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特許7618103破砕不適物除去システムおよび破砕不適物の分別方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】破砕不適物除去システムおよび破砕不適物の分別方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/08 20060101AFI20250110BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20250110BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20250110BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20250110BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20250110BHJP
   B03C 1/14 20060101ALI20250110BHJP
   B03C 1/22 20060101ALI20250110BHJP
   B07C 5/344 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B02C23/08 A
B09B3/35 ZAB
B09B5/00 C
B03C1/00 B
B03C1/02 A
B03C1/14
B03C1/22
B07C5/344
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024516395
(86)(22)【出願日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2023042011
(87)【国際公開番号】W WO2024111629
(87)【国際公開日】2024-05-30
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022186360
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591063202
【氏名又は名称】産業振興株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭造
(72)【発明者】
【氏名】池田 健児
(72)【発明者】
【氏名】平野 弘二
(72)【発明者】
【氏名】立溝 信之
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-075793(JP,A)
【文献】特開2020-176909(JP,A)
【文献】特開2020-062633(JP,A)
【文献】特開2021-087935(JP,A)
【文献】特開平07-299381(JP,A)
【文献】特開2002-220612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/00 - 5/38
B09B 1/00 - 5/00
B02C 23/00 - 23/40
B03C 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラップを破砕するシュレッダー設備へ前記スクラップを投入する前段階で、前記シュレッダー設備に対して損害を与える可能性のある破砕不適物を除去する破砕不適物除去システムであって、
前記スクラップのうち、所定の重量未満の磁性物を吸着するように磁力が設定されたドラム型磁選機と、
前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物に対する撮影画像および三次元形状の測定結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記破砕不適物となる磁性物を特定する特定手段と、前記特定手段によって破砕不適物が特定された場合には、前記破砕不適物を含む旨を出力する出力手段とを備える情報処理装置と、
を備えることを特徴とする破砕不適物除去システム。
【請求項2】
前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物を撮影する撮像装置をさらに備え、
前記情報処理装置は、
前記撮像装置から前記撮影画像を取得する取得手段とをさらに備え、
前記特定手段は、前記破砕不適物を特定する学習モデルを用いて、前記取得手段によって取得された撮像画像から破砕不適物を特定することを特徴とする請求項1に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項3】
前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物の三次元形状を測定する三次元形状測定装置をさらに備え、
前記情報処理装置は、
前記磁性物の三次元形状の測定結果として前記磁性物の体積、高さおよび厚みのうちの少なくとも一つの情報を取得する測定結果取得手段をさらに備え、
前記特定手段は、前記測定結果取得手段によって取得された情報に基づいて、前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物の中から破砕不適物を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項4】
スクラップを搬送する第1の振動フィーダーをさらに備え、
前記ドラム型磁選機は、前記第1の振動フィーダーで搬送されたスクラップの中から、所定の重量未満の磁性物を吸着することを特徴とする請求項1に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項5】
前記ドラム型磁選機は、前記第1の振動フィーダーとの距離、ドラムの電磁石の磁力、および前記ドラムの回転速度のうち少なくとも1つが調整可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項6】
前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物を搬送する第2の振動フィーダーをさらに有し、
前記撮像装置は、前記第2の振動フィーダー上または第2の振動フィーダーの下流側のコンベア上の磁性物を撮影することを特徴とする請求項2に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項7】
前記出力手段によって前記破砕不適物を含む旨が出力された場合に、破砕不適物を除去する除去装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項8】
前記測定結果取得手段は、前記磁性物の三次元形状の測定結果として、少なくとも前記磁性物の厚みの情報を取得することを特徴とする請求項3に記載の破砕不適物除去システム。
【請求項9】
スクラップを破砕するシュレッダー設備へ前記スクラップを投入する前段階で、前記シュレッダー設備に対して損害を与える可能性のある破砕不適物を除去する破砕不適物除去システムでの破砕不適物の分別方法であって、
ドラム型磁選機において、前記スクラップのうち、所定の重量未満の磁性物を吸着して分離する第1の工程と、
前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物に対する撮影画像および三次元形状の測定結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記破砕不適物となる磁性物を特定することにより、前記破砕不適物を除去する第2の工程と、
を備えることを特徴とする破砕不適物の分別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュレッダー設備を壊してしまう可能性があるスクラップを予め除去するために用いて好適な技術に関する。本願は、2022年11月22日に日本に出願された特願2022-186360号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を抑制するためにCO排出量を削減するニーズが高まっており、鉄鋼業においてはCOガスを排出する高炉法に代わり、電炉法が注目されている。電炉法では、主に廃車や、廃家電、建物、その他使用済み鉄製品である鉄スクラップが主原料として用いられている。一方で、廃車や、廃家電、建物、その他使用済み鉄製品には鉄以外に様々な金属および非金属が使用されており、シュレッダー設備で使用済み鉄製品等の老廃物から生成されたスクラップ(以下、老廃スクラップ)を破砕処理する際に、鉄とその他の金属および非金属とに選別することが一般的に行われている。
【0003】
ここで、老廃スクラップをシュレッダー設備に投入する際に、特に爆発等の危険のあるガスボンベなどの圧力容器やモータや形鋼などの大きな鉄塊といった破砕不適物が投入されると、シュレッダー設備を壊してしまう可能性があるので、シュレッダー設備へ投入する前に予めこれらを除去する必要がある。
【0004】
従来、シュレッダー設備へ投入する前段階で上記のような破砕不適物を除去する場合、作業員が重機を操作し、目視により選別除去が行われていた。しかしながら、作業員による除去作業では、膨大な量の老廃スクラップから選別処理しなければならないため、見逃しや誤選別等、除去効率が低く、シュレッダー設備内部で爆発やトラブルが多発していた。そこで、破砕不適物を除去するために様々な技術が提案されている。
【0005】
特許文献1には、破砕処理に適さない不適物を監視カメラで検知した上で落下させ、破砕システム外に排出するための排出部を破砕機の入側に設ける方法が開示されている。また、特許文献2には、X線透視画像により破砕不適物を自動的に検知し、自動的にごみ投入装置を停止して不適物除去装置により取り除く方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、監視カメラの映像を監視者が目視し、破砕不適物が映像に含まれていた場合に、破砕不適物を破砕システムの外部に排除する技術であるため、依然として見逃しや誤選別等が起こる可能性がある。また、特許文献2に記載の方法は、X線透視画像で単純に所定以上の濃度の画素が連続して所定の面積以上を占める場合に破砕不適物と判定するシステムであるため、検知の精度が不十分であり、依然として見逃しや誤選別等が起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2011-92902号公報
【文献】日本国特開平8-309227号公報
【文献】日本国特開2005-144390号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Joseph Redmon、他3名、“You Only Look Once: Unified, Real-Time Object Detection”[令和3年5月18日検索]、インターネット〈https://arxiv.org/abs/1506.02640〉
【文献】Olaf Ronneberger、他2名、“U-Net:Convolutional Networks for Biomedical Image Segmentation”[令和3年5月18日検索]、インターネット〈URL:https://arxiv.org/abs/1505.04597〉
【文献】Samet Akcay、他2名、“GANomaly:Semi-Supervised Anomaly Detection via Adversarial Training”[令和3年5月18日検索]、インターネット〈https://arxiv.org/abs/1805.06725〉
【文献】Paul Bergmann、他3名、“Improving Unsupervised Defect Segmentation by Applying Structural Similarity to Autoencoders”、[令和3年5月18日検索]、インターネット〈https://arxiv.org/abs/1807.02011〉
【文献】Paolo Napoletano、他2名、“Anomaly Detection in Nanofibrous Materials by CNN-Based Self-Similarity”、[令和3年5月18日検索]、インターネット〈https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5795842/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述の問題点を鑑み、シュレッダー設備に老廃スクラップを投入する前段階において、個々の老廃スクラップの中からシュレッダー設備を壊す可能性のある破砕不適物を精度良く除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る破砕不適物除去システムは、スクラップを破砕するシュレッダー設備へ前記スクラップを投入する前段階で、前記シュレッダー設備に対して損害を与える可能性のある破砕不適物を除去する破砕不適物除去システムであって、前記スクラップのうち、所定の重量未満の磁性物を吸着するように磁力が設定されたドラム型磁選機と、前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物に対する撮影画像および三次元形状の測定結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記破砕不適物となる磁性物を特定する特定手段と、前記特定手段によって破砕不適物が特定された場合には、前記破砕不適物を含む旨を出力する出力手段とを備える情報処理装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る破砕不適物の分別方法は、スクラップを破砕するシュレッダー設備へ前記スクラップを投入する前段階で、前記シュレッダー設備に対して損害を与える可能性のある破砕不適物を除去する破砕不適物除去システムでの破砕不適物の分別方法であって、ドラム型磁選機において、前記スクラップのうち、所定の重量未満の磁性物を吸着して分離する第1の工程と、前記ドラム型磁選機に吸着されて分離された磁性物に対する撮影画像および三次元形状の測定結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記破砕不適物となる磁性物を特定することにより、前記破砕不適物を除去する第2の工程と、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シュレッダー設備に老廃スクラップを投入する前段階において、個々の老廃スクラップの中からシュレッダー設備を壊す可能性のある破砕不適物を精度良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態において、破砕不適物を除去するための破砕不適物除去システムの概要を説明するための図である。
図2図2は、本発明の実施形態において、破砕不適物を検出する情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態において、破砕不適物を検出する情報処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態において、情報処理装置により学習モデルを用いて破砕不適物を検出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の第1の実施形態において、破砕不適物を系外へ排出するドラム型磁選機の概要を説明するための図である。
図6A図6Aは、監視カメラで撮影される画像および破砕不適物を明示した学習用画像の例を示す図である。
図6B図6Bは、監視カメラで撮影される画像および破砕不適物を明示した学習用画像の他の例を示す図である。
図6C図6Cは、監視カメラで撮影される画像および破砕不適物を明示した学習用画像のその他の例を示す図である。
図7A図7Aは、破砕不適物を検出した場合の表示画面の例を示す図である。
図7B図7Bは、破砕不適物を検出した場合の表示画面の他の例を示す図である。
図8図8は、本発明の第2の実施形態において、破砕不適物を系外へ排出するオーバーフィード方式のドラム型磁選機の概要を説明するための図である。
図9図9は、本発明の第3の実施形態において、第2の振動フィーダー上に搬送された破砕不適物を除去する概要を説明するための図である。
図10A図10Aは、形状基礎情報の具体例を示す図である。
図10B図10Bは、二次元画像から抽出されたエッジが示される画像の具体例を示す図である。
図10C図10Cは、二次元画像から抽出された面が示される画像の具体例を示す図である。
図11A図11Aは、点群データの具体例を示す図である。
図11B図11Bは、点群データから抽出されたエッジの具体例を示す図である。
図11C図11Cは、点群データから抽出された面の具体例を示す図である。
図12A図12Aは、鋼管の半割れ個体のような形状において、注目すべき面を特定する方法を説明するための図である。
図12B図12Bは、鋼管の半割れ個体のような形状において、注目すべき面を特定する他の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、破砕不適物とはシュレッダー設備を壊してしまう可能性があるものであり、例えば爆発等の危険のあるガスボンベなどの圧力容器、モータや形鋼などの大きな鉄塊といったものを指す。
【0019】
(第1の実施形態)
[システム構成]
図1は、本実施形態において、破砕不適物を除去するための破砕不適物除去システム100の概要を説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態に係る破砕不適物除去システム100では、まず、作業者が重機を用いて老廃スクラップをプレシュレッダー1に投入し、粗破砕を行う。そして、粗破砕された老廃スクラップが第1の振動フィーダー2上に搬送される。粗破砕された老廃スクラップには破砕不適物が含まれていることがあるが、ドラム型磁選機3にて破砕不適物の少なくとも一部が系外へ排出される。一方、ドラム型磁選機3にて回収された老廃スクラップは第2の振動フィーダー4上に搬送され、第2の振動フィーダー4の途中にある監視カメラ5によって撮影される。監視カメラ5の画像から、ドラム型磁選機3で排出されなかった破砕不適物が検出されると、ロボットアーム(不図示)などを用いて破砕不適物が除去される。以下、各設備について詳細に説明する。
【0020】
プレシュレッダー1は、2軸又は3軸のローターを有し、刃付のローターが低速回転することで、プレス状に圧縮された状態などで投入された老廃スクラップを粗破砕する。プレシュレッダー1は、老廃スクラップがプレシュレッダー1に投入されると、老廃スクラップを破砕可能な形状に加工することができる。なお、プレシュレッダー1は、粗破砕設備のため通常のシュレッダーに比べてローター間の隙間が大きく、破砕不適物がすり抜けやすい構造となっている。また、ローター間の隙間よりも大きいものは粗破砕できず過負荷トリップによりローターが停止する。粗破砕された老廃スクラップは、第1の振動フィーダー2上に投下される。
【0021】
第1の振動フィーダー2は、ドラム型磁選機3へ老廃スクラップを供給するための振動フィーダーであり、コンベアに載せられた際に山積みされた状態となっている老廃スクラップ6を振動によってコンベア全体に広げながら搬送し、ドラム型磁選機3による磁力選別の精度を向上させる。
【0022】
ドラム型磁選機3は、ドラムの中に磁石が搭載されており、ドラムの外側が回転することにより磁石に引き付けられた鉄を回収する。ここで、ドラム型磁選機3の詳細について、図5を参照しながら説明する。
【0023】
図5に示すように、ドラム型磁選機3は、ドラム軸31を中心に電磁石32を搭載した回転ドラム33を回転させることによって、老廃スクラップ6の中から薄物および軽量物といった破砕物6a(磁性物)を回転ドラム33に吸着させて回収する。一方で、電磁石32の磁力によって吸着できない非磁性物6c(非鉄、プラスチック、ゴム、ダストなど)は、系外へ排出される。また、第1の振動フィーダー2により搬送される老廃スクラップ6は粗破砕されたものであるため、通常の磁選機とは異なりドラム型磁選機3には、厚物および重量物といった破砕不適物6bも搬送される。本実施形態では、第1の振動フィーダー2の先端とドラム型磁選機3との距離、電磁石32の磁力、回転ドラム33の回転速度のうち少なくとも1つを適宜調整することにより破砕物6aと破砕不適物6bとを分別し、破砕不適物6bを排出できるようにしている。
【0024】
なお、電磁石32は回転しない。また、電磁石32によって回転ドラム33に吸着された破砕物6aは、回転ドラム33の回転に従って移動し、電磁石32の磁力の領域から外れたところからは慣性力で進んでいく。その後、破砕物6aは重力によって第2の振動フィーダー4上へ落下することによってドラム型磁選機3から分離される。ただし、本実施形態に限定されず、電磁石32を離れた破砕物6aが集められ、人手または運搬車などによって第2の振動フィーダー4まで運ばれて、第2の振動フィーダー4に載置されてもよい。また、回転ドラム33の表面からは、径方向に向けて立設する板状の部材が周方向に複数設けられていてもよく、電磁石32の磁力の領域から外れたところにおいても回転時に滑る磁性物を支持して強制的に回転方向に運ぶことが可能となる。また、電磁石32は、上述したように破砕物6aを吸着・分離できれば、電磁石32の具体的な形状や回転ドラム33における位置は任意である。
【0025】
第1の振動フィーダー2の先端とドラム型磁選機3との距離を大きくすると、その分だけ磁力の影響を小さくすることができ、回転ドラム33の回転速度を大きくすると、搬送量を大きくすることができる。また、電磁石32の磁力を大きくし過ぎると、厚物や重量物といった破砕不適物までも回転ドラム33に吸着してしまうため、シュレッダー設備を壊してしまう可能性のある重量及びサイズに応じて電磁石32の磁力を調整する。このように第1の振動フィーダー2の先端とドラム型磁選機3との距離、回転ドラム33の回転速度、および電磁石32の磁力を調整することによって、所定の重量以上の破砕不適物は磁力によって回収することができなくなるため、厚物または重量物といった所定の重量以上の破砕不適物を系外へ排出することができる。なお、回転ドラム33の回転速度を調整する場合には、第1の振動フィーダー2の搬送速度も併せて調整することが好ましい。一方で、ガスボンベなど空洞を有するもの、および鉄以外にAlなどの軽金属を含む老廃スクラップは、体積の割に重量が小さくなることから、体積が大きいにもかかわらず破砕物として回収される可能性がある。ドラム型磁選機3によって回収された老廃スクラップは、第2の振動フィーダー4に投下される。このように本実施形態においては、所定の重量以上の磁性物のものは電磁石32の磁力によって回転ドラム33に吸着しにくいものとし、所定の重量未満の磁性物は電磁石32の磁力によって回転ドラム33に吸着しやすいものとみなしている。
【0026】
より具体的には、例えば、ドラム型磁選機3との距離と、回転ドラム33の回転速度とを考慮して、所定の重量未満の磁性物を吸着するようにドラム型磁選機3の磁力が設定されてもよい。例えば電磁石に流れる電流値を調整することで、磁力を調整してもよい。ドラム型磁選機3の磁力を定めた上で、ドラム型磁選機3との距離と、回転ドラム33の回転速度との少なくとも一方を調整することで、ドラム型磁選機3の電磁石32に所定の重量未満の磁性物が吸着するようにされていてもよい。ドラム型磁選機3の磁力を固定する場合には、磁石として永久磁石を使っても良い。なお、この点は、後述するオーバーフィード方式のドラム型磁選機80でも同様である。
【0027】
第2の振動フィーダー4は、第1の振動フィーダー2と同様に、山積みされた老廃スクラップ7を振動によってコンベア全体に広げながら搬送するものである。なお、第2の振動フィーダー4の途中にある一部の領域において、搬送されている老廃スクラップが監視カメラ5により上方から撮影される。このとき、監視カメラ5が撮影する領域で第2の振動フィーダー4による振動が生じていると撮影画像にブレが生じてしまう。したがって、監視カメラ5で撮影する領域に到達する前に、山積みされた老廃スクラップ7をコンベア全体に広げ、監視カメラ5で撮影する領域では、第2の振動フィーダー4による振動は発生させないようにすることが好ましい。この観点から、第2の振動フィーダー4の下流に、振動しない一般的な別のベルトコンベアを設け、そのベルトコンベア上の老廃スクラップ7を監視カメラ5により撮影してもよい。
【0028】
監視カメラ5は、搬送されている老廃スクラップを上方より真下または斜めへ撮影し、リアルタイムに撮影画像を情報処理装置10へ逐次転送する。情報処理装置10では、撮影画像から破砕不適物を検出し、破砕不適物を検出した場合に監視者へ通知する。なお、破砕不適物の検出方法については後述する。また、監視カメラ5の撮影範囲において、老廃スクラップの高さ情報を補完するために、三次元形状測定装置8により老廃スクラップの形状測定も並行して行われる。形状測定の結果も情報処理装置10へ転送され、破砕不適物が存在するか否かの判定に用いられる。三次元形状測定装置8としては、例えばToF(Time of Flight)カメラやレーザースキャナーといったデバイスが用いられる。
【0029】
なお、図1に示した例では、監視カメラ5は1台であるが、破砕不適物の検出精度をより向上させるために、幅方向または搬送方向に複数台並べてもよい。また、ガスボンベのように高さ情報がある程度予測可能な場合もあるため、破砕不適物除去システム100を簡略化する目的で三次元形状測定装置8による形状測定を省略してもよい。
【0030】
第2の振動フィーダー4上から、破砕不適物が除去されると、破砕物が回収され、不図示のシュレッダー設備へ搬送される。シュレッダー設備は公知の設備であり(例えば、特許文献1参照)、シュレッダー設備側においては、破砕機によりさらに破砕物が粉砕された後、磁力選別機による鉄などの磁性物と磁性物以外の金属との分別がなされる。
【0031】
[情報処理装置の構成]
続いて、監視カメラ5を用いて破砕不適物を検出する詳細な手順について説明する。図3は、本実施形態において、破砕不適物を検出する情報処理装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、情報処理装置10は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、記憶装置304と、入出力I/F305と、通信I/F306とを備えており、これらはバス307によって接続されている。
【0032】
CPU301は、ROM302または記憶装置304に記憶された制御プログラムを読み出して各種処理を実行する。RAM303は、CPU301の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる。記憶装置304は、各種データや各種プログラム等を記憶する。入出力I/F305は、キーボードまたはマウスからユーザによる各種操作を受け付けたり、不図示の表示装置に演算結果を表示させたりするためのインターフェースである。
【0033】
通信I/F306は、ネットワークなどを介して外部装置から情報を取得するためのインターフェースである。監視カメラ5で撮影された老廃スクラップの撮影画像は、有線または無線通信により、通信I/F306を介して本実施形態の情報処理装置10に受信される。また、三次元形状測定装置8の測定結果も、有線または無線通信により、通信I/F306を介して本実施形態の情報処理装置10に受信される。
【0034】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。なお、図2に示す各構成は、CPU301がROM302または記憶装置304に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。以下、各構成について説明する。
【0035】
画像取得部201は、監視カメラ5で撮影された撮影画像を動画または1枚以上の静止画として取得する。ここで取得する撮影画像は、上述したように第2の振動フィーダー4で搬送されている老廃スクラップを撮影したものであり、第2の振動フィーダー4上の幅方向の長さに合うように監視カメラ5の画角が設定されている。したがって、撮影画像全体に老廃スクラップが含まれるように監視カメラ5は撮影を行うことができる。
【0036】
不適物特定部202は、画像取得部201で取得した撮影画像を、学習モデル(機械学習により学習済みの学習モデル)に入力して、撮影画像内における破砕不適物の候補およびその位置を特定する。ここで、学習モデルとは、画像から破砕不適物を特定するために学習されたモデルであり、詳細については後述する。なお、破砕不適物には、薄物および軽量物に相当する磁性物(例えば、空洞の多いガスボンベ)以外に、ドラム型磁選機3において分別し損ねた厚物または重量物といったものも含まれる。
【0037】
体積算出部206は、三次元形状測定装置8から測定結果を入力し、その測定結果に基づいて、個々の老廃スクラップの体積を算出する。なお、本実施形態では、破砕不適物を特定することが目的であるため、三次元形状の測定結果から明らかに破砕不適物でない老廃スクラップについては体積の算出を省略してもよい。例えば、高さ方向が所定値以上、もしくは老廃スクラップの表面積が所定値以上の老廃スクラップのみ、体積を算出するようにしてもよい。また、三次元形状の測定は、学習モデルで特定された破砕不適物の候補の高さ方向の情報を補完するためのものであるため、体積を算出せず、個々の老廃スクラップの高さ方向を計算するのみとしてもよい。体積まで算出する場合と比較して、高さのみを計算する場合は、破砕不適物か否かの識別精度は落ちる可能性があるが、演算量が減るため破砕不適物か否かの識別までにかかる時間を短縮することができる。
【0038】
判定部207は、不適物特定部202において特定された破砕不適物の候補と、体積算出部206にて算出された老廃スクラップの体積とに基づいて、破砕不適物の候補が実際の破砕不適物であるか否かを判定する。なお、学習モデルにより垂直方向から見て破砕不適物の候補とならなかったが、高さが所定値以上あり、破砕不適物に相当する体積となる場合も可能性として考えられる。しかしながら、第2の振動フィーダー4で振動することにより老廃スクラップの山が平坦になるように搬送されているため、このようなケースは起こらないと考えてよい。
【0039】
結果出力部208は、判定部207により破砕不適物が含まれていると判定された場合に、その旨の通知を行う。通知方法については特に限定されないが、作業者が目視により破砕不適物を特定でき、その破砕不適物を除去できるのであればどのような方法を用いてもよい。例えば、図7Aに示す画像のように、撮影画像の中で破砕不適物701の領域を長方形702で囲った画像を不図示の表示装置に表示させ、併せて警告内容703も表示させるようにしてもよい。また、図7Bに示す画像のように、破砕不適物701をマーキングした重畳画像を生成し、その重畳画像および警告内容703を不図示の表示装置に表示させるようにしてもよい。また、その他の方法として、不図示の音声スピーカから、破砕不適物の位置などを通知するようにしてもよい。このようにすることで、前述したロボットアーム等を操作する作業員が破砕不適物の位置を特定し、その破砕不適物を除去することができる。なお、このロボットアーム等は作業員によって操作させる必要はなく、自動運転としてもよい。この場合は、ロボットアームなどに直接破砕不適物が含まれているとの判定結果やその存在位置等に関わる情報を出力するようにしてもよい。
【0040】
続いて、学習モデルの詳細について説明する。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワーク等のディープラーニング(深層学習)によって生成された学習済みモデルである。ディープラーニングの手法としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)などの多層のニューラルネットワークを適用することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
モデル生成部203は、監視カメラ5で撮影された撮影画像から破砕不適物の位置、および破砕不適物である確率を特定する単数あるいは複数の学習モデルを生成する。具体的には、図6Aに示すような老廃スクラップを含む撮影画像と、その画像に含まれていた破砕不適物(図6A図6Cの場合はガスボンベ)601の種類および位置を表す情報とが関連付けられた複数のデータを学習データとして、機械学習により、画像中の破砕不適物の種類、位置および破砕不適物である確率を特定するモデルを生成する。例えば、非特許文献1及び2に示すような画像中の物体の種類、位置およびその物体である確率を出力する学習モデルを生成する。なお、破砕不適物の種類は、「ガスボンベ」、「形鋼」、というように複数の種類に分類して出力してもよく、単に「破砕不適物」との1種類を出力するようにしてもよい。
【0042】
学習データはデータ記憶部205に予め記憶されており、本実施形態では、監視カメラ5により撮影された過去の撮影画像と、その画像中において破砕不適物が存在している正解の領域を特定し得るラベルデータとを、学習データのセットとして用いる。例えば、予め、過去の撮影画像に対して手動により破砕不適物の存在している領域を判定して、破砕不適物全体にラベル付け(マーキング)した画像を学習データのセットとして用いる。
【0043】
学習データとして用いる過去の撮影画像は、不適物特定部202で破砕不適物の検出に用いる撮影画像と同一のカメラにより撮影された画像であることが望ましいが、異なるカメラにより撮影された画像であってもよい。また、学習データに用いる画像としては、老廃スクラップに紛れている実際の破砕不適物を撮影して得た画像が望ましいが、インターネットなどで取得可能な破砕不適物の画像(ガスボンベの画像など)であってもよい。学習時には手動により作成した正解のラベルデータに対して破砕不適物である確率が所定の基準値以上(例えば、100%)となるように最適化の目的関数を設定して学習する。
【0044】
なお、ここで用いるラベルデータとしては、図6Cに示すように、撮影画像中における破砕不適物601の位置をマーキングしたマーキング画像データであってもよい。このとき、マーキングした破砕不適物の種類を表す情報として、あらかじめ破砕不適物ごとに振り分けた輝度値を用いることができる。例えば、0~255段階の輝度値で表されるグレースケール画像をマーキング画像として用いる場合、ガスボンベを輝度100、形鋼を輝度50でマーキングするなどして、破砕不適物の種類を各画素の輝度値で区別できるようにしてもよい。もちろん、マーキングした破砕不適物の位置を表す情報として、破砕不適物として振り分けた輝度値を有する複数の画素の座標を用いればよい。
【0045】
また、図6Bに示すように、ラベルデータとして、撮影画像中の破砕不適物の周囲を囲うように作成した矩形情報602などを含むテキストデータとしてもよい。例えば、このテキストデータには、破砕不適物の位置として矩形の座標データを用い、破砕不適物の種類としてその矩形内の破砕不適物を識別可能な情報を用いればよい。上記で用いる撮影画像のデータには、例えば、jpg、bmp、png等の形式が用いられ、テキストデータには、txt、json、xmlなどの形式が用いられる。
【0046】
一方で、モデル生成部203は、非特許文献3~5のように正常な画像を学習し正常からのズレを異常として検知する学習モデルを生成するようにしてもよい。この手法では、破砕不適物を含まない正常な老廃スクラップの画像を複数枚用いて、正常な老廃スクラップを表現するための特徴を学習モデルに学習させる。このように正常な老廃スクラップを学習して生成された学習済みのモデルに、破砕不適物が含まれている画像が入力されたときは、異常として異常部位と異常度が出力される。このモデルを採用する場合、オペレータに出力する破砕不適物である確率には、その異常度をベースとした値を使用する。例えば、異常度の値が0.0~1.0の範囲に入るように規格化し、その異常度を破砕不適物である確率とみなす。この方法による学習モデルは、異常かどうか、すなわち破砕不適物があるかどうかを出力するので、「ガスボンベ」、「形鋼」といった種類までは出力しない。
【0047】
学習モデルは上述のものに限られるわけではない。例えば、撮影画像を、破砕不適物の映っていない正常画像と破砕不適物が映っている異常画像との2クラスに分類する2クラス分類モデルであってもよい。あるいは、学習モデルは、撮影画像を、破砕不適物の種類で分類する多クラス分類モデルであってもよい。多クラス分類モデルは、撮影画像内における破砕不適物の位置情報まで出力はしない点が、上述の非特許文献1及び2に即した学習モデルとは異なる。
【0048】
また以上の説明では、学習モデルには、ある時点の撮影画像1枚が入力されることを前提としてきたが、時間方向に複数の撮影画像を入力としてもよい。例えばリカレントニューラルネットワーク(RNN)等のような、撮影画像の時系列性をも考慮するアルゴリズムを用いてもよい。例えば、過去の判定結果等を現在の入力に加えることで、判定したい現在の撮影画像の判定精度を向上させることができる。
【0049】
モデル生成部203は、破砕不適物除去システム100を用いてシュレッダー設備へ投入する前段階として破砕不適物の除去を実施する前に、あらかじめユーザからの指示に基づき学習モデル生成処理を開始する。もしくは、モデル生成部203は、定期的に学習モデル生成処理を実行してもよい。
【0050】
本実施形態の学習モデルの学習条件は、モデル条件、データセット条件及び学習設定条件を含む。モデル条件は、ニューラルネットワークの構造に関する条件である。データセット条件は、学習中にニューラルネットワークに入力する学習データの選択条件、それらデータの前処理や画像の拡張方法の条件等を含む。学習設定条件は、重みおよびバイアスといったニューラルネットワークのパラメータの初期化条件や最適化方法の条件、損失関数の条件等を含む。ここで、損失関数の条件には正則化関数の条件も含まれる。
【0051】
学習モデル生成処理を開始すると、まず、モデル生成部203は、監視カメラ5により撮影された撮影画像から老廃スクラップ中に含まれている破砕不適物を検出することが可能な学習モデルの生成に必要な学習データを、データ記憶部205から取得する。そして、モデル生成部203は、取得した学習データを用いて、機械学習によって、破砕不適物を検出可能な学習モデルを生成する。
【0052】
画像中の破砕不適物の特徴を学習し、検出時に破砕不適物の種類、位置、および破砕不適物である確率を算出する学習モデルを生成する場合には、モデル生成部203は、データ記憶部205から取得した、破砕不適物が含まれている撮影画像を学習モデルに入力し、その学習モデルが出力する破砕不適物の位置(領域)が、破砕不適物が存在している正解の位置に近づくように、また破砕不適物の種類とその破砕不適物である確率が所定の基準値以上(例えば、100%)となるように、学習モデルを最適化する。この形式の学習モデルを破砕不適物の検出に用いる場合、破砕不適物の種類、破砕不適物の位置(領域)を示す座標データ、確信度を示す確率の値が学習モデルから出力される(例えば非特許文献1参照)。
【0053】
一方で、破砕不適物が含まれていない正常な老廃スクラップの撮影画像を学習データとして、正常な老廃スクラップ全体の特徴を学習し、検出時には老廃スクラップに破砕不適物が含まれているときのみ異常として、その異常部位と異常度を算出する学習モデルを生成する場合は、モデル生成部203は、データ記憶部205から取得した、破砕不適物が含まれていない正常な老廃スクラップの撮影画像を学習モデルに入力し、正常な老廃スクラップ全体の特徴を学習する。このとき、生成される学習モデルが老廃スクラップに破砕不適物が含まれていないことを表現(出力)できるように学習モデルを最適化する。この場合、破砕不適物が含まれた撮影画像が学習モデルに入力された際の破砕不適物の位置および破砕不適物である確率の算出には、学習モデルに入力した撮影画像と、学習モデルから出力された撮影画像との差分画像又は異常度を用いる(例えば非特許文献3参照)。
【0054】
モデル生成部203は、機械学習により学習モデルを生成すると、その学習モデルをモデル出力部204へ出力する。
【0055】
モデル出力部204は、モデル生成部203により生成された学習モデルを出力する。例えば、モデル出力部204は、モデル生成部203により生成された学習モデルを、不適物特定部202において破砕不適物の種類、位置、および破砕不適物である確率を特定するときに用いることが可能なように、不適物特定部202へ出力する。
【0056】
次に、上述した手順で生成された学習モデルを用いて、破砕不適物を検出する処理手順について説明する。図4は、本実施形態において、情報処理装置10により学習モデルを用いて破砕不適物を検出する処理手順の一例を示すフローチャートである。図4に係る処理は、CPU301がROM302に記憶された制御プログラムを読み出すことにより実行される。
【0057】
まず、ステップS401において、画像取得部201は、監視カメラ5から撮影画像をリアルタイムに取得する。なお、取得する画像は動画であってもよく、静止画であってもよい。また、監視カメラ5を複数台設置している場合は、これらの監視カメラ5からリアルタイムに撮影画像を取得する。
【0058】
次に、ステップS402において、不適物特定部202は、画像取得部201で取得された撮影画像を、上述した学習モデル生成処理でモデル生成部203が生成した学習モデルに入力して、破砕不適物の種類、位置、および破砕不適物である確率をそれぞれ特定する。そして、破砕不適物である確率が所定値以上である場合に、破砕不適物の候補として特定する。
【0059】
次に、ステップS403において、体積算出部206は、三次元形状測定装置8から三次元形状の測定結果を入力し、その測定結果から個々の老廃スクラップの体積または高さを算出する。このとき、三次元形状の測定を行った位置および時間の情報も併せて入力し、撮影画像の撮影時間と整合が取れるようにする。なお、ステップS403の処理は、ステップS401またはS402の前に行われてもよい。
【0060】
次に、ステップS404において、判定部207は、ステップS402で特定された破砕不適物の候補について、体積算出部206で算出された体積または高さの情報を取得する。そして、破砕不適物の候補の縦、横および高さを勘案し、ステップS402で特定された破砕不適物の候補が除去すべき破砕不適物であるか否かを判定する。
【0061】
次に、ステップS405において、結果出力部208は、ステップS404での判定結果に応じた情報を出力する。例えば、ステップS404で除去すべき破砕不適物であると判定された場合であって、不図示の表示装置に情報を出力する場合は、結果出力部208は、図7Aに示したような、画像取得部201で取得した撮影画像に対して破砕不適物701を長方形702で囲った画像を含む表示画面、または図7Bに示したような、破砕不適物701の位置をマーキングした画像を含む表示画面を生成し、表示装置に表示させることによって、作業者に通知するようにする。このとき、破砕不適物の種類も特定できた場合は、破砕不適物の種類の情報も表示されることによって、破砕不適物の除去時に作業者はより簡単に破砕不適物を見つけて除去することができる。
【0062】
一方で、ステップS404で除去すべき破砕不適物であると判定された場合であって、不図示のスピーカに音声データを出力する場合は、結果出力部208は、破砕不適物の種類および位置を通知するための音声データを生成してスピーカに出力する。また、ステップS404で除去すべき破砕不適物であると判定されなかった場合は、何も出力しなくてもよく、画像取得部201で取得した撮影画像をそのまま表示装置に表示させるようにしてもよい。
【0063】
ステップS406においては、画像取得部201は、破砕不適物を検出する処理を終了するか否かを判定する。この判定は、例えば作業者がキーボード等を操作して、破砕不適物の検出を終了する指示を入力したか否かによって行われる。この判定の結果、処理を継続する場合はステップS401に戻り、引き続き、破砕不適物を検出する処理を継続する。一方、処理を終了する場合はそのまま図4の処理を終了する。
【0064】
以上のように本実施形態によれば、第一段階として、重量の大きい老廃スクラップはドラム型磁選機3によって排出するようにしたので、空洞が少なく、かつ重量の大きい鉄塊といった老廃スクラップがシュレッダー設備へ投入されることを防止することができる。一方で、空洞の大きいガスボンベや比重の小さい合金などは、ドラム型磁選機3によって排出されない可能性があるが、その後、監視カメラ5の撮影画像から学習モデルを用いて特定できるようにしたので、このような老廃スクラップについてもより確実にシュレッダー設備へ投入されることを防止することができる。
【0065】
従来は、特許文献3に記載されているようなドラム型磁選機のように、磁性物と非磁性物とを分離することが行われていたが、本実施形態のドラム型磁選機3では、磁性物の中で、重量の大きい老廃スクラップと、軽量の老廃スクラップとを分別している点で、従来とは異なっている。なお、本実施形態においては、情報処理装置10において学習モデルを生成する例について説明したが、学習機能を省略し、他の外部装置で生成した学習モデルを記憶し、その学習モデルを用いて推論のみを行う構成としてもよい。
【0066】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ドラム型磁選機3により、電磁石の磁力によって吸着できない非磁性物のみならず、厚物および重量物といった磁性物の破砕不適物をも系外へ排出する例について説明した。図5に示したドラム型磁選機はピックアップ方式のドラム型磁選機であり、厚物および重量物といった巨大な破砕不適物6bを首尾よく落として系外へ排出するためには、第1の振動フィーダー2の先端と回転ドラム33との距離であるクリアランスを大きくする必要がある。一方で、そのクリアランスを大きくし過ぎると、薄物および軽量物といった破砕物6aを回転ドラム33に吸着できなくなる。
【0067】
そこで、図1に示した破砕不適物除去システム100において、図5に示すピックアップ方式のドラム型磁選機の代わりに、オーバーフィード方式のドラム型磁選機を用いてもよい。以下、本実施形態においては、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0068】
図8は、破砕不適物を系外へ排出するオーバーフィード方式のドラム型磁選機の概要を説明するための図である。図8に示すように、ドラム型磁選機80は、ドラム軸81を中心に電磁石82を搭載した回転ドラム83を回転させることによって、老廃スクラップ6の中から薄物および軽量物といった破砕物6aを回転ドラム83に吸着させて回収する点では、図5に示したピックアップ方式のドラム型磁選機と同様である。但し、本実施形態においては、第1の振動フィーダー2で運搬された、薄物および軽量物といった破砕物6aと、厚物および重量物といった巨大な破砕不適物6bと、非磁性物6cとを回転ドラム83上に一旦載せる。そして、磁力と重力とのバランスにより、落下点が変わることを利用し、破砕物6aと破砕不適物6bおよび非磁性物6cとを分別する。なお、図5に示した例と同様に、電磁石82は回転しない。また、電磁石82は、上述したように破砕物6aと破砕不適物6bおよび非磁性物6cとを分別できれば、電磁石82の具体的な形状や回転ドラム33における位置は任意である。電磁石32によって回転ドラム83に吸着された破砕物6aは回転ドラム83の回転に従って移動し、電磁石82の磁力の領域まで吸着されたままとなる。そして、電磁石82の磁力の領域から外れると、破砕物6aは重力によって落下してドラム型磁選機80から分離される。一方で、破砕不適物6bのうち、所定の重量以上となる厚物および重量物は、回転ドラム83の回転に従って電磁石82の磁力の領域から外れるところまで吸着された状態を維持できず、その途中で、磁力と重力とのバランスが取れなくなったところで落下することになる。
【0069】
非磁性物6cの場合は、電磁石82によって回転ドラム83へ引き寄せられないため、回転ドラム83上に載っている非磁性物6cは、回転ドラム83の回転に伴ってそのまま重力により落下する。また、巨大な破砕不適物6bは磁性物であり、電磁石82の磁力により回転ドラム83に引き寄せられるが、回転ドラム83の回転に伴って破砕不適物6bの重力による回転ドラム83から引き離す力の方が大きくなるため、破砕不適物6bはそのまま落下する。なお、本実施形態においては、薄物および軽量物といった破砕物6a、破砕不適物6b、非磁性物6cを含む全ての搬送物を回転ドラム83上に一旦載せるため、第1の振動フィーダー2の高さは、回転ドラム83の高さと同じかやや低い位置としているが、回転ドラム83よりも高い位置とし、老廃スクラップを回転ドラム83上に落下させるようにしてもよい。
【0070】
以上のようにオーバーフィード方式のドラム型磁選機の場合には、第1の振動フィーダー2の先端と回転ドラム33との距離(クリアランス)をほとんど設ける必要がない。したがって、電磁石82の磁力の調整のみによって、薄物および軽量物といった破砕物6aと、厚物および重量物といった巨大な破砕不適物6bとを適切に分別することができる。ピックアップ方式のドラム型磁選機を用いる場合には、ドラム型磁選機に向けて搬送されてくる代表的な老廃スクラップの大きさが変動する度にクリアランスの調整が必要である。これに対してオーバーフィード式のドラム型磁選機の場合には、代表的な老廃スクラップの大きさが大きく変動する場合であってもクリアランスの調整が不要であるため、このような場合には特に有効である。
【0071】
(第3の実施形態)
第1の実施形態においては、情報処理装置10により破砕不適物が検出された場合に、作業者が図7Aまたは図7Bに示す画面を確認し、作業者がその破砕不適物を直接除去するか、作業者がロボットアーム等を操作してその破砕不適物を除去することを想定したものである。本実施形態では、第2の振動フィーダー4の上方に吊り下げ式磁力選別機を設け、情報処理装置10により検出された破砕不適物を磁力により除去する例について説明する。以下、本実施形態においては、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0072】
図9は、本実施形態において、第2の振動フィーダー4上に搬送された破砕不適物を除去する概要を説明するための図である。図9に示すように、本実施形態では、図1に示した破砕不適物除去システム100において、監視カメラ5よりも後方側に、さらに除去装置として吊り下げ式磁力選別機91を設けた構成となっている。
【0073】
吊り下げ式磁力選別機91は、第2振動フィーダー4の上方に設置されており、情報処理装置10において破砕不適物が検出されていない通常時は磁力がOFFとなっている。なお、吊り下げ式磁力選別機91の磁力のON/OFFは、不図示の制御装置から切り替えることができる。情報処理装置10において破砕不適物が検出されると、その旨が制御装置に入力され、吊り下げ式磁力選別機91の磁力がONに切り替えられる。具体的には、情報処理装置10において破砕不適物を検出した場合に、結果出力部208は、吊り下げ式磁力選別機91を制御する制御装置へ破砕不適物が含まれている旨を通知する。このとき、結果出力部208は、吊り下げ式磁力選別機91の磁力が適切に及ぶ範囲に検出した破砕不適物が入った状態になるのに合わせて設定された、磁力をONにするタイミングを、併せて通知するようにする。例えば、結果出力部208は、第2の振動フィーダー4での送り速度、および第2の振動フィーダー4上での監視カメラ5で撮影される位置と吊り下げ式磁力選別機91の真下の位置との間の距離に応じて、磁力をONにするタイミングを併せて通知するようにする。以上では、上述した磁力をONにするタイミングの演算を結果出力部208にて実施する場合を記載したが、磁力をONにするタイミングの演算を別の装置で実施してもよい。
【0074】
情報処理装置10から破砕不適物が含まれている旨の通知を受けると、制御装置は、所定時間後に吊り下げ式磁力選別機91の磁力をONにし、第2の振動フィーダー4上に搬送されている破砕不適物93を吊り下げ式磁力選別機91に吸着させる。吊り下げ式磁力選別機91としては、例えば日本国実願昭61-110324号(日本国実開昭63-16850号公報)のマイクロフィルムに記載さているような公知のものを適用することができる。
【0075】
吊り下げ式磁力選別機91の下面には、破砕不適物を収納する箱94の方向(第2の振動フィーダー4とは直交する方向)へ動くコンベアが備わっており、破砕不適物93はコンベアに吸着されたまま破砕不適物を収納する箱94の真上に向かって移動し、破砕不適物93が箱94の真上の位置などの破砕不適物93が箱94に落下可能な位置に到達すると吊り下げ式磁力選別機91の磁石の力がそこまでは及ばなくなっているため、破砕不適物を収納する箱94へ破砕不適物93が落下するようになっている。そして、破砕不適物がすべて落下した後に、制御装置は吊り下げ式磁力選別機91の磁力をOFFに戻す。一方で、シュレッダー設備へ投入される予定の破砕物92は、吊り下げ式磁力選別機91には吸着されずに、第2の振動フィーダー4上をそのまま端部付近まで搬送されたところで落下することで、老廃スクラップを収納する箱95へ回収される。このように吊り下げ式磁力選別機91の磁力をONにしたときに、破砕不適物のみを吸着できるように、吊り下げ式磁力選別機91の磁力を予め調整しておくものとする。
【0076】
以上のように本実施形態においては、破砕不適物を検出した後においても、吊り下げ式磁力選別機で磁力のON/OFFを切り替えるだけで、シュレッダー設備へ投入可能な老廃スクラップと破砕不適物とを分別することができる。また、破砕不適物を検出した段階で吊り下げ式磁力選別機91の磁力をONに切り替えるため、図7Aまたは図7Bに示すような画面の表示を不要にしてもよい。すなわち、破砕不適物が検出した場合に、破砕不適物を含む旨を出力する先は、作業者に除去を促す目的の画面(例えば、図7Aまたは図7B)を生成する表示装置でなくとも、破砕不適物を自動で除去する除去装置であってもよい。さらにまた、以上では、破砕不適物93を箱94へ、その他の老廃スクラップを箱95へ、それぞれ回収する例を述べたが、それとは逆に、破砕不適物93を箱95へ、その他の老廃スクラップを箱94へ、それぞれ回収してもよい。この場合は、吊り下げ式磁力選別機のON/OFFタイミングも逆になる。すなわち、破砕不適物を検出したタイミングだけOFFとし、それ以外の時間はONとする。
【0077】
(第4の実施形態)
第1の実施形態では、三次元形状の測定結果を基に個々の老廃スクラップの体積または高さの情報を取得し、破砕不適物の候補が除去すべき破砕不適物であるか否かを判定した。一方で、シュレッダー設備に対して損害を与える可能性のある老廃スクラップは、厳密には高さというよりは厚みが重要である。また、第2の振動フィーダー4で搬送されている老廃スクラップが山積みされたまま搬送される場合もあり、その場合には老廃スクラップの高さのみでは、山積みされた個々の老廃スクラップの厚みを正確に測定できない。そこで本実施形態では、さらに個々の老廃スクラップの厚みの情報も取得し、破砕不適物をより適切に特定できるようにする。以下、本実施形態においては、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0078】
体積算出部206は、さらに、ステップS403において、三次元形状測定装置8から入力された測定結果に基づいて、個々の老廃スクラップの厚みを算出する。第1の実施形態と同様に、三次元形状の測定結果から明らかに破砕不適物でない老廃スクラップについては厚みの算出を省略してもよい。以下、個々の老廃スクラップの厚みを算出する具体的な手順について説明する。
【0079】
図10Aは、形状基礎情報の具体例を示す図である。形状基礎情報は、3次元の形状情報を得るのに用いる対象物の二次元画像である。体積算出部206は、例えば、図10Aに示されるように形状基礎情報として対象物の二次元画像を取得する。対象物の二次元画像は、例えば画像取得部201が取得した撮影画像から、対象物を含む一部の領域をフィルタリングすることで得られた部分画像とする。このようなフィルタリングは、例えば固定的に設定された領域(例えば、常に対象物が映り込む領域)を抽出する処理であってもよいし、特定の色情報(対象物が有する色情報)を有する領域を抽出する処理であってもよいし、代表的な破砕不適物の形状など特定の形状を有する領域を抽出する処理であってもよい。
【0080】
続いて、体積算出部206は、例えば二次元画像に対してエッジ(対象物の外形に対応する線分)を抽出する画像処理を行うことによって、エッジが示される対象物の画像を生成する。図10Bは、図10Aの二次元画像から抽出されたエッジが示される画像の具体例を示す図である。このようなエッジを抽出する処理は、例えば二次元画像に対してハイパスフィルタをかけることによって行われてもよい。
【0081】
さらに、体積算出部206は、例えば二次元画像に対して面を抽出する画像処理を行うことによって、面が示される画像を生成する。図10Cは、図10Aの二次元画像から抽出された面が示される画像の具体例を示す図である。このような面を抽出する処理は、例えば二次元画像においてエッジを検出し、エッジによって囲まれる領域を検出し、検出された各領域に対してラベリング(検出された各領域と、各領域の識別情報との対応付け)を行うことによって行われてもよい。ラベリングが行われた各領域が一つの面として検出されてもよい。
【0082】
なお、三次元形状測定装置8の測定結果として、個々の老廃スクラップの形状を表す情報である点群データが含まれる場合には、その点群データから個々の老廃スクラップの面を特定するようにしてもよい。
【0083】
図11Aは、点群データの具体例を示す図である。例えば、図11Aに示されるように対象物の点群データが三次元形状測定装置8から得られた場合には、体積算出部206は、例えば点群データに対してエッジを抽出する処理を行うことによって、エッジが示される情報を生成する。図11Bは、図11Aの点群データから抽出されたエッジの具体例を示す図である。このようなエッジを抽出する処理は以下のように実行されてもよい。まず、点群データの中で近傍に位置する所定数の点のデータに基づいて法線ベクトルを求める。例えば、隣接する3つの点のデータに基づいて、その3つの点を含む平面に対する法線ベクトルを求めてもよい。互いに隣接し、法線ベクトルの向きが所定の閾値以内の領域を同一の面として判定し、対象物の全点群データについて面を判定する。面と面とが接する境界を示す線分をエッジとして抽出する。このような処理は、形状情報(例えば点群データ)からエッジに関する情報を取得するための処理の一例にすぎない。他の処理によって点群データからエッジに関する情報が取得されてもよい。
【0084】
さらに体積算出部206は、例えば点群データに対して面を抽出する処理を行うことによって、面を特定する情報を生成する。図11Cは、図11Aの点群データから抽出された面の具体例を示す図である。このような面を抽出する処理は、上述したように、点群データの中で近傍に位置する所定数の点のデータに基づいて法線ベクトルを求め、法線ベクトルに基づいて各面が抽出されてもよい。以上説明した処理のいずれか一つ又は複数を実行することによって、体積算出部206はエッジおよび面に関する形状情報を取得する。なお、体積算出部206は、上述した処理とは異なる処理によって形状情報を取得してもよい。
【0085】
上述した処理によって抽出されたエッジまたは面に関して、体積算出部206はさらに処理を行うことによって他の形状情報も併せて取得するようにしてもよい。
【0086】
以上のように形状情報としてエッジおよび面の情報を取得すると、体積算出部206は、それぞれの面について、平行するエッジ(線分)の間の長さを示す情報を取得し、各直方体(各個体)内でそれら複数出てきた長さの最小値を求め、その値を個々の老廃スクラップの厚みとする。
【0087】
上述した手順は老廃スクラップが直方体であることを想定し、個々の老廃スクラップの厚みを算出したが、老廃スクラップには様々な形状のものが存在し、例えば鋼管の半割れ個体のような形状のものが含まれる場合もある。この場合、シュレッダー設備に対して損害を与える可能性を判断する際に、どの面の厚みに注目すべきかが自明でない。そこで、上述した手順と同様に面を同定した後に、さらにその情報を深層学習モデルなどに入力することで、その老廃スクラップの厚みを求める際に注目すべき面を出力するようにしてもよい。図12Aの例の場合には、体積算出部206は、まず、二次元画像または点群データを用いて面A~面Eを特定する。そして、深層学習モデルなどを用いて、注目すべき面として面A、面Cおよび面D(図12右側の斜線部)を特定する。深層学習モデルを用いる場合には、老廃スクラップで特定されたすべての面を深層学習モデルに入力し、その中から、シュレッダー設備に対して損害を与える可能性を考慮する上で注目すべき面を特定結果として出力する。また、図12Bに示す例のように、二次元画像または点群データを入力し、別の深層学習モデルにより、注目すべき面を直接出力させるように構成してもよい。この深層学習モデルを用いる場合には、老廃スクラップの二次元画像または点群データを深層学習モデルに入力し、シュレッダー設備に対して損害を与える可能性を考慮する上で注目すべき面を特定結果として出力する。そして、注目すべき面について、同様に平行するエッジ(線分)の間の長さを示す情報を取得し、例えばその最小値を老廃スクラップの厚みとする。
【0088】
以上のように個々の老廃スクラップの厚みを算出すると、判定部207は、ステップS404において、個々の老廃スクラップの厚みの情報から、破砕不適物の候補が除去すべき破砕不適物であるか否かを判定する。例えば山積みされた状態では、複数の老廃スクラップで1つの物体と判断されると、個々の物体よりも体積あるいは高さが大きくなるが、厚みだけは、積み重なっていても大きくなることはない。このように本実施形態によれば、第2の振動フィーダー4上に山積みされた状態で老廃スクラップが運搬されているような場合であっても、個々の老廃スクラップの厚み情報を取得して、より適切に破砕不適物を特定することができる。
【0089】
また、図11Aに示す点群データを用いて老廃スクラップの形状情報を取得する場合には、撮影画像を用いずに老廃スクラップの体積、高さ、および厚みのうちの少なくとも一つの情報を取得できる。したがって、個々の老廃スクラップの体積、高さ、または厚みの情報のみから、破砕不適物の候補が除去すべき破砕不適物であるか否かを判定する場合には、不適物特定部202による破砕不適物の候補の特定を省略し、体積、高さ、または厚みが所定値以上の場合に破砕不適物と特定してもよい。これにより、監視カメラ5を不要にし、三次元形状測定装置8の測定結果のみから、破砕不適物を特定することができる。また、三次元形状測定装置を複数設置し、これらの装置の測定結果を統合してより正確に破砕不適物の厚み情報を取得できるようにしてもよい。
【0090】
(その他の実施形態)
なお、以上述べた各実施形態の情報処理装置は、具体的にはコンピュータシステム或いは装置により構成されるものである。したがって、前述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0091】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0092】
以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0093】
具体的には、図1に示した破砕不適物除去システム100では、プレシュレッダー1、第1の振動フィーダー2、ドラム型磁選機3、第2の振動フィーダー4、監視カメラ5(および三次元形状測定装置8)を介して破砕不適物が除去されるが、破砕不適物除去システム100は、これらの一部を省略してもよい。例えば大型の老廃スクラップがない場合は、プレシュレッダー1を省略してもよい。また、前述した第1の実施形態においては、三次元形状測定装置8も省略してもよい。
【0094】
さらに、図1の例では、破砕不適物を特定したり排出したりするために、破砕不適物除去システム100は、ドラム型磁選機3および監視カメラ5(および情報処理装置10)を備えているが、いずれか一方を省略してもよい。一例としては、破砕不適物除去システム100は、ドラム型磁選機3のみから構成されるようにしてもよいし、第1の振動フィーダー2およびドラム型磁選機3のみから構成されるようにしてもよい。この場合、第1の振動フィーダー2に代えて、振動しない一般的なベルトコンベアに置き換えてもよいし、第1の振動フィーダー2と振動しない一般的なベルトコンベアの組合せに置き換えてもよい。また、ドラム型磁選機3を省略する場合には、破砕不適物除去システム100は、第2の振動フィーダー4および監視カメラ5(および情報処理装置10)のみから構成されるようにしてもよい。この場合、第2の振動フィーダー4に代えて、振動しない一般的なベルトコンベアに置き換えてもよいし、第2の振動フィーダー4と振動しない一般的なベルトコンベアの組合せに置き換えてもよい。一方で、ドラム型磁選機3および監視カメラ5の両方を備える場合には、順番が逆であってもよい。つまり、監視カメラ5(および情報処理装置10)により破砕不適物を特定して破砕不適物を除去した後に、破砕不適物として特定できなかった所定の重量以上の磁性物をドラム型磁選機3で除外するようにしてもよい。また以上で述べてきた各々の構成において、監視カメラ5に代えて、三次元形状測定装置8に置き換えてもよいし、監視カメラ5と三次元形状測定装置8の組合せに置き換えてもよい。また、例えば第1、第3、第4の実施形態を組み合せたり、第2~第4の実施形態を組み合わせたりするなど、前述した各実施形態の2以上を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、シュレッダー設備に老廃スクラップを投入する前段階において、個々の老廃スクラップの中からシュレッダー設備を壊す可能性のある破砕不適物を精度良く除去することができ、工業的価値は大きい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B