IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲蘭▼州大学の特許一覧

特許76176513Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法
<>
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図1
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図2
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図3
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図4
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図5
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図6
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図7
  • 特許-3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20250110BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250110BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20250110BHJP
   C01G 3/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B29C64/118
C01G3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022519583
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020115297
(87)【国際公開番号】W WO2021057546
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】201910916914.5
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520500794
【氏名又は名称】▲蘭▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張興義
(72)【発明者】
【氏名】張宝強
(72)【発明者】
【氏名】張強強
(72)【発明者】
【氏名】劉聡
(72)【発明者】
【氏名】雍華東
(72)【発明者】
【氏名】周又和
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109020533(CN,A)
【文献】特開昭63-281319(JP,A)
【文献】特開平01-104833(JP,A)
【文献】特開昭63-271823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00- 1/54
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00-99/00
D01F 9/08- 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
1)超伝導粉末前駆体の作製:
プリントの主要原材料は、YBCO超伝導材料を用いるか、または超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末であって;
機械的粉砕によって、粒径100~300nmのプリント粉末が得られ;
2)プリントペーストの配合:
前記作製された超伝導粉末前駆体を、適切な割合のポリマーバインダーと潤滑剤との混合液に加えて、直接書き込み式の3Dプリントペーストを形成し;
3)直接書き込みの3Dプリンターによって撚り線のプリントを実現し;
処理されたモデルスライスデータをコンピュータ数値制御側に取り込むと、コンピュータはデジタルシグナルを通信ボードに伝送し、通信ボードによりインク供給通信コマンドとプリント駆動コマンドを同期的に発行し;
インク供給通信コマンドが発行された後、ガス電磁制御弁が開き、空気圧を前記直接書き込みの3Dプリンターのホッパーの押しプラグに負荷し、押しプラグにより圧力をプリントペーストに伝達して、プリントシステムからの均一で滑らかなプリントラインを形成し;
プリント駆動コマンドが発行された後、3つのサーボモーターによるXYZ軸の3方向の制御駆動を行い、X軸とY軸のスライドレールドライブによりXY平面でのプリンターニードルの正確な移動と位置決めを行い、Z軸の高精度ローラースクリュードライブにより底部のプラットフォームの昇降を行い;
前記プリント駆動コマンドは、前記3つのサーボモーターに伝達されると同時に、前記ニードルの回転を駆動するサーボモーターに伝達され、ニードルの安定した回転を行い;ニードルにより押し出された3本のフィラメントをZ軸のプラットフォームに固定し、ニードルの一体化した連続回転によって、XY平面内で撚り合わせ;
ードルのフィラメントをZ軸方向に連続的に伸長させ、底部のプラットフォームを同期して降下させることによって、フィラメントの伸長と連動してニードルの一体化した前記連続回転、底部のプラットフォームの降下と、が同時に行われ、撚り線材の作製を行い;ニードルの太さ、押し出し圧力、底部のプラットフォームの降下速度、回転速度を調整することによって、所望のパラメータの撚り線を作製し;
4)脱プラスチックおよび超伝導相形成処理;
5)封入組立を含むことを特徴とする、
3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【請求項2】
前記超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末は、酸化銅、酸化イットリウムおよび炭酸バリウムであることを特徴とする、
請求項1に記載の3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【請求項3】
前記ポリマーバインダーは、ポリエチレングリコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)またはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であって、潤滑油には鉱物性または植物性のものが使用されており;バインダーは潤滑剤と適切な割合で混合されることを特徴とする、
請求項1に記載の3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【請求項4】
前記ステップ3)におけるプリント前の準備作業は、
最初に、適量のプリントペーストをインク注入・圧力供給ポートを経由してプリンターニードル一体化トラフに注入し;
次に、押しプラグをトラフに配置し;
最後に圧力供給エアチューブを、前記圧力供給エアチューブの軸方向と同一直線上にないインク注入・圧力供給ポートに接続することを特徴とする、
請求項1に記載の3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【請求項5】
前記ステップ4)における脱プラスチックおよび超伝導相形成処理は、具体的に、
プリントされた撚り線を、高温炉に入れて撚り線から高分子と不純物を除くように熱処理を行い;脱プラスチックの条件は500℃の恒温で12~24時間、昇温速度は0.5~1℃/分であって;相形成処理条件は酸素雰囲気中で900~960°Cで20~30時間焼結し、昇降温速度は1℃/分であって;最後に、焼結されたサンプルに対して、0.5~2MPaの酸素分圧、温度500℃の条件下で30時間酸素を補足することを特徴とする、
請求項1に記載の3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【請求項6】
前記ステップ5)における封入組立は、
超伝導線材の使用中の機械的強度、通電性、安全性の要件を満たすために、金属銅スリーブをレーザー溶接技術や電子ビームでシール溶接し;断面寸法や形状の異なる複雑な複合線材を実現することを特徴とする、
請求項1に記載の3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導撚り線を作製する技術分野に属し、特に3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物(YBa Cu の超伝導撚り線の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導材料は、ゼロ抵抗、完全反磁性とジョセフ効果などの独自の特性を持つ自然界でも数少ないメタマテリアルである。超伝導材料は、国防、エネルギー、交通、通信など多くの分野で幅広い応用が期待されており、特に超電導限流器、超電導発電機、超電導フィルター、超電導エネルギー貯蔵など超電導電力およびマグネットにおいて大きな用途の見通しがある。ここで、超伝導線材は、超伝導用途の主要な通電ユニットである。
【0003】
現在使用されている高温超伝導テープ線材は、主にBi系に代表される第1世代の高温超伝導導体とREBCO(REは希土類元素を表す)に代表される高温超伝導導体が主流である。1本の高温超伝導テープ線材は、通電能力が臨界電流によって制限され、実際の用途では、高い通電電流を得るために複数の超伝導テープ線材を並列接続する必要があるが、線材を並列使用している場合、交流の作用下で近接効果や表皮効果が発生し、これにより、交流損失が生じてしまい、使用中の超伝導ケーブルの安全性や安定性に影響を与え、使用リスクやランニングコストを増大させることになる。現在、この課題に対しては、結晶構造の変更、超伝導芯線のピッチの拡大、超伝導芯線のねじれや転位、超伝導芯線の細線化などの一連の解決対策があった。近年、超伝導テープ線材は大きな進歩を遂げている。ドイツのカールスルーエ研究センターは、長さ方向に周期的な台形分布を持つRACCケーブルを設計し、米国国立標準技術研究所は、高温超伝導テープ材を中央の骨格にらせん状に巻いてコンパクトなCORC導体ケーブルを形成することを提案し、マサチューセッツ工科大学は超伝導テープ材の積み重ねと撚り合わせに基づくTSTCケーブル導体を提案した。同時に、技術的に成熟したCICC導体やラザフォードフラットケーブルも、最も基本的な捻りの形態によるケーブル導体であるため、撚線ケーブルは超伝導ケーブルの最も一般的で成熟した技術であると言える。しかし、超伝導ケーブルを作製するための芯線は、主にパウダーインチューブ法によるBi系線材や、YBCOテープ材の切断によるフィラメントが主流であり、撚り巻きの工程では、手順が煩雑で、プロセスが複雑なだけでなく、クラックや断線が生じやすく、超伝導ケーブルの電流通電性能が不安定で、機械的特性も低下してしまう。
【0004】
直接書き込み式3Dプリントの技術は、金型を必要とせず、マイクロナノスケールのフィラメントを押し出して層ごとに積み重ねるように、さまざまな複雑形状のセラミックス構造やデバイスを迅速に成形し、製品の生産サイクルを短縮する新たな製造プロセスである。したがって、3Dプリントに基づく技術は、ミクロンひいてはナノスケールのフィラメントを作製し、フィラメント同士を撚り合わせることを可能にし、超伝導線材の臨界電流や、機械的特性を改善するためのアイデアが提供された。しかし、現在、高温超伝導線材の3Dプリント技術については、関連する研究がない。本発明は、3Dプリント技術に基づいて、高速かつ正確な撚り線の作製方法を提案するものである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、従来技術および当該分野における上記の技術的課題を解決するために、
以下のステップ:
1)超伝導粉末前駆体の作製:プリントの主要原材料は、YBCO超伝導材料を用いるか、または超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末であって、機械的粉砕によって、粒径100~300nmのプリント粉末が得られ;
2)プリントペーストの配合:研磨された超伝導粉末前駆体を、適切な割合のポリマーバインダーと潤滑剤との混合液に加えて、直接書き込み式の3Dプリントペーストを形成し;
3)直接書き込みの3Dプリンターによって撚り線のプリントを実現し
理されたモデルスライスデータをコンピュータ数値制御側に取り込むと、コンピュータはデジタルシグナルを通信ボードに伝送し、通信ボードによりインク供給通信コマンドとプリント駆動コマンドを同期的に発行し;インク供給通信コマンドが発行された後、ガス電磁制御弁が開き、空気圧をトラフの押しプラグに負荷し、そして、圧力をプリントペーストに伝達して、プリントシステムからの均一で滑らかなプリントラインを形成し;プリント駆動コマンドが発行された後、3つのサーボモーターによるXYZ軸の3方向の制御駆動を行い、X軸とY軸のスライドレールドライブによりXY平面でのプリンターニードルの正確な移動と位置決めを行い、Z軸の高精度ローラースクリュードライブにより底部のプラットフォームの昇降を行い;同時に、プリント駆動コマンドもニードルの回転を駆動するサーボモーターに伝達され、ニードルの安定した回転を行い;ニードルにより押し出された3本のフィラメントをZ軸のプラットフォームに固定し、ニードルの一体化した連続回転によって、XY平面内で撚り合わせ;同時に、ニードルのフィラメントをZ軸方向に連続的に伸長させ、底部のプラットフォームを同期して降下させることによって、フィラメントの伸長、一体化したニードルの回転、底部のプラットフォームの降下と連動して、撚り線材の作製を行い;ニードルの太さ、押し出し圧力、底部のプラットフォームの降下速度、回転速度などを調整することによって、所望のパラメータの撚り線を作製し;
4)脱プラスチックおよび超伝導相形成処理;
5)封入組立を含む、
3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法を提供する。
【0006】
好ましくは、上記の超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末は、酸化銅、酸化イットリウムおよび炭酸バリウムである。
【0007】
好ましくは、上記のポリマーバインダーは、ポリエチレングリコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)またはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であって、潤滑油には鉱物性または植物性のものが使用されており;バインダーは潤滑剤と適切な割合で混合される。
【0008】
好ましくは、上記のステップ3)におけるプリント前の準備作業は、
最初に、適量のプリントペーストをインク注入・圧力供給ポートを経由してプリンターニードル一体化トラフに注入し、次に、押しプラグをトラフに配置し、最後に圧力供給エアチューブをインク注入・圧力供給ポートにユニバーサルジョイントで接続する。
【0009】
好ましくは、上記のステップ4)における脱プラスチックおよび超伝導相形成処理は、具体的に、
プリントされた撚り線を、高温炉に入れて撚り線から高分子と不純物を除くように熱処理を行い;脱プラスチックの条件は500℃の恒温で12~24時間、昇温速度は0.5~1℃/分であって;相形成処理条件は酸素雰囲気中で900~960°Cで20~30時間焼結し、昇降温速度は1℃/分であって;最後に、焼結されたサンプルに対して、0.5~2MPaの酸素分圧、温度500℃の条件下で30時間酸素を補足する。
【0010】
好ましくは、上記のステップ5)における封入組立は、
超伝導線材の使用中の機械的強度、通電性、安全性などの要求を満たすために、金属銅スリーブを成熟したレーザー溶接技術や電子ビームでシール溶接し;断面寸法や形状の異なる複雑な複合線材を実現する。
【0011】
本発明は、プリント駆動について、主に3軸同期と一体化ニードルの回転に分かれている。インク供給通信コマンドは、主にドーピング量である空気圧で制御され、異なる空気圧はインク吐出速度またはプリントライン速度に対応し、インク吐出速度を測定してニードルの回転数を調整してマッチングし、底部のプラットフォームの降下速度を変え、連続的にフィードバックを調整した結果、直径、カットオフ、長さと芯線の異なる撚り線が得られた。
【0012】
回転ニードルの一体化は、撚り線をプリントするための鍵であって、アチューブ中の空気圧がペーストの押し出しに対して動力と制御を与え、ただし、駆動軸はサーボモーターにより動力が提供される。プリントプログラムが開始されると、最初に、ペーストがフィードチューブを介してプリンターニードルから均一に押し出され、押し出されたラインを底板に固定する。次に、駆動軸によりニードル一体化回転を駆動させ、連続の押し出、底部のプラットフォームの降下、ねじれによって、ニードルの太さ、押し出し圧力、底部のプラットフォームの降下速度、回転速度を調整しながら所望のパラメータの撚り線を形成する。
本発明は、以下のステップ:
1)超伝導粉末前駆体の作製:
プリントの主要原材料は、YBCO超伝導材料を用いるか、または超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末であって;
機械的粉砕によって、粒径100~300nmのプリント粉末が得られ;
2)プリントペーストの配合:
研磨された超伝導粉末前駆体を、適切な割合のポリマーバインダーと潤滑剤の混合液に加えて、直接書き込み式の3Dプリントペーストを形成し;
3)バルク材構造のプリント:
真空補助によってペースト中のガスを排出し;
次に、配合されたプリントペーストをプリントバレルに装填して、空気圧または機械的押し当てによってプリンターニードルからペーストを押し出し;
コンピュータモデリングを適用して、所望の構造のプリントパスを設計し;
直接書き込み式3Dプリント法を用いて、設計された構造を載物ステージの底板上で層ごとに沈積するように複製して形成し、ウェットサンプルを形成し;
4)凍結乾燥による圧粉体の形成:
プリントされたウェットサンプルを-30~-60℃の低温環境に配置し;
ウェットサンプル内の氷結晶を凍結乾燥により排除して、圧粉体を形成し;
5)脱プラスチックおよび超伝導相形成処理を含む、
3Dプリントイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導バルク材の作製方法をさらに提供した。
また、上記の超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末は、酸化銅、酸化イットリウムと炭酸バリウムである。
好ましくは、上記のポリマーバインダーは、ポリエチレングリコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)またはカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であって、潤滑油には鉱物性または植物性のものが使用されており;バインダーは潤滑剤と適切な割合で混合される。
好ましくは、上記のステップ5)における脱プラスチックおよび超伝導相形成処理は、具体的に
プリントされた圧粉体を、高温炉に入れて高分子と不純物を除くように熱処理を行い;脱プラスチックの条件は500℃の恒温で12~24時間、昇温速度は0.5~1℃/分であって;相形成処理条件は酸素雰囲気中で900~960°Cで20~30時間焼結し、昇降温速度は1℃/分であって;最後に、焼結されたサンプルに対して、0.5~2MPaの酸素分圧、温度500℃の条件下で30時間酸化する。
【0013】
本発明は、直接書き込み式の3Dプリントの先端技術を高温超伝導線材に初めて適用することを可能にしたものである。3Dプリントによるマイクロナノスケールの超伝導芯線の作製は、芯線の細線化プロセスを達成し、モデリング、スライス、プリンターニードルのひねりなどにより、高温超伝導線材の作製が成形金型によって制限される苦境を乗り切ることによって、材料と構造の一体化設計を可能にした。本発明は、高温超伝導線材の作製プロセスをを簡素化し、相形成処理プロセスおよびひねりの難しさを低減し、高温超伝導線材の通電性能と生産効率を向上させ、生産コストを低下し、超伝導線材の大規模な実用化推進に適しており、膨大な科学的研究と商業的価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、本発明は、添付の図面および具体的な実施形態に合わせてさらに説明される。
図1】撚り線のプリントシステムの原理図と制御フローチャートである。
図2】プリンターニードル一体化の上面図である。
図3】プリンターニードル一体化の左側面図である。
図4】プリンターニードル一体化の正面図である。
図5】プリンターニードル一体化の斜視図である。
図6バルク材のプリントシステムの原理図と制御フローチャートである。
図73DプリントによるYBCO超伝導バルク材の電磁気特性与と構造特性の図である。
図83Dプリントに基づく作製方法によってプリントされるYBCO超伝導バルク材のウェットサンプルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法を開示した。
【0016】
次の例を参照されたい。
1. 本発明は、超伝導粉末前駆体の作製を開示した:プリントの主要原材料は、YBCO超伝導材料を用いるか、または超伝導相の焼結形成が可能な混合粉末(例えば、酸化銅、酸化イットリウム、炭酸バリウムの混合粉末)である。プリントの主要原材料を、機械的粉砕によって、粒径100~300nmのプリント粉末が得られる。ここで、上記の機械的粉砕は、ボールミルなどのように設計が異なる。
【0017】
2. 本発明は、プリントペーストの配合を開示した:研磨された超伝導粉末前駆体を、適切な割合のポリマーバインダーと潤滑剤の混合液に加えて、直接書き込み式の3Dプリントペーストを形成する。ここで用いられるポリマーバインダーは、ポリエチレングリコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などであってよく、潤滑油には鉱物性または植物性のものが使用されてよい。バインダーは潤滑剤と適切な割合で混合される。
【0018】
3. 本発明は、撚り線のプリントを開示した:改良された直接書き込みの3Dプリンターで撚り線のプリントを実現し、プリントのフローは図1に示されるとおりである。
【0019】
プリント前の準備作業:最初に、適量のプリントペーストをインク注入・圧力供給ポートを経由してプリンターニードル一体化トラフに注入し、次に、押しプラグをトラフに配置し、最後に圧力供給エアチューブをインク注入・圧力供給ポートにユニバーサルジョイントで接続する。ニードル一体化の構造は、図2~5に示されている。
【0020】
プリント:処理されたモデルスライスデータをコンピュータ数値制御側に取り込むと、コンピュータはデジタルシグナルを通信ボードに伝送し、通信ボードによりインク供給通信コマンドとプリント駆動コマンドを同期的に発行する。インク供給通信コマンドが発行された後、電磁制御弁が(例えばガス電磁制御弁が)開き、空気圧をトラフの押しプラグに負荷し、押しプラグにより圧力をプリントペーストに伝達して加圧ペーストを形成し、加圧ペーストをプリンターニードルを経由して均一に押し出す。プリント駆動コマンドが発行された後、3つのサーボモーターによりXYZ軸の3方向の制御駆動を行い、XとY軸のスライドレールドライブによりXY平面でのプリンターニードルの正確な移動と位置決めを行い、Z軸の高精度ローラースクリュードライブにより底部のプラットフォームの昇降を行う。同時に、プリント駆動コマンドもニードル回転を駆動するサーボモーターに伝達され、ニードルの安定した回転を行う。ニードルにより押し出された3本のフィラメントをZ軸のプラットフォームに固定し、ニードルの一体化した連続回転によって、XY平面内で撚り合わせる。同時に、ニードルのフィラメントをZ軸方向に連続的に伸長させ、底部のプラットフォームを同期して降下させることによって、フィラメントの伸長、一体化したニードルの回転、底部のプラットフォームの降下と連動して、撚り線材を作製する。ニードルの太さ、押し出し圧力、底部のプラットフォームの降下速度、回転速度などを調整することによって、所望のパラメータの撚り線を作製する。
【0021】
4.脱プラスチックおよび超伝導相形成処理
プリントされた撚り線を、高温炉に入れて撚り線から高分子と不純物を除くように熱処理を行う。脱プラスチックの条件は500℃の恒温で12~24時間、昇温速度は0.5~1℃/分である。相形成処理条件は酸素雰囲気中で900~960°Cで20~30時間焼結し、昇降温速度は1℃/分である。最後に、焼結されたサンプルに対して、0.5~2MPaの酸素分圧、温度500℃の条件下で30時間酸素を補足する。
【0022】
5.封入組立
超伝導線材の使用中の機械的強度、通電性、安全性などの要件を満たすために、金属銅スリーブを成熟したレーザー溶接技術や電子ビームでシール溶接する。断面寸法や形状の異なる複雑な複合線材を実現する。
本発明は、さらに、3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導バルク材の作製方法を開示しており、ここで、ステップ1)超伝導粉末前駆体の作製、およびステップ2)プリントペーストの配合のステップは3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法におけるステップ1)およびステップ2)と同じであり、プリントバルク材のステップについては、以下の通りである。該ステップ(ここはステップ3)と定義する)では、プリントペースト内のガスは排気する必要がある;好ましくは、より良いガス排出のために、真空補助手段を使用する。そして、配合されたプリントペーストをプリントバレルに装填して、空気圧または機械的押し当てによってプリンターニードルからペーストを押し出す。該方法では、コンピュータモデリングを適用して、所望の構造のプリントパスを設計する必要があり;さらに、直接書き込み式3Dプリント技術を用いて、設計されたプリント構造を載物ステージの底板上で層ごとに沈積するように複製して形成し、ウェットサンプルを形成する。上記の作製方法に、単一のプリンターニードルを用いることが好ましい。
そして、上記の凍結乾燥ステップは実行される(ここは、ステップ4)と定義する)。具体的に、プリントされたウェットサンプルを、例えば-30~-60℃の低温度を保つ凍結乾燥机に24~48時間配置する。上記のウェットサンプル内の氷結晶は排除されて、圧粉体は最終的に形成される。
上記の脱プラスチックおよび超伝導相形成処理のステップは3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物の超伝導撚り線の作製方法における脱プラスチックおよび超伝導相形成処理のステップと同一であって、具体的な詳細は繰り返さない。
本発明は、直接書き込み式3Dプリント技術を凍結乾燥対策と組み合わせ、超軽量、多孔質、複雑形状、高い結晶化度、良好な電磁気特性などの利点を備えるYBCO高温超伝導バルク材を作製した。異なる構造のバルク材は、例えば、直方体、立方体、グリッド、フライホイール、スケルトンディスクなどにプリントされることができる。
【0023】
本発明は、初めて、直接書き込み式3Dプリントの先端技術によって、マイクロナノスケールの超伝導芯線を作製し、モデリング、スライス、プリンターニードルのひねりなどにより、超伝導撚り線をプリントし、最後に、脱プラスチック、相形成、封入組立により超伝導撚り線の作製を実現した。
【0024】
本発明は、3Dプリントによるイットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)の高温超伝導線材の作製方法を開示しており、以下の4ステップに分けられる:最初に、ナノスケールの超伝導粉末前駆体を作製し;次に、適切な粘度と支持特性を持つプリントペーストを配合し;その後、CAD三次元モデリングを用いて、STL形式のモデルデータを書き出し、専門ソフトウェアを使ってスライスを行い;プリントヘッドをひねることによって、低電流損失のワンステップでの撚り線を作製する。最後に、プリントされた撚り線を、脱プラスチック、相形成、酸素補充、パッケージングなどのプロセスを経て実用的な超伝導撚り線ケーブルに形成する。
【0025】
最後に、上記の説明は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明は上記の実施形態を参照して詳細に説明されているが、当該技術分野における当業者であれば、上記の実施形態で説明した技術的解決方法を変更したり、その技術的特徴の一部に同等の置換を行うことが可能であることに変わりはない。本発明の精神および原理の範囲内で行われた変更、等価置換、改良等は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0026】
1 ドライブシャフト
2 インク注入・圧力供給ポート
3 トラフ
4 駆動ディスク
5 フィードチューブ
6 プリンターニードル
7 プリントバレル
8 バルク材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8