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<図1>
  • 特許-たばこ材料の製造方法 図1
  • 特許-たばこ材料の製造方法 図2
  • 特許-たばこ材料の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】たばこ材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20200101AFI20250110BHJP
【FI】
A24B15/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022571965
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2021042195
(87)【国際公開番号】W WO2022137904
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020214901
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】千田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】土澤 和之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 雅史
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-019389(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020699(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/119790(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/049207(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/100928(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141406(WO,A1)
【文献】特表2014-503199(JP,A)
【文献】特表2013-521007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱容器内で、2MPa以上の圧力下で、たばこ原料に、媒体を10分以上含浸すること、および
その後、前記耐熱容器を15分以上かけて開放することを含み、
前記媒体が液体二酸化炭素または超臨界二酸化炭素であり、
下記で定義される表面移行率Xが1を超えるたばこ材料を得る工程を備え、
表面移行率X=S/P
S:含浸後のたばこ原料表面に存在する香味成分のGCによるピーク面積
P:含浸前のたばこ原料表面に存在する香味成分のGCによるピーク面積
前記たばこ原料が、調和処理されたまたは調和処理されていない、たばこ葉、ラミナ、中骨、残幹、または刻であって、
調和処理された原料の水分量が5~40重量%である、
たばこ材料の製造方法。
【請求項2】
前記たばこ原料が調和処理された原料であり、当該調和処理が22℃、湿度60%で原料を24時間以上蔵置することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料を蔵置する時間が30時間以内である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記含浸が、前記たばこ原料の全部に媒体が浸透することを含む、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記含浸に用いる溶媒が液体二酸化炭素である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が2MPa以上、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記圧力が3MPa以上である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記圧力が5MPa以上である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記圧力が100MPa未満である、請求項5~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気温度が-10~35℃である、請求項5~9のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項11】
前記含浸に用いる媒体が超臨界二酸化炭素である、請求項1~4のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項12】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が100MPa以上である請求項11に記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項13】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が200MPa以上である請求項11および12に記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項14】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が300MPa以下である請求項11~13のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項15】
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気温度が35℃を超え70℃以下である請求項11~14のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
【請求項16】
前記含浸後のたばこ原料を湿式粉砕する工程をさらに備える、請求項1~15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法で得られる、たばこ材料。
【請求項18】
たばこシート、たばこ刻、中骨刻、およびこれらの組合せからなる群から選択される形態である、請求項17に記載のたばこ材料。
【請求項19】
前記たばこ刻または中骨刻が、幅0.5~2.0mmかつ長さ3~10mmの形状である、請求項18に記載のたばこ材料。
【請求項20】
前記たばこ材料が、たばこ材料の全重量に対して、5~50重量%のエアロゾル生成基材を含む、請求項17~19のいずれかに記載のたばこ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたばこ材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ葉の香気成分に関しては、黄色種、バーレー種、オリエント葉そしてメリーランドタバコなど多岐にわたるたばこ原料において研究がなされ、それぞれの原料品種において特徴的な成分が報告されてきた。これまでに4000種を超える成分が報告されている(非特許文献1)。特徴的なたばこ葉香気に寄与する成分は、たばこ葉の細胞内部あるいは細胞外に局在するという観点から大きく2つの群に大別できる。一つ目としてたばこ葉の細胞組織に存在する成分が挙げられる。これらは、たばこ葉の成熟時期あるいは乾燥工程で生成する主に色素由来の分解物からなる香気、すなわちイオノンやメガスティグマトリエノン、フィトールなどの色素解物やモノテルペン類、フェノール類である。いずれも色素分解経路、メバロン酸経路やシキミ酸経路などの一般的な香気成分生成にかかる代謝経路を経てたばこ葉の細胞組織内部に蓄積される。
【0003】
二つ目としてたばこ葉の葉面に存在する成分が挙げられる。これは、一般に葉面樹脂と呼ばれ、病害虫あるいは生育環境から組織を保護するため、毛茸などから産生分泌される比較的高分子の有機酸や炭化水素、配糖体などで構成される。その香気成分はセスキテルペン、ジテルペンとそれらを取り巻くテルペン配糖体であるという特徴を有する。
【0004】
香気成分をたばこ葉等から抽出する方法が種々提案されている。目的とする成分の特徴を生かし、液化炭酸ガスあるいは超臨界炭酸ガスを用いて抽出する方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。燃焼用たばこの原料の一つとして、たばこ葉を液化炭酸ガスで膨化した原料が検討されてきたが、そのプロセスは、上述の炭酸ガスを用いた抽出工程と非常に近似する。そこで、当該膨化プロセスの一部を応用した方法が提案されている(例えば特許文献3、4)。特許文献3には、膨化たばこ原料のためのフレーバーを製造する装置が開示されている。当該装置は、たばこ原料に超臨界状態の二酸化炭素を接触させ、この二酸化炭素にたばこ成分を溶解させる抽出容器と、抽出容器に接続され、二酸化炭素に溶解したたばこ成分から、たばこ成分の脂溶性部分を分離して回収する分離容器と、この後に抽出容器と純水を蓄えた吸収容器との間にて超臨界状態の二酸化炭素を活性炭の浄化層により浄化しながら循環させ、純水にたばこ成分の水溶性部分を吸収させる循環経路と、たばこ成分の水溶性部分を吸収した純水を吸収水として吸収容器から回収する回収容器とを備える。たばこ成分の脂溶性部分および吸収水はフレーバーの製造に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/029264号
【文献】英国特許第2173985号明細書
【文献】国際公開第2007/119790号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Leffingwell et. Al., Leffingwell Reports, Vol.1 (No. 2), February, 2001
【文献】斯ら,植物繊維の熱劣化による変色と強度劣化, 繊維学会誌, pp89-95, vol70, no5 (2014)
【文献】J.Sui, et.al., Formation of α- and β-Cembratriene-Diols in Tobacco (Nicotiana tabacum L.) Is Regulated by Jasmonate-Signaling Components via Manipulating Multiple Cembranoid Synthetic Genes, Molecules. 23(10): 2511, 2018
【文献】W.S.Schlotzhauer, et al., Characterization of thermolysis products of cuticular wax compounds of green tobacco leaf, Journal of Analytical and Applied Pyrolysis. Volume 17, Issue 1, December 1989, Pages 25-35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃焼型たばこの場合、前述の香気成分は細胞構成物の燃焼分解時に蒸留および熱分解される。すなわち、葉たばこ香気成分は、上記のようにたばこ葉の細胞内部あるいは表面に局在していたとしても主流煙へ移行しやすく、局在化の影響は非常に小さいと考えられる。
【0008】
一方、非燃焼型たばこの場合、従来の燃焼型たばこに比して、細胞内部の移動が細胞壁などの構造物の遮蔽によって制限されるので、葉面樹脂など主体とする表面に局在する成分の揮発が優先される。つまり非燃焼型たばこにおいて、細胞内部に存在する香気成分をリリースするには加熱温度が重要であり、細胞壁構成成分の熱変性温度である200℃以上に加熱することが(非特許文献2)必要と考えられた。例えば色素体に含有されるカロチンの分解物であるイオノン(非特許文献1)などは細胞内に存在するため、低温においてはリリースが抑制される。しかし熱変性温度においては一気に細胞壁構成成分の熱変性と共に揮散するので、そのデリバリーの制御は容易ではないことが予想された。対照的に葉面樹脂成分であるセンブラトリエンジオール(CBT)(非特許文献3)は、蒸気圧が低いので、上述の細胞内に存在する香気成分に比べて与えた熱量に応じてデリバリーすることが予想された。すなわち非燃焼型たばこにおいては、香気成分の存在する場所によってそのリリースが制限されるので、香気成分を燃焼型たばこのようにリリースすることは容易でない。かかる事情に鑑み、本発明は、香気成分がリリースされやすい、たばこ材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、たばこ葉の膨化処理において、気体二酸化炭素の含浸後に二酸化炭素を気化除去する際に葉たばこ細胞内に存在する香気成分が細胞内から細胞外へ移動すること、および当該香気成分が予め細胞外に存在する葉面樹脂などの難揮発性物質と細胞表層で混和し、細胞内香気成分を溶解または保持する可能性があることに着眼し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本願発明によって解決される。
態様1
たばこ原料に、気体、液体、および超臨界状態からなる群から選択される状態の媒体を含浸することを含み、
下記で定義される表面移行率Xが1を超えるたばこ材料を得る工程を備え、
表面移行率X=S/P
S:含浸後のたばこ原料表面に存在する香味成分のGCによるピーク面積
P:含浸前のたばこ原料表面に存在する香味成分のGCによるピーク面積
前記たばこ原料が、調和されたまたは調和されていない、たばこ葉、ラミナ、中骨、残幹、または刻であって、
調和された原料の水分量が5~40重量%である、
たばこ材料の製造方法。
態様2
前記たばこ原料が調和された原料であり、当該調和処理が22℃、湿度60%で原料を24時間以上蔵置することを含む、 態様1に記載の製造方法。
態様3
前記蔵置時間が30時間以内である、態様2に記載の製造方法。
態様4
前記含浸が、前記たばこ原料の全部に媒体が浸透することを含む、態様1~3のいずれかに記載の製造方法。
態様5
前記含浸に用いる溶媒が液体二酸化炭素である、態様1~4のいずれかに記載の製造方法。
態様6
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が2MPa以上、態様5に記載の製造方法。
態様7
前記圧力が3MPa以上である、態様6に記載の製造方法。
態様8
前記圧力が5MPa以上である、態様7に記載の製造方法。
態様9
前記圧力が100MPa未満である、態様5~8のいずれかに記載の製造方法。
態様10
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気温度が-10~35℃である、態様5~9のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
態様11
前記含浸に用いる媒体が超臨界二酸化炭素である、態様1~4のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
態様12
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が100MPa以上である態様11に記載のたばこ材料の製造方法。
態様13
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が200MPa以上である態様11および12に記載のたばこ材料の製造方法。
態様14
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気圧力が300MPa以下である態様11~13のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
態様15
前記含浸時の前記たばこ原料の雰囲気温度が35℃ を超え70℃以下である態様11~14のいずれかに記載のたばこ材料の製造方法。
態様16
前記含浸後のたばこ原料を湿式粉砕する工程をさらに備える、態様1~15のいずれかに記載の製造方法。
態様17
態様1~16のいずれかに記載の方法で得られる、たばこ材料。
態様18
たばこシート、たばこ刻、中骨刻、およびこれらの組合せからなる群から選択される形態である、態様17に記載のたばこ材料。
態様19
前記たばこ刻または中骨刻が、幅0.5~2.0mmかつ長さ3~10mmの形状である、態様18に記載のたばこ材料。
態様20
前記たばこ材料が、たばこ材料の全重量に対して、5~50重量%のエアロゾル生成基材を含む、態様17~19のいずれかに記載のたばこ材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、香気成分がリリースされやすい、たばこ材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品の一態様を示す図
図2】非燃焼加熱型たばこ香味吸引システムの一態様を示す図
図3】ガスクロマトグラム
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.製造方法
本発明の製造方法は、たばこ原料を、気体、液体、および超臨界状態からなる群から選択される状態の媒体に含浸する工程を含み、下記で定義される表面移行率Xが1を超える材料を得る工程を備える。
表面移行率X=S/P
S:含浸後のたばこ原料表面に存在する香気成分のGCによるピーク面積
P:含浸前のたばこ原料表面に存在する香気成分のGCによるピーク面積
【0013】
(1)媒体
媒体とは、たばこ原料から香気成分を抽出できるものであれば限定されないが、二酸化炭素、水、または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては例えば、非プロトン性溶媒としてペンタン、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。中でも、たばこ葉の膨化処理を利用できるという観点から、媒体として二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0014】
これらの媒体は、気体、液体、または超臨界状態であってよいが、取扱い性の観点から、液体または超臨界状態であることが好ましい。特に、前述のとおりたばこ葉の膨化処理を利用できるという観点から、媒体として液体または超臨界状態にある二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0015】
(2)たばこ原料
たばこ原料は、タバコ属植物に由来するものであれば限定されないが、入手容易性等の観点から、たばこ葉、ラミナ、中骨、残幹、または刻が好ましい。たばこ葉とは、収穫されたたばこの葉が、熟成を経る前のものの総称である。熟成の一態様にはキュアリングが含まれる。ラミナとはたばこ葉を除骨したものであり、除かれたものが中骨である。残幹とはたばこ収穫後の圃場に残っている幹である。刻は、熟成済たばこ葉や中骨等が、所定の大きさに刻まれたものである。中でも中骨が所定の大きさに刻まれたものを中骨刻ともいう。これらは調和処理がなされていてもよい。調和処理とは、水分量を一定化するために状態調整することをいう。例えばラミナを22℃、60%で24時間以上蔵置することで調和処理を行うことができる。蔵置する時間の上限は限定されないが、30時間以内であることが好ましい。原料の水分量が多いと、原料が膨潤するため媒体が細胞内に拡散しやすくなり、細胞内部に存在する香気成分が外部へ移動しやすくなる。一方で、原料の水分量が多いと処理後に乾燥する必要が生じる。これらの観点から、調和後の原料の水分量は好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~30重量%である。
【0016】
(3)含浸工程
含浸とは、たばこ原料に前記媒体を浸透させることをいう。たばこ原料の少なくとも一部分の内部に媒体に浸透すればよいが、たばこ原料の全部に媒体が浸透することが好ましい。含浸時の圧力および温度は、媒体を所望の状態にするように調整される。例えば、液体二酸化炭素を用いる場合、たばこ原料の雰囲気圧力(例えば容器内圧力)は、好ましくは2MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上(いずれもゲージ圧)である。前記圧力の上限は限定されないが、例えば100MPa未満とすることができる。この際の温度は-10~35℃とすることができる。また、超臨界二酸化炭素を用いる場合、前記圧力は好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上(いずれもゲージ圧)である。前記圧力の上限は限定されないが、例えば300MPa以下とすることができる。この際のたばこ原料の雰囲気温度(例えば、品温または容器内温度)は35℃超~70℃とすることができる。
【0017】
含浸工程によって、たばこ原料の細胞内部に存在する香気成分が細胞の外へと移動し、さらにはたばこ原料の表面に移動する。この理由は限定されないが、たばこ原料内に含侵された媒体が細胞と接触することで、細胞の内外で香気成分の濃度勾配が生じ、たばこ原料内部に存在する香気成分が媒体側へと移動するためと推察される。また、二酸化炭素を用いる場合は、前記に加えて、含浸された二酸化炭素によってたばこ葉中の水が冷却され、細胞内に氷が生成されることで油胞や液胞等の香気を貯留する器官が一部壊れることによって、たばこ原料内部に存在する香気成分が媒体側へとより移動しやすくなる。この移動をより円滑に行うため、媒体はたばこ原料の内部にまで浸透(含浸)することが好ましい。ただし、前記香気成分が完全に媒体中に溶解または分散してしまうと、当該媒体が除去される際に前記香気成分がたばこ原料の表面にとどまることが困難となる。このため、本発明では原料の細胞に効率よく溶媒を浸透し所望の香気成分を溶媒中に溶解することと、溶媒をなるべく緩和に除去することの組み合わせにより、細胞内に存在していた香気成分をたばこ原料の表面にとどめることができる。
【0018】
含浸によって、下記で定義される表面移行率Xが1を超えるように調整される。
表面移行率X=S/P
S:含浸後のたばこ原料表面に存在する香気成分のGCによるピーク面積
P:含浸前のたばこ原料表面に存在する香気成分のGCによるピーク面積
表面移行率Xは好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。
【0019】
Sは処理されたたばこ原料の表面に存在する香気成分を採取して、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析して求められる。具体的には、たばこ原料を酢酸エチルなどの非プロトン性溶媒と接触させて表面に存在する香気成分を抽出する。その後、非プロトン性溶媒を除去して、抽出物の重量を秤量する。次いで、GCを用いて香気成分のピーク面積を求める。Pは処理前のたばこ原料を用いてSと同様にして求められる。
【0020】
SおよびPは、より好ましくは以下のように定義される。
S:含浸後のたばこ原料から下記条件で抽出された香気成分のGCによるピーク面積
P:含浸前のたばこ原料から下記条件で抽出された香気成分のGCによるピーク面積
[条件]
1)含浸後のたばこ原料を5g秤量する。
2)容器(好ましくは200ml容ビーカー)に非プロトン性溶媒100mlを入れ、そこに前記試料を投入する。
3)投入後、容器を振とうして30秒間抽出する(原料の表面を洗うイメージ)。
4)抽出液をろ過してろ液を得る(好ましくは200ml三角フラスコでろ液を受ける)。
5)前記4)で得た抽出液をろ過する。この際、ろ紙を用いることが好ましい。
6)ろ過後の抽出液に乾燥剤を加えて、一晩脱水する。
7)乾燥剤をろ別し、ろ液を減圧濃縮して乾固物を得る。この際、ろ紙を用いることが好ましい。これを前記非プロトン性溶媒に溶解して4%の溶液としてGC/MS分析し、S値を得る。
8)含浸前のたばこ原料に対して1)~7)の操作を行い、P値を得る。
【0021】
より好ましい態様では、抽出を2段階で行う。具体的には以下のように行う。
[条件]
1)含浸後のたばこ原料を5g秤量する。
2)容器(好ましくは200ml容ビーカー)に非プロトン性溶媒100mlを入れ、そこに半分の量の前記試料を投入する。
3)投入後、軽く容器を振りながら30秒間抽出する(原料の表面を洗うイメージ)。
4-1)抽出液をろ過し、ろ液を別の容器(好ましくは200ml三角フラスコ)で受ける。
4-2)当該ろ液に、残りの原料加え、3)と同様に30秒間抽出する。
5)前記4)で得た抽出液をろ過する。この際、ろ紙を用いることが好ましい。
6)ろ過後の抽出液に乾燥剤を加えて、一晩脱水する。
7)無水硫酸ナトリウムをろ別し、得たろ液を減圧濃縮し得られた乾固物を得る。この際、ろ紙を用いることが好ましい。これを前記非プロトン性溶媒に溶解して4%の溶液としてGC/MS分析し、S値を得る。
8)含浸前のたばこ原料に対して1)~7)の操作を行い、P値を得る。
【0022】
非プロトン性溶媒としては、酢酸エチル等のエステル系溶媒が挙げられる。乾燥剤は1~5g程度とすることができ、より好ましくは2~4gである。乾燥剤としては無水硫酸ナトリウムなどの無水無機塩を使用することができる。
【0023】
前記表面移行率Xの対象となる香気成分としては、リモネン、ゲラニオール、ファルネソールなどのモノテルペン、セスキテルペンなどのメバロン酸経路からのテルペン系香気成分群;ユージノール、アネトール、バニリンなどのシキミ酸経路あるいはリグニンなどから生じるフェノール系香気成分群;パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸やソラネソールなどの脂肪酸系あるいは直鎖不飽和炭化水素群;インドールやスカトールなどのアミノ酸由来の香気成分群;たばこ特有のニコチンなどのアルカロイド、乾燥葉特有であるカロテノイド色素由来のイオノン、ダマセノン、メガスティグマトリエノンの色素分解物群が挙げられる。これらはいずれも細胞内部で蓄積または乾燥固定されている。また、分泌系香気成分としてセンブラトリエンジオール(CBT)、アビエノールなどのセスキテルペン、ジテルペン等が挙げられる。CBT等は細胞外に存在する物質であるが、前記細胞内に存在する成分によって表面近傍に保持される。中でも表面移行率Xの対象として特に重要な成分としては以下が挙げられる。
【0024】
【表A】
【0025】
これらのうち少なくとも1つの表面移行率Xが1を超えることが好ましい。一態様において、含浸時間は10分以上または15分以上である。
【0026】
含浸後、処理されたたばこ原料と媒体が分離されることで含浸工程は終了する。分離の方法は限定されないが、媒体を蒸発させて除去することができる。例えば、液体または超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合、反応系を開放して圧力を常圧に戻すことで二酸化炭素を除去できる。このようにしてたばこ材料を単離できる。圧力を開放する時間は限定されず、例えば0.1~100分とすることができる。
【0027】
水や有機溶媒を使用して常圧で含浸工程を実施する場合は、当該水および有機溶媒を蒸発させる等によってたばこ原料と分離できる。また、含浸後、処理されたたばこ原料と媒体を分離しなくてもよい。この場合は、処理されたたばこ原料と媒体の混合物としてたばこ材料を得ることができる。
【0028】
(4)粉砕工程
分離されたたばこ材料は、公知の方法で粉砕して所望の大きさにすることができる。また、混合物として得たたばこ材料を粉砕に供することもできる。媒体として液体または超臨界状態の二酸化炭素を用いた場合、前記たばこ材料は処理されたたばこ原料とドライアイスとの混合物であり、当該たばこ原料は凍結状態にあるのでこのまま凍結粉砕することができる。あるいは、常圧で液体である媒体(水または有機溶媒)を用いた場合、処理されたたばこ原料と前記液体の混合物としてたばこ材料が得られる。この場合は、湿式粉砕に供することもできる。一態様において、粉砕されたたばこ材料のD90は、30μm以下であることが好ましい。
【0029】
2.たばこ材料
本発明の製造方法で得たたばこ材料(以下「本発明のたばこ材料」)は、本来細胞内部に存在する香気成分が細胞の外部に存在しているか、元から細胞外に存在する香気成分が細胞内部から移行した成分によってトラップされ、表面により多く存在している。すなわち本発明のたばこ材料は前記表面移行率Xが1を超えるという特徴を備える。したがって、香味吸引物品として用いた場合に、香気成分が容易にリリースされて好ましい香喫味をユーザーに与える。香味吸引物品については後述する。
【0030】
本発明のたばこ材料は、種々の形態で使用できる。例えば、たばこシート、刻、巻紙、または多糖類シート等として使用できる。以下に説明する。
(1)たばこシート
たばこシートは、たばこ原料を含む組成物を成形して得られるシートである。本発明のたばこ材料であるたばこ葉やラミナを含む組成物からたばこシートを調製することができる。本発明において「シート」とは、略平行な1対の主面と側面を有する材料をいう。たばこシートは、抄造法、キャスト法、圧延法等の公知の方法で成形することができる。このような方法で成形された各種たばこシートについては、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0031】
例えば、抄造法では、前記たばこ葉またはラミナから水溶性成分を抽出して水抽出物と残渣に分離し、繊維化された残渣とパルプの混合物を抄紙し、抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加する工程を経て抄造シートを製造できる。キャスト法では、水とパルプとバインダーと前記たばこ葉またはラミナを混合して混合物とし、これをキャストする工程を経て、キャストシートを製造できる。圧延法では、水とパルプとバインダーと前記たばこ葉またはラミナの粉砕物を混合して混合物とし、これを複数の圧延ローラーに投入して圧延する工程を経てシートを製造できる。
【0032】
さらに、国際公開第2014/104078号に記載されているように、前記たばこ葉またはラミナの粉砕物とバインダーを混合して混合物とし、当該混合物を不織布によって挟み、当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形することで、不織布状のたばこシートを得ることができる。
【0033】
たばこシートはエアロゾル生成基材を含んでいてもよい。エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の多価アルコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、およびこれらの混合物を挙げることができる。エアロゾル生成基材の含有量は、たばこ製品で利用される形態により様々な量に調整することができる。例えば、たばこシートにエアロゾル生成基材が含まれる場合、その含有量は、良好な香味を得るという観点から、たばこシートの全重量に対して、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。
【0034】
(2)刻
前記たばこ葉またはラミナを裁刻してたばこ刻とすることもでき、中骨を裁刻して中骨刻とすることができる。その大きさは限定されず、一例として、幅0.5~2.0mm、長さ3~10mmのものが挙げられる。このような大きさの刻は、後述する被充填物に充填する態様において好ましい。この他に、刻として、加工済たばこ葉を、幅を0.5~2.0mm、長さを前述のたばこ刻よりも長く、好ましくは巻紙と同程度の長さとなるように刻んだ、ストランドタイプ刻を挙げることができる。
【0035】
刻は前記エアロゾル生成基材を含んでいてもよい。刻中にエアロゾル生成基材が含まれる場合、その含有量は、十分な量のエアロゾルを生成させるとともに、良好な香味を得るという観点から、刻の重量に対して、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。
【0036】
4.たばこ香味吸引物品
本発明において、「香味吸引物品」とは使用者が香味を吸引するための物品をいう。香味吸引物品のうち、たばこまたはそのたばこに由来する成分を有するものを「たばこ香味吸引物品」という。たばこ香味吸引物品は、燃焼によって香味を発生させる「燃焼型たばこ香味吸引物品」(単に「喫煙物品」ともいう)、燃焼させずに香味を発生させる「非燃焼型たばこ香味吸引物品」に大別される。さらに、非燃焼型たばこ香味吸引物品は、加熱によって香味を発生させる「非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品」と、加熱せずに香味を発生させる「非燃焼非加熱型たばこ香味吸引物品」に大別される。本発明のたばこ用香味剤は、燃焼型たばこ香味吸引物品または非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品に好適である。
【0037】
(1)燃焼型たばこ香味吸引物品
燃焼型たばこ香味吸引物品は公知の構造とできる。例えば、燃焼型たばこ香味吸引物品は、たばこロッド部とフィルターを備えることができる。たばこロッド部には好ましくは刻の形態の本発明のたばこ材料が充填される。
【0038】
(2)非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品
図1に非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品の一態様を示す。図に示すように、非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品20は、たばこロッド部20Aと、周上に穿孔を有する筒状の冷却部20Bと、フィルター部20Cと、を備える。非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品20は、これ以外の部材を有していてもよい。非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品20の軸方向の長さは限定されないが、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mm以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品20の周の長さは16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。例えば、たばこロッド部20Aの長さは20mm、冷却部20Bの長さは20mm、フィルター部20Cの長さは7mmである態様を挙げることができる。これら個々の部材長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。図1には、第1セグメント25を配置した態様を示すが、これを配置せずに、冷却部20Bの下流側に第2セグメント26のみを配置してもよい。
【0039】
1)たばこロッド部20A
たばこロッド部20Aには、たばこ充填物21として、刻またはたばこシートの形態の本発明のたばこ材料を用いることができる。たばこ充填物21を巻紙22内に充填する方法は特に限定されないが、例えばたばこ充填物21を巻紙22で包んでもよく、筒状の巻紙22内にたばこ充填物21を充填してもよい。たばこの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、当該長手方向が巻紙22内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこロッド部20Aの軸方向に整列またはこれに直交する方向に整列させて充填されていてもよい。また、巻紙22として、前述の本発明のたばこ用香味剤を含む巻紙を用いることもできる。たばこロッド部20Aが加熱されることにより、たばこ充填物21に含まれるたばこ成分、エアロゾル生成基材および水が気化し、吸引に供される。
【0040】
2)冷却部20B
冷却部20Bは筒状部材で構成されることが好ましい。筒状部材は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管23であってもよい。また、冷却部20Bは、チャネルを形成するために、しわ付けされ、次いでひだ付け、ギャザー付け、または折畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。このような材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、酢酸セルロース、およびアルミニウム箔から構成される群から選択されたシート材料を用いることができる。冷却部20Bの全表面積は冷却効率を考慮して適宜調製されるが、例えば、300~1000mm2/mmとすることができる。冷却部20Bには、好ましくは穿孔24が設けられる。穿孔24の存在により、吸引時に外気が冷却部20B内に導入される。これにより、たばこロッド部20Aが加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔24の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであってもよい。穿孔24の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔24は冷却部20Bの周上に複数設けられていてもよい。
【0041】
冷却部20Bは、その軸方向の長さが例えば7~28mmのロッド形状とすることができる。例えば、冷却部20Bの軸方向の長さは18mmとすることができる。冷却部20Bは、その軸方向断面形状として実質的に円形であり、直径を5~10mmとすることができる。例えば、冷却部の直径は、約7mmとすることができる。
【0042】
3)フィルター部20C
フィルター部20Cの構成は特に限定されないが、単数または複数の充填層から構成されてよい。充填層の外側は一枚または複数枚の巻紙で巻装されてよい。フィルター部20Cの通気抵抗は、フィルター部20Cに充填される充填物の量、材料等により適宜変更することができる。例えば、充填物が酢酸セルロース繊維である場合、フィルター部20Cに充填される酢酸セルロース繊維の量を増加させれば、通気抵抗を増加させることができる。充填物が酢酸セルロース繊維である場合、酢酸セルロース繊維の充填密度は0.13~0.18g/cmであることができる。前記通気抵抗は通気抵抗測定器(商品名:SODIMAX、SODIM製)により測定される値である。
【0043】
フィルター部20Cの周の長さは特に限定されないが、16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。フィルター部20Cの軸方向(図1の水平方向)の長さは4~10mmで選択可能であり、その通気抵抗が15~60mmHO/segとなるように選択される。フィルター部20Cの軸方向の長さは5~9mmが好ましく、6~8mmがより好ましい。フィルター部20Cの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。またフィルター部20Cには香料を含んだ破壊性カプセル、香料ビーズ、香料を直接添加していてもよい。
【0044】
フィルター部20Cは第1セグメント25としてセンターホール部を備えていてもよい。センターホール部は1つまたは複数の中空部を有する第1充填層25aと、当該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)25bとで構成される。センターホール部は、マウスピース部の強度を高める機能を有する。センターホール部はインナープラグラッパー25bを持たず、熱成型によってその形が保たれていてもよい。フィルター部20Cは第2セグメント26を備えていてもよい。第2セグメント26は第2充填層26aと当該充填層を覆うインナープラグラッパー(内側巻紙)26bとで構成される。第1充填層25aは、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース重量に対して、6~20重量%添加されて硬化された内径φ5.0~φ1.0mmのロッドとすることができる。第充填層は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第2充填層内はほとんど流れない。センターホールセグメント内部の第二の充填層が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。
【0045】
第1充填層25aと第2充填層26aとはアウタープラグラッパー(外側巻紙)27で接続されている。アウタープラグラッパー27は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこロッド部20Aと、冷却部20Bと、接続済みの第1充填層25aと第2充填層26aとは、マウスピースライニングペーパー28により接続されている。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー28の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つの部材を巻くことで接続することができる。これらの部材は複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0046】
非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品とエアロゾルを発生させるための加熱デバイスとの組合せを、特に非燃焼加熱型たばこ香味吸引システムともいう。当該システムの一例を図2に示す。図中、非燃焼加熱型たばこ香味吸引システムは、非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品20と、たばこロッド部20Aを外側から加熱する加熱デバイス10とを備える。
【0047】
加熱デバイス10は、ボディ11と、ヒーター12と、金属管13と、電池ユニット14と、制御ユニット15とを備える。ボディ11は筒状の凹部16を有し、これに挿入されるたばこロッド部20Aと対応する位置に、ヒーター12と金属管13が配置されている。ヒーター13は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット15からの指示により電池ユニット14より電力が供給され、ヒーター12の加熱が行われる。ヒーター12から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管13を通じてたばこロッド部20Aへ伝えられる。当該図には、加熱デバイス10はたばこロッド部20Aを外側から加熱する態様を示したが、内側から加熱するものであってもよい。加熱デバイス10による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150~400℃であることがより好ましく、200~350℃であることがさらに好ましい。加熱温度とは加熱デバイス10のヒーターの温度を示す。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明において特に断りがない限り、容器内圧力はゲージ圧である。
[実施例1]含浸条件とCO除去条件の検討
初期水分10.5重量%のブラジル産黄色種のラミナを乾燥重量にして約600g相当分を秤量し、ステンレス鋼製金網容器に入れ、これを圧力容器(内容積9リットル)に収容した。ついで、圧力容器内を二酸化炭素ガスで10秒間パージした。続いて、二酸化炭素ガスを圧力容器内に導入して圧力容器内を30kg/cm(2.9MPaゲージ圧)の含浸圧力まで加圧した。二酸化炭素ガスの供給を停止した後、圧力容器の上方から、液体二酸化炭素の供給を開始した。液体二酸化炭素を徐々に供給し、たばこ層中の上部、中間部および最下部に設置した熱電対のすべてが含浸圧力における二酸化炭素ガスの飽和温度を示すまで供給した。最下部の熱電対が上記飽和温度を示すのとほぼ同時に圧力容器の底部からほんのわずかな液体二酸化炭素が垂れ出た。この時点で、液体二酸化炭素の供給を停止した。供給を停止してから1分経過後、圧力容器内圧力を約1分(実験水準1)あるいは約90分(実験水準2)かけて大気圧まで解放し十分に二酸化炭素を容器内で揮散除去した。さらに処理たばこをそれぞれ圧力容器から取り出した。
【0049】
[実施例2]成分の外部への移行率
実施例1で処理したラミナと、未処理のラミナを5gずつ取り分けた。Seversonらの抽出方法を参考に、ピンセットを用いて一枚ずつラミナを取り分け、酢酸エチル100mlを充填した300ml容ガラス容器内に30秒を超えない時間含浸し、なるべく表面のみに存在する成分を酢酸エチル内に溶解させた。この酢酸エチルをロータリーエバポレーターで減圧除去し、乾固物の重量を測定した。乾固物クロロホルムで完全溶解して濃度が4重量%である溶液を調製し、表1の条件に従いGC/MS分析を行った。表2には表面移行率を示した。図3にガスクロマトグラフを示した。Seversonらの方法に従い、表面移行率が1を超えた場合に内容成分がたばこ葉の細胞内部から外部へ移行したと判断した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2-1】
【0052】
【表2-2】
【0053】
[実施例3]含浸条件とCO除去条件の検討
代表的なラミナをステンレス鋼製金網容器に入れ、これを圧力容器(内容積1L(リットル)、直径80mm、深さ200mm)に収容した。ついで、圧力容器内を二酸化炭素ガスで10秒間パージした。続いて、二酸化炭素ガスを圧力容器内に導入して圧力容器内を30または50kg/cm(それぞれ2.9MPa、4.9MPa、いずれもゲージ圧)の含浸圧力まで加圧した。二酸化炭素ガスの供給を停止した後、圧力容器の上方から、液体二酸化炭素の供給を開始した。液体二酸化炭素を徐々に供給し、たばこ層中の上部、中間部および最下部に設置した熱電対のすべてが含浸圧力における二酸化炭素ガスの飽和温度を示すまで供給した。最下部の熱電対が上記飽和温度を示すのとほぼ同時に圧力容器の底部からほんのわずかな液体二酸化炭素が垂れ出た。この時点で、液体二酸化炭素の供給を停止した。供給を停止してから液体二酸化炭素を含浸させている時間、および圧力容器内圧力を大気圧まで開放する時間は表3に示すとおりとした。容器を解放した後、二酸化炭素含浸ラミナを取り出した。前記のとおり、各試料について表面移行率Xを求めた。
【0054】
【表3】
【0055】
[実施例4]凍結粉砕
黄色種(ブラジル産本葉系黄色種)のラミナをステンレス製耐圧容器に60g入れて、その後、二酸化炭素を内部の圧力が50kg/cm(4.9MPaゲージ圧)になるように充填して、1分蔵置した。その際の内部温度は15.1℃であった。その後、耐圧容器のバルプを開放して、30分かけて、常圧にもどした。その際のラミナの水分量およびドライアイス含量は10および16重量%であった。凍結状態にある当該ラミナを、卓上粉砕機(ダルトン社製パワーミルLM-05)を用いて、平均粒径が30μm以下になるように粉砕して微細粉とした。
【0056】
[実施例5]
黄色種(ブラジル産本葉系黄色種)のラミナをステンレス製耐圧容器に700g入れて、その後、二酸化炭素を内部の圧力が30kg/cm(2.9MPaゲージ圧)になるように充填して、1分蔵置した、その際の内部温度は-4.4℃であった。その後、耐圧容器のバルプを開放して、90分かけて、常圧にもどした。その際のラミナの水分量は10重量%であった。当該ラミナを、シュレッダーを用いて幅約1mm、長さ約5~20mmに裁刻して刻とした。円周24.4mm、長さ50mmの円筒状のたばこ巻紙の中に、約700mgの当該刻をランダムに配向するように充填し、喫煙物品を得た。当該喫煙物品について、後述する方法により、十分に訓練のなされた専門家7人による喫煙評価を実施した。
【0057】
[実施例6]
耐圧容器のバルプを開放して、1分かけて、常圧にもどした以外は、実施例5と同じ方法でラミナを処理した。処理後のラミナの水分量は10重量%であった。当該ラミナを用い、実施例5同じ方法で喫煙物品を得て、評価した。
【0058】
[比較例]
黄色種(ブラジル産本葉系黄色種)のラミナを水分量が12重量%程度となるように調和した。当該ラミナを用い、実施例5同じ方法で喫煙物品を得て、評価した。これらの結果を下表に示した。
【0059】
【表4】
【0060】
[喫煙評価]
パフ回数:7~10回
喫煙順序:比較例で得た喫煙物品を喫煙し、その後、実施例5で得た喫煙物品を喫煙した。次いで、比較例で得た喫煙物品を喫煙し、その後、実施例6で得た喫煙物品を喫煙した。
評価項目:香味、甘さ、渋み
スコア:A 比較例に対して大幅に増加
B 比較例に対して増加
C 比較例に対して減少
D 比較例に対して大幅に減少
【符号の説明】
【0061】
10 加熱装置
11 ボディ
12 ヒーター
13 金属管
14 電池ユニット
15 制御ユニット
16 凹部
17 通気穴

20 非燃焼加熱型香味吸引物品
20A たばこロッド部
20B 冷却部
20C フィルター部

21 たばこ充填物
22 巻紙
23 紙管
24 穿孔
25 第1セグメント
25a 第1充填層
25b インナープラグラッパー
26 第2セグメント
26a 第2充填層
26b インナープラグラッパー
27 アウタープラグラッパー
28 ライニングペーパー
図1
図2
図3