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特許7617638表面組成と内部組成の差異を考慮して廃棄金属バッチ組成を決定するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】表面組成と内部組成の差異を考慮して廃棄金属バッチ組成を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
C22B7/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021571655
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 CA2020050124
(87)【国際公開番号】W WO2020243813
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】62/856,818
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506081725
【氏名又は名称】ハウス オブ メタルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOUSE OF METALS COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】ビトン,ダニエル
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520968(JP,A)
【文献】特開平9-316556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法であって、供給ステップで始まり、断片化ステップ、指標決定ステップ、組成測定値検出ステップ、総合組成推定ステップ、及び再生ステップを経てリサイクルが行われる方法であり、
前記供給ステップは、特定の合金製のアルミニウム合金ホイール供給物を提供するステップであり、前記アルミニウム合金ホイール供給物の各アルミニウム合金ホイールは表面組成と内部組成とを有し、前記表面組成は前記アルミニウム合金ホイールの外表面における組成であり、前記内部組成は前記アルミニウム合金ホイールの内部における組成である前記アルミニウム合金ホイール供給物を提供するステップであり
前記断片化ステップは、前記供給ステップの後で行われ、前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、断片化によって前記アルミニウム合金ホイール供給物の内部を露出させ、前記複数の断片の新たに露出した表面が前記内部組成を有するようにするステップであり
前記指標決定ステップは、前記断片化ステップの後で行われ、前記アルミニウム合金ホイール供給物において新たに露出された各表面を、前記外表面と区別するために新露出表面指標を決定するステップであり
前記組成測定値検出ステップは、前記断片化ステップの後で行われ、前記複数の断片において断片材料の複数の組成測定値であり、複数の前記組成測定値の少なくともいくつかは、前記断片化ステップで断片化された前記複数の断片において新たに露出された表面に由来するものである複数の前記組成測定値を決定するステップであり;
前記総合組成推定ステップは、前記指標決定ステップ及び前記組成測定値検出ステップの後で行われ、前記組成測定値検出ステップにおいて検出された前記断片材料の複数の前記組成測定値と、前記指標決定ステップにおいて決定された前記新露出表面指標とに基づいて前記断片材料の組成を推定することによって、総合組成推定値を決定するステップであり
前記再生ステップは、前記総合組成推定ステップの後で行われ、アルミニウム合金によって形成される少なくとも一つの構成部品の製造に使用するために、前記総合組成推定値が決定された複数の前記断片材料をその総合組成推定値と共に提供するステップである、
法。
【請求項2】
前記新露出表面指標は、前記アルミニウム合金ホイール供給物について予測される前記表面組成と前記内部組成との差異に基づいて決定される、前記アルミニウム合金ホイール供給物についての表面量/内部量である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の断片について前記断片材料の複数の前記組成測定値を決定することは、冷却される間に前記断片材料が特性放射を放出する点まで前記断片材料を加熱することと、その特性放射を検出するようにセンサを動作させることと、前記断片材料の前記組成測定値を決定するために前記特性放射を分析するようにプロセッサを動作させることと、を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム合金ホイール供給物について前記表面量/内部量を決定することは、前記特定の合金製の前記アルミニウム合金ホイールの少なくとも一つの断片のそれぞれについて、
その断片の前記表面組成を決定することと;
その断片の前記内部組成を決定することと;
前記表面組成と前記内部組成とから前記表面量/内部量を決定することと、を含む、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面量/内部量は、表面組成測定値を内部組成測定値と区別するための分別基準を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記総合組成推定値を決定することは、前記複数の断片について前記断片材料の複数の前記組成測定値のそれぞれについて、
その組成測定値が内部組成測定値であると決定するために前記分別基準を使用することと;
その組成測定値が内部組成測定値であるとき、前記総合組成推定値を決定する際にその組成測定値を使用することと;
その組成測定値が内部組成測定値ではないとき、その組成測定値を使用することなく前記総合組成推定値を決定することと、を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面量/内部量は、ある断片の前記表面組成からある断片の前記内部組成を計算するための表面・内部間相関をさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記総合組成推定値を決定することは、前記複数の断片について前記断片材料の複数の前記組成測定値のそれぞれについて、
その組成測定値が内部組成測定値であると決定するために前記分別基準を使用することと;
その組成測定値が内部組成測定値であるとき、前記表面・内部間相関を使用してその組成測定値を調整することなく、前記総合組成推定値を決定する際にその組成測定値を使用することと;
その組成測定値が表面組成測定値である場合、前記総合組成推定値を決定する際に、その組成測定値を使用して前記総合組成推定値を決定するときに、前記表面・内部間相関を用いてその組成測定値を調整することと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分別基準は、異なる元素について異なる分別基準を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することは、前記複数の断片から非アルミニウムである不純物を除去するために、前記複数の断片をショットブラストすることをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記分別基準は、ある元素について元素濃度範囲を含み;
前記複数の断片における前記断片材料の複数の前記組成測定値の各組成測定値は、その元素についての元素測定値を含み;
前記総合組成推定値を決定することは、前記複数の断片における前記断片材料の複数の前記組成測定値の各組成測定値について、その組成測定値のための前記元素測定値がその元素についての前記元素濃度範囲内にあるかどうかを決定することによって、その組成測定値が内部組成測定値であるか、または表面組成測定値であるかを決定するために前記分別基準を使用することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記分別基準は、複数の元素濃度範囲を含んでおり、その元素濃度範囲は複数の元素のそれぞれについてその元素についての元素濃度範囲を含むものであり;
前記複数の断片における前記断片材料についての複数の前記組成測定値の各組成測定値は、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素測定値を含み;
前記総合組成推定値を決定することは、前記複数の断片における前記断片材料の複数の前記組成測定値の各組成測定値について、複数の元素のそれぞれについてその組成測定値のための前記元素測定値が、その元素についての前記元素濃度範囲にあるかどうかを決定することによって、その組成測定値が内部組成測定値であるか、または表面組成測定値であるかを決定するために前記分別基準を使用することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記表面・内部間相関は、ある元素についての元素相関を含み;
前記複数の断片における前記断片材料についての複数の前記組成測定値の各組成測定値は、その元素についての元素測定値を含み;
各表面組成測定値について、前記表面・内部間相関を使用してその組成測定値を調整することは、前記元素相関に基づいて前記元素測定値を調整することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記表面・内部間相関は、複数の元素相関を含んでおり、その元素相関は複数の元素のそれぞれについて、その元素のための元素相関を含むものであり;
前記複数の断片における前記断片材料についての複数の前記組成測定値の各組成測定値は、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素測定値を含み;
各表面組成測定値について、前記表面・内部間相関を使用してその組成測定値を調整することは、複数の元素のそれぞれについて、その元素相関に基づいてその元素測定値を調整することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することは、前記新露出表面指標の少なくとも一部を前記新たに露出された表面に付与することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法を使用して、アルミニウム合金ホイールをリサイクルするためのシステムであって、
特定の合金製のアルミニウム合金ホイール供給物を提供するためのコンベヤであって、前記アルミニウム合金ホイール供給物の各アルミニウム合金ホイールは、表面組成と内部組成とを有し、前記表面組成は前記アルミニウム合金ホイールの外表面における組成であり、前記内部組成は前記アルミニウム合金ホイールの内部における組成である、コンベヤと;
前記アルミニウム合金ホイール供給物を前記コンベヤから受け取り、前記アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、前記複数の断片の新たに露出された表面が前記内部組成を有するようにするための断片化装置と;
前記断片化装置によって製造された前記複数の断片を検知するための少なくとも一つのセンサであり、
前記アルミニウム合金ホイール供給物において新たに露出された各表面を前記外表面と区別するために新露出表面指標を決定すると共に、
前記複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値であって、複数の前記組成測定値の少なくともいくつかは、前記複数の断片の新たに露出された表面に由来することを決定する、センサと;
少なくとも一つのプロセッサであって、その断片の前記断片材料についての複数の前記組成測定値と前記新露出表面指標とに基づいて、その断片の前記断片材料の組成を推定することによって総合組成推定値を決定するものであり、少なくとも一つの前記センサと通信のために接続されているプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項17】
前記複数の断片のうちの少なくとも一つの断片の一部を、冷却される間に前記少なくとも一部が特性放射を放出する点まで加熱するためのレーザをさらに含み、
少なくとも一つの前記センサは、その特性放射を測定するための分光計を含み、
前記分光計は、測定された前記特性放射を少なくとも一つの前記プロセッサに伝えるために、少なくとも一つの前記プロセッサに通信のために接続されており、
少なくとも一つの前記プロセッサのうちの一つのプロセッサは、動作時に、少なくとも一つの断片の前記組成測定値を決定するために前記特性放射を分析する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の断片を少なくとも一つの前記センサに提供する前に、前記複数の断片を前記断片化装置から受け取り、前記複数の断片をショットブラストに供するためのブラストチャンバを、さらに含む、
請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月4日出願の米国特許仮出願第62/856,818号の優先権を主張するものであり、この仮出願の全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
ここに記載される実施形態は、リサイクルの分野、特に、廃棄金属をリサイクルし、リサイクル可能な廃棄金属のバッチ組成を決定する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
近年の廃棄物管理において、新しい材料または製品を形成するためにそのままでは廃棄材料となるものをリサイクルすることは重要である。多くの異なる材料、例えばガラス、紙、段ボール、金属、プラスチック、タイヤ、繊維、バッテリー、および電子機器がリサイクルされ得る。廃棄材料をリサイクルするための典型的な方法は、ピッキング、分別、洗浄、および加工処理を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本概要は、出願人の教示のさまざまな態様を読者に紹介することを目的としているが、いかなる特定の実施形態に限定しようとするものではない。概して、ここで開示しているのは、廃棄金属をリサイクルする一つ以上の方法である。
【0005】
第一の態様において、本発明のいくつかの実施形態は、アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法を提供する。この方法は、(1)特定の合金製のアルミニウム合金ホイール供給物を提供することであり、アルミニウム合金ホイール供給物における各アルミニウム合金ホイールは表面組成と内部組成とを有しており、表面組成はアルミニウム合金ホイールの外表面における組成であり、内部組成はアルミニウム合金ホイールの内部における組成である、上記供給物を提供することと;(2)アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、複数の断片の新たに露出された表面が内部組成を有するようにすることと;(3)アルミニウム合金ホイール供給物において新たに露出された各表面を外表面と区別するために、新露出表面指標を決定することと;(4)複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値であって、複数の組成測定値の少なくともいくつかは、複数の断片の新たに露出された表面に由来するものである複数の組成測定値を決定し、次いで、その断片材料についての複数の組成測定値と新露出表面指標とに基づいて断片材料の組成を推定することによって、総合組成推定値を決定することと;(5)アルミニウム合金から形成される少なくとも一つの構成部品の製造に使用するために、複数の断片と総合組成推定値とを提供することと、を含む方法である。
【0006】
いくつかの実施形態において、新露出表面指標は、アルミニウム合金ホイール供給物について予測される表面組成と内部組成との差異に基づいて決定された、アルミニウム合金ホイール供給物の表面量/内部量である。
【0007】
いくつかの実施形態において、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値を決定することは、(1)冷却される間に材料が特性放射(特性放射光)を放出する点(温度)まで材料を加熱することと、(2)その特性放射を検出するようにセンサを動作させることと、(3)材料についての組成測定値を決定するために特性放射を分析するようにプロセッサを動作させることと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、アルミニウム合金ホイール供給物の表面量/内部量を決定することは、特定の合金製のアルミニウム合金ホイールの少なくとも一つの断片のそれぞれについて、(1)その断片の表面組成を決定することと;(2)その断片の内部組成を決定することと;(3)表面組成と内部組成とから表面量/内部量を決定することと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、表面量/内部量は、表面組成測定値を内部組成測定値と区別するための分別基準を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、総合組成推定値を決定することは、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値について、その組成測定値が内部組成測定値であると決定する分別基準を使用することを含む。その組成測定値が内部組成測定であるときは、総合組成推定値を決定する際にその組成測定値を使用する。その組成測定値が内部組成測定値ではないときは、その組成測定値を使用することなく総合組成推定値を決定すること。
【0011】
いくつかの実施形態において、表面量/内部量は、断片の表面組成から断片の内部組成を計算するための表面・内部間相関をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、総合組成推定値を決定することは、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値について、その組成測定値が内部組成測定値であると決定するために分別基準を使用することを含む。その組成測定値が内部組成測定値であるときは、表面・内部間相関を用いてその組成測定値を調整することなく、総合組成推定値を決定する際にその組成測定値を使用する。その組成測定値が表面組成測定値であるときに、総合組成推定値を決定する際に、その組成測定値を使用して総合組成推定値を決定する場合は、表面・内部間相関を用いてその組成測定値を調整する。
【0013】
いくつかの実施形態において、分別基準は、異なる元素のための異なる分別基準を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することは、複数の断片から非アルミニウムの不純物を除去するために、複数の断片をショットブラストすることをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、分別基準は、ある元素の元素濃度範囲を含み、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、その元素についての元素測定値を含む。この実施形態において、総合組成推定値を決定することは、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値について、その組成測定値についての元素測定値がその元素の元素濃度範囲にあるかを決定することによって、その組成測定値が内部組成測定値であるか、または表面組成測定値であるかを決定するために、分別基準を使用することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、分別基準は複数の元素濃度範囲を含んでおり、複数の元素のそれぞれについて、その元素のための元素濃度範囲を含んでいる。複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素測定値を含む。この実施形態において、総合組成推定値を決定することは、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値について、複数の元素のそれぞれについて、その組成測定値についての元素測定値がその元素の元素濃度範囲内にあるかどうかを決定することによって、その組成測定値が内部組成測定値であるか、または表面組成測定値であるかを決定するために、分別基準を使用することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、表面・内部間相関は、ある元素のための元素相関を含み、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、その元素についての元素測定値を含む。この実施形態において、各表面組成測定値について表面・内部間相関を用いてその組成測定値を調整することは、その元素相関に基づいて元素測定値を調整することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、表面・内部間相関は複数の元素相関を含んでおり、複数の元素のそれぞれについて、その元素のための元素相関を含む。この実施形態において、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、複数の元素のそれぞれについて、その元素についての元素測定値を含む。この実施形態において、各表面組成測定値について、表面・内部間相関を用いてその組成測定値を調整することは、複数の元素のそれぞれについて、その元素相関に基づいてその元素測定値を調整することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化することは、新たに露出された表面に新露出表面指標の少なくとも一部を付与することを含む。
【0020】
いくつかの態様によれば、アルミニウム合金ホイールをリサイクルするためのシステムは、(1)特定の合金製のアルミニウム合金ホイール供給物であって、アルミニウム合金ホイール供給物の各アルミニウム合金ホイールは表面組成と内部組成とを有し、表面組成はアルミニウム合金ホイールの外表面における組成であり、内部組成はアルミニウム合金ホイールの内部における組成である上記供給物を提供するためのコンベヤと;(2)アルミニウム合金ホイール供給物をコンベヤから受け取り、アルミニウム合金ホイールを複数の断片に断片化し、複数の断片の新たに露出された表面が内部組成を有するようにするための断片化装置と;(3)断片化装置によって製造された複数の断片をセンシングするための少なくとも一つのセンサであって、(a)アルミニウム合金ホイール供給物において新たに露出された各表面を外表面と区別するために新露出表面指標を決定するため、および(b)複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値であって、複数の組成測定値の少なくともいくつかは、複数の断片の新たに露出された表面に由来するものである組成測定値を決定するためのセンサと;(4)少なくとも一つのプロセッサであって、その断片材料についての複数の組成測定値と新露出表面指標とに基づいて、その断片材料の組成を推定することによって、総合組成推定値を決定するためのものであり、少なくとも一つのセンサと通信のために接続されているプロセッサと、を備える。
【0021】
いくつかの実施形態において、システムは、複数の断片のうちの少なくとも一つの断片の一部を、冷却される間にこの少なくとも一部が特性放射を放出する点まで加熱するためのレーザをさらに備える。少なくとも一つのセンサは、特性放射を測定するための分光計を備える。この分光計は、測定された特性放射を少なくとも一つのプロセッサに伝達するために、少なくとも一つのプロセッサに通信のために接続される。少なくとも一つのプロセッサのうちの一つのプロセッサは、動作時に、少なくとも一つの断片の組成測定値を決定するために特性放射を分析する。
【0022】
いくつかの実施形態において、システムは、複数の断片が少なくとも一つのセンサに提供される前に、断片化装置から複数の断片を受け取り、複数の断片をショットブラストに供するためのブラストチャンバをさらに備える。
【0023】
本発明のこれらの利点およびその他の利点は、以下に図面を参照して行われる本発明の実施形態および態様に関する詳細な説明により、さらに十分かつ完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】廃棄金属片供給物のバッチ組成を決定するための方法を示すフローチャートである。
【0025】
図2】アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法を示すフローチャートである。
【0026】
図3図2に示したアルミニウム合金ホイールのリサイクル方法の代替方法を示すフローチャートである。
【0027】
図4図2に示したアルミニウム合金ホイールのリサイクル方法の代替方法を示すフローチャートである。
【0028】
図5図2に示したアルミニウム合金ホイールのリサイクル方法の代替方法を示すフローチャートである。
【0029】
図6】廃棄金属片をリサイクルするためのシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書に記載される例示的な実施形態の十分な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載されることは言うまでもない。しかし、本明細書に記載される実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施され得ることは、当業者によって理解される。他の例では、本明細書に記載される実施形態を不明瞭にしないように、周知の方法、手順および構成要素は詳細に記載していない。さらに、ここでの記載および図面は、いかなる意味でも本明細書に記載された実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単に本明細書に記載されたさまざまな実施形態の実施を説明しているとみなされるべきである。
【0031】
最初に図1を参照し、廃棄金属片供給物のバッチ組成を決定するための方法100を示す。方法100は、廃棄金属片供給物が提供されるステップ102から開始する。ステップ102において提供される廃棄金属片は、特定の合金タイプ製である。例えば、廃棄金属片供給物は、アルミニウム合金供給物であり得る。他の例では、廃棄金属片供給物は、ビスマス合金、真鍮合金、コバルト合金、銅合金、ガリウム合金、金合金、インジウム合金、鉄合金、鉛合金、マグネシウム合金、水銀合金、ニッケル合金、カリウム合金、銀合金、鋼合金、スズ合金、チタン合金、亜鉛合金、ジルコニウム合金等のうちのいずれか一種類の供給物であり得る。
【0032】
方法100のいくつかの例では、供給物中の廃棄金属の各片は同じ合金タイプ製であるが、各片は供給物中の他の片のうちの少なくとも一つの組成とは異なる組成を有していてもよい。いくつかの例では、一つの片は、供給物中に存在する二つの異なる組成のうちの一方の組成であり得る。他の例では、廃棄金属の一片は、廃棄金属供給物中に存在する任意の数の異なる組成のうちの一つの組成を有することがある。廃棄金属片のバッチは、異なる廃棄金属片の異なる組成、ならびにそれらの廃棄金属片の相対質量に基づく総合組成またはバッチ組成を有する。例えば、すべての廃棄金属片が溶融され、混合されて均一な集合体または混合物が提供された場合、この総合組成またはバッチ組成は、その均一な混合物の組成となる。廃棄金属片供給物のこのバッチ組成は、廃棄金属片が最初に供給される時点では不明であることがある。
【0033】
この廃棄金属供給物は、すべてがリサイクルされる同じ種類の構成部品に由来することがある。例えば、アルミニウム合金356.2のような特定の合金製のアルミニウム合金ホイールの供給物である。すべてのホイールが特定の合金タイプ製であったにも関わらず、それでも組成がわずかに異なることがある。また、鉄やケイ素のようないくつかの元素では、リサイクルされる構成部品の表面に向かって、或いは、表面から離れる方へ移動する傾向があるため、特定の断片または廃棄金属片内で組成にばらつきを有することがある。従って、これらの金属ステム片が由来するホイールの外表面であった廃棄金属片の表面は、ケイ素のような元素の濃度が、これらの片の内部において測定されるだろうよりも高い、或いは、低いことがある。
【0034】
方法100のステップ104では、廃棄金属片は複数の断片に断片化される。廃棄金属片を断片化することによって、廃棄金属片の内表面を露出させることができる。廃棄金属片の内表面は、それぞれの廃棄金属片の内部組成と等しいか、或いは、ほぼ等しい表面組成を有し得る。廃棄金属片の内部組成は、その片の総合組成をより正確に表し得るため、廃棄金属片のバッチ組成は、内表面の組成の測定値を使用することにより、より正確に推定することができる。
【0035】
外表面の表面組成もまた、内部組成と異なることがある。外表面は、廃棄金属片の元々の製造プロセスの間に酸化されたり、錆びたり、不純物がドープされたりするからである。
【0036】
ステップ106では、廃棄金属片供給物において新たに露出された各表面を区別するために新露出表面指標(指標:indicator、indicia)が決定される。新露出表面指標を決定することは、方法100の残りのステップの間に、新たに露出された表面を検出するために用いられることがある。
【0037】
一つの例では、新たに露出された各表面を区別することは、新たに露出された表面を他のより長く露出されていた表面から幾何学的に区別することができるような方法で、廃棄金属片を断片化することを含む(これらのより長く露出されていた表面は、リサイクルされる構成部品の表面だったことがあり得、それ故に新たに露出された表面より、かなり長い期間にわたり露出されていたことがあり得る)。例えば、ある断片がその長軸に沿って断片化されている場合、この長軸は、長軸に沿っているその断片の二つの端部の中間の位置において、新たに露出された表面を示すための新露出表面指標を提供することができる。第二の例では、断片化ステップの間に断片化された廃棄金属片において新たに露出された表面上にシグネチャー(signature)を付与することができる。この例では、シグネチャーを検索し、検出することによって、新たに露出された表面の位置を知ることができる。シグネチャーは、例えば、断片において新たに露出された表面上に配置された特定の形状、カットライン、スタンプ、またはパターンとすることができる。さらに詳しく後述する第三の例では、新露出表面指標は、表面量/内部量であり得る。
【0038】
方法100のステップ108では、廃棄金属片供給物の総合組成の推定値が決定される。総合組成の推定値は、複数の断片における断片材料について複数の組成測定値を、新たに露出された表面において取得し、組成の平均値を算出することによって決定することができる。断片材料についての組成測定値は、その断片材料についての複数の組成測定値と新露出表面指標とに基づいて推定することができる。
【0039】
例えば、ある断片材料の組成が、その断片の表面において測定されるとする。そうすると、新露出表面指標を使用して、組成測定が行われた表面が新たに露出された表面と特定された場合、その組成測定値は、測定された組成の値を調整することなく平均組成を計算する際に使用することができる内部組成測定値として分類することができる。しかし、新露出表面指標を使用して、組成測定が行われた表面が新たに露出された表面として特定されなかった場合、ある断片材料についての組成測定値は、新露出表面指標を使用して、外表面組成測定値として分類することができ、その組成測定値は、バッチ組成を決定するとき無視されるか、または調整される。なぜなら、外表面組成は、内部組成を正確には反映しないからである。いくつかの実施形態では、新露出表面指標は、組成測定値それ自体であることがあり、それによって、表面が新たに露出された表面であるか否かは、鉄やケイ素のような異なる元素の濃度に基づいて、組成測定値自体から決定することができる。これについては下記で詳述する。
【0040】
方法100のいくつかの例では、組成測定値を決定するためにレーザスキャナを使用することができる。このことは、断片の表面上のある点において材料を、その材料が冷却される間に特性放射を放出する温度まで、レーザを使用して加熱することを含んでよい。次に、その特性放射を検出し、種々の周波数における信号の大きさのスペクトルを提供するために、センサを動作させることができる。種々の周波数における信号の大きさであるこのスペクトルは、次に、合金内の種々の元素の相対濃度を推定するために、コンピュータプロセッサによって分析することができる。このことは、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第10,220,418号に記載されている。
【0041】
方法100の一つの例では、レーザ・ディスタンス・スペクトロメトリー(Laser Distance Spectrometry)によって製造された「レーザ誘起ブレークダウン分光法(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy)」(「LIBS」)組成アナライザを、レーザスキャナおよびセンサとして適用することができる。LIBS組成アナライザは、放射放出体、例えばNd:YAGレーザを備えるものとすることができる。このレーザは、1~20ヘルツの周波数範囲で発光し、それによって断片とレーザとの間の接触点における断片の温度を摂氏30,000度より高め、プラズマを発生させる。プラズマは、急速に冷却され、励起されたイオンを低エネルギー状態に戻す。低エネルギー状態に戻る際、イオンは、特性放射を放出する。LIBS組成アナライザは、特性放射を検出する一つ以上のセンサを含むものとすることができる。次に、センサが計測した値をプロセッサで分析し、その結果から、温度変化を受ける材料中に含有される成分の濃度を決定することができる。プロセッサは、組成アナライザ内に配置されていてもよい。あるいは、プロセッサは、リモートプロセッサであってもよい。
【0042】
他の適当な組成アナライザは、各断片材料によって放出される特性放射をその断片の表面において誘起し、その材料の組成を決定するためにその特性放射を検出および分析するレーザ分光法、または他の方法に依拠する他のシステムを使用する組成アナライザを含んでいてもよい。組成アナライザは、いずれかの適当なセンサを使用することによって特性放射を検出することができる。適当なセンサは、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、高密度短チャンネル金属酸化膜半導体(HMOS)、電荷結合素子(CCD)およびその他のタイプのセンサを含でいてもよい。
【0043】
適当な組成アナライザは、例えば、プラズマや電子線などの放射放出体、または、他のいずれかの放射放出体、すなわち、各断片材料をその断片の表面上の少なくとも一つの点において、材料が冷却する間に十分な量および質の特性放射を放出する点まで加熱し、センサがその特性放射を検出することを可能にし、プロセッサがその特性放射から材料の組成を決定することを可能にするのに適している放射放出体を使用するものとすることができる。組成アナライザは、連続使用、ならびに特定のアルミニウム合金製リムのリサイクル作業において存在し得る典型的なコンディションに耐えるように、適合させることができる。そのようなコンディションは、アルミニウム合金製リムの移送機構の運転に起因する振動と、リサイクルプロセスにおいて生じる塵および他の粒子を含むことがある。
【0044】
図2を参照すると、アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法200がそこに示される。アルミニウム合金ホイールをリサイクルする方法200は、廃棄金属片供給物のバッチ組成を決定する方法100の応用例である。よって、下記で考察される例のいずれも方法100に適用されることがあり得、方法100を参照して上記で考察されたいずれの例も方法200に適用することができる。さらに、下記の考察は、本明細書に記載される方法を、アルミニウム合金ホイールをリサイクルするものに限定することを意味しない。例えば、本明細書に記載される方法は、鋼合金、銅合金、またはあらゆる他の適当な金属製の物体をリサイクルするための方法に適用され得る。
【0045】
方法200のステップ202では、特定の合金製のアルミニウム合金ホイール供給物が提供される。上記の廃棄金属製品と同様に、アルミニウム合金ホイールは、特定の合金製ではあるが、ホイールの組成は変化することがある。従って、アルミニウム合金ホイールのバッチ一つ分の総合組成は、そのバッチが最初に提供される時点では不明のことがある。
【0046】
ステップ204において、アルミニウム合金ホイールは複数の断片に断片化される。上記のように、アルミニウム合金ホイールを断片化することにより新たに表面が露出し、その表面はアルミニウム合金ホイールそれぞれの内部組成とほぼ等しい表面組成を有し得る。いくつかの例では、ステップ204は、複数の断片から非アルミニウムの不純物を除去するために複数の断片をショットブラストすることを含むものとすることができる。
【0047】
方法200のステップ206において、アルミニウム合金ホイール供給物中の新たに露出された各表面を区別するために新露出表面指標が決定される。新露出表面指標は、上記のように決定され得る。いくつかの例において、新露出表面指標は、アルミニウム合金ホイール供給物についての表面量/内部量であってよい。表面量/内部量は、アルミニウム合金ホイール供給物について予測される表面組成と内部組成との差異に基づいて決定することができる。表面量/内部量については、下記で詳述する。
【0048】
ステップ208において、バッチの総合組成の推定値が決定される。方法200のいくつかの例では、方法100を参照して上述したように、総合組成の推定値は、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値を、それらの新たに露出された表面において取得し、これらの組成測定値の平均組成を算出することによって決定することができる。断片材料についての組成測定値は、その断片材料についての複数の組成測定値と新露出表面指標とに基づいて推定することができる。
【0049】
図3を参照すると、方法200のいくつかの例では、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値を決定するステップ、すなわちステップ208は、冷却される間に材料が特性放射を放出する点まで材料を加熱することを含んでよい。ステップ208は更に、その特性放射を検出するようにセンサを動作させることと、材料の組成測定値を決定するために特性放射を分析するようにプロセッサを動作させることを含んでよい。
【0050】
戻って図2を参照すると、総合組成推定値が決定された後に、ステップ210において複数の断片は、アルミニウム合金から形成される少なくとも一つの構成部品の製造に使用するために、総合組成推定値とともに提供されることがある。例えば、バッチの総合組成がオートバイホイールを製造するために適していると決定された場合、そのバッチはオートバイホイールにリサイクルされることがある。バッチの総合組成がセミ・トラックホイールを製造するために適していると決定された場合、そのバッチはセミ・トラックホイールにリサイクルされることがある。
【0051】
本明細書に記載された方法を使用してバッチ組成を決定することによって、バッチ組成を決定するために断片を溶融し、混合することが不要となる。バッチ組成を決定するために断片を溶融も混合もしなくてよいことで、リサイクルプロセスの効率を上げることができる。例えば、リサイクル施設とホイール製造施設とが異なる場所にある異なる事業体である場合、(1)バッチ組成を決定するためにリサイクル施設において断片を融解しなければならず、(2)製造施設において成形/ダイカストプロセス時に断片を融解しなければならないため、上記の方法を使用しない場合は、断片を二回溶融しなければならず、リサイクルプロセスのコストが増加することがある。あるいは、本明細書に記載された方法を利用することによって、必要に応じてバッチ組成の微調整を行うことができる製造施設において、断片を一回溶融するだけでよいことがある。断片は、それらの断片をどのように使用するか、および望まれる場合はそれらを他のどの材料と組み合わせるかについて、製造施設が最善の決定を下すことができるように、リサイクル施設によってバッチ組成とともに製造施設に供給することができる。
【0052】
図4を参照すると、上述したようにステップ206において、新露出表面指標は、アルミニウム合金ホイール供給物についての表面量/内部量とすることができる。アルミニウムホイール供給物についての表面量/内部量は、アルミニウム合金ホイール供給物について予測される表面組成と内部組成との差異に基づいて決定することができる。例として、供給物についての表面量/内部量を決定するためには、第一にステップ206aにおいて、少なくとも一つの断片の外表面組成を決定することとし、第二にステップ206bにおいて、少なくとも一つの断片の内部組成を決定することとし、第三にステップ206cにおいて、各断片についての表面量/内部量をその断片の表面組成と内部組成とから決定するものとすることができる。バッチ表面量/内部量、すなわち新露出表面指標は、例えば平均することによって、各断片の表面量/内部量から決定することができる。表面量/内部量を使用することにより、測定値が表面量/内部量に対してどの程度であるかによって、組成測定値が内表面測定値であるかまたは外表面測定値であるかを決定することができるため、表面量/内部量は新露出表面指標とすることができる。
【0053】
いくつかの例では、表面量/内部量は、アルミニウム合金ホイール内で見いだされる個々の元素、例えばケイ素、の組成測定値を含むものとすることができる。他の例では、表面量/内部量は、アルミニウム合金ホイール内で見いだされる個々の元素のすべて、または個々の元素のサブセットの組成のスペクトルを含むものとすることができる。
【0054】
方法200のいくつかの例では、表面量/内部量は、表面組成測定値を内部組成測定値と区別するための分別基準を含むものとすることができる。例えば、特定の合金製のアルミニウム合金ホイールは、典型的に、X~Yの範囲の内部ケイ素組成とA~Bの範囲の外表面ケイ素組成とを有すると決定され得る。これらの範囲、すなわち分別基準は、組成測定値が内部組成測定値であるか外表面組成測定値であるかを特定するために、使用することができる。表面量/内部量は、上記のように個別のある元素についての表示とすることも、アルミニウム合金ホイール内で見いだされた元素のスペクトルの表示とすることもできる。個別の元素についての分別基準である例では、二つ以上の分別基準がある場合があり、分別基準が元素に依存して変化することがある。例えば、内部ケイ素組成範囲および外部ケイ素組成範囲に加えて、特定の合金製のアルミニウム合金ホイールは、典型的に、X’~Y’の範囲の内部鉄組成とA’~B’の範囲の外表面鉄組成とを有すると決定されることがある。
【0055】
分別基準が特定の元素についての元素濃度範囲を含む方法200の例において、ステップ208で決定される複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、その元素についての元素測定値を含むものとすることができる。従って、この例において、総合組成推定値を決定することは、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値について、その組成測定値が内部組成測定値であるか表面組成測定値であるかを決定するために、分別基準を使用することを含むことができる。組成測定値が内部組成測定値であるか表面組成測定値であるかどうかは、その組成測定値についての元素測定値がその元素についての元素濃度範囲にあるかどうかを決定することによって、決定することができる。他の例において、分別基準は、複数の元素濃度範囲、すなわちスペクトルを含むことがあり、各組成測定値は、複数の元素について一つの測定値を含むことがあり、また、組成測定値が内表面であるか外表面であるかを決定するために、分別基準を用いて総合組成を推定することができ、これにより、総合内部組成を計算することができる。
【0056】
要約すると、いくつかの例では、例えば図5を参照するように、方法200のステップ208において総合組成推定値を決定することは、(a)その組成測定値が内部組成測定値であるかを決定するために分別基準を使用するステップ208aと、(b)その組成測定値が内部組成測定値であるとき、総合組成推定値の決定にその組成測定値を使用するステップ208bと、(c)その組成測定値が内部組成測定値ではないとき、その組成測定値を使用することなく総合組成推定値を決定するステップ208cと、を含むものとすることができる。
【0057】
方法200の他の例では、表面量/内部量は、断片の表面組成から断片の内部組成を計算するための表面・内部間相関を含むものとすることができる。これらの実施形態において、組成測定値が内部組成測定値でないからといって、総合組成推定値を決定するために組成測定値を使用しないということではなく、外表面組成測定値に表面・内部間相関を乗算するかまたは除算することによって、内部組成の推定値を提供することができ、これにより、総合組成推定値を決定することができる。例えば、内部組成測定値のための元素「A」濃度が典型的に、外表面組成測定値における元素「A」濃度の約90%であることが見いだされたとする。この場合、特定の組成測定値が外表面組成測定値として分類された場合(例えば分別基準を用いて)、この測定値を使用して総合組成推定値を決定する前に、この測定値に0.9を乗算することによって調整することができる。表面・内部間相関がある元素についての元素相関を含む方法200の他の例では、表面測定値が検出されたとき、元素相関に基づいて表面・内部間相関を使用することにより組成測定値を調整することができる。
【0058】
方法200のさらに別の例では、表面・内部間相関は複数の元素相関を含むことがあり、複数の元素のそれぞれについてその元素のための元素相関を含んでいる。この例において、複数の断片における断片材料についての複数の組成測定値の各組成測定値は、複数の元素のそれぞれについてその元素についての元素測定値を含むものとすることができる。これにより、各表面組成測定値について、表面・内部間相関を使用してその組成測定値を調整することは、複数の元素のそれぞれについて、その元素相関に基づいてその元素測定値を調整することを含むものとすることができる。例えば、内部組成測定値のための元素「A」濃度が典型的に、外表面組成測定値における元素「A」濃度の約90%であり、一方、内部組成測定のための元素「B」濃度が典型的に、外表面組成測定値における元素「B」濃度の約95%であることが見いだされたとする。最後に、内部組成測定値のための元素「C」濃度が典型的に、外表面組成測定値における元素「C」濃度の約110%であることが見いだされたとする。この場合、特定の組成測定値が外表面組成測定値として分類された場合、それは、これらの測定値を使用して総合組成推定値を決定する前に、その元素「A」濃度に0.9、その元素「B」濃度に0.95、およびその元素「C」濃度に1.1を乗算することによって調整することができる。
【0059】
方法200のさらに別の例では、総合組成推定値を決定することは、(a)その組成測定値が外表面組成測定値であるかを決定するために分別基準を使用することと;(b)その組成測定値が外表面組成測定値であるとき、総合組成推定値を決定する際にその組成測定値を使用することと;(c)その組成測定値が外表面組成測定値ではないとき、その組成測定値を使用することなく総合組成推定値を決定することと、を含むことができる。方法200のこの例では、各外表面組成測定値について、その外表面組成測定値を有する断片の対応する内部組成を計算するために、表面・内部間相関を使用することができる。すなわち、上記のように、表面・内部間相関の複数の元素相関における各元素について、および各外表面組成測定値について、その元素の外表面組成測定値は、その外表面組成測定値に表面・内部間相関の複数の元素相関中の対応する元素相関を乗算することによって調整することができる。
【0060】
これら本発明の三つの態様によれば、総合組成推定値は、i)内部組成測定値のみに基づいて、ii)外表面組成測定値のみに基づいて、または、iii)内部組成測定値と外表面組成測定値との両方に基づいて、決定することができる。これら三つの態様のすべてにおいて、内部組成測定値と外表面組成測定値とは、分別基準を用いて互いに区別することができる。総合組成推定値を決定するために外表面組成測定値が用いられる態様ii)および態様iii)において、これらの外表面組成測定値は、その外表面組成測定値に表面・内部間相関の複数の元素相関において対応する元素相関を乗算することによって調整することができる。
【0061】
図6を参照すると、廃棄金属片をリサイクルするためのシステム300のブロック図がそこに示されている。図示のように、廃棄金属片をリサイクルするためのシステム300は、コンベヤ302、断片化装置304、少なくとも一つのセンサ306、および少なくとも一つのプロセッサ308を備えるものとすることができる。
【0062】
コンベヤ302は、廃棄金属片供給物を提供するものであり、例えば、これに限定するものではないが、特定の合金製のアルミニウム合金ホイールのような供給物である。廃棄金属片は、何らかの適当な手段によって(例えば、これに限定するものではないが、コンベヤ302の一端に接続されたホッパー中に廃棄金属片を投入するトラックによって、または廃棄金属片をコンベヤに載せる作業員によって手動で)コンベヤ302上に載せられる。図1~5を参照して上述したように、コンベヤ302によって提供される各廃棄金属片は、表面組成と内部組成とを有している。表面組成は、廃棄金属片の外表面における組成である。つまり、ある程度の時間露出されていた表面であり、例えば、これからリサイクルされる構成部品の外表面であったものであり得る。内部組成は、廃棄金属片の内部における組成とすることができる。この内部組成測定値は、リサイクルされる構成部品の内部に由来するものとすることができる。
【0063】
廃棄金属片をリサイクルするためのシステム300のいくつかの例では、断片化装置304は、廃棄金属片供給物をコンベヤ302から受け取る。断片化装置304は、廃棄金属片を複数の断片に断片化し、複数の断片の新たに露出された表面が内部組成を有するようにすることができる。いくつかの例では、断片化装置は、シュレッダーまたはカッターとすることができ、廃棄金属片を複数の断片に裁断するために複数の刃を使用するものとすることができる。他の例において、断片化装置は、ウォータージェットカッターであってもよい。いくつかの例では、裁断のパターンはランダムとすることができ、他の例では、裁断のパターンは、複数の断片のそれぞれの上にシグネチャーを配置するように設計されるものとすることができる。
【0064】
システム300の少なくとも一つのセンサ306は、断片化装置によって断片化された複数の断片を検知し、(1)アルミニウム合金ホイール供給物において新たに露出された各表面を区別するための新露出表面指標を決定し、(2)複数の断片中の種々の断片材料について複数の組成測定値を決定するために、使用されるものとすることができる。複数の組成測定値の少なくともいくつかは、複数の断片の新たに露出された表面に由来するものとすることができる。上記のように、システム300のいくつかの例では、少なくとも一つのセンサ306は、レーザ分光法装置を備えるものとすることができる。他の例では、少なくとも一つのセンサ306は、断片化する間に複数の断片の各断片上に配置されたシグネチャーについて、位置決めし検出するためのシステムを備えるものとすることができる。さらに別の例では、少なくとも一つのセンサ306は、断片の最も大きな表面を検出するためのシステムを備えるものとすることができる。
【0065】
システム300の少なくとも一つのプロセッサ308は、総合組成推定値を決定するために使用されるものであり、その断片材料についての複数の組成測定値と新露出表面指標とに基づいて、その断片材料の組成を推定することによって総合組成推定値を決定する。少なくとも一つのプロセッサ308は、少なくとも一つのセンサ306と通信のために接続することができる。
【0066】
少なくとも一つのセンサ306がレーザ分光法装置を含む例では、システムは、冷却される間に材料が特性放射を放出する点まで廃棄金属片の一部を加熱するためのレーザ310も含むものとすることができる。この例において、レーザ分光法装置はその特性放射を測定し、特性放射を分析し、材料の組成測定値を決定するために、少なくとも一つのプロセッサ308に接続することができる。いくつかの例では、レーザ分光法装置は、少なくとも一つのプロセッサ308のうちの第一プロセッサを備えるものとすることができる。この第一プロセッサは、スペクトルを分析し、種々の元素の百分率組成を決定することができる。少なくとも一つのプロセッサ308のうち第一プロセッサとは別個の第二プロセッサが、総合バッチ組成を決定するものとすることができる。あるいは、単一のプロセッサ308がスペクトルを分析し、種々の元素の百分率組成を決定し、更に総合バッチ組成を決定するものとすることができる。
【0067】
廃棄金属片をリサイクルするためのシステム300は、ブラストチャンバ312も備えるものとすることができる。ブラストチャンバ312内では廃棄金属片に向かって、それらの表面を浄化するためにショットなどの研磨材が噴射される(ショットブラスト法)。これらの表面とショットとの衝突により、表面から破片を取り除くことができる。ショットブラストによって除去される破片は、塗料、クリアコート、およびゴムなどの有機化合物、ならびに銅およびクロームを含み得る。システム300のいくつかの例では、ブラストチャンバ300は、遠心ブラスト装置とすることができる。1/2インチ以上のS330鋼ショットを使用することができる。
【0068】
遠心ブラスト装置は、予め定められた経路に沿った移動のために、エンドレスチェーン間を横断する形で延在している複数のフライトで形成された搬送手段を完全に囲むハウジングを備えるものとすることができる。このハウジングは、四つのコンパートメントに区画されて、一つの入口チャンバ、二つのブラストチャンバ、および一つのシェークアウトチャンバ(振り出しチャンバ)を含むものとすることができる。ブラストチャンバ内のフライトは、ブラストに耐性を有するマンガンロッドで形成することができ、一方、シェークアウトチャンバおよび入口チャンバ内のフライトは、より安価でより軽量の材料で形成することができる。廃棄金属片から除去された破片は、シェークアウトチャンバ内から排出してシステムから除去することができ、使用済みの研磨材は、ブラストホイールに戻して再循環させることができる。
【0069】
本明細書においては例のみにより本発明を記載した。添付の請求項によってのみ限定される本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に対して種々の変更や変形を施すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6