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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20250110BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20250110BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250110BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250110BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20250110BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20250110BHJP
   H01M 50/204 20210101ALN20250110BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M50/271 S
H01M50/204 101
H01M50/204 401H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021211651
(22)【出願日】2021-12-24
(65)【公開番号】P2023095643
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】下池 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015647(WO,A1)
【文献】特開2003-92103(JP,A)
【文献】特開2009-259424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/249
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 50/271
H01M 50/204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、
前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、
前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、
前記接続部は、前記肉厚部に備えられ
1つの前記肉厚部に、複数の前記接続部が備えられている電動作業車。
【請求項2】
機体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、
前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、
前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、
前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、
前記肉厚部は、上下方向に延びる壁部に設けられ、前記壁部よりも厚みが大きい板状部材で構成されている電動作業車。
【請求項3】
機体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、
前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、
前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、
前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、
前記肉厚部は、前記バッテリカバーの前壁部に備えられ、
複数の前記接続部は、前記肉厚部の前面部に備えられている電動作業車。
【請求項4】
複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、外部電源から供給される電力を前記蓄電部に充電するための電気配線を接続する接続部である請求項1から3のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記蓄電部からの直流電力を交流電力に変換して前記モータへ供給するインバータが備えられ、
複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記蓄電部から前記インバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部である請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記蓄電部の直流電圧の大きさを調整して出力するDC-DCコンバータが備えられ、
複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記蓄電部から前記DC-DCコンバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部である請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項7】
機体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、
前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、
前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、
前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、
前記バッテリに、前記蓄電部を冷却する冷却ファンが備えられ、
複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記冷却ファンを駆動するための電力を入力するための電気配線を接続する接続部である電動作業車。
【請求項8】
機体に搭載されたバッテリと、
前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、
前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、
前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、
前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、
前記バッテリカバー内の空気圧を調整する圧力調整部が備えられ、
前記圧力調整部は、前記肉厚部に備えられている電動作業車。
【請求項9】
前記圧力調整部は、前記肉厚部のうち上下方向に沿った面に備えられている請求項8に記載の電動作業車。
【請求項10】
前記肉厚部に、前記肉厚部の外表面から前記バッテリカバーの内側に向けて凹入された凹入部が備えられ、
前記圧力調整部は、前記凹入部に、前記肉厚部の外表面と前記圧力調整部との間に隙間を有する状態で備えられている請求項8又は9に記載の電動作業車。
【請求項11】
前記圧力調整部は、複数の前記接続部のうちのいずれか一つの前記接続部に接続された電気配線と水平方向に沿って並ぶ位置に備えられている請求項8から10のいずれか一項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に搭載されたバッテリと、バッテリから供給される電力により駆動するモータと、モータにより駆動される走行装置と、が備えられた電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電動作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この従来の電動作業車(特許文献1では「トラクタ」)は、バッテリから供給された電力により走行装置が駆動されることにより走行可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-000953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動作業車では、バッテリから走行装置に備えられたモータへ電力を供給しており、バッテリからモータへ電力を供給するための電気配線がバッテリに接続されているとともに、充電器からバッテリへ電力を供給するための電気配線が、バッテリに接続され、これらの電気配線は、バッテリの外壁に支持されている接続部に接続される構成を備えていると考えられる。
【0005】
この構成であれば、バッテリは、少なくとも、バッテリからモータへ電力を供給するための電気配線が接続される接続部と、充電器からバッテリへ電力を供給するための電気配線が接続される接続部とが必要である。
【0006】
バッテリの外壁を構成するバッテリカバーの厚みを小さく構成した場合、バッテリカバーが変形し易い。バッテリカバーが変形してしまうと、バッテリカバーと接続部との間に隙間が生じて、その隙間からバッテリ内部へ水が浸入してしまうという不都合が生じる虞がある。このようなバッテリ内部への水の浸入を回避するためには、バッテリの外壁を構成するバッテリカバーの厚みを大きくしたうえで、接続部をバッテリカバーに強固に固定する必要がある。しかし、そのように構成すると、材料コストが増加するとともに、バッテリが重くなってしまうという不都合が生じる。
【0007】
本発明の目的は、材料コストの増加を抑制するとともに、バッテリの重量の増加を抑えたうえで、バッテリカバーと接続部との間に生じた隙間からバッテリ内部へ水が侵入してしまうことを防ぐことができる電動作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動作業車は、機体に搭載されたバッテリと、前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、1つの前記肉厚部に、複数の前記接続部が備えられている
【0009】
この発明によれば、バッテリカバーにおける肉厚部以外の部位は、肉厚部よりも厚みが小さい構成となる。この構成により、材料コストを抑えることができるとともに、バッテリの重量を抑えることが可能となる。また、肉厚部に接続部を備えることにより、バッテリカバーのより強固な箇所に接続部が備えられる構成となる。この構成により、カバーの変形が生じ難く、また、例えばボルト等の固定具を用いて、バッテリカバーに接続部を強固に支持させることが可能となる。その結果、隙間からバッテリカバー内部への水の侵入を防ぐことが可能となる。
【0010】
本発明の電動作業車は、機体に搭載されたバッテリと、前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、前記肉厚部は、上下方向に延びる壁部に設けられ、前記壁部よりも厚みが大きい板状部材で構成されている
【0011】
接続部が備えられている肉厚部が、バッテリカバーとは別部材で構成されていることにより、接続部及びその周辺のメンテナンス作業を行うときには、肉厚部をバッテリカバーから外すことで、作業が行い易くなる。
【0012】
本発明の電動作業車は、機体に搭載されたバッテリと、前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、前記肉厚部は、前記バッテリカバーの前壁部に備えられ、複数の前記接続部は、前記肉厚部の前面部に備えられている。
【0013】
この発明によれば、接続部はバッテリカバーの前壁部に備えられる構成となる。バッテリカバーの前壁部は、走行に伴う風が通り易い。この風により、肉厚部の前面部に備えられた接続部及びその周辺では、塵埃等が吹き飛ばされるため、塵埃等が溜まり難くなる。
その結果、接続部及びその周辺塵埃等が溜まることによる接続部の故障を回避することができる。
【0014】
本発明においては、複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、外部電源から供給される電力を前記蓄電部に充電するための電気配線を接続する接続部であると好適である。
【0015】
この構成によれば、蓄電部に充電するための電気配線を接続する接続部において、バッテリカバーの変形の発生を抑制し、バッテリカバーと接続部との間に隙間が生じ難くすることが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記蓄電部からの直流電力を交流電力に変換して前記モータへ供給するインバータが備えられ、複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記蓄電部から前記インバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部であると好適である。
【0017】
この構成によれば、蓄電部からインバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部において、バッテリカバーの変形の発生を抑制し、バッテリカバーと接続部との間に隙間が生じ難くすることが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記蓄電部の直流電圧の大きさを調整して出力するDC-DCコンバータが備えられ、複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記蓄電部から前記DC-DCコンバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部であると好適である。
【0019】
この構成によれば、蓄電部からDC-DCコンバータへ電力を出力するための電気配線を接続する接続部において、バッテリカバーの変形の発生を抑制し、バッテリカバーと接続部との間に隙間が生じ難くすることが可能となる。
【0020】
本発明の電動作業車は、機体に搭載されたバッテリと、前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、前記バッテリに、前記蓄電部を冷却する冷却ファンが備えられ、複数の前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記冷却ファンを駆動するための電力を入力するための電気配線を接続する接続部である。
【0021】
この発明によれば、冷却ファンを駆動するための電力を入力するための電気配線を接続する接続部において、バッテリカバーの変形の発生を抑制し、バッテリカバーと接続部との間に隙間が生じ難くすることが可能となる。
【0022】
本発明の電動作業車は、機体に搭載されたバッテリと、前記バッテリから供給される電力により駆動するモータと、前記モータにより駆動される走行装置と、前記バッテリの電力入出力用の電気配線が脱着可能に接続される複数の接続部と、が備えられ、前記バッテリは、電力を蓄える蓄電部と、前記蓄電部を収容するバッテリカバーと、を有し、前記バッテリカバーは、前記バッテリカバーにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部を有し、前記接続部は、前記肉厚部に備えられ、前記バッテリカバー内の空気圧を調整する圧力調整部が備えられ、前記圧力調整部は、前記肉厚部に備えられている。
【0023】
この発明によれば、圧力調整部が、肉厚部に備えられる構成となる。圧力調整部は、例えば、バッテリカバー内の空気圧が上がった場合には、その圧力をバッテリカバー内側から受けることとなる。圧力調整部が、バッテリカバー内の空気圧が上がり、その圧力をバッテリカバー内側から受けても、圧力調整部は、肉厚部に強固に支持される構成となる。
【0024】
本発明においては、前記圧力調整部は、前記肉厚部のうち上下方向に沿った面に備えられていると好適である。
【0025】
この構成によれば、圧力調整部は、上下方向に沿った面に備えられることとなるため、水が圧力調整部に付着したとしても、流れ落ち易い。その結果、圧力調整部に水が付着することによる圧力調整機能の低下を防ぐことができる。
【0026】
本発明においては、前記肉厚部に、前記肉厚部の外表面から前記バッテリカバーの内側に向けて凹入された凹入部が備えられ、前記圧力調整部は、前記凹入部に、前記肉厚部の外表面と前記圧力調整部との間に隙間を有する状態で備えられていると好適である。
【0027】
この構成によれば、肉厚部の外表面と圧力調整部との間に隙間が設けられていることにより、バッテリカバーに付着して圧力調整部に向けて流れた水は、この隙間に落ち込む。
その結果、水の圧力調整部への付着を軽減することができ、圧力調整部に水が付着することによる圧力調整機能が低下してしまうことを防止することができる。
【0028】
本発明においては、前記圧力調整部は、複数の前記接続部のうちのいずれか一つの前記接続部に接続された電気配線と水平方向に沿って並ぶ位置に備えられていると好適である。
【0029】
この構成によれば、水等が水平方向に飛んできたとしても、電気配線により妨げられるため、圧力調整部への水等の付着を軽減することができる。その結果、圧力調整部に水が付着することによる圧力調整機能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】インバータ等の配置を示す左側面図である。
図3】動力伝達の流れを示す図である。
図4】バッテリの平面図である。
図5】バッテリの正面図である。
図6】接続部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0032】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態のトラクタについて説明する。図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0033】
また、トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0034】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0035】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータは、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0036】
トラクタは、走行用バッテリ4(本発明に係る「バッテリ」に相当)を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。
【0037】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及びモータMを備えている。走行用バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0038】
図2及び図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0039】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0040】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。
トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11(本発明に係る「走行装置」に相当)へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0041】
また、図2及び図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0042】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。
例えば、図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0043】
〔走行バッテリの構成について〕
図4に示すように、トラクタの機体に備えられた走行用バッテリ4には、電力を蓄える蓄電部4Aと、蓄電部4Aを収容するバッテリカバー4Bと、バッテリカバー4Bの上部に備えられ、蓄電部4Aを冷却する複数の冷却ファン51等を覆う上部カバー4Cとを備える。
【0044】
図6に示すように、バッテリカバー4Bの前壁部4Bfには、バッテリカバー4Bにおける他の部位よりも厚みが大きい肉厚部41が備えられている。肉厚部41の表面は、機体の上下方向かつ左右方向に延びる。肉厚部41は、バッテリカバー4Bとは別部材で構成されており、アルミ製の板状部材から構成されている。
【0045】
図5及び図6に示すように、肉厚部41は、取付部材42を介して、バッテリカバー4Bに支持されている。取付部材42は、前壁部4Bfに、複数のボルトにより締結固定されている。肉厚部41は、取付部材42に、複数のボルトにより締結固定されている。
【0046】
肉厚部41の前面部には、走行用バッテリ4の電力入出力用のハーネスH(本発明に係る「電気配線」に相当)が脱着可能に接続される複数の接続部43が備えられている。複数の接続部43として、機体の右側から順に、外部電源(図示せず)から供給される電力を蓄電部4Aに充電するためのハーネスHaを接続する接続部43a、蓄電部4Aからインバータ14へ電力を出力するためのハーネスHbを接続する接続部43b、蓄電部4AからDC-DCコンバータ(図示せず)へ電力を出力するためのハーネスHcを接続する接続部43c、冷却ファン51を駆動するための電力を入力するためのハーネスHdを接続する接続部43dが、配置されている。
【0047】
ここで、DC-DCコンバータは、蓄電部4Aの直流電圧の大きさを調整して出力する。このDC-DCコンバータから出力された電力は、例えば、ハーネスHを介して、接続部43dへ入力されて、冷却ファン51の駆動に用いられる。
【0048】
接続部43a、接続部43b、接続部43c、及び接続部43dは、それぞれ、複数のボルトにより締結固定されている。
【0049】
図6に示すように、肉厚部41には、接続部43cの内部を通る配線をバッテリカバー4B内部へ通すために、挿通孔44が形成され、さらに、取付部材42のうち挿通孔44に対応する箇所に、開口が形成されている。
【0050】
接続部43cは、肉厚部41と対向する面に、シール材47が備えられている。シール材47は、接続部43cが肉厚部41に締結固定されているとき、肉厚部41のうちの挿通孔44の外周を囲うように当接するような構成を備えている。この構成により、接続部43cと肉厚部41との間に水が入り込んだとしても、水はシール材47により阻止され、挿通孔44を介してバッテリカバー4B内に水が入り込むのを防ぐことができる。接続部43a、接続部43b、及び接続部43dにも、接続部43cと同様の構成が備えられている。
【0051】
〔圧力調整部の構成について〕
図5及び図6に示すように、肉厚部41のうち上下方向に沿った面に、バッテリカバー4B内の空気圧を調整する圧力調整部45が備えられている。
【0052】
圧力調整部45は、空気を通しつつも水を通さない膜フィルタを有する。例えば、蓄電部4Aの温度が下がり、バッテリカバー4B内の空気圧が下がった場合、外気の空気圧との気圧差により膜フィルタに対して外気側から圧力が係る。圧力調整部45は、この外気側からの圧力によって膜フィルタの目が広げられることによって、空気が通過するように構成されている。
【0053】
圧力調整部45は、肉厚部41のうちの接続部43cの下方に設けられ、圧力調整部45と接続部43cとは、上下方向に並ぶように配置されている。接続部43cは、接続されたハーネスHcが、下方へ向けて延びる状態で接続される構成を備える。この構成により、圧力調整部45は、接続部43cに接続されたハーネスHcと水平方向に沿って並ぶ位置に備えられる構成となり、前後方向視において、圧力調整部45とハーネスHcとは重複する。
【0054】
図6に示すように、肉厚部41には、肉厚部41の外表面41aからバッテリカバー4Bの内側に向けて凹入された凹入部46が形成されている。凹入部46の底部には、さらに、バッテリカバー4B内部まで貫通する貫通孔46aが形成されている。取付部材42のうちの貫通孔46aに対応する箇所に、開口が形成されている。この構成により、圧力調整部45を介して、バッテリカバー4B内部と外部とにおいて空気が行き来するように構成されている。
【0055】
圧力調整部45の外側面45aと肉厚部41の外表面41aとは、機体の前後方向において、略同じ位置になるように構成されている。また、圧力調整部45と肉厚部41の外表面41aとは、それらの間に隙間Sを有するように構成されている。
【0056】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0057】
(1)上記実施形態では、肉厚部41は、バッテリカバー4Bとは別部材で構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、肉厚部41は、バッテリカバー4Bと一体的に構成されていてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態では、肉厚部41は、バッテリカバー4Bの前壁部4Bfに備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、バッテリカバー4Bの左右の側壁部や下壁部等に構成されていてもよい。
【0059】
(3)上記実施形態では、肉厚部41は、アルミ製の板状部材から構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ステンレス等他の金属製の板状部材から構成されていてもよく、樹脂製の板状部材から構成されていてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では、肉厚部41において、機体の右側から順に、接続部43a、接続部43b、接続部43c、及び接続部43dが、一つずつ備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、接続部43a、接続部43b、接続部43c、及び接続部43dは、予備用としてそれぞれ複数備えられていてもよい。また、接続部43a、接続部43b、接続部43c、及び接続部43dは、上記実施形態と異なる配置で構成されていてもよい。また、接続部43は、走行用バッテリ4の電力入出力用のハーネスHが接続されるものであればよく、上記実施形態の目的以外のハーネスHが接続されるものであってもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、圧力調整部45は、膜フィルタを有する構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、圧力調整弁等で構成されていてもよい。
【0062】
(6)上記実施形態では、圧力調整部45は、接続部43cに接続されたハーネスHと水平方向に沿って並ぶ位置に備えられる構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。圧力調整部45は、接続部43a、接続部43b、又は接続部43dに接続されたハーネスHと水平方向に沿って並ぶ位置に備えられていてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態では、肉厚部41に凹入部46が形成され、凹入部46に圧力調整部45が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、凹入部46を有さない構成としてもよい。
【0064】
(8)上記実施形態では、圧力調整部45と肉厚部41の外表面41aとは、それらの間に隙間Sを有する構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、隙間Sを有さない構成としてもよい。
【0065】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、トラクタだけではなく、コンバイン、田植機、建設作業機等の種々の電動作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
4 走行用バッテリ(バッテリ)
4A 蓄電部
4B バッテリカバー
4Bf 前壁部
14 インバータ
41 肉厚部
41a 外表面
43 接続部
45 圧力調整部
46 凹入部
51 冷却ファン
H ハーネス(電気配線)
M モータ
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6