(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】地図評価装置、地図評価方法及び地図評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 11/60 20060101AFI20250110BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20250110BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G06T11/60 300
G09B29/10 A
G09B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2024051098
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀行
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-032810(JP,A)
【文献】特開2022-025453(JP,A)
【文献】特開2022-132983(JP,A)
【文献】特開2005-258056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/60
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆形状を表した第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価装置であって、
第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する筆指定部と、
前記筆指定部が指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する外形座標値抽出部と、
前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する突合処理部と、
前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する評価データ生成部と、
前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する評価部と、
を備えたことを特徴とする地図評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記評価データ生成部が生成した前記頂点の組における頂点間の距離と、前記孤立頂点の有無に基づき前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する、請求項1に記載の地図評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記頂点の組における頂点間の距離と、前記孤立頂点の有無との評価の重み付けを変更可能である、請求項2に記載の地図評価装置。
【請求項4】
前記評価データ生成部は、前記孤立頂点が存在し、当該孤立頂点から前記第一の外形及び第二の外形のうち当該孤立頂点が存在しない方の外形までの最短距離が予め定めた閾値以下であり、前記各孤立頂点における内角が予め定めた閾値以上である場合に、前記各孤立頂点を孤立頂点の指定から除外する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地図評価装置。
【請求項5】
前記第一地図と第二地図とで座標系が異なる場合に、前記第一の外形を規定する頂点と前記第二の外形を規定する頂点との距離が最小になるように比較対象となる筆の外形の一方または両方の前記頂点の座標値を変換し、変換前後で座標値が変換された前記第一の外形及び/または第二の外形が相似形を維持するように変換する変換部をさらに備え、
前記突合処理部は、前記変換後の座標値に基づき前記頂点の組及び孤立頂点の有無を決定する、請求項1に記載の地図評価装置。
【請求項6】
筆形状を表した第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価方法であって、
第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する工程と、
前記指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する工程と、
前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する工程と、
前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する工程と、
前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する工程と、
を有することを特徴とする地図評価方法。
【請求項7】
コンピュータを、
筆形状を表した第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する筆指定部、
前記筆指定部が指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する外形座標値抽出部、
前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する突合処理部、
前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する評価データ生成部、
前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する評価部、
として機能させることを特徴とする、第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図評価装置、地図評価方法及び地図評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土地の境界や位置、地番などを含む筆形状を筆毎に示している地図として、法務局に備え付けの地図(以下、法務局公図という)がある。法務局公図には、土地の境界を地籍調査により確定させた、精度が高く、公共座標系に基づいた地図(不動産登記法第14条1項に基づいた地図:法14条地図という)と、明治時代初期の地租改正時に作成した図面(字限図)等に基づいた地図(旧土地台帳附属地図:旧公図という)とがある。旧公図は、図面内の任意座標により作成されており、図面の方位も任意となっている。
【0003】
各市町村では、土地の固定資産税を課税するための根拠資料として、法務局公図と同様に、土地の境界や位置、地番などを含む筆形状を筆毎に示している地図として地番現況図を整備してきた。これは、法務局公図が法14条地図であれば現況に即した図面で、そのまま課税に利用するのに支障がないが、旧公図の場合は、図面毎に方位がまちまちで、筆の形状は必ずしも現況に即した状態ではないため、課税資料として利用するのには不都合が発生していた。そこで、正確に測量を行った地形図や航空写真等を利用して、旧公図を現況に合わせて編集した地番現況図を作成してきた。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、住宅地図に法務局公図を嵌め込む作業を半自動化し、作業効率を高めることができる地図の位置合せ装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本来ならば同一の状態であるべきはずの法務局公図と地番現況図であるが、地番現況図の作成以降に、宅地開発や新たな道路の開通等によって発生した分合筆等の筆形状の経年変化を、法務局と市町村等が、それぞれの地図に加除修正をかけていくため、編集の精度の不統一や、場合によっては修正時の錯誤等により双方の図面に乖離が発生する場合が出てくる。そこで、市町村の課税職員または委託業者等により、定期的に双方の図面の点検を行うが、自治体によっては数万ないしは数十万筆からなる土地の区画を一つ残らず目視で点検することは、相当の手間と技量が必要となっていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、法務局公図と地番現況図のような、本来ならば同一の状態であるべき複数の地図間の乖離状況(相違)を客観的数値で表すことにより、優先的に修正が必要な箇所を容易に抽出できる地図評価装置、地図評価方法及び地図評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の実施形態を含む。
[1]筆形状を表した第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価装置であって、第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する筆指定部と、前記筆指定部が指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する外形座標値抽出部と、前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する突合処理部と、前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する評価データ生成部と、前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する評価部と、
を備えたことを特徴とする地図評価装置。
[2]前記評価部は、前記評価データ生成部が生成した前記頂点の組における頂点間の距離と、前記孤立頂点の有無に基づき前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する、[1]に記載の地図評価装置。
[3]前記評価部は、前記頂点の組における頂点間の距離と、前記孤立頂点の有無との評価の重み付けを変更可能である、[2]に記載の地図評価装置。
[4]前記評価データ生成部は、前記孤立頂点が存在し、当該孤立頂点から前記第一の外形及び第二の外形のうち当該孤立頂点が存在しない方の外形までの最短距離が予め定めた閾値以下で、前記各孤立頂点における内角が予め定めた閾値以上の場合に、前記各孤立頂点を孤立頂点の指定から除外する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の地図評価装置。
[5]前記第一地図と第二地図とで座標系が異なる場合に、前記第一の外形を規定する頂点と前記第二の外形を規定する頂点との距離が最小になるように比較対象となる筆の外形の一方または両方の前記頂点の座標値を変換し、変換前後で座標値が変換された前記第一の外形及び/または第二の外形が相似形を維持するように変換する変換部をさらに備え、前記突合処理部は、前記変換後の座標値に基づき前記頂点の組及び孤立頂点の有無を決定する、[1]に記載の地図評価装置。
[6]筆形状を表した第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価方法であって、第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する工程と、前記指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する工程と、前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する工程と、前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する工程と、前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する工程と、を有することを特徴とする地図評価方法。
[7]コンピュータを、筆形状を表した第一地図と第二地図とにおいて、比較対象となる筆を指定する筆指定部、前記筆指定部が指定した比較対象となる筆の外形として、前記第一地図から第一の外形を、前記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する外形座標値抽出部、前記座標値に基づき、前記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点の有無を決定する突合処理部、前記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する評価データ生成部、前記評価データから前記第一地図と前記第二地図との相違を評価する評価部、として機能させることを特徴とする、第一地図と第二地図との相違を評価する地図評価プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本来ならば同一の状態であるべき複数の地図間の乖離状況(相違)を客観的数値で表すことにより、優先的に修正が必要な箇所を容易に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態にかかる地図評価装置の例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態にかかる変換部及び突合処理部の動作の説明図である。
【
図3】実施形態にかかる評価部が使用する評価点数のテーブルの例を示す図である。
【
図4】実施形態にかかる評価点数のテーブルを使用した評価部による評価の例を示す図である。
【
図5】実施形態にかかる第一の外形及び第二の外形の一部に曲線が含まれる例を示す図である。
【
図6】実施形態にかかる地図評価装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0012】
図1には、実施形態にかかる地図評価装置100の例の機能ブロック図が示される。地図評価装置100は、筆指定部10、外形座標値抽出部12、変換部14、評価データ生成部16、評価部18、突合処理部20、通信部22、表示制御部24、記憶部26、入力部28及びCPU30を含み、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。CPU30はCPU以外にGPU等のアクセラレーターを含んでいてもよい。
【0013】
筆指定部10は、筆形状を表した地図としての、例えば法務局公図等の第一地図と、例えば地番現況図等の第二地図とにおいて、比較対象となる筆を地番、あるいは、双方の地図上の同一の筆に対して共通の番号を付与した整理番号等により指定する。第一地図及び第二地図の情報は、例えば法務局、市町村等に備えられているサーバから通信部22を介して取得し、記憶部26に記憶させておいてもよいし、USBその他の適宜な記憶媒体に予め格納された情報を、通信部22を介して読み出して記憶部26に記憶させておいてもよい。また、筆指定部10が比較対象となる筆を指定する処理は、入力部28から入力された指示情報に含まれる比較対象となる筆の情報(地番、整理番号等)を記憶部26に記憶させることにより実行される。上記指示情報は、使用者が入力部28を介して入力するが、比較対象となる複数の筆を含めることができ、各市町村の全筆を対象としたり、町字や特定の法務局公図の範囲等を指定したり、あるいは、液晶ディスプレイ等に表示された地番現況図の画面上から、単独または複数の筆を指定したりすることもできる。
【0014】
外形座標値抽出部12は、上記筆指定部10が指定した比較対象となる筆の情報を記憶部26から読み出し、当該筆の筆形状を表す外形として、上記第一地図から第一の外形を、上記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する。ここで、第一の外形と第二の外形とは、比較対象となる外形であるので、第一地図及び第二地図上の同じ筆に対する外形である。なお、比較対象となる筆が複数ある場合は、予め定めた規則に基づく順番により、順次各筆に対応する第一の外形、第二の外形を抽出する。上記筆の外形は、土地の区画を表す矩形または多角形等の閉じた領域の境界線であり、上記抽出した各頂点の座標値を起点または終点とする複数の辺により構成されている。外形座標値抽出部12は、記憶部26から読み出された第一地図及び第二地図の情報に含まれる、上記第一の外形及び第二の外形を規定する頂点の座標値を、同じ筆の第一の外形及び第二の外形の組として記憶部26に記憶させる。この場合、外形毎の各頂点に、頂点位置を識別する頂点符号を付与して、その座標値と共に記憶させてもよい。
【0015】
変換部14は、上記第一地図と第二地図とで座標系が異なる場合に、記憶部26から読み出した第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の一方または両方の座標値を変換し、同一の座標系とする。具体的には、任意座標系である第一地図(法務局公図)の筆の外形の各座標値に一定数の加減算、必要に応じて乗除算することで、第二地図(地番現況図)の筆の外形付近の座標値になるようにする。この時点では、概ねの位置が近傍になれば良い。各外形の頂点の座標値が同一の座標系になったら、例えば一方の地図の外形の各座標値を、外形の形状の相似形が維持された状態で、移動、回転、拡大または縮小をすることにより、もう一方の地図の外形の各座標値に最も近接するように変換する。この場合、例えば、第一の外形と第二の外形のそれぞれ対応する頂点の各座標値の誤差の合計が最も小さくなるように移動、回転等の変換処理を行う。ここで、座標値の変換方法としては、例えばアフィン変換、ホモグラフィ変換等を使用することができる。なお、回転角度や移動量、拡大、縮小の倍率は、既に変換処理が終了している同一の第一地図(法務局公図)内に記載されている他の筆の値と同一にしてもよい。変換後の第一の外形及び第二の外形の一方または両方の各頂点の座標値は、記憶部26に記憶させる。変換処理後すなわち第一の外形及び第二の外形の一方または両方の頂点の座標値が変換された第一の外形と第二の外形の情報も、同じ筆毎の組として記憶部26に記憶させる。
【0016】
突合処理部20は、上記組として記憶されている第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の各座標値を記憶部26から読み出し、読み出した各座標値に基づき、上記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定する。その際に、第一の外形と第二の外形とで、図形を構成する頂点数が異なる場合、あるいは、対応すべき順番となる頂点の位置が、大幅に離れている場合等で、対応する頂点が決定できない場合は、それらの頂点を孤立頂点とし、その有無を決定する。なお、変換部14が、第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の一方または両方の座標値を変換している場合には、変換後の座標値を記憶部26から読み出して使用する。突合処理部20が決定した第一の外形及び第二の外形の間で対応する各頂点の座標値の組、及び、対応する頂点が決定できない孤立頂点の座標値を記憶部26に記憶させる。この場合、対応する組となった各頂点の頂点符号の組み合わせの情報と、孤立頂点となった頂点の頂点符号の情報を記録しても良い。突合処理部20の処理の詳細は後述する。
【0017】
評価データ生成部16は、上記対応する各頂点の座標値の組、及び、対応する頂点が決定できない孤立頂点が存在する場合はその座標値を記憶部26から読み出し、頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき、評価データを生成する。ここで、評価データには、上記頂点の組における頂点間の距離、第一の外形と第二の外形で対応する頂点を端点とする辺のなす角度すなわち第一、第二の外形における内角の角度の差分等が挙げられる。また、孤立頂点が存在する場合には、当該孤立頂点の有無自体、あるいは孤立頂点と相手側の辺との距離を評価データとする。なお、相手側の辺の決定処理は後述する。評価データ生成部16が生成した評価データは、記憶部26に記憶させる。
【0018】
評価部18は、評価データ生成部16が生成した評価データを記憶部26から読み出し、当該評価データから第一地図と第二地図とにおける同じ筆同士の外形の相違を評価することによって第一地図と第二地図との相違を評価する。評価部18は、例えば、突合処理部20で組み合わされた第一の外形と第二の外形とを規定する頂点間の距離、孤立頂点が第一地図に有る場合、第二地図に有る場合のそれぞれで、予め評価点数のテーブルを作成しておき、このテーブルに基づいて第一地図と第二地図との相違を点数化することにより評価を行う。評価結果は、筆毎に集計して記憶部26に記憶させる。また、評価部18は、必要に応じて、筆毎の評価点数を街区毎、公図毎、町字毎といった単位で集計した評価結果も併せて記憶部26に記憶させてもよい。また、評価部18は、筆毎の評価点数や集計した評価点数が高い順に筆や集計単位である街区などを順位付けしてもよい。この順位は修正の必要性の大きさを表す。このように評価部18は集計した評価結果や順序づけた評価結果によっても第一地図と第二地図との相違を評価する。記憶部26に記憶された評価結果は、後述する表示制御部24により適宜な表示装置に表示される。
【0019】
通信部22は、適宜なインターフェースにより構成され、外部のサーバ等から第一地図及び第二地図の情報等のデータを取得し、記憶部26に記憶させる等の処理を実行する。
【0020】
表示制御部24は、外形座標値抽出部12、評価部18等からの指示に基づき、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して、第一の外形、第二の外形、評価部18による評価結果等を表示する。特に、表示制御部24は、第一地図または第二地図等の地図表示を制御する機能を有しており、液晶表示装置等に該当する筆の第一の外形および第二の外形を比較して表示させて、その外形の相違を視覚的に確認したり、例えば、第二地図である地番現況図を表示させた上で、問題となる筆を強調表示させることで修正作業の優先箇所を容易に確認したりすることができる。
【0021】
記憶部26は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各データ、およびCPU30を動作させるためのプログラム等の、地図評価装置100が行う各処理に必要な情報を記憶する。なお、記憶部26としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部26には、主としてCPU30の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、およびBIOS等の制御プログラムその他のCPU30が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。なお、記憶部26には外部の記憶装置が含まれてもよい。
【0022】
入力部28は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段により構成され、使用者が指示情報の入力等に使用する。
【0023】
図2(a)、(b)、(c)、(d)には、変換部14及び突合処理部20の動作の説明図が示される。
図2(a)が第一地図から抽出した第一の外形を示し、頂点A、B、C、D、Eで外形が規定されている。また、
図2(b)が第二地図から抽出した第二の外形を示し、頂点A’、B’、C’、D’で外形が規定されている。なお、第一地図と第二地図は、同じ筆を含む地図(例えば、法務局公図と地番現況図)であり、第一の外形及び第二の外形は、比較対象となる同じ筆の外形である。
【0024】
図2(a)、(b)においては、第一地図と第二地図とで座標系が異なっている。これは、第一地図が、例えば図面内の任意座標で作成され、第二地図が例えば公共座標系で作成されている場合等があげられる。変換部14は、第一の外形及び第二の外形の一方または両方(例えば、任意座標で作成された第一の外形)について、各座標に一定の値の加減算や、必要に応じて乗除算をすることで、双方を同一の座標系に統一させる。この時点での詳細な位置合わせは不要である。さらに、同一の座標系に揃えられたら同様に、第一の外形及び第二の外形の一方または両方(例えば、任意座標で作成されていた第一の外形)について、移動、拡大、縮小、回転等の処理を行い、上述した第一の外形を規定する各頂点(A、B、C、D、E)と第二の外形を規定する各頂点(A’、B’、C’、D’)との間隔が最小になるように調整する。変換部14による変換処理後、第一の外形及び第二の外形を重ね合わせた状態(各頂点間の距離が最小となった状態)が
図2(c)に示される。
図2(c)の例では、第一の外形が実線で、第二の外形が破線で示されている。
【0025】
なお、第一地図と第二地図とで座標系が、例えば公共座標系等で統一されている場合には、変換部14により変換しなくても第一の外形と第二の外形は
図2(c)に示された状態となり、突合処理部20での頂点の組の決定や、評価データ生成部16での評価データの生成を直接行うことができる。
【0026】
突合処理部20は、第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の座標値に基づき、上記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定する。具体的には、以下の2段階の判定を行って頂点の組を決定する。
段階(I):第一の外形を規定する頂点(A、B、C、D、E)及び第二の外形を規定する頂点(A’、B’、C’、D’)の座標値から、A、B、C、D、E各頂点とA’、B’、C’、D’ 各頂点とのそれぞれの距離を求め、各頂点間の距離が予め定めた第一の閾値以下か否かを判定する。相互の距離が第一の閾値以下となっている2点を一対の頂点として抽出する。
段階(II):段階(I)において第一の閾値以下の距離となっている一対の頂点を抽出し、当該一対の頂点のそれぞれの頂点における第一の外形及び第二の外形の内角の差が予め定めた第二の閾値以下か否かを判定する。
【0027】
以上のようにして、段階(I)において相互の距離が第一の閾値以下である一対の頂点が抽出され、段階(II)において一対の頂点における上記各内角の差が第二の閾値以下であるときに、突合処理部20が当該一対の頂点を第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組とし、対応する頂点の組が構成できなかった頂点は、それぞれ孤立頂点として決定する。
【0028】
例えば、
図2(c)の場合、第一の外形を規定する頂点Aと第二の外形を規定する頂点A’との距離が、他の頂点との距離に比して最も小さく、かつ、第一の閾値以下である場合、頂点Aと頂点A’とが段階(I)により抽出された一対の頂点の組となる。次に、第一の外形を規定する頂点Aに隣接する頂点Bと、第二の外形を規定する頂点A’に第一の外形と同一の方向に隣接する頂点B’について、頂点間の距離が第一の閾値以下である場合は、両者を一対の頂点の組とする。頂点間の距離が第一の閾値を超えた場合は、第一の外形を規定する頂点Bを固定した状態で、第二の外形を規定する頂点B’にさらに隣接する頂点C’とで、あるいは、第二の外形を規定する頂点B’を固定した状態で、第一の外形を規定する頂点Bにさらに隣接する頂点Cとで頂点間の距離の検証を順番に行い、頂点間の距離が第一の閾値以下になる組を検索する。該当する頂点の組が構成されない頂点を孤立頂点として決定し、全ての頂点に対して、頂点の組を構成するか、孤立頂点とするかの判定を行う。
図2(c)の例では、頂点Cと頂点C’、頂点Dと頂点D’についても、その距離が第一の閾値以下であり、それぞれが段階(I)により抽出された一対の頂点の組となっている。次に、これらの一対の頂点の内、例えば頂点Aと頂点A’とについて、第一の外形の頂点Aにおける内角(角DAB)と第二の外形の頂点A’における内角(角D’A’B’)との差が第二の閾値以下か否かを段階(II)として判定する。同様に、一対の頂点の組として構成された頂点Bと頂点B’、頂点Cと頂点C’、頂点Dと頂点D’についても内角の角度の差を判定する。内角の角度の差が第二の閾値を超えた場合は、一対の頂点の組を解消し、それぞれを孤立頂点として決定する。
【0029】
また、
図2(a)、(c)に示された頂点Eは、段階(I)、段階(II)のいずれかの判定において、第一の閾値または第二の閾値の少なくとも一方を超えており、突合処理部20が対応する頂点が決定できない孤立頂点と決定した頂点の例である。
【0030】
図2(d)には、実線で示された第一の外形を規定する頂点Fと、破線で示された第二の外形を規定する頂点F’との座標値が一致し、頂点Fと頂点F’との距離が第一の閾値以下であるが、それぞれの頂点における上記内角の差が第二の閾値を超えている例が示されている。
図2(d)の例では、頂点Fにおける内角がθで示され、頂点F’における内角がθ’で示されており、θとθ’との差(θ-θ’)が第二の閾値を超えている。このような場合にも、突合処理部20は、頂点Fと頂点F’とを対応する頂点が決定できない孤立頂点と決定する。
【0031】
評価データ生成部16は、
図2(c)に示された、第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組(AとA’、BとB’、CとC’、DとD’の各頂点の組)における第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の座標値から頂点間の距離を算出し、各点の評価データとする。また、評価データ生成部16は、突合処理部20が頂点Eのような孤立頂点の決定処理を実行している場合には、孤立頂点の有無から評価データを生成する。具体的には、孤立頂点の有無自体、あるいは孤立頂点が存在する場合に、各孤立頂点を評価データの生成対象とし、当該各孤立頂点と相手側の辺との最短距離を評価データとするのが好適である。相手側の辺とは、評価データの生成対象である各々の孤立頂点が存在する方の外形(第一の外形または第二の外形)において、孤立頂点(
図2(c)の頂点E)の両隣の頂点(
図2(c)の頂点Cと頂点D)と対応する頂点の組を構成する他方側の外形(第二の外形または第一の外形)の頂点(
図2(c)の頂点C’と頂点D’)を両端点とする辺C’D’をいう。なお、頂点Cと頂点Dの間に2個以上の孤立頂点が存在する場合にも、辺C’D’が相手側の辺となる。
【0032】
図3には、評価部18が使用する評価点数のテーブルの例が示される。
図3の例では、評価項目として対応する頂点間の距離g、第一地図における孤立頂点の有無、第二地図における孤立頂点の有無について評価点数が設定されている。対応する頂点間の距離gについては、0<g≦1mの場合に0.05、1<g≦2.5mである場合に0.25の点数が設定され、第一地図及び第二地図において孤立頂点が有る場合に0.25の点数が設定されている。なお、対応する頂点間の距離gが2.5mを超える場合には、上記段階Iにおいて第一の閾値(2.5m)を超えるとして一対の頂点として抽出されない(孤立頂点とされる)。
【0033】
評価部18は、
図3のテーブルを使用し、対応する頂点間の距離及びその数毎に点数を算出し、孤立頂点が有る場合にはその数に応じて点数を算出し、合計点数を求めて第一地図と第二地図との相違を評価する。すなわち、上記合計点数が多いほど第一地図と第二地図との相違が大きいことを意味するので、優先的に修正が必要な箇所を上記合計点数から容易に抽出できる。
【0034】
ここで、孤立頂点について評価する意義としては、以下のように考えられる。
(1)土地の境界は、現地において、その境界の場所に杭を打って決められているケースがほとんどである。その杭と杭とをつなぐ直線が土地の境界を定めている。ここで杭とは、法務局公図、あるいは、地番現況図上における外形の頂点のことである。土地の形状の整合性を検証するのであれば、杭=頂点と考えて、地図上の外形の頂点位置の検証が重要となる。
(2)一方、2種類の図形の形状を精査する方法として、重複しているエリアの面積の占める割合により形状の整合性を求めるケースがある。しかし、土地の境界は基本的に杭により定められるため、いくら面積的に整合性がとれても、実際の杭の位置に誤差がある場合は、その整合性の判断として説得力に欠ける。
(3)さらに、頂点が不足している場合は、形状が正しく表現できていないということなので、孤立頂点がさらに問題となり、杭の位置すなわち頂点の位置が不足している図形は、地図としての信憑性が著しく低下することになる。
(4)以上より、孤立頂点をさらに評価項目として重視するものである。
【0035】
図4(a)、(b)、(c)には、
図3に示された評価点数のテーブルを使用した評価部18による評価の例が示される。
図4(a)において、第一地図に含まれるひとつの筆の第一の外形が頂点A、B、C、D、E、F及びこれを結ぶ実線で示されている。また、第二地図に含まれるひとつの筆の第二の外形が頂点A’、B’、C’、E’、F’及びこれを結ぶ破線で示されている。ここで、上記第一の外形と第二の外形が、第一地図と第二地図との間において比較対象となる同じ筆の外形である。また、第一の外形と第二の外形とは、上記変換部14による変換後の外形であり、上記各頂点間の距離が最小になるように重ね合わされている。
【0036】
図4(a)の例では、頂点AとA’、頂点BとB’、頂点CとC’、頂点FとF’の各座標値が一致しており、頂点AとA’、頂点BとB’、頂点CとC’、頂点FとF’とが、突合処理部20により対応する頂点の組と決定されている。また、辺ABと辺A’B’、辺BCと辺B’C’、辺AFと辺A’F’とが重なっている。また、頂点Eと頂点E’も、相互の距離が上記第一の閾値以下であるので突合処理部20により対応する頂点の組と決定されており、頂点Eと頂点E’との頂点間の距離が評価データ生成部16により1.5mと算出されているものとする。さらに、第一の外形の頂点Dは、第二の外形の辺C’E’上にあるが、相互の距離が上記第一の閾値以内となる第二の外形中の頂点が存在せず、突合処理部20により孤立頂点と決定されているものとする。なお、辺CDが辺C’E’の一部に重なり、辺E’F’が辺EFの一部に重なっている。従って、第二の外形の内、破線で示される部分は、頂点Dと頂点E’を結ぶ線分のみとなっている。
【0037】
評価部18が
図3に示された評価点数のテーブルを使用して
図4(a)における第一の外形と第二の外形の相違を評価すると、頂点Eと頂点E’とが対応する頂点の組であり、その頂点間の距離(1.5m)から点数として0.25を選択し、頂点Dが孤立頂点であるので、点数として0.25を選択する。この結果、
図4(a)の例では、第一の外形と第二の外形の相違を評価した点数が0.25+0.25=0.5となる。
【0038】
図4(b)において、第一地図に含まれるひとつの筆の第一の外形が頂点A、B、Cおよびこれを結ぶ実線で示されている。また、第二地図に含まれるひとつの筆の第二の外形が頂点A’、B’、C’、D’およびこれを結ぶ破線で示されている。ここで、上記第一の外形と第二の外形が、第一地図と第二地図との間において比較対象となる同じ筆の外形である。また、第一の外形と第二の外形とは、上記変換部14による変換後の外形であり、上記各頂点間の距離が最小になるように重ね合わされている。
【0039】
図4(b)の例では、頂点AとA’、頂点BとB’、頂点CとC’の各座標値が一致しており、頂点AとA’、頂点BとB’が、突合処理部20により対応する頂点の組と決定されている。また、頂点CとC’は、座標値が一致しているが、頂点Cにおける第一の外形の内角と頂点C’における第二の外形の内角との角度の差が上記第二の閾値を超えており、突合処理部20により孤立頂点と決定されているものとする。なお、頂点AとA’については、第一の外形と第二の外形とにおける内角の角度の差が上記第二の閾値以下であるものとする。また、辺ABと辺A’B’、辺BCと辺B’C’とが重なっている。また、頂点D’は、対応する頂点が決定できない孤立頂点と決定されているものとする。
【0040】
評価部18が
図3に示された評価点数のテーブルを使用して
図4(b)における第一の外形と第二の外形の相違を評価すると、頂点C、頂点C’及び頂点D’が孤立頂点であるので、各点について点数として0.25を選択する。この結果、
図4(b)の例では、第一の外形と第二の外形の相違を評価した点数が0.25×3=0.75となる。
【0041】
図4(c)において、第一地図に含まれるひとつの筆の第一の外形が頂点A、B、C、Dおよびこれを結ぶ実線で示されている。また、第二地図に含まれるひとつの筆の第二の外形が頂点A’、B’、C’、D’およびこれを結ぶ破線で示されている。ここで、上記第一の外形と第二の外形が、第一地図と第二地図との間において比較対象となる同じ筆の外形である。また、第一の外形と第二の外形とは、上記変換部14による変換後の外形であり、上記各頂点間の距離が最小になるように重ね合わされている。
【0042】
図4(c)の例では、頂点AとA’、頂点BとB’、頂点CとC’、頂点DとD’の各座標値が一致していないが、突合処理部20により対応する座標値の組と決定されている。ここで、頂点Aと頂点A’との頂点間の距離が評価データ生成部16により1.5mと算出され、頂点Bと頂点B’との頂点間の距離及び頂点Cと頂点C’との頂点間の距離が、評価データ生成部16によりそれぞれ2.0mと算出され、頂点Dと頂点D’との頂点間の距離が、評価データ生成部16により0.5mと算出されているものとする。
【0043】
評価部18が
図3に示された評価点数のテーブルを使用して
図4(c)における第一の外形と第二の外形の相違を評価すると、頂点Aと頂点A’、頂点Bと頂点B’、頂点Cと頂点C’のそれぞれの頂点間の距離(1.5m及び2.0m)から点数としてそれぞれ0.25を選択し、頂点Dと頂点D’の頂点間の距離(0.5m)から点数として0.05を選択する。この結果、
図4(c)の例では、第一の外形と第二の外形の相違を評価した点数が0.25×3+0.05=0.8となる。
【0044】
以上の結果から、
図4(c)の例>
図4(b)>
図4(a)の順序で第一地図と第二地図(第一の外形と第二の外形)との相違が大きいことがわかるので、上記順序で修正の必要性が大きいことがわかる。
【0045】
なお、評価部18が使用する評価点数のテーブルは、
図3の例に限定されるものではなく、評価項目の種類及びそれぞれの点数(重み付け)について、評価対象となる第一地図及び第二地図の状況、評価目的等に応じて適宜変更することができる。また、孤立頂点については、その有無ではなく、孤立頂点と相手側の辺との最短距離に応じて点数を設定してもよい。これにより、評価対象となる第一地図及び第二地図の状況や評価目的等に応じて、評価対象の地図の適切な評価が可能となる。なお、孤立頂点と相手側の辺との最短距離が予め定めた第三の閾値(例えば、2.5m)以下である場合に、孤立頂点であるとの決定を取り消し、第一の外形と第二の外形との相違の評価対象から除外するようにしてもよい。この場合、頂点の内角が予め定めた閾値以上(例えば、極めて180度に近い)の場合を評価対象から除外する条件に加えてもよい。これにより、特に第一の外形及び第二の外形に曲線が含まれている場合の評価を容易にできる。
【0046】
図5(a)、(b)、(c)には、第一の外形及び第二の外形の一部に曲線が含まれる例が示される。なお、この場合の曲線は、実際には、多数の頂点と、それらを比較的短い直線の辺で結んだ形状となっており、各頂点とも内角が大きい値をとることで、外形の曲線を表現している。
図5(a)が、第一地図に含まれるひとつの筆の第一の外形の例であり、当該第一の外形が頂点A、B、C及びこれを結ぶ実線で示されている。また、
図5(b)が、第二地図に含まれるひとつの筆の第二の外形の例であり、当該第二の外形が頂点A’、B’、C’及びこれを結ぶ破線で示されている。なお、
図5(a)、(b)の例には、比較対象となる同じ筆の第一の外形及び第二の外形がそれぞれ示されており、上記変換部14による変換後の外形であるが、重ね合わされてはいない。
図5(c)は、
図5(a)、(b)に示された第一の外形及び第二の外形を、各頂点間の距離が最小になるように重ね合わせた図である。
図5(c)に示されるように、頂点AとA’、頂点BとB’、頂点CとC’の各座標値が一致している。
【0047】
図5(a)、(b)、(c)の例では、筆の境界BCとB’C’が対応する曲線の辺となっており、
図5(c)の例では、この曲線BCの形状を規定する頂点がf1、f2、f3で示され、曲線B’C’の形状を規定する頂点がs1、s2、s3で示されている。なお、
図5(c)の例では、曲線の形状を規定する頂点が各3個ずつとなっているが、頂点の数はこれに限定されない。頂点の数が多い方が、曲線の精度を高く維持できる。ここで、曲線の形状を規定する頂点とは、曲線上に複数設定され、当該頂点を結ぶ比較的短い複数の直線により曲線の形状、曲率を擬似的に表現している。しかしながら、上記のように曲線を表現する場合、データの作成時点が異なれば、同じ曲線であっても経由する頂点の位置を同一地点に揃えることは困難である。そのため、曲線を表現した頂点同士を対応させることは困難で、各頂点とも孤立頂点となり、そのまま評価すると、外形はほぼ一致しているにも拘わらず、必要以上に評価点が大きくなってしまう。この場合、これらの頂点f1、f2、f3及び頂点s1、s2、s3は、相互の距離が第一の閾値を超えており、突合処理部20により孤立頂点と決定されていても、孤立頂点としての評価点を加算させず、対応する最寄りの辺上に、それぞれの仮想の対応する頂点が存在する形で評価するような処理が必要となる。
【0048】
評価データ生成部16は、孤立頂点である頂点f1、f2、f3と相手側の辺すなわち第二の外形の曲線となっている境界B’C’との第一の距離を評価データとして算出する。
図5(c)の例では、第一の距離が3個算出される。同様にして、評価データ生成部16は、孤立頂点である頂点s1、s2、s3と相手側の辺すなわち第一の外形の曲線となっている境界BCとの第二の距離を評価データとして算出する。
図5(c)の例では、第二の距離が3個算出される。評価部18は、上記第一の距離及び第二の距離がいずれも予め定めた上記第三の閾値以下であるときに、頂点f1、f2、f3及び頂点s1、s2、s3についての孤立頂点との決定を取り消し、第一の外形と第二の外形の相違の評価対象から除外する。この結果、上記第一の外形及び第二の外形の曲線部分である境界BC及びB’C’に相違がないと評価したことになる。なお、
図5(c)における曲線BC、曲線B’C’を曲線として評価データを算出する際は、あらかじめ作業者が、入力部28を通じて曲線BC、曲線B’C’が曲線であることを指定することで、曲線であることの処理を行うことができる。あるいは、当初から、例えば、上記例示した曲線上の頂点を結ぶ直線がなす角すなわち頂点の内角が所定の閾値(例えば、160度)より大きく、対応する相手側の辺までの距離が閾値(例えば、2.5m(上記第三の閾値))以下の場合は、自動的に当該区間は曲線であると判定し、当該曲線上の孤立頂点については孤立頂点の指定から除外する処理をしてもよい。またその際に、孤立頂点の指定から除外する条件に孤立頂点の前後の辺の長さが所定の閾値(例えば、2m)より短い場合を加えて条件をさらに限定してもよく、その結果、さらに精度良く曲線上の孤立頂点を判定できるようになる。特に曲線上の頂点数が多い場合に、孤立頂点を精度良く除外することができる。
【0049】
図6には、実施形態にかかる地図評価装置100の動作例のフロー図が示される。
図6において、法務局、市町村等に備えられているサーバ等、あるいはUSBその他の適宜な記憶媒体に予め格納された地図情報を通信部22を介して取得し、記憶部26に記憶させる(S1)。
【0050】
筆指定部10は、上記地図情報に含まれる、例えば法務局公図等の第一地図と、例えば地番現況図等の第二地図とにおいて、使用者が入力部28を介して入力した指示情報に基づいて比較対象となる筆を指定し、記憶部26に記憶させる(S2)。
【0051】
外形座標値抽出部12は、記憶部26に記憶された地図情報と比較対象となる筆の情報とを読み出し、当該筆の外形として、上記第一地図から第一の外形を、上記第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出する。抽出した第一の外形及び第二の外形を規定する頂点の座標値は、比較対象となる筆毎に、同じ筆の第一の外形及び第二の外形の組として記憶部26に記憶させる(S3)。
【0052】
変換部14は、第一地図と第二地図の情報を記憶部26から読み出し、第一地図と第二地図とで座標系が異なるか否かを判定する(S4)。S4において座標系が異なると判定した場合(N)には、以下の座標値の変換処理を実行する。この変換処理は、まず、第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点とを、いずれかの座標系あるいは別の座標系に統一させる。次に、第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点との距離が最小になるように比較対象となる筆の第一の外形と第二の外形の一方または両方の上記点の座標値を移動、回転、拡大または縮小することで変換し、変換前後で座標値が変換された第一の外形及び第二の外形の一方または両方が相似形を維持するように変換する処理である。変換処理後の座標値は、記憶部26に記憶させる(S5)。
【0053】
突合処理部20は、第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の各座標値を記憶部26から読み出し、読み出した各座標値に基づき、上記第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、第一の外形と第二の外形とで、対応する頂点が決定できない場合は、それらの頂点を孤立頂点として決定する。決定した頂点の組の情報は、各外形の頂点毎に、対応する一方の外形の頂点を特定する情報、あるいは、孤立頂点の有無の情報として、各頂点の座標値とともに記憶部26に記憶させる(S6)。ここで、S6で使用する第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の座標値は、S4において座標系が異なると判定した場合(N)には、S5で変換処理後の座標値であり、S4において座標系が異ならないと判定した場合(Y)には、変換部14による変換処理を行わない座標値である。
【0054】
評価データ生成部16は、組として記憶されている第一の外形を規定する頂点と第二の外形を規定する頂点の座標値と、孤立頂点と決定された頂点の座標値とを記憶部26から読み出し、読み出した座標値に基づき、評価データを生成し、記憶部26に記憶させる(S7)。
【0055】
評価部18は、S7において評価データ生成部16が生成した評価データを記憶部26から読み出し、当該評価データから第一地図と第二地図とにおける同じ筆同士の第一の外形と第二の外形の相違を評価し、記憶部26に記憶させる(S8)。
【0056】
対象となる全ての筆の評価が終了後、表示制御部24は、S8において評価された各筆の評価結果を記憶部26から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して評価結果を表示する(S9)。例えば、第一地図と第二地図とで形状に相違が大きい場合に、地番現況図上の各筆の外形内を、評価結果に応じた色分け表示をする。問題箇所が着色表示されることで、作業者は視覚的に地番現況図の問題箇所の確認ができるようになり、地番現況図の修正作業を効率的に行えるようになる。さらに、街区毎、公図毎、町字毎等で集計された評価結果を、それぞれの集計単位毎に地図上の該当する範囲を着色表示してもよい。その結果、地域的な問題箇所の把握が可能となり、修正作業の優先度を決定する指標にできる。
【0057】
上述した、
図6の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供してもよい。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えてもよい。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、客観的指標に基づいて、法務局公図と地番現況図との整合性を検証することが可能となった。上記整合性を視覚的に確認することも可能である。
【0059】
また、土地の境界を確認する場合に、土地の境界を示す杭が外形の頂点という観点から土地(筆)の形状の整合性を評価しており、特に杭の過不足(孤立頂点の有無)を重点的に評価することで、検証結果の信憑性向上に貢献できている。
【0060】
また、逆に、特に筆の境界が曲線状になっている箇所について、当該曲線の形状を規定する頂点を孤立頂点と認識させないことにより、法務局公図と地番現況図の相違の適切な評価が実施できる。
【0061】
このように、本発明による評価結果を参考に、効率よく、地番現況図の検証および修正作業を行うことが可能となり、適切な固定資産税の課税が実現できる。
【符号の説明】
【0062】
10 筆指定部、12 外形座標値抽出部、14 変換部、16 評価データ生成部、18 評価部、20 突合処理部、22 通信部、24 表示制御部、26 記憶部、28 入力部、30 CPU、地図評価装置100。
【要約】
【課題】同一の状態であるべき複数の地図間の相違を客観的数値で表し、優先的に修正が必要な箇所を容易に抽出できる地図評価装置、地図評価方法及び地図評価プログラムを提供する。
【解決手段】筆指定部10が、第一地図と第二地図とにおいて比較対象となる筆を指定すると、外形座標値抽出部12が、上記筆の外形として第一地図から第一の外形を、第二地図から第二の外形を、それぞれの外形を規定する頂点の座標値として抽出し、突合処理部20は、それぞれの外形を規定する頂点の座標値に基づき、第一の外形及び第二の外形の間で対応する頂点の組を決定するとともに、対応する頂点が決定できない孤立頂点を決定し、評価データ生成部16は、上記頂点の組及び孤立頂点の有無に基づき評価データを生成し、評価部18は、上記評価データから第一地図と第二地図との外形の相違を評価する。
【選択図】
図1