(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】浸潤性乳癌のリスクを有する対象の治療の選択方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20250110BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20250110BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250110BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250110BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250110BHJP
【FI】
A61K45/00
G01N33/574 A
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 111
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2021539476
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019051128
(87)【国際公開番号】W WO2020056338
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521105695
【氏名又は名称】プレリュード コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PRELUDE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレーメル、トロイ、エム.
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/090323(WO,A1)
【文献】特表2008-546387(JP,A)
【文献】国際公開第2011/139721(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/113747(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
G01N 33/574
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(eamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積極的な乳癌療法を受けるDCISの対象を特定する方法であって、
対象のk-ras経路における活性レベルを分析する工程を含み、ここで前記対象が、その後の同側乳房事象のリスクが上昇している者であり;
前記対象がHER2陽性かどうか分析する工程を含み;かつ
前記対象
がHER2陽性であり、かつ前記対象の前記k-ras経路の活性レベルが高値であるという分析に基づいて、積極的な乳癌療法が、前記対象にとってその後の同側乳房事象のリスクを低減するために適切であると決定する工程を含み、
SIAH2
のレベルが高値である場合に、前記k-ras経路の活性レベルが高値であることを示
し、
積極的な乳癌療法が、(a)標準放射線療法より積極的な放射線療法、(b)化学療法、または(c)HER2抗体療法、である、
方法。
【請求項2】
前
記HER2抗体療
法はトラスツズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浸潤性乳癌を発症するリスクが上昇していない対象におけるレベルと比較して
、SIAH2のタンパク質レベルまたはRNAレベルが少なくとも10%増加している
場合に、前記k-ras経路における活性レベルが高値であるとみなす、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
さらに前記サンプルをKi67の発現について分析することを含み、
Ki67の発現レベルが高いほど癌のリスクが高いことを示す、請求項
1~3
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記その後の同側乳房事象が、その後の同側浸潤性乳癌を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記その後の同側乳房事象が、同側DCIS再発を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象が療法による利益を受ける可能性を評価することを補助するための方法であって、
その後の同側乳房事象のリスクが上昇していてDCISを有する対象を特定する工程、及び
前記対象からのDCISサンプルがHER2陽性及びSIAH2陽性であるか否かを決定する工程、及び、
前記DCISサンプルがHER2陽性及びSIAH2陽性である場合、前記対象が標準放射線療法で十分に処置されないと決定する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記DCISサンプルがHER2陽性かつSIAH2陽性である場合、前記対象が、
a)放射線療法ではない療法
b)
標準放射線療法より積極的な放射線療法
c)化学療法
d)抗HER2抗体を含む療法、又は
e)
トラスツズマ
ブ
から利益を受けると決定することをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記その後の同側乳房事象が、その後の同側DCIS又は同側浸潤性乳癌のいずれかを含む、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象がPR陽性でありかつFOXA1の発現レベルが実質的に上昇している場合に、前記対象が前記浸潤性乳癌の高いリスクを有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記DCISサンプルについて、Ki67発現の上昇、サイズ、及び/又は、Ki67の発現の上昇とサイズの両方を分析する工程をさらに含み、前記DCISサンプルがPR陽性である、請求項
9又は
10に記載の方法。
【請求項12】
前記DCISサンプルがKi67発現レベルの上昇を示すこと、最小サイズより大きいこと、及び/又は、Ki67の発現レベルの上昇と最小サイズより大きいことの両方を示すことにより、前記対象が浸潤性乳癌の高いリスクを有すると決定する工程をさらに含み、
前記対象が、Ki67陽性、PR陽性、及びFOXA1陰性であり、
前記DCISサンプルの前記最小サイズが、5mmより大きいことであり、並びに/又は、
前記DCISサンプルが、さらに、p16、COX2及びKi67がいずれも発現レベルの高値を示す、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記その後の同側乳房事象が、同側DCIS再発を含む、請求項
7~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
K-ras、RAF、MAPK、MEK
又はET
Sのうちの少なくとも2つのレベルが高値であることをさらに含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項15】
Ki67の発現について前記サンプルを分析することをさらに含み、Ki67の発現レベルが高いほど、癌のリスクが高いことを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
HER2陽性が3+スコアである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月14日に出願された米国仮出願第62/731316号の優先権を主張する。
[技術分野]
本技術は一般的に、浸潤性乳癌(invasive breast cancer)のリスクを有する対象が、様々な形態の癌治療に応答するか否かに関係する。
【背景技術】
【0002】
対象の腫瘍の特定には様々なマーカーがある。さらに、腫瘍進行の予測に使用され得る種々のマーカーが存在する。例えば、米国特許公開番号2010/0003189、2012/0003639、2012/0003639、及び20170350895は種々の組み合わせで試験した場合に、対象がDCIS及び/又は浸潤性乳癌を有する可能性を予測することができる、種々のマーカーを開示する。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、対象を処置する方法が提供され、この方法はk-ras経路において高い活性レベルを有するDCISを有する対象を特定すること;及び、前記対象に積極的な乳癌療法を施すことを含み、前記積極的な乳癌療法は放射線ではない。いくつかの実施形態において、K-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS又はSIAHのうちの少なくとも1つのレベルが高い場合に、前記k-ras経路が高い。
【0004】
いくつかの実施形態では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、HER2陽性及びSIAH2陽性であるDCISを有する対象を特定すること;及び前記対象に積極的な乳癌治療を施すことを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、放射線療法に応答しない対象を特定する方法が提供される。この方法は、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;及び前記対象がHER2(又はEGFR)及びSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;を含み、ここで前記対象がHER2かつSIAH2陽性である場合、前記対象に積極的な療法を施し、前記積極的な療法が放射線療法ではなく、前記積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群より選択される。
【0006】
いくつかの実施形態では、積極的な癌治療を行う対象を特定する方法が提供される。この方法は、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;及び前記対象がHER2及びSIAH2陽性であるかどうかを決定すること、ここで前記対象がHER2及びSIAH2陽性である場合、前記対象に積極的な療法を施すことを含み、前記積極的な療法が放射線療法ではなく、前記積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、対象に推奨する治療方法を決定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;及び前記対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;を含み、ここで前記対象がHER2及びSIAH2陽性である場合、前記対象に積極的な療法を推奨し、前記積極的な療法が放射線療法ではなく、前記積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群より選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、対象を治療するための方法が提供される。
この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;少なくともPRのレベル、及び、a)少なくともHER2及びSIAH2又はb)少なくともFOXA1の少なくともいずれかについて、前記DCISサンプルを分析すること;少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて、予後を提供すること(ここでサンプルがPR陽性である場合、COX2のレベルについてサンプルをさらに分析することをさらに含み、少なくともFOXA1陽性を伴うCOX2陽性が、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す);前記対象がHER2陽性であるかどうかを決定すること;並びに、対象がHER2陽性である場合に積極的な療法を対象に施すこと;を含み、積極的な療法は放射線療法ではなく、積極的な療法はHER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを減少させるための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;少なくともPRのレベルについてDCISサンプルを分析すること、及び、少なくともHER2及びSIAH2についてサンプルを分析すること又は少なくともFOXA1についてサンプルを分析することの少なくともいずれか;少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて予後を提供すること;サンプルがPR陽性かつFOXA1陰性である場合、Ki67、サイズ、又はKi67及びサイズのレベルについてサンプルをさらに分析すること(ここで、サンプルがKi67陽性である場合、DCISのサイズが5mmを超える場合、又はそれらの両方の場合は、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す);並びに、前記対象がHER2陽性、及び、Ki67陽性、DCISが5mmより大きい又はそれらの組み合わせの場合であってFOXA1陰性、の両方である場合は、前記対象に積極的な療法を施すことを含み、ここで、前記積極的な療法が放射線療法ではなく、前記積極的な療法は、HER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群より選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、放射線療法の利益を提供する方法が提供される。この方法は、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;及び、前記対象がHER2陰性である場合は放射線療法を施し、前記対象がHER2陽性である場合は前記対象に放射線療法を施さないこと;を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象におけるステージ1A浸潤性乳癌事象のリスクを低減するための方法が提供される。本方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;DCISサンプルを少なくともPRのレベル、及び、a)少なくともHER2及びSIAH2又はb)少なくともFOXA1の少なくともいずれかについて前記DCISサンプルを分析すること;少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は、少なくともPR及びFOXA1に基づいて、予後を提供すること、サンプルがPR陽性である場合、COX2のレベルについて前記サンプルをさらに分析すること;を含み、FOXA1が少なくとも陽性でCOX2陽性の場合は浸潤性乳癌のリスクが高いことを示し、浸潤性乳癌のリスクが高い場合、標準療法よりも積極的な療法を前記対象に提供すること、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、保険が放射線療法の費用をカバーするかどうかを決定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高くDCISを有する対象を特定すること;前記対象がHER2陽性であるかどうかを決定すること;前記対象がHER2陽性である場合には前記対象に対する放射線療法の費用を負担せず、前記対象がHER2陰性である場合には前記対象に対する放射線療法の費用を負担することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、放射線療法に対する償還を提供する方法が提供される。この方法はDCISを有し、さらに浸潤性乳癌のリスクが高い対象を特定すること;前記対象がHER2陽性及びSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;及び対象がHER2陰性又はSIAH2陰性である場合、前記対象に放射線療法の費用の償還を提供すること;を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、現在の標準療法においては治療されない対象に治療を提供する方法が提供される。この方法は、DCISを有する対象を特定すること、ここで、対象は浸潤性乳癌を発症するリスクが高い;及び、前記対象がHER2+かつSIAH+である場合、前記対象に化学療法、HER2に対する抗体、及び/又はトラスツズマブを投与することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象の療法を選択する方法が提供される。この方法は、浸潤性乳癌のリスクが高く、DCISを有する対象を特定すること;
【0016】
前記対象がHER2陽性又はHER2陰性であるかどうかを特定することここで、前記対象がHER2陽性である場合は前記対象に積極的な療法を施すこと;を含み、前記積極的な療法が放射線療法ではなく、前記積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる群より選ばれ;前記対象がHER2陰性である場合、前記対象に積極的な療法を施さず、それにより前記対象の心血管事象のリスクを低下させることを含む、方法である。
【0017】
いくつかの実施形態では、放射線療法に不応性である対象を治療する方法が提供される。この方法は、HER2陽性かつSIAH2陽性のDCISを有する対象を特定すること;及び、前記対象に放射線療法以外の療法を対象に施すこと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、ほとんど全ての高リスク患者が放射線療法から有意な利益を受けることを示すグラフのセットである。
【0019】
【
図2】
図2は、放射線療法に応答しないHER2+及びSIAH2+の人々のサブセットが存在することを示すグラフのセットである。
【0020】
【
図3】
図3は、SIAH2 IHCアッセイ(上部、陰性、UUH TMA上;下部、陽性、Biomax BR8011 TMA)を示す。
図3は、SIAH2についてのネガティブ(上)及びポジティブ(下)染色結果のいくつかの実施形態を示すIHCアッセイ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
対象が非浸潤性乳管癌(DCIS)及び/又は浸潤性乳癌を発症するリスクを決定する上で多くの進歩があったが、分析は特定の対象をどのようにして特定の治療に受容するかではなく、リスクのみに従って様々な対象を層別化することに焦点を当てることが多い。本開示はさらに最新技術をとりいれた方法を提供し、特定の対象を特定の治療に適切に適合させることを可能にする。いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を提供することによって、次いで、本明細書中に提供される1つ以上のマーカーを介して、対象の放射線療法に対する受容性について対象を試験することができる。したがって、浸潤性乳癌のリスクが高い対象を、対象に対して作用であろう治療と適切に対応させることができる。このことは、浸潤性乳癌のリスクが高いカテゴリーには不応性対象が相当数いるため、どの対象に放射線療法を実施すべきかを決定するのに特に有効でありうる。理想的には、このような対象が放射線療法を受けるべきではなく、代わりに、抗HER2抗体療法、ERBB療法、及び例えばERBB1234のような、浸潤性乳癌事象のリスクを予防及び/又は減少させるための代替の形態の療法を受けるべきである。本開示は定義及び実施形態の簡潔なセットを提供し、その後、プロセスの詳細な説明及びプロセスの周りの様々な実施形態が続き、次いで、いくつかの例で終わる。
【0022】
[定義及び任意の実施形態]
用語「及び/又は」は、両方の意味又はいずれかの意味に対する明示的な裏付けを提供するものとみなされる。
【0023】
本明細書全体を通して、単語「有する(comprise)」、又は「有する(comprises)」若しくは「有する(comprising)」のような変形は記載された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップのグループの包含を意味するが、他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップのグループの排除を意味しないことが理解されるのであろう。
【0024】
用語及び方法の以下の説明は本開示をより良く説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。単数形「A」、「an」及び「The」は文脈が明確に指示しない限り、1つ以上を指す。例えば、「核酸分子を含む」という用語は単一又は複数の核酸分子を含み、「少なくとも1つの核酸分子を含む」という語句と等価であると考えられる。用語「又は」は文脈が明確に指示しない限り、記載された代替要素の単一要素又は2つ以上の要素の組合せを指す。本明細書で使用される「手段」は「手段」を含む。したがって、「A又はBを含む」、手段「A、B、又はA及びBを含む」であり、追加の要素を除外するものではない。特に明記しない限り、本明細書で提供される定義は、本定義が他の可能な定義と異なる場合がある場合を制御する。
【0025】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべてのHUGO遺伝子命名委員会(HGNC)識別子(ID)は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0026】
「抗体」は抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する、少なくとも軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態において、抗体は重鎖及び軽鎖から構成され、その各々は可変重鎖(V
H)領域及び可変軽鎖(V
L)領域と呼ばれる可変領域を有する。V
H領域とV
L領域は合わせて、抗体によって認識される抗原と結合する役割を担っている。抗体には、インタクトな免疫グロブリンのほか、Fab′フラグメント、F(ab)′
2フラグメント、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)などのその変異体及びその部分が含まれる。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合される融合タンパク質であり、一方、dsFvでは、鎖の会合を安定化するために鎖にジスルフィド結合を導入するように変異されている。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)のような遺伝子操作された形態を含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.); Kuby, J., Immunology, 3.sup.rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997.も参照のこと。マーカーを検出するために、例えば、以下の表、表0.1のものを含む種々の抗体を使用することができる。
【表1-0.1】
【0027】
いくつかの実施形態において、表0.1に列挙される標的タンパク質のいずれかの存在又は非存在について試験する、本明細書中に提供される方法、キットなどのいずれかは、その標的タンパク質に対する対応する抗体のいずれか1つ以上を使用し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では各重鎖及び軽鎖が定常領域及び可変領域(領域は「ドメイン」としても知られる)を含む。重鎖及び軽鎖可変領域が組み合わせて、抗原に特異的に結合する。軽鎖及び重鎖可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含む
【0029】
「VH」又は「VH」という表現は、免疫グロブリン重鎖の可変領域(Fv、scFv、dsFv又はFabの可変領域を含む)を指す。「VL」又は「VL」という表現は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域(Fv、scFv、dsFv又はFabの可変領域を含む)を指す。
【0030】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンによって、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は当業者に公知の方法によって、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合物からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって産生される。モノクローナル抗体には、ヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
【0031】
「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞株に由来する抗体である。ポリクローナル抗体は、それぞれが異なるエピトープを認識する、特定の抗原に対して分泌される免疫グロブリン分子の混合物である。これらの抗体は当業者に公知の方法によって、例えば、適切な哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ又はヤギ)への抗原の注射によってBリンパ球を誘導することによって、抗原に特異的なIgG免疫グロブリンを産生させ、次いで、哺乳動物の血清から精製することによって製造される。
【0032】
「キメラ抗体」は1つの種(例えば、ヒト)由来のフレームワーク残基、及び別の種(例えば、マウス抗体)由来のCDR(一般に、抗原結合を付与する)を有する。
【0033】
「ヒト化」免疫グロブリンはヒトのフレームワーク領域と、非ヒト(例えば、マウス、ラット、又は合成)免疫グロブリン由来の1つ以上のCDRとを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。一例として、ヒト化免疫グロブリン中では、すべてのCDRはドナー免疫グロブリン由来である。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合、それらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一であり、例えば、少なくとも約85~90%、例えば、約95%以上同一である。従って、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分(おそらくCDRを除く)は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化免疫グロブリンは遺伝子工学の手段によって構築され得る(例えば、米国特許第5,585,089号を参照のこと)。
【0034】
「アレイ」という用語は生体高分子(ペプチド又は核酸分子など)又は生体サンプル(組織切片など)などの分子が基板上又は基板内のアドレス指定可能な位置に配置されていることを意味する。「マイクロアレイ」は評価又は分析のために顕微鏡検査を必要とするか、又はそれによって補助されるように小型化されたアレイである。アレイは、チップ又はバイオチップと呼ばれることがある。
【0035】
分子のアレイは、一度にサンプルに対して非常に多数の分析を行うことを可能にする。いくつかの実施形態では、1つ以上の分子(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)のアレイは例えば、内部対照を提供するために、アレイ上で複数回(例えば、2回)生じる。アレイ上のアドレス可能な位置の数は例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも550個、少なくとも600個、少なくとも800個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個、又はそれ以上であり得る。特定の例では、アレイが少なくとも15ヌクレオチド長、例えば約15~40ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド配列などの核酸分子を含む。特定の例では、アレイが本明細書に記載のマーカー、例えば本明細書に提供される表1~9、11及び13~15のマーカーのうちの少なくとも1つを検出するために使用することができるオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、アレイ内に配列された各サンプルは、その位置がアレイの少なくとも2次元内で確実かつ一貫して決定され得るという点で、アドレス指定可能であり得る。アレイ上の特定のアドレスをその位置のサンプルに関する情報(例えば、シグナル強度を含むハイブリダイゼーション又は結合データなど)と相関させるようにコンピュータをプログラムされ得るという点で、アドレス指定可能なアレイは、コンピュータ可読であり得る。コンピュータ可読フォーマットのいくつかの例ではアレイ内の個々の特徴が規則的に、例えば、デカルト格子パターンで配置され、デカルト格子パターンはコンピュータによってアドレス情報に相関させることができる。
【0037】
タンパク質ベースのアレイは、タンパク質であるか、又はタンパク質を含むプローブ分子、又は標的分子がタンパク質であるか、又はタンパク質を含むアレイ、及びタンパク質が結合する核酸を含むアレイ、又はその逆を含む。いくつかの例では、アレイが表1~9、11及び13~15のものうちの少なくとも1つなどの、本明細書で提供されるマーカーに対する抗体を含む。
【0038】
本明細書で使用される「遺伝子」という語は介在するイントロン配列に加えて、及び遺伝子の発現を制御する調節領域、例えば、プロモーター又はその断片に加えて、mRNA及び/又はタンパク質を産生するために発現させることができる対象のゲノム中の核酸を手段する。
【0039】
本明細書で使用されるように、「診断」という用語、及び「診断する」又は「診断すること」などのその変種は、臨床状態の一次診断又は臨床状態の任意の一次診断を含むが、これらに限定されないものとする。本明細書中に記載される診断アッセイはまた、対象の寛解を評価するために、又は疾患再発、若しくは腫瘍再発(例えば、手術、放射線療法、補助療法若しくは化学療法後)をモニターするために、又は原発腫瘍の転移の出現を判定するために有用である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される予後アッセイが手術、放射線療法、補助療法又は化学療法後などの、治療利益、疾患再発、腫瘍再発、又は原発腫瘍の転移の可能性を評価するために有用である。本明細書中に記載されるアッセイの全てのこのような使用は、本開示によって包含される。いくつかの実施形態では、患者が発生するかどうかを予測するために試験を使用することができる。
【0041】
「乳房腫瘍」という用語は良性又は悪性であり得る乳房組織の腫瘍性状態を意味し、「腫瘍」という用語は、「新生物」及び「病変」と同義である。例示的な乳房腫瘍には、浸潤性乳癌、DCIS、非浸潤性小葉癌(LCIS)、及び異型乳管過形成(ADH)が含まれる。
【0042】
「癌」という用語は分化の喪失、成長速度の増加、周囲組織への浸潤を伴う特徴的な退形成(anaplasia)を受け、転移することが可能な悪性新生物を意味する。「癌」という用語は浸潤性乳癌のように、限定されるわけではないが、対象内の細胞の制御されない成長によって特徴づけられる疾患を含むものとする。
【0043】
「乳管内病変」という用語は乳管の内部に限局し、したがって、浸潤性乳癌ではない腫瘍を意味する。例示的な管内病変には、ADH及びDCISが含まれる。
【0044】
ADHは、均一に分布する単形性乳腺上皮細胞の増殖を特徴とする腫瘍性乳管内(非浸潤性)病変である。
【0045】
DCISは、乳管内(非浸潤性)の腫瘍性病変であり、乳腺上皮の増殖が亢進し、細胞の異型性がわずかに認められるのが特徴である。DCISは、核異型、管腔内壊死、分裂能などの因子に基づいて悪性度(低、中、高)に分けられている。低悪性度DCISとADHは形態学的に同一であり、ADHはその大きさ及び/又は関与する乳管の数によって決定される病変の程度に基づいてDCISと区別される。DCISは典型的には最初に、マンモグラフィ及び/又は超音波画像検査での疑わしい所見(例えば、微小石灰化、異常な腫瘤、組織の歪み又は非対称性など)によって引き起こされる組織生検から診断される。ルーチンのスクリーニング画像検査によることもあれば、まれに身体診察陽性(触知可能な腫瘤、乳頭分泌物、皮膚変化など)又は以前に特定された腫瘤の重大な変化が引き金となった画像診断によることもある。
【0046】
DCISにおける細胞増殖は乳管に限局している。増殖細胞が導管を裏打ちする筋上皮細胞(MEC)層の基底膜を介して浸潤してその結果周囲の間質に出現している場合、DCISも存在していても病変は浸潤性乳癌と考えられる。浸潤は、場合によっては、非常に最小限(微小浸潤)であるか、又は浸潤の唯一の証拠がMEC層の破壊である(例えば、SMMHC及び/又はp63などのMEC特異的タンパク質マーカー染色における不連続性を観察することによる)。典型的にはこれらの微小浸潤症例は浸潤性乳癌として治療されるが、これらの症例の治療にはいくつかの議論がある。
【0047】
現在の治療を用いたDCISにおける再発率を推定することは困難である。しかしながら、さらなる治療を一切行わずに腫瘤摘出術を受けた患者の約20%が10年以内に再発事象を経験し、DCISと浸潤性事象との間にほぼ均等に分かれる一方で、乳房切除術を受けた患者では再発を経験する可能性は2%未満である。腫瘤摘出術による標準療法は、補助放射線療法(RT)を受けることである。いくつかのランダム化臨床試験から、腫瘤摘出術後の補助放射線療法は、DCIS及び浸潤性事象タイプの両方について再発リスクを約半減させるという証拠が得られており、現在の臨床的及び病理学的評価技術では、放射線療法の利益を受けられない低リスクのサブグループを特定できない。放射線は、通常は乳房切除術後には施されない。重要なことに、放射線は再発事象のリスクを低下させるが、浸潤性乳癌に対する放射線のように、生存便益は放射線では確立されていない。
【0048】
LCISは乳腺終末管-小葉単位に由来する非浸潤性病変であり、一般的には小さく、しばしば緩やかに凝集した細胞で構成される。乳管内に広がった場合、形態及び/又はマーカー染色に基づいてDCISと区別することができる。
【0049】
用語「浸潤性乳癌」は、ADH及びDCISとは異なり、重複しない悪性腫瘍を意味し、腫瘍細胞が乳管構造の外側の隣接組織に浸潤しているものを表す。それは、ステージ(I、IIA、IIB、IIIA、IIIB、及びIV)に分けることができる。
【0050】
手術は乳房腫瘍の治療方法であり、診断に関与することが多い。手術の種類は、診断時に腫瘍がどの程度広がっているか(腫瘍のステージ)、腫瘍の種類と悪性度によって異なる。本明細書で提供される「治療」という用語は、対象の完全な又は100%の治癒を必要としない。代わりに、それは、1つ以上の症状の発症を遅らせる、対象の生命及び/又は生活の質を延長し、1つ以上の症状の重症度などを低下させるなどの、より広い概念を包含する。
【0051】
本明細書中の「リスク」は、DCISと診断された対象が最初のDCIS事象を有した後に同側の乳房事象を有する可能性を表す。DCISの一次治療は、手術、放射線療法、又は補助化学療法を含むことができる。いくつかの実施形態では最初のDCISを除去することができる。事象は、DCIS事象又は浸潤性乳癌事象であってもよい。「浸潤性乳癌のリスク」が同じ(同側の)乳房におけるその後浸潤性乳癌を発症する(又は診断される)リスクを意味する。これは「DCISのリスク」又は総リスクにも当てはまる。いくつかの実施形態では、初期DCISを除外することができる。
【0052】
いくつかの実施形態ではDCIS乳房腫瘍の治療としての手術、及び/又はその後の同側浸潤性乳癌のリスクを予防又は低減することには、腫瘍摘出術、乳房切除術、及び/又は両側乳房切除術が含まれ得る。
【0053】
術後補助化学療法は、何らかの残存病変を治療するために手術後にしばしば用いられる。全身化学療法には、タキサン系薬剤を併用した白金誘導体が含まれることが多い。補助化学療法は、再発又は転移を来した対象の治療にも用いられる。
【0054】
「補助的DCIS治療」とは、後にDCIS事象を起こす可能性が高い対象に対する適切な治療を意味し、リスクプロファイル及び患者の利益の認識に応じて、乳房事象の早期発見時に計画されたその後の腫瘤摘出術による頻回のモニタリングから、放射線を併用しない腫瘤摘出術、追加の腫瘤摘出術、広範囲切除術まで、よりアグレッシブでない治療選択肢からより積極的な療法選択肢までが含まれる。いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌ではないがDCIS再発のリスクがある対象が補助的DCIS治療を受けることができる(任意選択で、本明細書で提供される実施形態のいずれかと組み合わせて)。
【0055】
「補助的浸潤性乳癌治療」とは浸潤性乳癌が発生する可能性が高い対象に適切なあらゆる治療を意味し、具体的には放射線を伴う腫瘤摘出術、受容体標的化学療法を伴う腫瘤摘出術、受容体標的化学療法を伴う放射線を伴う腫瘤摘出術、乳房切除術、受容体標的化学療法を伴う乳房切除術、放射線を伴う乳房切除術、放射線及び受容体標的化学療法を伴う乳房切除術、化学療法を伴う手術などが挙げられる。いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌ではないがDCIS再発のリスクがある対象は、補助的DCIS治療を受けることができる(任意選択で、本明細書で提供される実施形態のいずれかと組み合わせて)。
【0056】
「マーカー」は、タンパク質、mRNA転写物、又はDNA増幅レベルなどの測定された生物学的成分を指す。その後の同側乳房事象のリスクは、DCISを有する対象について同側DCIS再発、その後の同側浸潤性乳癌、又はその両方を経験する可能性が高いか否か、又はDCISに対する治療後のいずれの治療も経験しない可能性があるか否かの予測を可能にする様々なセット又は組み合わせたマーカーを介して予測することができる。
【0057】
「対照」という用語は、検査、処理、特徴付け、分析等されているサンプルとの比較に使用されるサンプル又は標準を指す。いくつかの実施形態では、対照は、健康な患者から得られたサンプル、又は乳房腫瘍と診断された患者から得られた非腫瘍組織サンプルである。いくつかの実施形態では、対照が履歴対照又は標準参照値又は値の範囲(予後不良の乳房腫瘍患者の群などの以前に試験された対照サンプル、又は非腫瘍組織中の癌関連遺伝子のレベルなどのベースライン値又は正常値を表すサンプルの群など)である。
【0058】
「Coxハザード比」はcox比例ハザードモデルから導かれる。比例ハザードモデルが統計学における生存モデルのクラスである。生存モデルが何らかの事象が起こる前の時間を、その時間の量と関連する可能性のある1つ以上の共変量と関係づける。cox比例ハザードモデルでは共変量の単位増加のユニークな効果がハザード率に関して乗法的である。「coxハザード比」は、Cox比例ハザードモデルを用いて計算される、2水準の説明変数(共変量)によって記述される条件に対応するハザード率の比である。Coxハザード比は、共変量の1単位の変化に対する生存ハザードの比である。例えば、Coxハザード比は、対数遺伝子発現レベルの1単位変化に対する生存ハザードの比であってもよい。このように、数値が大きいほど、生存率や疾患再発などの評価対象となる事象のハザード率に大きな影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、1より大きいハザード比(HR)は、共変量レベルの増加が患者の転帰の悪化と関連することを示し、ここで共変量レベルはマーカー発現レベルである。いくつかの実施形態において、HRが1未満であれば、共変量レベルの減少が患者の転帰の改善と関連していることを示しており、ここで共変量レベルはマーカー発現レベルである。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「非腫瘍組織サンプル」は、正常又は健康な細胞又は組織からのサンプル、又は正常又は健康な細胞又は組織からの情報を使用して生成されたデータセットを含む。例えば、非腫瘍サンプルは(i)非腫瘍細胞を含むサンプル;(ii)正常組織由来のサンプル;(iii)健康な組織由来のサンプル;(iv)(i)~(iii)のいずれか1つの抽出物;(v)健康な個体又は健康な個体の集団についての修飾されたクロマチン及び/又は遺伝子発現の測定を含むデータセット;(vi)正常な個体又は正常な個体の集団についての修飾されたクロマチン及び/又は遺伝子発現の測定を含むデータセット;並びに(vii)試験される対象由来の修飾されたクロマチン及び/又は遺伝子発現の測定値を含むデータセット(ここで、測定値は正常な細胞を有するマッチしたサンプルにおいて決定される)を含む群から選択され得る。好ましくは、非腫瘍サンプルが(i)又は(ii)又は(v)又は(vii)である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」は、ヒトを含む任意の動物、好ましくは哺乳動物を包含する。例示的な対象は、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲された野生動物(例えば、キツネ、シカ)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、哺乳動物はヒト又は霊長類である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0061】
遺伝子産物の発現を検出することは、核酸分子又はタンパク質を検出し得る定性的又は定量的な様式のいずれかでの発現レベルの決定を意味する。例示的な方法としてはマイクロアレイ分析、RT-PCR、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、次世代シーケンシング、及び質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
「診断」とは、病気の徴候、症状、さまざまな検査の結果から病気を特定する過程を指す。また、その過程で得られた結論を「診断」ともいう。一般的に実施される検査の形態には、DCISの採取のための生検が含まれる。いくつかの実施形態では、診断は、DCISを有する対象が良好又は不良な予後を有するかどうかを決定することを含む。いくつかの実施形態では、予後がその後の(今後10年、15、又は20年以内の)DCIS事象の高い又は低い可能性であり得る。いくつかの実施形態では、予後が(今後10年、15、又は20年以内の)浸潤性乳癌事象の高い又は低い可能性であり得る。いくつかの実施形態では、予後は、その後の(今後10年以内の)DCIS事象の可能性の高さ又は低さ、及び(今後10年以内の)浸潤性乳癌事象の可能性の高さ又は低さであり得る。
【0063】
「発現の差異又は変化」は、RNAの量の増加又は減少、mRNAのタンパク質への変換、系におけるタンパク質のレベル、又はそれらの任意の組み合わせなどの差異又は変化を意味する。いくつかの例において、その差異は対照又は基準値又は値の範囲、例えば、DCIS及び/又は浸潤性乳癌を有さない対象において、又は乳房腫瘍を有する対象由来の非腫瘍組織において予想される遺伝子発現の量と比較される。差次的発現を検出することは、遺伝子発現の変化又はタンパク質レベルの変化を測定することを含み得る。
【0064】
用語「発現」は、遺伝子のコードされた情報がRNA及び/又はタンパク質の合成のような、細胞の動作(operational)部分、非動作部分、又は構造的な部分に変換されるプロセスを示す。遺伝子発現は、外部シグナルによって影響され得る。例えば、細胞をホルモンに曝露すると、ホルモン誘導遺伝子の発現を刺激することができる。異なるタイプの細胞は、同一のシグナルに対して異なるように応答し得る。遺伝子の発現は、DNAからRNA、タンパク質への経路のどこでも調節することができる。調節には、転写、翻訳、RNA輸送及びプロセシング、mRNAなどの中間分子の分解、又は特定のタンパク質分子が産生された後のそれらの活性化、不活性化、コンパートメント化又は分解による制御が含まれ得る。いくつかの実施形態において、遺伝子発現をモニタリングして、DCISを有する対象の診断及び/又は予後を決定することができ、例えば、対象がその後のDCIS又は浸潤性乳癌を発症する可能性を決定又は予測することができる。いくつかの実施形態において、mRNA発現をモニタリングして、DCISを有する対象の診断及び/又は予後を決定することができ、例えば、対象がその後のDCIS又は浸潤性乳癌を発症する可能性を決定又は予測することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質発現をモニタリングして、DCISを有する対象の診断及び/又は予後を決定することができ、例えば、対象がその後のDCIS又は浸潤性乳癌を発症する可能性を決定又は予測することができる。
【0065】
サンプル中の核酸分子の発現は、正常又は非腫瘍サンプルなどの対照サンプルと比較して変化させることができる。差次的発現などの遺伝子発現の変化には(1)過剰発現、(2)過少発現、又は(3)発現の抑制が含まれるが、これらに限定されない。核酸分子の発現における変化は、対応するタンパク質の発現における変化に関連し得、そして実際に変化を引き起こし得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、タンパク質発現はまた、正常な(例えば、非DCIS)状況におけるタンパク質の発現とは異なるように、いくつかの様式で変化し得る。これには必ずしも限定されないが、以下が含まれる:(1)対照又は標準量と比較して増加した量のタンパク質の発現;(2)対照又は標準量と比較して減少した量のタンパク質の発現;(3)タンパク質の細胞内局在化又は標的化の変化;(4)時間的に調節されたタンパク質の発現の変化(タンパク質が通常であれば発現しない場合に発現する、又は代替的に、通常であれば発現する場合に発現しない);(5)タンパク質が細胞内に局在化したままである時間の増加によるタンパク質の安定性の変化;及び(6)タンパク質の局在化(器官又は組織特異的又は細胞内局在化など)の変化(タンパク質が通常であれば発現する場所で発現しない、又は、通常であれば発現しないはずの場所でタンパク質が発現するなど)、ここで、それぞれ対照又は標準と比較される。
【0067】
差次的発現の決定のための、サンプルとの比較のための対照又は標準には、正常であると考えられるサンプル(例えば、DCISを有していないか、又はDCISを有していたがDCIS事象の10年後にDCIS及び/又は浸潤性乳癌を経験しなかった対象由来のサンプルなど、所望の特性に合わせて変更されていないという意味で)が含まれる。また、実験値(例えば、値の範囲)についても、任意で設定される可能性はあるとしても、実験室ごとに異なることに留意すべきである。実験室の標準及び値は既知の又は決定された母集団の値に基づいて設定することができ、測定された値と実験的に決定された値の比較を可能にするように、グラフ又は表の形式で提供することができる。
【0068】
当業者によって理解されるように、上記のコントロール又は標準のいずれかは、本明細書中に提供される方法(例えば、処置、分析、又は予後)のいずれか、及び組成物又は方法のいずれかについて提供され得る。これらは、ポジティブコントロール又はネガティブコントロール又は標準(例えば、高レベル又は正常レベルの発現又は分子の存在が何であるかを示す)であり得る。対照は関連する分子タイプ(例えば、RNA対タンパク質)にも適合させることができる。いくつかの実施形態では、対照及び/又は標準がCOX-2、Ki-67、p16、PR、SIAH2、FOXA1、及び/又はHER2に対するものであり得る。いくつかの実施形態では、対照及び/又は標準がCOX-2、Ki-67、p16、ER、SIAH2、FOXA1、及び/又はHER2に対するものであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されるPR実施形態は、いずれも、マーカーとしてERに置き換えられ得る。
【0069】
用語「遺伝子発現プロファイル」(又はシグネチャ)は、検出可能な量の遺伝子発現(cDNA、mRNA、又はタンパク質など)の変化によって、又はそれらの遺伝子によって発現される検出可能な量のタンパク質の変化によって検出可能な、差次的又は変化した遺伝子発現を意味する。遺伝子発現の明確な、又は特定可能なパターン、例えば、定義された遺伝子セット又はESTのような遺伝子指標核酸の高発現及び低発現のパターン。いくつかの例ではわずか2つの遺伝子がプロファイルを提供するが、より多くの遺伝子をプロファイルで使用することができ、例えば、少なくとも3、4、5、6、又は7つのマーカー(例えば、遺伝子)を使用して、その後のDCISのリスク及び/又はその後の浸潤性乳癌のリスクに関する予後を提供することができる。遺伝子発現プロファイルは、特定の遺伝子の絶対的発現レベルのみならず相対的な発現レベルを含み得、そしてベースライン又は対照サンプルプロファイル(例えば、腫瘍を有さない対象由来の同じ組織由来のサンプル)と比較した試験サンプルの文脈において見られ得る。いくつかの実施形態では、対象における遺伝子発現プロファイルがアレイ(核酸又はタンパク質アレイなど)上で読み取られる。例えば、遺伝子発現プロファイルは、AffymetrixTM(カリフォルニア州サンタクララ)のHuman Genome GeneChipTMアレイのような市販のアレイを用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、表1~9、11及び13~15のいずれか1つに示されるマーカーのいずれか2つ以上をプロファイルとして用いることができる。「ハイブリダイゼーション」とは、例えば、DNA、RNAの2本鎖の相補的領域間、又はDNAとRNAとの間に塩基対を形成し、それによって二重鎖を形成することを意味する。特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション方法の性質、並びにハイブリダイズする核酸配列の組成及び長さに依存して変化する。一般に、ハイブリダイゼーションの温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(例えば、ナトリウム濃度)は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する。特定の程度のストリンジェンシーを達成するためのハイブリダイゼーション条件に関する計算はSambrookら、(1989)Molecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview,NYにおいて記載される(第9章と第11章)。
【0070】
「単離された」生物学的成分(例えば、核酸分子、タンパク質、又は細胞)において使用される「単離された」という用語は、その成分が自然に存在する生物の細胞内、又は生物自体に含まれる他の生物学的成分、例えば他の染色体及び染色体外のDNA及びRNA、タンパク質、細胞などから実質的に分離又は精製されたものである。「単離された」核酸分子及びタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸分子及びタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子及びタンパク質、並びに化学的に合成された核酸分子及びタンパク質を包含する。いくつかの実施形態では、単離された細胞は、非腫瘍乳房細胞などの他の乳房細胞型から実質的に分離されたDCIS細胞である。
【0071】
用語「標識」又は「プローブ」は例えば、ELISA、分光測光法、フローサイトメトリー、又は顕微鏡法によって検出することができる物質を意味する。例えば、標識は、核酸分子又はタンパク質(例えば、表1~9、11及び13~15のいずれか1つ以上におけるマーカーのいずれかにハイブリダイズ又は結合し得るもの)に接続され得、それによって、核酸分子又はタンパク質の検出を可能にする。標識の例としては放射性同位体、酵素基質、コファクター、リガンド、化学発光剤、フルオロフォア、ハプテン、酵素、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。種々の目的に適切な標識の選択における標識及びガイダンスのための方法は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)及びAusubelら(in Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)に記載されている。いくつかの実施形態において、標識は、表1~9、11及び13~15のいずれか1つ以上に開示されるマーカーの1つ以上に特異的に結合する結合剤に結合され、対象又は対象由来のDCISサンプル中のマーカーの存在を検出することを可能にする。
【0072】
「哺乳動物」という用語は、ヒト哺乳動物及び非ヒト哺乳動物の両方を含む。哺乳類の例としてはヒト、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、及びマウスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
核酸アレイは、cDNAアレイ又はオリゴヌクレオチドアレイに見られるような、マトリックス上の割り当てられた位置にある核酸(DNA又はRNAなど)を配置したものである。
【0074】
「遺伝子を表す核酸分子」はプローブ又は他の指標分子として使用するのに適した任意の長さの任意の核酸、例えばDNA(イントロン又はエキソン又はその両方)、cDNA、又はRNA(mRNAなど)であり、表1~9、11及び13~15に列挙されているものなどの対応する遺伝子について情報を提供するものである。
【0075】
「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は表1~9、11及び13~15に列挙される核酸分子の増幅のような、核酸分子(例えば、サンプル又は検体中の核酸分子)のコピー数を増加させるインビトロ増幅技術である。PCRの産物は、電気泳動、制限エンドヌクレアーゼ切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション又はライゲーション、及び/又は核酸配列決定のような、当該分野で公知の標準的な技術によって特徴付けられ得る。いくつかの例では、PCRがプライマー、例えば、長さ10~100ヌクレオチド、例えば、長さ約15、20、25、30又は50ヌクレオチド又はそれ以上のDNAオリゴヌクレオチド(核酸ハイブリダイゼーションによって相補的標的DNA鎖にアニールされて、プライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッドを形成し得るプライマー、例えば、表1~9、11及び13~15に列挙されるもの)を利用する。本明細書に提供されるマーカーの少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50又はそれ以上の連続したヌクレオチドを含むプライマーを選択することができる。核酸プライマーの調製及び使用方法は、例えば、Sambrookら(in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1989)、Ausubelら(ed.)(in Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)、及びInnisら(PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc., San Diego, Calif., 1990)に記載されている。
【0076】
「予後」という用語は、疾患の経過の予測を意味する。本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、語句がDCISを既に有する人の文脈で使用される場合、DCISを有する対象が(10年、15年、又は20年以内に)続くa)原発性DCISの外科的切除後の同側DCIS事象、b)同側浸潤性乳癌、c)両方の事象、又はd)a)もb)もいずれも有さない、可能性を示す。この予測はa)同側乳房事象の可能性、b)特定の時間量(例えば、1、2、3又は5年)における同側乳房事象の可能性、c)特定の治療(例えば、放射線)が同側乳房事象を予防する可能性、d)最も可能性の高い事象の重症度に一致する同側乳房事象を予防するのに役立つ最適な治療方法、又はe)それらの組み合わせ、を決定することを含むことができる。
【0077】
「特異的結合剤」という語句は、タンパク質、酵素、多糖類、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、組換えベクター又は小分子のような定義された標的のみに実質的に又は優先的に結合する薬剤を意味する。一例では「特異的結合剤」は、開示されたマーカーの少なくとも1つ(表1~9、11及び13~15に列挙されるものよう)に結合することができる。いくつかの実施形態では、特異的結合剤は、開示されたマーカー(表1~9、11及び13~15に列挙されるものなど)のうちの少なくとも1つによって調節される下流因子に結合することができる。したがって、核酸特異的結合剤は、RNAなどの規定された核酸、又は核酸内の特定の領域にのみ実質的に結合する。例えば、「特異的結合剤」は特定のRNAに実質的に結合するアンチセンス化合物(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、shRNA又はリボザイム)を含む。
【0078】
「タンパク質特異的結合剤」は定義されたタンパク質のみ、又はタンパク質内の特定の領域に実質的に結合する。例えば、「特異的結合剤」には、特定のポリペプチドに実質的に結合する抗体及び他の物質が含まれる。抗体は、ポリペプチド及びその免疫学的に有効な部分(「断片」)に特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってもよい。特定の薬剤が特定のポリペプチドにのみ実質的に結合するという決定は、通常行われる手順を使用するか、又は適応させることによって容易になされ得る。1つの適切なインビトロアッセイは、ウェスタンブロッティング手順(Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1999など多くの標準的なテキストに記載される)を利用する。
【0079】
シクロオキシゲナーゼ-2(「プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2」、「PTGS2」、及び「COX-2」;HGNC:9605)は、本明細書中でCOX-2と呼ばれ、PTGS2遺伝子によってコードされる酵素である。別段の表示がない限り、この用語は、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含し得る。従って、示されるマーカーのレベルは例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示し得る。本明細書における一般的な用語(「COX-2のレベル」など)の使用は上記の選択肢の全てを一緒に、及び個別に示す(例えば、COX-2タンパク質レベル及びCOX-2 RNAレベル、又はCOX-2タンパク質レベル、又はCOX-2 RNAレベル)。
【0080】
本明細書中では「Ki-67」と呼ぶ、増殖マーカーKi-67(「MKI67」及び「MIB-1」;HGNC:7107)は、MKI67遺伝子によってコードされるタンパク質である。別段の表示がない限り、この用語は、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含し得る。従って、示されるマーカーのレベルは、例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示し得る。本明細書中の一般的な用語(「p16のレベル」など)の使用は上記の選択肢の全てを一緒に、及び個別に示す(例えば、Ki-67タンパク質レベル及びKi-67 RNAレベル、又はKi-67タンパク質レベル、又はKi-67 RNAレベル)。
【0081】
本明細書中では「p16」と呼ぶ、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A p16アイソフォーム(「サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A」、「p16/INK4A」、「CDKN2A」、及び「MTS1」;HGNC:1787)は、CDKN2A遺伝子によってコードされる腫瘍抑制タンパク質である。特に断らない限り、この用語はDNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含することができる。したがって、示されたマーカーのレベルは例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示すことができる。本明細書中の一般的な用語(「p16レベル」など)の使用は上記の選択肢のすべてを一緒に、及び個別に示す(例えば、p16タンパク質レベル及びp16 RNAレベル、又はp16タンパク質レベル、又はp16 RNAレベル)。
【0082】
本明細書で「PR」と呼ばれる、プロゲステロン受容体(「NR3C3」、「PR」、「PGR」、「HGNC:8910」)は、PGR遺伝子によってコードされるタンパク質である。別段の表示がない限り、この用語はDNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含することができる。したがって、示されるマーカーのレベルは、例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示すことができる。本明細書中の一般的な用語(「PRレベル」など)の使用は、上記の選択肢のすべてを一緒に、及び個別に示す(例えば、PRタンパク質レベル及びPR RNAレベル、又はPRタンパク質レベル、又はPR RNAレベル)。
【0083】
本明細書では「ER」と呼ばれる、エストロゲン受容体1(「ESR1」、「ER」、「ESR」、「Era」、「ESRA」、「ESTRR」、及び「NR3A1」;「HGNC:3467」)は、ESR1遺伝子によってコードされるタンパク質である。別段の表示がない限り、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含することができる。したがって、示されるマーカーのレベルは、例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示すことができる。本明細書では、一般的な用語(「ERレベル」など)の使用は、上記の選択肢のすべてを一緒に、及び個別に示す(例えば、ERタンパク質レベル及びER RNAレベル、又はERタンパク質レベル、又はER RNAレベル)。
【0084】
本明細書中で「SIAH2」と呼ばれる、SIAH2 E3ユビキチンタンパク質リガーゼ2(「SIAH2」及び「seven in absentia[Drosophila]ホモログ2」;HGNC:10858)は、SIAH2遺伝子によってコードされる酵素である。他に示されない限り、この用語は、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含し得る。従って、示されるマーカーのレベルは例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示し得る。本明細書中の一般的な用語(例えば、SIAH2「レベル」)の使用は上記の選択肢の全てを一緒に、及び個別に示す(例えば、SIAH2タンパク質レベル及びSIAH2 RNAレベル、又はSIAH2タンパク質レベル、又はSIAH2 RNAレベル)。
【0085】
本明細書中で「FOXA1」と呼ばれる、フォークヘッドボックスA1(「FOXA1」;HGNC:5021)は、FOXA1遺伝子によってコードされるタンパク質である。他に示されない限り、この用語は、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含し得る。従って、示されるマーカーのレベルは例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示し得る。本明細書における一般的な用語(「FOXA1のレベル」など)の使用は上記の選択肢の全てを一緒に、及び個別に示す(例えば、FOXA1タンパク質レベル及びFOXA1 RNAレベル、又はFOXA1タンパク質レベル、又はFOXA1 RNAレベル)。
【0086】
本明細書中で「HER2」と呼ばれる、v-erb-b2鳥類赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ2(「ERBB2」、「HER2」[ヒト上皮増殖因子受容体2]、「NEU」、及び「CD340」;HGNC:3430)は、ERBB2遺伝子によってコードされるタンパク質である。別段の表示がない限り、この用語は、DNA、RNA、及び/又はタンパク質のバージョンを包含することができる。したがって、示されたマーカーのレベルは、例えば、RNAレベル又はタンパク質レベルを示すことができる。本明細書において一般的な用語の使用(「HER2のレベル」など)は上記のオプションのすべてを一緒に、及び個々に示す(例えば、HER2タンパク質レベル及びHER2 RNAレベル、又はHER2タンパク質レベル、又はHER2 RNAレベル)。
【0087】
「閉経後」状態を有する対象は、月経停止によって(既知の場合)、又は、例えば50超、例えば55超などの年齢によって(月経状態が未知の場合)、特定され得る。
【0088】
用語「放射線療法」は、対象に対して治療的である量の放射線の何らかの形態に関する、又は当該形態を含む療法を意味する。
【0089】
用語「非放射線療法」は対象における浸潤性乳癌のリスクに対処又は低減するのに適切であり、かつその治療効果が放射線によるものではない療法を意味する。そのような療法の例としては、化学療法、標的及び非標的、免疫及び非免疫調節、モノクローナル、他の標的及び非標的ゲノム療法、トラスツズマブを含むHER2抗体を含む抗体治療薬が挙げられる。しばしば、本願において、「非放射線療法」は「他の療法」として表される。
【0090】
本明細書で使用される「積極的な(aggressive)」という用語は、処置が示された事象を発症するリスクが高い対象に適切であることを意味する。したがって、積極的な乳癌療法は、乳癌を発症する可能性が最も高いと理解されている対象に対する療法である。このような療法は一般に、他の療法よりも本質的に広範である。このような療法の例としては、以下が挙げられる:積極的な放射線療法、及び積極的な非放射線療法。
【0091】
[各種実施形態の一般的な説明]
対象に対するリスク及び対象が治療に応答する可能性の両方について、様々な対象を適切な形態の療法を特定して治療するための方法が本明細書に提供される。全ての対象が、浸潤性乳癌のリスクが高い対象であっても、様々な形態の治療、特に放射線療法に反応するわけではないことが認識されている。従って、本明細書中に提供される種々の実施形態は、浸潤性乳癌のリスクが高まった対象が、放射線療法を受けるべきか、あるいは代わりに何らかの他の療法を受けるべきかどうかを決定することを可能にする。
【0092】
いくつかの実施形態では、対象を治療する方法が提供される。この方法は、DCISを有する対象を特定する工程を包含する。対象は、k-ras経路の活性レベルが上昇している。その後、対象は積極的な乳癌治療を受ける(又は治療される)。いくつかの実施形態において、k-ras経路は、K-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS又はSIAH2のうちの少なくとも1つのレベルが上昇している場合に、上昇する。いくつかの実施形態では、上昇とは、K-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS又はSIAH2のうちの1つ以上のタンパク質又はRNAレベルの少なくとも10%以上の増加を意味する。いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌を発症するリスクは、上昇していない対象におけるレベルよりも、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500%又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、対象がK-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS又はSIAHのうちの少なくとも1つのレベルが上昇している場合、非放射線で、積極的な療法でさらに治療される。いくつかの実施形態では、対象はDCISも有する。いくつかの実施形態において、対象はDCISを有し、HER2陽性であり、K-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS、及びSIAHのうちの2、3、4、5、又は6つ全てのレベルが上昇している。いくつかの実施形態では、対象はDCISを有し、HER2陽性であり、K-ras、RAF、MAPK、MEK、ETS、及びSIAH2のうちの1、2、3、4、5、又は6つすべてにおいてレベルが上昇しており、次いで、非放射線療法、例えばトラスツズマブなどのHER2抗体で治療される。
【0093】
いくつかの実施形態では、対象を治療する方法が提供される。この方法はDCIS、すなわち、HER2陽性及びSIAH2陽性である対象を特定すること、及び対象に積極的な乳癌治療を施すことを含む。いくつかの実施形態では、療法は、放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、積極的な乳癌治療は、トラスツズマブなどのHer2 Abなどの化学療法である。
【0094】
いくつかの実施形態では、放射線療法に応答しない対象を特定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること、及び対象がHER2(又はEGFR)陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定することを含む。次いで、対象がHER2陽性かつSIAH2陽性である場合には、対象に積極的な療法を施す(又はこの者が患者である場合には積極的な療法を受ける)。積極的な療法は、放射線療法ではなく、HER2に対する抗体又はトラスツズマブからなる1つ以上のグループから選択され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、積極的な癌治療の対象を特定する方法が提供される。この方法は、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること、及び対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定することを含む。いくつかの実施形態では、対象がHER2陽性かつSIAH2陽性である場合、対象に積極的な療法を施す(又は実施を指示する)。積極的な療法は放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、積極的な療法は、HER2に対する抗体、トラスツズマブ、細胞傷害性薬物、及びERBB2指向化合物(ERBB2に対する抗体など)からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、対象を治療するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;DCISサンプルを少なくともPRのレベルについて分析すること、及び、a)サンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること、又は、b)サンプルを少なくともFOXA1について分析することの少なくともいずれか;少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて予後を提供すること;を少なくとも含み、サンプルがPR陽性である場合はCOX2のレベルについてサンプルをさらに分析し、少なくともFOXA1陽性であるCOX2陽性は浸潤性乳癌の高いリスクを示す。この方法は、対象がHER2陽性であるかどうかを決定すること、及び対象がHER2陽性である場合に積極的な療法を対象に施すことをさらに包含する。積極的な療法は放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、積極的な療法は、HER2に対する抗体及びトラスツズマブからなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0097】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを減少させるための方法が提供される。この方法は対象からDCISサンプルを提供すること;DCISサンプルを少なくともPRのレベルについて分析すること、及び、a)サンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること、又は、b)サンプルを少なくともFOXA1について分析することの少なくともいずれか;次いで、少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて予後を提供すること;を含む。次いで、サンプルがPR陽性であり、FOXA1陰性である場合、サンプルのKi67のレベル、サイズ、又はKi67のレベル及びサイズを分析する。サンプルがKi67陽性、DCISの大きさが5mmを超える、又はその両方の場合は、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す。この方法は、対象がa)HER2陽性、及びb)FOXA1陰性の場合であって、Ki67陽性である場合、5mmより大きいサイズのDCISである場合、又はそれらの組み合わせである場合に、対象に積極的な療法を施す工程をさらに包含する。積極的な療法は放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、積極的な療法は、HER2に対する抗体及びトラスツズマブからなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、対象に放射線療法の利益を提供する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2陰性である場合に対象に放射線療法を施すこと;を含む。いくつかの実施形態では、対象がHER2陽性である場合、対象に放射線療法を施さない。
【0099】
いくつかの実施形態では、対象にどの治療方法を推奨するかを決定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2及びSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;を含む。対象がHER2及びSIAH2陽性である場合、対象に対して積極的な療法を推奨するが、積極的な療法は放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、乳癌に対する積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブ、又は本明細書に記載の任意の他の選択肢からなる群から選択される。対象がHER2陰性又はSIAH2陰性で、依然として浸潤性乳癌のリスクが高い場合、放射線療法を推奨する。
【0100】
いくつかの実施形態では、推奨は医師によって対象に行われる。いくつかの実施形態では、これはマーカーの分析に続いて、医療提供者によって、又は保険会社を介して、別々に行われる。いくつかの実施形態では、推奨プロセスは対象への特定の治療の選択及び/又は実施を介して提供される。いくつかの実施形態では、推奨プロセスが対象に対する非放射線療法の償還及び/又は支払いの承認を介して行われる。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象の治療を選択する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象を特定し、対象がHER2陽性又はHER2陰性であるかどうかを決定することを含む。対象がHER2陽性であれば、次に、対象に積極的な療法を施すことができる。いくつかの実施形態では、積極的な療法は放射線療法ではない。いくつかの実施形態では、積極的な療法がHER2に対する抗体又はトラスツズマブ又は本明細書に開示される他の選択肢のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。対象がHER2陰性である場合、一方は、対象に積極的な療法を施さない。この組み合わせは、心血管事象の対象のリスクを減少させることを可能にし、一方で、特定の治療を必要としている人や特定の治療から恩恵を受けるであろう人の治療効果を維持しすることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、現在の(2018年、米国)標準治療下で別の方法で治療されない対象に治療を提供する方法が提供される。この方法は、DCISを有する対象を特定する工程を包含する。また、この対象は浸潤性乳癌を発症するリスクが高い。この方法は、対象に化学療法を施すことをさらに含む。化学療法は、例えば、HER2に対する抗体、及び/又はトラスツズマブを含むことができる。これは、対象がHER2+及びSIAH+である場合に行われる。
【0103】
いくつかの実施形態では、放射線療法に不応性である対象を治療する方法が提供される。この方法は、DCIS、すなわちHER2陽性及びSIAH2陽性を有する対象を特定することと、放射線療法以外の療法を対象に施すこととを含む。いくつかの実施形態では、放射線療法以外の療法は、HER2及び/又はトラスツズマブ及び/又は細胞傷害性薬物に対する抗体、並びにERBB2指向化合物(ERBB2に対する抗体など)である。
【0104】
いくつかの実施形態では、対象におけるステージ1A浸潤性乳癌事象のリスクを低減するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;DCISサンプルを少なくともPRのレベルについて分析すること、及び、a)サンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること、又は、b)サンプルを少なくともFOXA1について分析すること、の少なくともいずれか;を含む。この方法は、少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて予後を提供することをさらに含む。サンプルがPR陽性である場合、COX2のレベルについてサンプルを分析することをさらに含む。サンプルがCOX2陽性でFOXA1陽性であれば、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す。浸潤性乳癌のリスクが高い場合、米国では2018年時点でDCISを治療するために、標準療法よりも積極的な療法を対象者に提供する(例えば、1A DCISのみ)。
【0105】
いくつかの実施形態では、保険が放射線療法の費用をカバーするかどうかを決定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高くDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2陽性であるかどうかを決定すること;及び、対象がHER2陽性である場合には対象への放射線療法の費用をカバーせず、対象がHER2陰性である場合には対象への放射線療法の費用をカバーすること、を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、保険が放射線療法の費用を負担するかどうかを決定する方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高くDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;対象がHER2陽性かつSIAH2陽性である場合には対象への放射線療法の費用を負担しないこと;及び、対象がHER2陰性かつ/又はSIAH2陰性である場合には対象への放射線療法の費用を負担すること、を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、放射線療法に対する支払いの方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌の高いリスクが高くかつDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2陽性であるかどうかを決定すること;対象がHER2陽性である場合には対象に対する放射線療法の支払いを行わないこと;及び、対象がHER2陰性である場合には対象に対する放射線療法の支払い(少なくとも部分的に)を行うこと、を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、放射線療法に対する支払いの方法が提供される。この方法は浸潤性乳癌のリスクが高くかつDCISを有する対象を特定すること;対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;対象がHER2陽性かつSIAH2陽性である場合には、対象に対する放射線療法の支払いを行わないこと;及び、対象がHER2陰性及び/又はSIAH2陰性である場合には、対象に対する放射線療法の支払い(少なくとも部分的に)を行うこと、を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、放射線療法のための償還を提供する方法が提供される。この方法はDCISを有し、浸潤性乳癌のリスクがさらに高い対象を特定すること;対象がHER2陽性及びSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;対象がHER2陰性又はSIAH2陰性である場合に、対象に放射線療法の費用の償還を提供すること、を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、非放射線療法のための償還を提供する方法が提供される。この方法はDCISを有し、浸潤性乳癌のリスクがさらに高い対象を特定すること;対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であるかどうかを決定すること;及び、対象がHER2陽性かつSIAH2陽性である場合に、対象に非放射線療法の費用の償還を提供すること、を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される積極的療法が浸潤性乳癌を発症するリスクが高い対象に適切な療法であり、この療法は浸潤性乳癌に対処し、そのリスクを有意に低減するのに十分である。いくつかの実施形態では、療法は化学療法である。いくつかの実施形態では、化学療法は、HER2及び/又はトラスツズマブ及び/又は細胞傷害性薬物、並びにERBB2指向化合物(ERBB2に対する抗体など)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、療法は、例えば、トラスツズマブなどの抗HER2抗体を含む療法である。いくつかの実施形態では、療法は、トラスツズマブを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、各マーカーの分析は、互いに平行して実施される。いくつかの実施形態では、各マーカーの分析は、オーバーラップした時間に実施される。いくつかの実施形態では、PR分析が最初に行われ、任意のさらなる分析はPR分析の結果に依存して行われる。いくつかの実施形態では、施すべき特定の療法を決定するために追加のマーカーを調べない。いくつかの実施形態では、HER2及び/又はSIAH2分析が最初に行われる。いくつかの実施形態では、まずサンプル及び/又は対象がDCISを有すると決定され、その後にのみ、浸潤癌のリスクが上昇しているかどうかが決定され、その後にのみ、放射線療法に不応性であるかどうか(すなわち、HER2+及びSIAH+)が決定される。
【0113】
いくつかの実施形態において、適切な療法を決定するために検討され得るさらなる因子は、K-ras経路の上昇を示す因子である。高いレベルの対象は、(DCISも有する場合)放射線療法に対して不応性であると決定できる。
【0114】
[「高リスク」対象及びその特定に関する例示的な実施形態]
浸潤性乳癌を発症する高リスクの対象を特定するための例示的な実施形態を以下に提供する。これは網羅的ではないが、当業者がこのような個体をどのように特定し得るかを代表する。いくつかの実施形態では「リスク上昇」、又は「高リスク」、又は「積極的」な治療を受けるべきである対象を特定するために本明細書で提供される方法のいずれかは、対象が浸潤性乳癌のリスクが上昇しており、本明細書で提供されるDCISを有する対象の整理及び放射線療法に不応性であるか否かの決定から利益を得ることを示す。したがって、本明細書で提供される実施形態のいずれか(浸潤性乳癌のリスクを有する対象の治療、特定などに関して)は対象にどの治療を施すべきかを決定するために実施形態で使用することができる。いくつかの実施形態では高リスクを有すると特定された任意の対象が放射線療法に応答するか、又は代わりに非放射線療法(HER2抗体など)を受けるべきかについてスクリーニングすることもできる。以下の表に列挙される予後については「浸潤性リスク」を示すもののみが、本明細書で提供されるプロセスに関連し、その中の者にDCISを既に有する者がいる。いくつかの実施形態では、対象の他のカテゴリーが本明細書で提供される放射線不応性分析から利益を受けない対象を示す。したがって、本開示は、本分析から誰が利益を得るか、及び誰が利益を得ないかについてのガイダンスを提供する。すなわち、一旦、上昇したリスクが確立されると、次いで、サンプルをさらに試験して、本明細書中に記載される選択肢(例えば、HER2及びSIAH2を試験すること)によって、対象についての適切な処置を決定する。
【表2-1-9】
【0115】
表9に、DCISと診断された対象が、原発性DCISの外科的切除後に同側DCIS事象を経験するリスクが高いこと(本表のみで使用)を示すマーカーの組み合わせの概要を示す。
【0116】
いくつかの実施形態において、表11は、DCISと診断された対象が、原発性DCISの外科的切除後に同側DCIS及び/又は浸潤性乳癌を経験するリスクが高いことを示す組み合わせの概要を提供する。
【表3-11】
【0117】
表11は、DCISを有する対象が、浸潤性乳癌を経験するリスクのレベルを特定するための関連マーカーの概要である。表11は、DCISをすでに有する対象について、浸潤性乳癌及び/又はDCISの再発を経験するリスクが高いことを示す組み合わせの概要を提供する。上記の結果(表1~9、11、13~15)は本明細書中に提供される種々の方法の全ての実施形態、並びにキット及び組成物などについて明確に企図される。いくつかの実施形態において、浸潤性乳癌の高いリスクを満たすもののみが、HER2及びSIAH2レベルについて分析される。
【0118】
いくつかの実施形態では、DCIS再発及び/又は浸潤性乳癌のリスク(示されるように)に関連する組成物又は方法のために、上記のマーカー又は変数の任意の記載された組み合わせを使用することができる。本明細書中に記載されるように、種々の組み合わせは、対象がDCIS再発を経験するリスク及び/又は浸潤性乳癌のリスクが比較的高い(又は低い)ことを示す。したがって、いくつかの実施形態では、これは、例えば、対象の適切な予後、対象の高度な治療方法(例えば、対象が現有するDCISを解決するだけでなく、DCIS再発及び/又は浸潤性乳癌のリスクレベルに適切に対処するアプローチをとる)、サンプル(例えば、様々なマーカーについてのDCISサンプル)を分析するための方法、上記の方法を可能にする組成物及びキットなどの点で実際に採用することができる。いくつかの実施形態では、PR-バックグラウンドでは、低FOXA1は浸潤性事象と相関し、PR+バックグラウンドでは、高FOXA1は浸潤性再発と相関する。両方の相関関係は、DCIS事象について逆になる。いくつかの実施形態では、別個のバイオマーカーベースのリスクモデル(アルゴリズム)を使用して、浸潤性及びDCIS事象を予測することができ、少なくともいくつかのバイオマーカーは、線形アルゴリズムで単一の重み付けを割り当てられるのではなく、他のマーカーとの文脈で異なる評価することができる。いくつかの実施形態において、PR/FOXA1の組み合わせは、残りの患者と比較してRTによる顕著な利益を経験する患者のサブセットを特定する。示されているように、これらの研究は、リスク層別化モデリングに対する本アプローチが、一次DCIS診断後にDCIS又は浸潤性事象のリスクがある患者を正確に特定できることを示している。いくつかの実施形態において、本明細書中に提示されるモデル(例えば、以下の実施例において)は、包括的なマルチマーカーパネルの基礎である。特定の実施形態ではリスクモデルはコンピューティングデバイス上で実行することができ、他の実施形態ではリスクモデルは手動で実行することができることに留意されたい。
【0119】
いくつかの実施形態では、サンプルを分析する方法が提供される。この方法は、ヒトDCIS組織サンプルをPRについて分析すること、及びサンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること、及び/又はサンプルを少なくともFOXA1について分析すること、のいずれか又は両方を含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が、浸潤性乳癌のリスクが高い又は上昇していることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0120】
いくつかの実施形態では、サンプルを分析する方法が提供される。この方法は、ヒトDCIS組織サンプルを、少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルについて分析することを包含する。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌のリスクが高い又はリスクが上昇していることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0121】
いくつかの実施形態では、サンプルを分析する方法が提供される。この方法はDCISを有する対象からDCISサンプルを提供すること;1)SIAH2についてDCISサンプルを分析すること、及びHER2、PR、FOXA1若しくはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つについてDCISサンプルを分析すること、又は、2)FOXA1及びPRについてDCISサンプルを分析すること;を含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が、浸潤性乳癌のリスクが高い又はリスクが上昇していることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0122】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;DCISサンプルを少なくともPRのレベルについて分析すること、及び、サンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること又はサンプルを少なくともFOXA1について分析することの少なくとも一方、を含む。この方法は、少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて予後を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌のリスクが高い又はリスクが上昇していることを示す(例えば、表1~9、11を参照のこと)。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルについてサンプルを分析すること;並びに、少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルに基づいて浸潤性乳癌のリスクが上昇していると対象を予後判定することを含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が、浸潤性乳癌のリスクが高い又はリスクが上昇していることを示す(例えば、表1~9、11を参照のこと)。
【0124】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、対象からのDCISサンプルを提供すること:a)PR、HER2、及びSIAH2、又はb)PR及びFOXA1についてサンプルを分析すること;並びに、a)PR-、HER2-、及びSIAH2-、b)PR+、FOXA1+、又はc)PR+、FOXA1-、及びKi67+の少なくとも1つを有する場合に、対象を浸潤性乳癌事象のリスクが高いと予後判定すること、を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌を有するリスクのある対象を治療するための方法が提供される。この方法はDCISを有する対象を提供すること;対象がa)PR-、HER2-、及びSIAH2-、b)PR+、FOXA1+、又はc)PR+、FOXA1-、及びKi67+のうちの少なくとも1つであるDCISを有すること;並びに、対象にDCISの標準療法よりも積極的な療法を施すこと、を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、追加の変換プロセスとして、タンパク質及び/又はmRNA発現レベルにアルゴリズムを適用することを含み得、それによってマーカーのためのシグネチャを提供する。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;少なくともPRのレベルについてDCISサンプルを分析すること、及び、サンプルを少なくともHER2及びSIAH2について分析すること又はサンプルを少なくともFOXA1について分析することの少なくとも一方;を含む。この方法は、少なくともPR、HER2及びSIAH2シグネチャに基づいて又は少なくともPR及びFOXA1シグネチャに基づいて予後を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌のリスクが高い又はリスクが上昇していることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0127】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること、少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルについてサンプルを分析すること、及び少なくともSIAH2及びFOXA1のシグネチャに基づいて、対象の浸潤性乳癌のリスクが上昇していると予後判定することを含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌のリスクが高い又は上昇していることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0128】
いくつかの実施形態では、対象における浸潤性乳癌事象のリスクを予後判定するための方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを提供すること;a)PR、HER2、及びSIAH2、又はb)PR及びFOXA1についてサンプルを分析すること;並びに、a)PR-、HER2-、及びSIAH2-、b)PR+、FOXA1+、又はc)PR+、FOXA1-、及びKi67+、のうちの少なくとも1つを含むシグネチャを使用して、対象が浸潤性乳癌事象のリスクが上昇していると予後判定することを含む。いくつかの実施形態において、結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌の高リスク又は高リスクであることを示す(例えば、表1~9、11、13、及び15を参照のこと)。
【0129】
いくつかの実施形態では、DCISに関連するマーカーについては表1~9 11、14、及び15(記載の組合せについては表9)、浸潤性乳癌に関連するマーカーについては表11、13、及び15に概説されるように、本明細書に記載の方法、組成物、キット、システムなどのいずれかを以下のマーカーのうちの1つ又は複数及び/又は組合せ(及び/又は他の記載された変形)に採用して使用することができる。施す適切な療法を決定するための上述のHER2及びSIAH2分析プロセスは、これらの技術のいずれかの一部又は組み合わせであり得、それにより、浸潤性乳癌のリスクが上昇している対象を特定することができる(これらの技術を通して、例えば、放射線療法又は何らかの非放射線療法治療を受けるべきかどうかを決定する)。
【0130】
いくつかの実施形態では、上記の方法のいずれかを、方法に関する以下のさらなる態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、対象はPR陽性であり、非常に高レベルのFOXA1(例えば、「リスク上昇」)が存在する場合、高リスクである。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性である場合、Ki67、サイズ、又はKi67及びサイズの両方について、サンプルをさらに分析する。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性であり、FOXA1陰性である場合、Ki67、サイズ、又はKi67及びサイズのレベルについてサンプルをさらに分析し、ここで、Ki67陽性、DCISの5mmより大きいサイズ、又はその両方は高リスク(例えば、「リスク上昇」)を示す。いくつかの実施形態において、この方法は上昇したリスクレベルを決定するために、p16、COX2、及びKi67について分析することをさらに含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、浸潤性乳癌の上昇したリスクを決定するための方法及び/又は組成物のいずれかは、米国特許公開番号第20100003189号、第20120003639号、第20120003639号、及び第20170350895号に記載される浸潤性乳癌のリスクが高い対象を特定するために使用され得、その各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
いくつかの実施形態では、1つ以上の示されたマーカーを分析及び/又はアッセイすることができる。いくつかの実施形態において、HER2及びSIAH2のマーカーは、他のマーカーとは別個にアッセイされる。いくつかの実施形態において、HER2及びSIAH2は、対象及び/又はサンプルにおけるリスク上昇を決定するためのプロセスの一部としてアッセイされる。いくつかの実施形態において、HER2及びSIAH2は、ER、PR、COX-2、FOXA1、Ki67、及び/又はp16のうちの1つ以上を用いてアッセイされる。いくつかの実施形態において、DCISを有する対象について、マーカーについての以下のアッセイのいずれかはHER2及び/又はSIAH2と組み合わせて行われ得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性である場合、COX-2のレベルについてサンプルをさらに分析し得る。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性である場合、Ki67若しくはサイズ、又はKi67及びサイズの両方についてサンプルをさらに分析し得る。いくつかの実施形態では、Ki-67を伴うp16又はCOX-2を伴うp16について、サンプルを分析することができる。いくつかの実施形態では、この方法が少なくとも以下の組み合わせ:a)PR、HER2、及びSIAH2、b)PR、FOXA1、及びCOX-2、並びにc)PR、FOXA1、及びKi67、を分析することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であり、DCISを有するかどうかを決定し、次いで、対象が放射線療法を受容するかどうか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を用いるべきかどうかを決定する。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示及び記載されるもの以外のマーカーも、分析及び/又はアッセイされ得る。これらの追加のマーカーは2009年5月13日に出願された米国特許出願第12/373,047号及び2011年4月26日に出願された米国特許出願第13/094,729号に開示及び記載されており、両方の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくともCOX-2、Ki67、p16、PR及びHER2を分析することをさらに含む。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性である場合、COX-2のレベルについてサンプルをさらに分析し得、ここで、少なくともFOXA1+を伴うCOX-2+は、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性であり、非常に高いレベルのFOXA1が存在する場合、浸潤性乳癌のリスクが高い。いくつかの実施形態において、サンプルがPR陽性である場合、Ki67、サイズ、又はKi67及びサイズの両方についてサンプルをさらに分析し得る。いくつかの実施形態では、サンプルがPR陽性かつFOXA1-である場合、Ki67のレベル、サイズ、又はKi67及びサイズのレベルの両方について、サンプルをさらに分析することができる。Ki67+、DCISの大きさが5mmを超える、又はそれらの両方は、浸潤性乳癌のリスクが高いことを示す。いくつかの実施形態において、この方法は、p16、COX-2、及びKi67についてサンプルを分析することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象がHER2陽性かつSIAH2陽性であり、DCISを有するかどうかを決定し、次いで、対象が放射線療法を受容するかどうか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を用いるべきかどうかを決定する。
【0137】
いくつかの実施形態において、各マーカーの分析は、互いに平行して行われる。いくつかの実施形態では、各マーカーの分析がオーバーラップした時間に実施される。
【0138】
いくつかの実施形態ではPR分析が最初に行われ、任意のさらなる分析は、PR分析の結果に依存して行われる。いくつかの実施形態では、本明細書中に提供されるマーカーのいずれかについての試験及び/又は分析のいずれにも順序の制約はない。
【0139】
いくつかの実施形態では、この方法がDCISを有する対象の予後を決定することをさらに含む。非DCIS対照と比較して少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルは対象が予後不良であること、又は非腫瘍対照と比較してSIAH2及びFOXA1の発現に有意差がない場合、対象が予後良好であることを示す。
【0140】
いくつかの実施形態では、DCISサンプルがCOX-2についてさらに分析される。いくつかの実施形態において、DCISサンプルは、p16についてさらに分析される。いくつかの態様において、DCISサンプルは、少なくともSIAH2、FOXA1、及びPRについて分析され、いくつかの態様において、DCISサンプルはHER2についてさらに分析される。いくつかの実施形態では、DCISサンプルがCOX-2についてさらに分析される。いくつかの実施形態において、DCISサンプルは、Ki67についてさらに分析される。いくつかの実施形態において、DCISサンプルは、p16についてさらに分析される。いくつかの実施形態では、対象がHER2陽性及びSIAH2陽性であり、DCISを有するかどうかを決定し、次いで、対象が放射線療法を受容するかどうか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を用いるべきかどうかを決定する。
【0141】
いくつかの実施形態では、分析(染色及び/又はスコアリング)がSIAH2及びFOXA1を含む。いくつかの実施形態において、分析は以下の更なる組み合わせの少なくとも1つをさらに含む:1)p16、2)Ki67、3)PR、4)COX-2、5)HER2、6)p16及びKi67、7)p16及びPR、8)p16及びCOX-2、9)p16及びHER2、10)HER2及びKi67、11)HER2及びPR、12)HER2及びCOX-2、13)p16、COX-2及びHER2、14)HER2、COX-2、及びKi67、15)HER2、COX-2、及びPR、16)HER2及びCOX-2、17)p16、Ki-67、COX-2、及びHER2、18)Ki-67、HER2、COX-2、及びPR、並びに/又は、19)Ki-67、HER2、COX-2、PR及びp16。いくつかの実施形態では、対象はHER2陽性かつSIAH2陽性であり、DCISを有するかどうかを決定し、次いで、対象が放射線療法を受けられるどうか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を用いるべきかどうかを決定する。
【0142】
いくつかの実施形態において、DCIS病変は、グレード、壊死、サイズ、及び/又はマージン状態についてさらに分析される。
【0143】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象の年齢、閉経状態、マンモグラフィ密度、腫瘍触知性を含むことによるリスクの予後をさらに含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される「PR」ステップ、方法、組成物などのいずれも、ERステップ(ER染色及び/又はスコアリングが行われる場合)と交換することができる。
【0145】
[報告・推奨]
いくつかの実施形態において、本方法のいずれも、ヒトDCIS組織サンプルに関連するリスクに関する報告書を準備することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、報告書は、浸潤性乳癌のリスクを提供する書面による報告書である。いくつかの実施形態では、報告書は、表1~9、11、及び13~15に提供されるマーカーの組み合わせのうちの1つ以上から生成され、及び/又はそれらを含む。いくつかの実施形態では、報告書はまた、対象が放射線療法を受け入れるか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を採用すべきかどうかを詳述する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本方法のいずれかは、後続のDCIS事象のリスクのレベルに関する報告を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、報告書は、後続のDCIS事象のリスクを提供する書面の報告書である。いくつかの実施形態では、報告書が表1~9、11、及び13~15に提供されるマーカーの組み合わせのうちの1つ以上から生成され、及び/又はそれらを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、本方法のいずれかは、SIAH2、及び、HER2、PR、FOXA1、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、についてDCISサンプルを分析して得られた結果を考慮して、与えられた治療を推奨することをさらに含む。いくつかの実施形態では、治療は、浸潤性乳癌の低い可能性を予測する方法がなければ推奨されたであろう別の治療よりも、積極的でない。いくつかの実施形態では、治療は、浸潤性乳癌の高い可能性を予測する方法がなければ推奨されたであろう別の治療よりも、より積極的である。いくつかの実施形態では、治療は、DCISの再発の可能性を低く予測する方法がなければ推奨されたであろう別の治療よりも積極的でない。いくつかの実施形態では、治療は、DCISの再発の可能性が高いことを予測する方法がなければ推奨されたであろう別の治療よりも、より積極的である。いくつかの実施形態では、報告書はまた、対象が放射線療法を受け入れるか、又はHER2に対する抗体などの非放射線療法を使用すべきかどうか(例えば、HER2及びSIAH2の結果に応じて)を詳述する。
【0148】
いくつかの実施形態では、本方法は、DCIS、浸潤性乳癌、又はその両方のリスクを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、DCIS、浸潤性乳癌、又はその両方のリスク(例えば、表1~9、11、及び13~15に沿って)、並びに、対象が非放射線療法(HER2に対する抗体など)又は放射線療法を受けるべきかどうかに関する書面による報告書を提供することをさらに含む。
【0149】
[治療]
いくつかの実施形態では、上記の方法のいずれかが、その後のDCIS及び/又は浸潤性乳癌の再分類されたリスク、及び/又は放射線療法に対する応答性(浸潤性乳癌のカテゴリーのリスクが高い者について)を考慮して、対象のための適切な治療を含む、及び/又はそれに続くことができる。いくつかの実施形態では、浸潤性乳癌のリスクがある場合、このような治療が浸潤性乳癌のリスクを低減するのに適切であり得る。いくつかの実施形態において、浸潤性乳癌のリスクが高い人に対して、非放射線(HER2+及びSIAH+である人に対して)又は放射線療法(HER2+及びSIAH+の両方でない人に対して)の適切な治療を、対象に提供するか、又は対象によって受け取ることができる。いくつかの実施形態では、非放射線療法は、トラスツズマブなどのHER2に対する抗体である。
【0150】
いくつかの実施形態において、DCIS再発のリスクを低減するために適切な治療は、外科的切除、放射線療法、抗ホルモン療法のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、治療方法は、対象が浸潤性事象の可能性が低いことを知っている場合には適切であり得るが、対象が浸潤性乳癌事象の可能性が高いことを知っており、対象が放射線療法に不応性である可能性がどの程度高いかを知っている場合には適切ではないであろう。
【0151】
いくつかの実施形態において、浸潤性乳癌のリスクを低減するために適切な治療は、乳房切除術、標的HER治療、受容体標的化学療法のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態ではこのような治療方法は、対象が浸潤性事象の可能性が高いことを知っている場合に適切であり得るが、対象が浸潤性乳癌事象の可能性が低いことを知っている場合には適切ではない。いくつかの実施形態では、治療は、対象が治療に反応しない場合に適切である。いくつかの実施形態では、放射線療法に不応性であると予測される対象は、放射線療法を受けないか、又は放射線療法を施されない。
【0152】
いくつかの実施形態では、上記の方法のいずれかの後に、「注意深い経過観察」又は他の比較的最小限の/侵入的な治療を行うことができる。例えば、浸潤性乳癌について高リスクカテゴリーのいずれも満たされておらず、対象にDCISリスクが認められない(又はDCISリスクが認められても問題がない)場合、DCISを治療するアプローチは、即座の行動を取らないことであり、同側の乳房事象を早期に特定するために、より頻回の乳房画像撮像を含むことができる。
【0153】
本DCIS対象に特異的な、可能な治療作用に関する追加の態様及びアプローチが以下に提供される。
【0154】
[キット]
いくつかの実施形態では、キットが提供される。キットは、FOXA1プローブ及びSIAH2プローブを含むことができる。いくつかの実施形態では、キットは、COX-2プローブ、Ki67プローブ、p16プローブ、PRプローブ、及びHER2プローブをさらに含む。いくつかの実施形態では、プローブは単離された抗体である。いくつかの実施形態では、プローブは、FOXA1、SIAH2、COX-2、Ki67、p16、PR又はHER2に適切に選択的にハイブリダイズする核酸である。いくつかの実施形態では、キットは、十分な量のプローブを含み、及び/又はプローブは、表1~9、11、及び13~15のマーカーのうちの1つ以上の「+」及び「-」状態が互いに適切に区別され得るように、十分な感度及び/又は選択性を有する。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されるキットのいずれかは、HER2及びSIAHに十分なプローブを少なくとも含む。いくつかの実施形態において、HER2及びSIAH2プローブは、それら自体がキットの一部であり得るか、又は別々に実施され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、単離されたFOXA1抗体及び単離されたSIAH2抗体を含む抗体組成物が提供される。いくつかの実施形態では、抗体組成物は、単離されたCOX-2抗体、単離されたKi67抗体、単離されたp16抗体、単離されたPR抗体、及び単離されたHER2抗体をさらに含む。いくつかの実施形態において、HER2抗体及びSIAH2抗体は、1つ以上の他の抗体と組み合わせて提供される。
【0156】
いくつかの実施形態では、少なくともSIAH2及びFOXA1に特異的なプローブ又は抗体を含む固相支持体が提供される。いくつかの実施形態では、プローブ又は抗体が少なくともHER2及びSIAHを含むDCISを有する対象におけるDCIS又は浸潤性乳癌の予測に特異的なプローブ又は抗体から本質的になる。いくつかの実施形態では、少なくともSIAH2及びHER2に特異的なプローブ又は抗体を含む固相支持体が提供される。
【0157】
いくつかの実施形態において、分析される対象及び/又はサンプルは、患者(又は患者由来)であり得る。いくつかの実施形態では、対象はDCISを有するか、又は有していた。いくつかの実施形態において、サンプルは、問題の対象のDCISに由来する。このような対象を特定し得る種々の方法が存在する。
【0158】
[サンプル]
いくつかの実施形態において、DCISサンプル自体は、マーカーをスクリーニングするために、それを調製するための任意の数の方法で処理され得る。いくつかの実施形態では、DCISサンプルが患者から外科的に摘出され、保存される。いくつかの実施形態において、DCISサンプルは、外科的摘出によって得られる。いくつかの実施形態では、DCISサンプルは、2、3、4、5又はそれ以上のブロックなどの1つ又はそれ以上のブロックに切断される。
【0159】
いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2のレベル、並びに/又は、PR、FOXA1、それらの任意の組み合わせの少なくとも1つは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態ではSIAH2及びHER2のレベル、並びに/又は、PR、FOXA1、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2及びFOXA1のレベルは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。
【0160】
いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2、PR、FOXA1、又はそれらの組み合わせのレベルを含むシグネチャは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2のレベル、並びにPR又はFOXA1の少なくとも1つを含むシグネチャは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2、並びに、FOXA1のレベルを含むシグネチャは、RNAレベル、DNAレベル、タンパク質レベルのうちの少なくとも1つである。
【0161】
いくつかの実施形態では、サンプルを調製する方法が提供される。この方法は、対象からDCISサンプルを入手すること、並びに、当該サンプルをそのDNA、RNA、及び/又はタンパク質を、少なくともSIAH2及びHER2及び/又はFOXA1について分析できるように調製することを包含する。
【0162】
いくつかの実施形態では、サンプルは保存される。いくつかの実施形態では、サンプルが凍結によって保存される。いくつかの実施形態では、サンプルは、最適切断温度(OCT)化合物などの化学物質中に埋め込まれるか、又は化学物質(ホルマリン、ホルムアルデヒド、第4級アンモニウム塩、アルコール、アセトン、又はDNA、RNA、及び/又はタンパク質を保存又は抽出する他の化学物質を含むが、これらに限定されない)で固定を経る(又は経ない)。いくつかの実施形態において、使用される技術は、SIAH2及びHER2及び/又はFOXA1のDNA、RNA、及び/又はタンパク質を、本明細書中に提供されるようにSIAH2及びHER2及び/又はFOXA1が分析され得るように、適切な量及び状態で保存されることを可能にする技術である。
【0163】
いくつかの実施形態において、DCISサンプルは、少なくともSIAH2及びHER2及び/又はFOXA1の免疫組織化学を可能にするように処理される。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのそのようなサンプル(スライスの形態など)を調製することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、サンプルを分析することは、サンプル中の特定のRNAの量を決定することを含む。各マーカーについてのRNAの量は、任意の数の技術によって決定され得、そのいくつかは本出願の他の箇所で議論される。いくつかの実施形態では、RNAレベルは、核酸マイクロアレイ、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応、in situ核酸検出、又は次世代シーケンシング法を含むアッセイのうちの少なくとも1つによって決定される。いくつかの実施形態では、SIAH2及びHER2及びFOXA1の少なくとも1つの発現は、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応又はマイクロアレイ分析によって測定される。
【0165】
いくつかの実施形態では、RNAレベルは、核酸マイクロアレイ、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応、in situ核酸検出、又は次世代シーケンシング法を含むアッセイによって決定される。
【0166】
いくつかの実施形態では、DCISサンプルを分析することは、サンプル中の特定のタンパク質の量を決定することを含む。各マーカーについてのタンパク質の量は任意の数の技術によって決定され得、そのいくつかは本出願の他の箇所で議論される。いくつかの実施形態において、タンパク質レベルは、免疫組織化学、免疫蛍光、又は質量分析によって決定される。
【0167】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーの検出に使用される患者標本は、外科的に除去された乳房組織を小さなブロックに切断し固定剤に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、固定後、ブロックを脱水し、次いでパラフィンワックスに包埋することができる。いくつかの実施形態では、小さいブロックは、固定剤の完全な浸透を可能にするために、長さが20mm以下であり、厚さが5mm以下である。いくつかの実施形態では、組織構造及び種々のマーカーのコンパートメント化を維持するために、10%中性緩衝ホルマリン中で、室温で24~48時間固定する。しかし、他の固定剤及び固定時間(例えば、6~72時間)もまた、マーカーアッセイと適合し得る。いくつかの実施形態では、アッセイは、固定されて包埋するのではなく、(例えば、液体窒素中で)瞬間凍結された標本を使用するように最適化される。
【0168】
いくつかの実施形態において、サンプル処理のプロセスは脱水及び包埋を含み得、これは手動で、又は組織処理器具を用いて自動化され得る。いずれの場合も、組織及び固定溶液の水性部分は、ブロックを一連の段階的に高濃度のアルコール溶液に通すことによって置き換えることができる。100%アルコールに達した後、アルコールをキシレン(又はキシレンを含まない等価物)のような化学物質を用いて置換し、続いて、溶融した低融点(例えば、約45℃)パラフィンワックスを導入して包埋する。FFPEブロックは、分析の前に長年保存することができる。いくつかの実施形態において、DCIS組織の「コア」は、これらのブロックから中空針を用いて切り出され得、次いで、別個のパラフィンブロック中にアレイ形式で挿入され得る。このような「組織マイクロアレイ」(TMA)は、単一の切片/顕微鏡スライド上で、複数の組織の評価を可能にする。
【0169】
いくつかの実施形態では、ミクロトームを用いて、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)した腫瘍ブロックから厚さ約3~5マイクロメートルの極薄切片を切り取ることができる。組織が折り畳まれたり断片化されたりしてアッセイを妨害することがないように、切片はガラス顕微鏡スライドガラスにマウントすることができる。スライドガラスは、負に帯電した組織切片を結合させるために正に帯電した表面を有し得るが、接着剤を含む組織結合の他の方法も適合することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、次いで、組織切片のワックス除去及び再水和を実施することができる。これらのプロセスは、手動で、又は特定の染色器具を用いて自動化され得る。ワックスはキシレンの溶液(又は、例えば、Novocastra Bond Dewaxing Solutionのような同等のキシレンを含まない溶液)中での加熱及び/又は浸漬によって、スライド上の組織切片から除去され得る。再水和は、濃度が0%(純水)に達するまで、スライドを一連の低濃度アルコール溶液に通すことによって達成することができる。ワックス除去及び再水和に続いて、組織切片を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、免疫組織化学(IHC)及び/又はin situハイブリダイゼーション(ISH)アッセイを使用して種々の分子マーカーについて染色した後に、以下に記載されるように、病理医又は組織学者によって評価し得る。上記の処理ステップは、種々のマーカー(HER2及びSIAH2、並びにCOX-2、Ki-67、PR、p16及びFOXA1のうちの少なくとも1つ)に関して本明細書中に提供される方法のいずれかについて実施され得る。
【0171】
[DCIS診断と病理学的因子の評価-ヘマトキシリン及びエオシン染色]
いくつかの実施形態において、対象及び/又はサンプルは、DCISサンプル又はDCISを有する対象として、当業者に公知の種々の方法のいずれかによって確認される。これは、(いくつかの実施形態では)本明細書で提供される他の方法ステップのいずれかの前に行うことができる。本明細書では、DCISを有する人を特定するための非網羅的な選択肢のセットが提供される。
【0172】
いくつかの実施形態において、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)はDCIS診断を確認し、特定の病理学的特徴(核グレード、構造パターン、及び壊死の有無)を評価するために、及び分子マーカーアッセイの解釈のための参照として、各患者(又は配列された患者のセット)からの少なくとも1つの組織切片を染色するために使用され得る。この組織学的染色は、染色の色に基づいて、個々の細胞の核及び細胞質、並びに種々の細胞及び間質組織の構成要素の区別を可能にする。染色は、手動で、又は専用の染色器具を用いて自動化して行うことができる。いずれの場合も、切片をヘマトキシリン溶液に約4分間浸漬して核を青く染め、次に水道水(アルカリ性)ですすぐことができる。いくつかの実施形態では、次に、切片を酸性アルコール溶液に短時間(典型的にはわずか数秒)さらして、ヘマトキシリンのバックグラウンド染色を除去し、次いで水道水(アルカリ性)ですすぐことができる。次に、「青色化」溶液(例えば、30~60秒間の炭酸リチウム)を適用して、核中のヘマトキシリンの青色を増強し、続いて水ですすぐことができる。次いで、エオシン溶液を約2分間適用して、他の(好酸性)細胞成分を染色し、続いて水ですすぐ。組織をアルコール系列で脱水し、キシレン(又は同等のもの)で清澄化し、カバースリップを、マウンティングメディウムを用いて取り付ける。他の選択肢も当業者に知られている。いくつかの実施形態において、DCISの現在の存在を確認するための任意の方法が、サンプル上で使用され得る。いくつかの実施形態では、確認プロセスは必要とされない。上記の変法は、当業者によって適宜変更することができる。
【0173】
DCIS自体は、様々な方法でサンプル又は対象から特定することができる。乳管内増殖性病変には、終末管小葉単位(TDLU)を起源とする細胞学的及び構造的に多様な上皮増殖の一群が含まれ、その後の浸潤性乳癌発生のリスク増加(大きさは様々)と関連しうる。DCISは、浸潤性乳癌の可能性のある真の前駆病変とみなすことができる。しかしながら、実証されているように、すべてのDCIS事象が進行して浸潤性乳癌を形成するわけではない。様々な悪性度のDCISが存在する(これらは、他に示されない限り、全て、用語「DCIS」内に包含される)。
【0174】
「低悪性度DCIS」は、小型の単形細胞から構成され、アーケード状、微小乳頭状、篩状、固形状など様々なパターンで増殖する。核は一般に均一な大きさで、規則的なクロマチンパターンを示し、核小体は目立たず、核分裂像はまれである。低悪性度DCISは、2つの空間又は直径2mmを超える1つ以上のダクト断面の関与のいずれかを必要とする。乳管腔内の剥離細胞が存在することがあるが、明らかな壊死/コメド型の組織学的特徴は低悪性度DCISに典型的ではない。いくつかの実施形態では、定義はCAP定義である。
【0175】
DCISの細胞学的特徴には、以下のものがある:単調で均一な丸い細胞集団;核-細胞質比のわずかな増加;等距離又は高度に組織化された核分布;丸い核;及び高色素血が認められることも認められないこともある。建築的特徴は、アーケード状、篩状、固形状及び/又は微小乳頭状を含むことができる。
【0176】
「中悪性度DCIS」は細胞学的に低悪性度DCISと類似した細胞で構成されることが多く、固形状、篩状又は微小乳頭状パターンを形成するが、管腔内壊死を含む一部の乳管を伴う。中等度の悪性度の核を示すものもあり、ときに核小体及び粗大なクロマチンを伴う;壊死がみられることもあれば、みられないこともある。
【0177】
「高悪性度DCIS」は通常、5mmより大きいが、典型的な形態学的特徴を有する単一の<1mmの管でさえ、診断に十分である。これは、1つの層として増殖し、高度に不定形的な、微小乳頭状、篩状又は固形状のパターンを形成する細胞から構成される。核は高グレードで、著しく多形性で極性が乏しく、不規則な輪郭と分布、粗大で凝集したクロマチン及び顕著な核小体を伴う。有糸分裂像は通常よくみられるが、その存在は必須ではない。面皰壊死(comedonecrosis)はしばしば高悪性度のDCISと関連しているが、診断には必須ではない。管を平らに裏打ちする高度に未分化な細胞の単一層で足りる。
【0178】
「異型乳管過形成」はDCISとは異なる。異型乳管過形成の形態学的特徴は低悪性度DCISのそれと同一であるが、ADHの大きさは限られている。ADHと低悪性度DCISを区別する2つの定量的基準がある:2つ以下の膜結合腔の均一な関与の存在;又は2mm以下のサイズ。一方又は両方の基準の使用は、WHO分類の著者により適切と考えられている。いくつかの実施形態では、定義はCAP定義である。
【0179】
[DCISの組織学的確認]
いくつかの実施形態では、対象は、DCISの少なくとも1つの形態を有する者である。いくつかの実施形態では、DCISの存在は、例えば、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)又は同等の組織学的染色(上記)で染色されたスライド装着組織切片を使用することを含む、種々の技術のいずれかによって確認され得る。いくつかの実施形態において、評価は、乳房の腫瘍のWHO区分に沿って行うことができる(Lakhani SR. WHO classification of tumours of the breast. Lyon: International Agency for Research on Cancer, 2012, and Tavassoli FA, Devilee P. Pathology and genetics of tumours of the breast and female genital organs. Lyon: IARC Press, 2003)-DCISの定義のセクションを参照のこと。これらの参考文献はサンプル画像を含み、DCISの特徴、浸潤性乳癌(浸潤≦1mmと定義される微小浸潤を含む)、非浸潤性小葉癌(LCIS)、上皮内パジェット病、異型乳管過形成(ADH)、硬化性腺症など他の乳房疾患実体との鑑別診断をレビューしている。これらの文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
いくつかの実施形態において、組織学的特徴がDCISの診断に十分でない場合、診断は、第2の病理学者によって確認され得る。形態学的検討のために、さらなる組織ブロックを使用することができる。
【0181】
[形態学的特徴から浸潤(又は微小浸潤)癌が疑われる症例:]
正常な乳管及び小葉並びに乳管内上皮増殖は、2つの上皮層から構成される。外側の筋上皮層の消失は、乳房の浸潤癌の特徴である。外側の筋上皮層は非浸潤性乳管癌とすべての良性増殖過程で同様に保持されている。従って、筋上皮特異的タンパク質に対する抗体を用いて筋上皮の存在又は消失を特定することは、形態が不明確である状況において、in situ癌と浸潤癌を区別するのに有用であり得る(Kalof AN et al., Kalof AN, Tam D, Beatty B, Cooper K. Immunostaining patterns of myoepithelial cells in breast lesions: a comparison of CD10 and smooth muscle myosin heavy chain. J Clin Pathol 2004; 57, 625-629; Barbareschi M et al., Barbareschi M, Pecciarini L, Cangi MG et al. p63, a p53 homologue, is a selective nuclear marker of myoepithelial cells of the human breast. Am J Surg Pathol; 25, 1054-1060, 2001)。
【0182】
いくつかの実施形態において、微小浸潤を含む、浸潤の明確な形態学的証拠が存在する場合、患者は、予後DCIS試験に適さないと考えられ得る(そして試験されないか、又はアッセイから除外され得る)。いくつかの実施形態において、腫瘍病巣の形態学的検査に際して、微小浸潤の疑問がある場合、筋上皮細胞層の連続性を調べ、(微小)浸潤癌の存在を確認及び/又は除外するために、追加の筋上皮マーカー免疫研究(p63及び/又は平滑筋ミオシン重鎖(SMMHC)免疫染色)を実施することができる。いくつかの実施形態では、必要に応じて、確認のために他のフォロー手順を実行することができる。
【0183】
[形態学的特徴に基づいて小葉起源であると疑われる症例:]
非古典的な形態学的所見の設定においても、乳管及び小葉の腫瘍が混同される可能性のある組織学的状況、特に上皮内癌の状況において、免疫組織化学によるE-カドヘリンの発現喪失が小葉癌の診断を確認できることが実証されている(Acs G et al., Acs G, Lawton TJ, Rebbeck TR, LiVolsi VA, Zhang PJ. Differential expression of E-cadherin in lobular and ductal neoplasms of the breast and its biologic and diagnostic implications. Am J Clin Pathol 2001; 115, 85-98, 2001)。小葉性腫瘍では、E-カドヘリン遺伝子の突然変異により、正常な乳房上皮及び乳管癌に存在する細胞表面接着分子であるE-カドヘリンの発現が失われる。ホモタイプの細胞-細胞結合におけるE-カドヘリンの役割、この細胞表面タンパク質の発現消失は、小葉癌の特徴的な非凝集性増殖パターンの原因となっている。
【0184】
いくつかの実施形態において、乳管内上皮増殖の検査の際に、乳管内腫瘍が本質的に乳管性又は小葉性であるかどうかは不明である場合、E-カドヘリン免疫染色を実施して、乳管又は小葉の分化を確認することができる。いくつかの実施形態では、非浸潤性小葉癌(LCIS)が組織学的に、又は免疫組織化学によるE-カドヘリンの喪失によって確認される場合、患者はさらなる予後試験に適格でないことがあり得る(例えば、試験されないか、又はアッセイから除外され得る)。いくつかの実施形態では、対象が現在LCISを有し、DCISを有していない場合、対象は本方法で治療されない。いくつかの実施形態において、DCIS又は浸潤癌の証拠がない場合、形態学的検討のためにさらなる組織ブロックが要求され得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、サンプル又は対象に以下の1つ以上が当てはまる場合、本方法から除外される:a)DCIS特定なし、b)浸潤性又は微小浸潤性癌腫の特定、c)DCISでなく、LCISと特定される、c)低/中間DCISについての定量的基準が以下を満たされない:1)2を超える膜結合空間の均一な関与の存在及び/又は≦2mmのサイズ。(高悪性度DCISには定量的基準は必要ない)、又は2)関心領域において折り畳まれた組織-十分にスコアリングすることは不可能である、が存在する。
【0186】
[核グレードの決定]
いくつかの実施形態では、DCIS核グレードがヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色されたスライドマウント組織切片又は同等の組織学的染色を使用することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、評価は米国病理学会(College of American Pathologists)「Protocol for Examination from Patients with Ductal Carcinoma in Situ(DCIS)of Breast」(Lester SC, Bose S, Chen YY et alArch Pathol Lab Med 2009; 133, 15-25)に沿って行われる。I(低)、II(中)、及び/又はIII(高)の核グレードは、表12に基づいて記載される:
【表4-12】
【0187】
同じ生検内で様々な悪性度のDCISの混合物を見つけることは珍しくない。いくつかの実施形態では、2つ以上の悪性度のDCISが存在する場合、各悪性度の割合(10進数での割合)が注目される。いくつかの実施形態において、広範な疾患及び高悪性度のDCISを有する対象は、その後の同側乳房事象に対して低リスクであるとは考えられないであろう。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法のいずれかは、対象がDCIS及び/又はDCIS核グレードを有するかどうかを最初に決定することから開始することができる。いくつかの実施形態では、本方法は核グレードを決定することを含まない。
【0188】
[壊死判定]
いくつかの実施形態では、DCISにおける壊死の存在及び程度がヘマトキシリン・エオシン(H&E)又は同等の組織学的染色で染色されたスライド装着組織切片を使用して試験され得る。この評価は、College of American Pathologists “Protocol for the Examination of Specimens from Patients with Ductal Carcinoma in Situ (DCIS) of the Breast” (2012年6月)の参考文献に基づいて行われる。いくつかの実施形態において、壊死は以下のように分類され得る:A)特定されない:壊死の証拠はない、B)焦点状(点状):小さい病巣、低倍率で不明瞭、又は単一細胞壊死、又はC)中間(面皰状/広範囲):関与する管腔の中央部分は、低倍率で容易に検出される広範囲の壊死の領域によって置き換えられる。一般に、ゴースト細胞及び核破片(karyorrhectic debris)は存在する。中心部の壊死は一般的に高悪性度の核(comedo DCIS)と関連しているが、低又は中間の核グレードのDCISでも起こりうる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法のいずれかは壊死を決定することを含むことができる。
【0189】
[IHCマーカー染色/スコアリング]
ホルマリンベースの固定法が使用される場合、それはタンパク質中に分子架橋を作り出し、それによって抗体による認識からエピトープをマスキングし、他の固定/保存法もエピトープをマスキングすることがある。このような実施形態において、エピトープ賦活化(retrieval)は、固定/保存によって導入された変化を少なくとも部分的に逆転させることによってエピトープのマスクを除くことを可能にする前処理工程であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法及び/又はキットのいずれかはエピトープ賦活化のための工程又は成分を含むことができる。
【0190】
エピトープ賦活化は溶液中の化学物質(例えば、緩衝液、タンパク質分解酵素、キレート剤など)、溶液のpH、溶液の温度(例えば、水浴、圧力窯、オートクレーブ、又は電子レンジによって適用されるよう)、及び/又は溶液中の時間などを変化させることによって、異なる様式で行われ得る。以下の実施例に記載される特定の方法に加えて、これらの他の方法の多くは、組織供給源、一次抗体、及び他の因子に応じて、実質的に同等の結果を達成するために使用され得る。
【0191】
本明細書に記載の各タンパク質マーカー(COX-2、Ki67、HER2、p16、PR、SIAH2、及びFOXA1、又は表0.1のそれらの製品)については、複数の抗体が市販及び/又は文献に報告されているが、新しい抗体を作製することもできる。いくつかの実施形態において、抗体はタンパク質マーカー(COX-2、Ki67、HER2、p16、PR、SIAH2、及びFOXA1)上の異なるエピトープに対して惹起され、及び/又はそれを認識し、そして他の場合には、抗体は、同じ(又は類似の)エピトープに対して惹起され、及び/又はそれを認識する。アッセイにおける個々の抗体の有用性は、エピトープに対するその親和性及び特異性、並びにアッセイにおけるエピトープのアクセス性(例えば、IHCアッセイにおけるエピトープ賦活化後)に依存する。いくつかの抗体は2つ以上のタンパク質マーカーを認識するため、典型的には、特異的マーカーアッセイに適していない。あるいは、抗体が低い親和性を有するか、又は特定のサンプルにおいてアクセス不可能なままであるエピトープを認識することもあり、特定のアッセイタイプには適していない。例えば、新鮮なタンパク質溶解物のイムノブロットに使用できる抗体はエピトープ賦活化を通してそのエピトープのマスクを除去することができないために、FFPE組織に対するIHCアッセイには有用でないことがある。
【0192】
メーカーから市販されている一次抗体濃縮物の濃度は、製造方法(例えば、組織培養上清、腹水、又は全抗血清)、及び任意の精製が行われたかどうか(例えば、アフィニティー精製)によって異なるが、一般的には約0.1~10mg/mlの範囲である。切片上でのインキュベーションに最適な最終一次抗体濃度は、特異的抗体の結合特性、インキュベーション時間及び温度、並びに個々の実験室に特有の他の因子などの要因に依存するが、一般的に0.1~10μg/mlの範囲であり、約1:10~1:1,000の範囲の希釈が一般的に使用される。いくつかの実施形態では、インキュベーション時間、温度、最終一次抗体濃度の、ある範囲において、抗体を用いて染色結果を得ることができる。
【0193】
いくつかの実施形態では、一次抗体の検出にNovocastra Bond Refine Polymerシステムを使用することができる。このシステムは、複数の二次抗体(ウサギIgGに対する)及び酵素が結合されるポリマー骨格、並びにウサギ抗マウスIgGリンカー(マウス一次抗体と併用される場合)を含む。酵素はDABとの化学反応を触媒して茶色の沈殿物を形成し、これはマーカー採点の間に可視化される。いくつかの実施形態では、アビジン-ビオチン複合体(ABC)、標識ストレプトアビジン-ビオチン(LSAB)、触媒によるシグナル増幅、及び/又は多くの異なるメーカーから様々な形式で入手可能な他の技術を利用するシステムを含む、いくつかの他の検出方法のうちの1つによって、適切な結果をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、ABC及び他のポリマーベースの技術(例えば、Dako EnVision+)は、(検出のために)同様の結果で利用され得る。
【0194】
いくつかの実施形態において、抗体結合部位に褐色沈殿物を生成する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の酵素反応を通してマーカーの最終可視化のために、色原体DABを使用することができる。いくつかの実施形態において、HRPを色原体である3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)と組み合わせて使用して、実質的に同等の結果を有する赤色着色を生成することができる。他の選択肢としては、酵素アルカリホスファターゼを色原体のニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)との組み合わせや、酵素グルコースオキシダーゼとNBTの組み合わせによっても、青紫色の発色を生じる。結果をもたらしうる種々の酵素/色原体の組み合わせが存在する。
【0195】
以下のセクションは、7つのマーカー(PR、HER2、COX-2、Ki-67、SIAH2、FOXA1、及びp16)を染色及びスコアリングするための種々の代表的な実施形態を概説する。いくつかの実施形態では、同じ機能を果たす他のマーカーを、これらのマーカーのいずれか1つ以上の代わりに用いることができる。いくつかの実施形態では、これらのマーカーのいずれか1つ以上を、添付の表(表1~9、11及び13~15)に示唆される組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態では(例えば、染色及び/又はスコアリングのために)1つ以上の記載されたマーカーを使用することができるが、対応する染色技術及び/又は対応するスコアが代わりに使用される(本明細書に概説されるように)。いくつかの実施形態において、ある者がDCISのリスクが高いかどうか決定するための、HER2及びSIAH2分析を行う方法は、次いで、同じHER2及びSIAH2データを用いて、対象が放射線療法に反応するか、又は代わりにトラスツズマブなどのHER2抗体のような非放射線療法を受けるべきか否かを決定することができる。
【0196】
[PR染色]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供され、記載されるPR変動の程度を観察するのに十分である限り、PR染色のための任意の技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプル中のレベルより上のレベルであり得る。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプル中のレベル、より低いレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を超えるものである。
【0197】
いくつかの実施形態では、IHCによるプロゲステロン受容体(PR;PGR;HGNC:8910)を評価するために、Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 1(10mMクエン酸ナトリウム緩衝液+0.05% Tween 20、pH6.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。次いで、この組織切片を、Novocastra Primary Antibody Diluent中で1:50に希釈したマウスモノクローナル抗体PgR 636(Dako M3569)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Post Primary溶液を15分間インキュベートし(ウサギ抗IgGリンカーを導入するためのウサギ抗マウス抗体)、続いてNovocastra Bond Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。他の実施形態では、他のオプションを使用することができる。
【0198】
いくつかの実施形態において、PRは、多数の異なる製造業者からの多数の一次抗体によって検出され得、そしてほとんどは適切な結果を生じる。いくつかの実施形態において、Novocastra及びLab Visionからマウスモノクローナル1A6及びウサギモノクローナルSP2が使用され得る。他の選択肢には、マウスモノクローナルPgR1294、16、1A6、1E2、Ab-8、Ab-9、hPRa2、hPRa3、及びPR88;ウサギモノクローナルSP2、SP42、Y85、及びEP2;並びにウサギポリクローナルA0097(Dako)、また他には、Dako(Agilent)、Novocastra(Leica)、Ventana Medical Systems(Roche)、Cell Marque(Sigma-Aldrich)、Lab Vision(Thermo Scientific)、BioGenex、Biocare、及びEpitomicsなどのメーカーから提供されているものが含まれる。いくつかの実施形態では、他のオプションを使用することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、高pHエピトープ賦活化(pH9)は、Tris-EDTA緩衝液中でマイクロ波加熱を用いて行うことができる。Dako PgR 636抗体の各ロットの力価は同じ希釈係数での一貫した染色性能を確保するために、メーカーによって参照ロットに調節され得、そして上記の実施例において使用される1:50希釈がメーカーによって提案されている。しかし、同様の性能を持つ、ある範囲の希釈(例えば、1:10~1:500)が使用され得る。他の抗体調製物では別の希釈率が最適であり得、場合によっては、いくつかの調製物は、予め希釈されて提供される(すぐに使用できる)。いくつかの実施形態では、他のオプションを使用することができる。
【0200】
[PRスコアリング]
いくつかの実施形態では、本明細書で提供され、説明されるPR変動の程度を観察するのに十分である限り、PRスコアリングのための任意の技法を使用することができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、PR状態は、核シグナルを有するDCIS腫瘍細胞の割合に基づいて、IHC染色スライドから決定される。いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域は、当該割合に到達するように評価され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのDCISを含む管路又は1mmのDCIS組織を用いてマーカーをスコア付けすることができる。
【0202】
いくつかの実施形態において、核シグナルの強度は、弱い(1+)、中程度(2+)、又は強い(3+)として報告され得る。強度は、同じ染色バッチで行った陽性対照の強度に対する、組織切片全体にわたるシグナルを有するDCIS腫瘍細胞核の平均強度である。いくつかの実施形態では、スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングは、病理学者によってマニュアルで、及び/又はスライドのスキャン画像上でコンピュータを使用して自動的に行われる。
【0203】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるシステム又は実施例によってアッセイされる場合、核シグナルを有する腫瘍細胞が10%未満のDCISは陰性とみなすことができ、一方、核シグナルを有する腫瘍細胞が10%超のDCISは陽性とみなすことができる。いくつかの実施形態では、サンプルが適切に染色された外部対象及び内部対照の存在下でのみ陰性とみなされる。いくつかの実施形態では、陰性である内部対照要素(正常乳管上皮)を欠く任意の標本は(陰性としてではなく)解釈不能として報告し、同じ又は代替の腫瘍ブロックからの別の腫瘍標本を使用して繰り返されるべきである。
【0204】
いくつかの実施形態では、染色及び/又は分析に使用される技法に基づいて、代替閾値を適用することができる(例えば、0%対>0%、<1%対≧1%、≦1%対>1%、<5%対≧5%、≦5%対>5%、<10%対≧10%、<15%対≧15%、≦15%対>15%、<20%対≧20%、≦20%対>20%、<25%対≧25%、≦25%対>25%、<30%対≧30%以上又はその他の閾値)。いくつかの実施形態では代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。そのような状況では、本技法について本明細書で提供される範囲は、2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、(「対応する値」について)他の技法と相関させることができる。Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及び割合と強度のスコアリング要素を組み合わせた他の方法などの代替のスコアリング方法もまた、有効性を示す。
【0205】
いくつかの実施形態では、PRスコアリングは以下の通りであり得る:陰性はIHCのパーセンテージスコアリングで5パーセント未満陽性である;陽性はIHCについてのパーセンテージスコアリングで10パーセント以上陽性である。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間の割合の差が、任意のサンプルが陽性又は陰性のいずれかになるように、圧縮され得る。いくつかの実施形態ではサンプルが範囲内にある場合、陽性と陰性との間の差は、落としたり又は無視され得る。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間の値のいずれかを、陽性と陰性との間の絶対識別ラインとして選択することができる(例えば、5、6、7、8、9、又は10)。
【0206】
いくつかの実施形態において、FOXA1スコアリングは、以下の通りであり得る:陰性はIHCのスコアリングにおいて100免疫スコア未満(強度×パーセンテージ)であり;陽性がIHCのスコアリングにおいて100免疫スコア(強度×パーセンテージ)より大きい。いくつかの実施形態において、陽性と陰性との間のパーセントの差(100)は任意のサンプルが陽性又は陰性のいずれかであるように、圧縮され得る。いくつかの実施形態ではサンプルが範囲内にある場合、陽性と陰性との間の差は落とされるか、又は無視され得る。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間の値のいずれかを、陽性と陰性との間の絶対識別ラインとして選択することができる(例えば、100以下が陰性であるのに対して100以上が陽性である)。
【0207】
いくつかの実施形態では、SIAH2スコアリングが以下の通りであり得る:陰性がIHCのパーセンテージスコアリングで10パーセント未満の陽性であり;陽性がIHCのパーセンテージスコアリングで20パーセントを超える陽性である。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間のパーセントの差が任意のサンプルが陽性又は陰性のいずれかであるように、圧縮され得る。いくつかの実施形態ではサンプルが範囲内にある場合、陽性と陰性との間の差は落とされるか、又は無視され得る。いくつかの実施形態では、陽性と陰性の間の値のいずれかを、陽性と陰性の間の絶対識別ラインとして選択することができる(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)。
【0208】
いくつかの実施形態において、HER2スコアリングは、以下の通りであり得る:陰性はIHCについてのHercepTestスコアリング基準による3+スコア未満である;陽性はIHCについてのHercepTestスコアリング基準による3+スコアである。
【0209】
いくつかの実施形態では、Ki67スコアリングは以下の通りであり得る:陰性はIHCのパーセンテージスコアリングについて10パーセント未満の陽性であり;陽性はIHCのパーセンテージスコアリングについて15パーセントを超える陽性である。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間のパーセントの差は任意のサンプルが陽性又は陰性のいずれかであるように、圧縮され得る。いくつかの実施形態ではサンプルが範囲内にある場合、陽性と陰性との間の差は落とされるか、又は無視され得る。いくつかの実施形態では、陽性と陰性の間の値のいずれかを、陽性と陰性との間の絶対識別ラインとして選択することができる(例えば、10、11、12、13、14、又は15)。
【0210】
いくつかの実施形態において、p16スコアリングは、以下のようにすることができる:陰性は、IHCのパーセンテージスコアリングで20パーセント未満の陽性であり;陽性は、IHCについてのパーセンテージスコアリングで25パーセントを超える陽性である。いくつかの実施形態では、陽性と陰性との間のパーセントの差が任意のサンプルが陽性又は陰性のいずれかであるように、圧縮され得る。いくつかの実施形態ではサンプルが範囲内にある場合、陽性と陰性との間の差は落とされるか、又は無視され得る。いくつかの実施形態では、陽性と陰性の間の値のいずれかを、陽性と陰性の間の絶対識別ラインとして選択することができる(例えば、20、21、22、23、24、又は25)。
【0211】
いくつかの実施形態において、COX-2スコアリングは、以下の通りであり得る:陰性は、IHCのCOX-2についてのAllredスコアリング基準によって6未満であり;陽性は、IHCのCOX-2についてのAllredスコアリング基準によって6より大きい。
【0212】
いくつかの実施形態において、上記の範囲はIHCアッセイ用である。いくつかの実施形態において、上記の範囲はFISHアッセイ用である。
【0213】
いくつかの実施形態では、特定の試験に組み込むために当業者によって決定される共同で使用されるマーカーの組み合わせに応じて、陽性閾値はより高くすることができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、SIAH2、FOXA1、及びCOX-2はさらに、高(非常に高い、高い)及び低(非常に低い、低い)のサブカテゴリに分けることができる。これにより、リスクの組み合わせに関して、より細かいラインを引くことが可能になる。いくつかの実施形態では、これは、非常に高い及び高いが「高」グループ内に、非常に低い及び低いが「低」グループ内とすることにより、分析のために単純化される。
【0215】
[HER2染色]
[HER2 IHC]
いくつかの実施形態では、本明細書で提供され記載されるHER2の変動の程度を観察するのに十分である限り、HER2染色のための任意の技法を使用することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0216】
いくつかの実施形態において、v-erb-b2鳥類赤芽球性白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ2(ERBB2; HGNC:3430; HER2[ヒト上皮成長因子受容体2];NEU)をIHCで評価するために、以下の工程を、Dako Autostainer上の各工程の間でリンスしながら(色原体可視化工程を通して)行うことができる。脱蝋及び再水和した組織切片は、Dako Peroxidase Blocking Reagentで処理し(ペルオキシダーゼ遮断工程)、続いてDako HercepTest Epitope Retrieval Solution(10mMクエン酸緩衝液+界面活性剤、pH6)を用いて、95℃~99℃の水浴中で40分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。次いで、組織切片を、予め希釈したウサギポリクローナル抗HER2抗体(Dako K5207)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてDako HercepTest Visualization Reagentと30分間インキュベートし(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)を10分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いてヘマトキシリンとインキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0217】
いくつかの実施形態では、HER2は、HER2に対する様々な抗体によって検出することができる。いくつかの実施形態において、マウスモノクローナルTAB250及びウサギモノクローナルSP3は、Invitrogen及びLab Visionから使用され得る。他の選択肢としては、マウスモノクローナルCB-11、TA9145、Ab-17、3B5、及びPN2A、並びにウサギモノクローナルSP3、4B5、EP1045Y、及びEP3、並びにDako(Agilent)、Novocastra(Leica)、Ventana Medical Systems(Roche)、Cell Marque(Sigma-Aldrich)、Lab Vision(Thermo Scientific)、BioGenexなどのメーカーの他の多くのものが含まれる。
【0218】
いくつかの実施形態では、熱誘導エピトープ賦活化は、電子レンジ又は水浴によって行うことができる。上記の例において、HER2一次抗体は、予め希釈された(すぐに使用できる)フォーマットで提供されるため、希釈は行われない。しかし、HER2一次抗体の他の調製物は、希釈を必要とする濃縮フォーマットで入手可能である。例えば、200μg/mlのIg濃縮物は、1:400~1:800に希釈して0.25~0.50μg/mlの最終Ig濃度にし得るし、あるいは代替の濃縮物は、1:50~1:500の希釈範囲において同様の結果が達成され、1:100を最適希釈とし得る。
【0219】
[HER2--ISH]
いくつかの実施形態において、HER2を評価するための代替方法は、ISHであり得る。Vysis PathVysion HER-2 DNA Probe Kit(Abbott Molecular)を使用する蛍光ISH(FISH)アッセイは、各工程の間に洗浄を伴う以下の工程を含み得る。脱蝋した組織切片を、0.2N HClで20分間、次いでVysis Pretreatment Solution(1Nイソチオシアン酸ナトリウム)で30~60分間、80℃で処理し(前処理工程)、続いてVysis Protease Solutionで10~60分間、37℃で処理し(プロテアーゼ工程)、続いて10%中性緩衝ホルマリンで処理し(固定工程)、続いて順次濃度増加するアルコール溶液で処理することができる(脱水工程)。
【0220】
いくつかの実施形態において、DNAプローブ混合物は、密封されたカバースリップの下で組織切片に適用される。この混合物は、HER2のLocus Specific Identifier(190-Kb Spectrum Orange directly-labeled, fluorescent DNA probe specific for the HER-2 gene locus at 17q11.2-q12)と、17番染色体用のChromosome Enumeration Probe(CEP17; a 5.4 Kb Spectrum Green directly-labeled, fluorescent DNA probe specific for the alpha satellite DNA sequence at the centromeric region of chromosome 17 at 17p11.1-q11.1)を含み、また、他の染色体に共通する標的遺伝子座に含まれる配列を抑制するための、非標識ブロッキングDNAを含んでいる。次に、スライドをThermobrite装置に入れ、73℃で5分間さらし(DNA変性工程)、続いて37℃で14~24時間インキュベートする(DNAハイブリダイゼーション工程)。
【0221】
いくつかの実施形態では、組織を2×生理食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)+0.3% NP-40の2回の洗浄で処理し、1回目は室温で2~5分間、2回目は71~73℃で2分間行う(ハイブリダイゼーション後洗浄工程)。最後に、核を4,6ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)溶液で青色に染色する(カウンターステイン工程)。
【0222】
いくつかの実施形態では、銀析出に基づく代替ISH法(SISH; Ventana Medical Systems Inform HER2キット)を、製造業者の説明書に従って使用して、実質的に同等の結果を得ることができる。いくつかの実施形態では、他のHER2 ISH法、例えば色素産生ISH(CISH)も使用することができる。
【0223】
[HER2スコアリング--HER2 IHCスコアリング]
いくつかの実施形態では、HER2変動の程度を観察するのに十分である限り、本明細書で提供され記載された、HER2スコアリングのための任意の技法を使用することができる。
【0224】
いくつかの実施形態において、HER2状態は管内腫瘍細胞に対するスコアリングのための改変を伴う、College of American Pathologists-American Society of Clinical Oncology(CAP-ASCO)ガイドライン(Wolff et al.J Clin Oncol 31:3997, 2013)に従って、IHC染色スライドから決定される。0~3+のHER2スコアは以下のように定義される:0は、染色が観察されないか、又は膜の染色が不完全であり、かすかに認識できるか/ほとんど認識できず、腫瘍細胞が≦10%の範囲にあると定義される。1+は、かすかに認識できるか/ほとんど認識できず、腫瘍細胞が>10%の範囲にある不完全な膜染色によって定義される。2+は、不完全及び/又は弱/中程度(均質及び連続集団において観察される)かつ腫瘍細胞の>10%以内である周囲膜染色、又は強くかつ腫瘍細胞の≦10%以内である完全及び周囲膜染色によって定義される。3+は、完全かつ強い周囲膜染色によって定義される(均一かつ連続した集団において観察され、腫瘍細胞の>10%以内で観察され、低倍率の対物レンズを用いて容易に認識される)。
【0225】
いくつかの実施形態では、スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングが病理医によって手動で、及び/又はスライドのスキャンされた画像上でコンピュータを使用して自動的に行われる。いくつかの実施形態では、0、1+、又は2+の結果は陰性とみなされ、3+は陽性とみなされる。いくつかの実施形態において、2+の結果はあいまいとみなされ、HER2遺伝子増幅(増幅された患者は陽性である)の定量を通じて状態を決定するHER2 ISHアッセイをトリガーすることができる。いくつかの実施形態において、HER2 IHCは、HER2 ISHアッセイによって完全に置換され得る。これらの代替アプローチはいずれも、関連する研究で有用性が示されている。
【0226】
[HER2 ISHスコアリング]
いくつかの実施形態において、HER2状態は、FISH染色スライドから、最低20個のDCIS細胞核中の橙色HER2シグナル及び緑色CEP17シグナルを計数し、次いで比を計算することによって決定される。DCISは同数のオレンジ及び緑のシグナルが存在するか、又はオレンジ対緑の比が2.0未満であり、細胞あたりの平均HER2コピー数が4.0未満である場合、HER2非増幅(陰性)とみなされる。DCISは、オレンジ対緑シグナルの比が2.0より大きい場合、HER2増幅(陽性)とみなされる。細胞はまた、オレンジ対緑シグナルの比が2.0未満であり、細胞当たりの平均HER2コピー数が6.0以上である場合、増幅(陽性)とみなされる。オレンジ対緑シグナルの比が2.0未満であり、細胞当たりの平均HER2コピー数が4.0以上6.0未満である場合、さらに20個の細胞をカウントし、40個の細胞すべてについてこの比を再計算し、閾値<2.0(陰性)対≧2.0(陽性)を適用する。
【0227】
[Ki-67染色]
いくつかの実施形態において、Ki-67染色のための任意の技術は本明細書中に提供され、記載されるKi-67変動の程度を観察するのに十分である限り、使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0228】
いくつかの実施形態では、IHCによるKi-67(MKI67; MIB-1; HGNC:7107)レベルを評価するために、Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 2(10mMトリス塩基及び1mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA]緩衝液+0.05% Tween 20、pH 9.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。いくつかの実施形態では、次いで、組織切片を、Novocastra Primary Antibody Diluent中で1:50に希釈したマウスモノクローナル抗体MIB-1(Dako M7240)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Post Primary溶液を15分間インキュベートし(ウサギ抗IgGリンカーを導入するためのウサギ抗マウス抗体)、続いてNovocastra Bond Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0229】
いくつかの実施形態では、Ki-67は、任意のKi-67特異的抗体によって検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、マウスモノクローナルMM1、K-2;7B11、BGX-297、Ki88、Ki-S5、及びDVB-2;ウサギモノクローナルSP6、30-9、EPR3611;並びにDako(Agilent)、Novocastra(Leica)、Ventana Medical Systems(Roche)、Cell Marque(Sigma-Aldrich)、Lab Vision(Thermo Scientific)、BioGenex、及びBiocareのような製造業者からの多くの他のモノクローナルNCL-Ki67pであり得る。
【0230】
いくつかの実施形態では1:50の希釈をDako MIB-1抗体に使用するが、1:40~1:600の範囲の希釈を含む他の希釈、例えば1:75~1:150を使用することができる。同様に、他の抗体メーカーはそれらの抗体調製物について1:100~1:200の範囲の推奨希釈を報告しており、いくつかの調製物は、予め希釈されて提供される(すぐに使用できる)。
【0231】
[Ki-67スコアリング]
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供され記載されるKi-67変動の程度を観察するのに十分である限り、Ki-67スコアリングのための任意の技術が使用され得る。
【0232】
いくつかの実施形態において、Ki-67状態は、核シグナルを有するDCIS腫瘍細胞の割合に基づいて、IHC染色スライドから決定される。いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域を評価して、割合を算出する。いくつかの実施形態において、少なくとも3つのDCIS含有管又は1mmのDCIS組織を用いて、マーカーをスコアリングする。いくつかの実施形態において、シグナルの強度はまた、弱い(1+)、中程度(2+)、又は強い(3+)として報告される。いくつかの実施形態では、強度が組織切片全体にわたるシグナルを有するDCIS腫瘍細胞核の平均強度である。いくつかの実施形態では、スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングが病理学者によって手動で、及び/又はスライドのスキャンされた画像上でコンピュータを使用して自動的に行われる。
【0233】
いくつかの実施形態では、核シグナルを有する腫瘍細胞が10%未満のDCISは陰性とみなされ、一方、核シグナルを有する腫瘍細胞が10%を超えるDCISは陽性とみなされる。サンプルは、適切に染色された陽性対照の存在下でのみ陰性とみなされる。
【0234】
いくつかの実施形態では、代替閾値(例えば、0%対>0%、<1%対≧1%、≦1%対>1%、<5%対≧5%、≦5%対>5%、<10%対≧10%、<15%対≧15%、≦15%対>15%、<20%対≧20%、≦20%対>20%、<25%対≧25%、≦25%対>25%、<30%対≧30%など)を、染色及び/又は分析に使用される技法に基づいて使用することができる。いくつかの実施形態では、代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これにより高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲が得られる。そのような状況では、本技法について本明細書で提供される範囲は、2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、(「対応する値」について)他の技法と相関させることができる。Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージスコアリング要素と強度スコアリング要素とを組み合わせた他のスコアリング方法もまた、有効性を示す。
【0235】
[p16/INK4A染色]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供及び記載されるp16変動の程度を観察するのに十分である限り、p16染色のための任意の技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0236】
いくつかの実施形態では、IHCによるサイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(p16/INK4A; CDKN2A; MTS1; HGNC:1787)のp16アイソフォームを評価するために、Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 2(10mMトリス塩基及び1mM EDTA緩衝液+0.05% Tween 20、pH 9.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。次いで、組織切片を、予め希釈したマウスモノクローナル抗体E6H4(Ventana Medical Systems CINtec p16 Histology Kit)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Post Primary溶液を15分間インキュベートし(ウサギ抗IgGリンカーを導入するためのウサギ抗マウス抗体)、続いてNovocastra Bond Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0237】
いくつかの実施形態では、p16/INK4Aは、一次抗体によって検出することができる。いくつかの実施形態では、マウスモノクローナルDCS-50.1/A7(Neomarkers)を使用することができる。いくつかの実施形態において、マウスモノクローナル6H12、JC8、16PO4;16PO7、及びG175-405、並びにウサギモノクローナルEPR1473、並びに他のものが使用され得る。いくつかの実施形態では、p16/INK4A一次抗体が予め希釈された(すぐに使用できる)形式で提供され、したがって希釈は行われない。しかし、p16/INK4A一次抗体の他の調製物は、濃縮フォーマットで入手可能であり、そして希釈は、特定のプロトコールに依存して、1:75~1:500、又はさらに1:25~1:800の範囲でメーカーによって推奨される。
【0238】
[p16/INK4Aスコアリング]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供され、記載されるp16変動の程度を観察するのに十分である限り、p16スコアリングのための任意の技術が使用され得る。
【0239】
いくつかの実施形態において、p16/INK4A状態はIHC染色スライドから、シグナルの強度によって条件づけられて、核シグナルを有するDCIS腫瘍細胞の割合に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、シグナルの強度が弱い(1+)、中程度(2+)、又は強い(3+)として報告される。いくつかの実施形態では、強度は、同じ染色バッチを用いて行った陽性対照の強度に対する、組織切片全体にわたるシグナルを有するDCIS腫瘍細胞核の平均強度である。いくつかの実施形態において、少なくとも中間(2+)強度の核シグナルを有する細胞は、陽性とみなされる。いくつかの実施形態では、染色がないか又は弱い(1+)細胞が陰性とみなされる。いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域を評価して、割合を算出する。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのDCIS含有管又は1mmのDCIS組織を使用して、マーカーをスコア付けすることができる。いくつかの実施形態では、スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングは、病理学者によって手動で、及び/又はスライドのスキャンされた画像上でコンピュータを使用して自動的に行われる。
【0240】
いくつかの実施形態において、少なくとも中程度の強度の核シグナルを有する腫瘍細胞が25%以下であるDCISは陰性とみなされ、一方、少なくとも中程度の強度の核シグナルを有する腫瘍細胞が25%を超えるDCISは陽性とみなされる。サンプルは、適切に染色された陽性対照の存在下でのみ陰性とみなされる。別の閾値(例えば、<20%対≧20%、≦20%対>20%、<25%対≧25%、<30%対≧30%、≦30%対>30%、<40%対≧40%等)及び他の閾値は、染色及び/又は分析に用いられる技法に基づいて用いることができる。いくつかの実施形態では代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。そのような状況では、本技術について本明細書で提供される範囲は、2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、(「対応する値」について)他の技法と相関させることができる。Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージスコアリング要素と強度スコアリング要素とを組み合わせた他のスコアリング方法もまた、有効性を示す。
【0241】
p16/INK4Aの染色パターンは、核及び細胞質であり得、しばしば不均一な性質である。さらに、p16/INK4A染色は、DCIS腫瘍細胞及び周囲の間質細胞の両方に存在し得る。
【0242】
[COX-2染色]
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるCOX-2変動の程度を観察するのに十分である限り、COX-2染色のための任意の技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0243】
いくつかの実施形態において、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2(PTGS2;シクロオキシゲナーゼ-2[COX-2];HGNC:9605)は、IHCによって評価され得る;Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 1(10mMクエン酸ナトリウム緩衝液+0.05% Tween 20、pH 6.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。いくつかの実施形態では、次いで、組織切片を、Novocastra Primary Antibody Diluent中で1:50に希釈したウサギモノクローナル抗体SP21(Cell Marque 24OR-16)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Bond Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0244】
いくつかの実施形態では、COX-2は、一次抗体によって検出することができる。いくつかの実施形態では、マウスモノクローナルCX-294(Dako)を使用することができる。いくつかの実施形態では、Ventana Medical Systems(Roche)、Cell Marque(Sigma-Aldrich)、Lab Vision(Thermo Scientific)、及びBiocareなどの製造業者からのマウスモノクローナル4H12(Novocastra)及びウサギモノクローナルSP21を使用することができる。
【0245】
いくつかの実施形態では、1:50の希釈をCell Marque SP21抗体に使用することができる。いくつかの実施形態では、1:100~1:500、又は1:50~1:500、1:50~1:200の範囲の希釈を使用することができる。さらに、いくつかの調製物は、予め希釈された(すぐに使用できる)形態で提供される。
【0246】
[COX-2スコアリング]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供され、記載されるCOX-2変動の程度を観察するのに十分である限り、COX-2スコアリングのための任意の技術が使用され得る。
【0247】
いくつかの実施形態において、COX-2状態は、Allredスコアの形で、細胞質シグナルを有するDCIS腫瘍細胞の割合及びシグナルの強度に基づいてIHC染色スライドから決定され得る。いくつかの実施形態では、強度が、無し(0)、弱(1)、中間(2)、又は強(3)として報告され、同じ染色バッチで行った陽性対照の強度に対する組織切片全体にわたる平均シグナル強度を表す。いくつかの実施形態では、パーセンテージが以下のように割合スコアに変換される:0、0%陽性;1、≦1%陽性;2、>1~10%陽性;3、11~33%陽性;4、34~66%陽性;5、67~100%陽性。Allredスコアは、0~8の段階の強度スコアと割合スコアの合計である。
【0248】
いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域が評価される。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのDCIS含有管又は1mmのDCIS組織が、マーカーをスコアリングするために使用される。スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングは、病理学者によって手動で、及び/又はスライドのスキャン画像上でコンピュータを使用して自動的に行うことができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、Allredスコア0~6のDCISは陰性とみなされ、Allredスコア7又は8のDCISは陽性とみなされる。いくつかの実施形態では、サンプルが適切に染色された陽性対照の存在下で陰性とみなされる。いくつかの実施形態では代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。そのような状況では、本技法について本明細書で提供される範囲が2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、(「対応する値」について)他の技法と相関させることができる。いくつかの実施形態では、Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージ及び強度スコアリング要素を組み合わせた他のものなどの代替スコアリング方法もまた、有効性を示す。
【0250】
[FOXA1染色]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供され、記載されるFOXA1変動の程度を観察するのに十分である限り、FOXA1染色のための任意の技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0251】
いくつかの実施形態では、IHCによってフォークヘッドボックスA1(FOXA1; HGNC:5021)を評価するために、Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 2(10mMトリス塩基及び1mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA]緩衝液+0.05% Tween 20、pH 9.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。次いで、組織切片を、Novocastra Primary Antibody Diluent中で1:25に希釈したマウスモノクローナル抗体2F83(Cell Marque 405M-16)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Post Primary溶液を15分間インキュベートし(ウサギ抗マウスIgGを導入するための抗マウスIgG)、続いてNovocastra Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0252】
いくつかの実施形態において、Abcam由来のFOXA1マウスモノクローナル抗体2F83は、有効な結果が得られる1:450(又は例えば、1:2,000)の希釈で使用するか、又は1:25の希釈で使用され得る(メーカー推奨の開始希釈範囲1:25~1:100、初期推定Ig濃度2.5~25.0μg/ml、最終推定最適Ig濃度範囲0.1~1.0μg/mlに基づく)。いくつかの実施形態において、マウスモノクローナル抗体は、2F83、3A8、1B1、2D7、3C1、及び4F6、並びにThermo Scientific、Spring Bioscience、Epitomics、Millipore、及び種々の他の製造業者からのウサギモノクローナルSP88及びEPR10881を含み得る。他の抗体調製物では、様々な希釈を共に使用することができる(例えば、Milliporeは1mg/mlバージョンの2F83の1:500希釈を推奨し、Thermo Scientficは、クローン3A8の1mg/ml調製物の1:20~1:200希釈を推奨する)。そして、いくつかのFOXA1抗体調製物は、予め希釈されて提供される(すぐに使用できる)。
【0253】
[FOXA1スコアリング]
いくつかの実施形態では、本明細書で提供され説明されるFOXA1変動の程度を観察するのに十分である限り、FOXA1スコアリングのための任意の技法を使用することができる。
【0254】
いくつかの実施形態において、FOXA1の状態は、核シグナルを有するDCIS腫瘍細胞の割合及びシグナルの強度に基づいて、免疫スコアの形態で、IHC染色スライドから決定され得る。強度は無し(0)、弱(1)、中間(2)、又は強(3)として報告することができ、同じ染色バッチで行った陽性対照の強度に対する組織切片全体にわたる平均シグナル強度を表すことができる。いくつかの実施形態では、免疫スコアが0~300のスケールでの強度スコアとパーセンテージスコアとの積であり得る。
【0255】
いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域が評価される。いくつかの実施形態において、3つのDCIS含有管又は1mmのDCIS組織が、マーカーをスコア化するために使用される。スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングは、病理学者によって手動で、及び/又はスライドのスキャン画像上でコンピュータを使用して自動的に行うことができる。
【0256】
いくつかの実施形態では、100未満の免疫スコアを有するDCISはFOXA1低値とみなされ、100~250の免疫スコアを有するDCISはFOXA1中程度とみなされ、250を超える免疫スコアを有するDCISはFOXA1高値とみなされる。代替のより低い(例えば、40又は150)及び/又はより高い(例えば、150又は250)閾値、並びに代替のスコアリング方法もまた、有用性を示す。さらに、有用性は予測される治療成績(すなわち、DCIS又は同側乳房における浸潤性事象)に基づいて変化しうる。いくつかの実施形態では、FOXA1が単に「陰性」(100以下)又は陽性(100を超える)のいずれかとして扱われる。
【0257】
いくつかの実施形態では、代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。そのような状況では、本技法について本明細書で提供される範囲が2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、(「対応する値」について)他の技法と相関させることができる。いくつかの実施形態では、Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージ及び強度スコアリング要素を組み合わせた他のものなどの代替スコアリング方法もまた、有効性を示す。
【0258】
[SIAH2染色]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供及び記載されるSIAH2変動の程度を観察するのに十分である限り、SIAH2染色のための任意の技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質レベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、mRNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、DNAレベルをチェックすることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質及びmRNAレベルの両方をチェックすることができる。高いレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルよりも高いレベルであることができる。同様に、低下したレベルは、対照又は標準化されたレベル、例えば、非DCISサンプルにおけるレベルを下回るレベルであり得る。いくつかの実施形態では、「陽性」又は「高い」結果が(スコアリングの文脈において)「陰性」又は「低い」結果を上回るものである。
【0259】
いくつかの実施形態では、IHCによってSIAH2 E3ユビキチンタンパク質リガーゼ2(SIAH2;休止中7個の[ショウジョウバエ]相同体2; HGNC:10858)を評価するために、Leica BOND-MAX自動染色機器を使用して、各工程の間で洗浄しながら以下の工程を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱蝋及び再水和した組織切片を、Novocastra Peroxide Block(3~4%過酸化水素)で処理し(ペルオキシダーゼブロッキング工程)、続いてNovocastra Bond Epitope Retrieval Solution 1(10mMクエン酸ナトリウム緩衝液+0.05% Tween 20、pH6.0溶液ベース)で、95℃~100℃で30分間処理することができる(エピトープ賦活化工程)。いくつかの実施形態では、次いで、組織切片を、Novocastra Primary Antibody Diluent中で1:200に希釈したマウスモノクローナル抗体24E6H3(Santa Cruz Biotechnology sc-81787)と共に室温で30分間インキュベートし(一次抗体工程)、続いてNovocastra Post Primary溶液を15分間インキュベートし(ウサギ抗マウスIgGを導入するための抗マウスIgG)、続いてNovocastra Refine Polymerを15分間インキュベートし(抗ウサギポリHRP-IgG)(二次検出工程)、続いて3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で5分間インキュベートし(色原体可視化工程)、続いて<0.1%ヘマトキシリンを7分間インキュベートする(核カウンターステイン工程)。最後に、マウンティングメディウムを用いてカバースリップを装着する。
【0260】
いくつかの実施形態において、エピトープ賦活化は、関連する研究において、マウスモノクローナル抗体24E6H3及びその親クローン24E6の両方を用いて、98℃の水浴又は蒸気チャンバーのいずれかにおいて、EDTA含有緩衝液中でより高いpH(8.0)で行われ得る。いくつかの実施形態では、Novus Biologicalsからのものを含む代替抗体を使用することができる。これらの抗体の異なる調製物と共に、1:40~1:200の範囲内の希釈を含む、異なる希釈を使用することができる。いくつかの実施形態では、IHC(1:40~1:50の推奨希釈)に有効なマウスモノクローナル35F7I4(Creative Diagnostics)、並びにマウスモノクローナル1F5、2G6、及びSIAH2-369(Abnova、Epigentek、US Biologicals、Sigma-Aldrich、及びCreative Diagnosticsから入手可能)などの他の一次抗体を使用することができる。
【0261】
[SIAH2スコアリング]
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供され、記載されるSIAH2変動の程度を観察するのに十分である限り、SIAH2スコアリングのための任意の技術が使用され得る。
【0262】
いくつかの実施形態において、SIAH2状態は、核シグナルを有するDCIS腫瘍細胞のパーセンテージに基づいて、IHC染色スライドから決定される。いくつかの実施形態において、DCISを含む組織切片の全ての領域を評価して、割合を算出する。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのDCIS含有管又は1mmのDCIS組織が、マーカーをスコアリングするために使用される。いくつかの実施形態において、シグナルの強度は、弱(1+)、中程度(2+)、又は強(3+)として報告され得る。いくつかの実施形態では、強度は、組織切片全体にわたるシグナルを有するDCIS腫瘍細胞核の平均強度である。いくつかの実施形態では、スコアリングされるDCIS領域の選択及び/又はスコアリングは、病理医によって手動で、及び/又はスライドのスキャンされた画像上でコンピュータを使用して自動的に行われる。
【0263】
いくつかの実施形態では、核シグナルを有する腫瘍細胞が20%未満のDCISは陰性とみなされ、一方、核シグナルを有する腫瘍細胞が20%以上のDCISは陽性とみなされる。
【0264】
いくつかの実施形態では、サンプルは、適切に染色された陽性対照の存在下でのみ陰性とみなされる。
【0265】
いくつかの実施形態では代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。このような状況では、2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに同等であると識別することによって、上述の技法について本明細書で提供される範囲を、他の技法(「対応する値」)と相関させることができる。いくつかの実施形態では、Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージ及び強度スコアリング要素を組み合わせた他のものなどの代替スコアリング方法もまた、有効性を示す。いくつかの実施形態では、代替閾値(例えば、≦20%対>20%、<25%対≧25%、≦25%対>25%、<30%対≧30%、≦30%対>30%、<40%対≧40%、≦40%対>40%など)及び他の閾値を使用することができる。いくつかの実施形態では、Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージスコアリング要素と強度スコアリング要素とを組み合わせた他のものなどの代替スコアリング方法を使用することもできる。
【0266】
SIAH2染色及びスコアリングの例を
図3に示す:
図3は、SIAH2 IHCアッセイ(上は、UUH TMA上の陰性;下はBiomax BR8011 TMA上の陽性)を示す。
【0267】
[統計解析]
Kaplan-Meier生存分析を用いて、初回DCIS診断/手術後に最初の事象(DCIS又は浸潤性再発)を経験した患者の割合を推定できる。ハザード比(HR)は、Cox比例ハザード分析を用いて決定することができる。最初の事象(DCIS又は浸潤性)の時点で、患者は、他の事象タイプについて打ち切られ得る。また、術後6ヵ月以内又は術後の最初のマンモグラフィで事象が検出された場合も、再発ではなく持続性疾患とみなすことができるため、患者を打ち切りとすることができる。いくつかの実施形態において、持続性疾患を有する対象は、本明細書中に提供される種々の方法から除外される。
【0268】
[マーカーの評価方法]
上記のアッセイシステム及びスコアリングシステムが提示されているが、いくつかの実施形態では代替技術及び/又はスコアリング方法を検出のために使用することができ、これは高リスク及び/又は低リスクについて、対応するが異なるカットオフ範囲をもたらすことができる。このような状況では、本技法について本明細書で提供される範囲が2つの異なる技法によって同じサンプル(又は同じDCISサンプルからの2つのサンプル)を分析し、それらを互いに一致又は等しいものとして識別することによって、他の技法(COX-2、Ki67、p16、SIAH2、FOXA1、PR、及び/又はHER2のうちの1つ又は複数の「対応する値」について)と相関させることができる。いくつかの実施形態では、Allredスコアリングシステム、免疫スコア、及びパーセンテージ及び強度スコアリング要素を組み合わせた他のものなどの代替スコアリング方法もまた、有効性を示す。いくつかの実施形態では、COX-2、Ki67、p16、SIAH2、FOXA1、PR、及び/又はHER2のうちの1つ以上について、対応する技術及び/又はスコアが存在し得る。いくつかの実施形態では、COX-2、Ki67、p16、SIAH2、FOXA1、PR、及び/又はHER2のうちの1つ以上に対応する技術が存在し得る。いくつかの実施形態では、COX-2、Ki67、p16、SIAH2、FOXA1、PR、及び/又はHER2のうちの1つ以上についての対応するスコアが存在し得る。当業者には理解されるように、これらの対応するスコア及び/又は技法は本明細書で提供される実施形態のいずれかに使用することができ、記載されたマーカーに関する各開示及びすべての開示の代替として明確に企図される。
【0269】
いくつかの実施形態において、タンパク質検出アッセイが使用され得、これには、例えば、免疫組織化学、免疫蛍光、質量分析、又は以下により詳細に議論される他のアッセイが含まれる。いくつかの実施形態では、例えば、ノーザンブロット、遺伝子発現アレイ、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、nCounter、in situ核酸検出などの核酸ハイブリダイゼーションに基づく方法、並びに次世代RNAシーケンシング(RNA-Seq)などを含むmRNA検出アッセイを使用することができる。いくつかの実施形態において、DNAレベルでの変化を検出するための技術が使用され得、これには、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、in situハイブリダイゼーション(ISH)、次世代シーケンシング(NGS)、及び当業者によって容易に理解されるような他のものが含まれる。
【0270】
いくつかの実施形態では対応する値(サンプルを分析するための代替的なスコアリング又は代替的なアッセイを含む)が使用される一方で、相対的な結果(例えば、高対低又は非常に高対中対低)は、分析又はスコアリングシステムのための種々の技術の間で維持される。したがって、1つのシステムにおけるスコア「高」は、大きな複雑性や困難を伴うことなく、別のシステムにおけるスコア「高」と相関する。したがって、相対的に高い 対 低い(例えば)という意味でのレベルが維持される限り、様々な結果を、所望に応じて、1つのシステムから別のシステムに移植することができる。同様に、いくつかの実施形態において、1つのマーカーについてタンパク質レベルを使用することができ、一方、第2のマーカーはDNAを介して分析してもよく、そして例えば、第3のマーカーはmRNAを介して分析してもよい。従って、試験される分子の性質は、必要に応じて、試験内で試験する分子の特性を変更し得る。
【0271】
いくつかの実施形態では、発現レベルが遺伝子から転写されたmRNAのレベルを検出することによって決定される。
【0272】
いくつかの実施形態において、サンプル中のmRNAは、まず、逆転写酵素を用いてcDNAに転写される。
【0273】
いくつかの実施形態において、サンプルは増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)などに基づく方法を使用する)、プローブ増幅(例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)、切断酵素インベーダーなどに基づく方法を使用する)、シグナル増幅(例えば、分岐DNAプローブ[bDNA]、ハイブリッド捕捉などに基づく方法を使用する)、及び当業者によって容易に理解されるような他のものに供される。
【0274】
いくつかの実施形態において、目的のmRNA転写物、又はそれに由来するcDNAに選択的にハイブリダイズすることができる核酸プローブ又はプライマーをハイブリダイズさせ、次いで、検出デバイス又はシステムを用いてハイブリダイゼーションを検出することによって、サンプル中のmRNAが検出される。
【0275】
この文脈において、用語「選択的ハイブリダイゼーション」は、プローブ又はプライマーのハイブリダイゼーションが、同じプローブ又はプライマーの任意の他の核酸へのハイブリダイゼーションよりも高い頻度又は速度で生じるか、又はより高い最大反応速度を有することを手段する。好ましくは、プローブ又はプライマーが使用される反応条件下で検出可能なレベルで別の核酸にハイブリダイズしない。
【0276】
本明細書中に記載される遺伝子の転写物はmRNA又はそれに由来するcDNAを使用して検出されるので、mRNAの変化を検出するアッセイが使用され得る(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR、NASBA、TMA又はリガーゼ連鎖反応)。
【0277】
いくつかの実施形態において、mRNA定量は、アジレントのBioanalyzer(商標)系、AffymetrixのGeneChip(商標)、GeneTitan(商標)又はGeneAtlas(商標)システム、及び当業者に容易に理解されるのであろう他のものを含む、遺伝子発現アレイプラットフォーム上で実行することができる。
【0278】
いくつかの実施形態では、mRNA定量がリアルタイムqPCRによって実施することができる。このような反応は非特異的DNA結合蛍光色素(例えば、SYBR(商標)Green)又は目的の配列に選択的にハイブリダイズする蛍光レポータープローブ(例えば、TaqMan(商標)プローブ)を含む、種々のレポーターを用いて実施され得る。場合によっては、反応が同じサンプルの複数のパーティション上で並行して行われる(デジタルPCR)。リアルタイムqPCRプラットフォームには、ThermoFisher Scientific/Applied Biosystems社のFAST、QuantStudioなどの関連システム、Hologic/Gen-ProbeのDTSシステム、Roche/Idaho Technology社のLightCycler(商標)システム、Qiagen社のRotor-Gene(商標)システム、Bio-Rad社のCFX及び関連システム、並びに当業者に容易に理解されるような他のものが含まれる。
【0279】
いくつかの実施形態では、mRNAの定量は、NanoString社のin vitro nCounter(商標)プラットフォームのような又は対プローブISH(例えば、RNAscope(商標)及びQuanti-Gene RNAview)、シングルタグマルチプローブISH(例えば、Stellaris(商標))、又はロックド核酸(LNA)プローブを含む種々のin situハイブリダイゼーション(ISH)アプローチなど、逆転写又は増幅工程なしで実施することができる。
【0280】
いくつかの実施形態では、mRNA定量が当業者に容易に理解されるように、合成によるシーケンシング(例えば、IlluminaのHiSeq(商標)及びNextSeq(商標)システム)、単一分子リアルタイムシーケンシング(例えば、Pacific BiosciencesのRSシステム)、イオン半導体シーケンシング(例えば、ThermoFisher ScientificのイオンTorrent(商標)システムなど)、ライゲーションによる配列決定(例えば、ThermoFisher ScientificのSOLiD(商標)システム)、パイロシークエンシング(例えば、Roche/454 Life Sciences)、及び他のものを含む、RNA-Seq次世代配列決定技術を用いて実施され得る。
【0281】
RT-PCRの方法としては、例えば、Dieffenbach(ed)及びDveksler(ed)(In: PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratories, NY,1995)が含まれる。基本的に、この方法は、逆転写酵素を用いて細胞からmRNAを逆転写することによって産生されたcDNAを用いてPCR反応を行うことを含む。上記のPCRの方法は、本発明のこの実施形態に必要な変更を加えて適用されるものとする。
【0282】
同様に、cDNAを用いてPCRを行うことができる。反応に使用される1つ以上のプローブ又はプライマーは、目的の転写物に特異的にハイブリダイズする。
【0283】
TMA又は自立配列複製(3SR)の方法は、標的配列を挟む2つ以上のオリゴヌクレオチド、RNAポリメラーゼ、RNase H及び逆転写酵素を使用する。1つのオリゴヌクレオチド(RNAポリメラーゼ結合部位も含む)が標的配列を含むRNA分子にハイブリダイズし、逆転写酵素は、この領域のcDNAコピーを産生する。RNase HはRNA-DNA複合体中のRNAを消化するために使用され、第2のオリゴヌクレオチドはcDNAのコピーを生成するために使用される。次いで、RNAポリメラーゼを使用して、cDNAのRNAコピーを生成し、そしてこのプロセスを繰り返す。
【0284】
NASBAシステムは、3つの酵素(逆転写酵素、RNase H及びRNAポリメラーゼ)を同時に作用させて標的mRNA配列を選択的に増幅する。mRNAテンプレートは、標的配列にハイブリダイズし、その5′末端にRNAポリメラーゼ結合部位を含むオリゴヌクレオチドを使用する逆転写によってcDNAに転写される。鋳型RNAをRNase Hで消化し、二本鎖DNAを合成する。その後、RNAポリメラーゼはcDNAの複数のRNAコピーをつくり、その過程が繰り返される。
【0285】
いくつかの実施形態では、マイクロアレイを使用して、本明細書中に記載される1つ以上の核酸の発現レベルを決定することができる。このような方法は、多数の異なる核酸の検出を可能にし、それによって、多項目検査を提供し、そして本発明の診断アッセイの感度及び/又は精度を改善する。
【0286】
いくつかの実施形態では、発現レベルは、本明細書に記載の遺伝子内の核酸によってコードされるタンパク質のレベルを検出することによって決定される。
【0287】
この点において、本実施形態は、本明細書中に列挙される特定のアミノ酸配列を含むタンパク質の検出に必ずしも限定されない。むしろ、本発明は、バリアント配列(例えば、少なくとも約80%又は90%又は95%又は98%のアミノ酸配列同一性を有する)の検出、又は前記タンパク質の免疫原性断片又はエピトープの検出を包含する。
【0288】
ポリペプチドの量、レベル及び/又は存在は、例えば、免疫組織化学、免疫蛍光、イムノブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、質量分析(例えば、LC MS/MSのようなタンデム質量分析を含む)、バイオセンサー技術、エバネッセント・ファイバー・オプティクス技術又はプロテインチップ技術の群から選択される技術のような、当業者に公知の種々の技術のいずれかを使用して決定され得る。
【0289】
いくつかの実施形態において、タンパク質の量又はレベルを決定するために使用されるアッセイは、半定量アッセイである。いくつかの実施形態において、タンパク質の量又はレベルを決定するために使用されるアッセイは、定量的アッセイである。上記の説明から明らかなように、このようなアッセイは、例えば正常な個体又はマッチした正常な対照からの適切なコントロールの使用を含み得る。
【0290】
いくつかの実施形態において、標準固相ELISA又はFLISAフォーマットは、種々のサンプルからのタンパク質の濃度を決定する際に有用であり得る。
【0291】
1つの形態において、このようなアッセイは、生物学的サンプルを、固体マトリックス(例えば、ポリスチレン又はポリカーボネートマイクロウェル又はディップスティック)、膜、又はガラス支持体(例えば、ガラススライド)上に固定することを包含する。本明細書中に記載されるタンパク質に特異的に結合する抗体は、固定化された生物学的サンプルと直接接触し、前記サンプル中に存在するその標的タンパク質のいずれかと直接結合を形成する。この抗体は一般に、検出可能なレポーター分子、例えば、FLISAの場合には蛍光標識(例えば、FITC又はTexas Red)又は蛍光半導体ナノクリスタル(米国特許第6,306,610号に記載)、又はELISAの場合には酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)又はβ-ガラクトシダーゼ)で標識されるか、あるいは第1の抗体に結合する第2の標識抗体が使用され得る。洗浄して未結合抗体を除去した後、標識は、蛍光標識の場合には直接、又は酵素標識の場合には基質(例えば、過酸化水素、TMB、又はトルイジン、又は5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-β-D-ガラオトピラノシド(x-gal))を添加して検出される。
【0292】
いくつかの実施形態において、ELISA又はFLISAは、例えば、メンブレン、ポリスチレン又はポリカーボネートマイクロウェル、ポリスチレン又はポリカーボネートディップスティック又はガラス支持体などの固体マトリックス上に、上記のタンパク質に特異的に結合する抗体又はリガンドを固定化することを含む。次いで、サンプルを前記抗体と物理的に関連させ、ポリペプチドを結合又は「捕捉」する。次いで、結合したタンパク質を、標識抗体を用いて検出する。例えば、第1(捕捉)抗体とは異なるエピトープに結合する標識抗体を使用して、捕捉されたタンパク質を検出する。あるいは、第2(検出)抗体に結合する第3の標識抗体を使用することもできる。
【0293】
いくつかの実施形態では、例えば、バイオセンサー機器(例えば、BIAcore(商標)、Pharmacia Biosensor、Piscataway、NJ)を用いて体液中のタンパク質の存在又は濃度を検出する。このようなアッセイにおいて、タンパク質に特異的に結合する抗体又はリガンドは、レセプターチップの表面に固定化される。例えば、抗体又はリガンドは、バイオセンサーデバイスのフローセル内の金フィルムに付着したデキストラン繊維に共有結合する。被験サンプルはこのセルに通される。体液サンプル中に存在する任意の抗原は、固定化された抗体又はリガンドに結合し、金フィルム上の媒体の屈折率の変化を引き起こし、これは、金フィルムの表面プラズモン共鳴の変化として検出される。
【0294】
いくつかの実施形態において、タンパク質若しくはその断片又はエピトープの存在又はレベルは、タンパク質及び/又は抗体チップを使用して検出される。このようなチップを製造するために、目的の抗原に結合する抗体又はリガンドを、固相支持体(例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、酸化ケイ素、金又は窒化ケイ素)に結合させる。この固定化は直接的なもの(例えば、共有結合(例えば、シッフ塩基形成、ジスルフィド結合、又はアミド若しくは尿素結合形成など))であるか、又は間接的なものである。
【0295】
タンパク質を固体支持体に結合させるためには、例えば、Leeら、Proteomics, 3: 2289-2304, 2003に記載されているアルデヒド含有シラン試薬又はカリックスクラウン誘導体を用いて、固相支持体を処理して、表面上に化学的に反応性の基を作り出すことがしばしば有用である。ストレプトアビジンチップはまた、ビオチンと結合したタンパク質及び/又はペプチド及び/又は核酸及び/又は細胞を捕捉するために有用である(例えば、Pavlickova et al, Biotechniques, 34: 124-130, 2003に記載されるように)。あるいは、Arenkovらに記載されているように、微細加工ポリアクリルアミドゲルパッド上にペプチドを捕捉し、微小電気泳動を用いてゲル内で加速する(Anal. Biochem. 278:123-131, 2000).
【0296】
フロースルーイムノアッセイ(PCT/AU2002/01684)、ラテラルフローイムノアッセイ(US20040228761、US20040248322又はUS20040265926)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)(米国特許第4,593,089号、第4,492,762号、第4,668,640号、及び第4,751,190号)、均質微粒子イムノアッセイ(「HMI」)(例えば、米国特許第5,571,728号、第4,847,209号、第6,514,770号、及び第6,248,597号)、又は化学発光微粒子イムノアッセイ(「CMIA」)などの他のアッセイ形式も企図される。この段落に開示された全ての特許出願及び特許の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、mRNAは、HER2についてアッセイするために使用され得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、SIAH2のアッセイには使用されない。
【0297】
いくつかの実施形態において、DCISについての「高いリスク」は、Gorringe及びFox, Ductal Carcinoma in Situ Biology, Biomarkers, and Diagnosis, Frontiers in Oncology, Vol.71-74(2017年10月)に詳述されるものとして定義される。その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、Gorringe及びFoxに記載されている条件、マーカーなどのうちの任意の1つ又は複数を使用して、採用されている高いリスクの態様を定義し、最初に対象を高リスクグループに含まれる者として識別する際に使用される。それらの中から、本明細書で記載されている他の試験、分析、及び/又は治療選択肢に進むことができる。高リスク態様を定義することができる。いくつかの実施形態において、DCISの「高リスク」はDCISionRT分析下での高リスクとして定義される。いくつかの実施形態において、DCISionRT分析はBremerら、「A Biologic Signature for Breast Ductal Carcinoma in situ to Predict Radiation Therapy benefit and Assess Recurrence Risk」(米国癌学会、Clinical Cancer Research, doi: 10.1158/1078-0432.CCR-18-0842, July 27, 2018)に記載されている。いくつかの実施形態において、(DCISを有する対象におけるDCIS再発又は浸潤性乳癌についての)高リスクは、米国特許公開第2017/0350895号公報における組成物又は技術のいずれか1つ以上によって決定される。その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
[試験結果による治療]
その後の浸潤性同側乳房事象のリスクがある対象については、少なくともBCS+放射線療法(RT)で治療し、少なくともホルモン療法(タモキシフェン又はアロマ―ぜ阻害剤など)、及び/又はHER2療法(トラスツズマブなど)のさらなる補助療法を実施してもよい。どのオプションを選択するかは、本開示に基づいて、対象が放射線療法に応答するか否かに依存する(例えば、k-rasメンバーの上昇及び/又はHER2+及びSIAH+)。いくつかの実施形態において、対象が浸潤性同側乳房事象及びDCIS同側乳房事象の両方の可能性が高い場合、対象は乳房切除術で治療することができ、対象が放射線療法に応答しないと思われる場合(例えば、k-ras経路及び/又はHER2+及びSIAH+の上昇)、少なくともホルモン療法及び/又はHER2療法のさらなる補助療法を受けることができる。
【0299】
いくつかの実施形態では、治療又は解釈するリスクプロファイルを決定するために標準的な臨床的及び病理学的因子に頼るのではなく、バイオマーカーのシグネチャを使用して治療の実施を指示することができる。この機能により、リスクプロファイルを解釈した後に治療方法を決定する必要がなく、優れた治療アプローチを行うことができる。すなわち、現在のDCIS標準治療(補助放射線療法を伴う乳房温存手術(BCS))と比較して、表13~15に詳述され、記載され、例として本明細書に含まれる生物学的プロファイルに基づいて、患者の治療を推奨するシグネチャに従って、より適切な治療を患者に施すことができる。いくつかの実施形態では、対象は、同側乳房事象の早期検出のために、BCS又は頻繁な乳房イメージング(注意深い経過観察)で処置され、その後の同側乳房事象の可能性を低減する。いくつかの実施形態では、誘導治療が少なくともBCS+放射線療法であり、浸潤性同側乳房事象の可能性を低減するために、少なくともホルモン療法(例えば、タモキシフェン又はアロマターゼ阻害剤)及び/又はHER2療法(例えば、トラスツズマブ)のさらなる補助療法を含んでもよい。いくつかの実施形態では、対象は、SIAH+かつHER2+であり、かつ/又は上昇したk-ras経路を有する場合、放射線療法は使用されず、代わりにHER2療法を使用することができる。いくつかの実施形態において、対象は、乳房切除術で治療することができ、対象/患者が浸潤性同側乳房事象及び/又はDCIS同側乳房事象を有する可能性を低下させるために、少なくともホルモン療法及び/又はHER2療法のさらなる補助療法を受けることができる(特に対象が放射線療法に不応性の場合)。
【表5-13】
【表6-14】
【0300】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示及び記載されるマーカーシグネチャを使用して、総再発又は進行リスク、及び/又は対象が放射線療法に応答する又は応答しない可能性を包括的に決定し、それにより、適切な治療を決定することができる。(a)表13に挙げたマーカーは浸潤性乳癌のリスクを評価するために用いられ、(b)表14に挙げたマーカーはDCIS事象のリスクを評価するために用いられる。組み合わせて、浸潤性事象のリスク及びDCIS事象のリスクを含む総リスクを決定し、より適切な治療を推奨するために使用することができる。例えば、患者が表13に記載の浸潤性事象については低リスクであるが、表14に記載のDCIS事象については高リスクであることが見出される場合、患者は再発の総リスクが高いことになる。本明細書中に開示及び記載されるように、種々の方法及び組成物について(a)再発性乳房事象、(b)浸潤性又は転移性癌への進行、又は(c)現在DCISを有する対象/患者がさらなるDCIS/浸潤性乳癌を経験しないか、DCISを経験するか、及び/又は浸潤性乳癌を経験するかどうかの可能性を判定することができ、その結果、より適切な様式でDCISと診断された患者を処置することができる。表15についても、組み合わせの選択肢として、同様の適用がされ得る。次いで、例えば、サンプルのk-ras経路レベル及び/又はHER2及びSIAH2状態に基づいて、対象が放射線療法に応答するかどうかをさらに決定し、それによって対象が放射線療法又はトラスツズマブなどのHER2抗体などの非放射線療法を受けるべきかどうかを決定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、リスクレベルを決定するための任意の選択肢をサンプルのk-ras経路レベル及び/又はHER2及びSIAH2状態を決定するためのさらなる選択肢(適切な場合)と組み合わせて、対象が放射線療法に応答するかどうかを決定し、それによって対象が放射線療法又はトラスツズマブなどのHER2抗体などの非放射線療法(本明細書で詳述される)を受けるべきかどうかを決定することができる。
【0301】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示及び記載されるマーカーシグネチャを使用して、浸潤性事象及び/又はDCIS事象を含む、全再発又は進行のリスクを適切に低減する様式で、患者を包括的に処置することができる。例えば、(a)表13のマーカーシグネチャは、浸潤性事象のリスクを低減する処置を決定するために使用でき、そして(b)表14のマーカーシグネチャは、DCIS事象のリスクを低減する処置を決定するために使用でき、及び/又は表13及び表14に従って総リスクを低減する処置を決定することができる。表15においても、組み合わせの選択肢として、同様に適用され得る。次いで、浸潤性事象のリスクが上昇した対象は、本明細書中に概説されるように、放射線療法又は非放射線療法のいずれかで治療され得る。
【0302】
以下は表13~15に記載されるように、患者の個々のリスクプロファイルに基づく患者の治療選択肢の例の非網羅的なリストである。
【実施例1】
【0303】
DCISを有する対象者からのDCISサンプルを、SIAH2及びHER2、ならびにPR及びFOXA1の少なくとも1つについて分析するか、又は(代替として)FOXA1及びPRについて分析する。結果を表9及び/又は11のマトリックスと比較して、対象が浸潤性乳癌、DCIS再発のリスクが高いかどうか、又はいずれも高まっていないかどうかを決定する。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりにトラスツズマブの投与を受ける。
【実施例2】
【0304】
対象からのDCISサンプルを、少なくともPR、HER2及びSIAH2のレベルについて分析するか、又は(代替として)少なくともFOXA1についてサンプルを分析する。予後は、少なくともPR、HER2及びSIAH2に基づいて、又は少なくともPR及びFOXA1に基づいて提供される。結果の性質に依存して、これは、サンプルを提供した対象が浸潤性乳癌のリスクが高い又は上昇していることを示す(例えば、表9及び/又は11を参照のこと)。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例3】
【0305】
対象からのDCISサンプルを、少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルについて分析する。浸潤性乳癌のリスクが高い対象には、少なくともSIAH2及びFOXA1のレベルに基づいて、予後が提供される。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例4】
【0306】
対象からのDCISサンプルを、A)PR、HER2、及びSIAH2、又は(代わりに)b)PR及びFOXA1について分析する。a)PR-、HER2-かつSIAH2-、b)PR+、FOXA1+、又はc)PR+、FOXA1-かつKi67+、のうちの少なくとも1つを有する場合に、浸潤性乳癌事象のリスクが高いとして、対象に対して予後を提供する。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例5】
【0307】
DCISサンプルを、a)SIAH2及びFOXA1、b)SIAH2並びにi)PR及びii)HER2のうちの少なくとも1つ、c)SIAH2及び閉経後状態;又は(代替として)d)PR及びFOXA1、のうちの少なくとも1つについて分析する。a)SIAH2+かつFOXA1+、b)SIAH2+かつHER2+又はPR-;SIAH2+及び閉経後;又はPR+かつFOXA1-;のうち少なくとも1つ、がDCISサンプルに存在する場合は対象のDCIS事象のリスクが上昇しているとして予後が提供される。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例6】
【0308】
DCISサンプルを、a)PR-、HER2-、かつSIAH2-、b)PR+、FOXA1+、又は、c)PR+、FOXA1-かつKi67+、のうちの少なくとも1つについて分析する。分析の結果、浸潤性乳癌のリスクが高いことが示される場合(表9及び/又は11を参照)、対象はDCISに対する標準療法よりも積極的な療法を施される。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例7】
【0309】
DCISサンプルを、a)SIAH2+かつFOXA1+、b)SIAH2+かつHER2+又はPR-、c)SIAH2+かつ閉経後状態、又は(代替として)d)PR+かつFOXA1-の少なくとも1つについて分析する。分析の結果、浸潤性乳癌の可能性が高いことが示される場合、1回のDCIS事象に対して標準療法よりも積極的な療法を対象に施す。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例8】
【0310】
対象は資料を提供し、表13~15のいずれか1つに概説される組み合わせの少なくとも1つについて分析されて、対象についてのリスクレベルが提供される。次いで、表13~15の適切な行に概説されるように、対象について示されるリスクレベルに基づいて、対応する療法が施される。対象が浸潤性乳癌のリスクが高い場合、SIAH2及びHER2レベルを検討する。HER2+かつSIAH2+の対象は、放射線療法を受けず、代わりに抗HER2抗体を受けることになる。
【実施例9】
【0311】
図1に示すように、浸潤性乳癌のリスクが高いDCISを有する対象の大多数は、放射線療法から有意な利益を受ける。しかしながら、
図2に示すように、放射線療法に応答しないこれらの人々の、応答しないサブグループが存在する。これらの個体はHER2+かつSIAH+である。