(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】リング綴じ製本物の反転方法および装置
(51)【国際特許分類】
B42D 5/04 20060101AFI20250110BHJP
B42B 5/08 20060101ALI20250110BHJP
B42C 99/00 20060101ALI20250110BHJP
B25J 13/00 20060101ALN20250110BHJP
【FI】
B42D5/04 A
B42D5/04 J
B42B5/08
B42C99/00
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2024185826
(22)【出願日】2024-10-22
【審査請求日】2024-10-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518153346
【氏名又は名称】株式会社ウエーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】白子 善久
(72)【発明者】
【氏名】白子 なおみ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6789575(JP,B2)
【文献】特開昭52-139521(JP,A)
【文献】特開2012-144046(JP,A)
【文献】特開2003-264215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 5/04
B42B 5/08- 5/12
B42B 9/00- 9/06
B42C 19/00-19/08
B42C 99/00
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙に複数の用紙が積層されてリング状綴じ具により綴じられたリング綴じ製本物の前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させる方法であって、
前記台紙の一方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物を搬入部に搬入する搬入工程と、
搬入された前記リング綴じ製本物の前記台紙における前記リング状綴じ具と反対側の縁部を、多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックにより把持する把持工程と、
前記チャックの移動により、複数の前記用紙を前記リング状綴じ具から自重により垂下させた状態で前記チャック側の前記用紙を係合部材に係合させる係合工程と、
前記チャックを前記係合部材から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、複数の前記用紙を回動させて前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転する反転工程と、
前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で前記リング綴じ製本物を搬出部に載置する搬出工程とを備えるリング綴じ製本物の反転方法。
【請求項2】
前記反転工程は、前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させた後に、前記チャックを前記係合部材の下方に向けて押し込む工程を備える請求項1に記載のリング綴じ製本物の反転方法。
【請求項3】
前記搬入工程は、前記台紙に積層された前記用紙に対してエアを噴射する工程を備える請求項1に記載のリング綴じ製本物の反転方法。
【請求項4】
前記係合部材は、水平な回転軸周りに回転自在に支持されたローラである請求項1に記載のリング綴じ製本物の反転方法。
【請求項5】
台紙に複数の用紙が積層されてリング状綴じ具により綴じられたリング綴じ製本物の前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させる装置であって、
前記台紙の一方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物が搬入される搬入部と、
搬入された前記リング綴じ製本物の前記台紙における前記リング状綴じ具と反対側の縁部を、アーム先端に設けられたチャックにより把持する多関節ロボットと、
前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物が搬出される搬出部と、
前記チャックに把持された前記リング綴じ製本物の前記用紙を係合させることができる係合部材とを備え、
前記多関節ロボットは、前記リング綴じ製本物を把持する前記チャックの移動により、複数の前記用紙を前記リング状綴じ具から自重により垂下させた状態で前記チャック側の前記用紙を係合部材に係合させた後、前記チャックを前記係合部材から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、複数の前記用紙を回動させて前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させて、前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で前記リング綴じ製本物を搬出部に載置するリング綴じ製本物の反転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング綴じ製本物の反転方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上カレンダーの製造においては、
図1(a)に示すように、厚紙を2つ折りにして形成された台紙2の裏面2a側に複数のカレンダー用紙4が積層された状態でリング状綴じ具6を取り付けた後、リング状綴じ具6の接着部6aがカレンダー用紙4で覆われるように、台紙2およびカレンダー用紙4をそれぞれ矢示方向に回動させて、
図1(b)に示すように、カレンダー用紙4を台紙2の表面2b側に積層することが行われている。このような台紙2に対するカレンダー用紙4の積層方向を反転させる装置として、特許文献1に開示されたリング綴じ製本物の反転装置が知られている。
【0003】
この反転装置は、搬入されたリング綴じ製本物の台紙におけるリング状綴じ具と反対側の縁部を、アーム先端に設けられたチャックにより把持する多関節ロボットを備えており、多関節ロボットが、リング綴じ製本物を起立させた状態で、台紙に対する用紙の積層方向と反対方向に向けてチャックを水平に加速させた後に減速することで用紙を慣性力により回動させて、台紙に対する用紙の積層方向を反転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の反転装置は、台紙に対する複数の用紙の積層方向を迅速に反転させることができる一方、リング綴じ製本物の大きさや重量が変化すると、それに応じてチャックの速度や加速度を調整する作業が煩雑になるおそれがあり、この点において更に改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、リング綴じ製本物の台紙に対する複数の用紙の積層方向を容易且つ確実に反転させることができるリング綴じ製本物の反転方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、台紙に複数の用紙が積層されてリング状綴じ具により綴じられたリング綴じ製本物の前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させる方法であって、前記台紙の一方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物を搬入部に搬入する搬入工程と、搬入された前記リング綴じ製本物の前記台紙における前記リング状綴じ具と反対側の縁部を、多関節ロボットのアーム先端に設けられたチャックにより把持する把持工程と、前記チャックの移動により、複数の前記用紙を前記リング状綴じ具から自重により垂下させた状態で前記チャック側の前記用紙を係合部材に係合させる係合工程と、前記チャックを前記係合部材から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、複数の前記用紙を回動させて前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転する反転工程と、前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で前記リング綴じ製本物を搬出部に載置する搬出工程とを備えるリング綴じ製本物の反転方法により達成される。
【0008】
このリング綴じ製本物の反転方法において、前記反転工程は、前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させた後に、前記チャックを前記係合部材の下方に向けて押し込む工程を備えることが好ましい。
【0009】
前記搬入工程は、前記台紙に積層された前記用紙に対してエアを噴射する工程を備えることが好ましい。
【0010】
前記係合部材は、水平な回転軸周りに回転自在に支持されたローラであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の前記目的は、台紙に複数の用紙が積層されてリング状綴じ具により綴じられたリング綴じ製本物の前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させる装置であって、前記台紙の一方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物が搬入される搬入部と、搬入された前記リング綴じ製本物の前記台紙における前記リング状綴じ具と反対側の縁部を、アーム先端に設けられたチャックにより把持する多関節ロボットと、前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で、前記リング綴じ製本物が搬出される搬出部と、前記チャックに把持された前記リング綴じ製本物の前記用紙を係合させることができる係合部材とを備え、前記多関節ロボットは、前記リング綴じ製本物を把持する前記チャックの移動により、複数の前記用紙を前記リング状綴じ具から自重により垂下させた状態で前記チャック側の前記用紙を係合部材に係合させた後、前記チャックを前記係合部材から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、複数の前記用紙を回動させて前記台紙に対する前記用紙の積層方向を反転させて、前記台紙の他方面側に前記用紙が積層された状態で前記リング綴じ製本物を搬出部に載置するリング綴じ製本物の反転装置により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリング綴じ製本物の反転方法および装置によれば、リング綴じ製本物の台紙に対する複数の用紙の積層方向を容易且つ確実に反転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の一実施形態に係るリング綴じ製本物の反転装置の平面図である。
【
図3】
図2に示すリング綴じ製本物の反転装置の要部斜視図である。
【
図4】
図2に示すリング綴じ製本物の反転装置の作動を説明するための概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係るリング綴じ製本物の反転装置の平面図である。
図2に示すように、リング綴じ製本物の反転装置10は、リング綴じ製本物1が搬入される搬入部20と、リング綴じ製本物1の反転作業を行う多関節ロボット30と、リング綴じ製本物1が搬出される搬出部40と、リング綴じ製本物1の反転に使用される係合部材50とを備えている。
【0015】
搬入部20は、傾斜面からなる保持面22と、保持面22から上方に突出するように設けられた係止部材24とを備えている。係止部材24は、保持面22の搬入方向(A方向)である傾斜方向に沿って延びる第1の板状部材24aおよびこれと直交する第2の板状部材24bからなるL字状に形成されている。リング綴じ製本物1は、コンベア26から保持面22に搬入される際に、リング状綴じ具6により綴じられた縁部が第1の板状部材24aと摺動して案内され、搬送方向先端側の縁部が第2の板状部材24bに係止される。コンベア26の上方には、複数のエアノズル28が配置されている。
【0016】
保持面22は、第2の板状部材24bに沿っても傾斜するように形成されており、リング綴じ製本物1が第1の板状部材24aおよび第2の板状部材24bの双方に係止されて、保持面22上に位置決め保持される。このように、保持面22は、水平面に対して、第1の板状部材24aおよび第2の板状部材24bの2方向に沿って傾斜しており、リング綴じ製本物1のサイズ・重量・素材、および保持面22との摩擦等の要因があっても、第1の板状部材24aと第2の板状部材24bとの接合部である基準位置に、リング綴じ製本物1の角部を確実にセットすることができる。
【0017】
多関節ロボット30は、複数のアーム32が関節を介して回動自在に連結された多軸(例えば4軸から7軸)構造を有しており、アーム32の先端には一対の爪部からなるチャック34が回動自在に取り付けられている。アーム32およびチャック34の作動は、不図示のコントローラにより制御される。
【0018】
搬出部40は、例えばベルトコンベアからなり、多関節ロボット30により反転動作が行われたリング綴じ製本物1が部分的に重なり合うように搬送面42に順次載置されて、矢示B方向に搬送される。係合部材50は、搬出部40の直上に支持されている。
【0019】
図3は、
図2に示す搬出部40および係合部材50を矢示C方向に見た斜視図である。
図2および
図3に示すように、係合部材50は、円筒状のローラからなり、搬出部40の搬送面42との間にリング綴じ製本物1が通過可能な隙間を空けて配置されている。係合部材50の回転軸50aは、搬出部40の搬送方向と直交する水平方向に延びており、搬出部40の幅方向両側から起立するブラケット52,54に、回転自在に支持されている。係合部材50は、軸方向の長さが、係合するリング綴じ製本物1の用紙4の幅よりも長くなるように形成されている。
【0020】
次に、上記の構成を備えるリング綴じ製本物の反転装置10を用いたリング綴じ製本物1の反転方法を説明する。まず、
図1(a)に示すように台紙2の裏面2a側の上方に用紙4が積層された状態のリング綴じ製本物1を、
図2に示す搬入部20に対して一定の周期で順次搬入する搬入工程を行う。この搬入工程においては、リング綴じ製本物1を搬入部20に搬入する手前で一時停止させ、台紙2に積層された用紙4に対して複数のエアノズル28からエアを噴射する工程を備えることが好ましい。複数のエアノズル28は、複数の用紙4に対して異なる方向からエアを噴射するように配置されており、用紙4の全体をエア噴射により解きほぐすことで、後述する係合工程および反転工程をスムーズに行うことができる。
【0021】
図1(a)に示すように、リング綴じ製本物1の台紙2は、リング綴じ具6により綴じられた縁部と反対側の縁部が用紙4から突出して、露出部2cが形成されている。多関節ロボット30は、搬入部20に搬入されたリング綴じ製本物1の露出部2cをチャック34により把持する把持工程を行う。
【0022】
リング綴じ製本物1のリング綴じ具6は、紙製のものに限定されず、金属製や樹脂製等であってもよい。また、リング綴じ製本物1は、台紙2に対して複数の用紙4が積層されてリング綴じされたものであればよく、卓上カレンダー以外に、リングノートや日めくり帳などを例示することができる。本実施形態のようにリング綴じ製本物1の台紙2が露出部2cを有する場合には、チャック34による台紙2の把持を容易に行うことができるが、台紙2は必ずしも露出部2cを有する必要はなく、例えば、台紙2の表面2b側の縁部を吸着等により把持することもできる。
【0023】
多関節ロボット30は、リング綴じ製本物1の台紙2を把持した後、係合工程および反転工程を行う。
図4は、
図2に示すリング綴じ製本物の反転装置の係合工程および反転工程における作動を説明するための概略工程図であり、要部を水平方向に見た図である。多関節ロボット30は、台紙2を把持したチャック34を軸周りに180度回動させながら係合部材50に向けて移動することにより、
図4(a)に示すように、台紙2を裏面2aが下方を向くように水平に保持し、複数の用紙4をリング綴じ具6から自重により垂下させた状態で、チャック34側の用紙4を係合部材50に係合させる係合工程を行う。
【0024】
次に、多関節ロボット30は、チャック34を係合部材50から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、リング綴じ具6を中心に複数の用紙4を回動させて、台紙2に対する用紙4の積層方向を反転する反転工程を行う。すなわち、
図4(a)に示すチャック34を矢示D方向に移動させることにより、
図4(b)に示すように、複数の用紙4が、係合する係合部材50から矢示方向の力を受けて回動する。
図4(b)に示す状態からチャック34を矢示E方向に更に移動させると、
図4(c)に示すように、複数の用紙4が、係合部材50から離れた後も慣性によって矢示方向への回動を継続し、用紙4が台紙2の表面2b側に移動する。こうして、台紙2の表面2b側の上方に複数の用紙4を積層する反転工程が行われる。
【0025】
係合部材50は、上記の反転工程において利用することで、リング綴じ製本物1の台紙2に対する用紙4の積層方向を容易且つ確実に反転することができる。本実施形態の係合部材50は、水平な回転軸周りに回転自在に支持されたローラであり、
図4(b)に示すように用紙4と接触している間は矢示方向に回転する。これにより、用紙4は、係合部材50から押圧力だけでなく回転力も受けて矢示方向に回動するため、用紙4の反転をより確実に行うことができる。但し、係合部材50は、必ずしもローラに限定されるものではなく、例えば、水平に固定された棒状体等であってもよい。あるいは、係合部材50を起立する板状部材として、この板状部材の上端部を用紙4と係合させることもできる。
【0026】
上記の反転工程においては、
図4(c)に示すように台紙2に対する用紙4の積層方向を反転させた後に、チャック34を矢示F方向に移動させて係合部材50の直下に向けて押し込む工程を備えることが好ましい。これにより、
図4(d)に示すように、台紙2に対する用紙4の積層方向を反転させた状態を、確実に維持することができる。
【0027】
反転工程の終了後は、チャック34の把持を解除することにより、リング綴じ製本物1を、
図2および
図3に示す搬送面42に落下させて搬出部40に載置する搬出工程を行う。こうして、リング綴じ製本物1の反転方法が終了する。
【符号の説明】
【0028】
1 リング綴じ製本物
2 台紙
2a 裏面
2b 表面
4 用紙
6 リング綴じ具
10 リング綴じ製本物の反転装置
20 搬入部
22 保持面
30 多関節ロボット
32 アーム
34 チャック
40 搬出部
50 係合部材
【要約】
【課題】 リング綴じ製本物の台紙に対する複数の用紙の積層方向を容易且つ確実に反転させることができるリング綴じ製本物の反転装置を提供する。
【解決手段】 搬入部、多関節ロボット、搬出部および係合部材を備え、多関節ロボットは、リング綴じ製本物1を把持するチャック34の移動により、複数の用紙4をリング状綴じ具6から自重により垂下させた状態でチャック34側の用紙4を係合部材50に係合させた後、チャック34を係合部材50から離隔する方向且つ下方向に移動させることにより、複数の用紙4を回動させて台紙2に対する用紙4の積層方向を反転させて、台紙2の他方面2b側に用紙4が積層された状態でリング綴じ製本物1を搬出部に載置する。
【選択図】
図4