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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20250110BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C01B11/02 F
B65D81/32 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021543726
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032401
(87)【国際公開番号】W WO2021044942
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019159367
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平塚 直史
(72)【発明者】
【氏名】奥山 麻依子
(72)【発明者】
【氏名】中島 正裕
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-230956(JP,A)
【文献】特開2009-234887(JP,A)
【文献】特開2019-048648(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128022(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0078837(KR,A)
【文献】特開平11-227796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/02
A61L 9/012
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の第一収容容器と、
前記第二成分を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器と、
前記第一収容容器および前記第二収容容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた外側容器と、を備え
前記第一収容容器および前記第二収容容器を近接配置して前記外側容器に収容してある二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、
外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、前記第二成分の水溶液を密封した易破壊性の第一収容容器と、
前記亜塩素酸塩を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器と、
前記第一収容容器および前記第二収容容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた外側容器と、を備え
前記第一収容容器および前記第二収容容器を近接配置して前記外側容器に収容してある二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
前記第一収容容器および前記第二収容容器を重ねて前記外側容器に収容してある請求項1または2に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
前記第一収容容器は、少なくとも、ポリエステル系樹脂を含有した易剥離層と、接着層と、ポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有するバリア層と、をこの順に積層する複層フィルムで構成してある請求項1~3の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項5】
前記易剥離層が層間剥離型のフィルムである請求項4に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項6】
前記通気部が、合成樹脂材を不織布に加工して構成してある請求項1~5の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項7】
前記固体組成物が粉体である請求項1~6の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項8】
前記外側容器を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成してある請求項1~7の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項9】
前記第二成分が酸性物質である請求項1~8の何れか一項に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項10】
前記酸性物質がリン酸塩であり、前記亜塩素酸塩が亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムである請求項9に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項11】
前記亜塩素酸塩の濃度が0.1~30重量%である請求項9または10に記載の二酸化塩素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸塩の溶液と酸性物質を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる器具や装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-145654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二酸化塩素発生装置は、持ち運ぶことを念頭に開発されたものではなく、デスクや床の上に載置するタイプのものであったり、あるいは大がかりなものが多かった。また、単に小型化して持ち運び(携帯)できるようにしても、装置内部からの液ダレの虞があるなどの問題があった。液ダレは容器の密閉性を確保することにより達成されるものの、容器の密閉性を確保すればその反面、二酸化塩素ガスの放出に滞りが生じるといった新たな問題が発生した。
【0005】
また、例えば人がいる環境下で、部屋・室内またはその他の同様の空間を二酸化塩素ガスで除菌したい場合、ある程度低濃度の二酸化塩素ガスを長期間、安定に発生させる必要がある。低濃度の二酸化塩素ガスを継続して発生させるには、例えば使用する亜塩素酸塩や酸性物質の濃度を下げることが考えられる。
【0006】
容器内で二酸化塩素ガスを発生させる場合、二酸化塩素ガスの発生量は気液界面の面積等に依存するため、容器の形状のデザインが制限される場合がある。また、量産性の観点から、材質を合成樹脂とした容器とする場合がある。合成樹脂製容器を用いて二酸化塩素ガスを発生させた場合、発生した二酸化塩素ガスの一部が容器に吸着する虞がある。発生した二酸化塩素ガスが低濃度である場合は、このような容器への吸着の影響は無視できない。そのため、容器の形状や材質に依存せず、亜塩素酸塩および酸性物質を効果的に反応させて効率よく二酸化塩素ガスを発生させることが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を小型化し、二酸化塩素ガスの発生源を安全に持ち運び(携帯)できるようにし、二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる二酸化塩素発生装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る二酸化塩素発生装置は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置であって、その第一特徴構成は、外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、亜塩素酸塩水溶液を密封した易破壊性の第一収容容器と、前記第二成分を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器と、前記第一収容容器および前記第二収容容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた外側容器と、を備え、前記第一収容容器および前記第二収容容器を近接配置して前記外側容器に収容した点にある。
【0009】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置を、第一収容容器および第二収容容器を収容した外側容器に封入することで構成できるため、装置を小型化して携帯性および量産性に優れたものとすることができる。
【0010】
また、本構成によれば、外側容器において、第一収容容器に亜塩素酸塩水溶液を密封し、第二収容容器に第二成分を収容してあるため、亜塩素酸塩水溶液および第二成分を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器に押圧するなどの外力を加えて変形させて外側容器に付与された外力が第一収容容器に伝わることにより、内部に収納した易破壊性の第一収容容器を容易に破壊することができる。このとき、第一収容容器から亜塩素酸塩水溶液を外側容器の内部に放出することができる。放出された亜塩素酸塩水溶液は第二収容容器に接触し、水溶性の第二収容容器は、少なくともその一部が溶解或いは分散する。これにより、亜塩素酸塩水溶液および第二収容容器に収容してあった第二成分が接触して反応することにより二酸化塩素ガスが発生する。外側容器の内部で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部から外側容器の外部に放出することができる。
【0011】
本構成では、第二成分を第二収容容器に収容して外側容器の内部に局在した状態とし、第二収容容器の少なくともその一部が溶解或いは分散することで第二成分を亜塩素酸塩水溶液と接触させることができる。そのため、分散した状態で存在する第二成分を亜塩素酸塩水溶液と接触させる場合に比べて、亜塩素酸塩水溶液および第二成分を過不足なく反応させ易くすることができる。従って、本発明の二酸化塩素発生装置では、二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる。
本構成は、第一収容容器および第二収容容器を近接配置して外側容器に収容してある。そのため、第一収容容器から放出された水を直ちに第二収容容器に接触させることができ、第二収容容器の少なくとも一部を溶解或いは分散させて、亜塩素酸塩と第二成分とを迅速に接触させることができる。
【0012】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第二特徴構成は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置において、外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、前記第二成分の水溶液を密封した易破壊性の第一収容容器と、前記亜塩素酸塩を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器と、前記第一収容容器および前記第二収容容器を収容し、通気性を有する通気部を設けた外側容器と、を備え、前記第一収容容器および前記第二収容容器を近接配置して前記外側容器に収容した点にある。
【0013】
本構成によれば、二酸化塩素発生装置を、第一収容容器および第二収容容器を収容した外側容器に封入することで構成できるため、装置を小型化して携帯性および量産性に優れたものとすることができる。
【0014】
本構成によれば、外側容器において、第一収容容器に第二成分の水溶液を密封し、第二収容容器に亜塩素酸塩を収容してあるため、亜塩素酸塩および第二成分の水溶液を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器に押圧するなどの外力を加えて変形させて外側容器に付与された外力が第一収容容器に伝わることにより、内部に収納した易破壊性の第一収容容器を容易に破壊することができる。このとき、第一収容容器から第二成分の水溶液を外側容器の内部に放出することができる。放出された第二成分の水溶液は第二収容容器に接触し、水溶性の第二収容容器は、少なくともその一部が溶解或いは分散する。これにより、第二成分(酸性物質)の水溶液および第二収容容器に収容してあった亜塩素酸塩が接触して反応することにより二酸化塩素ガスが発生する。外側容器の内部で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部から外側容器の外部に放出することができる。
【0015】
本構成では、亜塩素酸塩を第二収容容器に収容して外側容器の内部に局在した状態とし、第二収容容器の少なくともその一部が溶解或いは分散することで亜塩素酸塩を第二成分の水溶液と接触させることができる。そのため、分散した状態で存在する亜塩素酸塩を第二成分の水溶液と接触させる場合に比べて、亜塩素酸塩および第二成分の水溶液を過不足なく反応させ易くすることができる。従って、本発明の二酸化塩素発生装置では、二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる。
本構成は、第一収容容器および第二収容容器を近接配置して外側容器に収容してある。そのため、第一収容容器から放出された水を直ちに第二収容容器に接触させることができ、第二収容容器の少なくとも一部を溶解或いは分散させて、亜塩素酸塩と第二成分とを迅速に接触させることができる。

【0016】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第三特徴構成は、前記第一収容容器および前記第二収容容器を重ねて前記外側容器に収容した点にある。
【0017】
本構成によれば、第一収容容器から放出された水(水溶液)を直ちに第二収容容器に接触させることができる。
【0018】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第四特徴構成は、前記第一収容容器は、少なくとも、ポリエステル系樹脂を含有した易剥離層と、接着層と、ポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有するバリア層と、をこの順に積層する複層フィルムで構成した点にある。
【0019】
本構成によれば、第一収容容器を構成する複層フィルムが易剥離層を備えることにより、第一収容容器の破壊を剥離によって容易に行うことができる。また、第一収容容器を構成する複層フィルムがバリア層を備えることにより、第一収容容器の内部に水(水溶液)を収容した状態で長期保管した場合であっても、収容された水が水蒸気となって蒸発するなどして外部に散逸するのを防止できるため、長期保管時の安定性が向上する。さらに、易剥離層およびバリア層は、ポリエステル系樹脂を含有するため耐薬品性に優れているため、長期保管時の安定性が向上する。
【0020】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第五特徴構成は、前記易剥離層を層間剥離型のフィルムとした点にある。
【0021】
本構成によれば、易剥離層として層間剥離型のフィルムを使用することで、第一収容容器(易剥離層)の破壊を層間剥離によって容易に行うことができる。層間剥離型のフィルムで構成された易剥離層は、所定の力を加えない限り層間剥離は起こり難く、開封時に所望の層を剥離させるための所定の力以上の力が及ぶことにより、所望の層を剥離することができる。そのため、第一収容容器は、保管時には水(水溶液)を確実に密封し、開封時は容易かつ綺麗に開封することができる。
【0022】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第六特徴構成は、前記通気部が、合成樹脂材を不織布に加工して構成した点にある。
【0023】
本構成によれば、通気部を気体透過性および液体不透過性とすることができる。
【0024】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第七特徴構成は、前記固体組成物を粉体とした点にある。
【0025】
本構成によれば、固体組成物を粉体とすることにより、亜塩素酸塩と第二成分との反応が効率よく行われ、反応の理論値通りの二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0026】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第八特徴構成は、前記外側容器を上面視で矩形状に構成し、前記通気部を面状に構成した点にある。
【0027】
本構成によれば、通気部を外側容器の裏表面の少なくとも片面側に形成することができる。これにより、外側容器の内部で発生した二酸化塩素ガスを、外側容器の少なくとも片面側の全面から外側容器の外部に放出することができる。
【0028】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第九特徴構成は、前記第二成分を酸性物質とした点にある。
【0029】
本構成によれば、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分を酸性物質とすることで、亜塩素酸塩と酸性物質とを反応させて容易に二酸化塩素ガスを発生させることができる。
【0030】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第十特徴構成は、前記酸性物質をリン酸塩とし、前記亜塩素酸塩を亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムとした点にある。
【0031】
本構成によれば、酸性物質としてのリン酸塩は、保存安定性に優れ、腐食性ガスを発生せず、取り扱いに優れる。また、亜塩素酸塩としての亜塩素酸ナトリウムまたは亜塩素酸カリウムは、入手が容易であるため、本発明を容易に実施できる。
【0032】
本発明に係る二酸化塩素発生装置の第十一特徴構成は、前記亜塩素酸塩の濃度を0.1~30重量%とした点にある。
【0033】
本構成によれば、亜塩素酸塩の濃度が0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素ガスの発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。よって、安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、0.1~30重量%とするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態の二酸化塩素発生装置の概要を示す図である。
図2】実施形態の二酸化塩素発生装置の概要を示す断面図である。
図3】実施形態の二酸化塩素発生装置の概要を示す図である。
図4】第一収容容器を構成する複層フィルムの概要(断面)を示す図である。
図5】二酸化塩素発生装置(第一収容容器)の長期保管時の安定性について調べた結果を示した写真図である。
図6】比較例の第一収容容器の長期保管時の安定性について調べた結果を示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の二酸化塩素発生装置は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる。
【0036】
図1~3に示したように、本発明の二酸化塩素発生装置Xは、外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、亜塩素酸塩水溶液1を密封した易破壊性の第一収容容器10と、第二成分2を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器20と、第一収容容器10および第二収容容器20を収容し、通気性を有する通気部31を設けた外側容器30と、を備える。
【0037】
第二成分2は、亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスが発生する物質であればよく、例えば酸性物質、或いは、酸性物質を含有することなく単体で亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を発生する物質とすることができる。本実施形態では、第二成分2が酸性物質である場合について説明する。当該酸性物質は水に溶解することにより酸性を示す酸性物質とするのがよい。
【0038】
(第一収容容器)
第一収容容器10は、亜塩素酸塩水溶液1を密封可能な易破壊性の容器である。第一収容容器10の内部には、亜塩素酸塩水溶液1以外の他の内容物を収容してもよい。本明細書における「易破壊性」とは、外側から力を及ぼして容器を変形させる、或いは、曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより容易に亀裂が入る、割れる、あるいは破れるなどして容器を破壊できる性質をいうが、搬送中や保存時における揺れや軽い衝撃によって破損するものであってはならない。易破壊性の第一収容容器10としては、例えば樹脂製のフィルムを使用した袋や、ガラスアンプルや厚みが比較的薄いプラスチック容器が挙げられる。易破壊性の第一収容容器10としてプラスチック容器を使用する場合、当該容器に予め脆弱部を人為的に設けておき、外側から力を及ぼして曲げる(あるいは曲げようとする)ことにより、その脆弱部に亀裂が入ったり、割れたり(破損したり)するように構成することもできる。
【0039】
第一収容容器10の形状は、袋状・管状(試験管状)・スティック状・箱状などが例示されるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、第一収容容器10の形状を袋状とし、樹脂製の複層フィルム10Aで袋を構成した場合について説明する。
【0040】
当該複層フィルム10Aは、少なくとも、ポリエステル系樹脂を含有した易剥離層11と、接着層12と、ポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有するバリア層13と、をこの順に積層して構成してある(図4)。
【0041】
易剥離層11は、例えば多層に構成したフィルムにおいて、何れかの層を剥離層として他の層から容易に剥離できる(層間の接着力を弱く設定する)態様とすればよい。本明細書における「易剥離層」とは、外側から付与された所定の力が及ぶことにより容易に所望の層が剥離する性質をいうが、搬送中や保存時における揺れや軽い衝撃によって剥離するものであってはならない。
【0042】
このような易剥離層11として、ポリエステル系樹脂を含有した公知の層間剥離型のフィルムを使用することができる。当該層間剥離型のフィルムとしては、例えば、イージーオープンフィルム(三井化学社製、厚さ30μm)、DIFAREN(DIC社製、厚さ30μm)、イージーピール(オカモト社製、厚さ30μm)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本構成のように第一収容容器10を構成する複層フィルムが易剥離層11を備えることにより、第一収容容器10の破壊を剥離によって容易に行うことができる。また、易剥離層11として層間剥離型のフィルムを使用することで、第一収容容器10(易剥離層11)の破壊を層間剥離によって容易に行うことができる。層間剥離型のフィルムで構成された易剥離層11は、所定の力を加えない限り層間剥離は起こり難く、開封時に所望の層を剥離させるための所定の力以上の力が及ぶことにより、所望の層を剥離することができる。そのため、第一収容容器10は、保管時には水溶液(亜塩素酸塩水溶液1)を確実に密封し、開封時は容易かつ綺麗に開封することができる。また、当該易剥離層11は、ポリエステル系樹脂を含有するため、耐薬品性に優れている。
【0044】
接着層(第一接着層)12は、易剥離層11およびバリア層13を接着できる態様であれば、公知の熱圧着シートや接着剤などを使用することができる。本実施形態では、第一接着層12として、公知の低密度ポリエチレン(LDPE、厚さ20μm)シートを使用し、熱圧着して易剥離層11およびバリア層13を接着した態様について説明する。
【0045】
バリア層13は、ポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有し、水蒸気バリア性を有する態様とすればよい。本明細書における「水蒸気バリア性」とは、第一収容容器10に収容された水(水溶液)が、所定の条件下において水蒸気となって蒸発するなどして外部に散逸するのを長期に亘って防止できる性質をいう。所定の条件とは、例えば常温~40℃程度、常圧の条件であり、この条件で例えば半年以上に亘って第一収容容器10に収容された水(亜塩素酸塩水溶液1)が外部に散逸するのを防止できればよい。
【0046】
このようなバリア層13として、ポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有する公知のバリアフィルムを使用することができる。当該基材は例えばポリエチレンテレフタラート(PET)膜を使用し、蒸着部は例えばシリカ蒸着やアルミナ蒸着とすればよいが、これらに限定されるものではない。当該バリアフィルムとしては、例えば、シリカ蒸着透明PETフィルムであるテックバリア(三菱ケミカル社製、厚さ12μm)、アルミナ蒸着透明PETフィルムであるバリアロックス(東レフィルム加工社製、厚さ12μm)、アルミナ蒸着透明PETフィルムであるIB FILM(大日本印刷社製、厚さ12μm)、セラミック蒸着透明PETフィルムであるエコシアール(東洋紡社製、厚さ12μm)、無機蒸着透明PETフィルムであるGL FILM(凸版印刷社製、厚さ12μm)、透明蒸着PETフィルムであるMOS(尾池パックマテリアル社製、厚さ12μm)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本構成のように第一収容容器を構成する複層フィルムがポリエステル系樹脂を基材とした蒸着部を有するバリア層13を備えることにより、第一収容容器10の内部に水溶液(亜塩素酸塩水溶液1)を収容した状態で長期保管した場合であっても、収容された水が水蒸気となって蒸発するなどして外部に散逸するのを防止できるため、長期保管時の安定性が向上する。また、当該バリア層13は、ポリエステル系樹脂を含有するため、耐薬品性に優れている。
【0048】
本実施形態における複層フィルム10Aは、上記の易剥離層11、第一接着層12およびバリア層13以外に、当該バリア層13の側に第二接着層14および基材層15を追加した5層のフィルムとした場合について説明する。当該第二接着層14は、公知の熱圧着シートや接着剤などを使用することができる。また、基材層15は、PET膜(厚さ12μm)などを使用することができる。
【0049】
複層フィルム10Aにおいて、上述したように少なくとも易剥離層11、第一接着層12およびバリア層13を設けた構成とすればよいため、接着層14および基材層15以外にさらに追加の層を設けてもよい。また、各層において記載した厚さは一例にすぎず、適宜変更可能である。
【0050】
第一収容容器10は、上記の複層フィルム10Aを袋状に加工すればよい。本実施形態では、一枚の矩形の複層フィルム10Aをその中心線で折って端部を重ねた状態で周縁部(三辺)を熱シールして袋状に加工する態様について説明する。複層フィルム10Aをその中心線で折る際には、易剥離層11が第一収容容器10の内面側となるようにして、易剥離層11どうしを密着させた状態で、周縁部10aにおいて所定の幅を持たせた状態で三辺の周縁部10aを熱シールする。このように周縁部10aを熱シールしたシール部10bの何れかの部位は、外側から付与された所定の力が第一収容容器10に及ぶことにより易剥離層11が剥離する部位となる。即ち、開封時に当該シール部10bの何れか一部分において易剥離層11が剥離し、第一収容容器10の内外が貫通した剥離部位から、第一収容容器10に収容してある内容物(亜塩素酸塩水溶液1)を第一収容容器10の外部に放出することができる。
【0051】
複層フィルム10Aを袋状に加工する態様は、上記の態様に限定されるものではなく、例えば二枚の略同形状の矩形の複層フィルム10Aを重ねた状態で周縁部(四辺)を熱シールして袋状に加工する、などによって袋状に加工してもよい。
【0052】
また、複層フィルム10Aにおける周縁部10aのシールは熱シールに限定されるものではなく、超音波シールや接着剤などによって公知の手法によってシールすることができる。
【0053】
(第二収容容器)
第二収容容器20は、第二成分(酸性物質)2を含有する固体組成物を収容可能な水溶性の容器である。即ち、第二収容容器20は、第一収容容器10から放出された水(亜塩素酸塩水溶液)と接触することで少なくともその一部が溶解或いは分散する態様の容器とする。第二収容容器20を構成することができる水溶性の容器の材質としては、例えば水(亜塩素酸塩水溶液)と接触することで少なくともその一部が溶解或いは分散するものであれば特に限定されるものではなく、例えば公知の水溶紙や、PVA(ポリビニルアルコール)を原料としたフィルム等を使用することができる。PVAにおいては、熱シール性を持つ水溶性PVAフィルムであるクラレポバールフィルム(クラレ社製)、ハイセロン(日本合成社製)、ソルブロン(アイセロ社製)などを使用することができる。
【0054】
第二収容容器20の形状は、袋状・管状(試験管状)・スティック状・箱状などが例示されるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、第二収容容器20の形状を袋状とした場合について説明する。
【0055】
本実施形態では、一枚の矩形の水溶性PVAフィルムをその中心線で折って端部を重ねた状態で周縁部(三辺)を熱シールして袋状に加工する態様について説明する。このとき、周縁部20aにおいて所定の幅を持たせた状態で三辺の周縁部20aを熱シールする。
【0056】
また、第二収容容器20における周縁部20aのシールは熱シールに限定されるものではなく、超音波シールや接着剤などによって公知の手法によってシールすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第二収容容器20に中に第二成分(酸性物質)2とともに、吸水性ポリマー(図外)を収容した場合について説明する。吸水性ポリマーを収容することで、当該吸水性ポリマーが第一収容容器10から放出された水(亜塩素酸塩水溶液)をある程度吸収して亜塩素酸塩と第二成分(酸性物質)との急激な反応を防ぐことができる。そのため、吸水性ポリマーの量を調整することで二酸化塩素ガスの発生量を制御することができる。
【0058】
本実施形態では、第一収容容器10および第二収容容器20を重ねて外側容器30に収容した態様について説明する。これにより、第一収容容器10から放出された水(亜塩素酸塩水溶液)を直ちに第二収容容器20に接触させることができ、第二収容容器20の少なくとも一部を溶解或いは分散させて、亜塩素酸塩と第二成分(酸性物質)とを迅速に接触させることができる。また、第一収容容器10および第二収容容器20を、外側容器30の内部で位置ズレしないように、互いを両面テープ等で接着して重ねた態様としてもよい。
【0059】
第一収容容器10および第二収容容器20を外側容器30に収容する態様はこのような態様に限定するものではなく、例えば外側容器30の内部において第一収容容器10および第二収容容器20を近接配置するように収容すれば、どのような態様であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、第一収容容器10および第二収容容器20の大きさは、水(亜塩素酸塩水溶液)を密封した第一収容容器10の方を大きくした場合について説明するが、このような態様に限定されるものではない。具体的な第一収容容器10および第二収容容器20の大きさの比率は、例えば体積比が2~10倍程度となるようにするのがよい。
【0061】
(外側容器)
外側容器30は、第一収容容器10および第二収容容器20を収容可能に構成し、通気性を有する通気部31を設けた容器である。外側容器30の形状は、袋状・管状(試験管状)・スティック状・箱状などが例示されるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、外側容器30を上面視で矩形状に構成した袋状の容器とし、通気部31を面状に構成してある態様について説明するが、これらに限定されるものではない。本構成では、通気部31を外側容器30の裏表面の少なくとも片面側に形成することができる。これにより、外側容器30の内部で発生した二酸化塩素ガスを、外側容器30の少なくとも片面側の全面から外側容器30の外部に放出することができる。
【0062】
外側容器30は、表裏面の少なくとも何れか一面を気体透過性で液体不透過性としている。すなわち、外側容器30は、表面を気体透過性で液体不透過性とし裏面を気液不透過性としても、表面を気液不透過性とし裏面を気体透過性で液体不透過性としても、表裏面の両面とも気体透過性で液体不透過性としてもよい。
【0063】
外側容器30の表面或いは裏面を気体透過性で液体不透過性とするには、表面或いは裏面に設けた通気部31を、合成樹脂材を不織布に加工して構成するとよい。当該不織布は、例えば高密度ポリエチレン不織布のシートを使用することができるが、これに限定されるものではない。当該不織布としては、例えばエクセポール(登録商標、三菱ケミカル社製)、タイベック(登録商標、デュポン社製)、エルベス(登録商標、ユニチカ社製)、ゴアテックス(登録商標、WLゴア&アソシエイツ社製)、メルフィット(登録商標、ユニセル社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、外側容器30の表面或いは裏面に撥水加工を施してもよい。
【0064】
外側容器30の表面或いは裏面を気液不透過性とするには、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、エチレンビニールアルコール(EVOH)樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロプレン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの合成樹脂材からなるシートを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本実施形態における外側容器30は、上述した材料を使用し、表面のシートおよび裏面のシートの端部を重ねた状態で周縁部(四辺)を熱シールして袋状に加工する態様について説明する。このとき、周縁部30aにおいて所定の幅を持たせた状態で四辺の周縁部30aを熱シールする。
【0066】
また、外側容器30における周縁部30aのシールは熱シールに限定されるものではなく、超音波シールや接着剤などによって公知の手法によってシールすることができる。
【0067】
(亜塩素酸塩)
本発明で使用される亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、例えば亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられ、亜塩素酸アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。なかでも、入手が容易という点から、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムが好ましく、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。これら亜塩素酸塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0068】
亜塩素酸塩水溶液における亜塩素酸塩の割合は、0.1重量%~30重量%であることが好ましい。0.1重量%未満の場合は、二酸化塩素ガスの発生において亜塩素酸塩が不足するという問題が生じる可能性があり、30重量%を超える場合は、亜塩素酸塩が飽和して結晶が析出しやすいという問題が生じる可能性がある。安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率などを鑑みた場合、3重量%~25重量%が好ましく、さらに好ましい範囲は、安定的に発生させる場合には3重量%~15重量%、急速的に発生させる場合には15重量%~25重量%である。
【0069】
(酸性物質)
本発明で使用し得る酸性物質としては、無機酸や有機酸あるいはその塩であり、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、メタリン酸、ピロリン酸、スルファミン酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、グルタル酸などの有機酸、あるいはこれらの塩が挙げられる。また、無機酸の塩としては、例えば、リン酸二水素の塩(ナトリウム塩やカリウム塩、以下同様)等のリン酸塩、リン酸二水素塩とリン酸一水素塩の混合物などが挙げられる。なかでも、保存安定性に優れ、腐食性ガスを発生せず、保存時にも濃度変化が生じないなどの理由により、リン酸塩を使用することが好ましい。固体組成物に含有された状態においては、リン酸塩の濃度は、最終濃度を30重量%以下とするのがよい。酸性物質は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0070】
(固体組成物)
固体組成物は、第二成分(酸性物質)を含有する態様であればよく、例えば、酸性物質の結晶や粉体、酸性物質を含有する多孔性物質の態様等とすることができる。本実施形態では、固体組成物が粉体である場合について説明する。即ち、上記の「第二成分2を含有する固体組成物」は、水に溶解することにより酸性を示す酸性物質を含有する物質のこととなる。
【0071】
固体組成物を粉体とすることにより、亜塩素酸塩水溶液と酸性物質との反応が効率よく行われ、反応の理論値通りの二酸化塩素ガスを発生させることができる。当該固体組成物は粒状としてもよい。
【0072】
上述した多孔性物質は、例えば多孔質材料あるいは焼成骨材を使用することができるが、これらに限られるものではない。多孔質材料としては、例えば多孔質シリカ、セピオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、タルク、ゼオライト、活性白土、モレキュラーシーブ、活性アルミナ等が挙げられる。なかでも、入手容易で多孔性に優れていて(多孔空間が広く)、酸性物質あるいは亜塩素酸塩を含ませやすいという点で多孔質シリカを使用することが好ましい。これら多孔質シリカなどの比表面積としては特に限定はない。
焼成骨材としては、例えば動物(哺乳類、魚類、鳥類含む)の骨、貝殻及びサンゴを焼成して破砕片状、粒子状あるいは粉状にしたものを用いることができる。
【0073】
上述した二酸化塩素発生装置Xにおいて、外側容器30において、第一収容容器10に亜塩素酸塩水溶液1を密封し、第二収容容器20に酸性物質の第二成分2を収容してあるため、亜塩素酸塩水溶液1および酸性物質の第二成分2を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器30に押圧するなどの外力を加えて変形させて外側容器30に付与された外力が第一収容容器10に伝わることにより、内部に収納した易破壊性の第一収容容器10を容易に破壊することができる。このとき、第一収容容器10から亜塩素酸塩水溶液1を外側容器30の内部に放出することができる。放出された亜塩素酸塩水溶液1は第二収容容器20に接触し、水溶性の第二収容容器20は、少なくともその一部が溶解或いは分散する。これにより、亜塩素酸塩水溶液1および第二収容容器20に収容してあった第二成分(酸性物質)2が接触して反応することにより二酸化塩素ガスが発生する。外側容器30の内部で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部31から外側容器30の外部に放出することができる。
【0074】
本発明の二酸化塩素発生装置Xでは、第二成分(酸性物質)2を第二収容容器20に収容して外側容器30の内部に局在した状態(分散した状態ではなく)とし、第二収容容器20の少なくともその一部が溶解或いは分散することで第二成分(酸性物質)2を亜塩素酸塩水溶液1と接触させることができる。そのため、分散した状態で存在する第二成分(酸性物質)2を亜塩素酸塩水溶液と接触させる場合に比べて、亜塩素酸塩水溶液1および第二成分(酸性物質)2を過不足なく反応させ易くすることができる。従って、本発明の二酸化塩素発生装置Xでは、二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる。
【0075】
本発明の二酸化塩素発生装置Xを用いる場所としては特に限定はなく、例えば一般家庭(リビングや玄関、お手洗いや台所など)に、また工業用(工場用)として、あるいは病院や診療所・介護施設などの医療現場、学校や駅舎・公衆トイレなどの公共施設などにと、あらゆる場面で使用することができる。また、人が居住し得る室内空間といった比較的広い空間だけでなく、冷蔵庫や下駄箱、車内(車、バス、電車)などの狭い空間においても使用することが可能である。このように、本発明の発生装置は適用可能な空間の広さは特に制限されるものではない。
【0076】
〔別実施の形態〕
上述した実施形態では、第一収容容器10に亜塩素酸塩水溶液1を密封し、第二収容容器20に酸性物質の第二成分2を収容した場合について説明した。これに対して、本実施形態では、第一収容容器10に酸性物質である第二成分の水溶液を密封し、第二収容容器20に亜塩素酸塩を含有する固体組成物を収容した場合について説明する。
【0077】
即ち、別実施の形態の二酸化塩素発生装置Xは、外力を加えることにより内容物を放出可能に構成してあり、第二成分(酸性物質)の水溶液を密封した易破壊性の第一収容容器10と、亜塩素酸塩を含有する固体組成物を収容した水溶性の第二収容容器20と、第一収容容器10および第二収容容器20を収容し、通気性を有する通気部31を設けた外側容器30と、を備える。第一収容容器10の内部には、第二成分の水溶液以外の他の内容物を収容してもよい。
【0078】
このような構成の二酸化塩素発生装置Xにおいて、外側容器30において、第一収容容器10に酸性物質である第二成分の水溶液を密封し、第二収容容器20に亜塩素酸塩を収容してあるため、亜塩素酸塩および酸性物質である第二成分の水溶液を非接触状態で収納することができる。この状態で、外側容器30に押圧するなどの外力を加えて変形させて外側容器30に付与された外力が第一収容容器10に伝わることにより、内部に収納した易破壊性の第一収容容器10を容易に破壊することができる。このとき、第一収容容器10から第二成分(酸性物質)の水溶液を外側容器30の内部に放出することができる。放出された第二成分(酸性物質)の水溶液は第二収容容器20に接触し、水溶性の第二収容容器20は、少なくともその一部が溶解或いは分散する。これにより、第二成分(酸性物質)の水溶液および第二収容容器20に収容してあった亜塩素酸塩が接触して反応することにより二酸化塩素ガスが発生する。外側容器30の内部で発生した二酸化塩素ガスは、通気性を有する通気部31から外側容器30の外部に放出することができる。
【0079】
本発明の二酸化塩素発生装置Xでは、亜塩素酸塩を第二収容容器20に収容して外側容器30の内部に局在した状態(分散した状態ではなく)で第二成分(酸性物質)の水溶液と接触させることができる。そのため、分散した状態で存在する亜塩素酸塩を第二成分(酸性物質)の水溶液と接触させる場合に比べて、亜塩素酸塩および第二成分(酸性物質)の水溶液を過不足なく反応させ易くすることができる。従って、本発明の二酸化塩素発生装置Xでは、二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる。
【0080】
本形態において使用し得る酸性物質は、上述した酸性物質を使用することができる。酸性物質として硫酸を使用する場合は、その水溶液の濃度は30重量%以下とするのがよい。
また、本形態において固体組成物に含有された状態での亜塩素酸塩は、最終濃度を30重量%以下とするのがよく、好ましくは3~15重量%とするのが安全性や安定性、二酸化塩素ガスの発生効率の観点で好ましい。
【実施例
【0081】
〔実施例1〕
本発明の二酸化塩素発生装置Xとして、第一収容容器10に亜塩素酸ナトリウム水溶液1を収容し、第二収容容器20に第二成分2であるリン酸二水素カリウム(粉体)を収容し、これらを重ねた状態で外側容器30に収容したものを作製した。
【0082】
表1に記載の構成を有する三種類の複層フィルム10Aを常法によって製膜した(実施例1-1~1-3)。この複層フィルム10Aを易剥離層11が内面側となるように中心線で折って端部を重ねた状態で周縁部(三辺)10aをシール幅が10mmとなるように熱シールし、上面視で矩形状となる袋(100mm×150mm)に加工したものを第一収容容器10とした。
【0083】
【表1】
【0084】
第二収容容器20は水溶性PVAフィルムであるソルブロン(アイセロ社製)を袋状に加工した物を使用した。即ち、当該フィルムを中心線で折って端部を重ねた状態で周縁部(三辺)20aをシール幅が10mmとなるように熱シールし、上面視で矩形状となる袋(80mm×100mm)に加工したものを第二収容容器20とした。
【0085】
外側容器30は、表面をメルフィット(登録商標、ユニセル社製)、裏面を直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE、東ソー社製)からなるシートを使用し、周縁部(四辺)30aのシール幅が10mmとなるように両者を熱シールし、上面視で矩形状となる袋(120mm×200mm)に加工した。
【0086】
実施例1-1~1-3の複層フィルム10Aで作製した第一収容容器10を別箇に収容して製造した三種類の二酸化塩素発生装置Xにおいて、外側容器30の外側より指で押圧することで外力を加えて変形させた。このとき、外側容器30に付与された外力が易破壊性の第一収容容器10に伝わって当該第一収容容器10を変形させ、その内圧が高まることにより易剥離層11が層間剥離することで第一収容容器10を容易に破壊することができた。
【0087】
第一収容容器10を破壊することで外側容器30の内部に放出された亜塩素酸ナトリウム水溶液は第二収容容器20に直ちに接触し、水溶性の第二収容容器20はその一部が溶解した。さらに外側容器30を数回左右に振ることで、水溶性の第二収容容器20はその大部分が溶解した。これにより、亜塩素酸ナトリウム水溶液および第二収容容器20に収容してあったリン酸二水素カリウムが接触して反応し、二酸化塩素ガスが発生した。
【0088】
リン酸二水素カリウムは第二収容容器20に収容して外側容器30の内部に局在した状態とし、第二収容容器20の少なくともその一部が溶解或いは分散することでリン酸二水素カリウムを亜塩素酸ナトリウム水溶液と接触させるため、亜塩素酸ナトリウム水溶液およびリン酸二水素カリウムを過不足なく反応させることができた。
【0089】
〔実施例2〕
実施例1の二酸化塩素発生装置Xにおいて、水溶液を収容した第一収容容器10の長期保管時の安定性について調べた。
【0090】
当該第一収容容器10を、40℃、常圧の条件で放置したところ、10か月経過した時点においても、亜塩素酸ナトリウム水溶液の量は殆ど変化しなかった。また、第一収容容器10の周縁部10aを熱シールしたシール部10bについても、劣化(白変)する等の変化は確認されなかった(図5)。
【0091】
従って、本発明の二酸化塩素発生装置Xにおいては、長期保管時(10か月以上)であっても収容された水(水溶液)が水蒸気となって蒸発するなどして外部に散逸するのを防止でき、かつ、耐薬品性に優れているため、長期保管時の安定性が向上すると認められた。
【0092】
比較例として、第一収容容器の複層フィルムの構成材料として、易剥離層を凝集剥離型のPE/PPシートであるIMXフィルム(ジェイフィルム社製、厚さ30μm)とし、バリア層なしとした場合について長期保管時の安定性について調べた。即ち、比較例の複層フィルムは、凝集剥離型のPE/PPシート、接着層として低密度ポリエチレンシート(LDPE、厚さ20μm)、基材層としてPET膜(厚さ16μm)、の3層のフィルムとした。当該複層フィルムの周縁部(四辺)のシール幅が10mmとなるように周縁部を熱シールして比較例の容器を作製した。
【0093】
この比較例の容器を、40℃、常圧の条件で一か月放置したところ、当該容器の周縁部を熱シールしたシール部が劣化(白変)し、約18%の重量減少が認められた(図6)。
そのため、この比較例の容器は、長期保管には適さないと認められた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、第一成分である亜塩素酸塩と、当該亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素ガスを発生する第二成分と、を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる二酸化塩素発生装置に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
X 二酸化塩素発生装置
10 第一収容容器
20 第二収容容器
30 外側容器
31 通気部
図1
図2
図3
図4
図5
図6