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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】特定成分含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8998 20060101AFI20250110BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250110BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250110BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20250110BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250110BHJP
【FI】
A61K36/8998
A61P3/00
A61P3/04
A23L7/10 Z
A23L33/105
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023010425
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2021024743の分割
【原出願日】2015-03-30
(65)【公開番号】P2023041777
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】長崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-036327(JP,A)
【文献】特開2010-209051(JP,A)
【文献】特開2003-052334(JP,A)
【文献】特開2003-339350(JP,A)
【文献】特開2007-037525(JP,A)
【文献】特開2008-086217(JP,A)
【文献】特開2002-275078(JP,A)
【文献】特開2014-065672(JP,A)
【文献】特表2012-529436(JP,A)
【文献】鷲野憲之 他,大麦若葉微粉末のメタボリック症候群に対する効果,医学と生物学,日本,財団法人緒方医学化学研究所医学生物学速報会,2007年12月,第151巻 第12号,443-448
【文献】Molecular weight of barley β-glucan influences energy expenditure, gastric emptying and glycaemic response in human subjects,British Journal of Nutrition,2013年,110,pp.2173-2179,10.1017/S0007114513001682
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/8998
A61P 3/00
A61P 3/04
A23L 7/10
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦茎葉の粉砕末を有効成分とすることを特徴とするエネルギー消費促進用組成物(ただし、こうじかび、胚芽及び大麦の若葉を含有する漢方薬、を除く)。
【請求項2】
大麦茎葉の粉砕末を有効成分とすることを特徴とする熱産生促進用組成物(ただし、こうじかび、胚芽及び大麦の若葉を含有する漢方薬、を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分を含有し、かつ、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脱共役タンパク質(Uncoupling proteins;UCPs)はミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸する機能を有する(非特許文献1を参照)。特に、UCP1は、熱産生部位である褐色脂肪細胞に特異的に発現し、電子伝達系におけるATP合成を経ずに、中性脂質を熱へと変換し、直接的にエネルギーを消費させる役割を担う。また、前駆細胞からの褐色脂肪細胞への分化を促進することができれば、UCP1の発現量を増大することができ、中性脂質を熱へと変換することが可能になる。したがって、UCP1発現量又は褐色脂肪細胞分化を促進することができれば、中性脂質の消費を経て、肥満を解消できる可能性がある。このような、褐色脂肪細胞分化促進剤やUCP1発現促進剤について、カテキン類を有効成分とするものが特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-65672号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】第124回 日本医学会シンポジウム記録集、p.62-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のUCP1の発現量及び活性化を促進できるものは、天然物から単離及び精製した特定物質を有効成分として含有する。しかし、このような特定物質は、薬理作用が強いことから、摂取するに際して注意が必要であり、過剰な摂取により副作用がもたらされる危険性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、副作用の問題がなく、長期的かつ持続的な摂取が可能である、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、驚くべきことに、特定の成分を含有することによって、格別顕著なUCP1発現促進効果及び/又は褐色脂肪細胞分化促進効果が得られることを見出した。そして、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物として、特定の成分を含有する組成物の創作に成功した。本発明は、かかる知見や成功例に基づいて完成された発明である。
【0008】
したがって、本発明によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する化粧用組成物が提供される。
【0009】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有するUCP1発現促進用組成物が提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する褐色脂肪細胞活性化用組成物が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する代謝促進用組成物が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する抗肥満用組成物が提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する体脂肪減少用組成物が提供される。
【0014】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する熱産生促進用組成物が提供される。
【0015】
本発明の別の側面によれば、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントからなる群から選ばれる少なくとも1種類の成分を含有する組成物が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有し、さらにこれらの作用に関連して、褐色脂肪細胞活性化作用、代謝促進作用、抗肥満作用、体脂肪減少作用、熱産生促進作用、UCP1発現促進作用、エネルギー産生促進作用、中性脂質低下作用、皮脂抑制作用、脂肪代謝促進作用などを示すことが期待できる。
【0017】
本発明の組成物で用いられる特定の成分は、それぞれ医薬品や化粧品などでの使用実績のあるものであることから、本発明の組成物は安全性が高いものである。そこで、本発明の組成物は、上記作用を有することにより、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物として有用であり、非経口的又は経口的な形態で提供することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用を有し、かつ、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントのいずれかの成分(以下、特定成分とよぶ。)を少なくとも含有する。
【0019】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び褐色脂肪細胞分化促進作用のうち、いずれか1種の作用を有するものであってもよいし、これら2種全ての作用を有するものであってもよい。また、特定成分は、特定成分のうちのいずれか1種の成分であってもよいし、2種以上の成分であってもよい。
【0020】
本発明の組成物は、UCP1発現促進作用及び褐色脂肪細胞分化促進作用の他に、褐色脂肪細胞活性化作用、代謝促進作用、抗肥満作用、体脂肪減少作用、熱産生促進作用、エネルギー産生促進作用、中性脂質低下作用、皮脂抑制作用及び脂肪代謝促進作用を示し得る。
【0021】
本発明の組成物は、上記した作用を有することにより、UCP1発現促進用組成物、代謝促進用組成物、抗肥満用組成物、体脂肪減少用組成物及び熱産生促進用組成物という態様を採り得る。
【0022】
ホップはセイヨウカラハナソウ(Humulus lupulus)として知られているものであれば特に限定されず、例えば、その花(毬花、球果)、種子、果実、葉、茎、根などの部位を用いることができるが、ホップの球果を用いることが好ましい。
【0023】
ミントはセイヨウハッカ(Mentha piperita)として知られているものであれば特に限定されず、例えば、その花、種子、果実、葉、茎、根などの部位を用いることができるが、ミントの葉を用いることが好ましい。
【0024】
大麦はオオムギ(Hordeum vulgare)として知られているものであれば特に限定されず、例えば、その花、種子、果実、葉、茎、根などの部位を用いることができるが、大麦の葉や茎を用いることが好ましい。
【0025】
プラセンタは通常知られているとおりのプラセンタであれば特に限定されず、例えば、ブタ、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジなどの胎盤由来の抽出物又はその成分である動物性プラセンタ、魚類の卵巣膜などに由来する抽出物又はその成分である海洋性プラセンタ、植物の胚芽などに由来する抽出物又はその成分である植物性プラセンタなどが挙げられるが、動物性プラセンタが好ましくは、ブタ由来の動物性プラセンタがより好ましい。
【0026】
セラミドはスフィンゴシンと脂肪酸とがアミド結合した化合物であれば特に限定されず、例えば、天然物に由来するセラミドや合成して得られるセラミドが挙げられるが、天然物に由来するセラミドが好ましく、イネ、トウモロコシ、コンニャク、マイタケ、タモギタケ、ダイズ、コムギ、ビートなどに由来するセラミドがより好ましく、イネ由来のセラミド(グルコシルセラミド)がさらに好ましい。
【0027】
トレハロースは通常知られているとおりのトレハロースであれば特に限定されないが、例えば、トレハロースそのものやその水和物や光学異性体などのトレハロース誘導体が挙げられるが、好ましくはD-(+)-トレハロースである。
【0028】
アスパルテームは通常知られているとおりのアスパルテームであれば特に限定されないが、例えば、アスパルテームそのものやその光学異性体などのアスパルテーム誘導体が挙げられるが、好ましくはCAS登録番号が22839-47-0であるアスパルテームである。
【0029】
アラニンは通常知られているとおりのアラニンであれば特に限定されないが、例えば、アラニンそのものやその光学異性体などの誘導体が挙げられるが、好ましくはCAS登録番号が338-69-2であるアラニンである。
【0030】
特定成分のうち、天然物についてはその加工物であってもよい。加工物としては、例えば、乾燥粉末、細片化物及びその乾燥粉末、搾汁及びその乾燥粉末、抽出物及びその乾燥粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、乾燥粉末であることが好ましい。
【0031】
天然物の乾燥物を得る方法は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉の粉末については特許第3277181号公報に開示されるような方法で製造できる。すなわち、大麦の茎葉を収穫後、水で洗浄し、泥などを洗い落とし、水気を切った後、適当な長さに切断する。次いで必要に応じて、熱水処理や蒸熱処理などのブランチング処理が行われる。このときの処理の温度及び時間は、処理する大麦茎葉の量及び熱水のpHに応じて適宜決定すればよい。ブランチング処理された大麦茎葉を直ちに冷却し、遠心分離などで脱水を行う。次いで、水分含量が5wt%以下になるように乾燥を行う。さらに粗粉砕工程、加熱工程、微粉砕工程などを経て、大麦茎葉粉末を得ることができる。
【0032】
特定成分は、長期にわたりヒトに摂取されてきた実績のある天然物やその由来物及び合成物であって安全性が高いことから、本発明の組成物は、実用性が高く、そのままで、又は加工することにより、非経口的又は経口的な形態で種々の用途に適用可能である。
【0033】
特定成分は、当業者により通常知られている方法によって製造したものでもよいし、市場に流通しているものであってもよい。
【0034】
特定成分は、UCP1発現促進作用又は褐色脂肪細胞分化促進作用を示す。本明細書における「発現促進作用」とは、例えば、UCP1発現促進作用の場合、被験体におけるUCP1遺伝子の発現量を促進すること、UCP1タンパク質の翻訳量を増大すること及びUCP1を活性化することのうち少なくともいずれか1つの作用をいう。また、褐色脂肪細胞活性化作用とは、褐色脂肪細胞を活性化すること及び褐色脂肪細胞数を増加させることのうち少なくともいずれか1つの作用をいう。
【0035】
UCP1発現促進作用について、非特許文献1に記載されているとおり、肥満動物ではUCP1の機能が低下していること、多食しても肥満しない動物はUCP1が増加していること、人為的にUCP1の発現を低下させたマウスは肥満し高発現マウスは痩せることが知られている。したがって、UCP1発現促進作用により、抗肥満効果が期待でき、実際にUPC1発現促進作用を有する物質は、白色脂肪細胞での脂肪分解を促すと同時にUCP1を活性化して、遊離した脂肪酸を熱に変え、最終的に体脂肪を減少させることができる。
【0036】
熱産生促進作用とは、例えば、褐色脂肪細胞による中性脂質からの熱産生を促進する作用をいう。中性脂質低下作用とは、例えば、中性脂質を分解して生体内における中性脂質の全量を低下させる作用をいう。皮脂抑制作用とは、例えば、皮脂の発生を抑制する作用をいう。脂肪代謝促進作用とは、例えば、肥満状態を形成する脂肪細胞や脂肪組織を小型の正常な脂肪細胞に質的変換する作用をいう。体脂肪減少作用とは、例えば、遊離した脂肪酸を熱に変えることにより体脂肪を減少させる作用をいう。代謝促進作用及び抗肥満作用とは、例えば、体脂肪を減少するように代謝を促進する作用及び該作用により肥満になることを抑制する作用をいう。エネルギー産生促進作用とは、例えば、褐色脂肪細胞による中性脂質からの熱産生を通じてエネルギーを産生する作用をいう。本段落における各作用はそれぞれ記載した意味の作用を含むが、その他の作用機序により実現されるものも包含する。
【0037】
本発明の抗肥満用組成物などの抗疾患組成物が奏する抗疾患効果とは、例えば、抗肥満用組成物が奏する抗肥満効果の場合、被験体における現在又は将来の肥満若しくは肥満症であるとされる状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態を改善することをいう。また、インスリン抵抗性とは、肝臓、脂肪細胞、骨格筋などで、インスリンの主な作用である糖の吸収促進作用が弱っている状態をいう。抗インスリン抵抗性効果とは、被験体におけるSSPG(Steady-state plasma glucose)法などによる現在又は将来のインスリン抵抗性の指標となる値がより悪化することを抑制若しくは遅滞又はその値を改善することをいう。
【0038】
肥満は様々な疾病の原因となることが知られており、そのような疾病としては2型糖尿病、高血圧症、高脂血症などが挙げられる。さらにこれらの疾病を通じ、脳卒中や虚血性心疾患などがもたらされる場合もある。肥満状態になると、脂肪細胞の肥大が認められ、TNF-α及び遊離脂肪酸(FFA)が分泌され、これらが筋肉細胞や肝臓細胞などのインスリンの標的細胞での糖の取り込みを阻害するとともに、インスリンの働きを促進するアディポネクチンの分泌が抑制され、細胞レベルでインスリン感受性の低下を引き起こし、インスリン抵抗性が生じる。上記の肥満によってもたらされる疾病は、インスリン抵抗性に基づく、一連の代謝異常状態とみられている。そこで、本発明の組成物を用いることにより、肥満や肥満症と関連付けられる2型糖尿病、高血圧症、高脂血症などの疾病を予防又は改善することが可能である。
【0039】
ここで、2型糖尿病の予防及び改善とは、糖尿病の状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はそれらの状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。高血圧症の予防及び改善とは、高血圧とされる状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。高脂血症の予防及び改善とは、高脂血症の状態又は境界域の状態になることを抑制若しくは遅滞又はその状態から正常域といわれる状態に近づけることをいう。
【0040】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、室温や加温下で、特定成分を含有せしめることにより、固形状組成物とすることができる。または、この固形状組成物を、水などの溶媒に溶解させて液状組成物とすることができる。さらに、特定成分の液状物に、他の固形状成分を加えて混合することにより液状組成物とすることができる。なお、得られた液状組成物は、乾燥処理を経て、粉末化しても良い。この場合の乾燥処理の方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の組成物は、用途に応じて、そのままで、又は他の成分と混合して使用することができる。このように、本発明の組成物は、特定成分の他に、本発明の目的を達成し得る限り、種々のものを配合できる。
【0042】
例えば、本発明の組成物には、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、香油などの通常の加工に使用される添加物をさらに含有することができる。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0043】
本発明の組成物は、通常用いられる形態であれば特に制限されず、例えば、液状、ローション状、ムース状、ゲル状、乳液状、懸濁液状、クリーム状、軟膏状、シート状、エアゾール状、スプレー状、スティック状、粉状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、ペースト状、カプセル状、カプレット状などの各形態を採り得る。
【0044】
本発明の組成物は、非経口用組成物として、例えば、化粧品に適した形態として使用することができる。すなわち、本発明の組成物の一態様は、化粧用組成物である。例えば、本発明の組成物は、そのままで、又は通常化粧品の加工に使用される添加物と混合して、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤などの種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、洗顔剤、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレーなどとして利用できる。
【0045】
本発明の組成物に含有される特定成分の含有量は、UCP1発現促進作用及び/又は褐色脂肪細胞分化促進作用が認められる量であれば特に限定されないが、経口用組成物としては、例えば、組成物全体に対して、0.0001wt%以上、好ましくは0.001wt%以上であり、化粧品などの非経口用組成物としては、例えば、0.00001wt%以上、好ましくは0.0001wt%以上である。
【0046】
本発明の組成物の具体的な態様として、例えば、組成物全体に対して、特定成分のいずれか1種の成分を0.001~100wt%で含有する組成物が挙げられる。このうち、特定成分を0.01~80wt%で含有する組成物がより好ましい。
【0047】
本発明の組成物の別の具体的な態様として、組成物全体に対して、特定成分のいずれか2種の成分を合計で10~100wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。このうち、該2種の成分のうち一方の成分を10~90wt%、他方の成分を90~10wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。
【0048】
本発明の組成物の別の具体的な態様として、組成物全体に対して、特定成分のいずれか3種の成分を合計で10~100wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。このうち、該3種の成分のうち1種目の成分を10~50wt%、2種目の成分を30~40wt%、3種目の成分を60~10wt%の割合で含有する組成物が挙げられる。
【0049】
以下、本発明の組成物の具体的態様に係る配合例を示すが、本発明はこれら配合例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【0050】
(配合例1:化粧水)
全体を100質量部として、トレハロース 0.01質量部、生姜抽出物 0.01質量部、ケツメイシ 0.01質量部、グリセリン 10質量部、ジグリセリン 3質量部、1,3-ブチレングリコール 12質量部、ペンチレングリコール 3質量部、ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部、クエン酸 0.01質量部、クエン酸ナトリウム 0.02質量部、キサンタンガム 0.1質量部、メチルパラベン 0.15質量部、カルボマー 0.2質量部、水酸化ナトリウム 0.03質量部及び水 残部を混合して、化粧水の態様で本発明の組成物を調製した。
【0051】
(配合例2:シャンプー)
全体を100質量部として、ホップ抽出物 0.02質量部、カフェイン 0.01重量部、ラウレス硫酸ナトリウム 7.5質量部、コカミドプロピルベタイン 4.2質量部、コカミドDEA 3質量部、1,3-ブチレングリコール 0.1質量部、ポリクオタニウム-10 0.225質量部、クエン酸 0.15質量部、クエン酸ナトリウム 0.05質量部、フェノキシエタノール 0.9質量部及び水 残部を混合して、シャンプーの態様で本発明の組成物を調製した。
【0052】
(配合例3:石鹸)
全体を100質量部として、アスパルテーム 0.5質量部、メリロート抽出物 0.2質量部、エラスチン 0.1重量部、グリセリン 2質量部、オリーブ油 1質量部、EDTA-4ナトリウム 0.1質量部、エチドロン酸4ナトリウム 0.2質量部及び石ケン素地 残部を混合及び固化することにより、石鹸の態様で本発明の組成物を調製した。
【0053】
(配合例4:乳液)
全体を100質量部として、セラミド 0.1質量部、アラニン 0.1質量部、アルギニン 0.1質量部、ショ糖脂肪酸エステル 3質量部、グリセリン 12質量部、スクワラン 6質量部、ジメチルシリコーンオイル 24質量部、ポリプロピレングリコール 1質量部、増粘剤 0.06質量部、フェノキシエタノール 0.2質量部、エタノール 5質量部、水酸化ナトリウム 0.01質量部及び精製水 残部を混合して、乳液の態様で本発明の組成物を調製した。
【0054】
(配合例5:化粧用クリーム)
全体を100質量部として、アラニン 0.1質量部、フラクトオリゴ糖 0.1重量部、スクワラン 15.0質量部、ミリスチン酸オクチルドデシル 4.0質量部、水素添加大豆リン脂質 0.2質量部、ブチルアルコール 2.4質量部、硬化油 1.5質量部、ステアリン酸 1.5質量部、親油型モノステアリン酸グリセリン 1.5質量部、モノステアリン酸ポリグリセリル 0.5質量部、ベヘニルアルコール 0.8質量部、モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.7質量部、サラシミツロウ 0.3質量部、d-δ-トコフェロール 0.1質量部、メチルパラベン 0.3質量部、C10~30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2質量部、カルボキシビニルポリマー 0.1質量部、1,3-ブタンジオール 18.0質量部、水酸化ナトリウム 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、化粧用クリームの態様で本発明の組成物を調製した。
【0055】
(配合例6:パック剤)
全体を100質量部として、プラセンタ 0.1質量部、没食子酸 0.01質量部、ポリビニルアルコール 20.0質量部、グリセリン 5.0質量部、エタノール 20.0質量部、カオリン 6.0質量部、防腐剤 0.2質量部、香料 0.1質量部及び精製水 残部を混合して、パック剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0056】
(配合例7:錠剤)
全体を100質量部として、大麦若葉末 10質量部、ショウガ抽出物 8質量部、カフェイン5重量部、メリロート 5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0057】
(配合例8:錠剤)
全体を100質量部として、アラニン 0.5質量部、ケツメイシ末 8質量部、メリロート 5質量部、フラクトオリゴ糖 0.5質量部、結晶性セルロース 20質量部、乳糖 50質量部、ステアリン酸マグネシウム 4質量部及びコーンスターチ 残部を混合及び打錠することにより、錠剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0058】
(配合例9:顆粒剤)
全体を100質量部として、ホップ末 15質量部、ケツメイシ抽出物 5質量部、乳糖 10質量部、ステアリン酸カルシウム 1質量部及び結晶性セルロース 残部を混合及び顆粒化することにより、顆粒剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0059】
(配合例10:カプセル剤)
全体を100質量部として、ミント抽出物 10質量部、生姜抽出物 20質量部、エラスチン5質量部、レシチン 8質量部及びオリーブ油 残部を混合して調製したものを内容液として、これをカプセル殻に内包することにより、カプセル剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0060】
(配合例11:液剤)
全体を100質量部として、大麦若葉抽出物 0.84質量部、アルギニン 1質量部、アラニン 1質量部、果糖ブドウ糖液糖 10質量部、クエン酸 1質量部、安息香酸ナトリウム 0.02質量部、香料製剤 2質量部、スクラロース 0.05質量部、アセスルファムカリウム 0.03質量部、及び精製水 残部を混合して、液剤の態様で本発明の組成物を調製した。
【0061】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例
【0062】
特定成分であるトレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン、ミント及びホップが格別顕著なUCP1発現促進作用を有することを以下のとおりに実証した。
【0063】
(1)被験物質
特定成分のうち、トレハロース、アスパルテーム、セラミド、プラセンタ、アラニン、ミント及びホップは市販のものを使用した。
【0064】
大麦は次のとおりに調製した大麦の茎葉の乾燥粉末を用いた。すなわち、背丈が約30cmで刈り取った大麦の茎葉を水洗いし、付着した泥などを除去し、5~10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90~100℃の熱湯で90秒間~120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分含量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間~180分間、80℃~130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を、ミキサーを用いて、約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、粉砕機を用いて、200メッシュ区分を90%以上が通過するように微粉砕処理し、大麦の茎葉の乾燥粉末を得た。
【0065】
(2)コラゲナーゼ溶液の調製
コラゲナーゼが0.2%(W/V)、BSAが1%(W/V)となるように調製したDMEM培地を、室温で1時間振盪することによって、コラゲナーゼ溶液を調製した。
【0066】
(3)褐色脂肪細胞液の調製
ICRマウス(九動)をジエチルエーテルで安楽殺した後、背部から褐色脂肪組織を摘出した。得られた褐色脂肪組織から、ピンセットを用いて、褐色脂肪の周辺に付着している脂肪組織、血管、筋肉などを取り除いた後、褐色脂肪をDMEM中で3回洗浄した。次いで、コラゲナーゼ溶液に褐色脂肪を浸し、溶液中で褐色脂肪をハサミで細かく切り刻む細断処理に供した。細断処理した褐色脂肪をコラゲナーゼ溶液中で、37℃で1時間インキュベートすることにより細胞分散液を得た。得られた細胞分散液を、100μmの孔径のセルストレイナーでろ過し、次いで遠心処理(800rpm、5min、20℃)に供した。次いで、沈殿した細胞をDMEMで懸濁して、細胞懸濁液を得た。次いで、オートクレーブで滅菌処理した25μmフィルターを用いて、得られた細胞懸濁液をろ過した。ろ過上清を遠心(800rpm、5min、20℃)した後、沈殿した細胞を10vol%FBS含有DMEMで懸濁し、褐色脂肪細胞液とした。
【0067】
(4)培地の調製
増殖培地として、10vol%FBS含有DMEMを用いた。
【0068】
分化誘導培地として、増殖培地に2.5μM デキサメタゾン、10μg/ml インスリン及び0.5mM IBMXを含有するものを調製した。
【0069】
維持培地として、上記インスリン溶液を用いて、増殖培地に10μg/ml インスリンを含有するものを調製した。
【0070】
被験物質含有培地は以下のとおりに調製した。すなわち、各被験物質をDMSOに溶解後、維持培地で希釈して、DMSO終濃度が0.5vol%となるように調製し、フィルター滅菌した。滅菌後、0.5vol%DMSO含有維持培地を用いて所定濃度、すなわち、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントを20μg/mlとなるように希釈した。
【0071】
(5)細胞培養
75cmフラスコにコラーゲンコート溶液を5ml入れ、室温で約1時間静置後、コラーゲンコート溶液を吸引除去し、5mlのPBSで2回洗浄を行うことによって、コラーゲンコートフラスコを得た。
【0072】
褐色脂肪細胞液をコラーゲンコートフラスコに加え、37℃、5%COインキュベーター内で、褐色脂肪細胞を24時間培養した。次いで、培養後の褐色脂肪細胞を、増殖培地を用いて1回洗浄した後、新しい増殖培地に交換し、サブコンフルエントになるまで培養を行った。
【0073】
培養後の褐色脂肪細胞をトリプシン処理に供し浮遊させた。得られた浮遊細胞を、コラーゲンコート(コラーゲンコート溶液 350μL/ウェル、PBS洗浄 350μL/ウェル×2回)した24ウェルプレートの各ウェルに播種した。
【0074】
増殖培地を用いてコンフルエントになるまで、褐色脂肪細胞を培養した。各ウェルより培地を除去後、各ウェルに分化誘導培地を500μl添加し、48時間培養した。
【0075】
分化誘導培地を除去後、20μg/ml被験物質含有培地の500μlを添加し、6日間培養した。培地は1日おきに交換した。コントロールとして被験物質を含有しない培地の500μlを添加し、6日間培養した。培地は1日おきに交換した。
【0076】
8日間の培養後、上清を回収し、RNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いてRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(キアゲン社)を用いてcDNAを合成した。
【0077】
得られたcDNAを鋳型として、UCP1遺伝子に対するプライマー(キアゲン社)を用いて、Rotor-Gene SYBR Green PCR Kit(キアゲン社)により定量リアルタイムPCRを行い、UCP1のmRNA発現量を測定した。内在性コントロールとして、GAPDHプライマー(キアゲン社)を用いて、GAPDHのmRNA発現量を測定した。
【0078】
(6)評価
ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントの各被験物質のそれぞれを供した場合における、UCP1のmRNA発現量の測定結果(コントロールのmRNA発現量を1.00とした際の相対発現量)を表1に示す。
【表1】
【0079】
表1が示すように、ホップ、トレハロース、アスパルテーム、大麦、セラミド、プラセンタ、アラニン及びミントを被験物質とした場合は、UCP1発現量は大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の組成物は、非経口的及び経口的のいずれの態様においても適用可能な特定の成分を含むものであり、特にセルライト、肥満やそれらに伴う疾病を被る被験体にとって有用なものであり、このような被験体の健康及び福祉に資するものである。