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特許7617800アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021063218
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158373
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】羽多野 慎司
(72)【発明者】
【氏名】武居 勇一
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180150(JP,A)
【文献】特開2020-203247(JP,A)
【文献】特開2020-129913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部および当該巻回部から引き出された引き出し部を備えるコイル、前記コイルを保持するコイルホルダ、および前記コイルホルダに支持された基板を備える支持体と、
前記巻回部と対向するマグネットを備える可動体と、
前記可動体と前記支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、
前記コイルおよび前記マグネットを備え、前記支持体と前記可動体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記コイルホルダは、前記巻回部を保持するコイル保持部と、前記コイル保持部の径方向外側で前記基板を支持する基板支持部と、を備え、
前記基板は、前記引き出し部が接続されるランドを基板表面に備え、
前記基板支持部は、前記基板表面に沿った方向から見た場合に、前記基板と重なる位置に凹部を備え、
前記引き出し部は、前記巻回部から前記凹部を経由して前記ランドに引き回され、前記凹部内で撓む撓み部分を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルを前記コイルホルダに固定する接着剤層を備え、
前記接着剤層は、前記巻回部と前記コイル保持部との間に設けられ、前記撓み部分と前記凹部の内壁面との間には設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイル保持部は、前記巻回部を収容する穴であり、
前記コイルホルダは、前記引き出し部を案内する案内溝を備え、
前記案内溝は、前記凹部と前記コイル保持部とに連通することを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記案内溝は、前記凹部よりも浅い深さで当該凹部に接続された第1溝部分と、前記第1溝部分から前記コイル保持部に向かって延設され、前記コイル保持部に接近するのに伴って深くなる第2溝部分と、を備えることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記巻回部と前記マグネットとが対向する方向を第1方向とし、前記第1方向と直交するとともに互いに直交する2方向を第2方向および第3方向とした場合に、
前記コイル保持部と前記基板支持部とは、前記第2方向に配列されており、
前記基板表面は、前記第2方向における前記コイル保持部とは反対側を向いており、
前記基板は、前記ランドを備える配線接続部と、前記配線接続部における前記第3方向の両端部分から前記第1方向の一方側に突出する一対の脚部と、を備え、
前記基板支持部は、前記基板の前記第3方向の両端縁のそれぞれが前記第1方向の他方側から挿入される一対のスリットと、一対の前記脚部および前記配線接続部により区画された前記基板の切欠き開口に前記第1方向の一方側から挿入される挿入部と、を備え、
前記挿入部は、前記配線接続部に当接する先端面を備え、
前記凹部は、前記先端面に設けられていることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記コイルホルダは、樹脂製であり、
一対の前記脚部は、前記挿入部に前記第3方向の両側から接触する一対の突起を備え、
前記挿入部が前記切欠き開口に挿入される前の状態では、一対の前記突起は前記第3方向で対向し、前記第3方向における2つの前記突起の間隔が当該第3方向における前記挿入部の幅よりも狭いことを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記挿入部は、前記先端面の前記第3方向の両側に、前記先端面から離間する方向に向かって前記配線接続部から離間する方向に傾斜する一対の傾斜面と、各傾斜面の前記先端面とは反対側の端から前記第1方向を前記配線接続部とは反対側に延びる一対の側面と、を備え、
前記挿入部が前記切欠き開口に挿入される前の状態では、前記第3方向で対向する2つの前記突起の間隔は、前記第3方向における前記先端面の幅よりも広く、前記第3方向における一対の前記側面の間よりも狭いことを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載のアクチュエータの製造方法において、
前記コイルホルダの前記コイル保持部に前記巻回部を保持させ、前記引き出し部を、前記第2方向で前記凹部の前記コイル保持部とは反対側に引き出し、
前記基板を、一対の前記スリットの前記第1方向の他方側に配置して、前記基板表面が前記第2方向の前記コイル保持部とは反対側を向く姿勢とし、
一対の前記スリットに前記第1方向の他方側から前記基板の前記第3方向の両端縁を挿入するとともに、前記基板の前記切欠き開口に前記挿入部を挿入して、前記基板を、一対の前記突起のそれぞれが前記挿入部の各傾斜面に接触して前記配線接続部と前記先端面との間に隙間が形成される仮支持位置に支持させ、
前記引き出し部の先端部分を前記仮支持位置にある前記基板の前記ランドに接続し、
前記仮支持位置にある前記基板を、一対の前記突起のそれぞれが前記挿入部の各側面に接触し、かつ前記先端面が前記配線接続部に当接する支持位置に押し込むことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルおよびマグネットを有する磁気駆動機構によって可動体を移動させるアクチュエータに関する。また、かかるアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして、支持体に支持された可動体を磁気駆動機構によって振動させるアクチュエータが提案されている。特許文献1のアクチュータは、可動体と、支持体と、可動体と支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、可動体と支持体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有する。可動体は、マグネットを備える。支持体は、コイルと、コイルを保持するコイルホルダと、コイルホルダに固定された給電基板と、を備える。マグネットとコイルとは、コイルの巻回部の厚み方向で対向して、磁気駆動機構を構成する。コイルにおいて巻回部から引き出されたコイル線の引き出し部は、巻回部の径方向外側に配置された給電基板に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-102902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻回部から引き出された引き出し部は、巻回部と給電基板との間を直線状に延びる。従って、落下などにより外部からアクチュエータに強い衝撃が付与されると、引き出し部に張力が加わって、断線が発生する場合がある。また、アクチュエータが熱変化に見舞われると、コイル線の収縮によってコイル線に張力が加わって断線が発生する場合がある。
【0005】
本発明の課題は、以上の問題点に鑑みて、コイル線に張力が加わった場合でも、コイル線が断線することを防止或いは抑制できるアクチュエータを提供することにある。また、このようなアクチュエータの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、巻回部および当該巻回部から引き出された引き出し部を備えるコイル、前記コイルを保持するコイルホルダ、および前記コイルホルダに支持された基板を備える支持体と、前記巻回部と対向するマグネットを備える可動体と、前記可動体と前記支持体とを相対移動可能に接続する接続体と、前記コイルおよび前記マグネットを備え、前記支持体と前記可動体とを相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記コイルホルダは、前記巻回部を保持するコイル保持部と、前記コイル保持部の径方向外側で前記基板を支持する基板支持部と、を備え、前記基板は、前記引き出し部が接続されるランドを基板表面に備え、前記基板支持部は、前記基板表面に沿った方向から見た場合に、前記基板と重なる位置に凹部を備え、前記引き出し部は、前記巻回部から前記凹部を経由して前記ランドに引き回され、前記凹部内で撓む撓み部分を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、コイルの巻回部はコイルホルダに設けられたコイル保持部に保持され、基板はコイルホルダに設けられた基板支持部に支持される。コイルの巻回部から引き出されて基板のランドに接続されたコイルの引き出し部は、巻回部とランドとの間に、撓み部分を備える。従って、衝撃や熱変化に起因して引き出し部に張力が加わった場合には、撓み部分が延びて、引き出し部が基板と巻回部との間で引っ張られた状態となることを防
止できる。この結果、引き出し部が断線することを防止、或いは抑制できる。ここで、引き出し部は、巻回部から凹部を経由してランドに引き回され、撓み部分は凹部内に設けられる。従って、撓み部分がコイルホルダ上で移動して、他の部材と干渉することを防止或いは抑制できる。また、凹部は、基板支持部において、基板の基板表面に沿った方向から見た場合に、基板と重なる位置に設けられている。これにより、撓み部分は、引き出し部において、ランドに接続された先端部分の近傍に設けられる。従って、引き出し部に張力が付与されたときに、半田によってランドに固定された引き出し部の先端部分に過度な負荷がかかることを抑制しやすい。
【0008】
本発明において、前記コイルを前記コイルホルダに固定する接着剤層を備え、前記接着剤層は、前記巻回部と前記コイル保持部との間に設けられ、前記撓み部分と前記凹部の内壁面との間には設けられていないものとすることができる。このようにすれば、衝撃や熱変化に起因して引き出し部に張力が付与されたときに、撓み部分は自由に変化できる。従って、引き出し部に断線が発生することを防止しやすい。
【0009】
本発明において、前記コイル保持部は、前記巻回部を収容する穴であり、前記コイルホルダは、前記引き出し部を案内する案内溝を備え、前記案内溝は、前記凹部と前記コイル保持部とに連通するものとすることができる。このような案内溝を備えれば、巻回部から引き出された引き回し部を、凹部を経由するように引き回すことができる。
【0010】
本発明において、前記案内溝は、前記凹部よりも浅い深さで当該凹部に接続された第1溝部分と、前記第1溝部分から前記コイル保持部に向かって延設され、前記コイル保持部に接近するのに伴って深くなる第2溝部分と、を備えるものとすることができる。このようにすれば、コイル保持部と凹部との間を深い案内溝で接続する場合と比較して、コイルホルダにおいて案内溝が形成されている部分の厚みを確保できる。これにより、コイルホルダの剛性を確保することが容易となる。
【0011】
本発明において、前記巻回部と前記マグネットとが対向する方向を第1方向とし、前記第1方向と直交するとともに互いに直交する2方向を第2方向および第3方向とした場合に、前記コイル保持部と前記基板支持部とは、前記第2方向に配列されており、前記基板表面は、前記第2方向における前記コイル保持部とは反対側を向いており、前記基板は、前記ランドを備える配線接続部と、前記配線接続部における前記第3方向の両端部分から前記第1方向の一方側に突出する一対の脚部と、を備え、前記基板支持部は、前記基板の前記第3方向の両端縁のそれぞれが前記第1方向の他方側から挿入される一対のスリットと、一対の前記脚部および前記配線接続部により区画された前記基板の切欠き開口に前記第1方向の一方側から挿入される挿入部と、を備え、前記挿入部は、前記配線接続部に当接する先端面を備え、前記凹部は、前記先端面に設けられているものとすることができる。このようにすれば、基板表面に沿った方向から見た場合に、基板と重なる位置に、凹部を備えることが容易である。
【0012】
本発明において、前記コイルホルダは、樹脂製であり、一対の前記脚部は、前記挿入部に前記第3方向の両側から接触する一対の突起を備え、
前記挿入部が前記切欠き開口に挿入される前の状態では、一対の前記突起は前記第3方向で対向し、前記第3方向における2つの前記突起の間隔が当該第3方向における前記挿入部の幅よりも狭いものとすることができる。このようにすれば、挿入部が基板の一対の脚部および配線接続部により区画された切欠き開口に挿入される際に、挿入部は切り込み開口に圧入される。すなわち、一対の脚部のそれぞれに設けられた突起は、挿入部が切り込み開口に挿入される際に、圧入代となる。これにより、基板を基板支持部に支持させることが容易となる。
【0013】
この場合において、前記挿入部は、前記先端面の前記第3方向の両側に、前記先端面から離間する方向に向かって前記配線接続部から離間する方向に傾斜する一対の傾斜面と、各傾斜面の前記先端面とは反対側の端から前記第1方向を前記配線接続部とは反対側に延びる一対の側面と、を備え、
前記挿入部が前記切欠き開口に挿入される前の状態では、前記第3方向で対向する2つの前記突起の間隔は、前記第3方向における前記先端面の幅よりも広く、前記第3方向における一対の前記側面の間よりも狭いものとすることができる。このようにすれば、挿入部の先端面を基板の切欠き開口に挿入した後に、挿入部を一対の脚部の間に圧入できる。
【0014】
次に、本発明は、上記のアクチュエータの製造方法において、前記コイルホルダの前記コイル保持部に前記巻回部を保持させ、前記引き出し部を、前記第2方向で前記凹部の前記コイル保持部とは反対側に引き出し、前記基板を、一対の前記スリットの前記第1方向の他方側に配置して、前記基板表面が前記第2方向の前記コイル保持部とは反対側を向く姿勢とし、一対の前記スリットに前記第1方向の他方側から前記基板の前記第3方向の両端縁を挿入するとともに、前記基板の前記切欠き開口に前記挿入部を挿入して、前記基板を、一対の前記突起のそれぞれが前記挿入部の各傾斜面に接触して前記配線接続部と前記先端面との間に隙間が形成される仮支持位置に支持させ、前記引き出し部の先端部分を前記仮支持位置にある前記基板の前記ランドに接続し、前記仮支持位置にある前記基板を、一対の前記突起のそれぞれが前記挿入部の各側面に接触し、かつ前記先端面が前記配線接続部に当接する支持位置に押し込むことを特徴とする。
【0015】
本発明のアクチュエータの製造方法では、基板支持部において基板を仮支持位置に配置して引き出し部を基板に接続し、しかる後に基板を第1方向の一方側に押し込んで、支持位置に配置する。ここで、基板を仮支持位置から支持位置に移動させると、基板に接続された引き出し部の先端部分の第1方向の一方側に撓みが発生する。また、この撓みは、基板の第1方向の一方側に位置する凹部内に収容される。従って、引き出し部に、凹部内で撓む撓み部分を設けることが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアクチュエータによれば、コイルの巻回部から引き出されて基板のランドに接続されたコイルの引き出し部は、巻回部とランドとの間に、撓み部分を備える。従って、衝撃や熱変化に起因して引き出し部に張力が加わった場合には、撓み部分が延びて、引き出し部が基板と巻回部との間で引っ張られた状態となることを防止できる。従って、引き出し部に断線することを防止、或いは抑制できる。また、撓み部分は、コイルホルダに設けられた凹部内で撓んでいる。従って、撓み部分がコイルホルダ上で移動して、他の部材と干渉することを防止或いは抑制できる。さらに、凹部は、基板支持部において、基板の基板表面に沿った方向から見た場合に、基板と重なる位置に設けられている。これにより、引き出し部は、ランドに接続された先端部分の近傍に撓み部分を備えることができる。従って、引き出し部に張力が付与されたときに、半田によってランドに固定された引き出し部の先端部分に過度な負荷がかかることを抑制しやすい。
【0017】
また、本発明のアクチュエータの製造方法では、引き出し部を接続した基板を仮支持位置から支持位置に移動させると、基板に接続された引き出し部の先端部分の第1方向の一方側に撓みが発生する。また、この撓みは、基板の第1方向の一方側に位置する凹部内に収容される。従って、引き出し部に、凹部内で撓む撓み部分を設けることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
図2】アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。
図3】アクチュエータの分解斜視図である。
図4】ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
図5】ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。
図6】ケースを取り外した支持体を図5とは反対側から見た分解斜視図である。
図7】コイルホルダの平面図である。
図8】コイルのコイルホルダへの固定方法の説明図である。
図9】給電基板とコイルとの接続方法の説明図である。
図10】給電基板とコイルとの接続が完了した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したアクチュエータの実施の形態を説明する。また、アクチュエータの製造方法を説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。図2は、アクチュエータを長手方向に切断した場合の断面図である。図3は、アクチュエータの分解斜視図である。図4は、ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。図5は、ケースを取り外した支持体の分解斜視図である。図6は、ケースを取り外した支持体を図5とは反対側から見た分解斜視図である。図7は、コイルホルダの平面図である。
【0021】
本例のアクチュエータ1は、振動によって情報を伝達する触覚デバイスとして用いられる。図1に示すように、アクチュエータ1は、直方体形状の外観を備える。アクチュエータ1は、その外観の短手方向に振動を発生させる。以下の説明では、振動が発生する短手方向をX方向(第3方向)、アクチュエータ1の長手方向であってX方向と直交する方向をY方向(第2方向)とする。また、以下の説明では、アクチュエータ1の厚み方向であって、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向(第1方向)とする。X方向、Y方向、およびZ方向は互いに直交する。また、X方向の一方をX1方向、他方をX2方向とする。Y方向の一方をY1方向、他方をY2方向とする。Z方向の一方をZ1方向、他方とZ2方向とする。
【0022】
図2に示すように、アクチュエータ1は、外形を規定するケース2を備える支持体3と、ケース2の内部に収容された可動体5と、を有する。また、アクチュエータ1は、支持体3と可動体5とをX方向に相対移動可能に接続する接続体6および接続体7と、可動体5と支持体3とをX方向に相対移動させる磁気駆動機構8と、を備える。
【0023】
図5図6に示すように、支持体3は、コイル10と、コイル10を保持する樹脂製のコイルホルダ11と、コイルホルダ11のZ1方向に重ねられた第1プレート12と、コイルホルダ11のZ2方向に重ねられた第2プレート13と、を備える。コイル10は、コイル線を長円状に巻回した巻回部55、並びに、巻回部55の外周側からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57を有する。コイル10は、その厚み方向をZ方向に向けている。図2に示すように、ケース2内において、コイル10の巻回部55は、Z方向の中央に位置する。
【0024】
また、支持体3は、図1図3図4に示すように、コイルホルダ11のY1方向の端面に保持された給電基板14(基板)を備える。コイル10の第1引き出し部56および第2引き出し部57は、給電基板14の基板表面14aに設けられた配線パターン15の第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続される。コイル10には、給電基板14を介して、電力が供給される。
【0025】
可動体5は、マグネット16と、ヨーク17と、を備える。マグネット16は、支持体3が備えるコイル10の巻回部55とZ方向で対向する。コイル10とマグネット16と
は、磁気駆動機構8を構成する。図2図4に示すように、接続体6および接続体7は、それぞれ直方体形状の部材である。接続体6および接続体7は、それぞれ、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0026】
(可動体)
図3図4に示すように、可動体5は、マグネット16として、第1マグネット21および第2マグネット22を備える。第1マグネット21は、コイル10のZ1方向に位置する。第2マグネット22は、コイル10のZ2方向に位置する。第1マグネット21および第2マグネット22は、X方向で2つに分極されている。第1マグネット21の着磁分極線は、X方向の中心をY方向に延びる。第2マグネット22の着磁分極線は、X方向の中心をY方向に延びる。
【0027】
ヨーク17は磁性材料からなる。図4に示すように、ヨーク17は、第1ヨーク23および第2ヨーク24の2部材を組み立てて構成される。第1ヨーク23は、Y方向に長い平板状の第1板部25と、第1板部25のY方向の両端縁において、Y方向の中央部分からX方向の外側に向かってZ2方向に湾曲して、Z2方向に延びる一対の接続板部26と、を備える。第1マグネット21は、第1板部25のZ2方向の面に保持される。第2ヨーク24は、第1板部25とZ方向で対向する第2板部27と、第2板部27のY方向の中間部分からX1方向および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部28を備える。第2マグネット22は、第2板部27のZ1方向の面に保持される。第2ヨーク24の一対の張り出し部28には、一対の接続板部26のZ2方向の先端部分が溶接等の方法で接合される。これにより、第1ヨーク23と第2ヨーク24とは一体とされて、ヨーク17を構成する。
【0028】
(支持体)
図1図2に示すように、ケース2は、Z方向に重ねられた第1ケース部材31および第2ケース部材32を備える。第1ケース部材31は、Z1方向からコイルホルダ11に取り付けられている。第2ケース部材32は、Z2方向からコイルホルダ11に取り付けられている。図3に示すように、第1ケース部材31は、長方形形状の第1板部33と、第1板部33のY1方向の端部分のX方向の両端縁、および第1板部33のY2方向の端部分のX方向の両端縁からZ1方向に延びる4つの側板部34と、を備える。4つの側板部34とは、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。第2ケース部材32は、長方形形状の第2板部35と、第2板部35のX方向の両端縁からZ2方向に延びる一対の側板部36と、を備える。一対の側板部36は、コイルホルダ11のX方向の両側に位置する。
【0029】
図5から図7に示すように、コイルホルダ11は、Y方向に延びる板部40を備える。板部40の中央にはコイル配置穴41(コイル保持部)が設けられている。コイル配置穴41は、Y方向に長い長円状の貫通穴である。コイル配置穴41は、コイル10の巻回部55が嵌合する形状を備える。コイル配置穴41には巻回部55が収容される。また、コイルホルダ11は、板部40のおけるY方向の中央部分を内側へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。
【0030】
また、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY1方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部44と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部45と、を備える。さらに、コイルホルダ11は、Y1方向の端部分に、給電基板14を支持する基板支持部50を備える。基板支持部50とコイル配置穴41とはY方向に配列されている。給電基板14は、第1ランド15aおよび第2ランド15bが形成された基板表面14aをY1方向に向けた姿勢で基板支持部50に支持される。
【0031】
さらに、コイルホルダ11は、切欠き部42、43のY2方向において、板部40のX1方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部47と、板部40のX2方向の縁からZ1方向およびZ2方向に突出する側板部48と、を備える。また、コイルホルダ11は、板部40のY2方向の端縁からZ1方向およびZ2方向に突出して、側板部47のY2方向の端と、側板部48のY2方向の端とを接続する側板部49を備える。
【0032】
また、コイルホルダ11は、板部40のZ2方向の面に、コイル配置穴41から基板支持部50に向かって延びる案内溝53を備える。コイル10の巻回部55からY1方向に引き出された第1引き出し部56および第2引き出し部57は、案内溝53を引き回されて、給電基板14に接続される。
【0033】
ここで、図5図6に示すように、給電基板14は、Y方向から見た場合にX方向に長い長方形形状の配線接続部70と、配線接続部70におけるX方向の両端部分からZ1方向に突出する一対の脚部71と、を備える。これにより、給電基板14は、配線接続部70のZ1方向に、一対の脚部71および配線接続部70により区画された切欠き開口72を備える。図5に示すように、配線接続部70には、配線パターン15が形成されている。配線パターン15は、第1ランド15aおよび第2ランド15bを備える。一対の脚部71は、Z方向の途中に、X方向の内側に突出する一対の突起73を備える。図6に示すように、一対の脚部71においてX方向で互いに対向する内側の縁は、それぞれは、突起73からZ1方向に向かって互いに離間する方向に傾斜する傾斜縁部分74を備える。
【0034】
図5図7に示すように、基板支持部50は、X方向で対向する側板部44、45のY1方向の端部に一対のスリット51、52を備える。一対のスリット51、52のそれぞれはZ方向に延びる。一対のスリット51、52はそれぞれZ2方向に開口する。また、基板支持部50は、板部40のY1方向の端部分のX方向の両端部分に、Z1方向およびY2方向に窪む一対の切欠き凹部80を備える。これにより、基板支持部50は、板部40のY1方向の端部分のX方向の中央部分に、突部81(挿入部)を備える。さらに、基板支持部50は、図5に示すように、一対の切欠き凹部80のZ1方向をX方向に延びて側板部44のZ1方向の端部分と側板部45のZ1方向の端部分とを接続する接続板部82を備える。接続板部82のX方向の中央部分は突部81に連続している。また、基板支持部50は、一対の切欠き凹部80のZ1方向の内壁面に、Z1方向に貫通する一対の基板挿入孔83を備える。
【0035】
突部81は、Z2方向を向く先端面85を備える。また、突部81は、先端面85のX方向の両側に、X方向を先端面85から離間する方向に向かってZ1方向に傾斜する一対の傾斜面86を備える。先端面85には、X方向で離間する2か所に第1凹部85aおよび第2凹部85bが設けられている。また、突部81は、各傾斜面86の先端面85とは反対側の端からZ1方向に延びる一対の側面87を備える。一対の側面87はZ方向に平行に延びる。
【0036】
図4に示すように、給電基板14は、X方向の両端縁のそれぞれが各スリット51、52にZ2方向から挿入されて基板支持部50に支持される。板部40において一対の切欠き凹部80の間に設けられた突部81は、基板支持部50に給電基板14が支持される際に、給電基板14の切欠き開口72にZ1方向の側から挿入される挿入部となる。また、一対の基板挿入孔83には、基板支持部50に給電基板14が支持される際に、給電基板14の各脚部71の先端部分が挿入される。
【0037】
給電基板14が基板支持部50に支持されたときに、突部81の先端面85は配線接続部70に当接する。ここで、突部81の先端面85に設けられた第1凹部85aおよび第
2凹部85bは、Z方向(基板表面14aに沿った方向)から見た場合に、給電基板14と重なる。また、第1凹部85aは、第1ランド15aのZ1方向に位置し、第2凹部85bは、第2ランド15bのZ1方向に位置する。
【0038】
給電基板14は、突部81が切欠き開口72に挿入される前の状態では、一対の脚部71に設けられた各突起73はX方向で対向し、X方向における2つの突起73の間隔は、X方向における突部81の幅よりも狭い。言い換えれば、突部81が給電基板14の切欠き開口72に挿入される前の状態では、X方向における2つの突起73の間隔は、突部81の一対の側面87の間隔よりも狭い。従って、給電基板14を基板支持部50に支持する際に、突部81は一対の脚部71に圧入される。すなわち、一対の脚部71の各突起73の先端は、突部81が給電基板14の切欠き開口72に挿入される際の圧入代となる。従って、給電基板14が基板支持部50に支持された状態では、各突起73の先端および突部81の各側面87の少なくとも一方が、他方との接触により削れた状態となる。本例では、コイルホルダ11が樹脂製であり、給電基板14よりも柔らかいので、突部81の各側面87が給電基板14の各突起73の先端により削られる。
【0039】
図5図7に示すように、案内溝53は、基板支持部50の各凹部85a、85bとコイル配置穴41とに連通する。案内溝53は、板部40のY1方向の端から第1凹部85aを経由して直線状に延びる一方側溝部分91と、板部40のY1方向の端から第2凹部85bを経由して一方側溝部分91と平行に延びる他方側溝部分92と、一方側溝部分91のY2方向の端および他方側溝部分92のY2方向の端と、コイル配置穴41とを連通させる共通溝部分93と、を備える。また、案内溝53は、他方側溝部分92および共通溝部分93をY方向に通過する断面を見た場合に、第2凹部85bよりも浅い深さで第2凹部85bに接続された第1溝部分95と、第1溝部分95からコイル配置穴41に向かって延設され、コイル配置穴41に接近するのに伴って深くなる第2溝部分96と、第2溝部分96とコイル配置穴41とを接続する第3溝部分97と、第1溝部分95よりも浅い深さで当該凹部85a、58bから板部のY1方向の端まで延びる第4溝部分98と、を備える(図9(b)参照)。第3溝部分97は、板部40をコイル配置穴41からY1方向に切り欠いて設けられており、板部40をZ方向に貫通している。同様に、案内溝53は、一方側溝部分91および共通溝部分93をY方向に通過する断面を見た場合に、第1凹部85aよりも浅い深さで第1凹部85aに接続された第1溝部分95と、第1溝部分95からコイル配置穴41に向かって延設され、コイル配置穴41に接近するのに伴って深くなる第2溝部分96と、第2溝部分96とコイル配置穴41とを接続する第3溝部分97と、第1溝部分95よりも浅い深さで当該凹部85a、58bから板部のY1方向の端まで延びる第4溝部分98と、を備える。第3溝部分97は、板部40をコイル配置穴41からY1方向に切り欠いて設けられており、板部40をZ方向に貫通している。
【0040】
ここで、図1図3図4に示すように、コイル10の巻回部55からY1方向に引き出された第1引き出し部56は、案内溝53の共通溝部分93および一方側溝部分91に沿ってY1方向に引き回されて、給電基板14の配線接続部70と板部40(突部81の先端面85)との間をY1方向に通過する。そして、第1引き出し部56は、第1凹部85a内においてZ2方向へ曲げられて、給電基板14の第1ランド15aに電気的に接続される。第1引き出し部56は、第1凹部85a内で撓む撓み部分56aを備える。同様に、コイル10の巻回部55からY1方向に引き出された第2引き出し部57は、案内溝53の共通溝部分93および他方側溝部分92に沿ってY1方向に引き回され、給電基板14の配線接続部70と板部40(突部81の先端面85)との間をY1方向に通過する。そして、図2に示すように、第2引き出し部57は、第2凹部85b内においてZ2方向へ曲げられて、給電基板14の第2ランド15bに電気的に接続される。第2引き出し部57は、凹部85a、58b内で撓む撓み部分57aを備える。
【0041】
次に、第1プレート12は、図5図6に示すように、板部40をZ1方向から覆う長方形形状の第1板部61と、第1板部61のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ1方向に斜めに突出した複数の第1爪部62と、を有する。第1プレート12がコイルホルダ11の板部40にZ1方向から接触したときに、第1爪部62は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。
【0042】
また、第2プレート13は、板部40をZ2方向から覆う長方形形状に第2板部63と、第2板部63のX方向の両側からX方向の外側に向かってZ2方向に斜めに突出した複数の第2爪部64を有する。第2プレート13がコイルホルダ11の板部40にZ2方向から接触したときに、第2爪部64は、側板部44、側板部45、側板部47、側板部48に弾性をもって当接した状態となる。第1プレート12および第3プレート13は、接着剤により、コイルホルダ11に固定される。
【0043】
(接続体)
図2図4に示すように、接続体6、7は、それぞれX方向に長く延びる直方体形状である。接続体6は、第1ヨーク23と第1プレート12との間に配置されている。より詳細には、接続体6は、同一形状の2部材からなり、第1ヨーク23のY1方向の端部分と第1プレート12とのY1方向の端部分との間、および、第1ヨーク23のY2方向の端部分と第1プレート12のY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。接続体7は、第2ヨーク24と第2プレート13との間に配置されている。より詳細には、接続体7は、同一形状の2部材からなり、第2ヨーク24のY1方向の端部分と第2プレート13とのY1方向の端部分との間、および、第2ヨーク24のY2方向の端部分と第2プレート13とのY2方向の端部分との間の2か所に挟まれている。接続体6、7は、シリコーンゲルからなるゲル状部材である。接続体6、接続体7は、支持体3と可動体5との間でZ方向に圧縮された状態とされている。
【0044】
ここで、可動体5が、接続体6、7を介して支持体3に支持された状態では、コイル10の巻回部55がZ方向で第1マグネット21と第2マグネット22との間に配置される。この状態をZ方向から見た場合には、巻回部55は、Z1方向で第1マグネット21に対向し、Z2方向で第2マグネット22に対向する。また、第1ヨーク23の第1板部25のY方向の両端部分および第2ヨーク24の第2板部27のY方向の両端部分が、X方向で、コイルホルダ11の側板部44と側板部45との間、および、側板部47と側板部48との間に配置される。さらに、ヨーク17の一対の接続板部26が、コイルホルダ11の切欠き部42、43の内側に位置する。コイルホルダ11の側板部44、側板部45、側板部47および側板部48は、可動体5がX方向に移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0045】
(動作)
アクチュエータ1を搭載する機器からの配線は、給電基板14の配線パターン15に接続される。ここで、給電基板14を介してコイル10に所定方向の電流が供給されると、支持体3に支持された可動体5は、X方向の一方に移動する。その後、電流の向きが反転すると、可動体5は、X方向の他方に移動する。コイル10に供給される電流の向きの反転が繰り返されることにより、可動体5は振動する。
【0046】
(コイルのコイルホルダへの固定方法)
ここで、コイル10のコイルホルダ11への固定方法を説明する。図8は、コイル10のコイルホルダ11への固定方法の説明図である。図8に示すように、コイル10のコイルホルダ11に固定する際には、コイルホルダ11の板部40に第1プレート12をZ1方向から重ねる。これにより、第1プレート12は、コイル配置穴41をZ1方向から塞いだ状態で、コイルホルダ11に支持される。
【0047】
次に、コイル10の巻回部55をコイル配置穴41に配置する。そして、巻回部55の中心穴10aに接着剤58を充填する。その後、コイルホルダ11の板部40に第2プレート13をZ2方向から重ねて、コイルホルダ11に支持させる。
【0048】
巻回部55の中心穴10aに充填した接着剤58は、巻回部55のZ1方向では、巻回部55と第1プレート12との間を伝って、第1プレート12とコイルホルダ11の板部40との隙間に流入し、さらに、巻回部55とコイル配置穴41の内壁面との間に流入する。また、接着剤58は、巻回部55のZ2方向では、巻回部55と第2プレート13との間を伝って、第2プレート13とコイルホルダ11の板部40との隙間に流入し、さらに、巻回部55とコイル配置穴41の内壁面との間に流入する。従って、図2に示すように、接着剤58を硬化させると、巻回部55は、接着剤58が硬化した接着剤層59により、板部40におけるコイル配置穴41の内壁面に固定される。また、第1プレート12は、接着剤層59によってコイルホルダ11の板部40に固定される。さらに、第2プレート13は、接着剤層59によってコイルホルダ11の板部40に固定される。
【0049】
ここで、巻回部55の中心穴10aに充填した接着剤58は、案内溝53の側にも流入するが、コイル配置穴41に接続された共通溝部分93に留まる。すなわち、接着剤58は、共通溝部分93において、コイル配置穴41に連通してZ方向に貫通する第3溝部分97、または、第3溝部分97のY1方向に位置し、コイル配置穴41に接近するのに伴って深くなる第2溝部分96に留まる。従って、接着剤58は、第1溝部分95よりもY1方向に流入しない。よって、接着剤58を硬化させた接着剤層59は、各引き出し部56、57の撓み部分56a、57aと、凹部85a、58bの内壁面との間には、設けられない。
(コイルと給電基板との接続方法)
次に、図9図10を参照して、コイルホルダ11に保持されたコイルと給電基板14とを接続する接続方法を説明する。図9は、各引き出し部を仮支持位置にある給電基板14に接続した状態の説明図である。図10は、各引き出し部を接続した給電基板14を仮支持位置から支持位置に移動させた状態の説明図である。図9(a)、図10(a)は、給電基板14およびコイルホルダ11をY1方向の側から見た場合の正面図であり、図9(b)、図10(b)は、給電基板14およびコイルホルダ11を、他方側溝部分92および共通溝部分93をY方向に通過する断面図である。
【0050】
コイル10と給電基板14との接続は、コイル10の巻回部55がコイル配置穴41に収容された状態で行う。この状態では、コイル10の第1引き出し部56および第2引き出し部57は案内溝53に沿ってY1方向に引き回されている。第1引き出し部56の先端部分および第2引き出し部57の先端部分は、それぞれ基板支持部50の第1凹部85aおよび第2凹部85bよりもY1方向に引き出されている。
【0051】
コイル10と給電基板14とを接続する際には、まず、給電基板14を、基板支持部50のZ2方向に配置して、基板表面14aがY1方向を向く姿勢とする。その後、一対のスリット51、52に給電基板14のX方向の両端縁を挿入する。また、給電基板14の切欠き開口72に突部81(挿入部)を挿入して、給電基板14を、一対の突起73のそれぞれが突部81の各傾斜面86に接触して配線接続部70と先端面85との間に隙間が形成される仮支持位置14Aに支持させる。この状態は、図9に示す状態であり、コイルホルダ11の板部と給電基板14の配線接続部70との間には隙間が形成されている。また、第1引き出し部56の先端部分および第2引き出し部57の先端部分は、その隙間をY1方向に通過している。
【0052】
ここで、第1引き出し部56および第2引き出し部57を、仮支持位置14Aに配置さ
れた給電基板14の第1ランド15aおよび第2ランド15bに接続する。各引き出し部56、57が各ランド15a、15bに接続されると、図9(b)に示すように、各引き出し部56、57は、案内溝53内をY1方向に延びて凹部85a、58bのZ1方向を経由した後に、給電基板14の配線接続部70の下端縁に沿ってZ2方向に湾曲する。
【0053】
次に、仮支持位置14Aにある給電基板14を、Z1方向に押し込む。そして、図10に示すように、給電基板14を、一対の脚部71のそれぞれに設けられた一対の突起73が突部81(挿入部)の一対の側面87に接触し、かつ突部81の先端面85が配線接続部70に当接する支持位置14Bに位置させる。ここで、一対の脚部71に設けられた各突部81の先端は給電基板14を突部81に挿入する際の圧入代となる。従って、仮支持位置14Aにある給電基板14が支持位置14Bに移動する間に、突部81は給電基板14の切欠き開口72に圧入される。また、突部81の各側面87は、各突部81の先端により削られる。
【0054】
また、仮支持位置14Aにある給電基板14が支持位置14Bに圧入される際に、各引き出し部56、57は、給電基板14のZ1方向の移動に伴って当該給電基板14のZ1方向で撓む、また、これにより発生した各引き出し部56、57の撓み部分56a、57aが各凹部85a、58b内に収容される。従って、各引き出し部56、57は、凹部85a、58b内で撓む撓み部分56aを備えるものとなる。
【0055】
(作用効果)
本例によれば、コイル10の巻回部55および給電基板14は、コイルホルダ11に設けられたコイル配置穴41および基板支持部50に固定されている。また、コイル10の巻回部55から引き出されて給電基板14のランド15a、15bに接続されたコイル10の引き出し部56、57は、巻回部55とランド15a、15bとの間に、撓み部分56a、57aを備える。従って、衝撃や熱変化に起因して引き出し部56、57に張力が付与された場合には、撓み部分56a、57aが延びて、引き出し部56、57が給電基板14と巻回部55との間で引っ張られた状態となることを防止できる。この結果、引き出し部56、57が断線することを防止、或いは抑制できる。
【0056】
ここで、コイル10および給電基板14は、コイルホルダ11に保持されており、撓み部分56a、57aは、コイルホルダ11に設けられた凹部85a、58b内に設けられている。従って、撓み部分56a、57aがコイルホルダ11上で移動して、他の部材と干渉することを防止或いは抑制できる。
【0057】
さらに、凹部85a、58bは、基板支持部50において、給電基板14の基板表面14aに沿った方向から見た場合に、給電基板14と重なる位置に設けられている。これにより、引き出し部56、57は、給電基板14のランド15a、15bに接続された先端部分の近傍に設けられる。従って、引き出し部56、57に張力が付与されたときに、半田によってランド15a、16bに固定された引き出し部56、57の先端部分に過度な負荷がかかることを抑制しやすい。
【0058】
また、本例において、コイル10をコイルホルダ11に固定する接着剤層59は、巻回部55とコイル配置穴41との間に設けられているが、撓み部分56a、57aと凹部85a、58bの内壁面との間には設けられていない。従って、衝撃や熱変化に起因して引き出し部56、57に張力が付与されたときに、撓み部分56a、57aは自由に変化できる。従って、引き出し部56、57に、断線が発生することを防止しやすい。
【0059】
また、本例では、コイルホルダ11は、引き出し部56、57を案内する案内溝53を備える。案内溝53は、凹部85a、58bとコイル配置穴41とに連通する。従って、
巻回部55から引き出された引き出し部56、57を、凹部85a、58bを経由するように引き回すことができる。
【0060】
さらに、案内溝53は、凹部85a、58bよりも浅い深さで当該凹部85a、58bに接続された第1溝部分95と、第1溝部分95からコイル配置穴41に向かって延設され、コイル配置穴41に接近するのに伴って深くなる第2溝部分96と、を備える。従って、コイル配置穴41と凹部85a、58bとの間を深い案内溝53で接続する場合と比較して、コイルホルダ11において案内溝53が形成されている部分の厚みを確保できる。これにより、コイルホルダ11の剛性を確保することが容易となる。また、凹部85a、58bに接続される第1溝部分95が凹部85a、58bよりも浅いので、コイル10の巻回部55をコイルホルダ11に固定するための接着剤58が、コイル配置穴41から凹部85a、58bに達することを防止或いは抑制できる。これにより、引き出し部56、57と凹部85a、58bとの間に接着剤層59が設けられることを回避できる。
【0061】
また、本例では、給電基板14は、ランド15a、15bを備える配線接続部70と、配線接続部70におけるX方向の両端部分から第1方向の一方側に突出する一対の脚部71と、を備える。基板支持部50は、給電基板14のX方向の両端縁のそれぞれが第1方向の他方側から挿入される一対のスリット51、52と、一対の脚部71および配線接続部70により区画された給電基板14の切欠き開口72に第1方向の一方側から挿入される突部81と、を備える。突部81は配線接続部70に当接する先端面85を備えており、凹部85a、58bは先端面85に設けられている。従って、基板表面14aに沿った方向から見た場合に、給電基板14と重なる位置に、凹部85a、58bを備えることが容易である。
【0062】
ここで、給電基板14の一対の脚部71は、突部81にX方向の両側から接触する一対の突起73を備える。また、給電基板14は、突部81が切欠き開口72に挿入される前の状態では、一対の突起73がX方向で対向し、X方向における2つの突起73の間隔がX方向における突部81の幅よりも狭い。従って、突部81が給電基板14の切欠き開口72に挿入される際に、突部81は切り込み開口72に圧入される。すなわち、一対の突起73は、突部81が切り込み開口72に挿入される際に、圧入代となる。これにより、給電基板14を、基板支持部50に支持させることが容易となる。
【0063】
また、突部81は、先端面85のX方向の両側に、先端面85から離間する方向に向かって配線接続部70から離間する方向に傾斜する一対の傾斜面86と、各傾斜面86の先端面85とは反対側の端から第1方向を配線接続部70とは反対側に延びる一対の側面87と、を備える。また、給電基板14は、突出部が開口に挿入される前の状態では、X方向で対向する2つの突起73の間隔が、X方向における先端面85の幅よりも広く、X方向における一対の側面87の間よりも狭い。従って、突部81を給電基板14の切欠き開口72に圧入することが容易である。
【0064】
さらに、本例では、コイル10の各引き出し部56、57を給電基板14に接続する際に、給電基板14を仮支持位置14Aに配置した状態で引き出し部56、57を給電基板14に接続し、しかる後に給電基板14をZ1方向に押し込んで、支持位置14Bに配置する。ここで、給電基板14を仮支持位置14Aから支持位置14Bに移動させると、給電基板14に接続された引き出し部56、57に撓みが発生する。また、この撓みは、給電基板14のZ1方向に位置する凹部85a、58b内に収容される。従って、引き出し部56、57に、凹部85a、58b内で撓む撓み部分56a、57aを設けることが容易である。
【符号の説明】
【0065】
1…アクチュエータ、2…ケース、3…支持体、5…可動体、6、7…接続体、8…磁気駆動機構、10…コイル、10a…中心穴、11…コイルホルダ、12…第1プレート、13…第2プレート、14…給電基板、14a…基板表面、14A…仮支持位置、14B…支持位置、15…配線パターン、15a…第1ランド、15b…第2ランド、16…マグネット、17…ヨーク、21…第1マグネット、22…第2マグネット、23…第1ヨーク、24…第2ヨーク、25…第1板部、26…接続板部、27…第2板部、28…張り出し部、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、33…第1板部、34…側板部、35…第2板部、40…板部、41…コイル配置穴(コイル保持部)、42、43…切欠き部、44、45、47、48、49…側板部、50…基板支持部、51、52…スリット、53…案内溝、55…巻回部、56…第1引き出し部、56a…撓み部分、57…第2引き出し部、57a…撓み部分、59…接着剤層、61…第1板部、62…第1爪部、63…第2板部、64…第2爪部、70…配線接続部、71…脚部、72…切欠き開口、73…突起、74…傾斜縁部分、80…切欠き凹部、81…突部(挿入部)、82…接続板部、83…基板挿入孔、85…先端面、85a…第1凹部、85b…第2凹部、86…傾斜面、87…側面、91…一方側溝部分、92…他方側溝部分、93…共通溝部分、95…第1溝部分、96…第2溝部分、97…第3溝部分、98…第4溝部分
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10