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特許7617791静翼セグメントの曲率調整方法、軸流回転機械の静止体製造方法、及び静翼セグメントの曲率調整治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】静翼セグメントの曲率調整方法、軸流回転機械の静止体製造方法、及び静翼セグメントの曲率調整治具
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20250110BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20250110BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20250110BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F01D9/02 104
F01D25/00 X
F01D9/04
F01D25/28 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021053628
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150843
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】山末 真吾
(72)【発明者】
【氏名】富永 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】茶木 良太
(72)【発明者】
【氏名】東 洋一
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-024730(JP,B2)
【文献】特開昭57-106356(JP,A)
【文献】特開2017-122438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0011241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/00
F01D 9/04
F01D 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の静翼が円弧状の内側連結部材の外周側に周方向に並べて取り付けられた円弧状の静翼セグメントの曲率調整方法において、
第一端と、第二端と、前記第一端と前記第二端との間の距離を変更可能な距離調整機構と、を有する曲率調整治具を準備する治具準備工程と、
前記静翼セグメントにおける前記内側連結部材の内周側に前記曲率調整治具の前記距離調整機構を配置した状態で、前記内側連結部材の第一位置に前記曲率調整治具の前記第一端を固定し、前記内側連結部材の前記第一位置から前記周方向に間隔があいている前記内側連結部材の第二位置に前記曲率調整治具の前記第二端を固定する治具取付工程と、
前記治具取付工程後に前記距離調整機構を操作して、円弧状の前記静翼セグメントにおける外周側の縁の曲率が目的の曲率になるよう、前記曲率調整治具の前記第一端と前記第二端との間の距離を変更させる曲率調整工程と、
を実行し、
前記曲率調整治具は、前記第一端を含む第一台座と、前記第二端を含む第二台座と、前記第一端を前記内側連結部材の前記第一位置に固定可能な第一固定部と、前記第二端を前記内側連結部材の前記第二位置に固定可能な第二固定部と、前記距離調整機構と、を有し、
前記距離調整機構は、胴部と、前記胴部から距離調整方向における両側のうち第一側に距離調整可能に延びる第一棒材と、前記胴部から前記距離調整方向における前記第一側とは反対側の第二側に距離調整可能に延びる第二棒材と、を有し、
前記第一棒材の前記第一側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座が取り付けられ、
前記第二棒材の前記第二側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座が取り付けられている、
静翼セグメントの曲率調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の静翼セグメントの曲率調整方法において、
前記胴部には、前記第一側の部分に前記距離調整方向に延びる第一雌ネジが形成され、前記第二側の部分に前記距離調整方向に延びる第二雌ネジが形成され、
前記第二雌ネジは、前記第一雌ネジに対する逆ネジであり、
前記第一棒材の前記第二側の部分には、前記第一雌ネジに捩じ込まれている第一雄ネジが形成され、
前記第二棒材の前記第一側の部分には、前記第二雌ネジに捩じ込まれている第二雄ネジが形成されている、
静翼セグメントの曲率調整方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の静翼セグメントの曲率調整方法を実行すると共に、
前記静翼セグメントと、円弧状を成し、自身の内周側に前記静翼セグメントが取り付けられる静翼保持環と、を準備する部品準備工程と、
前記曲率調整工程後であって前記曲率調整治具が取り付けられている前記静翼セグメントを、前記静翼保持環の内周側に取り付ける静翼セグメント取付工程と、
前記静翼セグメント取付工程後に、前記静翼セグメントから前記曲率調整治具を外す治具取外工程と、
を実行する軸流回転機械の静止体製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の軸流回転機械の静止体製造方法において、
前記曲率調整工程では、前記静翼セグメントの外周側の縁の曲率が、前記静翼保持環の内周側の縁の曲率になるよう、前記曲率調整治具の前記第一端と前記第二端との間の距離を変更させる、
軸流回転機械の静止体製造方法。
【請求項5】
複数の静翼が円弧状の内側連結部材の外周側に周方向に並べて取り付けられた静翼セグメントの曲率調整治具において、
第一端を含む第一台座と、第二端を含む第二台座と、前記内側連結部材の第一位置に前記第一端を固定可能な第一固定部と、前記第一位置から前記周方向に間隔があいている前記内側連結部材の第二位置に前記第二端を固定可能な第二固定部と、前記第一端と前記第二端との間の距離を変更可能な距離調整機構と、を有し、
前記距離調整機構は、前記第一端が前記内側連結部材の前記第一位置に固定され、前記第二端が前記内側連結部材の前記第二位置に固定された状態で、前記内側連結部材の内周側に位置し、
前記距離調整機構は、胴部と、前記胴部から距離調整方向における両側のうち第一側に距離調整可能に延びる第一棒材と、前記胴部から前記距離調整方向における前記第一側とは反対側の第二側に距離調整可能に延びる第二棒材と、を有し、
前記第一棒材の前記第一側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座が取り付けられ、
前記第二棒材の前記第二側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座が取り付けられている、
静翼セグメントの曲率調整治具。
【請求項6】
請求項5に記載の静翼セグメントの曲率調整治具において、
前記胴部には、前記第一側の部分に前記距離調整方向に延びる第一雌ネジが形成され、前記第二側の部分に前記距離調整方向に延びる第二雌ネジが形成され、
前記第二雌ネジは、前記第一雌ネジに対する逆ネジであり、
前記第一棒材の前記第二側の部分には、前記第一雌ネジに捩じ込まれている第一雄ネジが形成され、
前記第二棒材の前記第一側の部分には、前記第二雌ネジに捩じ込まれている第二雄ネジが形成されている、
静翼セグメントの曲率調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸流回転機械における静翼セグメントの曲率調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流回転機械は、軸線を中心として回転するロータと、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼セグメントと、周方向に延びて複数の静翼セグメントを保持する静翼保持環と、を有する。複数の静翼セグメントは、いずれも、複数の静翼と、軸線に対して円弧状の内側連結部材と、を有する。複数の静翼は、内側連結部材の外周側に周方向に並べて取り付けられている。
【0003】
以下の特許文献1には、軸流回転機械の一種である蒸気タービンの分解方法について開示されている。この蒸気タービンは、複数の静翼セグメントとして、翼環上半部と、翼環下半部とを有する。また、この蒸気タービンは、複数の静翼保持環として、内部車室上半部と、内部車室下半部と、を有する。翼環上半部における周方向の両端は、翼環下半部の両端に連結されている。内部車室上半部における周方向の両端は、内部車室下半部の両端に連結されている。翼環上半部は、内部車室上半部の内周側に配置されている。翼環下半部は、内部車室下半部の内周側に配置されている。
【0004】
特許文献1に記載の蒸気タービンの分解方法では、まず、内部車室上半部を内部車室下半部から外す。次に、翼環下半部の外周側であってこの翼環下半部における周方向の両端部に、真円保持装置を取り付ける。この真円保持装置は、翼環下半部の外周側であってこの翼環下半部における周方向の両端部と、内部車室下半部の内周側であってこの内部車室下半部における周方向の両端部と、を連結する。そして、真円保持装置が取り付けられている翼環下半部から翼環上半部を外す。特許文献1に記載の蒸気タービンの分解方法では、以上にように、真円保持装置により、翼環下半部の外周側であってこの翼環下半部における周方向の両端部と、内部車室下半部の内周側であってこの内部車室下半部における周方向の両端部と、連結する。このため、特許文献1に記載の蒸気タービンの分解方法では、翼環下半部から翼環上半部を外しても、翼環下半部の周方向の両端部が内周側に変形することを抑制でき、翼環下半部の真円性を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-013046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の方法では、前述したように、真円保持装置により、翼環下半部の外周側であってこの翼環下半部における周方向の両端部と、内部車室下半部の内周側であってこの内部車室下半部における周方向の両端部と、連結することで、翼環下半部の周方向の両端部が内周側に変形することを抑制する。したがって、翼環下半部を内部車室下半部から外すと、翼環下半部の真円性、言い換えると翼環下半部の曲率を保持することができない。このため、上記特許文献1に記載の方法では、静翼セグメントである翼環下半部を静翼保持環としての内部車室下半部に取り付ける際、静翼セグメントである翼環下半部の曲率が予め定められた曲率になっていない可能性が高い。このように、静翼セグメントの曲率が予め定められた曲率になっていない状態で、この静翼セグメントを静翼保持環の内周側に取り付けることが困難である。
【0007】
そこで、本開示は、静翼セグメントを静翼保持環の内周側に容易に取り付けることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての静翼セグメントの曲率調整方法は、複数の静翼が円弧状の内側連結部材の外周側に周方向に並べて取り付けられた円弧状の静翼セグメントを対象とする。
この曲率調整方法では、第一端と、第二端と、前記第一端と前記第二端との間の距離を変更可能な距離調整機構と、を有する曲率調整治具を準備する治具準備工程と、前記静翼セグメントにおける前記内側連結部材の内周側に前記曲率調整治具の前記距離調整機構を配置した状態で、前記内側連結部材の第一位置に前記曲率調整治具の前記第一端を固定し、前記内側連結部材の前記第一位置から前記周方向に間隔があいている前記内側連結部材の第二位置に前記曲率調整治具の前記第二端を固定する治具取付工程と、前記治具取付工程後に前記距離調整機構を操作して、円弧状の前記静翼セグメントにおける外周側の縁の曲率が目的の曲率になるよう、前記曲率調整治具の前記第一端と前記第二端との間の距離を変更させる曲率調整工程と、を実行する。
前記曲率調整治具は、前記第一端を含む第一台座と、前記第二端を含む第二台座と、前記第一端を前記内側連結部材の前記第一位置に固定可能な第一固定部と、前記第二端を前記内側連結部材の前記第二位置に固定可能な第二固定部と、前記距離調整機構と、を有する。前記距離調整機構は、胴部と、前記胴部から距離調整方向における両側のうち第一側に距離調整可能に延びる第一棒材と、前記胴部から前記距離調整方向における前記第一側とは反対側の第二側に距離調整可能に延びる第二棒材と、を有する。前記第一棒材の前記第一側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座が取り付けられている。前記第二棒材の前記第二側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座が取り付けられている。
【0009】
本態様では、曲率調整治具を用いて、静翼セグメントの曲率を調整した段階で、この静翼セグメントの内周側に曲率調整治具の距離調整機構が位置している。このため、曲率調整治具が静翼保持環に干渉することなく、曲率調整治具が取り付けられている静翼セグメントを静翼保持環の内周側に取り付けることができる。すなわち、本態様では、静翼セグメントの曲率が予め定められた曲率になっている状態で、この静翼セグメントを静翼保持環の内周側に取り付けることができる。よって、本態様では、静翼セグメントを静翼保持環の内周側に容易に取り付けることができる。
【0010】
前記目的を達成するための一態様としての軸流回転機械の静止体製造方法は、
前記一態様における静翼セグメントの曲率調整方法を実行する。さらに、前記静翼セグメントと、円弧状を成し、自身の内周側に前記静翼セグメントが取り付けられる静翼保持環と、を準備する部品準備工程と、前記曲率調整工程後であって前記曲率調整治具が取り付けられている前記静翼セグメントを、前記静翼保持環の内周側に取り付ける静翼セグメント取付工程と、前記静翼セグメント取付工程後に、前記静翼セグメントから前記曲率調整治具を外す治具取外工程と、を実行する。
【0011】
本態様では、静翼セグメントを静翼保持環の内周側に容易に取り付けることができる。このため、本態様では、静止体の製造効率を高めることができる。
【0012】
前記目的を達成するための一態様としての静翼セグメントの曲率調整治具は、複数の静翼が円弧状の内側連結部材の外周側に周方向に並べて取り付けられた静翼セグメントを対象とする。
この曲率調整治具は、第一端を含む第一台座と、第二端を含む第二台座と、前記内側連結部材の第一位置に前記第一端を固定可能な第一固定部と、前記第一位置から前記周方向に間隔があいている前記内側連結部材の第二位置に前記第二端を固定可能な第二固定部と、前記第一端と前記第二端との間の距離を変更可能な距離調整機構と、を有する。前記距離調整機構は、前記第一端が前記内側連結部材の前記第一位置に固定され、前記第二端が前記内側連結部材の前記第二位置に固定された状態で、前記内側連結部材の内周側に位置する。前記距離調整機構は、胴部と、前記胴部から距離調整方向における両側のうち第一側に距離調整可能に延びる第一棒材と、前記胴部から前記距離調整方向における前記第一側とは反対側の第二側に距離調整可能に延びる第二棒材と、を有する。前記第一棒材の前記第一側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座が取り付けられている。前記第二棒材の前記第二側の部分には、前記距離調整方向に対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座が取り付けられている。
【0013】
本態様の曲率調整治具を静翼セグメントに取り付ける際、静翼セグメントにおける内側連結部材の第一位置に第一台座の第一端を固定し、静翼セグメントにおける内側連結部材の第二位置に第二台座の第二端を固定する。この状態では、曲率調整治具の距離調整機構は、静翼セグメントの内周側に位置する。このため、この曲率調整治具が静翼保持環に干渉することなく、曲率調整治具が取り付けられている静翼セグメントを静翼保持環の内周側に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様では、静翼セグメントを静翼保持環の内周側に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの要部切欠側面図である。
図2図1におけるII部拡大図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
図4】本開示に係る一実施形態における静翼セグメントの斜視図である。
図5】本発明に係る一実施形態における静翼セグメント及び曲率調整治具の正面図である。
図6図5におけるVI-VI線断面図である。
図7】本発明に係る一実施形態における静止体の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る一実施形態における静止体の製造過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1図8を参照して詳細に説明する。
【0017】
「軸流回転機械」
まず、軸流回転機械を含むガスタービンについて、図1図4を参照して説明する。
【0018】
ガスタービン1は、図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機11と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気中で燃焼させ燃焼ガスを生成する燃焼器15と、燃焼ガスにより駆動するタービン16と、を備えている。
【0019】
圧縮機11は、軸流回転機械の一種である。この圧縮機11は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ12と、圧縮機ロータ12を覆う圧縮機ケーシング13と、複数の静翼列14と、を有する。タービン16も、軸流回転機械の一種である。このタービン16は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ17と、タービンロータ17を覆うタービンケーシング18と、複数の静翼列19と、を有する。
【0020】
圧縮機11は、タービン16に対して、軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうち、軸線上流側Dauに配置されている。圧縮機ロータ12とタービンロータ17とは、同一の軸線Ar上に位置し、互に接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、例えば、発電機のロータが連結されている。
【0021】
圧縮機ロータ12は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸12sと、複数の動翼列12bと、を有する。複数の動翼列12bは、軸線方向Daに並んで、ロータ軸12sに設けられている。各動翼列12bは、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼を有する。複数の動翼列12bの軸線下流側Dadには、複数の静翼列14のうちのいずれか一の静翼列14が配置されている。複数の静翼列14は、圧縮機ケーシング13の内周側に設けられている。
【0022】
タービンロータ17は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸17sと、複数の動翼列17bと、を有する。複数の動翼列17bは、軸線方向Daに並んで、ロータ軸17sに設けられている。各動翼列17bは、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼を有する。複数の動翼列17bの軸線上流側Dauには、複数の静翼列19のうちのいずれか一の静翼列19が配置されている。複数の静翼列19は、タービンケーシング18の内周側に設けられている。
【0023】
ガスタービン1は、さらに、中間ケーシング3を備える。圧縮機ケーシング13、中間ケーシング3、及びタービンケーシング18は、この順序で、前述の軸線方向Daに並んで、互に接続されている。燃焼器15は、中間ケーシング3に設けられている。
【0024】
圧縮機ケーシング13は、図2及び図3に示すように、軸線Arを中心として筒状のケーシング本体20と、ケーシング本体20の内周側に配置されている静翼保持環21と、を有する。ケーシング本体20は、組立の都合上、上半ケーシングと、下半ケーシングと、を有する。上半ケーシングは、ケーシング本体20の上半部分を形成する。下半ケーシングは、ケーシング本体20の下半部分を形成する。静翼保持環21は、軸線Arを中心として筒状を成している。この静翼保持環21は、組立の都合上、上半静翼保持環21uと、下半静翼保持環21dと、を有する。上半静翼保持環21uは、静翼保持環21の上半部分を形成する。下半静翼保持環21dは、静翼保持環21の下半部分を形成する。
【0025】
静翼保持環21には、内周面から、軸線Arに対する径方向外側Droに向かって凹み、軸線Arを中心として環状の複数の環溝22が形成されている。複数の環溝22は、軸線方向Daに並んでいる。
【0026】
圧縮機11は、複数の静翼環30を有する。複数の静翼環30は、軸線方向Daに並んでいる。各静翼環30は、前述の複数の静翼列14のうちのいずれか一の静翼列14を有する。各静翼環30の外周側の部分は、複数の環溝22のうちのいずれか一の環溝22に嵌まり込んでいる。各静翼環30は、組立の都合上、周方向Dcに複数の静翼セグメント31として分割可能である。本実施形態において、一の静翼環30は、8個の静翼セグメント31に分割可能である。8個の静翼セグメント31のうち、4個の静翼セグメント31の外周側の部分は、上半静翼保持環21uの一の環溝22に嵌まり込んでいる。残りの4個の静翼セグメント31の外周側の部分は、下半静翼保持環21dの一の環溝22に嵌まり込んでいる。なお、ここでは、8個の静翼セグメント31で、一の静翼環30を構成しているが、8個未満、具体的に、6個や4個の静翼セグメントで一の静翼環を構成してもよいし、8個より多い、10個や12個の静翼セグメントで一の静翼環を構成してもよい。
【0027】
本実施形態における圧縮機11の静止体は、上半静翼保持環21uと、下半静翼保持環21dと、これらに装着される複数の静翼セグメント31と、を有する。
【0028】
一の静翼セグメント31は、図4に示すように、円弧状を成している。この静翼セグメント31は、複数の静翼32と、内側連結部材としての連結ホルダ35と、外側連結部材としての連結バンド39と、を有する。
【0029】
複数の静翼32は、連結ホルダ35と連結バンド39との間で、周方向Dcに並んでいる。静翼32は、径方向Drに延びる翼体33と、翼体33の径方向内側Driに設けられている内側シュラウド34iと、翼体33の径方向外側Droに設けられている外側シュラウド34oと、を有する。連結ホルダ35は、円弧状を成している。この連結ホルダ35には、各静翼32の内側シュラウド34iが装着される。また、連結バンド39も円弧状を成している。この連結バンド39には、各静翼32の外側シュラウド34oが、例えば、溶接やネジで接続されている。よって、この連結バンド39は、各静翼32の外側シュラウド34o相互を連結する。前述した、静翼保持環21の環溝22に嵌まり込む静翼セグメント31の外周側の部分は、連結バンド39と各静翼32の外側シュラウド34oとを有する。
【0030】
静翼セグメント31の外周側の部分の曲率が、環溝22の曲率に合っていない場合、この静翼セグメント31の外周側の部分を環溝22に嵌め込むことが困難である。仮に、組立前の連結ホルダ35の曲率が設計通りの曲率であり、組立前の連結バンド39の曲率が設計通りの曲率であっても、静翼セグメント31の組立過程で、これらの曲率が変化することがある。例えば、連結バンド39に各静翼32の外側シュラウド34oを溶接した場合、静翼セグメント31の外周側の部分における曲率が小さくなる。そこで、以下では、静翼セグメント31の曲率調整方法等について説明する。
【0031】
「静翼セグメントの曲率調整方法、軸流回転機械の静止体製造方法、及び静翼セグメントの曲率調整治具」
静翼セグメントの曲率調整方法、軸流回転機械の静止体製造方法、及び静翼セグメントの曲率調整治具について、図5図8を参照して説明する。
【0032】
まず、静翼セグメントの曲率調整方法に用いる曲率調整治具40について、図5及び図6を参照して説明する。
【0033】
曲率調整治具40は、第一台座41aと、第二台座41bと、第一固定部46aと、第二固定部46bと、距離調整機構としてのターンバックル50と、を有する。
【0034】
ターンバックル50は、胴部51と、第一棒材53aと、第二棒材53bと、を有する。
胴部51には、距離調整方向Ddにおける両側のうちの第一側Dd1の部分に距離調整方向Ddに延びる第一雌ネジ52aが形成されている。胴部51には、さらに、距離調整方向Ddにおける両側のうちの第二側Dd2の部分に距離調整方向Ddに延びる第二雌ネジ52bが形成されている。第二雌ネジ52bは、第一雌ネジ52aに対する逆ネジである。つまり、第一雌ネジ52aが右ネジの場合、第二雌ネジ52bは左ネジである。第一棒材53a及び第二棒材53bは、いずれも、距離調整方向Ddに延びる棒材である。第一棒材53aの第二側Dd2の部分には、第一雌ネジ52aに捩じ込まれている第一雄ネジ54aが形成されている。第二棒材53bの第一側Dd1の部分には、第二雌ネジ52bに捩じ込まれている第二雄ネジ54bが形成されている。
【0035】
第一台座41a及び第二台座41bは、いずれも、連結ホルダ35の内周側面に接触可能なホルダ接触板部43と、ターンバックル50に連結可能なバックル連結板部44と、を有する。バックル連結板部44は、ホルダ接触板部43の縁からホルダ接触板部43に対して交差する方向に広がっている。第一台座41aにおけるホルダ接触板部43の表面の一部は、第一端42aを成す。また、第二台座41bにおけるホルダ接触板部43の表面の一部は、第二端42bを成す。第一棒材53aの第一側Dd1の部分には、第一台座41aのバックル連結板部44がピン45を介して取り付けられている。このため、第一台座41aは、第一棒材53aに対して、距離調整方向Ddに垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能である。第二棒材53bの第二側Dd2の部分には、第二台座41bのバックル連結板部44がピン45を介して取り付けられている。このため、第二台座41bは、第二棒材53bに対して、距離調整方向Ddに垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能である。
【0036】
第一固定部46a及び第二固定部46bは、いずれも、ボルト47を有する。連結ホルダ35の内周側面中で、周方向Dcの一方側の部分は第一位置36aであり、周方向Dcの他方側の部分は第二位置36bである。よって、第二位置36bは、第一位置36aから周方向Dcに間隔があいている位置である。この連結ホルダ35には、内周側面から径方向外側Droに向かって凹む第一ネジ穴37a及び第二ネジ穴37bが形成されている。第一ネジ穴37aは、前述の第一位置36aの近傍に形成され、第二ネジ穴37bは、前述の第二位置36bの近傍に形成されている。曲率調整治具40の第一端42aを連結ホルダ35の第一位置36aに固定する際には、先ず、第一台座41aの第一端42aを連結ホルダ35の第一位置36aに接触させる。次に、第一台座41aのホルダ接触板部43を介して、第一固定部46aのボルト47を連結ホルダ35の第一ネジ穴37aに捩じ込む。この結果、曲率調整治具40の第一端42aが連結ホルダ35の第一位置36aに固定される。また、曲率調整治具40の第二端42bを連結ホルダ35の第二位置36bに固定する際には、先ず、第二台座41bの第二端42bを連結ホルダ35の第二位置36bに接触させる。次に、第二台座41bのホルダ接触板部43を介して、第二固定部46bのボルト47を連結ホルダ35の第二ネジ穴37bに捩じ込む。この結果、曲率調整治具40の第二端42bが連結ホルダ35の第二位置36bに固定される。
【0037】
ターンバックル50の胴部51を距離調整方向Ddに延びる軸回りに回転させると、この胴部51に対して、第一棒材53aは、距離調整方向Ddにおける第一側Dd1と第二側Dd2とのうちの一方側に相対移動し、第二棒材53bは、他方側に相対移動する。よって、以上で説明した曲率調整治具40では、ターンバックル50の胴部51を回転させることで、第一台座41a中の第一端42aと第二台座41b中の第二端42bとの間の距離を変更することができる。
【0038】
次に、静翼セグメント31の曲率調整方法、及び軸流回転機械の静止体製造方法について、図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0039】
まず、部品準備工程S1を実行する。この部品準備工程S1では、軸流回転機械である圧縮機11の静止体を構成する部品を準備する。この静止体を構成する部品としては、上半静翼保持環21uと、下半静翼保持環21dと、これらに装着される複数の静翼セグメント31がある。
【0040】
次に、治具準備工程S3を実行する。この治具準備工程S3では、先に説明した曲率調整治具40を準備する。
【0041】
次に、治具取付工程S4を実行する。この治具取付工程S4では、曲率調整治具40を静翼セグメント31の連結ホルダ35に取り付ける。具体的には、まず、曲率調整治具40のターンバックル50を静翼セグメント31の内周側に配置する。次に、前述したように、第一台座41aの第一端42aを連結ホルダ35の第一位置36aに接触させる。そして、第一台座41aのホルダ接触板部43を介して、第一固定部46aのボルト47を連結ホルダ35の第一ネジ穴37aに捩じ込む。この結果、曲率調整治具40の第一端42aが連結ホルダ35の第一位置36aに固定される。さらに、第二台座41bの第二端42bを連結ホルダ35の第二位置36bに接触させる。そして、第二台座41bのホルダ接触板部43を介して、第二固定部46bのボルト47を連結ホルダ35の第二ネジ穴37bに捩じ込む。この結果、曲率調整治具40の第二端42bが連結ホルダ35の第二位置36bに固定される。以上で、治具取付工程S4が完了する。
【0042】
次に、曲率調整工程S5を実行する。この曲率調整工程S5では、ターンバックル50の胴部51を回転させて、静翼セグメント31における外周側の縁の曲率が目的の曲率になるよう、曲率調整治具40の第一端42aと第二端42bとの間の距離を変更させる。
ここで、目的の曲率とは、静翼保持環21の内周側の縁の曲率、具体的には、環溝22の溝底面の曲率である。このため、静翼セグメント31における外周側の縁の曲率を目的の曲率にする場合、例えば、まず、環溝22の溝底面中で、静翼セグメント31における周方向Dcの一方側の端が接する位置と、静翼セグメント31における周方向Dcの他方側の端が接する位置と、の間の直線距離を測定し、この直線距離を目的距離とする。そして、静翼セグメント31における外周側の縁中の周方向Dcの一方側の端と、静翼セグメント31における外周側の縁中の周方向Dcの他方側の端と、の間の直線距離が、目的距離になるよう、ターンバックル50の胴部51を回転させる。
【0043】
静翼セグメント31の曲率調整方法S2では、以上の治具準備工程S3と、治具取付工程S4と、曲率調整工程S5と、を実行する。なお、治具準備工程S3は、治具取付工程S4前に実行すればよく、部品準備工程S1の前に実行してもよい。
【0044】
次に、静翼セグメント取付工程S6を実行する。この静翼セグメント取付工程S6では、図8に示すように、曲率調整工程S5後であって曲率調整治具40が取り付けられている静翼セグメント31を、静翼保持環21の内周側に取り付ける。この際、静翼セグメント31の外周側の縁が、環溝22の溝底面の周方向Dcへの延長線上に位置するよう、静翼セグメント31を配置する。そして、曲率調整治具40が取り付けられている静翼セグメント31を周方向Dcに移動させて、静翼セグメント31の外周側の部分を環溝22内に入れる。そして、静翼セグメント31の外周側の部分が環溝22内の目的の位置Ptに位置すると、静翼保持環21に対するこの静翼セグメント31の取付が完了する。
【0045】
静翼セグメント31の取付が完了すると、治具取外工程S7を実行する。この治具取外工程S7では、この静翼セグメント31から曲率調整治具40を外す。
【0046】
環溝22に対して、全ての静翼セグメント31の取付が完了すると、静止体が完成する。
【0047】
以上のように、本実施形態では、曲率調整治具40を用いて、静翼セグメント31の曲率を調整した段階で、この静翼セグメント31の内周側に曲率調整治具40のターンバックル50が位置している。このため、曲率調整治具40が静翼保持環21に干渉することなく、曲率調整治具40が取り付けられている静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に取り付けることができる。すなわち、本実施形態では、静翼セグメント31の曲率が予め定められた曲率になっている状態で、この静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に取り付けることができる。よって、本実施形態では、静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に容易に取り付けることができる。
【0048】
「変形例」
以上の実施形態における曲率調整治具40の第一固定部46a及び第二固定部46bは、いずれもボルト47を有する。しかしながら、各固定部は、各台座を連結ホルダ35の目的の位置に固定することができれば、如何なる部材を有してもよく、例えば、連結ホルダ35の一部を挟み込むクランプを有してもよい。
【0049】
以上の実施形態では、軸流回転機械としてガスタービン1の圧縮機11を例示している。しかしながら、軸流回転機械は、静翼セグメントを有するものであれば、いかなる軸流回転機械でもよく、例えば、ガスタービン1のタービン16や、蒸気タービンであってもよい。
【0050】
「付記」
以上の実施形態における静翼セグメントの曲率調整方法は、例えば、以下のように把握される。
【0051】
(1)第一態様における静翼セグメントの曲率調整方法は、複数の静翼32が円弧状の内側連結部材35の外周側に周方向Dcに並べて取り付けられた円弧状の静翼セグメント31を対象とする。
この曲率調整方法では、第一端42aと、第二端42bと、前記第一端42aと前記第二端42bとの間の距離を変更可能な距離調整機構50と、を有する曲率調整治具40を準備する治具準備工程S3と、前記静翼セグメント31における前記内側連結部材35の内周側に前記曲率調整治具40の前記距離調整機構50を配置した状態で、前記内側連結部材35の第一位置36aに前記曲率調整治具40の前記第一端42aを固定し、前記内側連結部材35の前記第一位置36aから前記周方向Dcに間隔があいている前記内側連結部材35の第二位置36bに前記曲率調整治具40の前記第二端42bを固定する治具取付工程S4と、前記治具取付工程S4後に前記距離調整機構を操作して、円弧状の前記静翼セグメント31における外周側の縁の曲率が目的の曲率になるよう、前記曲率調整治具40の前記第一端42aと前記第二端42bとの間の距離を変更させる曲率調整工程S5と、を実行する。
【0052】
本態様では、曲率調整治具40を用いて、静翼セグメント31の曲率を調整した段階で、この静翼セグメント31の内周側に曲率調整治具40の距離調整機構50が位置している。このため、曲率調整治具40が静翼保持環21に干渉することなく、曲率調整治具40が取り付けられている静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に取り付けることができる。すなわち、本態様では、静翼セグメント31の曲率が予め定められた曲率になっている状態で、この静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に取り付けることができる。よって、本態様では、静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に容易に取り付けることができる。
【0053】
(2)第二態様における静翼セグメントの曲率調整方法は、
前記第一態様における静翼セグメント31の曲率調整方法において、前記曲率調整治具40は、前記第一端42aを含む第一台座41aと、前記第二端42bを含む第二台座41bと、前記第一端42aを前記内側連結部材35の前記第一位置36aに固定可能な第一固定部46aと、前記第二端42bを前記内側連結部材35の前記第二位置36bに固定可能な第二固定部46bと、前記距離調整機構50と、を有する。前記距離調整機構50は、胴部51と、前記胴部51から距離調整方向Ddにおける両側のうち第一側Dd1に距離調整可能に延びる第一棒材53aと、前記胴部51から前記距離調整方向Ddにおける前記第一側Dd1とは反対側の第二側Dd2に距離調整可能に延びる第二棒材53bと、を有する。前記第一棒材53aの前記第一側Dd1の部分には、前記距離調整方向Ddに対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座41aが取り付けられている。前記第二棒材53bの前記第二側Dd2の部分には、前記距離調整方向Ddに対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座41bが取り付けられている。
【0054】
(3)第三態様における静翼セグメントの曲率調整方法は、
前記第二態様における静翼セグメント31の曲率調整方法において、前記胴部51には、前記第一側Dd1の部分に前記距離調整方向Ddに延びる第一雌ネジ52aが形成され、前記第二側Dd2の部分に前記距離調整方向Ddに延びる第二雌ネジ52bが形成されている。前記第二雌ネジ52bは、前記第一雌ネジ52aに対する逆ネジである。前記第一棒材53aの前記第二側Dd2の部分には、前記第一雌ネジ52aに捩じ込まれている第一雄ネジ54aが形成されている。前記第二棒材53bの前記第一側Dd1の部分には、前記第二雌ネジ52bに捩じ込まれている第二雄ネジ54bが形成されている。
【0055】
以上の実施形態における軸流回転機械の静止体製造方法は、例えば、以下のように把握される。
(4)第四態様における軸流回転機械の静止体製造方法は、
前記第一態様から前記第三態様のうちのいずれか一態様における静翼セグメント31の曲率調整方法を実行する。さらに、前記静翼セグメント31と、円弧状を成し、自身の内周側に前記静翼セグメント31が取り付けられる静翼保持環21と、を準備する部品準備工程S1と、前記曲率調整工程S5後であって前記曲率調整治具40が取り付けられている前記静翼セグメント31を、前記静翼保持環21の内周側に取り付ける静翼セグメント取付工程S6と、前記静翼セグメント取付工程S6後に、前記静翼セグメント31から前記曲率調整治具40を外す治具取外工程S7と、を実行する。
【0056】
本態様では、静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に容易に取り付けることができる。このため、本態様では、静止体の製造効率を高めることができる。
【0057】
(5)第五態様における軸流回転機械の静止体製造方法は、
前記第四態様における軸流回転機械の静止体製造方法において、前記曲率調整工程S5では、前記静翼セグメント31の外周側の縁の曲率が、前記静翼保持環21の内周側の縁の曲率になるよう、前記曲率調整治具40の前記第一端42aと前記第二端42bとの間の距離を変更させる。
【0058】
以上の実施形態における静翼セグメントの曲率調整治具は、例えば、以下のように把握される。
(6)第六態様における静翼セグメントの曲率調整治具は、複数の静翼32が円弧状の内側連結部材35の外周側に周方向Dcに並べて取り付けられた静翼セグメント31を対象とする。
この曲率調整治具40は、第一端42aを含む第一台座41aと、第二端42bを含む第二台座41bと、前記内側連結部材35の第一位置36aに前記第一端42aを固定可能な第一固定部46aと、前記第一位置36aから前記周方向Dcに間隔があいている前記内側連結部材35の第二位置36bに前記第二端42bを固定可能な第二固定部46bと、前記第一端42aと前記第二端42bとの間の距離を変更可能な距離調整機構50と、を有する。前記距離調整機構50は、前記第一端42aが前記内側連結部材35の前記第一位置36aに固定され、前記第二端42bが前記内側連結部材35の前記第二位置36bに固定された状態で、前記内側連結部材35の内周側に位置する。前記距離調整機構50は、胴部51と、前記胴部51から距離調整方向Ddにおける両側のうち第一側Dd1に距離調整可能に延びる第一棒材53aと、前記胴部51から前記距離調整方向Ddにおける前記第一側Dd1とは反対側の第二側Dd2に距離調整可能に延びる第二棒材53bと、を有する。前記第一棒材53aの前記第一側Dd1の部分には、前記距離調整方向Ddに対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第一台座41aが取り付けられている。前記第二棒材53bの前記第二側Dd2の部分には、前記距離調整方向Ddに対して垂直な方向に延びる軸回りに揺動可能に前記第二台座41bが取り付けられている。
【0059】
本態様の曲率調整治具40を静翼セグメント31に取り付ける際、静翼セグメント31における内側連結部材35の第一位置36aに第一台座41aの第一端42aを固定し、静翼セグメント31における内側連結部材35の第二位置36bに第二台座41bの第二端42bを固定する。この状態では、曲率調整治具40の距離調整機構50は、静翼セグメント31の内周側に位置する。このため、この曲率調整治具40が静翼保持環21に干渉することなく、曲率調整治具40が取り付けられている静翼セグメント31を静翼保持環21の内周側に取り付けることができる。
【0060】
(7)第七態様における静翼セグメントの曲率調整治具は、
前記第六態様における静翼セグメントの曲率調整治具において、前記胴部51には、前記第一側Dd1の部分に前記距離調整方向Ddに延びる第一雌ネジ52aが形成され、前記第二側Dd2の部分に前記距離調整方向Ddに延びる第二雌ネジ52bが形成されている。前記第二雌ネジ52bは、前記第一雌ネジ52aに対する逆ネジである。前記第一棒材53aの前記第二側Dd2の部分には、前記第一雌ネジ52aに捩じ込まれている第一雄ネジ54aが形成されている。前記第二棒材53bの前記第一側Dd1の部分には、前記第二雌ネジ52bに捩じ込まれている第二雄ネジ54bが形成されている。
【符号の説明】
【0061】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
3:中間ケーシング
11:圧縮機
12:圧縮機ロータ
12s:ロータ軸
12b:動翼列
13:圧縮機ケーシング
14:静翼列
15:燃焼器
16:タービン
17:タービンロータ
17s:ロータ軸
17b:動翼列
18:タービンケーシング
19:静翼列
20:ケーシング本体
21:静翼保持環
21u:上半静翼保持環
21d:下半静翼保持環
22:環溝
30:静翼環
31:静翼セグメント
32:静翼
33:翼体
34i:内側シュラウド
34o:外側シュラウド
35:連結ホルダ(又は内側連結部材)
36a:第一位置
36b:第二位置
37a:第一ネジ穴
37b:第二ネジ穴
39:連結バンド(又は外側連結部材)
40:曲率調整治具
41a:第一台座
41b:第二台座
42a:第一端
42b:第二端
43:ホルダ接触板部
44:バックル連結板部
45:ピン
46a:第一固定部
46b:第二固定部
47:ボルト
50:ターンバックル(又は距離調整機構)
51:胴部
52a:第一雌ネジ
52b:第二雌ネジ
53a:第一棒材
53b:第二棒材
54a:第一雄ネジ
54b:第二雄ネジ
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dd:距離調整方向
Dd1:第一側
Dd2:第二側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8