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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ブラインド装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/386 20060101AFI20250110BHJP
   E06B 9/32 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
E06B9/386
E06B9/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020164407
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056580
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513201284
【氏名又は名称】株式会社あかりカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勝利
(72)【発明者】
【氏名】南田 直美
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017480(JP,A)
【文献】特開2020-066837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0042982(US,A1)
【文献】特開2006-283321(JP,A)
【文献】特開2002-220981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B9/24-9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に配置される複数のスラットと、
前記複数のスラットを支持するとともに、前記各スラットを、前記スラットの短手方向に挟むとともに上下方向に延びる一対の鉛直コードを有したラダーコードと、
前記一対の鉛直コードを相対的に上下に移動させることにより前記スラットを傾動する傾動機構と、を有したブラインド装置であって、
前記複数のスラットは、前記ブラインド装置の上部に位置する複数の上部スラットと、前記ブラインド装置の下部に位置する複数の下部スラットと、で構成されており、
前記各スラットの短手方向の断面において、前記各スラットは、V字状の断面を有した下側に凸状であり、前記スラットのV字を成す角度は、155°~165°の範囲であり、
前記下部スラットは、前記上部スラットに対して、室外側に向かって、20°~40°の範囲の角度差をもって、前記ラダーコードに支持されていることを特徴とするブラインド装置。
【請求項2】
前記下部スラットが水平方向となった状態で、前記上部スラットおよび前記下部スラットの室内へのさらなる傾動を制限する制限部が設けられていることを特徴とする請求項に記載のブラインド装置。
【請求項3】
床面から前記上部スラットと前記下部スラットの境界までの高さは、1600mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のブラインド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に複数のスラットを有したブラインド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向に配置される複数のスラットと、複数のスラットを支持するラダーコードとを備えたブラインド装置が知られている。このようなブラインド装置では、ラダーコードの室内側鉛直コードおよび窓側鉛直コードを相対的に上下に移動させることにより、スラットが傾動し、スラット間を通過する光量を調整することができる。
【0003】
ところで、ブラインド装置として、例えば、特許文献1には、上側の複数の上部スラットと下側の複数の下部スラットとを別々の角度にすることによって、ブラインド装置の上側の部分と下側の部分とで採光量を異ならせることが可能なブラインド装置が知られている。このブラインド装置では、室内側鉛直コードまたは窓側鉛直コードの長さを短くする(丈を詰める)ことにより、上部スラットと下部スラットの角度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-028773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らの実験によれば、上記特許文献1の如く、上側の複数の上部スラットと下側の複数の下部スラットとを別々の角度に調整したとしても、室外の光量を室内の奥まで十分に確保できない場合があった。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、室外の光量を室内全体に十分に取り込むことができるブラインド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るブラインド装置は、上下方向に配置される複数のスラットと、前記複数のスラットを支持するとともに、前記各スラットを、前記スラットの短手方向に挟むとともに上下方向に延びる一対の鉛直コードを有したラダーコードと、前記一対の鉛直コードを相対的に上下に移動させることにより前記スラットを傾動する傾動機構と、を有したブラインド装置であって、前記複数のスラットは、前記ブラインド装置の上部に位置する複数の上部スラットと、前記ブラインド装置の下部に位置する複数の下部スラットと、で構成されており、前記下部スラットは、前記上部スラットに対して、室外側に向かって、20°~40°の範囲の角度差をもって、前記ラダーコードに支持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、傾動機構により、一対の鉛直コードを相対的に上下に移動させることにより、ブラインド装置の上部に位置する複数の上部スラットと、ブラインド装置の下部に位置する複数の下部スラットとを傾動させることができる。ここで、下部スラットは、上部スラットに対して、室外側に向かって20°~40°の範囲の角度差をもって、ラダーコードに支持されているので、下部スラットと上部スラットとは、この角度差をもって傾動させることができる。これにより、室外側からの自然光により、室内全体の照度および室内奥の照度を確保することができる。
【0009】
具体的には、たとえば、曇りの日(室外が暗い日)には、下部スラットを水平方向に調整すると、上部スラットは、水平方向に対して-20°~-40°の範囲の角度差をもって室内側に傾斜して向く。したがって、自然は、斜め上方向から上部スラット同士間を通過し、自然光を、室内に直接取り込むことができる。一方、下部スラットに入射した自然光を、下部スラットに反射させて、窓側からより奥の天井まで到達させることができる。これにより、室内に光を均一に到達させることができる。
【0010】
ここで、スラットが水平方向に位置する(スラットの上面が情報を向いているとき)位置から、スラットの上面が室外側に傾動するスラットの角度を+(プラス)とし、その位置からスラットが室内側に傾動するスラットの角度を-(マイナス)し、本明細書では、その角度の+の表記は省略し、-のみを表記する。
【0011】
曇りの日(室外が比較的に明るい日)には、上部スラットを水平方向に調整すると、下部スラットは、水平方向に対してスラット角度20°~40°の範囲内で傾斜し、下部スラットの上面は室外側に向く。これにより、上部スラットに入射した自然光を、上部スラットに反射させて、窓側からより奥の天井まで到達させることができ、下部スラットに入射した自然光を、下部スラットに反射させて、窓側からより手前の天井まで到達させることができる。これにより、室内に光を均一に到達させることができる。
【0012】
晴れの日には、下部スラットを、水平方向に対してスラット角度80°で傾斜させると、下部スラットは、室外の光を遮断するので、室内を遮熱することができる。一方、上部スラットは、下部スラットのスラット角度に対して、スラット角度-20°~-40°の範囲で傾斜するので、上部スラットに入射した室外の光を、上部スラットに反射させて、窓側からより奥の天井まで到達させることができる。
【0013】
ここで、下部スラットと上部スラットの角度差が、20°未満である場合には、室内全体の照度が低下するおそれがある。一方、下部スラットと上部スラットの角度差が、40°を越えた場合には、室内奥の平均照度が小さくなるおそれがある。
【0014】
より好ましくは、前記各スラットの短手方向の断面において、前記各スラットは、下側に凸状である。これにより、室外側からの自然光を、各スラットの上面に反射させ、室内側に反射させることができる。スラットの短手方向の形状を、V字状にすることにより、このような効果をより一層発現することができる。
【0015】
さらに好ましい態様として、前記下部スラットが水平方向となった状態で、前記上部スラットおよび前記下部スラットの室内へのさらなる傾動を制限する制限部が設けられている。
【0016】
ここで、下部スラットをスラット角度80°まで傾動させたときに、上部スラットをさらに傾動させて、上部スラットをスラット角度80°まで傾動させ、遮光することができるが、上部スラットを-80°まで傾動させ、下部スラットをさらに傾動させようとしても、下部スラットの傾動は、角度差が保持されるため、下部スラットの角度は、-80°に到達する途中で制限される。したがって、上部スラットおよび下部スラットが、-80°で、遮光することはできないので、この態様では、制限部により、上部スラットと下部スラットを採光に有効なスラット角度の範囲に、上下のスラットの傾動を制限することができ、上部スラットと下部スラットが不要なスラット角度に調整されることを防止することができる。
【0017】
さらに好ましい態様としては、床面から前記上部スラットと前記下部スラットの境界までの高さは、1600mm以上である。これにより、上部スラットを通過または反射した光が、人の目に直接入り込むことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、室外の光量を室内全体に十分に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の本実施形態に係るブラインド装置の構造を示す斜視図である。
図2】本発明の本実施形態に係るブラインド装置のスラットを傾動させた状態を示す図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】(a)は、図1に示すスラットの光の反射を説明するための図であり、(b)は、別の実施例に係るスラットの光の反射を説明するための図である。
図4A図2に示すブラインド装置におけるスラットの角度を説明するための図である。
図4B図2に示すブラインド装置における別のスラットの角度を説明するための図である。
図4C図2に示すブラインド装置におけるさらに別のスラットの角度を説明するための図である。
図5A】実施例と比較例に係るブラインド装置を用いた室内の照度の測定結果である。
図5B図5Aの実施例と比較例に係るブラインド装置のスラット角度を変更したときの室内の照度の測定結果である。
図6】上に凸形状と下に凸形状のスラットを用いたブラインド装置と、室内の照度の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るブラインド装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るブラインド装置100の構造を示す斜視図である。図1に示すように、ブラインド装置100は、ヘッドボックス1と、ボトムレール2と、複数のスラット3と、複数(ここでは3本)のラダーコード4と、複数(ここでは3本)の昇降コード5と、操作棒6と、複数(ここでは3つ)のクリップ20とを備えている。
【0022】
ヘッドボックス1の上面には、複数(ここでは2つ)のブラケット1aが設けられている。ブラケット1aは、ブラインド装置100を窓上部の壁面等に固定するためのものである。ヘッドボックス1の下面からラダーコード4および昇降コード5が垂下されている。
【0023】
ボトムレール2の所定位置には、昇降コード5の一端が固定されており、これによりボトムレール2が支持されている。また、ボトムレール2の所定位置には、ラダーコード4の端部が固定されるボトムカバー2aが取り付けられている。また、ボトムレール2の両端には、ボトムキャップ2bが取り付けられている。
【0024】
複数のスラット3は、ヘッドボックス1とボトムレール2との間において、上下方向に互いに所定の間隔をおいて配置されている。各スラット3の所定位置には、昇降コード5が挿通される開口部31が形成されている。
【0025】
ラダーコード4は、複数のスラット3を支持する梯子状に形成されている。具体的には、ラダーコード4は、スラット3の室内側の端縁に沿って上下方向に延びる室内側鉛直コード4aと、スラット3の窓側の端縁に沿って上下方向に延びる窓側鉛直コード4bと、を有し、スラット3を短手方向に挟むように形成されている。室内側鉛直コード4aと窓側鉛直コード4bとは、互いに上下に所定の間隔をおいて配置される複数の支持部4cによって連結されている。支持部4c上には、スラット3が載置されている。室内側鉛直コード4aと窓側鉛直コード4bとが相対的に上下に移動することによって、支持部4cの室内側端部および窓側端部が上下し、スラット3が傾動する。
【0026】
各ラダーコード4の上部は、ヘッドボックス1内に配置された回転ドラム(図示せず)に巻き付け又は固定されている。複数(ここでは3つ)の回転ドラムはヘッドボックス1内に配置された回転シャフト(図示せず)に固定されており、回転シャフトを回転させることによって、回転ドラムが回転し、ラダーコード4の室内側鉛直コード4aと窓側鉛直コード4bとが相対的に上下に移動する。これにより、スラット3を傾動することができる。なお、これらの回転ドラムおよび回転シャフトが、本発明でいうところの「傾動機構」に相当する。
【0027】
各昇降コード5は、ボトムレール2からスラット3の開口部31を介してヘッドボックス1内に導入されており、ヘッドボックス1内を長手方向に引き回され、ヘッドボックス1の導出口1bから外部に導出されている。複数の昇降コード5は、コード止め11によって1つに纏められ、コード止め11の下方においては1本になった状態で垂下し、ボトムレール2のボトムキャップ2bに取り付けられている。
【0028】
ヘッドボックス1の導出口1bには、昇降コード5が上下に移動できる状態と移動できない状態(拘束状態)とに切り替え可能なストッパ12が設けられている。昇降コード5を上下に移動させることによって、ストッパ12の状態を切り替えることができるとともに、ボトムレール2を任意の高さ位置に設定することができる。
【0029】
操作棒6は、その軸回りに回転可能に構成されている。操作棒6の上端は、回転方向を変換して回転を伝達する変換機構13に接続されており、操作棒6の回転は上述の回転シャフトに伝達される。このため、操作棒6をその軸回りに回転させると、回転シャフトおよび複数の回転ドラムが回転し、ラダーコード4の室内側鉛直コード4aと窓側鉛直コード4bとが相対的に上下に移動する。これにより、スラット3の傾斜角度(スラット角度)が変更される。
【0030】
本実施形態のブラインド装置100では、ラダーコード4の室内側鉛直コード4aの所定位置にクリップ20が着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、クリップ20は、各ラダーコード4に取り付けられているが、複数(ここでは3本)のラダーコード4のうち両端のラダーコード4のみに取り付けられていてもよい。
【0031】
クリップ20は、ラダーコード4の室内側鉛直コード4aの丈を詰めるように所定位置に取り付けられる。クリップ20を、上下に一直線上に延びる室内側鉛直コード4aに巻き付けることにより、室内側鉛直コード4aの長さが短くなっている。本実施形態では、クリップ20より、下部スラット3Bが、上部スラット3Aに対して、室外側に向かって、20°~40°の範囲の角度差をもつように、室内側鉛直コード4aの鉛直方向の長さが調整されている。本実施形態では、クリップ20により、室内側鉛直コード4aの長さを調整しているが、室内側鉛直コード4aに結び目を設けることにより、室内側鉛直コード4aの鉛直方向の長さを調整してもよい。また、室内側鉛直コード4aの長さが、窓側鉛直コード4bの長さよりも短くなるように、予め加工されていてもよい。
【0032】
クリップ20が取り付けられた位置では、上下に隣接する支持部4cの室内側端部同士の距離が短くなる。そして、距離が短くなった分だけ、クリップ20の下方の支持部4cの室内側端部が持ち上げられる。これにより、クリップ20よりも上方に配置される上部スラット3Aの傾斜角度(スラット角度)と、クリップ20よりも下方に配置される下部スラット3Bの傾斜角度(スラット角度)とを、異なる角度(具体的には、角度差が20°~40°の範囲)にすることができる。
【0033】
その結果、上部スラット3A同士の間を通過する光の量と、下部スラット3B同士の間を通過する光の量とが異なるので、例えばブラインド装置100の上側の部分と下側の部分とで採光量を異ならせることができる。なお、クリップ20は、ラダーコード4のうち上下に隣接する支持部4cに挟まれた部分に取り付けられる。すなわち、クリップ20は、支持部4cを跨がないように、ラダーコード4に取り付けられる。
【0034】
ここで、複数のスラット3、3、3…は、ブラインド装置100の上部に位置する複数の上部スラット3A、3A、…と、ブラインド装置100の下部に位置する複数の下部スラット3B、3B、…とに構成され、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bは同じ形状である。
【0035】
具体的には、図2、および図3(a)に示すように、本実施形態では、各スラット3の短手方向の断面において、各スラットは、下側に凸状である。スラット3は、下側に凸状であれば特に限定されるものではなく、例えば、スラット3の断面は、湾曲した弧状であってもよい。しかしながら、本実施形態では、スラット3は、V字状の断面を有している。スラット3の幅Bは、15mm~50mmの範囲であり、スラット3のV字を成す角度φは、155°~165°の範囲である。
【0036】
これにより、室外RO側からの自然光L1を、各スラット3の上面に反射させ、室内RI側に反射させることができる。特に、スラット3の短手方向の形状を、V字状にすることにより、図3(a)に示すように、スラット3の短手方向の中央で反射した光L2(上図)も、室外RO側の表面で反射した光R3(下図)も、室内RI側に向かわせることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、ブラインド装置100のスラットが、図3(b)に示す上側に突出するように弧状に湾曲しスラット3’であってもよい。しかしながら、スラット3’の短手方向の中央で反射した光L2は、上のスラット3’に向かうことがあり、室外RO側の表面で反射した光R3は、室外ROに向かうことがある。したがって、室外ROからの自然光L1を室内RIに効率的に取り込むためは、図3(a)に示す、スラット3の短手方向の断面において、各スラット3は、下側に凸状であることが好ましく、中でも、V字状であることが好ましい。
【0038】
ここで、スラット3は、アルミニウム等であってもよいが、表面に、白色の樹脂が塗装されていることが好ましい。この他にも、スラット3は、白色の練り込み式樹脂素材で形成されていてもよい。スラット3の表面を白色の樹脂とすることにより、スラット3の反射率を高めることができ、室外ROからの自然光L1を室内RIに効率的に取り込むことができる。
【0039】
上述した如く、下部スラット3Bは、上部スラット3Aに対して、室外RO側に向かって、20°~40°の範囲の角度差をもって、ラダーコードに支持されている。すなわち、下部スラット3Bの上面が、上部スラット3Aの上面に対して、室外側に20°~40°の範囲のいずれかの角度だけ、室外RO側に回転(傾動)した状態で、室外RO側に向いている。スラット3が水平方向に位置する(スラットの上面が情報を向いているとき)位置から(図2に示す上部スラット3Aの位置から)、スラット3の上面が室外側に傾動するスラットの角度を+(プラス)とし、その位置からスラット3が室内側に傾動するスラットの角度を-(マイナス)とする。
【0040】
本実施形態では、操作棒6を回転することにより、一対の室内側と窓側の鉛直コード4a、4bを相対的に上下に移動させることにより、ブラインド装置100の上部に位置する複数の上部スラット3Aと、ブラインド装置100の下部に位置する複数の下部スラット3Bとを傾動させることができる。ここで、下部スラット3Bは、上部スラット3Aに対して、室外側に20°~40°の範囲の角度差をもって、ラダーコード4に支持されている。したがって下部スラット3Bと上部スラット3Aとは、この角度差をもって傾動させることができる。これにより、室外RO側からの自然光LIにより、室内RI全体の照度および室内奥の照度を確保することができる。
【0041】
発明者らの実験からも明らかなように、上部スラット3Aと下部スラット3Bの角度差が、20°未満である場合には、室内RI全体の照度が低下するおそれがある。一方、上部スラット3Aと下部スラット3Bの角度差が、40°を越えた場合には、室内RIの奥の平均照度が小さくなるおそれがある。
【0042】
具体的には、図4Aに示すように、たとえば、曇りの日(室外が暗い日)には、下部スラット3Bを水平方向に調整すると、上部スラット3Aは、水平方向に対して-20°~-40°の範囲の角度差をもって室内RI側に傾斜して向く。したがって、自然光L1は、斜め上方向から上部スラット3A、3A同士の間を通過し、自然光L1を、室内RIに直接取り込むことができる。一方、下部スラット3Bに入射した自然光L1を、下部スラット3Bに反射させて、窓W側からより奥の天井Cまで到達させることができる。これにより、室内RIに光を均一に到達させることができる。
【0043】
図4Bに示すように、曇りの日(室外が比較的に明るい日)には、上部スラット3Aを水平方向に調整すると、下部スラット3Bは、水平方向に対してスラット角度20°~40°の範囲内で傾斜し、下部スラット3Bの上面は室外RO側に向く。これにより、上部スラット3Aに入射した自然光を、上部スラット3Aに反射させて、窓W側からより奥の天井Cまで到達させることができ、下部スラット3Bに入射した自然光を、下部スラット3Bに反射させて、窓側からより手前の天井Cまで到達させることができる。これにより、室内RIに光を均一に到達させることができる。
【0044】
図4Cに示すように、晴れの日には、下部スラット3Bを、水平方向に対して、たとえば、スラット角度80°で傾斜させると、下部スラット3Bは、室外ROの自然光L1を遮断するので、室内RIを遮熱することができる。一方、上部スラット3Aは、下部スラット3Bのスラット角度に対して、スラット角度-20°~-40°の範囲で傾斜するので、上部スラット3Aに入射した自然光Lを、上部スラット3Aに反射させて、窓W側からより奥の天井Cまで到達させることができる。図4Cに示すように、床面FLから上部スラット3Aと下部スラット3Bの境界までの高さhは、1600mm以上であることが好ましい。上部スラット3Aを通過または反射した光が、人の目に直接入り込むことを抑えることができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、図4Cに示す状態から図4Aに示す状態に、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bを傾動させても、図4Aに示す状態において、下部スラット3Bが水平方向となった状態で、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bの室内RIへのさらなる傾動を制限する制限部21が、設けられている(図2参照)。本実施形態では、制限部21は、窓側鉛直コード4bに取り付けられており、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bのさらなる傾動を制限すべく、窓側鉛直コード4bが巻き取りを制限する位置に取り付けられている。
【0046】
ここで、図4Cに示すように、下部スラット3Bをスラット角度80°まで傾動させたときに、図4Cに示す位置から、上部スラット3Aをさらに傾動させて、上部スラット3Aをスラット角度80°まで傾動させ、ブラインド装置100で遮光することができる。しかしながら、図4Aに示す位置から、上部スラットを-80°まで傾動させ、下部スラット3Bをさらにマイナスの角度に傾動させようとしても、角度差は保持されるため、下部スラット3Bの角度は、-80°に到達する途中で、制限される。したがって、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bが、-80°で遮光することはできない。
【0047】
そこで、本実施形態では、制限部21により、上部スラット3Aと下部スラット3Bを採光に有効なスラット角度の範囲に、上部スラット3Aおよび下部スラット3Bの傾動を制限することができるので、上部スラット3Aと下部スラット3Bが不要なスラット角度に調整されることを防止することができる。なお、この制限部21を、上述した回転ドラムに設けて、回転ドラムの回転を制限してもよい。
【0048】
発明者らは、図1に示すブラインド装置に対して、下部スラットが、上部スラットに対して、室外側に向かって、0°~50°の範囲で、角度差で、10°ずつ変更し、室内の光量を測定する実験を行った。具体的には、図4Aに示すように、下部スラットを水平として、上部スラットを傾斜させた。スラット全体に対して、1/3を上部スラットとした。
【0049】
試験条件としては、屋外照度を25000lxにし、室内の作業面照度(FL+700mmの高さ、上向き)を測定した。ブラインド装置から室内奥側に500mm、1500mm、2500mm、3500mm、4500mm、5500mm、6500mm、7500mmの8点を測定した。照度の結果は、天空装置の変動を考慮して、5秒置きに取得する10データの平均とした。各角度差に対する照度の結果を表1に示す。平均照度(全体)は、全ての測定点の照度の平均値であり、平均照度(室奥)は、室内奥の3点の測定点の照度の平均値である。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から、角度差が10°、なしでは、室内全体の平均照度は、他のものに比べて低く、角度差が、50°では、室奥の平均照度は、他のものに比べて低い。このことから、室奥まで照度を保つためには、角度差が20°~40°の範囲が好ましいことがわかる。
【0052】
さらに、上部スラットと下部スラットとの角度差を30°にした例を実施例として、上部スラットと下部スラットとの角度差を設けず、図3(b)に示す形状のスラットを用いた例を、比較例として、屋外照度25000lxの条件で、同様の方法で室内の照度を測定した。この結果を、図5A図5Bに示す。図5Aは、実施例の下部スラットが0°となり、比較例のスラットが0°となる場合における照度の測定結果であり、図5Bは、実施例の下部スラットが45°となり、比較例のスラットが45°となる場合における照度の測定結果である。
【0053】
図5Aおよび図5Bに示すように、下部スラットが0°、45°のいずれの場合であっても、実施例の方が、比較例に比べて、室内の照度が高いことがわかった。特に、実施例の如く、下部スラットを45°にした場合には、上部スラットを介して、比較例とは異なり、より多くの光を室内に取り込むことができるため、室内の照度が、室奥まで高い結果になったことが分かる。
【0054】
さらに、発明者は、図3(a)に示すスラット(下に凸形状)と、図3(a)のスラットを上下反転させたスラット(上に凸形状)のものを用いて、上部スラットおよび下部スラットに角度差を設けずに、室内の照度を測定した。この結果を図6に示す。図6に示すように、図3(a)に示す下に凸形状のスラットの方が、室内に光を取り込み易いことがわかった。この理由は、図3(a)、(b)において説明した通りである。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0056】
3:スラット、3A:上部スラット、3B:下部スラット、4:ラダーコード、4a:室内側鉛直コード、4b:窓側鉛直コード、100:ブラインド装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6