(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】結束装置
(51)【国際特許分類】
B65B 13/24 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
B65B13/24
(21)【出願番号】P 2021118122
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591261060
【氏名又は名称】マイクロジェニックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正則
(72)【発明者】
【氏名】久保田 一也
(72)【発明者】
【氏名】菅井 重岳
(72)【発明者】
【氏名】大勝 崇外
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/084205(WO,A1)
【文献】特開2019-142576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B13/00-13/34
B65B27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレバーを握り締めることにより支軸を中心に回動する一対のアームと、結束
テープを引き出し可能に支持するテープ支持機構と、一方のアームに設けられ、前記テープ支持機構から引き出された結束テープを繰り出すテープ繰出し機構と、他方のアームに設けられ、前記テープ繰出し機構から繰り出された結束テープの端部を保持するテープ保持機構と、前記テープ繰出し機構から繰り出された結束テープの合せ部を圧着するテープ圧着機構と、を備え、前記一対のアーム間に誘引された被結束物を前記一対のアーム間に張られた結束テープにより結束させる結束装置であって、
前記テープ圧着機構は、前記一方のアームの先端部に設けられ、テープ加圧方向へ付勢される可動部と、前記他方のアームの先端部に設けられ、前記結束テープの合せ部を受けるテープ加圧部と、を有し、
前記テープ保持機構は、一方のアームの先端部に設けられる操作部と、
前記他方のアームの先端部に設けられ、前記操作部と協働するテープ押えモジュールと、を有し、
前記テープ押えモジュールは、前記操作部により押し込まれる可動部材と、該可動部材に連動して待機位置とテープ押え位置との間を移動するテープ押え部材と、機構部が収容される本体と、を有し、
前記他方のアームの先端部は、前記テープ加圧方向に対して前記支軸とは反対側へ傾斜して配置され、
前記テープ押えモジュールの本体は、前記
テープ加圧部の
下方を、前記テープ加圧部の外側から内側へ延びるようにして前記他方のアーム内に
配置されることを特徴とする結束装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結束装置であって、
前記テープ押えモジュールは、前記テープ押え部材を前記テープ押え位置へ付勢するねじりコイルばねと、前記可動部材が押し込まれた後に戻るときの、前記テープ押え部材を待機位置に保持する力を調整する保持力調整手段と、を備え、
前記保持力調整手段は、前記ねじりコイルばねの一方の腕部を前記テープ押え部材に押し付ける力を調整することにより、前記テープ押え部材の保持力を調整するように構成されることを特徴とする結束装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結束装置であって、
前記一対のアーム又は前記テープ支持機構の少なくとも一部が透明な材料により構成されることを特徴とする結束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のハンドルを握り締めると、一対のアーム間に誘引した被結束物が一対のアーム間に張られた結束テープにより結束される結束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のレバーを握り締めることにより、一対のアームが支軸を中心に回動し、一対のアーム間に誘引させた被結束物が一対のアーム間に張られた結束テープにより結束されるプライヤ型結束装置が知られている。そして、特許文献1には、第2アーム(他方のアーム)の先端部にテープ押え機構(テープ押えモジュール)が設けられた結束装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された結束装置(以下「従来の結束装置」と称する)は、テープ押え機構(テープ押えモジュール)がテープ圧着機構の第2圧着板(テープ加圧部)の外側に配置されているので、テープ押え機構の収容スペースが、第2アームの先端部外側へ突出する。これにより、従来の結束装置では、第2アームの先端部が作業者の視界を遮る。また、一対のアーム間に被結束物を誘引するとき第2アームの先端部が妨げになるため、狭い場所での作業が困難であり、作業能率が低下する。
【0005】
本発明は、作業を能率化することが可能な結束装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の結束装置は、一対のレバーを握り締めることにより支軸を中心に回動する一対のアームと、結束テープを引き出し可能に支持するテープ支持機構と、一方のアームに設けられ、前記テープ支持機構から引き出された結束テープを繰り出すテープ繰出し機構と、他方のアームに設けられ、前記テープ繰出し機構から繰り出された結束テープの端部を保持するテープ保持機構と、前記テープ繰出し機構から繰り出された結束テープの合せ部を圧着するテープ圧着機構と、を備え、前記一対のアーム間に誘引された被結束物を前記一対のアーム間に張られた結束テープにより結束させる結束装置であって、前記テープ圧着機構は、前記一方のアームの先端部に設けられ、テープ加圧方向へ付勢される可動部と、前記他方のアームの先端部に設けられ、前記結束テープの合せ部を受けるテープ加圧部と、を有し、前記テープ保持機構は、一方のアームの先端部に設けられる操作部と、前記他方のアームの先端部に設けられ、前記操作部と協働するテープ押えモジュールと、を有し、前記テープ押えモジュールは、前記操作部により押し込まれる可動部材と、該可動部材に連動して待機位置とテープ押え位置との間を移動するテープ押え部材と、機構部が収容される本体と、を有し、前記他方のアームの先端部は、前記テープ加圧方向に対して前記支軸とは反対側へ傾斜して配置され、前記テープ押えモジュールの本体は、前記テープ加圧部の下方を、前記テープ加圧部の外側から内側へ延びるようにして前記他方のアーム内に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結束装置を用いた作業を能率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第1アームの先端部に構成される部品の分解斜視図である。
【
図7】テープ押えモジュールの説明図であり、テープ押え部材がテープ押え位置(前進端位置)に位置する状態を示す図である。
【
図8】テープ押えモジュールの説明図であり、テープ押え部材が待機位置(後退端位置)に位置する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る結束装置1は、一対のレバー2,3(第1レバー2、第2レバー3)を握り締め、一対のアーム4,5(第1アーム4、第2アーム5)を支軸6の回りに回動させることにより、一対のアーム4,5間に誘引させた被結束物(図示省略)が、一対のアーム4,5間に張られた結束テープ7(
図2参照)により結束されるプライヤ型結束装置である。
【0010】
図1、
図2に示されるように、結束装置1は、テープリール(図示省略)に巻回された結束テープ7を引き出し可能に支持するテープ支持機構21と、テープガイド板28により案内された結束テープ7を繰り出すテープ繰出し機構41と、結束テープ7の合せ部(図示省略)を加圧して圧着させるテープ圧着機構51(
図3、
図4参照)と、被結束物に巻回された結束テープ7の合せ部近傍を切断するテープ切断機構61と、テープリールから引き出された結束テープ7の端部を保持するテープ保持機構71と、テープリールから引き出された結束テープ7の巻き戻りを規制するテープ規制機構91をと、を有する。
【0011】
テープ支持機構21は、第1レバー2と第1アーム4との間に形成されたテープ収容部22と、テープ収容部22内に設けられてテープリールに巻回された結束テープ7が装着されるスプール(図示省略)と、テープリールに巻回された結束テープ7をスプールに装着するときに開口されるテープカバー23と、を有する。なお、テープカバー23には、例えば、ポリカーボネート等の透明度が高いプラスチックが用いられる。
【0012】
図2に示されるように、第1アーム4には、上部側板24が取り付けられる。上部側板24は、第1アーム4に沿って延びる板金部材であり、第1アーム4の支軸6側の端部には、テープリールに巻回された結束テープ7から引き出された結束テープ7(以下「テープリールから引き出された結束テープ7」と称する)の非粘着面を支持する第1ローラ25(
図3参照)が設けられる。第1ローラ25は、プラスチック部品であり、第1シャフト26(
図3参照)により回転可能に支持される。第1シャフト26の両端部は、上部側板24により支持される。第1シャフト26の両端部には、第1シャフト26の上部側板24に対する軸線方向への移動を抑止するワッシャ27,27(
図3参照)が装着される。
【0013】
上部側板24の先端側(
図2における手前側)の端部には、テープリールから引き出された結束テープ7の幅方向両端部を案内するテープガイド板28が設けられる。テープガイド板28は、ねじ29、29により上部側板24に固定される。テープガイド板28の先端部には、テープリールから引き出された結束テープ7の非粘着面を支持する第2ローラ30(
図3参照)が設けられる。第2ローラ30は、第1ローラ25と同一のプラスチック部品であり、第2シャフト31(
図3参照)により回転可能に支持される。第2シャフト31の両端部は、上部側板24により支持される。第2シャフト31の両端部には、第2シャフト31の上部側板24に対する軸線方向への移動を抑止するワッシャ(図示省略)が装着される。
【0014】
図3、
図4に示されるように、テープ繰出し機構41は、上部側板24に取り付けられた機構取付部材42(
図3参照)に構成される。テープ繰出し機構41は、結束テープ7の非粘着面を案内する第1案内部43と、第1案内部43により案内される結束テープ7の粘着面を案内する第2案内部44と、を有する。なお、結束テープ7を指で操作して側方へスライドさせることにより、結束テープ7を第1案内部43と第2案内部44との間からテープ繰出し機構41内へ差し入れることができる。
【0015】
機構取付部材42は、板金部材であり、ねじ29,29及びねじ45,45(ねじ45は
図3に1個のみ表示)により上部側板24に固定される。第1案内部43は、板金部材であり、案内面が形成された側壁43Aに対向する側壁43Bが、後述する可動部52にねじ54により固定される。第2案内部44は、プラスチック部品であり、ねじ46により第1案内部43に固定される。なお、第1案内部43は、側壁43Bに設けられた孔47,47(
図3に1個のみ表示)に、プラスチック部品である可動部52の相対する突起53,53を嵌合させた後、突起53,53を熱溶融させることにより、可動部52に対して位置決め(回り止め)される。
【0016】
テープ圧着機構51は、第1アーム4(一方のアーム)の先端部に設けられる上部ユニット(符号省略)と、第2アーム5(他方のアーム)の先端部に設けられる下部ユニット(符号省略)と、を有する。上部ユニットは、前述した可動部52と、ねじ57,57により機構取付板42に固定され、可動部52をテープ加圧方向(
図3における上下方向)へ移動可能に支持するガイド56と、可動部52を上部側板24(ガイド56)に対して下部ユニット側へ向けて(
図3における下方向へ)付勢する圧縮コイルばね58と、を有する。可動部52の下端には、テープ押え部55が形成される。
【0017】
上部ユニットのテープ押え部55は、一対のアーム4,5が支軸6を中心に回動することにより、結束テープ7の合せ部の上から下降し、下部ユニットのテープ加圧部59に形成された角孔60(
図2参照)に突入し、結束テープ7の合せ部を保持する。なお、テープ押え部55による結束テープ7の合せ部の保持力は、圧縮コイルばね58のばね力により調節可能である。また、上部ユニットは、テープ圧着機構51を機能的に働かせるための圧着部材66を有する。
【0018】
テープ切断機構61は、先端にギザ刃が形成された切刃62を有する。切刃62は、ねじ63,63により上部側板24の先端に固定される。そして、切刃62がテープ圧着機構51のテープ受け部65(
図2参照)とテープ加圧方向(テープ加圧部59に垂直な方向であって、
図1における軸線L3方向)に擦れ違うことにより、テープ押え部55により保持された結束テープ7の合せ部近傍が切刃62により切断される。
【0019】
テープ保持機構71は、第1アーム4の先端部に取り付けられる操作部72と、第2アーム5の先端部に設けられ、操作部72と協働するテープ押えモジュール100と、を有する。操作部72は、ねじ73,73により機構取付部材42の前端に固定される。テープ押えモジュール100は、テープ圧着機構51のテープ加圧部59及びテープ受け部65により
図1における軸線L3方向への移動が抑止される。
【0020】
テープ押えモジュール100は、結束時に、第1アーム4側の操作部72により、可動部材111が本体101に押し込まれると、これがトリガーとなり、可動部材111に連動してテープ押え部材121が作動する。これにより、テープ押え部材121のヘッド先端部122がテープ受け部65のスリット(図示省略)に突入し、テープ受け部65とテープ押え部材121との間の結束テープ7の端部が保持される。他方、結束テープ7の切断時には、操作部72により可動部材111が本体101に押し込まれると、これがトリガーとなり、可動部材111に連動してテープ押え部材121が作動し、テープ押え部材121のヘッド先端部122がテープ受け部65のスリットから引き抜かれる。
【0021】
図5に示されるように、本体101は、一側(
図5における「下側」)の第1カバー102と他側の第2カバー103とに分割して構成され、内部にテープ押えモジュール100の機構部が収容される。第1カバー102は可動部材111と対向し、第2カバー103はテープ押え部材121と対向する。可動部材111とテープ押え部材121との間には案内部材131が摺動可能に設けられる。
【0022】
テープ押え部材121の基部(ヘッド先端部に対して反対側の端部)には、ピン123が挿通される長孔124が形成される。ピン123は、案内部材131に形成されたピン挿通孔132及び可動部材111に形成された長孔112に挿通され、一端(
図5における「下端」)が第1カバー102に形成されたピン嵌合孔104に嵌合される。他方、ピン123の他端は、第2カバー103に形成されたピン嵌合孔105に嵌合される。
【0023】
ピン123のテープ押え部材121と第2カバー103との間の部分の外周には、円筒形のカラー125が設けられる。カラー125は、一端面がテープ押え部材121により受けられ、他端面が第2カバー103により受けられる。カラー125の外周には、ねじりコイルばね141のコイル部142が設けられる。
【0024】
図6に示されるように、ねじりコイルばね141は、第1腕部143(一方の腕部)の先端部144が第1カバー102に形成されたばね受部106により受けられ、第1腕部143の基端部145がテープ押え部材121の基部により受けられる。他方、ねじりコイルばね141の第2腕部146は、テープ押え部材121に形成されたリブ形のばね受部126により受けられる。第1カバー102のばね受部106は、断面が逆L形に形成され、第1カバー102の側壁から第2カバー103側へ突出した第1受部107と、第1受部107の端から内側へ突出した第2受部108と、を有する。便宜上、
図6は、第2腕部146をばね受部126により受けていない状態が示されている。
【0025】
テープ押えモジュール100は、可動部材111が押し込まれた後、可動部材111がコイルばね114のばね力により戻るときの、テープ押え部材121を待機位置(後退端位置、
図8参照)に保持する力を調整する保持力調整手段を有する。保持力調整手段は、ばね受部106の第2受部108の板厚を調整、延いては第2受部108とテープ押え部材121の他側面(ばね受部126が突出する側の面)との間隔を調整することにより、ねじりコイルばね141の第1腕部143の基端部145をテープ押え部材121の基部に押し付ける力を調整するように構成される。
【0026】
図5に示されるように、テープ押え部材121の一側面(ばね受部126が突出する側とは反対側の面)の、ヘッド先端部122と長孔124との間には、第1カバー102(案内部材131)側へ突出した軸127が設けられる。軸127は、案内部材131に形成されたL形の軸係合部133を通過して、可動部材111に形成された軸係合部115に係合される。
【0027】
第1カバー102のばね受部106が形成された側とは反対側(
図6における「左側」)には、コイルばね114を収容するばね収容部109が設けられる。コイルばね114は、第1カバー102の側壁と可動部材111のばね受部113との間で圧縮され、可動部材111を本体101から突出させる方向へ付勢する。
【0028】
図3、
図4に示されるように、テープ規制機構91は、操作部72に形成されたリブ92を有する。リブ92は、略直角三角形に形成され、第2案内部44の非案内面48に対向する規制部93を有する。そして、結束テープ7の合せ部の圧着時には、リブ92は、第2案内部44に対してテープ加圧方向へ相対移動し、第2案内部44との相対移動の過程で、規制部93を第2案内部44の非案内面48に摺動させながら、第2案内部44を第1案内部43側へ押し込む。これにより、第1案内部43と第2案内部44との隙間が消滅し、第1案内部43と第2案内部44との間の結束テープ7の粘着面が、第2案内部44の案内面(非案内面48との対向面)に貼着される。なお、第2案内部44の非案内面48における、リブ92との摺動部は、リブ92の規制部93に対応する斜面又は曲面により形成される。
【0029】
図1、
図2、及び
図4に示されるように、結束装置1は、落下による地平面との衝突(衝撃)から機構部品を保護する保護部材95を有する。保護部材95は、結束装置1が想定された落下姿勢で落下したときの、結束装置1における地平面との衝突部位をカバーするように設けられる。保護部材95は、略L形に形成され、例えば、ポリカーボネート等の耐衝撃性能及び衝撃緩衝性能が高いプラスチックが用いられる。保護部材95は、アーム4の先端部に設けられた上部側板24に固定される固定部96と、アーム4の先端部に設けられた機構部品との間に一定の間隔をあけて配置される保護部97と、を有する。
【0030】
また、
図1、
図2に示されるように、結束装置1は、第1アーム4の開口部8、即ち、テープ支持機構21の第1ローラ25と第2ローラ30との間を延びる結束テープ7を蔽う上部カバー35を有する。上部カバー35の先端部36は、第1アーム4の先端部に設けられた機構部の側面を蔽う。上部カバー35は、第1アーム4にヒンジ37を介して開閉可能に取り付けられる。上部カバー35には、例えば、ポリカーボネート等の透明度が高いプラスチックが用いられる。
【0031】
本実施形態では、第2アーム5は、支持軸6から延びる金属製の基部9と、先端部に機構部品が取り付けられるアーム本体11と、を有する。第2アーム5のアーム本体11には、例えば、ポリカーボネート等の透明度及び耐衝撃性能が高いプラスチックが用いられる。アーム本体11は、第2アーム5の基部9にねじ10,10により固定される固定部12と、テープ圧着機構51のテープ加圧部59及びテープ受け部65、並びにテープ保持機構71のテープ押えモジュール100が取り付けられる取付部14と、固定部12と取付部14とをL形に接続する接続部13と、を有する。
【0032】
図1に示されるように、アーム本体11は、取付部14の軸線L2が、固定部12の軸線L1(支軸6の中心を通る第2アーム5の基部9の軸線L1)に対して略直角をなすように配置される。他方、テープ圧着機構51のテープ加圧部59に垂直な軸線L3、即ち、テープ加圧方向へ延びる直線は、取付部14の軸線L2に対して支軸6側(内側)に傾斜して配置される。換言すれば、取付部14の軸線L2は、テープ加圧部59に垂直な軸線L3に対して支軸6とは反対側(外側)へ傾斜して配置される。
【0033】
そして、テープ押えモジュール100の本体101は、アーム本体11の取付部14内に、軸線L2に沿うように配置される。これにより、テープ押えモジュール100の本体101は、テープ圧着機構51のテープ加圧部59の下方(圧着面の裏側)を、テープ加圧部59の外側から内側へ延びるようにアーム本体11の取付部14内に配置される。
【0034】
なお、テープ押えモジュール100の可動部材111の上端には、内側(支軸6側)へ延びてテープ保持機構71の操作部72が当接される当接部119が形成される。また、テープ押えモジュール100の本体101及びアーム本体11の取付部14には、組立時にテープ押えモジュール100を組付け方向(軸線L3方向)へ案内すると共に、テープ押えモジュール100のテープ受け部65に対する離反方向への移動を抑止することで結束テープ7の保持力を確保するガイド機構110が設けられる。
【0035】
次に、前述した結束装置1の動作を説明する。
まず、結束テープ7をリールテープから引き出し、テープ繰出し機構41の第1案内部43と第2案内部44との間に通した後、一対のレバー2,3を握り締めて一対のアーム4,5を支軸6の回りに回動(閉動作)させる。一対のアーム4,5を閉じてから僅かに戻すと、テープ押えモジュール100のテープ押え部材121が前進し、テープ押え部材121のヘッド先端部122が、結束テープ7の上からテープ受け部65のスリット(図示省略)に突入する。これにより、テープ繰出し機構41から突出された結束テープ7の端部が、テープ受け部65とテープ押え部材121との間で保持される。
【0036】
次に、一対のレバー2,3を完全に開いた位置まで戻すと、リールテープから引き出された結束テープ7が一対のアーム4,5間に張られる。この状態で、結束装置1を被結束物(図示省略)に向けて移動させ、一対のアーム4,5間に張られた結束テープ7を被結束物により支軸6側へ押し込む。これにより、被結束物が一対のアーム4,5間に誘引され、結束テープ7がリールテープから引き出される。
【0037】
次に、一対のレバー2,3を握り締めると、テープ圧着機構51のテープ押え部55が結束テープ7の合せ部の上からテープ圧着機構51の角孔60に突入し、被結束物に巻き付けられた結束テープ7の合せ部が保持される。これに並行して、テープ押えモジュール100のテープ押え部材121が後退し、テープ押え部材121のヘッド先端部122がテープ受け部65のスリット(図示省略)から引き抜かれる。そして、一対のアーム4,5が完全に閉じるタイミングで、結束テープ7の合せ部がテープ圧着機構51により圧着されると共に、テープ圧着機構51のテープ押え部55により保持された結束テープ7の合せ部近傍が、テープ切断機構61の切刃62により切断される。
【0038】
一方、テープ規制機構91は、結束テープ7の合せ部がテープ圧着機構51により圧着される過程で、リブ92によりテープ繰出し機構41の第2案内部44が押し付けられると、第1案内部43と第2案内部44との隙間が狭められる。これにより、第1案内部43と第2案内部44との間にある結束テープ7の粘着面が第2案内部44の案内面に貼着し、結束テープ7は、端部(テープ押え部材121の押え代)がテープ繰出し機構41から突出された状態で、テープ繰出し機構41内で保持される。
【0039】
そして、連続して結束作業を行うため、一対のレバー2,3を操作してテープ保持機構71により結束テープ7の端部を保持するとき、結束テープ7の端部は、テープ受け部65のスリット(図示省略)に対向する位置にある。この状態で、テープ押え部材121のヘッド先端部122をテープ受け部65のスリットに突入させることにより、テープリールから引き出された結束テープ7の端部が、テープ受け部65とテープ押え部材121との間で確実に保持される。さらに、テープ規制機構91により第1案内部43と第2案内部44との隙間が狭められるので、結束テープ7の切断時には、結束テープ7は、第1案内部43と第2案内部44との間で押し付けられ、強固に固定される。
【0040】
ここで、従来の結束装置では、テープ押えモジュールがテープ圧着機構のテープ加圧部の外側(作業者から見て前方)に配置されているので、第2アームにおけるテープ押えモジュールの収容スペースが第2アームの先端部外側へ突出し、作業者の視界を遮る。また、一対のアーム間に被結束物を誘引するとき、外側へ突出した第2アームの先端部が妨げになるため狭い場所での作業が困難であり、作業能率が低下することが問題であった。
【0041】
これに対し、本実施形態では、テープ押えモジュール100の本体101を、テープ圧着機構51のテープ加圧部59の下方(圧着面の裏側)をテープ加圧部59の外側から内側へ延びるようにアーム本体11の取付部14内に傾斜させて配置したので、第2アーム5の先端部(アーム本体11)が外側(作業者から見て前方)へ突出することがない。
本実施形態によれば、第2アーム5の先端部が作業者の視界を遮ることがないので、結束作業を能率的に行うことができる。また、本実施形態では、アーム本体11及び上部カバー35に透明度が高いプラスチックを用いたので、被結束物の視認性を向上させることが可能であり、結束作業を能率化することができる。さらに、本実施形態では、テープカバー23にも透明度が高いプラスチックを用いたので、結束テープ7の残量を視認することが可能であり、使い勝手を向上させることができる。
また、本実施形態では、テープ押えモジュール100の本体101を傾斜させて配置したので、第2アーム5の先端部(アーム本体11)をスリム化することができる。これにより、結束装置1の狭い場所での取回しが容易であり、結束作業の能率化を図ることができる。
【0042】
一方、
図7を参照すると、テープ押えモジュール100がテープ押え状態であるとき、テープ押え部材121は、テープ押え位置(前進端位置)に位置し、テープ押え部材121の軸127は、可動部材111の軸係合部115の第1溝116内に位置する。この状態で、可動部材111が押し込まれると、軸127に軸係合部115の案内部117が押し付けられて軸127が案内部117に沿って移動する。これにより、テープ押え部材121は、ピン123を中心に
図7における反時計回り方向へ回動し、待機位置(後退端位置、
図8参照)まで移動する。
【0043】
図8を参照すると、可動部材111が押し込まれた後、コイルばね114のばね力により戻されるとき、テープ押え部材121には、軸127に作用するねじりコイルばね141(
図5参照)のばね力の
図8における水平方向の成分(以下「ばね力A」と称する)が作用する。他方、テープ押え部材121には、前述したテープ押え部材121を待機位置(後退端位置)に保持する力、即ち、軸127に作用するねじりコイルばね141のばね力の
図8における垂直方向の成分及び案内部材131との摩擦抵抗(以下「保持力B」と称する)が作用する。
【0044】
ここで、テープ押え部材121の保持力Bがばね力Aよりも大きい場合、テープ押え部材121の軸127が第1溝116側(前進側)へ移動することがなく、可動部材111が戻されることにより、軸127は、可動部材111の軸係合部115の第2溝118に移動する。これにより、テープ押え部材121が待機位置で保持され、テープ押えモジュール100は正常に動作する。
【0045】
これに対し、テープ押え部材121の保持力Bがばね力Aよりも小さい場合、テープ押え部材121の軸127が第1溝116側(前進側)へ移動する。これにより、テープ押え部材121が前進してテープ押え位置まで移動し、テープ押えモジュール100は、待機位置不戻りの動作不良となる。
【0046】
そこで、従来、テープ押え部材の保持力Bをばね力Aよりも大きくするため、本体カバーにリブを設け、リブと案内部材とのクリアランスを管理してテープ押えモジュールと案内部材との摩擦抵抗を制御していた。この従来技術では、摩擦力がリブの形状(寸法)の影響を受けるので、安定した保持力Bを発生させるのが困難であった。
【0047】
これに対し、本実施形態では、ねじりコイルばね141の基端部145をテープ押え部材121に押し付ける力を調整することにより、テープ押え部材121の保持力Bを調節する保持力調整手段を備えるので、より直接的に摩擦力を制御して安定した保持力Bを発生させることが可能であり、テープ押えモジュール100における待機位置不戻りの動作不良を抑止することができる。また、保持力B(摩擦力)は、第1カバー102のばね受部106の第2受部107の板厚を可変することで、簡単に、且つ高い自由度で制御することができる。
【0048】
ここで、
図5を参照すると、テープ押えモジュール100は、板金部材であるテープ押え部材121、案内部材131、及び可動部材111の板厚の公差がマイナス公差であるときに良好に機能する。しかし、当該公差がプラス公差であるとき、部材間に作用する摩擦力が過大となり、動作不良の原因となる。
そこで、本実施形態では、本体101の第1カバー102と第2カバー103とを締結させるねじの使用を廃止し、第1カバー102及び第2カバー103を撓ませることで、板金部材のプラス公差が吸収されるようにテープ押えモジュール100を構成した。
これにより、板金部材の板厚の公差がプラス側、マイナス側のどちらであっても、テープ押えモジュール100の安定した動作を確保することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 結束装置、2 第1レバー、3 第2レバー、4 第1アーム、5 第2アーム、6 支持軸、21 テープ支持機構、41 テープ繰出し機構、51 テープ圧着機構、52 可動部、59 テープ加圧部、71 テープ保持機構、72 操作部、100 テープ押えモジュール、101 本体、111 可動部材、121 テープ押え部材