(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】重合反応性配合液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/08 20060101AFI20250110BHJP
B01F 27/116 20220101ALI20250110BHJP
【FI】
C08G61/08
B01F27/116
(21)【出願番号】P 2022517112
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2021016481
(87)【国際公開番号】W WO2021215533
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2020077314
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503423096
【氏名又は名称】RIMTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 直記
(72)【発明者】
【氏名】亀井 伸人
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046028(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/078256(WO,A1)
【文献】特開2016-43508(JP,A)
【文献】特開平3-169621(JP,A)
【文献】特開平8-156047(JP,A)
【文献】特開2000-102944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
B01F 27/00- 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液と、メタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液と、をロータリーミキサーのミキシングヘッドに供給する工程と、前記ミキシングヘッドにより前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液とを混合する工程と、を備えた重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ミキシングヘッドは、
一端側が閉塞され、他端側が開口された円筒状の混合室と、前記混合室の閉塞された一端側に設けられ、前記重合反応性配合液が吐出される吐出口と、を備えるケースと、
前記混合室の開口された他端側に取り付けられて前記混合室内を封止するとともに、前記第1の予備配合液を前記混合室に供給する第1の薬液供給口と、前記第2の予備配合液を前記混合室に供給する第2の薬液供給口と、を備えるキャップと、
前記混合室の中心軸周りで回転自在となるように前記混合室内に収容され、前記混合室の軸方向に沿って延びる円柱状のローター本体と、前記ローター本体の一端部に設けられ、前記キャップに設けられた連結孔を通じて前記ロータリーミキサーの駆動源と連結する連結部と、前記ローター本体の周面に設けられ、前記ローター本体の回転によって前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液とを混合する複数の凸部と、を備えるミキシングローターと、
前記混合室内の閉塞された一端側に取り付けられ、前記ローター本体の他端部を回転自在に支持する軸受部材と、を備えており、
前記複数の凸部は、
前記ローター本体の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも広くされた第1の凸部と、前記ローター本体の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも狭くされた第2の凸部と、を含み、
複数の前記第1の凸部が前記ローター本体の軸方向に沿って所定間隔で配列された第1の凸部列と、複数の前記第2の凸部が前記ローター本体の軸方向に沿って所定間隔で配列された第2の凸部列とが、前記ローター本体の周方向において、所定間隔で交互に配置されている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第1の凸部列は、隣接する前記第2の凸部列を挟んで配置された他の第1の凸部列に対し、前記第1の凸部の位置が前記軸方向においてずらした位置に配置されている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第2の凸部列は、隣接する前記第1の凸部列を挟んで配置された他の第2の凸部列に対し、前記第2の凸部の位置が前記軸方向においてずらした位置に配置されている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ミキシングヘッドは、前記ロータリーミキサーの本体部に対して着脱自在となるようにユニット化されている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第1の凸部列及び前記第2の凸部列は、前記ローター本体の周面を周方向に沿って6~18の偶数の区画に分割した位置に交互に配置されている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記混合室の内周面と、前記キャップの内面と、前記ミキシングローターの外周面とで規定される前記ミキシングヘッドの内容量は、1~20mLである重合反応性配合液の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記混合室の内周面と、前記ミキシングローターの前記凸部が設けられている周面との間隔は1~7mmであり、前記混合室の内周面と、前記第1の凸部及び前記第2の凸部との間隔は0.1~1mmである重合反応性配合液の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液との流量比は、100:100~100:0.2である重合反応性配合液の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記流量比が100:3.5~100:0.4である重合反応性配合液の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第1の予備配合液が充填剤をさらに含む重合反応性配合液の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記第2の予備配合液の前記メタセシス重合触媒が、ルテニウムカルベン錯体である重合反応性配合液の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ケースは、前記吐出口が設けられた吐出ノズルを備えており、
前記吐出ノズルには、前記重合反応性配合液を成形対象物に対して充填又は塗布するためのアタッチメントが取り付けられる取付部が設けられている重合反応性配合液の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ミキシングヘッドは、前記混合室に供給される前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液を冷却するミキシングヘッド冷却器をさらに備える重合反応性配合液の製造方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ロータリーミキサーは、
第1の配管を介して前記第1の薬液供給口に接続され、前記第1の予備配合液を前記ミキシングヘッドへ供給する第1の注入機と、
第2の配管を介して前記第2の薬液供給口に接続され、前記第2の予備配合液を前記ミキシングヘッドへ供給する第2の注入機と、
前記第1の配管に設けられ、前記第1の配管を通過する前記第1の予備配合液を冷却する第1の配管冷却器と、をさらに備える重合反応性配合液の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の重合反応性配合液の製造方法であって、
前記ロータリーミキサーは、前記第2の配管に設けられ、前記第2の配管を通過する前記第2の予備配合液を冷却する第2の配管冷却器をさらに備える重合反応性配合液の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の製造方法により重合反応性配合液を得る工程と、前記重合反応性配合液を重合する工程とを含む重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応射出成形等に用いられる重合反応性配合液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モノマーと触媒とを塊状開環重合させ、樹脂成形体を製造することができる反応射出成形法が知られている。このような反応射出成形法において、触媒にRu触媒を用いた場合、モノマーと触媒とを混合するとすぐに重合反応が始まってしまう。そのため、Ru触媒を用いた反応射出成形では、予備配合液としてのモノマー液と触媒液とを反応直前に混合して重合反応性配合液を製造している。
【0003】
従来、モノマー液と触媒液との混合には、2種類以上の薬液を混合して吐出する機能を備えたミキサーが用いられている。例えば、特許文献1に記載されているロータリーミキサーは、ハウジング内の混合空間に収容された駆動ローターと、2本の従動ローターとを備えており、駆動ローターの回転によって、これに噛み合う2本の従動ローターを逆方向に回転させ、ハウジングの上部から供給された2種類の薬液を駆動ローター及び従動ローターによって下方へ圧送しながら混合し、ハウジング下部の吐出口から混合液として吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Ru触媒を用いた反応射出成形では、モノマー液と触媒液との流量比が、触媒液よりもモノマー液の量が圧倒的に多い流量比となる。しかしながら、上記のロータリーミキサーは、一方の薬液の量が他方に比べて圧倒的に多くなるような流量比の混合には対応していない。そのため、上記のロータリーミキサーで、モノマー液とRu触媒液とを混合すると、量の多いモノマー液によってRu触媒液が逆流し、適切な重合反応が起こらないことがある。さらに、Ru触媒を用いる反応射出成形では、予備配合液に充填剤が含まれることが多いが、上記のロータリーミキサーは、ローターとハウジングの内周面とのクリアランスがほぼゼロとなっているため、充填剤が含有された配合液を混合することはできない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、幅広い流量比の予備配合液を均一に混合することが可能な重合反応性配合液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る重合反応性配合液の製造方法は、ノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液と、メタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液と、をロータリーミキサーのミキシングヘッドに供給する工程と、前記ミキシングヘッドにより前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液とを混合する工程と、を備えた重合反応性配合液の製造方法であって、前記ミキシングヘッドは、一端側が閉塞され、他端側が開口された円筒状の混合室と、前記混合室の閉塞された一端側に設けられ、前記重合反応性配合液が吐出される吐出口と、を備えるケースと、前記混合室の開口された他端側に取り付けられて前記混合室内を封止するとともに、前記第1の予備配合液を前記混合室に供給する第1の薬液供給口と、前記第2の予備配合液を前記混合室に供給する第2の薬液供給口と、を備えるキャップと、前記混合室の中心軸周りで回転自在となるように前記混合室内に収容され、前記混合室の軸方向に沿って延びる円柱状のローター本体と、前記ローター本体の一端部に設けられ、前記キャップに設けられた連結孔を通じて前記ロータリーミキサーの駆動源と連結する連結部と、前記ローター本体の周面に設けられ、前記ローター本体の回転によって前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液とを混合する複数の凸部と、を備えるミキシングローターと、前記混合室内の閉塞された一端側に取り付けられ、前記ローター本体の他端部を回転自在に支持する軸受部材と、を備えており、前記複数の凸部は、前記ローター本体の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも広くされた第1の凸部と、前記ローター本体の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも狭くされた第2の凸部と、を含み、複数の前記第1の凸部が前記ローター本体の軸方向に沿って所定間隔で配列された第1の凸部列と、複数の前記第2の凸部が前記ローター本体の軸方向に沿って所定間隔で配列された第2の凸部列とが、前記ローター本体の周方向において、所定間隔で交互に配置されている。
【0008】
[2]上記発明において、前記第1の凸部列は、隣接する前記第2の凸部列を挟んで配置された他の第1の凸部列に対し、前記第1の凸部の位置が前記軸方向においてずらした位置に配置されていてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記第2の凸部列は、隣接する前記第1の凸部列を挟んで配置された他の第2の凸部列に対し、前記第2の凸部の位置が前記軸方向においてずらした位置に配置されていてもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記ミキシングヘッドは、前記ロータリーミキサーの本体部に対して着脱自在となるようにユニット化されていてもよい。
【0011】
[5]上記発明において、前記第1の凸部列及び前記第2の凸部列は、前記ローター本体の周面を周方向に沿って6~18の偶数の区画に分割した位置に交互に配置されていてもよい。
【0012】
[6]上記発明において、前記混合室の内周面と、前記キャップの内面と、前記ミキシングローターの外周面とで規定される前記ミキシングヘッドの内容量は、1~20mLであってもよい。
【0013】
[7]上記発明において、前記混合室の内周面と、前記ミキシングローターの前記凸部が設けられている周面との間隔は1~7mmであり、前記混合室の内周面と、前記第1の凸部及び前記第2の凸部との間隔は0.1~1mmであってもよい。
【0014】
[8]上記発明において、前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液との流量比は、100:100~100:0.2であってもよい。
【0015】
[9]上記発明において、前記流量比が100:3.5~100:0.4であってもよい。
【0016】
[10]上記発明において、前記第1の予備配合液が充填剤をさらに含んでいてもよい。
【0017】
[11]上記発明において、前記第2の予備配合液の前記メタセシス重合触媒が、ルテニウムカルベン錯体であってもよい。
【0018】
[12]上記発明において、前記ケースは、前記吐出口が設けられた吐出ノズルを備えており、前記吐出ノズルには、前記重合反応性配合液を成形対象物に対して充填又は塗布するためのアタッチメントが取り付けられる取付部が設けられていてもよい。
【0019】
[13]上記発明において、前記ミキシングヘッドは、前記混合室に供給される前記第1の予備配合液と前記第2の予備配合液を冷却するミキシングヘッド冷却器をさらに備えていてもよい。
【0020】
[14]上記発明において、前記ロータリーミキサーは、第1の配管を介して前記第1の薬液供給口に接続され、前記第1の予備配合液を前記ミキシングヘッドへ供給する第1の注入機と、第2の配管を介して前記第2の薬液供給口に接続され、前記第2の予備配合液を前記ミキシングヘッドへ供給する第2の注入機と、前記第1の配管に設けられ、前記第1の配管を通過する前記第1の予備配合液を冷却する第1の配管冷却器と、をさらに備えていてもよい。
【0021】
[15]上記発明において、前記ロータリーミキサーは、前記第2の配管に設けられ、前記第2の配管を通過する前記第2の予備配合液を冷却する第2の配管冷却器をさらに備えていてもよい。
【0022】
[16]また、本発明に係る重合体は、上記発明に係る製造方法により重合反応性配合液を得る工程と、前記重合反応性配合液を重合する工程とを含む。
【発明の効果】
【0023】
ミキシングローターの回転により、第1の凸部及び第2の凸部によって第1の予備配合液と第2の予備配合液とが押され、第1の予備配合液と第2の予備配合液とがケース内で流動する。その際に、第1の凸部同士の間に設けられた隙間と、第2の凸部同士の間に設けられた隙間と、第1の凸部と第2の凸部との間に設けられた隙間とが、第1の予備配合液と第2の予備配合液の流路となり、この流路によって、第1の予備配合液と第2の予備配合液とが分流と合流とを繰り返す。これにより、幅広い流量比の予備配合液を均一に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態のロータリーミキサーの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すミキシングヘッドの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すミキシングヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すミキシングローターの側面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すロータリーミキサーによる重合反応性配合液の製造手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図5に示すミキシングローターによって生じる第1の予備配合液等の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、第1の予備配合液と、第2の予備配合液とを混合して重合反応性配合液を製造し、製造した重合反応性配合液を電気部品、電子部品及び微量部材等に封止材料や放熱材料等として供給するロータリーミキサーに関するものである。
図1に示すように、本実施形態のロータリーミキサー1は、ミキサー本体2と、ミキサー本体2に取り付けられるミキシングヘッド3と、を備えている。ミキサー本体2は、ミキシングヘッド3にノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液と、メタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液とを供給する。ミキシングヘッド3は、供給された第1の予備配合液と第2の予備配合液とを混合して重合反応性配合液を製造し、電気部品等の成形対象物に重合反応性配合液を供給する。
【0026】
まず始めに、ミキシングヘッド3について説明する。
図2、
図3及び
図4は、ミキシングヘッド3の外観斜視図、分解斜視図及び断面図を示している。ミキシングヘッド3は、略円筒形状をしたケース4と、ケース4内に取り付けられる軸受部材5と、ケース4内に収容されるミキシングローター6と、ケース4を封止するキャップ7と、を備えている。これらのケース4、軸受部材5、ミキシングローター6及びキャップ7は、合成樹脂、金属又はセラミック等によって形成されており、ロータリーミキサー1を構成するミキシングヘッド3として、ミキサー本体2に対して着脱自在となるようにユニット化されている。
【0027】
ケース4は、中空の円筒形状をしており、その内部には、軸受部材5及びミキシングローター6を収容する円筒状の混合室41が同軸上に設けられている。混合室41は、一端側(下側)が閉塞され、他端側(上側)が開口されている。ケース4の下部に、縮径された円筒形状の吐出ノズル42が同軸上に設けられている。吐出ノズル42の内部には、混合室41に連通した吐出路43が同軸上に形成されている。吐出路43の下端は、吐出ノズル42の下端面において開口され、重合反応性配合液が吐出される吐出口44となっている。吐出ノズル42の先端には、電気部品等の成形対象物に対して重合反応性配合液を充填又は塗布するために、注射針や刷毛等のアタッチメントが取り付け可能な取付部42aが設けられている。この取付部42aに取り付けられたアタッチメントを利用することにより、電気部品又は電子部品等の微小部位に対し、重合反応性配合液を供給することができる。
【0028】
ケース4の上部には、ケース4の外径よりも径が大きな略円板状のフランジ部45が設けられている。フランジ部45の内縁には混合室41に連通するとともに、混合室41の内径よりも大きい内径の開口凹部46が設けられている。フランジ部45は、例えば、袋ナット等を用いてミキシングヘッド3をミキサー本体2に取り付ける際に、袋ナットの固定部となる。
【0029】
軸受部材5は、ケース4の混合室41の内径よりも僅かに小さい径の略円環状をした円環部51と、円環部51の中央の軸心位置に配置され、円錐状の軸受凹部52が設けられた軸受部53と、円環部51と軸受部53とを接続する3本のスポーク54とを備えている。円環部51と、軸受部53と、3本のスポーク54とによって区画された3つの開口部55は、混合室41から吐出路43へ重合反応性配合液を送り出すための通路となる。
【0030】
ミキシングローター6は、混合室41の中心軸周りで回転自在となるように混合室41内に収容され、混合室41の軸方向に沿って延びる円柱状のローター本体61と、ローター本体61の外周に嵌合されたミキシング部材62と、を備えている。ローター本体61の下端面の軸心位置には、円錐形に突出した支持軸611が設けられている。また、ローター本体61の上端面には、ミキサー本体2のモータ21との連結に用いるキー溝612が設けられている。
【0031】
ミキシング部材62は、中空の円筒形状をしており、内部には円筒状のローター挿入部621が同軸上に設けられている。ローター挿入部621には、ローター本体61が挿入される。ミキシング部材62の外周面には、ミキシングローター6の回転によって第1の予備配合液と第2の予備配合液とを混合する複数の凸部622が設けられている。
【0032】
凸部622は、ローター本体61の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも広くされた第1の凸部622aと、ローター本体61の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも狭くされた第2の凸部622bと、を含む。ミキシングローター6の側面図である
図5に示すように、第1の凸部622aは、ローター本体61の軸方向に沿って所定間隔で配列された第1の凸部列623aを構成し、第2の凸部622bは、ローター本体61の軸方向に沿って所定間隔で配列された第2の凸部列623bを構成する。そして、第1の凸部列623aと、第2の凸部列623bは、ローター本体61の周方向において、所定間隔で交互に配置されている。より具体的には、例えば、ローター本体61の周面を周方向に沿って6~18の偶数の区画、より具体的には12の区画に分割した位置に、第1の凸部列623aと第2の凸部列623bとが交互に配置されている。
【0033】
また、第1の凸部列623aは、隣接する第2の凸部列623bを挟んで配置された他の第1の凸部列623aに対し、第1の凸部622aの位置が軸方向においてずらされた位置に配置されている。同様に、第2の凸部列623bは、隣接する第1の凸部列623aを挟んで配置された他の第2の凸部列623bに対し、第2の凸部622bの位置が軸方向においてずらされた位置に配置されている。
【0034】
キャップ7は、ケース4のフランジ部45の内縁に設けられた開口凹部46の内径と略等しい外径を有する円板形状をしており、キャップ7の厚み寸法は、開口凹部46の深さ寸法よりも大きくなっている。キャップ7の中央の軸心位置には、ミキサー本体2のモータ21と、ローター本体61のキー溝612とを連結する連結軸(図示せず)が挿通される連結孔71が設けられている。連結孔71の内周壁には径方向外側に凹となる環状凹溝72が設けられ、該環状凹溝72内には、連結軸に密接して混合室41内を封止するOリング73が嵌入されている。また、キャップ7には、連結孔71を挟む両側に、第1の予備配合液を混合室41に供給する第1の薬液供給口74と、第2の予備配合液を混合室41に供給する第2の薬液供給口75とが設けられている。
【0035】
ミキシングヘッド3は、次のように組み立てられる。ケース4の上端の開口から軸受部材5をケース4の混合室41に挿入し、軸受部材5の軸受凹部52を上方に向けた状態で混合室41の下端に配置する。次いで、ミキシングローター6を下端側からケース4の混合室41に挿入し、ミキシングローター6の下端に設けた支持軸611を軸受部材5の軸受凹部52に回転自在に支持させる。最後に、キャップ7をケース4の上端の開口凹部46に圧入嵌合する。これにより、ケース4内にミキシングローター6を回転自在に収容した状態で混合室41内が封止される。
【0036】
本実施形態のミキシングヘッド3は、第1の予備配合液に充填剤が含有されている場合でも均一に混合できるようにするために、混合室41の内周面と、第1の凸部622a及び第2の凸部622bとの間隔CL1を、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.8mmとしている。間隔CL1は、例えば、0.5mmとすることができる。また、混合室41の内周面と、ミキシングローター6の凸部622が設けられている周面(ミキシング部材62の周面)との間隔CL2は、好ましくは1~7mm、より好ましくは1.5~7mm、さらに好ましくは2~5mmとしている。間隔CL2は、例えば、3.5mmとすることができる。
【0037】
また、本実施形態のミキシングヘッド3は、製造した重合反応性配合液を封止材料や放熱材料等として電気部品又は電子部品に供給するために用いられるが、製造した重合反応性配合液が固化する前に供給を終えられるようにするために、内容量は比較的小さくされている。具体的には、ミキシングヘッド3の内容量は、混合室41の内周面と、キャップ7の内面と、ミキシングローター6の外周面とによって規定され、好ましくは1~20mLであり、より好ましくは1~10mLであり、さらに好ましくは2~5mL、特に好ましくは2.5~4.5mLである。ミキシングヘッド3の内容量は、たとえば、3.5mLとすることができる。さらに、本実施形態のミキシングヘッド3は、ノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液と、メタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液との混合に対応するために、第1の予備配合液と第2の予備配合液との流量比を、「第1の予備配合液:第2の予備配合液」の流量比(質量比)で、好ましくは100:100~100:0.2、より好ましくは100:100~100:0.3、さらに好ましくは100:100~100:0.4、特に好ましくは100:100~100:0.5とでき、100:100~100:1.1とすることも可能である。メタセシス重合触媒として、例えば、Ru触媒を用いる場合、前記流量比(質量比)として典型的には、好ましくは100:3.5~100:0.4、より好ましくは100:3.5~100:0.5である。
【0038】
図1に示すように、ミキシングヘッド3は、ケース4が挿通可能な通孔と、フランジ部45に当接する押圧部とを備えた図示しない袋ナットをミキサー本体2のブロック24に嵌合させることで、ミキサー本体2に取り付けられる。ブロック24は、ミキシングヘッド3がミキサー本体2に取り付けられた状態で、ミキシングヘッド3のキャップ7と接触している。また、ミキサー本体2は、ミキシングヘッド3の駆動源であるモータ21を備えている。モータ21は、図示しない連結軸を利用して、ブロック24に形成された通孔(不図示)を介してミキシングヘッド3のミキシングローター6と連結し、ミキシングローター6を回転させる。
【0039】
ミキサー本体2は、ノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液を、ミキシングヘッド3の第1の薬液供給口74を通じて混合室41に供給する第1の注入機22と、メタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液を、第2の薬液供給口75を通じて混合室41に供給する第2の注入機23と、を備えている。第1の注入機22には、第1の予備配合液が通過する第1の配管221の一端が接続されている。ブロック24には、第1の配管221が挿通可能な通孔が形成されており、第1の配管221の他端は、ブロック24を介して第1の薬液供給口74に接続されている。また、第2の注入機23には、第2の予備配合液が通過する第2の配管231の一端が接続されている。ブロック24には、第2の配管231が挿通可能な通孔が形成されており、第2の配管231の他端は、ブロック24を介して第2の薬液供給口75に接続されている。第1の注入機22及び第2の注入機23は、計量機能を備えた供給ポンプによって構成されている。なお、第1の注入機22の供給ポンプには、第1の予備配合液に充填剤が含有されていない場合には、ギヤポンプが利用され、第1の予備配合液に充填剤が含有されている場合には、スネークポンプが利用される。
【0040】
本実施形態におけるロータリーミキサー1は、第1の配管221に設けられ、第1の配管221を通過する第1の予備配合液を冷却する第1の配管冷却器(不図示)をさらに備えていることが好ましい。第1の配管冷却器は、特に限定されないが、二重管式の冷却器であり、第1の配管221の外側に同心円状に装着されたジャケットを備えている。ジャケットは、特に限定されないが、第1の配管221において、第1の注入機のポンプ出口とブロック24の間の区間に設けられている。第1の配管冷却器は、このジャケットの内側に冷媒を循環させることで、第1の配管221を通過する第1の予備配合液を冷却することができる。ジャケットとしては、特に限定されないが、例えば、ゴム管を用いることができる。
【0041】
本実施形態におけるロータリーミキサー1は、第2の配管231に設けられ、第2の配管231を通過する第2の予備配合液を冷却する第2の配管冷却器(不図示)をさらに備えていることが好ましい。第2の配管冷却器は、特に限定されないが、第1の配管冷却器と同様、二重管式の冷却器であり、第2の配管231の外側に同心円状に装着されたジャケットを備えている。ジャケットは、特に限定されないが、第2の配管231において、第2の注入機のポンプ出口とブロック24の間の区間に設けられている。第2の配管冷却器は、このジャケットの内側に冷媒を循環させることで、第2の配管231を通過する第2の予備配合液を冷却することができる。なお、以下において、第1の配管冷却器及び第2の配管冷却器を合わせて、適宜、「配管冷却器」と呼称する。
【0042】
本実施形態によれば、ロータリーミキサー1が配管冷却器を備えていることで、第1及び第2の予備配合液が混合室41に供給されるまでの間に、外気の影響で第1及び第2の予備配合液の温度が上昇することを抑制することがきる。すなわち、本実施形態によれば、第1の予備配合液と第2の予備配合液を、それぞれ低い温度に保った状態で混合室41内に供給し、混合させることができる。従って、本実施形態によれば、ロータリーミキサーが配管冷却器を備えていない場合に比べ、第1の予備配合液と第2の予備配合液を混合して製造された重合反応性配合液の温度を低く保つことができるため、重合反応性配合液が吐出されてから硬化するまでの時間(可使時間)をより長くすることができる。
【0043】
また、本実施形態におけるロータリーミキサー1は、ミキシングヘッド3の混合室41に供給される第1及び第2の予備配合液を冷却するミキシングヘッド冷却器(不図示)を備えていることが好ましい。ミキシングヘッド冷却器は、特に限定されないが、空冷式のプレート冷却器であり、ブロック24に当該冷却器の冷却プレートが接触するように設けられている。ミキシングヘッド冷却器は、冷却プレート及び冷却プレートに取り付けられた放熱フィンを介して、ブロック24から受けた熱を放熱することで、ブロック24内に挿通された第1の配管221を通過する第1の予備配合液を冷却することができる。すなわち、ミキシングヘッド冷却器は、第1の予備配合液が第1の薬液供給口74から混合室41内に供給される直前で、第1の予備配合液を冷却することができる。同様に、ミキシングヘッド冷却器は、ブロック24内に挿通された第2の配管231を通過する第2の予備配合液を冷却することができる。すなわち、ミキシングヘッド冷却器は、第2の予備配合液が第2の薬液供給口75から混合室41内に供給される直前で、第2の予備配合液を冷却することができる。
【0044】
本実施形態によれば、ロータリーミキサー1がミキシングヘッド冷却器を備えていることにより、第1及び第2の予備配合液の温度が外気の影響を受けて上昇した場合にも、第1及び第2の配合液が混合室41内に供給される直前で、第1及び第2の配合液を冷却することができる。これにより、第1及び第2の予備配合液の温度を低く保った状態で混合室41内に供給し、混合させることができる。従って、本実施形態によれば、ロータリーミキサーがミキシングヘッド冷却器を備えていない場合に比べ、第1の予備配合液と第2の予備配合液を混合して製造された重合反応性配合液の温度を低く保つことができるため、重合反応性配合液の可使時間をより長くすることができる。
【0045】
このように、本実施形態におけるロータリーミキサー1は、第1及び第2の予備配合液の冷却機構として、第1の配管221及び第2の配管231に設置された配管冷却器と、ブロック24に設置されたミキシングヘッド冷却器とを、それぞれ単独で、又は適宜組み合わせて備えるものであることが好ましい。これら配管冷却器及びミキシングヘッド冷却器による配合液の冷却は、第1の注入機22の供給ポンプ出口での第1の予備配合液の温度(T1in)と吐出口44での配合液の温度(Tout)の差(ΔT1=T1in-Tout)、及び、第2の注入機23の供給ポンプ出口での第2の予備配合液の温度(T2in)と吐出口44での配合液の温度(Tout)の差(ΔT2=T2in-Tout)が、それぞれ、5~10℃となるように行うことが好ましい。ΔT1及びΔT2がそれぞれ上記の範囲となるように冷却を行うことにより、冷却を行わずに室温で重合反応性配合液を製造した場合に比べ、重合反応性配合液の可使時間を30~60分長くすることができる。これにより、重合反応性配合液の形成安定性を向上することができる。
【0046】
なお、重合反応性配合液の可使時間を長くする方法としては、第1及び第2の予備配合液に、それぞれ、重合遅延剤を含有させる方法も考えられるが、本実施形態によれば、第1及び第2の予備配合液がいずれも重合遅延剤を含有しない場合にも、第1及び第2の予備配合液を冷却することにより、重合反応性配合液の可使時間をより長くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、重合遅延剤を配合することによる硬化物の物性の変化を抑制しながら、重合反応性配合液の可使時間をより長くすることが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態で用いられるノルボルネン系モノマーを含有する第1の予備配合液について説明する。ノルボルネン系モノマーとは、ノルボルネン環構造を分子内に有する環状オレフィンモノマーであり、特に限定はない。中でも、耐熱性に優れた成形体が得られることから、二環体以上の多環ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。
【0048】
ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネンやノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)やジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。
これらのノルボルネン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等の、炭素数1~8のアルキル基;ビニル基等の、炭素数2~8のアルケニル基;エチリデン基等の、炭素数2~8のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、及びナフチル基等の、炭素数6~10のアリール基等;の置換基を有していてもよい。また、これらのノルボルネン系モノマーは、エステル結合〔-C(=O)O-〕含有基、エーテル結合(-O-)含有基、シアノ基、及びハロゲン原子等の極性基を有していてもよい。
【0049】
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン-メチルシクロペンタジエン共二量体、5-エチリデンノルボルネン、5-シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4-メタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロナフタレン、及びエチレンビス(5-ノルボルネン)等が挙げられる。
【0050】
ノルボルネン系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ノルボルネン系モノマーのうち、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる成形体が耐熱性に優れたものとなることから、二環体、三環体、四環体又は五環体のノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0051】
また、生成する重合体が熱硬化型となるのが好ましく、そのためには、上記ノルボルネン系モノマーとして、対称性のシクロペンタジエン三量体等の、反応性の二重結合を二個以上有する架橋性モノマーを少なくとも含むものが用いられる。全ノルボルネン系モノマー中の架橋性モノマーの含有割合は、通常、2~30重量%であるのが好ましい。
【0052】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、ノルボルネン系モノマーと共重合可能な、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、及びシクロドデセン等の単環環状オレフィンモノマー等を、コモノマーとして用いてもよい。
【0053】
次に、本実施形態で用いられるメタセシス重合触媒を含有する第2の予備配合液について説明する。メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5,6および8族(長周期型周期表、以下同様)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状開環重合時の触媒活性に優れるため、得られる重合体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0054】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0055】
【0056】
上記一般式(1)及び(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。R1及びR2が互いに結合して環を形成した例としては、フェニルインデニリデン基などの、置換基を有していてもよいインデニリデン基が挙げられる。
【0057】
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基の具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルケニルオキシ基、炭素数2~20のアルキニルオキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、カルボニルオキシ基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数1~20のアルキルスルホニル基、炭素数1~20のアルキルスルフィニル基、炭素数1~20のアルキルスルホン酸基、炭素数6~20のアリールスルホン酸基、ホスホン酸基、炭素数6~20のアリールホスホン酸基、炭素数1~20のアルキルアンモニウム基、及び炭素数6~20のアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び炭素数6~10のアリール基等を挙げることができる。
【0058】
X1及びX2は、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0059】
L1及びL2は、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電
荷を持つ化合物である。触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、及びセレン原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0060】
前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、下記一般式(3)で示される化合物が特に好ましい。
【0061】
【0062】
上記一般式(3)及び(4)中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20個の有機基;を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基の具体例は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0063】
また、R3、R4、R5及びR6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0064】
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R5及びR6が水素原子であることが好ましい。また、R3及びR4は、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基として炭素数1~10のアルキル基を有するフェニル基がより好ましく、メシチル基が特に好ましい。
【0065】
前記中性電子供与性化合物としては、例えば、酸素原子、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、イミン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類等が挙げられる。
【0066】
上記一般式(1)及び(2)において、R1、R2、X1、X2、L1及びL2は、それぞれ単独で、及び/又は任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0067】
また、本発明で用いるルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物の中でも、本発明のノルボルネン系架橋重合体の耐熱性と絶縁性とをバランス良く向上させる観点から、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく、中でも、以下に示す一般式(5)又は一般式(6)で表される化合物であることがより好ましい。かかる化合物をメタセシス重合触媒として用いることで重合反応が適度に進行して気泡の発生が抑制され、本発明のノルボルネン系架橋重合体の耐熱性と絶縁性とがバランス良く向上するものと推定される。
【0068】
一般式(5)を以下に示す。
【0069】
【0070】
上記一般式(5)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR12、PR12又はAsR12であり、R12は、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基;であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。
【0071】
なお、R1、R2、X1及びL1は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X1及びL1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R1及びR2は互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいインデニリデン基であることがより好ましく、フェニルインデニリデン基であることが特に好ましい。
【0072】
また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0073】
上記一般式(5)中、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数6~20のヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基又は炭素数6~10のアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環およびヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6~20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6~10の芳香環を形成することが特に好ましい。
【0074】
上記一般式(5)中、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0075】
R9、R10及びR11は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0076】
なお、上記一般式(5)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第03/062253号(特表2005-515260)に記載のもの等が挙げられる。当該化合物の触媒失活温度は、通常、230℃以下である。
【0077】
一般式(6)を以下に示す。
【0078】
【0079】
上記一般式(6)中、mは、0又は1である。mは1が好ましく、その場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基又はカルボニル基であり、好ましくはメチレン基である。
【0080】
【0081】
は、単結合または二重結合であり、好ましくは単結合である。
【0082】
R1、X1、X2及びL1は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、及び/又は任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよいが、X1、X2及びL1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R1は水素原子であることが好ましい。
【0083】
R13~R21は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1~20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
【0084】
R13は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、R14~R17は、好ましくは水素原子であり、R18~R21は、好ましくは水素原子又はハロゲン原子である。
【0085】
なお、上記一般式(6)で表わされる化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第11/079799(特表2013-516392)に記載のもの等が挙げられる。当該化合物の触媒失活温度は、通常、230℃以下である。
【0086】
メタセシス重合触媒の使用量は、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー成分1モルに対して、好ましくは0.01ミリモル以上であり、より好ましくは0.1~50ミリモル、さらに好ましくは0.1~20ミリモルである。
【0087】
第2の予備配合液は、例えば、メタセシス重合触媒を少量の適当な溶媒に溶解又は分散して調製することができる。当該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン類などが挙げられる。
【0088】
第1の予備配合液及び第2の予備配合液は、上記したノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒以外のその他の成分を、それぞれ含有するものであってもよく、このようなその他の成分としては、活性剤、重合遅延剤、充填剤、ラジカル発生剤、改質剤、老化防止剤、着色剤、光安定剤、及び難燃剤などが挙げられる。
【0089】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、上述したメタセシス重合触媒の重合活性を向上させる化合物である。このような活性剤としては、特に限定されないが、その具体例としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルキルアルミニウムハライド等の有機アルミニウム化合物;テトラブチル錫等の有機スズ化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のクロロシラン化合物;等が挙げられる。
【0090】
活性剤の使用量は、特に限定されないが、メタセシス重合触媒1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上であり、使用量の上限は、好ましくは100モル以下、より好ましくは20モル以下である。活性剤の使用量が少なすぎると、重合活性が低くなりすぎて、反応に要する時間が長くなるため生産効率が低下し、逆に、使用量が多すぎると、反応が激しくなり過ぎてしまい、所望の重合体が得難くなる傾向がある。
【0091】
重合遅延剤は、単量体成分とメタセシス重合触媒とを混合して配合物を調製する際、その調製中に重合が開始してしまうことを抑制するためのものである。このような重合遅延剤としては、ホスフィン類、ホスファイト類、ビニルエーテル誘導体、エーテル、エステル、ニトリル化合物、ピリジン誘導体、アルコール類、アセチレン類及びα-オレフィン類などが挙げられる。
【0092】
重合遅延剤の使用量は、特に限定されないが、メタセシス重合触媒100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、5000質量部以下であり、より好ましくは15~1800質量部であり、より好ましくは50~900質量部、さらに好ましくは150~500質量部である。
【0093】
充填剤としては、特に限定されないが、例えば、アスペクト比が5~100の繊維状充填剤や、アスペクト比が1~2の粒子状充填剤が挙げられる。また、これら繊維状充填剤と粒子状充填剤を組み合わせて用いることもできる。
【0094】
繊維状充填剤の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポット型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、針状炭酸カルシウム、針状ベーマイトなどを挙げることができる。なかでも、少ない添加量で剛性を高めることができ、しかも塊状開環重合反応を阻害しないという点より、ウォラストナイトが好ましい。
【0095】
粒子状充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。これらの中でも、塊状開環重合反応を阻害しないので、シリカ、アルミナおよび水酸化アルミニウムが好ましい。また、充填剤として、中空粒子を用いてもよい。中空粒子としては、特に限定されず、中空の無機系微小球状体であってもよく、中空の有機系微小球状体であってもよく、中空の有機無機複合体の微小球状体であってもよい。中空の無機系微小球状体としては、例えば、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン、シリカ製の中空バルーン、中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン、中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなどが挙げられる。また、中空の有機系微小球状体としては、例えば中空アクリルバルーン、中空の塩化ビニリデンバルーン、フェノールバルーン、及びエポキシバルーン等の樹脂製の中空バルーンなどが挙げられる。
【0096】
また、上記充填剤は、その表面を疎水化処理したものであることが好ましい。疎水化処理した充填剤を用いることにより、配合物中における充填剤の凝集・沈降を防止でき、また、得られる重合体中における充填剤の分散を均一にすることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス等を挙げることができる。なお、充填剤の疎水化処理は、配合物を調製する際に、前記処理剤を充填剤と同時に混合することによっても可能である。
【0097】
充填剤の配合量は、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー成分100質量部に対して、10~1000質量部であることが好ましく、100~500質量部であることがより好ましい。充填剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られる重合体の強度を高めることができる。
【0098】
ラジカル発生剤としては、公知の、有機過酸化物、ジアゾ化合物及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられる。中でも、有機過酸化物が好ましい。
【0099】
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;などが挙げられる。メタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類が好ましい。
ラジカル発生剤の配合量としては、通常、ノルボルネン系モノマーを含むモノマー成分100質量部に対して、0.5~2.0質量部である。
【0100】
その他の改質剤等も公知であり、所望量を適宜配合して用いることができる。
【0101】
本実施形態においては、このような第1の予備配合液と、第2の予備配合液とを、ミキサー本体2から、ミキシングヘッド3に供給し、ミキシングヘッド3で混合して重合反応性配合液とし、例えば、電気部品等の成形対象物に対し重合反応性配合液を供給し、成形対象物表面で、重合反応性配合液を重合させ、重合体とすることで、電気部品等の成形対象物表面に、このような重合体からなる封止膜や放熱性の膜を形成することができる。なお、この際においては、重合反応を進行させるために、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0102】
あるいは、ミキシングヘッド3で混合した重合反応性配合液を、成形型に供給することで、例えば、フィルム状、柱状、その他の任意の立体形状を有する重合体とすることもできる。この場合には、重合反応性配合液が、型内で加熱されて重合反応が生じ、成形型に応じた形状を有する重合体が得られる。
【0103】
成形型としては、特に限定されないが、通常、雄型と雌型とで形成される割型構造の型を用いるのが好ましい。また、用いる型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、樹脂製の型などを用いることができる。金型の材質としては、特に限定されないが、スチール、アルミニウム、亜鉛合金、ニッケル、銅、クロム等が挙げられ、鋳造、鍛造、溶射、電鋳等のいずれの方法で製造されたものでもよく、また、メッキされたものであってもよい。
【0104】
成形型の温度としては、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~120℃、さらに好ましくは50~100℃である。型締め圧力は通常0.01~10MPaの範囲である。重合反応の時間は適宜選択すればよいが、重合反応性配合液の注入終了後、通常1秒~20分、好ましくは10秒~5分である。
【0105】
重合反応の終了後、成形型を型開きして脱型することにより、重合体を得ることができる。
【0106】
なお、上述した実施形態においては、第1の予備配合液としてノルボルネン系モノマーを含有するものを使用し、第2の予備配合液としてメタセシス重合触媒を含有するものを使用する態様としたが、上述した実施形態においては、用いるメタセシス重合触媒が活性剤(共触媒)を必要としないものである場合を例示したものである。
【0107】
一方で、メタセシス重合触媒が活性剤を必要とするものを用いる場合には、第1の予備配合液を、ノルボルネン系モノマーと活性剤とを含有するものとし、第2の予備配合液を、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを含有するものとすればよい。
【0108】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
図6のフローチャートに示すように、ミキサー本体2に対し、ミキシングヘッド3が取り付けられる(ステップS1)。ミキサー本体2にミキシングヘッド3を取り付けると、ミキサー本体2のモータ21が図示しない連結軸によってミキシングローター6に連結される。
【0109】
ミキサー本体2は、ミキシングヘッド3に予備配合液を供給する(ステップS2)。具体的には、ミキサー本体2の第1の注入機22は、計量機能を有する供給ポンプにより、ノルボルネン系モノマーを含有する所定量の第1の予備配合液を、第1の配管221及びミキシングヘッド3の第1の薬液供給口74を通じて混合室41に供給する。また、第2の注入機23は、メタセシス重合触媒を含有する所定量の第2の予備配合液を、第2の配管231及び第2の薬液供給口75を通じて混合室41に供給する。この際、第1及び第2の予備配合液は、配管冷却器及びミキシングヘッド冷却器によって冷却されながら混合室41に供給されうる。
【0110】
なお、第1の予備配合液に充填剤が含有されていない場合には、第1の予備配合液と第2の予備配合液との流量比(質量比)は、例えば、100:3.5である。このように、Ru触媒を用いた反応射出成形では、触媒液よりもモノマー液の量が圧倒的に多い流量比となる。
【0111】
ミキサー本体2は、モータ21を駆動してミキシングローター6を回転させ、混合室41内の第1の予備配合液と第2の予備配合液とを混合する(ステップS3)。ミキシングローター6の回転により、第1の凸部622a及び第2の凸部622bによって第1の予備配合液及び第2の予備配合液が押され、混合室41内には水平方向の流れが生じる。その際に、第1の予備配合液及び第2の予備配合液は、
図7に2点鎖線で示すように、第1の凸部622aと第2の凸部622bとの間の隙間を流路として分流と合流とを繰り返す。特に、本実施形態のミキシングローター6は、第1の凸部622aからなる第1の凸部列623aと、第2の凸部622bからなる第2の凸部列623bとを周方向に交互に配置するとともに、第1の凸部列623a及び第2の凸部列623b内で、第1の凸部622aと第2の凸部622bの位置をずらしているので、第1の予備配合液及び第2の予備配合液は複雑な流路を通って流れることになる。これにより、第1の予備配合液と、第2の予備配合液は、第1の予備配合液のほうが圧倒的に多い流量比であるのにも関わらず、均一に混合することができる。
【0112】
ケース4の混合室41内にて混合されて製造された重合反応性配合液は、第1の凸部622a及び第2の凸部622bの間の隙間に沿って下方に移動し、混合室41の下端に配置した軸受部材5の開口部55を通過して吐出路43を通って吐出ノズル42の吐出口44から吐出される(ステップS4)。排出された重合反応性配合液は、ミキシングヘッド3の下方に配置された電気部品又は電子部品に供給され、封止材料や放熱材料等として利用される。なお、吐出ノズル42の先端の取付部42aに注射針や刷毛等のアタッチメントが取り付けられている場合には、そのアタッチメントを通して重合反応性配合液が電気部品等に供給される。次のステップS5では、電気部品又は電子部品に供給された重合反応性配合液の重合反応が進み、重合反応性配合液が固化する。
【0113】
なお、上記のステップS2において、第1の予備配合液に充填剤が含有されている場合には、第1の予備配合液と第2の予備配合液との流量比は、例えば、100:0.5となる。そして、ステップS3では、充填剤が含有された第1の予備配合液と、第2の予備配合液とが混合される。しかしながら、本実施形態のミキシングヘッド3は、混合室41の内周面と、第1の凸部622a及び第2の凸部622bとの間隔CL1を、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.8mmとしているため、充填剤が含有された予備配合液でも均一に混合することができる。
【0114】
以上で説明したように、本実施形態によれば、第1の予備配合液と第2の予備配合液とを混合する工程で利用されるミキシングヘッド3に対し、周面に複数の凸部622が設けられたミキシングローター6を備えるとともに、この複数の凸部622は、ローター本体61の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも広くされた第1の凸部622aと、ローター本体61の軸方向に沿う幅が周方向に沿う幅よりも狭くされた第2の凸部622bとにより構成し、複数の第1の凸部622aがローター本体61の軸方向に沿って所定間隔で配列された第1の凸部列623aと、複数の第2の凸部622bがローター本体61の軸方向に沿って所定間隔で配列された第2の凸部列623bと、をローター本体61の周方向において、所定間隔で交互に配置している。
【0115】
これにより、ミキシングローター6の回転によって、第1の凸部622a及び第2の凸部622bが第1の予備配合液及び第2の予備配合液を押すので、混合室41内には水平方向の流れが生じる。その際に、第1の予備配合液及び第2の予備配合液は、第1の凸部622aと第2の凸部622bとの間の隙間を流路として、分流と合流とを繰り返す。特に、第1の凸部622aからなる第1の凸部列623aと、第2の凸部622bからなる第2の凸部列623bとを周方向に交互に配置しているため、第1の予備配合液及び第2の予備配合液は複雑な流路を通って流れることになる。これにより、第1の予備配合液のほうが圧倒的に多い流量比であっても、第1の予備配合液と第2の予備配合液とを均一に混合することができる。
【0116】
本実施形態によれば、第1の凸部列623aは、隣接する第2の凸部列623bを挟んで配置された他の第1の凸部列623aに対し、第1の凸部622aの位置が軸方向においてずらした位置に配置されている。また、第2の凸部列623bは、隣接する第1の凸部列623aを挟んで配置された他の第2の凸部列623bに対し、第2の凸部622bの位置が軸方向においてずらした位置に配置されている。これにより、第1の予備配合液及び第2の予備配合液は、さらに複雑な流路を通って流れることになるので、第1の予備配合液のほうが圧倒的に多い流量比であっても、第1の予備配合液と第2の予備配合液とを均一に混合することができる。
【0117】
本実施形態によれば、ミキシングヘッド3を、ロータリーミキサー1のミキサー本体2に対して着脱自在となるようにユニット化しているので、ミキシングヘッド3内に付着した重合反応性配合液が固化した場合には、新しいミキシングヘッド3に交換することができる。
【0118】
本実施形態によれば、第1の凸部列623a及び第2の凸部列623bは、ローター本体61の周面を周方向に沿って6~18の偶数の区画に分割した位置に交互に配置されている。したがって、第1の予備配合液及び第2の予備配合液の種類等に応じて、ミキシングローター6の凸部の配列を最適化することができる。
【0119】
本実施形態によれば、混合室41の内周面と、ミキシングローター6の凸部622が設けられている周面との間隔を好ましくは1~7mm、より好ましくは1.5~7mm、さらに好ましくは2~5mmとし、混合室41の内周面と、第1の凸部622a及び前記第2の凸部622bとの間隔を好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.8mmとしているので、充填剤が含有された予備配合液を適切に混合することができる。
【0120】
本実施形態によれば、ケース4の吐出ノズル42に対し、重合反応性配合液を成形対象物に対して充填又は塗布するためのアタッチメントが取り付けられる取付部42aが設けられているので、成形対象物の微小な部位に、又は広い部位に重合反応性配合液を充填又は塗布することができる。
【0121】
本実施形態によれば、第1の注入機22の供給ポンプ出口と吐出口44での配合液の温度の差(ΔT1)、及び、第2の注入機23の供給ポンプ出口と吐出口44での配合液の温度の差(ΔT2)が、それぞれ、5~10℃となるように、第1及び第2の予備配合液が配管冷却器及びミキシングヘッド冷却器によって冷却されながら混合室41に供給されうる。これにより、製造された重合反応性配合液の温度を低く保ったまま当該配合液を吐出口から吐出することができるため、冷却を行わない場合に比べ、当該配合液の可使時間を長くすることができる。
【0122】
なお、上記実施形態では、ミキシングヘッド3を、第1の薬液供給口74及び第2の薬液供給口75が上部に配置され、吐出口44が下部に配置されるように略垂直に設置し、上部の第1の薬液供給口74及び第2の薬液供給口75から第1の予備配合液及び第2の予備配合液を供給し、混合された重合反応性配合液を下部の吐出口から吐出する例について説明した。しかしながら、本発明は、このような配置構成に限定されない。例えば、ミキシングヘッド3を、第1の薬液供給口74及び第2の薬液供給口75が下部に配置され、吐出口44が上部に配置されるように略垂直に設置し、下部の第1の薬液供給口74及び第2の薬液供給口75から第1の予備配合液及び第2の予備配合液を供給し、混合された重合反応性配合液を上部の吐出口44から吐出するようにしてもよい。また、ミキシングヘッド3を軸心方向が水平になるように配置し、第1の予備配合液及び第2の予備配合液の供給と、重合反応性配合液の吐出とが水平方向において行なわれるようにしてもよいし、ミキシングヘッド3が所定の角度で傾斜するように配置してもよい 。
【実施例】
【0123】
第1の予備配合液として、ノルボルネン系モノマーとしてのジシクロペンタジエンを含有する配合液を準備した。また、メタセシス重合触媒としての、下記式(7)で示すルテニウム触媒(VC843、分子量843、Strem Chemicals社製)0.6質量部、及び2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT、老化防止剤)15質量部をシクロペンタノン82質量部に溶解させ、次いで、3,4-ジメチルピリジン2.2質量部、及びフェニルトリクロロシラン0.1質量部を混合し、これを、第2の予備配合液とした。第1の予備配合液13質量部に充填剤として、アルミナを87質量部混合し、これを、第3の予備配合液とした。
【0124】
【0125】
《実施例1》
そして、上記にて準備、調製した第1の予備配合液及び第2の予備配合液を用いて、
図1~
図5に示すロータリーミキサー1を使用することで、ミキシングヘッド3により、第1の予備配合液及び第2の予備配合液を混合し、重合反応性配合液を得た。このとき、第1の注入機22の出口での第1の予備配合液の温度を測定すると共に、第2の注入機23の出口での第2の予備配合液の温度を測定した。なお、この際における、第1の予備配合液及び第2の予備配合液の流量比は、「第1の予備配合液:第2の予備配合液」の流量比(質量比)で、100:3.5、吐出量を約2g、ミキサーの回転数を250rpmとした。また、本実施例においては、ミキシングローター6として、ローター本体61の周面を周方向に沿って12の区画に分割した位置に、第1の凸部列623aと第2の凸部列623bとが交互に配置されたものを使用し、ミキシングヘッド3の内容量を3.5mL、混合室41の内周面と、第1の凸部622a及び第2の凸部622bとの間隔CL1を0.5mm、混合室41の内周面と、ミキシングローター6の凸部622が設けられている周面(ミキシング部材62の周面)との間隔CL2を3.5mmとした。そして、得られた重合反応性配合液は目視で色の確認を行った。得られた重合反応性配合液をSUS製の金型内に吐出し、150℃のオーブンで1時間加熱後に硬化物を得た。重合反応性配合液を吐出する際は、約2gの吐出を1回として合計10回吐出を行い、各回の吐出量(g)を測定すると共に、10回の吐出量(g)の平均値、標準偏差、及び、CV(変動係数)(%)を求めた。上記硬化物の未反応成分量を重量減少率としてTG-DTA(示差熱熱重量測定装置)を用い、測定した。測定条件は20℃/分の速度で昇温し、50℃から200℃までの範囲で算出した。上記硬化物のガラス転移温度をJIS K7121に従いDSC(示差走査熱量測定装置)を用いて測定した。測定条件は、10℃/分で昇温した。上記の方法により、混合状態および吐出状態を確認したところ、得られた重合反応性配合液は、第1の予備配合液と第2の予備配合液とが均一に混合した良好なものであり、このような重合反応性配合液を用いて得られた重合体も、全体として均一なものであった〔表1中の混合吐出の評価:〇(可)〕。また、重合反応性配合液の吐出量のばらつきは小さく、高い吐出繰り返し精度で吐出を行うことができた。
【0126】
《実施例2》
第3の予備配合液と第2の予備配合液を100:0.4の比率でミキサーに注入した。ミキシングローターの回転数は800rpmとした。硬化物の取得、測定については実施例1と同様に行った。
【0127】
《実施例3》
ロータリーミキサー1として、第1の配管冷却器及び第2の配管冷却器、並びに、ミキシングヘッド冷却器を備えるものを用い、第1の配管冷却器及びミキシングヘッド冷却器で冷却しながら第1の予備配合液を供給し、第2の配管冷却器及びミキシングヘッド冷却器で冷却しながら第2の予備配合液を供給し、吐出量を約10gとした以外は、実施例1と同様にして、重合反応性配合液を製造し、硬化物を取得した。実施例1と同様にして各評価を行った。吐出直後の重合反応性配合液の温度を測定し、第1の注入機22の出口での第1の予備配合液の温度との差(ΔT1)及び第2の注入機23の出口での第2の予備配合液の温度との差(ΔT2)を求めたところ、ΔT1は9.5℃であり、ΔT2は7.5℃であった。第1の予備配合液と第2の予備配合液を混合して得られた重合反応性配合液の粘度が、吐出直後の粘度から1000Pa・s上昇するまでの時間を確認することにより測定した重合反応性配合液の可使時間は、実施例1に比べ、54分長かった。
【0128】
《比較例1》
図1~
図5に示すロータリーミキサー1に替え、特開2019-150786号公報に記載のロータリーミキサーを使用した。硬化物の取得、測定については実施例2と同様に行った場合、駆動ローターが破損し、混合ができず、重合反応性配合液の硬化物を得られなかった〔表1中の混合吐出の評価:×(不可)〕。
【0129】
【符号の説明】
【0130】
1…ロータリーミキサー
2…ミキサー本体
21…モータ(駆動源)
22…第1の注入機
221…第1の配管
23…第2の注入機
231…第2の配管
24…ブロック
3…ミキシングヘッド
4…ケース
41…混合室
42…吐出ノズル
42a…取付部
43…吐出路
45…フランジ部
5…軸受部材
52…軸受凹部
55…開口部
6…ミキシングローター
61…ローター本体
611…支持軸
612…キー溝(連結部)
62…ミキシング部材
622a…第1の凸部
622b…第2の凸部
623a…第1の凸部列
623b…第2の凸部列