(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】吸着装置、吸着ユニット、吸着方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250110BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2023506420
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010507
(87)【国際公開番号】W WO2022195697
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】永口 悠二
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-218590(JP,A)
【文献】特開平7-86794(JP,A)
【文献】特開2006-286936(JP,A)
【文献】特開2004-200443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ヘッドと、
収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置と前記第1位置よりも前記電子部品から離間した第2位置との間で前記吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、
前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着を行わせる吸着制御部と、
を備え、
前記吸着ヘッドは、前記第1位置に位置するとき、前記収容部材における前記凹部が開口した領域の外側の第1面に当接する当接部と、前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接した状態で前記当接部よりも突出して前記凹部から前記電子部品を吸着保持する保持部とを有し、
エンコーダにより計測される前記吸着ヘッドの高さ位置と、前記移動制御部から前記吸着ヘッドに出力される駆動力により、前記吸着ヘッドに作用する荷重を検出し、前記荷重の変化によって前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことを検知する検知部をさらに備え、
前記吸着制御部は、前記検知部により前記吸着ヘッドの前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことが検知されたことを条件に、前記吸着ヘッドの移動を停止し、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着を行わせる、
吸着装置。
【請求項2】
前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記吸着ヘッドと前記電子部品との間には隙間が介在している、
請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記当接部は、前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記凹部における少なくとも互いに対向する2つの側において前記収容部材の前記第1面に当接する、
請求項1または
2に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記当接部は、前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記凹部の周囲を囲んだ状態で前記収容部材の前記第1面に当接する、
請求項1、
2、3のいずれか一項に記載の吸着装置。
【請求項5】
吸着ヘッドと、
電子部品を収容する凹部を有する収容部材と、
前記収容部材の前記凹部に収容された前記電子部品を吸着する第1位置と前記第1位置よりも前記電子部品から離間した第2位置との間で前記吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、
前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着を行わせる吸着制御部と、
を備え、
前記吸着ヘッドは、前記第1位置に位置するとき、前記収容部材における前記凹部が開口した領域の外側の第1面に当接する当接部と、前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接した状態で前記当接部よりも突出して前記凹部から前記電子部品を吸着保持する保持部とを有し、
エンコーダにより計測される前記吸着ヘッドの高さ位置と、前記移動制御部から前記吸着ヘッドに出力される駆動力により、前記吸着ヘッドに作用する荷重を検出し、前記荷重の変化によって前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことを検知する検知部をさらに備え、
前記吸着制御部は、前記検知部により前記吸着ヘッドの前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことが検知されたことを条件に、前記吸着ヘッドの移動を停止し、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着を行わせる、
吸着ユニット。
【請求項6】
収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置に向けて吸着ヘッドを移動させ、前記吸着ヘッドの当接部を前記収容部材における前記凹部が開口した領域の外側の第1面に当接させる工程と、
エンコーダにより計測される前記吸着ヘッドの高さ位置と
、前記吸着ヘッドに出力される駆動力により、前記吸着ヘッドに作用する荷重を検出し、前記荷重の変化によって前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことを検知する工程と
、
前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記吸着ヘッドの前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことが検知されたことを条件に、前記吸着ヘッドの移動を停止し、前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接した状態で前記当接部よりも突出した前記吸着ヘッドの保持部に前記電子部品の吸着を行わせる工程と、
を含む、
吸着方法。
【請求項7】
コンピュータに、
収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置に向けて吸着ヘッドを移動させ、前記吸着ヘッドの当接部を前記収容部材における前記凹部が開口した領域の外側の第1面に当接させる処理と、
エンコーダにより計測される前記吸着ヘッドの高さ位置と、前記吸着ヘッドに出力される駆動力により、前記吸着ヘッドに作用する荷重を検出し、前記荷重の変化によって前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことを検知する処理と、
前記吸着ヘッドが前記第1位置に位置するとき、前記吸着ヘッドの前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接したことが検知されたことを条件に、前記吸着ヘッドの移動を停止し、前記当接部が前記収容部材の前記第1面に当接した状態で前記当接部よりも突出した前記吸着ヘッドの保持部に前記電子部品の吸着を行わせる処理と、
を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置、吸着ユニット、吸着方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを吸着する吸着装置として、ピックアップツールが広く知られている。例えば、特許文献1には、半導体チップを吸着する端面に複数の凸部が設けられており、半導体チップとの接触面積を小さくして静電気の発生を抑えることで、半導体チップが静電気により破壊されることを抑制したピックアップツールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、半導体チップの吸着時にピックアップツールから半導体チップに作用する荷重に起因して半導体チップが破損することがあるため、ピックアップツールに対して複雑な荷重制御を要するという課題があった。
【0005】
なお、こうした課題は、半導体チップに限らず、電子部品を吸着する場合に概ね共通するものである。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電子部品の吸着時に電子部品が破損することを簡易な制御を通じて抑制できる吸着装置、吸着ユニット、吸着方法、および、プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様における吸着装置は、吸着ヘッドと、収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置と第1位置よりも電子部品から離間した第2位置との間で吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、吸着ヘッドが第1位置に位置するとき、吸着ヘッドに電子部品の吸着を行わせる吸着制御部と、を備え、吸着ヘッドは、第1位置に位置するとき、収容部材における凹部が開口した領域の外側の第1面に当接する当接部を有する。
【0008】
また、本発明の第2の態様における吸着ユニットは、吸着ヘッドと、電子部品を収容する凹部を有する収容部材と、収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置と第1位置よりも電子部品から離間した第2位置との間で吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、吸着ヘッドが第1位置に位置するとき、吸着ヘッドに電子部品の吸着を行わせる吸着制御部と、を備え、吸着ヘッドは、第1位置に位置するとき、収容部材における凹部が開口した領域の外側の第1面に当接する当接部を有する。
【0009】
また、本発明の第3の態様における吸着方法は、収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置に向けて吸着ヘッドを移動させ、吸着ヘッドの当接部を収容部材における凹部が開口した領域の外側の第1面に当接させる工程と、吸着ヘッドが第1位置に位置するとき、吸着ヘッドに電子部品の吸着を行わせる工程と、を含む。
【0010】
また、本発明の第4の態様におけるプログラムは、コンピュータに、収容部材の凹部に収容された電子部品を吸着する第1位置に向けて吸着ヘッドを移動させ、吸着ヘッドの当接部を収容部材における凹部が開口した領域の外側の第1面に当接させる処理と、吸着ヘッドが第1位置に位置するとき、吸着ヘッドに電子部品の吸着を行わせる処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、電子部品の吸着時に電子部品が破損することを簡易な制御を通じて抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る吸着ユニットの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る吸着ユニットの要部を模式的に示す側面図である。
【
図3】本実施形態に係る吸着ユニットにおけるキャリアテープと吸着ヘッドとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図5】演算処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る吸着ユニットにおける一連の信号処理を示すタイミングチャートである。
【
図7】本実施形態に係る吸着ユニットの動作を示す図である。
【
図8】他の実施形態に係る吸着ユニットにおけるキャリアテープと吸着ヘッドとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0014】
図1に示すように、吸着ユニット100は、キャリアテープ310に収容された電子部品の一例である半導体チップ320をピックアップツール330により吸着してピックアップし、半導体チップ320を基板に載置して接着する。キャリアテープ310は、収容部材の一例であり、ピックアップツール330は、吸着装置の一例である。キャリアテープ310は、薄板状をなしており、その上面はX軸とY軸とで規定される面に沿う平面である。キャリアテープ310の上面には、複数の凹部312が形成されている。複数の凹部312は、矩形状の開口を有し、Y軸方向に間隔を隔てて形成されている。複数の凹部312の各々は、半導体チップ320を一つずつ収容している。
【0015】
ピックアップツール330は、例えば、保持部332と、吸着ヘッド334とを備える。保持部332は、吸着ヘッド334を保持し、移動機構336によって平面方向へ移動可能である。平面方向は、X軸とY軸とで規定される平面に沿う方向である。
【0016】
吸着ヘッド334は、円柱状をなしている。吸着ヘッド334は、昇降機構338によって高さ方向に移動可能である。高さ方向は、平面方向に直交するZ軸方向である。吸着ヘッド334は、吸着機構340によって、キャリアテープ310の凹部312に収容された半導体チップ320を吸着する。吸着機構340は、例えば、吸引ポンプからなる。吸着ヘッド334は、半導体チップ320を吸着した状態で上方に移動することで、キャリアテープ310から半導体チップ320をピックアップする。
【0017】
その後、吸着ユニット100は、ピックアップツール330が半導体チップ320を基板に載置して接着すると、Y軸方向において隣接する凹部312と吸着ヘッド334とが高さ方向において対向する位置までキャリアテープ310をY軸方向に移動させる。そして、吸着ユニット100は、隣接する凹部312に収容された半導体チップ320の吸着処理を開始する。
【0018】
図2及び
図3に示すように、吸着ヘッド334は、円柱状の大径部334Aと、大径部334Aの下方に設けられ、大径部334Aよりも外径の小さい円柱状の小径部334Bとを有する。大径部334Aの外径をL1とし、小径部334Bの外径をL2とし、キャリアテープ310の凹部312の長辺の長さをL3とし、キャリアテープ310の凹部312の短辺の長さをL4としたとき、L2<L4<L3<L1の関係式を満たす。吸着ヘッド334の大径部334Aの中心位置とキャリアテープ310の凹部312の中心位置とは平面視において重なっている。そして、吸着ヘッド334が第1位置に到達した場合、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aは、キャリアテープ310において凹部312が開口した領域の外側の上面310aに当接する。キャリアテープ310の上面310aは、第1面の一例である。吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aは、当接部の一例である。吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aは、凹部312の周囲を囲んだ状態でキャリアテープ310の上面310aに当接する。吸着ヘッド334には、高さ方向に貫通する複数の空気流路334cが形成されている。複数の空気流路334cの各々は、第1端部が吸着機構340に接続されており、第2端部が吸着ヘッド334の小径部334Bの下端面334bに開口している。
【0019】
次に、吸着ユニット100の制御構成について説明する。
図4に示すように、吸着ユニット100は、例えば、演算処理部10と、記憶部20と、移動機構336と、昇降機構338と、吸着機構340と、エンコーダ342と、入出力デバイス344とを備える。演算処理部10は、吸着ユニット100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部10は、記憶部20に格納された吸着制御プログラムを読み出し、吸着制御に関する各種の処理を実行する。
【0020】
記憶部20は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部20は、吸着ユニット100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を格納している。荷重閾値22は、制御や演算に用いられるパラメータ値の一例である。
【0021】
移動機構336は、演算処理部10から出力される駆動信号に基づいて、吸着ヘッド334をX方向およびY方向へ移動させる。
【0022】
昇降機構338は、演算処理部10から出力される駆動信号に基づいて、吸着ヘッド334をZ方向へ移動させる。演算処理部10は、エンコーダ342により計測された吸着ヘッド334のZ方向の位置情報に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を昇降機構338に出力する。
【0023】
吸着機構340は、演算処理部10から出力される駆動信号に基づいて、キャリアテープ310の凹部312に収容された半導体チップ320を吸着ヘッド334に吸着させる。
【0024】
入出力デバイス344は、例えばキーボード、マウス、表示モニタを含み、ユーザによるメニュー操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりするデバイスである。入出力デバイス344は、例えば、ユーザによる操作に基づいて、吸着制御の開始の指示を示す信号を演算処理部10に出力する。
【0025】
演算処理部10は、吸着制御プログラムが指示する処理に応じて各種の演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部10は、例えば、移動制御部12と、検知部14と、吸着制御部16とを含む。
【0026】
移動制御部12は、キャリアテープ310の凹部312に収容された半導体チップ320を吸着する第1位置と第1位置よりも半導体チップ320から離間した第2位置との間で吸着ヘッド334を移動させる。移動制御部12は、例えば、入出力デバイス344を通じてユーザによる吸着制御の開始の指示を受け付けたとき、第2位置から第1位置に向けて吸着ヘッド334を移動させる。
【0027】
検知部14は、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aがキャリアテープ310の上面310aに当接したことを検知する。検知部14は、例えば、エンコーダ342により計測される吸着ヘッド334の位置と、演算処理部10から昇降機構338に出力される駆動信号に基づいて、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重の大きさを算出する。そして、検知部14は、算出した荷重の大きさが荷重閾値22に達した場合、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aがキャリアテープ310の上面310aに当接したことを検知する。
【0028】
吸着制御部16は、吸着ヘッド334が第1位置に位置するとき、吸着ヘッド334に半導体チップ320の吸着を行わせる。吸着制御部16は、例えば、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aがキャリアテープ310の上面310aに当接したことが検知部14により検知されたことを条件に、吸着ヘッド334に半導体チップ320の吸着を行わせる。
【0029】
次に、本実施形態に係る吸着ユニット100により実行される吸着制御について説明する。
【0030】
図5は、演算処理部10の処理手順を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、例えば、入出力デバイス344を通じてユーザによる吸着制御の開始の指示を受け付けたときに実行される。
【0031】
図5に示すように、演算処理部10は、まず、昇降機構338に駆動信号を出力して、吸着ヘッド334を下降させる(ステップS10)。
【0032】
次に、演算処理部10は、エンコーダ342により計測される吸着ヘッド334の位置と、昇降機構338に出力している駆動信号とに基づいて、吸着ヘッド334がキャリアテープ310に当接したか否かを判定する(ステップS12)。演算処理部10は、吸着ヘッド334がキャリアテープ310に当接したと判定した場合(ステップS12=YES)、昇降機構338への駆動信号の出力を停止して、吸着ヘッド334の下降を停止する(ステップS14)。
【0033】
次に、演算処理部10は、吸着機構340に駆動信号を出力して、吸着ヘッド334の吸着動作を開始する(ステップS16)。そして、演算処理部10は、吸着ヘッド334の吸着動作を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS18)。演算処理部10は、吸着ヘッド334の吸着動作を開始してから所定時間が経過したと判定した場合(ステップS18=YES)、昇降機構338に駆動信号を出力して、吸着ヘッド334を上昇させる(ステップS20)。
【0034】
図6は、吸着ユニット100の一連の処理の流れを示すタイミングチャートである。
【0035】
図6(a)に示すように、吸着ユニット100は、吸着制御を開始すると、昇降機構338による吸着ヘッド334の下降に伴って、エンコーダ342により計測される吸着ヘッド334の位置が下方に移動する。そして、時刻t1において、吸着ヘッド334がキャリアテープ310に当接すると、吸着ヘッド334の計測位置が維持される。
【0036】
この場合、
図6(b)に示すように、昇降機構338による吸着ヘッド334の下降が継続すると、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重が次第に大きくなる。そして、時刻t2において、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重が荷重閾値に達したときには、昇降機構338による吸着ヘッド334の下降が停止する(
図6(c)参照)。また、時刻t2において、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重が荷重閾値に達したときには、吸着機構340による吸着ヘッド334の吸着動作が開始される(
図6(d)参照)。
【0037】
そして、
図6(c)に示すように、時刻t3において、吸着ヘッド334の吸着動作が開始してから所定時間Tが経過したときには、昇降機構338による吸着ヘッド334の上昇が開始される。また、
図6(a)に示すように、時刻t3において、昇降機構338による吸着ヘッド334の上昇が開始されると、エンコーダ342により計測される吸着ヘッドの位置が上方に移動する。この場合、
図6(d)に示すように、吸着機構340による吸着ヘッド334の吸着動作が維持される。
【0038】
【0039】
図7(a)に示すように、吸着ユニット100は、吸着制御を開始すると、まず、昇降機構338を駆動してキャリアテープ310に接近するように吸着ヘッド334を下方に移動させる。吸着ユニット100は、昇降機構338により吸着ヘッド334を下方に移動させている間、エンコーダ342により計測される吸着ヘッド334の高さ方向の位置と、昇降機構338から吸着ヘッド334に出力される駆動力の大きさとに基づいて、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重を制御する。
【0040】
次に、
図7(b)に示すように、吸着ユニット100は、吸着ヘッド334からキャリアテープ310に作用する荷重が荷重閾値22に達した時点で、昇降機構338の駆動を停止して吸着ヘッド334の下方への移動を停止する。この場合、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aがキャリアテープ310の上面310aに当接している。また、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aと半導体チップ320との間には隙間Sが介在している。
【0041】
次に、
図7(c)に示すように、吸着ユニット100は、吸着機構340を駆動して吸着ヘッド334の吸着動作を開始する。吸着ユニット100は、吸着ヘッド334がキャリアテープ310の凹部312を封止した状態で吸着機構340を作動させることで、キャリアテープ310の凹部312から複数の空気流路334cを通じて空気を吸引する。その結果、吸着ユニット100は、キャリアテープ310の凹部312に収容された半導体チップ320を負圧によって吸着ヘッド334の小径部334Bの下端面334bに吸着する。
【0042】
次に、
図7(d)に示すように、吸着ユニット100は、吸着機構340の駆動を継続して吸着ヘッド334の吸着動作を維持しつつ、昇降機構338を駆動して吸着ヘッド334を上方に移動させる。これにより、吸着ユニット100は、キャリアテープ310の凹部312に収容された半導体チップ320を吸着ヘッド334によりピックアップする。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のような形態にて実施してもよい。
【0044】
上記実施形態において、
図8に示すように、吸着ユニット100は、大径部334Aの外径をL1とし、小径部334Bの外径をL2とし、キャリアテープ310の凹部312の長辺の長さをL3とし、キャリアテープ310の凹部312の短辺の長さをL4としたとき、L2<L4<L1<L3の関係式を満たすようにしてもよい。同図に示す例では、吸着ヘッド334の大径部334Aの中心位置とキャリアテープ310の凹部312の中心位置とは平面視において重なっている。この場合、吸着ヘッド334が第1位置に到達した場合、吸着ヘッド334の大径部334Aの下端面334aは、、凹部312における少なくとも互いに対向する2つの側において、キャリアテープ310の上面310aに当接する。
【0045】
上記実施形態において、吸着ヘッド334の形状は、必ずしも円柱状である必要はなく、例えば角柱状等、他の形状を採用してもよい。
【0046】
上記実施形態において、キャリアテープ310の長手方向を凹部312の長手方向と一致させ、キャリアテープ310の短手方向を凹部312の短手方向と一致させてもよい。
【0047】
上記実施形態において、吸着ヘッド334は、凹部312における少なくとも隣り合う2つの側においてキャリアテープ310の上面310aに当接してもよい。要は、吸着ヘッド334は、キャリアテープ310における凹部312が開口した側の外側の領域の上面310aの一部に当接すればよい。
【0048】
上記実施形態において、吸着ヘッド334が第1位置に位置するとき、吸着ヘッド334と半導体チップ320との間に隙間が介在しなくてもよい。
【0049】
上記実施形態において、ピックアップツール330は、吸着ヘッド334がキャリアテープ310における凹部312が開口した側の外側の領域の上面310aに当接したことを検知するセンサを備えてもよい。
【0050】
以上、本実施形態に係る吸着装置をピックアップツールに適用した場合を例に挙げて説明したが、本実施形態に係る吸着装置はピックアップツールに限られず、例えばダイボンダまたはフリップチップボンダに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…演算処理部、12…移動制御部、14…検知部、16…吸着制御部、20…記憶部、22…荷重閾値、100…吸着ユニット、310…キャリアテープ、310a…上面、312…凹部、320…半導体チップ、330…ピックアップツール、332…保持部、334…吸着ヘッド、334A…大径部、334B…小径部、334a…下端面、334b…下端面、334c…空気流路、336…移動機構、338…昇降機構、340…吸着機構、342…エンコーダ、344…入出力デバイス、S…隙間。