(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ポリオレフィン接着剤フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250110BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250110BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20250110BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20250110BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20250110BHJP
C08F 255/02 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 M
C09J7/30
C09J7/24
C09J151/06
C08F255/02
(21)【出願番号】P 2023032540
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】袁 敬堯
(72)【発明者】
【氏名】王 誌鋒
(72)【発明者】
【氏名】馬 登科
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182304(JP,A)
【文献】特開2002-088328(JP,A)
【文献】特開平09-164639(JP,A)
【文献】特開2022-122641(JP,A)
【文献】特開2020-049896(JP,A)
【文献】特表2017-509723(JP,A)
【文献】特開昭64-027923(JP,A)
【文献】特表2021-523956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09J
C08F 255/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャストポリプロピレンフィルムである支持層と、
共押出で前記支持層の片面に形成された接着剤層と、を備える、ポリオレフィン接着剤フィルムであって、
前記支持層は、プロピレンブロック重合体と、ビニル系エラストマーと、第2のポリオレフィン共重合体と、を含み、
前記接着剤層は、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体を含み、
前記接着剤層において、前記第1のポリオレフィン共重合体の含有量は、90wt%以上であり、
前記第1のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成され、前記無水マレイン酸の、前記第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは3g/10min~5g/10minであることを特徴とする、ポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項2】
前記接着剤層において、前記第1のポリオレフィン共重合体の前記第1のメルトインデックスは、3g/10min~4g/10minである、請求項1に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項3】
前記支持層において、前記プロピレンブロック重合体は、エチレンプロピレン弾性ゴムで構成されたブロックを含み、前記エチレンプロピレン弾性ゴムの前記プロピレンブロック重合体での重量%は、18%以上であり、前記ビニル系エラストマーは、エチレン/ブテンエラストマーであると共に、前記ビニル系エラストマーでのエチレンの重量%は、30%以上である、請求項1に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項4】
前記支持層における前記第2のポリオレフィン共重合体は、無水マレイン酸で変性されると共に、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成され、前記無水マレイン酸の、第2の前記ポリオレフィン共重合体での第2のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第2のポリオレフィン共重合体の第2のメルトインデックスは、3g/10min~5g/10minである、請求項1に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項5】
前記支持層において、前記支持層の総重量を100wt%として、前記プロピレンブロック重合体の含有量は、50wt%~90wt%であり、前記ビニル系エラストマーの含有量は、5wt%~30wt%であり、前記無水マレイン酸で変性された前記第2のポリオレフィン共重合体の含有量は、5wt%~20wt%である、請求項
4に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項6】
共押出で前記支持層の他面に形成されたヒートシール層を、更に備える、請求項1に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項7】
前記ヒートシール層は、プロピレンポリマーであり、前記プロピレンポリマーは、プロピレン共重合体(co-PP)及びプロピレンホモポリマー(homo-PP)の中の少なくとも1つである、請求項
6に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項8】
前記ポリオレフィン接着剤フィルムの前記ヒートシール層の、QB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は、80N/15mm以上である、請求項
6に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項9】
前記接着剤層の第1の厚みは4μm~12μmであり、前記支持層の第2の厚みは15μm~35μmであり、前記ヒートシール層の第3の厚みは4μm~12μmである、請求項
6に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項10】
前記ポリオレフィン接着剤フィルムは、前記接着剤層を介して金属アルミニウム箔とを貼り合わせることによって、前記ポリオレフィン接着剤フィルムと前記金属アルミニウム箔との剥離強度は、10N/15mm以上である、請求項1~
9のいずれか一項に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【請求項11】
前記ポリオレフィン接着剤フィルムと前記金属アルミニウム箔とを貼り合わせてなるアルミプラスチック積層フィルムの、85℃の電解液の環境で168時間に浸した後のもう1つの剥離強度は、8.5N/15mmを超える、請求項
10に記載のポリオレフィン接着剤フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤フィルムに関し、特に、ポリオレフィン接着剤フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来の技術のアルミプラスチックフィルム包装材は、ドライ複合ポリオレフィンフィルムPL/アルミニウム箔AFを採用することが多い。2種の材料の間に、接着剤層GL(例えば、ポリエステル接着剤、又はポリウレタン接着剤)で貼り合わせる。しかしながら、従来のアルミプラスチックフィルム包装材は、ラミネート加工における揮発性有機溶媒(volatile organic solvent,VOC)が容易に揮発する問題が存在する。又、従来のアルミプラスチックフィルム包装材は、長時間に渡り高温高湿の環境におくと、ポリオレフィンフィルムPLとアルミニウム箔AFとの接着強度が劣化して、接着強度が不足となる問題に繋がる。
【0003】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ポリオレフィン接着剤フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術の課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術の手段は、ポリプロピレンフィルムである支持層と、共押出で前記支持層の片面に形成された接着剤層と、を備える、ポリオレフィン接着剤フィルムを提供する。前記接着剤層は、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体である。前記第1のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成される。前記無水マレイン酸の、前記第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは3g/10min~5g/10minである。
【0006】
好ましくは、前記接着剤層において、前記第1のポリオレフィン共重合体の前記第1のメルトインデックスは、3g/10min~4g/10minである。
【0007】
好ましくは、前記支持層は、キャストポリプロピレンフィルムであると共に、前記支持層は、プロピレンブロック重合体と、ビニル系エラストマーと、第2のポリオレフィン共重合体と、を含む。
【0008】
好ましくは、前記支持層において、前記プロピレンブロック重合体は、エチレンプロピレン弾性ゴムで構成されたブロックを含み、前記エチレンプロピレン弾性ゴムの前記プロピレンブロック重合体での重量%は、18%以上であり、前記ビニル系エラストマーは、エチレン/ブテンエラストマーであると共に、前記ビニル系エラストマーでのエチレンの重量%は、30%以上である。
【0009】
好ましくは、前記支持層における前記第2のポリオレフィン共重合体は、無水マレイン酸で変性されると共に、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成され、前記無水マレイン酸の、前記第2の前記ポリオレフィン共重合体での第2のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第2のポリオレフィン共重合体の第2のメルトインデックスは、3g/10min~5g/10minである。
【0010】
好ましくは、前記支持層において、前記支持層の総重量を100wt%として、前記プロピレンブロック重合体の含有量は、50wt%~90wt%であり、前記ビニル系エラストマーの含有量は、5wt%~30wt%であり、前記無水マレイン酸で変性された前記第2のポリオレフィン共重合体の含有量は、5wt%~20wt%である。
【0011】
好ましくは、前記ポリオレフィン接着剤フィルムは、共押出で前記支持層の他面に形成されたヒートシール層を、更に備える。
【0012】
好ましくは、前記ヒートシール層は、プロピレンポリマーであり、前記プロピレンポリマーは、プロピレン共重合体及びプロピレンホモポリマーの中の少なくとも1つである。
【0013】
好ましくは、前記ポリオレフィン接着剤フィルムの前記ヒートシール層の、標準測定規格QB/T2358-1998で測定されたヒートシール強度は、80N/15mm以上である。
【0014】
好ましくは、前記接着剤層の第1の厚みは4μm~12μmであり、前記支持層の第2の厚みは15μm~35μmであり、前記ヒートシール層の第3の厚みは4μm~12μmである。
【0015】
好ましくは、前記ポリオレフィン接着剤フィルムは、接着剤層を介して金属アルミニウム箔とを貼り合わせると共に、前記ポリオレフィン接着剤フィルムと金属アルミニウム箔との剥離強度は、10N/15mm以上である。
【0016】
好ましくは、リチウム電池の物性測定/電解液に浸した後の剥離測定において、前記ポリオレフィン接着剤フィルムと前記金属アルミニウム箔とを積層されてなるアルミプラスチック積層フィルムの、85℃の電解液の環境で168時間に浸した後のもう1つの剥離強度は、8.5N/15mmを超える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルムは、「ポリプロピレンフィルムである支持層」、「共押出で前記支持層の片面に形成された接着剤層」及び「前記接着剤層は、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体である。前記第1のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成される。前記無水マレイン酸の、前記第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは3g/10min~5g/10minである。」といった技術特徴によって、共押出しで支持層に形成された接着剤層を、金属アルミニウム箔に直接に熱ラミネーションを行うことができるため、他のポリエステル接着剤又はポリウレタン接着剤で接着する必要がない。
【0018】
本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルムは自己接合性を有すると共に、従来の技術における、揮発性有機溶剤(volatile organic solvent,VOC)が揮発する問題を解決することができる。また、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、従来の技術の乾式複合ポリオレフィン膜/アルミニウム箔包装材の長い時間に高温多湿の環境による強度低減問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルムの模式図である。
【
図2】
図1のポリオレフィン接着剤フィルムをアルミニウム箔に貼り合わせる模式図(一)である。
【
図3】
図1のポリオレフィン接着剤フィルムをアルミニウム箔に貼り合わせる模式図(二)である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルムの模式図である。
【
図5】従来の技術のアルミプラスチックフィルム包装材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
[第一実施形態]
図1~
図3に示すように、本発明の第一実施形態は、ポリオレフィン接着剤フィルム100は、接着剤層1と、支持層2と、ヒートシール層3と、を備える。前記接着剤層1は、支持層2の片面(例えば、
図1の支持層2の上面)に形成される。前記ヒートシール層3は、支持層2の他面(例えば、
図1の支持層2の下面)で形成される。即ち、前記支持層2は、接着剤層1とヒートシール層3との間にある。
【0023】
本実施形態において、前記ポリオレフィン接着剤フィルム100の接着剤層1、支持層2及びヒートシール層3は、共押出しによって、積層構造として形成される。即ち、前記接着剤層1は、共押出しで前記支持層2に形成される。
【0024】
前記ポリオレフィン接着剤フィルム100は、
図2及び
図3に示すように、前記接着剤層1を介して金属アルミニウム箔AF(aluminum foil)とを組み合わせる。前記支持層2によって、ポリオレフィン接着剤フィルム100に耐衝撃性及び支持性を与える。なお、前記ヒートシール層3によって、ポリオレフィン接着剤フィルム100にヒートシール性を与える。それによって、前記ポリオレフィン接着剤フィルム100は、包装材に適用し、特に、リチウム電池用包装材料又は電子製品用包装材料に適用するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0025】
厚みについて、前記接着剤層1の第1の厚みT1は、4μm~12μmであり、6μm~10μmであることが好ましい。前記支持層2の第2の厚みT2は、15μm~35μmであり、20μm~28μmであることが好ましい。又、前記ヒートシール層3の第3の厚みT3は、4μm~12μmであり、6μm~10μmであることが好ましい。
【0026】
更に説明すると、前記接着剤層1は、無水マレイン酸(MAH)で変性された第1のポリオレフィン共重合体で形成される。
【0027】
前記第1のポリオレフィン共重合体は例えば、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成される。当業者にとって、C2オレフィン分子がエチレン(ethylene,PE)であり、C3オレフィン分子がプロピレン(propylene,PP)であり、C4オレフィン分子がブテン(butylene)、例えば1-ブテンであることは、周知のことである。
【0028】
例えば、前記第1のポリオレフィン共重合体を構成する原料は例えば、C2オレフィン分子及びC3オレフィン分子、C2オレフィン分子及びC4オレフィン分子、C3オレフィン分子及びC4オレフィン分子、又はC2~C4オレフィン分子であってもよい。好ましくは、前記第1のポリオレフィン共重合体を構成する原料は、C3オレフィン分子及びC4オレフィン分子であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。又、二種のオレフィン分子(例えば、C3及びC4、若しくはC2及びC4)の重量比は例えば、30:70~70:30(好ましくは、40:60~60:40)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0029】
特筆すべきことは、本実施形態に係る第1のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成されるため、前記接着剤層1は、より高い透明性及び接着力を両立する。
【0030】
更に説明すると、本実施形態において、前記第1のポリオレフィン共重合体は、無水マレイン酸(maleic anhydride,MAH)で変性される。前記無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体は、カルボキシル基(-COOH)を有するため、第1のポリオレフィン共重合体の極性が大幅に向上される。それによって、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体は、変性されていないポリオレフィン共重合体に比べて、より優れた水溶性及び接着力を有し、接着剤層としてより適切に用いられる。
【0031】
前記無水マレイン酸は例えば、第1のポリオレフィン共重合体にグラフトしてもよい。より具体的に説明すると、前記無水マレイン酸は例えば、ポリオレフィン共重合体に溶融グラフトしてもよい。前記溶融グラフトは例えば、単軸押出機、二軸押出機、又はレオメーターで行ってもよい。好ましくは、前記溶融グラフトは二軸押出機で行う。
【0032】
前記接着剤層1において、前記第1のポリオレフィン共重合体の含有量は、90wt%以上であり、95wt%以上であることが好ましい。又、前記無水マレイン酸の、第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率(graft ratio)は0.5%~5%であることが好ましい。
【0033】
特筆すべきことは、本実施形態において、前記無水マレイン酸の第1のグラフト率は、0.5%~5%に制御されると、優れた接着力を与えられる。前記無水マレイン酸の第1のグラフト率は0.5%未満であると、接着剤層1の接着力は悪化する。一方、前記無水マレイン酸の第1のグラフト率は5%を超えると、接着剤層1がアルミニウム箔とを貼り合わせた後に硬く過ぎて、包装材の耐屈曲性に影響する。
【0034】
説明すべきことは、本明細書における無水マレイン酸のグラフト率は例えば、フーリエ赤外分光計(FTIR)で分析を行うことができる。フーリエ赤外分光計は、無水マレイン酸がポリオレフィン共重合体の分子鎖にグラフトするかどうか、という定性分析を行うことができると共に、無水マレイン酸のグラフト率を定量することができる。赤外吸収スペクトルによれば、無水マレイン酸グラフトは、1725cm-1、1790cm-1で顕著な吸収ピークを有し、前記吸収ピークは、無水マレイン酸におけるカルボキシル基の特徴的なピークである。又、無水マレイン酸のグラフト率の定量分析は例えば、ランベルト・ベールの法則に基づいて分析を行うことができる。
【0035】
更に説明すると、本実施形態において、変性された前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックス(melt flow index,MI)は、3g/10min~5g/10minであり、3g/10min~4g/10minであることが好ましい。
【0036】
特筆すべきことは、本実施形態において、前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは、3g/10min~5g/10minに制御されると、前記接着剤層1により優れた接着力及び透明度を与えると共に、より優れた外観(例えば、スムーズな表面、目立つスジが観察できない)及び優れた触り心地を与えられる。前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは前記範囲を超えると、前記接着剤層1の接着力が不良、包装材の表面にスジが発生する問題を起こすことがある。
【0037】
説明すべきことは、本明細書におけるメルトインデックスは、ポリオレフィン共重合体を10分間に押出された重量である。その単位は、g/10minである。メルトインデックスは、溶融状態の樹脂における流動性を示す、メルトインデックスが大きいほど、分子量が小さく、流動性が優れている。逆に、メルトインデックスが小さいほど、分子量が大きく、流動性が劣る。本実施形態において、前記メルトインデックスは、ASTM D1238に基づいて190℃及び2.16kgの荷重で測定を行う。
【0038】
特筆すべきことは、前記第1のポリオレフィン共重合体の製造は例えば、過酸化物が存在する条件(0.3~0.6%)で、二軸押出機で加工造粒を行うと共に、無水マレイン酸グラフトが溶融グラフトされる。又、押し出しの過程において、前記第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックスも制御されることが可能である。
【0039】
更に説明すると、造粒によって形成された第1のポリオレフィン共重合体は例えば、共押出しによって、前記支持層2の一側表面に形成された前記接着剤層1を形成する。
【0040】
上記の技術方案によって、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、
図2及び
図3に示すように、自分の接着剤層1を介して、金属アルミニウム箔AFと熱ラミネーションして、他のポリエステル接着剤又はポリウレタン接着剤で接着する必要がない。
【0041】
本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は自己接合性を有するだけでなく、従来の技術における、揮発性有機溶剤(volatile organic solvent,VOC)が揮発する問題を解決することができる。また、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、従来の技術の乾式複合ポリオレフィン膜/アルミニウム箔包装材の長い時間に高温多湿の環境による強度の低減の問題を解決することができる。
【0042】
続いて
図1に示すように、前記支持層2は、ポリオレフィン接着剤フィルム100に耐衝撃性及び包装材に必要する支持性を与えるためのキャストポリプロピレンフィルム(cast polypropylene film、CPP film、未延伸のポリプロピレンフィルムとも称す)である。
【0043】
より具体的に説明すると、前記支持層2は、プロピレンブロック重合体(propylene block polymer)と、ビニル系エラストマー(vinyl elastomer)と、無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体(MAH modified polyolefin copolymer)と、滑剤と、を含む。
【0044】
前記支持層2の総重量を100wt%として、前記プロピレンブロック重合体の含有量は、50wt%~90wt%であり、60wt%~80wt%であることが好ましい。また、前記支持層2の総重量を100wt%として、前記ビニル系エラストマーの含有量は、5wt%~30wt%であり、15wt%~25wt%であることが好ましい。前記支持層2の総重量を100wt%として、無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体の含有量は、5wt%~20wt%であり、5wt%~15wt%であることが好ましい。前記支持層2の総重量を100wt%として、前記滑剤の含有量は、100ppm~5,000ppmであり、1000ppm~4,000ppmであることが好ましい。
【0045】
更に説明すると、前記プロピレンブロック重合体は、エチレンプロピレン弾性ゴム(ethylene-propylene rubber,EPR)で構成されたブロックを含むと共に、前記エチレンプロピレン弾性ゴムの前記プロピレンブロック重合体での重量%は、18%以上であり、18%~30%であることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
特筆すべきことは、前記エチレンプロピレン弾性ゴムの前記プロピレンブロック重合体での重量比は、前記重量%(例えば、18%~30%)を満たすことによって、支持層2に良好な打ち抜き性を与える。
【0047】
更に説明すると、前記ビニル系エラストマーは例えば、エチレン/ブテンエラストマーであり、エチレン/ブテンエラストマーは、エチレン、ブテン及び微量のカルボキシル基含有架橋モノマー(bridging terminal monomers having carboxylic acid groups)で構成された共重合体である。前記エチレンのビニル系エラストマーでの重量%は、30%以上であり、30%~60%であることが好ましい。それによって、前記ビニル系エラストマーは、支持層2により優れた打ち抜き性を与えると共に、打ち抜き時に発生する白化現象を避けることができる。
【0048】
前記支持層における、前記無水マレイン酸で変性された前記第2のポリオレフィン共重合体は例えば、接着剤層1の材料的特徴に類似する。前記第2のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成される。更に説明すると、前記無水マレイン酸の、第2の前記ポリオレフィン共重合体での第2のグラフト率は0.5%~5%である。無水マレイン酸で変性された前記第2のポリオレフィン共重合体の第2のメルトインデックスは、3g/10min~5g/10minである。
【0049】
本実施形態において、前記支持層2は、少量の無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体(例えば、5~20wt%)を含むため、前記支持層2は、接着剤層1と高い親和力を有するので、前記支持層2と接着剤層1との間に良好な層間接着強度が与えられる。
【0050】
前記無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体の支持層2での含有量が上記の含有量範囲より低いと、層間接着強度が悪化する。一方、前記無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体の支持層2での含有量が上記の含有量範囲より高いと、包装材の打ち抜きが悪化する。
【0051】
更に説明すると、前記滑剤は例えば、前記支持層2の打ち抜き性及び加工性を改善することができる、二酸化ケイ素(SiO2)又はタルクであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0052】
更に説明すると、前記支持層2の可視光線透過率は80%~99%であると共に、ヘイズ値は5%~30%であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。説明すべきことは、前記可視光線透過率及びヘイズ値は、ASTM D1003に基づいて測定を行う。
【0053】
続いて
図1に示すように、前記ヒートシール層3は、プロピレンポリマーで形成される。
【0054】
例えば、前記プロピレンポリマーは、プロピレン共重合体(co-PP)及びプロピレンホモポリマー(homo-PP)の中の少なくとも1つであってもよい。前記プロピレン共重合体は例えば、プロピレン及びエチレンを共重合反応させて形成されてもよい。本実施形態において、エチレンのプロピレン共重合体での重量比、2%以下であることが好ましい。それによって、ヒートシール層3は、ポリオレフィン接着剤フィルム100により優れたヒートシール強度を与えることができる。
【0055】
上述した技術方案により、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、
図2及び
図3に示すように、共押し出しによって、支持層2に形成された接着剤層1を、金属アルミニウム箔AFと直接に熱ラミネーションして、他のポリエステル接着剤又はポリウレタン接着剤で接着する必要がない。本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は自己接合性を有するだけでなく、従来の技術における、揮発性有機溶剤(volatile organic solvent,VOC)が揮発する問題を解決することができる。また、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、従来の技術の乾式複合ポリオレフィン膜/アルミニウム箔包装材の長時間の高温多湿の環境による強度低減で接着強度が不足となる問題を解決することができる。尚、本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルム100のヒートシール層3は優れたヒートシール強度を有する。本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100の、QB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は、80N/15mm以上に至ることが可能である。測定条件は例えば、温度180℃、圧力1kgf/cm2で3秒にヒートシールした後に、サンプルを15mm×15mmとなるようにカットされて測定を行った。前記ポリオレフィン接着剤フィルムの、85℃の電解液の環境で168時間に浸した後でも、8.5N/15mmを超える剥離強度を有する。本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100は、包装材に適用し、特に、リチウム電池用包装材料又は電子製品用包装材料に適用する。
【0056】
本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルムの上記の技術効果を証明するために、以下にて実施例1~4及び比較例1~3で説明する。その中、実施例1~4は、本発明の技術効果を証明するグループであり、比較例1~3は、試験効果が劣るグループであった。ただし、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
<実施例1>
共押出しによって、接着剤層と、支持層と、ヒートシール層とを、この順に積層された三層の積層構造を有するポリオレフィン接着剤フィルムを形成した。接着剤層は、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体で形成された。第1のポリオレフィン共重合体は、プロピレン(C3)とブテン(C4)とを共重合して形成された。第1のポリオレフィン共重合体の含有量は99.5wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は0.5%であり、第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は3.2g/10minであった。支持層の総重量を100wt%として、前記支持層は、70wt%のプロピレンブロック重合体と、20wt%のビニル系エラストマー(エチレン/ブテンエラストマー)と、10wt%の無水マレイン酸で変性された第2のポリオレフィン共重合体と、微量のSiO2とを、含んだ。ヒートシール層は、プロピレンとエチレンとを共重合して形成されたプロピレン共重合体(co-PP)で構成されると共に、エチレンの重量比は2%以下であった。又、接着剤層の厚みは8μmであり、支持基層の厚みは24μmであり、ヒートシール層の厚みは8μmであった。<実施例1>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は6%であると共に、接着剤フィルムの外観に顕著なスジを有しなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は81N/15mmであった。ポリオレフィン接着剤フィルムは、その接着剤層を介して、アルミニウム箔とを貼り合わせると共に、ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は10.2N/15mmであった。尚、前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは依然として8.5N/15mmの剥離強度(層間接着強度)を有し、前記ポリオレフィン接着剤フィルムは高温及び高湿の環境に対する耐性は相当に優れていることを示した。又、前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は12回であり、打ち抜き高さは6mmであり、リチウム電池用包装材として適用した。
【0058】
<実施例2>
<実施例2>の製造条件は、前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<実施例2>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体はプロピレン(C3)及びブテン(C4)で共重合されて形成されると共に、第1のポリオレフィン共重合体の含有量は97wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は3%であった。第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は3.1g/10minであった。<実施例2>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は7%であり、接着剤フィルムの外観に顕著なスジを有しなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は82N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は14.2N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは依然として13.2N/15mmの剥離強度を有した。又、前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は13回であり、打ち抜き高さは6.5mmであり、リチウム電池用包装材として適用した。
【0059】
<実施例3>
<実施例3>の製造条件は、前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<実施例3>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体はプロピレン(C3)及びブテン(C4)で共重合されて形成されると共に、第1のポリオレフィン共重合体の含有量は95wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は5%であった。第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は3.4g/10minであった。<実施例3>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は6.5%であり、接着剤フィルムの外観に顕著なスジを有しなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は81N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は13.2N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは依然として12.0N/15mmの剥離強度を有した。又、前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は11回であり、且つ打ち抜き高さは5mmであり、リチウム電池用包装材として適していた。
【0060】
<実施例4>
前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<実施例4>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体はエチレン(C2)及びブテン(C4)で共重合されて形成されると共に、含有量は97wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は3%であった。第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は3.2g/10minであった。<実施例4>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は15%であり、接着剤フィルムの外観を観察できなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は83N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は12.8N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは依然として11.2N/15mmの剥離強度を有した。又、前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は12回であり、打ち抜き高さは6mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値が高いものの、依然としてリチウム電池用包装材として適していた。
【0061】
<比較例1>
前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<比較例1>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体はプロピレン(C3)及びブテン(C4)で共重合されて形成されると共に、含有量は94wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は6%であった。第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は3.5g/10minであった。<比較例1>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は7.5%であり、接着剤フィルムの外観に顕著なスジを有しなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は80.5N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は13.5N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは依然として13N/15mmの剥離強度を有した。又、前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は7回のみであり、且つ打ち抜き高さは僅か4.5mmであった。由前記実験の結果によれば、<比較例1>的ポリオレフィン接着剤フィルムの耐曲げ回数及び打ち抜き高さはいずれも実施例1~4より低く、リチウム電池用包装材として適用しなかった。物性が劣る原因として、比較例1の無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率は高すぎて(6%)、理想値の5%を超えたため、ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせた硬度が高すぎて、曲げを耐えないと共に打ち抜きを耐えなかったことが可能性がある。
【0062】
<比較例2>
前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<比較例2>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体は完全に、プロピレン(C3)及びブテン(C4)で構成され、第1のポリオレフィン共重合体に無水マレイン酸のグラフトを有しないと共に、前記第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は5g/10minであった。<比較例2>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は6.2%であり、外観に顕著なスジを有しなかった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998所に基づいて測定されたヒートシール強度は82N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との剥離強度は5.2N/15mmのみであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境を168時間を浸した後に測定を行って、可以發現前記アルミプラスチック積層フィルムは3.2N/15mmの剥離強度のみを有した。前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は10回であり、打ち抜き高さは6mmであった。<比較例2>のポリオレフィン接着剤フィルムは、無水マレイン酸で変性されないため、層間剥離強度が劣った。
【0063】
<比較例3>
前記<実施例1>の製造条件とほぼ同様であった。それらの相違点については、<比較例3>の接着剤層において、第1のポリオレフィン共重合体はプロピレン(C3)及びブテン(C4)で形成され、含有量は97wt%であり、無水マレイン酸(MA)の第1のポリオレフィン共重合体でのグラフト率は3%であると共に、前記第1のポリオレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)は7g/10minであった。<比較例3>のポリオレフィン接着剤フィルムのヘイズ値は6.1%であり、接着剤フィルムの外観に顕著なスジを有した。前記ポリオレフィン接着剤フィルムのQB/T2358-1998に基づいて測定されたヒートシール強度は83N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度は11.2N/15mmであった。前記ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔とを貼り合わせて形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、85℃の電解液環境に168時間浸した後に測定を行って、前記アルミプラスチック積層フィルムは9.5N/15mmの剥離強度を有した。前記アルミプラスチック積層フィルムの耐曲げ回数は11回であり、且つ打ち抜き高さは6mmであった。その可能な原因として、<比較例3>のポリオレフィン接着剤フィルムにおいてメルトインデックスが高すぎて(MIが5g/10minを超える)外観に顕著なスジを有して、リチウム電池用包装材として適さなかった。
【0064】
説明すべきことは、前記「ヘイズ値」及び「ヒートシール強度」の測定方法は、前段の発明を実施するための形態で説明したので、ここで重複に説明しない。
【0065】
更に説明すると、本明細書における「剥離強度」は、お互いに接着された材料(例えば、ポリオレフィン接着剤フィルムとアルミニウム箔との剥離強度)は、接触面から単位幅を剥離する際に必要された最大の力である。剥離強度を測定する測定装置として、万能試験機を用いられる。試験機の測定値の誤差は、実際値の±1%以内にある。測定の環境について、サンプルは、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%で4時間以上放置して測定を行った。サンプルの製造について、測定しようとする対象を、幅方向の両端を50mmを除去して、均一となるように、幅15.0mm±0.1mm、長さ200mmの5条のサンプルとしてカットした。測定方法は、サンプルの剥離された箇所の両端をそれぞれ、試験機の上下治具に挟持されることによって、サンプルの剥離された箇所の縦軸は、上下治具の中心連線と重合するように、適切にフィットさせた。測定速度は、300mm/min±30mm/minであり、サンプルの剥離過程の剥離力曲線を記録した。サンプルの、縦方向及び横方向の剥離強度の平均値を測定して測定結果(有効数字を2桁取る)とし、その単位をN/15mmにした。
【0066】
更に説明すると、本明細書に言及した「耐曲げ回数」とは、ポリオレフィン接着剤フィルムをアルミニウム箔に貼り合わせた後に形成されたアルミプラスチック積層フィルムを、四つ折りに耐えられる回数(ヒビが発生しない回数)である。又、本明細書に言及した「打ち抜き高さ」とは、前記アルミプラスチック積層フィルムは、リチウム電池の5cm×6cmの金型を用いて、冷圧で填充して記録された高さであり、その単位は、mmとした。
【0067】
包装材の外観の評価方法は、試験人員が裸眼で前記包装材の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面を観察した(観察距離は、約30cmであった)。顕著なスジを観察しなかった場合、「スジなし」とした。顕著なスジを観察した場合、「スジが顕著」とした。包装材のヘイズ値が高すぎた場合、「観察できない」とした。
【0068】
[第二実施形態]
図4に示すように、本発明の第二実施形態は、接着剤層1と、支持層2とを、備えるポリオレフィン接着剤フィルム100’を提供する。その中、前記接着剤層1は、共押し出しによって、前記支持層2に形成される。上記の第一実施形態と異なり、本発明の第二実施形態のポリオレフィン接着剤フィルム100’は例えば、ヒートシール層3を含まなくてもよい。
【0069】
第二実施形態において、前記接着剤層1及び支持層2の材料の特徴は、第一実施形態に類似するため、ここで重複に説明しない。
【0070】
上述した構成により、本発明の第二実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルム100’は、共押し出しによって、支持層2に形成された接着剤層1を、金属アルミニウム箔AFと直接に熱ラミネーションして、他のポリエステル接着剤又はポリウレタン接着剤で接着する必要がない。
【0071】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルムは、「ポリプロピレンフィルムである支持層」、「共押出で前記支持層の片面に形成された接着剤層」及び「前記接着剤層は、無水マレイン酸で変性された第1のポリオレフィン共重合体である。前記第1のポリオレフィン共重合体は、C2~C4オレフィン分子の中の少なくとも2種の共重合反応を行うことで形成される。前記無水マレイン酸の、前記第1のポリオレフィン共重合体での第1のグラフト率は0.5%~5%であると共に、前記第1のポリオレフィン共重合体の第1のメルトインデックスは3g/10min~5g/10minである。」といった技術特徴によって、共押出しで支持層に形成された接着剤層を、金属アルミニウム箔に直接に熱ラミネーションを行うことができるため、他のポリエステル接着剤又はポリウレタン接着剤で接着する必要がない。
【0072】
本発明に係るポリオレフィン接着剤フィルムは自己接合性を有すると共に、従来の技術における、揮発性有機溶剤(volatile organic solvent,VOC)が揮発する問題を解決することができる。また、本発明の実施形態に係るポリオレフィン接着剤フィルムは、従来の技術の乾式複合ポリオレフィン膜/アルミニウム箔包装材の長い時間に高温多湿の環境による強度低減問題を解決することができる。
【0073】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
<本発明の実施例>
100,100’…ポリオレフィン接着剤フィルム
1…接着剤層
2…支持層
3…ヒートシール層
T1…第1の厚み
T2…第2の厚み
T3…第3の厚み
AF…金属アルミウム箔
<従来の技術>
AF…金属アルミウム箔
GL…接着剤層
PL…高分子膜