煉瓦部10のウェア煉瓦5の更新の際には、まず、炉底中心鉄皮2bが炉底周囲鉄皮2cから分離されて転炉1(炉底周囲鉄皮2c)から取り外される。そして、転炉1の外側において、炉底中心パーマ煉瓦4a上に、炉底中心ウェア煉瓦5aが電動チェーンブロック等を用いつつ手作業で積み付けられる。これにより、炉底中心部11が完成する。炉底中心部11は、炉底周囲鉄皮2cに形成された貫通孔2dを通して転炉1内に挿入される。そして、貫通孔2dに炉底中心鉄皮2bが嵌め込まれた状態で、炉底中心鉄皮2bが炉底周囲鉄皮2cに結合される。その後、炉底周囲パーマ煉瓦4b上に炉底周囲ウェア煉瓦5bが積み付けられる。
【0045】
図4は、炉底中心ウェア煉瓦5a上に、炉底煉瓦積み付け用作業架台20が設置された状態を示す正面図であり、一部を断面で示している。なお、以下では、炉底煉瓦積み付け用作業架台20を単に作業架台20ともいう。
図5は、作業架台20の側面図である。
図6は、作業架台20の平面図である。
【0046】
図3~
図6を参照して、作業架台20は、炉底中心ウェア煉瓦5a上に一時的に設置される。作業架台20は、炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底周囲パーマ煉瓦4b上に設置するために用いられる。作業員は、作業架台20と、作業架台20の上方に設置された電動チェーンブロック16等の吊り上げ装置と、を用いて、炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底周囲パーマ煉瓦4b上に設置する。
【0047】
電動チェーンブロック16は、転炉1上に設置されたクレーン等(図示せず)に取り付けられている。電動チェーンブロック16は、電動モータを含む本体16aを有しており、電動モータの出力を用いて、可撓性のロープ16bに取り付けられたフック16cを上下に移動させる。ロープ16b(電動チェーンブロック16)は、転炉1を平面視したときに、炉底中心部11を中心として、転炉1の周方向C1に例えば90°ピッチで設置されている。この構成により、炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業が行われる位置に応じて、使用する電動チェーンブロック16を変更できる。本実施形態では、周方向C1に180°向かい合った一対の電動チェーンブロック16,16を同時に用いて炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業を行うことができる。
【0048】
また、作業架台20は、後述するように、転炉1の周方向C1に沿って回転移動可能な部分を有している。これらの構成により、周方向C1の任意の箇所における炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業を効率よく行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態では、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、パレット23上に複数に積まれた状態で転炉1の開口部1aから作業架台20のパレット載置部31へ載せられる。
【0050】
炉底周囲ウェア煉瓦5bは、細長いブロック形状に形成されている。本実施形態では、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、当該炉底周囲ウェア煉瓦5bの長手方向の任意の箇所において、この長手方向と直交する断面形状が矩形である。また、炉底周囲ウェア煉瓦5bの一端から他端に向かうに従い、上記断面形状の断面積が連続的に小さくなっている。本実施形態では、炉底周囲ウェア煉瓦5bの上記断面形状は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。炉底周囲ウェア煉瓦5bの他端には、電動チェーンブロック16のフック16cに掛けられる吊り具5cが固定されている。吊り具5cは、例えば、アイボルトである。炉底周囲ウェア煉瓦5bは、吊り具5cをフック16cによって掛けられた状態で吊り上げられることで、パレット23から取り出される。
【0051】
炉底中心ウェア煉瓦5a上には足場18が設置されており、この足場18上に作業架台20が設置される。足場18は、複数のブロック状の足と、この足上に水平に置かれたデッキと、を有している。デッキは平板状部材であり、作業架台20はこのデッキに水平な姿勢で載せられる。
【0052】
作業架台20は、転炉1の炉底において足場18上に設置される回転台21と、回転台21に載せられる架台本体22と、架台本体22に載せられるパレット23と、架台本体22に設置される振れ止め機構25,26と、を有している。
【0053】
回転台21は、例えば、スラスト軸受である。回転台21の下側の軌道盤が足場18に乗せられており、回転台21の上側の軌道盤は、回転台21の下側の軌道盤に対して垂直な軸線回りを回転可能である。回転台21が設けられていることにより、架台本体22および炉底周囲ウェア煉瓦5b等を人力で軽い力で回転させることができる。
【0054】
架台本体22は、正面視においてU字状に形成されており、正面視において、炉底周囲ウェア煉瓦5bを覆うように形成されている。架台本体22は、回転台21によって鉛直軸線回りを回転可能である。
【0055】
架台本体22は、当該架台本体22の底部としてのパレット載置部31と、パレット23を挟むように配置されパレット載置部31から立ち上がる一対の縦壁32A,32Bと、一対の縦壁32A,32Bの上端に設けられたテーパーガイド33A,33Bと、一対の縦壁32A,32Bが傾斜することを抑制するためのリブ34と、を有している。
【0056】
本実施形態では、平面視において一対の縦壁32A,32Bが互いに平行に延びる方向が、縦方向A1として規定されている。また、平面視において縦方向A1と直交する方向が横方向B1として規定されている。
【0057】
パレット載置部31は、回転台21の上部に載せられており、架台本体22のうちのパレット載置部31が回転台21の上側の軌道盤と接触する部分となっている。パレット載置部31は、パレット23を載せることが可能な大きさに形成されており、本実施形態では、矩形の平板状に形成されている。
【0058】
パレット23は、本実施形態では、直方体の扁平なブロック状に形成されている。パレット23は、平面視においてパレット載置部31から突出しないように、パレット載置部31上に載せ置かれている。パレット23上には、複数の炉底周囲ウェア煉瓦5bが横倒し姿勢で載せ置かれている。炉底周囲ウェア煉瓦5bは、多段(本実施形態では、4段)に積まれている。各段において、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、それぞれの一端の位置が横方向B1において揃うようにして複数列(本実施形態では、5列)積まれている。また、各段の炉底周囲ウェア煉瓦5bは、上側または下側に隣り合う段の炉底周囲ウェア煉瓦5bとは、一端の位置および他端の位置が、逆向きに配置されている。すなわち、パレット23上において、炉底周囲ウェア煉瓦5bの一端の上に別の炉底周囲ウェア煉瓦5bの他端が配置されており、このような配置が繰り返されている。
【0059】
パレット23およびパレット23に載せられた複数の炉底周囲ウェア煉瓦5bは、架台本体22および振れ止め機構25,26が炉底に設置された状態で、図示しない搬送装置を用いて、転炉1の開口部1aから降下されることで、パレット載置部31に載せ置かれる。
【0060】
パレット23を挟むようにして一対の縦壁32A,32Bが設置されている。
【0061】
縦壁32A,32Bは、パレット23上の炉底周囲ウェア煉瓦5bが万一荷崩れを起こしたときの保護壁として設けられている。また、縦壁32A,32Bは、振れ止め機構25,26を支持する支持部として設けられている。縦壁32A,32Bは、パレット載置部31の四辺のうちの互いに平行な二辺に設けられており、本実施形態では、これら二辺の全域に亘って設けられている。縦壁32A,32Bは、垂直な姿勢で配置されており、縦方向A1に沿って互いに平行な状態でパレット載置部31に固定されている。縦壁32A,32Bは、それぞれ、矩形の平板状に形成されており、側面視においてパレット23およびパレット23上の各炉底周囲ウェア煉瓦5bを覆っている。
【0062】
縦壁32A,32B間に、パレット23が配置されている。一方の縦壁32Aとパレット23との間に長さL1の隙間が形成され、さらに、他方の縦壁32Bとパレット23との間に長さL2の隙間が形成されている。なお、パレット23は、縦壁32A,32Bの何れか一方と接するように配置されることで、他方の縦壁との間に長さL1+L2の隙間が形成されてもよい。この長さL1+L2は、一対の縦壁32A,32B間の間隔からパレット23の幅を除した値としての隙間幅である。一方、パレット23に載せられた複数の炉底周囲ウェア煉瓦5bのなかで最も小さい横幅L3(横方向B1における長さL3)を有する炉底周囲ウェア煉瓦5bが存在する。本実施形態では、全ての炉底周囲ウェア煉瓦5bの横幅は均一であるが、異なっている場合もある。
【0063】
そして、隙間幅L1+L2は、上記最も小さい横幅L3未満(L1+L2<L3)に設定されていることが好ましい。このような寸法関係が成立していることで、パレット23上の炉底周囲ウェア煉瓦5bが万一荷崩れしたときでも、パレット23と縦壁32A,32Bとの間に炉底周囲ウェア煉瓦5bが入り込まずに済む。これにより、大きな荷崩れが生じることを抑制できる。
【0064】
縦方向A1における一対の縦壁32A,32Bの両端部に、煉瓦取り出し間口35,36が存在している。煉瓦取り出し間口35,36は、一対の縦壁32A,32Bによって形成され、パレット23上の炉底周囲ウェア煉瓦5bを一対の縦壁32A,32Bの間から送り出すために水平方向のうち互いに反対向きの二方向(縦方向A1)に開口された間口である。煉瓦取り出し間口35,36は、本実施形態では、一対の縦壁32A,32Bに加えて、パレット載置部31によって形成されており、
図4に示す正面視において上方に開放されたU字状の間口を形成している。
【0065】
テーパーガイド33A,33Bは、架台本体22の上方から架台本体22に向かって降下するパレット23および炉底周囲ウェア煉瓦5bを一対の縦壁32A,32Bの間に配置するためのガイドである。本実施形態では、テーパーガイド33A,33Bは、平板状部材を用いて形成されている。テーパーガイド33A,33Bは、前述したように縦壁32A,32Bの上端に設けられており、上側に進むに従いパレット23(パレット載置部31)から遠ざかるように傾斜している。すなわち、テーパーガイド33A,33Bは、縦壁32A,32Bに固定されている下端から上側に進むに従い、互いの間隔が大きくなるように傾斜している。本実施形態では、テーパーガイド33A,33Bは、縦方向A1における縦壁32A,32Bの全域に亘って形成されているけれども、一部の領域にのみ形成されていてもよい。縦壁32A,32Bからの上方へのテーパーガイド33A,33Bの高さは、適宜設定される。なお、テーパーガイド33A,33Bの何れか一方のみが設けられていてもよい。
【0066】
このような傾斜したテーパーガイド33A,33Bが設けられていることにより、架台本体22の上方から架台本体22に向かって降下するパレット23および炉底周囲ウェア煉瓦5bを一対の縦壁32A,32Bの間にスムーズに挿入することができる。
【0067】
上記の縦壁32A,32Bおよびテーパーガイド33A,33Bに対して横方向B1の外側に、リブ34が設けられている。
【0068】
リブ34は、本実施形態では、H形鋼等の鋼材を用いて形成されている。本実施形態では、リブ34は、下梁リブ41と、下梁リブ41に結合された柱リブ42と、柱リブ42に結合された上梁リブ43と、上梁リブ43に結合されテーパーガイド33A,33Bを支持するガイドリブ44と、を有している。
【0069】
下梁リブ41は、リブ34の土台として設けられているとともに、縦壁32A,32Bの下端を補強するために設けられている。下梁リブ41は、縦方向A1を長手方向とする梁であり、パレット載置部31および縦壁32A,32Bに固定されている。柱リブ42は、縦壁32A,32Bの下端部から上端部にかけて垂直に立てられた柱である。本実施形態では、一方の縦壁32A側において3つの柱リブ42が縦方向A1に等ピッチで配置されており、且つ、他方の縦壁32B側において3つの柱リブ42が縦方向A1に等ピッチで配置されている。柱リブ42は、下梁リブ41および縦壁32A,32Bに固定されている。上梁リブ43は、縦壁32A,32Bの上端を補強するために設けられている。上梁リブ43は、縦方向A1を長手方向とする梁であり、縦壁32A,32Bおよびテーパーガイド33A,33Bに固定されている。
【0070】
このように、リブ34が設けられていることにより、振れ止め機構25,26からの荷重を受けて縦壁32A,32Bが傾斜することをリブ34によって抑制できる。また、架台本体22の上方からパレット23および炉底周囲ウェア煉瓦5bが降下してパレット載置部31に載せられるまでの間に、パレット23が縦壁32A,32Bと接触したときに縦壁32A,32Bが傾斜することを、リブ34によって抑制できる。
【0071】
次に、振れ止め機構25,26について説明する。
【0072】
振れ止め機構25,26は、煉瓦取り出し間口35,36から吊り上げられて送り出される炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作を抑えるために設けられている。振れ止め機構25は、煉瓦取り出し間口35から送り出される炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作を抑え、振れ止め機構26は、煉瓦取り出し間口36から送り出される炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作を抑える。
【0073】
振れ止め機構25は、煉瓦取り出し間口35から送り出された炉底周囲ウェア煉瓦5bが当てられる当て物51と、当て物51に連結され、当て物51に加えられた衝撃を減衰する減衰部52A,52Bと、を有している。
【0074】
当て物51は、電動チェーンブロック16によって吊り上げられた炉底周囲ウェア煉瓦5bが振り子運動をしたときに、この炉底周囲ウェア煉瓦5bと接触することで、この振り子運動を制止するために設けられている。当て物51は、減衰部52A,52Bの後述する可動部55A,55Bによって両持ち支持された、可撓性の部材である。当て物51は、可撓性を有していることにより、炉底周囲ウェア煉瓦5bと接触することで、垂れ下がった状態から張られた状態となる。当て物51が外力を受けていない自由状態で且つ垂れ下がった状態において、当て物51のうち減衰部52A,52Bに連結されている箇所と、当て物51の下端との高さ距離L4が、適宜設定されている。この高さ距離L4が大きいほど、当て物51に炉底周囲ウェア煉瓦5bが接触してから減衰部52A,52Bが動作開始するまでに炉底周囲ウェア煉瓦5bが架台本体22の外側に移動する移動量を大きくできる。
【0075】
当て物51についての上述した可撓性の部材として、繊維のロープや、
図7に示す鎖チェーンを例示できる。
図7は、当て物51の一例について示す図であり、当て物51の一部のみを示している。当て物51は、
図7に示すように、複数の鎖素子を組み合わせて形成された鎖チェーンであることが好ましい。
【0076】
当て物51が鎖チェーンである場合、電動チェーンブロック16に吊り下げられた炉底周囲ウェア煉瓦5bが当て物51に接触したとき、炉底周囲ウェア煉瓦5bが当て物51に対して適度に滑るため、当て物51および減衰部52A,52Bに過度の負荷がかからずに済む。また、当て物51自体の強度も高くできる。よって、振れ止め機構25の耐久性を高くできる。
【0077】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、
図7以外では、当て物51をロープとして説明する。
【0078】
再び
図3~
図6を参照して、減衰部52A,52Bは、本実施形態では、横方向B1における縦壁32A,32Bの外側面側に配置されている。一方の減衰部52Aは、一方の縦壁32A側の柱リブ42に固定されたベースプレート53Aに設置されている。ベースプレート53Aは、縦向きに配置された板状部材であり、減衰部52A,52Bが延びる方向に沿って、水平方向に対して傾斜した形状に形成されている。他方の減衰部52Bは、他方の縦壁32B側の柱リブ42に固定されたベースプレート53Bに設置されている。ベースプレート53Bは、縦向きに配置された板状部材であり、減衰部52Bが延びる方向に沿って、水平面に対して傾斜した形状に形成されている。
【0079】
本実施形態では、減衰部52A,52Bは、電力や油圧等の外部動力源を用いることなく動作するように構成されている。転炉1内は、ウェア煉瓦5の更新時、高温で且つ粉塵が多く、外部駆動源をもつ設備は比較的故障しやすい環境である。このため、本実施形態のように、外部駆動源を用いずに振れ止め機構25を動作させることができることが好ましい。
【0080】
減衰部52A,52Bは、縦方向A1に沿って架台本体22の中心から遠ざかるに従い上側に進むように斜め上向きに配置されている。
【0081】
減衰部52A,52Bは、ベースプレート53A,53Bを介して縦壁32A,32Bに固定された固定部54A,54Bと、固定部54A,54Bに支持され当て物51と連動して移動可能な可動部55A,55Bと、を含んでいる。
【0082】
固定部54A,54Bは、本実施形態では筒であり、より具体的には円筒である。固定部54A,54Bは、ベースプレート53A,53Bに固定されている。固定部54A,54Bの形状および大きさは、可動部55A,55Bの大きさに応じて適宜設定される。固定部54A,54Bの先端部は、本実施形態では、側面視において縦壁32A,32Bから突出している。
【0083】
可動部55A,55Bは、本実施形態では、固定部54A,54Bに摩擦摺動可能に差し込まれた棒を含んでいる。可動部55A,55Bは、細長い棒であり、水平面に対して傾斜している。より具体的には、可動部55A,55Bは、固定部54A,54B側から当て物51側に進むに従い上側に傾斜する斜め上向きに配置されている。この傾斜の度合いは、可動部55A,55Bの動作の度合いに応じて適宜設定される。
【0084】
可動部55A,55Bの先端(上端)には、アイボルト等の端部材56A,56Bが固定されている。端部材56A,56Bは、固定部54A,54Bの開口端部に引っ掛かる形状に形成されている。これにより、可動部55A,55Bは、固定部54A,54Bに支持されることが可能である。端部材56A,56Bには、当て物51の端部が固定されている。
【0085】
なお、可動部55A,55Bの基端(下端)に、ストッパ57A,57Bが設けられていてもよい。ストッパ57A,57Bは、可動部55A,55Bのうち固定部54A,54Bから突出している箇所に配置されている。固定部54A,54Bからの端部材56A,56Bの突出量が所定値に達したときに、ストッパ57A,57Bは、固定部54A,54Bと接触するように構成されている。これにより、可動部55A,55Bが固定部54A,54Bから抜け落ちることを防止できる。
【0086】
以上が、振れ止め機構25の構成である。次に、振れ止め機構26について説明する。
【0087】
振れ止め機構26は、煉瓦取り出し間口36から送り出された炉底周囲ウェア煉瓦5bが当てられる当て物61と、この当て物61に連結され、当て物61に加えられた衝撃を減衰する減衰部62A,62Bと、を有している。
【0088】
当て物61は、当て物51と同じ構成を有しているので説明を省略する。
【0089】
減衰部62A,62Bは、本実施形態では、横方向B1において、縦壁32A,32Bの外側で、且つ、振れ止め機構25の減衰部52A,52Bの外側に配置されている。一方の減衰部62Aは、一方の縦壁32A側の柱リブ42に固定されたベースプレート63Aに設置されている。ベースプレート63Aは、側面視においてベースプレート53Aと縦方向A1に対称に配置された板状部材であり、減衰部52Aを避けるようにして減衰部52Aに対して横方向B1の外側に配置されている。他方の減衰部62Bは、他方の縦壁32B側の柱リブ42に固定されたベースプレート63Bに設置されている。ベースプレート63Bは、側面視においてベースプレート53Bと縦方向A1に対称に配置された平板状部材であり、減衰部52Bを避けるようにして減衰部52Bに対して横方向B1の外側に配置されている。
【0090】
本実施形態では、減衰部62A,62Bは、減衰部52A,52Bと同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0091】
以上が、作業架台20の概略構成である。次に、作業架台20を用いた炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業について説明する。
【0092】
図8および
図9は、炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業について説明するための図である。
図8を参照して、吊り具5cが煉瓦取り出し間口35,36のうちの煉瓦取り出し間口35寄りに配置されている炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底に積み付ける際には、作業員が、煉瓦取り出し間口35に近い電動チェーンブロック16のフック16cを、上記吊り具5cに掛ける。次いで、電動チェーンブロック16を動作させることで、フック16cを引き上げる。フック16cが引き上げられると、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、矢印E1に示すように吊り上げられて起立した姿勢となる。このとき、電動チェーンブロック16の本体16aは、平面視において架台本体22から外れた箇所に配置されている。このため、フック16cに吊り上げられた炉底周囲ウェア煉瓦5bは、電動チェーンブロック16の本体16aの直下に移動するように、架台本体22から煉瓦取り出し間口35を通して架台本体22から離隔するように移動する。
【0093】
これにより、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、振れ止め機構25の当て物51に接触する。そして、当て物51の中央は、縦方向A1に向けて架台本体22から遠ざかるように移動する。これにより、当て物51は、炉底周囲ウェア煉瓦5bからの荷重を受ける。炉底周囲ウェア煉瓦5bから当て物51を介して荷重を受けた可動部55A,55Bは、固定部54A,54Bから伸びるように変位しながら固定部54A,54Bに対して摩擦摺動する(
図8,
図9では、固定部54Bおよび可動部55Bは図示せず)。
【0094】
すなわち、炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作のエネルギーは、可動部55A,55Bと固定部54A,54Bとの摩擦運動、および、可動部55A,55Bの持ち上げ運動に変換され、減衰(消費)される。このように、可動部55A,55Bのスライド動作による仕事で上記振れ動作のエネルギーが吸収される。この仕事の仕事量は、可動部55A,55Bの自重、固定部54A,54Bに対する可動部55A,55Bのスライド距離、および、固定部54A,54Bと可動部55A,55Bとの間の摩擦抵抗によって決まる。可動部55A,55Bの自重を変更することで、上記の仕事量を調整し易い。
【0095】
可動部55A,55Bが固定部54A,54Bから伸びるように所定量(例えば、ストローク量st1)移動されると、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、電動チェーンブロック16の本体16aの直下まで到達し、炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作が振れ止め機構25によって押えられる。すなわち、当て物51が張られるときに当て物51の中央が持ち上げられる動作と、可動部55A,55Bのスライド動作とに伴って、電動チェーンブロック16の本体16aの真下まで炉底周囲ウェア煉瓦5bが到達する。
【0096】
次いで、
図9に示すように、電動チェーンブロック16の動作によって炉底周囲ウェア煉瓦5bが矢印E2に示すようにさらに引き上げられ、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、当て物51との接触を解除される。すると、可動部55A,55Bは、自重によって下側へ移動する。そして、元の位置、すなわち、端部材56A,56Bが固定部54A,54Bと接触する位置まで、可動部55A,55Bが降下する。また、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、電動チェーンブロック16によって矢印E3,E4に示すように下側に移動され、これにより、炉底周囲パーマ煉瓦4b上に積み付けられる。
【0097】
なお、吊り具5cが煉瓦取り出し間口35,36のうちの煉瓦取り出し間口36寄りに配置されている炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底に積み付ける場合、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、煉瓦取り出し間口36を通してパレット23から取り出される。この場合、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、煉瓦取り出し間口35からの炉底周囲ウェア煉瓦5bの取り出し作業として上述したのと同様の動作によって、振れ止め機構26によって振れ動作を抑制されつつ、炉底周囲パーマ煉瓦4b上に積み付けられる。
【0098】
なお、平面視において、架台本体22から炉底周囲ウェア煉瓦5bを取り出すことが可能な範囲は、平面視における
図6の扇状の領域R1,R2である。領域R1は、煉瓦取り出し間口35における一対の縦壁32A,32B間からの領域であり、領域R2は、煉瓦取り出し間口36における一対の縦壁32A,32B間からの領域である。
【0099】
そして、炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底に積み付ける位置に応じて、回転台21の上側の軌道盤および架台本体22が適宜移動されることで、扇状の領域R1,R2の位置を変化させる。このような動作により、転炉1の円周方向全域において、炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底に積み付けることができる。
【0100】
炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付けが完了すると、作業架台20および足場18は、転炉1内から撤去される。その後、直胴部7等の他の箇所におけるウェア煉瓦5が、築炉タワー(図示せず)等を用いて鉄皮2内に組み付けられる。
【0101】
以上説明したように、本実施形態によると、パレット23上の炉底周囲ウェア煉瓦5bを電動チェーンブロック16で吊り上げた後、この炉底周囲ウェア煉瓦5bを炉底周囲パーマ煉瓦4b上に積み付ける。この積み付け作業において、炉底周囲ウェア煉瓦5bが架台本体22上のパレット23から落下する荷崩れが生じると、荷崩れした炉底周囲ウェア煉瓦5bをパレット23上に再度載せ直す作業が必要であり、手間がかかる。しかしながら、パレット23の脇に縦壁32A,32Bが設けられているので、炉底周囲ウェア煉瓦5bの荷崩れを抑制できる。また、炉底周囲ウェア煉瓦5bは、パレット23(炉底中心部11)を中心に平面視において転炉1の周方向C1に沿って多数組み付けられる。一方で、縦壁32A,32Bがあると、縦壁32A,32Bが存在する横方向B1への、パレット23からの炉底周囲ウェア煉瓦5bの取り出しができない。しかしながら、回転台21によってパレット23を周方向C1に回転できる。これにより、煉瓦取り出し間口35,36を周方向C1の任意の位置に回転移動できる。よって、縦壁32A,32Bが炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業に邪魔にならずに済み、炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業の手間が少なくて済む。以上の次第で、転炉炉底に設置されたパレット23からの炉底周囲ウェア煉瓦5bの荷崩れを抑制できるとともに、炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付け作業にかかる手間が少なくて済む。
【0102】
また、本実施形態によると、縦方向A1における架台本体22の両側に煉瓦取り出し間口35,36が設けられている。これにより、煉瓦取り出し間口35側に吊り具5cが配置された炉底周囲ウェア煉瓦5bを煉瓦取り出し間口35から取り出すことができるとともに、煉瓦取り出し間口36側に吊り具5cが配置された炉底周囲ウェア煉瓦5bを煉瓦取り出し間口36から取り出すことができる。これにより、2方向から炉底周囲ウェア煉瓦5bの取り出しが可能であり、炉底周囲ウェア煉瓦5bを効率よくパレット23から搬出できる。
【0103】
また、本実施形態によると、電動チェーンブロック16を用いた炉底周囲ウェア煉瓦5bの積み付けの際、吊り上げられた炉底周囲ウェア煉瓦5bが、大きく振れ動いてしまう。この触れ動きが自然に止まるのを待っていると、時間がかかりすぎてしまい、非効率である。また、炉底周囲ウェア煉瓦5bの重量は例えば50kgを超えるため、金属製の手鉤等の治具を用いて手作業で振れ動きを止めることも難しい。そのため、人の手によって直接炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動きを抑えて振れを止めることが考えられる。この際、50kg超える重い煉瓦を人の手で止めるため、体力が必要である。上記のような課題があるため、人力によらない効率的な、炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ止め技術が求められていた。そして本実施形態では、振れ止め機構25,26が設けられていることにより、電動チェーンブロック16によって吊り上げられた炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ動作を、人の手を用いずに効率的に抑制できる。
【0104】
また、本実施形態によると、振れ止め機構25は、当て物51と、当て物51に加えられた衝撃を減衰する減衰部52A,52Bとを有している。この構成によると、炉底周囲ウェア煉瓦5bから当て物51に加えられた衝撃は、減衰部52A,52Bで減衰される。これにより、当て物51および炉底周囲ウェア煉瓦5bへの衝撃を緩和でき、当て物51の耐久性を高くできるとともに、炉底周囲ウェア煉瓦5bの損傷を抑制できる。なお、振れ止め機構26についても振れ止め機構25と同様の効果を発揮できるので、振れ止め機構26についての効果の記載は省略する場合がある。
【0105】
また、本実施形態によると、減衰部52A,52Bは、筒である固定部54A,54Bに支持され当て物51と連動して移動可能な棒である可動部55A,55Bを含んでいる。そして可動部55A,55Bは、固定部54A,54Bに摩擦摺動可能に差し込まれている。この構成によると、可動部55A,55Bを駆動させるのが炉底周囲ウェア煉瓦5bからの荷重であり、可動部55A,55Bを動作させる駆動源を別途準備しなくて済む。よって、振れ止め機構25の構成をより簡素にでき、また、振れ止め機構25の故障が少なくて済み、さらに、振れ止め機構25に故障が生じても修理を容易に行うことができる。
【0106】
また、本実施形態によると、可動部55A,55Bは、固定部54A,54B側から当て物51側に進むに従い上側に傾斜する斜め上向きに配置されている。この構成によると、可動部55A,55Bは、炉底周囲ウェア煉瓦5bからの荷重を受けて固定部54A,54Bに対してスライドした後、自重によって元の位置に戻ることができる。これにより、可動部55A,55Bを動作させる駆動源を別途準備しなくて済む。よって、振れ止め機構25の構成をより簡素にできる。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0108】
例えば、可動部55A,55Bに、端部材56A,56Bから離隔した位置にカウンタウェイトを設置してもよい。カウンタウェイトを設けることで、可動部55A,55Bが炉底周囲ウェア煉瓦5bからのエネルギーを吸収可能な量をより多くでき、炉底周囲ウェア煉瓦5bの振れ止め効果をより高くできる。
【0109】
また、振れ止め機構25,26の減衰部52A,52Bにおいて、固定部54A,54Bが筒で可動部55A,55Bが棒である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、可動部55A,55Bが固定部54A,54Bに対してスライドした後に、可動部55A,55Bを元の位置に戻すために電動モータを用いてもよい。また、減衰部52A,52Bとして、油圧ダンパー等が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、炉底煉瓦積み付け用作業架台として広く適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 転炉
5b 炉底周囲ウェア煉瓦(炉底煉瓦)
20 炉底煉瓦積み付け用作業架台
21 回転台
23 パレット
25,26 振れ止め機構
31 パレット載置部
32A,32B 縦壁
33A,33B テーパーガイド
34 リブ
35,36 煉瓦取り出し間口
51,61 当て物
52A,52B,62A,62B 減衰部
54A,54B 固定部
55A,55B 可動部
L1+L2 隙間幅
L3 炉底煉瓦の幅