(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】EYP001を使用した改善された処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20250110BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20250110BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250110BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20250110BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20250110BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250110BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250110BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20250110BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250110BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250110BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250110BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250110BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250110BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K38/21
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P13/12
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022502978
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2020070239
(87)【国際公開番号】W WO2021009331
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520299784
【氏名又は名称】ウエヌイグレックオ・ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー・フォンダーシャー
(72)【発明者】
【氏名】エリーズ・ロイ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ダルテイル
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・スカルファロ
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051229(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/126016(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/023245(WO,A1)
【文献】R. ERKEN etal.,“First clinical evaluation in chronic hepatitis B patients of the syntheticfarnesoid X receptor agonist EYP001”,Journal of Hepatology,2018年04月,Vol.68,p.S488-S489,DOI: 10.1016/s0168-8278(18)31226-1
【文献】S. JOLY et al.,“The selective FXR agonist EYP001 is well tolerated in healthy subjects and hasadditive anti-HBV effect with nucleoside analogues in HepaRG cells”,Journal of Hepatology,2017年,Vol. 66, No. 1,p.S690,DOI: 10.1016/S0168-8278(17)31853-6
【文献】EYP001a Food Effect Study in Subjects With Chronic Hepatitis B Virus (HBV) Infection,[online],2018年03月01日,[2022年7月26日検索],インターネット,<URL:https://ichgcp.net/clinical-trials-registry/NCT03320616>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患を患う患者における前記疾患の処置のための医薬であって、
【化1】
又は薬学的に許容されるその塩(EYP001
)を含み、前記疾患は、
B型肝炎ウイルス感染症及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択され、
前記医薬は、1日当たり25から800mgの範囲のEYP001の用量で1日1回、少なくとも3週間投与される、医薬。
【請求項2】
処置レジメンが、医薬が1日1回投与される期間を有し、掻痒が生じた場合、医薬の投与が、1から7日間中止される、請求項
1に記載の医薬。
【請求項3】
前記疾患が
、慢性B型肝炎
ウイルス感染症である、請求項
1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
免疫調節物質と組み合わせて使用される、請求項
3に記載の医薬。
【請求項5】
前記免疫調節物質が、TLR7、TLR8又はTLR9アゴニスト、RIG-I調節物質及びSTINGアゴニストから選択される、請求項
4に記載の医薬。
【請求項6】
前記免疫調節物質が、インターフェロ
ンである、請求項
4に記載の医薬。
【請求項7】
前記インターフェロンが、IFN-α又はそのペグ化型である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
前記インターフェロンが、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化型である、請求項6に記載の医薬。
【請求項9】
前記疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項
1又は2に記載の医薬。
【請求項10】
1日当たり25から600mg、1日当たり50から600mg、1日当たり100から400mg又は1日当たり200から400mgの範囲のEYP001の用量で1日1回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
少なくとも5、6、7若しくは8週間又は1、2、3、4、5若しくは6か
月の期間の間投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
5、6、7若しくは8週間から100週間の期間の間投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野、特に、EYP001を用いた処置に関する。
【背景技術】
【0002】
掻痒は、慢性肝疾患、特に、原発性胆汁性胆管炎等の胆汁うっ滞性肝疾患の患者に見られる症状である。この症状は、睡眠、場合によって日々の生活活動を乱すことによって患者のクオリティオブライフを低下させる。
【0003】
原発性胆汁性肝硬変等の胆汁うっ滞性障害を含む、肝疾患及び代謝疾患のためにFXRアゴニストが現在開発されている。しかしながら、望ましくない作用がFXRアゴニストを用いた処置に伴うおそれがある。
【0004】
例えば、オベチコール酸は、原発性胆汁性胆管炎の処置に対して認可されたFXRアゴニスト(OCALIVA(登録商標)とも呼ばれる)であり、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)に対する臨床試験が行われた。オベチコール酸は、生化学的パラメーターにおいて著しい改善を示したが、掻痒の率が最大51%上昇した。掻痒の高い率は、NASH等の慢性疾患に対するオベチコール酸の使用を躊躇するおそれがある。掻痒の発生率及び重症度は、PBC疾患のステージとは無関係であることが報告されており、FXRが引き起こす掻痒のメカニズムは依然として不明である。
【0005】
掻痒に関わるメカニズムは、末梢神経系及び中枢神経系と関連づけられて、さまざまな治療選択肢の開発につながっている。例えば、FXRアゴニストの有害作用、特に掻痒を低減するために、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤、NK-1アンタゴニスト(WO2018/005695)、CCR2若しくはCCR5アンタゴニスト(WO2018/126016)又はSAMe(WO2019/023245)等の他の治療薬とのFXRアゴニストの組み合わせが提案されてきた。
【0006】
WO2015/036442は、HBV複製を低減することに関するFXRアゴニストの利益について開示している。EYP001は、良好な忍容性プロフィールを有する合成の非ステロイド性非胆汁酸FXRアゴニストである。EYP001は、慢性B型肝炎の患者におけるフェーズIbにおいて現在評価されている経口で生体利用可能な小分子である。Erkenら(2018年、Journal of Hepatology、68、Suppl 1、S488~S489頁)は、慢性B型肝炎患者における最初の臨床評価の結果を開示している。食事を与えられた、又は与えられていない11人の患者は、単回300mg用量のEYP001を午前中又は夕刻に与えられ、各投与は、少なくとも48.5時間(すなわち、2日間)あけた。Jolyら(2017年、Journal of Hepatology、66、Suppl 1、SAT-158)は、EYP001の健康な個体における安全性及びHBVに感染した肝細胞に対する単独又はヌクレオシド類似体と組み合わせたその効果に関する結果を報告している。EYP001の単回及び複数回の経口用量が試験された(すなわち、30、60、120、250、500若しくは800mgの単回用量、又は15日間の間1日1回の60、120、250若しくは500mgの複数回用量)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2018/005695
【文献】WO2018/126016
【文献】WO2019/023245
【文献】WO2015/036442
【非特許文献】
【0008】
【文献】Erkenら(2018年、Journal of Hepatology、68、Suppl 1、S488~S489頁)
【文献】Jolyら(2017年、Journal of Hepatology、66、Suppl 1、SAT-158)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FXRアゴニストの有害作用(すなわち、掻痒)を抑制又は低減すると同時にFXRアゴニストの治療的恩恵を保持する治療が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
EYP001は、FXRアゴニストであり、本発明者らは、驚くべきことに、EYP001を用いた処置の間に生じる掻痒の頻度を低減することを可能にする投与レジメンを特定した。実際に、同じ1日当たりの用量に対して、1日2回よりもむしろ1日1回EYP001が投与された場合に、掻痒エピソードが少ないことが確認されている。この結果は、掻痒の出現が用量及び最大血中濃度に依存することが公知であるため予想され得るものに反する。更に、1日2回よりもむしろ1日1回EYP001が投与された場合に、NASH及び慢性B型肝炎の処置において効力の増大も確認された。
【0011】
したがって、本発明は、疾患を患う患者における疾患の処置に対する使用のためのEYP001又はそれを含む医薬組成物に関し、EYP001は1日1回投与される。本発明はまた、疾患を患う患者における疾患の処置のための薬物の製造に対するEYP001又はそれを含む医薬組成物の使用に関し、EYP001は1日1回投与される。本発明は、疾患を患う対象の疾患を処置するための方法であって、治療有効量のEYP001を1日1回投与し、それによって、掻痒の発生を低減する工程を含む、方法に更に関する。
【0012】
好ましくは、疾患は、慢性肝疾患、胃腸疾患、腎疾患、心血管疾患、代謝疾患及び感染性疾患からなる群から選択される。特に、疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬物性胆汁うっ滞、妊娠の肝内胆汁うっ滞、静脈栄養関連胆汁うっ滞(PNAC)、細菌過剰増殖又は敗血症関連胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、肝移植関連移植片対宿主病、生体肝移植肝再生、先天性肝線維症、総胆管結石、肉芽腫性肝疾患、肝内又は肝外悪性腫瘍、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、アラジール症候群、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、胆道閉鎖症、胆管減少性肝移植拒絶、嚢胞性線維症性肝疾患、アルファ1-アンチトリプシン欠乏症、糖尿病性腎症、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植糸球体症、慢性間質性腎炎、多発性嚢胞腎、アテローム動脈硬化症、動脈硬化症、脂質異常症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、I型及びII型糖尿病、肥満、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症並びに慢性B型肝炎からなる群から選択される。特定の態様において、疾患は、B型肝炎感染症、特に慢性B型肝炎である。別の特定の態様において、疾患は、B型肝炎感染症、特に慢性B型肝炎である。
【0013】
特定の態様において、疾患は、B型肝炎感染症、特に慢性B型肝炎であり、EYP001は、免疫調節物質と組み合わせて使用される。免疫調節物質は、TLR7、TLR8又はTLR9アゴニスト、RIG-I調節物質及びSTINGアゴニストから選択され得る。免疫調節物質は、インターフェロン、好ましくは、IFN-α又はそのペグ化型、より好ましくは、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化型であってもよい。
【0014】
好ましくは、EYP001は、1日当たり25から800mg又は1日当たり50から800mgの範囲の用量で投与される。特に、EYP001は、1日当たり100から600mg、より好ましくは、1日当たり150から400mg又は1日当たり200から400mgの範囲の用量で投与される。
【0015】
一態様において、EYP001は、少なくとも3、4、5、6、7又は8週間投与される。その結果、この態様では、EYP001は、1日当たり25から800mg又は1日当たり50から800mgの範囲の用量で1日1回、少なくとも3、4、5、6、7又は8週間投与される。
【0016】
更に、処置レジメンは、EYP001が1日1回投与される期間をまた有してもよく、掻痒が生じた場合、EYP001投与は1から7日間中止される。
【0017】
一態様において、EYP001は、少なくとも5、6、7若しくは8週間又は1、2、3、4、5若しくは6か月、例えば、5、6、7若しくは8週間から100週間、特に12週間から80週間、例えば、72週間の期間の間投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】視覚的アナログスケール(0~10)に関してNASH患者によって報告された掻痒強度を示すグラフである。値は、EYP001 100mg BID(n=6)、EYP001 200mg QD(n=5)又はプラセボ(n=7)のいずれかを用いた12週間の処置期間にわたり積分した(AUC)。値は、AUC最小二乗平均(エラーバー=SE)である。AUC=濃度・時間曲線下面積;BID=1日2回;QD=1日1回。*プラセボに対してp<0.05。
【
図2】EYP001 100mg BID(n=4)又はEYP001 200mg QD(n=3)又はプラセボ(n=5)を用いて12週間の間処置されたNASH患者においてMRI-PDFFによって評価されたベースラインからの絶対肝脂肪含有量変化(%)を示すグラフである。値は、平均として表され、エラーバーはSEである。#ベースラインに対してp=0.07。-------線は、5%臨床上有意義な減少に相当する。従属変数としてベースラインからの変化及び共変量としてベースライン肝脂肪含有量並びに要因として処置(プールされたEYP001及びプラセボBID)及び層別要因-スクリーニング時のスタチン使用及びT2DM状態を用いた共分散分析(ANCOVA)モデル。
【
図3】慢性B型肝炎感染症の患者におけるベースラインからの血漿HBsAg(Log10 IU/mL)変化を示すグラフである。患者は、プラセボ(n=8)、EYP001 200mg BID(n=8)又はEYP001 400mg QD(n=8)のいずれかを4週間与えられた。値は、平均として表され、エラーバーはSDである。*ベースラインに対してp<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0019】
EYP001は、CAS番号1192171-69-9として開示されており、以下の式:
【0020】
【0021】
を有するFXRアゴニストである。
【0022】
EYP001とは、この化合物及び任意の薬学的に許容されるその塩を指すことが意図される。
【0023】
本発明者らは、FXRアゴニスト処置に伴うことの多い有害作用、掻痒の発生を低減することを可能にする投与レジメンを特定した。実際に、1日当たり1回の投与を用いた投与レジメンは、同じ1日当たりの用量に対して1日当たり数回の投与を用いた投与レジメンと比較して、掻痒の発生を低減する。この改善は、疾患が、特に、慢性疾患との関連において、長期の処置を必要とする場合に重要である。更に、1日2回よりもむしろ1日1回EYP001が投与された場合に、NASH及び慢性B型肝炎の処置において効力の増大も確認された。これは、ベネフィット・リスク比を考慮する場合、非常に重大な改善につながる。
【0024】
したがって、本発明は、疾患を患う患者における疾患の処置に対する使用のためのEYP001又はそれを含む医薬組成物に関し、EYP001は1日1回投与される。本発明はまた、疾患を患う患者における疾患の処置のための薬物の製造に対するEYP001又はそれを含む医薬組成物の使用に関し、EYP001は1日1回投与される。本発明は、疾患を患う対象の疾患を処置するための方法であって、治療有効量のEYP001を1日1回投与し、それによって、掻痒の発生を低減する工程を含む、方法に更に関する。
【0025】
定義
本明細書中で使用される場合、「処置」、「処置する」又は「処置すること」という用語は、疾患の治療、阻止、予防及び遅延等の患者の健康状態を改善することが意図されるあらゆる行為を指す。特定の実施形態において、そのような用語は、疾患、又はそれに関連する症状の改善又は根治を指す。他の実施形態において、この用語は、そのような疾患を有する対象への1つ以上の治療用薬剤の投与の結果として、疾患の広がり又は悪化を最小限に抑えることを指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「対象」、「個人」又は「患者」という用語は、置き換え可能であり、成人、小児、新生児及び胎児期のヒトを含むヒトを指す。特定の態様において、対象又は患者は、下に明記される疾患、特に、慢性疾患を患っている。
【0027】
「量(quantity)」、「量(amount)」、及び「用量」という用語は、本明細書では同義に使用され、分子の絶対的量化を指す場合もある。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「治療効果」という用語は、疾患若しくは障害の出現若しくは発症を防ぐか、又は遅延させるか、或いは疾患若しくは障害を治すか、又はその影響を弱めることが可能な本発明による活性成分、或いは医薬組成物によって引き起こされる効果を指す。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、特に感染性疾患の有害作用を防ぐ、除去する、又は低減する活性成分又は医薬組成物の量を指す。投与される量が処置される対象、疾患の性質等により当業者によって適合させられ得ることは明らかである。特に、投与の用量及びレジメンは、処置される疾患の性質、ステージ及び重症度、並びに処置される対象の体重、年齢及び全体的な健康、並びに医師の判断の結果であってもよい。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「賦形剤又は薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物中に存在する活性成分を除くあらゆる成分を指す。その添加は、特定の粘度又はその他の物理的若しくは呈味特性を最終製品に付与することを目的としてもよい。賦形剤又は薬学的に許容される担体は、活性成分とのいかなる相互作用、特に化学的相互作用もあってはならない。
【0031】
有害作用を低減することとは、有害作用が、処置された患者若しくは処置された患者の集団における発生の頻度において低減されること及び/又は有害作用が、その強度において低減されること及び/又は有害作用の出現/発症が、遅延されることが意図される。特に、低減は、EYP001を用いた処置を行わない場合と比較して少なくとも10、20、30、40又は50%の低減である。任意に、有害作用の出現/発症は、少なくとも1、2若しくは3週間又は少なくとも1、2若しくは3か月間遅延される。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「ペグ化型」という用語は、ペグ化インターフェロンを指す。
【0033】
改善された投与レジメン
上述のとおり、EYP001は、1日1回投与される。それによって、有害作用、特に掻痒の発生が低減される。
【0034】
第1の態様において、EYP001は、夕刻(evening)(例えば、午後6時及び10時)に投与される。別の態様において、EYP001は、午前中(例えば、午前6時から10時の間)に投与される。
【0035】
任意に、EYP001は、食物とともに、又は食物を伴わずに投与される。その結果、第1の態様では、EYP001は、食事中、例えば、食事の直前、食事と同時に又は食事の直後に投与される。第2の態様では、EYP001は、食事の少なくとも1時間又は2時間前又は後に投与される。
【0036】
一般に、EYP001は、対象に治療有効量で投与される。ただし、EYP001及び本発明の組成物の1日当たりの合計使用量が適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重症度;利用される特定の化合物の活性;利用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食事;利用される特定の化合物の投与の時間、投与の経路、及び排出の速度;処置の期間;EYP001と組み合わせて使用される薬物;並びに医学分野で周知の同様な要因を含むさまざまな要因によって決まる。
【0037】
ただし、EYP001の1日当たりの投与量は、1日当たり成人につき25から1,000mg、1日当たり成人につき50から1,000mg、1日当たり成人につき25から800mg、1日当たり成人につき50から800mg、1日当たり成人につき50から600mg又は1日当たり成人につき100から600mgの広い範囲にわたり変動してもよい。好ましくは、EYP001の1日当たりの投与量は、1日当たり25から450mg、1日当たり50から450mg、1日当たり100から450mg、1日当たり150から450mg、1日当たり25から400mg、1日当たり50から400mg、1日当たり100から400mg、1日当たり150から400mg、1日当たり25から350mg、1日当たり50から350mg、1日当たり100から350mg、1日当たり150から350mg、1日当たり200から450mg、1日当たり200から400mg、1日当たり200から350mg、1日当たり250から450mg、1日当たり250から400mg、又は1日当たり250から350mgの範囲である。
【0038】
好ましくは、組成物、投与量単位又は剤形は、処置される患者に対する症状による投与量の調節のために5、10、15、25、50、75、100、200、300、400及び500mgのEYP001を含む。医薬は、一般に約50mgから約800mgのEYP001、好ましくは、50mgから約500mgのEYP001、50mgから約450mgのEYP001、100mgから約400mgのEYP001、又は150mgから約300mgのEYP001を含む。
【0039】
一態様において、剤形は、分割剤形であってもよい。或いは、1日当たりの投与量は、いくつかの剤形を投与することによってもたらされてもよい。
【0040】
EYP001は、医薬組成物を形成するために、薬学的に許容される賦形剤、及び任意に生分解性ポリマー等の持続放出マトリックスと混合されてもよい。
【0041】
「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与されたときに有害な反応、アレルギー反応又はその他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無毒性の固体、半固体若しくは液体増量剤、希釈剤、カプセル化材料又は任意のタイプの製剤補助剤を指す。
【0042】
EYP001を含む医薬組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与、好ましくは、経口投与に適している場合がある。
【0043】
EYP001は、単独又は別の活性成分と組み合わせて、従来の製薬補助物との混合物として単位投与形態で投与可能である。適した単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口懸濁剤又は溶剤、舌下及び頬側投与形態、エアゾール剤、植込錠、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、髄腔内及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態を含む。
【0044】
好適な実施形態において、経口剤形は、カプセル剤又は錠剤である。任意に、経口剤形は、分割剤形である。任意に、剤形は、4つの小片、3つの小片又は2つの小片にする切り込みが入れられてもよい。
【0045】
処置する疾患に応じて、処置は、1週間から一生涯、好ましくは、3週間から1年若しくは数年続く場合がある。その結果、EYP001は、1週間から、最大数か月又は数年、更に具体的には、3、4、5、6、7又は8週間から数か月又は数年、好ましくは、5、6、7又は8週間から100週間の間投与されることがある。特定の態様において、EYP001は、少なくとも5、6、7若しくは8週間の間投与される。例えば、EYP001は、2~4か月から最大24か月間の間投与される。例えば、処置期間は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24か月が可能である。非常に具体的な態様において、処置は、12から100週間、12から80週間、45から100週間、45から80週間、例えば、72週間続く。例えば、処置は、12から52週間、好ましくは、45から52週間、例えば、48週間続いてもよい。
【0046】
本発明はまた、改善された処置レジメンに関する。これらの処置レジメンはすべて、EYP001が、1日1回、少なくとも1~7日間、任意に、1~7日間、例えば、1、2、3、4、5、6若しくは7日間投与されることになるか、又は投与される処置期間を含む。好ましくは、これらの処置レジメンはすべて、EYP001が、1日1回、少なくとも3、4、5、6、7若しくは8週間、任意に3~8週間、例えば、3、4、5、6、7若しくは8週間投与されることになるか、又は投与される処置期間を含む。
【0047】
処置期間は、特に、掻痒の発生に応じて他の処置期間と組み合わされてもよい。
【0048】
特定の態様において、処置レジメンは、EYP001が1日1回投与される期間を有し、掻痒が生じた場合、EYP001投与が中止される。例えば、EYP001投与は、規定した期間、例えば、少なくとも1から7日間、特に1から7日間、例えば、1、2、3、4、5、6又は7日間中止されてもよい。EYP001処置を用いたこの期間の後、処置レジメンは、EYP001が1日1回投与される処置の第2の期間を更に含んでもよい。
【0049】
疾患
EYP001を用いて処置される疾患は、FXRが関係する状態である。
【0050】
FXRが関係する状態は、以下からなる群から選択されてもよい:慢性の肝臓内又は一部の形態の肝臓外胆汁うっ滞性状態;肝線維症;肝臓の閉塞性炎症性障害;肝臓の慢性炎症性障害;肝硬変;脂肪肝又は関連症候群;アルコール誘発性硬変症又はウイルス媒介型の肝炎と関連づけられる胆汁うっ滞性又は線維性の影響;広範囲肝切除後の肝不全又は肝臓虚血;化学療法関連脂肪性肝炎(CASH);急性肝不全;炎症性腸疾患;脂質及びリポタンパク質障害;I型糖尿病;II型糖尿病;糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病網膜症及び臨床的に明確な長期糖尿病のその他の観察される影響からなる群から選択されるI型及びII型糖尿病の臨床合併症;非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);肥満;脂質異常症、糖尿病及び異常に高い体格指数の組み合わされた状態からなる群から選択されるメタボリックシンドローム;急性心筋梗塞;急性脳卒中;並びに慢性の閉塞性アテローム動脈硬化症の終点として生じる血栓症;非悪性過剰増殖性障害;並びに肝細胞癌、大腸腺腫、及びポリープ症からなる群から選択される悪性過剰増殖性障害;結腸腺癌;乳癌;膵臓腺癌;バレット食道;並びに胃腸管及び肝臓の新生物疾患のその他の形態;並びにHBV感染症及び慢性B型肝炎。
【0051】
好適な態様において、疾患は、慢性疾患である。
【0052】
FXRが関係する疾患又は状態は、慢性肝疾患、胃腸疾患、腎疾患、心血管疾患、代謝疾患及び感染性疾患からなる群から選択される。
【0053】
慢性肝疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬物性胆汁うっ滞、妊娠の肝内胆汁うっ滞、静脈栄養関連胆汁うっ滞(PNAC)、細菌過剰増殖又は敗血症関連胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、肝移植関連移植片対宿主病、生体肝移植肝再生、先天性肝線維症、総胆管結石、肉芽腫性肝疾患、肝内又は肝外悪性腫瘍、シェーグレン症候群、アラジール症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、胆道閉鎖症、胆管減少性肝移植拒絶、嚢胞性線維症性肝疾患及びアルファ1-アンチトリプシン欠乏症からなる群から選択される。
【0054】
腎疾患は、糖尿病性腎症、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植糸球体症、慢性間質性腎炎、及び多発性嚢胞腎からなる群から選択される。
【0055】
心血管疾患は、アテローム動脈硬化症、動脈硬化症、脂質異常症、高コレステロール血症、及び高トリグリセリド血症からなる群から選択される。
【0056】
代謝疾患は、インスリン抵抗性、I型及びII型糖尿病、及び肥満からなる群から選択される。
【0057】
感染性疾患は、HBV感染症及び慢性B型肝炎からなる群から選択される。したがって、処置される対象は、HBV感染症、例えば、慢性B型肝炎を患っている。
【0058】
特定の一実施形態において、疾患は、NASH、NAFLD、アルコール性肝炎、原発性胆汁性肝硬変又は原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁酸下痢、胆道閉鎖症、胆石、過敏性腸症候群、脂肪肝、線維性疾患、代謝疾患、II型糖尿病、脳腱黄色腫症、肥満、及びHBV感染症又は慢性B型肝炎からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態において、疾患は、NASH、原発性胆汁性肝硬変又は原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆道閉鎖症、線維性疾患、B型肝炎感染症、慢性B型肝炎及び代謝疾患からなる群から選択される。
【0060】
非常に具体的な実施形態において、疾患は、NASH及び慢性B型肝炎からなる群から選択される。
【0061】
EYP001は、少なくとも5、6、7若しくは8週間又は1、2、3、4、5若しくは6か月、例えば、5、6、7若しくは8週間から100週間、特に12週間から80週間、例えば、72週間の期間の間投与されてもよい。任意に、処置は、2~4か月から最大24か月、例えば、2から24か月の間又は2から12か月の間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23若しくは24か月続く。
【0062】
併用処置
処置される疾患がB型肝炎感染症、特に慢性B型肝炎である場合、EYP001は、付加的な活性成分、特に、インターフェロン又はそのペグ化誘導体等の免疫調節物質と組み合わせて使用されてもよい。
【0063】
一態様において、免疫調節物質は、インターフェロンであってもよい。インターフェロン(IFN)は、好ましくは、IFN-α、例えば、IFN-α1又はIFN-α2、例えば、IFN-α1a、IFN-α1b、IFN-α2a、IFN-α2b、IFN-α2c又はコンセンサスIFN-αである。非常に具体的な態様において、IFNは、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化誘導体である。
【0064】
任意に、IFNは、コンセンサスIFN-α(例えば、INFERGEN(登録商標)、Locteron(登録商標))、IFN-α1b(例えば、HAPGEN(登録商標))、IFN-α2a(Roferon-A(登録商標)、MOR-22、Inter 2A、Inmutag、Inferon)、ペグ化IFN-α2a(例えば、PEGASYS(登録商標)、YPEG-IFNα-2a、PEG-INTRON(登録商標)、Pegaferon)、IFN-α2b(例えば、INTRON A(登録商標)、Alfarona、Bioferon、Inter 2B、citpheron、Zavinex、Ganapar等)、ペグ化IFN-α2b(例えば、Pegintron(登録商標)、Albuferon、AOP2014/P1101、Algeron、Pai Ge Bin)、及びIFN-α2c(例えば、Berofor Alpha)からなる非網羅的な一覧から選択される。特定の態様において、IFNは、ペグ化IFN-α2a(例えば、PEGASYS(登録商標))又はペグ化IFN-α2b(Pegintron(登録商標))である。
【0065】
別の態様において、免疫調節物質は、TLRアゴニストである。好ましくは、TLRアゴニストは、TLR7、TLR8又はTLR9アゴニストである。さらなる態様において、免疫調節物質は、RIG-I調節物質である。別のさらなる態様において、免疫調節物質は、STINGアゴニストである。
【0066】
非常に具体的な実施形態において、本開示は、B型肝炎ウイルスに感染した対象を処置するための方法、特に、患者の慢性B型肝炎を処置するための方法であって、治療有効量のEYP001を投与する工程;及び治療有効量のIFN-α又はそのペグ化型等の免疫調節物質を投与する工程を含み、EYP001は、1日1回投与され、それによって、掻痒の発生を低減する、方法に関する。
【0067】
IFNαのタイプ及びそのペグ化型に応じて、投与レジメン及び投与量は、当業者によって適合され、既知である。
【0068】
特定の実施形態において、
- EYP001は、1日1回、有効な治療量で、更に具体的には、1日当たり成人につき25から800mg、1日当たり成人につき50から800mg、好ましくは、1日当たり成人につき100から600mg、更により好ましくは、1日当たり成人につき150から400mg;及び例えば、1日当たり成人につき約300mgの1日当たりの用量で、好ましくは経口で投与され、
- IFNα又はそのペグ化型は、週に1回、例えば、1μgから500μg、好ましくは、10μgから500μg、更により好ましくは、100μgから250μgまで変動する投与量、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200μgで皮下経路によって投与される。
【0069】
任意に、処置は、2~4か月から最大24か月、例えば、2から24か月の間又は2から12か月の間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23若しくは24か月続く。
【0070】
この実施形態において、本開示は、B型肝炎ウイルスに感染した対象の処置に対する使用のためのEYP001を含む医薬組成物、特に、慢性B型肝炎の処置に対する使用のための医薬組成物であって、IFNα又はそのペグ化型等の免疫調節物質と組み合わせて使用され、EYP001が、有効な治療量で1日1回投与される、医薬組成物に関する。本発明はまた、B型肝炎ウイルスに感染した対象の処置に対する使用のための医薬の製造、特に、慢性B型肝炎の処置に対する使用のための医薬の製造に対するEYP001を含む医薬組成物の使用であって、本医薬組成物が、IFNα又はそのペグ化型等の免疫調節物質と組み合わせて使用され、EYP001が、有効な治療量で1日1回投与される、使用に関する。
【0071】
好ましくは、投与される治療量のEYP001は、HBVの複製を低減するのに有効である。HBV複製を低減することとは、好ましくは、HBV複製が、EYP001が不在の場合のHBV複製と比較して少なくとも10又は100分の1に低減されることを意味する。HBV複製は、HB表面抗原(HBsAg)、HBVコア(HbcAg)抗原、HbeAg、HBコア関連抗原(HbcrAg)、HBV DNA、HBVプレゲノムRNA(HBV pgRNA)、プレコアRNA、弛緩型環状DNA(relaxed circular DNA)(HBV rcDNA)及び/又はHBV cccDNAのレベルを測定することによって評価されてもよい。したがって、低減することは、HbeAgレベル、HBsAgレベル、HbcrAgレベル、プレゲノムRNA(HBV pgRNA)レベル、プレコアRNAレベル、弛緩型環状DNA(HBV rcDNA)レベル、HBV cccDNAレベルのうちの少なくとも1つのレベルが、処置を行わない場合と比較して低減されることを意味する。例えば、HBV複製は、HBV DNAレベルを測定することによって評価されてもよく、このレベルは、EYP001が不在の場合のHBV複製と比較して少なくとも10又は100分の1に低減される。或いは、HBV cccDNAレベルは、処置を行わない場合と比較して少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50%低減される。HBsAg低下及びセロコンバージョンが、一般に臨床治療に対する目標である。
【0072】
更に、EYP001及びIFN-α(すなわち、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化誘導体)等の免疫調節物質を用いた併用処置と関連して、本発明者らは、驚くべきことに、HBV複製に対する相乗効果を確認した。相乗作用は、EYP001が1日1回投与される場合、同じ1日当たりの用量を用いた1日2回の投与と比較して少なくとも2倍強い。本発明者らは、驚くべきことに、EYP001が、IFN-αの有害作用、特に、インフルエンザ様症候群を低減することも確認した。
【0073】
説明のためのもので、限定するものではないと見なされるべき以下の実施例において、本発明のさらなる態様及び利点を記載する。
【実施例】
【0074】
HBV
HBVに慢性感染した患者に、試験のパートA(n=48)において毎日の経口FXRアゴニストEYP001単剤療法又はプラセボ又はエンテカビル(ETV)或いはIFNと組み合わせて(パートB、n=23、ペグ化IFNα2a、PEG-IFNの週に1回の皮下注射)のいずれかとして4週間の処置を行った。全15(30%)患者が、FXRアゴニストによる周知のTEAEであるが、そのメカニズムは、完全には理解されていないEYP001に関連する掻痒を発症した。予想外で、重要なことに、掻痒の頻度は、試験のパートA及びパートBの両方においてレジメンに依存的であり、BIDレジメン(1日2回)と比較してQD投薬(1日1回)は、掻痒を生じた頻度が4分の1まで少ない有意差があった(Table 1(表1))。患者の特性(Table 2(表2)からTable 5(表5))又は薬物動態学的データ(データは示していない)も、掻痒の頻度の差を説明するものではなかった。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
図3に血漿HBsAgに関して示されるとおり、1日1回の用量(400mg QD)は、2回の投与(200mg BID)で与えられる同じ1日当たりの用量よりも良好な効力を有する。
【0081】
NASH:
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、西洋諸国において最も一般的な慢性肝障害であり、肝脂肪含有量(LFC)>5%と定義される脂肪肝を伴い、肝細胞損傷を伴う炎症に至る。人口の5%を超える人が、進行したNASHを有することが推定される。主なその結果は、肝線維症であり、これは、硬変症及び肝細胞癌に進行する可能性がある。現在、この疾患に対して登録された薬物療法は存在しない。
【0082】
EYP001aは、胆汁、脂質、及びグルコース代謝の重要な調節因子であるFXRの治験アゴニストである。NASHげっ歯類モデルにおいて、EYP001は、脂肪肝、炎症、アポトーシス、及び線維症を減少させた。試験EYP001-202は、NASHの患者におけるベースラインから12週目までのLFC(肝脂肪含有量)に関して、プラセボに対するEYP001のさまざまな用量及び投与レジメン(100mg、1日に2回[BID]及び200mg、1日1回[QD])の効力及び安全性プロフィールを判定するために行ったフェーズ2a、2パート試験である。パートA安全性導入コホートに登録された24人の患者に対する中間分析は、安全性、忍容性及び重要な効力の結果に注目した。
【0083】
患者の特性は、NASH集団に典型的なものであり、EYP001群及びプラセボ群の両方にわたり同様であり、平均年齢は、プラセボ群における48.7歳から100mg BID EYP001群における59.8歳に及んだ。大半の対象は、女性(24人中16人、66.7%)であり、24人中23人の対象が白人(95.8%)であった。対象のおよそ半分(54.2%)がスタチンを服用しており、58.3%が2型真性糖尿病(T2DM)であった。平均LFCは、100mg BID EYP001群の14.07%からプラセボ群の22.77%に及んだ。
【0084】
VAS(視覚的アナログスコア)結果は、以下のとおりであった:100mg BID群(ベースラインからの平均変化は、7日目の3.34から21日目の6.84に及んだ)、及び200mg QD群(ベースラインからの平均変化は、28日目の3.03から56日目の3.47に及んだ)。VAS分析は、200mg QD EYP001a用量でより良好な忍容性を示した(
図1)。
【0085】
LFC減少の有効性一次エンドポイントが満たされた。EYP001は、有意で臨床上有意義なLFC減少を示し、プラセボ群と比較してプールされたEYP001群において統計学的に有意に低く、プラセボとの差は、8.62であった(p=0.04)。更に、200mg QD群は、100mg BID群と比較してより顕著な効果を示した(
図2)。
【0086】
全体的にEYP001は、男性及び女性のF2~F3のNASH患者において安全であり、重篤なAEはなかった。効力は、ベースラインからの有意な臨床的に関連性のあるLFC減少により示された。ただし、忍容性は、掻痒イベントにより影響を受けて、早期終了をもたらした。BIDレジメンは、QDレジメンと比較して忍容性が低かった。更に、BIDと比較して高い効力が、QDレジメンと関連づけられている。