(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両用灯具システム及び車両用灯具ユニット制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20250110BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20250110BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20250110BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20250110BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20250110BHJP
G01M 11/06 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
F21V7/00 590
F21V14/04
F21V9/40 400
B60Q1/14 A
G01M11/06
(21)【出願番号】P 2021073435
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大和田 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】中谷 昭広
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097805(JP,A)
【文献】特開2019-089386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21V 7/00
F21V 14/04
F21V 9/40
B60Q 1/14
G01M 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に配置されたスクリーン上に
仮想対向車のヘッドランプに対応する左スポットパターン、右スポットパターンを形成可能な車両用灯具ユニットと、
前記車両の前方を撮像するカメラと、前記カメラにより撮像された画像に基づいて、前記車両の前方に存在するマスク対象物の位置として少なくとも対向車のヘッドランプの位置を検出するマスク対象物位置検出部と、を含むマスク対象物検出センサと、
前記マスク対象物の位置に基づいて、前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する非照射領域設定部と、
前記非照射領域以外の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御する灯具ユニット制御部と、を備えた車両用灯具システムであって、
光軸が設計上の光軸に一致した状態で前記車両に取り付けられた前記車両用灯具ユニットから照射される光により前記スクリーン上に形成される
左基準スポットパターン、右基準スポットパターンの位置が予め記憶された基準スポットパターン位置記憶部と、
ずれ量を算出するずれ量算出部と、
前記ずれ量を記憶するずれ量記憶部と、を備え、
前記
左スポットパターン、右スポットパターンは前記マスク対象物
位置検出部により位置が検出可能なサイズおよび明るさで構成されており、
光軸補正開始の指示が入力された場合、
前記灯具ユニット制御部は、前記スクリーン上に仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンが形成されるように前記車両用灯具ユニットを制御し、
前記カメラは、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンを含む画像を撮像し、
前記マスク対象物位置検出部は、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンを含む画像に基づいて、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンの位置を検出し、
前記ずれ量算出部は、前記
左基準スポットパターン、右基準スポットパターンの位置及び前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンの位置に基づいて、前記
左基準スポットパターン、右基準スポットパターンに対する前記仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンのずれ量を算出する車両用灯具システム。
【請求項2】
前記照射領域及び前記非照射領域を補正する照射・非照射領域補正部をさらに備え、
前記光軸補正開始の指示が入力されない場合、
前記カメラは、前記車両の前方を撮像し、
前記マスク対象物位置検出部は、前記カメラにより撮像された画像に基づいて、前記車両の前方に存在するマスク対象物の位置を検出し、
前記非照射領域設定部は、前記マスク対象物の位置に基づいて、前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定し、
前記照射・非照射領域補正部は、前記ずれ量記憶部に記憶された前記ずれ量に基づいて、前記照射領域及び前記非照射領域を補正し、
前記灯具ユニット制御部は、前記補正後の非照射領域以外の前記補正後の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御する請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用灯具システムの制御方法であって、
車両の前方に配置されたスクリーン上に仮想対向車のヘッドランプに対応する
左スポットパターン、右スポットパターンが形成されるように、前記車両に取り付けられた車両用灯具ユニットを制御するステップと、
前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンの位置を検出するステップと、
予め記憶された
左基準スポットパターン、右基準スポットパターンの位置及び前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応する
左スポットパターン、右スポットパターンの位置に基づいて、前記
左基準スポットパターン、右基準スポットパターンに対する前記仮想対向車のヘッドランプに対応する前記
左スポットパターン、右スポットパターンのずれ量を算出するステップと、
前記ずれ量を記憶するステップと、を備える車両用灯具ユニット制御方法。
【請求項4】
前記車両の前方に存在するマスク対象物を検出するステップと、
前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定するステップと、
前記記憶された前記ずれ量に基づいて、前記非照射領域及び当該非照射領域以外の照射領域を補正するステップと、
前記補正後の非照射領域以外の前記補正後の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御するステップと、を含む請求項3に記載の車両用灯具ユニット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システム及び車両用灯具ユニット制御方法に関し、特に、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意することなく、車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出することができる車両用灯具システム及び車両用灯具ユニット制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具ユニットの光軸を調整するため、車両用灯具ユニットとは別の、光軸調整用の光を照射する専用の光源ユニットを用い、車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出することができるものの、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意することなく、車両用灯具ユニットのずれ量を算出することができる車両用灯具システム及び車両用灯具ユニット制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる車両用灯具システムは、車両用灯具ユニットと、車両の前方を撮像するカメラと、前記カメラにより撮像された画像に基づいて、前記車両の前方に存在するマスク対象物の位置として少なくとも対向車のヘッドランプの位置を検出するマスク対象物位置検出部と、を含むマスク対象物検出センサと、前記マスク対象物の位置に基づいて、前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する非照射領域設定部と、前記非照射領域以外の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御する灯具ユニット制御部と、を備えた車両用灯具システムであって、光軸が設計上の光軸に一致した状態で前記車両に取り付けられた前記車両用灯具ユニットから照射される光により前記車両の前方に配置されたスクリーン上に形成される基準スポットパターンの位置が予め記憶された基準スポットパターン位置記憶部と、ずれ量を算出するずれ量算出部と、前記ずれ量を記憶するずれ量記憶部と、を備え、光軸補正開始の指示が入力された場合、前記灯具ユニット制御部は、前記スクリーン上に仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンが形成されるように前記車両用灯具ユニットを制御し、前記カメラは、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンを含む画像を撮像し、前記マスク対象物位置検出部は、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンを含む画像に基づいて、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置を検出し、前記ずれ量算出部は、前記基準スポットパターンの位置及び前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置に基づいて、前記基準スポットパターンに対する前記仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンのずれ量を算出する。
【0007】
このような構成により、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意することなく、車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出することができる。
【0008】
これは、専用の光源ユニットではなく、車両用灯具ユニットが照射するスポットパターンを用いて車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出することによるものである。
【0009】
上記車両用灯具システムにおいて、前記照射領域及び前記非照射領域を補正する照射・非照射領域補正部をさらに備え、前記光軸補正開始の指示が入力されない場合、前記カメラは、前記車両の前方を撮像し、前記マスク対象物位置検出部は、前記カメラにより撮像された画像に基づいて、前記車両の前方に存在するマスク対象物の位置を検出し、前記非照射領域設定部は、前記マスク対象物の位置に基づいて、前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定し、前記照射・非照射領域補正部は、前記ずれ量記憶部に記憶された前記ずれ量に基づいて、前記照射領域及び前記非照射領域を補正し、前記灯具ユニット制御部は、前記補正後の非照射領域以外の前記補正後の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御してもよい。
【0010】
このようにすれば、車両用灯具ユニットの取り付け誤差等に起因して車両用灯具ユニットの光軸がずれたとしても、マスク対象物に対するグレアを防止することができる。
【0011】
これは、ずれ量記憶部に記憶されたずれ量に基づいて、非照射領域が補正されることによるものである。
【0012】
本発明にかかる車両用灯具ユニット制御方法は、車両の前方に配置されたスクリーン上に仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンが形成されるように、前記車両に取り付けられた車両用灯具ユニットを制御するステップと、前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置を検出するステップと、予め記憶された基準スポットパターンの位置及び前記スクリーン上の仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置に基づいて、前記基準スポットパターンに対する前記仮想対向車のヘッドランプに対応するスポットパターンのずれ量を算出するステップと、前記ずれ量を記憶するステップと、を備える。
【0013】
上記車両用灯具ユニット制御方法において、前記車両の前方に存在するマスク対象物を検出するステップと、前記マスク対象物を照射しない非照射領域を設定するステップと、前記記憶された前記ずれ量に基づいて、前記非照射領域及び当該非照射領域以外の照射領域を補正するステップと、前記補正後の非照射領域以外の前記補正後の照射領域を照射するように前記車両用灯具ユニットを制御するステップと、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意することなく、車両用灯具ユニットの光軸のずれ量を算出することができる車両用灯具システム及び車両用灯具ユニット制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両用灯具システム10の概略構成図である。
【
図2】左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1等を説明するための図である。
【
図3】式1~式6、式7~式12の各要素等を図示した概略図である。
【
図4】(a)非照射領域設定部33によって設定される明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θ
LE1、角度θ
LE2)の例、(b)左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれている場合に形成される明暗境界線CL1、CL2の例、(c)ADB用配光パターンP
ADBの一例である。
【
図6】ADB用配光パターン形成処理のフローチャートである。
【
図8】車両用灯具システム10(変形例)の概略構成図である。
【
図9】変形例のADB用配光パターン形成処理のフローチャートである。
【
図10】(a)左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれている場合に形成されるADB用配光パターンP
ADB(明暗境界線CL1、CL2)の例、(b)補正後のADB用配光パターンP
ADB(明暗境界線CL1、CL2)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具システム10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0017】
図1は、車両用灯具システム10の概略構成図である。
図2は、左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1等を説明するための図である。
【0018】
図1に示すように、車両用灯具システム10は、マスク対象物検出センサ20、制御部30、灯具ユニット40L、40R等を備えている。テスター50は、例えば、故障検査用のテスターで、後述するように光軸補正開始の指示(例えば、補正実行コマンド)を入力するために用いられる。車両用灯具システム10は、自動車等の車両に搭載される。以下、車両用灯具システム10が搭載された車両のことを自車Vという。
【0019】
マスク対象物検出センサ20は、対向車検知機能付きのセンサで、カメラ21、マスク対象物位置検出部22を備える。マスク対象物位置検出部22は、ソフトウエア又はハードウエアにより実現することができる。
【0020】
マスク対象物検出センサ20は、例えば、自車Vの車室内の車幅方向の中央に設けられている(
図2参照)。カメラ21の光軸AX
21と自車Vの中心軸AX
Vは一致している。
【0021】
カメラ21は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。カメラ21は、自車Vの前方を周期的に(例えば、60msごとに)フロントガラス越しに撮像する。
【0022】
マスク対象物位置検出部22は、カメラ21により撮像された画像(画像データ)に基づいて(当該画像に対して所定画像処理を施すことにより)、自車Vの前方に存在するマスク対象物の位置として少なくとも対向車のヘッドランプの位置を検出する。マスク対象物は、例えば、自車Vの前方の対向車線側を走行している対向車、自車Vの前方の自車線側を走行している先行車である。
【0023】
マスク対象物の位置は、例えば、自車V(カメラ21の光軸AX21)に対する対向車のヘッドランプの位置、自車V(カメラ21の光軸AX21)に対する先行車のテールランプの位置である。
【0024】
例えば、
図2に示すように、自車Vの前方に配置されたスクリーンS上に、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1が形成されているとする。左スポットパターンLP1は、自車Vに取り付けられた左灯具ユニット40Lから照射される光Ray
40Lにより、スクリーンS上に形成される光点である。なお、自車Vに取り付けられた左灯具ユニット40Lの光軸は、取り付け誤差等に起因して、設計上の光軸AX
40Lに一致しているとは限らない。同様に、右スポットパターンRP1は、自車Vに取り付けられた右灯具ユニット40Rから照射される光Ray
40Rにより、スクリーンS上に形成される光点である。なお、自車Vに取り付けられた右灯具ユニット40Rの光軸は、取り付け誤差等に起因して、設計上の光軸AX
40Rに一致しているとは限らない。
【0025】
この場合、マスク対象物位置検出部22は、自車Vの前方に存在するマスク対象物の位置として、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1の位置を検出する。
図2中、左角度θ
LA、右角度θ
RAが、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1の位置である。左角度θ
LA、右角度θ
RAは、カメラ21から見たずれ量である。
【0026】
なお、
図2中、自車Vは、スクリーンSに正対し、カメラ21の光軸AX
21(及び自車Vの中心軸AX
V)がスクリーンSに対して直交した状態で停車している。
図2中、符号Lはマスク対象物検出センサ20(カメラ21)とスクリーンSとの間の距離、符号LLはマスク対象物検出センサ20(カメラ21)と灯具ユニット40L、40Rとの間の距離を表す。
【0027】
以上のようにマスク対象物位置検出部22によって検出されたマスク対象物の位置(例えば、左角度θLA及び右角度θRA)は、制御部30に送信される。
【0028】
制御部30は、例えば、プロセッサ(図示せず)、記憶部36、メモリ37を備えるECU(Electronic Control Unit)である。ECUは、例えば、灯具制御ECUである。
【0029】
プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、記憶部36からメモリ37(例えば、RAM)に読み込まれた所定プログラム(図示せず)を実行することにより、マスク対象物位置取得部31、ずれ量算出部32、非照射領域設定部33、非照射領域補正部34、灯具ユニット制御部35として機能する。これらの一部又は全部は、ハードウエアにより実現してもよい。
【0030】
マスク対象物位置取得部31は、マスク対象物検出センサ20(マスク対象物位置検出部22)から送信されるマスク対象物の位置(例えば、左角度θLA及び右角度θRA)を取得(受信)する。
【0031】
ずれ量算出部32は、基準スポットパターンの位置及びスクリーンS上の仮想対向車V0のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置に基づいて、左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量及び右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量を算出する。
【0032】
例えば、
図2に示すように、自車Vの前方に配置されたスクリーンS上に、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1が形成されているとする。
図2中、左基準スポットパターンLP2は、光軸が設計上の光軸AX
40Lに一致した状態で自車Vに取り付けられた左灯具ユニット40Lから照射される光によりスクリーンS上に形成される光点である。
【0033】
同様に、右基準スポットパターンRP2は、光軸が設計上の光軸AX
40Rに一致した状態で自車Vに取り付けられた右灯具ユニット40Rから照射される光によりスクリーンS上に形成される光点である。
図2中、左角度θ
LB、右角度θ
RBが、左基準スポットパターンLP2、右基準スポットパターンRP2の位置である。左基準スポットパターンLP2、右基準スポットパターンRP2の位置(左角度θ
LB、右角度θ
RB)は、記憶部36(基準スポットパターン位置記憶部36a)に予め記憶されている。
【0034】
図2中、角度θ
LDが、左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量である。このずれ量(角度θ
LD)は、次の式1~式6により算出することができる。
図3は、式1~式6、式7~式12の各要素等を図示した概略図である。
図3中、符号AX
40Lは、左灯具ユニット40Lの設計上の光軸を表す。同様に、符号AX
40Rは、右灯具ユニット40Rの設計上の光軸を表す。左灯具ユニット40Lの設計上の光軸AX
40L(及び右灯具ユニット40Rの設計上の光軸AX
40R)とカメラ21の光軸AX
21は、互いに平行である。
【0035】
LTB = (VL+CL) × tan(θLB) ・・・(式1)
但し、LTBは、カメラ21の光軸AX21から左スポットパターンLP1までの距離である。VLは、灯具ユニット40L、40RとスクリーンSとの間の距離である。CLは、灯具ユニット40L、40Rとマスク対象物検出センサ20(カメラ21)との間の距離である。
【0036】
(LTD+LTB)/(VL+CL) = tan(θLA) ・・・(式2)
但し、LTDは、左スポットパターンLP1と左基準スポットパターンLP2との間の距離である。
【0037】
LTD+LTB = (VL+CL) × tan(θ
LA) ・・・(式3)
LTD = (VL+CL) × tan(θ
LA) - LTB ・・・(式4)
LTD = (VL+CL) × ( tan(θ
LA) - tan(θ
LB) ) ・・・(式5)
θ
LD = arctan( LTD / VL ) ・・・(式6)
図2中、角度θ
RDが、右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量である。このずれ量(角度θ
RD)は、次の式7~式12により算出することができる。
【0038】
RTB = (VL+CL) × tan(θRB) ・・・(式7)
但し、RTBは、カメラ21の光軸AX21から右スポットパターンRP1までの距離である。
【0039】
(RTD+RTB)/(VL+CL) = tan(θRA) ・・・(式8)
但し、RTDは、右スポットパターンRP1と右基準スポットパターンRP2との間の距離である。
【0040】
RTD+RTB = (VL+CL) × tan(θRA) ・・・(式9)
RTD = (VL+CL) × tan(θRA) - RTB ・・・(式10)
RTD = (VL+CL) × ( tan(θRA) - tan(θRB) ) ・・・(式11)
θRD = arctan( RTD / VL ) ・・・(式12)
以上のようにずれ量算出部32によって算出された左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量(角度θLD)及び右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量(角度θRD)は、補正値として記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶される。
【0041】
非照射領域設定部33は、マスク対象物位置検出部22によって検出されたマスク対象物の位置に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定する。非照射領域は、照射領域と比べ暗い領域(減光された領域又は消灯された領域)である。
【0042】
例えば、
図4(a)に示すように、マスク対象物(対向車Ob)が検出されたとする。この場合、非照射領域設定部33は、非照射領域として、縦方向(鉛直方向)に延びる2本の明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θ
LE1、角度θ
LE2)を設定する。
図4(a)は、非照射領域設定部33によって設定される明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θ
LE1、角度θ
LE2)の例である。
【0043】
ここで、左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれていると(すなわち、左灯具ユニット40Lの光軸が設計上の光軸AX
40Lからずれていると)、
図4(b)に示すように、明暗境界線CL1、CL2が角度θ
LE1+角度θ
LD、角度θ
LE2+角度θ
LDの位置に形成される。
【0044】
その結果、対向車Obが照射されることになり、対向車Obに対するグレアを防止することができない。
図4(b)は、左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれている場合に形成される明暗境界線CL1、CL2の例である。右スポットパターンRP1が右基準スポットパターンRP2に対して角度θ
RD(
図2参照)ずれている(すなわち、右灯具ユニット40Rの光軸が設計上の光軸AX
40Rからずれている)場合も同様である。
【0045】
そこで、非照射領域補正部34によって、非照射領域設定部33によって設定された非照射領域を補正する。
【0046】
非照射領域補正部34は、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θLD、角度θRD)に基づいて、非照射領域設定部33によって設定された非照射領域を補正する。
【0047】
具体的には、非照射領域補正部34は、灯具ユニット40Lについては、非照射領域設定部33によって設定された2本の明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θLE1、角度θLE2)から、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θLD)を減算する。灯具ユニット40Rについても同様である。
【0048】
これにより、
図4(c)に示すように、明暗境界線CL1、CL2が補正後の位置、すなわち、角度θ
LE1、角度θ
LE2の位置に形成される。その結果、対向車Obが照射されないことになり、対向車Obに対するグレアを防止することができる。
【0049】
灯具ユニット制御部35は、非照射領域以外の領域を照射するように灯具ユニット40L、40Rを制御する。具体的には、灯具ユニット制御部35は、非照射領域補正部34による補正後の非照射領域以外の領域を照射するように車両用灯具ユニット40L、40Rを制御する。例えば、
図4(c)に示すように、灯具ユニット制御部35は、非照射領域補正部34による補正後の位置、すなわち、角度θ
LE1、角度θ
LE2の位置に形成される明暗境界線CL1、CL2を含むADB用配光パターンP
ADBが形成されるように灯具ユニット40L、40Rを制御する。
【0050】
図4(c)は、ADB用配光パターンP
ADBの一例である。
【0051】
図4(c)に示すように、ADB用配光パターンP
ADBは、マスク対象物(例えば、対向車Ob)を照射しない非照射領域Aとそれ以外の領域を照射する照射領域B、Cとを含み、ハイビーム領域に形成される。なお、明暗境界線CL1、CL2は、非照射領域Aと照射領域B、Cとの境界で、縦方向(鉛直方向)に延びている。
【0052】
灯具ユニット40L、40Rは、灯具ユニット制御部35からの制御に従ってADB用配光パターンPADBを形成可能な配光可変型の灯具ユニットであればよく、その構成は、どのようなものであってもよい。
【0053】
例えば、灯具ユニット40L、40Rは、水平方向に配置された複数光源を備えたダイレクトプロジェクション型(直射型ともいう)の灯具ユニット(LEDセグメント方式のADB灯具ユニット)であってもよいし、マトリックス状に配置された複数光源を備えたダイレクトプロジェクション型(直射型ともいう)の灯具ユニット(LEDアレイ方式のADB灯具ユニット)であってもよいし、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式のADB灯具ユニットであってもよいし、DMD(Digital Mirror Device)方式の灯具ユニットであってもよいし、LCD(Liquid Crystal Display)による電子式遮光方式のADB灯具ユニットであってもよいし、その他の構成のADB灯具ユニットであってもよい。
【0054】
記憶部36は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の読み書き可能な記憶部である。
【0055】
記憶部36は、基準スポットパターン位置記憶部36a、ずれ量記憶部36bを含む。
【0056】
基準スポットパターン位置記憶部36aには、左基準スポットパターンLP2の位置(左角度θLB)、右基準スポットパターンRP2の位置(右角度θRB)が予め記憶されている。ずれ量記憶部36bには、ずれ量算出部32によって算出されたずれ量(角度θLD、角度θRDが)記憶される。
【0057】
次に、上記構成の車両用灯具システム10の動作例として、ずれ量算出処理について説明する。ずれ量算出処理は、左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量(角度θLD)及び右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量(角度θRD)を算出する処理である。
【0058】
【0059】
以下、前提として、
図2に示すように、自車Vが、スクリーンSに正対し、カメラ21の光軸AX
21(及び自車Vの中心軸AX
V)がスクリーンSに対して直交した状態で停車しているものとする。以下の処理は、例えば、車両組み立て時のエーミング工程や、車検等でマニュアルで灯具ユニット40L、40Rの光軸を調整した際に実行される。以下の処理は、制御部30に電気的に接続されたテスター50から光軸補正開始の指示を入力することにより開始される。
【0060】
テスター50から光軸補正開始の指示(例えば、補正実行コマンド)が入力されると、まず、スクリーンS上にスポットパターンを形成する(ステップS10)。これは、灯具ユニット制御部35が、スクリーンS上に、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1が形成されるように、灯具ユニット40L、40Rを制御することにより実現される。左スポットパターンLP1及び右スポットパターンRP1は、マスク対象物位置検出部22によって位置が検出されるように、一般的な車両のヘッドランプと同様のサイズ及び明るさでスクリーンS上に形成される。
【0061】
次に、カメラ21により、スクリーンS上に形成されたスポットパターン(左スポットパターンLP1及び右スポットパターンRP1)を撮像する(ステップS11)。
【0062】
次に、マスク対象物の位置を検出する(ステップS12)。これは、マスク対象物位置検出部22が、ステップS11で撮像された画像(画像データ)に対して所定画像処理を施すことにより実現される。
【0063】
ここでは、マスク対象物の位置として、仮想対向車V0のヘッドランプに対応する左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1の位置(左角度θ
LA、右角度θ
RA。
図2参照)が検出されたものとする。この検出された左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1の位置(左角度θ
LA、右角度θ
RA)は、制御部30に送信される。
【0064】
次に、マスク対象物位置取得部31が、マスク対象物の位置を取得する(ステップS13)。ここでは、マスク対象物の位置として、マスク対象物検出センサ20(マスク対象物位置検出部22)から送信される左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1の位置(左角度θLA、右角度θRA)が取得(受信)されたものとする。
【0065】
次に、ずれ量を算出する(ステップS14)。これは、ずれ量算出部32が、基準スポットパターンの位置及びスクリーンS上の仮想対向車V0のヘッドランプに対応するスポットパターンの位置に基づいて、左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量及び右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量を算出することにより実現される。ここでは、ずれ量として、角度θ
LD、角度θ
RD(
図2参照)が算出されたものとする。この算出されたずれ量(角度θ
LD、角度θ
RD)は、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶される(ステップS15)。
【0066】
以上のようにして、左基準スポットパターンLP2に対する左スポットパターンLP1のずれ量(角度θLD)及び右基準スポットパターンRP2に対する右スポットパターンRP1のずれ量(角度θRD)が算出される。
【0067】
次に、上記構成の車両用灯具システム10の動作例として、ADB用配光パターン形成処理について説明する。
【0068】
図6は、ADB用配光パターン形成処理のフローチャートである。以下、代表して、左灯具ユニット40LのADB用配光パターン形成処理について説明する。右灯具ユニット40RのADB用配光パターン形成処理については同様であるため説明を省略する。
【0069】
以下、前提として、
図2に示すように、左スポットパターンLP1は、左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LDずれている(すなわち、左灯具ユニット40Lの光軸は設計上の光軸AX
40Lからずれている)ものとする。また、記憶部36(ずれ量記憶部36b)には、ずれ量(角度θ
LD)が予め記憶されているものとする。以下の処理は、自車Vが走行中に実行される。なお、以下の処理においては、テスター50が制御部30に電気的に接続されていないため、光軸補正開始の指示が入力されることはない。
【0070】
まず、カメラ21により、自車Vの前方を撮像する(ステップS20)。
【0071】
次に、マスク対象物の位置を検出する(ステップS21)。これは、マスク対象物位置検出部22が、ステップS20で撮像された画像(画像データ)に基づいて(当該画像に対して所定画像処理を施すことにより)、自車Vの前方に存在するマスク対象物の位置sを検出することにより実現される。ここでは、マスク対象物の位置として、対向車Obのヘッドランプの位置(左角度及び右角度)が検出されたものとする。この検出された対向車Obのヘッドランプの位置(左角度及び右角度)は、制御部30に送信される。
【0072】
次に、マスク対象物位置取得部31が、マスク対象物の位置を取得する(ステップS22)。ここでは、マスク対象物の位置として、マスク対象物検出センサ20(マスク対象物位置検出部22)から送信される対向車Obのヘッドランプの位置が取得(受信)されたものとする。
【0073】
次に、非照射領域を設定する(ステップS23)。これは、非照射領域設定部33が、ステップS22で取得されたマスク対象物の位置(対向車Obのヘッドランプの位置)に基づいて、当該マスク対象物を照射しない非照射領域を設定することにより実現される。ここでは、
図4(a)に示すように、非照射領域として、縦方向(鉛直方向)に延びる2本の明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θ
LE1、角度θ
LE2)が設定されたものする。
【0074】
ここで、左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれていると(すなわち、左灯具ユニット40Lの光軸が設計上の光軸AX
40Lからずれていると)、
図4(b)に示すように、明暗境界線CL1、CL2が角度θ
LE1+角度θ
LD、角度θ
LE2+角度θ
LDの位置に形成される。その結果、対向車Obが照射されることになり、対向車Obに対するグレアを防止することができない。
【0075】
そこで、ステップS23で設定された非照射領域を補正する(ステップS24)。これは、非照射領域補正部34が、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θLD、角度θRD)に基づいて、非照射領域設定部33によって設定された非照射領域を補正することにより実現される。具体的には、非照射領域補正部34は、非照射領域設定部33によって設定された2本の明暗境界線CL1、CL2の位置(角度θLE1、角度θLE2)から、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θLD)を減算する。
【0076】
次に、ステップS24での補正後の非照射領域以外の領域を照射するように灯具ユニット40Lを制御する(ステップS25)。例えば、
図4(c)に示すように、灯具ユニット制御部35は、ステップS24での補正後の位置、すなわち、角度θ
LE1、角度θ
LE2の位置に形成される明暗境界線CL1、CL2を含むADB用配光パターンP
ADBが形成されるように灯具ユニット40Lを制御する。
【0077】
これにより、灯具ユニット40Lは、灯具ユニット制御部35からの制御に従って、ステップS24での補正後の位置、すなわち、角度θLE1、角度θLE2の位置に形成される明暗境界線CL1、CL2を含むADB用配光パターンPADBを形成する。
【0078】
以上のように非照射領域(明暗境界線CL1、CL2の位置)を補正することにより、
図4(c)に示すように、明暗境界線CL1、CL2は、ステップS24での補正後の位置、すなわち、角度θ
LE1、角度θ
LE2の位置に形成される。その結果、マスク対象物(ここでは、対向車Ob)が照射されないことになり、マスク対象物(ここでは、対向車Ob)に対するグレアを防止することができる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両用灯具ユニットとは別の専用の光源ユニットを用意することなく、車両用灯具ユニット(灯具ユニット40L、40R)の光軸のずれ量を算出することができる。
【0080】
これは、専用の光源ユニットではなく、車両用灯具ユニットが照射するスポットパターン(左スポットパターンLP1、右スポットパターンRP1)を用いて車両用灯具ユニットの光軸のずれ量(角度θLD、角度θRD)を算出することによるものである。
【0081】
また、本実施形態によれば、車両用灯具ユニット(灯具ユニット40L、40R)の取り付け誤差等に起因して車両用灯具ユニット(灯具ユニット40L、40R)の光軸がずれたとしても、マスク対象物に対するグレアを防止することができる。
【0082】
これは、ずれ量記憶部に記憶されたずれ量に基づいて、非照射領域が補正されることによるものである。
【0083】
また、本実施形態によれば、次の利点がある。
【0084】
【0085】
すなわち、一般的に、非照射領域Aの幅(水平方向の幅)は、ヘッドランプ(例えば、灯具ユニット40L、40R)の取り付け誤差等に起因して光軸がずれたとしても、マスク対象物を照射しないように、マスクマージンM1、M2(
図7参照)を考慮して広めに定められる。そのため、ヘッドランプ(例えば、灯具ユニット40L、40R)の取り付け誤差等に起因して光軸がずれたとしても、マスク対象物(例えば、対向車Ob)に対するグレアを防止することができる。しかしながら、非照射領域Aの幅(水平方向の幅)が拡がる分、照射領域B、Cの幅(水平方向の幅)が減少する。その結果、前方の視認性が低下する。
【0086】
これに対して、本実施形態では、ヘッドランプ(例えば、灯具ユニット40L、40R)の取り付け誤差等に起因して光軸がずれたとしても、非照射領域(明暗境界線CL1、CL2の位置)を補正することにより、
図4(c)に示すように、明暗境界線CL1、CL2は、ステップS24での補正後の位置、すなわち、角度θ
LE1、角度θ
LE2の位置に形成される。その結果、ヘッドランプ(例えば、灯具ユニット40L、40R)の取り付け誤差等に起因して光軸がずれたとしても、マスク対象物(例えば、対向車Ob)が照射されないことになり、マスク対象物(例えば、対向車Ob)に対するグレアを防止することができる。また、非照射領域Aの幅(水平方向の幅)を狭くできる分、照射領域B、Cの幅(水平方向の幅)が増加する。その結果、前方の視認性が向上する。
【0087】
以上のように、本実施形態によれば、カメラ21の設置方向と灯具ユニット40L、40Rの照射方向のズレ量を低減し照射範囲の精度を向上させ、周囲に幻惑を与えずに自車Vの前方の視認性を向上することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、周囲の交通環境に応じて車両用灯具ユニット(灯具ユニット40L、40R)の照射制御を行うADB灯具システムが元々備えている、部分的な点灯/遮光の制御(照射制御)を行う機能及びマスク対象物検出センサ20(照射制御用センサ)の基本機能である対向車検出機能を用いることにより、ADB灯具システムを実現するための構成(主に、マスク対象物検出センサ20、制御部30、灯具ユニット40L、40R)以外の新たな装置を追加することなくずれ量を算出することができる。また、このずれ量に基づいて、非照射領域を補正することができる。
【0089】
次に、変形例について説明する。
【0090】
上記実施形態では、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θ
LD、角度θ
RD)に基づいて、非照射領域設定部33によって設定された非照射領域を補正する非照射領域補正部34を用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、
図8に示すように、照射・非照射領域補正部34Aを用いてもよい。
図8は、車両用灯具システム10(変形例)の概略構成図である。照射・非照射領域補正部34Aは、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θ
LD、角度θ
RD)に基づいて、照射領域及び非照射領域を補正する。
【0091】
本変形例のずれ量算出処理は、上記実施形態と同様である(
図5参照)。
【0092】
次に、本変形例の車両用灯具システム10の動作例として、ADB用配光パターン形成処理について説明する。
【0093】
図9は、変形例のADB用配光パターン形成処理のフローチャートである。
図10(a)は左スポットパターンLP1が左基準スポットパターンLP2に対して角度θ
LD(
図2参照)ずれている場合に形成されるADB用配光パターンP
ADB(明暗境界線CL1、CL2)の例、
図10(b)は補正後のADB用配光パターンP
ADB(明暗境界線CL1、CL2)の一例である。
図9は、
図6中のステップS24、S25をステップS24A、ステップS25Aに置き換えたものに相当する。以下、相違点であるステップS24A、ステップS25Aについて説明する。
【0094】
ステップS24Aでは、照射領域及びステップS23で設定された非照射領域を補正する。これは照射・非照射領域補正部34Aが、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量(角度θ
LD、角度θ
RD)に基づいて、照射領域及び非照射領域設定部33によって設定された非照射領域を補正することにより実現される。例えば、照射・非照射領域補正部34Aは、照射領域(
図10(a)中、符号B、C参照)が形成される位置及び非照射領域(
図10(a)中、符号A参照)が形成される位置を、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量分(例えば、角度θ
LD分)左(又は右)の方向へずらす。
【0095】
次に、ステップS25Aでは、ステップS24Aでの補正後の非照射領域(
図10(b)中、符号A参照)以外の補正後の照射領域(
図10(b)中、符号B、C参照)を照射するように灯具ユニット40Lを制御する。
【0096】
これにより、灯具ユニット40Lは、灯具ユニット制御部35からの制御に従って、ステップS24Aでの補正後の非照射領域(
図10(b)中、符号A参照)以外の補正後の照射領域(
図10(b)中、符号B、C参照)を照射する。すなわち、記憶部36(ずれ量記憶部36b)に記憶されたずれ量分(例えば、角度θ
LD分)左(又は右)の方向へずれた位置に、照射領域(
図10(b)中、符号B、C参照)及び非照射領域(
図10(b)中、符号A参照)を含むADB用配光パターンP
ADBを形成する。
【0097】
以上のように照射領域及びステップS23で設定された非照射領域を補正することにより、
図10(b)に示すように、非照射領域A(明暗境界線CL1、CL2)は、ステップS24Aでの補正後の位置に形成される。その結果、マスク対象物(ここでは、対向車Ob)が照射されないことになり、マスク対象物(ここでは、対向車Ob)に対するグレアを防止することができる。
【0098】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0099】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0100】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
10…車両用灯具システム、20…マスク対象物検出センサ、21…カメラ、22…マスク対象物位置検出部、30…制御部、31…マスク対象物位置取得部、32…ずれ量算出部、33…非照射領域設定部、34…非照射領域補正部、35…灯具ユニット制御部、36…記憶部、36a…基準スポットパターン位置記憶部、36b…ずれ量記憶部、37…メモリ、40L…左灯具ユニット、40R…右灯具ユニット、50…テスター、A…非照射領域、B、C…照射領域、CL1、CL2…明暗境界線、LP1…左スポットパターン、LP2…左基準スポットパターン、M1、M2…マスクマージン、Ob…対向車、PADB…ADB用配光パターン、RP1…右スポットパターン、RP2…右基準スポットパターン、S…スクリーン、V…自車、V0…仮想対向車