(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】記録装置、記録方法、記憶媒体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20250110BHJP
B41J 13/00 20060101ALI20250110BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20250110BHJP
B65H 23/038 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B41J11/42
B41J13/00
B41J15/04
B65H23/038 A
(21)【出願番号】P 2020217372
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良祐
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-062975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B41J 13/00-13/32
B41J 15/04
B65H 23/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する給送手段と、
記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記給送手段により搬送される記録媒体を前記記録手段に搬送する搬送手段と、
記録媒体の搬送を制御する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記給送手段は、
カットシートである第一の記録媒体を搬送する第一の給送手段と、
ロールシートである第二の記録媒体を搬送する第二の給送手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記第一の記録媒体が前記搬送手段によって搬送されている
ときに、前記搬送手段への前記第二の給送手段による前記第二の記録媒体の搬送を開始す
る制御を実行
する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置であって、
前
記制御により、先行する前記第一の記録媒体に、後続の前記第二の記録媒体の先端部が重ねられ、その重なり部分が前記搬送手段により搬送される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の記録装置であって、
前
記制御においては、前記第一の記録媒体よりも前記第二の記録媒体の搬送速度が速い、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記記録媒体の搬送方向で、前記搬送手段の上流側で前記第一の給送手段及び前記第二の給送手段の下流側の位置において、前記記録媒体を検知する検知手段を備え、
前
記制御においては、前記第一の記録媒体が前記検知手段を通過したことを契機として、前記第二の記録媒体の給送が開始される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前記搬送手段と前記第二の給送手段との間で、前記
第二の記録媒体に張力を発生させる張力発生制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前
記制御の後であって、先行する前記
第一の記録媒体に対する前記記録手段による記録が終了した後に、前記搬送手段と前記第二の給送手段との間で、前記
第二の記録媒体に張力を発生させる張力発生制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前
記制御の後、前記第二の給送手段の搬送速度を減速することにより、前記搬送手段と前記第二の給送手段との間で、前記
第二の記録媒体に張力を発生させる張力発生制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、前
記制御の後であって、先行する前記
第一の記録媒体が前記搬送手段を通過した後に、後続の前記
第二の記録媒体の頭出し動作を行う、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記記録媒体の搬送方向で前記記録手段よりも下流側に配置され、前記記録媒体を搬送する排出手段を備え、
前記制御手段は、前
記制御の後であって、先行する前記
第一の記録媒体が前記排出手段を通過する前に、後続の前記
第二の記録媒体の頭出し動作を行う、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項
8又は請求項
9に記載の記録装置であって、
前記頭出し動作は、前記第二の給送手段による前記
第二の記録媒体の巻き取りと、前記搬送手段による前記記録手段への前記
第二の記録媒体の搬送と、を含む、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記搬送手段は、駆動ローラと、前記駆動ローラに圧接する従動ローラとを含む、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項
11のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記制御手段は、
ユーザの選択に応じて、前
記制御と、前記第一の記録媒体が前記搬送手段を通過した後に、前記搬送手段への前記第二の給送手段による前記第二の記録媒体の搬送を開始す
る制御と、を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記記録手段による記録後に前記
第二の記録媒体を切断する切断手段を備え、
前記制御手段は、
先行する前記
第二の記録媒体の切断後であって、前記第二の給送手段による前記
第二の記録媒体の巻き取りの後、前記搬送手段への前記第一の給送手段による前記第一の記録媒体の搬送を開始す
る制御を実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
記録媒体を搬送する給送手段と、
記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記給送手段により搬送される記録媒体を前記記録手段に搬送する搬送手段と、を備えた記録装置の制御方法であって、
前記給送手段は、
カットシートである第一の記録媒体を搬送する第一の給送手段と、
ロールシートである第二の記録媒体を搬送する第二の給送手段と、を含み、
前記制御方法は、
前記第一の記録媒体に対する前記記録手段による記録を開始する工程と、
前記第一の記録媒体が前記搬送手段によって搬送されている
ときに、前記搬送手段への前記第二の給送手段による前記第二の記録媒体の搬送を開始する工程と、を備える、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項16】
請求項
14に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の記録速度を向上する方法として、給送方式を改善した技術が提案されている。特許文献1には複数枚の記録媒体に対して連続的に画像を記録する場合に、先行記録媒体に後続記録媒体の先端部を重ねた状態で搬送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の給送機構を備えた記録装置においては、サイズ等が異なる記録媒体に対して記録を行えるという利点がある。こうした記録装置においては、スループットの向上の点で、記録媒体を切り替える際の動作に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、記録媒体を切り替え可能な記録装置において、スループットの向上を図ることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
記録媒体を搬送する給送手段と、
記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記給送手段により搬送される記録媒体を前記記録手段に搬送する搬送手段と、
記録媒体の搬送を制御する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記給送手段は、
カットシートである第一の記録媒体を搬送する第一の給送手段と、
ロールシートである第二の記録媒体を搬送する第二の給送手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記第一の記録媒体が前記搬送手段によって搬送されているときに、前記搬送手段への前記第二の給送手段による前記第二の記録媒体の搬送を開始する制御を実行する、
ことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、記録媒体を切り替え可能な記録装置において、スループットの向上を図ることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図。
【
図2】
図1の記録装置1の制御ユニットのブロック図。
【
図3】
図2の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図4】(A)乃至(C)は
図1の記録装置の動作説明図。
【
図5】(A)乃至(C)は
図1の記録装置の動作説明図。
【
図6】(A)乃至(C)は
図1の記録装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<記録装置の概略>
図1は本実施形態における記録装置1の概略図である。本実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。図中、矢印X、矢印Yは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。また、下流側、上流側という場合は記録媒体の搬送方向を基準とする。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
記録装置1は、記録媒体を搬送する機構として、記録媒体の搬送方向に上流側から配置された給送ユニット2、搬送ユニット3及び排出ユニット4を含む。給送ユニット2は、記録媒体としてシートSH1を給送する給送ユニット21と、記録媒体としてシートSH1とは別のシートSH2を給送する給送ユニット22とを含む。本実施形態では二つの給送ユニット21、22によって、記録を行う記録媒体を選択的に給送可能である。
【0013】
給送ユニット21は、複数枚のシートSH1を積載可能な給送トレイ210(積載部)と、給送ローラ211と、分離部213とを含む。シートSH1はその幅方向がY方向となる姿勢で給送トレイ210に積載された、カット済みのシートである(以下、カットシートSH1と呼ぶ場合がある)。給送ローラ211は、給送モータ212の駆動力により回転し、給送トレイ210に積載された最上位のカットシートSH1に当接して、下流側へ搬送する。給送トレイ210の下流側の端部には分離部213が設けられている。分離部213は給送ローラ211によるカットシートSH1の搬送の際、給送トレイ210上のカットシートSH1を一枚ずつ分離する構造(例えば分離爪)を有する。
【0014】
シートSH2は、筒状の芯材に一枚のシートがロール状に巻かれたロールシートである(以下、ロールシートSH2と呼ぶ場合がある)。給送ユニット22は、ロールシートSH2を回転自在に支持する支持部221を有する。ロールシートSH2はその幅方向(ロールの軸方向)がY方向となる姿勢で支持される。支持部221は給送モータ222の駆動力により回転し、ロールシートSH2を回転させる。給送モータ222の回転方向によって、ロールシートSH2を下流側に送り出す、送り出し動作と巻き取り動作とが可能である。給送ユニット22は、不図示のバネ等によってロールシートSH2の外周面に圧接するローラ223を備える。ローラ223は自由回転体であり、ロールシートSH2の送り出し動作及び巻き取り動作が安定的に行われるよう、ロールシートSH2の外周面を押圧する。
【0015】
ロールシートSH2は、支持部221の回転によってシートガイド10と、シートガイド10に対向するように配置された自由回転体であるローラ224との間を通過して下流側へ搬送される。カットシートSH1の搬送経路と、ロールシートSH2の搬送経路とは、仕切り部材11の下流側の合流部において合流する。合流後の搬送経路は、シートガイド10と、シートガイド10に対向するシートガイド12との間を通って搬送ユニット3に到達する。
【0016】
搬送ユニット3は、給送ユニット2により搬送される記録媒体(カットシートSH1又はロールシートSH2)を記録ヘッド6に搬送する。搬送ユニット3は、駆動ローラ31と、不図示のバネ等によって駆動ローラ31に圧接される従動ローラ32(ピンチローラ)とを含む。駆動ローラ31は搬送モータ33の駆動力によって回転する。搬送モータ33の正転によって、駆動ローラ31と従動ローラ32とのニップ部において記録媒体が挟持され、記録媒体(カットシートSH1又はロールシートSH2)は記録ヘッド6と、記録ヘッド6に対向するプラテン8との間をX方向で下流側へ搬送される。また、ロールシートSH2の巻き取り動作の際には、搬送モータ33の逆転によって搬送ユニット3がロールシートSH2を上流側へ搬送することも可能である。
【0017】
排出ユニット4は、搬送ユニット3により搬送される記録媒体(カットシートSH1又はロールシートSH2)を装置外へ搬送する。排出ユニット4は、駆動ローラ41と、不図示のバネ等によって駆動ローラ41に圧接される拍車42とを含む。駆動ローラ41は搬送モータ33の駆動力によって回転し、記録媒体をX方向で下流側に搬送する。搬送モータ33の駆動力は伝達機構43を介して駆動ローラ41に伝達される。伝達機構43は例えばワンウエイクラッチを含み、搬送モータ33が逆転する場合はその駆動力を駆動ローラ41に伝達しない。なお、本実施形態では、搬送モータ33を搬送ユニット3と排出ユニット4とで共用したが、個別にモータを設けた構成であってもよい。
【0018】
排出ユニット4よりも下流側には切断ユニット5が設けられている。切断ユニット5は、記録済みのロールシートSH2を切断する。切断ユニット5は、例えば、上下に一枚ずつ配置された円形状の丸刃を有するカッタと、カッタを記録媒体の搬送方向と交差する方向(本実施形態ではY方向)に移動する移動機構(不図示)とを備える。カッタは、記録媒体の搬送経路外に待機しており、切断時に搬送経路を横断するように移動されてロールシートSH2を切断する。
【0019】
記録ヘッド6は、記録媒体の搬送方向で搬送ユニット3の下流側で排出ユニット4の上流側に配置されている。記録ヘッド6は記録媒体(カットシートSH1又はロールシートSH2)に対して記録を行う。本実施形態では記録ヘッド6は、インクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド6はキャリッジ7に支持されている。キャリッジ7は、記録媒体と交差する方向に往復移動する。本実施形態では、キャリッジ7はY方向に延設されたガイド軸9の案内によりY方向に往復移動する。
【0020】
このように本実施形態の記録装置1は、記録ヘッド6がキャリッジ7に搭載されているシリアルタイプの記録装置である。搬送ユニット3によって、記録媒体を所定量搬送する搬送動作(間欠搬送動作)と、搬送ユニット3の搬送停止中の画像形成動作とを繰り返すことによって記録媒体に対する記録動作が行われる。画像形成動作は、記録ヘッド6を搭載したキャリッジ7を移動させながら記録ヘッド6からインクを吐出する動作である。
【0021】
記録装置1は検知ユニット13を備える。検知ユニット13は、搬送ユニット3の上流側で給送ユニット2の下流側の位置において、記録媒体を検知する。検知ユニット13は、例えば、記録媒体を検知する光学式センサである。或いは、検知ユニット13は、例えば、記録媒体の搬送経路に揺動自在に設けられ、記録媒体との干渉により揺動するアーム部材と、アーム部材の揺動を検知するセンサとにより構成される。
【0022】
<制御ユニット>
図2は記録装置1の制御ユニット14のブロック図である。MPU140は、記録装置1の各動作の制御やデータの処理などを制御するプロセッサである。MPU140は記憶デバイス141に記憶されたプログラムを実行して記録装置1全体の制御を行う。記憶デバイス141は例えばROMやRAMで構成される。記憶デバイス141には、MPU140が実行するプログラムの他、ホストコンピュータ15から受信したデータ等、処理に必要な各種のデータを格納する。
【0023】
MPU140はドライバ142aを介して記録ヘッド6を制御する。キャリッジモータ7aはキャリッジ7の移動の駆動源であり、MPU140はドライバ142bを介してキャリッジモータ7aを制御する。MPU140は、また、ドライバ142c~142fを介して搬送モータ33、給送モータ212及び222、及び、カッタモータ5aを制御する。カッタモータ5aは切断ユニット5の駆動源である。
【0024】
ホストコンピュータ15は、例えば、ユーザが使用するパソコンや携帯端末(例えばスマートフォンやタブレット端末等)である。ホストコンピュータ15には、ホストコンピュータ15と記録装置1との間の通信を行うプリンタドライバ15aがインストールされている。記録装置1はインタフェース部143を備えており、ホストコンピュータ15とMPU140との通信はインタフェース部143を介して実行される。プリンタドライバ15aは例えば、ユーザからホストコンピュータ15に対して記録動作の実行が入力された場合に、記録対象の画像のデータや記録に関する設定(記録画像の品位等の情報)を取りまとめて記録装置1に記録動作の実行を指示する。記録動作の実行指示を記録ジョブと呼ぶ場合がある。
【0025】
<給送形態>
記録装置1では、記録ジョブに応じて、給送ユニット2から搬送ユニット3へカットシートSH1とロールシートSH2とを選択的に給送することができる。また、一つの記録ジョブが、複数頁の記録を含む場合や、異なる記録ジョブが連続的に指示された場合、記録媒体を連続給送することができる。
【0026】
連続給送の制御形態としては例えば以下の制御形態を実行可能である。
パターン1:カットシートSH1の給送後にカットシートSH1を給送する形態。
パターン2:ロールシートSH2の給送と切断とを繰り返す形態。
パターン3:カットシートSH1の給送後にロールシートSH2を給送する形態。
パターン4:ロールシートSH2の給送後にカットシートSH1を給送する形態。
【0027】
パターン4の場合、先行するロールシートSH2の切断後に給送ユニット22によりロールシートSH2を巻き取り、その先端を検知ユニット13の検知位置よりも上流側に退避させる。その後、搬送ユニット3への給送ユニット21によるカットシートSH1の搬送を開始する。
【0028】
パターン1やパターン3の場合、先行する記録媒体に後続の記録媒体の先端部を重ね、その重なり部分を搬送ユニット3によって搬送する搬送形態(重ね連送と呼ぶ場合がある)を実行可能であり、これによりスループットの向上を図ることができる。
【0029】
パターン1の重ね連送においては、先行カットシートSH1の後端部が搬送ユニット3よりも上流側に位置しているタイミングで後続カットシートSH1の給送を開始する。そして、搬送ユニット3よりも上流側で先行カットシートSH1の後端部と後続カットシートSH1の先端部とを重ねる。搬送ユニット3を駆動するとその重なり部分が搬送ユニット3によって挟持搬送され、先後2枚のカットシートSH1が同時に搬送される。
【0030】
パターン3の重ね連送においては、先行カットシートSH1の後端部が搬送ユニット3よりも上流側に位置しているタイミングで後続ロールシートSH2の給送を開始する。そして、搬送ユニット3よりも上流側で先行カットシートSH1の後端部と後続ロールシートSH2の先端部とを重ねる。搬送ユニット3を駆動するとその重なり部分が搬送ユニット3によって挟持搬送され、先行カットシートSH1と後続ロールシートSH2とが同時に搬送される。
【0031】
パターン1~4のいずれの制御形態を採用するか、及び、重ね連送を実行するか否かは、ホストコンピュータ15においてユーザが設定可能である。ユーザが選択した制御形態等の情報はプリンタドライバ15aを介して記録装置1に指示される。また、ユーザが設定により許可している場合、記録装置1の側で制御形態を変更してもよい。例えば、カットシートSH1とロールシートSH2のY方向の幅が同じである場合を想定する。ユーザはパターン1の選択を設定していたが、カットシートSH1が足りなくなった場合、パターン3に制御形態を変更して、ロールシートSH2を用いて記録を行う。
【0032】
<制御例>
MPU140が実行する制御例について説明する。ホストコンピュータ15からI/F部143を介して記録データが送信されると、MPU140で処理された後、記憶デバイス141に展開される。MPU140が展開されたデータに基づいて記録動作を開始する。
【0033】
ここではパターン3で重ね連送を実行する条件が成立した場合(例えばユーザの選択指示があった場合)の給送制御の処理例を中心に説明する。
図3はそのフローチャートであり、
図4(A)~
図6(
C)は記録装置1の動作説明図である。
【0034】
S1では、カットシートSH1からロールシートSH2へ記録媒体を切替える前の最後のカットシートSH1の給送(給送ユニット21による搬送)を開始する。給送ローラ211の回転により、給送トレイ210に積載された最上位のカットシートSH1(先行カットシート)がピックアップされ、搬送ユニット3に向けて給送される。
【0035】
S2で、検知ユニット13により先行カットシートSH1の先端の通過が検知されたか否かが判定される。先端が検知されると、カットシートSH1を所定量搬送して、S3においてその斜行矯正が行われる。斜行矯正は、搬送ユニット3が停止した状態で、搬送ローラ31と従動ローラ32とのニップ部に先行カットシートSH1の先端を突き当て、所定の搬送量だけ給送を継続することにより行う。
図4(A)は斜行矯正動作を例示している。
【0036】
S4で、記録データに基づいて搬送ユニット3を駆動し、先行カットシートSH1の頭出しを行う。すなわち、搬送ユニット3の位置を基準として、先行カットシートSH1が記録ヘッド6と対向する記録開始位置まで先行カットシートSH1を搬送する。S5で、先行カットシートSH1に対する記録動作を開始する。
図4(B)は記録動作の途中の状態を例示している。先行カットシートSH1は、記録ヘッド6によって画像が記録されつつ、下流側へ搬送される。
【0037】
S6で、後続ロールシートSH2の給送開始タイミングが到来したか否かを判定する。重ね連送が選択されている場合、先行カットシートSH1が搬送ユニット3により搬送されている段階で(言い換えると、先行カットシートSH1が搬送ユニット3を通過する前に)、後続ロールシートSH2の給送(給送ユニット22による搬送)を開始する。本実施形態では、検知ユニット13が先行カットシートSH1の通過を検知したこと(先行カットシートSH1の後端を検知したこと)を契機とする。S6で先行カットシートSH1が検知ユニット13を通過したことを検知すると、給送ユニット21の給送モータ212の駆動を停止して、S7へ進む。
図4(C)は先行カットシートSH1が検知ユニット13を通過した状態を例示している。先行カットシートSH1は排出ユニット4に到達している。
【0038】
S7で、後続ロールシートSH2の給送を開始する。給送モータ222の駆動による後続ロールシートSH2の搬送速度は、先行カットシートSH1の搬送速度よりも速くする。これにより、後続ロールシートSH2と先行カットシートSH1との距離を詰めることができる。
【0039】
S8で後続ロールシートSH2の先端が検知ユニット13を通過したことが検知ユニット13によって検知されると、S9へ進む。S9では、後続ロールシートSH2の搬送量を制御することで、先行カットシートSH1の後端部と後続ロールシートSH2の先端部との重なり部を形成する。
【0040】
図5(A)は重なり部が形成された態様を示している。本実施形態では、後続ロールシートSH2は、先行カットシートSH1の下側(記録ヘッド6による記録面と反対側の面)に重ねられる。先行カットシートSH1の記録品位を優先する場合、重なり部は先行カットシートSH1の後端部の余白領域とする。一方、スループットを優先する場合、重なり部が記録領域に及んでもよい。なお、先行カットシートSH1の余白領域の幅等の記録条件によっては、重ね連送が選択されていても、重なり部が形成されない場合があってもよい。この場合においても、先行カットシートSH1が搬送ユニット3によって搬送されている段階で、給送ユニット22による後続ロールシートSH2の搬送を開始することで、シート間の距離を詰めることができ、スループットを向上できる。
【0041】
S9で重なり部が形成されると、先行カットシートSH1の記録動作に伴って、重なり部が搬送ユニット3によって挟持搬送される。これにより先行カットシートSH1と後続ロールシートSH2が搬送ユニット3によって同時に搬送される。給送ユニット22による後続ロールシートSH2の搬送は、搬送ユニット3と同期的に制御される。
【0042】
S10で、先行カットシートSH1の記録動作が完了したか否かを判定し、完了した場合はS11へ進む。S11では先行カットシートSH1の装置外への排出動作が開始される。先行カットシートSH1の排出動作中、搬送ユニット3は記録動作のように間欠駆動ではなく連続駆動であってもよい。
【0043】
先行カットシートSH1の排出動作中、S12では後続ロールシートSH2の斜行矯正を行う。本実施形態では、搬送ユニット3と給送ユニット22との間で、ロールシートSH2に張力を発生させる張力発生制御を実行し、ロールシートSH2の斜行を矯正する。
図5(B)はロールシートSH2の斜行矯正態様を例示している。
【0044】
ロールシートSH2に張力が発生している状態で、搬送ユニット3によってロールシートSH2を搬送することにより、斜行の度合いに応じてロールシートSH2の幅方向(Y方向)で搬送量が変動する。これによりロールシートSH2の斜行を矯正することができる。この斜行矯正動作は、先行カットシートSH1の記録動作の後に行われるので、先行カットシートSH1の記録動作に対する影響はない。
【0045】
ロールシートSH2の張力は、給送ユニット22を制御する張力発生制御により発生させることができる。例えば、給送ユニット22によるロールシートSH2の搬送速度(送り出し速度)を減速し、搬送ユニット3よりも遅くする。また、例えば、搬送ユニット3による搬送が継続される範囲で給送ユニット22を巻き取り方向に駆動し、搬送ユニット3によるロールシートSH2の搬送に抵抗を与える。
【0046】
S13では、後続ロールシートSH2の頭出しを行う。頭出しは、後続ロールシートSH2を巻き戻した後、後続ロールシートSH2に記録する画像の記録データに基づいて搬送ユニット3を駆動することで行う。巻き戻しは、後続ロールシートSH2の先端が搬送ユニット3のニップ部に挟持される位置まで行う。その後、搬送ユニット3の位置を基準として、後続ロールシートSH2が記録ヘッド6と対向する記録開始位置まで後続ロールシートSH2を搬送する。
図5(C)は後続ロールシートSH2の頭出しが完了した態様を例示している。後続ロールシートSH2の頭出しは、先行カットシートSH1が搬送ユニット3を通過しておれば、その排出動作中に行うことができる。
図5(C)は、先行カットシートSH1が排出ユニット4を通過する前に、後続ロールシートSH2の頭出しが完了した例を示している。このように本実施形態では、後続ロールシートSH2の頭出しを早期に行うことができ、スループットを向上できる。
【0047】
S14では後続ロールシートSH2の記録動作を開始する。S15で後続ロールシートSH2の記録動作が完了したか否かを判定し、完了するとS16へ進む。S16では後続ロールシートSH2の排出動作を行い、その後端が切断ユニット5に到達すると排出を停止して後続ロールシートSH2を切断ユニット5で切断する。
図6(A)はその切断態様を例示している。後続ロールシートSH2から、記録済みのカットシートSH2’が切り出される。以上により一回の処理が終了する。
【0048】
その後、ロールシートSH2に対する記録動作を行う場合には、ロールシートSH2を巻き取り、
図6(B)に例示するように頭出しを行って記録動作を行う。カットシートSH1に対する記録動作を行う場合には、
図6(C)に例示するように、ロールシートSH2を、その先端が検知ユニット13の検知位置よりも下流に位置するように巻き取り、カットシートSH1の給送や記録動作を進める。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、先行カットシートSH1が搬送ユニット3によって搬送されている段階で、給送ユニット22による後続ロールシートSH2の搬送が開始される。先行カットシートSH1の記録後、後続ロールシートSH2の記録を早期に開始することができる。したがって、記録媒体を切り替え可能な記録装置1において、記録媒体の切り替えを素早く行い、スループットを向上できる。また、先行カットシートSH1に後続ロールシートSH2の先端部を重ね合わせることができ、更にスループットを向上できる。また、先行カットシートSH1の排出中に後続ロールシートSH2の斜行矯正や頭出しを行うことができ、更にスループットを向上できる。
【0050】
<他の実施形態>
上記実施形態では、給送ユニット2が二つの給送ユニット21、22を備える構成を例示したが、三つ以上の給送ユニットを備えていてもよい。カットシートSH1とロールシートSH2はY方向のサイズ(幅)が同じであっても異なっていてもよい。給送する記録媒体として、カットシートSH1とロールシートSH2を例示したが、種類の異なるカットシートの組み合わせであってもよい。種類とはカットシートのサイズ、厚み、材質の少なくともいずれかであってもよい。
【0051】
給送ユニット21、22の配置としては、様々な配置を選択可能である。例えば、後ろトレイと呼ばれるような記録装置の後方上側に配置された形態でもよいし、カセットと呼ばれるような記録装置の下側に配置される形態であってもよい。給送ユニット21、22との配置は入れ替わっていてもよい。
【0052】
ロールシートSH2の頭出しは、キャリッジ7にシートの先端を検知する先端検知センサを設け、この先端検知センサの検知結果を利用してもよい。先端検知センサとしては光学式センサを利用可能である。ロールシートSH2の頭出しにおいては、ロールシートSH2の先端が先端検知センサで検知される位置までロールシートSH2を搬送し、又は、巻き戻し、その後に記録データに対応した位置にロールシートSH2を搬送してもよい。
【0053】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0054】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0055】
1 記録装置、2 給送ユニット、3 搬送ユニット、6 記録ヘッド、14 制御ユニット、21 給送ユニット、22 給送ユニット