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特許7618028核酸の増幅に基づく定量化のための方法及び手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】核酸の増幅に基づく定量化のための方法及び手段
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20250110BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250110BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20250110BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z ZNA
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023521681
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 GB2021052594
(87)【国際公開番号】W WO2022074392
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】2015943.0
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス モリー
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193819(US,A1)
【文献】イメージアナライザーによるDNA検査,医学のあゆみ ,1997年11月22日,Vol. 183, No. 8,p. 525-529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも第1の標的ポリヌクレオチド及び少なくとも第2の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法であって、
a)少なくとも前記第1の標的ポリヌクレオチド及び少なくとも前記第2の標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料、
b)第1の調整された競合ポリヌクレオチド及び第2の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)少なくとも第1のプライマーであって、
前記試料中の第1の標的ポリヌクレオチド、及び
前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、少なくとも第1のプライマー、を提供することと、
前記第1及び第2の標的ポリヌクレオチド並びに前記第1の調整された競合ポリヌクレオチド及び前記第2の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されるように、プライマー伸長反応を開始することと、を含み、
増幅が、第1の標的生成物、第2の標的生成物、第1の調整された競合生成物、及び第2の調整された競合生成物をもたらし、
前記第1の標的ポリヌクレオチドの増幅動態が、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅動態と同じではないか、又は前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅動態と実質的に類似していないように設計され、当該設計は、
a)前記第1の標的ポリヌクレオチドの長さと比較して、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの長さを増加または減少させること;および/または
b)前記第1の標的ポリヌクレオチドのGC含量と比較して、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドのGC含量を増加または減少させることを含む、
方法。
【請求項2】
第2のプライマーを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)前記第2のプライマーが、前記第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、前記第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
b)前記第2のプライマーが、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、前記第1及び第2のプライマーが、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらし、
c)前記第2のプライマーが、
i)前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、前記第1及び第2のプライマーが、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらし、
ii)前記第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、プライマー伸長反応を開始することができ、それにより、前記第2の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されて、前記第2の調整された競合生成物の生成をもたらし、更なるプライマーと組み合わせて、前記第2のプライマー及び前記更なるプライマーが、前記第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、かつ/又は
d)前記第2のプライマーが、
i)前記第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、前記第1及び第2のプライマーが、前記標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
ii)前記第1又は第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができず、
前記方法が、前記第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる第3のプライマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
a) i)増幅される前記第1の標的ポリヌクレオチドの配列及び少なくとも前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列、並びに
ii)増幅される前記第2の標的ポリヌクレオチドの配列及び少なくとも前記第2の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、
1つ以上の状態に対する前記標的の予測的関係に近似又は再現又は一致するような様式で、前記第1の標的ポリヌクレオチド及び前記第2の標的ポリヌクレオチドの初期濃度とともに変化する第1の標的増幅生成物及び第2の標的増幅生成物の最終量をもたらすように選択される、及び/又は、
b)前記第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率及び前記第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の調整された競合生成物が、
i)前記第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド短く、又は、前記第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド短いか、又は
ii)前記第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、又は、前記第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド長く、及び/又は
前記第2の調整された競合生成物が、
i)前記第2の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド短く、又は、前記第2の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド短いか、又は
ii)前記第2の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、又は、前記第2の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド長く、及び/又は、
増幅される第1の標的ポリヌクレオチド部分及び増幅される第1の競合ポリヌクレオチドのGC含有量の差は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は少なくとも90%若しくは95%である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標的増幅生成物、前記第2の標的増幅生成物、前記第1の調整された競合増幅生成物、及び前記第2の調整された競合増幅生成物が検出される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、1つ以上のプローブ群を提供することを含み、各プローブ群が、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含み、
前記第1の標識と前記第2の標識とが異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a)前記第1の標識で標識された前記少なくとも1つのプローブが、前記第1の標的生成物にハイブリダイズすることができ、第2の標識で標識された前記少なくとも1つのプローブが、前記第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、
b)前記第1の標識で標識された前記少なくとも1つのプローブが、前記第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、前記第2の標識で標識された前記少なくとも1つのプローブが、前記第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
いずれのプローブも、前記第1の標的生成物にハイブリダイズすることができない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の標識が、フルオロフォアである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各プローブが、クエンチャーを含み、かつ/又は
前記第1の標識がFAMであり、前記第2の標識がHEXであるか、若しくは前記第1の標識がHEXであり、前記第2の標識がFAMである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a)単一のプローブ群内に、
前記第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは少なくとも100個の異なるプローブ、かつ/又は
前記第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは少なくとも100個の異なるプローブが存在し、
b)前記方法が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ群を提供することを含み、
特定の標識が、2つ以上のプローブ群で使用されない、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブ上に存在する標識が、前記第1の標識及び前記第2の標識のみである、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
特定の状態の正の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、前記第1の標識で標識され、前記調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、前記第2の標識で標識され、
かつ/又は
前記特定の状態の負の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、前記第2の標識で標識され、前記調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、前記第1の標識で標識される、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、使用される全てのフルオロフォアの単一の読み取りを行うことによって、全ての増幅生成物の相対存在量を検出することを含む、請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の標的ポリヌクレオチドの増幅のためのものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在によって提供される差次的遺伝子調節シグネチャを、単一の値に変換し、
前記方法が、請求項1~16のいずれか一項に記載の試料中の少なくとも第1の標的ポリヌクレオチド及び少なくとも第2の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法を含み、前記方法が、第1のフルオロフォアを含む第1のプローブと第2のフルオロフォアを含む第2のプローブとの使用を含み、前記方法が、前記第1のフルオロフォアと前記第2のフルオロフォアとの間におけるシグナル強度の差を測定するステップを含む、
方法。
【請求項18】
サンプル中の少なくとも第1の標的ポリヌクレオチドと少なくとも第2の標的ポリヌクレオチドの増幅結果に基づいて、サンプルが特定の状態にある相対確率を決定する方法であって、対象から提供されたサンプルに対して請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実行することを含む、方法。
【請求項19】
前記特定の状態は、
a)特定の疾患若しくは状態である、
b)特定の疾患若しくは状態でない、又は、
c)他の疾患又は状態である、
から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患又は状態が、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がんは、前立腺がん又は乳がん、敗血症、カンジダ血症、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が、結核である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記差次的遺伝子調節シグネチャが、前記対象の白血球から特定される、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度が、いくつかの「他の疾患」を有するのと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子発現シグネチャが、結核を有しない患者におけるこれらの遺伝子のレベルと比較して、GBP6の上方調節、並びにARG1及びTMCC1の下方調節である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、前記キットが、少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、又は少なくとも3,4,5,6,7,8,9,又は少なくとも10の異なる調整された競合ポリヌクレオチドを含み、
前記少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、または前記少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または少なくとも10の異なる調整された競合ポリヌクレオチドのうちの少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチドは、対応する第1の標的ポリヌクレオチドおよび第2の標的ポリヌクレオチドの増幅動態と同じではない、または前記第1の標的ポリヌクレオチドまたは前記第2の標的ポリヌクレオチドの増幅動態と実質的に類似していない増幅動態を有するように設計され、
前記設計は、
a)前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの長さを前記第1の標的ポリヌクレオチドの長さに対して増加または減少させること、および/または、
b)前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドのGC含有量を前記第1の標的ポリヌクレオチドのGC含有量に対して増加または減少させること、を含む、
キット。
【請求項27】
試料中の少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法であって、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)第1のプライマーセットであって、前記プライマーセットが、第1の標的ポリヌクレオチド及び前記第1の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第1の標的増幅生成物及び第1の競合増幅生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第1のプライマーセット、
d)第2のプライマーセットであって、前記プライマーセットが、第2の標的ポリヌクレオチド及び前記第2の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第2の標的生成物及び第2の競合生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第2のプライマーセット、
e)第1のプローブ群であって、前記第1のプローブ群が、前記第1の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識標的プローブ及び前記第1の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識競合プローブを含む、第1のプローブ群、
f)第2のプローブ群であって、前記第2のプローブ群が、前記第2の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識標的プローブ及び前記第2の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識競合プローブを含む、第2のプローブ群、を提供することであって、
i)前記第1の標識標的プローブ及び前記第2の標的標識プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ前記第1の標識競合プローブ及び前記第2の標識競合プローブが、同じ第2の標識で標識されるか、又は
ii)前記第1の標識標的プローブ及び前記第2の標識競合プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ前記第1の標識競合プローブ及び前記第2の標識標的プローブが、同じ第2の標識で標識される、提供することと、
前記第1及び第2のプライマーセットが標的及び競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にすることと、を含み、
前記第1の標的ポリヌクレオチドの増幅動態が、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅動態と同じではないか、又は前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅動態と実質的に類似していないように設計され、当該設計は、
a)前記第1の標的ポリヌクレオチドの長さと比較して、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドの長さを増加または減少させること; および/または
b)前記第1の標的ポリヌクレオチドのGC含量と比較して、前記第1の調整された競合ポリヌクレオチドのGC含量を増加または減少させることを含む。
【請求項28】
多重増幅後、前記第1の標識及び前記第2の標識の量を同時に検出することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物学的システムは信じられないほど複雑であり、主に多数の遺伝子の発現レベルの変動によって支配されている。そのような差次的発現(differential expression)は、これらの細胞が他の細胞と相互作用し、私たちの世界に反応する方法を反映している。特定の時点又は特定の環境状況における全ての遺伝子の発現レベルは、特定の「状態」を表すことができる。遺伝子発現レベルは非常に急速に変化する場合があり、したがって、特定の生物学的システム(例えば、細胞又は組織又は器官)の「状態」も変化する場合がある。特定の生物学的システムが予想される/所望されるように挙動しているかどうかを知ることが重要であるため、特定の点における「状態」(すなわち、いくつかの遺伝子の相対発現)を決定することは、診断、予後、及び例えば産業バイオテクノロジーにおいて明確な有用性を有する。
【0002】
遺伝子は、単独ではなく、複雑なネットワークの一部として機能する。非常に多くの相互作用する遺伝子及び別々の遺伝子ネットワークがあるため、細胞などの生物学的システムの状態を完全に決定することは、それ自体非常に複雑である。現在では、生物学的システム内の全ての遺伝子の発現レベルを、例えば、RNA-seqを介して、比較的日常的に分析することが可能であるが、これは、特に、遺伝子のサブセットのみが、生物学的システムが特定の状態にあるか、又は異なる特定の状態にあるか、又は特定の活性(例えば、高タンパク質産生状態)を示すかを予測又は分類するのに関連している可能性が高いため、配列決定及びその後のバイオインフォマティクスの両方の観点から、費用的にも時間的にも効果的ではない。そのような複雑な関係を決定するには、単純な代数的閾値ではなく、パターン認識が必要である。
【0003】
特定の遺伝子ネットワークを比較的個別の単位に近似することができるという前提は、現代の診断の多くの基礎をなし、全トランスクリプトームの小さな(又は比較的小さな)サブセットからの情報を利用する予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャが特定されると、各試験試料のトランスクリプトーム全体の評価は、試料を特定の状態にあるかどうかとして診断するために必要ではない。例えば、遺伝子発現データ(例えば、トランスクリプトームデータ)が、2つ以上の異なるタイプの試料から得られ、かつ機械学習を含むバイオインフォマティクスを使用して、2つの試料タイプ間で過少発現又は過剰発現されている遺伝子/mRNAの特定のサブセットを特定するために分析された多数の事例が存在する。そのような診断的又は予測的な発現パターンの特定は、例えば、がん診断、がん予後、結核及び敗血症の診断、並びにウシ結核及び乳房炎の診断などの獣医学的使用、及び療法に対する応答の予測において使用されてきた。
【0004】
所与の遺伝子セットの相対的な遺伝子発現に基づく、同じタイプの診断及び予測的関係、決定面、又は差次的遺伝子調節シグネチャを、細胞工学及び組織工学において使用することができる。例えば、多くの場合、「再生医療」の目的は、幹細胞を特定の最終細胞型に分化させるように誘導すること、又は分化細胞の活性をあるタスク又は別のタスクにシフトさせることである。遺伝子発現プロファイリング、具体的には「分子時間」の考え方により、「細胞がどれくらい分化しているのか?」「細胞がどれくらい極性化しているのか?」を決定することが可能である。加えて、合成生物学の分野は、特有の課題を提示している。高度に操作された遺伝子経路を有する細胞集団、又はそのような集団が所与のタスクに協力している場合、バイオプロセス工学は、システムが設計されたとおりに挙動しているかどうかを決定する手段を必要とする。
【0005】
最も単純な例では、そのような予測的関係、決定面、又は差次的遺伝子調節シグネチャは、単一の遺伝子からの発現の存在又は不在の評価を含むことができる。例えば、試料中の遺伝子A由来のmRNAの存在は、試料が状態Aにある(例えば、「疾患Aを有する」)ことを予測し、遺伝子A由来のmRNAの不在は、試料が状態Bにある(例えば、「疾患Aを有しない」、すなわち、異なる疾患を有する又は疾患を有しない)ことを予測する。
【0006】
しかしながら、ほとんどの疾患状態又は様々な化合物の生体産生に関連し得る特定の調節状態(例えば、品質管理のためにエンジニアによって定義された許容範囲(tolerance window)内で遺伝子調節が生じる状態)などの他の状態は、より多くの遺伝子からの発現データを使用してのみ正確に予測又は診断することができる。より多くの数の遺伝子からの発現データの評価のための要件は、予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャが決定された後でさえ(例えば、特定の状態を予測するために使用することができるそれらの「マーカー」を特定するためのより大きなセットの発現データの分析から)、診断/予測発現データを分析し、予測/診断を形成するために、専用の機器及び熟練した生物情報学者が必要であることを意味する。例えば、いくつかの遺伝子の発現レベルを決定するために、マイクロアレイ、RNA-seq、Nanostringなどの技術を使用するには、例えば、一連の標識を有する一連のプローブを使用する必要があり、それぞれが別個の決定を必要とする。したがって、特定の状態の診断/予測を決定する現在の方法は、試料調製後及び実際の発現データの取得後の広範なデータ処理及び統計を必要とし、例えば、ポイントオブケア診断状況には好適ではない。
【0007】
エンドユーザが、典型的には、2つ以上の特定の状態(例えば、「疾患を有する」又は「疾患を有しない」)のうちの1つを直接的に予測する、かつ統計学者又は複雑な機器からの入力を必要としない、1つ又は少数の出力を与える単純なアッセイを行うことができるように、予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャの使用及び出力を単純化することが有益であろう。
【0008】
本発明は、生物学的データから生成された予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャを使用する先行技術の方法で、少なくとも上述の問題を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の発明者らは、所定の予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(遺伝子発現パターンと特定の状態との間の遺伝子調節シグネチャなど)を有用な診断又は予測結果に変換する複雑さを大幅に低減するために使用することができる方法及び構成要素を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の方法は、アッセイ自体の分子を使用して、例えば、医療診断において日常的に得られる標準的な標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、発現データ)を分析するために現在使用されている複雑な数学及び人工知能を反映する。
【0011】
開示された方法は、特に専門的な計装を必要とせず、使用が容易であり、試料調製が標準的である。必要な構成要素が日常的な手順によって最適化されると、実際には、例えば、診断/予後における方法を実践することは非常に単純であり、いくつかの実施形態では、単純な多重PCR増幅反応及び2つのフルオロフォアの読み取りを必要とする。これは、例えば、複数のフルオロフォアを使用していくつかのRNA種を増幅し、各フルオロフォアの量を決定し、その後、それらのデータを、各RNA種の相対レベルを比較してその「状態」を決定する複雑なバイオインフォマティクスシステムに供給することを必要とする本方法とは対照的である。例えば、予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(差次的遺伝子調節シグネチャなど)が10個の遺伝子の相対発現に基づいている場合、現在は、同じフルオロフォアを使用することができるように各遺伝子の発現レベルを別々に決定する必要があるか、又は増幅方法を多重化することができるように10個の異なるフルオロフォアを使用する必要がある。したがって、いずれの場合も、少なくとも10個の異なる読み取り値が必要である。本発明の重要な利点は、場合によっては、単一のチューブで2つの異なるフルオロフォア(又は使用される全てのフルオロフォア)の単一の読み取りまで、読み取りの数を減少させることである。
【0012】
本発明の方法によって生成された結果は、得るのが容易であり、明確であり、研究室の研究者、発酵の専門家、及びベッドサイドの臨床医によって解釈することができる。
【0013】
本方法は、典型的には、核酸増幅を中心としており、当業者は、これが非常に日常的であり、最小限の機器で実施することができることを理解するであろう。
【0014】
加えて、先行技術の方法の多くは、複雑なネットワーク及び予測的関係、決定面、又は標的オリゴヌクレオチドパターン(差次的遺伝子調節シグネチャなど)を、単純な線形関係(すなわち、例えば、ある遺伝子からのより多い発現が特定の状態を予測し、異なる遺伝子のより多い発現が異なる状態を予測する単純な線形関係)に還元する。このような還元主義的アプローチは、生物学的システムを正確に反映するものではなく、例えば、AIを使用することによって特定及び生成され得る予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャを適切に捕捉及び反映するものではない。
【0015】
例えば、AIシステムは、遺伝子Aの発現が10の任意の発現閾値を上回り、遺伝子Bの発現が5の閾値を下回り、遺伝子Cの発現が7の閾値を上回る場合、試料が特定の状態(例えば、状態A)にあると決定し、一方、遺伝子Aの発現が10の閾値を上回り、遺伝子Bの発現が10の閾値を上回り、Cの発現が7の閾値を下回る場合、試料が異なる特定の状態(状態B)にあると決定することができる。
【0016】
より多くの異なる「状態」が、単に3つの遺伝子の発現レベルに基づいて決定及び予測されることは明らかであろう。これらの異なる状態が臨床的に有用であるか、バイオテクノロジー的に有用であるかは、AIシステムが訓練されている試料によって決定される。いずれにせよ、10の閾値を上回る遺伝子Aの発現(すなわち、遺伝子Aの「より多い」発現)は、単一の状態を反映するだけではないことがわかる。重要なのは、特定のネットワークにおける、又は予測ネットワークの一部であると特定された各遺伝子の相対的な発現レベルである。
【0017】
本発明の方法は、この複雑な相互依存関係を捕捉し、それを単一の出力に凝縮して、試料が状態A又は状態Bにあるか若しくはそうである可能性があるか、又は例えば、状態B若しくは状態Cではなく、状態Aであるかをユーザに伝えることができる。
【0018】
本発明の方法は、競合増幅ネットワーク(Competitive Amplification Network)(CAN)と呼ぶことができる。本方法は、PCRなどのRNA/DNA増幅技術を、複雑な遺伝子発現パターンの認識に適合させる。名前が意味するように、反応は、所与の遺伝子転写産物又は転写産物のセットによって提供される情報を状態A対状態Bの相対確率に変換する競合的相互作用によって設計される。フルオロフォア標識プローブを利用するいくつかの実施形態では、これらの確率が組み合わされて、2つの色によって表される全体的な診断を提供する。解釈は、どの色がより明るいかを確認するのと同じくらい簡単である。ネットワークは、コストや操作の複雑さを大幅に増加させることなく、多数の遺伝子を包含するように拡張可能である。最後に、これらのネットワークは、複数の標的に対して同時に複雑な非線形演算を実行するように設計することができる。この技術は、疾患診断、治療モニタリング、再生医療研究、及びバイオプロセス製造の品質管理のためのアプリケーション固有のキットを設計するためのプラットフォームを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明は、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(又は存在若しくは不在)、例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現、又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、特定の状態の相対確率、例えば、状態A対状態Bの相対確率に変換する方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量、例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現、又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、単一の値に組み合わせる方法も提供する。
【0021】
本発明はまた、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量、例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現、又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、特定の状態の相対確率に変換する方法。
2つのフルオロフォア標識プローブのみを使用して、試料中の少なくとも3つのオリゴヌクレオチドの相対存在量、例えば、少なくとも3つの遺伝子の相対発現、又は少なくとも3つの変異の存在若しくは不在を検出する方法。
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量、例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現、又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、単一の値に組み合わせる方法。
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在によって提供される予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、差次的遺伝子調節シグネチャ)を、単一の値に変換する方法。
競合増幅ネットワークを用いて、統計情報を模倣する方法、を提供する。
【0022】
「特定の状態の確率」及び「予測的関係」、「決定面」、又は「差次的標的オリゴヌクレオチドパターン」若しくは「差次的遺伝子調節シグネチャ」、及び「統計情報」に到達することは、当業者の手段の範囲内である。そのような情報は、典型的には、例えば、マイクロアレイデータ又はRNAseqデータ、続いて、例えば、状態A対状態Bの確率を予測するために使用することができる2つ以上のマーカー間の関係を生成するバイオインフォマティクスから得られる。そのような予測パネルの多くの例が存在する。例えば、(1)Warsinske,H.;Vashisht,R.;Khatri,P.Host-Response-Based Gene Signatures for Tuberculosis Diagnosis:A Systematic Comparison of 16 Signatures.PLOS Medicine 2019,16 (4),e1002786.https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002786。
【0023】
(2)Sweeney,T.E.;Wong,H.R.;Khatri,P.Robust Classification of Bacterial and Viral Infections via Integrated Host Gene Expression Diagnostics.Science Translational Medicine 2016,8(346),346ra91-346ra91.https://doi.org/10.1126/scitranslmed.aaf7165、(3)Cardoso,F.;van’t Veer,L.J.;Bogaerts,J.;Slaets,L.;Viale,G.;Delaloge,S.;Pierga,J.-Y.;Brain,E.;Causeret,S.;DeLorenzi,M.;Glas,A.M.;Golfinopoulos,V.;Goulioti,T.;Knox,S.;Matos,E.;Meulemans,B.;Neijenhuis,P.A.;Nitz,U.;Passalacqua,R.;Ravdin,P.;Rubio,I.T.;Saghatchian,M.;Smilde,T.J.;Sotiriou,C.;Stork,L.;Straehle,C.;Thomas,G.;Thompson,A.M.;van der Hoeven,J.M.;Vuylsteke,P.;Bernards,R.;Tryfonidis,K.;Rutgers,E.;Piccart,M.70-Gene Signature as an Aid to Treatment Decisions in Early-Stage Breast Cancer.New England Journal of Medicine 2016,375(8),717-729.https://doi.org/10.1056/NEJMoa1602253、(4)Zaas,A.K.;Aziz,H.;Lucas,J.;Perfect,J.R.;Ginsburg,G.S.Blood Gene Expression Signatures Predict Invasive Candidiasis.Science Translational Medicine 2010,2(21),21ra17-21ra17.https://doi.org/10.1126/scitranslmed.3000715を参照されたい。
【0024】
予測的関係によって、各入力次元が特定の標的配列の濃度を表し、各出力次元が異なるクラスを表す「決定面」として視覚化することができる任意の統計分類技術の意味を含む。例えば、入力ドメインは2つの遺伝子で構成され、出力ドメインは健康及び病気の2つのクラスで構成され得る。次いで、「決定面」は、二次元の表面であり、患者の2つの遺伝子がそれらのそれぞれのレベルで発現している場合、所与の点が、2つの遺伝子転写産物の濃度を表し、その点における表面の高さが、病気である確率に対応する。別の例では、入力ドメインは、手術後の前立腺がん患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)で観察される10の異なる変異からなり得、出力ドメインは、再発なし、軽度の再発、及び侵襲性の再発の3つのカテゴリで構成され得、その各々は、医師に異なる行動方針を推奨する。この場合の決定面は(多かれ少なかれ)十次元立方体であり、各点は、変異濃度の特定の組み合わせを3つのカテゴリの相対確率に変換し、おそらく画像の赤色、緑色、及び青色の成分の相対強度として色で視覚化する。
【0025】
十次元の三色立方体を視覚化することは困難であるが、そのような表現に到達することは、生物統計学者、生物情報学者、数学者、統計学者、又はデータ科学者にとって日常的であろう。専門家は、多くの個体(各個体は異なるカテゴリ(例えば、健康/病気、又は再発なし/軽度の再発/侵襲性の再発)に属することが知られている)からの様々な遺伝子の発現又は手術後のctDNAの変異プロファイルなど、多くの潜在的な標的の測定された濃度を含むデータセットから始めるであろう。次いで、専門家は、ロジスティック回帰、ガウス過程分類、人工ニューラルネットワーク分類、決定木、ランダムフォレスト、ナイーブベイズ、サポートベクトルマシン、又は最近傍を含むがこれらに限定されない、いくつかの分類アルゴリズムのうちのいずれかを適用して決定面に到達するであろう。
【0026】
代替的に、決定面は、より手動的で原則的な方法で構築され得る。例えば、バイオプロダクションエンジニアは、その操作された生物又は生物の集団によって発現されるいくつかの遺伝子の各々について、最適な発現レベル及びそれぞれの耐性を知ることができる。品質管理及びプロセスモニタリングの目的のために、エンジニアは、これらの遺伝子のうちのいずれかがその許容範囲外にあるかどうかを知りたいかもしれない。この例では、決定面は、出力ドメインで-1から+1まで延在する多次元ガウス分布として表すことができる。上記のように、各次元は、特定の遺伝子転写産物の濃度を表し、その次元に沿った周辺ガウス分布は、その遺伝子の理想濃度での平均(ピーク)を有し、その標準偏差(幅)は、それぞれの許容範囲に対応する。そのような決定面の競合増幅ネットワークの実装は、全ての転写産物がその理想であるか又はその理想に近い場合、1つの蛍光色を示し、任意の転写産物がその許容範囲をはるかに超えている場合、別の蛍光色を示す。
【0027】
別のそのような原則的な決定面は、術後の前立腺がん患者の再発の早期徴候を監視する目的で循環腫瘍DNAの個別化された監視から生じ得る(Coombes et al Clinical Cancer Research 2019 25:DOI:10.1158/1078-0432.CCR-18-3663)。標的の目的の変異は、腫瘍のゲノムを患者の健康な組織のゲノムと比較することによって、手術時に特定される。次いで、専門家は閾値濃度を選択することで、この閾値を超えるctDNAにおける変異のいずれかが観察された場合、専門家はがんが再発したと結論付けるであろう。この場合の所与の変異の周辺決定面は、0(変異がない場合)から+1(その閾値濃度での)への移行からなるであろう。
【0028】
決定面、又は目的の標的と分類との間の確率的関係を得た後、専門家は、この関係を近似する競合増幅ネットワークを設計する。所与のシグナル(FAMなどのフルオロフォア色、又はラテラルフローストリップ上のバンド強度)は、出力の正の方向に対応するように任意に指定され、第2のシグナル(HEXなど)は負の方向として指定される。したがって、これら2つの色の強度の差は、決定面の「高さ」に対応する。代替的に、出力ドメインが2つ以上のカテゴリで構成される場合、それらの間の特定の対の差が異なる出力カテゴリの確率に対応するように、適切な数のシグナルを選択することができる。
【0029】
決定面の出力ドメインを様々なシグナルの相対強度に変換した後、専門家はネットワークのアーキテクチャを選択するであろう。このアーキテクチャは、いくつの合成競合を含めるべきか、いくつのプライマーを含めるべきか、どのオリゴヌクレオチド鎖がどのプライマーを共有するか、及びどの鎖がどのプローブによって標的化されるかを決定することからなる。次いで、各アーキテクチャについて、システム中の各オリゴに対して増幅パラメータの多数の組み合わせが存在する。アーキテクチャとパラメータ値との間の選択は、多数の異なるパラメータ値(「競合増幅のシミュレーション」のセクションを参照)で、それぞれ多数の異なるアーキテクチャによって生成された表面をシミュレートして、所定の決定面に似たパラメータ値のアーキテクチャ及び組み合わせを特定することによって行われる。この最適化タスクを実行する技術分野には、アーキテクチャ間の選択のための進化的アルゴリズム法及びシミュレーテッド・アニーリング法、並びに理想的なパラメータの組み合わせを特定するための勾配降下法、確率的勾配降下法、又は準ニュートン法を含む多くの方法が知られている。最後に、専門家は、ここで特定されたパラメータを示し、選択されたアーキテクチャに従ってプライマーを共有する標的及び合成競合オリゴヌクレオチドを設計する(「競合増幅挙動の試験及び予測」のセクションを参照)。更なる説明が、以下の実施例に提供される。
【0030】
これらの方法の各々は、第1の状態を示す各生成物の量を累積的に定量化することができ、第2の状態を示す各生成物を累積的に定量化することができるように、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの増幅を伴う。これらの2つの読み取りを組み合わせると、試料が第1の状態にある可能性が高いか又は第2の状態にある可能性が高いかを示す単一の全体的な読み取り(すなわち、調査中の遺伝子の数にかかわらず、例えば、緑色の総強度とオレンジ色の総強度との差)は、システム全体からの情報を統合する。例えば、一実施形態では、第1の状態に関連する全ての生成物は、第1のフルオロフォアで標識され、第2の状態で標識された全ての生成物は、第2のフルオロフォアで標識される。全体的な予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャへの各生成物の相対的な寄与が考慮される場合、各状態の累積定量化を合計すると、正確かつ予測的な値が生成される。本発明の競合ポリヌクレオチド及び本明細書に記載の方法で使用されるポリヌクレオチドは、この予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャを反映するように設計、設計、又は調整される。
【0031】
したがって、本発明は、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、特定の状態の相対確率に変換する方法、
2つのフルオロフォア標識プローブのみを使用して、試料中の少なくとも3つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも3つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも3つの変異の存在若しくは不在を検出する方法、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、単一の値に組み合わせる方法、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在によって提供される予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、差次的遺伝子調節シグネチャ)を、単一の値に変換する方法、
競合増幅ネットワークを用いて、統計情報を模倣する方法、
及び
試料中の複雑な遺伝子発現パターンを、単一の値に低減する方法、を提供し、
本方法は、試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅するステップを含む。
【0032】
本明細書に記載されるように、試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法は、本発明によってそれ自体が提供される。
【0033】
理論的には、溶液中の全ての標的分子は、これらのプライマーが使い果たされるまで、サイクルごとに複製されるべきであるが、重要なことに、CAN設計原理(すなわち、本明細書に開示される方法)は、完全な倍加を実際に達成することが困難である。それは、単一の出力が発現レベルの複雑なネットワークを反映することを可能にする適切な特徴を含む調整された競合ポリヌクレオチドである。
【0034】
GC含有量などの標的配列の特徴は、各サイクルで複製される分子の割合に影響を及ぼし、これらの特徴が、本明細書で使用される競合ポリヌクレオチドに意図的に組み込まれることで、標的ポリヌクレオチドが、適切な効率で増幅され、全体的な予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャにおけるその特定の標的の寄与を模倣するように効率が調整される。
【0035】
例えば、2つの遺伝子の発現の増加が疾患を予測する仮説的シナリオにおいて、
特定の遺伝子(G1)は、12を超える任意のレベルで発現している場合、「疾患」に関連し、12未満の発現レベルでは、「非疾患」に関連し、G1は、弱い予測(weakly predictive)であり、
第2の遺伝子(G2)は、発現レベルが6を超える場合、疾患に関連し、発現レベルが6未満の場合、非疾患に関連し、G2は、強い予測(strongly predictive)である。
【0036】
G1及びG2の発現を単純に得て、個々の予測力を考慮せずに一緒に加算する場合、G1の発現レベルが10(「非疾患」を予測する)及びG2の発現レベルが7(「疾患」を予測する)の試料は、「疾患予測遺伝子」の全体的な発現レベルが17であり、一方、G1の発現レベルが1(「非疾患」を予測する)及びG2の発現レベルが10の試料は、「疾患予測遺伝子」の全体的な発現レベルが11しかない。一見すると、個々の予測力を考慮せずに、第1の試料は第2の試料よりも病気になる可能性が高いように見える。しかしながら、G1が弱い予測に過ぎないが、G2が強い予測であることを考慮に入れると、疾患の実際の予測は、第2の試料についてははるかに可能性が高い場合がある。
【0037】
したがって、全ての「疾患関連遺伝子」を単純に増幅し、生成物の量を加算するだけでは十分ではない。しかしながら、生成物の量を加算することは、いくつかの発現レベル入力に基づいて累積的かつ正確な予測を得るための簡単な手段である。本発明者らは、個々の予測力を競合ポリヌクレオチドに組み込むことに成功しており、その結果、標的対対応する競合ポリヌクレオチドの相対量は、予測力を示す。
【0038】
例えば、上記の仮説的な例を挙げると、一例では、
G1は、天然のG1標的と強く競合する対応する競合ポリヌクレオチドとともに増幅される。すなわち、競合は、天然の標的G1よりも高い増幅効率を有する。このように、第1の試料中のG1の高い発現(10個の標的分子の均等物を有する)は、より低い実際のG1標的生成物(例えば、3)に変換される。これは、G1のより低い予測力を反映する。次いで、G1標的生成物は、緑色標識プローブでプローブされ得、G1競合は、オレンジ色標識プローブでプローブされ得る。増幅及び検出後、緑色標識の量は、オレンジ色標識よりも少ない場合がある(例えば、緑色の読み取り値が3で、オレンジ色の読み取り値が7)。一方、G2は、高い予測力のために、増幅することが非常に困難な対応する競合ポリヌクレオチドの存在下で増幅され得るため、G2天然標的がG2競合ポリヌクレオチドよりも多く増幅される。7つのG2標的に相当する第1の試料の場合、生成されたG2標的の量は6であってもよく、生成されたG2競合の量は1であってもよい。G2標的は、緑色標識プローブ(すなわち、6の緑色)でプローブされてもよく、G2競合は、オレンジ色標識プローブ(すなわち、1のオレンジ色)でプローブされてもよい。この例では、G1とG2の結果を合わせると、9の緑色の読み取り値(すなわち、病気)と8のオレンジ色の読み取り値が得られる。
【0039】
実質的に1のG1標的分子及び10のG2標的分子を有していた試料2の場合、G1は、0.5の緑色の読み取り値及び1のオレンジ色の読み取り値を生成してもよく、G2は、9の緑色の読み取り値及び2のオレンジ色の読み取り値を生成してもよく、累積読み取り値は、9.5の緑色対3のオレンジ色であってもよい。
【0040】
当業者は、いくつかの状況において、ある遺伝子の発現の増加及び異なる遺伝子の発現の抑制が、特定の状態(例えば、疾患状態)を示すことができることを理解するであろう。
【0041】
元のデータセット(例えば、マイクロアレイデータ、RNAseqデータ)に由来する予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャは、全体的な累積蛍光が「状態A」(すなわち、「疾患」)の診断をもたらすためにどの程度「緑色」である必要があるかの閾値を提供する。
【0042】
標的が1:1の様式で増幅された場合、試料1は、17の全体的な緑色の読み取り値を有し、試料2は、11の読み取り値を有するであろう。それは、試料がその特定の状態(例えば、疾患状態)にある可能性を正確に反映しない。
【0043】
上記は相対遺伝子発現の文脈で論じられるが、当業者は、様々な変異の存在又は不在が、がんなどの特定の疾患状態又は非コードRNAの相対存在量を示す状況(したがって、タンパク質コード遺伝子の文脈では厳密には「遺伝子発現」ではなく、一般に、転写)においても同じ前提が真実であることを理解及び認識するであろう。したがって、上述のように、相対遺伝子発現に言及する場合、これは、変異の組み合わせ、又は例えば非コードRNAの相対転写及び産生にも適用されると解釈されるべきである。
【0044】
増幅の進行は、プライマー結合部位間の標的生成物又は競合生成物の領域に特異的な蛍光標識プローブオリゴヌクレオチドを含めることによってリアルタイムで監視することができる(実施例については、図1Bを参照)。あるタイプのプローブの場合、適切なプライマーが伸長されると、ポリメラーゼは、プローブを(多かれ少なかれ)個々のヌクレオチドに分解し、クエンチャー(quencher)からフルオロフォアを遊離し、蛍光シグナルを生成する。得られた曲線は、密度制限指数関数的増殖過程としてモデル化することができる:
【数1】
[式(1)]
式中、Fは蛍光強度であり、rは指数関数的増殖率(塩基e)であり、Kはシグナルプラトー(signal plateau)であり、mはこのプラトーのドリフトである。ここでの重要な成分はrであり、塩基2で表される場合、各サイクルを複製する(プローブ結合した)標的鎖の割合を表す。rは、図2に示すように、プライマー領域間の標的の配列を変更することによって変化し得る。
【0045】
なお、ほとんどの場合、所与の標的との全ての反応は、標的の開始量にかかわらず、末端に同じ蛍光強度を有することに留意されたい。反応のエンドポイントは、試料に関する最小限の情報を提供し、この欠点は、本発明に従って、PCRへの競合を設計することによって改善される。
【0046】
増幅は、本明細書に記載される特定の特徴を有するように「調整」された競合ポリヌクレオチドの使用を伴う「競合」増幅である。当業者は、競合PCRの先行技術の方法が、典型的には、標的核酸の定量化に使用され、使用される競合ポリヌクレオチドが、増幅効率のいかなる矛盾も回避するために、可能な限り配列が標的に近いように設計されることを理解するであろう。標的生成物の量を、典型的には、ゲル電気泳動を使用して競合生成物の量と比較し、これにより、出発標的物質の量を定量化することができる。
【0047】
対照的に、本発明は、競合ポリヌクレオチドが、標的の増幅と競合の増幅との間の増幅効率の特定の差を意図的にもたらす配列を有するように設計されることを特に必要とする。
【0048】
次いで、一実施形態では、本発明は、試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法を提供し、本方法は、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)少なくとも第1のプライマーであって、
第1の標的ポリヌクレオチド、及び
第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、少なくとも第1のプライマー、を提供することと、
標的ポリヌクレオチド(試料中に存在する場合)及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されるように、プライマー伸長反応を開始することと、を含み、
増幅が、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物をもたらす。
【0049】
誤解を避けるために、本発明の方法は、「トーホールド(toe-hold)」プライマーが最初により短い「プロテクター(protector)」鎖に結合する「トーホールド」方法とは異なり、したがって、このプロテクター及び標的は、標的への結合に対して競合する。この場合、「プロテクター」は増幅されない(これはプライマーよりも短い)。
【0050】
また、明確にするために、第1の調整された競合ポリヌクレオチドは、特定の特性を有するように特に設計された又は「調整された」ポリヌクレオチドであり、意図的に増幅反応に導入されている。本明細書に記載される競合ポリヌクレオチドは、例えば、試料中にもたまたま存在する他のポリヌクレオチドと異なるとみなされる。例えば、本発明による競合ポリヌクレオチドは、単に、プライマーへのハイブリダイゼーションに対して競合し、望ましくないバックグラウンド増幅をもたらし得るゲノムDNAの別の断片ではない。次いで、一実施形態では、本明細書に記載の競合ポリヌクレオチドが意図的に増幅される。一実施形態では、本明細書に記載の競合ポリヌクレオチドは、試料中に天然に存在しない。
【0051】
また、本方法は、競合オリゴヌクレオチドが意図的に標的ポリヌクレオチドと同様の増幅動態特性を有するように設計されている競合増幅の先行技術の方法と異なることに留意することが重要である。かかる方法は、標的ポリヌクレオチドの濃度を推定するために当該技術を使用しており、例えば、既知の量の競合ポリヌクレオチドが増幅反応に含まれる。かかる方法では、競合の増幅率が標的の増幅率を反映することが不可欠である。当業者には、これが本発明に当てはまらないことが明らかとなるであろう。本発明は、調整された競合オリゴヌクレオチドが、それぞれの標的ポリヌクレオチドに対して異なる増幅動態を有することを必要とし、それにより、標的及び競合の相対増幅率は、少なくとも2つの状態のうちの1つを示す予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、差次的遺伝子調節シグネチャ)に一致する生成物をもたらす。
【0052】
したがって、一実施形態では、競合ポリヌクレオチドは、それぞれの標的ポリヌクレオチドと同一の増幅率又は実質的に類似した増幅率を有しない。
【0053】
本方法はまた、種特異的サブ領域を増幅又は配列決定する前に、ほとんどの細菌に共通する遺伝子配列(リボソームサブユニット)を最初に増幅する16sネステッドPCRなどの方法と異なる(Yu et al PLoS One 2015 10:e0132253)。ヒトB細胞におけるVDJ組換えをプローブするために同様のアプローチが使用される(Koning et al British Journal of Haematology 2016 178:983-968)。どちらの場合も、競合は起こるが、それは天然の配列の間だけである。したがって、一実施形態では、本方法は、16s型PCR法でもなく、かつ/又はヒトB細胞におけるVDJ組換えをプローブするために使用される方法でもない。
【0054】
当業者は、所与の標的配列及び/又は調整された競合配列を、例えば、非対称増幅又は指数関数的増幅反応EXPAR(Reid et al Angewandte Chemie 2018 57:11856-11866を参照)などの1つのプライマーのみを使用して、又は例えば、標準的なPCRのように2つのプライマーを使用して増幅することが可能であることを理解するであろう。所与の標的配列又は所与の競合配列を増幅するために2つのプライマーを使用する必要はないと考えられるが、典型的には、2つのプライマーが使用され、第1及び第2のプライマーが二本鎖の標的配列又は競合配列の反対側の鎖上でハイブリダイズするように配置されて、標的生成物又は競合生成物をもたらす。2つのプライマーを使用して標的配列を増幅してもよく、かつ/又は調整された競合ポリヌクレオチドの一部又は全てを増幅してもよい。当業者は、適切なプライマー(例えば、標的/競合配列の一部を識別する長さ、配列)に必要なものを理解するであろう。
【0055】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、第2のプライマーを提供することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2のプライマーは、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーは、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらす。
【0057】
当業者はまた、第1のプライマーが第1の標的ポリヌクレオチド及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるように、第1の標的ポリヌクレオチドの一部及び第1の調整された競合の一部は、単一のプライマーが2つの異なるポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にするように、同じ配列又は実質的に同じ配列を有するであろうことを理解するであろう。標的及び競合の残りの配列はまったく異なる場合がある。
【0058】
いくつかの事例では、本方法は、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる第2のプライマーの使用を含み、同じ第2のプライマーは、第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることもでき、第1及び第2のプライマーは、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることで、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらす。この場合、第1の標的ポリヌクレオチド及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドは、同一であるか又は実質的に同一である2つの領域を共有することで、第1及び第2のプライマーの各ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを可能にする。当業者は、同じプライマーのハイブリダイゼーションを可能にするために、2つの配列がどの程度類似する必要があるかを理解するであろう。
【0059】
この配置が図3に示されており、第1の標的及び第1の競合ポリヌクレオチドが、同じ第1及び第2のプライマーを使用して増幅される。それは、「直接」法又は直接CANと呼ぶことができる。最初のものは、2つの標識プローブを使用するある特定の実施形態も示す。しかしながら、本明細書に記載されるように、異なるプローブシステム及び異なる検出方法を使用することができる。典型的には、本方法は、標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる標識プローブと、第1の競合ポリヌクレオチド生成物に結合することができる異なる標識で標識されたプローブと、を必要とするであろう。
【0060】
標的及び競合が同じ増幅反応で増幅されると、それらはプライマーに対して競合する。プライマーは、標的鎖の各複製によって消費されるため、プライマープールが枯渇するとすぐに、両方の配列の増幅が停止する。反応終了時の各増幅生成物の量は、2つの標的の相対的な開始量に依存する。これは、得られた蛍光シグナルに反映される(例えば、図4を参照)。同じ濃度で開始する同じ増幅率を有する2つの標的(例えば、図3のWT及びISO)について、それぞれに由来する蛍光シグナルは、反応の終了時に同じであろう。反応の開始時に競合よりも多くの「標的」が存在する場合、標的生成物に関連する蛍光は、最後により強くなり、逆もまた同様であろう。純粋な標的シグナルから純粋な競合シグナルへの遷移の鋭さ又は勾配は、競合の増幅率を調整することによって調整することができる。増幅率を調節するための競合ポリヌクレオチドの配列及び長さの設計方法を本明細書に記載する。
【0061】
競合の増幅挙動の試験及び予測
増幅挙動を支配するパラメータを推定するために、各競合を、適切なプライマー、関連するフルオロフォア標識プローブ、及び標準qPCRマスターミックス(ThermoFisher ScientificのTaqMan Fast Advancedマスターミックス)を含む反応において増幅することができる。得られた蛍光データは、当業者が、例えば、以下の標準的な非線形最小二乗推定を使用して選択することができるであろういくつかのアルゴリズム(本明細書では、実施例で使用される機構モデルと称される)のうちの1つに適合させる必要がある。
【数2】
式中、fは、次のように定義される。
【数3】
式中、rは、増幅率であり、Fは、反応開始時の初期蛍光であり、mは、定常状態での蛍光のドリフトの程度を示し、Kは、ドリフトの不在下の定常状態での蛍光を与える。上記の式は単なる例示であり、増幅挙動を説明する他のモデルも使用することができる。以下に説明するように、この機構モデルのパラメータを推定する1つの方法は、以下のように指定された一般化線形モデルを介する。効率的な推定を可能にするために、以下の変数置換を、F及びrに対して最初に適用する:
【数4】
【0062】
モデルへの入力パラメータは、塩基対単位のプライマー間の配列の領域の長さ(BP)、その領域のGC含有率(GC)、及びコピー数単位の配列の濃度(Q)である。入力及び出力(ρ、τ、K、及びm)パラメータは、最初に次のように「標準化された」形式(a^で示される)に置かれる:
【数5】
【0063】
次いで、回帰モデルが以下のように与えられる:
【数6】
式中、αは、全ての配列及び濃度にわたる所与のパラメータの「典型的な」値を表し、βは、所与の配列の長さ又はGC含有量への依存性をそれぞれ表し、γは、全ての配列にわたる濃度への「典型的な」依存性を表し、及びζは、長さ及びGC含有量によって濃度への依存性がどのように変化するかを定義する。観測されたデータからパラメータ値を推定しようとする回帰モデルでは、εは、残りのパラメータによって示されるグローバルトレンドからの所与の配列の挙動の偏差を表す。新しい未試験配列のパラメータ値を提供する予測モデルは、回帰モデルと同じであるが、ε成分は含まれていない。
【0064】
実施例に示されるように、一実施形態16では、30~240塩基対長及び15%~85%のGC含有量の範囲の異なる競合を増幅する。7つの異なる濃度の各競合(すなわち、反応が、10、10、10、10、10、10、又は10コピーの競合を含有した)を、二重に。当業者は、特定の状況に応じて、適切な数の競合、適切な長さ、適切なGC含有量及び濃度を選択することができる。上記のモデルのパラメータ値は、ベイズアプローチを使用して推定することができる。しかしながら、他の線形回帰技術(最尤推定、最小二乗推定、リッジ回帰、及びラッソ回帰を含むが、これらに限定されない)を使用することができる。
【0065】
実施例に記載の16の競合の回帰の結果を図16に示し、推定パラメータ値を以下の表に示す。図中、「切片」はα成分とβ成分との合計を指し、「傾き」はγ成分とζ成分との合計を指す。ドットは特定の配列の推定値を表し、線と影付きの領域はそれぞれ全体の傾向と付随する不確実性を表す。
【表1】
【0066】
一般化線形モデルの他の、非線形回帰及びノンパラメトリック回帰(例えば、多項式回帰、ガウス過程、人工ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン、最近傍、決定木、ランダムフォレスト、及びナイーブベイズ)を含むが、これらに限定されない他の回帰手法を使用することができる。
【0067】
競合増幅のシミュレーション
上記の式は、単独での所与の配列の増幅を説明する。複数のオリゴが互いに競合するときの増幅挙動をシミュレートするために、より細粒度モデル(fine-grained model)が使用される。競合増幅は、モノー増殖の一例としてモデル化されている(Monod,Jacques(1949).“The growth of bacterial cultures”.Annual Review of Microbiology.3:371-394.doi:10.1146/annurev.mi.03.100149.002103)。微生物の増殖をモデル化するために一般的に使用されているこのアプローチは、限られた基質が消費されるにつれて減衰する最大速度での複製を記述する。所与のオリゴヌクレオチドの2本の鎖の各々は、配列の増幅率として上記の最大速度でその相補体を生成する別個の「有機体」とみなされる。そうすることで、対応するプライマーを消費し、このプライマーの濃度が低下すると、新しい鎖の生成速度が低下する。この減衰の大きさは、所与のプライマー濃度と、そのプライマー濃度及びプライマーに結合する全ての鎖の濃度の和の比によって与えられる。単純な非競合PCR(1つの標的、2つのプライマー)の場合、モデルは、常微分方程式の次のシステムで構成される:
【数7】
式中、A及びAは、配列Aのプラス鎖及びマイナス鎖の濃度であり、p1及びp2は、2つのプライマーの濃度であり、rは、配列の増幅率である(ここで、μは、前の方程式におけるμとは無関係であることに留意されたい)。
【0068】
直接競合PCR(2つの標的WT及びREF、2つのプライマー)のモデルは、以下のとおりである:
【数8】
【0069】
したがって、当業者は、本明細書に含まれる全ての競合増幅システムを同様の方法で説明することができる。これらの微分方程式の系は、当該技術分野で既知の多くの分析技術又は数値技術のいずれかを使用して解くことができ、経時的な反応における各種の濃度を説明する曲線を得ることができる。所与のプローブ又はプローブのセットから経時的にシグナルの曲線を得るために、開業医は、それらのプローブに同族の鎖の濃度を組み合わせるであろう。例えば、直接競合PCRの上記の例では、FAM標識プローブがWT鎖に結合するように設計され(すなわち、WT鎖と配列同一性を共有する)、HEX標識プローブがREF鎖に結合するように設計された場合を考えてみる。したがって、FAMシグナルは、WT鎖の濃度によって与えられ、HEXシグナルは、REF鎖の濃度によって与えられる。追加のFAM標識プローブがREF鎖に結合するように設計されている場合、FAMシグナルは、WT鎖及びREF鎖の濃度の合計によって与えられるであろう。
【0070】
これまでに説明したシナリオ、すなわち、1つの標的ポリヌクレオチド及び1つの対応する競合ポリヌクレオチドは、本発明の1つの最も単純な応用を表す。しかしながら、1つの遺伝子の発現レベルを評価することは、実際には遺伝子ネットワークを表すものではない。遺伝子ネットワーク内の複数の遺伝子の発現レベルは、2つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅すること、及び/又は2つ以上の競合ポリヌクレオチドを提供することの組み合わせを使用して評価することができる。本発明は、異なる組み合わせを提供し、そのうちのいくつかは、より詳細に説明されるであろうが、当業者は、異なる標的ポリペプチド、異なる競合、及びプライマーの異なる配置(例えば、標的と競合との間で共有されるプライマー、競合と競合との間で共有されるプライマー、及び/又は標的と標的との間で共有されるプライマー)の多数の組み合わせを理解するであろう。
【0071】
これらの方法のうちのいくつかは、「間接」法、又は間接CANと呼ばれる。
【0072】
本明細書に記載の間接CAN法は、より大きな遺伝子シグネチャを分析する場合、より安価であると考えられる。なぜなら、「直接」法では、標的とされる各転写産物に対して少なくとも1つのプローブ(2つではない場合)を設計する必要があるからである。20~50の標的を有する遺伝子シグネチャ(例えば、遺伝子発現レベル、特定の変異の存在又は不在、非コードRNAの存在量)の場合、配列設計を反復することは非常に高価になる。この問題に対処するために、間接CANは、調査中の遺伝子の数にかかわらず、多かれ少なかれ固定コストで同様の機能を提供する。間接競合はまた、複数の標的を同時に複雑かつ非線形の解析ができる高次ネットワークの可能性を開く。最後に、冗長な標的化により、全てのCANアーキテクチャに更なる柔軟性を可能にする。
【0073】
本明細書に記載の直接競合法は、プローブした標的ポリヌクレオチド生成物とプローブした競合ポリヌクレオチド生成物との間の競合を使用する。間接法は、単純に競合ポリヌクレオチド間の競合を仲介するために、プローブされない標的ポリヌクレオチドを使用する。両方のプライマーは、所与の標的の指数関数的増幅に必要であるため、複製は、1つのプライマーのみを枯渇させることによって阻止され得る。本発明のこの実施形態では、図5においてREFHとして示されている競合ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド、WTと1つのプライマーを共有し、その第2のプライマーは、第2の競合ポリヌクレオチド、REFFを共有するように設計される(図5)。全ての成分が等しい増幅率を有し、2つの競合(REF)が等しい濃度で開始する場合、なんらWTが存在しなくても、HEX及びFAMシグナル(核酸プローブ上の標識)が等しく増幅される。しかしながら、WTの増加はREFHを打ち負かし、HEXシグナルを減衰させる。これは次に、REFFが増殖する余地を作り出し、反応の最後により大きなFAMシグナルをもたらす。その結果、直接競合から観察されたものと同様に、様々なWT濃度に対するS字型の応答曲線が得られる(図5A)。この応答曲線は、標的のいずれかの増幅率、競合ポリヌクレオチドの開始濃度、プライマーのいずれかの濃度、又はネットワーク自体のトポロジーを調整することによって調整することができる(図5B図5C)。このシステムの主な利点は、競合ポリヌクレオチドの配列が制限されていないため(プライマーにハイブリダイズする領域のみが任意の配列制約を有する)、同じ2つのプローブ配列を再利用して複数の競合ポリヌクレオチド生成物をプローブすることができ、どれだけ多くの天然の標的が利用されているか、又はネットワークがどれほど複雑であるかにかかわらず、開発コストを最小限に抑えることができることである。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、第2の調整された競合ポリヌクレオチドを提供することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2のプライマーは、
a)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらし、かつ
b)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、プライマー伸長反応を開始することができ、それにより、第2の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されて、第2の調整された競合生成物の生成をもたらし、任意選択的に、更なるプライマーと組み合わせて、第2のプライマー及び更なるプライマーが、第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第2の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
任意選択的に、第2のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができない。
【0076】
間接法の他のあまり好ましくない実施形態では、第2のプライマーは、
a)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
b)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、
かつ任意選択的に、第1の競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができない。
【0077】
いくつかの実施形態では、第2のプライマーは、第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、任意選択的に、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができない。
【0078】
上記のように、本方法は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドの文脈で使用され得ることが理解されるであろう。いくつかの事例では、本方法は、2つ以上の遺伝子の発現、2つ以上の特定の変異の存在若しくは不在、及び/又は2つ以上の非コードRNAの存在量を決定するために使用される。他の実施形態では、当業者は、関連するプライマーが、2つ以上の標的ポリヌクレオチドが同じ実際のRNA分子の一部であるように設計され得ることを理解するであろう。例えば、いくつかのプライマー対は、単一のmRNAからいくつかの異なる領域を増幅するように設計することができる。適切な競合ポリヌクレオチドと併せて、本発明の方法のこの実施形態は、「冗長」方法と呼ばれる。
【0079】
したがって、一実施形態では、第2の標的ポリヌクレオチドは、第1の標的ポリヌクレオチドと同じポリヌクレオチド分子の一部である。
【0080】
他の実施形態では、第2の標的ポリヌクレオチドは、第1の標的ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチド分子上にある。
【0081】
典型的には、各標的を増幅するために2つのプライマーが使用されることが理解されるであろう。したがって、本発明の方法は、2つ以上のプライマー(例えば、少なくとも3、4、5、6、又はそれ以上のプライマー)を含んでもよい。
【0082】
例えば、一実施形態では、第2のプライマーは、
a)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
b)第1又は第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができず、
本方法は、第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる第3のプライマーを含む。
【0083】
他の実施形態では、本方法は、第4のプライマーを提供することを含み、第4のプライマーは、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第4のプライマーは、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的PCR生成物の形成を可能にする。
【0084】
わかるように、本発明の方法によってプライマーの任意の好適な配置が提供され、それにより、各関連する標的又は競合が増幅され、各標的及び競合が関連するプライマーに対して適切に競合する。
【0085】
本発明によって提供される標的、競合、及びプライマー配置の異なる組み合わせを更に例示するために、いくつかの実施形態では、本方法は、
a)第2のプライマーであって、
i)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
ii)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第2のプライマーと、
b)第3のプライマーであって、
i)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第3及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合ポリヌクレオチド生成物、任意選択的に、第1の調整された競合ポリヌクレオチドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
ii)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第3のプライマーと、c)第4のプライマーであって、第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第3及び第4のプライマーが、第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第2の調整された競合ポリヌクレオチド生成物、任意選択的に、第2の調整された競合ポリヌクレオチドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらす、第4のプライマーと、を提供することを含む。
【0086】
第4及び第5のプライマーが、他の標的ポリヌクレオチド及び/又は他の競合ポリヌクレオチドに結合し、評価されるネットワークの複雑さを拡大することができることは明らかであろう。
【0087】
上記のように、本発明の重要な特徴は、1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチドの使用であり、それは、対応する標的ポリヌクレオチドに対して又はネットワーク内の他の標的若しくは競合ポリヌクレオチドの増幅率に対して特に調整された増幅率を有する。この調整は、増幅における差異を提供し、それは、例えば、標識核酸プローブを使用することによって、予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、差次的遺伝子調節シグネチャ又は特定の変異の存在若しくは不在)を、簡単に調べることができる各増幅生成物の相対存在量に変換する。
【0088】
したがって、一実施形態では、第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率は、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅率と異なる。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドの増幅率は、対応する調整された競合ポリヌクレオチドの増幅率と異なる。
【0089】
典型的には、先行技術の増幅方法では、生成物を増幅しようとすると、増幅率が最適化され、増幅が可能な限り効率的になる。当業者は、増幅の効率を向上させる技術、例えば、生成物の長さを変化させること、G/C含有量を変化させること、及びプライマーの濃度を変化させることを認識している。当業者は増幅を改善する方法を知っているので、当業者は増幅を非効率的する(すなわち、増幅率を低下させる)方法を知っている。
【0090】
当業者は、1つの標的と1つの競合との間の相対増幅率(又は場合によっては、1つの標的と複数の競合との間の相対増幅率、又は複数の標的と1つの競合との間の相対増幅率、又は複数の標的と複数の競合との間の相対増幅率)が重要であり、必ずしも絶対増幅率ではないことを理解するであろう。したがって、標的と競合との間の相対増幅率が適切であるように、標的の最も適切な領域(例えば、特定の標的mRNAの最も適切な200bp領域)が増幅のために選択されることが重要である。
【0091】
したがって、一実施形態では、標的ポリヌクレオチド又は競合ポリヌクレオチドのいずれかの増幅率は、
a)長さ及び/若しくはパーセントGC含有量に基づいて、標的核酸配列を選択すること、
b)長さ及び/若しくはパーセントGC含有量を変化させるように、競合核酸配列を設計すること、
c)競合核酸配列の開始濃度を増加若しくは減少させること、並びに/又は
d)核酸プライマーのいずれかの開始濃度を増加若しくは減少させること、のうちの1つ以上によって変化させることができる。
【0092】
したがって、一実施形態では、競合ポリヌクレオチドの増幅率は、競合ポリヌクレオチド生成物の塩基対の数を増加又は減少させることによって変化させることができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、競合ポリヌクレオチドの増幅率は、
塩基対の数を減らすことによって増加し、
塩基対の数を増やすことによって減少し、
競合ポリヌクレオチドのGC含有率を増やすこと若しくは減らすことによって変化し、
パーセントGC含有量を増やすことによって減少し、かつ/又は
パーセントGC含有量を増やすことによって低減される。
【0094】
例として、様々な相対増幅率を提供するように調整され、実施例で例示される、標的生成物及び対応する競合生成物の対の配列を以下に提供する。
【0095】
増幅率は、任意の他のポリヌクレオチドの不在下で、ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるプライマーのみを用いて、ポリヌクレオチドに対して実行された標準的な定量PCRの蛍光トレースに次の式を適合することから推定された「r」として定義することができる:
【数9】
【0096】
この及び他の好適な式は、当該技術分野で既知である。例えば、Spiess et al BMC Bioinformatics 9 article number 221(2008)、Rutledge NAR 2004 32:e178、及びLiu et al Cell Culture and Tissue Engineering 2001 27:1407-1414を参照されたい。
【0097】
式中、tは、各蛍光値が測定されたサイクルである。典型的な反応には、市販のqPCRマスターミックス、各々125nMの2つのプライマー、それぞれ250nMのプローブが含まれ、60℃で60サイクル実行されるであろう。曲線適合は、通常、非線形最小二乗(NLLS)アルゴリズムを使用して実行されるであろう。プローブを蛍光色素(例えば、Sybr Green、EvaGreen)で置き換えること、関与する持続時間、温度、又は濃度を変更すること、又はベイズ推定などの代替的な統計的アプローチは、評価される全てのポリヌクレオチドに対して同じアプローチが使用される限り許容される。同様に、異なる式を使用して、以下を含むがこれらに限定されない「r」を推定することができる:
【数10】
式中、fは、上記の式のいずれかからのFとして定義される。
【0098】
競合ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドと異なる増幅率を有するように調整されるため、増幅反応が同じ又は実質的に同じ数の初期標的及び競合テンプレート分子を含む状況では、生成される標的生成物ポリヌクレオチドの数は、生成される調整された競合生成物ポリヌクレオチドの数と異なる。したがって、本方法の一実施形態では、生成される標的生成物ポリヌクレオチドの数は、プライマー伸長前の標的ポリヌクレオチドの初期数及び調整された競合ポリヌクレオチドの数が同じであるか、又は実質的に同じである場合、生成される調整された競合生成物ポリヌクレオチドの数と異なる。
【0099】
標的及び競合が特定の相対増幅率を有するように競合ポリヌクレオチドを調整する前提は、最終的に、例えば、診断、予後において、又は単にシステム若しくは遺伝子ネットワークの現在の状態のスナップショットを取得することにおいて、本方法の目的の基礎となる予測的関係、決定面、又は差次的遺伝子調節シグネチャ若しくは特定の変異の存在/不在を模倣することである。したがって、一実施形態では、増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列及び少なくとも第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列は、標的の予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャを1つ以上の状態に近似、再現、又は一致させるような様式で、第1の標的ポリヌクレオチドの初期濃度とともに変化する最終的な検出可能なシグナルをもたらすように選択される。
【0100】
このようにして、特定の試料が遺伝子の低レベルの発現を有するが、その低発現が、例えば、疾患状態をより高度に予測する(又は特定の変異を有するが、その変異が第2の変異よりも疾患状態を高度に予測する)場合、標的生成物の最終的な検出可能なレベルは高くてもよく(対応する競合ポリヌクレオチドが、不十分な競合である配列を有するように設計される)、一方、高レベルの発現を有するが疾患を不十分に予測する遺伝子は、標的生成物の最終的な検出可能なレベルが低くてもよい(すなわち、対応する競合ポリヌクレオチドが、高い遺伝子発現を低い量の標的生成物に変換する、非常に競合的な配列を有するように設計されている)。これは、競合配列が、各標的の増幅に正しい重み付けを適用するように選択されるためである。
【0101】
この同じ前提が、直接法にも適用され、各標的ポリヌクレオチドが、2つのプライマーによって増幅され、それはまた、対応する調整された競合ポリヌクレオチドも増幅する(以下に記載されるように、各反応において、いくつかの異なる標的及び異なる対応する競合ポリヌクレオチドが増幅される可能性があることに留意されたい)。また、間接的法にも適用され、例えば、標的が、2つのプライマーによって増幅され、そのうちの1つは、第2の競合プライマーとともに第1の競合を増幅するためにも使用され、それ自体が、第2の競合ポリヌクレオチドを増幅するために使用される(例えば、-標的-競合1-競合2-。ここで、各「-」はプライマーである)。当業者は、出力(すなわち、標的及び競合の生成物の量)が診断的、予後的、又はそうでなければ状態A対状態Bの確率を予測するように、予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャを効果的にコードするかかる増幅ネットワークを生成することができる。
したがって、一実施形態では、第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率は、所定の重み付けを近似、再現、又は一致させる。当業者は、重み付けが、アッセイシグナルが予測シグナルを近似、再現、又は一致させるために必要なものから導出されることを理解するであろう。それは、典型的には、シミュレーションを介して特定される。
【0102】
競合増幅を伴う先行技術の方法は、配列において競合が標的配列に可能な限り近いことを必要とする。本方法は、出発標的鋳型の量を定量するのに使用されるため、増幅率におけるいかなる違いも、結果を歪めるであろう。本明細書の開示から、本発明の競合ポリヌクレオチドが、標的と異なる増幅率を有するように意図的に設計されることが明らかである。これは、標的と異なる配列を有することによって達成され得る。一実施形態では、増幅される第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列は、増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列と、95%、90%、88%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%未満の配列同一性を共有する。増幅される標的配列が、典型的には、より大きなポリヌクレオチド(例えば、500ヌクレオチドのポリヌクレオチドの200ヌクレオチド領域)内のサブ配列であることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、特定の配列同一性又は増幅率の要件は、増幅されるポリヌクレオチドのこの部分にのみ適用され、隣接領域の配列は、ほぼ無関係であることを理解するであろう。
【0103】
上記のように、異なる増幅率は、増幅される配列のGC含有量を変更することによって達成され得る。したがって、一実施形態では、増幅される第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列(すなわち、第1の調整された競合生成物の配列)は、少なくとも15%GC、又は少なくとも25%であり、少なくとも35%であり、少なくとも55%であり、少なくとも65%であり、少なくとも75%であり、少なくとも85%であり、又は少なくとも85%GCである。
【0104】
同じ又は異なる実施形態において、増幅される第1の標的ポリヌクレオチド部分及び増幅される第1の競合ポリヌクレオチドのGC含有量の差は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は少なくとも90%若しくは95%である。例えば、増幅される第1の標的ポリヌクレオチド部分は、20%GCである配列を含んでもよく、増幅される第1の競合ポリヌクレオチドは、25%GCである配列を含んでもよく、5%のGC含有量の差をもたらす。
【0105】
生成される生成物の長さ(すなわち、任意の所与の増幅において使用される2つのプライマーのハイブリダイゼーション部位間の距離)を変更することはまた、増幅率を調整するためにも使用することもできる(単独で又は本明細書に記載の他の方法と組み合わせて、例えば、GC含有量を変更すること)。したがって、同じ又は異なる実施形態では、第1の調整された競合生成物は、第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は少なくとも330ヌクレオチド長い。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1の調整された競合生成物は、第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド短く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は少なくとも330ヌクレオチド短い。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1の調整された競合生成物は、第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は少なくとも330ヌクレオチド長い。
【0108】
当業者は、適切に調整された競合ポリヌクレオチドを生成するために、上記のパラメータ(すなわち、GC含有量、配列同一性、及びアンプリコンの長さ)のうちの1つ又は全ての任意の組み合わせを使用することができることを理解するであろう。
【0109】
増幅後、増幅生成物が検出されることは、当業者には明らかであろう。いくつかの事例では、特定の生成物の存在又は不在を検出するだけで十分である。他の例では、生成物の実際の存在量又は相対存在量の決定が必要である。ゲルベースの電気泳動アッセイ(例えば、ラテラルフローストリップ)上での増幅生成物の親和性ベースの捕捉、及び蛍光標識プローブベースのアッセイを含む、増幅生成物の存在又は量を決定するために、当業者に利用可能な様々な手段がある。
【0110】
本発明は、少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの相対存在量を決定するために使用される場合、特に強力である。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の標的生成物、任意選択的に、1つ以上の標的PCR生成物、及び1つ以上の調整された競合生成物、任意選択的に、1つ以上の競合ポリヌクレオチドPCR生成物が検出される。
【0111】
好ましい実施形態では、各標的生成物及び各対応する競合生成物が検出される。特に好ましい実施形態では、検出は、蛍光標識プローブの使用を伴い、どれだけ多くの標的及び競合が検出されても、検出は、2つの異なるフルオロフォアのみを使用する。各プローブからの蛍光(すなわち、両方のフルオロフォアからの蛍光を1回読み取るだけ)を合計すると、単一の全体値が生成される(すなわち、蛍光標識のうちのどれがより高いか)。これは次に、診断又は予後に対応している。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上のプローブ群を提供することを含み、各プローブ群は、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含み、第1の標識と第2の標識とが異なる。
【0113】
いくつかの事例では、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブは、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができ、第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブは、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、いずれのプローブも、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができない。
【0114】
他の例では、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブは、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブは、第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、いずれのプローブも、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができない。
【0115】
上記は、いくつかの遺伝子は、発現レベルが対照(例えば、非疾患)試料と比較して増加している場合、予測的又は診断的であり得、いくつかの遺伝子は、発現レベルが対照試料と比較して減少している場合、予測的又は診断的であり得るという事実を反映している。当業者は、全蛍光の組み合わせが遺伝子発現の方向を考慮に入れるように、正しい標識が正しいプローブに割り当てられることを確実にすることができるであろう。本発明の重要な特徴は、それが、情報を提供する標識間の差であり、どの標識が「正」のシグナルを提供し、どの標識が「負」のシグナルを提供するかは、当業者によって決定されることである。
【0116】
特定のプローブ群は、2つの異なる標識のうちの1つで各々標識された一連のプローブを表す。上記のように、本方法を使用して、いくつかの異なる標的生成物及び競合生成物が検出され得ることは明らかであろう。したがって、いくつかの実施形態では、単一のプローブ群内に、第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する。同じ又は他の実施形態では、単一のプローブ群内に、第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する。上記の直接法は、典型的には、標的生成物にハイブリダイズすることができる1つの標識を有する1つのプローブと、対応する競合生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識で標識された対応するプローブと、を必要とする(すなわち、1:1の比率のプローブ(ただし、標識は、予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャに応じて、上記のように交換され得る)。間接法は、必ずしもこの1:1の比率を必要としない(例えば、単一の標的生成物が2つ以上の競合生成物に関連し得るため)。
【0117】
したがって、いくつかの実施形態では、単一のプローブ群内に、
第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ、及び
第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する。
【0118】
いくつかの実施形態では、適切なプローブは、以下のとおりである。
【表2】
【0119】
上記のように、本方法の威力は、少なくとも、いくつかの異なる標的及び競合の検出を2つの単一の読み取りに組み合わせることに由来し(すなわち、第1の標識の読み取り及び第2の標識の読み取りであって、両方とも単一の読み取りで行うことができる)、それら自体は、単一の読み取り(第1の標識の量対第2の標識の量)に組み合わされる。
【0120】
しかしながら、より多くの遺伝子の発現の分析が必要な場合、又はより複雑なネットワークの分析が必要な場合、例えば、第3及び第4のプライマーで標識された更なるプローブ群(又は、第5及び第6の標識で標識された第3のプローブ群など)を使用することが可能である。このようにして、第1のプローブ群(第1及び第2の標識の読み取り、続いて、第1の標識の量対第2の標識の量)及び第2のプローブ群(第3及び第4の標識の読み取り、続いて、第3の標識の量対第4の標識の量)を使用して、1セットの遺伝子を分析することができる。必要に応じて、第1:第2:第3:第4の標識の全体的な読み取りを行うことができる。これは全て、用いられている予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャに依存するであろう。
【0121】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ群を提供することを含み、特定の標識が1つ以上のプローブ群で使用されることはない。
【0122】
いくつかの実施形態では、本方法は、各標的生成物が対応する標識された標的プローブポリヌクレオチドを有し、各調整された競合生成物が対応する標識された競合プローブを有するように、いくつかの標識されたプローブポリヌクレオチドを提供することを含み、
標的生成物及び調整された競合生成物に対応する標識プローブは、異なる標識で標識される。
【0123】
いくつかの実施形態では、プローブ上に存在する標識は、第1の標識及び第2の標識のみである。
【0124】
いくつかの実施形態では、各プローブは、単一のタイプの標識で標識される。例えば、各プローブにはHEXのみで標識されているか、FAMのみで標識されており、HEX及びFAMの両方は標識されていない。しかしながら、各プローブは、同じ標識の2つ以上の分子で標識されてもよく、例えば、1、2、3、4、5、又はそれ以上のHEXで標識されてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0125】
プローブは、任意のタイプの検出可能な標識、例えば、色の変化をもたらす酵素ベースの標識で標識され得る。好ましくは、標識は、フルオロフォアである。したがって、いくつかの実施形態では、第1及び第2の標識は、フルオロフォアである。フルオロフォア標識プローブの例は、「TaqMan」プローブ(クエンチャーの近くからフルオロフォアを遊離するのに分解を必要とする)、Hybeacon(標的に結合したときにのみ光る)及び分子ビーコンMolecular Beacon(フルオロフォアはプローブを介してつながれたままであるが、アンプリコンに結合した場合、2つのフルオロフォアを物理的に遠ざける)、並びにScorpion probeである。
【0126】
したがって、上記から、フルオロフォアへの言及は、クエンチャーも存在しない可能性があることを意味するわけではないことは明らかであろう。例えば、いくつかの実施形態では、プローブは、第1及び第2のフルオロフォアで標識される。しかしながら、各プローブはまた、当業者によって理解されるように、適切なクエンチャーで標識され得る。
【0127】
代替的に、プローブは、親和性ベースの分離を意図した様式で標識され得る(例えば、核酸ラテラルフローイムノアッセイのためのAbingdonプローブ(https://www.abingdonhealth.com/other-products/nucleic-acid-detection-pcrd/)及びTwistdxによって提供されるプローブ(https://www.twistdx.co.uk/docs/default-source/Application-notes/app-note-001---pcrd-rpa-use-v1-7.pdf?sfvrsn=615403fc_46)を参照されたい)。かかる実施形態の一例として、一方のプローブは、FAMで標識され、他方は、ハプテンジゴキシゲニン(DIG)で標識される。標的及び競合の各プライマーは、ビオチンで標識され、したがって、増幅は、一端がビオチンで標識され、かつ他端がFAMで標識されたあるアンプリコン、並びに一端がビオチンで標識され、かつ他端がDIGで標識された他のアンプリコンを生成する。アンプリコンを、ストレプトアビジンでコーティングされた金ナノ粒子の溶液と混合する。ナノ粒子は、ビオチンに結合してナノ粒子-アンプリコン複合体を形成し、次いで、ラテラルフローストリップを流れ上がるようにする。このストリップアクト上の別々の線に印刷された抗FAM抗体及び抗DIG抗体は、それぞれのアンプリコンに結合する親和性精製剤として作用する。これにより、金ナノ粒子が、印刷された線で捕捉され、肉眼で見える濃い赤いバンドが生成される。これら2つのバンドの相対強度は、上記の2つのフルオロフォアの相対強度と同じ様式で「シグナル」を提供する。
【0128】
当業者は、核酸標的へのハイブリダイゼーションを介して機能するプローブに何が必要かを理解している。例えば、プローブは、標的の関連領域と100%同一の配列を有し得る。しかしながら、当業者はまた、配列が100%同一である必要はないことも理解している。かかるハイブリダイゼーションプローブを設計することは、当業者にとって完全に日常的である。
【0129】
当業者は、フルオロフォアが何を意味するのかを理解し、適切なフルオロフォア又はフルオロフォア対を特定することができる。好ましくは、第1及び第2のフルオロフォアは、それらが異なる発光スペクトルを有するように選択される。例示的なフルオロフォアは、TAM、SUN、VIC、TET、JOE、シアニン色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5)、Atto色素、及びAlexa Fluor(例えば、https://eu.idtdna.com/site/Catalog/modifications/dyes及びhttps://www.trilinkbiotech.com/omi-Figure 7を参照)である。
【0130】
特に有用な組み合わせは、FAMとHEX、CY3とCY5、及びFAM、HEX、TETとCy5の任意の組み合わせであると考えられる。
【0131】
特に有用な一対のフルオロフォアは、FAMとHEXである。
【0132】
したがって、一実施形態では、第1の標識は、FAMであり、第2の標識は、HEXである。別の実施形態では、第1の標識はHEXであり、第2の標識はFAMである。
【0133】
標的生成物に結合するプローブ及び対応する競合生成物に結合するプローブは、異なる標識で標識されることが重要である。そのため、各生成物の相対量が決定されるか、又は異なる標的生成物及び異なる競合生成物の量の全体的な決定に組み込まれ得る。
【0134】
したがって、一実施形態では、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブ及び第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブは、異なる標識で標識される。
【0135】
同じ又は異なる実施形態では、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブと、第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブとは、異なる標識で標識される。
【0136】
遺伝子の発現が対照試料又は対照レベルと比較して増加したときに、遺伝子群が特定の状態(例えば、疾患、予後)の全てを予測するいくつかの実施形態では、標的生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、同じ第1の標識で標識され、調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる各プローブは、同じ第2の標識で標識されることが適切である。
【0137】
しかしながら、上記のいくつか実施形態では、いくつかの遺伝子は、遺伝子発現が抑制された場合の特定の状態を予測する。多くの予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャ及びネットワークは、いくつかの遺伝子の発現の増加及び他の遺伝子の同時抑制を伴うため、これが、本方法からの単純な出力に反映され得ることが重要である。したがって、いくつかの実施形態では、標的生成物にハイブリダイズすることができるプローブのうちの少なくとも1つは、第1の標識で標識され、調整された競合生成物にハイブリダイズすることができるプローブのうちの少なくとも1つは、同じ第1の標識で標識される。
【0138】
いくつかの事例では、所与の増幅反応内で、第1の標識で標識された標的生成物にハイブリダイズすることができるプローブ、第2の標識で標識された標的生成物にハイブリダイズすることができるプローブ、第1の標識で標識された競合生成物にハイブリダイズすることができるプローブ、及び第2の標識で標識された競合生成物にハイブリダイズすることができるプローブが存在する。
【0139】
いくつかの実施形態では、特定の状態の正の予測的関係若しくは差次的遺伝子調節シグネチャに関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブは、第1の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブは、第2の標識で標識され、かつ/又は
特定の状態の負の予測的関係若しくは差次的遺伝子調節シグネチャに関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブは、第2の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブは、第1の標識で標識される。
【0140】
いくつかの事例では、増幅後に、第1のプローブによって検出される各生成物の実際の量及び第2のプローブによって検出される生成物の量が決定される。
【0141】
他の実施形態では、決定されるものは、各プローブの相対量である。例えば、いくつかの実施形態では、各プローブの相対量を標準曲線と比較して、1つ以上の状態の相対確率を決定する。
【0142】
適切な標準曲線を生成することは、当業者にとって日常的であり、生のシグナル(又は、この場合、シグナル間の差)を予測/診断に関連付けるために、個々のユーザ又は製造業者のいずれかによる較正を必要とするであろう。
【0143】
本発明の利点は、例えば、多重PCRを介して、多数の異なる発現パターンの調査を同時に可能にすることであり、2つのみ又はおそらく少数(例えば、3、4、5、6つ)の異なるフルオロフォアを使用するため、いくつかの異なる発現パターンを同時に調査することが可能になることであり、存在量若しくは相対存在量又は各生成物を単一の読み取り(例えば、複数の波長(チャネル)にわたる単一の読み取り)に凝縮して、各プローブ標識からの蛍光の量、又は同じ試料上で迅速に連続して実行される複数の読み取りを検出することが可能になることである。
【0144】
次いで、本発明の方法は、所与の遺伝子転写産物又は転写産物のセットによって提供される情報を、特定の状態の相対確率に変換することが明らかであろう。
【0145】
本明細書に記載の方法は、遺伝子発現ネットワークの一部の状態を、任意選択的に、単一の値として捕捉する。
【0146】
当業者には、標的ポリヌクレオチドが、増幅することができる限り、任意の供給源由来の任意の核酸であり得ることが明らかであろう。一実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、RNAであり、任意選択的に、RNA転写産物であり、任意選択的に、mRNAである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、miRNA、lncRNA、又はsiRNAである。
【0147】
標的ポリヌクレオチドはまた、DNAであり得る。DNAは、DNAの修飾形態であり得る。
【0148】
試料は、核酸を含むか、又は核酸を含むと予想される任意の試料であり得る。
【0149】
本発明の方法は、医学的使用並びにバイオテクノロジー/バイオプロダクト使用の両方を有する。試料は、組織、生検、血液、血漿、血清、病原体、微生物細胞、細胞培養物、及び細胞溶解物を含むか又はそれらからなる群から選択され得る。
【0150】
試料は、任意の供給源の核酸を含むことができる。いくつかの実施例では、試料は、細胞、任意選択的に、白血球及び/若しくは赤血球、エクソソーム、循環腫瘍DNA(ctDNA)、無細胞DNA(cfDNA)、RNA、又は病原体核酸のうちのいずれか1つ以上を含む。
【0151】
細胞は、任意の細胞型であり得る。例えば、細胞は、哺乳類細胞、細菌細胞、酵母細胞、又は植物細胞であり得る。哺乳類細胞は、ヒト細胞であってもよく、又はヒト細胞に由来してもよい。
【0152】
細胞は、培養細胞、任意選択的に、患者由来初代細胞、又は不死化細胞株であり得る。
【0153】
細胞は、哺乳類幹細胞であり得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、細胞は、操作された細胞、任意選択的に、代謝物及び化合物のバイオプロダクションに使用される操作された細胞である。
【0155】
細胞は、酵母細胞であってもよく、任意選択的に、酵母細胞は醸造に使用される。
【0156】
上記から明らかなように、本発明の方法は、いくつかの好ましい実施形態では、少なくとも第1及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅のための方法である。
【0157】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の標的ポリヌクレオチドの増幅のための方法である。
【0158】
上記のように、本方法はまた、「冗長」モデルと呼ばれるものも含み、同じ物理的標的ポリヌクレオチド分子の少なくとも2つ以上の部分が増幅される。
【0159】
したがって、いくつかの実施形態では、第1及び第2の標的ポリヌクレオチドは、同じ単一のポリヌクレオチド内の標的配列である。
【0160】
いくつかの特定の実施形態では、本方法は、第1及び第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、第1の標的生成物及び第2の標的生成物を生成することができる少なくとも1つのプライマーによる調整された競合ポリヌクレオチドの増幅を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、本方法は、2つの調整された競合ポリヌクレオチドの増幅を含み、本方法は、
第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、
第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第2の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、を含む。
【0162】
増幅に続いて、生成物の検出(例えば、フルオロフォア標識プローブによって生成されたシグナルの検出)が、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの
i)存在若しくは不在、
ii)特定の所定の開始濃度、
iii)所定のレベルを上回る若しくは下回る開始濃度、及び/又は
iv)所定の範囲内にある開始濃度、
のうちのいずれか1つ以上を示すことは明らかであろう。
【0163】
いくつかの実施形態では、上記の(i)、(ii)、(iii)、及び/又は(iv)は、
a)特定の遺伝子の相対発現、
b)2つ以上の特定の遺伝子の相対発現、
c)1つ以上のハウスキーピング遺伝子の発現、
d)特定の遺伝子の発現シグネチャの発現、
e)1つ又は複数の遺伝子の特定のアレルバリアントの発現、
f)遺伝子の変異バージョンの発現、
g)無細胞腫瘍DNAの発現、のうちの1つ以上を示し、
標的ポリヌクレオチドが、(a)~(g)の既知の配列の1つ以上の部分から選択される。
【0164】
本明細書で言及されるように、本発明の方法は、特定の試料が特定の状態Bよりもむしろ特定の状態Aにある可能性が高いかどうかを決定するために使用され得る。状態は、予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャが基づく状態である。いくつかの事例では、状態は、「特定の疾患」対「疾患なし」、又は「特定の疾患」対「他の疾患」、又は「特定の疾患」対「特定の疾患なし」であり得る。
【0165】
本発明によって提供される方法のいずれも、対象における疾患若しくは状態の診断及び/又は予後のためのものであり得る。
【0166】
したがって、本発明はまた、対象における疾患若しくは状態の診断及び/又は予後のための方法を提供する。
【0167】
いくつかの事例では、疾患又は状態を診断するには、少なくとも2つの遺伝子の相対発現レベルの評価が必要であり、任意選択的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の遺伝子の相対発現レベルの評価が必要である。
【0168】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、任意選択的に、前立腺がん、敗血症、カンジダ血症(bloodstream candidiasis)、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択される。特定の実施形態では、疾患は、結核である。
【0169】
非常に特定の実施形態では、疾患は、結核であり、差次的遺伝子調節シグネチャ及び/又は予測的関係又は差次的遺伝子調節シグネチャは、対象の白血球から特定される。
【0170】
いくつかの実施形態では、疾患が結核である場合、GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度は、いくつかの「他の疾患」を有することと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与する。遺伝子発現シグネチャは、結核を有しない患者におけるこれらの遺伝子のレベルと比較した、GBP6の上方調節、並びにARG1及びTMCC1の下方調節である。
【0171】
疾患が結核であり、GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度が、いくつかの「他の疾患」を有するものと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与する実施形態では、図17に、使用され得るプライマー及び競合配列の例を示す。
図17では、WT配列は、いずれの場合も標的配列である。Fプライマー及びRプライマー配列は、標的配列及び対応する競合配列を増幅するために使用される配列である。「コア」配列は、2つのプライマーアニーリング部位間の競合配列であり、「全配列」は、2つのプライマーによって増幅される全標的又は競合オリゴヌクレオチドの配列である。
【0172】
一実施形態では、標的がTMCC1であり、標的配列が配列番号4である場合、最適な競合を決定するために使用される適切な競合配列は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、及び36であるとみなされる。標的及び競合の増幅のための適切なプライマーを、配列番号1及び3に示す。この標的の寄与を検出するための適切なプローブを、配列番号77及び78に示す。
【0173】
一実施形態では、標的がARG1であり、標的配列が配列番号40である場合、最適な競合を決定するために使用される適切な競合配列は、配列番号42、44、46、及び48であるとみなされる。標的及び競合の増幅のための適切なプライマーを、配列番号37及び39に示す。この標的の寄与を検出するための適切なプローブを、配列番号79及び78に示す。
【0174】
一実施形態では、標的がGBP6であり、標的配列が配列番号52である場合、最適な競合を決定するために使用される適切な競合配列は、配列番号54、56、及び58であるとみなされる。標的及び競合の増幅のための適切なプライマーを、配列番号49及び51に示す。この標的の寄与を検出するための適切なプローブを、配列番号80及び77に示す。
【0175】
他の実施形態では、疾患は、がんであり、例えば、前立腺がん又は乳がん、任意選択的に、前立腺がんである。
【0176】
疾患が前立腺がんである場合、使用可能なプライマー及びプローブは、以下のとおりである:
【0177】
いくつかの実施形態では、疾患は、がんであり、遺伝子の変異バージョン、特定のアレルバリアント、及び/又は無細胞腫瘍DNAの相対発現が検出される。
【0178】
本明細書に記載の方法及び実施形態のいずれかにおいて、標的ポリヌクレオチドは、疾患状態に関連する(任意選択的に、腫瘍及び/又はがんの存在に関連する)、SNP、SNV(単一ヌクレオチドバリアント)、インデル、又はコピー数バリアント(CNV)を含み得、例えば、無細胞腫瘍DNAにおけるsnp、snv、又はインデルを含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、標的は、EGFR(特に、EGFRにおけるSNP)である。いくつかの実施形態では、標的配列は、配列番号62であり、適切な競合配列は、配列番号64、67、及び71である。適切なプライマー配列は、配列番号68及び70である。
【0180】
いくつかの方法では、ブロッカーオリゴヌクレオチドが使用され、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、その3’末端の伸長を受けることができず、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、一塩基多型を含む少なくとも1つの標的ポリヌクレオチドにおける配列の部分に相補的ではなく、任意選択的に、snpは、snvであるが、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、対応する野生型配列に相補的であり、ブロッカーオリゴヌクレオチドに相補的である配列を含む標的ポリヌクレオチドにおける配列は、プライマーのうちの1つに相補的な配列の少なくとも一部と重複する。
【0181】
いくつかの事例では、適切なブロッカー配列は、配列番号75及び76である。
【0182】
いくつかの事例では、試料は、特定の疾患又は状態を有することが既に疑われている対象から得られる。他の事例では、本方法は、日常的なスクリーニングプログラムの一部として使用することができ、この場合、標的ポリヌクレオチドは、特定の疾患又は状態を有すると疑われない対象から得られた試料に由来してもよい。対象は、例えば、年齢又はライフスタイルに起因して、特定の疾患又は状態のリスクがあるとみなされ得る。
【0183】
ここで述べたように、本発明は、医学的使用に加えて、バイオエンジニアリング及び産業バイオテクノロジーの分野において有用である。いくつかの実施形態では、特定の1つ又は複数の遺伝子の相対発現の検出は、培養物中の細胞の特定の天然の遺伝子及び/又は操作された遺伝子の発現を示すものであり、例えば、細胞若しくはシステムが好ましく挙動しているかどうか、又は培養パラメータを最適化する必要があるかどうかを、当業者が決定することを可能にすることができる。
【0184】
上記のように、任意の増幅手段が、本発明での使用に好適である。しかしながら、好ましい増幅方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はリコンビナーゼポリメラーゼ反応(RPA)が挙げられる。
【0185】
上記からわかるように、本発明は、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの増幅のための多数の方法を提供する。最初に示したように、本発明は、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、特定の状態の相対確率に変換する方法、
2つのフルオロフォア標識プローブのみを使用して、試料中の少なくとも3つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも3つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも3つの変異の存在若しくは不在を検出する方法、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量(例えば、少なくとも2つの遺伝子の相対発現)又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在を、単一の値に組み合わせる方法、
試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量又は少なくとも2つの変異の存在若しくは不在によって提供される予測的関係、決定面、又は差次的標的オリゴヌクレオチドパターン(例えば、差次的遺伝子調節シグネチャ)を、単一の値に変換する方法、
競合増幅ネットワークを用いて、統計情報を模倣する方法、
及び
複雑な遺伝子発現パターンを、単一の値に低減する方法、を提供し、
本方法は、試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅するステップを含む。1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅するステップは、本明細書に記載の増幅方法のいずれかに従って行うことができる。
【0186】
本発明は、対象における疾患若しくは状態の診断又は予後の方法を更に提供し、本方法は、本発明の増幅方法のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、対象は、第1の標識及び第2の標識の相対量が疾患若しくは状態の予後を示す場合、疾患若しくは状態又は疾患若しくは状態の予後を有すると診断される。
【0187】
上記のように、疾患又は状態は、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、敗血症、カンジダ血症、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択され得る。疾患又は状態の選好は、本明細書の他箇所に記載のとおりである。
【0188】
本発明はまた、本発明の方法を実施するために使用することができる様々な組成物及びキットも提供する。例えば、本発明は、以下のうちの1つ以上を含む組成物を提供する:
a)本明細書に記載される少なくとも1つの標的ポリヌクレオチド、
b)本明細書に記載される少なくとも1つの調整された競合ポリヌクレオチド、
c)本明細書に定義される少なくとも1つのプライマー、好ましくは少なくとも2つのプライマー、
d)本明細書に定義される少なくとも1つ以上のプローブ群であって、各プローブ群が、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含む、プローブ群。
【0189】
当業者は、核酸増幅のための組成物が、1つ以上の標準的な増幅成分(例えば、ポリメラーゼ酵素、適切な量の4つのヌクレオチドA、C、T、及びGの各々、リコンビナーゼ酵素、一本鎖結合タンパク質、並びに/又は適切な量のヌクレオチドA、C、T、G、及びUの各々)を含み得ることを理解するであろう。
【0190】
本発明はまた、本明細書に定義される調整された競合ポリヌクレオチドも提供する。調整された競合ポリヌクレオチドの特徴の選好は、本明細書の他箇所に記載されている。
【0191】
本発明はまた、本発明の方法のいずれかを実施するためのキットを提供し、例えば、キットは、以下のうちの1つ以上を含む:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー、
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド、
d)好適な緩衝液、
e)使用説明書。
【0192】
特定の実施形態では、キットは、以下を含む:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー、
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド。
【0193】
本発明はまた、以下のうちのいずれか1つ以上を含む組成物も提供する:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー、
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド。
【0194】
一実施形態では、組成物は、以下を含む:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、及び
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー。
【0195】
一実施形態では、組成物は、以下を含む:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、及び
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド。
【0196】
一実施形態では、組成物は、以下を含む:
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー、
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド。
【0197】
一実施形態では、組成物は、以下を含む:
a)本明細書に記載される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)本明細書に記載される1つ以上のプライマー、
c)本明細書に記載される第1の標識で標識された第1のプローブポリヌクレオチド及び本明細書に記載される第2の標識で標識された第2のプローブポリヌクレオチド。
【0198】
一実施形態では、キット又は組成物は、図17に示される配列のうちのいずれか1つ以上を含む。
【0199】
一実施形態では、キット又は組成物は、TMCC1 mRNAの一部を増幅するためのものであり、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、及び36の競合配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、キット又は組成物はまた、標的及び競合を増幅するための適切なプライマー(例えば、配列番号1及び3のもの)も含む。
【0200】
同じ又は異なる実施形態では、キット又は組成物は、ARG1 mRNAの一部を増幅するためのものであるか、又はそれを増幅するためのものでもあり、配列番号42、44、46、及び48の競合配列のうちのいずれか1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キット又は組成物はまた、標的及び競合を増幅するための適切なプライマー(例えば、配列番号39及び39のもの)も含む。
【0201】
同じ又は異なる実施形態では、キット又は組成物は、GBP6 mRNAの一部を増幅するためのものであるか、又はそれを増幅するためのものでもあり、配列番号54、56、及び58の競合配列のうちのいずれか1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キット又は組成物はまた、標的及び競合を増幅するための適切なプライマー(例えば、配列番号49及び51のもの)も含む。
【0202】
他の実施形態では、キット又は組成物は、野生型アレルとL858R SNPなどの特定の変異とを区別するために、EGFRゲノムDNAの一部(例えば、ctDNAの試料中にあるゲノムDNA)を増幅するためのものであり、配列番号64、67、及び71の競合配列のうちのいずれか1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キット又は組成物はまた、標的及び競合を増幅するための適切なプライマー(例えば、配列番号68及び70のもの)も含む。
【0203】
本発明はまた、本明細書に記載される少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチドを含むコレクション又はキットを提供し、コレクションが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は少なくとも200個の調整された競合ポリヌクレオチドを含む。
【0204】
本発明はまた、少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド及び少なくとも2つの対応する標識プローブを含むコレクション又はキットを提供する。
【0205】
本発明はまた、以下を含むコレクション又はキットも提供する:
少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、
最後に、2つの対応する標識プローブ、及び
少なくとも2つのプライマー。
【0206】
更に、本発明は、以下を含むコレクション又はキットを提供する:
先行請求項のいずれかによって定義される少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、
最後に、先行請求項のいずれかによって定義される2つの対応する標識プローブ、
先行請求項のいずれかによって定義される少なくとも2つのプライマー。
【0207】
本発明はまた、第1の標的ポリヌクレオチドとの少なくとも第1のプライマーとのハイブリダイゼーションに対して競合し、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物の増幅をもたらす、第1の競合ポリヌクレオチドを調整する方法も提供し、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、標的ポリヌクレオチドの予測的関係若しくは差次的遺伝子調節シグネチャを特定の状態に近似、再現、若しくは一致させ、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに近似、再現、若しくは一致し、
本方法が、
第1の標的生成物の配列及び/又は第1の標的生成物の長さに関して、調整された競合ポリヌクレオチドの配列及び/又は調整された競合増幅生成物の長さを最適化することを含む。当業者が特定の状況に応じて競合ポリヌクレオチドをどのように調整するかについての詳細な議論が上に与えられており、また、例えば、以下の「ロジスティック回帰の模倣」セクションも参照されたい。
【0208】
本発明の競合ポリヌクレオチドを調整する方法はまた、
当該増幅に使用される第2のプライマーであって、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、それにより、第1の標的生成物が、2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)、第2のプライマー、
当該増幅に使用される第3のプライマーであって、第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、それにより、第1の調整された競合生成物が、2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)、第3のプライマー、も含み得、
任意選択的に、第2及び第3のプライマーが、同じ配列を有する。
【0209】
いくつかの事例では、当該最適化は、2つ以上の試験調整された競合ポリヌクレオチドを生成することを含み、増幅後、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、標的の予測的関係若しくは差次的遺伝子調節シグネチャを特定の状態に近似、再現、若しくは一致させ、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに近似、再現、若しくは一致し、
第1の標的ポリヌクレオチドの最も好ましい増幅をもたらす調整された競合を選択することをもたらす。
【0210】
いくつかの事例では、当該最適化は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の異なる試験調整された競合ポリヌクレオチドを産生することを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、当該最適化は、各試験調整された競合ポリヌクレオチドを用いて、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回の試験増幅反応を行うことを含み、
任意選択的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回の増幅反応が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の異なる標的ポリヌクレオチドの濃度及び/又は標的ポリヌクレオチド分子の数を使用して行われる。
【0212】
好ましい実施形態では、5回の増幅反応の少なくとも2回の反復が行われ、5回の増幅反応の各々は、異なる調整された競合ポリヌクレオチドを用いる。
【0213】
いくつかの事例では、特定の試験調整された競合ポリヌクレオチドを使用した各試験増幅は、異なる濃度及び/又は数の標的ポリヌクレオチド鋳型を使用して行われる。
【0214】
いくつかの実施形態では、試験増幅反応は、100コピー/μL~10コピー/μLにわたる範囲の濃度及び/又は数の標的ポリヌクレオチド鋳型を用いて行われる。
【0215】
本明細書に記載されるように、いくつかの事例では、試験調整された競合ポリヌクレオチドは、異なるGC含有量を有するように設計される。
【0216】
また、本発明によって先行請求項のいずれか一項に記載の競合増幅反応を最適化する方法が提供され、当該最適化が、
a)合成核酸配列の開始濃度を増加又は減少させること、及び/又は
b)核酸プライマーのいずれかの開始濃度を増加又は減少させること、を含む。
【0217】
本発明はまた、少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの多重競合増幅の方法を提供し、本方法は、少なくとも1つの競合ポリヌクレオチドを含み、標的増幅生成物が、同じ標識で標識された(任意選択的に、同じフルオロフォアで標識された)プローブを使用して検出され、任意選択的に、競合ポリヌクレオチドが、先行請求項のいずれかによる調整された競合ポリヌクレオチドである。
【0218】
本発明はまた、システムの転写状態を決定する方法を提供し、本方法は、本発明のいずれかの方法による競合増幅を含む。
【0219】
本発明はまた、システムが状態A又は状態Bにあるかを決定する方法を提供し、本方法は、本発明のいずれかの方法による競合増幅を含む。
【0220】
本方法はまた、試料中の少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法を提供し、本方法は、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)第1のプライマーセットであって、プライマーセットが、第1の標的ポリヌクレオチド及び第1の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第1の標的増幅生成物及び第1の競合増幅生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第1のプライマーセット、
d)第2のプライマーセットであって、プライマーセットが、第2の標的ポリヌクレオチド及び第2の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第2の標的生成物及び第2の競合生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第2のプライマーセット、
e)第1のプローブ群であって、第1のプローブ群が、第1の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識標的プローブ及び第1の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識競合プローブを含む、第1のプローブ群、
d)第2のプローブ群であって、第2のプローブ群が、第2の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識標的プローブ及び第2の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識競合プローブを含む、第2のプローブ群、を提供することを含み、
i)第1の標識標的プローブ及び第2の標的標識プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第2の標識で標識されるか、又は
ii)第1の標識標的プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識標的プローブが、同じ第2の標識で標識され、
第1及び第2のプライマーセットが標的及び競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする。
【0221】
少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法のいくつかの実施形態では、本方法は、
e)更なる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のプライマーセット及び対応するプローブ群を提供することを含む。
【0222】
少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法のいくつかの実施形態では、標識標的プローブのうちの1つは、第2の標識で標識され、対応する標識競合プローブは、第1の標識で標識される。
【0223】
少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法のいくつかの実施形態では、本方法は、多重増幅後、第1の標識及び第2の標識の量を同時に検出することを更に含む。
【0224】
本明細書における明らかに以前に公開された文書のリスト又は議論は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であるか又は通常の一般的な知識であることを認めているとみなされるべきではない。
【0225】
本発明の所与の態様、特徴、又はパラメータの選好及び選択肢は、文脈が別段の指示をしない限り、全ての他の態様のあらゆる選好及び選択肢と組み合わせて開示されているとみなされるべきである。例えば、本発明によって提供される特徴の例示的な組み合わせとしては、以下が挙げられる:
【0226】
1)試料中の少なくとも2つの遺伝子の相対発現を単一の値に組み合わせる方法であって、本方法は、6つの標的ポリヌクレオチド及び6つの調整された競合ポリヌクレオチドを増幅するステップを含み、6つの標的増幅生成物が、各々、HEXで標識された異なるハイブリダイゼーションプローブでプローブされ、6つの調整された競合増幅生成物の各々が、FAMで標識された異なるハイブリダイゼーションプローブでプローブされる、方法、
【0227】
2)がんを診断する方法であって、本方法が、試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅するステップを含み、本方法が、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)少なくとも第1のプライマーであって、
試料中の第1の標的ポリヌクレオチド、及び
第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、少なくとも第1のプライマー、を提供することと、
標的ポリヌクレオチド(試料中に存在する場合)及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されるように、プライマー伸長反応を開始することと、を含み、
増幅が、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物をもたらす、方法。
【0228】
特定の出願のために本発明を実施するために当業者がとることができる全体的なアプローチの概要は、以下のとおりである:
a)開業医は、患者データに対して回帰(例えば、ロジスティック回帰)を行って、どの遺伝子転写産物を標的にするか、並びに各転写産物の発現レベルと診断確率との間の適切な関係の両方を決定することによって開始する。当業者は、ロジスティック回帰が行われ得る既存のデータを得ることができる。
b)次に、開業医は、各標的転写産物について、CANアーキテクチャ(すなわち、競合配列の数及び共有プライマーの配置)を選択する。CANアーキテクチャを選択する例示的な方法は、本明細書の他箇所に記載されている。
c)次いで、開業医は、患者データの回帰結果(例えば、各オリゴヌクレオチドの濃度及び所望の増幅挙動)を最適に要約する各CANモジュールの理想的な成分を計算的に決定する。以前に取得したデータを使用して、開業医は、各競合オリゴヌクレオチドの設計パラメータ(長さ及びGC含有量)を提案し、所望の増幅挙動をもたらす可能性が最も高いものを選択する。次いで、これらのパラメトリック設計を使用して配列設計を生成し、それらを取得し、標準的なPCR増幅を介して実験的に試験し、分析して、それらの挙動を説明することができる。これらの新しい観測は、マルチタスク回帰フレームワークにおける以前の観測と組み合わされ、統計モデルは、設計パラメータと各増幅パラメータとの間の経験的関係を一緒に学習する。
d)更なる最適化が必要な場合、この統計モデルを使用して、新たに取得したデータに照らして、望ましい増幅挙動を生成する可能性が最も高い新しい配列設計を提案することができる。このプロセスは、CAN反応を介したロジスティック回帰結果の再現を可能にする好適な競合配列が見つかるまで続く。
【0229】
競合ポリヌクレオチドを調整する例示的な方法の概要は、以下のとおりである:
【0230】
シミュレーションを実施して、最適な挙動を記述する理想的なパラメータ値を特定した。1つ以上のこれらのパラメータ値によって反映される挙動を示す競合配列を設計することが、調整の目標である。最初に、多数のアンプリコン配列が、プライマー間の同一のプライマー配列及び可変「コア」配列を用いて設計及び取得される。これらの配列は実験的に試験され、それらの挙動を分析して記述的パラメータの値を導出する。これらの配列のいずれも理想的な増幅挙動を示さないと仮定して、データは、標的挙動に一致する可能性が最も高い新しい配列を合理的に設計するために使用される。この目的のために、様々な配列設計パラメータが増幅挙動を記述する目的のパラメータをどのように予測したかを決定するために行われる回帰が行われる。具体的には、ガウス過程回帰子(regressor)は、「コア」配列の長さ及びGC含有量を「増幅率」パラメータに関連付けるように訓練することができる。この回帰子又は任意の他のかかる回帰子を使用して、所与の設計されたアンプリコンの挙動を予測し、所望の目的を達成する可能性が最も高い配列記述子(descriptor)(長さ及びGC含有量)を提供することができる。このシミュレーション、設計、実験、分析、及び回帰のプロセスは、好適な配列が見つかるまで、競合増幅ネットワーク内のあらゆる配列に対して反復される。本アプローチの改変は、回帰内にプライマー配列自体に関する情報を組み込むことを含む。これにより、設計パラメータと増幅パラメータとの間のグローバルな関係、及び所与のプライマー対に特異的なその関係の特質の両方を決定することができる。
【0231】
本発明は、以下の番号付けされた実施形態の段落で更に説明される。
【0232】
1.試料中の少なくとも2つの標的オリゴヌクレオチドの相対存在量を、特定の状態の相対確率に変換する方法。
【0233】
2.2つのフルオロフォア標識プローブのみを使用して、試料中の少なくとも3つの標的オリゴヌクレオチドの相対存在量を検出する方法。
【0234】
3.試料中の少なくとも2つの標的オリゴヌクレオチドの相対存在量を、単一の値に組み合わせる方法。
【0235】
4.試料中の少なくとも2つのオリゴヌクレオチドの相対存在量によって提供される予測的関係又は決定面を、単一の値に変換する方法。
【0236】
5.競合増幅ネットワークを用いて、統計情報を模倣する方法。
【0237】
6.方法が、試料中のより多くの標的ポリヌクレオチドのうちの1つを増幅するステップを含み、任意選択的に、増幅するステップが、実施形態7~82のいずれか1つに記載の増幅するステップである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
7.試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法であって、本方法が、
a)1つ以上の標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料、
b)第1の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)少なくとも第1のプライマーであって、
試料中の第1の標的ポリヌクレオチド、及び
第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、少なくとも第1のプライマー、を提供することと、
標的ポリヌクレオチド(試料中に存在する場合)及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されるように、プライマー伸長反応を開始することと、を含み、
増幅が、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物をもたらす、方法。
【0239】
8.方法が、
第2のプライマー、
第2の競合ポリヌクレオチド、及び/又は
第2の標的ポリヌクレオチド、を提供することを含む、実施形態7に記載の方法。
【0240】
9.第2のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらす、実施形態8に記載の方法。
【0241】
10.第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることもでき、第1及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらす、実施形態7又は8に記載の方法。
【0242】
11.方法が、第2の調整された競合ポリヌクレオチドを提供することを含む、実施形態7~10のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
12.第2のプライマーが、
a)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらし、かつ
b)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、プライマー伸長反応を開始することができ、それにより、第2の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されて、第2の調整された競合生成物の生成をもたらし、任意選択的に、更なるプライマーと組み合わせて、第2のプライマー及び更なるプライマーが、第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第2の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
任意選択的に、第2のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができない、実施形態8又は11に記載の方法。
【0244】
13.第2の標的ポリヌクレオチドが、第1の標的ポリヌクレオチドと同じポリヌクレオチド分子の一部である、実施形態7~12のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
14.第2の標的ポリヌクレオチドが、第1の標的ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチド分子上にある、7~12に記載の方法。
【0246】
16.第2のプライマーが、
a)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
b)第1又は第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができず、
方法が、第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる第3のプライマーを含む、実施形態7~14のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
17.方法が、第4のプライマーを提供することを含み、第4のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第4のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的PCR生成物の形成を可能にする、実施形態7~16のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
18.方法が、
a)第2のプライマーであって、
i)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
ii)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第2のプライマーと、
b)第3のプライマーであって、
i)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第3及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合ポリヌクレオチド生成物、任意選択的に、第1の調整された競合ポリヌクレオチドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
ii)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第3のプライマーと、
c)第4のプライマーであって、第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第3及び第4のプライマーが、第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第2の調整された競合ポリヌクレオチド生成物、任意選択的に、第2の調整された競合ポリヌクレオチドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらす、第4のプライマーと、を提供することを含む、実施形態7~175のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
19.第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅率と異なる、実施形態7~18のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
20.プライマー伸長前の標的ポリヌクレオチドの初期の数及び調整された競合ポリヌクレオチドの数が同じであるか又は実質的に同じである場合、生成された標的生成物ポリヌクレオチドの数が、生成された調整された競合ポリヌクレオチドの数と異なる、実施形態7又は19に記載の方法。
【0251】
21.増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列及び少なくとも第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、1つ以上の状態に対する標的の予測的関係に近似又は再現又は一致するような様式で、第1の標的ポリヌクレオチドの初期濃度とともに変化する最終的な検出可能なシグナルをもたらすように選択される、実施形態7~20のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
22.第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致する、実施形態7~21のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
23.増幅される第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列と、95%、90%、88%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%未満の配列同一性を共有する、実施形態7~22のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
24.増幅される第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、少なくとも15%のGC、又は少なくとも25%、少なくとも35%である、少なくとも55%である、少なくとも65%である、少なくとも75%である、少なくとも85%である、又は少なくとも85%のGCを含む、実施形態7~23のいずれか1つに記載の方法。
【0255】
25.第1の調整された競合生成物が、第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は少なくとも330ヌクレオチド長い、実施形態7~24のいずれか1つに記載の方法。
【0256】
26.第1の調整された競合生成物が、
第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド短く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド短いか、又は
第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド長い、実施形態7~25のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
27.1つ以上の標的生成物、任意選択的に、1つ以上の標的PCR生成物、及び1つ以上の調整された競合生成物、任意選択的に、1つ以上の競合ポリヌクレオチドPCR生成物が検出される、実施形態7~26のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
28.方法が、1つ以上のプローブ群を提供することを含み、各プローブ群が、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含み、
第1の標識と第2の標識とが異なる、実施形態7~27のいずれか1つに記載の方法。
【0259】
29.第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができ、第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる、実施形態28に記載の方法。
【0260】
30.第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、
第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、
任意選択的に、いずれのプローブも、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができない、実施形態28又は29に記載の方法。
【0261】
31.単一のプローブ群内に、第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
32.単一のプローブ群内に、第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
33.単一のプローブ群内に、
第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ、及び
第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブが存在する、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
34.方法が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ群を提供することを含み、
任意選択的に、特定の標識(任意選択的に、フルオロフォア)が、2つ以上のプローブ群で使用されない、実施形態28~33のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
35.プローブ上に存在する標識が、第1の標識及び第2の標識のみである、実施形態28~34のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
36.各プローブが、単一タイプの標識で標識される、実施形態28~35のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
37.第1及び第2の標識が、フルオロフォアであり、任意選択的に、各プローブが、クエンチャーを含む、実施形態28~36のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
38.第1の標識がFAMであり、第2の標識がHEXであるか、又は第1の標識がHEXであり、第2の標識がFAMである、実施形態28~37のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
39.
i)第1の標的生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブ及び第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、異なる標識で標識され、かつ/又は
ii)第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブ及び第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、異なる標識で標識される、実施形態28~38のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
40.標的生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、同じ第1の標識で標識され、調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、同じ第2の標識で標識される、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
41.
標的生成物にハイブリダイズすることができるプローブのうちの少なくとも1つが、第1の標識で標識され、調整された競合生成物にハイブリダイズすることができるプローブのうちの少なくとも1つが、同じ第1の標識で標識されるか、又は
標的生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、第1の標識で標識され、第2の標識で標識される標的生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、第1の標識で標識され、競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、第2の標識で標識される、実施形態28~40のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
42.特定の状態の正の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、第1の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、第2の標識で標識され、
かつ/又は
特定の状態の負の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、第2の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、第1の標識で標識される、実施形態28~41のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
43.増幅後に、第1のプローブによって検出される生成物の量及び第2のプローブによって検出される生成物の量が決定される、実施形態28~42のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
44.各プローブの相対量を標準曲線と比較して、1つ以上の状態の相対確率を決定する、実施形態43に記載の方法。
【0275】
45.方法が、使用される全てのフルオロフォアの単一読み取りを含む、実施形態7~44のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
46.方法が、遺伝子発現ネットワークの一部の状態を、任意選択的に、単一の値として、捕捉する、実施形態7~45のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
47.標的ポリヌクレオチドが、RNAであり、任意選択的に、RNA転写産物であり、任意選択的に、mRNAである、実施形態7~46のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
48.標的ポリヌクレオチドが、非コードRNAであり、任意選択的に、miRNA、lncRNA、又はsiRNAである、実施形態7~47のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
49.標的ポリヌクレオチドが、DNAである、実施形態7~46のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
50.試料が、組織、生検、血液、血漿、血清、病原体、微生物細胞、細胞培養物、及び細胞溶解物を含むか又はそれらからなる群から選択される、実施形態7~49のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
51.試料が、
細胞、任意選択的に、白血球及び/若しくは赤血球、エクソソーム、循環腫瘍DNA(ctDNA)、無細胞DNA(cfDNA)、RNA、又は病原体核酸のうちのいずれか1つ以上を含む、実施形態7~50のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
52.細胞が、
哺乳類細胞、細菌細胞、酵母細胞、若しくは植物細胞;
培養細胞、任意選択的に、初代患者由来細胞、若しくは不死化細胞株;
哺乳類幹細胞;
操作された細胞、任意選択的に、代謝物及び化合物のバイオプロダクションに使用される操作された細胞、並びに/又は
酵母細胞、任意選択的に、醸造に使用される酵母細胞である、50又は51に記載の方法。
【0283】
53.方法が、少なくとも第1及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅のためのものであり、任意選択的に、方法が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の標的ポリヌクレオチドの増幅のためのものである、実施形態7~52のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
54.少なくとも第1及び第2の標的ポリヌクレオチドが、同じ単一のポリヌクレオチド内の標的配列である、実施形態53に記載の方法。
【0285】
55.方法が、第1及び第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、第1の標的生成物及び第2の標的生成物を産生することができる少なくとも1つのプライマーによる調整された競合ポリヌクレオチドの増幅を含む、実施形態7~54のいずれか1つに記載の方法。
【0286】
56.方法が、2つの調整された競合ポリヌクレオチドの増幅を含み、方法が、
第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、
第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第2の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、を含む、実施形態7~55のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
57.増幅生成物の検出が、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの
i)存在若しくは不在、
ii)特定の所定の開始濃度、
iii)所定のレベルを上回る若しくは下回る開始濃度、及び/又は
iv)所定の範囲内にある開始濃度、
を示す、実施形態7~56のいずれか1つに記載の方法。
【0288】
58.(i)、(ii)、(iii)、及び/又は(iv)が、
a)特定の遺伝子の相対発現、
b)2つ以上の特定の遺伝子の相対発現、
c)1つ以上のハウスキーピング遺伝子の相対発現、
d)特定の遺伝子の発現シグネチャの相対発現、
e)1つ又は複数の遺伝子の特定のアレルバリアントの相対発現、
f)遺伝子の変異バージョンの相対発現、
g)無細胞腫瘍DNAの相対発現、のうちの1つ以上を示し、
標的ポリヌクレオチドが、(a)~(g)の既知の配列の1つ以上の部分から選択される、実施形態57に記載の方法。
【0289】
59.差次的遺伝子調節の程度が、いくつかの他の特定の状態2にあるものと比較して、特定の状態1にある試料の全体的な確率に寄与する、実施形態7~58のいずれか1つに記載の方法。
【0290】
60.特定の状態1が、「特定の疾患」であり、特定の状態2が、「疾患なし」又は「他の疾患」又は「特定の疾患なし」である、実施形態1~のいずれか1つに記載の方法。
【0291】
61.方法が、対象における疾患若しくは状態の診断及び/又は予後のためのものである、実施形態1~60のいずれか1つに記載の方法。
【0292】
62.疾患又は状態の診断が、少なくとも2つの遺伝子の相対発現レベルの評価を必要とし、任意選択的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の遺伝子の相対発現レベルの評価を必要とする、実施形態61に記載の方法。
【0293】
63.疾患又は状態が、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、任意選択的に、前立腺がん、敗血症、カンジダ血症(bloodstream candidiasis)、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択される、実施形態61又は62に記載の方法。
【0294】
64.疾患が、結核である、実施形態61~63のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
65.疾患が、結核であり、差次的遺伝子調節シグネチャ又は予測的関係が、対象の白血球から特定される、実施形態64に記載の方法。
【0296】
66.GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度が、いくつかの「他の疾患」を有するのと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与し、遺伝子発現シグネチャが、結核を有しない患者におけるこれらの遺伝子のレベルと比較して、GBP6の上方調節、並びにARG1及びTMCC1の下方調節である、実施形態63~65のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
67.疾患が、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、任意選択的に、前立腺がんである、実施形態61~63のいずれか1つに記載の方法。
【0298】
68.遺伝子の変異バージョン、特定のアレルバリアント、及び/又は無細胞腫瘍DNAの相対発現が検出される、実施形態61~67のいずれか1つに記載の方法。
【0299】
69.疾患が、がんである、実施形態61~68のいずれか1つに記載の方法。
【0300】
70.標的ポリヌクレオチドが、疾患状態に関連する(任意選択的に、腫瘍及び/又はがんの存在に関連する)、snp、snv(単一ヌクレオチドバリアント)、インデル、又はコピー数バリアント(CNV)を含む、実施形態7~69のいずれか1つに記載の方法。
【0301】
71.標的ポリヌクレオチドが、無細胞腫瘍DNAにおけるsnp、snv、又はインデルを含む、実施形態70に記載の方法。
【0302】
72.方法が、ブロッカーオリゴヌクレオチドを添加することを更に含み、ブロッカーオリゴヌクレオチドが、その3’末端の伸長を受けることができず、ブロッカーオリゴヌクレオチドが、一塩基多型を含む少なくとも1つの標的ポリヌクレオチドにおける配列の部分に相補的ではなく、任意選択的に、snpは、snvであるが、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、対応する野生型配列に相補的であり、ブロッカーオリゴヌクレオチドに相補的である配列を含む標的ポリヌクレオチドにおける配列は、プライマーのうちの1つに相補的な配列の少なくとも一部と重複する、実施形態7~71のいずれか1つに記載の方法。
【0303】
73.標的ポリヌクレオチドが、特定の疾患又は状態を有すると疑われる対象から得られた試料に由来する、実施形態7~72のいずれか1つに記載の方法。
【0304】
74.標的ポリヌクレオチドが、特定の疾患又は状態を有すると疑われない対象から得られた試料に由来する、実施形態7~72のいずれか1つに記載の方法。
【0305】
75.特定の遺伝子又は遺伝子の発現の検出が、培養中の細胞における特定の天然の遺伝子及び/又は操作された遺伝子の発現を示す、実施形態7~74のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
76.細胞が、遺伝子操作された細菌、植物、又は酵母細胞である、実施形態7~75のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
77.核酸が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はリコンビナーゼポリメラーゼ反応(RPA)を使用して増幅される、実施形態7~76のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
78.対象における疾患若しくは状態の診断又は予後の方法であって、方法が、実施形態1~77のいずれか1つに記載の方法を含む、方法。
【0309】
79.対象が、第1の標識及び第2の標識の相対量が疾患若しくは状態の予後を示す場合、疾患若しくは状態又は疾患若しくは状態の予後を有すると診断される、実施形態78に記載の方法。
【0310】
80.疾患又は状態が、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、敗血症、カンジダ血症、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択される、実施形態78又は79に記載の方法。
【0311】
81.疾患が、結核であり、任意選択的に、
差次的遺伝子調節シグネチャ及び/若しくは予測的関係が、対象の白血球から特定され、かつ/又は
GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度が、いくつかの「他の疾患」を有することと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与する、実施形態78~80xのいずれか1つに記載の方法。
【0312】
82.疾患が、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、任意選択的に、前立腺がんである、実施形態78~80のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
83.以下のうちの1つ以上を含む組成物:
a)実施形態7~82のいずれか1つに定義される少なくとも1つの標的核酸配列、
b)実施形態7~82のいずれか1つに定義される少なくとも1つの調整された競合ポリヌクレオチド、
c)実施形態7~82のいずれか1つに定義される少なくとも1つのプライマー、任意選択的に、実施形態7~82のいずれか1つに定義される少なくとも2つのプライマー、
d)少なくとも1つ以上のプローブ群であって、各プローブ群が、任意選択的に、実施形態28~82のいずれか1つに定義される、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つ以上のプローブ群。
【0314】
84.実施形態83に記載の組成物であって、
d)ポリメラーゼ酵素、
e)適切な量の各々の4つのヌクレオチドA、C、T、及びG、を更に含む、組成物。
【0315】
85.実施形態83又は84に記載の組成物であって、
f)リコンビナーゼ酵素、
g)一本鎖結合タンパク質、
h)ポリメラーゼ酵素、
i)適切な量の各々のヌクレオチドA、C、T、G、及びU、を更に含む、組成物。
【0316】
86.実施形態7~85のいずれか1つに定義される、調整された競合ポリヌクレオチド。
【0317】
87.実施形態1~82のいずれか1つに記載の方法を実施するためのキットであって、キットが、
a)実施形態7~82によって定義される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)1つ以上のプライマー、
c)実施形態28~82のいずれか1つに定義される第1のプローブ群、
d)好適な緩衝液、
e)使用説明書、のうちの1つ以上を含み、
任意選択的に、キットが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは少なくとも10個の異なる調整された競合ポリヌクレオチド、及び/又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは少なくとも10個の異なるプローブ群を含む、キット。
【0318】
88.実質的に本明細書に記載される方法、核酸配列、又はキット。
【0319】
89.少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチドのコレクション又はキットであって、コレクションが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は少なくとも200個の調整された競合ポリヌクレオチドを含み、任意選択的に、調整された競合ポリヌクレオチドが、実施形態7~88のいずれかによって定義される、コレクション又はキット。
【0320】
90.少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド及び少なくとも2つの対応する標識プローブを含む、コレクション/キット。
【0321】
91.
少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、
最後に、2つの対応する標識プローブ、及び
少なくとも2つのプライマー、を含む、コレクション/キット。
【0322】
92.
先行実施形態のいずれかによって定義される少なくとも2つの調整された競合ポリヌクレオチド、
先行実施形態のいずれかによって定義される最後に2つの対応する標識プローブ、及び
先行実施形態のいずれかによって定義される少なくとも2つのプライマー、を含む、コレクション/キット。
【0323】
93.少なくとも第1のプライマーの第1の標的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対して競合し、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物の増幅をもたらす、第1の競合ポリヌクレオチドを調整する方法であって、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、特定の状態に対する標的ポリヌクレオチドの予測的関係に一致し、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致し、
本方法が、
第1の標的生成物の配列及び/又は第1の標的生成物の長さに関して、調整された競合ポリヌクレオチドの配列及び/又は調整された競合増幅生成物の長さを最適化することを含む、方法。
【0324】
94.
第1の標的生成物が2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)ように第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第2のプライマーが当該増幅に使用され、
第1の調整された競合生成物が2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)ように第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第3のプライマーが当該増幅に使用され、
任意選択的に、第2及び第3のプライマーが、同じ配列を有する、実施形態93に記載の方法。
【0325】
95.当該最適化が、増幅後、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、特定の状態に対する標的の予測的関係に一致し、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致し、
第1の標的ポリヌクレオチドの最も好ましい増幅をもたらす調整された競合を選択することをもたらす、2つ以上の試験調整された競合ポリヌクレオチドを生成することを含む、実施形態93又は94に記載の方法。
【0326】
96.当該最適化が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の異なる試験調整された競合ポリヌクレオチドを産生することを含む、実施形態93~95のいずれか1つに記載の方法。
【0327】
97.当該最適化が、各試験調整された競合ポリヌクレオチドを用いて、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回の試験増幅反応を行うことを含み、任意選択的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回の増幅反応が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の異なる標的ポリヌクレオチドの濃度及び/又は標的ポリヌクレオチド分子の数を使用して行われる、実施形態93~96のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
98.特定の試験調整された競合ポリヌクレオチドを使用した各試験増幅が、異なる濃度及び/又は数の標的ポリヌクレオチド鋳型を使用して行われる、実施形態97に記載の方法。
【0329】
99.試験増幅反応が、100コピー/μL~10コピー/μLにわたる範囲の濃度及び/又は数の標的ポリヌクレオチド鋳型を用いて行われる、実施形態97又は98に記載の方法。
【0330】
100.試験調整された競合ポリヌクレオチドが、異なるGC含有量を有するように設計される、実施形態93~99のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
100.先行実施形態のいずれか1つに記載の競合増幅反応を最適化する方法であって、当該最適化が、
a)合成核酸配列の開始濃度を増加又は減少させること、及び/又は
b)核酸プライマーのいずれかの開始濃度を増加又は減少させること、を含む、方法。
【0332】
101.少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの多重競合増幅の方法であって、方法が、少なくとも1つの競合ポリヌクレオチドを含み、標的増幅生成物が、同じ標識で標識された(任意選択的に、同じフルオロフォアで標識された)プローブを使用して検出され、任意選択的に、競合ポリヌクレオチドが、先行請求項のいずれかによる調整された競合ポリヌクレオチドである、方法。
【0333】
102.方法が、先行実施形態のいずれかによる競合増幅を含む、システムの転写状態を決定する方法。
【0334】
103.システムが状態A又は状態Bにあるかを決定する方法であって、本方法が、先行実施形態のいずれかによる競合増幅を含む、方法。
【0335】
104.試料中の少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法であって、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)第1のプライマーセットであって、プライマーセットが、第1の標的ポリヌクレオチド及び第1の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第1の標的増幅生成物及び第1の競合増幅生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第1のプライマーセット、
d)第2のプライマーセットであって、プライマーセットが、第2の標的ポリヌクレオチド及び第2の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第2の標的生成物及び第2の競合生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第2のプライマーセット、
e)第1のプローブ群であって、第1のプローブ群が、第1の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識標的プローブ及び第1の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識競合プローブを含む、第1のプローブ群、
d)第2のプローブ群であって、第2のプローブ群が、第2の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識標的プローブ及び第2の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識競合プローブを含む、第2のプローブ群、を提供することであって、
i)第1の標識標的プローブ及び第2の標的標識プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第2の標識で標識されるか、又は
ii)第1の標識標的プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識標的プローブが、同じ第2の標識で標識される、提供することと、
第1及び第2のプライマーセットが標的及び競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にすることと、を含む、方法。
【0336】
105.e)更なる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のプライマーセット及び対応するプローブ群を提供することを含む、104に記載の方法。
【0337】
106.方法が、多重増幅後、第1の標識及び第2の標識の量を同時に検出することを更に含む、実施形態105に記載の方法。
【0338】
107.
標的がTMCC1であり、標的配列が配列番号4である場合、最適な競合を決定するために使用される競合配列が、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、及び36であり、任意選択的に、標的及び競合の増幅のためのプライマーが、配列番号1及び3に示される、かつ/又は
標的がARG1であり、標的配列が配列番号40である場合、最適な競合を決定するために使用される競合配列が、配列番号42、44、46、及び48であり、任意選択的に、標的及び競合の増幅のためのプライマーが、配列番号37及び39に示され、かつ/又は
標的がGBP6であり、標的配列が配列番号52である場合、最適な競合を決定するために使用される競合配列が、配列番号54、56、及び58であり、任意選択的に、標的及び競合の増幅のためのプライマーが、配列番号49及び51に示され、かつ/又は
標的がEGFRであり、標的配列が配列番号62である場合、競合配列が、配列番号64、67、及び71であり、任意選択的に、プライマー配列が、配列番号68及び70である、先行実施形態のいずれか。
【0339】
本発明はまた、以下の番号付けされた実施形態によって更に定義される。
【0340】
1.試料中の1つ以上の標的ポリヌクレオチドを増幅する方法であって、本方法が、
a)1つ以上の標的ポリヌクレオチドを潜在的に含む試料、
b)第1の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)少なくとも第1のプライマーであって、
試料中の第1の標的ポリヌクレオチド、及び
第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、少なくとも第1のプライマー、を提供することと、
標的ポリヌクレオチド(試料中に存在する場合)及び第1の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されるように、プライマー伸長反応を開始することと、を含み、
増幅が、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物をもたらす、方法。
【0341】
2.方法が、
第2のプライマー、
第2の競合ポリヌクレオチド、及び/又は
第2の標的ポリヌクレオチド、を提供することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0342】
3.第2のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらす、実施形態2に記載の方法。
【0343】
4.第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることもでき、第1及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらす、実施形態2又は3に記載の方法。
【0344】
5.方法が、第2の調整された競合ポリヌクレオチドを提供することを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
6.第2のプライマーが、
a)第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の調整された競合PCR生成物の生成をもたらし、かつ
b)第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、プライマー伸長反応を開始することができ、それにより、第2の調整された競合ポリヌクレオチドが増幅されて、第2の調整された競合生成物の生成をもたらし、任意選択的に、更なるプライマーと組み合わせて、第2のプライマー及び更なるプライマーが、第2の調整された競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズして、第2の調整された競合生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
任意選択的に、第2のプライマーが、第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができない、実施形態2又は5に記載の方法。
【0346】
7.第2の標的ポリヌクレオチドが、第1の標的ポリヌクレオチドと同じポリヌクレオチド分子の一部である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0347】
8.第2の標的ポリヌクレオチドが、第1の標的ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチド分子上にある、1~7のいずれか1つに方法。
【0348】
9.第2のプライマーが、
a)第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、第1及び第2のプライマーが、標的の反対側の鎖上でハイブリダイズして、第1の標的生成物、任意選択的に、第1の標的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の生成をもたらし、
b)第1又は第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができず、
方法が、第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる第3のプライマーを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0349】
10.第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅率と異なる、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0350】
11.プライマー伸長前の標的ポリヌクレオチドの初期の数及び調整された競合ポリヌクレオチドの数が同じであるか又は実質的に同じである場合、生成された標的生成物ポリヌクレオチドの数が、生成された調整された競合ポリヌクレオチドの数と異なる、実施形態1又は10に記載の方法。
【0351】
12.増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列及び少なくとも第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、1つ以上の状態に対する標的の予測的関係に近似又は再現又は一致するような様式で、第1の標的ポリヌクレオチドの初期濃度とともに変化する最終的な検出可能なシグナルをもたらすように選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
12.第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0353】
13.増幅される第1の調整された競合ポリヌクレオチドの配列が、増幅される第1の標的ポリヌクレオチドの配列と、95%、90%、88%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%未満の配列同一性を共有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0354】
14.第1の調整された競合生成物が、
第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド短く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド短いか、又は
第1の標的生成物よりも少なくとも5ヌクレオチド長く、任意選択的に、第1の標的生成物よりも少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは少なくとも330ヌクレオチド長い、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
15.1つ以上の標的生成物、任意選択的に、1つ以上の標的PCR生成物、及び1つ以上の調整された競合生成物、任意選択的に、1つ以上の競合ポリヌクレオチドPCR生成物が検出される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0356】
16.方法が、1つ以上のプローブ群を提供することを含み、各プローブ群が、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含み、
第1の標識と第2の標識とが異なる、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
17.第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができ、第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる、実施形態16に記載の方法。
【0358】
18.第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、
第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブが、第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができ、
任意選択的に、いずれのプローブも、第1の標的生成物にハイブリダイズすることができない、実施形態16又は17に記載の方法。
【0359】
19.単一のプローブ群内に、
第1の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは少なくとも100個の異なるプローブ、及び/又は
第2の標識で各々標識された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは少なくとも100個の異なるプローブが存在する、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0360】
20.方法が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の異なるプローブ群を提供することを含み、
任意選択的に、特定の標識(任意選択的に、フルオロフォア)が、2つ以上のプローブ群で使用されない、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
20.プローブ上に存在する標識が、第1の標識及び第2の標識のみである、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0362】
21.第1及び第2の標識が、フルオロフォアであり、任意選択的に、
各プローブが、クエンチャーを含み、かつ/又は
第1の標識がFAMであり、第2の標識がHEXであるか、若しくは第1の標識がHEXであり、第2の標識がFAMである、実施形態16~20のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
22.
i)第1の標的生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブ及び第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、異なる標識で標識され、かつ/又は
ii)第1の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブ及び第2の調整された競合生成物にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブが、異なる標識で標識される、実施形態16~21のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
23.特定の状態の正の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、第1の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、第2の標識で標識され、
かつ/又は
特定の状態の負の予測的関係に関連する標的ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる各プローブが、第2の標識で標識され、調整された競合ポリヌクレオチド生成物にハイブリダイズすることができる対応するプローブが、第1の標識で標識される、実施形態16~22のいずれか1つに記載の方法。
【0365】
24.増幅後に、第1のプローブによって検出される生成物の量及び第2のプローブによって検出される生成物の量が決定される、実施形態16~23のいずれか1つに記載の方法。
【0366】
25.各プローブの相対量を標準曲線と比較して、1つ以上の状態の相対確率を決定する、実施形態24に記載の方法。
【0367】
26.方法が、使用される全てのフルオロフォアの単一読み取りを含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0368】
27.方法が、少なくとも第1及び第2の標的ポリヌクレオチドの増幅のためのものであり、任意選択的に、方法が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の標的ポリヌクレオチドの増幅のためのものである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0369】
28.方法が、2つの調整された競合ポリヌクレオチドの増幅を含み、方法が、
第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第1の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、
第2の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプライマーによる第2の調整された競合ポリヌクレオチドの増幅と、を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0370】
29.方法が、対象における疾患若しくは状態の診断及び/又は予後のためのものである、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0371】
30.核酸が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はリコンビナーゼポリメラーゼ反応(RPA)を使用して増幅される、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0372】
31.対象における疾患若しくは状態の診断又は予後の方法であって、当該方法が、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法を含む、方法。
【0373】
32.対象が、第1の標識及び第2の標識の相対量が疾患若しくは状態の予後を示す場合、疾患若しくは状態又は疾患若しくは状態の予後を有すると診断される、実施形態31に記載の方法。
【0374】
33.疾患又は状態が、ヒト結核、HIV同時感染を伴うヒト結核、HIV同時感染を伴わないヒト結核、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、敗血症、カンジダ血症、ウシ結核、ウシ乳房炎から選択される、実施形態31又は32に記載の方法。
【0375】
34.疾患が、結核であり、任意選択的に、
差次的遺伝子調節シグネチャ及び/若しくは予測的関係が、対象の白血球から特定され、かつ/又は
GBP6、ARG1、及びTMCC1の差次的調節の程度が、いくつかの「他の疾患」を有するのと比較して、結核を有する全体的な確率に寄与し、任意選択的に、遺伝子発現シグネチャが、結核を有しない患者におけるこれらの遺伝子のレベルと比較して、GBP6の上方調節、並びにARG1及びTMCC1の下方調節である、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0376】
35.疾患が、がん、任意選択的に、前立腺がん又は乳がん、任意選択的に、前立腺がんである、実施形態31~34のいずれか1つに記載の方法。
【0377】
36.疾患又は状態の診断が、少なくとも2つの遺伝子の相対発現レベルの評価を必要とし、任意選択的に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は少なくとも100個の遺伝子の相対発現レベルの評価を必要とする、実施形態31~35のいずれか1つに記載の方法。
【0378】
37.以下のうちの1つ以上を含む組成物:
a)実施形態1~30のいずれか1つに定義される少なくとも1つの標的核酸配列、
b)実施形態1~30のいずれか1つに定義される少なくとも1つの調整された競合ポリヌクレオチド、
c)実施形態1~30のいずれか1つに定義される少なくとも1つのプライマー、任意選択的に、実施形態1~30のいずれか1つに定義される少なくとも2つのプライマー、
d)少なくとも1つ以上のプローブ群であって、各プローブ群が、任意選択的に、実施形態16~30のいずれか1つに定義される、第1の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチド及び第2の標識で標識された少なくとも1つのプローブポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つ以上のプローブ群。
【0379】
38.実施形態1~30のいずれか1つに定義される、調整された競合ポリヌクレオチド。
【0380】
39.実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法を実施するためのキットであって、キットが、
a)実施形態1~30によって定義される1つ以上の調整された競合ポリヌクレオチド、
b)任意選択的に、実施形態1~30のいずれか1つに定義される1つ以上のプライマー、
c)実施形態16~30のいずれか1つに定義される第1のプローブ群、
d)好適な緩衝液、
e)使用説明書、のうちの1つ以上を含み、
任意選択的に、キットが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは少なくとも10個の異なる調整された競合ポリヌクレオチド、及び/又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは少なくとも10個の異なるプローブ群を含む、キット。
【0381】
40.少なくとも第1のプライマーの第1の標的ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対して競合し、第1の標的生成物及び第1の調整された競合生成物の増幅をもたらす、第1の競合ポリヌクレオチドを調整する方法であって、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、特定の状態に対する標的ポリヌクレオチドの予測的関係に一致し、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致し、
本方法が、
第1の標的生成物の配列及び/又は第1の標的生成物の長さに関して、調整された競合ポリヌクレオチドの配列及び/又は調整された競合増幅生成物の長さを最適化することを含む、方法。
【0382】
41.
第1の標的生成物が2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)ように第1の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第2のプライマーが当該増幅に使用され、
第1の調整された競合生成物が2つのプライマーからのプライマー伸長によって生成される(任意選択的に、PCRによって生成される)ように第1の調整された競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる、第3のプライマーが当該増幅に使用され、
任意選択的に、第2及び第3のプライマーが、同じ配列を有する、実施形態40に記載の方法。
【0383】
42.当該最適化が、増幅後、
a)増幅される調整された競合ポリヌクレオチドの割合と比較して、異なる割合の標的ポリヌクレオチドが増幅され、
b)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅が、特定の状態に対する標的の予測的関係に一致し、かつ/又は
c)第1の標的ポリヌクレオチドの増幅率、及び任意選択的に、第2の標的ポリヌクレオチドの増幅率が、所定の重み付けに一致し、
第1の標的ポリヌクレオチドの最も好ましい増幅をもたらす調整された競合を選択することをもたらす、2つ以上の試験調整された競合ポリヌクレオチドを生成することを含む、実施形態40又は41に記載の方法。
【0384】
43.方法が、先行実施形態のいずれかによる競合増幅を含む、システムの転写状態を決定する方法。
【0385】
44.システムが状態A又は状態Bにあるかを決定する方法であって、本方法が、先行実施形態のいずれかによる競合増幅を含む、方法。
【0386】
45.試料中の少なくとも2つの標的ポリヌクレオチドの同時競合増幅の方法であって、
a)ポリヌクレオチドを含む試料、
b)第1及び第2の調整された競合ポリヌクレオチド、
c)第1のプライマーセットであって、プライマーセットが、第1の標的ポリヌクレオチド及び第1の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第1の標的増幅生成物及び第1の競合増幅生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第1のプライマーセット、
d)第2のプライマーセットであって、プライマーセットが、第2の標的ポリヌクレオチド及び第2の競合ポリヌクレオチドの反対側の鎖上でハイブリダイズすることができて、第2の標的生成物及び第2の競合生成物の生成を可能にする2つのプライマーを含む、第2のプライマーセット、
e)第1のプローブ群であって、第1のプローブ群が、第1の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識標的プローブ及び第1の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第1の標識競合プローブを含む、第1のプローブ群、
d)第2のプローブ群であって、第2のプローブ群が、第2の標的増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識標的プローブ及び第2の競合増幅生成物にハイブリダイズすることができる第2の標識競合プローブを含む、第2のプローブ群、を提供することであって、
i)第1の標識標的プローブ及び第2の標的標識プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第2の標識で標識されるか、又は
ii)第1の標識標的プローブ及び第2の標識競合プローブが、同じ第1の標識で標識され、かつ第1の標識競合プローブ及び第2の標識標的プローブが、同じ第2の標識で標識される、提供することと、
第1及び第2のプライマーセットが標的及び競合ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にすることと、を含む、方法。
【0387】
46.方法が、
e)更なる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のプライマーセット及び対応するプローブ群を提供することを含む、45に記載の方法。
【0388】
47.方法が、多重増幅後、第1の標識及び第2の標識の量を同時に検出することを更に含む、実施形態46に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0389】
図1-1】従来のPCRのメカニズム。A)PCRでは、異なる温度段階を循環することにより、標的配列を何度も複製又は「増幅」する。この倍化は、目的の標的に特異的な短い合成「プライマー」オリゴヌクレオチドによって促進される。プライマーが使い果たされると、反応は停止する。
図1-2】従来のPCRのメカニズム。B)定量PCRでは、合成「プローブ」配列も同様に含まれ、標的の各複製で蛍光シグナルを生成する。プローブは、一端にフルオロフォア、もう一方にクエンチャーを用いて設計される。プローブが無傷のままである間、クエンチャーは、フルオロフォアによって放出された光を吸収し、それが検出されないようにする。しかしながら、反応が進むにつれて、ポリメラーゼは、プローブを分解し、それを細かい断片に噛み砕く。これは、フルオロフォアをクエンチャーから分離し、検出可能な蛍光シグナルをもたらす。
図2-1】標的配列の組成を変化させると、増幅挙動が変化する。天然PCR標的配列(WT)のバリエーションは、同じプライマー配列を利用するように設計されたが、塩基対の数(BP)及びプライマー領域間でグアニン又はシトシンであるヌクレオチドの割合(GC)が異なる。ISO標的は、WTと同じ長さ(88bp)及びGC含有量(43%)を有するが、配列が異なる。A)これらの標的のPCR反応は、式(1)に適合し、灰色の線は、参照のためのISO適合を示す。
図2-2】標的配列の組成を変化させると、増幅挙動が変化する。
図2-3】標的配列の組成を変化させると、増幅挙動が変化する。
図2-4】B)これらの標的は、広範囲の指数関数的増殖率を示す(*はISO標的を示す)。この増幅挙動の多様性は、特定の用途に合わせてCANの特性を調整するために使用される。
図3】直接競合PCRのための標的設計。合成REF配列は、同じプライマーに対してWT配列と競合するが、2つは、異なる標識を有する異なるプローブによって標的化される。
図4-1】直接競合増幅のエンドポイント。図3からのWT配列を、示されたREF配列と同じ反応で増幅した。45回のPCRサイクル後のWT(FAM)蛍光とREF(HEX)蛍光との間の差は、WT開始量の関数として示される。それぞれのREF配列の初期濃度は、各プロットで縦の灰色の線で示されている。用量反応関係は、シグモイド曲線に適合される(黒色の曲線、灰色の曲線はISO適合を反映する)。挿入された数字はシグモイド指数を示し、数字が大きいほど曲線がより険しいことを示す。速い競合配列(配列が短いほど、配列のGC含有量が低い)との反応は、急激な遷移を示したが、遅い競合配列は緩やかな曲線をもたらした。
図4-2】直接競合増幅のエンドポイント。
図4-3】直接競合増幅のエンドポイント。
図5】間接CANの原理。A)間接競合では、天然の標的は蛍光プローブと直接相互作用しない。代わりに、複数の合成標的が使用され、それらの各々は、別の配列を有する1つのプライマーのみを共有し得る。B)抽象的なネットワーク図。天然の標的は正方形、合成標的は丸、プライマーは点として示されている。複数の標的(ここでは、p0及びp3)によって共有されない「非競合」プライマーは、概して図から省略される。
図6-1】様々な間接CANアーキテクチャのシミュレートされた出力。間接CANは、個々の成分のパラメータ(増幅率、濃度)を調整することによって、又は成分間の接続性を変更することによって調整することができる。ここに示されるように、間接CANは、10%~90%の最大シグナル差の間のWT濃度範囲として定義される幅広いダイナミックレンジ(DR)を達成することができる。
図6-2】様々な間接CANアーキテクチャのシミュレートされた出力。
図7-1】色素の一例である。
図7-2】色素の一例である。
図8-1】結核の診断のための3組の直接CAN。A)CANは、遺伝子発現シグネチャの転写産物ごとに1つずつ、3つの直接的な競合対からなる。各対は、ロジスティック回帰からのそれぞれの対数オッズをシミュレートする様々な濃度の天然の標的に対するシグナル応答を示すように設計される(図6)。ここには、シミュレートされた反応結果が示されている。B)3対全てが同じ反応で増幅される場合、得られた蛍光は、それらの個々の寄与を集約する。青緑色(teal)のシグナルとオレンジ色のシグナルとの間の全体的な蛍光差は、ロジスティック回帰によって提供される対数オッズとはほとんど異ならない(differs insubstantially)最終診断を提供する。
図8-2】結核の診断のための3組の直接CAN。
図9】間接CANの原理。A)間接競合では、天然の標的は蛍光プローブと直接相互作用しない。代わりに、複数の合成標的が使用され、それらの各々は、別の配列を有する1つのプライマーのみを共有し得る。B)抽象的なネットワーク図。天然の標的は正方形、合成標的は丸、プライマーは点として示されている。複数の標的(ここでは、p0及びp3)によって共有されない「非競合」プライマーは、概して図から省略される。
図10-1】高次CANは、ブール論理に近似するように設計することができる。間接競合は、複数の標的のパターンで構成される組み合わせを認識することができる。ここでは、CANモチーフは、ブールゲートとして機能し、指定された条件が真(true)の場合は青緑色/高、偽(false)の場合はオレンジ色/低をシグナルする。「半分」のXORは例外であり、偽の場合にシグナルパリティを生成する。ここに示されている完全なXORは不完全であり、更に調整する必要があるが、高次CANから可能な豊富な挙動を示している。ネットワークパラメータを調整することは、移行レジームの急峻性(abruptness)及び位置を決定することができる。逆ゲート、NAND、NOR、及びXNORは全て、プローブ標識を交換するだけで取得できることに留意されたい。シミュレートした結果、全ての標的は、0.9の増幅率を有すると仮定される。
図10-2】高次CANは、ブール論理に近似するように設計することができる。
図11-1】デジタルPCRデータのロジスティック回帰。A)灰色の点は、結核(TB)又は他の疾患(OD)のいずれかを有する個々の患者に見られる遺伝子濃度を示し、破線は、ロジスティック回帰の結果である。対数オッズ(左)及び確率(右)は、単純な非線形変換によって交換可能である。これらの結果から、第4の遺伝子であるPRDM1は、診断に有意義に貢献していないことがわかる。
図11-2】デジタルPCRデータのロジスティック回帰。B)全体的な診断に対する各遺伝子の個々の寄与は、対応する色によって示され、全体的な対数オッズは、破線によって示される。矢印は、統計的診断がゴールドスタンダードの診断、微生物培養と一致しない患者を指す。
図12】様々な間接CANアーキテクチャのシミュレートした出力。間接CANは、個々の成分のパラメータ(増幅率、濃度)を調整することによって、又は成分間の接続性を変更することによって調整することができる。ここに示されるように、間接CANは、10%~90%の最大シグナル差の間のWT濃度範囲として定義される幅広いダイナミックレンジ(DR)を達成することができる。
図13-1】ctDNA中の微量がん性SNPの検出のためのCANシステム。A)追加の競合メカニズムは、WTの増幅を抑制して、SNP濃度のみを反映するシグナルを生成する。ポリメラーゼによって伸長することができないブロッカーオリゴ(濃い紫色)は、SNPバリアントよりもWTアレルに対する親和性が大きいため、対応するWT鎖の複製を阻害する。最終的な色の強度の比は、高いWT濃度であっても、SNPの量に対応する。
図13-2】ctDNA中の微量がん性SNPの検出のためのCANシステム。B)個々のシミュレートされたHEX及びFAMの蛍光トレース。
図13-3】ctDNA中の微量がん性SNPの検出のためのCANシステム。C)105コピーのWTの存在下での様々な濃度のSNPについての反応のエンドポイントにおける蛍光強度(FAM-HEX)の差。かかるシステムと同時に複数の異なる変異を標的にすることができ、したがって、cfDNA中の総SNP負荷は、エンドポイントのシグナル差から推定することができる。
図14-1】高次CANは、ブール論理に近似するように設計することができる。間接競合は、複数の標的のパターンで構成される組み合わせを認識することができる。ここでは、CANモチーフは、ブールゲートとして機能し、指定された条件が真(true)の場合は青緑色/高、偽(false)の場合はオレンジ色/低をシグナルする。「半分」のXORは例外であり、偽の場合にシグナルパリティを生成する。ここに示されている完全なXORは不完全であり、更に調整する必要があるが、高次CANから可能な豊富な挙動を示している。ネットワークパラメータを調整することは、移行レジームの急峻性(abruptness)及び位置を決定することができる。逆ゲート、NAND、NOR、及びXNORは全て、プローブ標識を交換するだけで取得できることに留意されたい。シミュレートした結果、全ての標的は、0.9の増幅率を有すると仮定される。
図14-2】高次CANは、ブール論理に近似するように設計することができる。
図15-1】冗長な標的化は、CANの設計を可能にし、2つの標的の相対濃度を、それらの絶対濃度とは無関係に報告する。A)遺伝子転写産物は、典型的には数千ヌクレオチド長であり、PCR標的は、100ヌクレオチド程度であり、複数のPCR標的が単一の転写産物に由来し得ることを意味する。これにより、目的の遺伝子(TMCC1)の濃度を古典的な「ハウスキーピング」遺伝子(GAPDH)と比較するなど、各々が同じ配列の異なる領域を標的とする独立したCANモチーフの設計が可能になる。B)ここに示されるCANモチーフは、大まかに比較器として機能し、一方の標的が他方の標的よりも大きいかどうかを報告するが、狭い濃度レジーム内でのみ報告する。C)Bからのモチーフを単一の反応で組み合わせると、それらの蛍光出力が積み重ねられ、試料がどの程度希釈されているかにかかわらず、2つの転写産物の(log)相対濃度に比例するシグナルが生成される。D)シグナルパリティレジームは、競合の濃度を調整することによってシフトすることができ、それにより、反応は、アルファの濃度がベータの濃度よりも100倍超又は100倍未満であるかを決定する。
図15-2】冗長な標的化は、CANの設計を可能にし、2つの標的の相対濃度を、それらの絶対濃度とは無関係に報告する。
図16-1】A)プライマー対によるプローブ標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる増幅率及び推定傾向を測定した。上の行のタイトルは、使用されたフォワードプライマーとリバースプライマーを示し、丸は、10^8コピー/反応での特定の標的の測定値を示す。
図16-2】A)プライマー対によるプローブ標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる増幅率及び推定傾向を測定した。
図16-3】A)プライマー対によるプローブ標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる増幅率及び推定傾向を測定した。
図16-4】A)プライマー対によるプローブ標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる増幅率及び推定傾向を測定した。
図16-5】B)プライマー対による色素標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる測定増幅率及び推定傾向。上の行のタイトルは、使用されたフォワードプライマーとリバースプライマーを示し、丸は、10^8コピー/反応での特定の標的の測定値を示す。
図16-6】B)プライマー対による色素標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる測定増幅率及び推定傾向。
図16-7】B)プライマー対による色素標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる測定増幅率及び推定傾向。
図16-8】B)プライマー対による色素標的化反応について、長さ及びGC含有量にわたる測定増幅率及び推定傾向。
図17-1】配列情報。
図17-2】配列情報。
図17-3】配列情報。
図17-4】配列情報。
図17-5】配列情報。
図17-6】配列情報。
図17-7】配列情報。
図17-8】配列情報。
図18】CANの組み合わせは付加的な挙動につながる。ここでは、10^3コピーのS056.2.2及び10^3コピーの合成競合S056.4.2を各反応に含め、2つの標的S056.2.10及びS056.4.10を示された濃度で含めた。S056.2.10は、S056.2.2とプライマーを共有し、S056.4.10は、S056.4.2とプライマーを共有する。S056.2.10及びS056.4.10は、FAMプローブによって標的化され、S056.2.2及びS056.4.2は、HEXプローブによって標的化される。したがって、このシステムは、異なる標的濃度に対する独立したエンドポイント応答を有する2つのCANからなる。両方のCANがプローブフルオロフォアを共有することを考慮すると、それらのそれぞれの蛍光挙動は、相加的に組み合わされる。いずれかの標的の濃度が高いほど、より強いFAMシグナル及びより弱いHEXシグナルにつながる。全ての反応の最後のFAMとHEXとの間の強度の差は、右下のプロットに要約されている。このシグナル差は、両方の標的が最高濃度である場合に最大に達する。
図19】CANのエンドポイント応答プロファイルは、様々な成分を調整することによって調整可能である。単一競合CANの応答プロファイルが、ここに示されている。応答の鋭さは、競合配列及び野生型配列の選択によって異なり得る。競合の濃度を調整すると、応答プロファイルの中心点がシフトする。最後に、シグナル応答の最小及び最大範囲は、プライマーの濃度を減少させることによって制約され得る。
図20】特定の用途のためのCANを設計するプロセス。開業医は、患者データに対して回帰(例えば、ロジスティック回帰)を行って、どの遺伝子転写産物を標的にするか、並びに各転写産物の発現レベルと診断確率との間の適切な関係の両方を決定することによって開始する。次に、開業医は、各標的転写産物について、CANアーキテクチャ(すなわち、競合配列の数)及び共有プライマーの配置を選択する。次に、開業医は、患者データの回帰結果(具体的には、各オリゴヌクレオチドの濃度及び所望の増幅挙動)を最適に再現する各CANモジュールの理想的な成分を計算的に決定する。以前に取得したデータを使用して、開業医は、各競合オリゴヌクレオチドの設計パラメータ(長さ及びGC含有量)を提案し、所望の増幅挙動をもたらす可能性が最も高いものを選択する。次いで、これらのパラメトリック設計を使用して配列設計を生成し、それらを取得し、標準的なPCR増幅を介して実験的に試験し、分析して、それらの挙動を説明することができる。これらの新しい観測は、マルチタスク回帰フレームワークにおける以前の観測と組み合わされ、統計モデルは、設計パラメータと各増幅パラメータとの間の経験的関係を一緒に学習する。更なる最適化が必要な場合、この統計モデルを使用して、新たに取得したデータに照らして、望ましい増幅挙動を生成する可能性が最も高い新しい配列設計を提案することができる。このプロセスは、CAN反応を介したロジスティック回帰結果の再現を可能にする好適な競合配列が見つかるまで続く。
図21-1】所与の標的増幅率rを達成するために、どのように回帰が競合の調整を可能にするのかの図示。A)回帰曲面(左端)は、例えば、ガウス過程回帰を介して生成され、その関係の不確実性とともに、長さ(BP、ヌクレオチド単位)及びGC含有量(パーセント単位)の2つの競合設計パラメータを、観測された増幅率に関連付ける。ここでは、観測された点(すなわち、設計され、実験的に試験された競合配列)は、増幅率によって網掛けされた丸で示されている。塗りつぶされた輪郭は、回帰アルゴリズムによって決定された各点での予想される増幅率を表し、破線は、これまでに観測された全てのr値の標準偏差の倍数として示される等不確実性輪郭(iso-uncertainty contour)(回帰子によって返される分散の平方根)を表す。この回帰曲面から、期待改善量(Expected Improvement)などのメトリックを計算することができ、それは、所望の標的増幅率を示す可能性が高い新しい設計を示す。ここには、目標を達成する可能性がより高いことを示す明るい色合いの異なる標的の期待改善量曲面(Expected Improvement surface)が示されている。
図21-2】所与の標的増幅率rを達成するために、どのように回帰が競合の調整を可能にするのかの図示。B)1.0の標的増幅率についてここに示されている回帰曲面及び期待改善量曲面は、新しい配列が試験され、モデルに追加されるにつれて変化する。このようにして、開業医は、所望の増幅率を達成するために競合配列を反復的に調整することができる:i)これまでに得られたデータに対して回帰が実行される、ii)所望の比率を達成する可能性が高い新しい設計が提案される、iii)この設計に基づく新しい配列が得られ、実験的に試験される、iv)観察された挙動が最適でない場合、回帰曲面を更新して、このデータを組み込むことが可能であり、v)更に別の設計が提案され得る。
図21-3】所与の標的増幅率rを達成するために、どのように回帰が競合の調整を可能にするのかの図示。
図22-1】ここには、図2に示されている各合成アンプリコンとその図に示されている「WT」との間の競合増幅反応のリアルタイム蛍光トレースが示されている。各反応について、競合を固定濃度で維持し、WTを、1反応当たり10^2~10^8コピーの濃度範囲で試験する。WTは、FAMフルオロフォアを有するプローブによって標的化され、このシグナルの強度は、各パネルの上半分に示されている。競合アンプリコンは、HEXフルオロフォアを有するプローブによって標的化される。このシグナルの強度は、各パネルの下半分に反転させて示されている。反応は、競合とWTの相対濃度の対数によって色分けされている。「log10比」が3とは、反応中にそれぞれの競合よりも1000倍多くのWTが存在することを示し、「log10比」が-5とは、反応中にWTよりも100000倍多くの競合が存在することを意味する。BP15競合は、プローブ領域を許容するには短すぎたため、HEXシグナルは観察されないが、エンドポイント蛍光シグナルの用量依存的変化は依然として観察されることに留意されたい。ここに示される各反応のFAM及びHEXシグナル強度の違いを図4に要約する。
図22-2】ここには、図2に示されている各合成アンプリコンとその図に示されている「WT」との間の競合増幅反応のリアルタイム蛍光トレースが示されている。
図22-3】ここには、図2に示されている各合成アンプリコンとその図に示されている「WT」との間の競合増幅反応のリアルタイム蛍光トレースが示されている。
図23-1】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。本明細書に列挙される各配列を、従来のPCR技術を使用して増幅し、得られた蛍光曲線を本研究に記載されるように分析した。測定パラメータF0_lg、K、r、及びmは、式2及び3に現れるパラメータであり、tau及びrhoは、式4及び5に現れる。図16は、ガウス過程回帰によって決定されるrパラメータについてのこの表の知見を要約し、各配列の長さ(BP)及びGC含有量(GC)を、各プライマー対(その図では「FPname-RPname」と表記)及びレポーター(色素又はプローブ)について観測された比率rに関連付ける。(FP=フォワードプライマー、RP=リバースプライマー、CO=競合オリゴヌクレオチド)。
図23-2】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-3】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-4】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-5】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-6】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-7】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-8】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
図23-9】本研究で使用される検査された配列、設計特性、及び観測された増幅パラメータのリストであり、それらのいずれも任意のCANの成分として使用することができる。
【0390】
配列情報:
配列番号1~80は、図17に記載のとおりである。配列番号81~287は、以下の表1に記載されており、図23に記載されているオリゴヌクレオチドに関する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【表3-15】
【表3-16】
【表3-17】
【表3-18】
【表3-19】
【表3-20】
【表3-21】
【表3-22】
【0391】
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明されるであろう。
【実施例
【0392】
コア技術は、1つ以上の目的の配列の特定の組み合わせの評価のための核酸増幅反応で使用される、少なくとも3つの天然の標的又は競合ポリヌクレオチドのシステムである。配列が複製されるにつれて、それらはこれらの共有プライマーに対して競合し、得られる読み出しに固有の特性を付与する。例えば、各々が操作された合成競合と対になった一連の天然の遺伝子転写産物を取り上げる(図8)。増幅反応は、固定量の各競合及び様々な量の各天然の標的を用いて実行される。各競合対の自然な配列が複製されるにつれて、それは緑色の蛍光シグナルを生成し、対応する各合成配列は、オレンジ色のシグナルを生成する。全ての緑色シグナルと全てのオレンジ色シグナルが互いに積み重なっているため、反応の最後にオレンジ色及び緑色の相対強度を見ると、全ての転写産物の濃度がそれぞれの競合の濃度にどれほど近いかがわかる。各競合配列は、個々の天然の標的に対する目的の濃度範囲を反映するように設計することができる。おそらく、いくつかの転写産物は狭いウインドウ内で興味深い効果を有するが、他の転写産物は、それらの濃度が変化するにつれてより緩やかな影響を有する。この原理には、人間の診断からバイオプロセス製造及び生物医学研究まで、多くの用途がある。
【0393】
上記の「直接」競合増幅ネットワークは、各々が両方のプライマーに対して競合する複数の天然及び合成標的対を含み、本発明の最も単純な実施形態を構成する。しかしながら、同じ競合原理が、より複雑なネットワークにも適用される。例えば、天然標的は、そのプライマーのうちの1つを1つの合成標的と共有することができ、この合成標的は、次いで、その他のプライマーを第2の合成標的と共有し、「間接」CANを作り出す(図9)。プライマーは、複数の合成標的間で共有することができ、完全に接続されたネットワークは、複数の自然標的を含むように設計することができ、非線形演算を実行する可能性を生み出す(図10)。単一の天然配列を、同じオリゴ上の複数の位置に独立して標的化することができ、強力な特性を有する「冗長」システムを作成する(図11)。
【0394】
直接競合PCR
競合PCRでは、競合ポリヌクレオチド(REF)が、標的(図中ではWTとして表される)と並んで参照として含まれる(図3)。この競合配列は、WTと同じプライマー配列を共有するように設計されているが、異なるプローブ配列を含む。1つのフルオロフォア(例えば、緑色を生成するフルオロセイン又はFAM)を有するプローブは、WTを標的化するように設計することができ、一方、異なるフルオロフォア(例えば、オレンジ色を生成するヘキサクロロフルオレセイン又はHEX)を有する別個のプローブは、REF(競合)を標的とすることができる。
【0395】
標的及び競合が同じPCR反応で増幅される場合、それらはプライマーに対して競合する。プライマーは、標的又は競合鎖の各複製によって消費されるため、プライマープールが枯渇するとすぐに、両方の配列の増幅が停止する。反応終了時の各増幅生成物の量は、2つの標的の相対的な開始量に依存する。これは、得られた蛍光シグナルに反映される(図4)。同じ濃度で開始する同じ増幅率(例えば、図2のWT及びISO)を有する標的及び競合については、各々から導き出される蛍光シグナルは、反応の終了時に同じであろう。反応の開始時にREFよりも多くのWTが存在する場合、WTフルオロフォアは最後により強くなり、またその逆も同様である。純粋なWTシグナルから純粋なREFシグナルへのこの遷移の鋭さは、競合の増幅率を調整することによって調整することができる。
【0396】
図4は、様々な競合(REF)とのWT配列の競合増幅を示し、非常に広い遷移(BP240、GC85)から非常に鋭い遷移(BP30)までのアクセス可能な行動の幅を実証する。応答曲線の中点は、REFの初期濃度を調整することによって、より高い又はより低いWT濃度にシフトすることができる。ゲル電気泳動を使用して、各反応におけるアンプリコンの最終濃度を直接測定することができ、蛍光シグナルで観測されるダイナミクスを確認することができる。本質的には、このシステムは、目的の遺伝子の発現が所定の濃度にどれほど近いかを報告している。REFの適切な設計及び初期濃度を選択することによって、この濃度並びに関心のある範囲を定義することができる。
【0397】
直接競合増幅ネットワーク
ここで、競合する一対の標的は、あまり「ネットワーク」ではなく、単一の遺伝子標的も、遺伝子発現シグネチャの複雑さを反映していない。しかしながら、同じ反応で複数の競合対を組み合わせることができ、各々が異なるRNA転写産物を反映するHEX及びFAMシグナルを生成する。各競合対は、与えられた遺伝子が個々の設定点にどれほど近いかを報告し、これらのシグナルは全て、単に互いに積み重なるであろう。その結果は、全ての遺伝子の全体的な類似性の集約的な尺度である。調査中の遺伝子の数にかかわらず、総HEX強度と総FAM強度との間の差は、システム全体からの情報を統合する。なぜこれが有用なのかを例示するために、ロジスティック回帰の統計的手法を模倣することによって、結核を診断するのにかかるネットワークをどのように使用することができるのかを見てみよう。
【0398】
事例研究:直接CANによる結核の診断
毎年、他のどの感染症よりも多くのヒトが結核で亡くなっている。2018年には、1000万人の新規症例及び150万人の死亡が発生した。結核は、現在の結核(TB)検査では特に診断が困難な集団であるHIVにも感染している人々の間で特に蔓延している(そして致命的である)。結核の診断に使用することができる遺伝子発現シグネチャがヒト白血球で見出された。((1)
Kaforou,M.;Wright,V.J.;Oni,T.;French,N.;Anderson,S.T.;Bangani,N.;Banwell,C.M.;Brent,A.J.;Crampin,A.C.;Dockrell,H.M.;Eley,B.;Heyderman,R.S.;Hibberd,M.L.;Kern,F.;Langford,P.R.;Ling,L.;Mendelson,M.;Ottenhoff,T.H.;Zgambo,F.;Wilkinson,R.J.;Coin,L.J.;Levin,M.Detection of Tuberculosis in HIV-Infected and -Uninfected African Adults Using Whole Blood RNA Expression Signatures: A Case-Control Study.PLOS Medicine 2013,10(10),e1001538. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001538.(2)
Gliddon,H.D.;Kaforou,M.;Alikian,M.;Habgood-Coote,D.;Zhou,C.;Oni,T.;Anderson,S.T.;Brent,A.J.;Crampin,A.C.;Eley,B.;Kern,F.;Langford,P.R.;Ottenhoff,T.H.M.;Hibberd,M.L.;French,N.;Wright,V.J.;Dockrell,H.M.;Coin,L.J.;Wilkinson,R.J.;Levin,M.;Consortium,on behalf of the I.Identification of Reduced Host Transcriptomic Signatures for Tuberculosis and Digital PCR-Based Validation and Quantification.bioRxiv 2019,583674.https://doi.org/10.1101/583674.)
【0399】
重要なことに、この検査はHIVの有無にかかわらず、患者でも同様に良好に機能する。しかしながら、このシグネチャを特定するために使用される技術-マイクロアレイ-は、そのような試験が最も必要とされる世界の農村部の貧困地域で使用するには煩雑で高価である。直接競合増幅ネットワークは、遺伝子発現シグネチャを評価し、試験を迅速、安価、かつ使いやすい形式に変換することができる。
【0400】
統計による診断:ロジスティック回帰
結核の診断にCANを使用する方法を理解するには、まず、模倣しようとしている統計的手法(ロジスティック回帰)を理解する必要がある。ロジスティック回帰は、様々な決定因子(様々な遺伝子の発現レベル)の個々の寄与を調べることによって、別の群(他のいくつかの疾患、ODを有する)と比較して、ある群(結核に感染している)にある確率をモデル化する。これは、対数オッズ又は相対確率が、これらの因子の(線形)加重和によって与えられると仮定する。
【数11】
【0401】
それぞれの周辺対数オッズ(marginal log-odds)を調べることによって、分類器(classifier)への個々の遺伝子の全体的な寄与を見ることができる(図11A)。すなわち、他の3つの遺伝子が全て平均値(情報を提供しない)である場合、どれほどの情報が様々な量のこの遺伝子によって提供されるだろうか?対数オッズは相対確率を表すため、負のスコアは「ODである可能性が高い」こと(-1としてコード化)を意味し、正のスコアは「TBである可能性が高い」こと(+1としてコード化)を意味する。2つの尺度が示されている:左側に周辺対数オッズ、右側に周辺確率。灰色の点は、個々の患者の遺伝子コピー数であり、破線は、所与の遺伝子のコピー数によって示される結核の回帰対数オッズ(又は確率)である。
【0402】
ロジスティック回帰に基づいて患者を診断するには、個々の各遺伝子の寄与を加算するだけである。例えば、患者は、103コピーのGBP6を有し得、+0.25の周辺対数オッズを寄与する。同じ患者は、それぞれ104及び104コピーのARG1及びTMCC1を有し得、-0.5及び-0.2を寄与する。この結核を有する患者の全体的な対数オッズは、0.25-0.5-0.2=-0.45であるため、この患者が結核を有する可能性は低いと結論付けることができる。これを全ての患者に対して繰り返すと(図11B)、高精度の回帰結果が達成され、40人の患者のうち36人を正しく分類することがわかる。
【0403】
直接CANによる統計量の模倣
直接CANを使用して、3つの遺伝子転写産物の各々の競合を設計することによって、分子レベルでこの統計的推論を要約することができる(図8A)。GBP6は結核と正の相関があるため、転写産物にはHEX標識プローブ、競合にはFAM標識プローブを使用する。ARG1及びTMCC1はTBと負の相関があるため、プローブ標識を入れ替える。次いで、転写産物から適切な領域を天然標的として選択し、適切な配列を合成標的(以下に更に説明)として選択して、ロジスティック回帰からの周辺対数オッズに一致する応答曲線を生成する増幅挙動を表示する。全ての成分を同じ増幅反応に含めることにより、総HEX及びFAM蛍光強度は、個々の対の独立した寄与を集約する。これら2色の強度間の差は、ロジスティック回帰から導き出された対数オッズの代替物として機能し(図8B)、統計結果によって予測される確率的診断マッチングを提供する。
【0404】
適切な標的領域を選択し、合成標的配列を設計するために、ロジスティック回帰の結果を「目的関数」として使用する。本発明者らの目標は、一緒に増幅した場合、この目的に近い入出力応答曲線を与える一対の配列を見出すことである。したがって、各標的について、上記の式(それぞれのβ項)から導き出された傾きで、データセットで観測されたその標的の平均濃度で0と交わる線を近似しようとする。シミュレーションを使用して、一緒に増幅された任意の2つの配列の挙動を予測することができ、それにより、当該技術分野で既知の標準曲線適合アルゴリズムを使用して、最適なパラメータを見出すことができる。この場合、これらのパラメータは、データセットで観測された標的濃度の範囲内で,上で指定された線にできるだけ近く一致し、その範囲外でできるだけ早く平坦になる応答曲線を生成するパラメータである(図7を参照)。
【0405】
好適なパラメータが見つかったら、それらを示す配列を選択する必要がある。「競合の増幅挙動の試験及び予測」のセクションにおける上記の式を使用して、これらのパラメータを提供する長さとGC含有量の組み合わせを予測することができる。シミュレーションには、回帰方程式に見られるドリフト項(m)又はプラトー項(K)が含まれていないことに留意されたい。これは、シミュレーションが理想的な振る舞いを表し、これらの2つのパラメータがその理想からの逸脱を記述するためである。したがって、最適な長さ及びGC含有量を選択する際、できるだけ理想に近い配列を選択するように、ドリフトを最小化し、プラトーを最大化しようとする。
【0406】
複数のセットのパラメータがほぼ最適な曲線を与え得る可能性が高い。好適な標的配列が(外部制約のために)先験的に特定され、その増幅パラメータが測定され、次いで曲線適合アルゴリズムを使用して、測定されたパラメータとともにシミュレートされたときにほぼ最適な応答を生成する競合増幅パラメータのみを選択することが好ましい場合がある。増幅挙動のシミュレーションは上に記載されており、シミュレーションのための好適な方程式が提供され、当業者は、とりわけ、勾配降下、確率的勾配降下、及び準ニュートン最適化を含むいくつかの最適化手法及びアルゴリズムのいずれかを実行することが可能となる。
【0407】
直接CANの限界
上記の直接ネットワークには2つの大きな欠点がある。第一に、標的化される各転写産物に対して2つではないにしても少なくとも1つのプローブを設計する必要があるため、より大きな遺伝子シグネチャについてはすぐに高価になる。DNA配列のスケールの経済性は、スケールアップに非常に好ましいが、開発スケールでは、各蛍光標識プローブのコストは約200ポンドである(文脈上、各プライマーのコストは約2ポンドであり、各合成標的は約20ポンドである)。20~50個の標的を有する遺伝子シグネチャの場合、配列設計の反復は非常に高価になる。第二に、直接CANは、達成可能な応答曲線が幾分制限される。これらの問題に対処するために、間接CANは、調査中の遺伝子の数に関係なく、多かれ少なかれ固定費で同様の機能を提供する。間接競合はまた、複数の標的を同時に複雑かつ非線形の解析ができる高次ネットワークの可能性を開く。最後に、冗長な標的化により、全てのCANアーキテクチャに更なる柔軟性を可能にする。
【0408】
間接競合PCR
プローブされた標的とプローブされた競合との間の直接競合の代わりに、プローブされていない標的は、単に競合ポリヌクレオチド間の競合を仲介することができる。両方のプライマーは、所与の標的の指数関数的増幅に必要であるため、複製は、1つのプライマーのみを枯渇させることによって阻止され得る。したがって、合成標的であるREFHを設計することができ、これは、天然配列であるWTと1つのプライマーを共有し、その第2のプライマーを第2の合成標的であるREFFと共有する(図12)。全ての成分が等しい増幅率を有し、2つのREFが等しい濃度で開始する場合、いかなるWTも存在せずに、HEXシグナル及びFAMシグナルが均等に増幅される。しかしながら、WTの増加はREFHを打ち負かし、HEXシグナルを減衰させる。これは次に、REFFが増殖する余地を作り出し、反応の最後により大きなFAMシグナルをもたらす。その結果、直接競合から観察されたものと同様に、様々なWT濃度に対するS字型の応答曲線が得られる(図9A)。この応答曲線は、標的のいずれかの増幅率、合成標的の開始濃度、プライマーのいずれかの濃度、又はネットワーク自体のトポロジーを調整することによって調整することができる(図9B図9C)。このシステムの主な利点は、合成標的の「内部」配列に対して完全な自由度を有するため、同じ2つのプローブ配列を複数のREFで再利用できることで、どれだけ多くの天然の標的が利用されているか、又はネットワークがどれほど複雑であるかにかかわらず、開発コストを最小限に抑えることができることである。
【0409】
事例研究:間接CANによるがんの診断
早期がん診断又はがん治療のモニタリングの有望な手段は、血流中の腫瘍由来DNA(循環腫瘍DNA、ctDNA)、細胞が死ぬときに細胞から放出される染色体断片の検出によるものである。これは、一塩基多型(SNP)又は挿入欠失(インデル)などの特定の変異によって、無細胞DNA(cfDNA)の通常の環境と区別可能である。既知の病原性変異を検出することによって、スキャンで腫瘍が現れる前に誰かを診断することができる可能性がある。治療後又は治療中にctDNAを調べて、患者が反応しているかどうか、又はがんが再発したかどうかを確かめることもできる。困難なことは、これらのバリアントが、対応する天然配列よりも濃度がはるかに低いことである。更に、単一の塩基の変化は、通常のPCRを使用して区別することが困難である(インデルはより簡単なので、SNPで機能するものはインデルでよりよく機能するであろうことを理解して、SNPに焦点を当てよう)。場合によっては、特定の変異が治療決定(すなわち、標的治療感受性/耐性)に情報を与えることができるが、一般に、多数の変異のいずれかがその合計の代わりとして機能し得るにもかかわらず、総ctDNA負荷が必要とされる全てであり、これがCANの優れた用途となる。
【0410】
ctDNAの検出にCANを使用するために、対応する野生型よりもバリアントアレルを優先的に増幅するための公開されたアプローチであるブロッカー変位増幅(Wu et al.,2017)を適応させよう(図13)。BDAでは、短いオリゴはSNP部位と重複するように設計されているが、WT配列により強く結合する。この「ブロッカー」は、ポリメラーゼによる伸長を防ぐように化学的に修飾される。SNPに隣接し、ブロッカー領域と重複するプライマー部位を選択することによって、ブロッカー及びプライマーは、WT標的及びSNP標的への結合に対して競合する。これは、ブロッカーがプライマーよりも強く結合するため、WTの増幅率を抑制するが、プライマーがブロッカーを打ち負かすため、最小限の摂動でSNPを増幅することができる。このシステムは、可変アレル頻度(VAF)が高い場合でも、SNP濃度が増加するにつれて1つのシグナルが急速に優位になるように調整された間接CANと共役され得る。いくつかの異なる標的について、そのようなあるCANを設計することで、総シグナルがctDNAにおける総全変異負荷を反映する多重サーベイランスが可能になる。
【0411】
高次競合ネットワーク
間接CANの柔軟性により、単一の閉じたネットワークに複数の天然標的を組み込むことができ、標的の組み合わせの非線形解析が可能になる。例えば、図14は、ブール論理からAND、OR、及びXOR論理を近似するCANモチーフを示す。冗長競合ネットワーク
上記のCANは、所与の標的に対する応答が限定されており、出力は、標的濃度に関して常に単調又は少なくとも単峰である。しかしながら、単一の配列を冗長的に標的化することによって、蛍光シグナルの相加的性質を更に活用することができる。遺伝子転写産物は、典型的には数千ヌクレオチド長であるが、PCR標的に必要なのは50~300ヌクレオチドのみである。したがって、各々同じ配列の異なる領域を標的とする独立したCANを設計することができる。それらの出力は積み重なり、強力な創発的挙動を生み出す。数学的観点から、個々のネットワークは、理論的には任意の応答関係を構築することができ、所与の配列内で利用可能な標的領域の数によってのみ制限される、「基底関数」のライブラリになる。
【0412】
事例研究:冗長CANを備えた希釈非依存(dilution-agnostic)比較器
バイオセンシングは少しパラドックスに直面している:生体分子の濃度の変動は疾患状態を推測するために使用されているが、試料の標的の濃度が変動し得るという多くの非生物学的な理由がある。患者は、予想されるものよりも多かれ少なかれ水和している可能性があり、試料の量が不正確である可能性があり、又は単純な統計が得られた細胞の数の変動につながる可能性がある。これらの不確実性に対応するための古典的なアプローチは、内部標準を使用することであり、疾患状態によって変わるべきではない試料に固有のものである。RNAの分析の場合、この内部標準は、典型的には、「ハウスキーピング」遺伝子であり、その濃度が、それらの状態ではなく、分析された細胞の数のみを反映する、細胞の増殖(例えば、細胞骨格又は細胞膜の代謝を制御する)に非常に基本的な転写産物である。本当に興味深い遺伝子転写産物の濃度は、ハウスキーピング遺伝子と比較して、正規性からの偏差のより信頼できる測定値を生成することができる。典型的には、これらは並行して行われる別個のPCR反応であるか、又は単一の反応内の複数のプローブで行われるかのいずれかである。いずれの場合も、これは、例えば、16個の目的の遺伝子及び5個のハウスキーピング遺伝子が必要であり、広範な後処理が必要である場合、非常に時間、資源、及び試料集約的になる。間接CANの冗長な標的化は、分子レベルでこの計算を明示的に行う方法を提供するため、報告されたシグナルは、それらの絶対濃度に関係なく、2つの遺伝子の相対濃度を反映する(図15)。
【0413】
更なる用途
25年にわたる遺伝子発現解析により、数十又は更に数百の潜在的な診断用発現シグネチャが特定された。RT-PCR、Nanostring、及びRNA-seq分析は、同様に有用な洞察を生み出した。上記のシグネチャに加えて、以下の報告は、CANプラットフォームの適応のための有望な候補を提示している。
●敗血症抗生物質の決定モデル、11遺伝子
●乳がん化学療法の決定、70遺伝子
●乳がん診断、21遺伝子
●カンジダ血症、40遺伝子
●ウシ結核、15遺伝子
●ウシ乳房炎、15遺伝子
【0414】
CANプラットフォームはまた、バイオプロセスの問題、合成細胞の工業用途を解決して、薬剤などの製品を生産したり、石油化学物質若しくは温室効果ガスなどの物質を分解したりすることもできる。これには、いくつかの合成及び天然の遺伝子システムの協調を伴い、同時に増殖した2つ以上の操作された細胞集団が関与する可能性がある。現在、システムの性能は、高価で時間がかかるRNA-seq又はマイクロアレイによって検証されている。代替的に、エンジニアは、所望の生成物と併せて「レポーター」を産生する遺伝子を含む。しかしながら、そうすることで、そうでなければ所望の化合物の生成に使用され得る原料を消費し、一方で、操作された細胞により大きなストレスと不確実性を与える。CANアーキテクチャは、関連する全ての遺伝子の転写活性のスナップショットを同時に取得する様式を提供する。全ての遺伝子が事前に指定されたウインドウ内で機能している場合、CANは、1色を生成するが、遺伝子がそのウインドウの上又は下にある場合、異なる色を生成するように設計され得る。
【0415】
結論
競合増幅ネットワークは、分子レベルで強力な計算を実行し、バイオセンサアーキテクチャ内で分析物のパターン認識を明示的に実行する可能性を提供する。ユビキタスなDNA増幅技術であるPCRを活用することで、CANプラットフォームは、高速で安価で、とりわけ使いやすい。この技術のデータ主導的な性質は、その強みと弱みの両方である。CANの設計及び試験に必要なのは適切なデータセットだけであるが、十分に堅牢なデータセットを取得することは長期的な課題になる可能性がある。幸いなことに、このトピックに関する広範な文献が存在し、多くはオープンアクセスデータが含まれている。ここにおける結果は、技術の可能性を記述し始めるだけであり、ネットワーク設計、標的配列の選択、及び実験的検証のためのルール及びアルゴリズムを確立するためには、より多くの作業が必要である。まだ初期段階であるため、CANの作成は非常に手動のプロセスであるが、モデリング及び自動計装の統合によってプロセス全体が簡素化され、i)アプリケーション用のネットワークを設計し、ii)競合及びプライマー配列を選択し、iii)ビルディングブロックオリゴから競合をロボットで組み立て、iv)適切な数の反応を実行し、v)結果を予測された応答と比較し、vi)ネットワーク又は配列設計を調整する。このようなクローズループ開発システムは、幅広いバイオセンシング用途のためのCANプラットフォームの迅速な展開を可能にするであろう。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図16-5】
図16-6】
図16-7】
図16-8】
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図17-4】
図17-5】
図17-6】
図17-7】
図17-8】
図18
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図22-1】
図22-2】
図22-3】
図23-1】
図23-2】
図23-3】
図23-4】
図23-5】
図23-6】
図23-7】
図23-8】
図23-9】
【配列表】
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