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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】外装構造
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20250110BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20250110BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/40
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023056294
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024143556
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390018463
【氏名又は名称】アイジー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 貴志夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽平
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06014110(US,A)
【文献】特開平11-298230(JP,A)
【文献】特開2021-141547(JP,A)
【文献】国際公開第2021/181848(WO,A1)
【文献】特開2008-156827(JP,A)
【文献】特開平08-321719(JP,A)
【文献】特開平07-193411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 1/40
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板上に設けられた基板と、
前記基板上に設けられたアンテナ素子と、
前記アンテナ素子を覆う積層体と、
を備え、
前記積層体は、前記アンテナ素子を覆う第1誘電体層と、前記第1誘電体層上に設けられた第2誘電体層と、を含み、
前記第2誘電体層の誘電率は、前記第1誘電体層の誘電率よりも低い、外装構造。
【請求項2】
前記積層体は、第2誘電体層上に設けられた第3誘電体層を更に含み、
前記第3誘電体層の誘電率は、前記第2誘電体層の誘電率よりも低い、請求項1に記載の外装構造。
【請求項3】
前記基板を前記金属板に接着する接着層を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の外装構造。
【請求項4】
前記積層体を覆う防水膜を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の外装構造。
【請求項5】
前記金属板を表面材として含む屋根材を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の外装構造。
【請求項6】
前記金属板を表面材として含む外壁材を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根又は外壁などの外装材に設けられた受信用アンテナ装置が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、屋根材又は外壁材に受信用のアンテナ素子を組み込むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-321719号公報
【文献】特開平7-193411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁波はアンテナ装置の表面に傾斜して入射することがある。このような場合、電磁波が受信用のアンテナ素子に到達できず、受信効率が低下するおそれがある。特に、近年では、高速かつ大容量の情報通信を行うために、電磁波の高周波数化が進んでいる。電磁波の周波数が高くなると電磁波の直進性が高くなるので、受信効率が低下する可能性が高まる。
【0005】
本開示は、受信効率を向上可能な外装構造を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る外装構造は、金属板と、金属板上に設けられた基板と、基板上に設けられたアンテナ素子と、アンテナ素子を覆う積層体と、を備える。積層体は、アンテナ素子を覆う第1誘電体層と、第1誘電体層上に設けられた第2誘電体層と、を含む。第2誘電体層の誘電率は、第1誘電体層の誘電率よりも低い。
【0007】
この外装構造においては、アンテナ素子が第1誘電体層に覆われており、第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有する第2誘電体層が第1誘電体層上に設けられている。誘電率が高いほど屈折率が高くなるので、第2誘電体層の屈折率は、第1誘電体層の屈折率よりも低い。したがって、電磁波が第2誘電体層と第1誘電体層との境界から出射する際の出射角は、電磁波が当該境界に入射する際の入射角よりも小さくなるので、電磁波がアンテナ素子に向かって屈折する。その結果、電磁波がアンテナ素子に到達する可能性を高めることができるので、受信効率を向上させることが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態において、積層体は、第2誘電体層上に設けられた第3誘電体層を更に含んでもよい。第3誘電体層の誘電率は、第2誘電体層の誘電率よりも低くてもよい。この場合、第3誘電体層の屈折率は、第2誘電体層の屈折率よりも低い。したがって、電磁波が第3誘電体層と第2誘電体層との境界から出射する際の出射角は、電磁波が当該境界に入射する際の入射角よりも小さくなるので、電磁波がアンテナ素子に向かって屈折する。その結果、電磁波がアンテナ素子に到達する可能性を更に高めることができるので、受信効率を一層向上させることが可能となる。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記外装構造は、基板を金属板に接着する接着層を更に備えてもよい。この場合、金属板に孔を開けることなく、アンテナ素子が設けられた基板を金属板に固定することができる。したがって、雨水などが屋内に浸入する可能性を低減することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記外装構造は、積層体を覆う防水膜を更に備えてもよい。この場合、アンテナ素子が錆びる可能性を低減することができるので、アンテナ素子を長寿命化することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記外装構造は、金属板を表面材として含む屋根材を更に備えてもよい。この場合、建物の屋根に上記外装構造を用いることにより、建物の屋根にアンテナ素子を設けることができる。したがって、通信ネットワークを効率的に構築することが可能となる。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記外装構造は、金属板を表面材として含む外壁材を更に備えてもよい。この場合、建物の外壁に上記外装構造を用いることにより、建物の外壁にアンテナ素子を設けることができる。したがって、通信ネットワークを効率的に構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、受信効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る外装構造を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1の一部を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、図3に示される受信用のアンテナ装置の動作原理を説明するための図である。
図6図6は、図3に示される受信用のアンテナ装置の反射特性を示す図である。
図7図7は、比較例に係る受信用のアンテナ装置の反射特性を示す図である。
図8図8は、図3に示される送信用のアンテナ装置の動作原理を説明するための図である。
図9図9は、図3に示される送信用のアンテナ装置から放射される電磁波を説明するための図である。
図10図10は、比較例に係る送信用のアンテナ装置から放射される電磁波を説明するための図である。
図11図11は、変形例に係る外装構造の一部を拡大して示す斜視図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。
図13図13は、別の実施形態に係る外装構造を示す断面図である。
図14図14は、更に別の実施形態に係る外装構造を示す断面図である。
図15図15は、外装構造の適用例を示す図である。
図16図16は、外装構造の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0016】
図1及び図2を参照しながら、一実施形態に係る外装構造を説明する。図1は、一実施形態に係る外装構造を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図1及び図2に示される外装構造1は、建物の外装に使用される構造体である。外装構造1は、外装材10と、アンテナ装置20と、アンテナ装置30と、接着層A1(図3参照)と、接着層A2(図3参照)と、を含む。
【0017】
外装材10は、建物の外装に使用される仕上げ材である。本実施形態では、外装材10は、屋根材である。外装材10は、一方向(X軸方向)に延びる長尺の部材であり、表面材11(金属板)と、裏面材12と、芯材13と、を含む。
【0018】
表面材11は、金属製の板材である。表面材11は、例えば、ロール成形、プレス成形、又は押出成形などによって金属板を加工することによって形成される。金属板の例としては、カラー鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、ステンレス板、サンドイッチ鋼板、及びクラッド鋼板が挙げられる。
【0019】
表面材11は、化粧面11aと、連結部11bと、連結部11cと、折り返し片11dと、複数の凸部11eと、突出片11fと、を含む。化粧面11aは、外装構造1を用いて建物が建設された場合に、建物の外側を向く面である。
【0020】
連結部11bは、外装材10の水上に位置する別の外装材10と連結するための部分である。連結部11cは、外装材10の水下に位置する更に別の外装材10と連結するための部分である。連結部11bは、表面材11の水上の端部に設けられ、表面材11の長手方向の全長にわたって延びている。連結部11cは、表面材11の水下の端部に設けられ、表面材11の長手方向の全長にわたって延びている。連結部11b及び連結部11cは、互いに係合可能な形状を有している。連結部11bは、例えば、外装材10の長手方向(X軸方向)と交差する断面において逆U字状の形状を有している。連結部11cは、例えば、X軸方向と交差する断面においてU字状の形状を有している。
【0021】
折り返し片11dは、表面材11の右端部に設けられ、化粧面11aの右端から内側(左側)に折り返された部分である。各凸部11eは、化粧面11a上に設けられ、化粧面11aから突出している部分である。複数の凸部11eは、折り返し片11dの左右方向における先端に沿って、外装材10の短手方向(Y軸方向)に一定の間隔で配列されている。各凸部11eは、水上から水下に向かうにつれて化粧面11aの中央に向かうように傾斜している。
【0022】
突出片11fは、表面材11の左端部に設けられ、化粧面11aから左側に突出している部分である。突出片11fは、外装材10の左側に位置する更に別の外装材10の凸部11eが突出片11fの裏面に接触するように、当該更に別の外装材10の折り返し片11d上に重ね合わせられる。
【0023】
裏面材12は、シート状の部材である。裏面材12は、クラフト紙、アルミ蒸着紙、アスファルトフェルト、金属薄(アルミニウム、鉄、鉛、又は銅)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、及びガラス繊維不織布からなるグループから選択された1種又は2種以上のシートを積層することによって得られる。裏面材12を構成するシートには、防水処理及び難燃処理が施されてもよい。
【0024】
芯材13は、表面材11と裏面材12との間に設けられ、表面材11と裏面材12とによって画定される空間を隙間なく埋める部材である。芯材13は、断熱材、補強材、嵩上げ材、防音材、吸音材、緩衝材、防火材、及び結露防止材として機能し得る。芯材13としては、例えば、合成樹脂発泡体が使用される。合成樹脂発泡体の例としては、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、及びユリアフォームが挙げられる。芯材13は、例えば、レゾール型フェノールの原液、硬化剤、及び発泡剤を混合することによって得られた混合液を、表面材11又は裏面材12の裏面に吐出し、加熱して十分に反応させ、硬化させることによって形成される。
【0025】
外装材10の耐火性及び防火性を向上させるために、芯材13には各種難燃材として軽量骨材及び繊維状物が混在されてもよい。軽量骨材の例としては、パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、及び水酸化アルミニウムが挙げられる。繊維状物の例としては、グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、及びグラファイトが挙げられる。
【0026】
アンテナ装置20は、受信用の平面アンテナ装置である。アンテナ装置30は、送信用の平面アンテナ装置である。アンテナ装置20及びアンテナ装置30は、表面材11の化粧面11a上に設けられている。
【0027】
接着層A1は、アンテナ装置20を表面材11に接着する層である。接着層A1は、例えば、樹脂接着材によって構成されている。接着層A1を構成する樹脂接着材の例としては、エポキシ系の接着樹脂が挙げられる。接着層A1によって、アンテナ装置20は、表面材11に固定されている。接着層A1のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、1μm~500μm程度である。
【0028】
接着層A2は、アンテナ装置30を表面材11に接着する層である。接着層A2は、例えば、樹脂接着材によって構成されている。接着層A2を構成する樹脂接着材の例としては、エポキシ系の接着樹脂が挙げられる。接着層A2によって、アンテナ装置30は、表面材11に固定されている。接着層A2のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、1μm~500μm程度である。
【0029】
次に、図3及び図4を参照しながら、アンテナ装置20及びアンテナ装置30の構造を説明する。図3は、図1の一部を拡大して示す斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図3及び図4に示されるように、アンテナ装置20は、基板21と、アンテナ素子22と、積層体23と、防水膜24と、コネクタ25と、を含む。基板21、アンテナ素子22、積層体23、及び防水膜24は、化粧面11aと交差(例えば、直交)する方向(Z軸方向)において、その順に化粧面11aに積層されている。なお、図3においては、説明の便宜上、防水膜24の図示が省略されている。
【0030】
基板21は、アンテナ素子22が載置される層である。基板21は、表面材11上に設けられている。具体的には、基板21は、表面材11の化粧面11aに設けられている。基板21は、矩形状の板材である。基板21のX軸方向における長さ及び基板21のY軸方向における長さは、受信対象となる電磁波に応じて適宜設定される。受信対象となる電磁波が5G(Generation)帯の電波又は6G帯の電波である場合には、基板21のX軸方向における長さ及び基板21のY軸方向における長さは、例えば、6mm程度である。基板21のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)がある程度厚くなるまでは、基板21の厚さが厚いほど、相互干渉を防ぐ効果が向上する。この観点から、基板21の厚さは、例えば、100μm~500μm程度である。
【0031】
基板21は、誘電体によって構成されている。伝送効率を維持し、耐候性を高めるために、基板21を構成する誘電体として、テフロン(登録商標)、ポリアミド、ポリイミド、及びポリプロピレンといった高分子系材料が用いられる。基板21の誘電正接は、例えば、0.02以下である。基板21は、Z軸方向と交差する表面21a及び裏面21bを有する。裏面21bは、接着層A1を介して化粧面11aと向かい合う面である。表面21aは、裏面21bの反対側の面である。裏面21bの全面にわたって接着層A1が設けられている。つまり、接着層A1は、表面材11と基板21との間に設けられている。
【0032】
アンテナ素子22は、電磁波を受信するための素子である。本実施形態では、アンテナ素子22は、メアンダラインアンテナ素子である。アンテナ素子22は、基板21上に設けられている。具体的には、アンテナ素子22は、基板21の表面21aに設けられている。アンテナ素子22は、導電性を有する金属によって構成されている。アンテナ素子22を構成する金属の例としては、銅(Cu)が挙げられる。アンテナ素子22は、アンテナ素子22の種類及び受信対象となる電磁波の波長に応じた形状を有している。受信対象の電磁波の例としては、5G帯の電波及びSub6帯の電波が挙げられる。
【0033】
積層体23は、電磁波をアンテナ素子22に引き込むための多層構造体である。積層体23は、アンテナ素子22の全体を覆っている。積層体23は、誘電体層26(第1誘電体層)と、誘電体層27(第2誘電体層)と、誘電体層28(第3誘電体層)と、を含む。誘電体層26、誘電体層27、及び誘電体層28は、Z軸方向において、その順に表面21aに積層されている。
【0034】
誘電体層26は、積層体23のうちの最も下の層である。誘電体層26は、アンテナ素子22を覆っている。誘電体層26は、矩形状の板材である。誘電体層26は、平面視で(Z軸方向から見て)基板21と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において基板21に重ね合わせられている。つまり、誘電体層26は、表面21aの全体を覆っている。誘電体層26のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層26の誘電率ε11は、例えば、5.0~6.0程度である。誘電体層26は、例えば、ポリエステルに高誘電体であるガラス繊維又はセラミック粉末を混錬することによって得られたシートによって構成される。
【0035】
誘電体層27は、積層体23のうちの中間の層である。誘電体層27は、誘電体層26上に設けられている。誘電体層27は、矩形状の板材である。誘電体層27は、平面視で(Z軸方向から見て)基板21及び誘電体層26と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において誘電体層26に重ね合わせられている。つまり、誘電体層27は、誘電体層26の上面の全体を覆っている。誘電体層27のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層27の誘電率ε12は、誘電率ε11よりも低く、例えば、2.8~3.2程度である。誘電体層27は、例えば、ポリエステル単体で構成されたシートによって構成される。
【0036】
誘電体層28は、積層体23のうちの最も上の層である。誘電体層28は、誘電体層27上に設けられている。誘電体層28は、矩形状の板材である。誘電体層28は、平面視で(Z軸方向から見て)基板21、誘電体層26及び誘電体層27と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において誘電体層27に重ね合わせられている。つまり、誘電体層28は、誘電体層27の上面の全体を覆っている。誘電体層28のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層28の誘電率ε13は、誘電率ε12よりも低く、例えば、2.0~2.5程度である。誘電体層28を構成する誘電体の例として、テフロン(登録商標)が挙げられる。
【0037】
防水膜24は、水の浸入を防止するための膜である。防水膜24は、基板21、アンテナ素子22、及び積層体23を覆っている。防水膜24は、防水性及び絶縁性を有する樹脂によって構成されている。防水膜24を構成する樹脂の例としては、ウレタン、FRP(強化繊維プラスチック)、及びテフロン(登録商標)が挙げられる。
【0038】
コネクタ25は、アンテナ素子22を不図示の電源に接続するための部材である。コネクタ25は、例えば、SMA(Sub Miniature Type A)コネクタなどの同軸コネクタである。本実施形態では、コネクタ25は、基板21の周縁よりも外側に設けられ、アンテナ素子22を構成する配線パターンの端部に接続されている。
【0039】
図3及び図4に示されるように、アンテナ装置30は、基板31と、アンテナ素子32と、積層体33と、防水膜34と、コネクタ35と、を含む。基板31、アンテナ素子32、積層体33、及び防水膜34は、化粧面11aと交差(例えば、直交)する方向(Z軸方向)において、その順に化粧面11aに積層されている。なお、図3においては、説明の便宜上、防水膜34の図示が省略されている。
【0040】
基板31は、アンテナ素子32が載置される層である。基板31は、表面材11上に設けられている。具体的には、基板31は、表面材11の化粧面11aに設けられている。基板31は、矩形状の板材である。基板31のX軸方向における長さ及び基板31のY軸方向における長さは、送信対象となる電磁波に応じて適宜設定される。送信対象となる電磁波が5G帯の電波又は6G帯の電波である場合には、基板31のX軸方向における長さ及び基板31のY軸方向における長さは、例えば、6mm程度である。基板31のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)がある程度厚くなるまでは、基板31の厚さが厚いほど、相互干渉を防ぐ効果が向上する。この観点から、基板31の厚さは、例えば、100μmから500μm程度である。
【0041】
基板31は、誘電体によって構成されている。伝送効率を維持し、耐候性を高めるために、基板31を構成する誘電体として、テフロン(登録商標)、ポリアミド、ポリイミド、及びポリプロピレンといった高分子系材料が用いられる。基板31の誘電正接は、例えば、0.02以下である。基板31は、Z軸方向と交差する表面31a及び裏面31bを有する。裏面31bは、接着層A2を介して化粧面11aと向かい合う面である。表面31aは、裏面31bの反対側の面である。裏面31bの全面にわたって接着層A2が設けられている。つまり、接着層A2は、表面材11と基板31との間に設けられている。
【0042】
アンテナ素子32は、電磁波を送信するための素子である。本実施形態では、アンテナ素子32は、メアンダラインアンテナ素子である。アンテナ素子32は、基板31上に設けられている。具体的には、アンテナ素子32は、基板31の表面31aに設けられている。アンテナ素子32は、導電性を有する金属によって構成されている。アンテナ素子32を構成する金属の例としては、銅(Cu)が挙げられる。アンテナ素子32は、アンテナ素子32の種類及び送信対象となる電磁波の波長に応じた形状を有している。送信対象の電磁波の例としては、5G帯の電波及びSub6帯の電波が挙げられる。
【0043】
積層体33は、電磁波の指向性を形成するための多層構造体である。積層体33は、アンテナ素子32の全体を覆っている。積層体33は、誘電体層36と、誘電体層37と、誘電体層38と、を含む。誘電体層36、誘電体層37、及び誘電体層38は、Z軸方向において、その順に表面31aに積層されている。
【0044】
誘電体層36は、積層体33のうちの最も下の層である。誘電体層36は、アンテナ素子32を覆っている。誘電体層36は、矩形状の板材である。誘電体層36は、平面視で(Z軸方向から見て)基板31と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において基板31に重ね合わせられている。つまり、誘電体層36は、表面31aの全体を覆っている。誘電体層36のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層36の誘電率ε21は、例えば、2.0~2.5程度である。誘電体層36を構成する誘電体の例として、テフロン(登録商標)が挙げられる。
【0045】
誘電体層37は、積層体33のうちの中間の層である。誘電体層37は、誘電体層36上に設けられている。誘電体層37は、矩形状の板材である。誘電体層37は、平面視で(Z軸方向から見て)基板31及び誘電体層36と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において誘電体層36に重ね合わせられている。つまり、誘電体層37は、誘電体層36の上面の全体を覆っている。誘電体層37のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層37の誘電率ε22は、誘電率ε21よりも高く、例えば、2.8~3.2程度である。誘電体層37は、例えば、ポリエステル単体で構成されたシートによって構成される。
【0046】
誘電体層38は、積層体33のうちの最も上の層である。誘電体層38は、誘電体層37上に設けられている。誘電体層38は、矩形状の板材である。誘電体層38は、平面視で(Z軸方向から見て)基板31、誘電体層36及び誘電体層37と実質的に同じ外形を有しており、Z軸方向において誘電体層37に重ね合わせられている。つまり、誘電体層38は、誘電体層37の上面の全体を覆っている。誘電体層38のZ軸方向における長さ(つまり、厚さ)は、例えば、20μm以下である。誘電体層38の誘電率ε23は、誘電率ε22よりも高く、例えば、5.0~6.0程度である。誘電体層38は、例えば、ポリエステルに高誘電体であるガラス繊維又はセラミック粉末を混錬することによって得られたシートによって構成される。
【0047】
防水膜34は、水の浸入を防止するための膜である。防水膜34は、基板31、アンテナ素子32、及び積層体33を覆っている。防水膜34は、防水性及び絶縁性を有する樹脂によって構成されている。防水膜34を構成する樹脂の例としては、ウレタン、FRP(強化繊維プラスチック)、及びテフロン(登録商標)が挙げられる。
【0048】
コネクタ35は、アンテナ素子32を不図示の電源に接続するための部材である。コネクタ35は、例えば、SMAコネクタなどの同軸コネクタである。本実施形態では、コネクタ35は、基板31の周縁よりも外側に設けられ、アンテナ素子32を構成する配線パターンの端部に接続されている。
【0049】
次に、図5を参照しながら、アンテナ装置20の動作原理を説明する。図5は、図3に示される受信用のアンテナ装置の動作原理を説明するための図である。図5に示されるように、電磁波が大気層から積層体23を介してアンテナ素子22に到達する。このとき、電磁波は、大気層と誘電体層28との境界B13に入射角θinで入射し、境界B13から出射角θ13で出射する。そして、電磁波は、誘電体層28と誘電体層27との境界B12に入射角θ13で入射し、境界B12から出射角θ12で出射する。さらに、電磁波は、誘電体層27と誘電体層26との境界B11に入射角θ12で入射し、境界B11から出射角θ11で出射する。そして、電磁波はアンテナ素子22に入射角θ11で入射する。
【0050】
ここで、大気層の屈折率nair、誘電体層26の屈折率n11、誘電体層27の屈折率n12、及び誘電体層28の屈折率n13を用いると、スネルの法則により、以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0051】
大気層(空気)の誘電率εairは誘電体層28の誘電率ε13よりも低く、誘電率ε13は誘電体層27の誘電率ε12よりも低く、誘電率ε12は誘電体層26の誘電率ε11よりも低い。つまり、式(2)の関係が成り立つ。
【数2】
【0052】
誘電率が高いほど屈折率が高くなるので、屈折率nairは屈折率n13よりも低く、屈折率n13は屈折率n12よりも低く、屈折率n12は屈折率n11よりも低い。つまり、式(3)の関係が成り立つ。
【数3】
【0053】
式(1)及び式(3)から、以下の式(4)が成り立つ。
【数4】
【0054】
したがって、電磁波が誘電体層28、誘電体層27、及び誘電体層26の順に進むにつれて、電磁波がアンテナ素子22に向かって屈折するので、電磁波がアンテナ素子22に到達する可能性が高まる。なお、防水膜24は、各誘電体層よりも薄いので、防水膜24の影響は無視され得る。
【0055】
次に、図6及び図7を参照しながら、アンテナ装置20の反射特性を説明する。図6は、図3に示される受信用のアンテナ装置の反射特性を示す図である。図7は、比較例に係る受信用のアンテナ装置の反射特性を示す図である。図6及び図7の横軸は周波数(単位:GHz)を示す。図6及び図7の縦軸はS11パラメータ(単位:dB)を示す。アンテナ装置20のアンテナ素子22として、パッチアンテナ素子が用いられた。比較例に係るアンテナ装置は、表面材11上に設けられていない点において、アンテナ装置20と相違する。800MHzの電波を用いたシミュレーションにより、各アンテナ装置の反射特性が計算された。
【0056】
図7に示されるように、比較例に係るアンテナ装置では、800MHzの周波数においてピークが得られなかった。したがって、比較例に係るアンテナ装置は受信アンテナとして機能していないことが分かる。これは、アンテナ装置の内部での反射が強いことに起因すると考えられる。一方、図6に示されるように、アンテナ装置20では、800MHzの周波数においてピークが得られた。したがって、アンテナ装置20は受信アンテナとして機能していることが分かる。
【0057】
次に、図8図10を参照しながら、アンテナ装置30の動作原理を説明する。図8は、図3に示される送信用のアンテナ装置の動作原理を説明するための図である。図9は、図3に示される送信用のアンテナ装置から放射される電磁波を説明するための図である。図10は、比較例に係る送信用のアンテナ装置から放射される電磁波を説明するための図である。
【0058】
図8に示されるように、電磁波がアンテナ素子32から積層体33を介して大気層に放射される。このとき、電磁波は、誘電体層36と誘電体層37との境界B21に入射角θ21で入射し、境界B21から出射角θ22で出射する。そして、電磁波は、誘電体層37と誘電体層38との境界B22に入射角θ22で入射し、境界B22から出射角θ23で出射する。さらに、電磁波は、誘電体層38と大気層との境界B23に入射角θ23で入射し、境界B23から出射角θoutで出射する。
【0059】
ここで、誘電体層36の屈折率n21、誘電体層37の屈折率n22、及び誘電体層38の屈折率n23を用いると、スネルの法則により、以下の式(5)が成り立つ。
【数5】
【0060】
誘電体層36の誘電率ε21は誘電体層37の誘電率ε22よりも低く、誘電率ε22は誘電体層38の誘電率ε23よりも低い。つまり、式(6)の関係が成り立つ。
【数6】
【0061】
誘電率が高いほど屈折率が高くなるので、屈折率n21は屈折率n22よりも低く、屈折率n22は屈折率n23よりも低い。つまり、式(7)の関係が成り立つ。
【数7】
【0062】
式(5)及び式(7)から、以下の式(8)が成り立つ。
【数8】
【0063】
したがって、電磁波が誘電体層36、誘電体層37、及び誘電体層38の順に進むにつれて、誘電体層38の上面に向かって屈折する。屈折率nairは屈折率n23よりも低いので、電磁波は境界B23から入射角θ23よりも大きい出射角θで出射するが、入射角θ23と同じ出射角θoutでも出射している。このため、出射角θoutは、アンテナ素子32から誘電体層36に放射された電磁波の、境界B21における入射角θ21よりも小さくなる。なお、防水膜34は、各誘電体層よりも薄いので、防水膜34の影響は無視され得る。
【0064】
図10に示される比較例に係るアンテナ装置130は、積層体33に代えて1層の誘電体層36のみを含む点において、アンテナ装置30と主に相違する。この場合、アンテナ素子32から放射された電磁波は、誘電体層36と大気層との境界Bcに入射角θ21で入射し、境界Bcから出射角θoutcで出射する。屈折率nairは屈折率n21よりも低いので、電磁波は境界Bcから入射角θ21よりも大きい出射角θrcで出射するが、入射角θ21と同じ出射角θoutcでも出射している。したがって、アンテナ装置130は、どの方向にも満遍なく電磁波を放射するアイソトロピックアンテナとして機能する。
【0065】
一方、上述のように、アンテナ装置30から放射された電磁波の出射角θoutは、アンテナ素子32から誘電体層36に放射された電磁波の、境界B21における入射角θ21よりも小さくなる。したがって、図9に示されるように、アンテナ装置30は、表面31aの法線方向を主軸とする指向性を有するアンテナとして機能する。
【0066】
次に、外装構造1の製造方法を説明する。まず、基板21が準備される。そして、基板21の表面21aのうち、アンテナ素子22を形成する領域が露出するように、表面21aがマスキングされ、無電解銅メッキが行われる。具体的には、0.03mol/Lの硫酸銅・五水和物、0.30mol/Lのホルマリン、及び0.30mol/Lのロッシェル塩(錯化剤)を用いて、pHが12.5、浴温が20℃~30℃、メッキ速度が1.2~1.5μm/hrの条件のもとで、無電解銅メッキが行われる。
【0067】
このとき、安定剤としてルテニウムなどの錯化物が適時投入される。主反応として浴中の銅イオンが表面21aに析出し、銅イオン濃度及びホルマリン濃度が減少する。なお、無電解銅メッキ処理中において、チオ硫酸ナトリウム滴定により銅濃度は一定に維持される。これにより、基板21の表面21aにアンテナ素子22が形成される。
【0068】
続いて、ロールコータを用いて、アンテナ素子22を覆うように表面21aの全面に誘電体層26が形成される。同様に、ロールコータを用いて、誘電体層26の上面の全面に誘電体層27が形成され、誘電体層27の上面の全面に誘電体層28が形成される。これにより、積層体23が形成される。そして、ロールコータを用いて積層体23上に防水膜24が形成される。防水膜24は、熱圧着又は蒸着などにより積層体23上に形成されてもよい。以上により、アンテナ装置20が作製される。アンテナ装置20と同様にして、アンテナ装置30が作製される。
【0069】
続いて、表面材11の化粧面11aの所望の領域に、樹脂接着材によってアンテナ装置20及びアンテナ装置30が固定される。樹脂接着材が硬化することで、接着層A1及び接着層A2が形成される。
【0070】
以上のようにして、外装構造1が製造される。
【0071】
以上説明した外装構造1においては、アンテナ素子22が誘電体層26に覆われており、誘電体層26の誘電率ε11よりも低い誘電率ε12を有する誘電体層27が誘電体層26上に設けられており、誘電体層27の誘電率ε12よりも低い誘電率ε13を有する誘電体層28が誘電体層27上に設けられている。誘電率が高いほど屈折率が高くなるので、誘電体層28の屈折率n13は、誘電体層27の屈折率n12よりも低く、誘電体層27の屈折率n12は、誘電体層26の屈折率n11よりも低い。
【0072】
したがって、電磁波が誘電体層28と誘電体層27との境界B12から出射する際の出射角θ12は、電磁波が境界B12に入射する際の入射角θ13よりも小さくなるので、電磁波がアンテナ素子22に向かって屈折する。さらに、電磁波が誘電体層27と誘電体層26との境界B11から出射する際の出射角θ11は、電磁波が境界B11に入射する際の入射角θ12よりも小さくなるので、電磁波がアンテナ素子22に向かって屈折する。また、積層体23においては、誘電率が大気層からアンテナ素子22に向けて段階的に大きくなるので、境界B13,B12,B11のそれぞれにおける電磁波の反射率を低減することができる。以上のことから、電磁波がアンテナ素子22に到達する可能性が高められるので、受信効率を向上させることが可能となる。
【0073】
外装構造1においては、アンテナ素子32が誘電体層36に覆われており、誘電体層36の誘電率ε21よりも高い誘電率ε22を有する誘電体層37が誘電体層36上に設けられており、誘電体層37の誘電率ε22よりも高い誘電率ε23を有する誘電体層38が誘電体層37上に設けられている。誘電率が高いほど屈折率が高くなるので、誘電体層36の屈折率n21は、誘電体層37の屈折率n22よりも低く、誘電体層37の屈折率n22は、誘電体層38の屈折率n23よりも低い。
【0074】
したがって、アンテナ素子32から放射された電磁波が誘電体層36と誘電体層37との境界B21から出射する際の出射角θ22は、電磁波が境界B21に入射する際の入射角θ21よりも小さくなるので、電磁波が積層体33の積層方向(化粧面11aの法線方向)に向かって屈折する。言い換えると、電磁波が誘電体層38と大気層との境界B23に向かって屈折する。さらに、電磁波が誘電体層37と誘電体層38との境界B22から出射する際の出射角θ23は、電磁波が境界B22に入射する際の入射角θ22よりも小さくなるので、電磁波が積層体33の積層方向(化粧面11aの法線方向)に向かって屈折する。言い換えると、電磁波が誘電体層38と大気層との境界B23に向かって屈折する。これにより、指向性が得られる。その結果、簡易な構成で、電磁波の到達距離を伸ばし、電磁波の強度を高めることが可能となる。
【0075】
積層体33においては、誘電率がアンテナ素子32から大気層に向けて段階的に大きくなるので、境界B21,B22のそれぞれにおける電磁波の反射率を低減することができる。したがって、電磁波の送信効率を向上させることが可能となる。
【0076】
例えば、ボルトなどの固定部材を用いて、アンテナ装置20及びアンテナ装置30が表面材11に取り付けられる場合、表面材11にボルトの軸部を挿通するための孔が設けられる。この場合、雨水などが当該孔から屋内に浸入するおそれがある。この問題に対し、アンテナ装置20においては、接着層A1が基板21を表面材11に接着している。アンテナ装置30においては、接着層A2が基板31を表面材11に接着している。これらの構成によれば、表面材11に孔を開けることなく、アンテナ装置20及びアンテナ装置30を表面材11に固定することができる。したがって、雨水などが屋内に浸入する可能性を低減することができる。
【0077】
アンテナ装置20においては、防水膜24が積層体23を覆っている。この構成によれば、アンテナ素子22が錆びる可能性を低減することができるので、アンテナ素子22を長寿命化することができる。同様に、アンテナ装置30においては、防水膜34が積層体33を覆っている。この構成によれば、アンテナ素子32が錆びる可能性を低減することができるので、アンテナ素子32を長寿命化することができる。
【0078】
アンテナ装置20は、金属板である表面材11上に設けられているので、受信アンテナとして機能することができる。
【0079】
アンテナ素子22が基板21の表面21aに直接圧着された場合には、アンテナ素子22が表面21aにしっかりと接着せず、アンテナ素子22が表面21aから剥離しやすくなる。この問題に対し、無電解銅メッキ法によってアンテナ素子22が表面21aに形成される。したがって、アンテナ素子22が表面21aから剥離する可能性を低減することができる。同様に、無電解銅メッキ法によってアンテナ素子32が表面31aに形成される。したがって、アンテナ素子32が表面31aから剥離する可能性を低減することができる。
【0080】
次に、図11及び図12を参照しながら、外装構造1の変形例を説明する。図11は、変形例に係る外装構造の一部を拡大して示す斜視図である。図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。
【0081】
図11及び図12に示されるように、アンテナ装置20は、基板21上に二次元配列された複数のアンテナ素子22を含んでもよい。各アンテナ素子22は、矩形板状のパッチアンテナ素子である。この場合、複数のアンテナ素子22は、フェーズドアレイアンテナを構成している。図11に示される例では、X軸方向に4枚のパッチアンテナ素子が配列され、Y軸方向に6枚のパッチアンテナ素子が配列されている。各アンテナ素子22は、コネクタ25に代えて、基板21をZ軸方向に貫通するビア21cを介して不図示の電源に接続されている。なお、図11においては、説明の便宜上、防水膜24の図示が省略されている。
【0082】
同様に、アンテナ装置30は、基板31上に二次元配列された複数のアンテナ素子32を含んでもよい。各アンテナ素子32は、矩形板状のパッチアンテナ素子である。この場合、複数のアンテナ素子32は、フェーズドアレイアンテナを構成している。図11に示される例では、X軸方向に4枚のパッチアンテナ素子が配列され、Y軸方向に6枚のパッチアンテナ素子が配列されている。各アンテナ素子32は、コネクタ35に代えて、基板31をZ軸方向に貫通するビア31cを介して不図示の電源に接続されている。なお、図11においては、説明の便宜上、防水膜34の図示が省略されている。
【0083】
次に、図13を参照しながら、別の実施形態に係る外装構造を説明する。図13は、別の実施形態に係る外装構造を示す断面図である。図13に示される外装構造1Aは、外装材10に代えて外装材50を含む点において外装構造1と主に相違する。
【0084】
外装材50は、建物の外装に使用される仕上げ材である。本実施形態では、外装材50は、外壁材である。外装材50は、一方向(X軸方向)に延びる長尺の部材であり、表面材51(金属板)と、裏面材52と、芯材53と、パッキン54と、を含む。
【0085】
表面材51は、金属製の板材である。表面材51は、例えば、ロール成形又はプレス成形などによって金属板を加工することによって形成される。金属板の例としては、鉄板、銅板、アルミニウム板、チタン板、ステンレス板、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、サンドイッチ鋼板(制振鋼板など)、クラッド鋼板、ホーロー鋼板、及びラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)が挙げられる。
【0086】
表面材51は、化粧面51aと、連結部51bと、連結部51cと、固定部51dと、を含む。化粧面51aは、外装構造1Aを用いて建物が建設された場合に、建物の外側を向く面である。
【0087】
連結部51bは、外装材50の上に位置する別の外装材50と連結するための部分である。連結部51cは、外装材50の下に位置する更に別の外装材50と連結するための部分である。連結部51bは、表面材51の上端部に設けられ、表面材51の長手方向の全長にわたって延びている。連結部51cは、表面材51の下端部に設けられ、表面材51の長手方向の全長にわたって延びている。連結部51b及び連結部51cは、互いに嵌合可能に構成されている。具体的には、連結部51bは、上方に突出する凸形状を有している。連結部51cは、上方に窪む凹形状を有している。
【0088】
固定部51dは、外装構造1Aを固定するための部分である。固定部51dは、表面材51の上端部において、連結部51bよりも裏面側に設けられ、表面材51の長手方向の全長にわたって延びている。固定部51dに釘等の固定部材が打ち込まれることによって、外装構造1Aは固定される。
【0089】
裏面材52は、シート状の部材である。裏面材52の構成材料は、裏面材12の構成材料と同様であるので、その詳細な説明を省略する。裏面材52は、金属鋼板によって構成されてもよい。
【0090】
芯材53は、表面材51と裏面材52との間に設けられ、表面材51と裏面材52とによって画定される空間を隙間なく埋める部材である。芯材53は、断熱材、補強材、嵩上げ材、防音材、吸音材、緩衝材、防火材、及び結露防止材として機能し得る。芯材53の構成材料は、芯材13の構成材料と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0091】
パッキン54は、防水性を高めるための部材であり、連結部51cに設けられている。パッキン54は、例えば、EPM又はEPDMによって構成されている。
【0092】
次に、図14を参照しながら、更に別の実施形態に係る外装構造を説明する。図14は、更に別の実施形態に係る外装構造を示す断面図である。図14に示される外装構造1Bは、外装材10に代えて外装材60を含む点において外装構造1と主に相違する。
【0093】
外装材60は、建物の外装に使用される仕上げ材である。本実施形態では、外装材60は、外壁材である。外装材60は、一方向(X軸方向)に延びる長尺の部材であり、表面材61(金属板)と、裏面材62と、芯材63と、パッキン64と、を含む。
【0094】
表面材61及び裏面材62は、金属製の板材である。表面材61及び裏面材62は、例えば、ロール成形又はプレス成形などによって金属板を加工することによって形成される。表面材61及び裏面材62の構成材料は、表面材51の構成材料と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0095】
表面材61は、化粧面61aと、凸部61bと、カバー片61cと、凹部61dと、を含む。化粧面61aは、外装構造1Bを用いて建物が建設された場合に、建物の外側を向く面である。凸部61bは、外装材60の上に位置する別の外装材60と連結するための部分である。凸部61bは、表面材61の上端部に設けられ、表面材61の長手方向の全長にわたって延びている。凸部61bは、上方に突出している。
【0096】
カバー片61cは、外装材60と外装材60の下に位置する更に別の外装材60とのつなぎ目(目地)を覆い隠す部分である。カバー片61cは、化粧面61aから下方に延びる部分であり、表面材61の長手方向の全長にわたって設けられている。凹部61dは、外装材60の下に位置する更に別の外装材60と連結するための部分である。凹部61dは、表面材61の下端部において、カバー片61cよりも裏面側に設けられ、表面材61の長手方向の全長にわたって延びている。凹部61dは、上方に窪んでいる。凸部61b及び凹部61dは、互いに嵌合可能な形状を有している。
【0097】
裏面材62は、凸部62aと、凹部62bと、を含む。凸部62aは、外装材60の上に位置する別の外装材60と連結するための部分である。凸部62aは、裏面材62の上端部に設けられ、裏面材62の長手方向の全長にわたって延びている。凸部62aは、上方に突出している。凹部62bは、外装材60の下に位置する更に別の外装材60と連結するための部分である。凹部62bは、裏面材62の下端部に設けられ、裏面材62の長手方向の全長にわたって延びている。凹部62bは、上方に窪んでいる。凸部62a及び凹部62bは、互いに嵌合可能な形状を有している。
【0098】
凸部61bと凸部62aとは、Z軸方向において互いに離間しており、凸部61b及び凸部62aによって、外装材60の上に位置する別の外装材60と連結する連結部が構成されている。凹部61dと凹部62bとは、Z軸方向において互いに離間しており、凹部61d及び凹部62bによって、外装材60の下に位置する更に別の外装材60と連結する連結部が構成されている。
【0099】
芯材63は、表面材61と裏面材62との間に設けられ、表面材61と裏面材62とによって画定される空間を隙間なく埋める部材である。芯材63は、断熱材、補強材、嵩上げ材、防音材、吸音材、緩衝材、防火材、及び結露防止材として機能し得る。芯材63の構成材料は、芯材13の構成材料と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0100】
パッキン64は、防水性を高めるための部材であり、凹部61dに設けられている。パッキン64は、例えば、EPM又はEPDMによって構成されている。
【0101】
次に、図15及び図16を参照しながら、外装構造1,1A,1Bの適用例を説明する。図15及び図16は、外装構造の適用例を示す図である。
【0102】
図15に示される一般住宅100においては、屋根材の一部に外装構造1が用いられ、外壁材の一部に外装構造1Aが用いられている。このように、一般住宅100の屋根に外装構造1を用いることによって、一般住宅100の屋根にアンテナ装置20及びアンテナ装置30を設けることができる。同様に、一般住宅100の外壁に外装構造1Aを用いることによって、一般住宅100の外壁にアンテナ装置20及びアンテナ装置30を設けることができる。したがって、人々が居住する空間にウェブ状のシームレスな通信ネットワークを効率的に構築することが可能となる。
【0103】
図16に示されるビル200は、S(Steel)造、RC(Reinforced Concrete)造、又はSRC(Steel Reinforced Concrete)造などの建物である。ビル200の例としては、マンション及びアパートといった集合住宅、並びに、デパート及びオフィスビルといった非住宅が挙げられる。ビル200においては、外壁材の一部に外装構造1Bが用いられている。具体的には、ビル200の上層階及び屋上の外壁材に外装構造1Bが用いられている。マイクロセル方式で電波が送受信される場合には、ビル200の低層階の外装材に外装構造1Bが用いられてもよい。
【0104】
以上のように、ビル200の外壁に外装構造1Bを用いることによって、ビル200の外壁にアンテナ装置20及びアンテナ装置30を設けることができる。したがって、人々が居住する空間にウェブ状のシームレスな通信ネットワークを効率的に構築することが可能となる。
【0105】
なお、本開示に係る外装構造は上記実施形態に限定されない。
【0106】
外装構造1は、アンテナ装置30及び接着層A2を含んでいなくてもよい。
【0107】
アンテナ装置20は、アンテナ素子22として、半波長ダイポールアンテナ素子及びパッチアンテナ素子などの他の種類のアンテナ素子を含んでもよい。アンテナ装置30は、アンテナ素子32として、半波長ダイポールアンテナ素子及びパッチアンテナ素子などの他の種類のアンテナ素子を含んでもよい。
【0108】
積層体23に含まれる誘電体層の層数は、3層に限られない。積層体23は、積層方向において大気層からアンテナ素子22に向かうにつれて誘電率が高くなるのであれば、2層の誘電体層を含んでもよく、4層以上の誘電体層を含んでもよい。言い換えると、積層方向に互いに隣り合う2つの誘電体層のうち、アンテナ素子22に近い誘電体層の誘電率が、他方の誘電体層の誘電率よりも高ければよい。
【0109】
積層体33に含まれる誘電体層の層数は、3層に限られない。積層体33は、積層方向においてアンテナ素子32から大気層に向かうにつれて誘電率が高くなるのであれば、2層の誘電体層を含んでもよく、4層以上の誘電体層を含んでもよい。言い換えると、積層方向に互いに隣り合う2つの誘電体層のうち、アンテナ素子32に近い誘電体層の誘電率が、他方の誘電体層の誘電率よりも低ければよい。
【0110】
アンテナ装置20は、接着層A1に代えて、他の手法により表面材11,51,61に固定されてもよい。例えば、アンテナ装置20は、ボルトなどの固定部材を用いて表面材11,51,61に固定されてもよい。同様に、アンテナ装置30は、接着層A2に代えて、他の手法により表面材11,51,61に固定されてもよい。例えば、アンテナ装置30は、ボルトなどの固定部材を用いて表面材11,51,61に固定されてもよい。
【0111】
アンテナ装置20は、防水膜24を含まなくてもよい。アンテナ装置30は、防水膜34を含まなくてもよい。
【0112】
外装材10,50,60が施工された後に、アンテナ装置20及びアンテナ装置30が外装材の所望の位置に取り付けられてもよい。この場合、アンテナ装置20及びアンテナ装置30の設置位置を容易に調整することができる。その結果、より効率的な通信ネットワークを構築することが可能となる。
【0113】
(付記)
[条項1]
金属板と、
前記金属板上に設けられた基板と、
前記基板上に設けられたアンテナ素子と、
前記アンテナ素子を覆う積層体と、
を備え、
前記積層体は、前記アンテナ素子を覆う第1誘電体層と、前記第1誘電体層上に設けられた第2誘電体層と、を含み、
前記第2誘電体層の誘電率は、前記第1誘電体層の誘電率よりも低い、外装構造。
【0114】
[条項2]
前記積層体は、第2誘電体層上に設けられた第3誘電体層を更に含み、
前記第3誘電体層の誘電率は、前記第2誘電体層の誘電率よりも低い、条項1に記載の外装構造。
【0115】
[条項3]
前記基板を前記金属板に接着する接着層を更に備える、条項1又は条項2に記載の外装構造。
【0116】
[条項4]
前記積層体を覆う防水膜を更に備える、条項1~条項3のいずれか一項に記載の外装構造。
【0117】
[条項5]
前記金属板を表面材として含む屋根材を更に備える、条項1~条項4のいずれか一項に記載の外装構造。
【0118】
[条項6]
前記金属板を表面材として含む外壁材を更に備える、条項1~条項4のいずれか一項に記載の外装構造。
【符号の説明】
【0119】
1,1A,1B…外装構造、10…外装材(屋根材)、11,51,61…表面材(金属板)、20…アンテナ装置、21…基板、22…アンテナ素子、23…積層体、24…防水膜、26…誘電体層(第1誘電体層)、27…誘電体層(第2誘電体層)、28…誘電体層(第3誘電体層)、30…アンテナ装置、31…基板、32…アンテナ素子、33…積層体、34…防水膜、36…誘電体層、37…誘電体層、38…誘電体層、50…外装材(外壁材)、60…外装材(外壁材)、A1…接着層、A2…接着層。
図1
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