(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/16 20060101AFI20250110BHJP
B29C 61/06 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
G01N25/16 E
B29C61/06
(21)【出願番号】P 2024548464
(86)(22)【出願日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2024012580
【審査請求日】2024-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2023053384
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523012126
【氏名又は名称】ボンセット アメリカ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Bonset America Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀太
(72)【発明者】
【氏名】入船 達也
(72)【発明者】
【氏名】海野 竜馬
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-075372(JP,A)
【文献】特開2021-089154(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/16
B29C 61/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーションキャプチャーを用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率の測定方法であって、下記工程(a)~(e)を有することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
工程(a):被測定物としての前記ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向において、2つの測定位置を設定し、当該2つの測定位置の間隔をL1として、測定する工程。
工程(b):2つの測定位置に、それぞれ、所定マーカーを設ける工程。
工程(c):前記ポリエステル系シュリンクフィルムを、所定熱収縮条件としての温度かつ時間、加熱して、熱収縮させる工程。
工程(d):熱収縮後の所定間隔の距離を、L´1として、前記モーションキャプチャーを用いて測定する工程。
工程(e):下記式(1)に基づいて、前記ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向
であるTD方向の熱収縮率を算出する工程。
【数1】
【請求項2】
前記工程(a)の2つの測定位置の間隔を、複数設定し、工程(d)~(e)で、複数のTD方向の熱収縮率を算出し、その平均値を、前記TD方向の熱収縮率とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項3】
前記モーションキャプチャーを、画像式のモーションキャプチャーとし、熱収縮前後の前記所定マーカーの位置に基づいて、前記TD方向の熱収縮率を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、カメラを備えておき、前記被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮状態を、併せて観察することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項5】
前記工程(c)の熱収縮温度を50~98℃の範囲内の値とし、かつ、熱収縮時間を1~60秒の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項6】
前記工程(c)の熱収縮装置を、恒温槽、蒸気槽、温水槽、含フッ素液体槽、赤外線照射装置の少なくとも一つとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項7】
前記工程(d)において、前記被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率を、MD方向の熱収縮率として、前記TD方向の熱収縮率の測定と同時に、前記モーションキャプチャーを用いて測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【請求項8】
前記工程(e)の後に、工程(f)として、前記被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向における、熱収縮温度及び熱収縮時間と、前記TD方向の熱収縮率との関係を示す検量線を予め作成しておき、その検量線と、式(1)に基づいて得られた熱収縮率とを、比較検証する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法に関する。
より詳しくは、モーションキャプチャーを用いることによって、熱収縮率を迅速かつ精度良く測定することができるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンクフィルムは、PETボトル等のラベル用基材フィルムとして幅広く用いられている。特に、ポリエステル系樹脂は透明性や強度に優れ、広範に使用されている。これらのシュリンクフィルムは、熱風やスチームを発生するトンネル内を通過させることにより熱収縮させ、容器に装着するが、熱収縮時に収縮差(ムラ)が生じてシワの発生や色のムラが見られる場合がある。
そこで、熱収縮時に収縮差(ムラ)が生じてシワの発生や色のムラの発生を防止するための熱収縮性ポリエステル系フィルムが、各種提案されている。
【0003】
例えば、エチレングリコール以外のアルコール成分の割合を制御したり、或いは、全酸成分中にナフタレンジカルボン酸成分量や、スルホベンゼンジカルボン酸のアルカリ金属塩の配合量を厳格に制御してなる熱収縮性ポリエステル系フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
より具体的には、ポリエステル樹脂が全酸成分中のテレフタル酸以外の酸成分の割合(Aモル%)と全アルコール成分中のエチレングリコール以外のアルコール成分の割合(Bモル%)とが5モル%≦A+B≦40モル%の範囲であり、全酸成分中にナフタレンジカルボン酸成分を1~30モル%、スルホベンゼンジカルボン酸のアルカリ金属塩を0.3~3モル%の割合で含有することを特徴としている。
そして、係るポリエステル系フィルムの熱収縮率につき、フィルム長手方向において、温度60℃、時間60秒の温水浸漬で5%以上であり、温度80℃、時間60秒の温水浸漬で30%以上が好ましいとする構成である。
【0004】
又、全ポリエステル樹脂成分中における非晶質成分の配合量を厳格に制御するとともに、フィルム長手方向における、80℃及び90℃の温湯熱収縮率や、フィルム幅方向における、90℃における温湯熱収縮率を制限する熱収縮性ポリエステル系フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
より具体的には、熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし全ポリエステル樹脂成分中における非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を含有し、その合計が15モル%以上である。
そして、ポリエステル系フィルムの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において、処理温度80℃、処理時間10秒で30%以上であり、処理温度90℃、処理時間10秒で40%以上であり、フィルム幅方向における温湯収縮率90℃、処理時間10秒で10%以下である事を特徴としている。
【0005】
又、一方向の収縮率と、それに直交する方向の熱収縮率を規定するとともに、70~120℃の温度範囲における平均熱収縮速度係数を所定範囲とする熱収縮性ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献3参照)。
より具体的には、熱収縮性ポリエステルフィルムであって、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマー、あるいはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分、および/またはエチレングリコール以外のジオール成分、および/またはオキシカルボン酸等を含んで構成された共重合体である。
そして、少なくとも一方向の熱収縮率が30%以上であり、かつ少なくとも当該方向の70~120℃の温度範囲における平均熱収縮速度係数が0.1~0.5%/秒・℃の範囲であることを特徴としている。
【0006】
又、所定条件下で測定された最大熱収縮速度を規定したシュリンクラベルが提案されている(特許文献4参照)。
より具体的には、熱収縮性シュリンクラベルであって、ポリ乳酸系重合体を必須成分とするフィルム層を少なくとも1層と、印刷層と、を有している。
そして、75℃温水中での熱収縮開始1秒後における主配向方向の熱収縮率が3~23%であり、更に、90℃、10秒における主配向方向の熱収縮率が40~84%であることを特徴としている。
又は、75℃温水中での主配向方向の最大熱収縮速度が7~40%/秒であり、更に、90℃、10秒における主配向方向の熱収縮率が40~84%であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平08-027259号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2007-016120号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開平8-323859号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2008-1098号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された熱収縮性フィルムにおいては、所定温度、所定収縮方向での熱収縮率を所定範囲内に制限しているものの、温水に浸漬した後に、温水から引き揚げて測定する必要があり、熱分布のムラ等が発生し易く、測定値のバラツキが大きくなる場合があった。
従って、そのように測定された熱収縮率を有するポリエステル系フィルムは、所望とする熱収縮率を有するポリエステル系フィルムを得ることが難しく、熱収縮率特性を迅速かつ精度良く管理できない場合があった。
そのため、特に、胴部のボトル径が一様でなく、かつ、部位によっては、胴部の水平断面形状が円状ではなく、複雑な形状を有するPETボトル等の場合、熱収縮性が不均一となりやすいことから、微細なしわの発生の抑制が、極めて困難であるという問題があった。
【0009】
又、特許文献3に記載された熱収縮フィルムにおいては、時間に対する熱収縮率の変化量を規定しているものの、熱収縮前後での平均化された熱収縮速度係数(%/(秒・℃))を規定したものであって、熱収縮前から所定時間までの熱収縮速度(mm/秒)はもとより、その最大値を測定することについて、何ら意図されていなかった。
そのため、熱収縮フィルムが、熱収縮中の短時間に大きく変化するタイミングで、熱収縮速度(mm/秒)を精度良く測定することはできなかった。
【0010】
又、特許文献4に記載されたシュリンクラベルにおいては、熱収縮開始1秒後における熱収縮率(%)について規定しているものの、時間を限定した熱収縮率であり、熱収縮のタイミングが異なるシュリンクラベルについては、何ら意図されていなかった。
更には、最大熱収縮速度(%/秒)についても述べられているものの、0.1秒間隔で測定した場合の事実上の瞬間熱収縮速度を測定したものであり、熱収縮前から所定時間までの熱収縮速度(mm/秒)の最大値を測定することについて、何ら意図されていなかった。
そのため、熱収縮前から所定時間までの熱収縮速度の最大値に換算した場合、非常に小さい範囲について限定されたものであった。
【0011】
そこで、本発明の発明者らは、モーションキャプチャーを用い、所定工程(a)~(e)を経て、主収縮方向等における熱収縮率を測定し、その値を制御することにより、熱収縮特性を迅速かつ精度良く測定できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、簡易な方法として、所定のモーションキャプチャーを用いて、迅速かつ精度の良いポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、モーションキャプチャーを用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法であって、下記工程(a)~(e)を有することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法が提供され、上述した課題を解決することができる。
工程(a):被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向において、2つの測定位置を設定し、当該2つの測定位置の間隔をL1として、測定する工程。
工程(b):2つの測定位置に、それぞれ、所定マーカーを設ける工程。
工程(c):ポリエステル系シュリンクフィルムを、所定熱収縮条件として、所定温度かつ所定時間加熱して、熱収縮させる工程。
工程(d):熱収縮後の所定間隔の距離を、L´1として、モーションキャプチャーを用いて測定する工程。
工程(e):下記式(1)に基づいて、ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率を、TD方向の熱収縮率として算出する工程。
【0013】
【0014】
すなわち、所定工程(a)~(e)を経て、所定位置での熱収縮率を、モーションキャプチャーを用いて測定することにより、簡易な方法で、かつ、バラツキが少ない熱収縮率を迅速かつ精度良く測定することができる。
【0015】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(a)の2つの測定位置の間隔を、複数設定し、工程(d)~(e)で、複数のTD方向の熱収縮を算出し、その平均値を、TD方向の熱収縮率とすることが好ましい。
このように、複数のTD方向の熱収縮を算出することによって、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができる。
【0016】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、モーションキャプチャーを、画像式のモーションキャプチャーとし、熱収縮前後の所定マーカーの位置に基づいて、TD方向の熱収縮率として算出することが好ましい。
このように、各種タイプがあるモーションキャプチャーの中から、画像式のモーションキャプチャーを選択使用することによって、所定マーカーの位置を効率的に算出して、熱収縮率を迅速かつ精度良く測定することができる。
【0017】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(b)において、カメラを備えておき、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮状態を、併せて観察することが好ましい。
このように、カメラ画像を併せて記録することによって、TD方向の熱収縮の状態を確認することができ、ひいては、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができる。
【0018】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(c)の熱収縮温度を50~98℃の範囲内の値とし、かつ、熱収縮時間を1~60秒の範囲内の値とすることが好ましい。
このような熱収縮条件とすることによって、ポリエステル系シュリンクフィルムを実使用する際の熱収縮特性と比較することができる。
【0019】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(c)の熱収縮場所を、恒温槽、蒸気槽、温水槽、含フッ素液体槽、赤外線照射装置、の少なくとも一つとすることが好ましい。
このような各種の熱収縮場所とすることによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの用途等に応じて、より迅速かつ精度良く、更に簡易的に熱収縮率を測定することができる。
【0020】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(d)において、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率を、MD方向の熱収縮率として、TD方向の熱収縮率の測定と同時に、モーションキャプチャーを用いて測定することが好ましい。
このように、モーションキャプチャーを用いてMD方向の熱収縮率も同時に測定することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの用途等に応じて、ポリエステル系シュリンクフィルムを実使用する際の熱収縮特性と比較することができる。
【0021】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を実施するに当たり、工程(e)の後に、工程(f)として、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向における、熱収縮温度及び熱収縮時間と、TD方向の熱収縮率との関係を示す検量線を予め作成しておき、その検量線と、式(1)に基づいて得られた熱収縮率とを、比較検証する工程を含むことが好ましい。
このように、予め作成した検量線と比較検証することによって、より迅速かつ精度良く、更に再現性良く熱収縮率を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルムの形態を説明するための図である。
図2(a)~(c)は、モーションキャプチャー等を用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を説明するための図である。
図3(a)~(b)は、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮に伴う、所定マーカーの位置移動を説明するための図である。
図4(a)~(b)は、モーションキャプチャー等を用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮速度の測定方法を説明するために供する図である。
図5(a)~(c)は、モーションキャプチャーを用いた熱収縮速度の測定において使用される固定治具の構成例を説明するために供する図である。
図6(a)~(b)は、熱収縮速度及び熱収縮率速度等を説明するために供する図である。
図7は、実施例1~2及び比較例2~3のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する所定区間の距離変化(mm)の関係を説明するために供する図である。
図8(a)~(b)は、実施例1~2のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図8(c)は、時間に対する熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図9(a)~(b)は、比較例2~3のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図9(c)は、時間に対する熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図10(a)は、実施例1のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する中間熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図10(b)は、時間に対する中間熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図11(a)は、実施例2のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する中間熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図11(b)は、時間に対する中間熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図12(a)は、比較例2のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する中間熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図12(b)は、時間に対する中間熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図13(a)は、比較例3のポリエステル系シュリンクフィルムにおける、時間(秒)に対する中間熱収縮速度(mm/秒)の関係を説明するために供する図であり、
図13(b)は、時間に対する中間熱収縮率速度(%/秒)の関係を説明するために供する図である。
図14(a)は、ロール状のポリエステル系シュリンクフィルムから、TD方向に沿って採取した複数の測定サンプル(W,C,E)を説明するための図であり、
図14(b)は、測定サンプル(W,C,E)の一つに、モーションキャプチャーを取り付けた状態を説明するために供する図である。
図15は、実施例1(ラインA)及び比較例1(ラインB)において、それぞれ95℃の温水に、1~20秒浸漬した場合の浸漬時間と、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)と、の関係を説明するために供する図である。
図16は、95℃の温水に、20秒間浸漬した場合の、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(μm)と、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)と、の関係を説明するために供する図である。
図17(a)は、実施例1に相当し、シワが発生していない場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、
図17(b)~(d)は、
図17(a)に示された外観の領域P、Q、Rをそれぞれ拡大させた図である。
図18(a)は、比較例1に相当し、シワが発生した場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、
図18(b)~(d)は、
図18(a)に示された外観の領域S、T、Uをそれぞれ拡大させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1に例示するように、モーションキャプチャーを用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法であって、下記工程(a)~(e)を有することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法である。
工程(a):被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向において、2つの測定位置を設定し、当該2つの測定位置の間隔をL1として、測定する工程。
工程(b):2つの測定位置に、それぞれ、所定マーカーを設ける工程。
工程(c):ポリエステル系シュリンクフィルムを、所定熱収縮条件としての温度かつ時間、加熱して、熱収縮させる工程。
工程(d):熱収縮後の2つの測定位置の間隔をL´1として、モーションキャプチャーを用いて測定する工程。
工程(e):下記式(1)に基づいて、ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率を算出する工程。
【0024】
【0025】
以下、適宜、図面を参照しながら、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの構成に分けて、具体的に各種パラメータ等を説明する。
【0026】
1.ポリエステル系シュリンクフィルム
(1)ポリエステル樹脂
基本的に、ポリエステル樹脂の種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
【0027】
(2)構成
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01~10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1~1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0028】
又、
図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたとときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1~10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0029】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0030】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、
図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
係る収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0031】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1~3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
又、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0032】
2.工程(a)
工程(a)は、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムを準備し、その主収縮方向において、2つの測定位置を設定し、当該2つの測定位置の間隔をL1として、測定する工程である。
すなわち、まずは、原材料として、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した結晶性ポリエステル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0033】
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
そして、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度260℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、10~100μm)の原反シートを得ることができる。
【0034】
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成することが好ましい。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
なお、この段階で、ポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズやガラス転移点、或いは、各種熱特性を予め測定しておくことが好ましいと言える。
【0035】
次いで、
図3(a)に示すように、熱収縮させる前のポリエステル系シュリンクフィルム10の主収縮方向であるTD方向において、2つの測定位置(P1及びP2)を設定する工程を実施することが好ましい。
そして、熱収縮させる前の、TD方向における2つの測定位置(P1及びP2)の直線距離である間隔を、L1とする。
【0036】
又、2つの測定位置の間隔L1(mm)の値しては、ポリエステル系シュリンクフィルムの大きさやモーションキャプチャーの種類等により適宜選択することが好ましいが、例えば、3~300mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような間隔であれば、フィルムの収縮前と収縮後の間隔の違いが明確に認識でき、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができるためである。
従って、測定位置の間隔L1(mm)を5~100mmの範囲内の値とすることがより好ましく、8~30mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0037】
又、2つの測定位置(P1及びP2)は、ポリエステル系シュリンクフィルムの平面形状を短冊状(長方形)又は正方形状としたとき、その両端部をフリーとすべく、その端部から、通常、5mm以上の箇所に設けてあることが好ましい。
その際、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが所定範囲内の値であることを確認することが好ましい。
【0038】
又、測定位置は、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムの挙動を測定するために、ポリエステル系シュリンクフィルム上に設けた座標の位置情報を示す部分である。
すなわち、
図4(a)~(b)に示すように、2つの測定位置の間の所定区間Mとして、点、線、バツ印、丸印、矢印、L字、T字、チェックマーク等の所定マーカー15が記されていることが好ましい。
この理由は、このような構成とすることにより、周囲から、ポリエステル系シュリンクフィルムが収縮する様子を、容易に視認できるためである。
【0039】
又、
図3(a)に示すように、主収縮方向と直交する方向であるMD方向において、上述した2つの測定位置(P1及びP2)とは別の2つの測定位置(P3及びP4)を設定する工程を実施することが好ましい。
そして、熱収縮させる前の、MD方向における2つの測定位置(P3及びP4)の直線距離である間隔を、L2とすることが好ましい。
ここで、MD方向における2つの測定位置(P3及びP4)は、ポリエステル系シュリンクフィルムの平面形状を短冊状(長方形)又は正方形状としたとき、TD方向における測定位置と同様に、その端部から、通常、5mm以上の箇所に設けてあることが好ましい。
【0040】
3.工程(b)
工程(b)は、
図4に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの2つの測定位置(P1及びP2)に、それぞれ、所定マーカーを設ける工程である。
すなわち、画像式のモーションキャプチャーを用いる場合に、所定マーカーとして、例えば、油性マーカー、金属線、溝等を入れて、係る所定マーカーの位置を光学カメラで撮影することが好ましい。
次いで、撮影した動画のデータから、画素数を読み取ることにより、実測との関係に基づいて、2つの測定位置の間隔を取得することが好ましい。
従って、各種タイプがあるモーションキャプチャーの中から、画像式のモーションキャプチャーを選択使用することによって、所定マーカーの位置を効率的に算出して、熱収縮率を迅速かつ精度良く測定することができる。
一方、慣性式のモーションキャプチャーを用いる場合に、所定マーカーとして、慣性マーカーを取り付けることが好ましい。
すなわち、加速度計や角速度計等を含むIMU(モーションキャプチャーの主要部)が、慣性マーカーからの加速度情報等をより効率的かつ精度良く取得することができ、ひいては、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができる。
【0041】
なお、
図4のように、TD方向に沿って、3か所(W、C、E)から、複数の測定試料を切り出す場合、それぞれの測定試料の2つの測定位置に、それぞれ、慣性マーカーを取り付ける必要がある。
そして、
図4のように、TD方向に沿って、3か所(W、C、E)から、それぞれ測定試料を切り出し、複数サンプルとする場合、それぞれの測定試料(W、C、E)の2つの測定位置に、所定マーカーを設けて、測定することが好ましい。
【0042】
ここで、
図4に示す慣性センサー14´は、長軸センサーと、それに等間隔で、90°に交差する数本の短軸センサーとの組合わせであって、いずれかの位置に、所定間隔でもって、少なくとも2つの測定点が設けてあることが好ましい。
但し、慣性センサー14´は、これらの組み合わせの形態に限らず、平面形状が、円、三角、四角、多角形、或いは異形の少なくとも一つであることも好ましい。
更に言えば、少なくとも2つの測定点につき、より迅速かつ精度良くセンシングできるように、金属製マーカーや、金属材料を含む塗料等の印刷物から構成してあることが好ましい。
【0043】
4.工程(c)
工程(c)は、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムを、熱収縮装置を用い、熱収縮条件として、所定温度かつ所定時間加熱して、熱収縮させる工程である。
ここで、熱収縮装置を、恒温槽(オーブン)、蒸気槽、温水槽、熱風ヒーター、含フッ素化合物の液体槽、含フッ素化合物の蒸気槽、及び赤外線照射装置の少なくとも一つとすることが好ましい。
この理由は、モーションキャプチャーを用いた場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの用途等に応じて、このような各種の熱収縮装置を用いることができ、ひいては、より簡易かつ精度良く熱収縮率を測定することができるためである。
【0044】
又、一例として、熱収縮装置を、温水槽とすることが好ましい。
この理由は、このような熱収縮装置を用いることにより、温水の温度を一定に保つことが容易であり、熱収縮温度の制御を、より精密に行うことができるためである。
更に、温水槽とすることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを浮かべて、平面的に、均一に加熱することができるようになり、熱収縮の際のポリエステル系シュリンクフィルムの挙動を、上方から光学カメラ等でより容易に捕捉することができるためである。
【0045】
更に、別の例として、熱収縮装置を熱風ヒーターとすることが好ましい。
すなわち、熱風ヒーターとして、圧縮空気ポンプやファン等によって供給された空気を、電熱線やオイルヒーター等の熱源を介して、対象物に対して吹き出す装置を用いることが好ましい。
具体的には、例えば、熱収縮装置は、ベルトコンベアや載置台に平面的に置かれたポリエステル系シュリンクフィルムに対して、当該ポリエステル系シュリンクフィルムの鉛直上方から熱風を吹き付けて、熱収縮させる構成であることが好ましい。
この理由は、このような熱収縮装置を用いることにより、装置の配置場所の自由度が高くなり、ポリエステル系シュリンクフィルムの製造装置の上方に配置でき、切り落とした端部等に熱風を吹きかけて、インラインで、より容易に熱収縮速度を測定できるためである。
従って、このように熱風ヒーターを使用する場合に、熱風の熱量を効果的にポリエステル系シュリンクフィルムに伝える観点から、ポリエステル系シュリンクフィルムが、ステンレス、アルミ、ガラス等からなるトンネル形状の筐体内で、熱風を受ける構成とすることが好ましい。
【0046】
具体的には、
図2(a)~(c)に示すように、例えば、ヒーター22aによって、所定温度に保持された湯22が収容されてなる温水槽20を準備し、熱収縮温度:70~98℃、収縮時間:1~60秒の条件で温水に浸漬させ、ポリエステル系シュリンクフィルムを、TD方向に、熱収縮させることが好ましい。
その際、
図2(b)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムが均一に浸漬されて、加熱されるように、例えば、ステンレス製ワイヤー等から形成されてなるメッシュ状の固定治具12を準備し、その内部に、ポリエステル系シュリンクフィルム10を部分的に収容することが好ましい。
しかも、ポリエステル系シュリンクフィルム10が厚さ方向に伸長等しないようにして、モーションキャプチャー等を用いて収縮率が測定できるように、測定点P1、P2に該当する箇所に対応させて、固定治具12において、所定の大きさの開口部12´が設けてあることが好ましい。
【0047】
又、ポリエステル系シュリンクフィルムが、更に所定時間均一に浸漬されて加熱されるように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の両端部に、固定治具12を介して、少なくとも2本の線状物26が取り付けてあることが好ましい。
すなわち、これら線状物26としてのワイヤー等が更に、リフター24に繋がっており、当該リフター24が、線状物26を巻き上げたり、巻き戻したりして、ポリエステル系シュリンクフィルム10の水平方向を維持しながら、一定速度で、上下動可能な構成とすることが好ましい。
【0048】
又、ポリエステル系シュリンクフィルムを熱収縮させる工程としては、温度ムラの発生を防止する観点から、
図2(b)に例示すように、ポリエステル系シュリンクフィルム10を、温水槽20の温水中に浸漬させて熱収縮させることが好ましい。
一方、より迅速かつ簡易的に測定する観点から、
図2(a)及び(c)に示すように、温水槽20において、ポリエステル系シュリンクフィルム10を、所定温度に保持された湯22の水面上に浮かべて、熱収縮させることも好ましい。
【0049】
又、ポリエステル系シュリンクフィルムを熱収縮させるにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮を妨げずに、ポリエステル系シュリンクフィルムの姿勢を保持するフレーム状の固定治具を使用することが好ましい。
すなわち、
図5(a)~(c)に例示するように、固定治具12は、フレーム部材から構成され、少なくともポリエステル系シュリンクフィルムを載置して保持する載置部13aと、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮方向を制御するガイド部13bと、熱収縮時のズレを防ぐ規制部13cとを有していることが好ましい。
更に、固定治具12は、より取り扱い性を高める観点から、少なくとも、載置部13aの主収縮方向の端部に配置されており、斜め上方に突出した取っ手部13dを設けてあることが好ましい。
具体的には、固定治具は、ステンレス、鉄、アルミ、銅等の金属ワイヤーや樹脂等のフレーム部材から構成されていることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを安定して載置できるとともに、熱収縮時のブレを低減して、熱収縮速度を、より精度良く測定することができるためである。
【0050】
又、載置部は、取り扱いの容易さやポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱させる観点から、事実上平坦なフレーム状の部位であり、鉛直上方から平面視した場合に、少なくとも主収縮方向に沿って平行な2本のレール状の部位であることが好ましい。
更に、ガイド部は、鉛直上方から平面視した場合に、載置部と平行に配置されており、鉛直方向上下に波状に湾曲した部位であることが好ましい。
加えて、規制部は、主収縮方向とは垂直な方向に、ガイド部を橋渡しするように配置され、ガイド部のフレームに沿って上下可能に設けた部位であって、載置部に載せたポリエステル系シュリンクフィルムを、載置部と、規制部とで挟持する部位である。
この理由は、このように構成することにより、熱収縮の際に、ポリエステル系シュリンクフィルムの位置ズレを防ぐとともに、収縮の中心位置を安定させて、モーションキャプチャーにより、精度良く熱収縮速度を測定することができるためである。
そして、ガイド部を波状に湾曲させることで、例えば、熱収縮の際に、熱収縮装置として、温水槽を使用した場合に、波を立てずに着水させることができ、ガイド部の高さを、水位と合わせることで、水槽の底に置いて、測定することができるようになるためである。
【0051】
5.工程(d)
工程(d)は、
図3(b)に示すように、熱収縮後のポリエステル系シュリンクフィルム10´のTD方向における2つの測定位置(P1´及びP2´)の間隔を、第2の距離として測定する工程である。
すなわち、
図3(b)及び
図4に示すように、所定のモーションキャプチャー14を準備し、当該モーションキャプチャー14を用いて、所定条件で熱収縮させてなるポリエステル系シュリンクフィルムについて、TD方向における2つの測定位置の間隔を、L´1(第2の距離と称する場合もある。)として、測定することが好ましい。
一方、係るポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮前、或いは、熱収縮中の、2つの測定位置の間隔を、モーションキャプチャー等を用いて連続的(例えば、時間間隔0.01~1秒毎)に測定することも好ましい。
【0052】
又、
図3(b)に示すように、MD方向における2つの測定位置(P3´及びP4´)の間隔を、第2´の距離として、モーションキャプチャーを用いた測定工程を実施することが好ましい。
そして、熱収縮後の、MD方向における2つの測定位置(P3´及びP4´)の直線距離である間隔を、L´2とする。
すなわち、TD方向における第2の距離の測定と同様に、MD方向における第2´の距離を測定することが好ましい。
【0053】
ポリエステル系シュリンクフィルムにおける測定位置の間隔は、モーションキャプチャーによる、測定位置の位置情報に基づいて算出されてなることが好ましい。
この理由は、このようなモーションキャプチャーを使用することにより、フィルム上の測定位置の間隔を、デジタルデータとして、迅速かつ精度良く取得することができるためである。
ここで、モーションキャプチャーとは、測定対象の動きをデジタルデータにする技術であり、主に、測定対象となる所定マーカーの位置を追跡して、座標データとして記録する技術である。
【0054】
具体的には、モーションキャプチャーの種類としては、特に限定されないものの、画像式モーションキャプチャー、慣性式モーションキャプチャー、光学式モーションキャプチャー、或いは、これらの組み合わせとしてのモーションキャプチャーがあって、いずれのモーションキャプチャーを用いることができる。
但し、ポリエステル系シュリンクフィルムの場合、温水浸漬等によって加熱処理することから、場所的制限が多いという条件下、小型化や簡易化装置としやすいことから、画像式や慣性式のモーションキャプチャーを用いることがより好ましいと言える。
【0055】
ここで、単一のモーションキャプチャーを用いた場合、二次元的な測定点から熱収縮率を測定し、算出することができるが、複数のモーションキャプチャーを用いた場合には、三次元的な測定点の位置関係を測定し、それから熱収縮率を測定し、算出することができるという利点がある。
例えば、熱収縮装置として、平板状のホットプレートを用いた場合であって、それを水平方向のみならず、重力方向に沿って、傾斜させたり、或いは、重力方向と平行になるように垂直方向に配置したような場合であっても、熱収縮率を、三次元的に容易かつ迅速に測定することができる。
よって、単一又は複数のモーションキャプチャーを用いた場合、各種熱収縮装置を使用できることから、ポリエステル系シュリンクフィルムの用途等に応じて、熱収縮率の測定を、より迅速かつ精度良く、更に簡易的に行うことができる。
【0056】
より具体的には、
図2(a)に示すように、画像式のモーションキャプチャー14としての光学カメラを使用して、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルム10の熱収縮時の動画を撮影し、取得したデータを画像解析することにより、熱収縮率を測定することが好ましい。
すなわち、ポリエステル系シュリンクフィルム上に、予め油性マーカー等の所定マーカーによって、間隔L1で複数のメモリ(例えば、2~30本)を設けた構成であることが好ましい。
次いで、ポリエステル系シュリンクフィルムを平面上に載置し、光学カメラにより、鉛直上方から、熱収縮前後の動画を撮影する構成であることが好ましい。
更に、撮影した動画のデータから、画素数と、実測との関係から、熱収縮前の各メモリの間隔を、それぞれ算出して、その平均値を熱収縮率とする構成であることが好ましい。
具体的には、例えば、左右にメモリが並ぶような態様において、それぞれのメモリと交差するように、水平の仮想線を引き、メモリと、仮想線とが交わる点を測定位置とすることが好ましい。
この理由は、動画のデータとして、熱収縮状態を連続的に記録することによって、より迅速かつ精度良く、更に効率的にTD方向の熱収縮率を測定することができるためである。
そして、このように記録することで、場所的制限が多いような場合であっても、装置をより小型化及び簡易化することができ、熱収縮率をより効率的に測定することができるためである。
なお、所定マーカーの種類としては、光学カメラから視認されやすい態様であれば良いが、例えば、油性マーカー、溝等から構成されていることが好ましい。
【0057】
又、モーションキャプチャーは、ポリエステル系シュリンクフィルムに取り付けた慣性センサーから得た加速度、角速度、方位の情報を、IMU等の装置によって得て、マーカーの位置(重心等)を正確に特定できる慣性式位置測定装置の構成であることが好ましい。
すなわち、加速度計及び角速度計(ジャイロセンサー)の組み合わせ、更には、これらと、地磁気計とを組み合わせた9軸の慣性センサーを備えた慣性式のモーションキャプチャーであることが好ましい。
【0058】
一方、モーションキャプチャーとして、光学式モーションキャプチャーを用いることも好ましい。
すなわち、モーションキャプチャーから、赤外線等の放射線を光学マーカー(再帰性マーカー等)に向かって照射し、その反射光を検知する方式の光学式位置測定装置の一種であることが好ましい。
そして、係るモーションキャプチャーは、得られた反射光をもとに、所定の画像処理を行い、マーカーの位置(重心等)を二次元的に特定することができ、更には、複数のモーションキャプチャーを併用することによって、三次元的な位置特定が可能な測定装置である。
【0059】
又、
図2(b)~(c)に示すように、慣性式のモーションキャプチャー14とともに、所定の光学カメラ14a、14bを併用して、ポリエステル系シュリンクフィルム10の熱収縮状態を、併せて撮影し、それを画像データとして、熱収縮率を測定する上で、参考とすることが好ましい。
この理由は、このようにカメラ画像を併せて、熱収縮状態を連続的に記録することによって、TD方向の熱収縮の状態を、画像データとして確認することができ、ひいては、より効率的かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができるためである。
より具体的には、単数又は複数の光学カメラを準備し、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮状態を、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムの正面、側面、上面、背面、或いは、斜め方向から画像データを撮影することが好ましい。
【0060】
6.工程(e)
工程(e)は、式(1)に基づいて、ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向の熱収縮率を、TD方向の熱収縮率として算出する工程である。
すなわち、得られたL1及びL2から、式(1)に基づいて、TD方向の熱収縮率を算出することが好ましい。
【0061】
又、TD方向の熱収縮率を算出する際に、2つの測定位置の間隔を、複数個所設定して、かつ、複数個所のTD方向の熱収縮を算出し、その平均値を、TD方向の熱収縮率とすることが好ましい。
すなわち、同一フィルムのそれぞれ異なる複数箇所(例えば、n=3~30箇所)を選定し、測定された熱収縮率(温度:70~98℃、時間:1~60秒)の平均値を、TD方向の熱収縮率とすることが好ましい。
この理由は、複数個所のTD方向の熱収縮を算出とすることによって、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を測定することができるためである。
従って、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向において、少なくとも4~20箇所の測定位置を選定することがより好ましく、5~10箇所の測定位置を選定することが更に好ましい。
【0062】
ここで、
図5に言及して、実施例2及び比較例1において、それぞれ95℃の温水に浸漬した場合の浸漬時間と、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)と、の関係を説明する。
すなわち、
図5の横軸には、浸漬時間(秒)が採って示してあり、縦軸には、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)が採って示してある。
実施例2の特性曲線(ラインA)の場合、浸漬時間が約1秒であれば、20秒経過した値と比較しても、ほぼ同等の熱収縮率(%)が得られている。
【0063】
それに対し、比較例1の特性曲線(ラインB)の場合、浸漬時間が1秒の場合の熱収縮率(%)と、20秒浸漬した場合の熱収縮率を比較すると、浸漬時間が長いほど、熱収縮率(%)が大きくなる傾向が得られている。
従って、用いるPET樹脂や、それから得られるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さや熱的特性、更には、製造条件等を考慮して、浸漬時間を定めることが好ましいと言える。
【0064】
更に、
図6に言及して、95℃の温水に、20秒間浸漬した場合の、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(μm)と、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)と、の関係を説明する。
すなわち、
図6の横軸には、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(μm)が採って示してあり、縦軸には、モーションキャプチャーを用いて測定されたTD方向の熱収縮率(%)が採って示してある。
【0065】
よって、係る特性曲線(ラインC)の場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(μm)が厚いほど、低い熱収縮率(%)が得られていて、所定の相関関係(線形関係)があることが理解される。
従って、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さや熱的特性を考慮して、熱収縮率(%)を調整することが好ましいと言える。
【0066】
7.工程(f)
工程(f)を設け、検量線と比較しながら、得られた所定熱収縮率(温度:70~98℃、時間:1~60秒)が、所定値以上(例えば、20%以上)であることを確認することが好ましい。
すなわち、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さと、モーションキャプチャーを用いて測定された熱収縮率との関係を示す予め作成してある検量線に対して、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さと、熱収縮率との値が、それぞれ一致することを確認することが好ましい。
逆に言えば、熱収縮率が20%を下回ったような場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを薄くしたり、或いは、ポリエステル系シュリンクフィルムの原材料や、製造条件を変えて、所定熱収縮率が所定範囲内となるように調整することが好ましい。
従って、所定熱収縮率(温度:70~98℃、時間:1~60秒)が30~95%未満の値であることを確認することが好ましく、40~90%未満の範囲内の値であることを確認することが好ましく、50~85%未満の値であることを確認することが更に好ましい。
【0067】
より具体的には、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、温度95℃、1秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A1が、30~95%未満の範囲内の値となるように調整することが好ましい。
この理由は、係る95℃熱収縮率A1を30~95%未満に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好なシワ特性が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、95℃熱収縮率A1が、40~90%未満の範囲内の値となるように調整することがより好ましく、50~85%未満の範囲内の値となるように調整することが更に好ましい。
【0068】
又、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、温度95℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A´1が、60~95%未満の範囲内となるように調整することが好ましい。
この理由は、係る95℃熱収縮率A´1を60~95%未満に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好なシワ特性が得られ、ひいては最大収縮応力もえられやすくなるためである。
従って、95℃熱収縮率A´1が、65~90%未満の範囲内の値となるように調整することがより好ましく、70~85%未満の範囲内の値となるように調整することが更に好ましい。
【0069】
又、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムは、構成(a2)として、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、温度80℃、1秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A2を10~80%未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、係る80℃熱収縮率A2を所定の範囲内とすることにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、更に良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、構成(a2)として、80℃熱収縮率A2を15~70%未満の範囲内の値とすることがより好ましく、20~50%未満の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0070】
又、被測定物としてのポリエステル系シュリンクフィルムは、構成(a´2)として、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、温度80℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A´2を10~85%未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、係る80℃熱収縮率A´2を所定の範囲内とすることにより、更に良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、構成(a´2)として、80℃熱収縮率A´2を20~75%未満の範囲内の値とすることがより好ましく、30~65%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0071】
又、熱収縮前の2点間距離であるL2、及び、熱収縮後の2点間距離であるL´2から、TD方向の熱収縮率と同様に、MD方向の熱収縮率を算出して、係るMD方向の熱収縮率を調整する工程を実施することが好ましい。
そして、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける、MD方向の熱収縮率が、-5~5%の範囲内の値になるように調整することが好ましい。
この理由は、このようにMD方向の熱収縮率も同時に調整することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの用途等に応じて、ポリエステル系シュリンクフィルムを実使用する際の熱収縮特性をより容易に制御することができるためである。
【0072】
又、所定調整工程として、熱収縮率の標準偏差(温度:70~98℃、時間:1~60秒)を調整する工程を有することが好ましい。
より具体的には、TD方向の熱収縮率を算出する際に、所定温度、所定時間で、TD方向の熱収縮率における標準偏差(σ1)が15%以内となるように調整することが好ましい。
すなわち、TD方向の熱収縮率の標準偏差が15%を超えたような場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを薄くしたり、或いは、ポリエステル系シュリンクフィルムの原材料や、製造条件を変えて、熱収縮率の標準偏差が所定範囲内となるように調整することが好ましい。
この理由は、このように熱収縮率の標準偏差を調整することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率を、より精度良く制御することができるためである。
従って、TD方向の熱収縮率における標準偏差が10%以内の値となるように調整することがより好ましく、5%以内の値となるように調整することが更に好ましい。
【0073】
又、モーションキャプチャーを用いて測定される熱収縮率は、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さに影響される場合があることが判明している。
すなわち、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10~200μmの範囲とするとともに、当該厚さの最大値と、厚さの平均値との差(以降、厚さのバラツキと称する場合がある。)が10μm以内の値となるように調整することが好ましい。
この理由は、係るポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ及び厚さのバラツキを制御することによって、TD方向の熱収縮率も制御しやすくなり、ひいては、より迅速かつ精度良くTD方向の熱収縮率を制御することができるためである。
但し、係る厚さのバラツキが過度に小さくなると、製造上の歩留まりが極端に低くなり、経済的に不利益となる場合がある。
従って、厚さのバラツキが、0.01~5μmの範囲内の値となるように調整することがより好ましく、0.1~3μmの範囲内の値となるように調整することが更に好ましい。
【0074】
又、モーションキャプチャーを用いて熱収縮率を測定するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズ値が、画像の読み取り精度等に影響する場合がある。
すなわち、熱収縮率の測定にあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を7%以下の値とするように調整することが好ましい。
一方、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
従って、熱収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1~5%の範囲内の値に調整することがより好ましく、0.5~3%の範囲内の値に調整することが更に好ましい。
【0075】
8.他の熱的特性の調整工程
(1)熱収縮速度
又、他の熱的特性の調整工程として、以下の熱収縮速度等の熱的特性を調整する工程を含むことが好ましい。
具体的には、ポリエステル系シュリンクフィルムは、所定温度T、所定時間t1で、主収縮方向に沿って熱収縮させた場合に、モーションキャプチャーによる所定区間の距離情報と、測定時間との間の所定の相関関係を利用し、式(2)に基づいて算出された熱収縮速度の最大値を所定の範囲に調整することが好ましい。
すなわち、
図6(a)に示すように、熱収縮前における、モーションキャプチャーによって測定された所定区間の距離をPL0とし、所定時間t1より短い所定時間t2における、モーションキャプチャーによって測定された所定区間の距離をPL1とし、式(2)に基づいて算出することができる熱収縮速度の最大値を3mm/秒以上とすることが好ましい。
【0076】
【0077】
この理由は、このような熱収縮速度の最大値とすることによって、ポリエステル系シュリンクフィルムが最も大きく変化する際の変化量と、時間とのバランスを精度良く調整でき、ポリエステル系シュリンクフィルムを対象物に使用した場合のシワ等の発生を効果的に防止することができるためである。
従って、熱収縮速度の最大値を3.5mm/秒以上とすることがより好ましく、4mm/秒以上とすることが更に好ましい。
なお、熱収縮前における所定区間の距離PL0としては、L1等と同様の距離とすることが好ましい。
【0078】
ここで、
図7に言及し、時間(秒)と、所定区間の距離変化(mm)との関係について説明する。
すなわち、後述の実施例1~2と、比較例2~3について、時間(秒)を横軸とし、主収縮方向に沿って、10mmの距離で6箇所設けた所定区間の距離変化(mm)の最大値を縦軸として、0.1秒間隔で測定し、グラフ化した。
係るグラフによれば、実施例1と、実施例2とは、0~2秒の間に、一様に増加しており、その後も緩やかに増加が続くことが理解できる。
そして、比較例2は、0~1秒の間に、所定区間の距離変化が低下する部分があることが理解できる。
一方、比較例3は、0~1秒の間に、所定区間の距離変化が、緩やかに増加しており、1~2秒の間で急激に上昇し、その後、小幅に低下していることが理解できる。
更に、比較例3は、熱収縮開始から、1秒経過時点では、他の関係曲線の1/3~1/2程度であることが理解できる。
【0079】
又、
図8(a)~(b)及び
図9(a)~(b)に言及し、時間(秒)と、熱収縮速度(mm/秒)及び熱収縮率速度(%/秒)との関係について説明する。
具体的には、後述の実施例1~2及び比較例1~2について、時間(秒)を横軸とし、主収縮方向に沿って、10mm間隔で6箇所設けた所定区間のうち、熱収縮速度(mm/秒)の最大値が、最も小さいものについて、その熱収縮速度を縦軸として、0.1秒間隔でグラフ化した。
係る
図8(a)~(b)によれば、実施例1と、実施例2とは、熱収縮速度が、熱収縮開始直後から、比較的安定して増加し、1秒経過する頃には、3mm/秒を超えて、1~2秒の間に3mm/秒以下に減少していることが理解できる。
一方、
図9(a)~(b)によれば、比較例2と、比較例3とは、熱収縮速度が、熱収縮開始直後にはそれほど増加せずに、熱収縮開始時点から、1秒経過しても3mm/秒を超えていないことが理解できる。
なお、係る
図8(c)及び
図9(c)の場合においては、1mm/秒の熱収縮速度が、10%/秒の熱収縮率速度に相当している。
【0080】
(2)熱収縮率速度
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、
図6(a)に示すように、下式(3)に基づいて算出される主収縮方向の熱収縮率速度の最大値を30%/秒以上とすることが好ましい。
【0081】
【0082】
この理由は、このような熱収縮率速度とすることによって、ポリエステル系シュリンクフィルムが最も大きく変化する際の変化量と、時間とのバランスを精度良く調整でき、ポリエステル系シュリンクフィルムを対象物に使用した場合のシワ等の発生を効果的に防止することができるためである。
更に、熱収縮率に関する変化量を測定することによって、所定区間の距離に依存せずに、ポリエステル系シュリンクフィルムの評価を行うことができるためである。
従って、熱収縮速度の最大値を3.5%/秒以上とすることがより好ましく、4%/秒以上とすることが更に好ましい。
【0083】
(3)熱収縮率速度の最大値についての標準偏差
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、所定区間を複数設けて、各所定区間について熱収縮開始時点から所定時間t1までの熱収縮率速度を、0.1秒毎に求めた場合に、所定区間毎の熱収縮速度の最大値における標準偏差を3.5mm/秒以下とすることが好ましい。
この理由は、このような標準偏差とすることにより、熱収縮時の時間毎の収縮割合を精度良く調整でき、より熱収縮時の挙動が安定するためである。
従って、熱収縮速度の最大値についての標準偏差を、1mm/秒以下とすることがより好ましく、0.3mm/秒以下とすることが更に好ましい。
なお、標準偏差は、偏差の二乗の合計を、データ数-1で割った値に対する平方根である。
【0084】
(4)所定期間における熱収縮速度(中間熱収縮速度)
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、
図6(b)に示すように、長手方向又は幅方向の少なくとも一方に収縮可能な状態のポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向に沿って所定区間を設け、所定温度T、所定時間t1で、熱収縮させた場合における、熱収縮前における所定区間の距離PL0と、所定時間t1より短い所定時間t2における所定区間の距離PL1と、所定時間t1より短く所定時間t2よりも長い所定時間t3における所定区間の距離PL2との間の距離変化から、下式(4)に基づいて算出される所定期間における主収縮方向の熱収縮速度(以降、中間熱収縮速度と称する場合がある。)を20mm/秒以下とすることが好ましい。
【0085】
【0086】
この理由は、このような中間熱収縮速度とすることにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムの所定区間の距離変化と、モーションキャプチャー等による位置情報と、の間の所定の相関関係を利用することができる。ひいては、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける熱収縮速度を所定範囲内の値に調整し、安定的に、優れた熱収縮性を発揮できるためである。
従って、測定期間における熱収縮速度を18mm/秒以下とすることがより好ましく、15mm/秒以下とすることが更に好ましい。
なお、中間熱収縮速度は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮方向を正としており、ポリエステル系シュリンクフィルムが、収縮の反動で伸びたような場合や、急速な熱収縮によりフィルムが立体的に歪み、その後平面状に戻るような場合等に負の値とする。
【0087】
又、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、測定期間t3-t2を3秒以内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような測定期間とすることにより、熱収縮時の挙動を、より精度良く測定することができるためである。
従って、測定期間t3-t2を2秒以内の値とすることがより好ましく、1秒以内の値とすることが更に好ましい。
一方、過度に時間分解能を高めることにより、測定誤差等が増えてしまうのを防止する観点から、測定期間t3-t2を0.1秒以上の値とすることが好ましい。
【0088】
又、中間熱収縮速度は、熱収縮時に、常に、正の値となっていることが好ましいが、負の値となってしまうような場合であっても、その値が小さい場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用目的において、問題ないことが分かっている。
そのため、ポリエステル系シュリンクフィルムは、その所定期間における、中間熱収縮速度の最小値を-2.5mm/秒以上に抑えることが好ましい。
このように、ポリエステル系シュリンクフィルムの中間熱収縮速度が負の値となる挙動を抑えることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムとして使用した場合のシワ等を、より効果的に防ぐことができるためである。
従って、中間熱収縮速度の最小値を-1.5mm/秒以上とすることがより好ましく、0mm/秒以上とすることが更に好ましい。
【0089】
ここで、
図10(a)~
図13(a)に言及し、時間(秒)と、中間熱収縮速度(mm/秒)との関係について説明する。
具体的には、後述の実施例1~2、比較例2~3について、時間(秒)を横軸とし、主収縮方向に沿って、10mm間隔で6箇所設けた所定区間のうち、中間熱収縮速度(mm/秒)の最大値が、最も大きいものについて、その中間熱収縮速度を縦軸として、0.1秒間隔でグラフ化した。
係る
図10(a)~
図11(a)によれば、実施例1と、実施例2とは、0~1秒の間で、中間熱収縮速度が最大値に達し、熱収縮開始時点から、1秒を経過する頃には、0mm/秒程度まで減少していることが理解できる。
一方、
図12(a)によれば、比較例2は、0~1秒の間で、中間熱収縮速度が最大値に達するものの、その後の1~2秒の間で、0mm/秒を境として、大きくばらついていることが理解できる。
更に、
図13(a)によれば、比較例3は、0~1秒の間で、5mm/秒以下であり、1秒程度を過ぎたころに、中間熱収縮速度が20mm/秒を超えて増加し、その後、1.1~1.5秒の間に5mm/秒以下に減少していることが理解できる。
なお、係る
図10(b)~
図13(b)の場合においては、1mm/秒の熱収縮速度が、10%/秒の熱収縮率速度に相当している。
【0090】
(5)中間熱収縮速度の最大値についての標準偏差
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、所定区間を複数設けて、各所定区間について熱収縮開始時点から所定時間t1までの熱収縮率速度を、0.1秒毎に求めた場合に、所定区間毎の中間熱収縮速度の最大値における標準偏差を4.5mm/秒以下とすることが好ましい。
この理由は、このような標準偏差とすることにより、熱収縮時の所定時間内における収縮割合を精度良く調整でき、より熱収縮時の挙動が安定するためである。
従って、中間熱収縮速度の最大値についての標準偏差を、3.5mm/秒以下とすることがより好ましく、3mm/秒以下とすることが更に好ましい。
なお、標準偏差は、偏差の二乗の合計を、データ数-1で割った値に対する平方根である。
【0091】
(6)所定期間における熱収縮率速度(中間熱収縮率速度)
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、
図6(b)に示すように、所定温度T、所定時間t1で、熱収縮させた場合における、熱収縮前における所定区間の距離PL0と、所定時間t1より短い所定時間t2における所定区間の距離PL1と、所定時間t1より短く所定時間t2よりも長い所定時間t3における所定区間の距離PL2との間の距離変化から、下式(5)に基づいて算出される主収縮方向の中間熱収縮率速度(以降、中間熱収縮率速度と称する場合がある。)を、200%/秒以下とすることが好ましい。
【0092】
【0093】
この理由は、このような中間熱収縮率速度とすることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの大きさによらず、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮速度を、より精度良く調整することができるためである。
従って、中間熱収縮率速度を、180%/秒以下とすることがより好ましく、150%/秒以下とすることが更に好ましい。
【0094】
一方、短時間に、過度に収縮が小さいことによる不良等を防ぐ観点から、中間熱収縮率速度を60%/秒以上とすることが好ましく、80%/秒以上とすることがより好ましく、90%/秒以上とすることが更に好ましい。
なお、中間熱収縮率速度は、中間熱収縮速度と同様に、常に、正の値となっていることが好ましいが、負の値となってしまうような場合であっても、その値が小さい場合には、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用目的において、問題ないことが分かっている。
【0095】
そのため、ポリエステル系シュリンクフィルムは、その中間熱収縮率速度の最小値を-2.5%/秒以上に抑えることが好ましい。
このように、ポリエステル系シュリンクフィルムの中間熱収縮速度が負の値となる挙動を抑えることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムとして使用した場合のシワ等を、より効果的に防ぐことができるためである。
従って、中間熱収縮速度の最小値を-1.5%/秒とすることがより好ましく、0%/秒以上とすることが更に好ましい。
【0096】
又、熱収縮率速度を算出するにあたり、所定時間t2及びt3を5秒以内とすることが好ましい。
この理由は、このような所定時間とすることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける、熱収縮時の挙動を、より詳細に測定することができるためである。
従って、所定時間t2及びt3を4秒以内とすることがより好ましく、3秒以内とすることが更に好ましい。
【0097】
又、中間熱収縮速度が最大となる時間を1秒以下とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムが、大きく収縮するタイミングを制御でき、より精度良く熱収縮特性を調整できるためである。
従って、中間熱収縮速度が最大となる時間を0.8秒以下とすることがより好ましく、0.6秒以下とすることが更に好ましい。
【0098】
(7)1秒毎の熱収縮率速度の差
又、ポリエステル系シュリンクフィルムは、ポリエステル系シュリンクフィルムの主収縮方向に沿って所定区間を設け、所定温度T、所定時間t1で、主収縮方向に沿って熱収縮させた場合において、熱収縮前における所定区間の距離をPL0とし、所定時間t1より短い所定時間t2における所定区間の距離をPL1とし、所定時間t1より短く所定時間t2よりも長い所定時間t3における所定区間の距離をPL2とし、測定期間t3-t2を1秒として、下式(6)に基づいて算出される1秒毎の熱収縮率速度の差を、通常、所定条件(所定温度T:70~98℃、所定時間t1:5秒超)において、100%/秒以下とすることが好ましい。
【0099】
【0100】
この理由は、このような熱収縮率速度の差とすることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムをより安定して収縮させることができるためである。
従って、熱収縮率速度の差を、80%/秒以下とすることがより好ましく、50%/秒以下とすることが更に好ましい。
【0101】
9.他の検査工程
すなわち、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの外観についての目視検査
2)厚さのバラツキ測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SSカーブによる粘弾性特性測定
6)熱的特性(TD方向、MD方向)
7)熱収縮応力
8)延伸倍率
【0102】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、モーションキャプチャーによる熱収縮率を測定したポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
従って、すなわち、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断する。
次いで、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0103】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
【0104】
よって、TD方向の熱収縮率が20%以上の場合には、
図7(a)~(d)示すように、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
一方、TD方向の熱収縮率が20%を下回ったような場合には、
図8(a)~(d)に示すように、ボトル胴部の上部から下部において、ラベルをボトル周囲の形状に追従させることができない領域が発生し、更にはシワの発生も顕著に観察されることになる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
又、実施例1等において用いたポリエステル系樹脂は、以下の通りである。
【0106】
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール69モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール20モル%,ジエチレングリコール11モル%からなる非結晶性ポリエステル(ガラス転移点:69℃)
【0107】
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール63モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール24モル%,ジエチレングリコール13モル%からなる非結晶性ポリエステル(ガラス転移点:69℃)
【0108】
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール68モル%、ネオペンチルグリコール30モル%、ジエチレングリコール2モル%からなる非結晶性ポリエステル(ガラス転移点:75℃)
【0109】
(PETG4)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール70モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール28モル%,ジエチレングリコール2モル%からなる非結晶性ポリエステル(ガラス転移点:69℃)
【0110】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を100重量部の割合で用いた。
次いで、この原料を絶乾状態にしたのち、押出温度260℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ200μmの原反シートを得た。
【0111】
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予熱温度75℃、延伸温度75℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0112】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1:厚さのバラツキ
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である50μmを基準値)を、マイクロメータを用いて測定し(n=6)、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのバラツキが、3μm以内の値である。
〇:厚さのバラツキが、5μm以内の値である。
△:厚さのバラツキが、10μm以内の値である。
×:厚さのバラツキが、10μmを超える値である。
【0113】
(2)評価2:TD方向の熱収縮率(A1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、95℃の温水に、1秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、
図2(a)に示すように、光学カメラで画像データを撮影しながら、式(1)に準じて、画像式のモーションキャプチャー14によって得られた、加熱処理前後のマーカーの距離変化から、TD方向の熱収縮率(A1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A1)が50~85%未満の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A1)が30~50%未満、又は、85%~90%未満の値である。
△:熱収縮率(A1)が20~30%未満、又は、90%~95%未満の値である。
×:熱収縮率(A1)が20%未満、又は、95%を超えた値である。
【0114】
(3)評価3:TD方向の熱収縮率(A1)の標準偏差(σ1)
評価2で、画像式のモーションキャプチャーを用いて得られた、TD方向の熱収縮率(A1)の値(n=6)から、標準偏差(σ1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A1)の標準偏差が、5%以内である。
〇:熱収縮率(A1)の標準偏差が10%以内である。
△:熱収縮率(A1)の標準偏差が15%以内である。
×:熱収縮率(A1)の標準偏差が20%超である。
【0115】
(4)評価4:TD方向の熱収縮率(A´1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、95℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、加熱処理前後の寸法変化をデータ上で算出し、式(1)に準じて、TD方向の熱収縮率(A´1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A´1)が70~85%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A´1)が65~70%未満、又は、85%~90%未満の値である。
△:熱収縮率(A´1)が60~65%未満、又は、90%~95%未満の値である。
×:熱収縮率(A´1)が60%未満、又は、95%を超えた値である。
【0116】
(5)評価5:ヘイズ
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、JIS K 7136:2000に準拠して、ヘイズ値を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:ヘイズが3%以下の値である。
〇:ヘイズが5%以下の値である。
△:ヘイズが7%以下の値である。
×:ヘイズが7%を超える値である。
【0117】
(6)評価6:TD方向の熱収縮率(A2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、80℃の温水に、1秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、
図2(a)に示すように、光学カメラで画像データを撮影しながら、式(1)に準じて、画像式のモーションキャプチャー14によって得られた、加熱処理前後のマーカーの距離変化から、TD方向の熱収縮率(A2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2)が20~50%未満の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A1)が15~20%未満、又は、50%~70%未満の値である。
△:熱収縮率(A1)が10~15%未満、又は、70%~80%未満の値である。
×:熱収縮率(A1)が10%未満、又は、80%を超えた値である。
【0118】
(7)評価7:TD方向の熱収縮率(A2)の標準偏差(σ2)
評価6で、画像式モーションキャプチャーを用いて得られた、TD方向の熱収縮率(A2)の値(n=6)から、標準偏差(σ2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2)の標準偏差が4%以内である。
〇:熱収縮率(A2)の標準偏差が8%以内である。
△:熱収縮率(A2)の標準偏差が12%以内である。
×:熱収縮率(A2)の標準偏差が16%超である。
【0119】
(8)評価8:TD方向の熱収縮率(A´2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、
図2(a)に示すように、光学カメラで画像データを撮影しながら、式(1)に準じて、画像式のモーションキャプチャー14によって得られた、加熱処理前後のマーカーの距離変化から、TD方向の熱収縮率(A´2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A´2)が30~65%未満の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A´2)が20~30%未満、又は、65%~75%未満の値である。
△:熱収縮率(A´2)が10~20%未満、又は、75%~85%未満の値である。
×:熱収縮率(A´2)が10%未満、又は、85%を超えた値である。
【0120】
(9)評価9:TD方向の熱収縮率(A´2)の標準偏差(σ´2)
評価8で、画像式モーションキャプチャーを用いて得られた、TD方向の熱収縮率(A2´)の値(n=6)から、標準偏差(σ´2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A´2)の標準偏差が2.5%以内である。
〇:熱収縮率(A´2)の標準偏差が5%以内である。
△:熱収縮率(A´2)の標準偏差が7.5%以内である。
×:熱収縮率(A´2)の標準偏差が10%超である。
【0121】
(10)評価10:熱収縮速度
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浮かべて、画像式モーションキャプチャーによって、10秒以上測定しながら熱収縮させた。
すなわち、光学カメラで画像データを撮影しながら、画像式のモーションキャプチャーによって得られた、所定時間前後の所定マーカーの距離変化から、式(2)に準じて、主収縮方向の熱収縮速度を算出し、以下の基準に準じて評価した。
このとき、熱収縮率速度の算出にあたり、熱収縮前の所定区間の距離PL0を10mmとし、0.1秒間隔で測定している。
◎:熱収縮速度が4mm/秒以上である。
〇:熱収縮速度が3mm/秒以上、4mm/秒未満である。
△:熱収縮速度が2mm/秒以上、3mm/秒未満である。
×:熱収縮速度が2mm/秒未満である。
【0122】
(11)評価11:中間熱収縮速度の最小値
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、温水槽を用いて、80℃の温水上に、10秒間浮かべて、熱収縮させた。
次いで、光学カメラで画像データを撮影しながら、画像式のモーションキャプチャーによって得られた、主収縮方向の熱収縮率(所定区間の数n=6)から、式(4)に準じて、中間熱収縮速度を求め、所定区間のうち中間熱収縮速度の最大値が最も大きい区間における中間熱収縮速度の最小値から、以下の基準に準じて評価した。
このとき、中間熱収縮速度の算出にあたり、熱収縮前の所定区間の距離PL0を10mmとし、測定期間t3-t2を0.1秒として、測定している。
◎:中間熱収縮速度の最小値が、0mm/秒以上である。
〇:中間熱収縮速度の最小値が、-1.5mm/秒以上である。
△:中間熱収縮速度の最小値が、-2.5mm/秒以上である。
×:中間熱収縮速度の最小値が、-2.5mm/秒未満である。
【0123】
[実施例2]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
実施例2において、表1に示すように、攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を100重量部の割合で用いたほかは、実施例1と同様に、厚さ200μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予熱温度75℃、延伸温度75℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0124】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
実施例2において、実施例1と同様に、得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さのバラツキ(評価1)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率(評価2及び評価4)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率の標準偏差(評価3)等につき、測定の上、評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0125】
[比較例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
比較例1において、表1に示すように、攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を50重量部、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG4)を50重量部の割合で用いたほかは、実施例1と同様に、厚さ200μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予熱温度90℃、延伸温度90℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0126】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
比較例1において、実施例1と同様に、得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さのバラツキ(評価1)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率(評価2及び評価4)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率の標準偏差(評価3)等につき、評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0127】
[比較例2]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
比較例2において、表1に示すように、攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG4)を100重量部の割合で用いたほかは、実施例1と同様に、厚さ200μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予熱温度90℃、延伸温度90℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0128】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
比較例2において、実施例1と同様に、得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さのバラツキ(評価1)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率(評価2及び評価4)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率の標準偏差(評価3)等につき、評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0129】
[比較例3]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
実施例2において、表1に示すように、攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を100重量部の割合で用いたほかは、実施例1と同様に、厚さ200μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、押出温度260℃、予熱温度90℃、延伸温度90℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0130】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
比較例3において、実施例1と同様に、得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さのバラツキ(評価1)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率(評価2及び評価4)、画像式のモーションキャプチャーによるTD方向の熱収縮率の標準偏差(評価3)等につき、評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0131】
【0132】
【0133】
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、モーションキャプチャーを用い、少なくとも、所定条件下に測定される熱収縮率等を、所定範囲内の値に制限することによって、優れた耐シワ特性を発揮するポリエステル系シュリンクフィルム等を迅速かつ精度良く評価して、提供できるようになった。
従って、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、各種PETボトル等に適用することができ、汎用性を著しく広げることができ、その産業上の利用可能性は極めて高いと言える。
【要約】
モーションキャプチャーを用い、迅速かつ精度良く測定できるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法を提供する。
モーションキャプチャーを用いてなるポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率の測定方法であって、下記工程(a)~(e)を有する。
すなわち、主収縮方向において、2つの測定位置を設定し、当該2つの測定位置の間隔をL1として測定する工程(a)と、測定位置に、慣性計測装置のマーカーを取り付ける工程(b)と、所定熱収縮条件として、所定温度かつ所定時間加熱して、熱収縮させる工程(c)と、熱収縮後の2つの測定位置の間隔をL´1として、モーションキャプチャーを用いて測定する工程(d)と、所定式に基づいて、ポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率を算出する工程(e)を有する。