(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】液体減圧弁
(51)【国際特許分類】
G05D 16/06 20060101AFI20250110BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G05D16/06 E
F16K17/30 A
(21)【出願番号】P 2022525285
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 GB2020052750
(87)【国際公開番号】W WO2021089986
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-26
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522170010
【氏名又は名称】ポリマー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テイラー、デイヴィッド
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-514544(JP,A)
【文献】特表2006-514370(JP,A)
【文献】特開平02-048712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00 -16/20
F16K 17/18 -17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道本管減圧弁装置であって、
ばね式減圧弁であって、
チャンバを含む本体と、
前記チャンバへの液体供給オリフィス及び前記チャンバからの液体出口と、
前記
液体供給オリフィスに対向
する調整プレートであって、使用中に、
前記調整プレートが前記調整プレートに作用する供給液体を受ける
、調整プレートと、
前記
調整プレートを前記
液体供給オリフィスの方に付勢するように作用するばねと、
前記調整プレートと前記本体との間でそれらの間の前記チャンバを閉じ、使用中に、前記チャンバ内の調整された圧力を受けるダイヤフラムと、
を含む、ばね式減圧弁と、
前記調整プレートに対して遠位にある前記ばねの端部と前記本体との間に作用する制御可能なモータ駆動部と、
前記
液体出口の下流の流量計と、
前記流量計から流量データを受け取り、前記流量計によって測定された流量に従って前記ばねの遠位端部を引き抜くように制御可能なモータ駆動部を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
需要流量が増加する場合の使用中に、前記調整プレートが部分的に引き抜かれ、そのような増加に対する下流の圧力を維持し、逆もまた同様であるように配置されている、
水道本管減圧弁装置。
【請求項2】
前記制御可能なモータ駆動部がサーボモータ駆動部である、請求項
1に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項3】
前記コントローラが、実質的に線形の下流圧力及び流量関係に従って、ばね位置決めにおけるサーボモータ動作の計算に適合されている、請求項2に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項4】
前記計算が、前記ばねのサーボ位置決めに関して達成される圧力に基づく、請求項3に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項5】
前記計算が、前記ばねのみのサーボ位置決めに基づく、請求項3に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項6】
前記計算が、下流の圧力及び流量のルックアップテーブルに基づく、請求項3に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項7】
前記ルックアップテーブルが、達成されるべき圧力の値を含む、請求項6に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項8】
前記ルックアップテーブルが、サーボ回転に関するばね位置を含む、請求項6に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項9】
前記調整プレートが、前記ダイヤフラムの中央領域に接して設けられ、前記
液体供給オリフィスのセンタリングガイド内にガイドロッドが延びる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項10】
前記調整プレートが、前記ダイヤフラムから前記
液体供給オリフィス内のセンタリングガイドに延びるガイドロッド上に、前記ダイヤフラムから間隔を空けて設けられる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項11】
前記ばねが、前記
液体供給オリフィスに対して前記ダイヤフラムの遠位側に作用する圧縮ばねである、請求項1から10までのいずれか一項に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項12】
前記制御可能なモータ駆動部が、前記ダイヤフラムに対して遠位にある端部で前記ばねに作用し、前記
制御可能なモータ駆動部のモータによって作動可能であるように配置されたナット及び親ねじ装置を含む、請求項1から
11までのいずれか一項に記載の水道本管減圧弁装置。
【請求項13】
維持されるべき下流圧力を測定するための遠隔圧力センサと組み合わせた、請求項1から
12までのいずれか一項に記載の水道本管減圧弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限定的ではないが特に水道本管用の、液体減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
本管からの水の損失は、本管の配管の老朽化、並びに本管及び関連機器の損傷に起因する問題である。多くの本管は、古く、且つ複数の漏れ口がある。より新しい本管であっても、漏れ口はあり得る。漏れ流量は、水圧が最も高いときに最大であり、驚くことではない。しかしながら、発明者は、一方で、高圧の地域供給源と地域配管網(local network)との間にある調整器の下流における地域配管網の遠隔位置において所定の最小圧力を維持するのに必要な圧力と、他方で、地域配管網内の流量との間の、単純な相関関係に注目してきた。調整器の下流側における必要な調整圧力と流量の両方は、通常、線形に関連しているように見える。それにもかかわらず、発明者は、以下を除いて、それらを通る流量に従って制御される圧力調整器がないことを認識している。
【0003】
英国特許第2,176,316号による以前の提案では、その要約において、
弁(29)とオリフィスプレート(37)とを含む配管(26)を通る水の流量を制御し、配水系への供給を行うための装置が、弁(29)を制御するサーボシステムにおいてパイロット弁(14)を作動させるガバナ(1)を含む。ガバナ(1)は、その伸長がオリフィスプレート(37)を通る流量によって決まる引っ張りばね(7)によって連結されている2つのダイヤフラム(5)及び6)を有する。第1のダイヤフラム(5)は、パイロット弁(14)の弁部材(13)を作動させ、オリフィスプレート(37)を通る流量によって引き起こされる差圧を受ける。第2のダイヤフラム(6)は、圧縮ばね(8)によって負荷がかけられ、その変位は、配管(26)のタッピング(38)での制御圧力に依存する。弁部材(14)の動きは、2つのダイヤフラム(5及び6)の変位の組み合わせであり、水の需要が増加すると、タッピング(38)における制御圧力が上昇する、
と開示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良された液圧減圧弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、流体減圧弁装置であって、
ばね式調整器であって、
チャンバを含む本体と、
チャンバへの液体供給オリフィス及びチャンバからの液体出口と、
オリフィスに対向し、使用中に、それに作用する供給液体を受ける調整プレートと、
プレートをオリフィスの方に付勢するように作用するばねと、
調整プレートと本体との間でそれらの間のチャンバを閉じ、使用中に、チャンバ内の調整された圧力を受けるダイヤフラムと、
を含む、ばね式調整器と、
調整プレートに対して遠位にあるばねの端部と本体との間に作用する制御可能なモータ駆動部と、
出口の下流の流量計と、
流量計から流量データを受け取り、流量計によって測定された流量に従ってばねの遠位端部を引き抜くようにサーボモータを制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
需要流量が増加する場合の使用中に、調整プレートが部分的に引き抜かれ、そのような増加に対する下流の圧力を維持し、逆もまた同様であるように構成されている、
流体減圧弁装置、が提供される。
【0007】
好ましくは、制御可能なモータ駆動部はサーボモータ駆動部である。
【0008】
本発明は、流体が液体、特に水である水道本管に特に適用可能である。本発明は、液体及び気体の両方の炭化水素流体に適用可能であると発明者は想定している。
【0009】
コントローラは、実質的に線形の下流圧力と流量の関係に従って、ばねの位置決めにおけるサーバモータ動作の計算に適合させることができる。計算は、ばねのサーボ位置決めに関して達成される圧力に、又はばねのみのサーボ位置決めに基づき得る。或いは、下流の圧力及び流量のルックアップテーブルに従ってサーボモータ動作に適合させてもよい。この場合も、ルックアップテーブルには、達成すべき圧力の値を含めることができるが、サーボ回転の観点からばね位置を含めることが好ましい。
【0010】
本発明の理解を助けるために、その特定の実施例を、実例として、ここで添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】以前の提案である英国特許第2,176,316の
図2である。
【
図2】本発明の圧力調整器の概略断面側面図である。
【
図3】より小さなスケールの同様の図であり、コントローラと遠隔圧力センサからのラインを含んでいる。
【
図4】需要流量が変化する一定のリモート圧力に対して配管網に適用する必要のある圧力の典型的なプロットである。
【
図5】本発明の調整器並びに多くの需要先供給水栓及び漏れ口を備えた水道本管の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照すると、ばね式調整器1は、チャンバ3を含む本体2を有する。入口4は、入口オリフィス5を介してチャンバ内に開口している。入口は高圧の水道本管6に接続されている。チャンバからの出口7は、個々の需要先に水を地域供給するための配管からなる配管網8に接続されている。調整器は、入口オリフィス5に対向して配置された流量圧力調整プレート9を有する。ダイヤフラム10はプレート9に固定され、そこから本体に放射状に広がり、本体2の上部及び下部11、12との間にシールを形成している。したがって、チャンバ3は上部と下部との間で密閉されている。
【0013】
調整プレートは、そこから入口オリフィス5のガイド16内に下向きに延びるガイドロッド14を有する。ロッドは調整プレート及びダイヤフラムの両方を通って延びている。その上端には、ばねセンタリングワッシャ18上にあるナット17と、ダイヤフラムをシールし締め付けるプレート19とが搭載されている。この配置により、調整プレートが入口オリフィス5の中央に保持される。
【0014】
変形例では、オリフィスに対向する別個の調整プレート109が下部ロッド14に設けられている。ダイヤフラムは、プレート9/109をオリフィス5の中央に保持する。
【0015】
圧縮ばね21は、その下端22において締め付けプレート19の上部に作用する。以下に説明するように、ばねは多かれ少なかれ圧縮された状態に保たれる。したがって、センタリングワッシャ18の周囲に配置されたままになる。その上端23は、サーボ装置26の駆動管25の端部においてばね駆動部材24に接している。駆動管はサーボ装置の固定管27に収容されており、調整器本体2の上部11に固定されている。ばねに対する遠位において、親ねじ28が、固定管内の駆動管内で軸方向に位置合わせするように支持されている。親ねじを駆動するためにモータ29及びギアボックス30が配置されている。ナット31、好ましくは再循環ボールナットは、駆動管25の遠位端に固定されており、駆動管25は、回転しないように固定管に固定されている。したがって、モータと親ねじとをそれぞれ回転させることにより、ばね駆動部材を前進させてばねをさらに圧縮するか、又は後退させて圧縮を緩和させることができる。
【0016】
出口7の下流には、地域供給配管網の配管8が延びている。その中には、出口に隣接して流量計32及び圧力センサ33がある。これらはコントローラ34に電子的に接続されている。また、配管8の最も遠い点36にある遠隔圧力センサ35もコントローラに接続されている。
【0017】
配管に沿って、種々の漏れ口37があり、これらの流量は、圧力やユーザ水栓38の数などに伴い増加する。これらが、圧力調整器1における流量の主要な決定要因である。この圧力調整器が、配管網内の最も遠い位置36における十分な圧力を維持する圧力に恒久的に設定されるタイプである場合、圧力は、水栓38でのユーザ流量に関係なく、漏れ口37を悪化させるようなものになる。
【0018】
本発明のこの実施例では、減圧弁装置全体は、調整器1及び流量計32だけでなく、流量調整器によって測定された流量に従ってサーボモータを介して調整器を制御するためのコントローラ38と、実際には、本発明に厳密に必要ではない遠隔圧力センサ35とを含む。
【0019】
配管網8などの多くの地域供給配管網は以前に測定されており、様々な流れのために必要な最も遠い位置の圧力をもたらすように調整器が設定されている場合、
図4に示すような圧力/流量特性を示す。ゼロ流量の理想的な低圧位置41は、漏れ口が原因でほとんど存在しない。実用的な低圧位置42は、ユーザの需要が無視できる夜間に測定され得る。他の流量及び圧力の読み取り43は、最も遠い位置の十分な圧力をもたらすように調整器を調節することによって、使用量がより多くなる期間中及びより少なくなる期間中に行うことができる。
【0020】
実際には、圧力流量プロットは、傾き又は勾配を持ち、ゼロ流量オフセットと同等のオフセットを持つ実質的に直線である。プロットは次の式で表され得る。
【0021】
調整器において必要な圧力=ゼロ流量圧力+測定された流量×プロット勾配(単位流量あたりの圧力について)。
【0022】
調整器の調節により、測定された流量が変化することが予想される可能性があるため、これは驚くべきことである。ただし、流量の主な決定要因はユーザの使用であるため、これは二次効果である。最大流量で最も遠い位置が十分であることを保証する値に配管網内の圧力が設定された場合になったであろう圧力よりも低く配管網内の圧力を保つことによって、漏れ流量は、比較して小さくなり、そうであった可能性がある漏れ流量よりも低く保たれる。前述の値では、他のすべての流れにおいて過剰な流量及び過剰な漏れ口をもたらすことになる。
【0023】
調整器のばね21は、調整される圧力を受けるダイヤフラム10によって加えられる力に対して作用し、調整プレート9に対して加えられる上流の圧力は、実質的に一定であり、ダイヤフラム力と比較して小さい。したがって、必要な圧力の変化に比例した量だけばねを短くすると、この変化をもたらすことができる。出口のオリフィスでの圧力低下の大幅な変化のためには、調整プレートのわずかな動きのみが必要であることに注意されたい。したがって、実用的な目的のために、サーボモータによって作用されるばねの端部の直線運動は、調整された圧力の線形変化を引き起こす。したがって、コントローラは、流量に応じてばねの端部を直線的に動かすように設定され得る。
【0024】
ゼロ流量圧力と測定された流量プロットの勾配とがわからない場合は、コントローラは、様々な流れに対して定期的に調整圧力を調節して、最も遠い位置の十分な圧力を達成するのに必要な圧力を確立するように、設定され得る。このために、遠隔圧力センサ35及び近接圧力センサ33との接続が行われ、前者の場合は適切に無線で行われる。
【0025】
コントローラには、オフセット及び勾配のみを記憶するのではなく、圧力及び流量のマップを記録するように適合されたメモリを備えることができ、これを、測定された流量の関数として下流の圧力を調整する必要がある圧力のルックアップテーブルとして使用することができる。
【0026】
センサ33を使用して、サーボモータ制御を微調整して、測定された流量に従って所望の圧力を達成することができる。