(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】3次元微結晶ガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20250110BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20250110BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20250110BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C03C10/04
C03B32/02
C03C10/12
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2023557294
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2021100764
(87)【国際公開番号】W WO2022241891
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】202110555635.8
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523353889
【氏名又は名称】常熟佳合▲顕▼示科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周▲衛▼▲衛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼福▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】何光▲園▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲継▼▲紅▼
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0131080(US,A1)
【文献】特開2009-114005(JP,A)
【文献】特表2021-509658(JP,A)
【文献】特開2022-117461(JP,A)
【文献】特表2023-506666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元微結晶ガラスであって、その製造原料が酸化物基準の質量分率で表され、SiO
2
:63-75%、Al
2
O
3
:4-10%、Li
2
O:8-11%、Na
2
O:0.1-3%、K
2
O:0.1-1%、P
2
O
5
:1-5%、ZrO
2
:1-6%、TiO
2
:0-4%、CaO:0-1%、MgO:0-1%、BaO:0-1%、Sb
2
O
3
:0-2%、Y
2
O
3
:0-0.5%を含有し、完成品のガラス結晶体の主晶相が、二珪酸リチウムとペタライトであり、0.8mm厚さの3次元微結晶ガラスは、波長400nm-800nmにおける透過率が90%以上である、3次元微結晶ガラスの製造方法であって、
原料を調製し、重量百分率で計算すると、SiO
2:63-75%、Al
2O
3:4-10%、TiO
2:0-4%、CaO:0-1%、MgO:0-1%、Li
2O:8-11%、Na
2O:0.1-3%、K
2O:0.1-1%、P
2O
5:1-5%、ZrO
2:1-6%、BaO:0-1%、Sb
2O
3:0-2%、Y
2O
3:0-0.5%を秤量し、均一に混合するステップ1と、
ステップ1で得られた原料を白金ルツボに移し、白金ルツボを高温炉内に入れ、1500℃~1600℃まで徐々に昇温し、2~24時間保温し、バブリング及び均質化処理により、溶融した後、溶融液を予熱された金型に入れて成形し、続いてそれに300-550℃で、2-12時間のアニール処理を行って前駆体ガラスブロックを得るステップ2と、
ステップ2で得られた前駆体ガラスブロックをCNC加工した後に前駆体ガラスシートを得るステップ3と、
ステップ3で得られた前駆体ガラスシートに予備結晶化処理を行うステップ4であって、まず540-590℃で、0.5-5時間保温し、続いて600-800℃で、0.5-2時間保温してガラスの予備結晶化した結晶度を10-46%に制御するステップ4と、
ステップ4で得られた予備結晶化されたガラスシートに対して熱間曲げ成形処理を行うステップ5であって、前記熱間曲げ成形処理が、まず予熱段階を行い、次に成形段階を行い、さらに冷却段階を行い、最後に室温まで冷却して3次元微結晶ガラスを製造するステップ5と、
を含むことを特徴とす
る3次元微結晶ガラスの製造方法。
【請求項2】
ステップ4の予備結晶化処理で形成された結晶体は、二珪酸リチウム、珪酸リチウム及び/又はペタライトである、ことを特徴とする請求項
1に記載の3次元微結晶ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記ステップ5の前記予熱段階は、6つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、350-500℃であり、第2の工程区分の温度は、440-580℃であり、第3の工程区分の温度は、530-660℃であり、第4の工程区分の温度は、590-670℃であり、第5の工程区分の温度は、590-680℃であり、第6の工程区分の温度は、620-650℃であり、各工程区分の時間は、90-150sである、ことを特徴とする請求項
1に記載の3次元微結晶ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記ステップ5の前記成形段階は、3つの工程区分に分けられ、そのうち第1の工程区分の温度は、690-780℃であり、金型の加える圧力は、3-6Kg/cm
2であり、第2の工程区分の温度は、740-800℃であり、金型の加える圧力は、5-7Kg/cm
2であり、第3の工程区分の温度は、730-810℃であり、金型の加える圧力は、8-9Kg/cm
2であり、各工程区分の時間は、90-150sである、ことを特徴とする請求項
1に記載の3次元微結晶ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ5の前記冷却段階は、4つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、720-800℃であり、第2の工程区分の温度は、670-730℃であり、第3の工程区分の温度は、550-630℃であり、第4の工程区分の温度は、550℃であり、各工程区分の時間は、90-150sである、ことを特徴とする請求項
1に記載の3次元微結晶ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記ステップ5で得られた3次元微結晶ガラスにイオン交換強化処理を行うステップ6であって、まず、3次元微結晶ガラスを420℃~460℃の温度の溶融NaNO
3の塩浴に3~12時間浸漬してイオン交換を行い、次に、3次元微結晶ガラスを400℃~460℃の温度の溶融KNO
3の塩浴に約2~10時間浸漬してイオン交換を行う、ステップ6をさらに含む、ことを特徴とする請求項
1に記載の3次元微結晶ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造の分野に関し、具体的には、3次元微結晶ガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カバーガラスは、2Dから2.5Dにかけて3Dへの発展過程を経るため、従来の2.5Dガラス、セラミックカバー、メタルバックに比べて、3Dガラスの性能がより優れている。3Dガラスは、将来、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ダッシュボード、及びその他のウェアラブル製品のスクリーンカバー及びバックプレートのような3C製品に広く適用されることが期待され、3Dガラスは、軽くて薄く、透明で清潔で、防指紋、アンチグレア、耐候性に優れるなどの利点を有し、スマート端末製品の外観の新しさを向上させるだけでなく、優れたタッチ感をもたらすことができる。スマートフォンが次世代のモバイル端末機器となって以来、カバーガラスは、ほとんどのスマートフォンの標準配置となっており、実はカバーガラスの設計概念と加工モードは、主に時計用ガラスレンズの深加工産業の経験を鑑みたものである。時計用ガラスレンズの設計及び適用から分かるように、3D曲面ガラスは、2D平面ガラスよりもより良好な外観表現モード、及びより優れた保護効果を有する。そのうち、二重曲率の3D曲面ガラスが特に好ましく、落下防止、ひっかき傷防止、静水圧試験において2D平面ガラスよりも明らかに優れている。近年、OLED(有機発光ダイオード)曲面スクリーンは、ますますスマートフォンの適用トレンドになり、その恩に恵まれて、弧形設計を採用し、曲面スクリーンに適合する3Dガラスカバーも大いに異彩を放つ。5G時代に至って、NFC(近距離無線通信技術)、WiFi(ワイヤレス・フェデリティ)、LIFI(可視光無線通信)などの無線通信技術の適用が広がりつつあり、金属ボディは、信号をある程度遮蔽又は干渉する。スマートフォンは、3Dガラスディスプレイスクリーン及び3Dガラスバックカバーを用いると、この問題を良好に解決することができる。また、3Dガラスは、弧形設計を採用しているため、手触りが滑らかで、質感が軽くて薄く、透明で清潔で、アンチグレアなどの利点もある。
【0003】
微結晶ガラスは、微結晶玉石又はセラミックガラスとも呼ばれ、結晶相とガラス相の一部からなり、そのため、ガラスとセラミックの二重の特性を有する。微結晶ガラス中の晶相は、古典的な微結晶ガラスの固有の強化仕組みを保障し、同時に微結晶ガラスの残りのガラス相は、化学強化も可能であり、そのため、微結晶ガラスに高い強度、高い硬度、高いひっかき傷抵抗性を付与する。また、微結晶ガラスは、自然で柔らかな質感を有し、かつ、成分及びプロセス管理により多彩な色を取得することができる。そのため、微結晶ガラスカバーの市場への参入の動向も、めざましくなっている。
【0004】
現在、微結晶ガラスは、かなりの含有量の結晶体構造を有するため、ガラスに比べて高温での軟化効果が大幅に低下し、セラミックの一部の脆性を有するため、3D熱間曲げプロセスを行うことができない。バフ研磨プロセスで3D曲面微結晶ガラスを製造することは、プロセスが複雑で、歩留まりが低く、成形コストが高止まり、この問題の存在は、3Dカバー材料分野での微結晶ガラスの適用を大幅に阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を解消するために、低コストで効率の高い3次元微結晶ガラスの製造方法及びその製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の具体的な技術的解決手段は、3次元微結晶ガラスの製造方法であって、
原料を調製し、重量百分率で計算すると、SiO2:63-75%、Al2O3:4-10%、TiO2:0-4%、CaO:0-1%、MgO:0-1%、Li2O:8-11%、Na2O:0.1-3%、K2O:0.1-1%、P2O5:1-5%、ZrO2:1-6%、BaO:0-1%、Sb2O3:0-2%、Y2O3:0-0.5%を秤量し、均一に混合するステップ1と、
ステップ1で得られた原料を白金ルツボに移し、白金ルツボを高温炉内に入れ、1500℃~1600℃まで徐々に昇温し、2~24時間保温し、バブリング及び均質化処理(バブリングの目的は、ガラスにおける小さな気泡を取り出し、ガラス液における気泡を除去することである)により、溶融した後、溶融液を予熱された金型に入れて成形し、続いてそれに300-550℃で、2-12時間のアニール処理を行って前駆体ガラスブロックを得るステップ2と、
ステップ2で得られた前駆体ガラスブロックをCNC加工した後に前駆体ガラスシートを得るステップ3と、
ステップ3で得られた前駆体ガラスシートに予備結晶化処理を行い、具体的にはまず540-590℃で、0.5-5時間(h)保温し、続いて600-800℃で、0.5-2時間保温してガラス予備結晶化した結晶度を10-46%に制御し、形成された結晶体は、二珪酸リチウム、珪酸リチウム及び/又はペタライトであり、具体的には、二珪酸リチウム5-20wt%、珪酸リチウム5-20wt%、ペタライト0-6wt%である。前記予備結晶化したガラス硬度を5000-6500Kg/cm2に制御し、これは、後続の熱間曲げ過程において最終製品が良好な成形効果を有するために所定の圧力を加える必要があり、予備結晶化ガラスの硬度を制御しなければ、成形金型に損傷を与えやすく、予備結晶化したガラスの硬度値がこの範囲内にあり、熱間曲げ金型に与える損傷が最小であるステップ4と、
熱間曲げ成形し、ステップ4で得られた予備結晶化ガラスシートに対してまず予熱処理を行い、さらに成形処理を行い、最後に冷却処理を行い、室温まで冷却した後、3次元微結晶ガラスを製造することができるステップ5と、を含む。
【0007】
前記ステップ5における予熱処理は、6つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、350-500℃であり、第2の工程区分の温度は、440-580℃であり、第3の工程区分の温度は、530-660℃であり、第4の工程区分の温度は、590-670℃であり、第5の工程区分の温度は、590-680℃であり、第6の工程区分の温度は、620-650℃であり、各工程区分の時間は、90-150sである。
【0008】
前記ステップ5における成形段階は、3つの工程区分に分けられ、そのうち成形段階は、3つの工程区分に分けられ、そのうち第1の工程区分の温度は、690-780℃であり、金型の加える圧力は、3-6Kg/cm2であり、第2の工程区分の温度は、740-800℃であり、金型の加える圧力は、5-7Kg/cm2であり、第3の工程区分の温度は、730-810℃であり、金型の加える圧力は、8-9Kg/cm2であり、各工程区分の時間は、90-150sである。この過程において、金型を介してガラスに圧力を加え、実物を介して金型内でのガラスの移動及び膨張を阻害し、それにより結晶プロセスの間におけるガラスの変形の低減を実現し、この圧力を加えてガラスを結晶温度まで急速に加熱することができる。また、金型を介してガラスに圧力を加えて、短い持続時間で結晶を行うことが許可される。加圧は、1つ又は複数の工程区分により完了され、各工程区分の滞留時間は、90-150sであり、熱間曲げ成形プロセスにおける金型圧力は、3-9Kg/cm2である。圧力が低すぎると、熱間曲げ効果が不足する。圧力が高すぎると、ホットプレス後にガラス表面に黒鉛痕が残ることを引き起こし、熱間曲げ成形温度は、ガラス膨張軟化点温度以上30℃-60℃であり、熱間曲げは、1つ又は複数の工程区分により完了され、各工程区分の滞留時間は、90-150sであり、熱間曲げ温度は、720℃-820℃に制御することが好ましく、高い温度で結晶化を行う時、わずかな補助圧力を加え、ガラス結晶化時に変形現象の発生を防止することに役立つ。
【0009】
前記ステップ5における冷却段階は、4つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、720-800℃であり、第2の工程区分の温度は、670-730℃であり、第3の工程区分の温度は、550-630℃であり、第4の工程区分の温度は、550℃であり、各工程区分の時間は、90-150sである。最後に、0.1℃/秒-8℃/秒の速度で徐冷して室温に戻し、ガラスを室温環境にさらすことにより、ガラスを結晶温度から室温まで冷却することができる。
【0010】
よりさらに、ステップ5で得られた3次元微結晶ガラスにイオン交換強化処理を行い、まず、3次元微結晶ガラスを420℃~460℃の温度の溶融NaNO3の塩浴に3~12時間浸漬してイオン交換を行い、次に、3次元微結晶ガラスを400℃~460℃の温度の溶融KNO3の塩浴に約2~10時間浸漬してイオン交換を行うステップ6をさらに含む。
【0011】
3次元微結晶ガラスであって、その製造原料が酸化物基準の質量分率で表され、SiO2:63-75%、Al2O3:4-10%、TiO2:0-4%、CaO:0-1%、MgO:0-1%、Li2O:8-11%、Na2O:0.1-3%、K2O:0.1-1%、P2O5:1-5%、ZrO2:1-6%、BaO:0-1%、Sb2O3:0-2%、Y2O3:0-0.5%を含有し、完成品のガラス結晶体の含有量は、二珪酸リチウム:30-45%、ペタライト:30-45%であり、3次元微結晶ガラスの透明性を保証することができる。解釈すべきことは、ペタライト及び二珪酸リチウムと残りのガラス体の化学的性質が近く、屈折率差が小さく、成分が連続的に変化し、したがって、ペタライト及び二珪酸リチウムが前記晶相に占める割合が高いほど、3次元微結晶ガラスの可視光領域における透過率がより高い。
【0012】
前記3次元微結晶ガラスの硬度は、8500Kg/cm2以上である。ただし、ビッカース硬度が大きすぎると、加工しにくくなる場合があるので、本3次元形状のガラスのビッカース硬度は、11000Kg/cm2以下であることが好ましく、10500Kg/cm2以下であることがより好ましく、10000Kg/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0013】
前記3次元微結晶ガラスにおける晶相の平均粒径は、100nm未満であり、好ましくは、前記3次元微結晶ガラスにおける晶相の平均粒径は、20nm~70nmである。
【0014】
一方では、本発明は、熱間曲げ成形処理及び微結晶化処理の順序を調整することにより、まず平面ガラスに対して予備結晶化核生成処理を行い、それに20%-40%の結晶度及び2-15nmの結晶粒径を有させ、続いて熱間曲げ成形処理を行って3次元微結晶ガラスを得る。熱間曲げ成形ステップを予備結晶化の後に設定し、すなわち予備結晶化のガラス製品を熱間曲げ金型に置いて熱間曲げ成形を行う。熱間曲げ成形ステップの前に、微結晶ガラスは、結晶核を形成するが、晶相が成長せず、結晶度が低く、硬度が低く、熱間曲げ成形に有利である。
【0015】
他方では、本発明は、予備結晶化過程における温度と時間を制御することにより、特定の結晶型変換を生成する。本発明の原料の成分組成で、予備結晶化過程における温度と時間を結合し、二珪酸リチウムと珪酸リチウムは、より組織及び核生成しやすく、二珪酸リチウムと珪酸リチウムを有する核生成ガラスは、良好な抗折性能を有し、且つガラスにおける結晶体の含有量により、核生成ガラスが理想的に3D熱間曲げ成形を行うことができ、所定の温度で所定の時間保温した後、ガラスの構造緩和は、顕著な変化が発生し、珪酸リチウム結晶体は、徐々に二珪酸リチウムに変換し、このとき珪酸リチウムと二珪酸リチウムの割合は、徐々に小さくなり、具体的には、Li2SiO3+SiO2=Li2Si2O5であり、そのうち、SiO2は、ガラス基板由来のものである。ガラスの主晶相がLi2Si2O5に変換する時、ガラスの破断強度が大幅に向上し、その抗折強度も向上し、熱間曲げの継続に伴い、製品におけるペタライト結晶体が徐々に多くなり、ペタライトの析出について、その由来は、2つがあり、1つは、ガラスマトリックスにおけるLi2O、Al2O3及びSiO2が所定の条件でさらにペタライト結晶を形成し、2つは、核生成ガラスにおける二珪酸リチウム及び/又は珪酸リチウムは、ガラスマトリックスにおけるSiO2と反応してペタライト結晶体、すなわちLi2Si2O5+6SiO2+Al2O3=2LiAlSi4O10及び/又はLi2SiO3+7SiO2+Al2O3=2LiAlSi4O10を生成する。最終製品に珪酸リチウムが全部溶解し又は少量残留し、主晶相は、ペタライト及び二珪酸リチウムである。
【0016】
さらに、本発明の技術的解決手段で製造された3次元微結晶ガラスは、さらにイオン交換を行うことができ、それにより強度がより高い強化ガラスを得る。具体的には、3次元微結晶ガラスをNaNO3又はKNO3塩浴に置いてイオン交換を行い、イオン交換過程において、カリウム-ナトリウム又はナトリウム-リチウムの1次元イオン交換を行うことができ、カリウム-ナトリウム及びナトリウム-リチウム混合の2次元イオン交換を行うこともでき、大径アルカリ金属イオンは、カリウム、ナトリウムイオンであり、小径アルカリ金属は、ナトリウム、リチウムイオンである。塩浴における大径アルカリ金属イオンでガラス小径アルカリ金属イオンを置換し、「クラウディング効果」により3次元微結晶ガラスに複合圧縮応力を発生させる。強化後の製品のビッカース硬度は、9000-11000Kg/cm2に達することができ、そのヘイズは、0.15よりも小さい。8mm厚さのガラス製品は、波長400-800nmにおける透過率が85%以上である。本3次元微結晶ガラスは、ビッカース硬度が大きく、損傷しにくい。
【0017】
本製品は、製造過程において異なる段階の結晶体の種類、結晶度などを制御することにより、それが異なる段階において異なる範囲の硬度を有し、それにより最終製品が理想的な機械的強度を有しまた製品が生産過程において金型に与える損傷を最小限に制御することができる。例えば成分及び時間や温度の調整により予備結晶化段階で析出された晶体の主晶相は、二珪酸リチウムと珪酸リチウムであり、且つその結晶体の結晶度が20-40%であり、二珪酸リチウムと珪酸リチウムの硬度は、最終製品に析出されたペタライトの硬度よりも低く、そのため、金型は、熱間曲げ過程で予備結晶化ガラスの硬度が大きすぎることによる摩耗速度を加速せず、熱間曲げ後のガラスに析出された結晶体の主晶相は、ペタライトと二珪酸リチウムであり且つ結晶度が60-90%の範囲内であり、最終製品に理想的な機械的性能を有させ、予備結晶化の結晶度を20-40%の範囲内に制御すれば熱間曲げ過程において結晶度が高すぎることによる成形困難を引き起こさないことを保証することができ、また予備結晶化ガラスの結晶度が低すぎることによる最終製品の結晶度が理想的な範囲に達しないことによる製品の機械的性能の不足を引き起こさないことを保証することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術的解決手段を採用して平面ガラスが完全で徹底的な微結晶化処理を経た後、一部のセラミックの脆性を有するため、3D熱間曲げプロセスを行うことができないという問題を回避し、且つ非晶質ガラスを曲げ成形した後に結晶化を行う方法において、成形後に加熱処理を行うと、変形しやすいだけでなく、且つ非晶質ガラスが結晶化する時に寸法変化が発生し、所望の形状を得にくいという問題を回避する。従来技術に比べて、本発明の技術的解決手段は、まず平面に対してガラス微結晶化処理を行って平面微結晶ガラスを得て続いてバフ研磨プロセスを採用して平面微結晶ガラスを3D曲面微結晶ガラスに製造し、本発明にて提供される前記製造プロセスは、歩留まりが高く且つプロセスコストが低いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】異なる工程区分に対応する結晶体形成原理の概略図である。
【
図2】実施例1で製造した予備結晶化ガラスのXRDスペクトル分析である。
【
図3】実施例1で製造した熱間曲げ後のガラスのXRDスペクトル分析である。
【
図4】実施例1で製造した3次元微結晶ガラスの280-800nm範囲における透過率スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発明者らは、鋭意試験研究を重ねた結果、微結晶ガラス製品を構成する特定の成分について、その含有量及び含有量の割合を特定の値に規定して、特定のいくつかの晶相を析出させることにより、本発明の微結晶ガラス又はガラス製品を低コストで得る。以下、本発明の微結晶ガラスの各成分の組成範囲について説明する。本明細書において、各構成成分の含有量は、特に説明のない限り、酸化物換算組成のガラス物質全量に対する重量百分率で表されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明の微結晶ガラスの組成成分の原料として用いられる酸化物、複合塩などが溶融時にすべて分解されて酸化物に変換される場合、当該酸化物の物質量の合計を100%とする。
【0021】
表1のガラス1酸化物質量百分率にしたがって配合材料を秤量し、均一な材料を得るために混合し、続いて配合材料を約800mlの白金ルツボに移し、白金ルツボを高温炉に入れ、徐々に1540℃まで昇温し、6時間保温し、バブリングなどにより気泡を排出させ均質化される。次に、澄ましを10時間行った後、溶融液を予熱した金型に流し込んで成形し、続いてそれを箱型アニール炉に移して500℃で約4時間アニール処理を行い、その後室温まで自然冷却して前駆体ガラスブロックを製造する。得られた前駆体ガラスブロックを、単線ダイヤモンドラインソーで0.8mmのガラスシートに切断する。得られたガラスシートをCNC加工し、最終的に必要な前駆体ガラスを得る。
【0022】
得られた最終的に必要な前駆体ガラスを、まず550℃で3時間(h)、続いて660℃で2時間保温して予備結晶化処理を行う。
【0023】
次いで、予備結晶化されたガラスを熱間曲げ成形加工し、熱間曲げ加工過程においてまず予熱段階を行い、予熱段階は、6つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、380℃であり、第2の工程区分の温度は、440℃であり、第3の工程区分の温度は、530℃であり、第4の工程区分の温度は、590℃であり、第5の工程区分の温度は、610℃であり、第6の工程区分の温度は、630℃であり、各工程区分の滞留時間は、120sである。次に、成形段階に入り、本実施例では、成形段階は、3つの工程区分に分けられ、そのうち、第1の工程区分の温度は、700℃であり、金型の加える圧力は、4Kg/cm2であり、第2の工程区分の温度は、750℃であり、金型の加える圧力は、6Kg/cm2であり、第3の工程区分の温度は、740℃であり、金型の加える圧力は、8Kg/cm2であり、各工程区分の滞留時間は、120sである。最後に冷却段階に入り、本実施例の冷却段階は、5つの工程区分に分けられ、第1の工程区分の温度は、730℃、第2の工程区分の温度は、680℃であり、第3の工程区分の温度は、640℃であり、第4の工程区分の温度は、590℃であり、第5の工程区分の温度は、550℃であり、各工程区分の滞留時間は、120sである。
【0024】
その後、成形されたガラス製品を、溶融430℃のNaNO3の溶融塩に浸漬して7時間保持し、次に450℃のKNO3の溶融塩中で3時間保温してイオン交換を行い、最終製品を得、最終製品の主晶相は、ペタライト及び二珪酸リチウムであり、そのうち、製品の透過率は、90%であり、予備結晶化後の硬度は、560MPaであり、熱間曲げガラス硬度は、870MPaであり、強化後のガラス硬度は、1020MPaであり、強化後のガラスCS値は、400MPaであり、DOCは、10μmである。
【0025】
実施例1-8の実験データを表1及び表2に示す。
【0026】
【0027】
【0028】
なお、本明細書において上記各実施例を説明したが、本発明の特許請求の保護範囲を限定するものではない。したがって、本発明の新規な理念に基づき、本明細書の前記実施例に対して行った変更及び修正、又は本発明の明細書及び図面の内容を利用して行った等価構造又は等価フロー変換は、直接的又は間接的に以上の技術的解決手段を他の関連する技術分野に適用し、いずれも本発明の特許保護範囲内に含まれる。