(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】断熱ブロックユニット、断熱壁、断熱ブロックユニットの製造方法、および、断熱ブロックの施工方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20250110BHJP
F27D 1/06 20060101ALI20250110BHJP
F27D 1/16 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F27D1/00 G
F27D1/06
F27D1/16
(21)【出願番号】P 2024054982
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-10-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522123566
【氏名又は名称】マフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】秦 雄作
(72)【発明者】
【氏名】田中 あゆみ
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-020437(JP,A)
【文献】特開昭52-114127(JP,A)
【文献】特開2019-078436(JP,A)
【文献】特開2021-139549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00
F27D 1/06
F27D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された無機繊維集合体のマット、および、炉壁に接する側にブロック固定用金具を備えてなる断熱ブロックを複数備え、
前記複数の断熱ブロックにおける前記ブロック固定用金具同士を、連結する連結ユニットを備
え、
前記連結ユニットが、基部と該基部の両端部に挿入されたスライド部とを備え、前記基部と前記スライド部とがスライド自在とされている、
断熱ブロックユニット。
【請求項2】
前記スライド部が、凹状切り欠きを有する、請求項1に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項3】
前記ブロック固定用金具が、前記断熱ブロックにおける前記無機繊維集合体のマットの積層方向に延びる板状体であり、前記連結ユニットが、該ブロック固定用金具同士を接続する部材である、請求項1または2に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項4】
前記ブロック固定用金具が、前記断熱ブロックにおける前記無機繊維集合体のマットの積層方向に延びる板状体と、該積層方向に直交する方向に延びる板状体とを十字状に組み合わせた部材である、請求項1または2に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項5】
前記ブロック固定用金具と前記連結ユニットとが一体化されている、請求項1または2に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項6】
前記無機繊維集合体のマットは、一つの長尺マットを折りたたんで形成されている、請求項1または2に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項7】
請求項1または2に記載の断熱ブロックユニットを備える断熱壁。
【請求項8】
積層された無機繊維集合体のマット、および、炉壁に接する側にブロック固定用金具を備えてなる断熱ブロックを複数準備する工程、
断熱ブロックを設置する面積に応じて前記断熱ブロックの個数と組み合わせ方を決定する工程、
前記決定に沿って、前記複数の断熱ブロックにおける前記ブロック固定用金具同士を、連結ユニットにより連結する工程、
を備
え、
前記連結ユニットが、基部と該基部の両端部に挿入されたスライド部とを備え、前記基部と前記スライド部とがスライド自在とされている、
断熱ブロックユニットの製造方法。
【請求項9】
前記スライド部が、凹状切り欠きを有する、請求項8に記載の断熱ブロックユニット。
【請求項10】
前記ブロック固定用金具と前記連結ユニットとが一体化されている、請求項8または9に記載の断熱ブロックユニットの製造方法。
【請求項11】
前記断熱ブロックを複数準備する工程において、一つの長尺マットを折りたたんで形成された前記無機繊維集合体のマットを準備する、請求項8または9に記載の断熱ブロックユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項8または9に記載の断熱ブロックユニットの製造方法により製造した断熱ブロックユニットを、炉殻に設置する工程を備える、断熱ブロックの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱ブロックユニット、断熱壁、断熱ブロックユニットの製造方法、および、断熱ブロックの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱炉などの炉殻鉄皮の内面に断熱壁を形成するには、キャスタブルと呼ばれる耐熱コンクリートが使用されていた。近年、断熱壁の施工性、形成した断熱壁の断熱性の点から、キャスタブルに替えて、耐火性および断熱性を有する無機繊維からなる断熱材を内張することが行われている。
【0003】
無機繊維からなる断熱材によって断熱壁を形成する方法としては、無機繊維マットを炉殻(鉄皮面)に平行に積層し、炉殻に直角に設けたスタッドによって固定するペーパーライニング法、無機繊維マットを炉殻に直角に積層し、炉殻に直角に固定された固定金具及びこの固定金具に固定され無機繊維マットを炉殻に平行に貫通するロッドによって固定するスタックライニング法(いわゆるHアンカー工法)、無機繊維マットをブロック化しその一つの面に断熱ブロック固定用取付金具(以下、「ブロック固定用金具」という場合がある。)を取付けてなる断熱ブロックを、炉殻に直角に設けたスタッドにブロック固定金具を介して取り付けるモジュール法(例えば、特許文献1)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのうち、スタックライニング法は、製造コストが安く、施工が早いという利点があるが、無機繊維マットにロッドを横串にするという構造から、ロッドが無機繊維マットを点で支える構造であるため、固定金具が無機繊維のマットを支えきれないという問題があり、炉殻(特に天井)から無機繊維のマットが落ちる、または、無機繊維マットと炉殻との間に隙間ができるといった問題点があった。また、施工する現場にて、無機繊維マットに横串を刺す位置が施工者に委ねられており、この位置がずれることがあり、施工精度が悪いという問題点があった。
【0006】
また、モジュール法は、あらかじめ作成した断熱ブロックを、施工現場にて炉殻に取り付ける方法であり、施工性が改良されているが、取付作業の際に、多数の断熱ブロックを一つ一つ取り付ける作業に多大な時間が費やされており、特に、作業負担の大きい、天井への取付作業、または、過酷な湿熱条件下での取付作業においては、その負担軽減が求められていた。
【0007】
また、これらに代わる方法として、断熱ブロックを取り付ける箇所の鉄皮を切断して、同形状の鉄皮にあらかじめ断熱ブロックを取り付けたプレハブ化されたパネルを準備しておき、該パネルを切断した鉄皮の箇所に取り付けるというプレハブ工法が知られている。
【0008】
しかし、上記プレハブ工法では、鉄皮を切断する作業が必要となる共に、パネルの鉄皮と既存の鉄皮とを溶接する作業も必要となり、施工工事が大がかりなものとなってしまう。また、加熱炉天井側にはガス配管等が設置されており、安全性の観点から特に天井側において溶接作業を行うことは好ましくない。さらに、鉄皮を含む断熱パネルは、高重量であるので、簡易的なチェーンブロックでは引き上げることができず、引き上げ作業が大がかりなものとなる。
【0009】
以上より、本発明は、鉄皮が存在する加熱炉における、断熱壁の補修作業において、特に、加熱炉の天井側の断熱壁の補修作業において、より簡便な補修作業を提供し得る、断熱ブロックユニット、断熱壁、断熱ブロックユニットの製造方法、および、断熱ブロックの施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の事項を見出した。
・複数の断熱ブロックを特定構造の連結ユニットによって結合して、複数の断熱ブロックを備える断熱ブロックユニットとすることで、簡易な方法での断熱ブロックの施工を可能とした。
・この施工方法によると、既存鉄皮の切断が不要となる。
・鉄皮と断熱ブロックとを備えたプレハブパネルと異なり、断熱ブロックユニットは重量が軽いので、簡便なチェーンブロックによって吊り上げ作業を行うことができる。
・組み合わせる断熱ブロックの数、および、組み合わせ方を調整することで、種々の形および大きさの断熱ブロックユニットが形成可能であり、種々の形および大きさの補修箇所に対応可能である。
・施工現場にて断熱壁の補修が必要な部分を確認して、その現場において、該部分に対応する大きさ、形状の断熱ブロックユニットを調整可能であるので、現場での必要性に応じた柔軟な対応が可能となる。
【0011】
以上の事項を元に、本発明者は以下の発明を完成させた。
[1] 積層された無機繊維集合体のマット、および、炉壁に接する側にブロック固定用金具を備えてなる断熱ブロックを複数備え、
前記複数の断熱ブロックにおける前記ブロック固定用金具同士を、連結する連結ユニットを備える、
断熱ブロックユニット。
【0012】
[2] 前記ブロック固定用金具が、前記断熱ブロックにおける前記無機繊維集合体のマットの積層方向に延びる板状体であり、前記連結ユニットが、該ブロック固定用金具同士を接続する部材である、[1]に記載の断熱ブロックユニット。
【0013】
[3] 前記ブロック固定用金具が、前記断熱ブロックにおける前記無機繊維集合体のマットの積層方向に延びる板状体と、該積層方向に直交する方向に延びる板状体とを十字状に組み合わせた部材である、[1]または[2]に記載の断熱ブロックユニット。
【0014】
[4] 前記ブロック固定用金具と前記連結ユニットとが一体化されている、[1]~[3]のいずれかに記載の断熱ブロックユニット。
【0015】
[5] 前記無機繊維集合体のマットは、一つの長尺マットを折りたたんで形成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の断熱ブロックユニット。
【0016】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の断熱ブロックユニットを備える断熱壁。
【0017】
[7] 積層された無機繊維集合体のマット、および、炉壁に接する側にブロック固定用金具を備えてなる断熱ブロックを複数準備する工程、
断熱ブロックを設置する面積に応じて前記断熱ブロックの個数と組み合わせ方を決定する工程、
前記決定に沿って、前記複数の断熱ブロックにおける前記ブロック固定用金具同士を、連結ユニットにより連結する工程、
を備える、断熱ブロックユニットの製造方法。
【0018】
[8] 前記ブロック固定用金具と前記連結ユニットとが一体化されている、[7]に記載の断熱ブロックユニットの製造方法。
【0019】
[9] 前記断熱ブロックを複数準備する工程において、一つの長尺マットを折りたたんで形成された前記無機繊維集合体のマットを準備する、[7]または[8]に記載の断熱ブロックユニットの製造方法。
【0020】
[10] [7]~[9]のいずれかに記載の断熱ブロックユニットの製造方法により製造した断熱ブロックユニットを、炉殻に設置する工程を備える、断熱ブロックの施工方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の断熱ブロックユニットによれば、鉄皮が存在する加熱炉における、断熱壁の補修作業において、特に、加熱炉の天井側の断熱壁の補修作業において、より簡便な補修作業を提供し得る、
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、断熱ブロック10と連結ユニット20とを連結する様子を示す模式図である。
図1(b)は、断熱ブロックユニット100の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、断熱ブロック10の斜視図である。
図2(b)は、断熱ブロック10の製造工程の概念図である。
【
図3】
図3は、ブロック固定用金具12の断面模式図である。
【
図4】
図4(a)は、連結ユニット20の斜視図である。
図4(b)は、連結ユニット20とブロック固定用金具12とを連結させた状態の断面模式図である。
図4(c)は、別の形態の、連結ユニット20とブロック固定用金具12とを連結させた状態の断面模式図である。
【
図5】
図5(a)は、ブロック固定用金具12と連結ユニット20とが一体化した状態を示す模式図である。
図5(b)は、別の形態の、ブロック固定用金具12と連結ユニット20とが一体化した状態を示す模式図である。
図5(c)は、ブロック固定用金具12と連結ユニット20とが一体化した部材を使用した場合の、断熱ブロック10同士の接続を示す模式図である。
【
図6】
図6は、断熱ブロックユニット100を炉殻に設置する際の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例としての、断熱ブロックユニット、断熱壁、および、断熱ブロックユニットの製造方法について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、数値範囲を示す「a~b」の記述は、特にことわらない限り「a以上b以下」を意味すると共に、「好ましくはaより大きい」及び「好ましくはbより小さい」の意を包含するものである。
また、本明細書における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものとする。
【0024】
<断熱ブロックユニット100>
図1(a)に連結前の状態、
図1(b)に連結後の状態を示すように、本発明の断熱ブロックユニット100は、所定の断熱ブロック10を複数備え、かつ、該断熱ブロックにおけるブロック固定用金具12同士を連結する連結ユニット20を備える。
【0025】
(断熱ブロック10)
図2(a)に断熱ブロック10の斜視図、
図2(b)に断熱ブロック10の製造工程の概念図を示すように、断熱ブロック10は、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11、および、炉殻に接する側にブロック固定用金具12を有している。
【0026】
・折りたたまれた無機繊維集合体のマット11
折りたたまれた無機繊維集合体のマット11を形成する無機繊維は、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア及びカルシアの単独、または複合繊維が挙げられる。中でも、特に好ましいのは、耐熱性、繊維強度(靱性)、安全性の点で、アルミナ/シリカ系繊維、特に多結晶質アルミナ/シリカ系繊維である。特に、アルミナ比が70~80質量%でシリカ比が30~20質量%のアルミナ/シリカ繊維が好ましい。
【0027】
無機繊維集合体のマット11としては、安全性を確保しつつ、耐熱性や耐久性を高めるという理由により、実質的に繊維径3μm以下を含まない無機繊維の集合体にニードリング処理が施されたマット(ニードルブランケット)が好ましい。
無機繊維集合体のマット11の嵩密度は特に限定されないが、形成される断熱ブロック10の耐熱性および強度の点から、85kg/m3~150kg/m3が好ましく、90kg/m3~140kg/m3がさらに好ましい。
無機繊維集合体のマット11の厚みは適宜選択されるが、施工性や強度の点から10~30mmが好ましく、12.5~27mmがより好ましい。厚みが薄くなりすぎると、施工に手間がかかり、厚みが厚すぎると折りたたんだ時に、構造体を維持しづらいという問題点がある。
無機繊維集合体のマット11のサイズは、特に限定されず、所望する断熱ブロックの大きさに応じて、適宜好適な大きさに切り出して対応可能である。
【0028】
・無機繊維集合体のマット11の折りたたみ方法
無機繊維集合体のマット11の折りたたみ方法は、断熱ブロック10の炉殻に設置する側の面(
図2(a)において、ブロック固定用金具12が設置されている面P1)に折り目を有するのであれば、特に制限されない。断熱ブロック10を炉殻に強固に固定する観点から、断熱ブロック10の炉殻に設置する側の面P1には、折り目が少なくとも2つ以上あることが好ましく、4つ以上あることがより好ましい。折り目の数の上限は断熱ブロック10の大きさに依存するが、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましい。なお、
図2(a)に示した形態では、断熱ブロック10の炉殻に設置する側の面P1に、折り目が5つ形成されている。
【0029】
無機繊維集合体のマット11の折りたたみ方法は、
図2(b)に示すように、一つの長尺マットを九十九折りしたものであってもよいし、複数の長尺マットを九十九折りしたものを組み合わせたものであってもよいし、または、二つに折りたたんだマットを複数準備し、これらの折り目を面P1側に揃えてまとめたものであってもよい。
【0030】
断熱ブロック10の嵩密度に関して特に制限はないが、96kg/m3~160kg/m3が好ましく、100kg/m3~140kg/m3が好ましい。断熱ブロック10を構成する折りたたまれた無機繊維集合体のマット11は、最終的には、圧縮された状態となっていることが好ましい。つまり、後に説明するビーム14を挿入固定した状態で、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11を圧縮することが好ましい。
【0031】
圧縮率は、断熱ブロック10の耐熱性と耐久性を高める観点から、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、ビーム14の変形を防ぐ観点から、上限は40%以下とすることが好ましい。なお、圧縮率を高くすることで、断熱ブロック10の嵩密度が大きくなり、断熱ブロック10の耐熱性が向上する。
【0032】
断熱ブロック10は、アルミナロープなどで縫製して、圧縮したり、構造を保持したりすることができる。また、無機繊維集合体のマット11を折りたたんで積層し、圧縮面の両側をベニヤ板や金属板などの抑え板16で抑えて圧縮し、バンド18で固定することで、断熱ブロック10の嵩密度を高めることもできる。
図2(a)では、バンド18と抑え板16とで圧縮を保持する形態を示したが、抑え板16を使用せずに、バンド18のみで圧縮状態を保持しても構わない。
【0033】
各断熱ブロック10は、施工後にバンド18を切断することによって、圧縮を開放し、断熱ブロック10同士を密着させて、炉殻に固定することができる。
なお、
図1(b)に示すように、断熱ブロックユニット100を形成する際に、断熱ブロック10の側面(炉殻側の面P1とそれに対向する面を含まない他の4面)を囲んでいるバンド18aを切断してもよい。炉殻に設置後において、該バンド18aは断熱ブロック10の間に埋もれてしまい、切断が難しくなるからである。
【0034】
なお、断熱ブロック10の炉殻側の面P1とそれに対向する面に接するように囲んでいるバンド18bについては、炉殻に設置後においても、炉内側に露出しており、切断および除去が可能であるので、該バンド18bの切断・除去は、炉殻に設置した後で構わない。
【0035】
・ブロック固定用金具12
断熱ブロック10の炉殻に接する面P1には、ブロック固定用金具12を取り付けることができる。該ブロック固定用金具12と、炉殻に立設したスタッドとを接続することにより(例えば、炉殻に立説されたスタッドをブロック固定用金具12に設けた孔122に挿入し、ブロック固定用金具12裏面の無機繊維集合体のマット11側からナットで固定することにより)、複数の断熱ブロック10を備える断熱ブロックユニット100は、炉殻に設置される。もしくは、ブロック固定用金具12にスタッドを溶接し、炉殻に形成した孔に該スタッドを通して、炉の外側からナット等で固定することで、複数の断熱ブロック10を備える断熱ブロックユニット100を、炉殻に設置することができる。
【0036】
ブロック固定用金具12は、
図2(a)に示すような、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11の積層方向に延びる板状体(以下、「I字状ブロック固定用金具」という場合がある。)であってもよいが、好ましくは、
図1(a)に示したような、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11の積層方向に延びる板状体と該積層方向に直交する方向に延びる板状体とを十字状に組み合わせた部材(以下、「十字状ブロック固定用金具」という場合がある。)であることが好ましい。
【0037】
I字状ブロック固定用金具を使用した場合、該I字状ブロック固定用金具同士を、以下に説明する連結ユニット20で連結することで、一列に並んだ断熱ブロック10を備える断熱ブロックユニット100を形成することが可能である。この場合の連結数は特に限定されないが、取り扱い性の点から、2個~6個を連結することが好ましい。
【0038】
十字状ブロック固定用金具を使用した場合、該十字状ブロック固定用金具を、以下に説明する連結ユニット20で縦および横に連結することで、例えば、
図1(a)に示すように、3行3列に断熱ブロック10を連結して、断熱ブロックユニット100を形成することが可能である。この場合の連結数は特に限定されないが、取り扱い性の点から、2×2、3×3、4×4、2×3、2×4、3×4、2×5、3×5、3×6の連結パターンが挙げられる。中でも、2×3、2×4、3×3、4×4、3×6の連結数が、好ましい。
【0039】
ブロック固定用金具12の形状は、
図2(b)に示すような、無機繊維集合体のマット11の積層方向に延びる板状体であり、強度を付与する観点から、断面コの字状とすることが好ましく、例えば、
図3(a)の12Aのような内側にフランジを有する断面形状であってもよしい、12Bのように外側にフランジを有する断面形状であってもよいが、所定の強度を付与する観点、および、後に説明する連結ユニット20との接続性の観点、を満たすのであれば他の形態であっても構わない。
【0040】
ブロック固定用金具12は、
図2(b)に示すように、無機繊維集合体のマット11の積層方向の中央部に孔122を有していることが好ましく、あるいは、
図1(a)に示すように、同箇所において、孔の代わりに、スタッドを有していることが好ましい。
十字状ブロック固定用金具において、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11の積層方向に延びる板状体と該積層方向に直交する方向に延びる板状体との接続方法は、特に限定されず、二つの部材を溶接により接合してもよいし、あるいは、当初から一部材として形成しても構わない。
折りたたまれた無機繊維集合体のマット11の積層方向に延びる板状体には、ビーム14の刃142を挿入するためのスリット124が形成されている。
【0041】
ブロック固定用金具12の材質は、強度と耐熱性の観点から、SUS310S、SUS304等の耐熱ステンレスとすることが好ましい。
【0042】
(断熱ブロック10の製造方法)
以下、断熱ブロック10の製造方法の一例を示す。
【0043】
まず、所望の幅および長さを有する無機繊維集合体のマット11を切り出す。この切り出した無機繊維集合体のマット11を、
図2(b)に示すように、交互に折り畳み積層させる。また、
図2(b)に示すように、形成する断熱ブロック10の炉殻側に刃が出るように、無機繊維集合体のマット11の折り目の内側に、ビーム14を取り付ける。
ビーム14は、ブロック固定用金具12と折りたたまれた無機繊維集合体のマット11とを固定する機能を有しており、図示したように、無機繊維集合体のマット11の折り畳み部に挿入され、ビーム14の刃142がマット11を突き抜けて、断熱ブロック10の炉殻側に突出し、後に説明するように、この刃がブロック固定用金具12に固定される。また、ビーム14は、無機繊維集合体のマット11に挿入されており、かつ、炉壁に設置した際に、炉壁側に位置しているので、熱による損傷を抑えることができる。
【0044】
ビーム14の個数は、ブロック固定用金具12を取り付けられるのであれば特に限定されないが、接合強度の点から、4個以上とすることが好ましい。ビーム14の材質は、炉内で使用した際に耐熱性を発揮できれば特に限定されないが、例えば、SUS310S、SUS304を挙げることができる。ビーム14の形状は、折りたたまれた無機繊維集合体のマット11とブロック固定用金具12とを固定できるのでれば特に限定されないが、例えば、図示したような丸棒に三角形状の刃が溶接された形状を挙げることができる。
【0045】
なお、無機繊維集合体のマット11を九十九折りにするのではなく、板状の無機繊維集合体のマットを積層した場合は、ビーム14を使用してブロック固定用金具12と無機繊維集合体のマットとを固定することができない。この場合は、積層したマットを貫くように支持金具が溶接された横串を貫通させる。本発明では、このような横串を使用する形態を排除するものではないが、耐久性の観点からすると、上記のビーム14を用いてブロック固定用金具12と無機繊維集合体のマット11とを固定する方が好ましい。
【0046】
また、
図2(b)に示すように、ガイドパイプ15を無機繊維集合体のマット11の折り目の内側に取り付けることもできる。ガイドパイプ15の孔は、ブロック固定用金具12の孔122に対応しており、炉殻に設けたスタッドと断熱ブロック10に固定したブロック固定用金具12とを接合させるために、ナット締めを炉内側から行うためのガイドの役割を担う。断熱ブロック10におけるガイドパイプ15の数は、各断熱ブロック10に対応するスタッドの数と対応している。なお、ガイドパイプ15は、ナット締めが行われた後は、その機能が果たされたので除去することが好ましい。
なお、上記したように、ガイドパイプ15は、炉殻にスタッドを形成して、それとブロック固定用金具12とを接続する場合に使用されるが、ブロック固定用金具12にスタッドを形成して、このスタッドを、炉殻に形成した孔に通して、炉殻とブロック固定用金具12とを固定する形態においては、ガイドパイプ15は不要となる。
【0047】
ガイドパイプ15の材質は特に限定されず、金属、段ボール、プラスチックの筒が使用可能である。内径は、スタッドの径やボルトの大きさによるが、10~30mmとすることが好ましい。また、ナットは、SUS310S、SUS304等の耐熱ステンレス製のナットを使用することが好ましい。
【0048】
一般的に、炉壁に設置した無機繊維集合体のマット11は、それ自体の反発力により、炉壁に固定されるが、ブロック固定用金具12は、このマットの反発力に加えて、断熱ブロック10を強固に炉壁に固定するために使用される。ブロック固定用金具12は、炉壁(鉄皮)に取り付けられるため、熱による損傷を抑えることができる材質で構成されることが好ましく、例えば、SUS310S、SUS304などの耐熱性ステンレスにより構成することが好ましい。
【0049】
その後、
図2(a)に示すように、側面を同様のサイズの抑え板16で抑え、該抑え板16を介して、圧縮梱包機等により無機繊維集合体のマット11の積層方向に所定の厚みまで圧縮して、バンド18により固定する。バンド18は、断熱ブロック10を所定の寸法に圧縮し固定するために使用される。バンド18の材質は、この機能を奏するのであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)バンド、ポリエチレン(PE)バンド、鉄帯等を使用することができる。
【0050】
抑え板16は、断熱ブロック10の側面に取り付けられ、バンド18で断熱ブロック10を圧縮するときに、断熱ブロック10を保護する役割を有する。なお、複数の断熱ブロック10を備える断熱ブロックユニット100を炉壁に施工した後、バンド18が切断され、抑え板18も取り除かれる。抑え板16の材質は、特に限定されず、ベニヤ板、木板、鉄板、プラスチック板、段ボール等、適宜選択することができる。抑え板16の形状は特に限定されないが、断熱ブロック10の側面形状に合わせて選択される。抑え板16の大きさは、特に指定されないが、断熱ブロック10の大きさよりも少し小さいことが好ましい。
【0051】
その後、無機繊維集合体のマット11から突出しているビーム14の刃142に、ブロック固定用金具12を取り付ける。例えば、ブロック固定用金具12に設けたスリット124に、ビーム14の刃142を通して、該刃を折り曲げて溶接やビスで止めることによりブロック固定用金具12をビーム14に固定することができる。
【0052】
(連結ユニット20)
本発明の断熱ブロックユニット100は、上記した断熱ブロック10のブロック固定用金具12同士を、連結ユニット20で連結することにより形成することができる。
連結ユニット20の形状は、ブロック固定用金具12同士を連結することができる形状であれば、特に限定されないが、例えば、
図4(a)に示すような、ブロック固定用金具12と同一方向に延びる長尺部材とすることができる。
連結ユニット20の材質は、強度と耐熱性の観点から、SUS310S、SUS304等の耐熱ステンレスとすることが好ましい。
【0053】
また、連結ユニット20は、ブロック固定用金具12と連結すべく、長手方向断面形状が、
図4(b)(c)に示すように、ブロック固定用金具12を覆うように形成されている。
図4(b)が、ブロック固定用金具12Aに対応し、
図4(c)が、ブロック固定用金具12Bに対応する。このような断面形状とすることにより、連結ユニット20とブロック固定用金具12とを接続しつつ、互いをスライドさせることで、互いの距離を自在に調整することが可能となる。なお、
図4に示した形状はあくまで例示であり、同様の機能を有するのであれば、他の形状であっても構わない。
【0054】
図4(a)に示した連結ユニット20では、連結ユニット20の内部に、隣接するブロック固定用金具12を、連結ユニット20の両側から挿入し、連結ユニット20の内部において、隣接するブロック固定用金具12同士の距離を、自在に調整可能である。これにより、断熱ブロック10同士の距離を、所望の距離に調整して、断熱ブロックユニット100を形成することが可能となる。
【0055】
図4(a)に示した連結ユニット20の両端部には、ブロック固定用金具12に形成したスタッドに接続するための凹状切り欠き22が形成されている。この凹状切り欠き22をスタッドに接続させ、ナットで固定することで、断熱ブロック10と連結ユニット20とを固定することができる。なお、この場合、連結ユニット20の長手方向の長さが、断熱ブロック同士の距離を規定することになるので、連結ユニット20の長手方向の長さを調整することで、断熱ブロック10同士の距離を調整可能となる。
【0056】
連結ユニット20の他の形態としては、例えば、凹状切り欠き22を有するスライド部と、該スライド部がスライド可能に挿入される基部とを有する形態とすることも可能である。この場合は、基部の両端に二つのスライド部がスライド自在に挿入され、また、ブロック固定用金具12がスライド部にスライド自在に挿入される。また、断熱ブロック10のサイズに応じて、スライド部を基部に対してスライドさせることで、1つの連結ユニット20で、断熱ブロック10のサイズ違いに対応可能となる。スライド部と基部とは、サイズ調整した後、溶接により固定される。
【0057】
また、連結ユニット20の他の形態としては、1対の凹状切り欠き22間距離が異なる、複数の連結ユニット20が準備される形態とすることも可能である。この場合は、断熱ブロック10のサイズに応じて、適切な凹状切り欠き22間距離の連結ユニット20を選択することで、断熱ブロック10のサイズ違いに対応可能となる。
【0058】
なお、上記いずれの場合であっても、連結ユニット20を断熱ブロック10に固定した段階で、断熱ブロックユニット100における断熱ブロック10間に隙間があっても、バンド18を外した後、無機繊維集合体のマット11の反発力で隙間は埋めることが可能である。
【0059】
図5(a)、(b)に示すように、連結ユニット20とブロック固定用金具12とは一体化されていてもよい。
図5(a)のように、一つのブロック固定用金具12と一つの連結ユニット20とを一体化させてもよいし、
図5(b)のように、一つのブロック固定用金具12と二つの連結ユニット20とを一体化させてもよし、あるいは、一つのブロック固定用金具12と3つの連結ユニット20とを一体化させてもよいし、一つのブロック固定用金具12と4つの連結ユニット20とを一体化させてもよい。
【0060】
図5(c)に示すように、隣接するブロック固定用金具12が連結ユニット20を有しているかどうかにより、適宜一体化させるかどうかを決定すればよい。一体化方法は、特に限定されず、別部材のブロック固定用金具12と連結ユニット20とを溶接により接続させても構わないし、あるいは、当初から一部材として形成しても構わない。
【0061】
<断熱ブロックユニット100の製造方法>
以下、断熱ブロックユニット100の製造方法について、各工程別に説明する。
【0062】
(断熱ブロック10を複数準備する工程)
断熱ブロック10を複数準備する工程においては、上記した方法に従って、断熱ブロック10を複数個作製して、以下の工程にて必要とされる個数の断熱ブロックを準備する。また、複数の連結ユニットも準備する。
【0063】
(断熱ブロックの個数と組み合わせを決定する工程)
すでに炉殻に設置してある断熱ブロックにおいて、補修が必要とされる断熱ブロックの形状に合わせて、必要な形状と面積となるように、断熱ブロック10の個数と形状(組み合わせ)を決定する。
断熱ブロック10の個数と組み合わせは特に限定されず、
図1(a)に示したような3×3の形状のような、各大きさの正方形あってもよいし、例えば、1×3、2×3、2×6のような長方形であってもよい。あるいは、角の一部を欠いた形状であってもよいし、中心部を欠いた形状であってもよく、複雑な形状であっても適宜対応可能である。
【0064】
(ブロック固定用金具12同士を連結ユニット20により連結する工程)
図4(a)の形状の連結ユニット20の場合、ブロック固定用金具12を連結ユニット20の両端から内部に挿入し、連結ユニット20の凹状切り欠き22をブロック固定用金具12のスタッドに固定することで、断熱ブロック10同士を連結することができる。
図4(a)の形状の連結ユニット20の場合は、該連結ユニット20の長手方向長さにより、連結する断熱ブロック10同士の距離が規定されるが、連結ユニット20とブロック固定用金具12とを、例えば、連結ユニット20に設けたストッパーなどで、ブロック固定用金具12のスライドを規制することで、連結する断熱ブロック10同士の距離を規定してもよい。
【0065】
また、
図1(b)に示すように、断熱ブロックユニット100は、その側面を抑え板120で抑えた状態で、不図示のバンドで固定することで、形状を保持し、また、外部の衝撃等から保護することが可能である。抑え板120は、上記した抑え板16と同様の材料で形成可能である。また、この抑え板120は、断熱ブロックユニット100を炉殻に施工した後に、引き抜かれるが、その際の引き抜きを容易にすべく、引き出し用バンド130を設置してもよい。
【0066】
<断熱ブロックの施工方法>
(断熱ブロックユニット100を炉殻に設置する工程)
上記した本発明の断熱ブロックユニット100を、炉殻に設置することで、炉殻に断熱ブロック10を効率よく施工することが可能となる。
【0067】
本発明の断熱ブロックユニット100は、従来の鉄皮を備えた断熱ブロックパネルに比較して軽量であるので、チェーンブロックを使用して引き上げることが可能であり、簡易で安全な方法で、炉の天井に設置することが可能となる。
断熱ブロックユニット100を引き上げる際には、例えば、
図6に示したように、ブロック固定用金具12に設けたスタッド126に吊り上げ用の部材(例えば、アイナット140)を設置して、これを利用して、吊り上げることが可能である。
そして、炉殻に設けた孔に、スタッド126を通し、炉殻の外から、スタッド126をナット等で固定することで、断熱ブロックユニット100を炉殻に設置することができる。
また、炉殻と断熱ブロックユニット100との間には、断熱性を付与して、より炉殻を保護すべく、断熱マット120を設置してもよい。
【0068】
<断熱壁>
上記したように、本発明の断熱ブロックユニット100を炉殻に設置することで、断熱壁が形成される。従来のように、個々の断熱ブロック10を複数回にわたって、設置する手間が省けるので、炉殻に効率的に、断熱壁を形成可能である。
ここで、断熱壁は、加熱炉中のいずれの壁面に設置してもよく、例えば、炉の天井であっても、側面であっても構わない。特に、炉の天井に断熱壁を設置する場合、あるいは、天井部分の断熱壁を補修する場合においては、断熱材の吊り上げ作業が必須となる。このような吊り上げ作業の回数を減らし、簡易化することは、作業を大きく効率化させることになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の断熱ブロックユニット100によれば、鉄皮が存在する加熱炉における、断熱壁の補修作業において、特に、加熱炉の天井側の断熱壁の補修作業において、より簡便な補修作業を提供し得る。
【符号の説明】
【0070】
100:断熱ブロックユニット
10:断熱ブロック
11:折りたたまれた無機繊維集合体のマット
12:ブロック固定用金具
14:ビーム
15:ガイドパイプ
20:連結ユニット
【要約】
【課題】鉄皮が存在する加熱炉における、断熱壁の補修作業において、特に、加熱炉の天井側の断熱壁の補修作業において、より簡便な補修作業を提供し得る、断熱ブロックユニットを提供する。
【解決手段】積層された無機繊維集合体のマット、および、炉壁に接する側にブロック固定用金具を備えてなる断熱ブロックを複数備え、前記複数の断熱ブロックにおける前記ブロック固定用金具同士を、連結する連結ユニットを備える、断熱ブロックユニット。
【選択図】
図1