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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】システム、装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3822 20150101AFI20250110BHJP
   H04B 1/401 20150101ALI20250110BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20250110BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20250110BHJP
【FI】
H04B1/3822
H04B1/401
F02N11/08 U
B60R25/24
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023034236
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2021042059の分割
【原出願日】2016-07-20
(65)【公開番号】P2023088920
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】田縁 正義
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】永富 健志
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇喜
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-045591(JP,A)
【文献】特開平11-071948(JP,A)
【文献】特開2010-147838(JP,A)
【文献】特開2009-046930(JP,A)
【文献】特開2006-101030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38-1/58
F02N 1/00-99/00
B60R 25/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側と携帯機側との間で無線通信が可能な第1の装置と第2の装置とを備え、
前記第1の装置および前記第2の装置の少なくとも一方は使用者が携帯可能であり、かつ前記一方の装置が送信する信号は、前記第1の装置または前記第2の装置のうち他の一方の機能を作動させる信号を含むシステムであって、
前記信号の送信電力の大きさを使用者の操作部の操作によって直接的あるいは間接的に変更する変更手段を備え
前記信号の送信電力の大きさを使用者の操作部の操作によって直接的あるいは間接的に変更する変更手段は、前記第1の装置または前記第2の装置の送信電力の大きさを、電力値に関連づけられた長距離通信モードと、バッテリー寿命が長い長寿命モードとのいずれかの動作モードによる指標により設定する構成としたこと
を特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシステム、装置およびプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの暖気や車室内の温度調整を目的として、エンジンを遠隔始動させる遠隔式エンジン始動装置(エンジンスターター)が普及してきている。この遠隔式エンジン始動装置は、自動車に搭載され、エンジン始動や電装品の動作を制御するリレー駆動回路と、始動命令信号を受信した際にリレー駆動回路を制御する主制御回路とを備え、始動命令信号は、利用者が手元におく無線式リモコン送信機(携帯機)から送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3959146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンスターターのように、携帯機と他の通信装置とを備え、携帯機によって他の通信装置の機能を作動させる遠隔制御を行うシステムには、信号の送受信は、周波数帯が420MHz帯、変調方式がFSK方式(周波数偏移変調方式)であり、出力が10mWまたは1mWである特定小電力無線機を、各社とも、従来一般的に使用している。このようなシステムでは、通信可能な距離の限界が各社とも概ね一律であるという問題がある。通信可能距離は条件によって異なるが、見通しでは最大でも4km程度、条件によっては数百mという範囲での団栗の背比べのような競争が各社の間でなされている。このような現状から各社ともなかなか抜け出すことができず、現状を打破することについての強い欲求があったが、抜け出すことができないのは半ば業界の常識、固定観念であった。
【0005】
本発明の目的は、例えば従来に比べ、遠隔制御をより確実に行うことができ、使い勝手のよいシステム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)例えば、無線通信が可能な第1の装置と第2の装置とを備え、前記第1の装置と前記第2の装置との前記無線通信は、スペクトラム拡散方式によるものであり、前記第1の装置および前記第2の装置の少なくとも一方は使用者が携帯可能であり、かつ前記一方の装置が送信する信号は、前記第1の装置または前記第2の装置のうち他の一方の機能を作動させる信号を含むことを特徴とするシステムとするとよい。
【0007】
このようにすれば、ユーザは、スペクトラム拡散方式(周波数拡散方式)以外の、従来用いられていたFSK方式等と比べると、これまでの各社の団栗の背比べから抜きん出た格段に長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。発明者らの実験結果によれば、従来に比べておおむね2倍以上の長い距離で装置の機能を作動させることができた。従来FSK方式では、例えば無線通信が確実に可能である距離が1kmであったような場合には、スペクトラム拡散方式ではその2倍以上の2km以上の通信が可能であった。
【0008】
使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、どのような装置としてもよいが、例えばゴルフナビとしてもよく、特に携帯機またはリモートコントローラ(以下、略して「リモコン」ともいう。)とするとよい。例えば、リモコンから送信する信号は、第1の装置または第2の装置のうち他の一方の機能を作動させる信号を含むとよい。使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、特に、ユーザからの指示を入力する機能を備え、入力された指示に基づいて、他の一方の機能を作動させる信号を送信する構成とするとよい。ユーザからの指示を入力する機能は、指示を入力できればどのようなものでもよいが、ユーザの動き等を検知可能なセンサ等とするとよく、特に、ユーザの指示を入力する手段を備えるとよい。使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、身体に装着可能なウェアラブル端末としてもよい。望ましくは、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は手に持って携帯可能な装置とするとよく、また、手によって指示を入力する機能を備えるとよい。望ましくは、手の指で押して指示を入力する手段を備えるとよい。より望ましくは、指示を入力する手段をスイッチとする構成とするとよい。
【0009】
第1の装置または第2の装置のうち他の一方は、どのような装置としてもよいが、例えば使用者が携帯可能な装置とするとよく、望ましくは使用者が携帯可能でない装置、例えば物体に固定された機器とするとよく、より望ましくは室内に設置された機器とするとよい。物体に固定する場合、例えば地面に固定するとよく、望ましくはガスや電気、水道のメーター等に固定するとよい。地面に固定する場合は、例えば水撒き機とするとよい。ガスや電気、水道のメーター等に固定する場合には、検針データをリモコンに送信する端末機とするとよい。室内への設置としては、ゴルフのクラブハウスや自動車内等に設置するとよい。クラブハウスに設置するときは、例えばデジタルサイネージとするとよい。自動車内に設置するときには、例えば車載機とするとよい。最も望ましくは、第1の装置を携帯可能な装置とした場合、第2の装置を他の物体に固定された装置とすること、または、第2の装置を携帯可能な装置とした場合、第1の装置を他の物体に固定された装置とすることである。
【0010】
本発明のシステムは、どのようなシステムとしてもよいが、例えば民生機器や、各種の産業機器に用いるシステムとするとよく、特に上述したエンジンスターター等の自動車関連機器に用いるシステムとするとよい。これにより、ユーザは、各種機器を適切に遠隔制御することができる。
【0011】
例えば民生機器に用いるシステムとしては、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の一方をリモコン、他の一方を地面に固定された機器としたシステムとし、リモコンから送信する信号は、当該機器の機能を作動させる信号を含むとよい。
【0012】
民生機器に用いるシステムとしては、望ましくは、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の一方を携帯機、他の一方をガスや電気、水道のメーター等に固定された送信機とするとよい。送信機から携帯機に送信される信号は、検針データおよびこの検針データを携帯機に集計させる信号(携帯機の機能を作動させる信号)を含むとよい。
【0013】
特に、例えば「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」と呼ばれる規格を用いた、ガスや電気、水道のメーター等に固定される端末機を搭載し、無線通信を使って携帯機等によって検針データを収集する無線通信システムとするとよい。Wi-SUNにおいて本発明のシステムを用いれば、ユーザは従来より一層遠隔地から検針データを収集可能となり、データ収集に伴う移動の手間等を最小限に抑制できる。例えば、自動車で移動可能な道路から離れ、徒歩でないと近づけないような山間部の住居における電気のメーターを検針する場合において、携帯機を携帯した検針者が自動車で移動可能な範囲でも検針データ(以下「メーター情報」ともいう。)を収集可能となる可能性が高まり、自動車で移動した後で徒歩での移動が必要な場合でも移動距離を短縮できる可能性が高まる。特に、携帯機はユーザが携帯して徒歩で移動できるものであり、手で指示を入力可能なものとするとよい。
【0014】
本システムとしては、より望ましくは、例えば、第1の装置をゴルフナビ、第2の装置をクラブハウスに設置されたデジタルサイネージとしたシステムとするとよい。特に、ゴルフナビから送信する信号は、例えばデジタルサイネージの表示機能や集計機能を作動させる信号を含むとよい。この場合、ラウンド中にゴルフナビに入力したプレーヤーの成績から逐次ランキングをデジタルサイネージに表示させること等が可能となり、ユーザはプレーヤーの成績等の集計の手間を省くことができる。
【0015】
自動車関連機器に用いるシステムとしては、例えば、第1の装置をリモコン、第2の装置を車載機とした、自動車のエンジンスターターやカーセキュリティ等に用いるシステムとするとよい。特に、リモコンから送信する信号は車載機の機能を作動させる信号を含み、車載機から送信する信号はリモコンの機能を作動させる信号を含むとよい。望ましくは、リモコンから送信する信号は、ユーザの指示に基づいて送信する構成とするとよい。
【0016】
ここで、従来のエンジンスターターやカーセキュリティでは、例えば大規模マンションにおいて駐車場が自室から非常に遠くて使用できなかった場合があった。特にタワーマンションでこのような問題が顕著であった。また、例えば、コンクリートの壁に電波が阻まれるためベランダに出なければ使用できなかった場合等があった。しかし、このような場合であっても、本発明のようにすれば、ユーザは、従来よりも確実に他の一方の装置の機能を作動させることができる。例えば、エンジンスターターやカーセキュリティの機能を従来よりも確実に作動させることができる。そのため、例えば、ユーザは、従来窓際やベランダ等のように、駐車場にある自動車に向けて少しでも電波が届きやすい場所に移動しなければ他の一方の装置の機能を作動させることができなかったような場合でも、ベッドサイド等、室内の位置において、操作することにより、エンジンスターターまたはカーセキュリティを作動させることができる可能性が高くなる。
【0017】
さらに、例えば、上述のリモコン(携帯機)と車載機とを備える自動車関連機器に用いるシステムに、Wi-SUNのメーター情報等を収集する無線通信システムを組み合わせ、家屋で発生したメーター情報等を車載機が携帯機に媒介する存在(ゲートウェイ)とする構成とするとよい。具体的には、例えば、車載機がWi-SUNモード(スペクトラム拡散方式以外の変調方式)で家屋内のWi-SUN機器からガスや電気、水道のメーターの検針データや家屋に設けられた太陽光等による発電装置の発電量データ等の情報を受信し、この受信した情報を、車載機がスペクトラム拡散モードでユーザが携帯する携帯機(リモコン)に転送する構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは検針テータ等の情報を、従来の徒歩圏よりも広い自転車圏内において受信することができる。例えば、従来のWi-SUNモード(スペクトラム拡散方式以外の変調方式)では1km程度しか電波が届かなかった条件では、スペクトラム拡散方式でビットレートを落とせば6km飛ぶ。居住する家屋を中心として、直径1kmは日常生活圏(徒歩圏)内であるのに対して、直径6kmは地域生活圏に位置づけられる(必要であれば、次の電子的技術情報の第vi頁の表5、第32頁、および第37頁の表4-3を参照のこと(石原 宏、”日常生活圏域の基礎的研究(その2)”、[online]、平成20年3月、名古屋都市センター、[平成28年7月5日検索]、インターネット〈URL:http://www.nui.or.jp/user/media/document/investigation/h19/nichijo.pdf〉)。)。また、通常、自宅からこの地域生活圏(自転車圏)の範囲でほぼすべてのことがまかなえる(必要であれば、次の電子的技術情報の第11頁を参照のこと(市村 町男、”生活圏に基づく商業需要の分析手法”、[online]、平成18年6月、Community Builders’ Net、[平成28年7月5日検索]、インターネット〈URL:http://www.geocities.jp/non_non_net2006/p_rep/seikatukenn2.pdf〉)。)。
【0018】
望ましくは、第1の装置は物に固定され、第2の装置は使用者が携帯可能とした構成とするとともに、第2の装置を携帯した使用者は、第1の装置を固定した物のある場所で第1の装置を第2の装置を介さずに第1の装置の機能を作動させることが可能であり、第2の装置は、使用者に携帯されて第1の装置を固定した物のある場所を基点(例えば、移動の起点)として徒歩または自転車での使用者の移動に伴い移動するものであり、第2の装置は、第1の装置を固定した物のある場所への使用者の移動によって再び基点(例えば、所定の目的地へ移動した後の終点としての元の起点)に戻るものとする構成とするとよい。「徒歩または自転車での移動」は、見通し距離で5km以上20km以下とする構成とするとよい。例えば、基点を自宅とし、使用者を認知症の老人とする構成とするとよい。また、基点を自動車とし、使用者が自動車から徒歩で移動して、例えばショッピングセンター等で買い物をして、買い物をしているところからエンジンを始動し、再び基点である自動車に戻る構成とするとよい。また、例えば、基点を自動車とし、使用者が帰宅後自動車から自宅に徒歩で移動して、翌朝、自宅の中から自動車のエンジンを始動してから再び自動車に戻る構成とするとよい。また、例えば、クラブハウスを基点とし、使用者がプレー中はゴルフコースを徒歩等で移動し、プレーが終わった後、再びクラブハウスに戻ってくる構成とするとよい。
【0019】
また、例えば、第1の装置を介護施設に設置した1台の親機とし、第2の装置を介護施設に入居する複数の人がそれぞれ携帯する子機とする構成としてもよい。例えば、子機はそれぞれ異なるIDが記憶されており、親機はそれぞれの子機の記憶するIDとその子機を携帯する人の名前との対応関係が記憶されている構成とするとよい。それぞれの子機からは一定時間(例えば1分毎)にスペクトラム拡散方式によってIDのデータを含む電波を送信する。親機では、受信した電波に含まれるIDのデータと受信した電波のRSSI(Received Signal Strength Indicator)とをチェックし、受信した電波のRSSIが設定値以下になったとき、RSSIのレベルに基づいて求めた親機からその電波を送信した子機までの概算距離とそのIDに対応づけられた人の名前を親機に表示する。「RSSIの設定値」は、親機と子機との距離とRSSIの値との関係を予め求めて親機に記憶しておき、距離として親機に入力して設定できるようにするとよい。あるいは、「RSSIが設定値以下となったとき」は、介護施設外と施設内とで予め測定し設定しておいたRSSIの差に基づき、施設外に相当するRSSIのレベルとなったときするとよい。
【0020】
親機は、予め記憶しておいた人の名前を一覧等から選択する機能を備え、その人の名前に対応するIDの子機に返答を要求する信号を無線送信する機能を備えるとよい。子機は、受信したIDが自己のIDであり親機から返答が要求されている場合には、受信した電界強度に関するレベル情報と自己のIDとを無線送信する。親機は、受信したそのIDの電界強度のレベルから、子機の位置(例えば親機からの距離)を求めて表示する。
【0021】
さらに、例えば子機間で、親機からの問い合わせの無線信号を中継する機能を備えるとよい。例えば、親機は「通常の探すボタン(中継せずに探すボタン)」と「中継して探すボタン」とを備えるものとし、「通常の探すボタン」が押されたときには、親機の電波の到達範囲にあるすべての子機に対してIDと電界強度のレベルの返答を要求し、一方「中継して探すボタン」が押されたときには、親機の電波の到達範囲にあるすべての子機と、その子機からの電波の到達範囲にあるすべての子機からの返答を要求するようにするとよい。返答(例えば他の子機のIDと電界強度のレベル)は、子機が他の子機と親機の間で中継するようにする。なお、子機間の中継をさらに行うようにしてもよく、子機間での中継の回数には制限を設けるようにするとよい。また、親機と子機にそれぞれGPS等の位置検出器を設け、親機の位置から親機で指定した範囲内にある子機だけが中継を行うようにしてもよい。
【0022】
「スペクトラム拡散方式」による通信は、例えば送信しようとする信号を変調した狭帯域の信号を所定の拡散方式によって広帯域に拡散することにより電力密度を下げ、送信側から送信するとよい。受信側においては、受信した信号を逆拡散することにより、電力密度の高い元の狭帯域の信号を得るとよい。また、「スペクトラム拡散方式」は、特に、例えば受信側において受信された拡散された信号が、いわゆるノイズフロアー以下の微弱な信号であっても、逆拡散によって電力密度の高い元の狭帯域の信号に戻し、戻した元の狭帯域の信号を復調し、送信しようとした信号として再生する構成とするとよい。このようにすれば、遠距離でノイズフロアー以下に減衰した信号でも受信可能となる。
【0023】
なお、「スペクトラム拡散方式」による通信は、送信側で行われる拡散された信号への変調や、受信側において行われる拡散された信号の復調については、ハードウェアによる変調器や復調器を用いて行ってもよいし、ソフトウェア無線機によって行ってもよい。特にこのような変調や復調に相当する演算処理をICチップ化したものを用いるとよい。
【0024】
「スペクトラム拡散方式」による通信方式としては、どのような通信方式を用いてもよいが、特に通信速度を犠牲にしても通信距離が長くなる方式を用いるとよい。また、例えば周波数ホッピング方式を用いるとよい。望ましくは直接拡散方式でないものを用いるとよい。より望ましくは、「スペクトラム拡散方式」は、連続的に周波数を変化させることで、チャープ(chirp)信号を生成し、これにより送信しようとするデータに基づく信号が拡散され、変調される方式(以下「チャープ方式」という。)である構成とするとよい。特に、チャープ方式と他の方式を組み合わせるとよい。例えば、チャープ方式と、周波数ホッピング方式および直接拡散方式の少なくとも一つとを組み合わせて用いるとよい。また、「スペクトラム拡散方式」による通信方式としては、例えば後に詳述するLoRa方式を用いると最もよい。これとは逆に、スペクトラム拡散方式以外の従来の変調方式としては、上述のFSK方式の他に、OOK(オンオフ変調)、GFSK(位相連続FSK)、MSK(最小偏位変調)、GMSK(ガウス最小偏位変調)等(以下、これらの変調方式を総称して以下「FSK等」という。)がある。
【0025】
また、「使用者が携帯可能」な「前記第1の装置および前記第2の装置の少なくとも一方」は、どのような機器としてもよいが、例えば携帯通信機器や携帯情報機器、ウェアラブル端末等とするとよい。また、「使用者が携帯可能」な「前記第1の装置および前記第2の装置の少なくとも一方」は、例えば、遠隔操作以外の機能も実施可能な非専用機としてもよいが、特に、例えばリモコンなどのように遠隔操作を行うための専用機とするとよい。
【0026】
また、「前記一方の装置が送信する信号」は、前記第1の装置または前記第2の装置のうち他の一方の機能を作動させる信号を含む構成とするとよい。例えば、エンジンスターターやカーセキュリティにおいては、これらの機器を起動させるための信号や、停止させるための信号、設定を変更するための信号等を含む構成とするとよい。また、例えばエンジンスターターやカーセキュリティにおいては、これらの機器から携帯機やリモコンに報知の機能を作動させるための信号等を含む構成とするとよい。望ましくは、「前記一方の装置が送信する信号」は、他の一方の装置の機能を作動させる信号以外の信号も含む構成とするとよい。「他の一方の装置の機能を作動させる信号以外の信号」は、例えばエンジンスターターであれば、現在の車室内温度等、カーセキュリティであれば、車両に加わった衝撃の程度等の、車両に設けられたセンサによって検知されたデータとするとよい。
【0027】
また、「前記一方の装置が送信する信号」は、水撒き機のような民生機器や、各種の産業機器においては、これらの機器の起動信号や、停止信号等を含む構成とするとよい。また、「前記一方の装置が送信する信号」は、ゴルフナビ等のような装置においては、ゴルフナビに入力されたプレーヤーの成績情報等の信号を含む構成とするとよい。また、「前記一方の装置が送信する信号」は、Wi-SUN等の規格を用いた、ガスや電気、水道のメーター等の装置において本発明のシステムを用いる場合には、検針データ等の各種データを含む構成とするとよい。
【0028】
例えば、第1の装置をリモコン等の携帯機、第2の装置を車載機等とした場合、携帯機側は受信モードがSingle receive mode、車載機側は受信モードがContinuous receive modeである構成とするとよい。このようにすれば、携帯機側の電池を長持ちさせることができるとともに、車載機側では携帯機側から送信された信号をより確実に捉えることができる。望ましくは、このような構成の場合、車載機等からは同一の情報を複数回送信するようにするとよい。このようにすれば、携帯機において外乱による読み落としの発生を低減することができる。さらに望ましくは、車載機側から携帯機側にContinuous receive modeに切り替える旨の信号を送信する機能を設け、携帯機側でこの切り替える旨の信号を受信した場合、Continuous receive modeで動作させる構成とするとよい。このような構成の場合、特に、Continuous receive modeで動作させる時間を一定時間とする構成とするとよい。このような通信モードは、例えば後述する通信チップ「SX1272」を使用することにより実施することができる。
【0029】
「Single receive mode」は、例えば、設定した時間内に1パケットだけ受信するモードとし、特に、決まった受信タイミングで通信する場合に、必要な受信タイミングのときだけ受信回路をONにさせる動作を行う構成とするとよい。このようにすれば、受信の待機時における消費電力を低減することができる。「Continuous receive mode」は、例えば、連続して信号を受信するモードとするとよい。
【0030】
(2)スペクトラム拡散方式による前記第1の装置と前記第2の装置との前記無線通信は、LoRa方式とするとよい。
【0031】
このようにすれば、ユーザは、遠隔制御ができる距離が概ね一律であるという現状を打破することができる。
【0032】
拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式を用いた無線システム(以下「LoRa無線システム」ともいう。)は、例えばFSK方式と同じ通信距離に設計した場合、より高い送信ビットレート(以下、単に「ビットレート」ともいい、「データレート」または「伝送速度」ともいう。)で通信可能である。ビットレートが高いと通信時間が短くなるため、ユーザは、第1の装置および第2の装置の一方から、他の一方の機能を作動させる信号を送信する状況において、俊敏に他の一方の機能を作動させることができるシステムを得ることができる。
【0033】
特に、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方が、ユーザからの指示を入力する機能を備え、入力された指示に基づいて、他の一方の機能を作動させる信号を送信する構成とするとよい。このような構成であれば、指示の入力操作に対して俊敏に反応するシステムを得ることできる。
【0034】
望ましくは、LoRa方式において、ビットレートを低く設定するとよい。このようにすると、より高い感度を得ることができる。最も望ましくは、ビットレートを設定可能な範囲で最も低く設定するとよい。特に、第1の装置または第2の装置のうち、使用者が携帯可能な方においてビットレートを設定可能な範囲で最も低くする設定とするとよい。このようにすれば、ユーザが、従来より遠い距離から、携帯可能な装置から他の一方の装置の機能を作動させる信号を送信し、他の一方の装置に機能を作動させることができる。また、例えば携帯可能な方の装置のビットレートを、当該携帯可能な方の装置から送信する信号によって機能を作動させる方の装置におけるビットレートよりも低くするとよい。さらに、後述する(3)および(3-1)の構成を備えるとよい。発明者らの実験結果によれば、このような構成において、従来の420MHz帯のFSK方式に比べて約4倍の伝送距離、面積にして約16倍のカバーエリアを得ることができた。
【0035】
望ましくは、送受信するデジタル情報の量が少ないシステムでは、このようにビットレートを低く設定すると、特によい。さらに望ましくは、自動車のエンジンスターターやカーセキュリティ等の、デジタル情報の伝送の際にはビットレートを低く設定するとよい。
【0036】
LoRa方式の無線通信は、例えばセムテック(SEMTECH)社製の通信チップ「SX1272」を使用することにより実施することができる。なお、この通信チップは、上述した信号の変調や復調を演算処理により実行する。
【0037】
(3)前記第1の装置と前記第2の装置との前記無線通信は、サブギガヘルツ帯を使用し、使用するチャンネルの帯域幅がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを使用するものとするとよい。
【0038】
このようにすれば、ユーザは、従来よりも小型の装置で、且つ従来よりも長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域よりも、サブギガヘルツ帯の方が電波の飛距離が短い特性が一般的にあるが、この電波の飛距離が短い問題を、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも帯域幅が広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを使用することにより解決することができる。例えば、使用するチャンネルの帯域幅がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを設定するとよい。
【0039】
また、例えば、第1の装置および第2の装置に設けられた無線通信を行うための発振器の周波数を、(3)のように設定するとよい。特に、例えば、無線通信用の周波数の設定を、第1の装置および第2の装置に設けられた制御部が行う構成とするとよく、その設定する周波数を(3)のようにするとよい。望ましくは、制御部をコンピュータとし、コンピュータのレジスタに設定する周波数に対応した値を書き込むとよい。
【0040】
(3-1)第1の装置と第2の装置との無線通信は、特定小電力無線とし、サブギガヘルツ帯を使用し、使用する送信可能電力がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域における送信可能電力よりも大きいサブギガヘルツ帯の周波数とするとよい。
【0041】
「サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域」は、400MHz帯とするとよく、望ましくは、例えば449.7125~449.8250MHz、449.8375~449.8875MHzまたは469.4375~469.4875MHzの各帯域とするとよく、さらに望ましくは、例えば426.0250~426.1375MHz、426.0375~426.1125MHz、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzの各帯域とするとよい。これらの各帯域では、チャンネルの帯域幅は例えば12.5kHzとするとよく、特に426.0375~426.1125MHzの帯域では例えば25kHzとするとよい。また、送信可能電力は、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域のうち、426.0250~426.1375MHzおよび426.0375~426.1125MHzでは例えば1mWとするとよく、これら以外の各帯域では例えば10mWとするとよい。
【0042】
「サブギガヘルツ帯」は、例えば1GHzよりやや低い周波数帯とするとよく、望ましくは、例えば800~950MHzとするとよい。より望ましくは、日本国内の法規において定められた920MHz帯とするとよく、さらに望ましくは、例えば中心周波数が928.15~929.65MHzの帯域とするとよく、最も望ましくは、例えば中心周波数が916.0~928.0MHzの帯域とするとよい。中心周波数が928.15~929.65MHzの帯域ではチャンネルの帯域幅を例えば100kHzとするとよく、中心周波数が916.0~928.0MHzの帯域ではチャンネルの帯域幅を例えば200kHzとするとよい。また、サブギガヘルツ帯で使用するチャンネルは、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅の4倍以上の帯域幅であるチャンネルとするとよい。望ましくは426.0375~426.1125MHzにおけるチャンネルの帯域幅25kHzに対して8倍の200kHzの帯域幅であるチャンネルとするとよい。より望ましくは、426.0250~426.1375MHz、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzにおけるチャンネルの帯域幅12.5kHzに対して16倍の200kHzであるサブギガヘルツ帯のチャンネルを選択するとよい。また、送信可能電力は、サブギガヘルツ帯のうち、916.0~920.4MHzおよび928.15~929.65MHzでは例えば1mWとするとよく、これら以外の各帯域では例えば20mWとするとよい。サブギガヘルツ帯で使用するチャンネルは、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域における送信可能電力1mWの20倍または10mWの2倍である20mWの送信可能電力であるチャンネルを選択するとよい。
【0043】
「サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域」に含まれる400MHz帯では、出願時における日本国内の法規において、1チャンネルあたり12.5kHzまたは25kHzの帯域幅が割り当てられている。一方、サブギガヘルツ帯をみると、1チャンネルあたり100kHzまたは200kHzの帯域幅が割り当てられた920MHz帯がある。このように、割り当てられた1チャンネルあたりの帯域幅が、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域である400MHz帯よりも広い周波数帯として、サブギガヘルツ帯は、特に920MHz帯とするとよい。400MHz帯は、920MHz帯に比べて1チャンネルあたりの帯域幅が狭いものの、920MHz帯に比べて電波が遠くまで届くとともに、直進性が低く回折しやすいため、遠距離の障害物(山や建物)の陰でも受信しやすいというメリットがある。
【0044】
「使用するチャンネル」は、920.6~923.4MHzの帯域に含まれる、帯域幅200kHz、200kHz間隔、計15波のチャンネルおよび920.7~923.3MHzの帯域に含まれる、帯域幅400kHz、200kHz間隔、計14波のチャンネルのうち、いずれかのチャンネルとする構成とするとよく、特に、中心周波数が922.4MHz、922.6MHz、922.8MHz、923.0MHz、923.2MHz、および923.4MHzの6つのチャンネル(いずれも帯域幅は200kHz)のうち、少なくともいずれか1つのチャンネルとする構成とするとよいことを、発明者らは見出した。特に、これらのチャンネルのいくつかを切り替えられる構成を備えるとよく、望ましくは、これらのチャンネルのうち、Busy判定で信号が存在していないことが確認されたチャンネルに自動的に切り替えられる構成を備えるとよい。また、これらのチャンネルは、隣接する複数のチャンネルを組み合わせて帯域幅をより広げて使用する構成としてもよく、例えば上記6つのチャンネルのうち隣接する5つのチャンネルを組み合わせて1000kHzの帯域幅として使用する構成とするとよい。
【0045】
また、「チャンネル」は、例えば通信に利用するために割り当てられた周波数帯域とするとよく、特に使用国における法規において割り当てられた周波数帯域とするとよく、特に日本国内の法規において割り当てられた周波数帯域とするとよい。
【0046】
チャンネルのBusy判定(信号が存在しているため、送信を禁止する判定)を行うにあたって、スペクトラム拡散方式の信号のレベル判定は、例えばCAD(Channel
Activity Detection)機能を用いて行い、スペクトラム拡散方式以外の他の変調方式の信号のレベル判定は、例えばRSSIによって行う構成とするとよい。CAD機能は、RSSIでは信号の存在が検出できないほど低いレベルのスペクトラム拡散方式の信号の存在を検出する構成とするとよい。Busy判定は、スペクトラム拡散方式の信号では-130dBm以上のときにBusyとし、他の変調方式の信号では-80dBm以上のときにBusyとする構成とするとよい。このようにすれば、より適切なチャンネルBusy判定が可能となり、長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0047】
表1は、CAD機能およびRSSIで信号の存在が確認された場合とされなかった場合のすべての場合について示した表であり、各欄の上段はBusy判定の内容を示し、下段はどのような信号を送信してもよいかを示す。表1では、第1の装置および第2の装置において、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号も送信可能である場合について示している。表1では、CAD機能によって信号の存在が確認された場合を「CAD有」、確認されなかった場合を「CAD無」とし、RSSIによって信号の存在が確認された場合を「RSSI有」、確認されなかった場合を「RSSI無」とした。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、「RSSI有」、「CAD有」の場合は、(A)スペクトラム拡散方式の信号とスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の双方が存在していることによるBusy判定、または(B)スペクトラム拡散方式の比較的強度の高い(-80dBm以上)信号が存在していることによるBusy判定であるため、(A)の場合はすべての変調方式の信号の送信が禁止され、(B)の場合はスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の送信が可能である。さらに、(A)の場合であっても、存在しているスペクトラム拡散方式の信号と、帯域幅と拡散率が異なるスペクトラム拡散方式の信号であれば送信が可能である。
【0050】
「RSSI有」、「CAD無」の場合は、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号が存在していることによるBusy判定であり、スペクトラム拡散方式の信号は存在していないため、スペクトラム拡散方式の信号の送信が可能である。
【0051】
「RSSI無」、「CAD有」の場合は、スペクトラム拡散方式の信号が存在していることによるBusy判定であり、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号が存在していないため、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の送信が可能である。さらに、スペクトラム拡散方式の信号であっても、存在しているスペクトラム拡散方式の信号と帯域幅と拡散率が異なる信号であれば送信が可能である。
【0052】
「RSSI無」、「CAD無」の場合は、Busy判定がなく、スペクトラム拡散方式の信号とスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号のいずれも存在していないため、すべての変調方式の信号の送信が可能である。
【0053】
(4)前記第1の装置または前記第2の装置から送信される信号の強度がノイズフロアー以下であるとよい。
【0054】
このようにすれば、スペクトラム拡散方式以外の他の変調方式の信号、例えばFSK方式等の信号を妨害する可能性が極めて低くなる。信号強度をノイズフロアー以下にする方法としては、例えば、送信電力を小さくする制御を行う構成としてもよいし、送信される信号がノイズフロアー以下の信号強度となる拡散率が高い状態で送信する構成としてもよい。送信される信号は、拡散率が高くなると、伝送速度が若干低下する反面、通信感度が向上し、通信距離の向上等の効果が得られる特性がある。そのため、このようにすれば、ユーザは、従来より長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。「ノイズフロアー」は、-80dBmとする構成とするとよい。
【0055】
(5)前記スペクトラム拡散方式による、前記第1の装置と前記第2の装置との前記無線通信は、使用するチャンネルの帯域幅の両端から帯域の内側に前記帯域幅の1/4の部分のうち一方、および前記帯域幅の中心において、同一の電力で信号の送信が可能であるようにするとよい。
【0056】
このようにすれば、ユーザは、従来よりも長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。このような、変調効率が高く、高い送信ビットレートでの通信が可能なシステムは、例えば拡散スペクトラム方式やLoRa方式によって実施可能である。一方、FSK方式では、帯域幅の高周波数側および低周波数側の端部では信号の送信電力が低下するとともに、信号が帯域幅の外部にはみ出てしまうため、変調効率が低い。
【0057】
スペクトラム拡散方式による、第1の装置と第2の装置との無線通信は、望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の両端から帯域の内側に帯域幅の1/4の部分の両方の付近、および帯域幅の中心付近において、同一の電力での信号の送信が可能であるとよい。より望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の少なくとも一方の端部付近および中心付近において、同一の電力で信号の送信が可能であるとよい。さらに望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の全幅において、同一の電力で信号の送信が可能であるとよい。
【0058】
(5)の構成において、特に、当該チャンネルの帯域幅の外部において信号を送信する電力は規定値よりも小さい構成とするとよい。このようにすれば、帯域幅の外部にはみ出す量が規定値よりも小さくなるので、変調効率が高い。通信システムにおいて同じ通信距離に設定した場合、変調効率が高いほど、高ビットレートでの通信が可能である。
【0059】
第1の装置および第2の装置の少なくとも一方は、特に、送信ビットレートを変えても消費電力が変わらない装置とするとよい。送信ビットレートを上げ、通信時間が短くなると、装置の消費電流が下がるため、システムにおける消費電力を低減することができる。特に、装置の電源としてバッテリーを使用するとよい。このようにすれば、バッテリーライフ(以下「バッテリー寿命」ともいう。)を伸ばせる。これにより、ユーザは、バッテリー交換等の手間を最小限に抑制することができる。
【0060】
第1の装置および第2の装置の少なくとも一方は、送信ビットレートを上げると消費電力が増加する装置としてもよい。特に、通信時間の短縮により低減される送信電力が、送信ビットレートを上げることによる消費電力の増加の程度を上回るように、送信ビットレートを設定するとよい。このようにすれば、全体として消費電力が下がり、バッテリーライフを伸ばせる。
【0061】
また、例えば、無線通信が可能な第1の装置と第2の装置とを備え、第1の装置と第2の装置との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、全幅の中心部分と周辺の一端部分の電力が同一の電力で送信可能な方式を使用する構成とするとよい。特に、使用するチャンネルの帯域幅の全幅において同一の電力で信号の送信が可能な構成とするとよい。また、例えば、第1の装置と第2の装置との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、OFDM変調方式を用いるとよい。特に、Wi-Fi HaLow(IEEE 820.11ah)を用いるとよい。
【0062】
第1の装置と第2の装置との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、GFSK変調により行う構成とするとよい。望ましくは、GFSK変調の数百ビット/秒以下の速度で行うとよい。さらに望ましくは、Sigfoxとするとよい。ただし、現時点において最も良いのはスペクトラム拡散方式であり、(2)のLoRa方式とすると特に良い。
【0063】
また、第1の装置と第2の装置との無線通信は、無線ネットワーク通信によって行うようにしてもよいが、第1の装置と第2の装置との1対1の通信として行うとよい。例えば、通信チップ「SX1272」ではSyncWordの値として、LoRaWANで使用されている0x34ではなく、例えば0x12を使用する構成とするとよい。望ましくは、0x34でも0x12でもない値を使用する構成とするとよい。このようにすれば、市販されるLora方式の無線通信を行う装置との混信が起こる可能性を低減することができる。
【0064】
(6)前記第1の装置および前記第2の装置のうち、使用者が携帯可能であるものが、前記無線通信に用いる内蔵アンテナを備えるとよい。
【0065】
このようにすれば、ユーザは、アンテナが外部に露出していないシンプルな構成の装置、特に、携帯性に優れた携帯機を携帯用の装置として用いることができる。これは、スペクトラム拡散方式を用いた無線システムは、FSK方式を用いた無線システムと同じ通信距離、且つ同じ通信ビットレートで設計した場合、アンテナゲインがより低いアンテナを使用することができることによる。
【0066】
特に(2)のように、LoRa方式を用いた無線システムとすると、この効果は顕著に発揮される。また、スペクトラム拡散方式の無線でも、一般的なもの(WLAN、WCDMA(登録商標)等)は、混信防止と高ビットレートを追求しているところ、LoRa方式では、低ビットレートの信号を、スペクトラム拡散により広帯域に拡散しつつ大きい帯域幅を消費することにより感度を大幅に向上できる。そのため、LoRa方式の通信方式を採用することにより、内蔵アンテナの更なる小型化を図ることが可能となる。これにより、ユーザが携帯機をポケットなどに入れて携帯しても邪魔にならず、ストレス無く使用することができるシステムとすることができる。
【0067】
このように、LoRa無線システムは通信感度が高いため、ゲインの低い、より小さいアンテナが使用できる。そのため、LoRa無線システムを採用することにより、例えば、内蔵アンテナであるにもかかわらず従来のロッドアンテナを使用したリモコンと同程度の電波の飛距離が得られるリモコン(携帯機)を用いることが可能となり、ユーザにとってリモコン(携帯機)の携帯性の高いシステムを提供できる。
【0068】
望ましくは、(3)の構成を備えるとよい。より望ましくは(3-1)の構成を備えるとよい。さらに望ましくは、(3)および(3-1)の構成を備えるとよい。最も望ましくは、(2)、(3)および(3-1)の構成を備えるとよい。このようにすれば、特に、内蔵アンテナを備えるものとするメリットが大きい。
【0069】
(7)信号の送信電力の大きさを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能であるとよい。
【0070】
このようにすれば、ユーザは、自身が使用する環境に応じ、最適な送信電力でシステムを利用できる。例えば、第1の装置および第2の装置の距離が小さく通信環境が比較的良い環境での使用が想定される場合には、信号の送信上問題のない範囲内において送信電力を低く設定することにより、送信電力を最小化できる。第1の装置および第2の装置のうち、信号を送信する側の装置では、電源としてバッテリーを使用するとよい。このようにすれば、ユーザはバッテリーライフを伸ばすことができ、バッテリー交換等を行う頻度を低減することができる。これに対し、送信電力を最小化よりも第1の装置および第2の装置の間で行われる信号の送信の確実性を優先させたい場合には、想定される通信距離等を考慮したうえで、送信電力を高い目に設定することができる。これにより、信号の送信が確実に行われ、ユーザは、本発明のシステムが搭載された機器を精度良く制御することが可能となる。
【0071】
ここで、「信号の送信電力の大きさを使用者が直接的に変更可能」な構成としては、例えば第1の装置または第2の装置の送信電力の大きさを、電力値を入力して設定する構成とすればよい。このように「送信電力の大きさを使用者が直接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、自らの使用条件に適した送信電力の大きさとなるように、精度良く送信電力を調整できる。
【0072】
「信号の送信電力の大きさを使用者が間接的に変更可能」な構成としては、例えば第1の装置または第2の装置の送信電力の大きさを、電力値に関連づけられた相対的な数値や指標により設定する構成とすればよい。電力値に関連づけられた指標としては、「強・中・弱」などの指標や、動作モードによる指標など、種々のものが考えられる。特に、例えば「長距離通信モード(通常モード)」と、バッテリー寿命が長い「長寿命モード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、バッテリー寿命を優先させるのか、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離を優先させるのかを選択することができる。このように「送信電力の大きさを使用者が間接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、直感的あるいは感覚的に自らの使用条件に適した送信電力の大きさとなるように出力調整することができる。
【0073】
「信号の送信電力の大きさを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能である」構成は、どのような構成としてもよく、第1の装置および第2の装置のうち携帯不能な装置側、例えばエンジンスターターやカーセキュリティにおける車載機等に設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置等を介して行う構成とするとよく、特に、第1の装置および第2の装置のうち携帯可能なもの、例えばリモコンなどの携帯機で行う構成とするとよい。
【0074】
また、信号の送信電力の大きさの変更は、例えばリモコンや他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコンや他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0075】
望ましくは、第1の装置および第2の装置のうち携帯可能なものにおいて、上述の「長距離通信モード(通常モード)」と「長寿命モード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、長寿命モードで通信可能な領域では、長寿命モードを選択することにより、バッテリー寿命を伸ばすことができ、長寿命モードで通信可能な領域よりも遠い領域において、長寿命モードでは通信できなくなったときは、長距離通信モードに切り替えることにより、無線通信を用いた遠隔制御によって他の一方の装置の機能を作動させることができる。
【0076】
また、「長距離通信モード(通常モード)」や「長寿命モード」のように信号の送信電力の大きさに応じて動作モードを設定する場合には、さらに各モードを送信電力の大きさに応じて多段階、あるいは無段階に設定する構成としてもよい。これらの方法を採用することにより、ユーザが信号の送信電力の大きさを容易かつ適確に調整できる。
【0077】
(8)信号の送信ビットレートを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能であるとよい。
【0078】
このようにすれば、ユーザは、送信ビットレートを調整することにより、自身が使用する環境に最適な条件でシステムを使用できる。例えば、ユーザは、送信ビットレートを低く設定することにより、通信感度を向上させつつ、確実に通信可能な範囲を大きくとることができる。これに対し、ユーザは、送信ビットレートを高く設定することにより、通信感度や通信距離を犠牲にしつつも通信時間の最小化を図り、俊敏な通信動作により、長い距離での無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0079】
第1の装置および第2の装置の少なくとも一方は、特に、送信ビットレートを変えても消費電力が変わらない装置とするとよい。送信ビットレートを上げ、通信時間が短くなると、装置の消費電流が下がるため、システムにおける消費電力を低減することができ、特に信号の送信側となる装置における消費電力を低減することができる。特に、装置の電源としてバッテリーを使用するとよい。このようにすれば、ユーザはバッテリーライフを伸ばすことができ、バッテリー交換等の手間を最小限に抑制することができる。
【0080】
第1の装置および第2の装置の少なくとも一方は、送信ビットレートを上げると消費電力が増加する装置としてもよい。特に、通信時間の短縮により低減される送信電力が、送信ビットレートを上げることによる消費電力の増加の程度を上回るように、送信ビットレートを設定するとよい。このようにすれば、全体として消費電力が下がり、バッテリーライフを伸ばせる。
【0081】
ここで、「信号の送信ビットレートを使用者が直接的に変更可能」な構成としては、例えば第1の装置または第2の装置の送信ビットレートを、ビットレート値を入力して設定する構成とすればよい。このように「送信ビットレートの大きさを使用者が直接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、自らの使用条件に適した送信ビットレートとなるように、精度良く調整できる。
【0082】
「信号の送信ビットレートを使用者が間接的に変更可能」な構成としては、例えば第1の装置または第2の装置の送信ビットレートの大きさを、送信ビットレートに関連づけられた相対的な数値や指標により設定する構成とすればよい。送信ビットレートに関連づけられた指標としては、「大・中・小」などの指標や、動作モードによる指標など、種々のものが考えられる。特に、例えば、「通常モード」と、通信動作がすばやい「スピードモード」とを選択可能とするとよい。このようにすれば、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離を優先させるのか、通信動作のすばやさを優先させるのかを選択することができる。このように「信号の送信ビットレートを使用者が間接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、直感的あるいは感覚的に自らの使用条件に適した大きさの送信ビットレートとなるように調整することができる。
【0083】
「信号の送信ビットレートを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能である」構成は、どのような構成としてもよく、第1の装置および第2の装置のうち携帯不能な装置側、例えばエンジンスターターやカーセキュリティにおける車載機のように設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置などを介して行う構成とするとよく、特に、第1の装置および第2の装置のうち携帯可能なもの、例えばリモコンなどの携帯機で行う構成とするとよい。
【0084】
望ましくは、第1の装置および第2の装置のうち携帯可能なものにおいて、上述の「通常モード」と「スピードモード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、スピードモードで通信可能な領域では、スピードモードを選択することにより、通信動作を俊敏とすることができ、スピードモードで通信可能な領域よりも遠い領域において、スピードモードでは通信できなくなったときは、通常モードに切り替えることにより、無線通信を用いた遠隔制御によって他の一方の装置の機能を作動させることができる。
【0085】
また、送信ビットレートの変更は、例えばリモコンや他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコンや他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0086】
また、「通常モード」や「スピードモード」のように送信ビットレートの大きさに応じて動作モードを設定する場合には、さらに各モードを送信ビットレートの大きさに応じて多段階、あるいは無段階に設定可能としてもよい。これらの方法を採用することにより、ユーザが信号の送信ビットレートの大きさを容易かつ適確に調整できる。
【0087】
(9)前記第1の装置と前記第2の装置との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、前記信号の強度が所定値以上であり且つ前記最後の通信における信号の受信から所定時間内に送信する場合には送信電力を低減し、前記信号の強度が前記所定値未満または前記最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には前記送信電力を少なくとも前記最後の通信時の前記送信電力に維持するとよい。
【0088】
このようにすれば、ユーザは、システムにおける信号の送受信を確実なものとしつつ、送信消費電力を最適化することができる。例えば、最後の通信において装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合には、次に発信される信号強度を低減させるとよい。ここで、第1の装置と第2の装置のうち、少なくともいずれか一方の装置が携帯可能なものであるため、装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合であっても、ユーザが移動するなどして、時間の経過に伴って第1の装置と第2の装置との間隔が拡がってしまうことがある。このように、最後の通信において装置が受信した信号の強度に応じて、次の通信における送信電力の調整を行えるようにする場合には、例えば時間を指標として第1の装置と第2の装置の間隔の変化を想定し、この想定に基づいて調整を行う構成とするとよい。(9)の構成では、最後の通信において受信した信号の強度が所定値以上であるだけでなく、最後の通信における信号の受信から所定時間内に次の信号を送信する場合に送信電力を低減する構成としている。さらに、(9)の構成では、信号の強度が所定値未満であったり、最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には、少なくとも送信電力を維持する構成としている。このようにすれば、ユーザは、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、送信消費電力を抑制できる。また、例えば電源としてバッテリーを使用する場合には、バッテリーライフを伸ばすことができるため、ユーザはバッテリー交換を頻繁に行う必要がない。
【0089】
ここで、「所定時間」は、例えば最後の通信における信号発信時の送信電力よりも次に発信する信号の送信電力を低減しようとする場合に、仮に第1の装置と第2の装置の間隔が拡がったとしても第1の装置と第2の装置との間で通信が成立するであろうと想定される距離と、第1の装置および第2の装置の間隔の拡張速度の仮定値とを基準として設定する構成とするとよい。例えば、第1の装置および第2の装置のいずれか一方がリモコンなどの携帯機であり、他方が移動しない固定機であるとし、ユーザが徒歩で移動することにより第1の装置と第2の装置の間隔が拡がるケースを想定した場合、一般的な成人が徒歩により移動した場合の平均移動速度と、送信電力の低減後に第1の装置と第2の装置との間で通信が成立するであろうと想定される距離や、送信電力の低減により減縮するであろう通信距離の大きさとの関係から「所定時間」を設定する構成とするとよい。このように、時間を指標として第1の装置と第2の装置の間隔の変化を想定し、この想定結果に基づいて「所定時間」を設定し、この所定時間を送信電力を低減させるための基準の一つとすることにより、送信消費電力を抑制するための制御を行っても、ユーザは、不便を感じることなく、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0090】
なお、送信電力の低減を行う「所定の時間」は、例えば1分から2分の間の時間とするとよい。また、この「所定の時間」は、一定にしてもよいし、信号強度に応じて変えてもよい。
【0091】
ここで、例えば第1の装置を携帯可能な機器(例えばリモコン。)、第2の装置を固定機器(例えば、車載機、宅内機等の外部電源が得られるもの)であるシステムとするとよい。このようにすれば、基本制御がリモコンからコマンド送信することから始まるシステムでは、固定機器側の送信消費電力を下げることができる。この場合、例えば、エンジンスターターやカーセキュリティのように、固定機器側が自動車に搭載されているバッテリーを電源とする構成とすれば、このバッテリーの消費電力を最小限に抑制することができる。
【0092】
また、例えば固定機器側から定期的にリモコンとのリンク確認信号を送信しているシステム等の構成とするとよい。このようにすれば、リンク確認信号の電波強度を見て、リモコンの送信信号の送信電力を下げることができる。リモコンの送信電力を下げ、消費電力を下げることができれば、リモコン(携帯機)に内蔵されているバッテリーの寿命を伸ばすことができ、ユーザがバッテリー交換を頻繁に行う必要がなくなる。
【0093】
また、例えば送信する情報量が多く、複数回に分割して情報を送信する場合には、1回目の送信を大きな送信電力で行い、2回目以降の送信を1回目の電波強度に基づいて調整する構成とするとよい。このようにすれば、送信電力の最適化を図ることができる。この場合、例えば電源としてバッテリーを使用する構成とするとよい。このようにすれば、バッテリーライフを伸ばすことができ、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0094】
また、例えばカーセキュリティのように、リモコンからコマンドを送信しなくても、自動車に何らかのトラブルが発生したことをセンサが検知したときに、固定機器である車載機から信号がリモコンに向けて送信される構成とするとよい。このようにすれば、カーセキュリティの作動を知ったユーザがリモコン操作によりカーセキュリティの解除等の処理を行う場合には、先に受信した車載機からの信号の電波強度に基づいて、リモコンの送信信号の送信電力を下げ、リモコンに内蔵されている電池等における電力消費を最小限に抑制でき、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0095】
さらに、例えばリモコンで固定機器側に信号を送信し、システムの設定を行うことができる構成とするとよい。このようにすれば、リモコンから設定開始コマンドを送信することにより固定機器から戻ってきた応答信号の電波強度に基づき、リモコンからの送信信号の送信電力を下げ、リモコンに内蔵されている電池等における電力消費を最小限に抑制でき、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0096】
リモコンを携帯したユーザは、システムにおいて最後の通信における信号の受信後、移動する可能性がある。そのため、所定の時間が経過した後でリモコンまたは固定機器の送信電力を低減すると、リモコンと固定機器との間の距離が広がりすぎて電波の強さが不十分となり、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることができなくなる可能性がある。そこで、送信電力の低減は所定時間内に行うこととし、所定時間が経過した後は送信電力を維持する構成とするとよい。このようにすれば、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、バッテリーライフを伸ばすことができる。これにより、ユーザがバッテリー交換等の煩わしい作業を行う頻度を最小限に抑制できる。
【0097】
また、「送信電力を少なくとも維持する」構成としては、送信電力を維持する構成としてもよく、送信電力を上げる構成としてもよい。(9)の構成のように、最後の通信において受信した信号の強度が所定値未満または最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には送信電力を少なくとも前記最後の通信時の前記送信電力に維持する構成とするとよい。このようにすれば、送信電力を低下させることでかえって通信が成立しなくなるのを抑制し、通信の安定性が確保できる。これにより、ユーザは、最後の通信において受信した信号の強度が弱い場合や、前回の通信から所定時間が経過した後であっても、何ら不便を感じることなく長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0098】
送信電力の低減を行う「所定の時間」を信号強度に応じて変える場合には、信号強度が大きいほど所定の時間を短くし、信号強度が小さいほど所定の時間を長くする構成とするとよい。ただし、信号強度が所定値未満であれば、送信電力は少なくとも維持する構成とする。
【0099】
(9)の構成では、例えば送信電力を下げた状態で通信できなければ送信電力を増大させ、それでも通信できなければさらに増大させる構成とするとよい。送信電力を下げた状態で通信できない場合における送信電力の増大方法は、段階的あるいは連続的に増大させる構成とするとよく、特に、直接最大まで増大させる構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは消費電力を最小限に抑制できるというメリットを得られる。
【0100】
(9)の構成では、例えばリモコンおよび固定機器の送信電力の設定は、通常状態では最大にしておいて、自動制御で下げる構成としてもよく、ユーザが、リモコンの操作や車載機側に設けられたディップスイッチの設定によって行う構成としてもよい。また、リモコンの表示画面に送信電力を表示可能としてもよい。このようにすれば、この表示により、ユーザは送信電力を確認することができる。また、リモコンの表示画面に、受信電波の強度を表示可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、表示された電波強度により、通信可能かどうかを確認しながらリモコンを使用できる。
【0101】
(10)前記第1の装置と前記第2の装置との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、前記信号の強度が所定値以上であり且つ前記最後の通信における信号の受信から所定時間内に送信する場合には信号を送信する送信ビットレートを上昇させ、前記信号の強度が前記所定値未満または前記最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には前記送信ビットレートを少なくとも前記最後の通信時の前記送信ビットレートに維持するとよい。
【0102】
このようにすれば、ユーザは、システムにおける信号の送受信を確実なものとしつつ、送信ビットレートを最適化することができる。例えば、最後の通信において装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合には、次に発信される信号強度を低減させるとよい。ここで、第1の装置と第2の装置のうち、少なくともいずれか一方の装置が携帯可能なものであるため、装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合であっても、ユーザが移動するなどして、時間の経過に伴って第1の装置と第2の装置との間隔が拡がってしまうことがある。このように、最後の通信において装置が受信した信号の強度に応じて、次の通信における送信ビットレートの調整を行えるようにする場合には、例えば時間を指標として第1の装置と第2の装置の間隔の変化を想定し、この想定に基づいて調整を行う構成とするとよい。(10)の構成では、最後の通信において受信した信号の強度が所定値以上であるだけでなく、最後の通信における信号の受信から所定時間内に次の信号を送信する場合に送信ビットレートを上昇させる構成としている。さらに、(10)の構成では、信号の強度が所定値未満であったり、最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には、少なくとも送信ビットレートを維持する構成としている。このようにすれば、ユーザは、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、送信消費電力を抑制できる。また、例えば電源としてバッテリーを使用する場合には、バッテリーライフを伸ばすことができるため、ユーザはバッテリー交換を頻繁に行う必要がない。
【0103】
ここで、「所定時間」は、例えば最後の通信における信号発信時の送信ビットレートよりも次に発信する信号の送信ビットレートを上昇させようとする場合に、仮に第1の装置と第2の装置の間隔が拡がったとしても第1の装置と第2の装置との間で通信が成立するであろうと想定される距離と、第1の装置および第2の装置の間隔の拡張速度の仮定値とを基準として設定する構成とするとよい。例えば、第1の装置および第2の装置のいずれか一方がリモコンなどの携帯機であり、他方が移動しない固定機であるとし、ユーザが徒歩で移動することにより第1の装置と第2の装置の間隔が拡がるケースを想定した場合、一般的な成人が徒歩により移動した場合の平均移動速度と、送信ビットレートの上昇の低減後に第1の装置と第2の装置との間で通信が成立するであろうと想定される距離や、送信ビットレートの上昇により減縮するであろう通信距離の大きさとの関係から「所定時間」を設定する構成とするとよい。このように、時間を指標として第1の装置と第2の装置の間隔の変化を想定し、この想定結果に基づいて「所定時間」を設定し、この所定時間を送信ビットレートを上昇させるための基準の一つとすることにより、送信ビットレートを上昇させるための制御を行っても、ユーザは、不便を感じることなく、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0104】
なお、送信ビットレートの上昇を行う「所定の時間」は、例えば1分から2分の間の時間とするとよい。また、この「所定の時間」は、一定にしてもよいし、信号強度に応じて変えてもよい。
【0105】
また、「送信ビットレートを少なくとも維持する」構成としては、送信ビットレートを維持する構成としてもよく、送信ビットレートを低下させる構成としてもよい。(10)の構成のように、最後の通信において受信した信号の強度が所定値未満または最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には送信ビットレートを少なくとも前記最後の通信時の前記送信ビットレートに維持する構成とするとよい。このようにすれば、送信ビットレートを上昇させることでかえって通信が成立しなくなるのを抑制し、通信の安定性が確保できる。これにより、ユーザは、最後の通信において受信した信号の強度が弱い場合や、前回の通信から所定時間が経過した後であっても、何ら不便を感じることなく長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0106】
通信システムにおいて帯域幅が同じであれば、送信ビットレートと感度(飛距離)と送信電力とは、それぞれ反比例の関係にある。すなわち、本発明のシステムで、送信ビットレートを上げると、同じ帯域幅、同じ送信電力であれば距離が飛ばなくなり(感度が下がり)、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離が短くなるものの、送信時間を短くし、システムの通信動作をすばやくすることができる。ここで、受信した信号強度が大きい場合には、感度が低くても通信できるため、送信ビットレートを上げても通信が可能である。そのため、(10)の構成では、受信した電波が強ければ強いだけ、送信ビットレートを上げる構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、第1の装置および第2の装置の一方から、他の一方の機能を作動させる信号を送信する状況において、俊敏に他の一方の機能を作動させることができるシステムを得ることができる。
【0107】
(11)前記スペクトラム拡散方式による前記無線通信において、複数の拡散率が設定可能であり、所定の条件を満たしたときに拡散率を変えるとよい。
【0108】
このようにすれば、ユーザは、極めて傍受しづらい無線システムを構築することができる。
【0109】
「拡散率の変更」は、所定のパターンで行う構成とするとよい。「拡散率の変更」の「所定のパターン」は、ランダムとする構成としてもよく、所定の順とする構成としてもよい。ここで、本発明のシステムでは、拡散率は高いほど、より長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。そのため、特に、拡散率としては、最大の拡散率と、その1段下の拡散率を採用する構成とするとよい。このような構成とした場合、拡散率の変更のパターンとしては、最大の拡散率と、その1段下の拡散率を決まったパターンで交互に切り替える構成とするとよい。このようにすれば、傍受しづらく且つ長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0110】
「所定の条件を満たしたとき」は、1パケットの送信毎とする構成としてもよく、所定のデータ量のパケットの送信毎とする構成としてもよく、所定の時間が経過する毎とする構成としてもよい。
【0111】
「拡散率」は、例えば送信ビットレート(B)に対する拡散符号速度(「チップレート」ともいう。C)の比の値(C/B)とするとよい。
【0112】
(12)通信に使用するチャンネルを切り替えながら通信を行えるようにするとよい。
【0113】
このようにすることで、通信に利用するために割り当てられた周波数帯域が切り替わりつつ通信が行われることになるため、ユーザは、拡散スペクトラム方式の通信システム同士で混信の生じにくいシステムを得ることができる。この場合、受信側と送信側とでタイミングを合わせてチャンネルを切り替えることとなる。例えば、無線通信に使用される帯域が920MHz帯の場合、例えば中心周波数が922.4MHz、922.6MHz、922.8MHz、923.0MHz、923.2MHz、923.4MHzの6つのチャンネルを切り替えて使用する構成とするとよい。なお、これらのチャンネル以外のチャンネルを使用しても構わない。
【0114】
拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式では、FSK方式に比べて通信が可能な距離が大幅に伸びる。そのため、例えばLoRa方式のように通信が可能な距離が大きな通信方式を採用した場合には、通信圏内に他のユーザによる通信が割り込む等して混信が起こる可能性が高い。従って、拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式を採用した場合には、通信に使用するチャンネルを適宜切り替えることにより混信を抑制することが好ましい。これにより、ユーザは、近隣で他のユーザが拡散スペクトラム方式による通信を行う機器類を使用していたとしても、その影響を受けることなく安定的に通信することができる。
【0115】
(13)所定の車両始動信号に基づき車両の駆動装置を始動する車両制御装置と、前記車両制御装置に前記駆動装置の始動を許可する始動許可信号を送信可能な始動許可装置とを備え、使用者が携帯可能であって所定の暗証コードを送信可能とされた暗証コード送信機から発信されてきた前記暗証コードを受信し、受信した前記暗証コードと前記始動許可装置が備えている参照コードとに基づいて、前記始動許可装置により前記始動許可信号が送信される車両に対し、前記暗証コードを間接的に送信するために用いられる、(1)から(12)までのいずれかに記載のシステムであって、前記第1の装置と前記第2の装置との前記無線通信は、スペクトラム拡散方式とスペクトラム拡散方式以外の通信方式とが選択可能であり、前記第1の装置は、使用者が携帯可能であり、かつ前記暗証コード送信機から前記暗証コードを受信可能であり、受信した前記暗証コードを所定の方法で変換した変換コードを含む信号および始動指示信号を前記第2の装置に送信可能であり、前記第2の装置は、前記車両に搭載され、受信した前記変換コードを前記暗証コードに変換することおよび変換した前記暗証コードを前記始動許可装置に送信可能であり、かつ前記始動指示信号を受信すると前記車両始動信号を前記車両制御装置に送信可能とするとよい。
【0116】
このようにすれば、ユーザは、例えば暗証コードによる始動許可装置(いわゆるイモビライザー)を備えた自動車において、暗証コード送信機を車内に置かず、自身が携帯したまま、エンジンやモータ等の駆動装置をリモコン(使用者が携帯可能な第1の装置)によって始動させることができる。暗証コード送信機と始動許可装置とは、一般に、例えばセキュリティ上の問題等により、近接していないと暗証コードの送受信ができず、駆動装置の始動を許可することができない。しかし、このようにすれば、暗証コード送信機と始動許可装置とが大きく離れている場合であっても、暗証コード送信機から送信された暗証コードは、リモコン(使用者が携帯可能な第1の装置)と、車載機(車両に搭載された第2の装置)とによって中継され、始動許可装置において受信可能であり、駆動装置の始動を許可することができる。
【0117】
暗証コードについて「間接的に送信する」構成は、例えば、暗証コード送信機から暗証コードを受信した第1の装置から暗証コードを異なる変換コードに変換して第2の装置に送信し、第2の装置では受信した変換コードを元の暗証コードに変換してから始動許可装置に送信する構成とするとよい。
【0118】
第2の装置について、「車両に搭載する」構成は、元々自動車メーカーにおいて車両製造時に車両に取り付ける構成とするとよく、特に、販売された車両に対していわゆる後付けをする構成とするとよい。
【0119】
第1の装置が送信する始動指示信号は、使用者の指示によって発せられる構成とするとよい。
【0120】
第1の装置と第2の装置との無線通信は、スペクトラム拡散方式とスペクトラム拡散方式以外の通信方式とを選択する構成とするとよい。このようにすれば、いずれか一方の方式で駆動装置の始動を許可が困難な場合であっても、駆動装置の始動を許可が行われる可能性を高めることができる。「通信方式の選択」を行う構成は、どのような構成としてもよく、例えば車載機(車両に搭載された第2の装置)に設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置等を介して行う構成とするとよく、特に、リモコン(携帯可能な第1の装置)側で行う構成とするとよい。また、通信方式の選択は、例えばリモコンや他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコンや他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0121】
暗証コード送信機から送信された暗証コードを、使用者が携帯する第1の通信装置と、車両に搭載された第2の通信装置とによって中継するモード(以下「中継モード」という。)と、中継しないモード(以下「非中継モード」という。)とを選択する構成とするとよい。このようにすれば、ユーザや小売業者は、リモコンと車載機を備えるシステムを1種類用意するだけで、イモビライザーを備えた車種にも、イモビライザーを備えない車種にも対応することができ、イモビライザーを備えた車種のユーザで暗証コード送信機を車内に置いても構わないと考えるユーザにも対応することができる。「中継モード」と「非中継モード」とを選択する構成は、例えば車載機にスイッチ等の選択手段を設け、このスイッチ等の選択手段で選択するようにするとよい。
【0122】
「中継モード」が選択された場合には、無線通信をスペクトラム拡散方式以外の通信方式の連続モードとする構成とするとよい。この場合、「スペクトラム拡散方式以外の通信方式」はFSK等とする構成とするとよい。「連続モード」は、DIO2/DATA pinのレベルをそのまま送信する(FIFOを介さない)モードである。
【0123】
「非中継モード」が選択された場合には、「長距離モード」と「短距離モード」とを選択する構成とするとよい。「長距離モード」は、の無線通信をスペクトラム拡散方式のパケットモードを選択する構成とするとよく、特にLoRa方式のパケットモードとする構成とするとよい。「パケットモード」は、SPI(Serial Peripheral
Interface)で与えられるデータをFIFOを介してパケットにして送信する構成とするとよい。
【0124】
「短距離モード」は、無線通信をスペクトラム拡散方式以外の通信方式のパケットモードとする構成とするとよく、望ましくは無線通信をスペクトラム拡散方式のパケットモードで長距離通信モードよりも送信ビットレートを高くする設定とするとよく、さらに望ましくは無線通信をLoRa方式で長距離通信モードよりも送信ビットレートを高くする設定とするとよい。LoRa方式とFSK方式とが選択可能であり、且つ連続モードとパケットモードとが選択可能である通信装置は、例えば上述の通信チップ「SX1272」とするとよい。
【0125】
(1)から(13)のいずれかの構成は任意に組み合わせて構成するとよい。また(1)から(13)の構成に記載の構成要素を任意に組み合わせて構成してもよい。
【0126】
(14)例えば上記(1)から(13)までのいずれかに記載のシステムにおける第1の装置として構成するとよい。
【0127】
(15)例えば上記(1)から(13)までのいずれかに記載のシステムにおける第2の装置として構成するとよい。
【0128】
これらのような装置としては、例えば上述した民生機器や、各種の産業機器に用いるシステム用の装置や、検針データを収集する無線通信システム用の装置とするとよく、特に、自動車関連機器に用いるシステム用の装置として構成するとよい。自動車関連機器に用いるシステム用の装置は、例えば、エンジンスターターに用いるシステム用の装置として、リモコンまたは車載機として構成するとよい。
【0129】
(16)例えば上記(1)から(13)までのいずれかに記載の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成するとよい。
【発明の効果】
【0130】
本発明によれば、例えば従来に比べ、遠隔制御をより確実に行うことができ、使い勝手のよい、システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1図1は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の例の概 略を示すブロック図である。
図2図2は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの外観図であり 、同図(a)はリモコンの正面図、同図(b)はジャンクションユニットの斜視図で ある。
図3図3は、リモコンを用いてエンジンを始動させる際のリモコンの表示部の表 示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。
図4図4は、リモコンを用いてエンジン状態を確認する際のリモコンの表示部の 表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。
図5図5は、リモコンを用いてアイドリング延長を行う際のリモコンの表示部お よびリモコンから発せられる音声を示す図である。
図6図6は、リモコンを用いてエンジンを停止させる際のリモコンの表示部の表 示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。
図7図7は、リモコンを用いてドアのロックまたはアンロックを行う際のリモコ ンの表示部の表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。
図8図8は、第1のリモコン登録方法についての説明図である。
図9図9は、第2のリモコン登録方法についての説明図である。
図10図10は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別 の例の概略を示すブロック図であり、イモビライザーを備える自動車において純正キ ーをユーザが携帯して使用する場合を示す。
図11図11は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別 の例の概略を示すブロック図であり、イモビライザーを備える自動車の車内に純正キ ーを配置して使用する場合を示す。
図12図12は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別 の例の概略を示すブロック図であり、イモビライザーを備えない自動車に使用する場 合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0132】
以下、本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照して説明する。本実施形態のシステムは、自動車のエンジン(駆動装置)をリモートコントローラ(以下「リモコン」という。)を用いた遠隔操作により始動させるエンジンスターターに用いられるシステムである。なお、本発明は以下に説明する実施形態において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【0133】
1.エンジンスターターの構成
図1は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の例の概略を示すブロック図である。図2は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの外観図であり、同図(a)はリモコンの正面図、同図(b)はジャンクションユニットの斜視図である。
【0134】
図1に示すように、エンジンスターター10は、リモコン20(第1の装置)と、自動車に搭載されるジャンクションユニット40(第2の装置)とを備える。リモコン20は、ユーザが手に持って操作や移動等することが可能である。図2(a)に示すように、リモコン20は、上部と下部が丸みを帯びた、扁平な略矩形状のケース22の前面に、その上下方向中央部から上部にかけて表示部24を備えている。表示部24は、モノクロ2階調のセグメント式液晶画面である。表示部24は、7色のバックライトを内蔵しており、操作ボタン26の操作が検出された際にバックライトを点灯させることで、より見やすさが向上する。ただし、常時点灯させるとバッテリーの消費が早くなるため、設定された時間だけ点灯したあと、消灯する。この時間は、ユーザの設定により変更できる(例えば、5秒/10秒/20秒から選択(初期値は5秒))。また、全く点灯しないモードを採ることもできる。また、バックライトの色もユーザの設定により変更できる(例えば、白/黄/紫/青/橙/緑/藍)。表示部24は、設定時には設定する項目や内容等を表示し、使用時にはシステムやエンジンの動作状態等を表示することができる。後述する図3図8には、表示部24の各種表示の例を示す。
【0135】
ケース22の前面の表示部24の下方には操作ボタン26を備えている。操作ボタン26は、操作に使用するボタンであり、スタートボタン26a、エンジンボタン26b、およびストップボタン26cを備える。スタートボタン26aはロックボタンを兼ね、ストップボタン26cは、アンロックボタンを兼ねる。図2(a)に示すように、左側に設けられたスタートボタン26aと右側に設けられたストップボタン26cは互いに接し、エンジンボタン26bは、スタートボタン26aおよびストップボタン26cの下方に接するように設けられている。ケース22の左上部には、ロッド式のアンテナ28が設けられている。アンテナ28は、リモコン20の使用時には長く引き出され、不使用時には短く押し込まれる。ケース22の背面には、不図示のバッテリーカバーが設けられている。
【0136】
リモコン20は、ケース22の内部に、図1に示す無線通信回路30、制御部32およびバッテリー34を備える。
【0137】
ジャンクションユニット40は、自動車の購入後に自動車に取り付けられる。図2(b)に示すように、ジャンクションユニット40は、ケーブルを介して自動車のキーシリンダー側コネクターおよび車両側コネクターに接続される第1のコネクター42と、ケーブルを介してブレーキ検出線、ドアロック線、ドアアンロック線等に接続される第2のコネクター44と、温度センサ54に接続される第3のコネクター46と、アンテナユニット56に接続される第4のコネクター48とを備える。
【0138】
第1のコネクター42とキーシリンダー側コネクターと車両側コネクターとは、キーを用いてキーシリンダーの操作をしたときにキーシリンダーからケーブルを介して車両側に送信される信号と同じ信号が、リモコン20を操作したときにジャンクションユニット40から第1のコネクター42およびケーブルを介して車両側に送信されるように接続されている。そのため、例えばリモコン20を用いてエンジンを始動させる操作をすると、キーを用いて自動車のエンジンを始動させる操作をしたときと同じ車両始動信号が車両側の車両制御装置に送信され、エンジンが始動する。
【0139】
第2のコネクター44に接続されたドアロック線およびドアアンロック線は、車両側のドア制御装置に接続されている。リモコン20を用いてドアをロックまたはアンロックする操作をすると、キーや元々キーに設けられたリモコン(リモコン20とは別のリモコン)を用いてドアをロックまたはアンロックする操作をしたときにドア制御装置に送信されるドアロック信号またはドアアンロック信号と同じ信号が、ジャンクションユニット40からドア制御装置に送信され、ドアがロックまたはアンロックされる。
【0140】
なお、リモコン20には固有のIDが設定されており、ジャンクションユニット40は、そのIDが当該ジャンクションユニット40とペアになっているリモコン20からの信号を受信した場合に、その信号に基づいて動作する。そのため、例えば、ペアになっていないリモコン20を用いてエンジンを始動させる操作をしても、当該リモコン20から送信された車両始動信号に対してジャンクションユニット40は応答しないため、エンジンを始動させることができない。
【0141】
ジャンクションユニット40は、内部に、図1に示す無線通信回路50および制御部52を備える。ジャンクションユニット40は、自動車の備えるバッテリーを電源とする。
【0142】
リモコン20およびジャンクションユニット40は、いずれもセムテック(SEMTECH)社製の通信チップ「SX1272」を備え、リモコン20の無線通信回路30およびジャンクションユニット40の無線通信回路50は、いずれもこの通信チップを中心に構成されている。リモコン20の無線通信回路30はアンテナ28に接続され、ジャンクションユニット40の無線通信回路50はアンテナユニット56に接続されている。
【0143】
無線通信回路30および無線通信回路50は、いずれもサブギガヘルツ帯である920MHz帯のCH33からCH38までの6つのチャンネルを切り替えて使用することができる。それぞれのチャンネルの中心周波数は、CH33が922.4MHz、CH34が922.6MHz、CH35が922.8MHz、CH36が923.0MHz、CH37が923.2MHz、CH38が923.4MHzである。いずれのチャンネルとも帯域幅は200kHzであり、送信可能電力は20mWである。リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、特定小電力無線である。
【0144】
これらのチャンネルの帯域幅200kHzは、従来のエンジンスターターに用いられていた426.0250~426.1375MHz、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzの各帯域のチャンネルの帯域幅12.5kHzの16倍である。また、これらのチャンネルの送信可能電力20mWは、従来のエンジンスターターに用いられていた426.0250~426.1375MHzまたは426.0375~426.1125MHzの送信可能電力1mWの20倍であり、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzの送信可能電力10mWの2倍である。
【0145】
無線通信回路30および無線通信回路50によって、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信が行われる。リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信に用いられる電波は、リモコン20のアンテナ28およびジャンクションユニット40のアンテナユニット56を介して送受信される。リモコン20とジャンクションユニット40の無線通信は、スペクトラム拡散方式のうちLoRa方式で行われる。また、リモコン20とジャンクションユニット40の無線通信は、使用するチャンネルの帯域幅の両端から帯域の内側に帯域幅の1/4の部分のうち一方、および帯域幅の中心において、同一の電力で信号の送信が行われる。
【0146】
リモコン20の制御部32およびジャンクションユニット40の制御部52は、いずれもCPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、各種の周辺回路、インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを備える。制御部32および制御部52は、ROMに記録されたブートローダーによって、フラッシュメモリに記録されたOSとアプリケーションプログラムをRAM上に展開し、RAM上のOSおよびアプリケーションプログラムを実行することで、各種の処理を実行し、各種の機能を実現する。特に断りのない限り、すべての機能は制御部32および制御部52の処理によって実現される。リモコン20の無線通信回路30およびジャンクションユニット40の無線通信回路50に設けられた無線通信を行うための発振器の周波数またはチャンネルは、制御部32および制御部52の備えるマイクロコンピュータのレジスタに書き込まれる。
【0147】
2.エンジンスターターの使用方法および動作
次にエンジンスターター10の使用方法と動作について説明する。
【0148】
2-1.エンジンの始動
図3は、リモコンを用いてエンジンを始動させる際のリモコンの表示部の表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。以下の説明に記載される(a)~(i)はそれぞれ同図の(a)~(i)に対応する。
【0149】
(a)自動車のエンジンを始動させる際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでエンジンボタン26bを押す。表示部24には、「E」が点滅状態で表示される。
【0150】
(b)続いて、「E」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまでスタートボタン26aを押す。表示部24には、「START」と表示されるとともに送信アニメーションが表示され、リモコン20から始動指示信号が送信される。ジャンクションユニット40が始動指示信号を認識すると、リモコン20に応答信号を送り返す。送信アニメーションは(b1)に示すように、上下に並んだ3本の横棒が上から順に右から左へと移動し、その後2本の縦棒が右から左へと移動する動作を繰り返す。
【0151】
(c)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。
【0152】
(d)リモコン20がジャンクションユニット40からの応答信号を受信すると、リモコン20から受信音「ソファミレド」が発せられる。ここで、車室内温度表示設定がONのときには、応答信号に含まれる温度情報に基づき、表示部24に現在の車室内温度を一定時間表示したあと、温度表示は消え、エンジン始動確認信号の受信を待つ。温度情報は、温度センサ54により検知された車室内温度である。
【0153】
(e)一方、車室内温度表示設定がOFFのときには、リモコン20から受信音「ソファミレド」が発せられると、表示部24に「oK」を一定時間表示したあと、oK表示は消え、エンジン始動確認信号の受信を待つ。
【0154】
ジャンクションユニット40は、車両制御装置に車両始動信号を送信し、エンジンの始動を行う。エンジンが始動すると、ジャンクションユニット40がエンジン始動を検出して、エンジン始動確認信号をリモコン20に送信する。ジャンクションユニット40が送信する車両始動信号は、キーを用いてエンジンを始動する操作を行ったときにキーシリンダーから送信される車両始動信号と同じ信号である。
【0155】
(f)リモコン20がジャンクションユニット40から送信されたエンジン始動確認信号を受信すると、リモコン20から受信音「ドレミファソファミレド」が発せられる。ここで、オートストップが無効のときは、表示部24にエンジン始動アニメーション24bとアイドリング設定時間を表示する。
【0156】
(g)一方、オートストップが有効のときは、リモコン20から受信音「ドレミファソファミレド」が発せられると、表示部24にエンジン始動アニメーション24bと「AUTo」を表示する。オートストップとは、車両の不要なアイドリングを防止するため、アイドリング中に予め設定した温度に車室内温度が到達した場合、アイドリングを自動的に停止する機能である。エンジン始動時の車室内温度が設定温度に対して±2℃以内の場合、アイドリング時間は5分に固定される。
【0157】
アイドリング中には、ジャンクションユニット40から連続して「ピッピッピッ」音が発せられ、アイドリングしていることが通知される。
【0158】
なお、ジャンクションユニット40がエンジン始動を検出できなかったときには、再始動(リトライ)を2回行う。
【0159】
(h)リトライ動作を行うと、表示部24には「RT」が点滅状態で表示され、リトライ動作が通知される。
【0160】
(i)2回目のリトライ動作でもエンジンが始動しなかった場合には、ジャンクションユニット40からリトライ失敗信号が送信され、リトライ失敗信号を受信したリモコン20から受信音「ピーピッピッピッ」が発せられるとともに、表示部24には「ER」が点滅状態で表示され、リトライ動作が中止される。リトライの設定をOFFにした場合も表示部24の表示は(i)と同様の表示となる。
【0161】
2-2.エンジンの状態の確認
図4は、リモコンを用いてエンジン状態を確認する際のリモコンの表示部の表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。以下の説明に記載される(a)~(i)はそれぞれ同図の(a)~(i)に対応する。
【0162】
(a)エンジンの状態を確認する際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでエンジンボタン26bを押す。表示部24には、「E」が点滅状態で表示される。
【0163】
(b)続いて、「E」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまで、もう一度エンジンボタン26bを押す。表示部24には、「chK」と表示される。
【0164】
(c)表示部24には、「chK」に続いて送信アニメーションが表示され、リモコン20からエンジン状態確認信号が送信される。ジャンクションユニット40がエンジン状態確認信号を認識すると、リモコン20に応答信号を送り返す。
【0165】
(d)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。なお、エンジンが始動できなかった場合は、エンジンボタン26bを2度押すことで始動エラー音を確認することができる。
【0166】
(e)ここで、車室内温度表示設定がONのときには、リモコン20から受信音「ソファミレド」が発せられ、応答信号に含まれる温度情報に基づき、表示部24に車室内の温度が表示される。温度情報は、温度センサ54により検知された車室内温度である。車室内温度表示設定がOFFのときには、この表示は行われない。
【0167】
(f、g)車室内温度を表示した後、表示部24にアイドリング時間が表示される。ここで、(f)オートストップが無効の場合、「アイドリング状態」のときは、表示部24にアイドリング残時間が表示される。(g)「エンジン停止状態」のときは、表示部24にアイドリング設定時間が表示される。
【0168】
(h、i)一方、オートストップが有効の場合、(h)「アイドリング状態」のときは、表示部24にアイドリング経過時間が表示される。(i)「エンジン停止状態」のときは、表示部24に「AUTO」が表示される。
【0169】
2-3.アイドリング時間の延長
本実施形態に係るエンジンスターターによるアイドリング中に、アイドリング設定時間に対して一度だけ10分間のアイドリング延長ができる。
【0170】
図5は、リモコンを用いてアイドリング延長を行う際のリモコンの表示部およびリモコンから発せられる音声を示す図である。以下の説明に記載される(a)~(h)はそれぞれ同図の(a)~(h)に対応する。
【0171】
(a)アイドリング時間の延長を行う際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでエンジンボタン26bを押す。表示部24には、「E」が点滅状態で表示される。
【0172】
(b)続いて、「E」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまで、スタートボタン26aを押す。表示部24には、「START」と表示されるともに送信アニメーションが表示され、リモコン20からアイドリング時間延長信号が送信される。ジャンクションユニット40がアイドリング時間延長信号を認識すると、リモコン20に応答信号を送り返す。
【0173】
(c)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。
【0174】
(d)リモコン20がジャンクションユニット40からの応答信号を受信すると、リモコン20から受信音「ドレミファソファミレド」が発せられ、(e、f)表示部24には「Ido」と「+10」が交互に表示され、アイドリング時間の延長が通知される。
【0175】
(g、h)ここで、オートストップが有効のときは、アイドリング延長は無効となり、リモコン20から受信音「ドレミファソファミレド」が発せられ、表示部には経過時間と「Ido」が交互に表示される。
【0176】
2-4.エンジンの停止
本実施形態に係るエンジンスターターでエンジンを始動させた場合、リモコン20でエンジンを停止させることができる。
【0177】
図6は、リモコンを用いてエンジンを停止させる際のリモコンの表示部の表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。以下の説明に記載される(a)~(d)はそれぞれ同図の(a)~(d)に対応する。
【0178】
(a)自動車のエンジンを停止させる際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでエンジンボタン26bを押す。表示部24には、「E」が点滅状態で表示される。
【0179】
(b)続いて、「E」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまでストップボタン26cを押す。表示部24には、「STOP」と表示されるとともに送信アニメーションが表示され、リモコン20から停止指示信号が送信される。ジャンクションユニット40が停止指示信号を認識すると、車両制御装置にエンジン停止信号を送信してエンジンを停止させるとともに、リモコン20に応答信号を送り返す。ジャンクションユニット40が送信するエンジン停止信号は、キーを用いてエンジンを停止する操作を行ったときにキーシリンダーから送信されるエンジン停止信号と同じ信号である。
【0180】
(c)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。
【0181】
(d)リモコン20がジャンクションユニット40からの応答信号を受信すると、リモコン20から受信音「ソミレドレ」が発せられ、表示部24に「oK」が表示され、エンジン停止アニメーションが表示され、エンジンが停止したことが通知される。
【0182】
2-5.ドアのロック/アンロック操作
本実施形態に係るエンジンスターターのリモコン20で自動車のドアのロックやアンロックができる。
【0183】
図7は、リモコンを用いてドアのロックまたはアンロックを行う際のリモコンの表示部の表示およびリモコンから発せられる音声を示す図である。以下の説明に記載される(a)~(h)はそれぞれ同図の(a)~(h)に対応する。
【0184】
(a)ドアのロックを行う際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでロックボタンを兼ねるスタートボタン26aを押す。表示部24には、「ロック状態の南京錠」が点滅状態で表示される。
【0185】
(b)続いて、「ロック状態の南京錠」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまで、もう一度スタートボタン26aを押す。表示部24には、「ロック状態の南京錠」が一瞬表示され、リモコン20からロック指示信号が送信される。ジャンクションユニット40がロック指示信号を認識すると、第2のコネクター44およびドアロック線を介してドア制御装置にドアロック信号を送信し、ドア制御装置によってドアをロックした後、リモコン20に応答信号を送り返す。
【0186】
(c)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。
【0187】
(d)リモコン20がジャンクションユニット40からの応答信号を受信すると、リモコン20から受信音「ソファミレド」が発せられ、表示部24に「ロック状態の南京錠」と「oK」が表示され、ドアのロック(施錠)が通知される。
【0188】
(e)ドアのアンロックを行う際には、リモコン20から操作確認音「ピッ」が発せられるまでアンロックボタンを兼ねるストップボタン26cを押す。表示部24には、「アンロック状態の南京錠」が点滅状態で表示される。
【0189】
(f)続いて、「アンロック状態の南京錠」が点滅中(約3秒間)に、リモコン20から「ドレミファソ」音が発せられるまで、もう一度ストップボタン26cを押す。表示部24には、「アンロック状態の南京錠」が一瞬表示され、リモコン20からアンロック指示信号が送信される。ジャンクションユニット40がアンロック指示信号を認識すると、第2のコネクター44およびドアアンロック線を介してドア制御装置にドアアンロック信号を送信し、ドア制御装置によってドアをアンロックした後、リモコン20に応答信号を送り返す。
【0190】
(g)ジャンクションユニット40からの応答信号を待っている間、表示部24ではバックライトがゆっくり点滅するとともに、横棒24aが左から右に順に点灯する受信待ちアニメーションが表示される。
【0191】
(h)リモコン20がジャンクションユニット40からの応答信号を受信すると、リモコン20から受信音「ソファミレド」が発せられ、表示部24に「アンロック状態の南京錠」と「oK」が表示され、ドアのアンロック(解錠)が通知される。
【0192】
2-6.リモコンの登録方法
本実施形態のエンジンスターターでは、CH33(922.4MHz)、CH34(922.6MHz)、CH35(922.8MHz)、CH36(923.0MHz)、CH37(923.2MHz)、およびCH38(923.4MHz)の6つのチャンネルを使用する。製品出荷時は、無線周波数はCH38に設定した状態で出荷する。ユーザが同じリモコン20で、同じジャンクションユニット40にリモコン登録を再度行うと、無線通信チャンネルは、次のチャンネル(キャリアセンスエラーであれば、そのまた次のチャンネル)に変更する。チャンネルの変更の順番は、CH38→CH33→CH34→…→CH38→CH33を巡回する。リモコン20の信号がCH38で受信できない状況で、チャンネルの変更が必要な状況でも(妨害されていても)、このリモコン登録の作業は、ジャンクションユニット40に近い位置で行うので、問題が無い。以下では、2種類のリモコン登録の方法について説明する。製品出荷時にはリモコン登録が完了した状態であるため、リモコン登録の作業は、使用中のリモコンを紛失した場合や使用中のリモコンが故障した場合等に、新たなリモコンのIDをジャンクションユニットに登録して新たなリモコンを使用可能とするために行われる。
【0193】
(1)第1のリモコン登録方法
図8は、第1のリモコン登録方法についての説明図である。以下、同図を参照して第1のリモコン登録方法について説明する。以下の説明に記載される〈手順1〉~〈手順8〉はそれぞれ同図の〈手順1〉~〈手順8〉に対応する。
〈手順1〉リモコン20のスタートボタン26aとストップボタン26cの両方を同時に約5秒間押し続ける。
〈手順2〉リモコン20の表示部24に「Rmd」が表示されるまでストップボタン26cを押す。20秒以上ボタン操作がないと、リモコン20からブザー音「ピーピーピー」が発せられ、登録がキャンセルされる。
〈手順3〉リモコン20のエンジンボタン26bを押す。表示部24に「REC」と表示され、リモコン20から「ピッピッピッ…」と確認音が連続して発せられる。20秒以上ボタン操作がないと、リモコン20からブザー音「ピーピーピー」が発せられ、登録がキャンセルされる。
【0194】
以下の手順4~手順7は、リモコン20から確認音「ピッピッピッ…」が発せられている間(約40秒間)に行う。手順4~手順7が完了する前に40秒を超えると、確認音「ピッピッピッ…」が消え、登録がキャンセルされる。
〈手順4〉キー62を車両本体に設けられたキーホール64に差し込んで、キー62を操作してACC→ON→ACC→OFFを7.5秒以内に3回切り替える。
〈手順5〉キー62の位置がOFFの状態でジャンクションユニット40から「ピロッピロッ」音が10秒間発せられ、最後に「ピー」音が発せられる。「ピロッピロッ」音が発せられている間にキー62を操作すると登録がキャンセルされる。
〈手順6〉ジャンクションユニット40から「ピー」音が発せられてから7.5秒以内にキー62を操作してOFF→ACC→ON→ACC→OFFを3回切り替える。ジャンクションユニット40から「ピピー」音が発せられる。3回の切り替えが完了する前に7.5秒を超えると登録がキャンセルされる。
〈手順7〉リモコン20から「ドレミ」音が発せられるまで、エンジンボタン26bを押す。表示部24に表示された「REC」が1度点滅し、リモコン20からIDを含む信号が送信される。ジャンクションユニット40がIDを含む信号を受信し、IDの登録が行われると、ジャンクションユニット40から「ピッ」「ピッ」「ピー」音が発せられ、リモコン20に応答信号が送信される。ジャンクションユニット40から送信された応答信号をリモコン20が受信すると、受信音「ミレド」が発せられ、表示部24に「ok」と表示され、リモコン登録完了が通知される。
〈手順8〉キーホール64からキー62を抜く。
【0195】
(2)第2のリモコン登録方法
図9は、第2のリモコン登録方法についての説明図である。以下、同図を参照して第2のリモコン登録方法について説明する。以下の説明に記載される〈手順1〉~〈手順8〉はそれぞれ同図の〈手順1〉~〈手順8〉に対応する。
〈手順1〉ジャンクションユニット40の第1のコネクター42からコネクター42aを外し、再度接続する。ジャンクションユニット40から「ピピピッ ピピピッ ピピピッ」と確認音が連続して発せられる。
〈手順2〉リモコン20のスタートボタン26aとストップボタン26cの両方を同時に約5秒間押し続ける。
〈手順3〉リモコン20の表示部24に「Rmd」が表示されるまでストップボタン26cを押す。20秒以上ボタン操作がないと、リモコン20からブザー音「ピーピーピー」が発せられ、登録がキャンセルされる。
〈手順4〉リモコン20のエンジンボタン26bを押す。表示部24に「REC」と表示され、リモコン20から「ピッピッピッ…」と確認音が連続して発せられる。20秒以上ボタン操作がないと、リモコン20からブザー音「ピーピーピー」が発せられ、登録がキャンセルされる。
【0196】
以下の手順5および手順6は、リモコン20から確認音「ピッピッピッ…」が発せられている間(約40秒間)に行う。手順5および手順6が完了する前に40秒を超えると、確認音「ピッピッピッ…」が消え、登録がキャンセルされる。
〈手順5〉キー62を車両本体に設けられたキーホール64に差し込んで、キー62を操作してOFF→ACC→ONと切り替える。ジャンクションユニット40から約3秒後に「ピピッ」音が発せられる。
〈手順6〉リモコン20から「ドレミ」音が発せられるまで、エンジンボタン26bを押す。表示部24に表示された「REC」が1度点滅し、リモコン20からIDを含む信号が送信される。ジャンクションユニット40がIDを含む信号を受信し、IDの登録が行われると、ジャンクションユニット40から「ピッ」「ピッ」「ピー」音が発せられ、リモコン20に応答信号が送信される。ジャンクションユニット40から送信された応答信号をリモコン20が受信すると、受信音「ミレド」が発せられ、表示部24に「ok」と表示され、リモコン登録完了が通知される。
〈手順8〉キー62を操作してON→ACC→OFFと切り替え、キーホール64からキー62を抜く。
【0197】
3.エンジンスターターの別の実施形態
図10は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別の例の概略を示すブロック図である。同図には、エンジンスターター10をイモビライザー66(始動許可装置)を備える自動車60に使用している状態を示す。同図では、図1に示すエンジンスターターと実質的に同一の構成の部分には同一の符号を付している。本実施形態のエンジンスターター10は、イモビライザー66を備える自動車60に使用可能である。
【0198】
3-1.全体の構成
自動車60には、エンジン70(駆動装置)と車両制御装置68とイモビライザー66とジャンクションユニット40が設けられており、車両制御装置68とイモビライザー66とジャンクションユニット40とは互いにケーブル36で接続されている。リモコン20と純正キー62a(暗証コード送信機)はユーザが携帯する。なお、図10において、破線は無線通信による接続を意味する(後述する図11および図12でも同様。)。
【0199】
車両制御装置68は、車両始動信号に基づきエンジン70を始動する。車両始動信号は、ユーザのリモコン20を用いたエンジン始動操作によりリモコン20から送信され、この車両始動信号を受信したジャンクションユニット40から車両制御装置68に送信される。また、車両始動信号は、自動車60に設けられた図示しない始動ボタンを押すことによって、または純正キー62aをキーホールに差し込んで回すことによって、車両制御装置68に送信される。純正キー62aは、販売時の自動車に付属するものであり、暗証コードを送信する。
【0200】
イモビライザー66は、純正キー62aから送信された暗証コードを受信すると、イモビライザー66の備える記憶装置に記憶された参照コードとこの暗証コードを対比し、合致すれば車両制御装置68にエンジン70の始動を許可する始動許可信号を送信する。車両制御装置68は、車両始動信号を受信すると、20msの間始動許可信号の存在を確認し、その間に始動許可信号が存在することが確認するとエンジン70を始動させることができる。
【0201】
本実施形態のエンジンスターター10は、リモコン20およびジャンクションユニット40がいずれも通信チップ「SX1272」を備えているため、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信についてスペクトラム拡散方式のひとつであるLoRa方式と、スペクトラム拡散方式以外の通信方式であるFSK方式とが選択可能である。イモビライザー66を備えた自動車60に使用し、純正キー62aをユーザが携帯して使用する場合には、無線通信はFSK方式とする。
【0202】
リモコン20は、純正キー62aから暗証コードを受信可能であり、受信した暗証コードを別のコード(以下「変換コード」という。)に変換し、この変換コードをジャンクションユニット40に送信する。以下では、「純正キー62aから送信された暗証コードを、リモコン20で変換コードに変換してジャンクションユニット40に送信し、ジャンクションユニット40で変換コードを元の暗証コードに変換してイモビライザー66に送信する」ことを、「暗証コードを中継する」という。また、リモコン20は、ユーザのエンジン始動操作により、始動指示信号をジャンクションユニット40に送信する。
【0203】
ジャンクションユニット40は、リモコン20から変換コードを受信すると、変換コードを元の暗証コードに変換し、変換した暗証コードをイモビライザー66に無線で送信する。また、ジャンクションユニット40は、リモコン20から始動指示信号を受信すると、車両始動信号を車両制御装置68にケーブル36を介して送信する。なお、純正キー62aとイモビライザー66またはリモコン20との通信可能距離は、リモコン20とジャンクションユニット40との通信可能距離よりも短い。
【0204】
3-2.動作
ユーザがリモコン20を用いてエンジン始動操作を行うと、変換コードを含む信号および始動指示信号がリモコン20からジャンクションユニット40に送信される。
【0205】
変換コードを含む信号および始動指示信号を受信したジャンクションユニット40は、暗証コードをイモビライザー66に送信するとともに、車両始動信号を車両制御装置68に送信する。
【0206】
イモビライザー66は、暗証コードを受信すると、イモビライザー66の備える記憶装置に記憶された参照コードとこの暗証コードを対比し、合致すれば車両制御装置68にエンジン70の始動を許可する始動許可信号を送信する。
【0207】
車両制御装置68は、車両始動信号を受信してから20ms以内に始動許可信号の存在を確認すると、エンジン70を始動する。車両始動信号を受信してから20ms以内に始動許可信号の存在を確認しなければならないため、通信速度、反応速度がLoRa方式に比べて速いFSK方式を選択する。ただし、リモコン20により遠隔制御が可能な距離はLoRa方式と比べて短くなる。
【0208】
3-3.その他の使用形態
(1)イモビライザーを備える自動車の車内に純正キーを配置して使用する場合
本実施形態のエンジンスターターは、イモビライザーを備える自動車において、車内に純正キーを配置する場合にも使用することができる。
【0209】
図11は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別の例の概略を示すブロック図であり、イモビライザーを備える自動車の車内に純正キーを配置して使用する場合を示す。この場合、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、LoRa方式を使用する。
【0210】
この場合、自動車60の車内に純正キー62aを配置するため、イモビライザー66は純正キー62aから発信される暗証コードを常時受信することが可能であり、また、イモビライザー66は車両制御装置68に始動許可信号を常時送信することが可能である。この場合、「暗証コードを中継する」機能は使用しないため、当該機能はOFFとし、「非中継モード」とする。
【0211】
ユーザがエンジン始動操作を行うと、リモコン20から始動指示信号が送信され、この始動指示信号を受信したジャンクションユニット40は、車両始動信号を車両制御装置68に送信する。車両制御装置68は、車両始動信号を受信してから20ms以内に始動許可信号を受信すると、エンジン70を始動する。
【0212】
通信方式は、LoRa方式とFSK方式のうち、使用可能な方を選択する。車両始動信号を受信してから20ms以内に始動許可信号の存在を確認しなければならないが、始動許可信号は自動車60の車内に配置した純正キー62aから発信されるため、いずれの方式を選択してもよい。リモコン20により遠隔制御が可能な距離を優先するのであればLoRa方式のパケットモードを選択する(長距離モード)。通信速度、反応速度を優先するのであればLoRa方式のパケットモードであって、長距離モードよりも送信ビットレートを高くする設定を選択する(短距離モード)。
【0213】
(2)イモビライザーを備えない自動車に使用する場合
本実施形態のエンジンスターターは、イモビライザーを備えない自動車においても使用することができる。
【0214】
図12は、本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターの構成の別の例の概略を示すブロック図であり、イモビライザーを備えない自動車に使用する場合を示す。この場合、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、LoRa方式を使用する。
【0215】
この場合、イモビライザーは存在しないため、ユーザがエンジン始動操作を行うと、リモコン20から始動指示信号が送信され、この始動指示信号を受信したジャンクションユニット40は、車両始動信号を車両制御装置68に送信する。車両制御装置68は、始動許可信号を受信すると、エンジン70を始動する。この場合も、「暗証コードを中継する」機能は使用しないため、当該機能はOFFとする。
【0216】
通信方式は、LoRa方式とFSK方式のうち、使用可能な方を選択する。通信速度、反応速度を優先するのであればFSK方式を選択し、リモコン20により遠隔制御が可能な距離を優先するのであればLoRa方式を選択するよい。
【0217】
4.本発明に係るシステムの変形例
本発明に係るシステムを用いたエンジンスターターでは、上述した2つの実施形態において、以下のように変形してもよい。
【0218】
上述の実施形態に係るエンジンスターターは、リモコン20およびジャンクションユニット40の少なくとも一方から送信する信号の強度をノイズフロアー以下としてもよい。
【0219】
リモコン20の備えるジャンクションユニット40との無線通信に用いられるアンテナは、図2に示すロッド式のアンテナ28以外に、ケース22の内部に配置される内蔵式のアンテナを用いてもよい。
【0220】
リモコン20またはジャンクションユニット40は、信号の送信電力の大きさおよび信号のビットレートの少なくとも一方を、ユーザが直接的あるいは間接的に変更可能としてもよい。
【0221】
上述の実施形態に係るエンジンスターターは、リモコン20とジャンクションユニット40との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、信号の強度が-80dBm以上であり且つ最後の通信における信号の受信から1分以内に送信する場合には送信電力を低減し、信号の強度が-80dBm以上未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信電力を少なくとも最後の通信時の送信電力に維持する構成としてもよい。
【0222】
また、上述の実施形態に係るエンジンスターターは、リモコン20とジャンクションユニット40との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、信号の強度が-80dBm以上であり且つ最後の通信における信号の受信から1分以内に送信する場合には信号を送信する送信ビットレートを上昇させ、信号の強度が-80dBm未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信ビットレートを少なくとも最後の通信時の送信ビットレートに維持する構成としてもよい。
【0223】
上述の実施形態に係るエンジンスターターは、スペクトラム拡散方式による無線通信において、複数の拡散率が設定可能であり、1パケットの送信毎に拡散率を変える構成とするとよい。
【0224】
上述の実施形態に係るエンジンスターターは、通信に使用するチャンネルを切り替えながら通信を行えるようにするとよい。
【0225】
上述の実施形態に係るエンジンスターターは、Busy判定で信号が存在していないことが確認されたチャンネルに自動的に切り替えられる構成を備えるものとしてもよい。チャンネルのBusy判定は、リモコン20の制御部32およびジャンクションユニット40の制御部52で行い、スペクトラム拡散方式の信号のレベル判定はCAD機能を用いて行い、スペクトラム拡散方式以外の他の変調方式の信号のレベル判定はRSSIによって行う。Busy判定は、スペクトラム拡散方式の信号では-130dBm以上のときにBusyとし、他の変調方式の信号では-80dBm以上のときにBusyとする。
【0226】
以上のようなシステムによれば、図1に示したように、無線通信が可能なリモコン20(第1の装置)とジャンクションユニット40(第2の装置)とを備え、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、スペクトラム拡散方式によるものであり、リモコン20は使用者が携帯可能であり、かつリモコン20が送信する信号は、ジャンクションユニット40の機能を作動させる信号を含む。ジャンクションユニット40の機能とは、例えば車両始動信号を車両制御装置68に送信すること等である。
【0227】
このようにすれば、ユーザは、スペクトラム拡散方式(周波数拡散方式)以外の従来用いられていたFSK方式等と比べると、これまでの各社の団栗の背比べから抜きん出た格段に長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。発明者らの実験結果によれば、従来に比べておおむね2倍以上の長い距離で装置の機能を作動させることができた。従来FSK方式では、例えば無線通信が確実に可能である距離が1kmであったような場合には、スペクトラム拡散方式ではその2倍以上の2km以上の通信が可能であった。
【0228】
使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、どのような装置としてもよいが、例えばゴルフナビとしてもよく、特に携帯機またはリモコンとするとよい。上述の本実施形態ではリモコン20とした。例えば、リモコンから送信する信号は、他の一方装置の機能を作動させる信号を含むとよい。使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、特に、ユーザからの指示を入力する機能を備え、入力された指示に基づいて、他の一方の機能を作動させる信号を送信する構成とするとよい。ユーザからの指示を入力する機能は、指示を入力できればどのようなものでもよいが、ユーザの動き等を検知可能なセンサ等とするとよく、特に、ユーザの指示を入力する手段を備えるとよい。使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は、身体に装着可能なウェアラブル端末としてもよい。望ましくは、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の少なくとも一方は手に持って携帯可能な装置とするとよく、また、手によって指示を入力する機能を備えるとよい。望ましくは、手の指で押して指示を入力する手段を備えるとよい。より望ましくは、指示を入力する手段をスイッチとする構成とするとよい。
【0229】
第1の装置または第2の装置のうち他の一方は、どのような装置としてもよいが、例えば使用者が携帯可能な装置とするとよく、望ましくは使用者が携帯可能でない装置、例えば物体に固定された機器とするとよく、より望ましくは室内に設置された機器とするとよい。物体に固定する場合、例えば地面に固定するとよく、望ましくはガスや電気、水道のメーター等に固定するとよい。地面に固定する場合は、例えば水撒き機とするとよい。ガスや電気、水道のメーター等に固定する場合には、検針データをリモコンに送信する端末機とするとよい。室内への設置としては、ゴルフのクラブハウスや自動車内等に設置するとよい。クラブハウスに設置するときは、例えばデジタルサイネージとするとよい。自動車内に設置するときには、例えば車載機とするとよい。上述の本実施形態では、自動車に設置するジャンクションユニット40とした。
【0230】
本発明のシステムは、どのようなシステムとしてもよいが、例えば民生機器や、各種の産業機器に用いるシステムとするとよく、特に上述したエンジンスターター等の自動車関連機器に用いるシステムとするとよい。これにより、ユーザは、各種機器を適切に遠隔制御することができる。
【0231】
例えば民生機器に用いるシステムとしては、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の一方をリモコン、他の一方を地面に固定された機器としたシステムとし、リモコンから送信する信号は、当該機器の機能を作動させる信号を含むとよい。
【0232】
民生機器に用いるシステムとしては、望ましくは、使用者が携帯可能な第1の装置または第2の装置の一方を携帯機、他の一方をガスや電気、水道のメーター等に固定された送信機とするとよい。送信機から携帯機に送信される信号は、検針データおよびこの検針データを携帯機に集計させる信号(携帯機の機能を作動させる信号)を含むとよい。
【0233】
特に、例えば「Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)」と呼ばれる規格を用いた、ガスや電気、水道のメーター等に固定される端末機を搭載し、無線通信を使って携帯機等によって検針データを収集する無線通信システムとするとよい。Wi-SUNにおいて本発明のシステムを用いれば、ユーザは従来より一層遠隔地から検針データを収集可能となり、データ収集に伴う移動の手間等を最小限に抑制できる。例えば、自動車で移動可能な道路から離れ、徒歩でないと近づけないような山間部の住居における電気のメーターを検針する場合において、携帯機を携帯した検針者が自動車で移動可能な範囲でも検針データ(以下「メーター情報」ともいう。)を収集可能となる可能性が高まり、自動車で移動した後で徒歩での移動が必要な場合でも移動距離を短縮できる可能性が高まる。特に、携帯機はユーザが携帯して徒歩で移動できるものであり、手で指示を入力可能なものとするとよい。
【0234】
本システムとしては、より望ましくは、例えば、第1の装置をゴルフナビ、第2の装置をクラブハウスに設置されたデジタルサイネージとしたシステムとするとよい。特に、ゴルフナビから送信する信号は、例えばデジタルサイネージの表示機能や集計機能を作動させる信号を含むとよい。この場合、ラウンド中にゴルフナビに入力したプレーヤーの成績から逐次ランキングをデジタルサイネージに表示させること等が可能となり、ユーザはプレーヤーの成績等の集計の手間を省くことができる。
【0235】
自動車関連機器に用いるシステムとしては、例えば、第1の装置をリモコン、第2の装置を車載機とした、自動車のエンジンスターターやカーセキュリティ等に用いるシステムとするとよい。上述の本実施形態では、自動車のエンジンスターターとした。特に、リモコンから送信する信号は車載機の機能を作動させる信号を含み、車載機から送信する信号はリモコンの機能を作動させる信号を含むとよい。望ましくは、リモコンから送信する信号は、ユーザの指示に基づいて送信する構成とするとよい。
【0236】
ここで、従来のエンジンスターターやカーセキュリティでは、例えば大規模マンションにおいて駐車場が自室から非常に遠くて使用できなかった場合があった。特にタワーマンションでこのような問題が顕著であった。また、例えば、コンクリートの壁に電波が阻まれるためベランダに出なければ使用できなかった場合等があった。しかし、このような場合であっても、本発明のようにすれば、ユーザは、従来よりも確実に他の一方の装置の機能を作動させることができる。例えば、エンジンスターターやカーセキュリティの機能を従来よりも確実に作動させることができる。そのため、例えば、ユーザは、従来窓際やベランダ等のように、駐車場にある自動車に向けて少しでも電波が届きやすい場所に移動しなければ他の一方の装置の機能を作動させることができなかったような場合でも、ベッドサイド等、室内の位置において、操作することにより、エンジンスターターまたはカーセキュリティを作動させることができる可能性が高くなる。
【0237】
さらに、例えば、上述のリモコン(携帯機)と車載機とを備える自動車関連機器に用いるシステムに、Wi-SUNのメーター情報等を収集する無線通信システムを組み合わせ、家屋で発生したメーター情報等を車載機が携帯機に媒介する存在(ゲートウェイ)とする構成とするとよい。具体的には、例えば、車載機がWi-SUNモード(スペクトラム拡散方式以外の変調方式)で家屋内のWi-SUN機器からガスや電気、水道のメーターの検針データや家屋に設けられた太陽光等による発電装置の発電量データ等の情報を受信し、この受信した情報を、車載機がスペクトラム拡散モードでユーザが携帯する携帯機(リモコン)に転送する構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは検針テータ等の情報を、従来の徒歩圏よりも広い自転車圏内において受信することができる。例えば、従来のWi-SUNモード(スペクトラム拡散方式以外の変調方式)では1km程度しか電波が届かなかった条件では、スペクトラム拡散方式でビットレートを落とせば6km飛ぶ。居住する家屋を中心として、直径1kmは日常生活圏(徒歩圏)内であるのに対して、直径6kmは地域生活圏に位置づけられる。また、通常、自宅からこの地域生活圏(自転車圏)の範囲でほぼすべてのことがまかなえる。
【0238】
望ましくは、第1の装置は物に固定され、第2の装置は使用者が携帯可能とした構成とするとともに、第2の装置を携帯した使用者は、第1の装置を固定した物のある場所で第1の装置を第2の装置を介さずに第1の装置の機能を作動させることが可能であり、第2の装置は、使用者に携帯されて第1の装置を固定した物のある場所を基点(例えば、移動の起点)として徒歩または自転車での使用者の移動に伴い移動するものであり、第2の装置は、第1の装置を固定した物のある場所への使用者の移動によって再び基点(例えば、所定の目的地へ移動した後の終点としての元の起点)に戻るものとする構成とするとよい。「徒歩または自転車での移動」は、見通し距離で5km以上20km以下とする構成とするとよい。例えば、基点を自宅とし、使用者を認知症の老人とする構成とするとよい。また、基点を自動車とし、使用者が自動車から徒歩で移動して、例えばショッピングセンター等で買い物をして、買い物をしているところからエンジンを始動し、再び基点である自動車に戻る構成とするとよい。また、基点を自動車とし、使用者が帰宅後自動車から自宅に徒歩で移動して、翌朝、自宅の中から自動車のエンジンを始動してから再び自動車に戻る構成とするとよい。また、クラブハウスを基点とし、使用者がプレー中はゴルフコースを徒歩等で移動し、プレーが終わった後、再びクラブハウスに戻ってくる構成とするとよい。
【0239】
また、例えば、第1の装置を介護施設に設置した1台の親機とし、第2の装置を介護施設に入居する複数の人がそれぞれ携帯する子機とする構成としてもよい。子機にそれぞれ付されたIDはそれぞれ異なり、親機にはそれぞれの子機に付されたIDとその子機を携帯する人の名前との対応関係が記憶されている構成とする。それぞれの子機からは一定時間(例えば1分毎)にスペクトラム拡散方式によってIDを含む電波を送信する。親機では、受信した電波のIDとRSSI(Received Signal Strength Indicator)をチェックし、受信した電波のRSSIが設定値以下になったとき、親機からその電波を送信した子機までの概算距離とそのIDに対応づけられた人の名前を親機に表示する。「RSSIの設定値」は、親機と子機との距離とRSSIの値との関係を予め求めて親機に記憶しておき、距離として親機に入力して設定できるようにするとよい。あるいは、「RSSIが設定値以下となったとき」は、介護施設外と施設内とで予め測定し設定しておいたRSSIの差に基づき、施設外に相当するRSSIのレベルとなったときするとよい。
【0240】
親機は、予め記憶しておいた人の名前を一覧等から選択する機能を備え、その人の名前に対応するIDの子機に返答を要求する信号を無線送信する機能を備えるとよい。子機は、受信したIDが自己のIDであり親機から返答が要求されている場合には、受信した電界強度に関するレベル情報と自己のIDとを無線送信する。親機は、受信したそのIDの電界強度のレベルから、子機の位置(例えば親機からの距離)を求めて表示する。
【0241】
さらに、例えば子機間で、親機からの問い合わせの無線信号を中継する機能を備えるとよい。例えば、親機は「通常の探すボタン(中継せずに探すボタン)」と「中継して探すボタン」とを備えるものとし、「通常の探すボタン」が押されたときには、親機の電波の到達範囲にあるすべての子機に対してIDと電界強度のレベルの返答を要求し、一方「中継して探すボタン」が押されたときには、親機の電波の到達範囲にあるすべての子機と、その子機からの電波の到達範囲にあるすべての子機からの返答を要求するようにするとよい。返答(例えば他の子機のIDと電界強度のレベル)は、子機が他の子機と親機の間で中継するようにする。なお、子機間の中継をさらに行うようにしてもよく、子機間での中継の回数には制限を設けるようにするとよい。また、親機と子機にそれぞれGPS等の位置検出器を設け、親機の位置から親機で指定した範囲内にある子機だけが中継を行うようにしてもよい。
【0242】
「スペクトラム拡散方式」による通信は、例えば送信しようとする信号を変調した狭帯域の信号を所定の拡散方式によって広帯域に拡散することにより電力密度を下げ、送信側から送信するとよい。受信側においては、受信した信号を逆拡散することにより、電力密度の高い元の狭帯域の信号を得るとよい。また、「スペクトラム拡散方式」は、特に、例えば受信側において受信された拡散された信号が、いわゆるノイズフロアー以下の微弱な信号であっても、逆拡散によって電力密度の高い元の狭帯域の信号に戻し、戻した元の狭帯域の信号を復調し、送信しようとした信号として再生する構成とするとよい。このようにすれば、遠距離でノイズフロアー以下に減衰した信号でも受信可能となる。
【0243】
なお、「スペクトラム拡散方式」による通信は、送信側で行われる拡散された信号への変調や、受信側において行われる拡散された信号の復調については、ハードウェアによる変調器や復調器を用いて行ってもよいし、ソフトウェア無線機によって行ってもよい。特にこのような変調や復調に相当する演算処理をICチップ化したものを用いるとよい。
【0244】
「スペクトラム拡散方式」による通信方式としては、どのような通信方式を用いてもよいが、特に通信速度を犠牲にしても通信距離が長くなる方式を用いるとよい。また、例えば周波数ホッピング方式を用いるとよい。望ましくは直接拡散方式でないものを用いるとよい。より望ましくは、「スペクトラム拡散方式」は、連続的に周波数を変化させることで、チャープ(chirp)信号を生成し、これにより送信しようとするデータに基づく信号が拡散され、変調される方式(以下「チャープ方式」という。)である構成とするとよい。特に、チャープ方式と他の方式を組み合わせるとよい。例えば、チャープ方式と、周波数ホッピング方式および直接拡散方式の少なくとも一つとを組み合わせて用いるとよい。また、「スペクトラム拡散方式」による通信方式としては、例えば後に詳述するLoRa方式を用いると最もよい。これとは逆に、スペクトラム拡散方式以外の従来の変調方式としては、上述のFSK方式の他に、OOK(オンオフ変調)、GFSK(位相連続FSK)、MSK(最小偏位変調)、GMSK(ガウス最小偏位変調)等(以下、これらの変調方式を総称して以下「FSK等」という。)がある。
【0245】
また、「使用者が携帯可能」な「第1の装置および第2の装置の少なくとも一方」は、どのような機器としてもよいが、例えば携帯通信機器や携帯情報機器、ウェアラブル端末等とするとよい。また、「使用者が携帯可能」な「第1の装置および第2の装置の少なくとも一方」は、例えば、遠隔操作以外の機能も実施可能な非専用機としてもよいが、特に、例えばリモコンなどのように遠隔操作を行うための専用機とするとよい。
【0246】
また、「前記一方の装置が送信する信号」は、第1の装置または第2の装置のうち他の一方の機能を作動させる信号を含む構成とするとよい。例えば、エンジンスターターやカーセキュリティにおいては、これらの機器を起動させるための信号や、停止させるための信号、設定を変更するための信号等を含む構成とするとよい。また、例えばエンジンスターターやカーセキュリティにおいては、これらの機器から携帯機やリモコンに報知の機能を作動させるための信号等を含む構成とするとよい。望ましくは、「前記一方の装置が送信する信号」は、他の一方の装置の機能を作動させる信号以外の信号も含む構成とするとよい。「他の一方の装置の機能を作動させる信号以外の信号」は、例えばカーセキュリティであれば、車両に加わった衝撃の程度等の、車両に設けられたセンサによって検知されたデータとするとよい。本実施形態では、エンジンスターターの現在の車室内温度とした。
【0247】
また、「前記一方の装置が送信する信号」は、水撒き機のような民生機器や、各種の産業機器においては、これらの機器の起動信号や、停止信号等を含む構成とするとよい。また、「前記一方の装置が送信する信号」は、ゴルフナビ等のような装置においては、ゴルフナビに入力されたプレーヤーの成績情報等の信号を含む構成とするとよい。また、「前記一方の装置が送信する信号」は、Wi-SUN等の規格を用いた、ガスや電気、水道のメーター等の装置において本発明のシステムを用いる場合には、検針データ等の各種データを含む構成とするとよい。
【0248】
例えば、第1の装置をリモコン等の携帯機、第2の装置を車載機等とした場合、携帯機側は受信モードがSingle receive mode、車載機側は受信モードがContinuous receive modeである構成とするとよい。このようにすれば、携帯機側の電池を長持ちさせることができるとともに、車載機側では携帯機側から送信された信号をより確実に捉えることができる。望ましくは、このような構成の場合、車載機等からは同一の情報を複数回送信するようにするとよい。このようにすれば、携帯機において外乱による読み落としの発生を低減することができる。さらに望ましくは、車載機側から携帯機側にContinuous receive modeに切り替える旨の信号を送信する機能を設け、携帯機側でこの切り替える旨の信号を受信した場合、Continuous receive modeで動作させる構成とするとよい。このような構成の場合、特に、Continuous receive modeで動作させる時間を一定時間とする構成とするとよい。このような通信モードは、例えば通信チップ「SX1272」を使用することにより実施することができる。
【0249】
「Single receive mode」は、例えば、設定した時間内に1パケットだけ受信するモードとし、特に、決まった受信タイミングで通信する場合に、必要な受信タイミングのときだけ受信回路をONにさせる動作を行う構成とするとよい。このようにすれば、受信の待機時における消費電力を低減することができる。「Continuous receive mode」は、例えば、連続して信号を受信するモードとするとよい。
【0250】
本実施形態では、スペクトラム拡散方式によるリモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、LoRa方式とする。
【0251】
そのため、ユーザは、遠隔制御ができる距離が概ね一律であるという現状を打破することができる。
【0252】
拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式を用いた無線システム(以下「LoRa無線システム」ともいう。)は、例えばFSK方式と同じ通信距離に設計した場合、より高い送信ビットレート(以下、単に「ビットレート」ともいい、「データレート」または「伝送速度」ともいう。)で通信可能である。ビットレートが高いと通信時間が短くなるため、ユーザは、リモコン20およびジャンクションユニット40の一方から、他の一方の機能を作動させる信号を送信する状況において、俊敏に他の一方の機能を作動させることができるシステムを得ることができる。
【0253】
本実施形態では、リモコン20が、ユーザからの指示を入力する機能を備え、入力された指示に基づいて、ジャンクションユニット40の機能を作動させる信号を送信する構成とする。そのため、指示の入力操作に対して俊敏に反応するシステムが得られる。
【0254】
望ましくは、LoRa方式において、ビットレートを低く設定するとよい。このようにすると、より高い感度を得ることができる。最も望ましくは、ビットレートを設定可能な範囲で最も低く設定するとよい。特に、ユーザが携帯可能であるリモコン20においてビットレートを設定可能な範囲で最も低くする設定とするとよい。このようにすれば、ユーザが、従来より遠い距離から、リモコン20からジャンクションユニット40の機能を作動させる信号を送信し、ジャンクションユニット40に機能を作動させることができる。また、例えばリモコン20のビットレートを、ジャンクションユニット40のビットレートよりも低くするとよい。
【0255】
望ましくは、送受信するデジタル情報の量が少ないシステムでは、このようにビットレートを低く設定すると、特によい。さらに望ましくは、カーセキュリティや、本実施形態のエンジンスターター等の、デジタル情報の伝送の際にはビットレートを低く設定するとよい。
【0256】
LoRa方式の無線通信は、本実施形態では、セムテック(SEMTECH)社製の通信チップ「SX1272」を使用することにより実施する。なお、この通信チップは、上述した信号の変調や復調を演算処理により実行する。
【0257】
本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、サブギガヘルツ帯を使用し、使用するチャンネルの帯域幅がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを使用する。
【0258】
そのため、ユーザは、従来よりも小型の装置で、且つ従来よりも長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域よりも、サブギガヘルツ帯の方が電波の飛距離が短い特性が一般的にあるが、この電波の飛距離が短い問題を、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも帯域幅が広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを使用することにより解決することができる。本実施形態では、使用するチャンネルの帯域幅がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを設定する。
【0259】
また、本実施形態では、リモコン20およびジャンクションユニット40に設けられた無線通信を行うための発振器の周波数として、サブギガヘルツ帯を使用し、使用するチャンネルの帯域幅がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広いサブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルを使用する。また、無線通信用の周波数の設定を、リモコン20に設けられた制御部32およびジャンクションユニット40に設けられた制御部52が行う。さらに、制御部32および制御部52は、いずれもマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータのレジスタに設定する周波数に対応した値を書き込む。
【0260】
また、本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、特定小電力無線であり、サブギガヘルツ帯を使用し、使用する送信可能電力がサブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域における送信可能電力よりも大きいサブギガヘルツ帯の周波数である。
【0261】
本実施形態では、「サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域」は、426.0250~426.1375MHz、426.0375~426.1125MHz、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzの各帯域である。これらの各帯域では、チャンネルの帯域幅は12.5kHzであり、特に426.0375~426.1125MHzの帯域では25kHzである。また、送信可能電力は、426.0250~426.1375MHzおよび426.0375~426.1125MHzでは1mWであり、これら以外の各帯域では10mWである。
【0262】
本実施形態では、「サブギガヘルツ帯」は、中心周波数が916.0~928.0MHzの帯域であり、チャンネルの帯域幅は200kHzとする。また、サブギガヘルツ帯で使用するチャンネルは、426.0250~426.1375MHz、429.1750~429.2375MHz、429.2500~429.7375MHzまたは429.8125~429.9250MHzにおけるチャンネルの帯域幅12.5kHzに対して16倍の200kHzであるサブギガヘルツ帯のチャンネルである。また、送信可能電力は、20mWである。サブギガヘルツ帯で使用するチャンネルは、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域における送信可能電力10mWの2倍である20mWの送信可能電力であるチャンネルである。
【0263】
「サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域」に含まれる400MHz帯では、出願時における日本国内の法規において、1チャンネルあたり12.5kHzまたは25kHzの帯域幅が割り当てられている。一方、サブギガヘルツ帯をみると、1チャンネルあたり100kHzまたは200kHzの帯域幅が割り当てられた920MHz帯がある。このように、割り当てられた1チャンネルあたりの帯域幅が、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域である400MHz帯よりも広い周波数帯として、サブギガヘルツ帯は、特に920MHz帯とするとよい。400MHz帯は、920MHz帯に比べて1チャンネルあたりの帯域幅が狭いものの、920MHz帯に比べて電波が遠くまで届くとともに、直進性が低く回折しやすいため、遠距離の障害物(山や建物)の陰でも受信しやすいというメリットがある。
【0264】
本実施形態では、「使用するチャンネル」は、中心周波数が922.4MHz、922.6MHz、922.8MHz、923.0MHz、923.2MHz、および923.4MHzの6つのチャンネル(いずれも帯域幅は200kHz)のうち、少なくともいずれか1つのチャンネルであり、これらのチャンネルのいくつかを切り替えられる。これらのチャンネルのうち、Busy判定で信号が存在していないことが確認されたチャンネルに自動的に切り替えられる構成を備えるとよい。また、これらのチャンネルは、隣接する複数のチャンネルを組み合わせて帯域幅をより広げて使用する構成としてもよく、例えば上記6つのチャンネルのうち隣接する5つのチャンネルを組み合わせて1000kHzの帯域幅として使用する構成とするとよい。
【0265】
本実施形態では、「チャンネル」は、通信に利用するために割り当てられた周波数帯域であり、日本国内の法規において割り当てられた周波数帯域である。
【0266】
チャンネルのBusy判定を行うにあたって、スペクトラム拡散方式の信号のレベル判定は、CAD機能を用いて行い、スペクトラム拡散方式以外の他の変調方式の信号のレベル判定は、RSSIによって行う。CAD機能は、RSSIでは信号の存在が検出できないほど低いレベルのスペクトラム拡散方式の信号の存在を検出する。Busy判定は、スペクトラム拡散方式の信号では-130dBm以上のときにBusyとし、他の変調方式の信号では-80dBm以上のときにBusyとする。そのため、より適切なチャンネルBusy判定が可能となり、長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0267】
前掲の表1に示すように、「RSSI有」、「CAD有」の場合は、(A)スペクトラム拡散方式の信号とスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の双方が存在していることによるBusy判定、または(B)スペクトラム拡散方式の比較的強度の高い(-80dBm以上)信号が存在していることによるBusy判定であるため、(A)の場合はすべての変調方式の信号の送信が禁止され、(B)の場合はスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の送信が可能である。さらに、(A)の場合であっても、存在しているスペクトラム拡散方式の信号と、帯域幅と拡散率が異なるスペクトラム拡散方式の信号であれば送信が可能である。
【0268】
「RSSI有」、「CAD無」の場合は、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号が存在していることによるBusy判定であり、スペクトラム拡散方式の信号は存在していないため、スペクトラム拡散方式の信号の送信が可能である。
【0269】
「RSSI無」、「CAD有」の場合は、スペクトラム拡散方式の信号が存在していることによるBusy判定であり、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号が存在していないため、スペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号の送信が可能である。さらに、スペクトラム拡散方式の信号であっても、存在しているスペクトラム拡散方式の信号と帯域幅と拡散率が異なる信号であれば送信が可能である。
【0270】
「RSSI無」、「CAD無」の場合は、Busy判定がなく、スペクトラム拡散方式の信号とスペクトラム拡散方式以外の変調方式の信号のいずれも存在していないため、すべての変調方式の信号の送信が可能である。
【0271】
本実施形態では、リモコン20またはジャンクションユニット40から送信される信号の強度は特に指定しないが、ノイズフロアー以下であるとよい。
【0272】
このようにすれば、スペクトラム拡散方式以外の他の変調方式の信号、例えばFSK方式等の信号を妨害する可能性が極めて低くなる。信号強度をノイズフロアー以下にする方法としては、例えば、送信電力を小さくする制御を行う構成としてもよいし、送信される信号がノイズフロアー以下の信号強度となる拡散率が高い状態で送信する構成としてもよい。送信される信号は、拡散率が高くなると、伝送速度が若干低下する反面、通信感度が向上し、通信距離の向上等の効果が得られる特性がある。そのため、このようにすれば、ユーザは、従来より長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。「ノイズフロアー」は、-80dBmとする構成とするとよい。
【0273】
本実施形態では、スペクトラム拡散方式による、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、使用するチャンネルの帯域幅の両端から帯域の内側に帯域幅の1/4の部分のうち一方、および帯域幅の中心において、同一の電力で信号の送信が可能であるようにする。
【0274】
そのため、ユーザは、従来よりも長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。このような、変調効率が高く、高い送信ビットレートでの通信が可能なシステムは、例えば拡散スペクトラム方式やLoRa方式によって実施可能である。一方、FSK方式では、帯域幅の高周波数側および低周波数側の端部では信号の送信電力が低下するとともに、信号が帯域幅の外部にはみ出てしまうため、変調効率が低い。
【0275】
スペクトラム拡散方式による、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の両端から帯域の内側に帯域幅の1/4の部分の両方の付近、および帯域幅の中心付近において、同一の電力での信号の送信が可能であるとよい。より望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の少なくとも一方の端部付近および中心付近において、同一の電力で信号の送信が可能であるとよい。さらに望ましくは、使用するチャンネルの帯域幅の全幅において、同一の電力で信号の送信が可能であるとよい。
【0276】
特に、使用するチャンネルの帯域幅の外部において信号を送信する電力は規定値よりも小さい構成とするとよい。このようにすれば、帯域幅の外部にはみ出す量が規定値よりも小さくなるので、変調効率が高い。通信システムにおいて同じ通信距離に設定した場合、変調効率が高いほど、高ビットレートでの通信が可能である。
【0277】
本実施形態では、リモコン20およびジャンクションユニット40は、通信チップ「SX1272」を使用しており、送信ビットレートを変えても消費電力が変わらない。そのため、送信ビットレートを上げ、通信時間が短くなると、装置の消費電流が下がるため、システムにおける消費電力を低減することができる。リモコン20では、装置の電源としてバッテリーを使用するため、バッテリーライフを伸ばせる。これにより、ユーザは、バッテリー交換等の手間を最小限に抑制することができる。
【0278】
リモコン20およびジャンクションユニット40の少なくとも一方は、送信ビットレートを上げると消費電力が増加する装置としてもよい。特に、通信時間の短縮により低減される送信電力が、送信ビットレートを上げることによる消費電力の増加の程度を上回るように、送信ビットレートを設定するとよい。このようにすれば、全体として消費電力が下がり、バッテリーライフを伸ばせる。
【0279】
また、本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、全幅の中心部分と周辺の一端部分の電力が同一の電力で送信可能な方式を使用する構成とするとよい。特に、使用するチャンネルの帯域幅の全幅において同一の電力で信号の送信が可能な構成とするとよい。また、例えば、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、OFDM変調方式を用いるとよい。特に、Wi-Fi HaLow(IEEE 820.11ah)を用いるとよい。
【0280】
リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、スペクトラム拡散方式に代えて、またはスペクトラム拡散方式とともに、GFSK変調により行う構成とするとよい。望ましくは、GFSK変調の数百ビット/秒以下の速度で行うとよい。さらに望ましくは、Sigfoxとするとよい。
【0281】
また、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、無線ネットワーク通信によって行うようにしてもよいが、リモコン20とジャンクションユニット40との1対1の通信として行うとよい。通信チップ「SX1272」ではSyncWordの値として、LoRaWANで使用されている0x34ではなく、例えば0x12を使用する構成とするとよい。望ましくは、0x34でも0x12でもない値を使用する構成とするとよい。このようにすれば、市販されるLora方式の無線通信を行う装置との混信が起こる可能性を低減することができる。
【0282】
本実施形態では、リモコン20およびジャンクションユニット40は、外部に露出したアンテナ28またはアンテナユニット56を使用するが、特にリモコン20が無線通信に用いる内蔵アンテナを備えるとよい。
【0283】
これにより、ユーザは、アンテナが外部に露出していないシンプルな構成の装置、特に、携帯性に優れたリモコン20を用いることができる。これは、スペクトラム拡散方式を用いた無線システムは、FSK方式を用いた無線システムと同じ通信距離、且つ同じ通信ビットレートで設計した場合、アンテナゲインがより低いアンテナを使用することができることによる。
【0284】
特に、本実施形態のようにLoRa方式を用いた無線システムとすると、この効果は顕著に発揮される。また、スペクトラム拡散方式の無線でも、一般的なもの(WLAN、WCDMA等)は、混信防止と高ビットレートを追求しているところ、LoRa方式では、低ビットレートの信号を、スペクトラム拡散により広帯域に拡散しつつ大きい帯域幅を消費することにより感度を大幅に向上できる。そのため、LoRa方式の通信方式を採用することにより、内蔵アンテナの更なる小型化を図ることが可能となる。これにより、ユーザが携帯機をポケットなどに入れて携帯しても邪魔にならず、ストレス無く使用することができるシステムとすることができる。
【0285】
このように、LoRa無線システムは通信感度が高いため、ゲインの低い、より小さいアンテナが使用できる。そのため、LoRa無線システムを採用することにより、例えば、内蔵アンテナであるにもかかわらず従来のロッドアンテナを使用したリモコンと同程度の電波の飛距離が得られるリモコン(携帯機)を用いることが可能となり、ユーザにとってリモコン(携帯機)の携帯性の高いシステムを提供できる。
【0286】
本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、LoRa方式であり、サブギガヘルツ帯を使用し、使用するチャンネルの帯域幅および送信可能電力が、サブギガヘルツ帯未満の周波数の帯域におけるチャンネルの帯域幅よりも広く、当該帯域における送信可能電力よりも大きい、サブギガヘルツ帯の周波数のチャンネルであるため、内蔵アンテナを備えるものとするメリットが大きい。
【0287】
本実施形態では、信号の送信電力の大きさを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能としてもよい。
【0288】
これにより、ユーザは、自身が使用する環境に応じ、最適な送信電力でシステムを利用できる。例えば、リモコン20およびジャンクションユニット40の距離が小さく通信環境が比較的良い環境での使用が想定される場合には、信号の送信上問題のない範囲内において送信電力を低く設定することにより、送信電力を最小化できる。電源としてバッテリー34を使用するリモコン20では、ユーザはバッテリーライフを伸ばすことができ、バッテリー交換等を行う頻度を低減することができる。これに対し、送信電力を最小化よりもリモコン20およびジャンクションユニット40の間で行われる信号の送信の確実性を優先させたい場合には、想定される通信距離等を考慮したうえで、送信電力を高い目に設定することができる。これにより、信号の送信が確実に行われ、ユーザは、本発明のシステムが搭載された機器を精度良く制御することが可能となる。
【0289】
ここで、「信号の送信電力の大きさを使用者が直接的に変更可能」な構成としては、例えばリモコン20またはジャンクションユニット40の送信電力の大きさを、電力値を入力して設定する構成とすればよい。このように「送信電力の大きさを使用者が直接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、自らの使用条件に適した送信電力の大きさとなるように、精度良く送信電力を調整できる。
【0290】
「信号の送信電力の大きさを使用者が間接的に変更可能」な構成としては、例えばリモコン20またはジャンクションユニット40の送信電力の大きさを、電力値に関連づけられた相対的な数値や指標により設定する構成とすればよい。電力値に関連づけられた指標としては、「強・中・弱」などの指標や、動作モードによる指標など、種々のものが考えられる。特に、例えば「長距離通信モード(通常モード)」と、バッテリー寿命が長い「長寿命モード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、バッテリー寿命を優先させるのか、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離を優先させるのかを選択することができる。このように「送信電力の大きさを使用者が間接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、直感的あるいは感覚的に自らの使用条件に適した送信電力の大きさとなるように出力調整することができる。
【0291】
「信号の送信電力の大きさを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能である」構成は、どのような構成としてもよく、ユーザが携帯不能なジャンクションユニット40に設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置等を介して行う構成とするとよく、特に、ユーザが携帯可能なリモコン20で行う構成とするとよい。
【0292】
また、信号の送信電力の大きさの変更は、例えばリモコン20や他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコン20や他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0293】
望ましくは、リモコン20において、上述の「長距離通信モード(通常モード)」と「長寿命モード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、長寿命モードで通信可能な領域では、長寿命モードを選択することにより、バッテリー寿命を伸ばすことができ、長寿命モードで通信可能な領域よりも遠い領域において、長寿命モードでは通信できなくなったときは、長距離通信モードに切り替えることにより、無線通信を用いた遠隔制御によって他の一方の装置の機能を作動させることができる。
【0294】
また、「長距離通信モード(通常モード)」や「長寿命モード」のように信号の送信電力の大きさに応じて動作モードを設定する場合には、さらに各モードを送信電力の大きさに応じて多段階、あるいは無段階に設定する構成としてもよい。これらの方法を採用することにより、ユーザが信号の送信電力の大きさを容易かつ適確に調整できる。
【0295】
本実施形態では、信号の送信ビットレートを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能としてもよい。
【0296】
このようにすれば、ユーザは、送信ビットレートを調整することにより、自身が使用する環境に最適な条件でシステムを使用できる。例えば、ユーザは、送信ビットレートを低く設定することにより、通信感度を向上させつつ、確実に通信可能な範囲を大きくとることができる。これに対し、ユーザは、送信ビットレートを高く設定することにより、通信感度や通信距離を犠牲にしつつも通信時間の最小化を図り、俊敏な通信動作により、長い距離での無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0297】
本実施形態では、リモコン20およびジャンクションユニット40は、通信チップ「SX1272」を使用しており、送信ビットレートを変えても消費電力が変わらない。そのため、送信ビットレートを上げ、通信時間が短くなると、装置の消費電流が下がるため、システムにおける消費電力を低減することができ、特に信号の送信側となる装置における消費電力を低減することができる。リモコン20では、装置の電源としてバッテリーを使用するため、バッテリーライフを伸ばせる。これにより、ユーザは、バッテリー交換等の手間を最小限に抑制することができる。
【0298】
リモコン20およびジャンクションユニット40の少なくとも一方は、送信ビットレートを上げると消費電力が増加する装置としてもよい。特に、通信時間の短縮により低減される送信電力が、送信ビットレートを上げることによる消費電力の増加の程度を上回るように、送信ビットレートを設定するとよい。このようにすれば、全体として消費電力が下がり、バッテリーライフを伸ばせる。
【0299】
ここで、「信号の送信ビットレートを使用者が直接的に変更可能」な構成としては、例えばリモコン20またはジャンクションユニット40の送信ビットレートを、ビットレート値を入力して設定する構成とすればよい。このように「送信ビットレートの大きさを使用者が直接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、自らの使用条件に適した送信ビットレートとなるように、精度良く調整できる。
【0300】
「信号の送信ビットレートを使用者が間接的に変更可能」な構成としては、例えばリモコン20またはジャンクションユニット40の送信ビットレートの大きさを、送信ビットレートに関連づけられた相対的な数値や指標により設定する構成とすればよい。送信ビットレートに関連づけられた指標としては、「大・中・小」などの指標や、動作モードによる指標など、種々のものが考えられる。特に、例えば、「通常モード」と、通信動作がすばやい「スピードモード」とを選択可能とするとよい。このようにすれば、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離を優先させるのか、通信動作のすばやさを優先させるのかを選択することができる。このように「信号の送信ビットレートを使用者が間接的に変更可能」とすることにより、ユーザは、直感的あるいは感覚的に自らの使用条件に適した大きさの送信ビットレートとなるように調整することができる。
【0301】
「信号の送信ビットレートを使用者が直接的あるいは間接的に変更可能である」構成は、どのような構成としてもよく、ユーザが携帯不能なジャンクションユニット40に設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置等を介して行う構成とするとよく、特に、ユーザが携帯可能なリモコン20で行う構成とするとよい。
【0302】
望ましくは、リモコン20において、上述の「通常モード」と「スピードモード」とを選択可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、スピードモードで通信可能な領域では、スピードモードを選択することにより、通信動作を俊敏とすることができ、スピードモードで通信可能な領域よりも遠い領域において、スピードモードでは通信できなくなったときは、通常モードに切り替えることにより、無線通信を用いた遠隔制御によって他の一方の装置の機能を作動させることができる。
【0303】
また、送信ビットレートの変更は、例えばリモコンや他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコンや他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0304】
また、「通常モード」や「スピードモード」のように送信ビットレートの大きさに応じて動作モードを設定する場合には、さらに各モードを送信ビットレートの大きさに応じて多段階、あるいは無段階に設定可能としてもよい。これらの方法を採用することにより、ユーザが信号の送信ビットレートの大きさを容易かつ適確に調整できる。
【0305】
本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、信号の強度が-80dBm以上であり且つ最後の通信における信号の受信から1分以内に送信する場合には送信電力を低減し、信号の強度が-80dBm未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信電力を少なくとも最後の通信時の前記送信電力に維持するとよい。
【0306】
このようにすれば、ユーザは、システムにおける信号の送受信を確実なものとしつつ、送信消費電力を最適化することができる。例えば、最後の通信において装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合には、次に発信される信号強度を低減させるとよい。ここで、リモコン20とジャンクションユニット40のうち、少なくともいずれか一方の装置が携帯可能なものであるため、装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合であっても、ユーザが移動するなどして、時間の経過に伴ってリモコン20とジャンクションユニット40との間隔が拡がってしまうことがある。このように、最後の通信において装置が受信した信号の強度に応じて、次の通信における送信電力の調整を行えるようにする場合には、例えば時間を指標としてリモコン20とジャンクションユニット40の間隔の変化を想定し、この想定に基づいて調整を行う構成とするとよい。本実施形態では、最後の通信において受信した信号の強度が-80dBm以上であるだけでなく、最後の通信における信号の受信から1分以内に次の信号を送信する場合に送信電力を低減する構成としている。さらに、本実施形態の構成では、信号の強度が所定値未満であったり、最後の通信における信号の受信から所定時間経過後に送信する場合には、少なくとも送信電力を維持する構成としている。このようにすれば、ユーザは、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、送信消費電力を抑制できる。また、電源としてバッテリーを使用するリモコン20では、バッテリーライフを伸ばすことができるため、ユーザはバッテリー交換を頻繁に行う必要がない。
【0307】
ここで、「1分」と規定した、送信電力の低減を行う「所定時間」は、例えば最後の通信における信号発信時の送信電力よりも次に発信する信号の送信電力を低減しようとする場合に、仮にリモコン20とジャンクションユニット40の間隔が拡がったとしてもリモコン20とジャンクションユニット40との間で通信が成立するであろうと想定される距離と、リモコン20およびジャンクションユニット40の間隔の拡張速度の仮定値とを基準として設定する構成としてもとよい。例えば、リモコン20を携帯したユーザが徒歩で移動することによりリモコン20とジャンクションユニット40の間隔が拡がるケースを想定した場合、一般的な成人が徒歩により移動した場合の平均移動速度と、送信電力の低減後にリモコン20とジャンクションユニット40との間で通信が成立するであろうと想定される距離や、送信電力の低減により減縮するであろう通信距離の大きさとの関係から「所定時間」を設定する構成とするとよい。このように、時間を指標としてリモコン20とジャンクションユニット40の間隔の変化を想定し、この想定結果に基づいて「所定時間」を設定し、この所定時間を送信電力を低減させるための基準の一つとすることにより、送信消費電力を抑制するための制御を行っても、ユーザは、不便を感じることなく、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0308】
なお、送信電力の低減を行う「所定の時間」は、一定にしてもよいし、信号強度に応じて変えてもよい。
【0309】
ここで、使用者が携帯可能であるリモコン20と、自動車に搭載されているバッテリーを電源とするジャンクションユニット40とを備えるシステムであって、基本制御がリモコン20からコマンド送信することから始まるシステムでは、ジャンクションユニット40側の送信消費電力を下げることができ、自動車に搭載されているバッテリーの消費電力を最小限に抑制することができる。
【0310】
また、例えば送信する情報量が多く、複数回に分割して情報を送信する場合には、1回目の送信を大きな送信電力で行い、2回目以降の送信を1回目の電波強度に基づいて調整する構成とするとよい。このようにすれば、送信電力の最適化を図ることができる。この場合、リモコン20の、バッテリーライフを伸ばすことができ、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0311】
また、例えばカーセキュリティのように、リモコンからコマンドを送信しなくても、自動車に何らかのトラブルが発生したことをセンサが検知したときに、固定機器である車載機から信号がリモコンに向けて送信される構成とするとよい。このようにすれば、カーセキュリティの作動を知ったユーザがリモコン操作によりカーセキュリティの解除等の処理を行う場合には、先に受信した車載機からの信号の電波強度に基づいて、リモコンの送信信号の送信電力を下げ、リモコンに内蔵されている電池等における電力消費を最小限に抑制でき、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0312】
さらに、例えばリモコン20でジャンクションユニット40側に信号を送信し、システムの設定を行うことができる構成とするとよい。このようにすれば、リモコン20から設定開始コマンドを送信することによりジャンクションユニット40から戻ってきた応答信号の電波強度に基づき、リモコン20からの送信信号の送信電力を下げ、リモコン20に内蔵されているバッテリー34における電力消費を最小限に抑制でき、ユーザによるバッテリー交換の頻度を最小限に抑制できる。
【0313】
リモコン20を携帯したユーザは、システムにおいて最後の通信における信号の受信後、移動する可能性がある。そのため、所定の時間(本実施形態では1分)が経過した後でリモコン20またはジャンクションユニット40の送信電力を低減すると、リモコン20とジャンクションユニット40との間の距離が広がりすぎて電波の強さが不十分となり、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることができなくなる可能性がある。そこで、送信電力の低減は所定時間内に行うこととし、所定時間が経過した後は送信電力を維持する構成とするとよい。このようにすれば、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、バッテリーライフを伸ばすことができる。これにより、ユーザがバッテリー交換等の煩わしい作業を行う頻度を最小限に抑制できる。
【0314】
また、「送信電力を少なくとも維持する」構成としては、送信電力を維持する構成としてもよく、送信電力を上げる構成としてもよい。本実施形態のように、最後の通信において受信した信号の強度が-80dBm未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信電力を少なくとも最後の通信時の送信電力に維持する構成とするとよい。このようにすれば、送信電力を低下させることでかえって通信が成立しなくなるのを抑制し、通信の安定性が確保できる。これにより、ユーザは、最後の通信において受信した信号の強度が弱い場合や、前回の通信から所定時間が経過した後であっても、何ら不便を感じることなく長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0315】
送信電力の低減を行う「所定の時間」を信号強度に応じて変える場合には、信号強度が大きいほど所定の時間を短くし、信号強度が小さいほど所定の時間を長くする構成とするとよい。ただし、信号強度が所定値未満であれば、送信電力は少なくとも維持する構成とする。
【0316】
本実施形態の構成では、例えば送信電力を下げた状態で通信できなければ送信電力を増大させ、それでも通信できなければさらに増大させる構成とするとよい。送信電力を下げた状態で通信できない場合における送信電力の増大方法は、段階的あるいは連続的に増大させる構成とするとよく、特に、直接最大まで増大させる構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは消費電力を最小限に抑制できるというメリットを得られる。
【0317】
本実施形態の構成では、リモコン20およびジャンクションユニット40の送信電力の設定は、通常状態では最大にしておいて、自動制御で下げる構成としてもよく、ユーザが、リモコン20の操作やジャンクションユニット40に設けられたディップスイッチの設定によって行う構成としてもよい。また、リモコン20の表示部24に送信電力を表示可能としてもよい。このようにすれば、この表示により、ユーザは送信電力を確認することができる。また、リモコン20の表示部24に、受信電波の強度を表示可能な構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、表示された電波強度により、通信可能かどうかを確認しながらリモコン20を使用できる。
【0318】
本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との間での最後の通信において受信した信号の強度に関する情報において、信号の強度が-80dBm以上であり且つ最後の通信における信号の受信から1分以内に送信する場合には信号を送信する送信ビットレートを上昇させ、信号の強度が-80dBm未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信ビットレートを少なくとも最後の通信時の送信ビットレートに維持するとよい。
【0319】
このようにすれば、ユーザは、システムにおける信号の送受信を確実なものとしつつ、送信ビットレートを最適化することができる。例えば、最後の通信において装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合には、次に発信される信号強度を低減させるとよい。ここで、リモコン20が携帯可能なものであるため、装置が受信した信号強度が必要以上に大きい場合であっても、ユーザが移動するなどして、時間の経過に伴ってリモコン20とジャンクションユニット40との間隔が拡がってしまうことがある。このように、最後の通信において装置が受信した信号の強度に応じて、次の通信における送信ビットレートの調整を行えるようにする場合には、例えば時間を指標としてリモコン20とジャンクションユニット40の間隔の変化を想定し、この想定に基づいて調整を行う構成とするとよい。本実施形態の構成では、最後の通信において受信した信号の強度が-80dBm以上であるだけでなく、最後の通信における信号の受信から1分以内に次の信号を送信する場合に送信ビットレートを上昇させる構成としている。さらに、本実施形態の構成では、信号の強度が-80dBm未満であったり、最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には、少なくとも送信ビットレートを維持する構成としている。このようにすれば、ユーザは、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能であるとともに、送信消費電力を抑制できる。また、電源としてバッテリー34を使用するリモコン20では、バッテリーライフを伸ばすことができるため、ユーザはバッテリー交換を頻繁に行う必要がない。
【0320】
ここで、「1分」と規定した、送信ビットレートの上昇を行う「所定時間」は、例えば最後の通信における信号発信時の送信ビットレートよりも次に発信する信号の送信ビットレートを上昇させようとする場合に、仮にリモコン20とジャンクションユニット40の間隔が拡がったとしてもリモコン20とジャンクションユニット40との間で通信が成立するであろうと想定される距離と、リモコン20およびジャンクションユニット40の間隔の拡張速度の仮定値とを基準として設定する構成とするとよい。ユーザが徒歩で移動することによりリモコン20とジャンクションユニット40の間隔が拡がるケースを想定した場合、一般的な成人が徒歩により移動した場合の平均移動速度と、送信ビットレートの上昇の低減後にリモコン20とジャンクションユニット40との間で通信が成立するであろうと想定される距離や、送信ビットレートの上昇により減縮するであろう通信距離の大きさとの関係から「所定時間」を設定する構成とするとよい。このように、時間を指標としてリモコン20とジャンクションユニット40の間隔の変化を想定し、この想定結果に基づいて「所定時間」を設定し、この所定時間を送信ビットレートを上昇させるための基準の一つとすることにより、送信ビットレートを上昇させるための制御を行っても、ユーザは、不便を感じることなく、長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0321】
なお、送信ビットレートの上昇を行う「所定の時間」は、一定にしてもよいし、信号強度に応じて変えてもよい。
【0322】
また、「送信ビットレートを少なくとも維持する」構成としては、送信ビットレートを維持する構成としてもよく、送信ビットレートを低下させる構成としてもよい。本実施形態のように、最後の通信において受信した信号の強度が-80dBm未満または最後の通信における信号の受信から1分経過後に送信する場合には送信ビットレートを少なくとも前記最後の通信時の前記送信ビットレートに維持する構成とするとよい。このようにすれば、送信ビットレートを上昇させることでかえって通信が成立しなくなるのを抑制し、通信の安定性が確保できる。これにより、ユーザは、最後の通信において受信した信号の強度が弱い場合や、前回の通信から所定時間が経過した後であっても、何ら不便を感じることなく長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能である。
【0323】
通信システムにおいて帯域幅が同じであれば、送信ビットレートと感度(飛距離)と送信電力とは、それぞれ反比例の関係にある。すなわち、本発明のシステムで、送信ビットレートを上げると、同じ帯域幅、同じ送信電力であれば距離が飛ばなくなり(感度が下がり)、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能な距離が短くなるものの、送信時間を短くし、システムの通信動作をすばやくすることができる。ここで、受信した信号強度が大きい場合には、感度が低くても通信できるため、送信ビットレートを上げても通信が可能である。そのため、本実施形態では、受信した電波が強ければ強いだけ、送信ビットレートを上げる構成とするとよい。このようにすれば、ユーザは、リモコン20およびジャンクションユニット40の一方から、他の一方の機能を作動させる信号を送信する状況において、俊敏に他の一方の機能を作動させることができるシステムを得ることができる。
【0324】
本実施形態では、スペクトラム拡散方式による無線通信において、複数の拡散率が設定可能であり、1パケットの送信毎に拡散率を変えるとよい。
【0325】
これにより、ユーザは、極めて傍受しづらい無線システムを構築することができる。
【0326】
「拡散率の変更」は、所定のパターンで行う構成とするとよい。「拡散率の変更」の「所定のパターン」は、ランダムとする構成としてもよく、所定の順とする構成としてもよい。ここで、本発明のシステムでは、拡散率は高いほど、より長い距離で無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。そのため、特に、拡散率としては、最大の拡散率と、その1段下の拡散率を採用する構成とするとよい。このような構成とした場合、拡散率の変更のパターンとしては、最大の拡散率と、その1段下の拡散率を決まったパターンで交互に切り替える構成とするとよい。このようにすれば、傍受しづらく且つ長い距離で、無線通信を用いた遠隔制御によって装置の機能を作動させることが可能となる。
【0327】
本実施形態では、拡散率の変更を1パケットの送信毎に行う構成としたが、どのような構成でもよく、所定のデータ量のパケットの送信毎とする構成としてもよく、所定の時間が経過する毎とする構成としてもよい。
【0328】
「拡散率」は、例えば送信ビットレート(B)に対する拡散符号速度(「チップレート」ともいう。C)の比の値(C/B)とするとよい。
【0329】
本実施形態では、通信に使用するチャンネルを切り替えながら通信を行えるようにするとよい。
【0330】
このようにすることで、通信に利用するために割り当てられた周波数帯域が切り替わりつつ通信が行われることになるため、ユーザは、拡散スペクトラム方式の通信システム同士で混信の生じにくいシステムを得ることができる。この場合、受信側と送信側とでタイミングを合わせてチャンネルを切り替えることとなる。例えば、無線通信に使用される帯域が920MHz帯の場合、例えば中心周波数が922.4MHz、922.6MHz、922.8MHz、923.0MHz、923.2MHz、923.4MHzの6つのチャンネルを切り替えて使用する構成とするとよい。なお、これらのチャンネル以外のチャンネルを使用しても構わない。
【0331】
拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式では、FSK方式に比べて通信が可能な距離が大幅に伸びる。そのため、例えばLoRa方式のように通信が可能な距離が大きな通信方式を採用した場合には、通信圏内に他のユーザによる通信が割り込む等して混信が起こる可能性が高い。従って、拡散スペクトラム方式、特にLoRa方式を採用した場合には、通信に使用するチャンネルを適宜切り替えることにより混信を抑制することが好ましい。これにより、ユーザは、近隣で他のユーザが拡散スペクトラム方式による通信を行う機器類を使用していたとしても、その影響を受けることなく安定的に通信することができる。
【0332】
本実施形態では、車両始動信号に基づきエンジンを始動する車両制御装置68と、車両制御装置68にエンジン70の始動を許可する始動許可信号を送信可能なイモビライザー66とを備え、使用者が携帯可能であって暗証コードが送信可能な純正キー62aから発信されてきた暗証コードを受信し、受信した暗証コードとイモビライザー66が備えている参照コードとに基づいて、イモビライザー66により始動許可信号が送信される自動車60に対し、暗証コードを間接的に送信するために用いられるシステムであって、リモコン20とジャンクションユニット40との前記無線通信は、スペクトラム拡散方式とスペクトラム拡散方式以外の通信方式とが選択可能であり、使用者が携帯可能なリモコン20は、純正キー62aから暗証コードを受信可能であり、受信した暗証コードを変換した変換コードを含む信号および始動指示信号をジャンクションユニット40に送信可能であり、ジャンクションユニット40は、自動車60に搭載され、受信した変換コードを暗証コードに変換することおよび変換した暗証コードをイモビライザー66に送信可能であり、かつ始動指示信号を受信すると車両始動信号を車両制御装置68に送信可能とするとよい。
【0333】
このようにすれば、ユーザは、イモビライザー66を備えた自動車60において、純正キー62aを車内に置かず、自身が携帯したまま、エンジン70を使用者が携帯可能なリモコン20によって始動させることができる。純正キー62aとイモビライザー66とは、一般に、例えばセキュリティ上の問題等により、近接していないと暗証コードの送受信ができず、エンジン70の始動を許可することができない。しかし、このようにすれば、純正キー62aとイモビライザー66とが大きく離れている場合であっても、純正キー62aから送信された暗証コードは、使用者が携帯可能なリモコン20と、自動車60に搭載されたジャンクションユニット40とによって中継され、イモビライザー66において受信可能であり、エンジン70の始動を許可することができる。
【0334】
暗証コードについて「間接的に送信する」構成は、本実施形態では、純正キー62aから暗証コードを受信したリモコン20から暗証コードを異なる変換コードに変換してジャンクションユニット40に送信し、ジャンクションユニット40では受信した変換コードを元の暗証コードに変換してからイモビライザー66に送信する構成とする。
【0335】
ジャンクションユニット40について、「車両に搭載する」構成は、本実施形態では販売された車両に対していわゆる後付けをする構成とするが、元々自動車メーカーにおいて車両製造時に車両に取り付ける構成としてもよい。
【0336】
リモコン20が送信する始動指示信号は、本実施形態ではユーザの操作ボタン26の操作によって発せられる。
【0337】
本実施形態では、リモコン20とジャンクションユニット40との無線通信は、LoRa方式とFSK方式とを選択可能である。そのため、いずれか一方の方式でエンジン70の始動を許可が困難な場合であっても、エンジン70の始動を許可が行われる可能性を高めることができる。「通信方式の選択」を行う構成は、どのような構成としてもよく、例えばジャンクションユニット40に設けられたスイッチ類(例えばディップスイッチ)や制御装置等を介して行う構成とするとよく、特に、携帯可能なリモコン20側で行う構成とするとよい。また、通信方式の選択は、例えばリモコン20や他の装置に設けられた操作部の操作に基づいて行うことが可能な構成とするとよい。操作部は、例えば、スライダから構成されるものとしてもよく、リモコン20や他の装置に設けられた表示画面に表示されたスライダから構成されるものとしてもよい。
【0338】
純正キー62aから送信された暗証コードを、リモコン20と、ジャンクションユニット40とによって中継するモード(以下「中継モード」という。)と、中継しないモード(以下「非中継モード」という。)とを選択する構成とするとよい。このようにすれば、ユーザや小売業者は、リモコン20とジャンクションユニット40を備えるシステムを1種類用意するだけで、イモビライザー66を備えた車種にも、イモビライザー66を備えない車種にも対応することができ、イモビライザー66を備えた車種のユーザで純正キー26aを自動車60内に置いても構わないと考えるユーザにも対応することができる。「中継モード」と「非中継モード」とを選択する構成は、例えば車載機にスイッチを設け、このスイッチで選択するようにするとよい。
【0339】
「中継モード」が選択された場合には、送信側の無線通信をFSK方式の連続モードとする構成とするとよい。「連続モード」は、DIO2/DATA pinのレベルをそのまま送信する(FIFOを介さない)モードである。
【0340】
「非中継モード」が選択された場合には、「長距離モード」と「短距離モード」とを選択する構成とするとよい。本実施形態では、「長距離モード」は、送信側の無線通信をLoRa方式のパケットモードを選択する。「パケットモード」は、SPI(Serial
Peripheral Interface)で与えられるデータをFIFOを介してパケットにして送信する構成とするとよい。
【0341】
「短距離モード」は、本実施形態では、送信側の無線通信をLoRa方式で長距離通信モードよりも送信ビットレートを高くする設定とするが、送信側の無線通信をFSK方式のパケットモードとする構成としてもよい。
【0342】
本実施形態の構成要素は任意に組み合わせて構成するとよい。また課題を解決するための手段に記載の構成要素と本実施形態の構成要素とを任意に組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0343】
10 エンジンスターター
20 リモコン
22 ケース
24 表示部
24a 横棒
24b エンジン始動アニメーション
26 操作ボタン
26a スタートボタン
26b エンジンボタン
26c ストップボタン
28 アンテナ
30 無線通信回路
32 制御部
34 バッテリー
36 ケーブル
40 ジャンクションユニット
42 第1のコネクター
42a プラグ
44 第2のコネクター
46 第3のコネクター
48 第4のコネクター
50 無線通信回路
52 制御部
54 温度センサ
56 アンテナユニット
60 自動車
62 キー
62a 純正キー
64 キーホール
66 イモビライザー
68 車両制御装置
70 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12