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特許7617412製造コスト算出装置、製造コスト算出方法、および製造コスト算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】製造コスト算出装置、製造コスト算出方法、および製造コスト算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0283 20230101AFI20250110BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20250110BHJP
   B21C 23/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G06Q30/0283
G05B19/418 Z
B21C23/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021064349
(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公開番号】P2022159890
(43)【公開日】2022-10-18
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】金光 優気
(72)【発明者】
【氏名】山本 和人
(72)【発明者】
【氏名】綱嶋 靖之
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 一誠
(72)【発明者】
【氏名】川西 毅
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-279633(JP,A)
【文献】特開2015-017293(JP,A)
【文献】特開2017-202514(JP,A)
【文献】特開2004-164274(JP,A)
【文献】特開2018-151998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0398324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G05B 19/418
B21C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる前記要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から前記要求画像に類似する1以上の実績画像を特定する形状特定部と、
特定された前記1以上の実績画像のそれぞれに関連づけて前記メモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、前記要求仕様に含まれる前記断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい前記断面のサイズを含む実績情報を特定する実績特定部と、
前記要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定する製造条件特定部と、
特定された前記製造条件に基づいて算出される素材費および特定された前記実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出する算出部と、
算出された前記製造コストを表示するための表示データを作成する作成部と、
を備える製造コスト算出装置。
【請求項2】
前記製造条件特定部は、前記メモリに記憶された、押し出される熱押形鋼のうち切り捨てるべき部分の長さを示す切捨代を除外した部分の長さが、前記要求仕様に含まれる前記単品長さよりも長くなるように前記製造条件を特定する、請求項1に記載の製造コスト算出装置。
【請求項3】
前記実績情報に含まれる前記工具原単位は、1回の押し出しあたりの工具の費用を示す工具原単位であり、
前記製造条件特定部は、前記切捨代を除外した部分から所定個数の前記熱押形鋼を取得した残りの部分が小さくなるように前記製造条件を特定し、
前記算出部は、前記工具原単位に前記ビレットの個数を乗じた金額を前記工具費として含むように前記製造コストを算出する、
請求項2に記載の製造コスト算出装置。
【請求項4】
前記メモリに記憶される複数の実績情報には、さらに、前記製造実績のある熱押形鋼の断面の面積がそれぞれ含まれており、
前記実績特定部は、前記メモリに記憶された複数の実績情報のうち、前記要求仕様に含まれる前記断面のサイズとの乖離が前記所定のサイズ乖離閾値より小さい前記断面のサイズを含み、かつ、前記要求画像および前記断面のサイズに基づいて算出される前記断面の面積との乖離が所定の面積乖離閾値より小さい前記断面の面積を含む前記実績情報を特定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造コスト算出装置。
【請求項5】
前記メモリに記憶される複数の実績情報には、さらに、熱押形鋼を精整するための単位時間あたりの精整重量を示す精整能率を記憶し、
前記算出部は、特定された前記実績情報に含まれる前記精整能率が高いほど小さくなるように設定された精整変動費を含み前記熱押形鋼の製造量に応じて生ずる単位変動費、および、前記熱押形鋼の製造にあたり製造量にかかわらず生ずる固定費を設定し、前記単位変動費に前記熱押形鋼の製造量を乗ずることで変動費を算出し、前記変動費および前記固定費をさらに含む前記製造コストを算出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造コスト算出装置。
【請求項6】
前記要求仕様に含まれる前記要求画像に表される断面の形状および前記断面のサイズから求められる形状特徴値が、前記鋼種ごとに前記メモリに記憶された製造基準を満たすか否かを判定する判定部をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造コスト算出装置。
【請求項7】
前記判定部は、さらに、前記要求仕様に含まれる前記要求画像および前記断面のサイズに基づいて算出される前記断面の面積が前記製造基準を満たすか否かを判定する、請求項6に記載の製造コスト算出装置。
【請求項8】
前記作成部は、前記要求仕様に従った熱押形鋼の製造が可能でない場合、前記製造基準を満たすように前記要求画像を変更した代替要求画像を生成し、生成された前記代替要求画像を含む前記表示データを作成する、請求項6または7に記載の製造コスト算出装置。
【請求項9】
熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる前記要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から前記要求画像に類似する1以上の実績画像を特定し、
特定された前記1以上の実績画像のそれぞれに関連づけて前記メモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、前記要求仕様に含まれる前記断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい前記断面のサイズを含む実績情報を特定し、
前記要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定し、
特定された前記製造条件に基づいて算出される素材費および特定された前記実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出し、
算出された前記製造コストを表示するための表示データを作成する、
ことをコンピュータに実行させる製造コスト算出方法。
【請求項10】
熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる前記要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から前記要求画像に類似する1以上の実績画像を特定し、
特定された前記1以上の実績画像のそれぞれに関連づけて前記メモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、前記要求仕様に含まれる前記断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい前記断面のサイズを含む実績情報を特定し、
前記要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定し、
特定された前記製造条件に基づいて算出される素材費および特定された前記実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出し、
算出された前記製造コストを表示するための表示データを作成する、
ことをコンピュータに実行させる製造コスト算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱押形鋼の製造コストを算出する製造コスト算出装置、製造コスト算出方法、および製造コスト算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料となるビレットに熱と圧力とを加え、最終製品の断面の形状に応じて工具に設けられた孔から押し出して熱押形鋼を製造する熱間押出法によると、ロール圧延などの他の工法では製造が困難な複雑な断面形状を有する鋼材を製造することができる。
【0003】
顧客から熱押形鋼の引合を受けた場合、顧客の要求する要求仕様に従った熱押形鋼の製造可否や製造コストを迅速に回答することが好ましい。特許文献1には、過去の製造実績データに基づいて新規注文の納期を算出し表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-165723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼板や鋼管等のように断面形状が画一的な製品の製造コストは比較的容易に算出することができるため、顧客に回答する製造可否の判断や製造コストの算出に要する時間は、材質確保の可否や納期の算出に依存するところが大きい。一方、熱間押出法により製造される熱押形鋼は、断面の形状が様々であり、断面の形状に応じて製造の難易度および製造コストが変動する。一般に、断面の形状が複雑な熱押形鋼ほど製造コストが増大する。そのため、引合注文を受注するためには、いち早く製造コストを顧客に提示することが必要となるが、短時間で適切に製造コストを推定することは容易ではなかった。
【0006】
そこで、本開示は、熱押形鋼の要求仕様に従った熱押形鋼の製造コストを短時間で適切に算出することができる、製造コスト算出装置、製造コスト算出方法、および製造コスト算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる製造コスト算出装置は、熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から要求画像に類似する1以上の実績画像を特定する形状特定部と、特定された1以上の実績画像のそれぞれに関連づけてメモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい断面のサイズを含む実績情報を特定する実績特定部と、要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定する製造条件特定部と、特定された製造条件に基づいて算出される素材費および特定された実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出する算出部と、算出された製造コストを表示するための表示データを作成する作成部と、を備える。
【0008】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、製造条件特定部は、メモリに記憶された、押し出される熱押形鋼のうち切り捨てるべき部分の長さを示す切捨代を除外した部分の長さが、要求仕様に含まれる単品長さよりも長くなるように前記製造条件を特定することが好ましい。
【0009】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、実績情報に含まれる工具原単位は、1回の押し出しあたりの工具の費用を示す工具原単位であり、製造条件特定部は、切捨代を除外した部分から所定個数の熱押形鋼を取得した残りの部分が小さくなるように製造条件を特定し、算出部は、工具原単位にビレットの個数を乗じた金額を工具費として含むように製造コストを算出することが好ましい。
【0010】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、メモリに記憶される複数の実績情報には、さらに、製造実績のある熱押形鋼の断面の面積がそれぞれ含まれており、実績特定部は、メモリに記憶された複数の実績情報のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい前記断面のサイズを含み、かつ、要求画像および断面のサイズに基づいて算出される断面の面積との乖離が所定の面積乖離閾値より小さい断面の面積を含む実績情報を特定することが好ましい。
【0011】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、メモリに記憶される複数の実績情報には、さらに、押し出された熱押形鋼を精整するための単位時間あたりの精整重量を示す精整能率を記憶し、算出部は、特定された実績情報に含まれる精整能率が高いほど小さくなるように設定された精整変動費を含み熱押形鋼の製造量に応じて生ずる単位変動費、および、熱押形鋼の製造にあたり製造量にかかわらず生ずる固定費を設定し、単位変動費に熱押形鋼の製造量を乗ずることで変動費を算出し、変動費および固定費をさらに含む製造コストを算出することが好ましい。
【0012】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、要求仕様に含まれる要求画像に表される断面の形状および前記断面のサイズから求められる形状特徴値が、鋼種ごとにメモリに記憶された製造基準を満たすか否かを判定する判定部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、判定部は、さらに、要求仕様に含まれる要求画像および断面のサイズに基づいて算出される断面の面積が製造基準を満たすか否かを判定することが好ましい。
【0014】
本開示にかかる製造コスト算出装置では、作成部は、要求仕様に従った熱押形鋼の製造が可能でない場合、製造基準を満たすように要求画像を変更した代替要求画像を生成し、生成された代替要求画像を含む表示データを作成することが好ましい。
【0015】
本開示にかかる製造コスト算出方法は、熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から要求画像に類似する1以上の実績画像を特定し、特定された1以上の実績画像のそれぞれに関連づけてメモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい断面のサイズを含む実績情報を特定し、要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定し、特定された製造条件に基づいて算出される素材費および特定された実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出し、算出された製造コストを表示するための表示データを作成する、ことを含む。
【0016】
本開示にかかる製造コスト算出プログラムは、コンピュータに、熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像と、断面のサイズと、単品長さと、個数と、鋼種とを含む要求仕様に含まれる要求画像に基づいて、メモリに記憶された製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像から要求画像に類似する1以上の実績画像を特定し、特定された1以上の実績画像のそれぞれに関連づけてメモリに記憶された、当該実績画像に対応する実績情報のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離が所定のサイズ乖離閾値より小さい断面のサイズを含む実績情報を特定し、要求仕様に基づいて、当該要求仕様に従った熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む製造条件を特定し、特定された製造条件に基づいて算出される素材費および特定された実績情報に含まれる工具原単位に基づいて算出される工具費を含む製造コストを算出し、算出された製造コストを表示するための表示データを作成する、ことを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示にかかる製造コスト算出装置よると、熱押形鋼の製造実績に基づいて要求仕様に従った熱押形鋼の製造コストを短時間で適切に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンピュータの概略構成を示す模式図である。
図2】メモリに記憶されるデータの例を示す図である。
図3】製造基準の例を示す図である。
図4】製造基準と断面形状との関係を説明する図である。
図5】実績情報の例を示す図である。
図6】コンピュータが有するプロセッサの機能ブロック図である。
図7】製造コスト算出画面の第1の例である。
図8】断面形状入力画面の例である。
図9】製造コスト算出画面の第2の例である。
図10】(a)は製造コスト算出画面の第3の例であり、(b)は製造コスト算出画面の第4の例である。
図11】製造コスト算出方法の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、熱押形鋼の製造実績に基づいて要求仕様に従った熱押形鋼の製造コストを効率的に算出することができる製造コスト算出装置について詳細に説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0020】
製造コスト算出装置は、熱押形鋼の要求仕様の入力を受け付け、要求仕様に従った熱押形鋼の製造コストを表示するための表示データを作成する。要求仕様は、製造される熱押形鋼の断面の形状を表す要求画像、断面のサイズ、単品長さ、個数、鋼種を示す情報を含む。製造コスト算出装置は、要求仕様に含まれる熱押形鋼の断面の形状に類似する形状に関連づけられた製造実績を特定し、要求仕様および製造実績を用いて熱押形鋼の製造コストを算出する。
【0021】
図1は、コンピュータの概略構成を示す模式図である。
【0022】
製造コスト算出装置の一例であるコンピュータ1は、入出力インタフェース11と、メモリ12と、プロセッサ13とを備える。
【0023】
入出力インタフェース11は、コンピュータ1が処理すべきデータを受け付け、または、コンピュータ1により処理されたデータを出力するためのインタフェース回路を有する。入出力インタフェース11は、例えばコンピュータ1を通信ネットワークに接続するための通信インタフェース回路、またはコンピュータ1をキーボード、マウス、ディスプレイといった各種周辺機器と接続するための周辺機器インタフェース回路を含む。入出力インタフェース11は、通信インタフェース回路を介して端末機器から、または、周辺機器インタフェース回路を介してキーボード、マウスといった入力機器から、要求仕様の入力を受け付ける。また、入出力インタフェース11は、通信インタフェース回路を介して端末機器に、または、周辺機器インタフェース回路を介してディスプレイに、製造コストを表示するための表示データを出力する。
【0024】
メモリ12は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置および光ディスク装置のうちの少なくとも1つを有する。メモリ12は、プロセッサ13による処理に用いられる各種プログラム、データ、畳み込みニューラルネットワークを規定するためのパラメータ群等を記憶する。各種プログラムは、ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、製造コスト算出プログラムを含む。各種プログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0025】
図2は、メモリ12に記憶されるデータの例を示す図である。
【0026】
メモリ12は、データとして、製造基準121、サイズ乖離閾値122、鋼種諸元一覧123、ビレット諸元一覧124、ビレット径-コンテナ径対応関係125、切捨代情報126、および実績情報127を記憶する。
【0027】
図3は、製造基準121の例を示す図である。
【0028】
メモリ12は、製造基準121として、鋼種ごとに、製造可能な熱押形鋼の断面の形状において満たすべき形状特徴値である外接円直径D(mm)、厚さT(mm)、コーナーr(凸)(mm)、コーナーR(凹)(mm)、および断面積A(mm2)の、下限値および上限値を記憶する。それぞれの値についての上限値および下限値は、いずれか一方のみが記憶されていてもよく、両方が記憶されていてもよい。
【0029】
図4は、製造基準121と断面形状との関係を説明する図である。
【0030】
製造可能な熱押形鋼の断面20において、外接円直径Dは、断面20に外接する円の直径を示す。厚さTは、熱押形鋼の一方の面から他方の面までの熱押形鋼が連続して占める領域の垂直方向の長さを示す。コーナーrは、熱押形鋼が凸となる曲面の曲率半径を示す。コーナーRは、熱押形鋼が凹となる曲面の曲率半径を示す。断面積Aは、断面20の面積を示す。
【0031】
サイズ乖離閾値122は、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離の小さい断面のサイズを含む実績情報を特定するためのサイズの乖離の上限値を示す。
【0032】
断面のサイズは、例えば断面の外接円直径である。また、断面のサイズは、断面の水平方向または垂直方向の長さであってもよい。サイズの乖離は、要求仕様に含まれる断面のサイズと実績情報に含まれる断面のサイズとの差の、要求仕様に含まれる断面のサイズに対する割合(%)として表される。サイズの乖離は、要求仕様に含まれる断面のサイズと実績情報に含まれる断面のサイズとの差(mm)として表されていてもよい。
【0033】
鋼種諸元一覧123は、熱押形鋼の製造に使用可能な鋼種ごとに、体積あたりの重量を表す比重(g/cm3)および重量あたりの価格を表す素材単価(円/kg)が関連づけられている。
【0034】
ビレット諸元一覧124は、熱押形鋼の製造に使用可能なビレットの諸元を示す。ビレット諸元一覧124には、各ビレットの径(mm)、長さ(mm)および鋼種が記憶されている。
【0035】
ビレット径-コンテナ径対応関係125は、熱と圧力とが加えられて押し出される鋼材であるビレットの径と、ビレットを収容し、ビレットに熱と圧力とを加える容器であるコンテナの内径との関係を示す。図2に示すビレット径-コンテナ径対応関係125では、所定の内径(mm)を有するコンテナに対応づけて、当該コンテナに収容可能なビレットの径の下限値(mm)および上限値(mm)が記憶されている。
【0036】
切捨代情報126は、1回の熱間押出により押し出される熱押形鋼のうち切り捨てるべき部分の長さ(mm)を示す。切捨代情報126は、鋼種ごと、ビレットごと、あるいはコンテナ径ごとに設定されていてもよい。
【0037】
図5は、実績情報127の例を示す図である。
【0038】
実績情報127には、製造実績のある複数の熱押形鋼のそれぞれの断面の形状を表す複数の実績画像に関連づけて、当該製造実績のある熱押形鋼の断面のサイズ(mm)と、断面面積(mm2)と、製造における精整能率と、製造に用いられた工具の費用である工具費とが記憶される。
【0039】
精整能率とは、熱間押出法により押し出された熱押形鋼を出荷可能な製品に精整する能率を示す。例えば、単位時間内に精整された熱押形鋼の重量(kg/H)が、精整能率として用いられる。
【0040】
工具費は、当該工具の単価(円)と、熱間押出法による1回の押し出しあたりの工具の費用を示す工具原単位(円/回)とを含む。
【0041】
プロセッサ13は、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を備える。プロセッサ13は、コンピュータ1の全体的な動作を統括的に制御する処理回路であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ13は、コンピュータ1の各種処理がメモリ12に記憶されているプログラム等に基づいて適切な手段で実行されるように、入出力インタフェース11等の動作を制御する。プロセッサ13は、メモリ12に記憶されている各種プログラムに基づいて処理を実行する。また、プロセッサ13は、複数の各種プログラムを並列に実行することができる。
【0042】
プロセッサ13は、判定部131と、形状特定部132と、実績特定部133と、製造条件特定部134と、算出部135と、作成部136とを有する。プロセッサ13が有するこれらの各部は、プロセッサ13が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ13が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとしてコンピュータ1に実装されてもよい。なお、プロセッサ13は、判定部131を有していなくてもよい。
【0043】
判定部131は、要求仕様に含まれる要求画像に表される断面の形状および断面のサイズから形状特徴値を算出し、算出した形状特徴値が、鋼種ごとにメモリ12に記憶された製造基準121を満たすか否かを判定する。
【0044】
図7は、製造コスト算出画面の第1の例である。
【0045】
コンピュータ1のプロセッサ13は、製造コスト算出画面30を表示するための表示データを作成し、入出力インタフェース11を介して端末機器またはディスプレイに出力する。
【0046】
製造コスト算出画面30は要求仕様の入力を受け付ける。要求仕様を入力した後に製造コスト算出を要求することにより、製造コスト算出画面30は製造コストを表示する。図7は、要求仕様の入力を受け付ける前の製造コスト算出画面を示している。
【0047】
製造コスト算出画面30は、断面形状入力画面表示ボタン301、断面形状表示欄302、仕様入力欄303、製造コスト算出ボタン304、および製造コスト表示欄305を有する。
【0048】
断面形状入力画面表示ボタン301は、断面形状入力画面の表示を要求するためのボタンである。コンピュータ1は、断面形状入力画面表示ボタン301の操作に応じて断面形状入力画面を作成し、出力する。断面形状入力画面は、熱押形鋼の断面の形状を入力するための画面であり、詳細は後述する。
【0049】
断面形状表示欄302は、断面形状入力画面を用いて入力された断面形状が表示される欄である。
【0050】
仕様入力欄303は、要求仕様のうち断面形状以外の仕様を入力する欄である。図7の例では、仕様入力欄303には、断面サイズ、長さ、個数および鋼種のそれぞれを入力するための領域が設けられている。断面サイズは断面の外接円直径(mm)である。また、断面サイズは、断面の水平方向または垂直方向の長さであってもよい。長さは製造される熱押形鋼の長さ(mm)であり、個数は当該熱押形鋼の個数である。また、仕様入力欄303は、長さとして製造される熱押形鋼の長さの合計値(mm)が入力されるよう構成され、個数の入力領域が省略されていてもよい。
【0051】
仕様入力欄303のうち、断面サイズ、長さ、個数といった数値により指定される項目については、数値が直接入力されるようになっていてもよく、増減ボタンの押下により所望の数値を指定できるようになっていてもよい。
【0052】
仕様入力欄303のうち、鋼種といった文字列により指定される項目については、文字列が直接入力されるようになっていてもよく、リスト表示ボタンの押下により表示される選択対象リストから選択することにより文字列が入力されるようになっていてもよい。また、指定される文字列に予め付与された符号により文字列を指定できるようになっていてもよい。
【0053】
製造コスト算出ボタン304は、入力された要求仕様に対応する製造コストの算出を要求するためのボタンである。
【0054】
製造コスト表示欄305は、製造コスト算出ボタン304の押下に応じて算出された製造コストが表示される欄である。製造コスト表示欄305には、要求仕様に応じた熱押形鋼の製造に要するコスト(円)、および、変動費、固定費、素材費、工具費といった内訳費用が表示される。
【0055】
図8は、断面形状入力画面の例である。
【0056】
断面形状入力画面40は、製造コスト算出画面30に含まれる断面形状入力画面表示ボタン301の押下に応じて表示される。断面形状入力画面40は、画像取込ボタン401、テンプレート選択ボタン402、フリー描画ボタン403、断面形状描画欄404、初期化ボタン405、および、完了ボタン406を有する。
【0057】
画像取込ボタン401は、カメラにより撮影された画像を、断面形状を表す画像として取り込むためのボタンである。カメラは、断面形状入力画面40の表示される、端末機器またはコンピュータ1に接続されている。画像取込ボタン401の押下に応じて、カメラの受光素子が生成する画像を表示する表示欄と、表示欄に表示された画像の取り込みを指示する撮影ボタンとを有する撮影画面(不図示)が表示される。
【0058】
テンプレート選択ボタン402は、断面形状の例として予め用意された複数のテンプレートから所望のテンプレートを、断面形状を表す画像として選択するためのボタンである。テンプレート選択ボタン402の押下に応じて、複数のテンプレートを選択可能に表示するテンプレート選択画面(不図示)が表示される。
【0059】
フリー描画ボタン403は、フリーハンドで図形を描画することで断面形状を指定するためのボタンである。フリー描画ボタン403の押下に応じて、断面形状描画欄404に図形を描画するための描画パレット(不図示)が表示される。描画パレットは、直線、曲線、矩形、円形といったオブジェクトを所望の位置に配置する描画ボタン、所望の位置の描画を消去する消去ボタン等を有する。なお、画像取込ボタン401により取り込まれた画像、テンプレート選択ボタン402により選択されたテンプレートに対して、フリー描画ボタン403によりフリー描画を行ってもよい。
【0060】
断面形状描画欄404は、要求仕様に含まれる断面形状として指定される画像の表示される欄である。画像取込ボタン401により取り込まれた画像およびテンプレート選択ボタン402により選択されたテンプレートは、断面形状描画欄404に表示される。また、フリー描画ボタン403によるフリー描画は、断面形状描画欄404に表示された画像に対して行われる。
【0061】
完了ボタン406は、断面形状描画欄404に表示された画像を、要求仕様に含まれる断面形状として指定し、断面形状の入力を完了するためのボタンである。完了ボタン406の押下に応じて、断面形状入力画面40は閉じられて製造コスト算出画面30が再び表示される。再び表示された製造コスト算出画面30の断面形状表示欄302には、完了ボタン406が押下された時点で断面形状描画欄404に表示されていた画像が表示される。
【0062】
図9は、製造コスト算出画面の第2の例である。
【0063】
図9は、要求仕様の入力を受け付けた後、かつ、製造コスト算出前の製造コスト算出画面31を示している。
【0064】
製造コスト算出画面31は、断面形状入力画面表示ボタン311、断面形状表示欄312、仕様入力欄313、製造コスト算出ボタン314、および製造コスト表示欄315を有する。
【0065】
断面形状表示欄312には、断面形状入力画面40で入力された断面形状が表示される。仕様入力欄313には、断面形状以外の要求仕様について入力された値が表示される。その他の部分は製造コスト算出画面30と同様であるので説明を省略する。
【0066】
判定部131は、さらに、要求仕様に含まれる要求画像および断面のサイズに基づいて算出される断面の面積が製造基準121を満たすか否かを判定してもよい。
【0067】
形状特定部132は、製造基準121を満たす要求仕様に含まれる要求画像を畳み込みニューラルネットワークに入力することで、メモリ12に記憶された実績情報127に含まれる実績画像から要求画像に類似する1以上の実績画像を特定する。
【0068】
形状特定部132は、畳み込みニューラルネットワークとして、例えばVGG、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot Detector)といった既知のニューラルネットワークを使用することができる。畳み込みニューラルネットワークは、正解ラベルを付与された教師データを入力することで、予め記憶された複数の画像から入力された画像に類似する画像を特定するよう予め学習されている。
【0069】
形状特定部132は、既知の他の手法を用いて要求画像に類似する1以上の実績画像を特定してもよい。例えば、形状特定部132は、メモリ12に記憶された複数の実績画像および入力された要求画像について、画像に含まれる画素の輝度変化といった局所的な特徴量を計算する局所特徴量マッチングを行う。また、形状特定部132は、複数の実績画像のそれぞれと要求画像との対について、特徴量が類似する点の数を類似度として算出する。そして、形状特定部132は、類似度が所定の類似度閾値よりも大きい対における実績画像を、要求画像に類似する実績画像として特定する。
【0070】
実績特定部133は、形状特定部132により特定された1以上の実績画像のそれぞれに関連づけてメモリ12に記憶された実績情報127のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離がメモリ12に記憶されたサイズ乖離閾値122より小さい断面サイズを含む実績情報を特定する。
【0071】
畳み込みニューラルネットワークや局所特徴量マッチングでは、物体が画像に表される大きさにかかわらず物体を検出することができる。一方、熱間押出法による熱押形鋼の製造においては、断面の形状が類似していても、断面のサイズによっては製造の難易度および製造コストが変動しうる。
【0072】
本開示のコンピュータ1では、実績特定部133は、要求画像を畳み込みニューラルネットワーク等に入力することで特定された実績情報を、断面のサイズによってさらに特定する。このように動作することにより、本開示のコンピュータ1は、熱押形鋼の製造実績に基づいて要求仕様に従った熱押形鋼の製造コストを短時間で適切に算出することができる。
【0073】
実績特定部133は、メモリ12に記憶された複数の実績情報127のうち、要求仕様に含まれる断面のサイズとの乖離がサイズ乖離閾値より小さい断面のサイズを含み、かつ、断面の面積との乖離がメモリ12に記憶される面積乖離閾値より小さい断面の面積を含む実績情報を特定してもよい。
【0074】
面積乖離閾値は、要求仕様における断面の面積との乖離の小さい断面の面積を含む実績情報を特定するための面積の乖離の上限値を示す。
【0075】
面積の乖離は、要求仕様における断面の面積と実績情報における断面の面積との差の、要求仕様に含まれる断面の面積に対する割合(%)として表される。面積の乖離は、要求仕様における断面の面積と実績情報における断面の面積との差(mm2)として表されていてもよい。
【0076】
製造条件特定部134は、製造基準を満たす要求仕様に基づいて製造条件を特定する。製造条件は、熱押形鋼の製造に用いるビレットの径、長さおよび個数を含む。
【0077】
製造条件特定部134は、製造基準を満たす要求仕様に含まれる要求画像および断面のサイズに基づいて、要求仕様に対応する断面の面積を算出する。製造条件特定部134は、まず、所定の縮尺で表示された要求画像における断面のサイズおよび断面の面積を求める。そして、製造条件特定部134は、要求仕様に含まれる断面のサイズと表示された要求画像の断面サイズとの比で表示された断面の面積を除することにより、要求仕様に対応する断面の面積を求めることができる。
【0078】
製造条件特定部134は、要求仕様に対応する断面の面積に要求仕様に含まれる単品長さを乗ずることで、要求仕様に対応する熱押形鋼単品1つの体積を算出する。
【0079】
1つのビレットから要求仕様に含まれる単品長さの熱押形鋼を1つだけ製造可能である場合、製造条件特定部134は、メモリ12に記憶されたビレット諸元一覧124における複数のビレットから、算出された要求仕様に対応する熱押形鋼単品1つの体積および要求仕様に含まれる鋼種に対応するビレットを選択する。
【0080】
製造条件特定部134は、要求仕様に含まれる鋼種のビレットであって、算出された要求仕様に対応する熱押形鋼の体積を製造可能な体積を有するビレットのうち、最小の体積を有するビレットを選択し、当該ビレットの径および長さを製造条件に含める。
【0081】
1つのビレットから要求仕様に含まれる単品長さの熱押形鋼を複数製造可能である場合、製造条件特定部134は、1つのビレットから製造可能な最大個数の熱押形鋼の体積の合計を算出し、当該体積の熱押形鋼を製造可能な体積を有するビレットのうち、最小の体積を有するビレットを選択し、当該ビレットの径および長さを製造条件に含める。
【0082】
製造条件特定部134は、メモリ12に記憶されたビレット径-コンテナ径対応関係125を参照し、特定されたビレットの径に対応するコンテナ径を特定する。
【0083】
製造条件特定部134は、メモリ12に記憶された切捨代情報126を参照し、ビレットを熱間押出法により押し出して製造される熱押形鋼から切捨代を除外した長さが要求仕様に含まれる長さよりも長くなるように、ビレットを選択してもよい。
【0084】
製造条件特定部134は、切捨代を除外した部分から要求仕様に含まれる長さで要求仕様に含まれる個数の熱押形鋼を取得した残りの部分が小さくなるように製造条件を特定してもよい。
【0085】
算出部135は、素材費および工具費を含む製造コストを算出する。
【0086】
算出部135は、選択されたビレットの径および長さに基づいて求められるビレットの体積に、メモリ12に記憶された鋼種諸元一覧123を参照することで特定される要求仕様に含まれる鋼種に対応する素材単価を乗ずることで素材費を算出する。
【0087】
算出部135は、特定された実績情報に含まれる工具費に基づいて、製造コストにおける工具費を算出する。
【0088】
算出部135は、1つのビレットからの押し出しにより要求仕様に従った熱押形鋼が製造される場合、特定された実績情報に含まれる工具費のうちの工具単価を製造コストにおける工具費とする。
【0089】
算出部135は、複数のビレットからの押し出しにより要求仕様に従った熱押形鋼が製造される場合、特定された実績情報に含まれる工具費のうちの工具単価にビレットの個数を乗じた値を製造コストにおける工具費とする。
【0090】
算出部135は、複数のビレットからの押し出しにより要求仕様に従った熱押形鋼が製造される場合、特定された実績情報に含まれる工具費のうちの工具原単位にビレットの個数を乗じた値を製造コストにおける工具費としてもよい。
【0091】
算出部135は、変動費および固定費を含めるように製造コストを算出してもよい。変動費は電気使用量、水道使用量といった熱押形鋼の製造量に応じて生ずる費用である。固定費は、人件費、固定償却費といった熱押形鋼の製造量にかかわらず生ずる費用である。
【0092】
算出部135は、特定された実績情報127に含まれる精整能率が高いほど小さくなるように設定された精整変動費を含む単位製造量あたりの変動費である単位変動費および固定費を設定する。そして、算出部135は、単位変動費に要求仕様に従って製造される熱押形鋼の重量に単位変動費を乗じた値を変動費として算出する。
【0093】
作成部136は、要求仕様に従った熱押形鋼の製造可否、および、要求仕様に従った熱押形鋼の製造が可能である場合、算出された製造コストを表示するための表示データを作成する。
【0094】
作成部136は、要求仕様に従った熱押形鋼の製造が可能でない場合、製造基準121を満たすように要求画像を変更した代替要求画像を生成し、生成された代替要求画像を含む表示データを作成してもよい。
【0095】
作成部136は、製造条件121に含まれる条件のうち要求画像が満たさない条件について、要求画像において満たさない箇所を検出し、当該条件を満たすように要求画像を変更することにより代替要求画像を生成する。
【0096】
図10(a)は製造コスト算出画面の第3の例であり、図10(b)は製造コスト算出画面の第4の例である。
【0097】
図10(a)は、図9に示す製造コスト算出画面32の製造コスト算出ボタン314の押下に応じて表示される、要求仕様が製造条件を満たす場合の製造コスト算出画面32を示している。
【0098】
製造コスト算出画面32は、断面形状入力画面表示ボタン321、断面形状表示欄322、仕様入力欄323、製造コスト算出ボタン324、および製造コスト表示欄325を有する。
【0099】
製造コスト表示欄325には、算出部135により算出された製造コストが表示される。その他の部分は製造コスト算出画面31と同様であるので説明を省略する。
【0100】
図10(b)は、図9に示す製造コスト算出画面32の製造コスト算出ボタン314の押下に応じて表示される、要求仕様が製造条件を満たさない場合の製造コスト算出画面33を示している。
【0101】
製造コスト算出画面33では、要求仕様の入力された製造コスト算出画面31に製造不可メッセージ34がオーバーレイ表示される。製造不可メッセージ34は、テキスト表示領域341と代替画像表示領域342とを有する。
【0102】
テキスト表示領域341には、要求仕様が製造基準を満たさないことを示すテキストが表示される。また、テキスト表示領域341には、要求画像の変更を検討するメッセージが表示される。
【0103】
代替画像表示領域342には、作成部136により作成された代替要求画像が表示される。製造コスト算出画面33では、代替画像表示領域342へのクリックなどの操作に応じて、代替要求画像を要求画像とする製造コスト算出画面が表示されるように構成されていてもよい。代替要求画像を要求画像とする製造コスト算出画面では、製造コスト算出ボタンの押下に応じて、代替要求画像に基づく製造コストの算出および表示が行われる。
【0104】
図11は、製造コスト算出方法の処理フローチャートである。
【0105】
コンピュータ1のプロセッサ13は、製造コスト算出画面における製造コスト算出ボタンの押下などにより製造コストの算出を要求される度に、図11に示す処理を実行する。
【0106】
まず、プロセッサ13の判定部131は、熱押形鋼の要求仕様が製造基準を満たすか否かを判定する(ステップS1)。なお、ステップS1は、要求仕様が予め準備されたテンプレートから選択されるなど要求仕様が製造基準を満たすことが明らかである場合、要求仕様が製造基準を満たすか否かを判定する必要がないため、省略されていてもよい。
【0107】
熱押形鋼の要求仕様が製造基準を満たすと判定された場合(ステップS1:Y)、プロセッサ13の形状特定部132は、要求仕様に含まれる要求画像を畳み込みニューラルネットワークに入力することで1以上の実績画像を特定する(ステップS2)。
【0108】
続いて、プロセッサ13の実績特定部133は、特定された1以上の実績画像に関連づけて記憶された実績情報のうち、要求仕様に含まれる断面サイズとの乖離の小さい断面のサイズを含む実績情報を特定する(ステップS3)。
【0109】
次に、プロセッサ13の製造条件特定部134は、製造条件を満たす要求仕様に基づいて、熱押形鋼の製造条件を特定する(ステップS4)。
【0110】
続いて、プロセッサ13の算出部135は、素材費および工具費を含む製造コストを算出する(ステップS5)。
【0111】
ステップS5に続いて、または、熱押形鋼の要求仕様が製造基準を満たすと判定された場合(ステップS1:Y)、プロセッサ13の作成部136は、表示データを作成し(ステップS6)、製造コスト算出処理を終了する。表示データは、要求仕様に従った熱押形鋼の製造可否、および、要求仕様に従った熱押形鋼の製造が可能である場合、算出された製造コストを表示するためのデータである。
【0112】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0113】
1 コンピュータ
131 判定部
132 形状特定部
133 実績特定部
134 製造条件特定部
135 算出部
136 作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11