(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】3Dプリンティング及び3D細胞培養培地に使用するためのマイクロゲル粒子及び関連する組成物、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20250110BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C12N5/071
C08F220/56
(21)【出願番号】P 2019548685
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 US2018021804
(87)【国際公開番号】W WO2018165584
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス・グレゴリー・ソーヤー
(72)【発明者】
【氏名】サンウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エス・オブライアン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ピー・キャブ
(72)【発明者】
【氏名】ブレント・エス・サマリン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エッター・アンジェリーニ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】柴原 直司
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/182969(WO,A1)
【文献】特開2005-027532(JP,A)
【文献】特開2017-012019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
C08F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDeamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元細胞培養培地に使用するための組成物であって、
該組成物が
、
複数のマイクロゲル粒子であって、
複数のマイクロゲル粒子の各々が、架橋されたポリマーネットワークを含み、
該架橋されたポリマーネットワークが、
低電荷密度ポリマー分子、
前記低電荷密度ポリマー分子の各々が複数の電荷を帯びた基を含み、電荷を帯びた基間の平均間隔が、標準外気温度(25℃)で前記3次元細胞培養培地のビエルム長の1/4、1/2、1倍、1.5倍、又は2倍より大きいものであり、及び
架橋剤
を含
み、
ここに、前記低電荷密度ポリマーの各々が、第1次のモノマー単位及び第2次のモノマー単位を含み、第1次のモノマー単位がアクリルアミド由来であって、第2次のモノマー単位がメタクリル酸由来であるランダムコポリマーであり、第1及び第2次のモノマー単位の合計の20%未満が第2次のモノマー単位である、マイクロゲル粒子
を含む、組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が、250g/molと10,000g/molとの間の平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、PEGDA又はMBAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が親水性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記請求項1~
4のうちのいずれか一項に記載の組成物、及び
該組成物が液体細胞培養培地で膨潤して顆粒上のゲルを形成する、液体細胞培養培
地
を含む、3次元細胞培養培地。
【請求項6】
前記3次元細胞培養培地が、5.5と6との間のpHを有する、請求項
5に記載の3次元細胞培養培地。
【請求項7】
前記3次元細胞培養培地が、1Pa~10Paの降伏応力を有する、請求項
5に記載の3次元細胞培養培地
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469,939号、及び2018年1月11日に出願された米国特許出願公開第62/616,107号の利益を主張し、それらは参照により本明細書にそのまま組み入れられる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により与えられた助成金第DMR1352043号の下、政府の援助を得てなされたものである。政府は本発明において、所定の権利を有する。
【0003】
開示されている実施形態は、三次元細胞培養に関連する化合物、方法、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
従来の細胞培養技術は、2次元(2D)基材、例えば、マイクロウェルプレート又はペトリ皿上での細胞培養を含む。かかる2D細胞培養は、しばしば細胞の培養を促進するために基材上に配置された培養培地を含む。しかしながら、従来の細胞培養の2D環境は、in vivoで細胞により構築される3次元(3D)環境の代わりとしては、しばしば貧弱な代用である。例えば、細胞の振舞いは、しばしば細胞周りのミクロ環境に強く依存する、すなわち2D細胞培養においては、細胞周りのミクロ環境は、細胞が3Dミクロ環境に構築するであろうものとは異なり得る。
【0005】
したがって、3D細胞培養培地のための改良された組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
3次元細胞培養培地(及び関連する方法、用途、及び組成物)に使用するためのマイクロ粒子について述べられている。ある実施形態において、3次元細胞培養培地に使用するための組成物は、複数のマイクロゲル粒子を含む。マイクロゲル粒子は架橋ポリマーネットワークを含んでよい。架橋ポリマーネットワークは、次に、低電荷密度ポリマー分子及び架橋剤を含んでよい。低電荷密度ポリマー分子は、複数の電荷を帯びた基を含んでよく、電荷を帯びた基間の平均間隔は、電荷を帯びた基についてのビエルム長の1/4、1/2、1倍、1.5倍、又は2倍より大きい。
【0007】
ある実施形態において、マイクロゲル粒子を形成する方法が提供される。該方法は、架橋剤、第1のモノマー、第2のモノマー(第2のモノマーは酸性モノマー、塩基性モノマー、永久カチオン性モノマー、又は双性モノマーである)、開始剤、及び溶媒を含む溶液を形成する工程を含んでよい。該方法は、溶液中でポリマーの形成を開始する工程、及び該ポリマーをポリマーがマイクロ粒子を形成する溶液から析出させる工程をさらに含んでよい。
【0008】
ある実施形態において、3次元細胞培養培地が提供される。該培地は、複数のマイクロゲル粒子、例えば前記のようなもの、及び液体細胞培養培地(マイクロゲル粒子は液体細胞培養培地で膨潤して顆粒状のゲルを形成する)を含んでよい。
【0009】
ある実施形態において、3次元細胞培養培地を調製する方法が開示されている。該方法は、複数のマイクロゲル粒子、例えば、前記のようなものを、液体細胞培地中で混合する工程を含む。
【0010】
ある実施形態において、細胞を3次元細胞培養培地内に配置する方法が開示されている。該方法は、細胞を液体細胞培養培地で膨潤させた複数のマイクロゲル粒子、例えば、前記のようなもの、を含む顆粒状のゲルに堆積させる工程を含んでよい。
【0011】
ある実施形態において、タンパク質を合成する方法が開示されている。該方法は、細胞を液体細胞培養培地で膨潤させた複数のマイクロゲル粒子を含む顆粒状のゲルを含む容器中で培養する工程、及び培養した細胞により合成されたタンパク質を該容器から抽出する工程を含んでよい。
【0012】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図と併せて考慮した際、以降の本発明の種々の限定されない実施形態の詳細な説明より明らかとなる。別段注意がない限り、本明細書に引用されている参照は参照によりそのまま組み入れられる。本明細書及び参照により組み入れられた文書が衝突及び/又は矛盾した開示を含む場合、本明細書が支配するものとする。
【0013】
本発明の1つ以上の詳細が、添付の図及び以降の説明に規定されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書の記載及び図、及び請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図は、正確な比率であることを目的としていない。図において、種々の図に示されている各同一又はほぼ同一の要素は、同様の符号で表され得る。明確のため、すべての要素を各図において符号付けしているわけではない。図において:
【
図1A】
図1A-1Cは、低電荷密度粒子についての略図及び式である。
【
図1B】
図1A-1Cは、低電荷密度粒子についての略図及び式である。
【
図1C】
図1A-1Cは、低電荷密度粒子についての略図及び式である。
【
図2】
図2A-2Bは、3D細胞培養物を培養し及びそれと相互作用するための装置の例を示すものである。
【
図3】
図3は、1セットの実施形態による、沈殿重合を通じてのアニオン性アクリルアミドヒドロゲルの合成の略図である。
【
図4】
図4は、1セットの実施形態による、沈殿重合を通じてのpH応答性アニオン性アクリルアミドヒドロゲルの合成の略図である。
【
図5】
図5は、1セットの実施形態による、沈殿重合を通じてのpH応答性カチオン性アクリルアミドヒドロゲルの合成の略図である。
【
図6】
図6は、1セットの実施形態による、沈殿重合を通じての永久カチオン性アクリルアミドヒドロゲルの合成の略図である。
【
図7】
図7は、1セットの実施形態による、沈殿重合を通じての双性アクリルアミドヒドロゲルの合成の略図である。
【
図8】
図8は、沈殿反応を通じて、種々の電荷密度を有する多電解質マイクロゲルを調製するための方法を示すものである。MAA-メタクリル酸、CBMA-カルボキシベタインメタクリラート、qDMAEMA-4級(quadranized)ジメチルアミノエチルメタクリラート。
【
図9A】
図9A~9Dは、カルシウムを添加したカチオン性マイクロゲルのレオロジー変化を示すグラフである。
【
図9B】
図9A~9Dは、カルシウムを添加したカチオン性マイクロゲルのレオロジー変化を示すグラフである。
【
図9C】
図9A~9Dは、カルシウムを添加したカチオン性マイクロゲルのレオロジー変化を示すグラフである。
【
図9D】
図9A~9Dは、カルシウムを添加したカチオン性マイクロゲルのレオロジー変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、アニオン性及びカチオン性マイクロゲル中での、C
塩/C
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【
図11】
図11は、アニオン性及びカチオン性マイクロゲル中での、C
2
帯電/C
塩(mM
2/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【
図12】
図12は、双性マイクロゲル中での、C
塩/C
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【
図13】
図13は、アニオン性(MAA)、双性(CBMA)、及びカチオン性(qDMAEMA)マイクロゲル中での、C
塩/C
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【
図14】
図14は、アニオン性(MAA)、双性(CBMA)、及びカチオン性(qDMAEMA)マイクロゲル中での、細胞生存率(%)を示す棒グラフである。
【
図15】
図15は、アニオン性(MAA)及び双性(CBMA)マイクロゲルについての、C
塩/C
帯電(mM/mM)の関数として遊離のカルシウム(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で開示されているのは、3D細胞培養培地中で培養した細胞の機能を増加させる組成物及び方法である。本明細書に記載されている材料を使用して3D細胞培養培地を創作することで、より速い細胞培養、細胞移動、及び/又はより堅実な蛍光材料及び/又は培地中で培養された細胞によるタンパク質の発現が可能となる。例えば、3D細胞培養培地内に分散した細胞の改善された機能及び健康を与えるのに、本明細書に記載されている3D細胞培養培地を構築することができる。
【0016】
例えば、3D細胞培養培地は、液体細胞培養培地で膨潤させた市販のカルボマーを使用して提唱されてきた。しかしながら、市販のカルボマー(3D細胞培養培地を形成するのに使用されてきた)は、液体細胞培地から養分を隔離する傾向がある。ある実施形態によると、該3D細胞培養培地は、マイクロゲル粒子を膨潤させるのに使用された液体細胞培養培地由来の養分、例えば、鉱物(例えば、カルシウム)に対して低減した親和性を有するポリマーで調製したマイクロゲル粒子を使用して、調製される。
【0017】
本明細書で開示されている低電荷密度を有するマイクロゲル粒子の使用により、ある実施形態において、高電荷密度を有する材料で調製した3D細胞培養培地よりはるかに良好に機能する3D細胞培養培地が得られる。本明細書で使用する限り、用語『低電荷密度』とは、ポリマー骨格の電荷を帯びた基の平均間隔が、標準外気温度(25℃)で系のビエルム長と近い又は系のビエルム長より大きいマイクロゲル粒子の特性を指す。低電荷密度マイクロゲル粒子のある実施形態において、マイクロゲル粒子の電荷を帯びた基の平均間隔は、系のビエルム長の1/4、1/2、3/4より大きい。ある実施形態において、マイクロゲル粒子の電荷を帯びた基の平均間隔は、系のビエルム長より大きい。ある実施形態において、マイクロゲル粒子の電荷を帯びた基の平均間隔は、系のビエルム長より1.5倍、2.0倍、2.5倍、又は3.0倍大きい。
【0018】
ビエルム長は、ポリマー骨格上の電荷を帯びた基が静電相互作用し始める交差長を特徴付けるものである。図に戻ると、
図1A-Cは低電荷密度及びビエルム長の概念をさらに明確にするのに役立つ。
図1Aは、中性の基及び電荷を帯びた基を含むコポリマー鎖の略図を提供するものである。かかるコポリマー鎖の1つのあり得る例として、
図1Bは、中性アクリルアミド基又はモノマー単位及び電荷を帯びたメタクリル酸基又はモノマー単位を含むコポリマーを示すものである。
図1Cは、
図1Aの電荷を帯びた基間の平均距離を決定するための、及び電荷を帯びた基のビエルム長を決定するための式を提供するものである。
図1Cにさらに示されているように、低電荷密度を有するポリマーは、電荷を帯びた基間の平均距離が系のビエルム長より大きいものとして定義される。
【0019】
電荷を帯びた基間の平均距離は、式1で定義される:
【数1】
【0020】
系、例えば、3D細胞培養培地についてのビエルム長は、式2で定義される:
【数2】
【0021】
かかるポリマーは、液体細胞培養培地で膨潤させられ得るマイクロゲル粒子を形成するのに使用してよい。これにより時折規定のパターンで細胞が堆積し得る、『降伏応力』材料を形成する3D細胞培養培地が得られる。該降伏応力材料は、細胞クラスターの培養を可能とするのに降伏することができる。
【0022】
ある実施形態によると、3D細胞培養培地が低電荷密度マイクロゲル粒子を含む際、該3D細胞培養培地は液体細胞培養培地から養分を隔離することとはならない。かかる養分は、ある実施形態において、鉱物であってよい。かかる養分は、ある実施形態において、多価イオン(例えば、カルシウムイオン)であってよい。しかしながら、マイクロゲル粒子のポリマー骨格上の電荷を帯びた基間の平均間隔が、ビエルム長より小さい又ははるかに小さい(すなわち、該粒子が高電荷密度を有する)場合、多価イオンは、しばしば隔離されることとなる。多価イオン、例えば、カルシウムイオンの隔離は、3D細胞培養培地内の細胞の機能及び健康に顕著に悪影響を及ぼし得る。それゆえ、本明細書に開示されている低電荷密度マイクロゲル粒子の使用は、3D細胞培養培地内の細胞の改善された機能及び健康を提供し得る。本明細書に開示されている低電荷密度粒子は、所望の膨潤能を提供する一方、高電荷密度粒子により引き起こされる細胞の健康及び生存率に関する欠点を回避させる。
【0023】
本明細書に記載されている3D細胞培養培地は、スフェロイド、胚様体、腫瘍、嚢胞、及び微細組織を含むがこれらに限定されない多様な細胞構造の培養を可能なものとし、細胞工学組織構造物の構造を保存するのにまた使用してもよい。ある実施形態において、3D細胞培養培地は、液体細胞培養培地に分散したマイクロゲル粒子を含むヒドロゲルを含んでよい。
【0024】
ある実施形態によると、前記マイクロゲル粒子は、生体適合性ポリマー及び架橋剤を含んでよい。該ポリマーは、ポリマーネットワークを形成して架橋剤が結合するポリマー骨格として機能する。ポリマーは第1及び第2のモノマー単位を含むコポリマーであってよい。第1のすなわち最初のモノマー単位は中性であってよく、一方第2のモノマー単位、又はコモノマー単位は電荷を帯びているものであってよい。ポリマーネットワークの構成要素は、低電荷密度マイクロゲル粒子の形成を促進するよう、選択されてよい。
【0025】
主要パーセンテージのマイクロゲル粒子を含むモノマーは、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、及びアクリラートを含んでよい。限定されない例は、アクリルアミド(AAm)、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリラート、ポリ(エチレングリコール)メタクリラート、N-ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、2-ヒドロキシエチルアクリラート、及びN-ビニルピロリドンを含む。
【0026】
電荷を帯びたコモノマーは、イオン性(すなわち、酸性又は塩基性官能基を有する)コモノマーを含んでよい。ある場合において、このコモノマーは、酸性官能基を有していてよく、酸性コモノマーであってよい。酸性コモノマーの限定されない例は、メタクリル酸、アクリル酸、4-スチレンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-カルボキシエチルアクリラート、及びビニル安息香酸(全異性体)を含む。ある実施形態において、マイクロゲル粒子中の酸性コモノマーの取り込みは、20mol%未満である。ある実施形態において、酸性コモノマーの取り込みは、およそ0mol%~およそ30mol%、およそ0mol%~およそ20mol%、およそ0mol%~およそ15mol%、およそ0mol%~およそ10mol%、又はおよそ0mol%~およそ5mol%であってよい。
【0027】
電荷を帯びたコモノマーは、イオン性(すなわち、酸性又は塩基性官能基を有する)コモノマーを含んでよい。ある場合において、このコモノマーは、塩基性官能基を有していてよく、塩基性コモノマーであってよい。塩基性コモノマーの限定されない例は、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリラート、2-アミノエチルメタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドを含む。ある実施形態において、マイクロゲル粒子中の塩基性コモノマーの取り込みは、30mol%未満、例えば、20mol%未満である。ある実施形態において、酸性コモノマーの取り込みは、およそ0mol%~およそ30mol%、およそ0mol%~およそ20mol%、およそ0mol%~およそ15mol%、およそ0mol%~およそ10mol%、又はおよそ0mol%~およそ5mol%であってよい。
【0028】
電荷を帯びたコモノマーは、永久イオン化(すなわち、永久正又は負電荷、又はいずれも有する)コモノマーを含んでよい。ある場合において、このコモノマーは、永久カチオン性官能基を有していてよく、永久カチオン性コモノマーであってよい。永久カチオン性コモノマーの限定されない例は、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、及び(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリラート)メチルクロリドを含む。ある実施形態において、マイクロゲル粒子中の酸性コモノマーの取り込みは、20mol%未満である。ある実施形態において、永久カチオン性コモノマーの取り込みは、およそ0mol%~およそ30mol%、およそ0mol%~およそ20mol%、およそ0mol%~およそ15mol%、およそ0mol%~およそ10mol%、又はおよそ0mol%~およそ5mol%であってよい。
【0029】
電荷を帯びたコモノマーは、永久イオン化(すなわち、永久正又は負電荷、又はいずれも有する)コモノマーを含んでよい。ある場合において、このコモノマーは、双性(すなわち、正及び負電荷いずれも有する)官能基を有していてよく、双性コモノマーであってよい。一般的な双性基は、カルボキシベタイン、スルホベタイン、及びホスホベタインを含む。双性コモノマーの限定されない例は、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、及び(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)を含む。ある実施形態において、マイクロゲル粒子中の双性コモノマーの取り込みは、20mol%未満である。ある実施形態において、酸性コモノマーの取り込みは、およそ0mol%~およそ30mol%、およそ0mol%~およそ20mol%、およそ0mol%~およそ15mol%、およそ0mol%~およそ10mol%、又はおよそ0mol%~およそ5mol%であってよい。
【0030】
ある実施形態において、第1のモノマー及び第2のモノマーのモル比は、所望の低電荷密度マイクロゲル粒子を提供するのに制御され得る。例えば、ある実施形態において、第1及び第2のモノマーの合計の60%未満が、第2のモノマー(例えば、酸性、塩基性、永久カチオン性、又は双性コモノマー)である。ある実施形態において、第1及び第2のモノマーの合計の50%未満、40%未満、30%未満、又は20%未満が、第2のモノマー(例えば、酸性コモノマー)である。
【0031】
架橋剤は、典型的に、2つ以上のポリマー鎖と反応することが可能な化合物である。ある実施形態において、例えば、架橋剤は、少なくとも2つのビニル基を含む化合物である。ある場合において、架橋剤は、低分子量化合物である。好適な架橋剤の限定されない例は、N,N-メチレンビス(アクリルアミド)(MBA)、ジエチレングリコールジアクリラート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びN,N-エチレンビス(メタクリルアミド)を含む。
【0032】
ある実施形態において、前記架橋剤はポリマーである。ある実施形態において、ポリマーはポリエーテルであってよい。好適な架橋剤の限定されない例は、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート(『PEGda』)である。架橋剤は、所望の膨潤特性を有するマイクロゲル粒子の形成を促進させるのに好適な数平均分子量を有する架橋剤を選択してよい。ある場合において、架橋剤は、250g/molと10,000g/molとの間の数平均分子量を有する。ある場合において、架橋剤は、少なくともおよそ500g/mol、少なくともおよそ1000g/mol、少なくともおよそ2000g/mol、少なくともおよそ5000g/mol、少なくともおよそ10,000g/mol、少なくともおよそ20,000g/mol、又は少なくともおよそ50,000g/molの数平均分子量を有する。ある実施形態において、架橋剤は、およそ500g/mol~およそ1000g/mol、およそ500g/mol~およそ2000g/mol、およそ500g/mol~およそ5000g/mol、およそ500g/mol~およそ10,000g/mol、およそ500g/mol~およそ20,000g/mol、およそ500g/mol~およそ50,000g/mol、およそ1000g/mol~およそ5000g/mol、およそ1000g/mol~およそ10,000g/mol、およそ1000g/mol~およそ20,000g/mol、およそ1000g/mol~およそ50,000g/mol、およそ2000g/mol~およそ5000g/mol、およそ2000g/mol~およそ10,000g/mol、およそ2000g/mol~およそ20,000g/mol、およそ2000g/ml~およそ50,000g/mol、およそ5000g/mol~およそ10,000g/mol、およそ5000g/mol~およそ20,000g/mol、およそ5000g/mol~およそ50,000g/mol、およそ10,000g/ml~およそ20,000g/mol、又はおよそ10,000g/mol~およそ50,000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0033】
開始剤は、一般的に、ある条件の下(例えば、光及び/又は熱への曝露、又は酸化還元条件)、ラジカル種を生成することが可能な物質を指す。開始剤は、アゾ及び過酸化物化合物を含む、熱的開始剤を含んでよい。例としては、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルヴァレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルヴァレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-yl)プロパン]、4、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化tert-ブチル、過酸化安息香酸tert-ブチル、過酸化2-エチルヘキシルカルボン酸tert-ブチル、過酸化ラウロイル、及び過酸化2-ブタノンを含むが、これらに限定されない。開始剤は、光開始剤をまた含んでもよい。例としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、Irgacure開始剤(例えば、Ciba(登録商標)IRGACURE(登録商標)2959)、又は2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンを含むが、これらに限定されない。
【0034】
重合は、酸化還元開始剤系で開始することができ、一般に助触媒として過硫酸アンモニウム(APS)又は過硫酸カリウム(KPS)及びジアミン化合物を含む。ジアミンの例は、TEMED及びジメチルアミノプロピオニトリル(DMPN)を含む。
【0035】
反応混合物中(例えば、そこからマイクロゲル粒子が沈殿する溶液)のモノマーの濃度は、得られるマイクロゲル粒子の性質に影響を与え得る。使用され得るモノマー濃度は、およそ0.01M~およそ0.1M、およそ0.1M~およそ1M、およそ1M~およそ2M、およそ0.1M~およそ0.8M、およそ0.1M~およそ0.6M、およそ0.1M~およそ0.4M、及びおよそ0.1M~およそ0.2Mを含むが、これらに限定されない。
【0036】
マイクロゲル粒子の架橋密度は、反応混合物中の架橋剤に対するモノマーの比により支配され得る。架橋剤に対するモノマーのモル比は、およそ10:1、およそ20:1、およそ50:1、およそ100:1、およそ150:1、又はおよそ200:1を含むが、これらに限定されない。範囲は、またこれらの比(例えば、およそ10:1からおよそ20:1)から形成してよい。
【0037】
ある実施形態によると、方法はマイクロゲル粒子を形成するために実行され得る。方法は、架橋剤;第1のモノマー;第2のモノマー(第2のモノマーは酸性モノマー、塩基性モノマー、永久カチオン性モノマー、又は双性モノマーである);開始剤;及び溶媒を含む溶液を形成する工程を含む。方法は、溶液中でポリマーの形成を開始する工程;及び該ポリマーを溶液から析出させる工程(ポリマーはマイクロゲル粒子を形成する)をさらに含んでよい。
【0038】
ある実施形態によると、マイクロゲル粒子は、沈殿重合法を使用して調製される。この方法において、モノマーは反応媒体に溶解するが、形成されたポリマーは溶解しない。ポリマーが形成されるにつれ、ポリマーは不溶性となり溶液から析出する。架橋剤が存在する場合においては、ある条件の下、離散したマイクロ粒子が形成され得る。
【0039】
フリーラジカル重合システムは、一般的に、ラジカル源として振舞うことが可能な開始剤(例えば、光開始剤、熱的開始剤、酸化還元開始剤)、1つ以上のモノマー(例えば、ビニルモノマー)、及び、要すれば、溶媒を含む。フリーラジカル重合の機構は次の通りである。第1に、開始剤が(例えば、均等結合開裂を通じて)フリーラジカルを形成する。ある場合において、フリーラジカルのうちの少なくとも1つが、続いてモノマーと反応してモノマーラジカルを形成し得る。モノマーラジカルは、それから1つ以上のさらなるモノマーと反応して活性ポリマー鎖(すなわち、ポリマーラジカル)を形成し得る。ある場合において、活性ポリマー鎖は、ビラジカル停止(例えば、再結合又は不均化)を通じて停止し、さらに反応することが不可能な不活性ポリマー鎖を形成し得る(例えば、活性ポリマー鎖Pn及び活性ポリマー鎖Pmが反応して不活性ポリマー鎖Dn+m又は不活性ポリマー鎖Dn及びDmを形成する)。
【0040】
沈殿重合において、モノマーを溶媒和させ及び形成されたポリマーを脱溶媒和する溶媒が必要である。好適な溶媒の限定されない例は、エタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキソラン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、メタノール、ヘキサン、ヘプタン、及びアセトニトリルを含む。
【0041】
重合温度は、およそ0°C~およそ120°Cに及んでよい。ある場合において、重合が行われる温度は、およそ120°C以下、およそ110°C以下、およそ100°C以下、およそ90°C以下、およそ80°C以下、およそ70°C以下、およそ60°C以下、およそ50°C以下、およそ40°C以下、およそ30°C以下、およそ20°C以下、およそ10°C以下、およそ0°C以下、又はおよそ-10°C以下である。ある実施形態において、重合が行われる温度は、およそ-10°C~およそ20°C、-10°C~およそ50°C、-10°C~およそ100°C、およそ0°C~およそ20°C、およそ0°C~およそ30°C、およそ0°C~およそ40°C、およそ0°C~およそ50°C、およそ0°C~およそ100°C、およそ10°C~およそ20°C、およそ10°C~およそ30°C、およそ10°C~およそ40°C、およそ10°C~およそ50°C、およそ10°C~およそ100°C、およそ20°C~およそ30°C、およそ20°C~およそ40°C、およそ20°C~およそ50°C、およそ20°C~およそ60°C、およそ20°C~およそ70°C、およそ20°C~およそ80°C、およそ20°C~およそ90°C、およそ20°C~およそ100°C、およそ30°C~およそ50°C、およそ30°C~およそ100°C、およそ50°C~およそ60°C、およそ50°C~およそ70°C、およそ50°C~およそ80°C、およそ50°C~およそ90°C、およそ50°C~およそ100°C、およそ50°C~およそ110°C、又はおよそ50°C~およそ120°Cの範囲にある。
【0042】
得られる個々のマイクロゲル粒子のサイズは、位相差光学顕微鏡を使用して測定される。マイクロゲル粒子のサイズは、10μm未満が好ましい。ある場合において、マイクロゲル粒子のサイズは、5μm未満である。ある場合において、マイクロゲル粒子のサイズは、3μm~5μmである。
【0043】
得られるポリマーは、モノマー及びイオン性コモノマーの架橋されたコポリマーを含み得る。ある実施形態において、得られるポリマーは、少なくともおよそ500g/mol、少なくともおよそ1000g/mol、少なくともおよそ2000g/mol、少なくともおよそ5000g/mol、少なくともおよそ10,000g/mol、少なくともおよそ20,000g/mol、少なくともおよそ30,000g/mol、少なくともおよそ40,000g/mol、少なくともおよそ45,000g/mol、少なくともおよそ50,000g/mol、少なくともおよそ60,000g/mol、少なくともおよそ70,000g/mol、少なくともおよそ80,000g/mol、少なくともおよそ90,000g/mol、少なくともおよそ100,000g/mol、少なくともおよそ200,000g/mol、少なくともおよそ300,000g/mol、少なくともおよそ400,000g/mol、又は少なくともおよそ500,000g/molの数平均分子量を有する。ある実施形態において、1つ以上の休止状態の官能基を含むポリマーは、およそ500g/mol~およそ5000g/mol、およそ500g/mol~およそ10,000g/mol、およそ500g/mol~およそ20,000g/mol、およそ500g/mol~およそ30,000g/mol、およそ500g/mol~およそ40,000g/mol、およそ500g/mol~およそ45,000g/mol、およそ500g/mol~およそ50,000g/mol、およそ500g/mol~およそ60,000g/mol、およそ500g/mol~およそ70,000g/mol、およそ500g/mol~およそ80,000g/mol、およそ500g/mol~およそ90,000g/mol、およそ500g/mol~およそ100,000g/mol、およそ500g/mol~およそ200,000g/mol、およそ500g/mol~およそ300,000g/mol、およそ500g/mol~およそ400,000g/mol、およそ500g/mol~およそ500,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ20,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ30,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ40,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ45,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ50,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ60,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ70,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ80,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ90,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ100,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ200,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ300,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ400,000g/mol、およそ10,000g/mol~およそ500,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ50,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ60,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ70,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ80,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ90,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ100,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ200,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ300,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ400,000g/mol、およそ40,000g/mol~およそ500,000g/mol、およそ80,000g/mol~およそ100,000g/mol、およそ80,000g/mol~およそ200,000g/mol、およそ80,000g/mol~およそ300,000g/mol、およそ80,000g/mol~およそ400,000g/mol、およそ80,000g/mol~およそ500,000g/mol、およそ100,000g/mol~およそ200,000g/mol、およそ100,000g/mol~およそ300,000g/mol、およそ100,000g/mol~およそ400,000g/mol、又はおよそ100,000g/mol~およそ500,000g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0044】
数平均分子量M
nは、式3に従って、個々のポリマー鎖の分子量の数平均をとることにより得られ得る。
【数3】
【0045】
ある実施形態によると、3D細胞培養培地は、マイクロゲル粒子を液体細胞培養培地に分散させることにより調製され得る。マイクロゲル粒子は、遠心分離混合機、シェイカー、又は任意の他の好適な混合装置を使用して、液体細胞培養培地と混合してよい。混合の間、マイクロゲル粒子は液体細胞培養培地で膨潤して、前記のように、印加されたせん断応力が降伏応力を下回る際に実質的に固体である材料を形成し得る。混合の後、混合工程の間、取り込まれた同伴空気又は気泡は、遠心分離、撹拌、又は3D細胞培養培地から気泡を除く任意の他の好適な方法を経由して、取り除いてよい。
【0046】
ヒドロゲル、例えば、3D細胞培養培地は、マイクロゲル粒子を種々の濃度で水溶液に加えることで調製してよい。ある実施形態において該水溶液は液体細胞培養培地を含んでよい。例としては、(水溶液に対して)10wt%未満のポリマー濃度を使用してよい。好ましくは、5%未満のポリマー濃度が使用される。非常に好ましくは、2%未満のポリマー濃度が使用される。
【0047】
ある実施形態において、3D細胞培養培地の調製は、マイクロゲル粒子及び液体細胞培養培地混合物のpHを所望の値に調節する緩衝工程を含む。例えば、あるマイクロゲル粒子は3D細胞培養培地を過度に酸性(所望の値を下回るpHを有する)とし得る、主に負電荷を有するポリマーから製造してよい。3D細胞培養培地のpHは、強塩基を添加して酸を中和し、pHを上昇させて所望のpHに近づけることで調節してよい。代わりに、混合物は所望の値より高いpHを有していてよく、かかる混合物のpHは酸を添加することで低下させてもよい。ある実施形態によると、前記所望のpHは5.5と6との間、又は4.5と8との間の範囲にあり得る。
【0048】
1つの限定されない例として、3D細胞培養培地は、およそ0.2質量%~およそ0.7%のマイクロゲル粒子を含む。マイクロゲル粒子は、前記のように、任意の好適な細胞培養培地と混合され及び膨潤されておよそ99.3質量%~99.8質量%の液体細胞培養培地を含む3D細胞培養培地を形成し得る。
【0049】
液体細胞培養培地と混合した際、マイクロゲル粒子は、液体細胞培養培地で膨潤されて3D細胞培養培地として機能する顆粒状のヒドロゲル材料を形成し得る。具体的な実施形態に応じて、膨潤したマイクロゲル粒子は、ミクロン又はサブミクロンスケールの特徴的なサイズを有していてよい。例えば、ある実施形態において、前記膨潤したマイクロゲル粒子は、およそ0.1μmと100μmとの間の、およそ1μmと100μmとの間の、およそ1μmと50μmとの間の、又はおよそ0.1μmと50μmとの間のサイズを有していてよい。他の値もまた可能である。
【0050】
本明細書で使用する限り、用語『マイクロゲル粒子』とは、ヒドロゲル中での使用に好適な粒子を指し、ヒドロゲルに取り込まれる際、及びゲルへの取り込み前後いずれの粒子にも適用される。
【0051】
任意の好適な液体培養培地を使用してよい。具体的な液体細胞培養培地は、3D細胞培養培地内に配置される細胞のタイプに応じて選択してよい。好適な液体細胞培養培地は、ヒト細胞培養培地、ネズミ細胞培養培地、ウシ細胞培養培地又は任意の他の好適な細胞培養培地であってよい。具体的な実施形態に応じて、マイクロゲル粒子及び液体細胞培養培地を任意の好適な組み合わせで組み合わせてよい。例えば、ある実施形態において、3D細胞培養培地は、およそ0.5重量%~1重量%のマイクロゲル粒子を含む。
【0052】
さらに、3D細胞培養培地は、任意の好適な機械的特性を有していてよく、ある実施形態において、機械的特性は、マイクロゲル粒子及び液体細胞培養培地の相対濃度を経由して調節され得る。例えば、高濃度のマイクロゲル粒子により、高弾性率及び/又は高降伏応力を有する3D細胞培養培地が得られる。
【0053】
開示されている調節性は、3D細胞培養培地内に配置された細胞群周りの環境を制御するのに有利である。例えば、3D細胞培養培地は、細胞3D細胞培養培地が細胞の自然な環境を模倣し得るよう、in vivoで見つかるものと同様となるよう調節された機械的特性を有していてよい。しかしながら、3D細胞培養培地の機械的特性はin vivoで見つかるものと同様のものではあり得ず、又は本開示でそのように限定されていないように、任意の好適な値に調節してよいと解すべきである。
【0054】
ヒドロゲルのせん断弾性率は、広範囲の周波数に亘って1%歪みでオシレーター周波数掃引を行うことにより測定される。ヒドロゲルのせん断弾性率は、100Pa未満の比較的一定の値でせん断粘性率を上回ることが好ましい。ある場合において、ヒドロゲルのせん断弾性率は50Pa未満である。ある場合において、ヒドロゲルのせん断弾性率は、およそ10Pa~およそ100Pa、およそ10Pa~およそ80Pa、およそ10Pa~およそ60Pa、およそ10Pa~およそ40Pa、又はおよそ10Pa~およそ20Paである。
【0055】
ヒドロゲルシステム(例えば、3D細胞培養培地)の降伏応力は、応力値とは独立したせん断速度に相当する。ヒドロゲルの降伏応力は、単一方向のせん断速度をヒドロゲルサンプルに適用し、得られるせん断応力を記録し、Herschel-Bulkleyモデルを得られる応力対対歪み速度曲線にフィットさせることにより測定される。3D細胞培養培地の降伏応力は、10Pa未満であることができる。ある場合において、3D細胞培養培地の降伏応力は、5Pa未満である。ある場合において、3D細胞培養培地の降伏応力は、およそ5Paである。ある場合において、3D細胞培養培地の降伏応力は、およそ1Pa~およそ10Pa、およそ1Pa~およそ8Pa、およそ1Pa~およそ6Pa、およそ1Pa~およそ4Pa、又はおよそ1Pa~およそ2Paである。
【0056】
ある実施形態によると、3D細胞培養培地は、前記顆粒状のゲル材料が印加された応力のために一時的な相変化を受けるよう、材料から製造してよい(例えば、チキソトロピー性又は『降伏応力』材料)。かかる材料は固体又は降伏応力を下回る程度で印加された応力の下、その形状を保持する、ある別の相であってよい。降伏応力を超える応力の印加では、これらの材料は、流体又は形状を変化させ得るある他のより展性の層となり得る。印加された応力が除かれた際には、降伏応力材料は、また固体となり得る。応力はかかる材料に任意の好適な方法で印加してよい。例えば、エネルギーをかかる材料に加えて相変化を創出させてもよい。エネルギーは、機械的、電気的、放射、又は光、などを含む、任意の好適な形態であってよい。
【0057】
用語『降伏応力』及び『降伏応力材料』は、当該技術分野において、種々の意味で使用され、特徴付けられてきた。本明細書では説明を容易にするため、用語『降伏応力』及び『降伏応力材料』を使用するが、別段示さない限りは、Herschel-Bulkley方程式
【数4】
【0058】
さらに、『降伏応力』(すなわち、Herschel-Bulkley降伏応力)は、当該技術分野において、種々の方法で測定されている。本明細書において別段示さない限り、サンプルの降伏応力は、プレート-プレート配置を使用してレオメーター中でサンプルをせん断することにより及びHerschel-Bulkley方程式を経由して、次の方法を経由して決定される。せん断に先立ち、レオメーターツール表面は、サンプルツール界面で滑ることを防止し又は軽減するために粗いものであってよい。レオメーターを使用して、サンプルは高せん断速度(例えば、1000s-1)と低せん断速度(0.001s-1)との間の、種々のせん断速度でせん断される。各せん断速度について、サンプルを30秒間せん断し、その後、せん断応力データを集め、平均化する。一連のせん断応力測定が各せん断速度について連続的に集められる。これらのせん断速度は、Herschel-Bulkley方程式を経由して、(1)材料が降伏応力(すなわち、Herschel-Bulkley降伏応力)を有するか、及び(2)材料についての降伏応力、を決定するのに使用される。当業者は、降伏応力を有する材料について、せん断応力対せん断速度のプロットが、低せん断速度で、材料の降伏応力に漸近的に近づくデータポイントとともに、低せん断速度でプラトー領域を示すことが分かるであろう。降伏応力は、これらの小さい、ほぼ0のせん断速度でのせん断応力であるか、又は小さい又はほぼ0のせん断速度、例えば、10-3s-1のせん断速度、を使用して決定される、0歪み速度でのせん断応力の概算値である。本明細書で使用する限り(別段示されていない限り)、『降伏応力材料』とは、この方法を経由して決定することが可能な降伏応力を有する材料であることとなる。当業者は、低せん断(例えば、ほぼ0のせん断速度)での降伏応力材料(すなわち、Herschel-Bulkley降伏応力材料)について、せん断応力は、せん断速度とは独立のものであり、代わりに材料の弾性成分にのみ依存するせん断応力を示すことが分かるであろう。
【0059】
降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地は、前記のように、3D細胞培養培地内の任意の所望の位置でグループ細胞の容易な配置及び/又は回収を可能とし得る。例えば、細胞の配置は、細胞が所望の位置で注入され又はそうでなければ配置された際に降伏応力材料が流れて置換されることとなるよう、固体から液体への相変化を、降伏応力材料内の所望の位置で起こすことにより達成し得る。注入の後、降伏応力材料は配置された細胞周りで固化し、それゆえ所望の位置で細胞を捕捉し得る。
【0060】
しかしながら、任意の好適な方法が、3D細胞培養培地内に細胞又は他の生体材料を堆積させるのに使用してよいことを理解されたい。例えば、シリンジ、ピペット又は他の好適なツールを使用して、細胞を3D細胞培養培地の1つ以上の位置に注入してよい。ある実施形態において、注入された細胞は、例えば、遠心分離によりペレットとして成形してよい。しかしながら、本明細書に述べられている3D細胞培養培地により、液体中に吊り下げられた細胞が可能となり、それにより試験を行う際、遠心分離工程を回避してよいことは理解されたい。
【0061】
どのように細胞が培地中に配置されているかにかかわらず、降伏応力材料の降伏応力は、3D細胞培養培地内の細胞の位置が時間を経ても実質的に一定であり得るよう、細胞により行使される重力及び/又は拡散力が原因となる降伏を抑止するのに十分な程、大きいものであってよい。細胞が定位置に固定されているため、降伏応力材料に相変化を起こして細胞を除くことによるアッセイ又は試験のために、後にそれらを同一の場所から回収してよい。下記でより詳細に述べるように、細胞群の配置及び/又は回収は手作業又は自動で行なってよい。
【0062】
本明細書に記載されている降伏応力材料は、任意の好適な機械的特性を有していてよい。例えば、ある実施形態において、降伏応力材料は、降伏応力を下回る程度の印加応力で材料がその形状を保持する固相又は他の相である際、およそ1Paと1000Paとの間の弾性率を有し得る。ある実施形態において、降伏応力材料を流体様の相に変換するために必要とされる降伏応力は、およそ1Paと1000Paとの間であり得る。流体様の相に変換された際、降伏応力材料は、およそ1Pa sと10,000Pa sとの間の粘度を有し得る。しかしながら、本開示においてそのように限定されていないように、弾性率、降伏応力、及び/又は降伏応力材料の粘度についての他の値もまた可能であることは理解されたい。
【0063】
ある実施形態において、前記降伏応力は、前記のように、in vivoで細胞群により感じ取られる圧縮応力に適合するように調節してよい。任意の特定の理論に拘束されるのを望むわけではないが、特定の応力値で降伏する降伏応力材料により、限定されない及び/又は非制限的な細胞群の培養又は拡張が可能となる。具体的には、細胞群は成長するにつれ、取り囲む降伏応力材料に静水圧を行使し得る;この静水応力は、降伏材料の降伏を引き起こすのに十分なものであり得、それにより細胞群の拡大が可能となる。かかる実施形態において、細胞群の培養の間の降伏材料の降伏は、培養の間、細胞群に一定の圧力を維持する降伏応力材料を与え得る。さらに、降伏応力材料は、印加された応力が降伏応力を超えた際に降伏することとなるため、降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地が、降伏応力を超える応力を細胞群に印加することは不可能であり得る。本願発明者は、細胞群に適用される応力のかかる上限により、細胞が不自然に束縛され、損傷し、又はそうでなければ大きい圧縮応力の印加のために変化しないことを確実なものとするのに役立ち得ることを、認識し、理解している。
【0064】
ある実施形態によると、降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地は、排出物、例えば、3D細胞培養培地内に配置された細胞群由来の流体又は他の細胞外物質を収容するために降伏し得る。任意の特定の理論に拘束されるのを望むわけではないが、細胞群由来の流体又は他の物質の排出により細胞外空間の圧力が増加し得る;3D細胞培養培地の降伏応力を超えた場合には、3D細胞培養培地は排出物を収容するのに降伏し、細胞群は制限なく流体又は他の物質を排出し得る。かかる3D細胞培養培地の細胞排出物収容能により、3D細胞培養培地は、in vivoでの環境により近接に匹敵することが可能となり得る。さらに、本願発明者は、以降より詳細に説明するように、降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地により、アッセイ、試験、又は任意の他の好適な目的のために細胞排出物の容易な除去が可能となることを認識し、理解している。
【0065】
細胞群は、任意の好適な方法を経由して、降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地に配置してよい。例えば、ある実施形態において、細胞は、シリンジ、ピペット、又は他の好適な配置又は注入装置で注入又はそうでなければ3D細胞培養培地内の特定の位置に配置してよい。ある実施形態において自動化された細胞ディスペンサーの配列を、3D培養培地の容器に多数の細胞サンプルを注入するのに使用してよい。配置装置のチップが3D細胞培養培地を通って移動することで、配置ツールが3D細胞培養培地内の任意の位置に容易に移動され得るよう、チップ周りの領域に降伏を引き起こすのに十分な量のエネルギーが与えられ得る。ある例において、3D細胞培養培地内に細胞群を堆積させるために配置ツールにより印加される圧力は、3D細胞培養培地が流れて細胞群を収容するよう、降伏を起こすのに十分なものでまたあり得る。配置ツールの移動は、手動で(例えば、『手で』)行ってよく、又は機械又は任意の他の好適な機構で行ってよい。
【0066】
ある実施形態において、多数の独立した細胞群を、3D細胞培養培地の単一容積内に配置してもよい。例えば、3D細胞培養培地の容積は、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも1000、又は任意の他の好適な数の独立した細胞群を収容するのに十分な程、大きいものであってよい。代わりに、3D細胞培養培地の容積は、1つの細胞群のみを有するものであってよい。さらに、細胞群は任意の好適な細胞数を含んでよく、細胞は1つ以上の種々のタイプからなるものであってよいと解すべきである。
【0067】
具体的な実施形態に応じて、細胞群は、任意の好適な形状、構造、及び/又はパターンに応じた3D細胞培養培地内に配置してよい。例えば、独立した細胞群は、スフェロイドとして堆積してよく、スフェロイドは、3Dグリッド、又は任意の他の好適な3Dパターン上に配置されてよい。独立したスフェロイドはおよそ同一細胞数をすべて含んでよく、およそ同一のサイズであってよく、又は代わりに、異なるスフェロイドは、異なる細胞数及び異なるサイズを有していてよい。ある実施形態において、細胞は、形状、例えば、胚様体又はオルガノイド体、チューブ、シリンダー、トロイド、階層に枝分かれした導管ネットワーク、高アスペクト比物、薄い閉じた殻、又は組織、導管又は他の生体組織の構造に相当し得る他の複雑な形状に配置されてよい。
【0068】
ある実施形態によると、降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地により、細胞の3Dプリンティングが3次元に所望のパターンを形成することが可能となり得る。例えば、コンピュータ制御されたインジェクターチップは3D細胞培養培地内の空間パスを描き出し、所望の3Dパターン又は形状を形成するパスに沿って、複数の位置で細胞を注入し得る。3D細胞培養培地を通って、インジェクターチップが移動することで、インジェクターチップ周りの領域に降伏を起こすのに十分な機械的エネルギーが与えら得て、インジェクターチップが容易に3D細胞培養培地を通って移動すること、及びまた細胞の注入を収容することが可能となる。注入の後、3D細胞培養培地は、固体様の相に戻って、プリントした細胞を支持及びプリントした構造を維持し得る。しかしながら、3Dプリント技術は本明細書に説明されている3D細胞培養培地を使用するのには必要とされないことは理解されたい。
【0069】
降伏応力材料から製造された3D細胞培養培地により、細胞を堆積させるのに使用したものとは逆の工程を経由して、細胞培養培地から細胞群を回収することが容易となり得る。例えば、細胞は、単に除去装置、例えば、シリンジ又はピペットを、細胞群が配置されている場所に移動させることにより、及び吸引して細胞を細胞培養培地から取り出すことにより除いてよい。前記のように、3D細胞培養培地を通って除去装置のチップが移動することにより、材料に降伏を起こし及び3D細胞培養培地由来の細胞の除去物を収容するのに十分なエネルギーが与えられ得る。かかるアプローチは、例えば、3D細胞培養培地に多数の細胞サンプルが堆積している試験工程の一部として使用してよい。堆積した細胞は同一条件の下、培養してよいが、サンプルの異なるものは、異なる薬物又は他の処理条件に曝してよい。1つ以上のサンプルを細胞に及ぼす処理条件の影響を調査するために幾度も収集してよい。
【0070】
ある実施形態において、3D細胞培養培地は、細胞工学組織構造物を支持するのに及び/又は保存するのに使用してよい。例えば、複数の細胞が配置される足場又は他の好適な構造を含む組織構造物を、3D細胞培養培地に配置してよい。3D細胞培養培地は、組織構造物の複雑な構造を保存する支持体を提供し得る一方、in vivoで見つかるものを模倣し得る細胞培養のための3D環境もまた提供する。
【0071】
1つ以上の化合物が細胞と共に及び/又は細胞と隣接して堆積し得ることを理解されたい。例えば、溶解性、非細胞質成分は、細胞と共に堆積し得る。これらは、構造的タンパク質(例えば、コラーゲン、ラミニン)、シグナル分子(成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ペプチド)、化学化合物(医薬品)、核酸(例えば、DNA、RNAs)、及び他のもの(ナノ粒子、ウィルス、遺伝子移入ベクター)を含み得る。
【0072】
ある実施形態によると、タンパク質を合成する方法が提供される。細胞は、液体細胞培養培地で膨潤させた複数のマイクロゲル粒子を含む顆粒状のゲルを含む容器中で培養してよい。培養細胞により合成されたタンパク質は、それから容器から抽出され得る。例えば、ある実施形態において、培養細胞は膵島細胞であり、タンパク質はインシュリンである。
【0073】
図2A-2Bは、かかる装置のインタラクション装置の例を含む、細胞培養及びインタラクション装置の例を示す。
【0074】
図2Aは、生体細胞202が3D細胞培養培地204内の特定の位置に吊り下げられている装置200を示す。装置は、3D細胞培養培地204に材料を与えるインタラクション装置210A及び210Bを含む。装置210Aは、マイクロゲル粒子と混合した際、3D細胞培養培地204を形成する液体細胞培養培地を与える。装置210Aは、細胞202が3D細胞培養培地204から液体細胞培養培地を吸収し、使用する際、養分を与える液体培養培地を与え得る。装置210Bが、例えば、薬物を搭載した制御放出物質206を3D細胞培養培地204に与えることにより、物質をまた与え得る。制御放出物質206は、3D細胞培養培地204を通じて拡散し、細胞202に吸収され得る。
【0075】
装置200は、3D細胞培養培地204から流体を除くインタラクション装置をさらに含んでよい。
図2Aに示すように、装置200はポンプ(例えば、真空ポンプ)212を含んでよく、ポンプは流出214を経由して3D細胞培養培地204から流体を取り出し得る。ある実施形態において、
図2Aに示すように、装置200は、フィルター様の薄膜216を含んでよく、それによりある物質は流出214に流れることが可能となり得るが、3D細胞培養培地204のヒドロゲル又は他の物質は通過からブロックされ得る。
【0076】
図2Bは、種々のインタラクション装置を含む、装置250の他の例を示す。
図2Aの装置/材料と同一である
図2Bの例の装置及び材料は、同一の参照数字を共有する。
図2Bの例は、1つ以上の物質を3D細胞培養培地204に与えることを可能とする、かん流チューブ260を示す。3つのかん流チューブが示されている。同一の物質を各チューブ260から与えてよく、又は種々の物質を与えてもよい。与えられ得る物質は、液体細胞培養培地、医薬品、又は他の物質を含む。
【0077】
図3A及び3Bの例の装置210B及び260は、ある実施形態において、3D細胞培養培地204内の特定の位置に物質を与えるために稼働してよく、ある実施形態において、物質を与えて3D細胞培養培地204に沿って物質の濃度勾配を形成するために稼働してよい。勾配を形成することにより、種々の細胞202を種々の濃度の物質に曝し得る。曝露に続き、細胞202は(3D細胞培養培地204内外で)調査して種々の濃度が細胞202に与える影響を決定してよい。
【0078】
ある実施形態において、前記のように、
図2A及び2Bの装置210B及び260は、3D細胞培養培地204に直接挿入してもよく、除いてもよい。一方、細胞202は3D細胞培養培地204中で培養される。
【0079】
図2A及び2Bの例において、ポンプ212を、任意の好適な目的のために3D細胞培養培地204から物質を除くのに使用してよい。例えば、ポンプ212は、細胞により生成された老廃物又はタンパク質、又は収集されることとなる細胞活性の副産物を含む、細胞活性の副産物を除くのに稼働してよい。他の例として、ポンプ212は、3D細胞培養培地204を通じて物質(例えば、装置210A、210B、260により与えられる物質)を取り出すのに3D細胞培養培地204に力を課してもよい。かかる力を適用するポンプ212を、
図2A及び2Bの例に示すが、他の実施形態において、力源は、装置200、250を遠心回転させるもの、又は重力、又は任意の他の好適な力源であってよい。
【0080】
本発明のこれらの及び他の態様は、以降の実施例の考慮の上にさらに理解されることとなるが、実施例は、本発明のある具体的な実施形態を示すことを目的としているが、その範囲を請求項に規定されたものに限定することは意図していない。
【実施例】
【0081】
下記実施例は、本発明の種々の態様の非限定的な実施形態について述べるものである。表1及び2は、方法パラメータの鍵となる特徴の要約を提供するものであり、ヒドロゲルは下記実施例に記載する。表1は、沈殿重合条件の要約を提供するものである。表2は、詰められたヒドロゲルの特性の要約を提供するものである。
【0082】
【0083】
【実施例1】
【0084】
本実施例は、マイクロゲル粒子及び得られる粒子を形成するための限定されない方法について述べる。本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。
【0085】
アクリルアミド、メタクリル酸、及びポリ(エチレングリコール)ジアクリラートを熱的開始剤(AIBN)とともにエタノールに溶解させ、加熱した。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、PEGda(M
n=700g/mol)、及びAIBNを45:4:1:0.5:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。ポリマーが形成されるにつれ、ポリマーが個別のマイクロゲル粒子として溶液から析出した。
図3は、アニオン性マイクロゲル粒子の合成についての反応を示す。モノマーのモル比は、
図3に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01である。
【0086】
マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。マイクロゲル粒子は、およそ1~3μmの直径を有していた。これらの粒子からなるヒドロゲル(3wt%ポリマー)の1Hzでのせん断弾性率は、およそ20Paであった。これらの粒子からなるヒドロゲル(3wt%ポリマー)の降伏応力は、およそ2Paであった。
【実施例2】
【0087】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図3に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、PEGda(M
n=700g/mol)、及びAIBNを95:4:1:0.5:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例3】
【0088】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図3に示すように、x=0.90、y=0.09、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、PEGda(M
n=700g/mol)、及びAIBNを45:4:0.5:0.5:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。マイクロゲル粒子は1~3μmの直径を有していた。これらの粒子からなるヒドロゲル(10wt%ポリマー)の1Hzでのせん断弾性率は、およそ40Paであった。これらの粒子からなるヒドロゲル(10wt%ポリマー)の降伏応力は、およそ4Paであった。
【実施例4】
【0089】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図3に示すように、x=0.83、y=0.17、及びz=0.002であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、PEGda(M
n=700g/mol)、及びAIBNを45:4:1:0.1:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させる。
【実施例5】
【0090】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。
【0091】
アクリルアミド、メタクリル酸、及びN,N-メチレンビス(アクリルアミド)を熱的開始剤とともにエタノールに溶解させ、加熱した。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、N,N-メチレンビス(アクリルアミド)、及びAIBNを45:4:0.5:0.1:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。
図4は、合成マイクロゲル粒子についての合成反応を示す。モノマーのモル比は、
図4に示すように、x=0.90、y=0.09、及びz=0.01であった。
【0092】
マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例6】
【0093】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図4に示すように、x=0.81、y=0.17、及びz=0.02であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、N,N-メチレンビス(アクリルアミド)、及びAIBNを45:4:1:0.2:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。マイクロゲル粒子はおよそ直径2~4μmを有していた。これらの粒子からなるヒドロゲル(2wt%ポリマー)の1Hzでのせん断弾性率は、およそ20Paであった。これらの粒子からなるヒドロゲル(2wt%ポリマー)の降伏応力は、およそ2Paであった。
【実施例7】
【0094】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図4に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、N,N-メチレンビス(アクリルアミド)、及びAIBNを45:4:1:0.1:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例8】
【0095】
本実施例は、モノマー、酸性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図4に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、メタクリル酸、N,N-メチレンビス(アクリルアミド)、及びAIBNを95:4:1:0.1:0.05の比(重量比)で混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例9】
【0096】
本実施例は、モノマー、塩基性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図5に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、2-(ジメチルアミノエチル)メタクリラート、PEGda(M
n=700g/mol)、及びAIBNを混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例10】
【0097】
本実施例は、モノマー、永久カチオン性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図6に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムヨージド、PEGda(Mn=700g/mol)、及びAIBNを混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例11】
【0098】
本実施例は、モノマー、双性コモノマー、架橋剤、熱的開始剤、及び溶媒を含む組成物について述べる。モノマーのモル比は、
図7に示すように、x=0.82、y=0.17、及びz=0.01であった。エタノール、アクリルアミド、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、PEGda(Mn=700g/mol)、及びAIBNを混合した。混合物をアルゴンで30分間パージし、反応物から酸素を除いた。フラスコを60°Cで4時間予熱したオイルバス中に置いた。マイクロゲル粒子はろ過し、エタノールに再懸濁させ、再度ろ過し、及び真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【実施例12】
【0099】
図8は、沈殿反応を通じて種々の電荷密度を有する多電解質マイクロゲルを調製するための方法を示す。MAA-メタクリル酸;CBMA- カルボキシベタインメタクリラート;qDMAEMA-4級ジメチルアミノエチルメタクリラート。
【0100】
図9A~9Dは、カルシウムを添加したカチオン性マイクロゲル中でのレオロジー変化を示すグラフである。
【0101】
図10は、アニオン性及びカチオン性マイクロゲル中での、c
塩/c
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【0102】
図11は、アニオン性及びカチオン性マイクロゲル中での、c
2
帯電/c
塩(mM
2/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【0103】
図12は、双性マイクロゲル中での、c
塩/c
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【0104】
図13は、アニオン性(MAA)、双性(CBMA)、及びカチオン性(qDMAEMA)マイクロゲル中での、c
塩/c
帯電(mM/mM)の関数として降伏応力(σ
y/σ
y0)を示すグラフである。
【0105】
図14は、アニオン性(MAA)、双性(CBMA)、及びカチオン性(qDMAEMA)マイクロゲル中での細胞生存率(%)を示す棒グラフである。
【0106】
図15は、アニオン性(MAA)及び双性(CBMA)マイクロゲルについての、c
塩/c
帯電(mM/mM)の関数として遊離のカルシウム(%)を示すグラフである。
【0107】
別段定義されていない限り、本明細書中で使用されるすべての技術及び科学用語は、開示されている発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書で引用されている刊行物及び刊行物が引用する材料は、具体的に参照により組み入れられる。
【0108】
当業者は、ルーチンにすぎない実験を使用して、多くの本明細書に記載されている発明の具体的実施形態と等価なものを認識、又は確認することが可能となる。かかる等価体は、以降の請求項に含まれることを目的としている。