(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】プレス装置、及びプレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20250110BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D22/02 C
(21)【出願番号】P 2021039958
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米林 亮
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 栄志
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-089113(JP,A)
【文献】特開2019-202335(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194401(WO,A1)
【文献】特開2018-069305(JP,A)
【文献】特開2018-020349(JP,A)
【文献】国際公開第2012/067122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/02
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
前記ベッドに対して昇降可能なスライドと、
面内で湾曲する湾曲部を有する細長い頂面、前記頂面の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲内方の側縁につながる内側側面、前記頂面の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲外方の側縁につながる外側側面、前記内側側面の下縁につながる内側底面、及び前記外側側面の下縁につながる外側底面を有する下パンチと、
前記下パンチを支持し、前記ベッドに固定される下クッションと、
前記下パンチの前記内側底面に隣接するように配置され、前記ベッドに固定される内側下治具であって、前記内側下治具の上面のうち前記下パンチの前記内側底面に隣接する縁に内側下刃を有し、前記上面に前記湾曲部の湾曲内方の前記側縁に沿うように形成された内側溝を有する前記内側下治具と、
前記下パンチの前記頂面と対向するように配置され、弾性部材を介して前記スライドに支持された上パッドと、
前記スライドに固定される上ダイであって、前記下パンチの前記内側側面に対応する内側壁面、前記下パンチの前記外側側面に対応する外側壁面、前記下パンチの前記内側底面に対向する内側下面、前記下パンチの前記外側底面に対向する外側下面、及び前記内側下面に隣接する内側凹部を有するとともに、前記内側下面のうち前記内側凹部に隣接する縁に内側上刃を有し、前記内側凹部の底面のうち前記内側溝と対向する位置に前記内側下面よりも突出する内側凸条を有する前記上ダイと、を備える、プレス装置。
【請求項2】
ベッドと、
前記ベッドに対して昇降可能なスライドと、
面内で湾曲する湾曲部を有する細長い頂面、前記頂面の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲内方の側縁につながる内側側面、前記頂面の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲外方の側縁につながる外側側面、前記内側側面の下縁につながる内側底面、及び前記外側側面の下縁につながる外側底面を有する下パンチと、
前記下パンチを支持し、前記ベッドに固定される下クッションと、
前記下パンチの前記外側底面に隣接するように配置され、前記ベッドに固定される外側下治具であって、前記外側下治具の上面のうち前記下パンチの前記外側底面に隣接する縁に外側下刃を有し、前記上面に前記湾曲部の湾曲外方の前記側縁に沿うように形成された外側溝を有する前記外側下治具と、
前記下パンチの前記頂面と対向するように配置され、弾性部材を介して前記スライドに支持された上パッドと、
前記スライドに固定される上ダイであって、前記下パンチの前記内側側面に対応する内側壁面、前記下パンチの前記外側側面に対応する外側壁面、前記下パンチの前記内側底面に対向する内側下面、前記下パンチの前記外側底面に対向する外側下面、及び前記外側下面に隣接する外側凹部を有するとともに、前記外側下面のうち前記外側凹部に隣接する縁に外側上刃を有し、前記外側凹部の底面のうち前記外側溝と対向する位置に前記外側下面よりも突出する外側凸条を有する前記上ダイと、を備える、プレス装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプレス装置であって、
当該プレス装置は、さらに、前記下パンチの前記外側底面に隣接するように配置され、前記ベッドに固定される外側下治具であって、前記外側下治具の上面のうち前記下パンチの前記外側底面に隣接する縁に外側下刃を有し、前記上面に前記湾曲部の湾曲外方の前記側縁に沿うように形成された外側溝を有する前記外側下治具を備え、
前記上ダイは、さらに、前記外側下面に隣接する外側凹部を有するとともに、前記外側下面のうち前記外側凹部に隣接する縁に外側上刃を有し、前記外側凹部の底面のうち前記外側溝と対向する位置に前記外側下面よりも突出する外側凸条を有する、プレス装置。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のプレス装置であって、
前記内側凸条の前記内側下面からの突出量は5mm以上である、プレス装置。
【請求項5】
請求項1、3及び4のいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前記内側凸条の幅は、前記内側凸条の高さの0.8倍以上である、プレス装置。
【請求項6】
請求項1、3、4及び5のいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前記内側下刃は、前記湾曲部の湾曲内方の前記側縁に対応する長手方向の範囲において、当該範囲の両端よりも当該範囲の中央が低くなるように傾斜する、プレス装置。
【請求項7】
請求項2又は3に記載のプレス装置であって、
前記外側凸条の前記外側下面からの突出量は5mm以上である、プレス装置。
【請求項8】
請求項2、3及び7のいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前記外側凸条の幅は、前記外側凸条の高さの0.8倍以上である、プレス装置。
【請求項9】
請求項2、3、7及び8のいずれか1項に記載のプレス装置であって、
前記外側下刃は、前記湾曲部の湾曲外方の前記側縁に対応する長手方向の範囲において、当該範囲の両端よりも当該範囲の中央が高くなるように傾斜する、プレス装置。
【請求項10】
請求項1、3、4、5及び6のいずれか1項に記載のプレス装置を用い、面内で湾曲する湾曲部を有する細長い天板、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲内方の側縁につながる内側縦壁、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲外方の側縁につながる外側縦壁、前記内側縦壁の下縁につながる内側フランジ、及び前記外側縦壁の下縁につながる外側フランジを含むプレス成形品の製造方法であって、
当該製造方法は、
(a)前記上ダイの前記内側凸条の設置領域を越える大きさを有する金属板からなるブランクを準備する工程と、
(b)前記ブランクを前記下パンチの前記頂面上に載置する工程と、
(c)前記スライドを下降して、前記上パッドと前記下パンチの前記頂面との間に前記ブランクを挟む工程と、
(d)前記スライドをさらに下降して、前記上ダイと前記下パンチによって前記ブランクをプレスするとともに、前記内側凸条と前記内側溝によって前記ブランクをプレスする工程と、
(e)前記スライドをさらに下降して、前記内側上刃と前記内側下刃によって前記ブランクを切断する工程と、を備える、プレス成形品の製造方法。
【請求項11】
請求項2、3、7、8及び9のいずれか1項に記載のプレス装置を用い、面内で湾曲する湾曲部を有する細長い天板、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲内方の側縁につながる内側縦壁、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲外方の側縁につながる外側縦壁、前記内側縦壁の下縁につながる内側フランジ、及び前記外側縦壁の下縁につながる外側フランジを含むプレス成形品の製造方法であって、
当該製造方法は、
(a)前記上ダイの前記外側凸条の設置領域を越える大きさを有する金属板からなるブランクを準備する工程と、
(b)前記ブランクを前記下パンチの前記頂面上に載置する工程と、
(c)前記スライドを下降して、前記上パッドと前記下パンチの前記頂面との間に前記ブランクを挟む工程と、
(d)前記スライドをさらに下降して、前記上ダイと前記下パンチによって前記ブランクをプレスするとともに、前記外側凸条と前記外側溝によって前記ブランクをプレスする工程と、
(e)前記スライドをさらに下降して、前記外側上刃と前記外側下刃によって前記ブランクを切断する工程と、を備える、プレス成形品の製造方法。
【請求項12】
請求項3、並びに請求項3を引用する請求項4~9のいずれか1項に記載のプレス装置を用い、面内で湾曲する湾曲部を有する細長い天板、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲内方の側縁につながる内側縦壁、前記天板の両側縁のうちの前記湾曲部の湾曲外方の側縁につながる外側縦壁、前記内側縦壁の下縁につながる内側フランジ、及び前記外側縦壁の下縁につながる外側フランジを含むプレス成形品の製造方法であって、
当該製造方法は、
(a)前記上ダイの前記内側凸条の設置領域を越え、かつ前記上ダイの前記外側凸条の設置領域を越える大きさを有する金属板からなるブランクを準備する工程と、
(b)前記ブランクを前記下パンチの前記頂面上に載置する工程と、
(c)前記スライドを下降して、前記上パッドと前記下パンチの前記頂面との間に前記ブランクを挟む工程と、
(d)前記スライドをさらに下降して、前記上ダイと前記下パンチによって前記ブランクをプレスするとともに、前記内側凸条と前記内側溝によって前記ブランクをプレスし、かつ前記外側凸条と前記外側溝によって前記ブランクをプレスする工程と、
(e)前記スライドをさらに下降して、前記内側上刃と前記内側下刃によって前記ブランクを切断し、かつ前記外側上刃と前記外側下刃によって前記ブランクを切断する工程と、を備える、プレス成形品の製造方法。
【請求項13】
請求項10又は請求項12に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記工程(a)で準備する前記ブランクにおいて、前記上ダイの前記内側凸条の前記設置領域の少なくとも長手方向の中央部に対応する第1領域が前記内側凸条の前記設置領域を
幅方向に越え、前記第1領域の
長手方向の両端から外側にある領域が切り欠かれている、プレス成形品の製造方法。
【請求項14】
請求項11又は請求項12に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記工程(a)で準備する前記ブランクにおいて、前記上ダイの前記外側凸条の前記設置領域の少なくとも長手方向の両端部それぞれに対応する第2領域が前記外側凸条の前記設置領域を
幅方向に越え、
長手方向において前記第2領域同士
に挟まれた領域が切り欠かれている、プレス成形品の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記工程(a)で準備する前記ブランクにおいて、前記上ダイの前記内側凸条の前記設置領域の少なくとも長手方向の中央部に対応する第1領域が前記内側凸条の前記設置領域を
幅方向に越え、
前記第1領域の
長手方向の両端から外側にある領域が切り欠かれていて、前記上ダイの前記外側凸条の前記設置領域の少なくとも長手方向の両端部それぞれに対応する第2領域が前記外側凸条の前記設置領域を
幅方向に越え、
長手方向において前記第2領域同士
に挟まれた領域が切り欠かれている、プレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置、及びそのプレス装置を用いたプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体を構成する部品の多くは、金型を用いたプレス加工によって成形される。この種のプレス成形品は、金属板からなるブランクをしぼり成形や曲げ成形することによって製造される。近年、自動車用のプレス成形品には軽量化及び高強度化が要求されている。この要求を満たすため、プレス成形品を製造する際、高い強度(引張強度)を有するブランクが用いられている。
【0003】
ただし、高強度のブランクを用いた場合、得られるプレス成形品にスプリングバックが発生しやすい。このため、プレス成形時に何らかの対策を施さなければ、目標の寸法精度を確保することが難しい。
【0004】
特に、プレス成形品が長尺であってハット形の横断面を有し、かつ平面視で湾曲する部分を含む場合、プレス成形品に捩じれや縦壁の反り(以下、「壁反り」とも言う。)が起こりやすい。このような形状の自動車用のプレス成形品として、例えば、Aピラーアッパー(フロントピラーアッパー)、ルーフレール、及びフロンドサイドメンバーフロントが挙げられる。
【0005】
一般に、プレス成形品は、複数の工程を経ることによって製造される。このため、プレス成形品の捩じれ及び壁反りが著しければ、次工程で金型にプレス成形品をセットできなくなる。この場合、当該次工程で矯正することさえ難しい。したがって、プレス成形品の捩じれ及び壁反りを抑制する技術が求められる。
【0006】
捩じれや壁反りを抑制する従来技術は、例えば、特開2008-213028号公報(特許文献1)、特開2008-000778号公報(特許文献2)、及び特開2016-002583号公報(特許文献3)に提案されている。
【0007】
特許文献1は、プレス成形の際、チャンネル材のウエブ面にエンボスを形成する技術を開示する。特許文献1には、プレス成形時にウエブ面にエンボスを成形するという比較的簡単な加工を施すのみで、プレス加工後に成形品を金型から外したときスプリングバックによって成形品が捩じられることも極わずかとなり、部品の組付け等において不都合をもたらすことはない、と記載されている。
【0008】
特許文献2は、天井部、縦壁部及びフランジ部よりなり、コの字型又はハの字型の断面形状を有するハット型金属製部品をプレス成形によって製造する際、少なくとも縦壁部の一部に、プレス成形後の残留応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成する技術を開示する。特許文献2には、捩りや変形のない形状凍結性に優れたハット型金属製部品が得られる、と記載されている。
【0009】
特許文献3は、長手方向に延びる溝形状部13を有し、該溝形状部13を形成する一対の縦壁部13bの両方に長手方向に沿って湾曲するフランジ部を有する成形品11を製造する技術を開示する。特許文献3の技術では、溝形状部13を成形するパンチ3と、パンチ3の両側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイ5と、溝形状成形部7aとフランジ成形部7bを有するダイ7と、を用いてプレス成形する。プレス成形の際、成形途中におけるダイ7の下死点からの距離をHとし、成形途中におけるフランジ成形ダイ5の上死点からの距離をDとしたときに、成形途中においてはH>0、D>0であり、製品形状に成形する時点でH=D=0とする。特許文献3には、ねじれや曲がりといった3次元的なスプリングバックを低減できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-213028号公報
【文献】特開2008-000778号公報
【文献】特開2016-002583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や特許文献2の技術では、製品に対してエンボス形状の付与や穴空けをする必要がある。この場合、エンボスや穴を起点に製品が変形しやすくなる。このため、製品の剛性、強度、及び衝突の性能が低下する可能性がある。また、特許文献2の技術では、製品に穴が空けられているため、防錆性能の低下も懸念される。このため、特許文献1及び特許文献2の技術は実用的でない。
【0012】
特許文献3の技術では、プレス成形中に移動可能なフランジ成形ダイ5が必要となる。一般的なプレス機を用いる場合、プレス機のダイックションからクッションピンを介して、又はガスクッションを介して、フランジ成形ダイ5に相当する金型へ所定の荷重を与えるだけである。このため、成形中に複雑な位置制御をすることは難しく、特許文献3の技術は実用的でない。
【0013】
したがって、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制する技術が強く望まれている。
【0014】
本発明の課題は、長尺であってハット形の横断面を有し、かつ平面視で湾曲する部分を含むプレス成形品を製造する場合、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できるプレス装置、及びプレス成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの実施形態によるプレス装置は、ベッドと、スライドと、下パンチと、下クッションと、内側下治具と、上パッドと、上ダイと、を備える。スライドは、ベッドに対して昇降可能である。下パンチは、細長い頂面、内側側面、外側側面、内側底面、及び外側底面を有する。頂面は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側底面は、内側側面の下縁につながる。外側底面は、外側側面の下縁につながる。下クッションは、下パンチを支持し、ベッドに固定される。
【0016】
内側下治具は、下パンチの内側底面に隣接するように配置され、ベッドに固定される。内側下治具は、内側下治具の上面のうち下パンチの内側底面に隣接する縁に内側下刃を有する。内側下治具は、上面に湾曲部の湾曲内方の側縁に沿うように形成された内側溝を有する。上パッドは、下パンチの頂面と対向するように配置される。上パッドは、弾性部材を介してスライドに支持される。
【0017】
上ダイは、スライドに固定される。上ダイは、内側壁面、外側壁面、内側下面、外側下面、及び内側凹部を有する。内側壁面は、下パンチの内側側面に対応する。外側壁面は、下パンチの外側側面に対応する。内側下面は、下パンチの内側底面に対向する。外側下面は、下パンチの外側底面に対向する。内側凹部は、内側下面に隣接する。上ダイは、内側下面のうち内側凹部に隣接する縁に内側上刃を有する。上ダイは、内側凹部の底面のうち内側溝と対向する位置に内側下面よりも突出する内側凸条を有する。
【0018】
本発明の1つの実施形態によるプレス成形品の製造方法は、上記1つの実施形態のプレス装置を用いた製造方法である。当該製造方法によって製造されるプレス成形品は、細長い天板、内側縦壁、外側縦壁、内側フランジ、及び外側フランジを含む。天板は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側フランジは、内側縦壁の下縁につながる。外側フランジは、外側縦壁の下縁につながる。
【0019】
当該製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。工程(a)では、金属板からなるブランクを準備する。ブランクは、上ダイの内側凸条の設置領域を越える大きさを有する。工程(b)では、ブランクを下パンチの頂面上に載置する。工程(c)では、スライドを下降して、上パッドと下パンチの頂面との間にブランクを挟む。工程(d)では、スライドをさらに下降して、上ダイと下パンチによってブランクをプレスするとともに、内側凸条と内側溝によってブランクをプレスする。工程(e)では、スライドをさらに下降して、内側上刃と内側下刃によってブランクを切断する。
【0020】
本発明の他の実施形態によるプレス装置は、ベッドと、スライドと、下パンチと、下クッションと、外側下治具と、上パッドと、上ダイと、を備える。スライドは、ベッドに対して昇降可能である。下パンチは、細長い頂面、内側側面、外側側面、内側底面、及び外側底面を有する。頂面は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側底面は、内側側面の下縁につながる。外側底面は、外側側面の下縁につながる。下クッションは、下パンチを支持し、ベッドに固定される。
【0021】
外側下治具は、下パンチの外側底面に隣接するように配置され、ベッドに固定される。外側下治具は、外側下治具の上面のうち下パンチの外側底面に隣接する縁に外側下刃を有する。外側下治具は、上面に湾曲部の湾曲外方の側縁に沿うように形成された外側溝を有する。上パッドは、下パンチの頂面と対向するように配置される。上パッドは、弾性部材を介してスライドに支持される。
【0022】
上ダイは、スライドに固定される。上ダイは、内側壁面、外側壁面、内側下面、外側下面、及び外側凹部を有する。内側壁面は、下パンチの内側側面に対応する。外側壁面は、下パンチの外側側面に対応する。内側下面は、下パンチの内側底面に対向する。外側下面は、下パンチの外側底面に対向する。外側凹部は、外側下面に隣接する。上ダイは、外側下面のうち外側凹部に隣接する縁に外側上刃を有する。上ダイは、外側凹部の底面のうち外側溝と対向する位置に外側下面よりも突出する外側凸条を有する。
【0023】
本発明の他の実施形態によるプレス成形品の製造方法は、上記他の実施形態のプレス装置を用いた製造方法である。当該製造方法によって製造されるプレス成形品は、細長い天板、内側縦壁、外側縦壁、内側フランジ、及び外側フランジを含む。天板は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側フランジは、内側縦壁の下縁につながる。外側フランジは、外側縦壁の下縁につながる。
【0024】
当該製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。工程(a)では、金属板からなるブランクを準備する。ブランクは、上ダイの外側凸条の設置領域を越える大きさを有する。工程(b)では、ブランクを下パンチの頂面上に載置する。工程(c)では、スライドを下降して、上パッドと下パンチの頂面との間にブランクを挟む。工程(d)では、スライドをさらに下降して、上ダイと下パンチによってブランクをプレスするとともに、外側凸条と外側溝によってブランクをプレスする。工程(e)では、スライドをさらに下降して、外側上刃と外側下刃によってブランクを切断する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態によるプレス装置、及びプレス成形品の製造方法によれば、長尺であってハット形の横断面を有し、かつ平面視で湾曲する部分を含むプレス成形品を製造する場合、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1C】
図1Cは、他のプレス成形品の外観を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2C】
図2Cは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2D】
図2Dは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2E】
図2Eは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2F】
図2Fは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図2G】
図2Gは、プレス成形品のバリエーションを示す平面図である。
【
図3A】
図3Aは、一般的なプレス加工によるプレス成形中のプランクに生じる応力を示す平面図である。
【
図3B】
図3Bは、一般的なプレス加工によるプレス成形完了時のプレス成形品に生じる応力を示す斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、一般的なプレス加工によるプレス成形後に金型から取り出された成形品にスプリングバックで生じる応力を示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、一般的なプレス加工によるプレス成形中のブランクに生じる応力を示す横断面図である。
【
図4B】
図4Bは、一般的なプレス加工によるプレス成形後に金型から取り出されたプレス成形品に生じる応力を示す横断面図である。
【
図4C】
図4Cは、一般的なプレス加工によってプレス成形品を成形したときに、スプリングバック発生前後のプレス成形品を示す横断面図である。
【
図5】
図5は、捩じれ及び壁反りが発生したプレス成形品を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のプレス装置の一例を示す横断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示されるプレス装置が備える金型セットの斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、第1実施形態のプレス装置を用いたプレス成形品の製造方法における一つのステップを示す横断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態のプレス装置を用いたプレス成形品の製造方法に適用されるブランクを示す平面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態のプレス装置を用いた製造方法によってプレス成形品を成形するときの状況を説明するための平面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のプレス装置の一例を示す横断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態のプレス装置を用いたプレス成形品の製造方法に適用されるブランクを示す平面図である。
【
図14】
図14は、プレス成形時の様子を示す横断面図である。
【
図15】
図15は、ブランクの好適な形状1を示す平面図である。
【
図16】
図16は、
図15に示すブランクをプレス成形品に成形するときの状況を説明するための平面図である。
【
図17】
図17は、θ2/θ1とプレス成形品の捩じれ角度との関係を示す図である。
【
図18】
図18は、ブランクの好適な形状2を示す平面図である。
【
図19】
図19は、ブランクの好適な形状3を示す平面図である。
【
図20】
図20は、
図19に示すブランクをプレス成形品に成形するときの状況を説明するための平面図である。
【
図21】
図21は、θ3/θ1とプレス成形品の捩じれ角度との関係を示す図である。
【
図22】
図22は、ブランクの好適な形状4を示す平面図である。
【
図23】
図23は、内側凸条及び外側凸条それぞれの好適な寸法を説明するための横断面図である。
【
図24】
図24は、内側下治具及び外側下治具それぞれの好適な寸法を説明するための横断面図である。
【
図25】
図25は、下パンチの内側底面及び外側底面それぞれの好適な初期高さ位置を説明するための横断面図である。
【
図26】
図26は、下パンチの好適な下降量、並びに上ダイの内側凹部及び外側凹部それぞれの好適な深さを説明するための横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明はそれらの例示に限定されない。
【0028】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、プレス成形品を製造するときの捩じれ及び壁反りの発生メカニズムを詳細に検討した。その結果、下記の知見を得た。なお、本明細書において、プレス成形品は、長尺であってハット形の横断面を有し、かつ平面視で湾曲する部分を含む。
【0029】
[プレス成形品]
図1A及び
図1Bは、プレス成形品101の外観を示す図である。これらの図のうち、
図1Aは斜視図であり、
図1Bは平面図である。
図1A及び
図1Bを参照して、プレス成形品101は、長尺であってハット形の横断面を有する。プレス成形品101は、平面視で湾曲する部分(以下、「湾曲部」とも言う。)111を含む。さらに、プレス成形品101は、湾曲部111の長手方向の端から直線状に延びる直線部112を含む。なお、本明細書において、横断面とは、プレス成形品101の長手方向に垂直な断面を意味する。長手方向とは、プレス成形品101の延びる方向を意味する。短手方向とは、長手方向に垂直な方向を意味する。また、プレス成形品101を成形するための後述するプレス装置1で断面及び方向を示すとき、その断面及び方向はプレス成形品101での断面及び方向と一致する。例えば、プレス装置1では、下パンチ4の頂面41の延びる方向が長手方向であり、下パンチ4の頂面41の延びる方向に垂直な断面が横断面である。
【0030】
プレス成形品101は、天板102、内側縦壁103i、外側縦壁103o、内側フランジ104i、及び外側フランジ104oを含む。天板102は細長くて平坦であり、湾曲部121を有する。天板102の湾曲部121は、天板102の平坦な面内で湾曲する部分である。天板102の湾曲部121はプレス成形品101の湾曲部111に含まれる。また、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101の天板102は、天板102の湾曲部121の両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部122を有する。天板102の直線部122はプレス成形品101の直線部112に含まれる。
【0031】
内側縦壁103iは、天板102の両側縁のうちの湾曲部121の湾曲内方の側縁121iにつながる。ここで言う湾曲内方とは、1つの湾曲部121に対して湾曲の曲率半径の中心側を意味する。他の要素において湾曲内方という用語を用いた場合も同様の意味で解釈する。内側縦壁103iは湾曲部131iを有する。内側縦壁103iの湾曲部131iは、天板102の湾曲部121につながる部分であって、凹に曲がっている。換言すれば、内側縦壁103iの湾曲部131iは、板厚方向で湾曲外方に向けて凸に曲がっている。内側縦壁103iの湾曲部131iはプレス成形品101の湾曲部111に含まれる。また、内側縦壁103iは、内側縦壁103iの湾曲部131iの両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部132iを有する。内側縦壁103iの直線部132iは、天板102の直線部122につながる。内側縦壁103iの直線部132iはプレス成形品101の直線部112に含まれる。
【0032】
外側縦壁103oは、天板102の両側縁のうちの湾曲部121の湾曲外方の側縁121oにつながる。ここで言う湾曲外方とは、1つの湾曲部121に対して湾曲の曲率半径の中心とは反対側を意味する。他の要素において湾曲外方という用語を用いた場合も同様の意味で解釈する。外側縦壁103oは湾曲部131oを有する。外側縦壁103oの湾曲部131oは、天板102の湾曲部121につながる部分であり、凸に曲がっている。換言すれば、外側縦壁103oの湾曲部131oは、板厚方向で湾曲外方に向けて凸に曲がっている。外側縦壁103oの湾曲部131oはプレス成形品101の湾曲部111に含まれる。また、外側縦壁103oは、外側縦壁103oの湾曲部131oの両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部132oを有する。外側縦壁103oの直線部132oは、天板102の直線部122につながる。外側縦壁103oの直線部132oはプレス成形品101の直線部112に含まれる。
【0033】
内側フランジ104iは、内側縦壁103iの下縁につながる。内側フランジ104iは湾曲部141iを有する。内側フランジ104iの湾曲部141iは、内側縦壁103iの湾曲部131iにつながる。内側フランジ104iの湾曲部141iはプレス成形品101の湾曲部111に含まれる。また、内側フランジ104iは、内側フランジ104iの湾曲部141iの両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部142iを有する。内側フランジ104iの直線部142iは、内側縦壁103iの直線部132iにつながる。内側フランジ104iの直線部142iはプレス成形品101の直線部112に含まれる。
【0034】
外側フランジ104oは、外側縦壁103oの下縁につながる。外側フランジ104oは湾曲部141oを有する。外側フランジ104oの湾曲部141oは、外側縦壁103oの湾曲部131oにつながる。外側フランジ104oの湾曲部141oはプレス成形品101の湾曲部111に含まれる。また、外側フランジ104oは、外側フランジ104oの湾曲部141oの両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部142oを有する。外側フランジ104oの直線部142oは、外側縦壁103oの直線部132oにつながる。外側フランジ104oの直線部142oはプレス成形品101の直線部112に含まれる。
【0035】
図1Cに示すように、天板102と内側縦壁103iとのコーナー部にはフィレットRが形成されていてもよい。このコーナー部は、天板102の側縁121iと内側縦壁103iの上縁とをつなぐ部分である。フィレットRは、コーナー部の横断面に現れる曲率半径を意味する。内側縦壁103iと内側フランジ104iとのコーナー部、天板と外側縦壁103oとのコーナー部、および、外側縦壁103oと外側フランジ104oとのコーナー部でも同様のことが言える。
図1Aでは、簡便のため、フィレットRがない、つまりフィレットRが0(ゼロ)の形状を記載している。また、これ以降の図も、簡便のため、各コーナー部のフィレットRを省いた形状を記載する。
【0036】
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101は、湾曲部111、及びこの湾曲部111の両端それぞれから長手方向に直線状に延びる直線部112から構成される。プレス成形品101の湾曲部111は、天板102の湾曲部121、内側縦壁103iの湾曲部131i、外側縦壁103oの湾曲部131o、内側フランジ104iの湾曲部141i、及び外側フランジ104oの湾曲部141oから構成される。プレス成形品101の直線部112は、天板102の直線部122、内側縦壁103iの直線部132i、外側縦壁103oの直線部132o、内側フランジ104iの直線部142i、及び外側フランジ104oの直線部142oから構成される。ただし、プレス成形品101は、湾曲部111のみで構成されてもよいし、湾曲部111、及び一方の直線部112から構成されてもよい。
【0037】
図2A~
図2Gにプレス成形品101のバリエーションを例示する。
図2A~
図2Gには、プレス成形品101の天板102の平面図が示される。
【0038】
図2A~
図2Dに示す天板102は、1つの湾曲部121のみから構成される。換言すれば、
図2A~
図2Dに示すプレス成形品101は、1つの湾曲部111のみから構成される。
図2Aに示す天板102の場合、平面視において、湾曲部121の側縁121i(121o)は、1つの円弧で構成される。
図2Bに示す天板102の場合、平面視において、湾曲部121の側縁121i(121o)は、相互に曲率半径の大きさが異なる2つの円弧で構成される。2つの円弧同士はなだらかにつながる。
図2Cに示す天板102の場合、平面視において、湾曲部121の側縁121i(121o)は、1つの楕円弧で構成される。
図2Dに示す天板102の場合、平面視において、湾曲部121の側縁121i(121o)は、相互に大きさが異なる2つの楕円弧で構成される。2つの楕円弧同士はなだらかにつながる。平面視において、湾曲部121の側縁121i(121o)は他の曲線(例:スプライン曲線、ベジエ曲線)であってもよい。
【0039】
図2Eに示す天板102は、1つの湾曲部121と、1つの直線部122と、から構成される。換言すれば、
図2Eに示すプレス成形品101は、1つの湾曲部111と、1つの直線部112と、から構成される。
図2Eに示す天板102の場合、湾曲部121の一端に直線部122が設けられている。湾曲部121の側縁121i(121o)は直線部122の側縁となだらかにつながる。
【0040】
図2Fに示す天板102は、1つの湾曲部121と、2つの直線部122と、から構成される。換言すれば、
図2Fに示すプレス成形品101は、1つの湾曲部111と、2つの直線部112と、から構成される。
図2Fに示す天板102の場合、湾曲部121の両端それぞれに直線部122が設けられている。湾曲部121の側縁121i(121o)は各直線部122の側縁となだらかにつながる。
【0041】
図2Gに示す天板102は、2つの湾曲部121と、1つの直線部122と、から構成される。換言すれば、
図2Gに示すプレス成形品101は、2つの湾曲部111と、1つの直線部112と、から構成される。
図2Gに示す天板102の場合、直線部122の両端それぞれに湾曲部121が設けられている。直線部122の側縁は各湾曲部121の側縁121i(121o)となだらかにつながる。
【0042】
このようなプレス成形品101は、しぼり成形や曲げ成形によるプレス加工によって成形される。一般に、プレス加工には、金型として、下パンチ及び上ダイが用いられる。金型として、下パンチ、上ダイ及び上パッドが用いられることもある。このような金型を用いてプレス成形品101を成形するときの状況を以下に説明する。
【0043】
[一般的なプレス加工によるプレス成形品の製造]
図3A~
図3Cは、一般的なプレス加工によってプレス成形品101を成形するときの状況を説明するための図である。これらの図のうち、
図3Aは、プレス成形中のブランク1201に生じる応力を示す平面図である。
図3Bは、プレス成形完了時のプレス成形品101に生じる応力を示す斜視図である。
図3Cは、プレス成形後に金型から取り出されたプレス成形品101に生じる応力を示す斜視図である。
【0044】
図3Aには、ブランク1201が実線で示され、このブランク1201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。また、
図3Aには、プレス成形品101の内側縦壁103i、内側フランジ104i、外側縦壁103o及び外側フランジ104oとなる領域に生じる長手方向の応力が太い実線の矢印で示される。
図3Bには、プレス成形品101の内側縦壁103i及び外側縦壁103oに生じる、成形中の応力が太い実線の矢印で示され、プレス成形品101の内側フランジ104i及び外側フランジ104oに生じる、成形中の応力が細い実線の矢印で示される。
図3Cには、プレス成形品101の内側縦壁103i及び外側縦壁103oに、金型から離型した後にスプリングバックで生じる応力が太い実線の矢印で示され、プレス成形品101の内側フランジ104i及び外側フランジ104oにスプリングバックで生じる応力が細い実線の矢印で示される。各矢印の方向は、応力の作用する方向を表す。
【0045】
図3Aを参照して、プレス成形中のブランク1201において、天板102の湾曲部121の湾曲内方に対応する領域は伸びフランジ変形する。つまり、天板102の湾曲部121の湾曲内方の部分となる領域は伸びフランジ変形する。この領域の周長(長手方向の長さ)がプレス成形中に大きくなるためである。一方、プレス成形中のブランク1201において、天板102の湾曲部121の湾曲外方に対応する領域は縮みフランジ変形する。つまり、天板102の湾曲部121の湾曲外方の部分となる領域は縮みフランジ変形する。この領域の周長(長手方向の長さ)がプレス成形中に小さくなるためである。
【0046】
この場合、プレス成形中のブランク1201において、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iとなる領域には、長手方向に引張応力が生じる。この領域は伸びフランジ変形するためである。一方、プレス成形中のブランク1201において、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oとなる領域には、長手方向に圧縮応力が生じる。この領域は縮みフランジ変形するためである。
【0047】
そうすると、
図3Bに示すように、プレス成形完了時の金型内のプレス成形品101において、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iには、長手方向に引張応力が生じる。この湾曲部131i及び湾曲部141iは、伸びフランジ変形によって成形されて、長手方向の引張応力が生じた状態で、金型によって拘束されているためである。一方、プレス成形完了時の金型内のプレス成形品101において、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oには、長手方向に圧縮応力が生じる。この湾曲部131o及び湾曲部141oは、縮みフランジ変形によって成形されて、長手方向の圧縮応力が生じた状態で、金型によって拘束されているためである。
【0048】
プレス成形後にプレス成形品101を金型から取り出すと、金型による拘束が解かれる。そのため、プレス成形品101にスプリングバックが発生する。つまり、
図3Cに示すように、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iには、プレス成形完了時の引張応力が反転し、圧縮応力が長手方向に生じる。一方、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oには、プレス成形完了時の圧縮応力が反転し、引張応力が長手方向に生じる。
【0049】
要するに、プレス成形品101において、スプリングバックにより、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iに長手方向の圧縮応力が発生し、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oに長手方向の引張応力が発生する。このため、プレス成形品101全体が捩じれる。つまり、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分に生じる長手方向の圧縮応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。また、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分に生じる長手方向の引張応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。
【0050】
図4A~
図4Cは、
図3A~
図3Cに示す状況とは別の観点から、一般的なプレス加工である曲げ加工によってプレス成形品101を成形するときの状況を説明するための図である。これらの図のうち、
図4Aは、プレス成形中のブランク1201に生じる応力を示す横断面図である。
図4Bは、プレス成形後に金型から取り出された際にスプリングバックによりプレス成形品に生じる応力を示す横断面図である。
図4Cは、スプリングバック発生前後のプレス成形品101を示す横断面図である。
【0051】
図4A~
図4Cには、プレス成形品101の湾曲部での横断面が示される。また、
図4Aには、プレス成形品101の内側縦壁103i及び外側縦壁103oとなる領域に生じる応力が実線の矢印で示される。
図4Bには、プレス成形品101の内側縦壁103i及び外側縦壁103oに生じる応力が実線の矢印で示される。
図4Cには、スプリングバック発生前のプレス成形品101が二点鎖線で示され、スプリングバック発生後のプレス成形品101が実線で示される。各矢印の方向は、応力の作用する方向を表す。
【0052】
図4Aを参照して、プレス加工用の金型として、下パンチ1004、上ダイ1008及び上パッド1007が用いられる。この場合、先ず、スライド(図示省略)の下降により、上パッド1007と下パンチ1004との間にブランク1201を挟む。その後、さらなるスライドの下降により、内側縦壁103i及び外側縦壁103oが次第に成形される。その際、内側縦壁103i及び外側縦壁103oは、上ダイ1008のダイ肩1086によって曲げ変形及び曲げ戻し変形する。これにより、内側縦壁103iとなる領域の外面には、短手方向(高さ方向)に引張応力が生じる。一方、内側縦壁103iとなる領域の内面には、短手方向(高さ方向)に圧縮応力が生じる。外側縦壁103oとなる領域でも、内側縦壁103iと同様の現象が起きる。つまり、外側縦壁103oとなる領域の外面には、短手方向(高さ方向)に引張応力が生じる。一方、外側縦壁103oとなる領域の内面には、短手方向(高さ方向)に圧縮応力が生じる。これらの領域において、外面とは、上ダイ1008(特にダイ肩1086)に接する面を意味し、内面とは、下パンチ1004に接する面を意味する。
【0053】
そうすると、プレス成形完了時の金型内のプレス成形品101において、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの外面には、短手方向に引張応力が生じる。各外面に短手方向の引張応力が生じた状態で、内側縦壁103i及び外側縦壁103oは金型によって拘束されているためである。一方、プレス成形完了時の金型内のプレス成形品101において、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの内面には、短手方向に圧縮応力が生じる。各内面に短手方向の圧縮応力が生じた状態で、内側縦壁103i及び外側縦壁103oは金型によって拘束されているためである。
【0054】
プレス成形後にプレス成形品101を金型から取り出すと、金型による拘束が解かれる。そのため、プレス成形品101にスプリングバックが発生する。つまり、
図4Bに示すように、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの外面には、プレス成形完了時の引張応力が反転し、圧縮応力が短手方向に生じる。一方、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの内面には、プレス成形完了時の圧縮応力が反転し、引張応力が短手方向に生じる。
【0055】
要するに、プレス成形品101において、スプリングバックにより、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの外面に短手方向の圧縮応力が発生し、内側縦壁103i及び外側縦壁103oそれぞれの内面に短手方向の引張応力が発生する。このように外面と内面には相互に向きの異なる応力が発生する。この応力差のため、
図4Cに示すように、内側縦壁103i及び外側縦壁103oは、それぞれ外側に向けて反る。つまり、内側縦壁103iの外面に生じる短手方向の圧縮応力と、内側縦壁103iの内面に生じる短手方向の引張応力と、の差によって、プレス成形品101の内側縦壁103iにおける壁反りは発生する。また、外側縦壁103oの外面に生じる短手方向の圧縮応力と、外側縦壁103oの内面に生じる短手方向の引張応力と、の差によって、プレス成形品101の外側縦壁103oにおける壁反りは発生する。
【0056】
図5は、捩じれ及び壁反りが発生したプレス成形品101を示す斜視図である。
図5には、捩じれ及び壁反りが発生していないプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図5を参照して、上述のとおり、一般的なプレス加工によれば、プレス成形品101には、スプリングバックによって捩じれ及び壁反りが発生する。
【0057】
[捩じれ及び壁反りの抑制の検討]
上述のとおり、プレス成形後にプレス成形品101を金型から取り出して金型による拘束が解かれたとき、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分に生じる長手方向の圧縮応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。つまり、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iに生じる長手方向の圧縮応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。また、プレス成形後にプレス成形品101を金型から取り出して金型による拘束が解かれたとき、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分に生じる長手方向の引張応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。つまり、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oに生じる長手方向の引張応力によって、プレス成形品101の捩じれは発生する。
【0058】
また、プレス成形後にプレス成形品101を金型から取り出して金型による拘束が解かれたとき、内側縦壁103iの外面に生じる短手方向の圧縮応力と、内側縦壁103iの内面に生じる短手方向の引張応力と、の差によって、プレス成形品101の壁反りは発生する。また、外側縦壁103oの外面に生じる短手方向の圧縮応力と、外側縦壁103oの内面に生じる短手方向の引張応力と、の差によって、プレス成形品101の壁反りは発生する。
【0059】
したがって、プレス成形品101の捩じれを抑制するには、プレス成形品101の成形完了時に、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分に生じる長手方向の引張応力を低減できればよい。プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分は、内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141iである。また、プレス成形品101の捩じれを抑制するには、プレス成形品101の成形完了時に、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分に生じる長手方向の圧縮応力を低減できればよい。プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分は、外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141oである。プレス成形品101の捩じれをより抑制するには、これらの引張応力及び圧縮応力の両方を低減できればよい。
【0060】
プレス成形品101の内側縦壁103iにおける壁反りを抑制するには、プレス成形品101の成形完了時に、内側縦壁103iの外面に生じる短手方向の引張応力と、内側縦壁103iの内面に生じる短手方向の圧縮応力と、の差を低減できればよい。また、プレス成形品101の外側縦壁103oにおける壁反りを抑制するには、プレス成形品101の成形完了時に、外側縦壁103oの外面に生じる短手方向の引張応力と、外側縦壁103oの内面に生じる短手方向の圧縮応力と、の差を低減できればよい。
【0061】
このように、本発明者らは、プレス成形品101を製造するときの捩じれ及び壁反りの発生メカニズムを究明し、プレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制するための方向性を見出した。そして、本発明者らは、その方向性に適合するプレス装置、及びプレス成形品101の製造方法を検討した。鋭意検討の結果、下記の知見が得られた。
【0062】
一般的なプレス成形中のブランク1201において、内側縦壁103i及び内側フランジ104iとなる領域は、天板102となる領域に向かって単に引き込まれる。これと同様に、外側縦壁103o及び外側フランジ104oとなる領域は、天板102となる領域に向かって単に引き込まれる。
【0063】
伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)については、プレス成形中にその部分となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力を付与し、その張力を付与しながらプレス成形品101の成形を完了すれば、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では引張応力と圧縮応力との差を低減できる。プレス成形中、張力の付与により、長手方向の分力として長手方向に圧縮応力が付与され、その結果として、伸びフランジ変形に伴う長手方向の引張応力が緩和されるためである。張力の付与を実現するために、プレス成形中、内側フランジ104iの湾曲部141iのさらに湾曲内方に、最終製品とならない余剰の内側谷部を成形する。この内側谷部は、天板102の湾曲部121の湾曲内方の側縁121iに沿うように形成される。
【0064】
ただし、プレス成形完了後にも内側谷部が存在すれば、内側谷部に捩じれが発生する。内側谷部は、小サイズのプレス成形品101に相当するためである。この場合、内側谷部の捩じれに伴って、製品となるプレス成形品101に捩じれが発生し得る。そのため、プレス成形品101を少なくとも金型から取り出す前に、内側谷部を含む領域をプレス成形品101から除去する。
【0065】
このようにすれば、金型内に収まった状態のプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)において、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。これにより、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分において、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0066】
また、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)については、プレス成形中にその部分となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力を付与し、その張力を付与しながらプレス成形品101の成形を完了すれば、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では引張応力と圧縮応力との差を低減できる。プレス成形中、張力の付与により、長手方向の分力として長手方向に引張応力が付与され、その結果として、縮みフランジ変形に伴う長手方向の圧縮応力が緩和されるためである。張力の付与を実現するために、プレス成形中、外側フランジ104oの湾曲部141oのさらに湾曲外方に、最終製品とならない余剰の外側谷部を成形する。この外側谷部は、天板102の湾曲部121の湾曲外方の側縁121oに沿うように形成される。
【0067】
ただし、プレス成形完了後にも外側谷部が存在すれば、外側谷部に捩じれが発生する。外側谷部は、小サイズのプレス成形品101に相当するためである。この場合、外側谷部の捩じれに伴って、製品となるプレス成形品101に捩じれが発生し得る。そのため、プレス成形品101を少なくとも金型から取り出す前に、外側谷部を含む領域をプレス成形品101から除去する。
【0068】
このようにすれば、金型内に収まった状態のプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)において、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。これにより、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分において、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0069】
もっとも、プレス成形中に内側谷部及び外側谷部の両方を成形し、プレス成形品101を少なくとも金型から取り出す前に内側凹部及び外側凹部の両方をプレス成形品101から除去すれば、プレス成形品101の捩じれ及び壁反りをより抑制できる。
【0070】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0071】
本発明の1つの実施形態によるプレス装置は、ベッドと、スライドと、下パンチと、下クッションと、内側下治具と、上パッドと、上ダイと、を備える。スライドは、ベッドに対して昇降可能である。下パンチは、細長い頂面、内側側面、外側側面、内側底面、及び外側底面を有する。頂面は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側底面は、内側側面の下縁につながる。外側底面は、外側側面の下縁につながる。下クッションは、下パンチを支持し、ベッドに固定される。
【0072】
内側下治具は、下パンチの内側底面に隣接するように配置され、ベッドに固定される。内側下治具は、内側下治具の上面のうち下パンチの内側底面に隣接する縁に内側下刃を有する。内側下治具は、上面に湾曲部の湾曲内方の側縁に沿うように形成された内側溝を有する。上パッドは、下パンチの頂面と対向するように配置される。上パッドは、弾性部材を介してスライドに支持される。
【0073】
上ダイは、スライドに固定される。上ダイは、内側壁面、外側壁面、内側下面、外側下面、及び内側凹部を有する。内側壁面は、下パンチの内側側面に対応する。外側壁面は、下パンチの外側側面に対応する。内側下面は、下パンチの内側底面に対向する。外側下面は、下パンチの外側底面に対向する。内側凹部は、内側下面に隣接する。上ダイは、内側下面のうち内側凹部に隣接する縁に内側上刃を有する。上ダイは、内側凹部の底面のうち内側溝と対向する位置に内側下面よりも突出する内側凸条を有する(第1の構成)。
【0074】
第1の構成のプレス装置によれば、スライドの下降によりプレス成形が行われる。プレス成形中、下パンチ、上ダイ及び上パッドによって、プレス成形品101が成形されるとともに、上ダイの内側凸条と内側下治具の内側溝によって、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲内方に、最終製品とならない余剰の内側谷部が成形される。そして、上ダイの内側上刃と内側下治具の内側下刃によって、プレス成形品101と内側谷部を含む領域との境界が切断される。これにより、プレス成形品101から内側谷部を含む領域が除去される。
【0075】
プレス成形中、内側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。この場合、張力の付与により、長手方向の分力として長手方向に圧縮応力が付与され、その結果として、伸びフランジ変形に伴う長手方向の引張応力が緩和される。このため、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。さらに、プレス成形の過程で内側谷部は除去される。このような張力の付与及び内側谷部の除去により、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)において、スプリングバックによって生じる長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0076】
本発明の他の実施形態によるプレス装置は、ベッドと、スライドと、下パンチと、下クッションと、外側下治具と、上パッドと、上ダイと、を備える。スライドは、ベッドに対して昇降可能である。下パンチは、細長い頂面、内側側面、外側側面、内側底面、及び外側底面を有する。頂面は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側側面は、頂面の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側底面は、内側側面の下縁につながる。外側底面は、外側側面の下縁につながる。下クッションは、下パンチを支持し、ベッドに固定される。
【0077】
外側下治具は、下パンチの外側底面に隣接するように配置され、ベッドに固定される。外側下治具は、外側下治具の上面のうち下パンチの外側底面に隣接する縁に外側下刃を有する。外側下治具は、上面に湾曲部の湾曲外方の側縁に沿うように形成された外側溝を有する。上パッドは、下パンチの頂面と対向するように配置される。上パッドは、弾性部材を介してスライドに支持される。
【0078】
上ダイは、スライドに固定される。上ダイは、内側壁面、外側壁面、内側下面、外側下面、及び外側凹部を有する。内側壁面は、下パンチの内側側面に対応する。外側壁面は、下パンチの外側側面に対応する。内側下面は、下パンチの内側底面に対向する。外側下面は、下パンチの外側底面に対向する。外側凹部は、外側下面に隣接する。上ダイは、外側下面のうち外側凹部に隣接する縁に外側上刃を有する。上ダイは、外側凹部の底面のうち外側溝と対向する位置に外側下面よりも突出する外側凸条を有する(第2の構成)。
【0079】
第2の構成のプレス装置によれば、スライドの下降によりプレス成形が行われる。プレス成形中、下パンチ、上ダイ及び上パッドによって、プレス成形品101が成形されるとともに、上ダイの外側凸条と外側下治具の外側溝によって、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲外方に、最終製品とならない余剰の外側谷部が成形される。そして、上ダイの外側上刃と外側下治具の外側下刃によって、プレス成形品101と外側谷部を含む領域との境界が切断される。これにより、プレス成形品101から外側谷部を含む領域が除去される。
【0080】
プレス成形中、外側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。この場合、張力の付与により、長手方向の分力として長手方向に引張応力が付与され、その結果として、縮みフランジ変形に伴う長手方向の圧縮応力が緩和される。このため、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。さらに、プレス成形の過程で外側谷部は除去される。このような張力の付与及び内側谷部の除去により、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)において、スプリングバックによって生じる長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0081】
第1の構成のプレス装置に第2の構成のプレス装置を組み合わせてもよい。この場合、第1の構成のプレス装置は、さらに、外側下治具を備える。外側下治具は、下パンチの外側底面に隣接するように配置され、ベッドに固定される。外側下治具は、外側下治具の上面のうち下パンチの外側底面に隣接する縁に外側下刃を有する。外側下治具は、上面に湾曲部の湾曲外方の側縁に沿うように形成された外側溝を有する。上ダイは、さらに、外側凹部を有する。外側凹部は、外側下面に隣接する。上ダイは、外側下面のうち外側凹部に隣接する縁に外側上刃を有する。上ダイは、外側凹部の底面のうち外側溝と対向する位置に外側下面よりも突出する外側凸条を有する(第3の構成)。
【0082】
第3の構成のプレス装置は、第1の構成と第2の構成を組み合わせたプレス装置である。このため、第3の構成のプレス装置によれば、プレス成形中に内側谷部及び外側谷部の両方が成形され、さらにプレス成形の過程で内側谷部及び外側谷部の両方が除去される。したがって、第1の構成のプレス装置による効果と第2の構成のプレス装置による効果が相乗して発現し、より効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0083】
なお、上記の下パンチにおいて、内側側面は、頂面に直接つながってもよいし、コーナー部を介して頂面につながってもよい。外側側面は、頂面に直接つながってもよいし、コーナー部を介して頂面につながってもよい。内側底面は、内側側面に直接つながってもよいし、コーナー部を介して内側側面につながってもよい。外側底面は、外側側面に直接つながってもよいし、コーナー部を介して外側側面につながってもよい。
【0084】
第1又は第3の構成のプレス装置において、内側凸条の内側下面からの突出量は5mm以上であることが好ましい(第4の構成)。
【0085】
内側凸条の突出量が5mm以上であれば、上ダイの内側凸条と内側下治具の内側溝によって内側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)となる領域に、張力がより有効に付与される。内側凸条の突出量は、より好ましくは9mm以上である。内側凸条の突出量の上限は特に限定されない。ただし、内側凸条の突出量が20mm以上になれば、捩じれ及び壁反りの抑制効果が飽和する。このため、内側凸条の突出量の好ましい上限は20mmである。
【0086】
第1、第3及び第4の構成のいずれか1つのプレス装置において、内側凸条の幅は、内側凸条の高さの0.8倍以上であることが好ましい(第5の構成)。
【0087】
内側凸条の幅が内側凸条の高さの0.8倍以上であれば、内側凸条そのものの強度をより十分に確保できる。この場合、内側凸条の変形や欠け等を抑制できる。内側凸条の幅は、より好ましくは内側凸条の高さの1.2倍以上である。内側凸条の幅の上限は特に限定されない。ただし、内側凸条の幅が内側凸条の高さの2.0倍を超えれば、内側凸条の強度に変化はなく、むしろ材料歩留りが悪化する。このため、内側凸条の幅が内側凸条の高さの2.0倍以下であることが好ましい。
【0088】
第1、第3、第4及び第5の構成のいずれか1つのプレス装置において、内側下刃は、湾曲部の湾曲内方の側縁に対応する長手方向の範囲において、当該範囲の両端よりも当該範囲の中央が低くなるように傾斜することが好ましい(第6の構成)。
【0089】
この内側下刃の傾斜は、いわゆるシャー角である。この場合、上ダイの内側上刃と内側下治具の内側下刃によって、プレス成形品101から内側谷部を含む領域を除去する際、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の側縁(内側フランジ104iの湾曲部141iの側縁)は、同時に切断されるのではなくて、当該側縁の両端それぞれから当該側縁の中央に向けて徐々に切断される。このため、切断に要するプレス荷重が小さくて済む。また、切断時に、長手方向に圧縮応力が付与される。このため、プレス成形中や成形完了時の長手方向の引張応力がより緩和される。その結果、プレス成形中や成形完了時の長手方向の引張応力をより低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差をより低減できる。
【0090】
第2又は第3の構成のプレス装置において、外側凸条の外側下面からの突出量は5mm以上であることが好ましい(第7の構成)。
【0091】
外側凸条の突出量が5mm以上であれば、上ダイの外側凸条と外側下治具の外側溝によって外側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)となる領域に、張力がより有効に付与される。外側凸条の突出量は、より好ましくは9mm以上である。外側凸条の突出量の上限は特に限定されない。ただし、外側凸条の突出量が20mm以上になれば、捩じれ及び壁反りの抑制効果が飽和する。このため、外側凸条の突出量の好ましい上限は20mmである。
【0092】
第2、第3及び第7の構成のいずれか1つのプレス装置において、外側凸条の幅は、外側凸条の高さの0.8倍以上であることが好ましい(第8の構成)。
【0093】
外側凸条の幅が外側凸条の高さの0.8倍以上であれば、外側凸条そのものの強度をより十分に確保できる。この場合、外側凸条の変形や欠け等を抑制できる。外側凸条の幅は、より好ましくは外側凸条の高さの1.2倍以上である。外側凸条の幅の上限は特に限定されない。ただし、外側凸条の幅が外側凸条の高さの2.0倍を超えれば、外側凸条の強度に変化はなく、むしろ材料歩留りが悪化する。このため、外側凸条の幅が外側凸条の高さの2.0倍以下であることが好ましい。
【0094】
第2、第3、第7及び第8の構成のいずれか1つのプレス装置において、外側下刃は、湾曲部の湾曲外方の側縁に対応する長手方向の範囲において、当該範囲の両端よりも当該範囲の中央が高くなるように傾斜することが好ましい(第9の構成)。
【0095】
この外側下刃の傾斜は、いわゆるシャー角である。この場合、上ダイの外側上刃と外側下治具の外側下刃によって、プレス成形品101から外側谷部を含む領域を除去する際、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の側縁(外側フランジ104oの湾曲部141oの側縁)は、同時に切断されるのではなくて、当該側縁の中央から当該側縁の両端それぞれに向けて徐々に切断される。このため、切断に要するプレス荷重が小さくて済む。また、切断時に、長手方向に引張応力が付与される。このため、プレス成形中や成形完了時の長手方向の圧縮応力がより緩和される。その結果、プレス成形中や成形完了時の長手方向の圧縮応力をより低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差をより低減できる。
【0096】
本発明の1つの実施形態によるプレス成形品の製造方法は、第1、第3、第4、第5及び第6の構成のいずれか1つのプレス装置を用いた製造方法である。当該製造方法によって製造されるプレス成形品は、細長い天板、内側縦壁、外側縦壁、内側フランジ、及び外側フランジを有する。天板は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側フランジは、内側縦壁の下縁につながる。外側フランジは、外側縦壁の下縁につながる。
【0097】
当該製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。工程(a)では、金属板からなるブランクを準備する。ブランクは、上ダイの内側凸条の設置領域を越える大きさを有する。工程(b)では、ブランクを下パンチの頂面上に載置する。工程(c)では、スライドを下降して、上パッドと下パンチの頂面との間にブランクを挟む。工程(d)では、スライドをさらに下降して、上ダイと下パンチによってブランクをプレスするとともに、内側凸条と内側溝によってブランクをプレスする。工程(e)では、スライドをさらに下降して、内側上刃と内側下刃によってブランクを切断する(第10の構成)。
【0098】
第10の構成の製造方法では、第1の構成のプレス装置を用いてプレス成形品101が製造される。このため、第10の構成の製造方法によれば、工程(d)において、下パンチ、上ダイ及び上パッドによって、プレス成形品101が成形されるとともに、上ダイの内側凸条と内側下治具の内側溝によって、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲内方に、最終製品とならない余剰の内側谷部が成形される。内側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。さらに、工程(e)において、上ダイの内側上刃と内側下治具の内側下刃によって、プレス成形品101と内側谷部を含む領域との境界が切断される。これにより、プレス成形品101から内側谷部を含む領域が除去される。
【0099】
したがって、第10の構成の製造方法によれば、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)において、スプリングバックによって生じる長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0100】
本発明の他の実施形態によるプレス成形品の製造方法は、第2、第3、第7、第8及び第9の構成のいずれか1つのプレス装置を用いた製造方法である。当該製造方法によって製造されるプレス成形品は、細長い天板、内側縦壁、外側縦壁、内側フランジ、及び外側フランジを有する。天板は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側フランジは、内側縦壁の下縁につながる。外側フランジは、外側縦壁の下縁につながる。
【0101】
当該製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。工程(a)では、金属板からなるブランクを準備する。ブランクは、上ダイの外側凸条の設置領域を越える大きさを有する。工程(b)では、ブランクを下パンチの頂面上に載置する。工程(c)では、スライドを下降して、上パッドと下パンチの頂面との間にブランクを挟む。工程(d)では、スライドをさらに下降して、上ダイと下パンチによってブランクをプレスするとともに、外側凸条と外側溝によってブランクをプレスする。工程(e)では、スライドをさらに下降して、外側上刃と外側下刃によってブランクを切断する(第11の構成)。
【0102】
第11の構成の製造方法では、第1の構成のプレス装置を用いてプレス成形品101が製造される。このため、第11の構成の製造方法によれば、工程(d)において、下パンチ、上ダイ及び上パッドによって、プレス成形品101が成形されるとともに、上ダイの外側凸条と外側下治具の外側溝によって、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲外方に、最終製品とならない余剰の外側谷部が成形される。外側谷部が成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。さらに、工程(e)において、上ダイの外側上刃と外側下治具の外側下刃によって、プレス成形品101と外側谷部を含む領域との境界が切断される。これにより、プレス成形品101から外側谷部を含む領域が除去される。
【0103】
したがって、第11の構成の製造方法によれば、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)において、スプリングバックによって生じる長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0104】
第10の構成の製造方法に第11の構成の製造方法を組み合わせてもよい。この場合の製造方法は、第3の構成、並びに第3の構成を含む第4~第9の構成のいずれか1つのプレス装置を用いた製造方法である。当該製造方法によって製造されるプレス成形品は、細長い天板、内側縦壁、外側縦壁、内側フランジ、及び外側フランジを有する。天板は、面内で湾曲する湾曲部を有する。内側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。外側縦壁は、天板の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。内側フランジは、内側縦壁の下縁につながる。外側フランジは、外側縦壁の下縁につながる。
【0105】
当該製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。工程(a)では、金属板からなるブランクを準備する。ブランクは、上ダイの内側凸条の設置領域を越え、かつ上ダイの外側凸条の設置領域を越える大きさを有する。工程(b)では、ブランクを下パンチの頂面上に載置する。工程(c)では、スライドを下降して、上パッドと下パンチの頂面との間にブランクを挟む。工程(d)では、スライドをさらに下降して、上ダイと下パンチによってブランクをプレスするとともに、内側凸条と内側溝によってブランクをプレスし、かつ外側凸条と外側溝によってブランクをプレスする。工程(e)では、スライドをさらに下降して、内側上刃と内側下刃によってブランクを切断し、かつ外側上刃と外側下刃によってブランクを切断する(第12の構成)。
【0106】
第12の構成の製造方法では、第3の構成のプレス装置を用いてプレス成形品101が製造される。つまり、第12の構成の製造方法は、第10の構成と第11の構成を組み合わせた製造方法である。したがって、第12の構成の製造方法によれば、第10の構成の製法方法による効果と第11の構成の製造方法による効果が相乗して発現し、より効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0107】
第10の構成又は第12の構成の製造方法では、工程(a)で準備するブランクにおいて、上ダイの内側凸条の設置領域の少なくとも長手方向の中央部に対応する第1領域が内側凸条の設置領域を越え、第1領域の両端から外側にある領域が切り欠かれていることが好ましい(第13の構成)。
【0108】
この場合、ブランクにおいて、第1領域に隣接する切欠きの領域に内側谷部が形成されない。つまり、切欠きの領域は張力をもたらさない。このため、内側谷部の成形過程で付与される張力の方向が、短手方向から傾く。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力が大きくなり、長手方向の圧縮応力として付与される。その結果、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力がより緩和される。
【0109】
第11の構成又は第12の構成の製造方法では、工程(a)で準備するブランクにおいて、上ダイの外側凸条の設置領域の少なくとも長手方向の両端部それぞれに対応する第2領域が外側凸条の設置領域を越え、第2領域同士の内側にある領域が切り欠かれていることが好ましい(第14の構成)。
【0110】
この場合、ブランクにおいて、第2領域に隣接する切欠きの領域に外側谷部が形成されない。つまり、切欠きの領域は張力をもたらさない。このため、外側谷部の成形過程で付与される張力の方向が、短手方向から傾く。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力が大きくなり、長手方向の引張応力として付与される。その結果、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力がより緩和される。
【0111】
第13の構成の製造方法に第14の構成の製造方法を組み合わせてもよい。この場合の製造方法は、第12の構成の製造方法に準ずる。具体的には、工程(a)で準備するブランクにおいて、上ダイの内側凸条の設置領域の少なくとも長手方向の中央部に対応する第1領域が内側凸条の設置領域を越え、第1領域の両端から外側にある領域が切り欠かれている。さらに、工程(a)で準備するブランクにおいて、上ダイの外側凸条の設置領域の少なくとも長手方向の両端部それぞれに対応する第2領域が外側凸条の設置領域を越え、第2領域同士の内側にある領域が切り欠かれている(第15の構成)。
【0112】
第15の構成の製造方法は、第13の構成と第14の構成を組み合わせた製造方法である。したがって、第15の構成の製造方法によれば、第13の構成の製法方法による効果と第14の構成の製造方法による効果が相乗して発現し、より効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0113】
以下に、図面を参照しながら、本実施形態のプレス装置、及びプレス成形品の製造方法について、その具体例を説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0114】
[第1実施形態]
[プレス装置の構成]
図6は、第1実施形態のプレス装置1の一例を示す横断面図である。
図7は、
図6に示されるプレス装置が備える金型セットの斜視図である。
図6及び
図7に示すプレス装置1は、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101の製造に用いられる。
図6には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
図6の右側がプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方に対応し、
図6の左側がプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方に対応する。
【0115】
図6、
図7、
図1A及び
図1Bを参照して、第1実施形態のプレス装置1は、ベッド2と、スライド3と、下パンチ4と、下クッション5と、内側下治具6iと、外側下治具6oと、上パッド7と、上ダイ8と、を備える。スライド3は、固定のベッド2の上方に配置される。スライド3は、ベッド2に対して昇降可能である。下パンチ4、内側下治具6i及び外側下治具6oがプレス成形用の下型セットを構成し、上パッド7及び上ダイ8がプレス成形用の上型セットを構成する。
【0116】
図6及び
図7に示すプレス装置1では、ベッド2の上面に下型ホルダ10が固定され、スライド3の下面に上型ホルダ11が固定される。下型セットは下型ホルダ10に保持される。上型セットは上型ホルダ11に保持される。
【0117】
[下型セット]
下パンチ4は、頂面41、内側側面42i、外側側面42o、内側底面43i、及び外側底面43oを有する。頂面41は細長くて平坦であり、湾曲部を有する。頂面41の湾曲部は、頂面41の平坦な面内で湾曲する部分である。なお、頂面41は厳密な平坦面でなくてもよい。つまり、頂面41に、多少の凹凸があってもよい。頂面41の形状は、プレス成形品101の天板102の形状を反映される。例えば、プレス成形品101の天板102が、湾曲部121、及びこの湾曲部121の両端それぞれにつながる直線部122から構成される場合、頂面41は、湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む。
【0118】
内側側面42iは、頂面41の両側縁のうちの湾曲部の湾曲内方の側縁につながる。内側側面42iの形状は、プレス成形品101の内側縦壁103iの形状を反映される。外側側面42oは、頂面41の両側縁のうちの湾曲部の湾曲外方の側縁につながる。外側側面42oの形状は、プレス成形品101の外側縦壁103oの形状を反映される。例えば、プレス成形品101の内側縦壁103iが、湾曲部131i、及びこの湾曲部131iの両端それぞれにつながる直線部132iから構成される場合、内側側面42iは、湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む。プレス成形品101の外側縦壁103oが、湾曲部131o、及びこの湾曲部131oの両端それぞれにつながる直線部132oから構成される場合、外側側面42oは、湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む。
【0119】
内側底面43iは、内側側面42iの下縁につながる。内側底面43iの形状は、プレス成形品101の内側フランジ104iの形状を反映される。外側底面43oは、外側側面42oの下縁につながる。外側底面43oの形状は、プレス成形品101の外側フランジ104oの形状を反映される。例えば、プレス成形品101の内側フランジ104iが、湾曲部141i、及びこの湾曲部141iの両端それぞれにつながる直線部142iから構成される場合、内側底面43iは、湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む。プレス成形品101の外側フランジ104oが、湾曲部141o、及びこの湾曲部141oの両端それぞれにつながる直線部142oから構成される場合、外側底面43oは、湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む。
【0120】
下クッション5は、クッションピン51を介して下パンチ4を支持する。下クッション5は、ベッド2に固定される。下クッション5は、例えば、油圧シリンダである。下クッション5によって、下パンチ4は高い荷重で浮上した状態で支持される。下パンチ4に上方から下クッション5より下パンチ4に加えられた以上の大きな荷重が加われば、下パンチ4は下方に移動可能である。
【0121】
内側下治具6iは、下パンチ4の内側底面43iに隣接するように配置される。内側下治具6iは、ベッド2に固定される。なお、
図6及び
図7に示すプレス装置1では、内側下治具6iは、下型ホルダ10に固定される。内側下治具6iは、下パンチ4の内側底面43iに隣接する自身の縁に内側下刃61iを有する。
【0122】
内側下治具6iは、自身の上面に内側溝62iを有する。内側溝62iは、頂面41の湾曲部の湾曲内方の側縁に沿うように形成されている。別の観点では、内側溝62iは、頂面41の湾曲部の湾曲内方の側縁と平行に形成されている。ここで言う平行とは、完全なる平行のみならず、完全なる平行から僅かにずれることも許容する。つまり、内側溝62iは、頂面41の湾曲部と同様に平面視で湾曲している。頂面41が湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む場合、内側溝62iは頂面41の直線部に対応する領域まで延びている。内側溝62iの横断面形状は、台形である。ここでいう台形は、内側溝62iがプレス成形時に負角にならないような台形を意味する。つまり、内側溝62iを横断面で見たとき、上側の幅は底側の幅より広い。ただし、内側溝62iの横断面形状は、台形に限定されず、矩形や半円形等であってもよい。また、割れを防止するため、台形、矩形、半円形の各コーナー部には適切なフィレットRが取られていてもよい。さらに、内側溝62iの深さはプレスの成形下死点にて、内側凸条85iと干渉しないような深さを有する必要がある。典型的な例では、内側溝62iの深さは内側凸条85iの高さよりも大きい。
【0123】
内側下治具6iの上面の高さ位置は、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置と一致している。ただし、内側下治具6iの上面の高さ位置は、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置よりも多少低くて構わない。
【0124】
外側下治具6oは、下パンチ4の外側底面43oに隣接するように配置される。外側下治具6oは、ベッド2に固定される。なお、
図6及び
図7に示すプレス装置1では、外側下治具6oは、下型ホルダ10に固定される。外側下治具6oは、下パンチ4の外側底面43oに隣接する自身の縁に外側下刃61oを有する。
【0125】
外側下治具6oは、自身の上面に外側溝62oを有する。外側溝62oは、頂面41の湾曲部の湾曲外方の側縁に沿うように形成されている。別の観点では、外側溝62oは、頂面41の湾曲部の湾曲外方の側縁と平行に形成されている。ここで言う平行とは、完全なる平行のみならず、完全なる平行から僅かにずれることも許容する。つまり、外側溝62oは、頂面41の湾曲部と同様に平面視で湾曲している。頂面41が湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む場合、外側溝62oは頂面41の直線部に対応する領域まで延びている。外側溝62oの横断面形状は、台形である。ここでいう台形は、外側溝62oがプレス成形時に負角にならないような台形を意味する。つまり、外側溝62oを横断面で見たとき、上側の幅は底側の幅より広い。ただし、外側溝62oの横断面形状は、台形に限定されず、矩形や半円形等であってもよい。また、割れを防止するため、台形、矩形、半円形の各コーナー部には適切なフィレットRが取られていてもよい。さらに、外側溝62oの深さはプレスの成形下死点にて、外側凸条85oと干渉しないような深さを有する必要がある。典型的な例では、外側溝62oの深さは外側凸条85oの高さよりも大きい。
【0126】
外側下治具6oの上面の高さ位置は、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置と一致している。ただし、外側下治具6oの上面の高さ位置は、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置よりも多少低くて構わない。
【0127】
図6及び
図7に示すプレス装置1では、下パンチ4と下型ホルダ10との間に底付き用部材が設けられる。底付き用部材は、下パンチ4の下面に取り付けられた底付き上板12と、下型ホルダ10の上面に取り付けられた底付き下板13と、から構成される。底付き上板12は底付き下板13に対向する。底付き上板12の下面が底付き下板13の上面に接触することにより、下パンチ4の下降が制限される。
【0128】
[上型セット]
上パッド7は、下パンチ4の頂面41と対向するように配置される。上パッド7の下面の形状は、プレス成形品101の天板102の形状を反映される。上パッド7は、弾性部材71を介してスライド3に支持される。なお、
図6及び
図7に示すプレス装置1では、弾性部材71は、上型ホルダ11に固定される。
【0129】
弾性部材71は、例えば、バネ及びガスシリンダである。上パッド7に下方から荷重が加われば、弾性部材71が縮むことで上パッド7は上ダイ8に対して上方に移動可能である。また、ブランク201が下パンチ4と上ダイ8で挟持されて内側縦壁103i、外側縦壁103o、内側底面43i、外側底面43oが成形された後に、内側上刃84iと内側下刃61i、または、外側上刃84oと外側下刃61oでブランク201が切断されるためには、弾性部材71を介した上パッド7のみの荷重で下パンチ4が下方に動いてはならない。そのためには、弾性部材71によって、上パッド7は下クッション5よりも小さな荷重で支持される必要がある。
【0130】
上ダイ8は、スライド3に固定される。なお、
図6及び
図7に示すプレス装置1では、上ダイ8は、上型ホルダ11に固定される。上ダイ8は、内側壁面81i、外側壁面81o、内側下面82i、外側下面82o、内側凹部83i、及び外側凹部83oを有する。
【0131】
内側壁面81iは、下パンチ4の内側側面42iに対応する。内側壁面81iの形状は、プレス成形品101の内側縦壁103iの形状を反映される。外側壁面81oは、下パンチ4の外側側面42oに対応する。外側底面43oの形状は、プレス成形品101の外側縦壁103oの形状を反映される。
【0132】
内側下面82iは、下パンチ4の内側底面43iに対向する。内側下面82iの形状は、プレス成形品101の内側フランジ104iの形状を反映される。外側下面82oは、下パンチ4の外側底面43oに対向する。外側下面82oの形状は、プレス成形品101の外側フランジ104oの形状を反映される。
【0133】
内側凹部83iは、内側下面82iに隣接する。内側凹部83iは、内側下治具6iの上方に配置される。外側凹部83oは、外側下面82oに隣接する。外側凹部83oは、外側下治具6oの上方に配置される。
【0134】
内側壁面81iと内側下面82iとの境界部が内側ダイ肩86iである。外側壁面81oと外側下面82oとの境界部が外側ダイ肩86oである。
【0135】
また、上ダイ8は、内側下面82iのうち内側凹部83iに隣接する縁に内側上刃84iを有する。内側上刃84iは、内側下治具6iの内側下刃61iと対になる。
【0136】
さらに、上ダイ8は、内側凹部83iのうち内側溝62iと対向する位置に内側凸条85iを有する。内側凸条85iは、内側下面82iよりも突出する。つまり、内側凸条85iは下方に突出する。内側凸条85iは、内側下治具6iの内側溝62iと対になる。このため、内側凸条85iは、内側溝62iと同様に平面視で湾曲している。頂面41が湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む場合、内側凸条85iは頂面41の直線部に対応する領域まで延びている。内側凸条85iの横断面形状は、内側溝62iの横断面形状に対応して台形である。ただし、内側凸条85iの横断面形状は、内側溝62iの横断面形状に対応する限り、矩形や半円形等であってもよい。また、割れを防止するため、台形、矩形、半円形の各コーナー部には適切なフィレットRが取られていてもよい。
【0137】
内側凸条85iの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置と同じか、または、上パッド7の下面の初期高さ位置よりも高くすることが好ましい。上パッド7で頂面41を押さえる前に、内側凸条85iがブランク201に接触しないようにするためである。上パッド7で頂面41を押さえる前に、内側凸条85iがブランク201に接触すると、ブランク201が製品幅方向に動いて所定の寸法の製品を得ることが難しくなる。また、内側凸条85iの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置よりもあまりに高いと、上パッド7に接続されている弾性部材71を長く取る必要があり、金型コストが増大する。このため、内側凸条85iの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置よりも最大で20mm高い位置が望ましい。もっとも、上パッド7の下面の初期高さ位置は、上ダイ8の内側下面82iの初期高さ位置よりも低い。
【0138】
また、上ダイ8は、外側下面82oのうち外側凹部83oに隣接する縁に外側上刃84oを有する。外側上刃84oは、外側下治具6oの外側下刃61oと対になる。
【0139】
さらに、上ダイ8は、外側凹部83oのうち外側溝62oと対向する位置に外側凸条85oを有する。外側凸条85oは、外側下面82oよりも突出する。つまり、外側凸条85oは下方に突出する。外側凸条85oは、外側下治具6oの外側溝62oと対になる。このため、外側凸条85oは、外側溝62oと同様に平面視で湾曲している。頂面41が湾曲部、及びこの湾曲部の両端それぞれにつながる直線部を含む場合、外側凸条85oは頂面41の直線部に対応する領域まで延びている。外側凸条85oの横断面形状は、外側溝62oの横断面形状に対応して台形である。ただし、外側凸条85oの横断面形状は、外側溝62oの横断面形状に対応する限り、矩形や半円形等であってもよい。また、割れを防止するため、台形、矩形、半円形の各コーナー部には適切なフィレットRが取られていてもよい。
【0140】
外側凸条85oの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置と同じか、または、上パッド7の下面の初期高さ位置よりも高くすることが好ましい。上パッド7で頂面41を押さえる前に、外側凸条85oがブランク201に接触しないようにするためである。上パッド7で頂面41を押さえる前に、外側凸条85oがブランク201に接触すると、ブランク201が製品幅方向に動いて所定の寸法の製品を得ることが難しくなる。また、外側凸条85oの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置よりもあまりに高いと、上パッド7に接続されている弾性部材71を長く取る必要があり、金型コストが増大する。このため、外側凸条85oの下面の初期高さ位置は、上パッド7の下面の初期高さ位置よりも最大で20mm高い位置が望ましい。もっとも、上パッド7の下面の初期高さ位置は、上ダイ8の外側下面82oの初期高さ位置よりも低い。
【0141】
[プレス成形品101の製造方法]
本実施形態によるプレス成形品101の製造方法は、
図6及び
図7に示すプレス装置1を用いて、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101を製造する方法である。本実施形態によるプレス成形品101の製造方法は、工程(a)~工程(e)を備える。以下、
図8A~
図8F、
図9及び
図10を参照しながら、各工程について説明する。
【0142】
図8A~
図8Fは、第1実施形態のプレス装置1を用いたプレス成形品101の製造方法を説明するための図である。
図8A~
図8Fに示す順に、製造ステップが進む。
図8A~
図8Fには、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
【0143】
図9は、第1実施形態のプレス装置1を用いたプレス成形品101の製造方法に適用されるブランク201を示す平面図である。
図9には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図9には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図9中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図9には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域、並びに外側溝62o及び外側凸条85oの設置領域が点線で示される。
【0144】
図10は、第1実施形態のプレス装置1を用いた製造方法によってプレス成形品101を成形するときの状況を説明するための平面図である。
図10には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。また、
図10には、プレス成形品101の内側縦壁103i、内側フランジ104i、外側縦壁103o及び外側フランジ104oとなる領域に付与される張力が点線の矢印で示され、この張力の付与によって各領域に付与される長手方向の応力(分力)が実線の矢印で示される。
【0145】
[工程(a)]
図8A及び
図9を参照して、まず、工程(a)において、金属板からなるブランク201を準備する。ブランク201は、例えば590MPa以上の高い強度(引張強度)を有する。ブランク201の板厚は、0.8~2.3mm程度である。ブランク201に用いられる金属板は、例えば鋼板である。金属板に、打抜き加工、切削加工、機械加工、レーザートリム加工、及び放電加工等を施すことにより、所定の形状のブランク201が得られる。
【0146】
ここで、本実施形態のプレス装置1では、上述のとおり、内側溝62i及び内側凸条85iは、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲内方の領域に設けられている。さらに、内側溝62i及び内側凸条85iは、プレス成形品101の湾曲部の両端それぞれにつながる直線部のさらに湾曲内方の領域にも設けられている。つまり、内側溝62i及び内側凸条85iは、プレス成形品101の長手方向の全域に設けられている。
【0147】
また、本実施形態のプレス装置1では、上述のとおり、外側溝62o及び外側凸条85oは、プレス成形品101の湾曲部のさらに湾曲外方の領域に設けられている。さらに、外側溝62o及び外側凸条85oは、プレス成形品101の湾曲部の両端それぞれにつながる直線部のさらに湾曲外方の領域にも設けられている。つまり、外側溝62o及び外側凸条85oは、プレス成形品101の長手方向の全域に設けられている。
【0148】
ブランク201は、内側凸条85i(内側溝62i)が配置されている領域(内側凸条85iの設置領域)を越える大きさを有し、かつ外側凸条85o(外側溝62o)が配置されている領域(外側凸条85oの設置領域)を越える大きさを有する。つまり、ブランク201の内側縁203iは、内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域を越える。ブランク201の外側縁203oは、外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域を越える。
【0149】
別の観点では、ブランク201の幅は、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの幅よりも大きい。つまり、ブランク201の湾曲内方に内側余長部202iが設けられる。ブランク201の湾曲外方に外側余長部202oが設けられる。ブランク201において、内側余長部202iの内側縁203iは、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの内側フランジ104iの側縁106iの位置を越え、さらに、内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域を越える。また、ブランク201において、外側余長部202oの外側縁203oは、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの外側フランジ104oの側縁106oの位置を越え、さらに、外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域を越える。
【0150】
ここで言う内側凸条85iの設置領域は、上ダイ8の成形用の各面を平面に展開した状態における内側凸条85iの設置領域を意味する。換言すれば、内側溝62iの設置領域は、下パンチ4及び内側下治具6iそれぞれの成形用の各面を平面に展開した状態における内側溝62iの設置領域を意味する。また、ここで言う外側凸条85oの設置領域は、上ダイ8の成形用の各面を平面に展開した状態における外側凸条85oの設置領域を意味する。換言すれば、外側溝62oの設置領域は、下パンチ4及び外側下治具6oそれぞれの成形用の各面を平面に展開した状態における外側溝62oの設置領域を意味する。
【0151】
[工程(b)及び(c)]
工程(b)では、
図8Aを参照して、ブランク201を下パンチ4の頂面41上に載置する。その後、工程(c)では、プレス装置1を作動させる。つまり、スライド3を下降させる。スライド3の下降により、上パッド7及び上ダイ8が下降する。これにより、まず、上パッド7の下面と下パンチ4の頂面41との間にブランク201を挟む。つまり、上パッド7によって、ブランク201のうち天板102(湾曲部121及び直線部122)となる領域を押さえる。
【0152】
[工程(d)]
工程(d)では、スライド3をさらに下降させる。これにより、上ダイ8と下パンチ4によってブランク201をプレスするとともに、内側凸条85iと内側溝62iによってブランク201をプレスし、かつ外側凸条85oと外側溝62oによってブランク201をプレスする。また、工程(d)の間は、下パンチ4は下方向にほとんど動くことなく、クッションピン51を介した下クッション5によって支持される。下クッション5で設定した荷重以下の力で、下パンチ4と上ダイ8で挟持される領域が成形されていく。
【0153】
具体的には、
図8Bを参照して、スライド3の下降により、上ダイ8が下降する。その際、上パッド7がブランク201を押さえ続けながら、上パッド7を支持する弾性部材71が縮む。上ダイ8の下降により、上ダイ8の内側ダイ肩86iがブランク201のうちの内側縦壁103i(湾曲部131i及び直線部132i)となる領域に接触し、この内側ダイ肩86iと下パンチ4の内側側面42iによって、プレス成形品101の内側縦壁103iが次第に成形される。これと同時に、上ダイ8の外側ダイ肩86oがブランク201のうちの外側縦壁103o(湾曲部131o及び直線部132o)となる領域に接触し、この外側ダイ肩86oと下パンチ4の外側側面42oによって、プレス成形品101の外側縦壁103oが次第に成形される。
【0154】
その際、
図8Cに示すように、内側縦壁103i及び外側縦壁103oの成形が始まるとともに、上ダイ8の内側凸条85iがブランク201に接触し、この内側凸条85iと内側下治具6iの内側溝62iによって、内側谷部105iが次第に成形される。これと同時に、上ダイ8の外側凸条85oがブランク201に接触し、この外側凸条85oと外側下治具6oの外側溝62oによって、外側谷部105oが次第に成形される。
【0155】
内側谷部105i及び外側谷部105oの成形が始まると、ブランク201のうち内側ダイ肩86iと内側凸条85iとの間の領域に張力が生じる(
図8C及び
図10中の点線矢印参照)。つまり、ブランク201において、内側縦壁103i(湾曲部131i及び直線部132i)及び内側フランジ104i(湾曲部141i及び直線部142i)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。これと同時に、ブランク201のうち外側ダイ肩86oと外側凸条85oとの間の領域に短手方向の張力が生じる(
図8C及び
図10中の点線矢印参照)。つまり、ブランク201において、外側縦壁103o(湾曲部131o及び直線部132o)及び外側フランジ104o(湾曲部141o及び直線部142o)となる領域に、天板102となる領域に向かう引き込み力に抗する張力が付与される。
【0156】
この場合、
図10を参照して、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)となる領域については、張力の付与により、長手方向への分力として、長手方向に圧縮応力が付与される(
図10中の実線矢印参照)。
【0157】
また、この場合、
図10を参照して、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)となる領域については、張力の付与により、長手方向への分力として、長手方向に引張応力が付与される(
図10中の実線矢印参照)。
【0158】
そして、
図8Dに示すように、下パンチ4の各面(内側側面42i、外側側面42o、内側底面43i、及び外側底面43o)と上ダイ8の各面(内側壁面81i、外側壁面81o、内側下面82i、及び外側下面82o)とによって、プレス成形品101が成形される。
【0159】
この場合、伸びフランジ変形で成形された、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)については、上述のとおり、成形の過程で張力の付与に伴って長手方向の圧縮応力が付与されるため、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力が緩和される。このため、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。
【0160】
また、この場合、縮みフランジ変形で成形された、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)については、上述のとおり、成形の過程で張力の付与に伴って長手方向の引張応力が付与されるため、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力が緩和される。このため、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。
【0161】
[工程(e)]
工程(e)では、スライド3をさらに下降させる。これにより、内側上刃84iと内側下刃61iによってブランク201を切断し、かつ外側上刃84oと外側下刃61oによってブランク201を切断する。
【0162】
具体的には、
図8Eを参照して、スライド3の下降により、上ダイ8が下降する。これに伴い、下クッション5によって支持された下パンチ4が下降する。その際、プレス成形品101は、上ダイ8と下パンチ4との間に収まった状態のまま、上ダイ8と下パンチ4と一緒に下降する。
【0163】
そして、
図8Fに示すように、上ダイ8の内側上刃84iと内側下治具6iの内側下刃61iによって、プレス成形品101と内側谷部105iを含む領域との境界が切断される。この境界は、プレス成形品101の湾曲内方の側縁、すなわち内側フランジ104iの側縁106iである。これにより、プレス成形品101から内側谷部105iを含む領域が除去される。これと同時に、上ダイ8の外側上刃84oと外側下治具6oの外側下刃61oによって、プレス成形品101と外側谷部105oを含む領域との境界が切断される。この境界は、プレス成形品101の湾曲外方の側縁、すなわち外側フランジ104oの側縁106oである。これにより、プレス成形品101から外側谷部105oを含む領域が除去される。
【0164】
図8Fに示すように、底付き上板12が底付き下板13に接触することにより、下パンチ4の下降が制限される。つまり、底付き上板12が底付き下板13に接触したときが下パンチ4の下死点になる。底付き上板12が底付き下板13に接触するまでは、下パンチ4と上ダイ8に挟まれる領域のプレス成形品101は下クッション5で設定したクッション荷重以下で成形される。底付き上板12が底付き下板13に接触することで、プレス機で設定したプレス荷重でプレス成形品101を押すことが出来る。一般にクッション荷重はプレス荷重に比べて低く、クッション荷重とプレス荷重の差によって、下パンチ4が下死点に到達した後、上ダイ8は僅かに下降可能である。つまり、上ダイ8の下死点は下パンチ4の下死点から僅かに遅れる。上ダイ8の僅かな下降によって、プレス成形品101が強力にプレスされ、プレス成形品101の形状が精緻な製品形状になる。
【0165】
本実施形態のプレス成形品101の製造方法によれば、伸びフランジ変形で成形された、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)については、上述のとおり、プレス成形中の長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。このため、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分において、スプリングバックによる長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0166】
また、本実施形態のプレス成形品101の製造方法によれば、縮みフランジ変形で成形された、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)については、上述のとおり、プレス成形中の長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。このため、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分において、スプリングバックによる長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0167】
特に、本実施形態のプレス成形品101の製造方法によれば、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分及び湾曲外方の部分の両方で長手方向の応力を低減できる。したがって、より効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0168】
また、工程(e)でプレス成形品101と内側谷部105iを含む領域との境界が、内側上刃84iと内側下刃61iによって切断されるとき、上ダイ8の内側凸条85iと内側下治具6iの内側溝62iによる内側谷部105iの成形は続いている。内側下治具6iに対して上ダイ8は下降しているためである。このため、張力の付与も続いている。張力が付与された状態では、内側上刃84i及び内側下刃61iがプレス成形品101に僅かに食い込むと容易に破断に至る。そうすると、切断は容易に行える。一般的に、下刃や上刃がプレス成形品に食い込んだ後に、なかなか破断に至らないよりも容易に破断に至った方が、切断端面への加工硬化量が小さく、良好な端面性状となる。したがって、プレス成形品101の湾曲内方の側縁(内側フランジ104iの側縁106i)が切断されるところ、その側縁の性状は良好となる。また、容易に破断するため、内側上刃84i及び内側下刃61iそれぞれの損傷も少ない。
【0169】
これと同様の観点から、工程(e)でプレス成形品101と外側谷部105oを含む領域との境界が、外側上刃84oと外側下刃61oによって切断されるとき、上ダイ8の外側凸条85oと外側下治具6oの外側溝62oによる外側谷部105oの成形は続いている。外側下治具6oに対して上ダイ8は下降しているためである。このため、張力の付与も続いている。張力が付与された状態では、外側上刃84o及び外側下刃61oがプレス成形品101に僅かに食い込むと容易に破断に至る。そうすると、切断は容易に行える。したがって、プレス成形品101の湾曲外方の側縁(外側フランジ104oの側縁106o)が切断されるところ、その側縁の性状は良好となる。また、容易に破断するため、外側上刃84o及び外側下刃61oそれぞれの損傷も少ない。
【0170】
[第2実施形態]
以下、
図11及び
図12を参照して、第2実施形態のプレス装置1、及びプレス成形品101の製造方法について説明する。第2実施形態は上述した第1実施形態を変形したものである。
【0171】
図11は、第2実施形態のプレス装置1の一例を示す横断面図である。
図11に示すプレス装置1は、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101の製造に用いられる。
図11には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
図11の右側がプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方に対応し、
図6の左側がプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方に対応する。
【0172】
図12は、第2実施形態のプレス装置1を用いたプレス成形品101の製造方法に適用されるブランク201を示す平面図である。
図12には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図12には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図12中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図12には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域が点線で示される。
【0173】
図11を参照して、本実施形態のプレス装置1は、ベッド2と、スライド3と、下パンチ4と、下クッション5と、内側下治具6iと、上パッド7と、上ダイ8と、を備える。つまり、本実施形態のプレス装置1は、外側下治具6oを備えない。このため、第1実施形態のような外側下刃61o及び外側溝62oは存在しない。また、本実施形態の上ダイ8には、第1実施形態のような外側凹部83o、外側凹部83o及び外側凸条85oは存在しない。その他の構成は、第1実施形態のプレス装置1の構成と同じである。
【0174】
本実施形態によるプレス成形品101の製造方法は、
図11に示すプレス装置1を用いて、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101を製造する方法である。本実施形態によるプレス成形品101の製造方法は、第1実施形態と同様に工程(a)~工程(e)を備える。
【0175】
図12を参照して、工程(a)で準備するブランク201は、第1実施形態と同様に、内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域を越える大きさを有する。別の観点では、ブランク201の湾曲内方に内側余長部202iが設けられる。つまり、ブランク201の内側縁203iは、第1実施形態と同様に、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの内側フランジ104iの側縁106iの位置を越え、さらに、内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域を越える。これに対し、ブランク201の湾曲外方に外側余長部202oは設けられない。つまり、ブランク201の外側縁203oは、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの外側フランジ104oの側縁106oに相当する。
【0176】
この場合、工程(d)では、第1実施形態と同様に、上ダイ8と下パンチ4によってブランク201をプレス成形するとともに、内側凸条85iと内側溝62iによってブランク201をプレス成形する。そして、工程(e)では、第1実施形態と同様に、内側上刃84iと内側下刃61iによってブランク201を切断する。このため、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)については、成形の過程で張力の付与に伴って長手方向の圧縮応力が付与されるため、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力が緩和される。そうすると、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。
【0177】
一方、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)については、谷部形成に伴う張力の付与はない。第1実施形態のような外側凸条85o及び外側溝62oが存在しないためである。
【0178】
第2実施形態の場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分において、長手方向及び短手方向の応力の低減は期待できない。ただし、第1実施形態と同様に、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分において、スプリングバックによる長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0179】
なお、第2実施形態のプレス装置1を用いた製造方法によれば、外側フランジ104oの存在しないプレス成形品101を製造することも可能である。この場合、準備されるブランク201の外側縁203oが、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの湾曲外方の側縁(外側縦壁103oの下縁)に相当すればよい。
【0180】
[第2実施形態の変形例]
図11及び
図12に示す第2実施形態のプレス装置1、及びプレス成形品101の製造方法は、次のように変形することも可能である。
【0181】
第2実施形態の変形例のプレス装置1は、ベッド2と、スライド3と、下パンチ4と、下クッション5と、外側下治具6oと、上パッド7と、上ダイ8と、を備える。つまり、第2実施形態の変形例のプレス装置1は、内側下治具6iを備えない。このため、第1実施形態のような内側下刃61i及び内側溝62iは存在しない。また、第2実施形態の変形例の上ダイ8には、第1実施形態のような内側凹部83i、内側凹部83i及び内側凸条85iは存在しない。その他の構成は、第1実施形態のプレス装置1の構成と同じである。
【0182】
第2実施形態の変形例によるプレス成形品101の製造方法では、工程(a)で準備するブランク201は、第1実施形態と同様に、外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域を越える大きさを有する。別の観点では、ブランク201の湾曲外方に外側余長部202oが設けられる。つまり、ブランク201の外側縁203oは、第1実施形態と同様に、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの外側フランジ104oの側縁106oの位置を越え、さらに、外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域を越える。これに対し、ブランク201の湾曲内方に内側余長部202iは設けられない。つまり、ブランク201の内側縁203iは、プレス成形品101を同一平面上に展開したときの内側フランジ104iの側縁106iに相当する。
【0183】
この場合、工程(d)では、第1実施形態と同様に、上ダイ8と下パンチ4によってブランク201をプレス成形するとともに、外側凸条85oと外側溝62oによってブランク201をプレス成形する。そして、工程(e)では、第1実施形態と同様に、外側上刃84oと外側下刃61oによってブランク201を切断する。このため、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)については、成形の過程で張力の付与に伴って長手方向の引張応力が付与されるため、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力が緩和される。そうすると、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。
【0184】
一方、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)については、谷部形成に伴う張力の付与はない。第1実施形態のような内側凸条85i及び内側溝62iが存在しないためである。
【0185】
第2実施形態の変形例の場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分において、長手方向及び短手方向の応力の低減は期待できない。ただし、第1実施形態と同様に、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分において、スプリングバックによる長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0186】
なお、第2実施形態の変形例のプレス装置1を用いた製造方法によれば、内側フランジ104iの存在しないプレス成形品101を製造することも可能である。この場合、準備されるブランク201の内側縁203iが、成形されるプレス成形品101を展開したときの湾曲内方の側縁(内側縦壁103iの下縁)に相当すればよい。
【0187】
以下、その他の変形例、及び好適な態様について説明する。
【0188】
[ブランク201の内側余長部202i及び外側余長部202o]
上述のとおり、本実施形態では、プレス成形品101の成形と共に内側谷部105iを成形する場合、ブランク201の湾曲内方に内側余長部202iが設けられる。また、プレス成形品101の成形と共に外側谷部105oを成形する場合、ブランク201の湾曲外方に外側余長部202oが設けられる。以下、
図13及び
図14を参照して、内側余長部202iの全幅Wi及び外側余長部202oの全幅Woについて、それぞれの好適な範囲を説明する。
【0189】
図13は、ブランク201の平面図である。
図13には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図13には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図13中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図13には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域、並びに外側溝62o及び外側凸条85oの設置領域が点線で示される。
【0190】
図14は、プレス成形時の様子を示す横断面図である。
図14には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。なお、
図14は上記の
図8Fに相当する。
【0191】
図14を参照して、プレス成形品101の内側フランジ104iの側縁106iから内側谷部105iの湾曲内方の側縁151iまでの横断面内での線長をWi1とする。以下、この線長Wi1を内側第1線長Wi1とも言う。また、内側谷部105iの湾曲内方の側縁151iからブランク201の内側縁203iまでの横断面内での線長をWi2とする。以下、この線長Wi2を内側第2線長Wi2とも言う。内側第1線長Wi1及び内側第2線長Wi2それぞれを同一平面上に展開した線長の総和(Wi1+Wi2)が、
図13に示す内側余長部202iの全幅Wiに相当する。
【0192】
内側第2線長Wi2が大きいほど、内側谷部105iの形成に伴って付与される張力がより大きくなる。内側第2線長Wi2が20mm以上になれば、この張力を十分に確保することができる。このため、内側第2線長Wi2の下限は、好ましくは20mmである。一方、内側第2線長Wi2の上限は特に限定されない。ただし、内側第2線長Wi2が200mm以上になれば、張力の増大が飽和する。このため、内側第2線長Wi2の好ましい上限は200mmである。
【0193】
これと同様に、
図14を参照して、プレス成形品101の外側フランジ104oの側縁106oから外側谷部105oの湾曲外方の側縁151oまでの横断面内での線長をWo1とする。以下、この線長Wo1を外側第1線長Wo1とも言う。また、外側谷部105oの湾曲外方の側縁151oからブランク201の外側縁203oまでの横断面内での線長をWo2とする。以下、この線長Wo2を外側第2線長Wo2とも言う。外側第1線長Wo1及び外側第2線長Wo2それぞれを同一平面上に展開した線長の総和(Wo1+Wo2)が、
図13に示す外側余長部202oの全幅Woに相当する。
【0194】
外側第2線長Wo2が大きいほど、外側谷部105oの形成に伴って付与される張力が大きくなる。外側第2線長Wo2が20mm以上になれば、この張力を十分に確保することができる。このため、外側第2線長Wo2の下限は、好ましくは20mmである。一方、外側第2線長Wo2の上限は特に限定されない。ただし、外側第2線長Wo2が200mm以上になれば、張力の増大が飽和する。このため、外側第2線長Wo2の好ましい上限は200mmである。
【0195】
[ブランク201の好適な形状1]
上述のとおり、本実施形態では、プレス成形品101の成形と共に内側谷部105iを成形することにより、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分(内側縦壁103iの湾曲部131i及び内側フランジ104iの湾曲部141i)となる領域に、張力が付与され、この領域に長手方向の圧縮応力が付与される。張力の付与に伴って付与される長手方向の圧縮応力を増大させることができれば、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力をより緩和することが可能になる。これを実現するには、ブランク201の湾曲内方の形状を変更すればよい。
【0196】
典型的には、ブランク201において、内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域の少なくとも湾曲部の長手方向の中央部に対応する第1領域が内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域を越え、第1領域の両端から外側にある領域が切り欠かれている。この場合、ブランク201において、第1領域に隣接する切欠きの領域に内側谷部105iが形成されない。このため、内側谷部105iの成形過程で付与される張力の方向が、短手方向から傾く。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力が大きくなり、長手方向の圧縮応力として付与される。その結果、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力がより緩和される。
【0197】
以下、
図15及び
図16を参照して、ブランク201の好適な形状1の一例について説明する。
【0198】
図15は、ブランク201の好適な形状1を示す平面図である。
図15には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図15には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図15中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図15には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域、並びに外側溝62o及び外側凸条85oの設置領域が点線で示される。
【0199】
図16は、本実施形態の製造方法によって
図15に示すブランク201をプレス成形品101に成形するときの状況を説明するための平面図である。
図16には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。また、
図16には、プレス成形品101の内側縦壁103i及び内側フランジ104iとなる領域に付与される張力が点線の矢印で示され、この張力の付与によって各領域に付与される長手方向の応力(分力)が実線の矢印で示される。
【0200】
また、
図15および
図16は、湾曲部111に対して両側の端部に直線部112が設けられた、
図2Fに相当するプレス成形品101を製造する場合の一例を示す。湾曲部111に対して両側に直線部のないプレス成形品を製造する場合や片側にのみ直線部が設けられたプレス成形品を製造する場合でも同様に効果を有する。
【0201】
図15を参照して、ブランク201の内側余長部202iは、プレス成形品101の湾曲部111に対応する領域の一部に設けられる。換言すれば、ブランク201の内側余長部202iは、プレス成形品101の直線部112に対応する領域に設けられていない。なお、プレス成形品101の湾曲部111は、天板102の湾曲部121、内側縦壁103iの湾曲部131i、外側縦壁103oの湾曲部131o、内側フランジ104iの湾曲部141i、及び外側フランジ104oの湾曲部141oから構成される(
図1B参照)。プレス成形品101の直線部112は、天板102の直線部122、内側縦壁103iの直線部132i、外側縦壁103oの直線部132o、内側フランジ104iの直線部142i、及び外側フランジ104oの直線部142oから構成される(
図1B参照)。
【0202】
別の観点では、プレス成形品101の湾曲部111の湾曲内方にプレス装置1の内側凸条85i(内側溝62i)が設置されており、ブランク201において、その内側凸条85i(内側溝62i)の設置領域の少なくとも中央部に対応する領域に内側余長部202iが設けられる。内側余長部202iの両端202ipから外側にある領域は切り欠かれている。つまり、ブランク201は、内側余長部202i(第1領域)の両端縁202ieの外側に切欠き204iの領域を有する。内側余長部202iの輪郭形状がなだらかになるように、切欠き204iは形成される。内側余長部202iの両端202ipには、それぞれ、切欠き204iによって端縁202ieが現れる。典型的な例では、内側余長部202iの端縁202ieは平面視で直線である。端縁202ieは短手方向に対して傾斜している。
【0203】
この場合、
図16に示すように、プレス成形中、ブランク201において、湾曲内方の切欠き204iの領域に内側谷部105iが形成されない。つまり、湾曲内方の切欠き204iの領域は張力をもたらさない。このため、内側谷部105iの成形過程で付与される張力の方向が、短手方向からさらに傾く。これは、内側余長部202iの両端縁202ie近傍に張力が集中することによる。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力がより大きくなり、長手方向の圧縮応力として付与される。その結果、伸びフランジ変形に伴う長手方向の成形中の引張応力がより緩和される。
【0204】
このような効果を有効に発現させるため、ブランク201を平面で見たとき、内側縁203iの両端202ipにおける接線Lfiと、端縁202ieと、のなす角度γiは、10°以上、70°以下であることが好ましい。角度γiが70°より大きいと、内側余長部202iの端縁202ieや各内側余長部202iの端202ipに変形が集中して割れが生じる。角度γiが10°より小さいと、切欠き204iは内側谷部105iに位置することができず、切欠き204iを形成できない場合がある。
【0205】
図15に示すプレス成形品101の湾曲部111は1つの円弧から構成される。この場合、円弧中心線Lcと湾曲部端連絡線Ldとのなす角度θ1[°]に対して、円弧中心線Lcと余長部端連絡線Leiとのなす角度θ2[°]は、下記の式(1)の関係を満たすことが好ましい。本明細書において、円弧中心線Lcは、湾曲部111を構成する円弧の中央と、その円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。湾曲部端連絡線Ldは、湾曲部111の端と、湾曲部111を構成する円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。余長部端連絡線Leiは、内側縁203iの端202ipと、湾曲部111を構成する円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。
0.2≦θ2/θ1≦0.9 (1)
【0206】
θ2/θ1が式(1)の関係を満たせば、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部111の湾曲内方の部分となる領域において、張力の付与に伴って付与される長手方向の圧縮応力を有効に増大させることができ、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力をより緩和することが可能になる。このため、長手方向の引張応力をより低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差をより低減できる。この場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部111の湾曲内方の部分において、長手方向の圧縮応力をより低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差をより低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りをより抑制できる。
【0207】
図17は、θ2/θ1とプレス成形品101の捩じれ角度との関係を示す図である。
図17に示す捩じれ角度は、設計寸法からプレス成形品101が捩じれた角度[°]を意味する。
図17には、比較のために、内側谷部105i及び外側谷部105oを成形しない一般的なプレス加工によって製造したプレス成形品101の捩じれ角度を示す。
図17から明らかなように、θ2/θ1が、0.2以上、0.9以下の範囲、すなわち式(1)に示す範囲であれば、プレス成形品101の捩じれ角度が著しく小さい。
【0208】
[ブランク201の好適な形状2]
以下、
図18を参照して、ブランク201の好適な形状2の一例について説明する。
【0209】
図18は、ブランク201の好適な形状2を示す平面図である。
図18には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図18には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図18中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図18には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域、並びに外側溝62o及び外側凸条85oの設置領域が点線で示される。
【0210】
図18に示すプレス成形品101の湾曲部111は2つの円弧から構成され、
図2Bと同様の形状を有する。曲率半径Raが小さい一方の円弧を第1円弧とも言い、曲率半径Rbが第1円弧よりも大きい他方の円弧を第2円弧とも言う。第1円弧は第2円弧につながる。
【0211】
この場合、第1円弧中心線Lc1と第1湾曲部端連絡線Ld1とのなす角度θa1[°]に対して、第1円弧中心線Lc1と第1余長部端連絡線Lei1とのなす角度θa2[°]は、下記の式(2)の関係を満たすことが好ましい。本明細書において、第1円弧中心線Lc1は、湾曲部111を構成する第1円弧の中央と、その第1円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。第1湾曲部端連絡線Ld1は、第1円弧側の湾曲部111の端と、第1円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。第1余長部端連絡線Lei1は、内側余長部202iの一方の端202ipと、第1円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。
0.2≦θa2/θa1≦0.9 (2)
【0212】
また、第2円弧中心線Lc2と第2湾曲部端連絡線Ld2とのなす角度θb1[°]に対して、第2円弧中心線Lc2と第2余長部端連絡線Lei2とのなす角度θb2[°]は、下記の式(3)の関係を満たすことが好ましい。本明細書において、第2円弧中心線Lc2は、湾曲部111を構成する第2円弧の中央と、その第2円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。第2湾曲部端連絡線Ld2は、第2円弧側の湾曲部111の端と、第2円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。第2余長部端連絡線Lei2は、内側余長部202iの他方の端202ipと、第2円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。
0.2≦θb2/θb1≦0.9 (3)
【0213】
プレス成形品101の湾曲部111は2つの円弧(第1円弧及び第2円弧)から構成される場合、θa2/θa1が式(2)の関係を満たし、θb2/θb1が式(3)の関係を満たせば、θ2/θ1が式(1)の関係を満たすときと同様の上記効果が現れる。ただし、第1円弧と第2円弧との間に他の円弧が配置されていてもよい。つまり、プレス成形品101の湾曲部111が3つ以上の円弧から構成されてもよい。
【0214】
[ブランク201の好適な形状3]
上述のとおり、本実施形態では、プレス成形品101の成形と共に外側谷部105oを成形することにより、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分(外側縦壁103oの湾曲部131o及び外側フランジ104oの湾曲部141o)となる領域に、張力が付与され、この領域に長手方向の引張応力が付与される。張力の付与に伴って付与される長手方向の引張応力を増大させることができれば、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力をより緩和することが可能になる。これを実現するには、ブランク201の湾曲外方の形状を変更すればよい。
【0215】
典型的には、ブランク201において、外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域の少なくとも両端部それぞれに対応する各第2領域が外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域を越え、第2領域同士の内側にある領域の一部が切り欠かれている。この場合、ブランク201において、第2領域に隣接する切欠きの領域に外側谷部105oが形成されない。このため、外側谷部105oの成形過程で付与される張力の方向が、短手方向から傾く。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力が大きくなり、長手方向の引張応力として付与される。その結果、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力がより緩和される。
【0216】
以下、
図19及び
図20を参照して、ブランク201の好適な形状3の一例について説明する。
【0217】
図19は、ブランク201の好適な形状3を示す平面図である。
図19には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。
図19には、成形されるプレス成形品101を同一平面上に展開したときの両側縁(内側フランジ104iの側縁106i及び外側フランジ104oの側縁106o)が想像線(
図19中、符号を付していない細い二点鎖線)で示される。また、
図19には、プレス装置1の内側溝62i及び内側凸条85iの設置領域、並びに外側溝62o及び外側凸条85oの設置領域が点線で示される。
【0218】
図20は、本実施形態の製造方法によって
図19に示すブランク201をプレス成形品101に成形するときの状況を説明するための平面図である。
図20には、ブランク201が実線で示され、このブランク201から成形されるプレス成形品101が二点鎖線で示される。また、
図20には、プレス成形品101の外側縦壁103o及び外側フランジ104oとなる領域に付与される張力が点線の矢印で示され、この張力の付与によって各領域に付与される長手方向の応力(分力)が実線の矢印で示される。
【0219】
また、
図19および
図20は、湾曲部111に対して両側の端部に直線部112が設けられた、
図2Fに相当するプレス成形品101を製造する場合の一例を示す。湾曲部111に対して両側に直線部のないプレス成形品を製造する場合や片側にのみ直線部が設けられたプレス成形品を製造する場合でも同様に効果を有する。
【0220】
図19を参照して、ブランク201の外側余長部202oは、プレス成形品101の各直線部112に対応する領域に設けられる。ブランク201の外側余長部202oは、プレス成形品101の湾曲部111の両端部それぞれに対応する領域に連続する。なお、プレス成形品101の湾曲部111は、天板102の湾曲部121、内側縦壁103iの湾曲部131i、外側縦壁103oの湾曲部131o、内側フランジ104iの湾曲部141i、及び外側フランジ104oの湾曲部141oから構成される(
図1B参照)。プレス成形品101の直線部112は、天板102の直線部122、内側縦壁103iの直線部132i、外側縦壁103oの直線部132o、内側フランジ104iの直線部142i、及び外側フランジ104oの直線部142oから構成される(
図1B参照)。
【0221】
別の観点では、プレス成形品101の湾曲部111の湾曲外方にプレス装置1の外側凸条85o(外側溝62o)が設置されており、ブランク201において、その外側凸条85o(外側溝62o)の設置領域の少なくとも両端部それぞれに対応する各領域に外側余長部202oが設けられる。各外側余長部202oの端202op同士の内側にある領域は切り欠かれている。つまり、ブランク201は、各外側余長部202o(第2領域)の端縁202oe同士の内側に切欠き204oの領域を有する。各外側余長部202oの輪郭形状がなだらかになるように、切欠き204oは形成される。各外側余長部202oの端202opには、それぞれ、切欠き204oによって端縁202oeが現れる。典型的な例では、外側余長部202oの端縁202oeは平面視で直線である。端縁202oeは短手方向に対して傾斜している。
【0222】
この場合、
図20に示すように、プレス成形中、ブランク201において、湾曲外方の切欠き204oの領域に外側谷部105oの一部が形成されない。つまり、湾曲外方の切欠き204oの領域は張力をもたらさない。このため、外側谷部105oの成形過程で付与される張力の方向が、短手方向からさらに傾く。これは、外側余長部202oの端縁202oe近傍に張力が集中することによる。短手方向より傾いた張力の長手方向の分力がより大きくなり、長手方向の引張応力として付与される。その結果、縮みフランジ変形に伴う長手方向の成形中の圧縮応力がより緩和される。
【0223】
このような効果を有効に発現させるため、ブランク201を平面で見たとき、外側縁203oの端202opにおける接線Lfoと、端縁202oeと、のなす角度γoは、10°以上、70°以下であることが好ましい。角度γoが70°より大きいと、外側余長部202oの端縁202oeや各外側余長部202oの端202opに変形が集中して割れが生じる。角度γoが10°より小さいと、切欠き204oは外側谷部105oに位置することができず、切欠き204oを形成できない場合がある。
【0224】
図19に示すプレス成形品101の湾曲部111は1つの円弧から構成される。この場合、円弧中心線Lcと湾曲部端連絡線Ldとのなす角度θ1[°]に対して、円弧中心線Lcと余長部端連絡線Leoとのなす角度θ3[°]は、下記の式(4)の関係を満たすことが好ましい。本明細書において、余長部端連絡線Leoは、端縁202oeの端202opと、湾曲部111を構成する円弧の曲率中心と、を結ぶ線を意味する。円弧中心線Lc及び湾曲部端連絡線Ldの意味は上記のとおりである。
0.15≦θ3/θ1≦0.7 (4)
【0225】
θ3/θ1が式(4)の関係を満たせば、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部111の湾曲外方の部分となる領域において、張力の付与に伴って付与される長手方向の引張応力を有効に増大させることができ、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力をより緩和することが可能になる。このため、長手方向の圧縮応力をより低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差をより低減できる。この場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部111の湾曲外方の部分において、長手方向の引張応力をより低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差をより低減できる。その結果、効果的にプレス成形品101の捩じれ及び壁反りをより抑制できる。
【0226】
図21は、θ3/θ1とプレス成形品101の捩じれ角度との関係を示す図である。
図21に示す捩じれ角度は、設計寸法からプレス成形品101が捩じれた角度[°]を意味する。
図21には、比較のために、内側谷部105i及び外側谷部105oを成形しない一般的なプレス加工によって製造したプレス成形品101の捩じれ角度を示す。
図21から明らかなように、θ3/θ1が、0.15以上、0.7以下の範囲、すなわち式(4)に示す範囲であれば、プレス成形品101の捩じれ角度が著しく小さい。
【0227】
[ブランク201の好適な形状4]
上記したブランク201の好適な形状1と形状2とを組み合わせることも可能である。
図22に、ブランク201の好適な形状4の平面図を示す。
図22に示すブランク201において、湾曲内方の状況は
図15に示す形状1の場合と同じであり、湾曲外方の状況は
図19に示す形状3の場合と同じである。したがって、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分及び湾曲外方の部分の両方で長手方向の応力を低減できる。このため、湾曲内方のみの長手方向の応力を低減した場合や湾曲外方のみの長手方向の応力を低減した場合に比べ、より良好な寸法精度のプレス成形品101が得られる。
【0228】
[内側凸条85i及び外側凸条85oそれぞれの寸法]
図23は、内側凸条85i及び外側凸条85oそれぞれの好適な寸法を説明するための横断面図である。
図23には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
【0229】
図23を参照して、本実施形態のプレス装置1の上ダイ8において、内側凸条85iの内側下面82iからの突出量hi1は5mm以上であることが好ましい。これと同様に、外側凸条85oの外側下面82oからの突出量ho1は5mm以上であることが好ましい。
【0230】
上述のとおり、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分となる領域に張力を付与するため、上ダイ8の内側凸条85iと内側下治具6iの内側溝62iによって内側谷部105iが成形される。内側凸条85iの突出量hi1が5mm以上であれば、内側谷部105iが成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分となる領域に、張力が有効に付与される。内側凸条85iの突出量hi1は、より好ましくは9mm以上である。内側凸条85iの突出量hi1の上限は特に限定されない。ただし、内側凸条85iの突出量hi1が20mm以上になれば、捩じれ及び壁反りの抑制効果が飽和する。このため、内側凸条85iの突出量hi1の好ましい上限は20mmである。
【0231】
また、上述のとおり、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分となる領域に張力を付与するため、上ダイ8の外側凸条85oと外側下治具6oの外側溝62oによって外側谷部105oが成形される。外側凸条85oの突出量ho1が5mm以上であれば、外側谷部105oが成形される過程で、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分となる領域に、張力が有効に付与される。外側凸条85oの突出量ho1は、より好ましくは9mm以上である。外側凸条85oの突出量ho1の上限は特に限定されない。ただし、外側凸条85oの突出量ho1が20mm以上になれば、捩じれ及び壁反りの抑制効果が飽和する。このため、外側凸条85oの突出量ho1の好ましい上限は20mmである。
【0232】
また、
図23を参照して、本実施形態のプレス装置1の上ダイ8において、内側凸条85iの幅wi1は、内側凸条85iの高さhi2の0.8倍以上であることが好ましい。これと同様に、外側凸条85oの幅wo1は、外側凸条85oの高さho2の0.8倍以上であることが好ましい。本明細書において、内側凸条85iの幅wi1は、内側凹部83iの底面における内側凸条85iの幅方向の長さを意味する。外側凸条85oの幅wo1は、外側凹部83oの底面における外側凸条85oの幅方向の長さを意味する。内側凸条85iの高さhi2は、内側凹部83iの底面から内側凸条85iの下端までの高さ方向の長さを意味する。外側凸条85oの高さho2は、外側凹部83oの底面から外側凸条85oの下端までの高さ方向の長さを意味する。
【0233】
内側凸条85iの幅wi1が内側凸条85iの高さhi2の0.8倍以上であれば、内側凸条85iそのものの強度を十分に確保できる。この場合、内側凸条85iの変形や欠け等を抑制できる。内側凸条85iの幅wi1の上限は特に限定されない。ただし、内側凸条85iの幅wi1が内側凸条85iの高さhi2の2.0倍を超えれば、内側凸条85iの強度に変化はなく、むしろ材料歩留りが悪化する。このため、内側凸条85iの幅wi1が内側凸条85iの高さhi2の2.0倍以下であることが好ましい。
【0234】
また、外側凸条85oの幅wo1が外側凸条85oの高さho2の0.8倍以上であれば、外側凸条85oそのものの強度を十分に確保できる。この場合、外側凸条85oの変形や欠け等を抑制できる。外側凸条85oの幅wo1の上限は特に限定されない。ただし、外側凸条85oの幅wo1が外側凸条85oの高さho2の2.0倍を超えれば、外側凸条85oの強度に変化はなく、むしろ材料歩留りが悪化する。このため、外側凸条85oの幅wo1が外側凸条85oの高さho2の2.0倍以下であることが好ましい。
【0235】
[内側下治具6i及び外側下治具6oそれぞれの寸法]
図24は、内側下治具6i及び外側下治具6oそれぞれの好適な寸法を説明するための横断面図である。
図24には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
【0236】
図24を参照して、本実施形態のプレス装置1の内側下治具6iにおいて、下パンチ4の内側底面43iに隣接する縁は内側下刃61iとして機能する。内側下治具6iの上面において、下パンチ4の内側底面43iに隣接する縁から、内側溝62iの下パンチ4側の縁までの距離wi2が小さいほど、ブランク201の材料歩留りが向上する。ただし、距離wi2が小さすぎれば、内側下刃61iの強度を確保することが困難となる。このため、距離wi2は、20mm以上、100mm以下であることが好ましい。
【0237】
また、
図24を参照して、本実施形態のプレス装置1の外側下治具6oにおいて、下パンチ4の外側底面43oに隣接する縁は外側下刃61oとして機能する。外側下治具6oの上面において、下パンチ4の外側底面43oに隣接する縁から、外側溝62oの下パンチ4側の縁までの距離wo2が小さいほど、ブランク201の材料歩留りが向上する。ただし、距離wo2が小さすぎれば、外側下刃61oの強度を確保することが困難となる。このため、距離wo2は、20mm以上、100mm以下であることが好ましい。
【0238】
[下パンチ4の内側底面43i及び外側底面43oそれぞれの初期高さ位置]
図25は、下パンチ4の内側底面43i及び外側底面43oそれぞれの好適な初期高さ位置を説明するための横断面図である。
図25には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
【0239】
図25を参照して、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置は、内側下治具6iの上面の高さ位置よりも多少高くてもよい。つまり、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置と、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置と、の相対高さhi3がプラスであってもよい。相対高さhi3がマイナスの場合には、上ダイ8と下パンチ4で挟まれる領域が成形される間に、すなわち、上記した工程(d)の間に、ブランク201が下刃および上刃に食い込み切断が始まる可能性があるためである。ところで、相対高さhi3がプラスの場合、下パンチ4の各面と上ダイ8の各面とによってプレス成形品101が成形された後、プレス成形品101は上ダイ8と下パンチ4と一緒に下降する。その後、内側上刃84iと内側下刃61iによる切断、及び外側上刃84oと外側下刃61oによる切断が実施される。つまり、下パンチ4の各面と上ダイ8の各面とによってプレス成形品101が成形された後、直ちに切断が実施されるわけではない。
【0240】
このような場合であっても、切断が実施されるまで、上ダイ8の内側凸条85iと内側下治具6iの内側溝62iによる内側谷部105iの成形は続いている。内側下治具6iに対して上ダイ8は下降しているためである。このため、張力の付与も続いている。したがって、伸びフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分となる領域において、張力の付与に伴って長手方向の圧縮応力を付与することができる。このため、伸びフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。この場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲内方の部分において、長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、プレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0241】
ただし、相対高さhi3が大きいほど、張力が小さくなる。したがって、相対高さhi3は3mm以下であることが好ましい。最も好ましい相対高さhi3は0(ゼロ)mmである。この場合、下パンチ4の内側底面43iの初期高さ位置は、内側下治具6iの上面の高さ位置と一致している。
【0242】
また、
図25を参照して、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置は、外側下治具6oの上面の高さ位置よりも多少高くてもよい。つまり、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置と、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置と、の相対高さho3がプラスであってもよい。この場合、下パンチ4の各面と上ダイ8の各面とによってプレス成形品101が成形された後、プレス成形品101は上ダイ8と下パンチ4と一緒に下降する。その後、外側上刃84oと外側下刃61oによる切断、及び外側上刃84oと外側下刃61oによる切断が実施される。つまり、下パンチ4の各面と上ダイ8の各面とによってプレス成形品101が成形された後、直ちに切断が実施されるわけではない。
【0243】
このような場合であっても、切断が実施されるまで、上ダイ8の外側凸条85oと外側下治具6oの外側溝62oによる外側谷部105oの成形は続いている。外側下治具6oに対して上ダイ8は下降しているためである。このため、張力の付与も続いている。したがって、縮みフランジ変形する部分、すなわちプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分となる領域において、張力の付与に伴って長手方向の引張応力を付与することができる。このため、縮みフランジ変形に伴うプレス成形中の長手方向の圧縮応力を低減でき、短手方向では外面の引張応力と内面の圧縮応力との差を低減できる。この場合、金型から取り出されたプレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の部分において、長手方向の引張応力を低減でき、短手方向では外面の圧縮応力と内面の引張応力との差を低減できる。その結果、プレス成形品101の捩じれ及び壁反りを抑制できる。
【0244】
ただし、相対高さho3が大きいほど、張力が小さくなる。したがって、相対高さho3は3mm以下であることが好ましい。最も好ましい相対高さho3は0(ゼロ)mmである。この場合、下パンチ4の外側底面43oの初期高さ位置は、外側下治具6oの上面の高さ位置と一致している。
【0245】
[下クッション5から下パンチ4に与えられる荷重]
下クッション5によって、下パンチ4には上向きの荷重が与えられている。この荷重はクッション荷重Fと称される。上ダイ8と下パンチ4で挟まれる領域が成形された後に、すなわち、上記した工程(d)が終わった後に、上記した工程(e)の切断がされるには、下パンチ4の各面と上ダイ8の各面とによってプレス成形品101が成形されるまで、下パンチ4が下降しないことが必要である。
【0246】
したがって、クッション荷重Fは下記の式(5)を満足することが望ましい。
F≧L×TS×t×0.2 (5)
式(5)中の各記号の意味は以下のとおりである;
L:プレス成形品101の長手方向の長さ[mm]、
TS:ブランク201の引張強度[MPa]、及び
t:ブランク201の板厚[mm]。
【0247】
[下パンチ4の下降量、並びに上ダイ8の内側凹部83i及び外側凹部83oそれぞれの深さ]
図26は、下パンチ4の好適な下降量、並びに上ダイ8の内側凹部83i及び外側凹部83oそれぞれの好適な深さを説明するための横断面図である。
図26には、プレス成形品101の湾曲部を成形する位置での横断面が示される。
【0248】
図26を参照して、下パンチ4の下降量h4は下記の式(6)を満足することが好ましい。
1.1×t≦h4≦9.0×t (6)
式(6)中の記号の意味は以下のとおりである;
t:ブランク201の板厚[mm]。
【0249】
なお、
図26に示すプレス装置1では、下パンチ4の下降量h4は、底付き上板12と底付き下板13との間の高さ方向の隙間である。底付き上板12が底付き下板13に接触することにより、下パンチ4の下降が制限される。
【0250】
下パンチ4が下降することにより、外側上刃84oと外側下刃61oによるブランク201の切断が実施される。下パンチ4の下降量h4が小さすぎれば、切断を実施できない。したがって、下パンチ4の下降量h4は、ブランク201の板厚tの1.1倍以上であることが好ましい。一方、下パンチ4の下降量h4が大きすぎれば、金型の高さが必要以上に大きくなる上、金型の素材コストも増える。したがって、下パンチ4の下降量h4は、ブランク201の板厚tの9.0倍以下であることが好ましい。
【0251】
また、
図26を参照して、上ダイ8の内側凹部83iの深さhi5は、下パンチ4の下降量h4よりも大きいことが好ましい。本明細書において、内側凹部83iの深さhi5は、上ダイ8の内側下面82iから内側凹部83iの底面までの高さ方向の長さを意味する。内側凹部83iの深さhi5が下パンチ4の下降量h4よりも大きければ、下パンチ4が下死点に確実に到達できる。
【0252】
また、
図26を参照して、上ダイ8の外側凹部83oの深さho5は、下パンチ4の下降量h4よりも大きいことが好ましい。本明細書において、外側凹部83oの深さho5は、上ダイ8の外側下面82oから外側凹部83oの底面までの高さ方向の長さを意味する。外側凹部83oの深さho5が下パンチ4の下降量h4よりも大きければ、下パンチ4が下死点に確実に到達できる。
【0253】
[内側下刃61i及び外側下刃61oの形状]
図27A及び
図27Bを参照して、内側下刃61i及び外側下刃61oそれぞれの好適な形状について説明する。
【0254】
図27Aは、内側下刃61iの好適な形状を示す図である。
図27Aには、内側下治具6iを下パンチ4側から水平に見たときの一部の側面であって、プレス成形品101の湾曲部に対応する領域を切断する内側下刃61iを含む側面が示される。また、
図27Aには、内側下刃61iと対になる内側上刃84iが想像線(
図27A中、細い二点鎖線)で示される。
図27Aには、ブランク201がハッチングで示される。
【0255】
図27Aを参照して、内側下刃61iは、湾曲部の湾曲内方の側縁に対応する範囲において、当該範囲の両端Rieよりも当該範囲の中央Ricが低くなるように傾斜している。一方、内側上刃84iは一定高さの直線状である。上ダイ8の内側上刃84iが下降して、内側上刃84iと内側下刃61iによってブランク201が切断される。
【0256】
内側上刃84iと内側下刃61iによって、プレス成形品101から内側谷部105iを含む領域を除去する際、プレス成形品101の湾曲他の湾曲内方の側縁は、同時に切断されるのではなくて、当該側縁の両端それぞれから当該側縁の中央に向けて徐々に切断される。内側下刃61iが上記形態のシャー角βiを有するためである。このため、切断に要するプレス荷重が小さくて済む。また、切断時に、長手方向に圧縮応力が付与される。このため、プレス成形中の長手方向の引張応力がより緩和される。その結果、長手方向の引張応力をより低減できる。
【0257】
シャー角βiは、0.5°以上4.5°以下が望ましい。シャー角βiが0.5°未満であれば、シャー角がついてない場合とほとんど同じで捩じり抑制効果や荷重低減効果が低い。シャー角βiが4.5°より大きい場合は、打抜かれるまでの成形ストロークhziが増大することで金型サイズが大きくなり型費が増加する。
【0258】
図27Bは、外側下刃61oの好適な形状を示す図である。
図27Bには、外側下治具6oを下パンチ4側から水平に見たときの一部の側面であって、プレス成形品101の湾曲部に対応する領域を切断する外側下刃61oを含む側面が示される。また、
図27Bには、外側下刃61oと対になる外側上刃84oが想像線(
図27B中、細い二点鎖線)で示される。
図27Bには、ブランク201がハッチングで示される。
【0259】
図27Bを参照して、外側下刃61oは、湾曲部の湾曲外方の側縁に対応する範囲において、当該範囲の両端Roeよりも当該範囲の中央Rocが高くなるように傾斜している。一方、外側上刃84oは一定高さの直線状である。上ダイ8の外側上刃84oが下降して、外側上刃84oと外側下刃61oによってブランク201が切断される。
【0260】
外側上刃84oと外側下刃61oによって、プレス成形品101から外側谷部105oを含む領域を除去する際、プレス成形品101の湾曲部の湾曲外方の側縁は、同時に切断されるのではなくて、当該側縁の中央から当該側縁の両端それぞれに向けて徐々に切断される。外側下刃61oが上記形態のシャー角βoを有するためである。このため、切断に要するプレス荷重が小さくて済む。また、切断時に、長手方向に引張応力が付与される。このため、プレス成形中の長手方向の圧縮応力がより緩和される。その結果、長手方向の圧縮応力をより低減できる。
【0261】
シャー角βoは、0.5°以上4.5°以下が望ましい。シャー角βoが0.5°未満であれば、シャー角がついてない場合とほとんど同じで捩じり抑制効果や荷重低減効果が低い。シャー角βoが4.5°より大きい場合は、打抜かれるまでの成形ストロークhzoが増大することで金型サイズが大きくなり型費が増加する。
【実施例】
【0262】
本実施形態による効果を確認するため、CAE解析を行った。CAE解析には、市販の汎用ソルバーであるLS-DYNAver.971を用いた。CAE解析では、
図1A及び
図1Bに示すプレス成形品101のモデルを種々の条件で作成した。
【0263】
プレス成形品101の主な寸法は以下のとおりであった。これらの寸法を各種の金型に反映させた。
・平面視における天板102の湾曲部121の湾曲内方の側縁の曲率半径:1200mm
・天板102の幅:32mm
・天板102と内側縦壁103iとのコーナー部の内面における横断面での曲率半径:4.5mm
・天板102と外側縦壁103oとのコーナー部の内面における横断面での曲率半径:4.5mm
・内側縦壁103iの高さ:40mm
・外側縦壁103oの高さ:40mm
・内側縦壁103iと内側フランジ104iとのコーナー部の内面における横断面での曲率半径:4.5mm
・外側縦壁103oと外側フランジ104oとのコーナー部の内面における横断面での曲率半径:4.5mm
・内側フランジ104iの幅:18mm
・外側フランジ104oの幅:18mm
【0264】
各種の金型によるプレス成形品101の成形解析、及びスプリングバック解析を行った。スプリングバック解析による結果から、プレス成形品101の捩じれ及び壁反りを評価した。評価方法は
図28A及び
図28Bに示される。
【0265】
図28Aは、捩じれの評価方法を説明するための斜視図である。
図28Aには、スプリングバック後のプレス成形品101が実線で示される。また、
図28Aには、スプリングバック前のプレス成形品101が二点鎖線で示される。
【0266】
捩じれの評価は捩じれ角度[°]で行った。具体的には、
図28Aを参照して、スプリングバック後のプレス成形品101の天板102の一端縁を、スプリングバック前のプレス成形品101の天板102の一端縁に合わせた。そして、スプリングバック前のプレス成形品101の天板102の他端縁に対して、スプリングバック後のプレス成形品101の天板102の他端縁が捩じれた角度α[°]を算出し、これを捩じれ角度とした。捩じれ角度が小さいほど、プレス成形品101の捩じれが小さいことを意味する。
【0267】
図28Bは、壁反りの評価方法を説明するための横断面図である。
図28Bには、スプリングバック後のプレス成形品101が実線で示される。また、
図28Bには、スプリングバック前のプレス成形品101が二点鎖線で示される。
【0268】
壁反りの評価は壁反り曲率[/mm]で行った。具体的には、
図28Bを参照して、プレス成形品101の長手方向の中央の横断面において、スプリングバック後のプレス成形品101の天板102を、スプリングバック前のプレス成形品101の天板102に合わせた。そして、スプリングバック後のプレス成形品101において、内側縦壁103iの下端側の曲率Cと外側縦壁103oの下端側の曲率Cの平均値を算出し、これを壁反り曲率とした。壁反り曲率が小さいほど、壁反りが小さいことを意味する。
【0269】
下記の表1に結果をまとめる。
【0270】
【0271】
比較例では、一般的なプレス加工によってプレス成形品101を成形した。つまり、比較例では、内側谷部105i及び外側谷部105oのいずれも成形しなかった。
【0272】
実施例1では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。
【0273】
実施例2では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105iのみを成形し、最終的に内側谷部105iを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。
【0274】
実施例3では、プレス成形品101を成形する過程で外側谷部105oのみを成形し、最終的に外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。
【0275】
実施例4では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを2mmとし、幅を5mmとした。つまり、実施例4の内側谷部105iの横断面サイズは、実施例1の内側谷部105iよりも小さかった。外側谷部105oにおいて、高さを2mmとし、幅を5mmとした。つまり、実施例4の外側谷部105oの横断面サイズは、実施例1の外側谷部105oよりも小さかった。
【0276】
実施例5では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを10mmとし、幅を8mmとした。つまり、実施例5の内側谷部105iの幅は、実施例1の内側谷部105iよりも小さかった。外側谷部105oにおいて、高さを10mmとし、幅を8mmとした。つまり、実施例5の外側谷部105oの幅は、実施例1の外側谷部105oよりも小さかった。
【0277】
実施例6では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105iのみを成形し、最終的に内側谷部105iを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを10mmとし、幅を8mmとした。つまり、実施例6の内側谷部105iの幅は、実施例2の内側谷部105iよりも小さかった。
【0278】
実施例7では、プレス成形品101を成形する過程で外側谷部105oのみを成形し、最終的に外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを10mmとし、幅を8mmとした。つまり、実施例7の外側谷部105oの幅は、実施例3の外側谷部105oよりも小さかった。
【0279】
実施例8では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを20mmとし、幅を30mmとした。つまり、実施例8の内側谷部105iの高さは、実施例1の内側谷部105iよりも大きかった。外側谷部105oにおいて、高さを20mmとし、幅を30mmとした。つまり、実施例8の外側谷部105oの高さは、実施例1の外側谷部105oよりも大きかった。
【0280】
実施例9では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105iのみを成形し、最終的に内側谷部105iを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを20mmとし、幅を30mmとした。つまり、実施例9の内側谷部105iの高さは、実施例2の内側谷部105iよりも大きかった。
【0281】
実施例10では、プレス成形品101を成形する過程で外側谷部105oのみを成形し、最終的に外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを20mmとし、幅を30mmとした。つまり、実施例10の外側谷部105oの高さは、実施例3の外側谷部105oよりも大きさかった。
【0282】
実施例11では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを5mmとし、幅を7.5mmとした。つまり、実施例11の内側谷部105iの高さは、実施例1の内側谷部105iよりも小さかった。外側谷部105oにおいて、高さを5mmとし、幅を7.5mmとした。つまり、実施例11の外側谷部105oの高さは、実施例1の外側谷部105oよりも小さかった。
【0283】
実施例12では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105iのみを成形し、最終的に内側谷部105iを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを5mmとし、幅を7.5mmとした。つまり、実施例12の内側谷部105iの高さは、実施例2の内側谷部105iよりも小さかった。
【0284】
実施例13では、プレス成形品101を成形する過程で外側谷部105oのみを成形し、最終的に外側谷部105oを含む領域を切断した。成形の際、ブランク201において、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを5mmとし、幅を7.5mmとした。つまり、実施例13の外側谷部105oの高さは、実施例3の外側谷部105oよりも小さかった。
【0285】
参考例では、プレス成形品101を成形する過程で内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形した。成形の際、ブランク201において、内側余長部202iの全幅Wiを80mmとし、外側余長部202oの全幅Woを80mmとした。内側谷部105iにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。外側谷部105oにおいて、高さを10mmとし、幅を20mmとした。実施例1と異なり、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域の切断は行わなかった。
【0286】
表1の結果から以下のことが示される。
【0287】
実施例1では、捩じれ角度が比較例よりも格段に小さく、壁反り曲率が比較例よりも格段に小さかった。これにより、内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形した場合、最も効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0288】
実施例2では、実施例1ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。これにより、内側谷部105iを成形した場合、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0289】
実施例3では、実施例1ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さかった。実施例3の壁反り曲率は比較例よりも小さかった。これにより、外側谷部105oを成形した場合、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0290】
実施例4では、捩じれ角度が比較例よりもやや小さかった。実施例4の壁反り曲率は比較例よりもやや小さかった。これにより、成形する内側谷部105i及び外側谷部105oが小型サイズであった場合、それなりに捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0291】
実施例5では、実施例1と同様に、捩じれ角度が比較例よりも格段に小さく、壁反り曲率が比較例よりも格段に小さかった。これにより、内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形し、各谷部の幅がその高さの0.8倍以上あれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0292】
実施例6では、実施例5ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。これにより、内側谷部105iを成形し、谷部の幅がその高さの0.8倍以上あれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0293】
実施例7では、実施例5ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。これにより、外側谷部105oを成形し、谷部の幅がその高さの0.8倍以上あれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0294】
実施例8では、捩じれ角度が比較例よりも格段に小さく、壁反り曲率が比較例よりも格段に小さかった。また、実施例8に比べて谷部の高さが低い実施例1よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が小さいことから、谷部の高さが高いほど効果があることがわかった。これにより、各々の高さが20mmである内側谷部105i及び外側谷部105oの両方を成形した場合には、最も効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0295】
実施例9では、実施例8ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。また、実施例9に比べて谷部の高さが低い実施例2よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が小さいことから、谷部の高さが高いほど効果があることがわかった。これにより、高さが20mmである内側谷部105iを成形した場合には、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0296】
実施例10では、実施例8ほどではないが、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。また、実施例10に比べて谷部の高さが低い実施例3よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が小さいことから、谷部の高さが高いほど効果があることがわかった。これにより、高さが20mmである外側谷部105oを成形した場合には、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0297】
実施例11では、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。また、実施例11に比べて谷部の高さが高い実施例1よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が大きかった。これにより、谷部の高さが高いほど効果があるが、谷部の高さが5mm以上であれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0298】
実施例12では、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。また、実施例12に比べて谷部の高さが高い実施例2よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が大きかった。これにより、谷部の高さが高いほど効果があるが、谷部の高さが5mm以上であれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0299】
実施例13では、捩じれ角度が比較例よりも小さく、壁反り曲率が比較例よりも小さかった。また、実施例13に比べて谷部の高さが高い実施例3よりも、捩じれ角度および壁反り曲率が大きかった。これにより、谷部の高さが高いほど効果があるが、谷部の高さが5mm以上であれば、効果的に捩じれ及び壁反りを抑制できることがわかった。
【0300】
参考例では、捩じれ角度が比較例と同等であった。参考例の壁反り曲率は比較例と同等であった。つまり、最終的に内側谷部105i及び外側谷部105oを含む領域を切断しないと、捩じれ及び壁反りを抑制することができなかった。
【0301】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0302】
1プレス装置
2:ベッド
3:スライド
4:下パンチ
41:頂面
42i:内側側面
42o:外側側面
43i:内側底面
43o:外側底面
5:下クッション
6i:内側下治具
61i:内側下刃
62i:内側溝
6o:外側下治具
61o:外側下刃
62o:外側溝
7:上パッド
8:上ダイ
84i:内側上刃
84o:外側上刃
85i:内側凸条
85o:外側凸条
101:プレス成形品
111:湾曲部
102:天板
103i:内側縦壁
103o:外側縦壁
104i:内側フランジ
104o:外側フランジ
105i:内側谷部
105o:外側谷部
201:ブランク
202i:内側余長部
202o:外側余長部
203i:内側縁
203o:外側縁