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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】曲げられた多層パイプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20250110BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20250110BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20250110BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08 Z
B32B7/025
B32B27/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023528644
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2021060578
(87)【国際公開番号】W WO2022101883
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】20207866.3
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トムケ トーストン
(72)【発明者】
【氏名】ギャビー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァノスデール ブライアン
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517026(JP,A)
【文献】特開2011-169467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
B32B 1/08
B32B 7/025
B32B 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点と室温に基づいて算出された第1温度TUK1を有する第1プラスチックK1を有しポリマーや共重合体とは異なる凝集体Zを有する少なくとも1の第1層と、融点と室温に基づいて算出された第2温度TUK2を有する第2プラスチックK2を含む少なくとも1の第2層とを含むパイプであって、
電界定数によって標準化され、前記第1プラスチックK1に割り当てられた比誘電率の虚部が温度と周波数に基づいて算出された第1係数AK1であり、
電界定数によって標準化され、前記第2プラスチックK2に割り当てられた比誘電率の虚部が温度と周波数に基づいて算出された第2係数AK2であり、
電界定数によって標準化され、凝集体Zに割り当てられた比誘電率の虚部が温度と周波数に基づいて算出された第3係数Aであり、
温度と周波数に基づいて算出された第4係数AS1が前記第1層に割り当てられ、温度と周波数に基づいて算出された第5係数AS2が前記第2層に割り当てられ、
前記第1係数AK1前記第3係数Aが、前記第1層内の混合比によって、少なくとも前記第1層の前記第4係数AS1を共同で決定し、
前記第2プラスチックK2の前記第2係数AK2が少なくとも前記第2層の前記第5係数AS2を共同で決定し、
前記第3係数A前記第1係数AK1よりも大きく、
凝集体Zは固体であり、前記固体は半導体又は非伝導体であり、 長手方向における電気伝導率が10 -8 S/m未満であることを特徴とするパイプ。
【請求項2】
前記第3係数A前記第5係数AS2又は前記第2係数K2よりも大きいことを特徴とする請求項に記載のパイプ。
【請求項3】
前記第5係数AS2は、前記第1係数AK1よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプ。
【請求項4】
前記第1層の前記第1プラスチックK1は、芳香族ポリアミド(PA)、脂肪族ポリアミド(PA)、部分芳香族ポリアミド(PA)、ポリエステル(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、フッ素重合体(FP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィン(PO)のいずれかから選択されるポリマーを含み、前記第2層の前記第2プラスチックK2は、上記に挙げたポリマークラスから選択された他のポリマーを含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項5】
更にプラスチック製の単一又は複数の層を有し、
前記単一又は複数の層は、凝集体Zを有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項6】
前記第1プラスチックK1と前記第2プラスチックK2が熱可塑性であり、
前記第1温度TUK1を前記第2温度TUK2で割った値が温度比UVを定義し、
K1をAK2で割った値が比率AVを定義し、
記温度比UVを前記比率AVで割った値が主要比率HVを定義し、その結果以下の式
【数21】
が適用され、差分係数UFは以下の式
【数22】
に応じて主要比率HVにより決定され、AS1をAS2で割った値が比率AVを定義し、前記温度比UVを前記比率AVで割った値が主要比率HVを定義し、その結果以下の式
【数23】
が適用され、差分係数UFは以下の式
【数24】
に応じて前記主要比率HVにより決定され、
不等式は、
【数25】
を満たすことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項7】
更にプラスチックからなる追加の単一又は複数の層を有し、
前記追加の単一又は複数の層は重量部分Gを有する凝集体Yを含み、
凝集体Yは非導電性又は半導体の固体であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項8】
半導体又は非導電性の固体を有する1つの前記第1層又は複数の前記第1層は、全体の重量の50%以上、又は70%以上、又は90%以上、又は95%以上を占めることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項9】
前記差分係数UFは最大で5であることを特徴とする請求項に記載のパイプ。
【請求項10】
凝集体Z及び/又は凝集体Yは、結晶質又は金属酸化物であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のパイプ。
【請求項11】
凝集体Z及び/又は凝集体Yは粉末形態であり、
凝集体Z及び/又は凝集体Yの平均粒径は、最大で100μmであることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のパイプ。
【請求項12】
複数の層のうちの前記第2層はバリア層であり、前記バリア層の材料は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素重合体、ポリフタルアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性エラストマーのグループから選ばれるプラスチックを有することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のパイプ。
【請求項13】
少なくとも1つの屈曲点を有することを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のパイプ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のパイプを含む流体ラインであって、
前記パイプの両端にそれぞれラインコネクタを有し、
少なくとも1つの前記ラインコネクタは相手側と可逆的に接続される流体ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月16日出願の欧州特許出願第20207866.3号の優先権を主張するものであり、参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、少なくとも1つの第1層と1つの第2層とを含むパイプに関するものであり、第1層は第1プラスチックK1を有し、第2層は第2プラスチックK2を含み、第1層は凝集体Zを有し、凝集体Zは固体であり、凝集体Zはポリマーや共重合体をほとんど含まない又は実質的に含まず、凝集体Zは第1層及びパイプの誘電加熱を容易にするものである。
【背景技術】
【0003】
例えば、このような多層プラスチックパイプは、独国特許第69613130T2号明細書により知られている。その結果、高周波励起に対してプラスチック材料の十分な誘電加熱を達成するために、水や軟化剤などの凝集体(aggregate)が使用される。パイプに関しては、比誘電率(relative permittivity)εrと損失係数(loss factor)dに関して最小値が推奨される。これにより、パイプの屈曲点の領域において、パイプの誘電加熱及びそれに伴う曲げ性が十分に大きくなる。
【0004】
欧州特許出願公開第1182345A1号明細書、欧州特許出願公開第2476938A1号明細書、欧州特許出願公開第1452307A1号明細書からは、個々の又は複数の層に集合体が備えられた多層プラスチックパイプが公知である。例えば、凝集体には、導電性の炭素黒又はグラファイト繊維が含まれる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凝集体を使用した多層パイプの開発中に遭遇する問題の一つとして、パイプが誘電加熱後に特定の望ましい特性を一部の場合に失ってしまうことを発見した。例えば、バリア層のバリア特性が部分的に又は完全に低下することがあり、これは事前及び事後のテストによって容易に確認できる。他の場合では、パイプは誘電加熱後に曲げ形状を保持しないことに留意する必要がある。
【0006】
従って、本開示の目的の一つは、良好な材料特性を有し、誘電加熱後でも曲げ形状を便宜的に保持することができる多層パイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示は変換温度TUK1を有する第1プラスチックK1を有しポリマーや共重合体とは異なる凝集体Zを有する少なくとも1の第1層と、変換温度TUK2を有する第2プラスチックK2を含む少なくとも1の第2層とを含むパイプを推奨する。
【0008】
さらなる側面によれば、電界定数によって標準化され、前記第1プラスチックK1に割り当てられた比誘電率の虚部が吸収係数AK1であり、電界定数によって標準化され、前記第2プラスチックK2に割り当てられた比誘電率の虚部が吸収係数AK2であり、電界定数によって標準化され、凝集体Zに割り当てられた比誘電率の虚部が吸収係数Aであり、吸収係数AS1が前記第1層(3)に割り当てられ、吸収係数AS2が前記第2層(2)に割り当てられ、吸収係数AK1と吸収係数Aが、前記第1層(3)内の混合比によって、少なくとも前記第1層(3)の前記吸収係数AS1を共同で決定し、前記第2プラスチックK2の前記吸収係数AK2が少なくとも前記第2層(2)の吸収係数AS2を共同で決定し、吸収係数Aは吸収係数AK1よりも大きい。
【0009】
好ましくは、凝集体Zは固体であり、前記固体は半導体又は非伝導体である。
【0010】
「半導体(semiconductor)」という用語は、好ましくは電気伝導率が最大で104S/cm以下の材料のことをいう。半導体の電気伝導率は、好ましく有利には最低でも10-8S/cmである。電気導体の電気伝導率は、便宜的に半導体よりも高く、非導体の電気伝導率は半導体よりも低いことが適切である。
【0011】
固体は20℃において固体の凝集体の状態であり、従って液体でも気体でもないことが好ましい。固体の融点又は分解温度は、第1プラスチックよりも高いことが好ましい。
【0012】
特に、「層」という用語は、パイプの壁の単一の層を指し、パイプの壁は放射状に内側から外側に向かって順番に並んでいる複数の層を有することを意味する。層は、好ましくは均一に混合された材料で構成されており、1つの材料成分又は複数の材料成分を有している。層は、便宜的に好ましくは少なくとも1つのプラスチックを含み、このプラスチックには凝集体が備えられていることが適切である。「プラスチック」という用語は、好ましくは個々のポリマー、共重合体、及び/又はポリマーブレンドのことである。
【0013】
変換温度TUK1及びTUK2に関しては、それぞれ後者は各プラスチックの対応する融点又は分解温度から室温20℃(TR)を引いた値に相当することが適用される。融点TSK1の熱可塑性プラスチックK1については、以下の式が適用される。
【数1】
【0014】
熱硬化性又は非熱可塑性プラスチックの場合、熱硬化性プラスチックの変換温度TUKは、その分解温度から20℃を引いた値に相当する。
【0015】
「電界定数(electric field constant)」ε0、「比誘電率(relative permittivity)」εr 及び他の電気量の定義に関しては、好ましくはドイツ電気技術委員会(DKE-IEV)の標準規格(60050:2019年10月1日版)の意味で解釈されることが好ましい。結果的に、複素誘電率は以下のように書ける。
【数2】
【0016】
ここで、複素誘電率εは、電界定数ε0を介して以下のように標準化することができる。
【数3】
【0017】
ここで、εr’は比誘電率の実部であり、しばしば誘電定数k’とも呼ばれる。しかしながら、「定数(constant)」という用語は完全に正確ではない。なぜなら、k’は物質だけでなく周波数及び温度にも依存するためである。比誘電率εr”の虚部ではしばしば「誘電損失(dielectric loss)」と呼ばれ、以下で詳しく説明される。
【数4】
【0018】
ここでδは虚部と実部の間の角度を表し、損失角と呼ばれる。英語圏では、誘電損失係数dはしばしば「ロスタンジェント(loss tangent)」又は「ディシペーションファクター(dissipation factor)」と呼ばれる。
【0019】
材料の誘電特性を表す際には、一方では比誘電率εr’の実部、他方では誘電損失係数dという形で表現するのが一般的である。比誘電率εr’は各材料に結合された電磁放射の比率を示し、dは材料内で吸収される結合放射の比率を表す。その結果、これら2つの量の積、すなわち、以下の式となる。
【数5】
【0020】
故に、誘電熱の損失を示すεr”は、結合された熱量及び吸収された熱量に比例している。その特性は、以下の通りである。
【数6】
【0021】
ここで、E2は電界強度の2乗を表し、ωは円周周波数を表す。大文字Pは消費電力を、Vは誘電体材料の体積を、小文字pは消費電力密度を表す。ここでは、電磁放射源によって電界が生成される。たとえば、その円周周波数ω及び電界強度Eは、消費電力Pを決定する上で非常に重要なパラメータであり、はるかに重要なものである。
【0022】
一方、誘電損失εr”とε”は、材料やパイプの側面で遥かに重要なパラメータであり、誘電体材料内の熱損失に関して、それぞれを個別に見た場合、誘電率の実部εr’と誘電損失係数dと比較してより情報価値が高い。
【0023】
例えば、誘電体パラメータεr’とεr”は、振動回路の配置によって決定され得る。この配置では、固定のインダクタンスLを持つコイルに加えて、測定用のキャパシタが配置される。前者は、誘電体サンプルを収容できるように設計され、振動回路の共振周波数と品質を測定することで、εr’とεr”を決定することができる。更に、一般的に知られている多くの他の測定方法が存在し、これらの方法は、特に測定手法や測定可能なεr’(ω)とεr”(ω)のスペクトルの点で異なる。
【0024】
εr’とεr”は周波数と温度に依存し、これらのパラメータのいずれかを測定するためには、所望の時間を費やすことができる。そのため、ここでは25℃及び10MHz(誘電加熱のスペクトル内にある周波数)でεr”のみが決定され、タイポグラフィックの簡潔さのために、材料に依存する吸収係数Aが次のように定義される。
【数7】
【0025】
結果として、ここで言及されている吸収係数のすべての数値は、特に文献からの値との比較可能性を確保するために、25℃及び10MHz又は107Hzでの値に関連している。この点に関し、標準的な参考文献として、R. von Hippel著の「DIELECTRIC MATERIALS and APPLICATIONS」(Wiley Verlag, 1954)を参照されたい。そこで開示された数値表において、25℃及び107c/s(=107Hz)でのεr’=εr’/ε0とtanδ=εr”/εr’の2つの値を互いに乗算することで、材料に依存する値εr”(25℃、10MHz)=Aが得られる。
【0026】
しかしながら、しばしば、プラスチックK1とK2を凝集体Zから分離することは、不可能ではないにしろ困難であり、プラスチックK1とK2の誘電特性が液化や分離中に変化しないようにすることは困難である。しかしながら、例えば、第1層のサンプルのプラスチックは、焼却や溶解などによって完全に除去することができ、例えば、凝集体Zの誘電特性は変化せずに保たれる。吸収係数Aの測定と吸収係数AS1の測定、及びプラスチックの重量部分GK1と凝集体Zの重量部分Gとの混合比の測定により、それぞれの吸収係数AK1を以下のように決定することができる。
【数8】
【0027】
ここで、重量部分GK1とGは無次元の量であり、互いに加算すると1になる。GK1及びGは、プラスチックK1を除去する前の第1層サンプルの重量と、残された凝集体Zの重量によって決定される。第2層のサンプルについても、AK2を決定するために同様の手順が行われ得る。先の式の変換後、AK1は以下のように計算され得る。
【数9】
【0028】
これにより、第1層及び第2層の吸収係数AS1とAS2を関連付ける吸収比率AVが決定され得る。
【数10】
【0029】
ここで、AS1及びAS2を決定する際には、それぞれの層材料(プラスチック及び可能な凝集体)のサンプルが調査される。AS1は、プラスチックK1と凝集体Zを混合することによって生じ、凝集体Zは吸収係数Aを有する。非常に高い吸収係数Aを有するわずかな量の凝集体Zは、第1層の吸収係数AS1に決定的な影響を与える可能性がある。
【0030】
例えば、第1プラスチックK1の吸収係数AK1と第2プラスチックK2の吸収係数AK2から比率が形成される場合、以下では吸収比率AVが参照される。
【数11】
【0031】
本開示は、個々の層が誘電加熱中に強く加熱され、文字通り燃える可能性があるという理解に基づいている。例えば、これはバリア層のバリア性能を大いに損なう可能性がある。これらの層はしばしば融点が低く、従って熱に比較的敏感である。対照的に、耐熱層は融点が高く、永久的な曲げ形成のために質量に対してより多くのエネルギーを必要とする。
【0032】
更に、パイプ内で吸収される熱エネルギーに関して、多くの妥協策が不十分であるか、更には不利であることが分かった。不運な選択された妥協策の場合、熱に敏感な層が燃えることがあり、不十分な加熱により耐熱層の曲げが望ましい形状に適応しないことがある。曲げ加工では、不十分に加熱された層の場合、耐熱層の曲げ箇所に微小なクラックが形成される場合がある。従って、本発明の重要な発見の1つは、層同士を誘電加熱の観点で互いに合わせる必要があるということであり、DE69613130T2に記載されているように、単に吸収する層の熱量を増やすだけでは不十分であるということである。
【0033】
更に、新たに開発されたパイプの耐熱層(例えばポリアミドなど)においても、誘電加熱中に意外にも溶けることが分かった。驚くべきことは、誘電エネルギー吸収がきちんと調和されており、実際には過熱の発生がないはずであったことである。この発見は、導電性材料(例えば導電性の煤)が、該当する層の強い過熱を引き起こし、純粋な誘電加熱を著しく上回るという知識に基づいている。
【0034】
同様に、全てではないにしろ、多くの場合、柔軟剤が伝導率を大幅に上昇させることが分かった。柔軟剤(水を含む)は、しばしば半導体又は非導体であり、更には液体であり、イオンの移動性を高めることで伝導率を増加させる。本発明によれば、凝集体として考慮されるのは固体のみである。
【0035】
対照的に、発明としての固体の半導体又は非導体としての凝集体Zの利用は、電気伝導率が高すぎるための過熱の影響を回避するか、大幅に軽減する効果をもたらす。その結果、加熱は基本的に誘電吸収に限られており、これは半導体又は非導体の固体によって非常にうまく調整できる。
【0036】
本発明は更に、n層からなる多層パイプの誘電吸収を2つ又は3つの方法で調整できるという知識に基づいている。第1の場合では、少なくとも2つの層の誘電吸収が互いに調整され、好ましくは少なくとも1つの凝集体を介してそれぞれの融点にも調整される。その結果、第1の場合では、すべての層は誘電加熱中に同じ時間内で同様の程度に柔軟化される。
【0037】
第2の場合では、すべての層が同じ期間に同様の方法で同様に柔軟化されるわけではない。例えば、n層が与えられた場合、単一の凝集体Zあるいは異なる凝集体Z、X、Yが付加されるのはn-1、n-2、n-3、n-4、又はそれ以下の層だけである。好ましくは凝集体Z、X、Yを有する層のみが、短時間で十分に加熱され、そのプラスチックが十分に柔軟化され、永続的に曲げ変形を受けることができる。第1のサブケースでは、これらの層は更に十分に厚く又は機械的に安定しているため、パイプ全体、特に熱の発生や柔軟化が少なすぎる層を曲げられた形状で保持する。
【0038】
第2のサブケースでは、凝集体を含む層は曲げ変形を持続させるのに十分な厚さではない。しかしながら、その代わりに、誘電加熱の寿命を十分に大きく設定することで、凝集体を含む層が実際に必要なより長い時間、誘電加熱にさらされることが保証される。その結果、十分に柔軟化するために他の層に十分な量の熱エネルギーが放射される。
【0039】
これらの2つのケース又は3つのサブケースには、誘電加熱の正確な調整が必要である。これは、本発明によると、半導体又は非導電性の固体であり、吸収係数AがAK1よりも大きい凝集体Zによって達成される。
【0040】
特に好ましいのは、縦方向におけるパイプの電気伝導率が10-8S/m未満又は10-9S/m未満又は10-10S/m未満又は10-11S/m未満であることである。パイプの両端での電気伝導率を決定するために、接触は好ましくは各端面全体にわたって行われることが望ましい。電気伝導率の単位は長さの基準を持っているため、パイプからは10mmや1mmといった短い部分の切り取りと測定が可能である。パイプ断面積が一定であるため、単位S又はΩで得られる値は容易に長さ1m及びS/m単位に変換することができる。切断は便宜的にパイプ軸に対して垂直に行われ、好ましくは研磨や同様の手続きによりなめらかにされる。好ましくは、パイプの層は、異なる抵抗器の並列回路を表している。パイプの長手方向の電気伝導率は、通常、特に最も電気的に導電性の高い層に基づいて、上記の並列回路によって決定される。
【0041】
特に有利なのは、吸収係数Aが吸収係数AS2又はAK2よりも大きいことである。吸収係数Aは、AS2又はAK2よりも1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、又は3倍以上大きいことが好ましい。これにより、各層を電気的に調整するために使用される。
【0042】
層同士を調整するためには、吸収係数AS2又はAK2がAK1よりも大きいことが非常に有利である。吸収係数AS2又はAK2は、AK1よりも少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、又は3倍以上大きいことが望ましい。
【0043】
第1層のプラスチックK1は、以下のポリマークラス、すなわち芳香族ポリアミド(PA)、脂肪族ポリアミド(PA)、部分芳香族ポリアミド(PA)、ポリエステル(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、フッ素重合体(FP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィン(PO)、のいずれかから選択されるポリマーを含むことが非常に好ましい。一方、第2層のプラスチックK2は、上記に挙げたポリマークラスの別のポリマーから選択されることが好ましい。この考慮の背景には、特に異なるポリマークラスのポリマーが誘電調整を必要とするという事実がある。
【0044】
パイプには、更にプラスチック製の層又は更に複数の層がある可能性がある。更に層又は複数の層は、好ましくは凝集体Zを有していることが望ましい。更なる単一又は複数の層のプラスチックは、有利にはプラスチックK1のポリマークラスからのポリマーを含んでいる。特に好ましいのは、プラスチックK1が更なる単一又は複数の層と同じポリマーであることである。最初の層と単一又は複数の層は、同じプラスチックK1を有することができる。第2層は、第1層と少なくとも1つの更なる層の間に配置することができる。更なる層は、第2層に包まれることがあり、又は第2層を包むこともある。更なる層は、第2層に接することができる。更なる単一の又は複数の層において、凝集体Zが最初の層と同じ重量部分Gを構成する可能性がある。
【0045】
第1層が第2層に接し、第2層を包み込み、第2層に包み込まれることが有利である場合がある。第1層は、便宜的に誘電加熱や軟化に関して第2層に適切に調整され、その結果、第2層に凝集体が必要とされなくなる。層同士の接合は特に第2のケース又は第2及び第3のサブケースにおいて重要であり、この場合、熱は第1層から放出される。
【0046】
いくつかの場合には、第2層には固体で非導電性又は半導体の凝集体がない場合が可能であることが好ましい。パイプには、固体や半導体、非導電性の集合体を含まないプラスチックからなる別の層が存在する可能性がある。他の単一の又は複数の層のプラスチックは、プラスチックK2のポリマークラスからのポリマーで構成されることが好ましい。更に、プラスチックK2が他の単一の又は複数の層と同じポリマーを有することが好ましい。第2層と他の単一の又は複数の層は、同じプラスチックK2を含んでもよい。第2層の吸収係数AK2は、パイプの残りの層の吸収係数よりも有利に大きい。
【0047】
好ましくは、第1プラスチックK1と第2プラスチックK2が熱可塑性であることである。これにより、変換温度TUK1とTUK2は、関連する融点に便宜的に依存するようになる。好ましくは、変換温度(第1変換温度)TUK1を変換温度(第2変換温度)TUK2で割った値が変換温度比UVを定義し、AK1をAK2で割った値が吸収比率AVを定義し、変換温度比UVを吸収比率AVで割った値が主要比率HVを定義する。そのため、以下の式が適用される。
【数12】
【0048】
ここで、差分係数UFは主要比率HVに基づいて以下の式に従って決定される。
【数13】
【0049】
S1をAS2で割った値が吸収比率AVを定義し、変換温度比UVを吸収比率AVで割った値が主要比率HVを定義するような場合、以下の式が適用される。
【数14】
【0050】
ここで、差分係数UFは、主要比率HVに基づいて以下の式に従って決定される。
【数15】
【0051】
ここで、不等式Uは、以下の式を満たす。
【数16】
【0052】
主要比率HVが1より大きい場合、好ましくは、HVまたはHVと値1との間のそれぞれの差分係数UFまたはUFが決定され、それぞれの差分係数UFは、それぞれの主要比率HVに対応する。それ以外の場合、それぞれの差分係数UFは、それぞれの主要比率HVの逆数に対応する。その結果、理想的な場合には、差分係数は1の値を取り、この値が1より大きくなるほど悪化する。
【0053】
凝集体Zを添加することによって、個々の熱吸収の観点から、個々の層がそれぞれの変換温度TUまたはそれぞれの層のプラスチックの溶融温度に調整されることが非常に有利であることが判明した。非常に重要な発見の一つとして、好ましくは、この調整は、凝集体Zの添加を通じて、二つのプラスチックの吸収比率AVが二つの層の変換温度比UVに近づくように行われることがある。この方法により、誘電加熱の熱が複数の層に均等に分散されるため、第1層と第2層の軟化度は互いに近似する。差分係数UFが1の場合、二つの層はほぼ同じ程度に軟化する。これにより、特に速くて柔らかな曲げが実現される(最初の場合)。
【0054】
好ましくは、差分係数UFが最大でも20、最大でも10、更に好ましくは最大でも5、特に好ましくは最大でも2、非常に特に好ましくは最大でも1.5、理想的な場合には最大でも1.2となることである。
【0055】
パイプには、プラスチックからなる追加の単一又は複数の層が存在する可能性があり、追加の層は、重量部分Gを有する凝集体Yからなり、凝集体Yは非導電性又は半導体の固体である。追加の層のそれぞれの凝集体Yの吸収係数Aは、それぞれの追加の層のプラスチックよりも有利に大きい。好ましくは、追加の単一又は複数の層のプラスチックがプラスチックK1及び/又はプラスチックK2と異なることである。追加の単一又は複数の層のプラスチックは、可能な限りプラスチックK1及び/又はK2とは異なるポリマーからなることが好ましい。追加の単一又は複数の層のプラスチックのポリマーは、プラスチックK1又はK2とは異なるポリマークラスから選ばれることが非常に好ましい。特に有利なのは、吸収係数Aが吸収係数AS2又はAK2よりも大きいことである。吸収係数Aは、AS2又はAK2よりも少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、又は3倍以上であることが望ましい。
【0056】
特に、本開示の範囲内において、半導体又は非導電性の固体を含む層又は層、又は第1層又は第1層と他の層/他の層/更なる層/更なる層は、パイプの重量の50%以上、又は70%以上、又は90%以上、又は95%以上を含む。第2層又は第2層と他の単一又は複数の層は、パイプの重量の50%未満、又は30%未満、又は10%未満、又は5%未満を占める可能性がある。第2層の軟化が不十分であるにもかかわらず、第1層の機械的な安定性により、第1層が第2層を曲げられた形状に保持するため、短期間での曲げプロセスが可能となる(第2の場合)。
【0057】
Uの不等式が80℃の温度でも満たされることが有利であり140℃でも満たされることが好ましい。好ましい実施形態によれば、不等式Uは20MHzの励起周波数でも満たされ、有利には40MHzでも満たされる。
【0058】
第2層は凝集体Xを有し、その中に重量部分Gが割り当てられる可能性がある。重量部分Gは、第2層の重量に対して相対的に決定される。以下は、AS2を決定するために適用される。
【数17】
【0059】
従って、第2層が凝集体Xを有する場合、プラスチック部分を取り除くことでAK2も決定することができる。
【0060】
凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xは、特に好ましい場合には結晶質材料である。凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xが無機材料であり、好ましくはセラミック材料であることは非常に有利である。
【0061】
特に、凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xは金属酸化物を含むことがあり、この金属酸化物は、好ましくは「亜酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、チタン含有金属酸化物」のグループから選ばれる。チタン含有金属酸化物は、好ましくは「二酸化チタン、マグネシウムチタン酸塩、ストロンチウムチタン酸塩、バリウムチタン酸塩」のグループから選ばれることがある。ただし、凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xは、二硫化モリブデンを含むことがある。これらの材料は吸収係数が大きいため、層に混ぜる必要があるのはわずかな量だけであり、それ以外の層の特性はほとんど変わらない状態が維持される。
【0062】
好ましい実施形態によれば、吸収係数A及び/又は吸収係数A及び/又は吸収係数Aは0.002より大きく、好ましくは0.005より大きく、更に好ましくは0.01より大きく、更に好ましくは0.02より大きく、更に好ましくは0.05より大きく、特に好ましくは0.1より大きく、非常に特に好ましくは0.15より大きく、又は0.2より大きくなることが好ましい。吸収係数A及び/又は吸収係数A及び/又は吸収係数Aが100未満であることは有利であり、更に好ましくは30未満、特に10未満であることが好ましい。大きな吸収係数の利点は、各凝集体をごくわずかに混ぜるだけで済むため、各層の他の特性がほとんど変化しないということである。粒子が大きい場合、これらの吸収係数の過度に高い値は局所的な微小な焼けを引き起こす可能性がある。
【0063】
第1層に対する重量部分G及び/又は追加層に対する重量部分G及び/又は第2層に対する重量部分Gが少なくとも0.0001、好ましくは少なくとも0.001、更に好ましくは少なくとも0.01、特に少なくとも0.1であることが好ましい。本発明の範囲内では、第1層に対する重量部分G及び/又は追加層に対する重量部分G及び/又は第2層に対する重量部分Gは最大でも0.5であり、好ましくは最大でも0.3であることである。
【0064】
好ましくは、凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xが粉末形態であることである。凝集体Z及び/又は凝集体Y及び/又は凝集体Xの平均粒径は、有利には最大で500μm、又は200μm、又は100μm、又は50μm、又は20μm、又は10μm以下で測定されることである。これにより、対応する薄層の製造が容易になり、最適な熱分布が確保される。
【0065】
第1層又は第2層はバリア層であることが好ましい。好ましい実施形態によれば、第2層はバリア層である。バリア層の材料は、好ましくは「EVOH、フッ素重合体、PPA、ポリオレフィン、PVDC、TPE」というグループから選ばれるプラスチックを含む。特に、EVOH、フッ素重合体、PPA、又はPVDCがバリア層のプラスチックとして好ましく、EVOHが最も好ましい。バリア層は、最内層と最外層の間に配置されることが望ましい。ある実施形態によれば、第2層又はバリア層は最内層である。バリア層は最内層を形成することが可能であり、好ましくはフッ素重合体を含む。
【0066】
パイプがn層で構成されることが可能であり、好ましくは少なくともn-1層はそれぞれ少なくとも1つの凝集体Z、Y、Xを有している。最大の吸収係数AKjを有するプラスチックの層jが凝集体を含まないことが有利である。2層以上の場合、差分係数UF又はUFはUFSij又はUFKijとして表され、ここで、iは層jとは異なるそれぞれの層を表す。全ての差分係数UFSijが20以下又は10以下又は5以下又は2以下又は1.5以下又は1.2以下であることが好ましい。少なくとも2つの差分係数UFSij、有利にはすべての差分係数UFSijに関して、それらがそれぞれの付随する差分係数UFKijよりも小さいことが有利である。
【0067】
本開示の範囲内では、パイプに少なくとも1つの屈曲点が存在することがあり、特に、少なくとも2つ又は3つ、特に好ましい場合は少なくとも4つ又は5つの屈曲点が存在する。パイプは好ましくは共押出しされ、更に好ましくは一つの部品であることが望ましい。特に、「一つの部品」という用語は、パイプが破壊的な方法でのみ複数の部品に分割できることを意味する。
【0068】
パイプの外径は、便宜的に最大で30mm以下であり、特に好ましくは最大で20mm以下である。パイプの壁厚は、望ましくは0.1mmから5mmになることが好ましく、更に好ましくは0.3mmから3mmになることである。第1層及び/又は第2層の層厚は、0.05mmから1.5mmまでの範囲で測定することが可能であり、特に好ましくは0.1mmから0.5mmの範囲である。
【0069】
上記の目的を達成するために、本開示では本発明によるパイプを備えた流体ラインを推奨する。この流体ラインは、パイプの両端にそれぞれラインコネクタを有し、少なくとも1つのラインコネクタは相手側と可逆的に接続することができる。少なくとも1つのラインコネクタは、相手側と有利に可逆的にロックされ得る。少なくとも1つのラインコネクタが雌結合体を含むことが好ましい。結合体は、便宜的に相手側を流体的に漏れのない方法で収容するように設計されている。相手側は、便宜的に雄コネクタとして構成され、好ましくはコネクタシャフトとコネクタシャフトの周りを回るカラー又はコネクタシャフトの周りを回る溝を含む。
【0070】
少なくとも1つのラインコネクタは、好ましくは保持具を備えており、ラインコネクタは次のように設計されることが望ましい。すなわち、雄コネクタを結合体に挿入する際に、保持具が周囲のカラー/溝を使用して雄コネクタを結合体にロックするようになっている。保持具は好ましくは環状であり、特に楕円形のリング又は円形のリングの形状をしているか、デザイン上U字型であることが望ましい。保持具は便宜的に広がる腕を含んでいる。好ましくは、腕が相手側を挿入する際に弾性的に広がることができ、相手側が完全に挿入されると、周囲のカラー/溝を使用して雄コネクタを結合体にロックする。
【0071】
以下、図面を基にして本開示をより詳細に説明するが、図面はあくまで一例を概略的に示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本開示に係るパイプの断面図である。
図2】本開示に係る流体ラインの側面図であり、図1のパイプを含み、更に2つのラインコネクタを有している。
図3】それぞれの2つのラインコネクタに配置された保持具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1によれば、本発明のパイプ1は3つの層2、3、4を有し、中間層2はバリア層であり、EVOHを含んでいる。外側層3及び内側層4は、それぞれポリアミド6を有しており、内側層4のポリアミド6は外側層3のポリアミド6と同一である。この例示的な実施形態では、ポリアミド6は吸収係数0.1を有することができ、一方でEVOH製の中間層2は吸収係数0.6を有している。ポリアミド6製の外側層3は、第1プラスチックK1を有する「第1層」として理解され、一方、中間層2は「第2層」として第2プラスチックK2で解釈される。この例示的な実施形態では、内側層4は「その他の層」として理解され、同様に第1プラスチックK1を有している。
【0074】
その結果、吸収係数AK1の値は0.1となる一方、吸収係数AK2の値は0.6となる。K1(PA6)及びK2(EVOH)の両方のプラスチックは熱可塑性であり、その変換点は融点から20°Cを引いた値に相当する。この例示的な実施形態では、ポリアミド6の変換温度TUK1は200K(=220°C-20°C)となる一方、EVOHの変換温度TUK2は163K(=183°C-20°C)となる場合がある。
【0075】
吸収係数が6倍高く、融点が低いため、誘電加熱によりEVOH(第2層2)は迅速に屈曲される温度にまで加熱される。しかしながら、2つのポリアミド層(第1層3及び他の層4)はまだ同時に十分に加熱されていないため、まだ容易に屈曲することはできない。パイプが更に加熱され、2つのポリアミド層も十分な屈曲が可能になるまで加熱されると、中間層は非常に強く加熱され、文字通り焼けてしまい、その優れたバリア特性をほとんど失ってしまう。例示的な実施形態では、主な比率HVは以下のように計算される。
【数18】
【0076】
ここでHV>1であり、従って差分係数UFも7.3となる。
【0077】
本発明によれば、第1層3とその他の層4には、パウダー状のジルコニウム酸化物(ジルコニアとも呼ばれる)である凝集体Zが混合される。凝集体Zは金属酸化物であり、結晶の形で存在し、吸収係数Aの値が2であることがある。その結果、凝集体Zはポリアミド6の吸収係数よりも約20倍大きく、またEVOHの吸収係数よりも3倍大きい値を有する。凝集体Zの重量部分Gは、2つのポリアミド層において10%又は0.1の値を示す場合がある。その結果、第1層3の吸収係数AS1及びその他の層4の吸収係数ASWは以下のように計算される。
【数19】
【0078】
そのため、凝集体Zを混合することにより、吸収係数AS1及びASWはほぼ3倍に増加した。対照的に、吸収係数AS1は一定であり、従ってAK2と同じである。従って、主要な比率HVの値は以下の通りである。
【数20】
【0079】
その結果、差分係数UFは差分係数UFよりも小さくなるので、第1層3において不等式Uが満たされる。同様に、第1層3から成り立つ他の層4についても同様のことが当てはまり、この層4は第1層3と同じ材料からなり、従って同じポリマー溶融源から派生する可能性がある。
【0080】
図2は、図1のパイプ1を完全な流体ライン5の構成要素として示している。この例示的な実施形態において、屈曲点11を有するパイプ1以外に、流体ライン5は2つのラインコネクタ6も含んでおり、それぞれがパイプ1の一方の端に配置されている。この例示的な実施形態において、ラインコネクタ6は雌ラインコネクタ6として設計されており、雄対応部7を受け入れることができる。図2の右側には、示されているような雄対応部7があり、これはパイプ(表示されているように)や他の部品(ポンプ、タンクなど)に接続することができる。この例示的な実施形態における対応部は、コネクタシャフト9と周方向のカラー10から構成されている。
【0081】
対応部7との接続のために、ラインコネクタ6はそれぞれ、摩擦力又は物質同士の接続によってパイプ1に固定される、雌デザインの結合体8を備えている。例えば、物質同士の接続はレーザー溶接継ぎ目として設計することもできる。例えば、摩擦接続は、結合体8の周方向のリブによって確立することができ、これによりパイプ1の端部が押し込まれる。結合体8は対応部7のコネクタシャフト9を収容し、その内部にはシール目的で優先的にOリング(ここでは不図示)がある。
【0082】
ラインコネクタとそれに付随する対応部7は、互いに可逆的に接続されることが有利であり、理想的にはロックによる接続が実現される。そのため、保持具12は結合体8に押し込まれる。保持具12はU字型のデザインが好ましい(図3参照)。保持具12は、Uの基部としてヘッド部14を有し、Uの脚として2本のアーム13を有している。アーム13は、対応部7の周囲のカラー10によって弾性的に広げることができ、その結果周囲のカラー10を通過した後、2本のアーム13は再び元の位置を取り、対応部7を再び結合体8にロックされる。2本のアーム13は、ヘッド部14に圧力をかけることで広げることができ、それに応じて結合体8を適切に構成することで、対応部7を結合体8から引き抜くことができる。
図1
図2
図3