(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】一液型硬化性組成物及び一液型硬化性組成物の硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20250110BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250110BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20250110BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20250110BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20250110BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20250110BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20250110BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/08 038
C08G18/30 070
C08G18/40
C08G18/40 063
C08G18/62 016
C08G18/67
C08G18/75
C09K3/10 D
C09K3/10 E
C09K3/10 Q
(21)【出願番号】P 2018180219
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-07-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2017188430
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103541
【氏名又は名称】オート化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】阿保 欣佑
(72)【発明者】
【氏名】村岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌司
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】植前 充司
【審判官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252292(JP,A)
【文献】特開2014-47585(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/10
C08G 18/08
C08G 18/30
C08G 18/40
C08G 18/62
C08G 18/67
C08G 18/75
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、揺変性付与剤(B)と、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)と、を含む
建築物のシーリング材用一液型硬化性組成物であり、
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、有機イソシアネート化合物(a)と活性水素含有化合物(b)との反応生成物であり、
前記活性水素含有化合物(b)が、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)と、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)と、数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)とを含み、
該一液型硬化性組成物の硬化物のASTM D1003-97に準じて測定したヘーズ値が、40%以下である、
建築物のシーリング材用一液型硬化性組成物。
【請求項2】
前記活性水素含有化合物(b)中に、前記活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれる請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項3】
前記活性水素含有化合物(b)中に、前記少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれる請求項1または2に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項4】
前記有機イソシアネート化合物(a)が、脂環族ポリイソシアネート化合物を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項5】
前記揺変性付与剤(B)が、微粉状シリカを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項6】
前記湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)が、オキサゾリジン化合物である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、0.10質量%以上15質量%以下のイソシアネート基を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項8】
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、前記活性水素含有化合物(b)の活性水素1.0モルに対して、前記有機イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基が1.5モル以上8.0モル以下の反応生成物である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項9】
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)(固形分)に対し、前記揺変性付与剤(B)を0.50質量部以上20質量部以下含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項10】
前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基1.0モルに対して、前記湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)の、湿分と反応して生成する活性水素含有官能基の活性水素が、0.10モル以上1.5モル以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項11】
前記数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)が、ポリオキシプロピレン系ポリオールを含む請求項1乃至10のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の一液型硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する一液型硬化性組成物及び前記一液型硬化性組成物の硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、建築基準法により、住宅等の建物の空気を所定時間で入れ替えることができる換気設備の設置が必要とされていることから、建物内に換気装置が設けられることが多い。換気装置は、屋外に連通するダクトを備え、ダクトの先端は、外壁面に開口された換気口に接続されている。換気口には、その内部に雨水等の進入を防止するために、ベントキャップが取り付けられている。ここで、ベントキャップと外壁との間に僅かでも隙間があると、この隙間から雨水等が進入してしまう。よって、ベントキャップと外壁との隙間からの雨水等の進入を防止するために、前記隙間には、シーリング材が充填され、このシーリング材により、防水シール部が形成されている。
【0003】
また、近年の戸建住宅の高意匠化に伴って、様々な模様や色調に彩色された外壁が用いられている。これに対し、ベントキャップと外壁の隙間に用いられるシーリング材は、通常、白色単独であるか、数色のみが用意されており、比較的外壁の色調に近いものが用いられることが多い。意匠性が高い外壁にこのようなシーリング材を用いると、ベントキャップ周辺のみが目立ってしまい、建物全体の美観を損ねてしまう場合がある。
【0004】
一方で、外壁の目地部に使用されるシーリング材には多種多様な色調のシーリング材が用意されている場合もあるが、一般的には、ベントキャップの施工業者は外壁の目地部にシーリング材を充填する業者とは異なる場合が多い。ベントキャップの施工業者が、模様や色調の異なる建物毎に、ベントキャップの防水シール部のみに用いるシーリング材を用意することは現実的ではないのが実情である。
【0005】
上記問題を解決するために、ベントキャップと外壁の隙間に用いられるシーリング材として、透明タイプのものも市販されているが、その透明度は低く、依然として、建物の美観を損ねてしまう場合がある。また、透明タイプの前記シーリング材は、透明度の観点から隠蔽性の高い酸化チタン等の顔料を用いることができないので、耐候性が不十分であり、建物全体の高耐久化が進んでいる現状では問題となっている。
【0006】
このタイプのシーリング材は、その多くがシリコーン系、変成シリコーン系であり(特許文献1)、施工後にシリコーン前駆体の分子による撥水汚染や含有する可塑剤により周辺を汚染するという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高い透明性と耐候性を有し、建物外観の美観を損ねることなく、長期にわたって周辺を汚染しない一液型硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、揺変性付与剤(B)と、を含む一液型硬化性組成物であり、該一液型硬化性組成物の硬化物のASTM
D1003-97におけるヘーズ値が、40%以下である、一液型硬化性組成物である。
【0010】
本発明の態様は、さらに、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)を含む、一液型硬化性組成物である。
【0011】
本発明の態様は、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、有機イソシアネート化合物(a)と活性水素含有化合物(b)との反応生成物であり、前記活性水素含有化合物(b)が、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)と、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)と、数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)とを含む、一液型硬化性組成物である。
【0012】
本発明の態様は、前記活性水素含有化合物(b)中に、前記活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれる一液型硬化性組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記活性水素含有化合物(b)中に、前記少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれる一液型硬化性組成物である。
【0014】
本発明の態様は、前記有機イソシアネート化合物(a)が、脂環族ポリイソシアネート化合物を含む一液型硬化性組成物である。
【0015】
本発明の態様は、前記揺変性付与剤(B)が、微粉状シリカを含む一液型硬化性組成物である。
【0016】
本発明の態様は、前記湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)が、オキサゾリジン化合物である一液型硬化性組成物である。
【0017】
本発明の態様は、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、0.10質量%以上15質量%以下のイソシアネート基を有する一液型硬化性組成物である。
【0018】
本発明の態様は、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、前記活性水素含有化合物(b)の活性水素1.0モルに対して、前記有機イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基が1.5モル以上8.0モル以下の反応生成物である一液型硬化性組成物である。
【0019】
本発明の態様は、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)(固形分)に対し、前記揺変性付与剤(B)を0.50質量部以上20質量部以下含む一液型硬化性組成物である。
【0020】
本発明の態様は、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基1.0モルに対して、前記湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)の、湿分と反応して生成する活性水素含有官能基の活性水素が、0.10モル以上1.5モル以下である一液型硬化性組成物である。
【0021】
本発明の態様は、上記一液型硬化性組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と揺変性付与剤(B)とを含む一液型硬化性組成物の硬化物の、ASTM D1003-97におけるヘーズ値が40%以下であることにより、高い透明性と耐候性を有し、建物外観の美観を損ねることなく、長期にわたって周辺を汚染しない一液型硬化性組成物を得ることができる。
【0023】
本発明の態様によれば、有機イソシアネート化合物(a)と活性水素含有化合物(b)との反応生成物であるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の、活性水素含有化合物(b)が、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)と、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)と、数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)とを含むことにより、透明性と耐候性をより向上させることができ、また、建物外観の美観を損ねることなく、より確実に長期にわたって周辺を汚染しない硬化物となる、一液型硬化性組成物を得ることができる。
【0024】
本発明の態様によれば、活性水素含有化合物(b)中に、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれることにより、耐候性とゴム物性のさらに向上した硬化物を得ることができる。
【0025】
本発明の態様によれば、活性水素含有化合物(b)中に、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)が1.0質量%以上7.0質量%以下含まれることにより、耐候性とゴム物性のさらに向上した硬化物を得ることができる。
【0026】
本発明の態様によれば、有機イソシアネート化合物(a)が、脂環族ポリイソシアネート化合物を含むことにより、透明性と耐候性がさらに向上し、耐久性を有する硬化物を得ることができる。
【0027】
本発明の態様によれば、揺変性付与剤(B)が、微粉状シリカを含むことにより、透明性をより確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例及び比較例における汚染性の試験方法を説明する平面図である。
【
図2】実施例及び比較例における汚染性の試験方法を説明する側面図である。
【
図3】実施例及び比較例における耐候性の試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一液型硬化性組成物について、詳細を説明する。本発明の一液型硬化性組成物は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、揺変性付与剤(B)と、を含む一液型硬化性組成物であり、該一液型硬化性組成物の硬化物のASTM D1003-97におけるヘーズ値が、40%以下である。
【0030】
本発明の一液型硬化性組成物の硬化物のASTM D1003-97におけるヘーズ値は、40%以下であれば、特に限定されないが、生産の容易性と優れた透明性とのバランスの点から、8%以上30%以下が好ましく、12%以上25%以下が特に好ましい。
【0031】
次に、本発明の一液型硬化性組成物の構成成分について、以下に説明する。
【0032】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、有機イソシアネート化合物(a)と活性水素含有化合物(b)とを、有機イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基のモル数を活性水素含有化合物(b)の活性水素のモル数に対して過剰となるモル比にて配合し反応させることにより得られる化合物である。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、硬化成分である。
【0033】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)中におけるイソシアネート基の含有量は、特に限定されないが、その下限値は、得られる一液型硬化性組成物の作業性や接着性の点から、0.10質量%が好ましく、0.20質量%がより好ましく、0.40質量%が特に好ましい。一方で、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)中におけるイソシアネート基の含有量の上限値は、得られる一液型硬化性組成物の硬化時の発泡や、硬化物の物性の点から、15.0質量%が好ましく、12.0質量%がより好ましく、10.0質量%が特に好ましい。
【0034】
また、活性水素含有化合物の活性水素1.0モルに対する有機イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数は、イソシアネート基のモル数が過剰であれば特に限定されないが、その下限値は、得られる一液型硬化性組成物の作業性や接着性の点から1.5モルが好ましく、2.0モルがより好ましく、3.0モルさらに好ましく、4.0モルが特に好ましい。一方で、その上限値は、得られる一液型硬化性組成物の硬化時の発泡や、硬化物の物性の点から8.0モルが好ましく、6.0モルがより好ましく、5.0モルが特に好ましい。
【0035】
有機イソシアネート化合物(a)
有機イソシアネート化合物(a)としては、特に限定されないが、有機ポリイソシアネートが挙げられ、また、必要に応じて使用してもよいイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)変性用として、有機モノイソシアネートが挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂肪族炭化水素と結合している脂肪族系ポリイソシアネートが挙げられる。
【0036】
芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類(TDI類);フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0038】
また、これらジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、二量体、三量体、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたはポリメリックMDI)なども挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明の一液型硬化性組成物の硬化物について、透明性をさらに向上させつつ、長期にわたってひび割れ、変色及びチョーキング等の欠陥の発生を防止して耐候性をさらに向上させ、さらに耐久性を付与する点から、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、脂環族ポリイソシアネートがより好ましく、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0039】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用である有機モノイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート等の脂肪族系モノイソシアネートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
活性水素含有化合物(b)
活性水素含有化合物(b)としては、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)、数平均分子量1000以上のポリオール(以下、「高分子のポリオール」ということがある。)(b-3)、低分子のポリオール、アミノアルコール、ポリアミンなどが挙げられる。このうち、本発明の一液型硬化性組成物では、活性水素含有化合物(b)として、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)、数平均分子量1000以上のポリオール(高分子のポリオール)(b-3)を含有するものが使用されることが好ましい。
【0041】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を構成する活性水素含有化合物(b)の少なくとも一部として、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)と、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)と、数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)とを組み合わせて使用することにより、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の耐候性をさらに向上させることができる。また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)に、必要に応じて、後述する湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)を配合した一液型硬化性組成物では、作業性を悪化させることなく、また発泡することなく速やかに硬化し、優れたゴム物性を付与することができる。さらに、本発明の一液型硬化性組成物の硬化物は、優れた透明性と耐候性を有し、建物の美観を損ねることなく、長期にわたって周辺の汚染を抑制することができる。
【0042】
活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)
活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)としては、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールを挙げることができる。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含有するエチレン性不飽和化合物を、重合開始剤の存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下において、バッチ式又は連続重合などの公知のラジカル重合の方法により、好ましくは150~350℃、さらに好ましくは210~250℃で、高温連続重合反応して得られるものが、反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になる点で、好適である。
【0043】
ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、1種の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を重合して得られるものでもよく、2種以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を共重合して得られるものでもよく、1種又は2種以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体と水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物とを共重合して得られるものでもよい。これらのうち、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの水酸基の含有量を調節することが容易で、硬化物の物性を選択しやすい点から、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上と水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上とを共重合して得られるものが好ましい。また、このうち、炭素数が9以下の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上と炭素数が10以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上とが合計で50質量%以上と水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上が50質量%以下とを共重合して得られるものがより好ましく、炭素数が9以下の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上と炭素数が10以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上が合計で70質量%以上と水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上が30質量%以下とを共重合して得られるものが特に好ましい。
【0044】
前記共重合の際、それぞれ1種又は2種以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール1分子あたり、平均水酸基官能数が1.0~10個となるように使用するのが好ましく、1.2~3個となるように使用するのが特に好ましい。平均水酸基官能数が10個を超えると、硬化後の物性が硬くなって十分なゴム状弾性が得られなくなる場合がある。
【0045】
また、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、特に限定されないが、1000~30000が好ましく、1000~15000が特に好ましい。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールのTgは、特に限定されないが、0℃以下が好ましく、-70~-20℃がより好ましく、-70~-30℃が特に好ましい。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの25℃における粘度は、特に限定されないが、100000mPa・s以下が好ましく、50000mPa・s以下が特に好ましい。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの、数平均分子量30000、Tgが0℃、25℃における粘度が100000mPa・sをそれぞれ超えると、施工時の作業性が低下する場合がある。
【0046】
活性水素含有化合物中における活性水素含有(メタ)アクリル系重合体の含有量は、特に限定されないが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を含有する一液型硬化性組成物の耐候性、透明性及びゴム物性をさらに向上させる点から、1.0質量%以上7.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下が特に好ましい。
【0047】
少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)
少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と反応する活性水素を1つ以上有し、かつ、光硬化性のエチレン性不飽和基を1つ以上有する化合物である。
【0048】
前記活性水素としては、例えば、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらのうち、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応が容易で比較的粘度上昇が小さい点から、水酸基が好ましい。前記光硬化性のエチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、シンナモイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。これらのうち、光に暴露されることにより比較的短時間で重合反応して耐候性に優れた被膜を形成する点で、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0049】
活性水素基として水酸基を1つ以上有し、かつ、光硬化性のエチレン性不飽和基としてアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物として、例えば、東亞合成株式会社製「アロニックス」シリーズ、日本化薬株式会社製「KAYARAD」シリーズ、共栄社化学株式会社製「エポキシエステル」シリーズなどを挙げることができる。
【0050】
活性水素含有化合物中における、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を含有する一液型硬化性組成物の耐候性、透明性及びゴム物性をさらに向上させる点から、1.0質量%以上7.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下が特に好ましい。
【0051】
数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)
数平均分子量1000以上のポリオール(高分子ポリオール)(b-3)としては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオールなどが挙げられる。なお、数平均分子量1000以上のポリオール(b-3)は、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(b-1)及び少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(b-2)以外の高分子ポリオールを意味する。
【0052】
また、本明細書中、高分子ポリオール、高分子モノオールとは、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が1000以上のポリオール、モノオールを意味し、低分子ポリオール、低分子モノオール、低分子アミノアルコールとは、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が1000未満のポリオール、モノオール、アミノアルコールを意味する。
【0053】
高分子ポリオールの数平均分子量が1000以上であることにより、硬化後により優れたゴム弾性を得ることができる。高分子ポリオールの数平均分子量の下限値としては、さらにゴム弾性を向上させて優れた接着性能を得る点から1500が好ましく、2000が特に好ましい。一方で、その上限値は、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の粘度上昇を防止して、優れた作業性を得る点から100000が好ましく、30000がより好ましく、20000が特に好ましい。
【0054】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、へキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸;これらポリカルボン酸のメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステル化合物;これらポリカルボン酸の酸無水物などの1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール;ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量が1000未満のポリアミン);モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコールなどの1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールなどが挙げられる。また、低分子ポリオール、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0055】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールとホスゲンとの脱塩酸反応、または上記低分子ポリオールとジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものなどが挙げられる。
【0056】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、例えば、上記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール、低分子アミノアルコール、ポリカルボン酸の他、ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量が1000未満)多価アルコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量が1000未満)多価フェノールの一種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合(以下、「重合または共重合」を(共)重合という場合がある。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムあるいはブロック共重合系ポリオールなどが挙げられる。また、ポリオキシアルキレン系ポリオールとして、例えば、上記ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールなどが挙げられる。さらに、例えば、上記低分子ポリオールと有機イソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させたポリオールが挙げられる。
【0057】
ポリオキシアルキレン系ポリオールのアルコール性水酸基の数は、特に限定されないが、1分子当たり平均2個超が好ましく、1分子当たり平均2個超~4個がより好ましく、1分子当たり平均2個超~3個がさらに好ましい。このうち、硬化後の優れた接着性能とゴム弾性の点から、ポリオキシアルキレン系ジオール、ポリオキシアルキレン系トリオール、ポリオキシアルキレン系ジオールとポリオキシアルキレン系トリオールとの混合物が特に好ましい。
【0058】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの調製時に使用する触媒としては、例えば、水素化セシウム、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウムなどのセシウム系化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ホスファゼニウム化合物、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体などが挙げられる。
【0059】
また、必要に応じて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコールを開始剤として、上記したプロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加(共)重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールなどを使用してもよい。
【0060】
なお、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系モノオールなどの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上が、ポリオキシアルキレンで構成されていることを意味する。従って、残部は、エステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等、他の構造で変性されていてもよい。ポリオキシアルキレンで構成されている部分は50質量%以上であれば、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0061】
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールなどが挙げられる。
【0062】
動植物系ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油系ジオールなどが挙げられる。また、鎖延長剤としては、例えば、上記したポリエステル系ポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール、低分子アミノアルコールの他、上記したポリオキシアルキレン系ポリオールであって、数平均分子量が1000未満のものが挙げられる。
【0063】
上記した各種高分子ポリオールは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
高分子ポリオールの総不飽和度は、特に限定されないが、0.1meq/g以下が好ましく、0.07meq/g以下がより好ましく、0.04meq/g以下が特に好ましい。また、高分子ポリオールの分子量分布〔GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn〕は、特に限定されないが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の粘度を低減し、かつ硬化後のゴム弾性がより向上する点から1.0~1.6が好ましく、1.0~1.3が特に好ましい。
【0065】
上記した高分子ポリオールのうち、ゴム弾性と接着性能の点からポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましく、このうち、ポリオキシプロピレン系ポリオールが特に好ましい。
【0066】
活性水素含有化合物中における高分子ポリオールの含有量は、特に限定されないが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を含有する一液型硬化性組成物の耐候性、透明性及びゴム物性をさらに向上させる点から、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下が特に好ましい。
【0067】
本発明の一液型硬化性組成物に配合されるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)では、活性水素含有化合物(b)として、上記(b-1)成分、(b-2)成分、(b-3)成分の他に、必要に応じて、さらに、数平均分子量1000未満のポリオール(低分子ポリオール)、アミノアルコール、ポリアミン等を使用してもよい。
【0068】
低分子ポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの製造原料として挙げた数平均分子量1000未満の低分子多価アルコールが挙げられる。
【0069】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-フェニルジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0070】
ポリアミンとしては、ポリプロピレングリコールの末端ジアミノ化などの、数平均分子量1000以上でポリオキシアルキレン系ポリオールの末端がアミノ基となったポリオキシアルキレンポリアミン等の高分子ポリアミンが挙げられる。ポリアミンとしては、さらに、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジエチレントリアミン等の数平均分子量500未満の低分子ポリアミンが挙げられる。
【0071】
本発明で使用するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)には、オクチル酸第一錫、オクチル酸錫などの亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との金属塩(金属有機酸塩)、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、錫系キレート化合物であるEXCESTARC-501(AGC株式会社製)などの金属キレート化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン等の有機アミンやその塩等、公知のウレタン化触媒を用いることができる。これらのウレタン化触媒のうち、金属有機酸塩、有機金属化合物が好ましい。また、更に公知の有機触媒を用いることもできる。
【0072】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の製造方法は、特に限定されず、一括仕込み反応法、多段階仕込み反応法等を使用することができるが、例えば、ガラス製やステンレス製の反応容器に活性水素含有化合物(b)と有機イソシアネート化合物(a)とを仕込み、必要に応じて、反応触媒や有機溶剤を添加し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気と反応して、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が増粘することがあるので、必要に応じて、窒素ガス置換、窒素ガス気流下などの湿気を遮断した状態で反応を行ってもよい。
【0073】
揺変性付与剤(B)
揺変性付与剤(B)は、本発明の一液型硬化性組成物に揺変性を付与して、一液型硬化性組成物をベントキャップや建築物の外装材などの垂直面に充填や塗布したときに垂れ(スランプ)を起こさないようにするために使用するものである。揺変性付与剤(B)は、一液型硬化性組成物を建築物のシーリング材として使用するときに、きわめて重要な成分である。
【0074】
揺変性付与剤(B)としては、例えば、有機酸系化合物で表面処理された炭酸カルシウム、親水性の微粉状シリカ、親水性の微粉状シリカの表面を、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ウレイレン基含有有機基および加水分解性シリル基含有化合物等で処理した、表面処理微粉状シリカ等の無機系揺変性付与剤;有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機系揺変性付与剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0075】
微粉状シリカとしては、例えば、石英、ケイ砂、珪藻土等を粉砕して微粉状にした天然シリカ、また、沈降法シリカ等の湿式シリカ、フュームドシリカ等の乾式シリカなどの合成シリカなどが挙げられる。
【0076】
本発明の一液型硬化性組成物においては、一液型硬化性組成物の硬化物のヘーズ値(ASTM D1003-97)が40%以下であること、すなわち、透明性を向上させる点から、親水性の微粉状シリカ、表面処理微粉状シリカ、脂肪酸アマイドが好ましく、一液型硬化性組成物の硬化触媒の存在下においても安定した揺変性を維持できる点から、表面処理微粉状シリカ、脂肪酸アマイドが特に好ましい。
【0077】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(固形分)に対する揺変性付与剤(B)の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、確実に揺変性を付与する点から0.5質量部が好ましく、2.5質量部が特に好ましい。一方で、その上限値は、一液型硬化性組成物の作業性の点から20.0質量部が好ましく、12.0質量部が特に好ましい。
【0078】
湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)
本発明の一液型硬化性組成物においては、必要に応じて、さらに、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)を配合してもよい。湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)としては、例えば、湿分により加水分解して第1級および/または第2級アミンを生成するケチミン化合物、エナミン化合物、アルジミン化合物、湿分により加水分解して水酸基とアミノ基を生成するオキサゾリジン環を有する化合物、湿分により加水分解してポリオールを生成することが可能なケイ酸エステル化合物が挙げられる。これらのうち、一液型硬化性組成物の貯蔵安定性に優れ、硬化時におけるガス発生量の低減による非発泡性、及び硬化性に優れることから、オキサゾリジン環を有する化合物が好ましい。
【0079】
オキサゾリジン環を有する化合物は、酸素原子と窒素原子を含む飽和5員環の複素環であるオキサゾリジン環を分子内に1つ以上、好ましくは2~6つ有する化合物である。このオキサゾリジン環を有する化合物は、大気中等の水分(湿気)と反応し加水分解を受けることにより、オキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基を生成(再生)することにより、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の潜在硬化剤として機能するものである。
【0080】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が大気中等の水分(湿気)と反応すると、尿素結合を生成して硬化するが、この際炭酸ガスも発生し、硬化物の中に炭酸ガスによる気泡が生じ、外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下などの不具合を生じる。しかしながら、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)とオキサゾリジン環を有する化合物とを混合したものを水分に暴露した場合は、水分とイソシアネート基が反応する前に、オキサゾリジン環を有する化合物のオキサゾリジン環が水分により加水分解を受け、活性水素(オキサゾリジン環を有する化合物の場合、2級アミノ基とアルコール性水酸基)を生成する。生成した活性水素がイソシアネート基と反応して硬化する際には炭酸ガスが発生しないので、本発明の一液型硬化性組成物の炭酸ガスによる発泡を防止できる。
【0081】
また、有機イソシアネート化合物(a)としてイソホロンジイソシアネートを用いたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の場合、水分(湿分)のみと反応する場合は硬化速度が極端に遅延してしまうところ、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)としてオキサゾリジン環を有する化合物を用いることにより、オキサゾリジン環を有する化合物と水分(湿分)との反応により生成する2級アミノ基とイソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基との反応は、水分(湿分)との反応より反応速度が大きいため、硬化速度を速めることができるという効果をも有する。
【0082】
オキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と有機イソシアネート化合物のイソシアネート基との反応生成物であるウレタン結合含有オキサゾリジン化合物、水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基とカルボン酸化合物のカルボキシル基との反応生成物であるエステル結合含有オキサゾリジン化合物、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネート基含有オキサゾリジンなどが挙げられる。このうち、製造の容易性と粘度が低い点からウレタン結合含有オキサゾリジン化合物が好ましい。
【0083】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物としては、例えば、水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基とを、イソシアネート基/水酸基のモル比が0.9~1.2/1.0の範囲、好ましくは0.95~1.05/1.0の範囲となるように、水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物と有機イソシアネート化合物を配合し、必要に応じて有機溶剤を添加し、50~100℃の温度で反応して得られるものが挙げられる。
【0084】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成に用いられる有機イソシアネート化合物としては、イソシアネート基が芳香族炭化水素に結合している芳香族系ポリイソシアネート、芳香環を有しかつイソシアネート基が脂肪族炭化水素基に結合している芳香脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート基及び脂肪族炭化水素基のみからなる脂肪族系ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0085】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、またはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネートまたはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート類(TDI類);他の芳香族系ポリイソシアネートとして、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0086】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0087】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0088】
また、上記各種のポリイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、二量体、三量体、またはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
これらのうち、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の結晶化度を低下させ、得られる一液型硬化性組成物の作業性を良好にできる点で、脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0090】
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、例えば、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられる。
【0091】
アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(2-ヒドロキシプロピル)アミンなどが挙げられる。ケトン化合物としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、イソブチルケトン、メチル-t-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。アルデヒド化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、n-へキシルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、3,5,5-トリメチルへキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒ、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物などが挙げられる。
【0092】
これらのうち、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、得られる一液型硬化性組成物が硬化するときの発泡防止性により優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物とアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、アルデヒド化合物のうち、イソブチルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。
【0093】
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の具体例としては、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-フェニル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどが挙げられる。
【0094】
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の合成方法としては、例えば、アルカノールアミンの2級アミノ基1.0モルに対し、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基が1.0モル以上、好ましくは1.0~1.5モル、特に好ましくは1.0~1.2モル使用し、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱、還流し、副生する水を除去しながら脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0095】
エステル結合含有オキサゾリジン化合物は、例えば、上記した水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジカルボン酸化合物またはポリカルボン酸化合物の低級アルキルエステルとの反応によって得ることができる。
【0096】
オキサゾリジンシリルエーテルは、例えば、上記した水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物と、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの脱アルコール反応により得ることができる。
【0097】
カーボネート基含有オキサゾリジンは、上記した水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジアリルカーボネート等のカーボネートとを、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを用いて反応させることによって得ることができる。
【0098】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基1.0モルに対する、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)が加水分解して生成する活性水素(オキサゾリジン環を有する化合物では、2級アミノ基とアルコール性水酸基)の総計は、特に限定されないが、その下限値は、より確実に炭酸ガスの発生を防止する点から0.1モルが好ましく、0.2モルがより好ましく、0.3モルが特に好ましい。一方で、その上限値は、硬化物の物性の点から1.5モルが好ましく、1.0モルが特に好ましい。
【0099】
また、必要に応じて、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)(例えば、オキサゾリジン環を有する化合物)の加水分解触媒を添加してもよい。上記加水分解触媒として、例えば、オキサゾリジン環の加水分解触媒を挙げることができる。オキサゾリジン環の加水分解触媒は、オキサゾリジン環を有する化合物が湿気と反応し加水分解をして活性水素を生成(再生)するのを促進させ、または生成(再生)した活性水素とイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基との反応を促進させて、本発明の一液型硬化性組成物の硬化速度を向上させることができる。オキサゾリジン環の加水分解触媒としては、例えば、有機金属系触媒、有機カルボン酸系触媒、これらの酸無水物、p-トルエンスルホニルイソシアネート、p-トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物、有機燐酸エステル化合物などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
オキサゾリジン環の加水分解触媒の配合量は、特に限定されないが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(固形分)に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.1~5質量部が特に好ましい。0.001質量部未満ではオキサゾリジン環を有する化合物の加水分解を促進させる効果が十分ではなく、10質量部を超えると一液型硬化性組成物の貯蔵安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0101】
本発明の一液型硬化性組成物では、必要に応じて、さらに、充填剤、接着性向上剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0102】
充填剤としては、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウムなどの無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、セラミックバルーンなどの無機系バルーン状充填剤などの無機系充填剤;上記無機系充填剤の表面を脂肪酸などの有機物で処理した充填剤;木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、熱可塑性または熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン粉末等の有機系粉末状充填剤;ポリエチレン中空体、サランマイクロバルーンなどの有機系バルーン状充填剤などの有機系充填剤などの他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの難燃性付与充填剤なども挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。充填剤の粒径は、特に限定されないが、塗工性の点から0.01~1000μmが好ましい。
【0103】
接着性向上剤としては、例えば、カップリング剤が挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などのカップリング剤またはその部分加水分解縮合物を挙げることができる。このうち、接着性能の点からシラン系カップリング剤またはその部分加水分解縮合物が好ましい。
【0104】
シラン系カップリング剤としては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する分子量500以下、好ましくは400以下の化合物、上記シラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200~3000の化合物を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0105】
貯蔵安定性改良剤としては、一液型硬化性組成物中に存在する水分と反応するビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウム、p-トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、p-トルエンスルホニルイソシアネートは、上記の通り、湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C)を使用したときの硬化促進剤としても作用するので、特に好ましい。
【0106】
着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなどの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0107】
上記各種添加剤の配合量は、一液型硬化性組成物の硬化物のヘーズ値が、40%以下となるように選択される。
【0108】
接着性向上剤と貯蔵安定性改良剤の配合量の合計は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0~500質量部が好ましく、5~300質量部が特に好ましい。
【0109】
本発明の一液型硬化性組成物において、前記添加剤はそれぞれ1種類または2種類以上を組み合せて使用することができる。
【実施例】
【0110】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0111】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1(湿分により加水分解して活性水素含有官能基を生成する化合物(C))の合成
合成例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、エステル管および加熱・冷却装置のついた反応容器に、窒素ガスを流しながら、ジエタノールアミン(分子量105)を420g、トルエンを177gおよびイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を317g仕込み、攪拌しながら加温し、副生する水(71.9g)を系外に除去しながら、110~150℃で還流脱水反応を行った。水の留出が認められなくなった後、さらに減圧下(50~70hPa)で加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物であるN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジンを得た。次いで、得られたN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジン636gに、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を336g加え、80℃で8時間加熱し、滴定による実測NCO含有量が0.0質量%になった時点で反応終了とし、分子内にオキサゾリジン環を2つ有するウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1(分子量487)を得た。この得られたウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1は、常温で液体であった。
【0112】
実施例1で用いる一液型硬化性組成物A-1の調製
攪拌棒、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き混練・反応容器に窒素ガスを流しながら、ナフテン系溶剤(丸善石油化学株式会社製、スワクリーン150)を55gと、ポリオキシプロピレンジオール(AGC株式会社製、商品名:エクセノール3021、数平均分子量3300)を330gと、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(東亜合成株式会社製、商品名:ARUFON UH2041、重量平均分子量2500)を140gと、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物(日本化薬株式会社製、KAYARADR―167、平均分子量374)を25g仕込み、攪拌混合した。次いでイソホロンジイソシアネートを176.5gおよび反応触媒として無機ビスマス(日東化成工業株式会社製、ネオスタンU-600)を0.1g攪拌しながら仕込んだ後、加温し70~75℃で1時間反応した。その後常温に冷却してヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、IRGANOX245)を15g、ヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブLA-63P)を15g、ポリビニルメチルエーテル(センカ株式会社製、ポリビニルメチルエーテル-65D)を15g、疎水化された微粉状シリカ(株式会社トクヤマ製、レオロシールMT-10)66g及びウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1を115g仕込み、均一になるまでさらに30分間混練し、さらに減圧脱泡し、容器に詰め、密封して一液型硬化性組成物A-1を調製した。得られた一液型硬化性組成物A-1は、調製直後における、B型回転粘度計を用い、25℃において、No.6のローターで毎分20回転における粘度が、90~140Pa・sであった。また、得られた一液型硬化性組成物A-1は、外観が無色透明のペースト状であった。
【0113】
実施例2で用いる一液型硬化性組成物A-2の調製
実施例1において、ナフテン系溶剤の代わりに炭化水素溶剤(エクソールD40、EMGマーケティング合同会社製)を45g、ポリオキシプロピレンジオールを250g、ポリオキシプロピレントリオール(AGC株式会社製、商品名:エクセノール4030、数平均分子量4000)を250g、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体(東亜合成株式会社製、商品名:ARUFON UH2000、重量平均分子量4900)を160g、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物を13g、イソホロンジイソシアネートを95.3g、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1を66g用いた以外は同様にして、一液型硬化性組成物A-2を調製した。得られた一液型硬化性組成物A-2は、調製直後における、B型回転粘度計を用い、25℃において、No.6のローターで毎分20回転における粘度が、120~160Pa・sであった。また、得られた一液型硬化性組成物A-2は、外観が無色透明のペースト状であった。
【0114】
比較例1の一液型硬化性組成物として、市販シーリング材-1:(コニシ株式会社製、変成シリコンコーク クリヤー、1成分形変成シリコーン系)、比較例2の一液型硬化性組成物として、市販シーリング材-2:(セメダイン株式会社製、セメダイン8000 クリア、1成分形シリコーン系)を使用した。
【0115】
試験
測定用シートの作製
離型紙上に厚さ3mmの角バッカーを用いて四角形の枠を作成し、枠内に実施例1、2で調整した一液型硬化性組成物と比較例1、2で用いた市販品を打設した。次いで、余分の一液型硬化性組成物をヘラで取り除き、その表面を平らにならし、23℃、50%RH雰囲気下で7日間養生したシートを得た。
【0116】
評価項目
(1)ヘーズの測定
ASTM D1003-97のProcedure Bに準じて、測定用シートのヘーズを測定した。
(2)引張特性の測定
JIS K6251:2010に基づいて、測定用シートからダンベル状4号形試験片を作製した。得られた試験片を用いて、23℃雰囲気下において、引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、商品名STROGRAPHVG10-E)を用いて引張試験(引張速度500mm/min)を実施して、切断時の引張伸びEb(%)と引張強度Tb(N/mm
2)を測定した。
(3)汚染性の測定
図2に示すように、サイディング(ケイミュー株式会社製、塗装面:ホワイト色)の塗装面上に、10mmの角バッカーを用いて、
図1に示す形状で実施例1、2で調製した一液型硬化性組成物と比較例1、2で用いた市販品を幅10mm、高さ10mmで打設した。打設後に、23℃、50%相対湿度の室内に7日間置いた後、バッカーを取り除いて屋外の交通量の多い交差点近くに、サイディング板の表面が道路に面する向きに、その長さ方向を垂直にして設置し3カ月間暴露した後の、一液型硬化性組成物及び市販品の下部のサイディング板の表面を目視で観察して、以下の判定基準により汚染性を評価した。
○:表面に明瞭な汚染が認められないか、または極めて少ないもの。
×:表面に明瞭な汚染が多数認められるもの。
(4)耐候性の測定
測定用シートから試験片を採取し、JISA 1415:2013「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」の「6.2オープンフレームカーボンアークランプによる暴露試験方法」のWS-A法により、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、S80型)を用いて試験を行った。5000時間まで、1000時間照射毎に試験体を取り出し、目視により表面を観察し、以下の判定基準により耐候性を評価した。
○:表面に明瞭なひび割れ、変色、チョーキング等の異常が認められないか、または極めて少ないもの。
×:表面に明瞭なひび割れ、変色、チョーキング等の異常が多数認められるもの。
【0117】
【0118】
【0119】
上記表1から、イソホロンジイソシアネートと活性水素含有化合物との反応生成物であるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、揺変性付与剤と、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1と、を含み、活性水素含有化合物が、活性水素含有(メタ)アクリル系重合体と、少なくとも1つの活性水素及び少なくとも1つの光硬化性のエチレン性不飽和基を有する化合物と、数平均分子量1000以上のポリオールとを含む一液型硬化性組成物である実施例1、2では、ヘーズが低減されて優れた透明性が得られた。さらに、上記表1と
図3から、実施例1、2では、耐候性と耐汚染性ともに優れていた。また、実施例1、2では、切断時の引張伸び(Eb)を損なうことなく、引張強度(Tb)が向上し、優れた耐久性が得られた。
【0120】
一方で、市販シーリング材である、1成分形変成シリコーン系の一液型硬化性組成物である比較例1、1成分形シリコーン系の一液型硬化性組成物である比較例2では、いずれも、透明性をうたったものであっても、ヘーズが高まって透明性が得られなかった。また、一般的には、シリコーン系の一液型硬化性組成物であるシーリング材は、ウレタン系の一液型硬化性組成物であるシーリング材よりも耐候性に優れているところ、シリコーン系の一液型硬化性組成物である比較例1、2では、上記表1と
図3から、変色、ひび割れ、チョーキング等の異常が生じて耐候性を得ることはできず、また、引張強度(Tb)も得られなかった。また、比較例2では、耐汚染性も得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の一液型硬化性組成物は、高い透明性と耐候性を有し、建物外観の美観を損ねることなく、長期にわたって周辺を汚染しない硬化物を得ることができるので、建築物のシーリング材、例えば、ベントキャップ用シーリング材等として利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 サイディング
2 一液型硬化性組成物