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特許7617737非水系電解液の酸又は水分低減剤、それを含む非水系電解液、及び非水電解液を含むリチウム二次電池、並びに非水系電解液の酸又は水分を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】非水系電解液の酸又は水分低減剤、それを含む非水系電解液、及び非水電解液を含むリチウム二次電池、並びに非水系電解液の酸又は水分を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20250110BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250110BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250110BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250110BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250110BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250110BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20250110BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250110BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020216838
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102227
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 吉幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 恵子
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/147502(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/125946(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/058224(WO,A1)
【文献】特開2014-017250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミド結合を含有する(メタ)アクリレートを含
前記アミド結合を含有する(メタ)アクリレートが、以下の化合物:
【化1】
から選択される、非水系電解液から酸分、又は酸分と水分との両方を除去する添加剤
【請求項2】
請求項1に記載の添加剤を含む、非水系電解液。
【請求項3】
記アミド結合を含有する(メタ)アクリレートが、非水系電解液の全質量に対して、0.1~1質量%の量で含まれる、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項4】
環状カーボネート及び鎖状カーボネートをさらに含む、請求項又はに記載の非水系電解液。
【請求項5】
リチウム塩をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
前記リチウム塩がLiPFを含む、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
正極、
負極、
前記正極と前記負極との間に配置された、請求項からのいずれか一項に記載の非水系電解液
を含む、リチウム二次電池。
【請求項8】
前記正極が、ニッケル-コバルト-マンガン(NCM)又はニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)三元系材料を含む、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記負極が、ケイ素を含有する材料を含む、請求項又はに記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
非水系電解液にアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを加えることを含
前記アミド結合を含有する(メタ)アクリレートが、以下の化合物:
【化2】
から選択される、非水系電解液から酸分、又は酸分と水分との両方を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液の酸又は水分低減剤、それを含む非水系電解液、及び非水電解液を含むリチウム二次電池、並びに非水系電解液の酸又は水分を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器だけでなく、自動車用及び産業用等の蓄電池として、さらにドローンなどの新たな用途としても広く使用されている。リチウム二次電池はそもそもエネルギー密度が他の種類の二次電池よりも比較的高いものの、さらに高エネルギー密度のリチウム二次電池を製造するため、正極活物質としてニッケルを高い比率で含有する材料を用いることなどが検討されている。
【0003】
従来、リチウム二次電池の正極活物質としてはコバルト酸リチウム(LCO)が使用されてきたが、ニッケルを含有するニッケル-コバルト-マンガン(NCM)の採用が拡大している。また、ニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)三元系材料の使用についても検討が進められている。これらの三元系材料は高エネルギー密度の観点だけでなく、コスト競争力の観点からも、コバルトの使用を低減させることができるため有利である。
【0004】
また、負極活物質としてケイ素を含有する材料を使用する技術の開発も進んでいる。ケイ素を含有した材料は理論容量が大きいため特に大容量が必要とされる自動車用途への適用が期待されている。
【0005】
これらの正極活物質及び負極活物質を使用した場合に最適な電解液の検討も進んでいる。電解液に含まれる材料のうち、微量に含まれる水分の影響により電解質が劣化してしまうことが知られている。例えば、電解質としてLiPFを使用した場合には、以下の反応が起きることにより電解質が分解し、酸分を生じることとなる。
【0006】
LiPF+HO→LiF+POF+2HF
【0007】
このようにして発生した酸分はSiOなどのケイ素を含有する負極材料の表面又はその表面に形成した被膜と反応して、インピーダンスが上昇することにより電池特性を低下させてしまうことが分かっている。また、正極活物質としてニッケルを含有する材料を使用した場合には、材料中の残留アルカリ分が多いため、酸分を発生させる反応を加速させてしまうおそれがある。
【0008】
特開2019-186078号公報には、孤立電子対を有する窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤を非水電解液に含ませることにより、フッ化水素の生成を抑制することが記載されている。しかしながら、負極としてグラファイトを使用した場合には効果があることが実証されているものの、ケイ素を含有する材料を用いた場合に負極及びその表面の被膜に対する影響については明らかになっていなかった。
【0009】
国際公開第2012/147502号及び国際公開第2014/125946号には、二次電池用非水電解液にイソシアネート基を有する化合物を添加剤として加えることにより、低温から高温に至るまでの充放電特性を改善することが開示されている。しかしながら、これらの文献には負極に被膜を形成することは開示されているものの、酸及び水分に対する影響については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-186078号公報
【文献】国際公開第2012/147502号
【文献】国際公開第2014/125946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、正極にニッケル含有材料、負極にケイ素含有材料を使用した場合であっても、電解液の特性を安定させることができる酸又は水分低減剤、並びに酸及び/又は水分を低減することにより、優れた電池特性及びサイクル寿命を有する電解液が求められていた。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、酸及び/又は水分を低減することにより、高温条件下においても電池特性の低下を抑えることができ、優れたサイクル寿命を有する電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、予期しないことに、電解液の酸又は水分低減剤として、イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを使用することにより、高温条件下でも優れた容量密度を維持することができることを見出し本発明に到達した。
【0014】
本発明の目的は、イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを含む、非水系電解液の酸又は水分低減剤によって達成される。
【0015】
前記イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0016】
前記イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、以下の化合物:
【化1】
から選択されることが好ましい。
【0017】
前記イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、2-イソシアナトエチルアクリレート又は2-イソシアナトエチルメタクリレートであることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、本発明の酸又は水分低減剤を含む、非水系電解液にも関する。
【0019】
前記イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、非水系電解液の全質量に対して、0.1~1質量%の量で含まれることが好ましい。
【0020】
本発明の非水系電解液は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをさらに含むことが好ましい。
【0021】
本発明の非水系電解液は、リチウム塩をさらに含むことが好ましく、リチウム塩はLiPFを含むことが好ましい。
【0022】
本発明はまた、
正極、
負極、
前記正極と前記負極との間に配置された、本発明の非水系電解液
を含む、リチウム二次電池にも関する。
【0023】
前記正極は、ニッケル-コバルト-マンガン(NCM)又はニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)三元系材料を含むことが好ましい。
【0024】
前記負極は、ケイ素を含有する材料を含むことが好ましい。
【0025】
本発明はまた、非水系電解液に前記イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを加えることを含む、非水系電解液の酸又は水分を低減する方法にも関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを非水系電解液の酸又は水分低減剤として用いることによって、リチウム二次電池に水が混入した場合であっても酸分を発生しにくくすることができるため、高温条件下においても電池特性の低下を抑えることができ、優れたサイクル寿命を有する電解液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1及び2、並びに比較例1の充放電サイクル試験の結果得られた、サイクル数と容量の関係を表したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤は、イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤は、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレートを含む。
【0029】
本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、分子内にイソシアネート基又はアミド結合を1つ含有していてもよく、或いは分子内にイソシアネート基又はアミド結合を2つ以上含有していてもよい。また、それ以外に分子内に含まれる基及び結合は特に限定されない。
【0030】
一態様において、本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、以下の化合物:
【化2】
から選択される。
【0031】
特に、分子の末端にイソシアネート基を含有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、以下の一般式(1):
【化3】
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは2価の有機基である)
で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)において、Rは2価の有機基であり、例えばアルキレン基、アリーレン基、及びアルケニレン基が挙げられる。Rは、炭素数1~6のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがより好ましい。
【0033】
好ましくは、本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート又は2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルアクリレートである。より好ましくは、本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、2-イソシアナトエチルアクリレート又は2-イソシアナトエチルメタクリレートである。
【0034】
本発明の非水系電解液の酸又は水分低減剤に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは一種類を単独で用いることもでき、複数の化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
本発明はまた、本発明の酸又は水分低減剤を含む、非水系電解液にも関する。非水系電解液に含まれるイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートは、非水系電解液の全質量に対して、0.1~1質量%の量で含まれることが好ましく、0.2~0.9質量%の量で含まれることがより好ましく、0.3~0.8質量%の量で含まれることが最も好ましい。酸又は水分低減剤としてのイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを上記範囲内の量で含むことにより、電池内での酸又は水分発生反応を効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明の非水系電解液は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エーテル化合物、エステル化合物及びアミド化合物等の有機溶媒をさらに含むことが好ましい。これらの有機溶媒は単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。好ましくは、本発明の非水系電解液は、有機溶媒として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む。
【0037】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジエチル-2-メチレンエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、1,2-ジエチニルエチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、プロピルブチルカーボネート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
環状カーボネートとして、フッ素原子を含有する環状カーボネートを含むこともできる。フッ素原子を含有する環状カーボネートとしては、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、トランス若しくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、及びこれらの組み合わせが挙げられる
【0039】
特に、カーボネートのうち、環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高く電解質中のリチウム塩を解離させやすいため好適に使用可能であり、このような環状カーボネートに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの低粘度かつ低誘電率の鎖状カーボネートを適当な割合で混合して用いると、高い電気伝導率を有する電解液を作製することができるため、好ましい。
【0040】
本発明の非水系電解液は、環状エーテル又は鎖状エーテルなどのエーテル化合物をさらに含むこともできる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。また、本発明の非水系電解液は鎖状エーテルをさらに含むこともできる。鎖状エーテルの例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、及びエチルプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
本発明の非水系電解液は、カルボン酸エステルなどのエステル化合物をさらに含むこともできる。カルボン酸エステルの例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、これらのカルボン酸エステルの水素の一部をフッ素で置換した化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
上記以外にも、本発明の非水系電解液は、本発明の目的を損なわない限り特に限定なくその他の溶媒、例えばポリエーテル、硫黄含有溶媒及びリン含有溶媒などを含むことができる。
【0043】
本発明の非水系電解液は環状カーボネート及び鎖状カーボネートの混合物を含むことができ、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの割合は、1:9~9:1の体積比であることが好ましく、2:8~8:2の体積比であることがより好ましい。
【0044】
本発明の非水系電解液は、二次電池として一般的に使用されている電解質を含むことができる。電解質は二次電池の中で電気化学反応に関与するイオンを輸送する媒体として作用する。特に本発明はリチウム二次電池用の電解液として有用であり、この場合には電解質としてリチウム塩を含む。
【0045】
本発明の非水系電解液に含まれるリチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiB1212、LiAsF、LiFSO、LiSiF、LiCFCO、LiCHCO、LiCFSO、LiCSO、LiCFCFSO、LiCF(CFSO、LiCFCF(CFCO、Li(CFSOCH、LiNO、LiN(CN)、LiN(FSO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiP(CF、LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF、LiBC、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO、LiSbF、LiAlO、LiAlF、LiSCN、LiClO、LiCl、LiF、LiBr、LiI、及びLiAlClなどが挙げられる。特に、LiPF、LiBF、LiAsF、及びLiClOなどの無機塩が好ましく、LiPFがより好ましい。リチウム塩は1種類を単独で用いることができ、複数のリチウム塩を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
電解質の含有量は特に限定されないが、非水系電解液の全質量に対して、0.1mol/L~5mol/L以下、好ましくは0.5mol/L~3mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L~2mol/L以下の量で含まれる。電解質の量を上記範囲とすることにより、十分な電池特性を得ることができる。
【0047】
本発明の非水系電解液は、少なくとも1種の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、難燃剤、湿潤剤、安定化剤、防食剤、ゲル化剤、過充電防止剤、及び負極被膜形成添加剤などが挙げられる。
【0048】
本発明はまた、
正極、
負極、
前記正極と前記負極との間に配置された、本発明の非水系電解液
を含む、リチウム二次電池にも関する。
【0049】
本発明の非水系電解液を含むリチウム電池は、公知のリチウム二次電池に用いることができる正極及び負極を限定なく用いることができ、本発明の非水系電解液とともに容器に収容することにより構成することができる。また、正極と負極との間にセパレータを介在させることもできる。
【0050】
本発明のリチウム二次電池に用いられる正極は、例えば正極集電体上に、正極活物質、バインダー、導電材、及び溶媒などを含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥及び圧延することにより製造することができる
【0051】
正極集電体としては、本発明のリチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウム若しくはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、及び銀などで表面処理を施したものなどを用いることができる。
【0052】
正極活物質は、リチウムの可逆的な吸蔵及び放出が可能な化合物であり、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、又はアルミニウムなどの1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-y1Mny1(ここで、0<y1<1)、LiMn2-z1Ni(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-y2Coy2(ここで、0<y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-y3Mny3(ここで、0<y3<1)、LiMn2-z2Coz2(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)、又はLi(Nip2Coq2Mnr2)O(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3S3)O(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、及びMoからなる群から選択され、p3、q3、r3、及びs3は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s3<1、p3+q3+r3+s3=1である)など)などが挙げられ、これらを単独で含んでもよく、又は2つ以上を含んでもよい。
【0053】
好ましくは、電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点から、前記リチウム複合金属酸化物は、ニッケルを含有する金属とリチウムとを含むリチウム複合金属酸化物であることが好ましい。具体的には、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、又はLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなど)などを用いることができ、特にニッケル-コバルト-マンガン(NCM)又はニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)三元系材料であるリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物又はリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物を用いることがコストの面からも好ましい。
【0054】
正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全質量に対して、80~99質量%の量で含まれることが好ましい。正極活物質の含有量を上記範囲とすることにより、高いエネルギー密度及び容量を得ることができる。
【0055】
バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合を助ける成分であって、正極スラリー中の固形分の全質量に対して1~30質量%の量で含まれることが好ましい。バインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、及びフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0056】
導電材は、本発明のリチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を付与する物質であって、正極スラリー中の固形分の全質量に対して0.5~50質量%で含まれることが好ましく、1~20質量%で含まれることがより好ましい。導電材を上記範囲の含有量で含むことにより、電気伝導性が向上し、また、高いエネルギー密度及び容量を得ることができる。
【0057】
導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、及び複層カーボンナノチューブ(MWCNT)などの炭素粉末;結晶構造が発達した天然黒鉛、人造黒鉛、及びグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維及び金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム及びニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛及びチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;並びにポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0058】
溶媒は正極活物質、バインダー及び導電材などを正極材としてスラリー状にすることができるものであれば限定されず、例えばNMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミド、及び水などの有機溶媒を用いることができる。また、正極スラリーが好適な粘度となる量で用いることができ、例えばスラリー中の固形分濃度が10質量%~60質量%、好ましくは20質量%~50質量%となる量で用いることができる。
【0059】
本発明のリチウム二次電池に用いられる負極は、例えば負極集電体上に、負極活物質、バインダー、導電材、及び溶媒などを含む負極スラリーをコーティングした後、乾燥及び圧延することで製造することができる。
【0060】
負極集電体は、一般に3~500μmの厚さを有する。負極集電体としては、本発明のリチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅若しくはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、及び銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、及び不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0061】
負極活物質は、リチウム金属、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる炭素物質、金属又はこれらの金属とリチウムの合金、金属複合酸化物、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質、並びに遷移金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0062】
リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することができる炭素物質としては、リチウム二次電池で一般的に用いられる炭素系負極活物質であれば特に限定されずに用いることができ、例えば結晶質炭素、非晶質炭素、又はこれらの組み合わせを用いることができる。結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片(フレーク)状、球状、又は繊維状の天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛が挙げられる。非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(低温焼成炭素)又はハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、及び焼成コークスなどが挙げられる。
【0063】
金属又はこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、及びSnからなる群から選択される金属又はこれらの金属とリチウムの合金を用いることができる。
【0064】
金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、及びSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択されるものを用いることができる。
【0065】
リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Y合金(ここで、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(ここで、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、これらの少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0066】
遷移金属酸化物としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0067】
本発明のリチウム二次電池の負極活物質としては、ケイ素を含有する材料を用いることが好ましく、例えばSi、SiO(0<x<2)、Si-Y合金(ここで、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、及びこれらの少なくとも1つとSiOとの混合物を用いることができる。特に、SiOを用いることがより好ましい。
【0068】
負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全質量に対して80~99質量%の量で含まられることが好ましい。
【0069】
バインダーは、導電材、負極活物質、及び集電体の間の結合を助ける成分であって、負極スラリー中の固形分の全質量に対して1~30質量%の量で含まれることが好ましい。バインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、及びフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0070】
導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全質量に対して1~20質量%の量で含まれることが好ましい。導電材としては、リチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、及びサーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維及び金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム及びニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛及びチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;並びにポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0071】
溶媒は、負極活物質、バインダー及び導電材などを負極材としてスラリー状にすることができるものであれば限定されず、例えば水、NMP及びアルコールなどの有機溶媒を用いることができる。また、負極スラリーが好適な粘度となる量で用いることができ、例えばスラリー中の固形分濃度が50質量%~75質量%、好ましくは50質量%~65質量%となる量で用いることができる。
【0072】
本発明のリチウム二次電池のセパレータは、両電極の内部短絡を遮断し、電解質を含浸する役割を担うものであって、高分子樹脂、充填剤、及び溶媒を混合してセパレータ組成物を製造した後、セパレータ組成物を電極の上部に直接コーティング及び乾燥することでセパレータフィルムを形成してもよく、セパレータ組成物を支持体上にキャスティングおよび乾燥した後、支持体から剥離されたセパレータフィルムを電極の上部にラミネートすることで形成してもよい。
【0073】
セパレータとしては、従来セパレータとして用いられている通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で又はこれらを積層して用いてもよく、或いは通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などの不織布を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0074】
多孔性セパレータの気孔径は一般に0.01~50μmであり、気孔率は5~95%であってもよい。また、多孔性セパレータの厚さは一般に5~300μmの範囲であってもよい。
【0075】
本発明のリチウム二次電池の充電電圧は4.0V以上であることが好ましく、4.1V以上であることがより好ましい。また、本発明のリチウム二次電池の満充電時の正極電位は4.0V以上であることが好ましい。
【0076】
また、本発明のリチウム二次電池の正極あたりの初期容量密度は180mAh/g以上であることが好ましく、185mAh/g以上であることがより好ましい。
【0077】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、円筒形、角形、パウチ形、又はコイン形などであってもよい。
【0078】
本発明はまた、非水系電解液にイソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートを加えることを含む、非水系電解液の酸又は水分を低減する方法にも関する。イソシアネート基又はアミド結合を含有する(メタ)アクリレートとしては、上述の化合物を使用することができる。
【実施例
【0079】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
(1)リチウム二次電池の製造
<正極の製造>
溶媒のN-メチル-2-ピロリドン中に、正極活物質としてニッケル-コバルト-マンガン(NCM)三元系材料(Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oを96.5質量部、導電材としてアセチレンブラックを1.5質量部、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを2質量部分散させ、正極スラリーを調製した。調製した正極スラリーをアルミニウム箔上に均一に塗布し、加熱真空乾燥した後、プレスして正極を製造した。
【0081】
<負極の製造>
水中に、負極活物質としてグラファイトとSiOとを9:1で混合したものを96質量部、導電材としてアセチレンブラックを1.0質量部、及びバインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースを3.0質量部分散させ、負極スラリーを調製した。調製した負極スラリーを銅箔上に均一に塗布し、加熱真空乾燥した後、プレスして負極を製造した。
【0082】
<非水系電解液の製造>
溶媒としてエチレンカーボネート(EC)を30体積部、及びエチルメチルカーボネート(EMC)を70体積部を含む溶媒を使用し、そこにLiPFを塩濃度が1Mとなるように溶解して溶液を調製した。得られた溶液100質量部に、酸又は水分低減剤として2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製)(A1)を0.5質量部加え、本発明の非水系電解液を得た。
【0083】
<リチウム二次電池の製造>
上記の方法により製造した正極、負極、及び非水系電解液を用い、セパレータとしてポリオレフィン製フィルムを用いて対向面積12cmのパウチ型電池を作製した。
【0084】
(実施例2)
非水系電解液に2-イソシアナトエチルメタクリレートの代わりに2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工株式会社製)(A2)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法により、非水系電解液及びそれを含むリチウム二次電池を作製した。
【0085】
(実施例3)
非水系電解液に2-イソシアナトエチルメタクリレートの代わりに1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法により、非水系電解液及びそれを含むリチウム二次電池を作製した。
【0086】
(実施例4)
非水系電解液に2-イソシアナトエチルメタクリレートの代わりに2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(昭和電工株式会社製)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法により、非水系電解液及びそれを含むリチウム二次電池を作製した。
【0087】
(実施例5)
非水系電解液に2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルアクリレート(昭和電工株式会社製)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法により、非水系電解液及びそれを含むリチウム二次電池を作製した。
【0088】
(比較例1)
非水系電解液に2-イソシアナトエチルメタクリレートを加えないこと以外は実施例1と同様の方法により、非水系電解液及びそれを含むリチウム二次電池を作製した。
【0089】
(2)酸分測定
(1)で製造した実施例1から5及び比較例1の電解液に対して、60℃で1週間保存した前と後における酸分を測定した結果を以下の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1の結果から分かるとおり、非水系電解液として2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート又は2-[0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチルアクリレートを含む電解液を使用した実施例1から5において、酸分の発生量が抑制されており、保存後に酸分の量は増加しなかった。特に、2-イソシアナトエチルアクリレートを含む非水系電解液では、保存前及び保存後に酸分は全く検出されなかった。
【0092】
(3)充放電サイクル試験
(1)で製造した実施例1及び2、並びに比較例1の1リチウム二次電池を使用し、45℃で0.5Cの定電流で充電上限電圧を4.20V、放電下限電圧を2.80Vとして充放電サイクル試験を行った。ただし、50サイクル、100サイクル、及び200サイクル時には正確な容量を確認するため、0.1Cの定電流を用いて試験を行った。
【0093】
上記試験の結果得られたサイクル数と容量の関係を表したグラフを図1に示す。図1において、比較的初期から容量保持の点で実施例1及び2と比較例1とでは大きく相違しており、非水系電解液に添加剤を加えていない比較例1の場合には容量が大きく低下してしまった。一方、非水系電解液に2-イソシアナトエチルメタクリレート(A1)又は2-イソシアナトエチルアクリレート(A2)を含む実施例1及び2の場合には、長期にわたって容量が保持される効果を有していることが分かった。
【0094】
(4)電池抵抗上昇率
(1)で製造した実施例1から5及び比較例1のリチウム二次電池を使用し、充電状態のリチウム二次電池を60℃で4週間放置し、電池抵抗上昇率を測定した結果、並びに200サイクルの充放電サイクル試験を行ったリチウム二次電池の電池抵抗上昇率を測定した結果を以下の表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2の結果から分かるとおり、特に非水系電解液として2-イソシアナトエチルメタクリレート又は2-イソシアナトエチルアクリレートを含む電解液を使用した実施例1及び2において、高温保存後及びサイクル試験後の電池の抵抗上昇が低く抑えられており、安定性に優れることが分かった。
【0097】
また、試験を行った実施例2及び比較例1のリチウム二次電池において、試験後の負極活物質からICP発光分光分析によって検出された金属量を測定した結果を以下の表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
表3に示す金属量測定結果は、正極からの金属溶出の影響を示している。表3の結果から分かるとおり、特に非水系電解液として2-イソシアナトエチルアクリレートを含む電解液を使用した実施例2において、高温下で金属、特にコバルトの溶出を抑制できていることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の酸又は水分低減剤及びそれを含む非水系電解液は、酸分の発生を抑制することにより高温条件下においても正極金属の溶出を抑制し、充放電を多数回繰り返した後でも容量を保持することができ、電池の抵抗上昇を抑制することができるため、有用である。
図1