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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
G05B19/05 D
G05B19/05 L
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021017396
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120481
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊戸 靖則
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026639(JP,A)
【文献】特開2006-195780(JP,A)
【文献】特開2016-218866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04 -19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の監視項目をサンプリングするための複数の拡張ユニットと、
伝送路を介して前記複数の拡張ユニットの各々に接続され、前記設備を監視するための制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
前記複数の拡張ユニットの中の第1の拡張ユニットに第1のサンプリング指示を送信し、
前記複数の拡張ユニットの中の第2の拡張ユニットに第2のサンプリング指示を前記第1のサンプリング指示の送信と同じタイミングで送信し、
前記第1のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第1の拡張ユニットとの間の第1の伝送遅延時間に基づく第1の待ち時間の情報を含み、
前記第2のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第2の拡張ユニットとの間の第2の伝送遅延時間に基づく第2の待ち時間の情報を含み、
前記第1の拡張ユニットは、
前記第1のサンプリング指示を受信してから、前記第1の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始し、
第1のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信し、
前記第2の拡張ユニットは、
前記第2のサンプリング指示を受信してから、前記第2の待ち時間の経過後に、前記第1の拡張ユニットにおけるサンプリング処理の開始と同じタイミングでサンプリング処理を開始し、
第2のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信し、
前記制御ユニットは、
時計回路を備え、
固定時間から前記第1の伝送遅延時間を減算することにより、前記第1の待ち時間を算出し、
前記固定時間から前記第2の伝送遅延時間を減算することにより、前記第2の待ち時間を算出し、
前記第1のサンプリング指示および前記第2のサンプリング指示を送信してから、前記固定時間の経過後に、前記時計回路からタイムスタンプを取得し、
受信した前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果の各々に前記タイムスタンプを付加する、監視システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記第1のサンプリング結果のタイムスタンプと、前記第2のサンプリング結果のタイムスタンプとが同じであることに基づいて、前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果を関連付ける、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、
前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットに、伝送遅延時間を計測するための計測用データをそれぞれ送信し、
前記計測用データを受信した前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットから、前記計測用データをそれぞれ受信し、
前記時計回路により、前記計測用データの送信時間から受信までの合計伝送遅延時間を計測し、
前記合計伝送遅延時間に基づいて、前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出する、請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
設備の監視項目をサンプリングするための複数の拡張ユニットと、
伝送路を介して前記複数の拡張ユニットの各々に接続され、前記設備を監視するための制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
前記複数の拡張ユニットの中の第1の拡張ユニットに第1のサンプリング指示を送信し、
前記複数の拡張ユニットの中の第2の拡張ユニットに第2のサンプリング指示を送信し、
前記第1のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第1の拡張ユニットとの間の第1の伝送遅延時間に基づく第1の待ち時間の情報を含み、
前記第2のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第2の拡張ユニットとの間の第2の伝送遅延時間に基づく第2の待ち時間の情報を含み、
前記第1の拡張ユニットは、
前記第1のサンプリング指示を受信してから、前記第1の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始し、
第1のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信し、
前記第2の拡張ユニットは、
前記第2のサンプリング指示を受信してから、前記第2の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始し、
第2のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信し、
前記制御ユニットは、
固定時間から前記第1の伝送遅延時間を減算することにより、前記第1の待ち時間を算出し、
前記固定時間から前記第2の伝送遅延時間を減算することにより、前記第2の待ち時間を算出し、
前記制御ユニットは、
時計回路を備え、
前記第1のサンプリング指示および前記第2のサンプリング指示を送信してから、前記固定時間の経過後に、前記時計回路からタイムスタンプを取得し、
受信した前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果の各々に前記タイムスタンプを付加し、
前記制御ユニットは、
前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットに、伝送遅延時間を計測するための計測用データをそれぞれ送信し、
前記計測用データを受信した前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットから、前記計測用データをそれぞれ受信し、
前記時計回路により、前記計測用データの送信時間から受信までの合計伝送遅延時間を計測し、
前記合計伝送遅延時間に基づいて、前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出し、
前記拡張ユニットは、
受信回路と、
送信回路と、
受信データを格納するための受信メモリと、
送信用データを格納するための送信メモリと、
前記受信メモリおよび前記送信メモリを介さずに、前記受信回路および前記送信回路を接続するパスとを備え、
前記計測用データは、前記パスを有効にする設定を含み、
前記拡張ユニットは、前記計測用データを受信したことに基づいて、前記受信回路と前記パスと前記送信回路とを介して、前記計測用データを返信する、監視システム。
【請求項5】
前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出することは、前記合計伝送遅延時間から、前記制御ユニットによる送受信遅延、前記受信回路の遅延、前記送信回路の遅延、および、前記パスの遅延を減じることを含む、請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出することは、前記合計伝送遅延時間から、前記制御ユニットによる送受信遅延、前記受信回路の遅延、前記送信回路の遅延、復号処理の遅延、符号化処理の遅延、および、前記パスの遅延を減じることを含む、請求項4に記載の監視システム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果のそれぞれが、予め定められた閾値以上であるか否かを判定することに基づいて、前記設備の異常を検出する、請求項1~6のいずれかに記載の監視システム。
【請求項8】
設備の監視方法であって、
制御ユニットが、伝送路を介して第1の拡張ユニットに第1のサンプリング指示を送信するステップと、
前記制御ユニットが、前記伝送路を介して第2の拡張ユニットに第2のサンプリング指示を前記第1のサンプリング指示の送信と同じタイミングで送信するステップとを含み、
前記第1のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第1の拡張ユニットとの間の第1の伝送遅延時間に基づく第1の待ち時間の情報を含み、
前記第2のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第2の拡張ユニットとの間の第2の伝送遅延時間に基づく第2の待ち時間の情報を含み、
前記監視方法はさらに、
前記第1の拡張ユニットが、前記第1のサンプリング指示を受信してから、前記第1の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始するステップと、
前記第1の拡張ユニットが、第1のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信するステップと、
前記第2の拡張ユニットが、前記第2のサンプリング指示を受信してから、前記第2の待ち時間の経過後に、前記第1の拡張ユニットにおけるサンプリング処理の開始と同じタイミングでサンプリング処理を開始するステップと、
前記第2の拡張ユニットが、第2のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信するステップと、
前記制御ユニットが、固定時間から前記第1の伝送遅延時間を減算することにより、前記第1の待ち時間を算出するステップと、
前記制御ユニットが、前記固定時間から前記第2の伝送遅延時間を減算することにより、前記第2の待ち時間を算出するステップと、
前記制御ユニットが、前記第1のサンプリング指示および前記第2のサンプリング指示を送信してから、前記固定時間の経過後のタイムスタンプを取得するステップと、
前記制御ユニットが、受信した前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果の各々に前記タイムスタンプを付加するステップとを含む、監視方法。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記第1のサンプリング結果のタイムスタンプと、前記第2のサンプリング結果のタイムスタンプとが同じであることに基づいて、前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果を関連付けるステップをさらに含む、請求項8に記載の監視方法。
【請求項10】
前記制御ユニットが、前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットに、伝送遅延時間を計測するための計測用データをそれぞれ送信するステップと、
前記制御ユニットが、前記計測用データを受信した前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットから、前記計測用データをそれぞれ受信するステップと、
前記制御ユニットが、前記計測用データの送信時間から受信までの合計伝送遅延時間を計測するステップと、
前記制御ユニットが、前記合計伝送遅延時間に基づいて、前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出するステップとをさらに含む、請求項8に記載の監視方法。
【請求項11】
設備の監視方法であって、
制御ユニットが、伝送路を介して第1の拡張ユニットに第1のサンプリング指示を送信するステップと、
前記制御ユニットが、前記伝送路を介して第2の拡張ユニットに第2のサンプリング指示を送信するステップとを含み、
前記第1のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第1の拡張ユニットとの間の第1の伝送遅延時間に基づく第1の待ち時間の情報を含み、
前記第2のサンプリング指示は、前記制御ユニットと前記第2の拡張ユニットとの間の第2の伝送遅延時間に基づく第2の待ち時間の情報を含み、
前記監視方法はさらに、
前記第1の拡張ユニットが、前記第1のサンプリング指示を受信してから、前記第1の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始するステップと、
前記第1の拡張ユニットが、第1のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信するステップと、
前記第2の拡張ユニットが、前記第2のサンプリング指示を受信してから、前記第2の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始するステップと、
前記第2の拡張ユニットが、第2のサンプリング結果を前記制御ユニットに送信するステップとを含み、
前記制御ユニットが、固定時間から前記第1の伝送遅延時間を減算することにより、前記第1の待ち時間を算出するステップと、
前記制御ユニットが、前記固定時間から前記第2の伝送遅延時間を減算することにより、前記第2の待ち時間を算出するステップとをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記第1のサンプリング指示および前記第2のサンプリング指示を送信してから、前記固定時間の経過後のタイムスタンプを取得するステップと、
前記制御ユニットが、受信した前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果の各々に前記タイムスタンプを付加するステップとをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットに、伝送遅延時間を計測するための計測用データをそれぞれ送信するステップと、
前記制御ユニットが、前記計測用データを受信した前記第1の拡張ユニットおよび前記第2の拡張ユニットから、前記計測用データをそれぞれ受信するステップと、
前記制御ユニットが、前記計測用データの送信時間から受信までの合計伝送遅延時間を計測するステップと、
前記制御ユニットが、前記合計伝送遅延時間に基づいて、前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出するステップとをさらに含み、
拡張ユニットは、受信メモリおよび送信メモリを介さずに、受信回路および送信回路を接続するパスを備え、
前記計測用データは、前記パスを有効にする設定を含み、
前記監視方法は、前記拡張ユニットが、前記計測用データを受信したことに基づいて、前記受信回路と前記パスと前記送信回路とを介して、前記計測用データを返信するステップをさらに含む、監視方法。
【請求項12】
前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出するステップは、前記合計伝送遅延時間から、前記制御ユニットによる送受信遅延、前記受信回路の遅延、前記送信回路の遅延、および、前記パスの遅延を減じるステップを含む、請求項11に記載の監視方法。
【請求項13】
前記第1の伝送遅延時間および前記第2の伝送遅延時間を算出するステップは、前記合計伝送遅延時間から、前記制御ユニットによる送受信遅延、前記受信回路の遅延、前記送信回路の遅延、復号処理の遅延、符号化処理の遅延、および、前記パスの遅延を減じるステップを含む、請求項11に記載の監視方法。
【請求項14】
前記第1のサンプリング結果および前記第2のサンプリング結果のそれぞれが、予め定められた閾値以上であるか否かを判定することに基づいて、前記設備の異常を検出ステップをさらに含む、請求項8~13のいずれかに記載の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備の監視システムに関し、より特定的には、監視システムにおけるサンプリングの同期に関する。
【背景技術】
【0002】
変電設備等の保護のために、保護装置(保護リレー装置等)が使用されることがある。保護装置は、アナログ入力(AI(Analog Input))回路から取得した電圧または電流等の監視項目のサンプリングデータに基づいて、開閉器等を制御し得る。近年、保護装置および複数のAI回路が互いに離れた位置に設置され、光ファイバー等で通信するように構成されることがある。この場合、各AI回路と保護装置との間の伝送遅延時間の差が、保護装置が取得するサンプリングデータのサンプリング時刻にずれを生じさせる可能性がある。そのため、サンプリングの同期方法が必要とされている。
【0003】
サンプリングの同期方法に関し、例えば、昭62-254619号公報(特許文献1)は、「伝送路を介して接続された上位装置と下位装置との動作サンプリング時刻の同期をとるサンプリング時刻同期方式において、下位装置の同期回路部にあらかじめ伝送路の遅延時間情報を設定しておき、下位装置の同期信号を遅延時間だけ遅らせて立ち上げることにより、上位装置からの同期信号の引き込み時間をほとんどなくし、即時にサンプリング時刻同期がとれるようにした」サンプリング時刻同期方式を開示している([概要]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】昭62-254619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、互いに離れた位置に設置された複数のAI回路の各々によるサンプリングの時刻同期ができない。したがって、互いに離れた位置に設置された複数のAI回路の各々によるサンプリングの時刻同期を可能にするための技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、互いに離れた位置に設置された複数のAI回路の各々によるサンプリングの時刻同期を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うと監視システムが提供される、監視システムは、設備の監視項目をサンプリングするための複数の拡張ユニットと、伝送路を介して複数の拡張ユニットの各々に接続され、設備を監視するための制御ユニットとを備える。制御ユニットは、複数の拡張ユニットの中の第1の拡張ユニットに第1のサンプリング指示を送信し、複数の拡張ユニットの中の第2の拡張ユニットに第1のサンプリング指示の送信と同じタイミングで第2のサンプリング指示を送信する。第1のサンプリング指示は、制御ユニットと第1の拡張ユニットとの間の第1の伝送遅延時間に基づく第1の待ち時間の情報を含む。第2のサンプリング指示は、制御ユニットと第2の拡張ユニットとの間の第2の伝送遅延時間に基づく第2の待ち時間の情報を含む。第1の拡張ユニットは、第1のサンプリング指示を受信してから、第1の待ち時間の経過後に、サンプリング処理を開始し、第1のサンプリング結果を制御ユニットに送信する。第2の拡張ユニットは、第2のサンプリング指示を受信してから、第2の待ち時間の経過後に、第1のサンプリング処理の開始と同じタイミングでサンプリング処理を開始し、第2のサンプリング結果を制御ユニットに送信する。
【発明の効果】
【0008】
ある実施の形態に従うと、互いに離れた位置に設置された複数のAI回路の各々によるサンプリングの時刻同期を可能にすることが可能である。
【0009】
この開示内容の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ある実施の形態に従う監視システム10の構成の一例を示す図である。
図2】AIサンプリング指示フレーム210およびAIデータフレーム220の構成の一例を示す図である。
図3】待ち時間テーブル300の構成の一例を示す図である。
図4】監視システム10における通信シーケンスの一例を示す図である。
図5】拡張ユニット通信回路105および通信回路111のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素の第1の例を示す図である。
図7】カットスルーパス518を使用しない場合の通信の流れの一例を示す図である。
図8】計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、これ以降の説明では、複数の同一の構成に対して言及する場合、構成123A,123Bのように表現することがある。また、それらを総称する場合は、構成123と表現する。
<A.システム構成>
図1は、本実施の形態に従う監視システム10の構成の一例を示す図である。監視システム10は、例えば、変電所または発電所等を含む任意の施設内の設備を監視する。監視対象の設備は、送電線等を含み得る。また、監視システム10は、例えば、監視対象の設備の異常な電流または電圧等を検知した場合、開閉器等を制御して送電を停止し得る。
【0012】
(a.ハードウェア構成)
監視システム10は、制御ユニット100と、複数の拡張入力ユニット110と、電流/電圧センサ130とを含む。また、制御ユニット100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、ネットワークI/F(Interface)回路103と、時計回路104と、拡張ユニット通信回路105と、DIO(Digital Input Output)回路106と、AI回路107とを備える。また、拡張入力ユニット110は、通信回路111と、AI回路112とを備える。電流/電圧センサ130は、電流センサ、または、電圧センサである。複数の拡張入力ユニット110の各々は、伝送路120を介して、拡張ユニット通信回路105に接続される。ある局面において、伝送路120は、光ファイバーであってもよい。他の局面において、伝送路120は、任意の有線回路または無線機器によって実現されてもよい。
【0013】
制御ユニット100は、保護リレー装置としての機能を備え、拡張入力ユニット110と連係することで、多数の設備を監視し得る。制御ユニット100は、単体で設備を監視する機能と、拡張入力ユニット110と連携して設備を監視する機能とを備える。以下に、各々の機能について説明する。
【0014】
(b.制御ユニット単体での監視機能)
まず、制御ユニット100における単体で設備を監視する機能について説明する。AI回路107は、1または複数の電流/電圧センサ130と接続され、電流または電圧のサンプリングデータを取得する。DIO回路106は、例えば,開閉器に接続されており、開閉器のオン/オフを切り替える信号を出力する。
【0015】
CPU101は、AI回路107からサンプリングデータを取得する。また、CPU101は、サンプリングデータを参照して、監視対象の電流または電圧に異常があるか否かを判定し得る。さらに、CPU101は、監視対象の電流または電圧に異常があると判定したことに基づいて、DIO回路106の出力を切り替えて、開閉器を制御する。こうすることで、CPU101は、監視対象の設備に異常が発生したとき、開閉器を制御して、送電を停止し得る。
【0016】
(c.制御ユニットおよび拡張入力ユニット110の連携機能)
次に、制御ユニット100における拡張入力ユニット110と連係して設備を監視する機能について説明する。拡張ユニット通信回路105は、1または複数の拡張入力ユニット110と通信する。拡張ユニット通信回路105は、複数の拡張入力ユニット110と通信するために、複数の通信ポートを備えていてもよい。
【0017】
拡張入力ユニット110内のAI回路112は、1または複数の電流/電圧センサ130に接続されており、電流または電圧のサンプリングデータを取得する。通信回路111は、AI回路112が取得したサンプリングデータを拡張ユニット通信回路105に送信する。拡張ユニット通信回路105は、内部バスを介して、各拡張入力ユニット110から受信したサンプリングデータをCPU101に送信する。言い換えれば、拡張入力ユニット110は、制御ユニット100から離れた位置に設置可能なAI回路である。
【0018】
CPU101は、各拡張入力ユニット110から取得したサンプリングデータを参照して、監視対象の電流または電圧に異常があるか否かを判定し得る。さらに、CPU101は、監視対象の電流または電圧に異常があると判定したことに基づいて、DIO回路106の出力を切り替えて、開閉器を制御する。ある局面において、制御ユニット100は、複数のDIO回路106を備えていてもよい。その場合、各DIO回路106は、各拡張入力ユニット110が電流または電圧をサンプリングする設備の送電を制御し得る。
【0019】
いずれの機能においても、メモリ102は、異常判定に必要な閾値等のデータ、および、CPU101が実行するプログラム等を格納し得る。CPU101は、メモリ102を参照して、適宜必要なプログラムおよびデータを取得する。また、ネットワークI/F回路103は、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークに接続されている。CPU101は、監視対象の異常を検出したことに基づいて、ネットワークI/F回路103を介して、外部の装置にアラートを通知してもよい。時計回路104は、タイムスタンプを生成する。当該タイムスタンプは、後述するサンプリング同期機能および伝送遅延時間の測定機能に使用され得る。
【0020】
(d.サンプリング同期機能の概要)
次に、監視システム10が有するサンプリング同期機能の概要について説明する。上記のように、制御ユニット100と、複数の拡張入力ユニット110とは、互いに離れた位置に設置され得る。それにより、制御ユニット100は、広範囲の設備を監視し得る。しかしながら、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送距離の差が、伝送遅延時間の差を生じさせ得る。例えば、制御ユニット100および拡張入力ユニット110Aの間の第1の伝送遅延時間と、制御ユニット100および拡張入力ユニット110Bの間の第2の伝送遅延時間とは異なることがある。
【0021】
AI回路112のサンプリングタイミングは、制御ユニット100から各拡張ユニット110に伝達されるが、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間が異なる場合、各拡張入力ユニット110のサンプリングのタイミングがずれてしまう。サンプリングのタイミングがずれると、制御ユニット100上で監視プログラムが正常に動作しないことがある。そこで、監視システム10は、伝送遅延時間の影響を抑制するために、各拡張入力ユニット110のサンプリングタイミングを同期させる機能を備える。
【0022】
監視システム10が有するサンプリング同期機能は、複数の拡張入力ユニット110におけるサンプリングタイミングを同期させる。例えば、制御ユニット100は、「サンプリング指示フレーム」を拡張入力ユニット110A,110B,110Cの各々に送信する。サンプリング指示フレームは、宛先の拡張入力ユニット110のための「待ち時間の情報」を含む。なお、これ以降、本実施の形態における通信データを全てフレームと呼ぶが、本実施の形態における通信データは任意の形式で実現され得る。ある局面において、本実施の形態における通信データは、フレームだけでなく、任意のパケットまたは信号により実現されてもよい。
【0023】
各拡張入力ユニット110A,110B,110Cは、受信したサンプリング指示フレームに含まれる待ち時間の情報で指定される時間が経過した後にサンプリングを開始する。待ち時間の情報で指定される時間は、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間(伝送路120の敷設長に依存する)に基づいて決定される。当該待ち時間を用いたサンプリング同期機能により、拡張入力ユニット110A,110B,110Cの各サンプリングタイミングは一致する。サンプリング指示フレームの詳細およびサンプリングデータのタイムスタンプの生成等のより詳細な手順については、図2図4を参照して説明する。
【0024】
(e.伝送遅延時間の測定機能の概要)
次に、監視システム10が有する伝送遅延時間の測定機能の概要について説明する。制御ユニット100は、各拡張入力ユニット110の待ち時間を決定するために、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間を計測する。
【0025】
制御ユニット100は、計測用フレームを各拡張入力ユニット110に送信する。制御ユニット100は、各拡張入力ユニット110から返信されてくる応答フレームを受信する。ある局面において、各拡張入力ユニット110は、計測用フレームを応答フレームとして、制御ユニット100に送信してもよい。他の局面において、各拡張入力ユニット110は、計測用フレームに対する応答フレームを生成し、当該応答フレームを制御ユニット100に送信してもよい。
【0026】
拡張入力ユニット110は、通常のフレームを受信した場合、受信メモリ(バッファ)(図示せず)に一旦フレームを格納する。さらに、拡張入力ユニット110は、フレームを送信する場合、送信メモリ(バッファ)(図示せず)に一旦フレームを格納する。
【0027】
しかし、拡張入力ユニット110は、計測用フレームを受信した場合、受信メモリおよび送信メモリを経由せず、代わりに、カットスルーパス(図示せず)を経由して、計測用フレームを折り返し送信する。計測用フレームは、他のフレームの影響を受けやすい送信メモリおよび受信メモリを経由しないため、拡張入力ユニット110内での計測用フレームの処理(受信してから送信するまで)の遅延はほぼ固定時間となる。そのため、制御ユニット100は、計測用フレームの往復時間から、拡張入力ユニット110内での計測用フレームの処理時間を減算することで、精度の高い伝送遅延時間を算出し得る。伝送遅延時間の測定に関するより詳細な手順については、図5図8を参照して説明する。
【0028】
<B.サンプリング同期機能>
次に、図2図4を参照して、監視システム10のサンプリング同期機能について説明する。ここでのサンプリング同期機能とは、各拡張入力ユニット110のサンプリングの開始時刻を同期させることを示す。
【0029】
図2は、AIサンプリング指示フレーム210およびAIデータフレーム220の構成の一例を示す図である。図2を参照して、AIサンプリング指示フレーム210およびAIデータフレーム220の構成について説明する。
【0030】
AIサンプリング指示フレーム210は、拡張入力ユニット110に対するサンプリングの実行命令を含み、制御ユニット100から拡張入力ユニット110に対して送信される。AIサンプリング指示フレーム210は、フラグ211、コマンド212、シーケンス番号213、待ち時間214、および、FCS(Frame Check Sequence)215を含む。
【0031】
フラグ211は、フレームの先頭を示す制御コードである。例えば、8B10BコーディングにおけるKコードなどが該当する。コマンド212は、拡張入力ユニット110に対するサンプリング指示である。シーケンス番号213は、フレームに付与される通し番号である。シーケンス番号213は、フレームの正しい並び順の判別、および、フレームの欠落の有無の検出に使用され得る。
【0032】
待ち時間214は、宛先の拡張入力ユニット110の待ち時間を示す。AIサンプリング指示フレーム210を受信した拡張入力ユニット110は、AIサンプリング指示フレーム210を受信してから待ち時間214で指定された時間の経過後に、サンプリングを開始する。FCS215は、誤り検出用のコードである。FCS215は、通信途中にAIサンプリング指示フレーム210に誤りが生じていないか否かを検出するために使用される。
【0033】
AIデータフレーム220は、拡張入力ユニット110にて取得されたAIデータ(サンプリングデータ)を含み、拡張入力ユニット110から制御ユニット100に対して送信される。AIデータフレーム220は、フラグ221、コマンド222、シーケンス番号223、AIデータ224、および、FCS225を含む。
【0034】
フラグ221は、フレームの先頭を示す制御コードである。例えば、8B10BコーディングにおけるKコードなどが該当する。コマンド222は、AIデータの送受信の指示である。シーケンス番号223は、フレームに付与される通し番号である。シーケンス番号223は、フレームの正しい並び順の判別、および、フレームの欠落の有無の検出に使用され得る。
【0035】
AIデータ224は、拡張入力ユニット110によって取得されたAIデータを含む。ある局面において、拡張入力ユニット110に複数の電流/電圧センサ130が接続されている場合、AIデータ224は、各々の電流/電圧センサ130から取得されたAIデータを含み得る。FCS225は、誤り検出用のコードである。FCS225は、通信途中にAIデータフレーム220に誤りが生じていないか否かを検出するために使用される。
【0036】
図3は、待ち時間テーブル300の構成の一例を示す図である。制御ユニット100は、待ち時間テーブル300を参照して、待ち時間214の値を決定する。また、待ち時間テーブル300は、メモリ102に格納される。ある局面において、待ち時間テーブル300は、リレーショナルデータベースのテーブルとして表現されてもよいし、JSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)等の他の任意のデータ形式で表現されてもよい。待ち時間テーブル300は、ユニット番号301と、伝送遅延時間302と、待ち時間303とを含む。
【0037】
ユニット番号301は、各拡張入力ユニット110の識別子を含む。一例として、拡張入力ユニット110Aの識別子は1であり、拡張入力ユニット110Bの識別子は2であり、拡張入力ユニット110Cの識別子は3である。
【0038】
伝送遅延時間302は、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間を含む。例えば、制御ユニット100および拡張入力ユニット110Aの間の伝送遅延時間は、1.5μ(マイクロ)秒である。ある局面において、伝送遅延時間の単位は、m(ミリ)秒、μ秒、または、n(ナノ)秒等の任意の単位であってもよい。
【0039】
待ち時間303は、各拡張入力ユニット110におけるサンプリング開始までの待ち時間である。例えば、拡張入力ユニット110Aは、AIサンプリング指示フレーム210を受信してから3.5μ秒が経過してからサンプリングを開始する。
【0040】
制御ユニット100は、全ての拡張入力ユニット110が、AIサンプリング指示フレーム210の送信タイミングから予め定められた「固定時間」の経過後に一斉にサンプリングを開始するように、拡張入力ユニット110の待ち時間を決定する。
【0041】
各拡張入力ユニット110の待ち時間は、固定時間から、各拡張入力ユニット110の伝送遅延時間を減ずることで算出される。例えば、固定時間が5μ秒であったとする。制御ユニット100および拡張入力ユニット110Aの間の伝送遅延時間は、1.5μ秒である。この場合、拡張入力ユニット110Aの待ち時間は、3.5μ秒(=5μ秒-1.5μ秒)となる。
【0042】
拡張入力ユニット110Aは、AIサンプリング指示フレーム210の送信タイミングから1.5μ秒後にAIサンプリング指示フレーム210を受信する。そして、拡張入力ユニット110Aは、AIサンプリング指示フレーム210の受信時から、待ち時間「3.5μ秒」だけサンプリングの実行を遅らせる。こうすることで、拡張入力ユニット110Aは、AIサンプリング指示フレーム210の送信タイミングから予め定められた固定時間(この場合、固定時間は5μ秒)後にサンプリングを開始し得る。他の拡張入力ユニット110も同様に動作する。
【0043】
図4は、監視システム10における通信シーケンスの一例を示す図である。図4を参照して、サンプリング同期機能の詳細な手順について説明する。図4に示す例では、制御ユニット100は、拡張入力ユニット110A,110B,110Cの各々と同様の手順で通信する。
【0044】
ステップS410において、制御ユニット100は、AIサンプリング指示フレーム210を拡張入力ユニット110A,110B,110Cの各々に送信する。より具体的には、制御ユニット100は、メモリ102内の待ち時間テーブル300を参照して、各拡張入力ユニット110の待ち時間303の値を取得する。そして、制御ユニット100は、宛先に対応する待ち時間303の値を待ち時間214に設定する。例えば、AIサンプリング指示フレーム210の宛先が拡張入力ユニット110Aであれば、待ち時間214の値は、3.5μ秒である。また、AIサンプリング指示フレーム210の宛先が拡張入力ユニット110Bであれば、待ち時間214の値は、4.0μ秒である。
【0045】
ステップS420において、各拡張入力ユニット110は、AIサンプリング指示フレーム210を受信する。各拡張入力ユニット110のAIサンプリング指示フレーム210の受信タイミングは、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送路120の敷設長に依存する。例えば、拡張入力ユニット110Aは、制御ユニット100がAIサンプリング指示フレーム210を送信してから1.5μ秒後に、AIサンプリング指示フレーム210を受信する。また、拡張入力ユニット110Bは、制御ユニット100がAIサンプリング指示フレーム210を送信してから1.0μ秒後に、AIサンプリング指示フレーム210を受信する。同様に、拡張入力ユニット110Cは、制御ユニット100がAIサンプリング指示フレーム210を送信してから1.2μ秒後に、AIサンプリング指示フレーム210を受信する。
【0046】
ステップS430において、各拡張入力ユニット110は、受信したAIサンプリング指示フレーム210に含まれる待ち時間303の値に基づいて、サンプリングの実行を遅らせる。例えば、拡張入力ユニット110Aは、AIサンプリング指示フレーム210を受信してからサンプリングの実行を3.5μ秒遅らせる。また、拡張入力ユニット110Bは、AIサンプリング指示フレーム210を受信してからサンプリングの実行を4.0μ秒遅らせる。同様に、拡張入力ユニット110Cは、AIサンプリング指示フレーム210を受信してからサンプリングの実行を3.8μ秒遅らせる。
【0047】
ステップS440において、各拡張入力ユニット110は、待ち時間303の値で指定された時間の経過後に、サンプリングを開始する。すなわち、拡張入力ユニット110A,110B,110Cは、AIサンプリング指示フレーム210の送信開始から固定時間400の経過後に、同時にサンプリングを実行する。図3の待ち時間テーブル300の値に従う場合、各拡張入力ユニット110は、AIサンプリング指示フレーム210の送信開始から、5μ秒の経過後に、同時にサンプリングを実行する。各拡張入力ユニット110は、複数の電流/電圧センサ130と接続されている場合、複数のAIデータ(サンプリングデータ)を取得し得る。
【0048】
ステップS450において、制御ユニット100は、AIサンプリング指示フレーム210の送信開始から、固定時間400が経過したタイミングのタイムスタンプを取得する。当該タイムスタンプは、各拡張入力ユニット110が一斉にサンプリングを実行し始めるタイミングとなる。実質的に、ステップS440およびS450の処理は、ほぼ同時に実行され得る。
【0049】
ステップS460において、各拡張入力ユニット110は、取得したAIデータを格納したAIデータフレーム220を制御ユニット100に送信する。ステップS470において、制御ユニット100は、各拡張入力ユニット110から、AIデータフレーム220を受信する。ステップS480において、制御ユニット100は、各拡張入力ユニット110から受信したAIデータフレーム220に、ステップS450にて取得したタイムスタンプを付与する。また、制御ユニット100は、同一のタイムスタンプを付与されたAIデータフレーム220の各々を同一タイミングの計測結果として互いに関連付けて、設備の異常検出に使用し得る。ある局面において、制御ユニット100は、取得したAIデータの各々が、メモリ102に格納される予め定められた閾値以上であるか否か(または、各AIデータが予め定められた条件を満たすか否か等)に基づいて、設備に異常があるか否かを判定し得る。
【0050】
上記のように、各拡張入力ユニット110は、各々に設定された待ち時間に基づいて、サンプリングの実行タイミングを遅延させることにより、サンプリング処理の実行タイミングを同期させることができる。
【0051】
また、各拡張入力ユニット110は、AIサンプリング指示フレーム210の送信タイミングから固定時間400の経過後にサンプリングを開始することがわかっている。そのため、制御ユニット100は、AIサンプリング指示フレーム210の送信タイミングから固定時間の経過後のタイムスタンプを時計回路104から取得し、当該タイムスタンプを受信したサンプリングデータに付加するだけでよい。こうすることで、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間での複雑な同期または時刻合わせ等の処理は不要となり、拡張入力ユニット110は、簡易な構成で実現され得る。
【0052】
さらに、拡張入力ユニット110の数がどれだけ増加しても、制御ユニット100は、図4を参照して説明した手順で、各拡張入力ユニット110のサンプリングの開始タイミングを容易に同期させることができる。
【0053】
<C.伝送遅延時間の測定機能>
次に、図5図8を参照して、制御ユニット100および拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間の計測手順について説明する。ここでの伝送遅延時間とは、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の片方向遅延を示す。
【0054】
図5は、拡張ユニット通信回路105および通信回路111のハードウェア構成の一例を示す図である。拡張ユニット通信回路105は、送信回路501と、受信回路502と、送受信時間計測回路503とを備える。送信回路501は、伝送路120を介して、受信回路511にフレームを送信する。受信回路502は、伝送路120を介して、送信回路517からフレームを受信する。送受信時間計測回路503は、送信回路501によるフレームの送信タイミングのタイムスタンプと、受信回路502によるフレームの受信タイミングのタイムスタンプとを取得する。ある局面において、送受信時間計測回路503は、送受信のタイミングにおいて、時計回路104に時刻を要求してもよい。または、送受信時間計測回路503は、タイマー回路を内蔵し、送信開始をタイマーのStart、受信終了をStopとして送受信間の遅延時間を測定しても良い。
【0055】
通信回路111は、受信回路511と、受信メモリ513と、I/F回路514と、送信メモリ515と、送信回路517と、カットスルーパス518とを備える。受信回路511は、伝送路120を介して、送信回路501からフレームを受信する。また、受信回路511は、受信したフレームを復号し得る。受信メモリ513は、受信回路511が受信したフレームを一時的に格納する。ある局面において、受信メモリ513は、フレームを復号したデータを格納してもよい。他の局面において、受信メモリ513は、フレームそのものを格納してもよい。
【0056】
I/F回路514は、受信メモリに513に格納されたフレーム(または、復号後のデータ)、および、AI回路112から取得したAIデータ(サンプリングデータ)を目的に応じて、他の回路に転送し得る。送信メモリ515は、送信回路517から送信されるフレームを一時的に格納する。ある局面において、送信メモリ515は、符号化前のデータを格納してもよい。他の局面において、送信メモリ515は、符号化されたフレームそのものを格納してもよい。送信回路517は、伝送路120を介して、フレームを受信回路502に送信する。また、送信回路517は、送信予定のデータを符号化し得る。
【0057】
カットスルーパス518は、受信回路511と、送信回路517とを接続する。通常、フレームは、経路530を介して送受信される。言い換えれば、フレームは、受信メモリ513、I/F回路514および送信メモリ515を経由する。受信メモリ513および送信メモリ515におけるフレームの格納時間、および、I/F回路514におけるフレームの転送処理の時間等は、他のデータの影響等を受けるため、大きく変動することがある。そのため、伝送遅延時間の計測において、通信回路111は、受信回路511、カットスルーパス518および送信回路517のみを経由する経路540を使用する。
【0058】
計測用フレーム550は、ヘッダ領域にカットスルーパスの有効および無効の設定ビット560を含む。受信回路511は、カットスルーパスを有効にする設定ビット560を含む計測用フレーム550を受信したとする。この場合、受信回路511は、カットスルーパス518を介して、計測用フレーム550を送信回路517に転送する。そして、送信回路517は、伝送路120を介して、計測用フレーム550を受信回路502に返信する。ある局面において、送信回路517は、受信回路511が受信した計測用フレーム550をそのまま送信してもよい。他の局面において、送信回路517は、受信回路511が受信した計測用フレーム550に対する応答フレームを送信してもよい。CPU101は、計測用フレーム550の送信時のタイムスタンプおよび受信時のタイムスタンプ(計測用フレーム550のRTT((Round-Trip Time)往復時間))を送受信時間計測回路503から取得し得る。または、送受信時間計測回路503がタイマー回路を内蔵している場合、CPU101は、計測用フレーム550の送信開始から受信終了までの間のタイマー計測値(計測用フレーム550のRTT)を送受信時間計測回路503から取得し得る。また、他の局面において、通信回路111は、カットスルーパス518を使用する場合、受信回路511での復号処理、および、送信回路517での符号化処理を行なわなくてもよい。
【0059】
図6は、計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素の第1の例を示す図である。図6を参照して、計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素、および、制御ユニット100および拡張入力ユニット110間の通信遅延時間の算出方法について説明する。
【0060】
計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素は、送信回路501の遅延651と、伝送路120における往路の遅延652と、カットスルーパス518の遅延653と、伝送路120における復路の遅延654と、受信回路502の遅延655とを含む。なお、カットスルーパス518の遅延653は、受信回路511、カットスルーパス518および送信回路517における転送遅延を含む。
【0061】
上記の遅延651~655の内、遅延651,653,655はほぼ固定時間となる。伝送路120における遅延652,654は伝送路120の敷設長に依存する。制御ユニット100のCPU101は、計測用フレーム550のRTT(往復時間)から、遅延651,653,655を減じることで、伝送路120における往復遅延のみを得ることができる。さらに、CPU101は、伝送路120における往復遅延の値を1/2にする(2で除する、または、0.5を乗算する)ことにより、制御ユニット100および拡張入力ユニット110間の通信遅延時間(待ち時間テーブル300の伝送遅延時間302の値)を取得し得る。
【0062】
図7は、カットスルーパス518を使用しない場合の通信の流れの一例を示す図である。設定ビット560によりカットスルーパスが無効になっていた場合、受信回路511は、カットスルーパス518を使用せず、受信メモリ513およびI/F回路514を経由する経路740にフレームを転送する。また、受信回路511は、受信したフレームに対する復号処理を実行する。送信回路517は、送信予定のデータに対して符号化処理を実行する。
【0063】
図8は、計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素の第2の例を示す図である。図8に示す遅延時間の構成要素は、図6に示す遅延時間の構成要素と異なり、復号処理および符号化処理の遅延を含む。図8に示す計測用フレーム550の送受信時に発生する遅延時間の構成要素は、遅延651~655に加えて、受信回路511における復号処理の遅延850、および、送信回路517における符号化処理の遅延855を含む。これらの遅延850,855は、ほぼ固定時間となる。
【0064】
制御ユニット100のCPU101は、計測用フレーム550のRTTから、遅延651,850,653,855,655を減じることで、伝送路120における往復遅延のみを得ることができる。さらに、CPU101は、伝送路120における往復遅延の値を1/2にする(2で除する、または、0.5を乗算する)ことにより、制御ユニット100および拡張入力ユニット110間の通信遅延時間(待ち時間テーブル300の伝送遅延時間302の値)を取得し得る。
【0065】
上記の通り、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110は、カットスルーパス518を用いて、通信時間を計測することにより、伝送遅延時間を正確かつ容易に算出することができる。また、伝送遅延時間を算出する処理において、制御ユニット100のみが時計回路104、またはタイマー回路を備えていればよく、拡張入力ユニット110は、簡易な構成で実現され得る。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に従う監視システム10は、カットスルーパス518を用いることで、制御ユニット100および各拡張入力ユニット110の間の伝送遅延時間を容易、かつ、正確に算出し得る。さらに、監視システム10は、得られた伝送遅延時間を用いて、各拡張入力ユニット110のサンプリング開始時刻を同期させることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0068】
10 監視システム、100 制御ユニット、101 CPU、102 メモリ、103 ネットワークI/F回路、104 時計回路、105 拡張ユニット通信回路、106 DIO回路、107,112 AI回路、110,110A,110B,110C 拡張入力ユニット、111 通信回路、120 伝送路、130 電流/電圧センサ、210 AIサンプリング指示フレーム、211,221 フラグ、212,222 コマンド、213,223 シーケンス番号、214,303 待ち時間、220 AIデータフレーム、224 AIデータ、300 待ち時間テーブル、301 ユニット番号、 伝送遅延時間、400 固定時間、501,517 送信回路、502,511 受信回路、503 送受信時間計測回路、513 受信メモリ、514 I/F回路、515 送信メモリ、518 カットスルーパス、530,540 経路、550 計測用フレーム、560 設定ビット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8