(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】脱毛ワックス
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20250110BHJP
A61Q 9/04 20060101ALI20250110BHJP
A45D 26/00 20060101ALI20250110BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20250110BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20250110BHJP
C08L 23/08 20250101ALI20250110BHJP
【FI】
A61K8/31
A61Q9/04
A45D26/00 H
C08L57/02
C08L91/06
C08L23/08
(21)【出願番号】P 2020173243
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391028591
【氏名又は名称】日進医療器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】守山 ▲隆▼雅
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠悟
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0038399(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0142728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
A45D 8/00- 8/40
A45D 24/00- 31/00
A45D 42/00- 97/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油樹脂と、石油系天然ワックスとを含む脱毛ワックス組成物であって、前記組成物をいったん70℃以上で融解後に60℃に降温させてから30分後に0.65sec
-1のせん断速度で測定した溶融粘度(η(0.65))と65sec
-1のせん断速度で測定した溶融粘度(η(65))の比(η(0.65)/η(65))
が3.5以下であることを特徴と
し、
前記石油樹脂がC5系石油樹脂、C5系/C9系共重合樹脂、またはC5系/C9系ブレンド樹脂であり、前記脱毛ワックス組成物は前記石油樹脂を50重量%~85重量%含み、
前記石油系天然ワックスがマイクロクリスタリンワックスであり、前記マイクロクリスタリンワックスを3重量~15重量%含む、脱毛ワックス組成物。
【請求項2】
1重量%
~10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂をさらに含む、請求項
1に記載の脱毛ワックス組成物。
【請求項3】
脱毛ワックス組成物の製造方法であって、
石油樹脂と、石油系天然ワックスとを溶融混合し、その後冷却して固化する工程と、
いったん70℃以上で融解後に60℃に降温させてから30分後に0.65sec
-1
のせん断速度で測定した溶融粘度(η(0.65))と65sec
-1
のせん断速度で溶融粘度を測定する工程と、
前記溶融粘度(η(65))の比(η(0.65)/η(65))が3.5以下である場合に、前記脱毛ワックス組成物とする工程と
を包含し、
前記石油樹脂がC5系石油樹脂、C5系/C9系共重合樹脂、またはC5系/C9系ブレンド樹脂であり、前記脱毛ワックス組成物は前記石油樹脂を50重量%~85重量%含み、
前記石油系天然ワックスがマイクロクリスタリンワックスであり、前記マイクロクリスタリンワックスを3重量~15重量%含む、製造方法。
【請求項4】
前記脱毛ワックス組成物が、1重量%~10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂をさらに含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
以下の工程を包含する脱毛方法:
a.請求項1
または2のいずれか一項に記載の脱毛ワックス組成物を一
旦70℃以上に加熱し、溶融する工程、
b.a工程において溶融した前記脱毛ワックス組成物
を55~60℃の温度に降温する工程、
c.降温した前記脱毛ワックス組成物を脱毛箇所に塗布して毛に絡ませる工程、
d.塗布した前記脱毛ワックス組成物を固化させてから引き剥がし、脱毛する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規脱毛ワックス、その製造方法、および新規脱毛用ワックスを用いた脱毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ブラジリアンワックスと云われる脱毛ワックスは、接着性を付与するためにロジン(松脂のアビエチン酸誘導体)を主成分とし、これに被膜強度や被膜の柔軟性を付与するためにミネラルオイル、パラフィンワックス、ラノリンなどの油脂成分を配合し、更に酸化チタンなどの顔料や香料などを配合したものである。溶融させた脱毛ワックスをスパチュラなどで脱毛箇所に塗り、ワックスを毛に絡めてから固化させ、一気にワックスを引き剥がすことによって脱毛される。
【0003】
しかしながら、ロジンは皮膚感作性を有し、主成分として使用するとアレルギーを引き起こすことがあることが知られている。そこで、極力ロジンの配合を少なくしたワックスが望まれていたが、ロジンの配合量を減らすと毛髪への密着性が低下し脱毛性能が悪くなるという問題があった。
【0004】
そこで過去には特許文献1のように石油ナフサを熱分解して得られたC5系石油樹脂を用いたワックスを使用し、併せて被膜性や剥離性を向上させるために固形油分などを適量配合することが提案されていたが、毛髪への接着力とワックスの被膜強度との性能バランスがとれず脱毛性能に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた脱毛性能を有する新規脱毛ワックスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、石油樹脂と石油系天然ワックスとを適量溶融混合した後に冷却して得られた固形状ワックスが、一旦加温装置で70℃程度に温度を上げて溶融させてから55~60℃の施術温度に近い温度にまで下げた場合に溶融粘度のせん断速度依存性が小さくなることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下の項目を提供する。
【0009】
(項目1)
石油樹脂と、石油系天然ワックスとを含む脱毛ワックス組成物であって、前記組成物をいったん70℃以上で融解後に60℃に降温させてから30分後に0.65sec-1のせん断速度で測定した溶融粘度(η(0.65))と65sec-1のせん断速度で測定した溶融粘度(η(65))の比(η(0.65)/η(65))が約3.5以下であることを特徴とする、脱毛ワックス組成物。
【0010】
(項目2)
前記石油樹脂がC5系石油樹脂、C5系/C9系共重合樹脂、またはC5系/C9系ブレンド樹脂であり、前記脱毛ワックス組成物は前記石油樹脂を約50重量%~約85重量%含む、項目1に記載の脱毛ワックス組成物。
【0011】
(項目3)
前記石油系天然ワックスがマイクロクリスタリンワックスであり、前記マイクロクリスタリンワックスを約3重量~約15重量%含む、項目1または2に記載の脱毛ワックス組成物。
【0012】
(項目4)
約1重量%~約10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂をさらに含む、項目1~3のいずれか一項に記載の脱毛ワックス組成物。
【0013】
(項目5)
以下の工程を包含する脱毛方法:
a.項目1~4のいずれか一項に記載の脱毛ワックス組成物を一旦約70℃以上に加熱し、溶融する工程、
b.a工程において溶融した前記脱毛ワックス組成物を約55~60℃の温度に降温する工程、
c.降温した前記脱毛ワックス組成物を脱毛箇所に塗布して毛に絡ませる工程、
d.塗布した前記脱毛ワックス組成物を固化させてから引き剥がし、脱毛する工程。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
(定義)
以下、本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0016】
本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「からなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0017】
本明細書において、「約」は後に続く数値の±10%を意味する。
【0018】
(ワックス組成物)
本発明の脱毛ワックスの主成分は石油樹脂である。本発明の脱毛ワックスにおいて用いられる石油樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族(C5系/C9系)共重合系石油樹脂、脂肪族系(C5系)と芳香族系(C9系)とのブレンド樹脂、これらの水素添加物が使用され得る。好ましい実施形態において、本発明において用いられる石油樹脂は、C5(炭素数5)系石油炭化水素を重合して得られるC5系石油樹脂を含む樹脂であり、これは、C5系石油炭化水素に基づく構成単位を有する。C5系石油炭化水素とは、ナフサの熱分解により得られるC5留分(炭素数5の留分)のことをいい、具体的には、イソプレン、1,3-ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレンなどのジオレフィン類や2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテンなどのモノオレフィン類が挙げられる。C9系石油樹脂の主成分は、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンの共重合体などであり得る。他の好ましい実施形態において、本発明において用いられる石油樹脂は、C5系樹脂、C5系/C9系共重合樹脂、またはC5系/C9系ブレンド樹脂であり得る。本発明で用いられる石油樹脂は、市販品には、例えばクイントン(日本ゼオン)、アイマーブ(出光興産)、アルコン(荒川化学)などがあるが、これらに限定されない。本発明の脱毛ワックスは、石油樹脂(好ましくはC5系またはC5/C9系石油樹脂)を約50重量%以上、約60重量%以上、より好ましくは約65重量%以上含む。本発明の脱毛ワックスは、石油樹脂(好ましくはC5系またはC5/C9系石油樹脂)を、約50重量%~約95重量%、約50重量%~約90重量%、約50重量%~約85重量%、約60重量%~約95重量%、約60重量%~約90重量%、約60重量%~約85重量%、約65重量%~約95重量%、約65重量%~約90重量%、約65重量%~約85重量%含み得る。好ましくは、本発明の脱毛ワックスは、石油樹脂(好ましくはC5系またはC5/C9系石油樹脂)を約50重量%~約85重量%含み得る。
【0019】
本発明の脱毛ワックスは、石油系天然ワックスを含む。石油系天然ワックスとしては、ワセリン、パラフィンワックス、およびマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1つまたは複数が用いられる。これらには、分子構造に基づく特性の差異があることが知られている。ワセリンは、融点の幅が約36~60℃と広く、パラフィンワックスは、約40~70℃の融点を示すものがほとんどである。マイクロクリスタリンワックスは、イソパラフィンやシクロパラフィンが主体の炭素数31~70の石油系ワックスであり、融点が約60℃~90℃の範囲にある。マイクロクリスタリンワックスの市販品にはHi-Mic(日本精鑞)シリーズなどがある。毛への粘着性の観点から、好ましくは、本発明の脱毛ワックスはマイクロクリスタリンワックスを含む。本発明の脱毛ワックスは、石油系ワックス(好ましくはマイクロクリスタリンワックス)を約1重量%以上、より好ましくは約3重量%以上含む。本発明の脱毛ワックスは、石油系ワックス(好ましくはマイクロクリスタリンワックス)を、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約18重量%、約1重量%~約15重量%、約3重量%~約20重量%、約3重量%~約18重量%、約3重量%~約15重量%含み得る。好ましくは、本発明の脱毛ワックスは、石油系ワックス(好ましくはマイクロクリスタリンワックス)を約3重量%~約15重量%含み得る。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明の脱毛ワックスは、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を含んでもよい。エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、毛髪への接着に寄与し得る。エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は酢酸ビニル含有量が約15~約35重量%の範囲にあるものが好適に用いられ、市販品にはエバフレックス(三井デュポンポリケミカル)、スミテート(住友化学)などがある。本発明の脱毛ワックスは、エチレン酢酸ビニル重合体を約1重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約10重量%含み得る。
【0021】
また、本発明の脱毛ワックスには、皮膜特性や皮膚刺激性を改善するために他の油脂成分を配合してもよく、この油脂成分としては、ミネラルオイル、蜜蝋、ラノリン、コメヌカ油などが挙げられるが、これらに限定されない。また本発明の脱毛ワックスには、毛髪への接着力を上げるために安全性に支障のない範囲で少量のロジンを配合しても良い。
【0022】
本発明の脱毛ワックスはさらに、皮膜特性や皮膚からの剥離性の改善のために、酸化チタン、タルク、カオリンやマイカなどの無機粉末を添加しても良く、さらに香料や着色料、薬剤などの成分を添加しても良い。
【0023】
本発明の脱毛ワックスは、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、石油系ワックス(マイクロクリスタリンワックス)などの各成分を100℃以上に加熱して溶融混合し、冷却することによって製造され得る。
【0024】
本発明者らは、本発明の脱毛ワックスが、一旦加温装置で約70℃以上、典型的には約70℃~85℃に温度を上げて溶融させてから約55~約60℃の使用温度に近い温度にまで下げた場合に、溶融粘度のせん断速度依存性が小さいことを見出した。脱毛ワックスの加温溶融は任意の公知の機器等を使用して行うことができ、約55~約60℃までの冷却は代表的には空気中への放熱によるが、冷気を当てることによって温度を下げてもよい。
【0025】
本発明の脱毛ワックスは、約70℃以上にいったん加温することなく単に約55~約60℃に加温しただけでは、溶融粘度のせん断速度依存性が小さくなるという効果は必ずしも得られない。また、本発明の脱毛ワックスは、約70℃以上にいったん加温し、それが冷却されて固化した後は、使用前に再度約70℃以上に加温してから約55~約60℃に下げないと、同様に溶融粘度のせん断速度依存性が小さくなるという効果は得られない。
【0026】
本発明の脱毛ワックスは、固体状態のワックスを一旦70℃に上げて溶融してから、60℃に下げて30分後に、せん断速度0.65sec-1で測定した溶融粘度η(0.65)と65sec-1で測定した溶融粘度η(65)との間に差異が小さいことを特徴とする。ワックスの粘度のせん断速度の依存性が大きいと、速くかき混ぜるときには粘度が小さく、ゆっくりかき混ぜるときや塗るときには粘度が高くなる。例えば、溶融後ワックスをかき混ぜて放置したとき、粘度のせん断速度の依存性が大きいとワックスの液面が波打つように盛り上がったりして塊状になるが、粘度のせん断速度の依存性が小さいと直ぐに平坦で均質な状態になる。また、ワックスの粘度のせん断速度依存性が大きい場合には、脱毛箇所に塗るときのスパチュラの速度によってワックスの粘度が変わり、それによって塗布するワックス量が大きく変わってしまうが、ワックスの粘度のせん断速度依存性が小さいとスパチュラの速度によって粘度があまり変わらないので、脱毛箇所に均一に塗布することができ、毛への絡み具合も均一になる。具体的には、η(0.65)/η(65)が約3.5以下、約3.0以下、または約2.5以下であり、好ましくは約2.0以下である。
【0027】
本発明の脱毛ワックスがこのような挙動を示す原因は定かではなく、理論に拘束されることを意図しないが、組成物中の各成分の融点と溶融状態での成分同士の相溶性や冷却過程での結晶の析出スピードや結晶サイズなどが総合的に影響していると考えられる。本発明の脱毛ワックスは、加温装置中の溶融ワックスをスパチュラなどで撹拌してすくい上げるときの速度による溶融粘度の変化が小さいので、常に一定量をすくい上げることが出来、また脱毛箇所にワックスを塗り広げる速度に関わらずほぼ一定の粘度で均一に塗ることが出来る。これによって、使用時にはワックスが、毛の根元までしっかりと絡まり、その結果、固化後に毛髪への高い接着力を示し、優れた脱毛性能を示すという優れた効果を奏する。
【0028】
(使用方法)
本発明の脱毛ワックスは、人体の任意の箇所の脱毛に使用することができる。本発明の脱毛ワックスの使用対象は、顔、胸、腕、脚、鼻、脇、デリケートゾーンなど任意の箇所であり得る。
【0029】
本発明の脱毛ワックスは、使用前にまず一度約70℃以上(一般的には、約70℃~約85℃)に加温溶融する。脱毛ワックスの加温溶融は任意の公知の機器等を使用して行うことができる。その後、温度を55~60℃まで下げて、スパチュラなどの器具ですくって脱毛箇所に塗布する。こうすると溶融した脱毛ワックスが均一に毛に絡み、その後温度が下がることによってワックスが固化した後に一気に引き剥がすことによって、効率よく脱毛を行うことができる。
【0030】
本発明はまた、脱毛方法において、脱毛に適した脱毛ワックス組成物を提供する方法も提供し、この方法は、本発明の脱毛ワックスを一旦約70℃以上(一般的には、約70℃~約85℃)に加熱し、溶融する工程と、融解した脱毛ワックスを約55~60℃の温度に降温する工程を包含し得る。このようにして提供された脱毛ワックスを、スパチュラなどで脱毛箇所に塗布して毛に絡ませ、そして塗布した前記脱毛ワックス組成物を固化させてから引き剥がすことによって脱毛することができる。
【0031】
上記記載の様々な実施形態が組み合わされて、さらなる実施形態を提供することができる。当業者は、上記の詳細な記載に照らし合わせて実施形態に任意の改変を適切に加えることができる。一般的に、添付の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を明細書に開示される特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、すべての可能な実施形態およびそのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【実施例】
【0032】
以下の表1に記載の成分を100~120℃まで加熱して撹拌しながら溶融混合し、その後室温まで冷却して固化させることによって、実施例1~6および比較例1~4の脱毛ワックスを得た。
【0033】
【0034】
表1において、石油樹脂AおよびBにはそれぞれ、クイントンB170およびクイントンN180(いずれも日本ゼオン)を使用した。クイントンB170もクイントンN180もいずれもC5留分から抽出された高純度の1,3-ペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂であり、クイントンB170は脂肪族系石油樹脂であり、クイントンN180は更にC9系芳香族を共重合した脂肪族系/芳香族系樹脂である。石油樹脂Cはジシクロペンタジエン/芳香族共重合系水添タイプのアイマーブS-100(出光興産)である。
【0035】
マイクロクリスタリンワックスA~Dはそれぞれ、日本精鑞のHi-Micシリーズであり、マイクロクリスタリンワックスAはHi-Mic2045(100℃における粘度8.2mm2/s)、マイクロクリスタリンワックスBはHi-Mic2065(100℃における粘度8.2mm2/s)、マイクロクリスタリンワックスCはHi-Mic1045(100℃における粘度15.8mm2/s)、マイクロクリスタリンワックスAはHi-Mic1090(100℃における粘度14.3mm2/s)である。
【0036】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)A~Dはそれぞれ三井デュポンケミカルのエバフレックスシリーズであり、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂AはエバフレックスEV205WR(酢酸ビニル28重量%、メルトフローレート(MFR)800g/10min)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂BはエバフレックスEV220(酢酸ビニル28重量%、MFR150g/10min)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂CはエバフレックスV5774ETWR(酢酸ビニル33重量%、MFR700g/10min)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂DはエバフレックスEV210(酢酸ビニル28重量%、MFR400g/10min)である。
【0037】
パラフィンワックスAおよびBとしては、それぞれ日本精蝋のParaffin Wax155およびParaffin Wax 120を、ラノリンとしては日興製薬の精製ラノリンを、コメヌカ油としてはオリザ油化製を使用した。
【0038】
酸化チタンとしては堺化学のTITONE R-24Sを使用した。
【0039】
溶融粘度は、固体状態の実施例1~6および比較例1~4の脱毛ワックスをそれぞれ一旦70℃に上げて溶かしてから60℃に下げて30分後にせん断速度0.65sec-1と65sec-1で測定し、得られた溶融粘度η(0.65)とη(65)との比(η(0.65)/η(65))を算出した(測定装置:UBM社Rheosol-G1000、直径25mmパラレルプレート)。
【0040】
さらに、実施例1~6および比較例1~4の脱毛ワックスの脱毛性能を、10人の成人男性パネルで評価した。ワックスを一旦70℃以上で溶融させた後、55~60℃に下げてから脛毛の流れ方向にスパチュラで塗り、塗膜の均一性と毛への絡まり具合を評価し、次に固まったところで毛の流れとは反対方向に一気に引き剥がして脱毛状態を評価した。結果を以下の表に示した。なお、パネルテストの評価点は10人のパネリストに5段階評価してもらい、その平均値である。
【0041】
【0042】
さらに、固体状態の実施例1~6および比較例1~4の脱毛ワックスをそれぞれ一旦70℃に上げることなく、室温から直接60℃に加温して30分後にせん断速度0.65sec-1と65sec-1で測定し、得られた溶融粘度η(0.65)とη(65)との比(η(0.65)/η(65))を算出した(測定装置:UBM社Rheosol-G1000、直径25mmパラレルプレート)。表3にその結果をまとめる。
【0043】
【0044】
脱毛ワックスは、温度を上げてから降温して使用するのが一般的であるため、一度70℃まで昇温した後に降温した場合の溶融粘度比が重要である。例えば、比較例3のワックスは、室温より昇温後の溶融粘度比η(0.65)/η(65)は3.0であるが、70℃より降温後のη(0.65)/η(65)は7.3であり、このようなワックスは実際には使用しにくい。なお、各ワックスの溶融粘度比η(0.65)/η(65)の挙動は、一度融解したのちに冷却されて固化し、そして再度融解した場合にも再現性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、加熱溶融時の粘度安定性に優れ、脱毛箇所に塗り広げるときに毛に絡まり易く、塗った状態で固化させたあと引き剥がすときに優れた脱毛力を発揮する新規脱毛ワックス組成物と、その組成物を用いた脱毛方法が提供される。