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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】製氷機及び製氷機の制御部の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/18 20060101AFI20250110BHJP
   F25C 1/10 20060101ALI20250110BHJP
   F25C 5/10 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F25C1/18 Z
F25C1/10 303A
F25C5/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020147406
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042145
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 利治
(72)【発明者】
【氏名】設楽 真輔
(72)【発明者】
【氏名】片桐 賢宏
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0319387(US,A1)
【文献】特開2004-309105(JP,A)
【文献】特開2005-180794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0216862(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0047432(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/18
F25C 1/10
F25C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の庫内に配置される製氷機であって、
前記冷蔵庫の蒸発器を通過した冷気が流れる冷却ダクトと、前記冷却ダクト内に配置された複数の冷却フィンを有する放熱板と、金属製の棒状部材が基端部から先端部にかけて下側に延びるように取り付けられた金属板とを有し、前記放熱板により前記棒状部材が冷却される冷却部と、
液体を貯蔵可能な液体容器と、
を備え、
前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体容器に収容された液体に浸かった状態で、前記放熱板により冷却された前記棒状部材の周囲に氷が生成され、
複数の前記棒状部材が並んだ方向に沿って、前記液体容器が細長く延びており、
前記冷却フィンの延伸方向が、前記液体容器が細長く延びる方向と交差する方向であり、
前記冷却ダクト内に流入した冷気が、前記冷却フィンの一方の端部の側方を前記冷却ダクトの内壁に沿って、前記冷却フィンの延伸方向と交差する、前記液体容器が細長く延びる方向に流れながら、その一部が各々の前記冷却フィンの間に流入していくことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
各々の前記冷却フィンの間を流れた冷気が、前記冷却フィンの他方の端部から前記冷蔵庫の庫内に流出することを特徴とする請求項1に記載の製氷機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製氷機が、
前記液体容器に液体を供給する液体供給部と、
前記液体容器内に残留する液体の少なくとも一部を前記液体容器から除去する液体除去部と、
前記液体供給部及び前記液体除去部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部の制御により、
前記液体供給部が、前記液体容器に液体を供給する給液工程と、
前記給液工程の後、所定の時間、前記放熱板により冷却された前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体容器に収容された液体に浸かった状態を維持する製氷工程と、
前記製氷工程の後、前記液体除去部が、生成された氷の周囲の液体を除去する除液工程と、
を行う製氷プロセスを複数回繰り返し、
前記所定の時間が、氷点下の製氷温度になった前記棒状部材の前記先端部から所定の領域の周囲に氷が生成される時間であることを特徴とする製氷機の制御部の制御方法
【請求項4】
前記製氷機が、
前記金属板と接したヒータと、
前記冷却部と前記液体容器とを相対的に移動させる移動機構と
を更に備え、
前記制御部の制御により、
前記製氷プロセスを複数回繰り返した後、
前記移動機構が、前記棒状部材の下側に前記液体容器が存在しないように、前記冷却部及び前記液体容器を相対的に移動させる移動工程と、
前記ヒータが前記金属板を加熱して、前記棒状部材の周囲に生成された氷を前記棒状部材から離脱させる離氷工程と、
を行うことを特徴とする請求項3に記載の製氷機の制御部の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を凍らせて氷を生成する製氷機、特に、冷蔵庫の庫内に配置される製氷機、及びこの製氷機の制御部の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を凍らせて氷を生成する製氷機の中には、トレー内の液体に浸かった冷却突起を冷蔵庫の冷却システムの冷媒を用いて冷却することにより、製氷を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、トレー内の液体に浸かった冷却突起の周囲に氷を生成するので、効率的に製氷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-150785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製氷機では、冷蔵庫の冷却システムの配管と接続する必要があるので、構造が複雑になり、製氷機の着脱も容易に行うことができない。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、シンプルな構造で効率良く製氷が可能であるとともに、冷蔵庫からの着脱が容易な製氷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製氷機は、
冷蔵庫の庫内に配置される製氷機であって、
前記冷蔵庫の蒸発器を通過した冷気が流れる冷却ダクトと、前記冷却ダクト内に配置された複数の冷却フィンを有する放熱板と、金属製の棒状部材が基端部から先端部にかけて下側に延びるように取り付けられた金属板とを有し、前記放熱板により前記棒状部材が冷却される冷却部と、
液体を貯蔵可能な液体容器と、
を備え、
前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体容器に収容された液体に浸かった状態で、前記放熱板により冷却された前記棒状部材の周囲に氷が生成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、冷蔵庫の蒸発器を通過した冷気により、冷却フィンを有する放熱板が冷却され、この放熱板により冷却された棒状部材の周囲に氷を生成することができる。よって、シンプルな構造でありながら、効率的に氷を生成できる。また、冷蔵庫の配管等と接続されていないので、製氷機の着脱を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明は、
前記冷却ダクト内に流入した冷気が、前記冷却フィンの一方の端部の側方を前記冷却ダクトの内壁に沿って、前記冷却フィンの延伸方向と交差する方向に流れながら、その一部が各々の前記冷却フィンの間に流入していくことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、冷気が、冷却フィンの一方の端部の側方を冷却ダクトの内壁に沿って、冷却フィンの延伸方向と交差する方向に流れながら、その一部が各々の冷却フィンの間に流入していく。これにより、冷気を各々の冷却フィンに偏りなく流入させることができ、放熱板全体を均等に冷却することができる。よって、放熱板により冷却される金属板も均等に冷却され、各々の棒状部材の冷却温度を揃えることができる。以上により、各々の棒状部材の周囲に生成される氷の大きさを揃えることができる。
冷気の流れる方向と冷却フィンの延伸方向とが交差する角度は、略直交する場合もあり得るし、それ以外の角度をなす場合もあり得る。
【0010】
また、本発明は、各々の前記冷却フィンの間を流れた冷気が、前記冷却フィンの他方の端部から前記冷蔵庫の庫内に流出することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、冷却フィンの間を流れて放熱板を冷却した冷気が、冷蔵庫の庫内を流れて、庫内に収納された食品等を冷却しながら、蒸発器の下側へ戻っていく。これにより、製氷機による効率的な製氷とともに、冷蔵庫の効率的な冷却サイクルを得ることができる。
【0012】
また、本発明は、
前記液体容器に液体を供給する液体供給部と、
前記液体容器内に残留する液体の少なくとも一部を前記液体容器から除去する液体除去部と、
前記液体供給部及び前記作液体除去部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部の制御により、
前記液体供給部が、前記液体容器に液体を供給する給液工程と、
前記給液工程の後、所定の時間、前記放熱板により冷却された前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体容器に収容された液体に浸かった状態を維持する製氷工程と、
前記製氷工程の後、前記液体除去部が、生成された氷の周囲の液体を除去する除液工程と、
を行う製氷プロセスを複数回繰り返すことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、給液工程、製氷工程及び除液工程を行う製氷プロセスを複数回繰り返すことにより、常に新たに供給された不純物の少ない液体が凍結した透明な氷を短時間に生成することができる。
【0014】
また、本発明は、
前記金属板と接したヒータと、
前記冷却部と前記液体容器とを相対的に移動させる移動機構と
を更に備え、
前記制御部の制御により、
前記製氷プロセスを複数回繰り返した後、
前記移動機構が、前記棒状部材の下側に前記液体容器が存在しないように、前記冷却部及び前記液体容器を相対的に移動させる移動工程と、
前記ヒータが前記金属板を加熱して、前記棒状部材の周囲に生成された氷を前記棒状部材から離脱させる離氷工程と、
を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、棒状部材の下側に液体容器が存在しない状態において、ヒータにより速やかに棒状部材の温度を上げて、離氷を実現できる。これにより、短い製氷サイクルを確実に実現できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明においては、シンプルな構造で効率良く製氷が可能であるとともに、冷蔵庫からの着脱が容易な製氷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す分解斜視図である。
図2】本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す斜視図である。
図3】本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す平面図である。
図4図3のA-A断面図であって、特に、冷却部、液体容器及び給除液管の配置を模式的に示す側面断面図である。
図5】本発明の1つの実施形態に係る製氷機の制御構成を示すブロック線図である。
図6】本発明の1つの実施形態に係る製氷機を備えた冷蔵庫の一例を模式的に示す側面断面図である。
図7】冷却ダクト40内における放熱板10の配置の変形例を模式的に示す平面図である。
図8A】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される給液工程を模式的に示す側面断面図である。
図8B】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される製氷工程を模式的に示す側面断面図である。
図8C】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される除液工程を模式的に示す側面断面図である。
図8D】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される待避工程を模式的に示す側面断面図である。
図8E】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される離氷工程を模式的に示す側面断面図である。
図9図8A~8Eに示す製氷プロセスの制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10】試作した製氷機により生成された氷を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する製氷機及び冷蔵庫は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。以下の記載及び図面では、製氷機及び冷蔵庫が水平面に設置された場合を想定して、上下方向を示してある。
【0019】
(1つの実施形態に係る製氷機)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す分解斜視図である。図2は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す斜視図である。図3は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機を示す平面図である。図4は、図3のA-A断面図であって、特に、冷却部、液体容器及び給除液管の配置を模式的に示す側面断面図である。図5は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機の制御構成を示すブロック線図である。図6は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機を備えた冷蔵庫の一例を模式的に示す側面断面図である。
はじめに、図1から図6を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2の概要を説明する。
【0020】
製氷機2は、液体を凍らせて氷を生成可能な冷却部50と、液体を貯蔵可能な液体容器60と、液体容器60を回転移動させる移動機構80と、液体容器60に液体を供給する液体供給部72と、液体容器60内の液体を除去する液体除去部74とを備える。図1から図4には、実際に液体容器60に液体を供給し、液体容器60から液体を除去する給除液管70が示されている。給除液管70は、液体供給部72及び液体除去部74の両方の機能を果たす部材である。
本実施形態に係る製氷機2は、図6に一例を示すように、冷蔵庫100の庫内に配置され、冷蔵庫100の冷却システム150により生成された冷風が供給されるようになっている。製氷機2は、更に、製氷機2の構成機器を制御する制御部90を備える(図5参照)。凍結させて氷を生成する液体として、飲料水をはじめとする任意の液体を用いることができる。
【0021】
<冷却部>
冷却部50は、上側から下側にかけて、順に放熱板10、ペルチェ素子30、及び金属板20を備える。更に、放熱板10が中に配置され、中を流れる冷風により放熱板10を冷却する冷却ダクト40を備える。
放熱板10は、ベース板14上に複数の冷却フィン12が立設した構造を有し、複数の冷却フィン12は、所定の間隔を開けて互いに略平行に配置されている。金属板20は、板状のベース部22の下側の面に複数の棒状部材24が取り付けられている。ペルチェ素子30は、放熱板10と、金属板20との間に配置され、その上面が放熱板(ベース板14)10の下面と接し、その下面が金属板(ベース部22)の上面に接するようになっている。
【0022】
後述するように、冷蔵庫100の冷却システム150で生成された冷風が冷却ダクト40内を流れ、冷却ダクト40内に配置された放熱板10の各々の冷却フィン12の間を流れて、放熱板10を冷却する。熱伝導により、冷却された放熱板10は、ペルチェ素子30を介して、金属板20を冷却し、金属板20の棒状部材24が氷点下の温度まで冷却される。このとき、棒状部材24の一部が、液体容器60に収容された液体に浸かっているとき、棒状部材24の周囲に氷が生成される。
ペルチェ素子30は、金属板20と接する側を放熱側とすることにより、金属板20を加熱して、棒状部材24の周囲に生成された氷を、棒状部材24から離脱させることができる。つまり、金属板20をヒータとして機能させることができる。一方、金属板20と接する側を吸熱側とすることにより、放熱板10による冷却に加えて、ペルチェ素子30で金属板20を冷却することにより、金属板20の棒状部材24の温度を更に下げることができる。
【0023】
[放熱板]
放熱板10は、アルミ、銅のような熱伝導率の高い金属から形成される。ベース板14は、略長方形の平面形状を有する板状部材である。冷却フィン12も、略長方形の平面形状を有する板状部材である。各々の冷却フィン12は、ベース板14に対して略垂直に立設しており、互いに略平行に配置されている。よって、複数の冷却フィン12により、略長方形の平面形状を有する。
【0024】
[金属板]
金属板20は、アルミ、銅のような熱伝導率の高い金属から形成される。金属板20は、平板状のベース部22、及びベース部22に取り付けられた複数の金属製の棒状部材24を有する。棒状部材24は、基端部から先端部にかけて下側に延びるようにベース部22の下面に取り付けられている。
【0025】
図1では、6本の棒状部材24がベース部22に取り付けられている場合を示す。棒状部材24は、円形の断面形状を有し、外径が5~20mm程度、長さが30~80mm程度を例示することができる。棒状部材24の大きさ及び取り付ける本数により、ベース部22の平面形状が定まる。放熱板10も、金属板20のベース部22とほぼ同様な平面形状が採用される。放熱板10及び金属板20のベース部22の平面寸法として、縦及び横の寸法が、40~400mm程度を例示できる。ベース部22の厚みとしては、2~10mm程度を例示できる。
【0026】
本実施形態に係る金属板20は、棒状部材24の基端部側に雄ネジが設けられ、ベース部22に設けられた孔部に形成された雌ネジと螺合するようになっている。このような構造により、棒状部材24を容易に交換して取り付けることができる。本実施形態に係る棒状部材24は、円形の断面形状を有するが、これに限られるものではなく、多角形、星形、ハート形をはじめとする任意の断面形状を有する棒状部材に取り替えることもできる。また、溶接や蝋付けにより、棒状部材24をベース部22に接合することもできる。棒状部材24の冷却効果を考慮すると、中実の棒状部材24が好ましいが、加工性等を考慮して、中空の棒状部材24を採用することもできる。
【0027】
[ペルチェ素子]
ペルチェ素子30は、異なる2種類の金属または半導体を接合して電流を流すと、接合点で熱の吸収・放出が起こるペルチェ効果を利用した素子である。ペルチェ素子30に対して、所定の方向に電流を流すと、一方の面が吸熱側となり、他方の面が放熱側となる。そして、ペルチェ素子30に対して、逆の方向に電流を流すと、吸熱側となる面及び放熱側となる面が逆転する。本実施形態では、既知の任意のペルチェ素子を用いることができる。
本実施形態に係るペルチェ素子30の幅、奥行き寸法として、20~100m程度を例示でき、厚みとして2~20mm程度を例示できる。放熱板1や金属板20の大きさに合わせて、複数のペルチェ素子30を配置することもできる。本実施形態では、3つのペルチェ素子30が、放熱板10及び金属板20の間に配置された場合を示す。
【0028】
ただし、ヒータとしてペルチェ素子30を用いる場合に限られず、脱氷のため、棒状部材24を加熱する機能のみを有するヒータを用いることもできる。このようなヒータとして、コードヒータや、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータや、セラミックヒータを例示できる。このようなヒータを用いる場合、金属板20及び放熱板10の間にヒータを設置する場合だけでなく、金属板20の下面側にヒータを設置することもできる。
【0029】
[放熱板、ペルチェ素子及び金属板の固定構造]
ペルチェ素子30の両面が放熱板10の下面及び金属板20の上面と密着するような固定構造を有する。例えば、ペルチェ素子30を挟み込むように配置された放熱板10及び金属板20を、ボルトナットのような締結部材を用いて互いに固定することができる。ボルト軸に引張応力がかかるように締結することにより、放熱板10の下面及びペルチェ素子30の上面を密着させ、ペルチェ素子30の下面及び金属板20の上面を密着させることができる。
ただし、この固定方法に限られるものではなく、その他の任意の固定手段を用いて、冷却部50の固定構造を形成することができる。
【0030】
[冷却ダクト]
冷却ダクト40は、例えば、樹脂材料から形成される。冷却ダクト40は底面部と、底面部を囲むように立設した3つの側壁部を有し、1つの側面は開口している。また、1つの側壁部には、冷気が流入する流入口40Aが開口している。流入口40Aは、外側に広がるような流入路を有している。冷却ダクト40の底面部には、スリット状の開口があり、この開口を介して、金属板20の棒状部材24が、冷却ダクト40から下側に突出している。そして、放熱板10、ペルチェ素子30及び金属板20のベース部22は、3つの側壁部で囲まれた冷却ダクト40の内部に配置されている。
【0031】
冷却ダクト40は底面部には、更に4つの丸孔があけられており、この孔に、ヘッド部を有するピン46を下側から挿入して、ピン46の先端部を冷蔵庫100側に取り付ける。これより、冷却部50全体を冷蔵庫100の庫内に取り付けることができる。冷却部50は、冷蔵庫100側と配管等により接続されていないので、ピン46の着脱により、冷却部50の冷蔵庫100への取り付け取り外しを容易に行うことができる。
【0032】
次に、図3及び図4を参照しながら、冷却ダクト40内の冷気の流れを説明する。図3及び図4では、気体の流れを点線の矢印で模式的に示してある。冷蔵庫100の冷却システム150の蒸発器140を通過した冷気が、流入口40Aから、冷却ダクト40内に流入する。冷却フィン12の一方の端部12Aと、冷却ダクト40の内壁44との間には一定の間隔があけられ、冷気が流れる流路42が設けられている。この流路42は、冷却フィン12の延伸方向と略直交する方向に延びている。また、冷却フィン12の他方の端部12Bは、冷却ダクト40の開口した側面に配置さている。つまり、冷却フィン12の他方の端部12Bは、冷蔵庫100の庫内に開口している。
【0033】
冷却ダクト40内に流入した冷気は、冷却フィンの一方の端部12Aの側方を冷却ダクト40の内壁44に沿って、冷却フィン12の延伸方向と略直交する方向に流れながら、その一部が各々の冷却フィン12の間に流入していく。各々の冷却フィン12の間を流れた冷気は、冷却フィン12の他方の端部12Bから冷蔵庫100の庫内に流出する。
【0034】
以上のように、冷蔵庫100の蒸発器140を通過した冷気が、冷却フィン12の間を通過して放熱板10が冷却され、この放熱板10により冷却された金属板20の棒状部材24の周囲に氷を生成することができる。よって、シンプルな構造でありながら、効率的に氷を生成できる。また、製氷機2は、冷蔵庫100の配管等と接続されていないので、製氷機2の着脱を容易に行うことができる。これにより、シンプルな構造で効率良く製氷が可能であるとともに、冷蔵庫100からの着脱が容易な製氷機2を提供するこことができる。
【0035】
特に、冷気が、冷却ダクト40の内壁44に沿って流れながら、その一部が各々の冷却フィン12の間に流入していくので、冷気を各々の冷却フィン12に偏りなく流入させることができる。これにより、放熱板10全体が均等に冷却され、冷却フィン12により冷却される金属板20も均等に冷却され、各々の棒状部材24の冷却温度を揃えることができる。よって、各々の棒状部材24の周囲に生成される氷の大きさを揃えることができる。
【0036】
また、冷却フィン12の間を流れて放熱板10を冷却した冷気が、冷蔵庫100の庫内を流れ、庫内に収納された食品等を冷却しながら、冷蔵庫100の蒸発器140の下側へ戻っていく。これにより、製氷機2による効率的な製氷とともに、冷蔵庫100の効率的な冷却サイクルを得ることができる。
【0037】
<液体容器>
液体容器60は、例えば、弾性を有する樹脂材料から形成される。液体容器60は、底面部と底面部から立設した側壁部とに囲まれた液体貯蔵領域Rを有する。液体貯蔵領域Rの上方は開口している。金属板20の棒状部材24は、この開口を介して、液体貯蔵領域R内に挿入され、棒状部材24の先端部から所定の領域が液体貯蔵領域R内に配置されるようになっている。
本実施形態に係る製氷機2では、冷気により冷却された放熱板10からの冷却により、金属製の棒状部材24が氷点下の温度となる。棒状部材24の先端部から所定の領域が液体容器60の液体貯蔵領域R内に配置されるようになっているので、棒状部材24の液体に浸かった部分の周囲に氷を生成することができる。所定の領域として、棒状部材24の先端部から8~40mm程度を例示することができる。
更に、ペルチェ素子30を備える場合には、放熱板10による冷却に加え、ペルチェ素子30による冷却も加わるので更に低い温度で冷却でき、金属板20の棒状部材24の周囲に短時間に氷を生成することができる。
【0038】
本実施形態では、6本の棒状部材24が略直線状に並んでおり、液体貯蔵領域Rもそれに沿って細長く延びている。液体貯蔵領域Rの延びた方向に略直交する断面を示す図4に示すように、液体貯蔵領域Rの底面を形成する底面部及び側面を形成する側壁部は滑らかな曲線部を介して繋がり、上方が開口している。
【0039】
図4に示すように、液体貯蔵領域Rの横側の領域には、液体貯蔵領域Rの延在方向に沿って延びたシャフト部62が設けられている。図2に示すように、液体容器60のシャフト部62の一方の端部は、後述する移動機構80の駆動軸に連結されている。一方、液体容器60のシャフト部62の他方の端部は、製氷機置2のフレーム部84に設けられた軸受部82に回転自在に支持されている。このような構成により、シャフト部62の中心の点Cを回転中心として、液体容器60が回転可能になっている。つまり、移動機構80の駆動力により、液体容器60の端部領域に位置する点Cを回転中心にして、液体容器60を回転移動させることができる。
【0040】
<移動機構>
移動機構80は、液体容器60を回転移動させるように構成されている。移動機構80の駆動モータが起動して駆動軸が回転すると、液体容器60は点Cを回転中心として回転する。移動機構80は、例えば、駆動モータの駆動力により、液体容器60を時計回り・反時計回りに回転移動させることができる(図4の両矢印参照)。
【0041】
図4に示すような液体容器60の位置を製氷位置と称する。液体容器60が製氷位置にいる場合には、液体容器60の開口が上方を向いて、液体を液体貯蔵領域R内に貯蔵可能であり、金属板20の棒状部材24が、この開口を介して先端部から所定の領域が液体貯蔵領域R内に配置される。
移動機構80により、液体容器60を製氷位置から点Cを回転中心として回転させて、金属板20の棒状部材24の下側に液体容器60が存在しない状態まで回転させることができる(図8C、8D参照)。この液体容器60の位置を待避位置と称する。製氷位置及び待避位置の間の液体容器60の回転角度は、主に、金属板20の棒状部材24及び液体容器60の位置関係、並びに回転中心となる点Cの位置によって異なるが、70度から120度の範囲が適切であると考えられる。
【0042】
<液体供給部/液体除去部>
本実施形態では、液体容器60内に液体を供給する液体供給部72、及び液体容器60内から液体を排出する液体除去部74を兼用した機構を有する。この液体供給部72及び液体除去部74の兼用機構は、主に、液体を貯蔵する貯蔵容器と、吸引方向及び吐出方向を逆転可能な給除液ポンプと、給除液管70と、それらを接続する給除液流路とから構成される。液体供給部72及び液体除去部74を兼用することにより、部品点数を減らし、特に、給除液管70だけが液体容器60内に挿入されるので、液体容器60周りの省スペース化が図れる。
給除液管70は、冷却ダクト40の外側に配置され、給除液管70内を流れる液体が凍結するのを防いでいる。
【0043】
後述する制御部90の制御により、給除液ポンプを給液側に駆動すると、貯蔵容器内の液体が、給除液流路を介して、給排液ポンプから給除液管70に流れて、給除液管70の先端開口70Aから液体容器60内に流入する。
制御部90の制御により、給除液ポンプ除液側に駆動すると、液体容器60内の液体が給除液管70の先端開口70Aから吸い込まれ、給除液流路を介して、給除液管70から給排液ポンプを流れて貯蔵容器内に流入する。このとき、戻りの液体を貯蔵容器内に流入させる前に、フィルタを通過させることが好ましい。フィルタの濾過機能により、貯蔵容器内の液体の可溶物または不溶物の濃度上昇を抑えて、高品質な氷の生成が実現できる。
ただし、液体供給部72及び液体除去部74を兼用する機構は一例であって、液体供給部72及び液体除去部74ごとに、個別の給液ポンプ及び除液ポンプ、並びに個別の給液管及び除液管を備えることもできる。
【0044】
何れの場合も、液体容器60は製氷位置において液体を貯蔵可能であって、上方が開口されている。よって、給除液管70(または給液管及び除液管)の先端領域を上方の開口部から液体容器60内に差し込むだけなので、液体容器60を回転移動させるときに、部材間の干渉を容易に防ぐことができる。ただし、図4から明らかなように、給除液管70の先端開口70Aは、液体容器60の底面から高さHの位置に配置されているので、給除液ポンプを除液側に駆動しても、底面から高さHまでの領域に液体が残留することになる。
仮に、給除液口を液体容器60の底部に設けた場合には、液体容器60内の全ての液体を排出することはできる。しかし、液体容器60を回転移動させるとき、他の部材との干渉が増え、給除液ホースの取り回しが複雑になるという問題が生じる。
【0045】
(制御部)
次に、図5を参照しながら、制御部90を含む本実施形態に係る製氷機2の制御構成の説明を行う。
制御部90は、ペルチェ素子30に供給する電力の方向及び大きさを制御することにより、一方の面が吸熱側となり、他方の面が放熱側となるように両面間での温度差を形成することができる。
制御部90は、移動機構80のモータの駆動制御により、液体容器60を回転させて、製氷位置及び待避位置の間を回転移動させることができる。
制御部90は、液体供給部72として機能する給除液ポンプを制御して、給液側に駆動させることにより、液体容器60に液体を供給することができる。同様に、制御部90は、液体除去部74として機能する給除液ポンプを制御して、除液側に駆動させることにより、液体容器60内の液体を貯蔵容器に戻すことができる。
【0046】
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫)
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係る製氷機2が庫内に配置された冷蔵庫100の説明を行う。図6では、気体の流れを点線の矢印で示し、冷媒の流れを一点鎖線の矢印で示す。
冷蔵庫100は、冷凍室102A及び冷蔵室102Bを備える。冷凍室102A及び冷蔵室102Bの背面側には、仕切板106で仕切られた入側流路104A,Bが設けられている。図6に示す例では、製氷機2が冷凍室102A内に配置された場合を示す。ただし、これに限られるものではなく、製氷機2が冷蔵室102B内に配置される場合もあり得る。
【0047】
冷凍室102A側の入側流路104Aには、蒸発器140が配置され、その上方にファン170が配置される。冷凍室102Aの背面側の外部の機械室には、蒸発器140と連通した圧縮器110が配置されている。圧縮器110で圧縮された冷媒(気体)が凝縮器120で液化され、毛細管内を通過中に減圧されて沸点が下がり、乾燥器130を経て蒸発器140に流入するそして、冷媒は蒸発器140で庫内の気体の熱を奪って気化し、気化した冷媒が圧縮器110で再び圧縮されるというサイクルを繰り返す。以上のように、圧縮器110、凝縮器120、乾燥器130及び蒸発器140が連通した冷蔵庫の冷却システム150が構築されている。
【0048】
圧縮器110及びファン170が駆動すると、気体が流動し、蒸発器140を通過した冷気が仕切板106に設けられた開口106Aから、製氷機2の冷却ダクト40の流入口40Aへ流入する。仕切板106には、開口106Aともに、蒸発器140を通過した冷気が直接、冷凍室102A内に流入させる吹出口も設けられている。
【0049】
冷却ダクト40に流入した冷気は、冷却フィン12の間を通過して製氷機2から流出する。製氷機2から流出した冷気は、冷凍室102A内を循環して、再び、入側流路104A内の蒸発器140の下側に戻る。このような気体に流れにより、製氷機2における製氷のための冷却とともに、冷凍室102A内に収納された食品等を冷却することができる。
【0050】
(冷却ダクト内における放熱板の配置の変形例)
図7は、冷却ダクト40内における放熱板10の配置の変形例を模式的に示す平面図である。気体の流れを点線の矢印で示す。次に、図7を参照しながら、冷却ダクト40内における放熱板10の配置の変形例の説明を行う。
上記の実施形態では、冷却ダクト40内に流入した冷気は、冷却フィン12の延伸方向と略直交する方向に流れるように流路42が設けられている。しかし、図7の(a)に示す例では、冷却フィン12の延伸方向に対して直角でない角度をなす方向に流れるようになっている。図7の(a)では、冷却ダクト40に流入した冷気が、鈍角の角度で流れ方向を変えて、冷却フィン12の間に流入するようになっている。つまり、冷却ダクト40内に流入した冷気が、冷却フィン12の一方の端部12Aの側方を冷却ダクト40の内壁44に沿って、冷却フィン12の延伸方向と交差する方向に流れながら、その一部が各々の冷却フィン12の間に流入していく。
【0051】
図7の(b)に示す例では、冷却ダクト40内に流入した冷気の流れ方向と、冷却フィン12の延伸方向とが、ほぼ平行になるように放熱板10が配置されている。この場合、各々の冷却フィン12へ流れる冷気の量が均等になるように、整流板48を配置することが好ましい。
【0052】
(制御処理)
図8Aは、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2で実施される給液工程を模式的に示す側面断面図であり、図8Bは、製氷工程を模式的に示す側面断面図であり、図8Cは、除液工程を模式的に示す側面断面図であり、図8Dは、待避工程を模式的に示す側面断面図であり、図8Eは、離氷工程を模式的に示す側面断面図である。図9は、図8A~8Eに示す製氷プロセスの制御処理の一例を示すフローチャートである。図9では、ペルチェ素子30を備える場合の制御処理を示す。次に、図8Aから8E及び図9を参照しながら、制御部90による制御処理の説明を行う。
【0053】
(製氷プロセス)
液体容器60が製氷位置にあり、液体容器60内に液体が貯蔵されていない初期状態から開始する場合を例にとって説明する。制御部90の制御により、液体供給部72が、液体容器60に液体を供給する給液工程と、給液工程の後、所定の時間、放熱板10により冷却された棒状部材24の先端部から所定の領域が液体容器60に収容された液体に浸かった状態を維持する製氷工程と、製氷工程の後、液体除去部74が、生成された氷の周囲の液体を除去する除液工程と、を行う製氷プロセスを複数回繰り返すところを、図8Aから図8Cに示す。
また、製氷プロセスを複数回繰り返した後、移動機構80が、棒状部材24の下側に液体容器60が存在しないように、冷却部50及び液体容器60を相対的に移動させる移動工程と、ヒータ(例えばペルチェ素子)30が金属板20を加熱して、棒状部材24の周囲に生成された氷を棒状部材から離脱させる離氷工程とを、図8D及び図8Eに示す。
【0054】
<給液工程(図8A参照)>、
液体供給部72が、製氷位置において上方が開口した液体容器60に液体を供給する。具体的には、制御部90の制御により、液体供給部72の給除液ポンプの駆動モータを給液方向に駆動させる(図9のステップS2参照)。これにより、給除液ポンプは、貯蔵容器内の液体を吸い上げ、給除液流路及び給除液管70を介して、液体容器60に液体を供給する。制御部90は、液面センサからの信号またはタイマの計時により、液体容器60内の液体の高さが所定の高さに達したと判別したとき、給除液ポンプの稼働を停止する。図9のステップS4,S6は、液面が製氷を行う液面高さHに達したとき、給除液ポンプの稼働を停止する制御処理を示す。給液工程により、金属板20の棒状部材24の先端部から所定の領域Lが液体容器60内の液体に浸かった状態となる。
【0055】
<製氷工程図8B参照)>
上記の給液工程の後、所定の時間、製氷温度にした金属板20の棒状部材24の先端部から所定の領域Lが液体容器60に収容された液体に浸かった状態にする製氷工程を行う。具体的には、冷蔵庫100の蒸発器140を通過した冷気により、放熱板10が冷却され、放熱板10による冷却で、金属板20の棒状部材24が氷点下の製氷温度になる。また、ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90の制御により、ペルチェ素子30の放熱板10と接する側が放熱側となり、金属板20と接する側が吸熱側となるように、ペルチェ素子30に電力を供給することにより、製氷温度の棒状部材24の更なる冷却を行う(図9のステップS8参照)。これにより、金属板20の棒状部材24の周囲に短時間に氷を生成することができる。
【0056】
そして、タイマによる計時により所定の時間Tが経過したと判別したとき、製氷工程を終了する。図8Bに示すように、金属板20の棒状部材24の先端部から所定の領域Lの周囲を覆うように氷Gを生成することができる。所定の時間Tは、ペルチェ素子30を備える場合と備えない場合に応じて、異なる値を設定できる。ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90は、ペルチェ素子30への電力供給を停止する(図9のステップS10,S12参照)。
【0057】
<除液工程(図8C参照)>
上記の製氷工程の後、制御部90の制御により、液体除去部74が液体容器60内に残留する液体を除去する。具体的には、制御部90の制御により、給除液ポンプを除液方向に駆動させる(図9のステップS14参照)。これにより、給除液ポンプは、給除液管70及び給除液流路を介して、液体容器60内の液体を吸い出して、貯蔵容器に戻す。このとき、貯蔵容器に戻る液体は、貯蔵容器の戻り経路入口に配置されたフィルタにより濾過された後、貯蔵容器に流入する。図9のステップS16,S18は、液面が除液完了時の液面高さLに達したとき、給除液ポンプの稼働を停止する制御処理を示す。
【0058】
上記のように、給除液管70の先端開口70Aは、液体容器60の底面から高さHの位置に配置されているので、少なくとも底面から高さHまでの領域に液体が残留する。しかし、棒状部材24の下端の位置よりも、給除液管70の下端の位置が十分に低いので、棒状部材24の回りに生成された氷の周囲の液体を除去することができる。これで、1回目の製氷プロセスが終了し、2回目の製氷プロセスの給液工程が開始される(図9のステップS20におけるNOの判断参照)。その場合、不純物の少ない新鮮な液体が、棒状部材24の回りに生成された氷の周囲に充填され、その表面に氷が生成される。よって、白濁の少ない透明度の高い氷を得ることができる。
【0059】
以上のように、制御部90により、液体供給部72が液体容器60に液体を供給する給液工程と、給液工程の後、所定の時間、放熱板10により冷却された棒状部材24の先端部から所定の領域が液体容器60に収容された液体に浸かった状態を維持する製氷工程と、製氷工程の後、液体除去部74が、生成された氷の周囲の液体を除去する除液工程と、を行う製氷プロセスを複数回(図9のフローチャートではN回)繰り返す。製氷プロセスを繰り返す回数によって、生成する氷の大きさを調整することができる。これにより、常に、新たに供給された不純物の少ない液体が凍結した透明な氷を短時間に生成することができる。
【0060】
<待避工程(図8D参照)>
上記の製氷プロセスを複数回行って、棒状部材24の回りに所定の大きさの氷が生成されると、製氷プロセスを終了して、待避工程に移る。
制御部90の制御により、移動機構80が、液体容器60を製氷位置から金属板20の棒状部材24の下側に液体容器60が存在しない待避位置まで回転移動させる。移動機構80の駆動モータを駆動させることにより、製氷位置から待避位置まで、液体容器60を70度から120度の範囲で回転させる(図9のステップS22参照)。このような移動回転角度により、後述する離氷工程で金属板20の棒状部材24から生成された氷Gを落下させても、液体容器60と干渉する虞がない。
【0061】
図8Dに示す場合には、ドレン手段64により、液体容器60内に残留した液体を排出することができる。排出した液体は、フィルタ等を透過させることにより、液体容器60内に供給する液体として再利用することができる。
【0062】
<離氷工程(図8E参照)>
待避工程の後、制御部90の制御により、金属板20の棒状部材24を離氷温度にして、棒状部材の周囲に生成された氷Gを棒状部材24から落下させる。落下した氷Gは、下方に配置された氷収納容器66に収納される。
金属板20の棒状部材24を離氷温度にするには、ペルチェ素子30を備える場合には、放熱板10の面と接する側が吸熱側となり、金属板20の面と接する側が発熱側となるように、ペルチェ素子30に通電することにより、金属板20の棒状部材24の温度を上げて、速やかに離氷温度にすることができる(図9のステップS24参照)。ペルチェ素子30以外のヒータを用いる場合には、ヒータに電力を供給することにより、金属板20の棒状部材24の温度を上げて、離氷温度にすることができる。図9のステップS26,S28は、生成された氷Gが全て棒状部材24から落下するのに十分な所定の時間経過後、ペルチェ素子30の通電を停止する制御処理を示す。
【0063】
以上のように、製氷プロセスを複数回繰り返した後、移動機構80が、棒状部材24の下側に液体容器60が存在しないように、冷却部50及び液体容器60を相対的に移動させる移動工程と、ヒータ(例えばペルチェ素子)が金属板20を加熱して、棒状部材24の周囲に生成された氷を棒状部材24から離脱させる離氷工程とを行う。よって、棒状部材24の下側に液体容器60が存在しない状態において、ヒータ(例えばペルチェ素子)30により速やかに棒状部材24の温度を上げて、離氷を実現できる。これにより、短い製氷サイクルを確実に実現できる。
【0064】
(試験結果)
実際に製氷機2を試作して、上記の製氷プロセスを行うことにより、図10の(a),(b)に示すような氷を生成することができた。1回の製氷工程で製氷する時間は約1分であり、複数回の製氷プロセスと、待避及び離氷工程とにより、全体として約35分の所要時間で、図10に示すような氷を生成することができた。
【0065】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
2 製氷機
10 放熱板
12 冷却フィン
12A 一方の端部
12B 他方の端部
14 ベース板
20 金属板
22 ベース部
24 棒状部材
30 ペルチェ素子
40 冷却ダクト
40A 流入口
42 流路
44 内壁
46 ピン
48 整流板
50 冷却部
60 液体容器
62 シャフト部
64 ドレン手段
66 氷収納容器
70 給除液管
70A 先端開口
72 液体供給部
74 液体除去部
80 移動機構
82 軸受部
84 フレーム部
90 制御部
100 冷蔵庫
102A 冷凍室
102B 冷蔵室
104A,B 入側流路
106 仕切板
106A 開口
110 圧縮器
120 凝縮器
130 乾燥器
140 蒸発器
150 冷却システム
170 ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10