IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭興株式会社の特許一覧

特許7617681導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム
<>
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図1
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図2
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図3
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図4
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図5
  • 特許-導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20250110BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20250110BHJP
【FI】
E04F13/07 Z
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024077799
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593082036
【氏名又は名称】旭興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 将吾
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033317(JP,A)
【文献】特開2000-075780(JP,A)
【文献】特開2016-212664(JP,A)
【文献】特開平06-166996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00 - 13/30
E04F 15/00 - 15/22
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内部の面の状態を導出する導出装置を用いた導出システムであって、
建物の間取りを示す間取り情報を取得する取得手段と、
間取り及び光と、建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態とを関係付けて記憶するモデルと
を備え、
前記導出装置は、
前記取得手段が取得した間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態を導出する状態導出手段を備える
ことを特徴とする導出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の導出システムであって、
建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態と、仕上方法とを対応付けて記憶しているデータベースを更に備え、
前記状態導出手段が導出した建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態に基づいて、前記データベースを参照し、建物内部の仕上材を貼付する下地面に対する仕上方法を導出する仕上導出手段を備える
ことを特徴とする導出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の導出システムであって、
前記建物内部の仕上材を貼付する下地面は、壁面、床面及び天井面のうちの少なくとも一つを含み、
前記仕上方法は、仕上材を貼付する下地面を覆う仕上材、仕上職人及び仕上日数のうちの少なくとも一つの要素を含む
ことを特徴とする導出システム。
【請求項4】
請求項2に記載の導出システムであって、
前記建物内部の仕上材を貼付する下地面は、壁面であり、
前記建物内部の面の状態は、壁面の不陸であり、
前記仕上方法は、仕上材を貼付する下地面を覆う壁紙を、分級された複数の級に基づいて選択する処理を含む
ことを特徴とする導出システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導出システムであって、
前記取得手段は、
対象を撮像する撮像部にて、間取りを記載した伏図を撮像することにより、画像情報として間取り情報を取得する
ことを特徴とする導出システム。
【請求項6】
建物内部の面の状態を導出する導出装置を用いた導出方法であって、
建物の間取りを示す間取り情報を取得し、
間取り及び光と、建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態とを関係付けて記憶するモデルを参照し、取得した間取り情報に基づいて、光が照射された状態で視認される建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態を導出する
ことを特徴とする導出方法。
【請求項7】
建物の間取りを示す間取り情報を取得する手段と、
間取り及び光と、建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態とを関係付けて記憶するモデルにアクセスする手段と、
間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態を導出させる手段と
を備えることを特徴とする導出装置。
【請求項8】
コンピュータに、
間取り及び光と、建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態とを関係付けて記憶するモデルにアクセスし、
建物の間取りを示す間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の仕上材を貼付する下地面の状態を導出させるステップを実行させる
ことを特徴とする導出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、建物に関する状態を導出する導出システム、導出方法、取得装置及びコンピュータプログラムを開示する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装において、建物内の壁、床、天井等の下地面に、壁紙、床材、化粧板等の仕上材を貼付して、意匠性、機能性を向上させる施行が行われている(例えば、特許文献1参照。)。仕上材の貼付は、下地面の不陸、ジョイント等の凹凸を隠すこともできる。しかしながら、壁、床、天井等の下地面の凹凸を隠すために壁紙、床材、化粧板等の仕上材を選択することは容易ではない。一般的に、壁紙を選定する際、建築事業体の担当者と、施主とが協議し、価格、意匠性等の事項を重視して選定する。ただし、選定した仕上材が下地面にあっていない場合、工事後、凹凸が浮き出る場合もあり、その際には、貼り替え工事等の追加工事の必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-033781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕上材の選定ミスが生じる要因として、斜光(太陽光)、照明光等の光の当たり方によって、建築中は目立たなかった凹凸が浮き出る状況が生じ得ることを挙げることができる。
【0005】
本願は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、建物の間取り及び光の関係を考慮して、建物内部の面の状態を導出する導出システム及び導出方法の開示を主たる目的とする。
【0006】
また、本願は、本願開示の導出システムに用いられる導出装置の提供を他の目的とする。
【0007】
また、本願は、本願開示の導出装置を実現するための導出プログラムの提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願開示の導出システムは、建物内部の面の状態を導出する導出装置を用いた導出システムであって、建物の間取りを示す間取り情報を取得する取得手段と、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルとを備え、前記導出装置は、前記取得手段が取得した間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出する状態導出手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記導出システムにおいて、建物内部の面の状態と、仕上方法とを対応付けて記憶しているデータベースを更に備え、前記状態導出手段が導出した建物内部の面の状態に基づいて、前記データベースを参照し、建物内部の面の仕上方法を導出する仕上導出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記導出システムにおいて、前記建物内部の面は、壁面、床面及び天井面のうちの少なくとも一つを含み、前記仕上方法は、面を覆う仕上材、仕上職人及び仕上日数のうちの少なくとも一つの要素を含むことを特徴とする。
【0011】
また、前記導出システムにおいて、前記建物内部の面は、壁面であり、前記建物内部の面の状態は、壁面の不陸であり、前記仕上方法は、面を覆う壁紙を、分級された複数の級に基づいて選択する処理を含むことを特徴とする。
【0012】
また、前記導出システムにおいて、前記取得手段は、対象を撮像する撮像部にて、間取りを記載した伏図を撮像することにより、画像情報として間取り情報を取得することを特徴とする。
【0013】
更に、本願開示の導出方法は、建物内部の面の状態を導出する導出装置を用いた導出方法であって、建物の間取りを示す間取り情報を取得し、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルを参照し、取得した間取り情報に基づいて、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出することを特徴とする。
【0014】
更に、本願開示の取得装置は、建物の間取りを示す間取り情報を取得する手段と、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルにアクセスする手段と、間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出させる手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
更に、本願開示の導出プログラムは、コンピュータに、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルにアクセスし、建物の間取りを示す間取り情報に基づいて、前記モデルを参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出させるステップを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願開示の導出システム等は、取得した間取り情報に基づいて、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出する。これにより、本願開示の導出システム等は、光の状況を考慮した建物内部の面の状態を導出することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願開示の導出システムのシステム構成の一例を概念的に示す説明図である。
図2】本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本願開示の導出システムが備える導出装置及び取得装置の導出処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本願開示の導出システムが備える取得装置の表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
図6】本願開示の導出システムが備える取得装置の表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
<適用例>
本願開示の導出システムは、床面、壁面、天井面等の建物内部の面の状態、例えば、不陸、ジョイント等の凹凸の状態を導出する。そして、本願開示の導出システムは、床面、壁面、天井面等の下地面に対し、面を覆う床材、壁紙、化粧板等の仕上材、仕上職人の選定等の仕上方法の選定に用いられる。以下では、図面を参照しながら、図面に記載された導出装置1を用いた導出システムを例示して説明する。
【0020】
<システム構成>
図1は、本願開示の導出システムのシステム構成の一例を概念的に示す説明図である。本願開示の導出システムは、導出装置1、並びに導出装置1と通信可能な推論装置2、記憶装置3、取得装置4等の各種装置を用いて実現される。導出装置1は、サーバコンピュータ等のコンピュータを用いた装置であり、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network )、専用通信網、インターネット等の通信網NWに接続されている。推論装置2は、推論サーバコンピュータ等のコンピュータを用いた装置であり、通信網NWに通信可能に接続されている。記憶装置3は、データベースサーバコンピュータ等のコンピュータを用いた装置であり、通信網NWに通信可能に接続されている。取得装置4は、例えば、建築関係の事業体に属する従業員、建物に関する意匠を検討する施主等の使用者が使用する装置である。取得装置4は、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、高機能携帯電話(所謂、スマートフォン)等のコンピュータを用いた装置であり、通信網NWを介して通信することが可能である。図1に例示する本願開示の導出システムは、取得装置4にて、建物の間取りを示す伏図を撮像し、学習モデルを用いたAI(Artificial Intelligence )により、壁面に適した壁紙の候補を表示するシステムとして実装した例を示している。
【0021】
<装置のハードウェア構成>
次に、本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の構成について説明する。図2は、本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の構成例を示すブロック図である。図2は、主として、導出装置1、推論装置2及び記憶装置3の構成例を示している。導出装置1は、制御部10、記憶部11、通信部12等の各種構成を備えている。
【0022】
制御部10は、装置全体を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等のプロセッサであり、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備えている。
【0023】
記憶部11は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks )、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される記憶用ユニットである。記憶部11には、基本プログラム(OS:Operating System)、基本プログラム上で動作する応用プログラム(アプリケーションプログラム)等のコンピュータプログラムが記録されている。応用プログラムの一つとして、記憶部11には、導出装置1を実現するための導出プログラム110が記憶されている。
【0024】
通信部12は、LANポート等の通信用ユニットであり、ルータ、ゲートウェイ等の通信装置を介して通信網NWに接続し、通信網NWを介して各種装置と通信することが可能である。
【0025】
以上のように構成されたサーバコンピュータ等のコンピュータは、制御部10の制御により、記憶部11に記憶された導出プログラム110等のプログラムを読み取り、各種プログラムに含まれている各種ステップを実行することにより、導出装置1として動作する。
【0026】
推論装置2は、制御部20、記憶部21、通信部22等の各種構成を備えている。推論装置2の記憶部21には、学習済みモデル210、学習済みモデル210の使用のための推論API(Application Programming Interface)、その他推論用の各種ライブラリ等の各種プログラム及びデータが記憶されている。学習済みモデル210は、教師あり学習等の学習方法により得られたモデルであり、建物の間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関連付けた各種パラメータ等の情報が記憶されている。学習済みモデル210は、例えば、面材に不陸を模した凹凸を形成し、様々な方向から様々な波長の光を照射し、様々な方向から視認した状態を学習して生成される。また、例えば、学習済みモデル210は、モデルハウス、実験用家屋、実際の建物等の建物の壁、床、天井等の面に対し、様々な方向から、自然光、人工光等の様々な光を照射し、様々な角度から視認した状態を学習して生成される。目的変数となる面の状態は、複数段階に分級されたレベルとして扱われる。
【0027】
記憶装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32等の各種構成を備えている。記憶装置3の記憶部31には、建物、仕上方法等の様々なデータを記憶するデータベース310が記憶されている。仕上方法は、面を覆う仕上材、仕上材による仕上作業を行う仕上職人、仕上職人が仕上作業に要する仕上日数等の要素を含んでいる。仕上方法に含まれる仕上材は、例えば、壁面を覆う壁紙、床面を覆う床材、天井面を覆う化粧板等の面を覆う仕上材を示す仕上材情報を、複数段階に分級して記憶されている。仕上材情報にて示される仕上材は、面の凹凸のレベルに対応可能な級に分級されている。具体的には、レベル毎の凹凸を隠せる級が対応可能な級となる。例えば、凹凸が大きい面に対しては、厚みが大きい素材を用いた仕上材が対応可能な級として分級される。仕上方法に含まれる仕上職人は、例えば、仕上作業に関する技能に応じて分級した職人を示す職人情報として記憶されている。仕上方法に含まれる仕上日数は、面の凹凸レベルと仕上職人との関係を示しており、ある凹凸レベルの面に対して、ある級の職人が仕上作業を行った場合に要する日数を示す日数情報として記憶されている。
【0028】
導出装置1は、推論装置2及び記憶装置3にアクセスし、推論装置2の学習済みモデル210及び記憶装置3のデータベース310を使用することが可能である。
【0029】
図3は、本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の構成例を示すブロック図である。図3は、主として取得装置4の構成例を示している。図3は、タブレット型コンピュータ等のコンピュータを用いた取得装置4の構成を例示している。取得装置4は、制御部40、記憶部41、表示部42、操作部43、撮像部44、位置取得部45、方向取得部46、通信部47等の各種構成を備えている。制御部40は、プロセッサである。記憶部41は、各種プログラム及びデータ等の情報を記憶する記憶用ユニットである。
【0030】
表示部42は、液晶モニタ等の画像表示用の出力インターフェースである。操作部43は、タッチパネル、キーボード等の操作入力を受け付ける入力インターフェースである。また、表示部42及び操作部43は、液晶モニタ及びタッチパネルを重畳して一体化した液晶タッチパネルとして構成することも可能である。撮像部44は、撮像素子を用いたカメラ等の光の入力に用いる入力インターフェースであり、撮像により静止画、動画等の画像情報を生成する。
【0031】
位置取得部45は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位システム)衛星等の人工衛星と通信するアンテナを有し、GNSS衛星との通信に基づいて取得装置4の位置を示す位置情報を取得し、処理する位置センサである。方向取得部46は、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサ等のセンサを用い、取得装置4が向かっている方向、例えば、撮像部44が撮像する仰角及び方角等の方向を検出する方向センサである。通信部47は、アンテナ及び付属機器等の通信用ユニットであり、無線通信網を介して通信網NWに接続する。
【0032】
<装置のソフトウェア処理>
次に、本願開示の導出システムにて用いられる各種装置の処理について説明する。図4は、本願開示の導出システムが備える導出装置1及び取得装置4の導出処理の一例を示すフローチャートである。使用者は、取得装置4を操作し、建物の間取りを取得する操作を行う。例えば、図3に例示したタブレット型コンピュータの場合、使用者は、対象となる建物の間取りを記載した伏図を撮像する操作を行う。伏図には、壁等の面の位置を示す建物の間取りの他、方角、扉及び窓の位置及び大きさ、照明の種類及び設置位置、周囲の建物の状況等の光の種類及び照射方向を推認可能な情報が含まれる。操作を受け付けた取得装置4は、制御部40の制御により、導出処理を実行する。
【0033】
取得装置4の制御部40は、撮像部44にて、間取りを記載した伏図を撮像し(ステップS1)、撮像に基づく静止画等の画像情報を生成し、画像情報として間取り情報を取得する(ステップS2)。ステップS2で取得する間取り情報は、実際の建物内部を撮像して得られた静止画、動画等の画像情報であってもよい。実際の建物内部を撮像した画像情報を用いる場合、取得装置4は、画像情報に、撮像日時、位置取得部45にて取得された位置、方向取得部46にて取得された方向等の情報を付与して間取り情報を生成する。取得装置4を、デスクトップ型のパーソナルコンピュータを用いて構成する場合、間取り情報の取得は、スキャナ等の読取装置を用いた画像の読み取り、他の装置又は半導体メモリ等の記憶媒体からの間取り情報の読み取り等の処理であってもよい。また、他の装置又は記憶媒体から間取り情報を読み取る場合、間取り情報は、画像情報に限らず、CADデータ、3Dプリンタ用データ等の間取りを再現することが可能な情報であればよい。
【0034】
取得装置4の制御部40は、取得した間取り情報を、通信部47により、通信網NWを介して導出装置1へ送信する(ステップS3)。
【0035】
導出装置1は、記憶部11に記憶されている導出プログラム110等の各種プログラムを読み取り、制御部10の制御にて各種プログラムに含まれるステップを実行することにより、以降に例示する導出処理を実行する。導出装置1の制御部10は、取得装置4から送信された間取り情報を通信部12にて受信することにより、間取り情報を取得する(ステップS4)。
【0036】
制御部10は、推論装置2にアクセスし、取得した間取り情報に基づいて、学習済みモデル210を参照し、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出する(ステップS5)。ステップS5の面の状態の導出は、学習済みモデル210を参照したAI処理により、間取り情報から建物内部の壁面、床面、天井面等の面の状態を導出する処理である。面の状態は、面の表面の凹凸を複数段階に分級したレベルとして導出される。なお、視認される状態は、外部から自然光が照射される場合は、季節及び時刻により、状態が変化し、人工光が照射される場合は、どの照明からどのような光が照射されるかにより、状態が変化する。また、視認される状態は、視認する方向によっても変化する。そこで、導出装置1は、ステップS5において、最も凹凸がはっきりと視認される状況に応じた面の状態を導出する。
【0037】
制御部10は、記憶装置3にアクセスし、導出した建物内部の面の状態に基づいて、データベース310を参照し、建物内部の面の仕上方法を導出する(ステップ6)。ステップS6の仕上方法の導出は、ステップS5にて導出した面の状態のレベルに応じ、凹凸を隠せる級の仕上材が導出され、更に、レベルに応じた級の仕上職人及びその職人の仕上作業に必要な日数が導出される。導出される仕上方法は、対応可能な仕上材及び仕上職人のリストとして導出される。例えば、凹凸が小さいレベル1の面に対しては、分級された複数の仕上材のうちから、薄手の素材を用いた隠蔽性の低い1級以上の仕上材が選択され、凹凸が大きいレベル3の面に対しては、隠蔽性の高い3級以上の仕上材が選択される。また、凹凸が大きい程又は隠蔽性が低い仕上材が選択される程、仕上職人は高い級が必要となる。更に、壁のレベル、仕上材の級及び仕上職人の級が決定すると、それらの関係から日数が導出される。仕上方法の導出は、面の状態と組み合わせた選択リストとして導出してもよく、また、例えば、仕上材の選択候補、職人の選択候補と順次出力し、選択に応じて次の仕上方法を導出して提示するようにしてもよい。
【0038】
制御部10は、ステップS5にて導出した面の状態を示す状態情報と、ステップS6にて導出した仕上材を示す仕上材情報、仕上職人を示す職人情報、仕上日数を示す日数情報等の仕上情報とを通信部12から、通信網NWを介して取得装置4へ送信する(ステップS7)。
【0039】
取得装置4の制御部40は、通信部47により、状態情報及び仕上情報を受信し(ステップS8)、受信した状態情報及び仕上情報を表示部42に表示する(ステップS9)。ステップS9における状態情報及び仕上情報の表示は、建物内部の面、面の状態及び仕上情報を対応付けて視認できるように表示する。建物内部の面を示す情報に対応付けて、面の状態及び仕上情報をリストとして表示するようにしてもよいが、直感的に視認できるように、間取り情報に対応付けて表示するようにしてもよい。また仕上情報の表示に際し、使用者が、面及び仕上材を選択する入力を行い、入力を受け付けた取得装置4が選択された面に、選択された仕上材を使用することの適否について判定し、仕上材が好適な場合に、職人情報、日数情報等の他の仕上情報のリストを表示するようにしてもよい。
【0040】
図5及び図6は、本願開示の導出システムが備える取得装置4の表示部42に表示される画像の一例を示す説明図である。図5は、取得装置4が取得した間取り情報を示す画像であり、図6は、間取りに、面の状態及び仕上情報を重畳した状態を示す画像である。取得装置4は、間取り情報を取得することにより、図5に例示する画像を表示する。図5に示す状態から、使用者が、間取りに示された壁面、床面、天井面等の面を指定する操作を行った状態の画像が図6である。図6に例示するように、使用者が、特定の面を指定する操作を行うことにより、指定された面に対応する状態情報に基づく面の状態と、仕上情報に基づく壁紙等の仕上材のリストとが表示される。更に、使用者は、仕上材のリストから、仕上材を指定する操作を行うことにより、指定された仕上材の級に応じた職人のリストが表示される。更に、使用者は、職人のリストから職人を指定する操作を行うことにより、必要な作業日数が表示される。取得装置4は、仕上情報として、仕上材情報、職人情報及び日数情報を表示する際、導出装置1から受信した選択リストに基づいて、各種情報を表示することになるが、使用者から指定を受ける都度、導出装置1にアクセスして情報を表示するようにしてもよい。また、取得装置4は、使用者が施主である場合、面の状態を表示せずに、仕上情報のみを表示するようにしてもよい。
【0041】
以上のようにして、本願開示の導出システムが備える導出装置1及び取得装置4は、導出処理を実行する。
【0042】
以上のように本願開示の導出システムは、建物の間取りに基づいて、光が照射された状態で視認される壁面、床面、天井面等の面における凹凸等の状態を導出する。状態の導出は、予め、実験、実測等の結果を教師あり学習等の学習方法にて生成した学習済みモデル210等のモデルを用いて行う。更に、導出システムは、壁紙、床材、化粧板等の複数の仕上材のうちから、面の状態に応じて選択される仕上材等の仕上情報を導出する。これにより、本願開示の導出システムは、建物の間取りに基づいて、建物の面の状態を提示することが可能であり、更に、面毎に適切な仕上材等の仕上情報を提示することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0043】
更に、本願開示の導出システムは、仕上方法として、仕上職人、作業日数等の情報も提示することが可能である。しかも、本願開示の導出システムは、間取りに重畳して、面の状態及び仕上情報を表示することで、直感的に状態を把握することができるユーザーインターフェースを提供することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0044】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0045】
例えば、前記実施形態では、導出装置1、推論装置2、記憶装置3及び取得装置4を用いた導出システムを例示したが、本願開示の導出システムは、これに限らず、様々なシステム構成を行うことが可能である。例えば、本願開示の導出システムは、取得装置4及び導出装置1を1台の装置で構成し、更には、その装置に推論装置2及び記憶装置3の機能の一部又は全部を付加する等、様々な構成で実現することが可能である。また、例えば、本願開示の導出システムは、取得装置4を連携させた複数の装置で構成することも可能である。
【0046】
また、例えば、前記実施形態では、AIを用いて推論する形態を示したが、本願開示の導出システムは、これに限るものではなく、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルを用いるのであれば、様々な形態に展開することが可能である。例えば、本願開示の導出システムは、説明変数となる間取り及び光に関する情報を数値化して説明変数とし、面の状態を数値化した目的変数とし、多変量解析を行った結果に基づくモデルを用いて実現する等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 導出装置
10 制御部
11 記憶部
110 導出プログラム
12 通信部
2 推論装置
20 制御部
21 記憶部
210 学習済みモデル
22 通信部
3 記憶装置
30 制御部
31 記憶部
310 データベース
32 通信部
4 取得装置
40 制御部
41 記憶部
42 表示部
43 操作部
44 撮像部
45 位置取得部
46 方向取得部
47 通信部
NW 通信網
【要約】
【課題】建物の間取りに基づいて、建物内部の面の状態を導出することが可能な導出システム、導出方法、導出装置及び導出プログラムを提供する。
【解決手段】導出システムは、建物の間取りを示す間取り情報を取得し(ステップS1,S4)、間取り及び光と、建物内部の面の状態とを関係付けて記憶するモデルを参照し、取得した間取り情報に基づいて、光が照射された状態で視認される建物内部の面の状態を導出する(ステップS5)。更に、導出システムは、建物内部の面の状態と、仕上方法とを対応付けて記憶しているデータベースを参照し、導出した建物内部の面の状態に基づいて、建物内部の面の仕上方法を導出する(ステップS6)。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6