(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-09
(45)【発行日】2025-01-20
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 84/87 20250101AFI20250110BHJP
【FI】
H01L27/06 F
(21)【出願番号】P 2024566434
(86)(22)【出願日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2024023920
【審査請求日】2024-11-08
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕介
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017127(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0091311(US,A1)
【文献】国際公開第2022/168800(WO,A1)
【文献】特開平10-303218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/06
H01L 21/8232
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置であって、
平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層と、
前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層と、を備え、
前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、
前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、
前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む、
窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記窒化物半導体層は、チャネル層と、前記チャネル層の上方に設けられたバリア層と、を含み、
前記能動素子は、前記チャネル層と前記バリア層との界面近傍に生じる二次元電子ガスを含む、
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記活性領域において、前記チャネル層のキャリア密度は、1×10
15cm
-3以上である、
請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記窒化物半導体層は、複数の層からなる積層構造を有し、
前記不活性領域において、前記窒化物半導体層の最上層のキャリア密度は、1×10
15cm
-3より小さい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記不活性領域における前記窒化物半導体層と前記金属層との接触面は、前記活性領域における前記窒化物半導体層の最上面よりも下方に位置している、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記窒化物半導体層は、前記チャネル層の下方に設けられたバッファ層をさらに含み、
前記金属層は、前記不活性領域で前記バッファ層に接する、
請求項2または3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記窒化物半導体層は、CまたはFeがドープされた不純物領域を含み、
前記金属層は、前記不活性領域で前記不純物領域に接する、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記金属層は、
バリアメタル層と、
前記バリアメタル層の上方に設けられ、前記バリアメタル層よりも抵抗が低い低抵抗金属層と、を含む、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記受動素子は、前記金属層を含む抵抗素子である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記受動素子は、前記金属層を下部電極として含むキャパシタである、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記受動素子は、前記金属層を含むインダクタである、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記バリアメタル層の格子定数は、前記低抵抗金属層の格子定数より大きく、前記窒化物半導体層の、前記金属層との接触面におけるa軸の格子定数の√2倍以下である、
請求項8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記低抵抗金属層およびバリアメタル層の各々の格子定数は、前記窒化物半導体層の、前記金属層との接触面におけるa軸の格子定数の√2倍の90%以上である、
請求項12に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記低抵抗金属層は、Al、Cu、Au、AgおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される面心立方格子構造を有する、
請求項
8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記バリアメタル層は、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、NおよびCの少なくとも一方の元素とによって構成されるNaCl型構造を有する、
請求項
8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記金属層は、前記バリアメタル層と前記窒化物半導体層との間に設けられ、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される六方最密構造を有する層をさらに含む、
請求項
8に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記能動素子は、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を含み、
前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも1つは、前記金属層の少なくとも一部と同じ材料を含む、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置の製造方法であって、
平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層を形成する工程と、
前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層を形成する工程と、を含み、
前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、
前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、
前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む、
窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記窒化物半導体層に第1リセス部を形成する工程と、
前記第1リセス部内に前記能動素子のソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上に前記能動素子のゲート電極を形成する工程と、
前記金属層を形成する前に前記窒化物半導体層に第2リセス部を形成する工程と、を含み、
前記金属層を形成する工程では、前記第2リセス部の底面に前記金属層を形成する、
請求項18に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第1リセス部を形成する工程および前記第2リセス部を形成する工程は、同時に行われる、
請求項19に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記金属層を形成する工程および前記ゲート電極を形成する工程は、同時に行われる、
請求項19または20に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記受動素子は、前記金属層を下部電極として含むキャパシタであり、
前記窒化物半導体装置の製造方法は、さらに、
前記金属層上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に上部電極を形成する工程と、を含む、
請求項21に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GaN層と、GaN層上に設けられたAlGaN層と、AlGaN層上に設けられたp型GaN層と、p型GaN層上に設けられた金属層からなるインダクタと、を備える電子デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/038048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属層と接する半導体層がキャリアを含む場合、半導体層内には、金属層との界面から延びる空乏層が形成される。形成された空乏層は、寄生容量の増大の要因になる。寄生容量は、デバイスを高周波動作させた場合に配線遅延を引き起こすおそれがある。また、デバイスに対する電圧の印加状態に起因して、キャリア密度が変わると寄生容量の大きさも変化する。その結果、高周波動作の動作ばらつきが生じうる。このように、従来技術では、高周波特性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、高周波特性に優れた窒化物半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置であって、平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層と、前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層と、を備え、前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置の製造方法であって、平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層を形成する工程と、前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層を形成する工程と、を含み、前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高周波特性に優れた窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、受動素子としてキャパシタを備える実施の形態1に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図1B】
図1Bは、受動素子として抵抗素子を備える実施の形態1に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、能動素子としてインダクタを備える実施の形態1に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、面心立方格子構造の結晶構造を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、受動素子としてキャパシタを備える実施の形態1の変形例1に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、受動素子として抵抗素子を備える実施の形態1の変形例1に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、能動素子としてインダクタを備える実施の形態1の変形例1に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、受動素子としてキャパシタを備える実施の形態1の変形例2に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図4B】
図4Bは、受動素子として抵抗素子を備える実施の形態1の変形例2に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図4C】
図4Cは、能動素子としてインダクタを備える実施の形態1の変形例2に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、受動素子としてキャパシタを備える実施の形態1の変形例3に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図5B】
図5Bは、受動素子として抵抗素子を備える実施の形態1の変形例3に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図5C】
図5Cは、能動素子としてインダクタを備える実施の形態1の変形例3に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図7B】
図7Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図7C】
図7Cは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図7D】
図7Dは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図7E】
図7Eは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図7F】
図7Fは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第1例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第2例を示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第2例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図9B】
図9Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第2例に含まれる一工程を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法の第3例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2の変形例に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の概要)
本開示の第1態様に係る窒化物半導体装置は、能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置であって、平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層と、前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層と、を備え、前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。
【0011】
これにより、金属層の結晶性が良くなるので、金属層の電気特性が良化(例えば、低抵抗化)して高周波特性を向上させることができる。また、金属層が不活性領域に設けられるので、金属層を含む受動素子は、高周波動作時のキャリアの変動の影響を受けにくくなる。よって、高周波特性に優れた窒化物半導体装置を実現することができる。
【0012】
本開示の第2態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様に係る窒化物半導体装置であって、前記窒化物半導体層は、チャネル層と、前記チャネル層の上方に設けられたバリア層と、を含み、前記能動素子は、前記チャネル層と前記バリア層との界面近傍に生じる二次元電子ガスを含む。
【0013】
これにより、二次元電子ガス(2DEG)の高い電子移動度を利用することで、能動素子の高速動作が可能になる。例えば、スイッチング動作の高速化などが可能になり、窒化物半導体装置の高周波特性を向上させることができる。
【0014】
本開示の第3態様に係る窒化物半導体装置は、第2態様に係る窒化物半導体装置であって、前記活性領域において、前記チャネル層のキャリア密度は、1×1015cm-3以上である。
【0015】
これにより、2DEGの高い電子移動度を利用することで、能動素子の高速動作が可能になる。例えば、スイッチング動作の高速化などが可能になり、窒化物半導体装置の高周波特性を向上させることができる。
【0016】
本開示の第4態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第3態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記窒化物半導体層は、複数の層からなる積層構造を有し、前記不活性領域において、前記窒化物半導体層の最上層のキャリア密度は、1×1015cm-3より小さい。
【0017】
これにより、金属層と窒化物半導体層との寄生容量を低減することができるので、受動素子の高周波特性が向上する。
【0018】
本開示の第5態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第4態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記不活性領域における前記窒化物半導体層と前記金属層との接触面は、前記活性領域における前記窒化物半導体層の最上面よりも下方に位置している。
【0019】
これにより、不活性領域では、例えばバリア層の大部分または全部を除去することにより、2DEGを発生させないようにすることができる。このため、窒化物半導体層のキャリア濃度が低減されるので、金属層と窒化物半導体層との寄生容量を低減することができる。よって、受動素子の高周波特性を向上させることができる。
【0020】
本開示の第6態様に係る窒化物半導体装置は、第2態様または第3態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記窒化物半導体層は、前記チャネル層の下方に設けられたバッファ層をさらに含み、前記金属層は、前記不活性領域で前記バッファ層に接する。
【0021】
これにより、バッファ層は一般的に高抵抗な層であり、キャリア濃度が十分に低い。このため、動作ばらつきが抑制されるので、受動素子の高周波特性を向上させることができる。
【0022】
本開示の第7態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第6態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記窒化物半導体層は、CまたはFeがドープされた不純物領域を含み、前記金属層は、前記不活性領域で前記不純物領域に接する。
【0023】
これにより、CまたはFeがドープされた不純物領域は高抵抗化する。このため、動作ばらつきが抑制されるので、受動素子の高周波特性を向上させることができる。
【0024】
本開示の第8態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第7態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記金属層は、バリアメタル層と、前記バリアメタル層の上方に設けられ、前記バリアメタル層よりも抵抗が低い低抵抗金属層と、を含む。
【0025】
これにより、低抵抗金属層と窒化物半導体層との混晶が抑制される。窒化物半導体層内でのキャリアの生成が抑制されるので、キャリアの変動の影響を受動素子が受けにくくなる。よって、受動素子の高周波特性を向上させることができる。
【0026】
本開示の第9態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第8態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記受動素子は、前記金属層を含む抵抗素子である。
【0027】
これにより、金属層の結晶性が良くなるので、エレクトロマイグレーションに対する耐性が高まる。抵抗素子の断線または短絡が抑制されるので、抵抗素子の高周波特性を向上させることができる。
【0028】
本開示の第10態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第8態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記受動素子は、前記金属層を下部電極として含むキャパシタである。
【0029】
これにより、下部電極である金属層の結晶性が良くなるので、下部電極の低抵抗化が実現され、寄生抵抗成分に起因するロスを低減することができる。また、ヒロックなどの異常成長が抑制されるため、絶縁層のカバレッジの低下および電界集中を抑制することができる。よって、キャパシタの耐圧の低下を抑制することができる。
【0030】
本開示の第11態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第8態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記受動素子は、前記金属層を含むインダクタである。
【0031】
これにより、金属層の結晶性が良くなるので、インダクタの寄生抵抗成分を低減することができる。よって、寄生抵抗成分に起因するロスを低減することができる。
【0032】
本開示の第12態様に係る窒化物半導体装置は、第8態様に係る窒化物半導体装置であって、前記バリアメタル層の格子定数は、前記低抵抗金属層の格子定数より大きく、前記窒化物半導体層の、前記金属層との接触面におけるa軸の格子定数の√2倍以下である。
【0033】
これにより、低抵抗金属層に生じうる転位を低減することができるので、低抵抗金属層のさらなる低抵抗化が可能になる。
【0034】
本開示の第13態様に係る窒化物半導体装置は、第12態様に係る窒化物半導体装置であって、前記低抵抗金属層およびバリアメタル層の各々の格子定数は、前記窒化物半導体層の、前記金属層との接触面におけるa軸の格子定数の√2倍の90%以上である。
【0035】
これにより、低抵抗金属層に生じうる転位を低減することができるので、低抵抗金属層のさらなる低抵抗化が可能になる。
【0036】
本開示の第14態様に係る窒化物半導体装置は、第8態様、第12態様または第13態様に係る窒化物半導体装置であって、前記低抵抗金属層は、Al、Cu、Au、AgおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される面心立方格子構造を有する。
【0037】
これにより、金属層の結晶性を維持しながら低抵抗化が可能になる。
【0038】
本開示の第15態様に係る窒化物半導体装置は、第8態様、第12態様~第14態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記バリアメタル層は、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、NおよびCの少なくとも一方の元素とによって構成されるNaCl型構造を有する。
【0039】
これにより、金属層の結晶性を維持しながら、金属層と窒化物半導体層との混晶を抑制することができる。
【0040】
本開示の第16態様に係る窒化物半導体装置は、第8態様、第12態様~第15態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記金属層は、前記バリアメタル層と前記窒化物半導体層との間に設けられ、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される六方最密構造を有する層をさらに含む。
【0041】
これにより、金属層の結晶性を維持しながら、金属層と窒化物半導体層との密着性を高めることができる。
【0042】
本開示の第17態様に係る窒化物半導体装置は、第1態様~第16態様のいずれか1つに係る窒化物半導体装置であって、前記能動素子は、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を含み、前記ゲート電極、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも1つは、前記金属層の少なくとも一部と同じ材料を含む。
【0043】
これにより、金属層と同じ材料を含む電極を、金属層と同一工程で形成することができる。
【0044】
本開示の第18態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、能動素子と受動素子とを備える窒化物半導体装置の製造方法であって、平面視で活性領域と不活性領域とに区分される窒化物半導体層を形成する工程と、前記不活性領域で前記窒化物半導体層に接する金属層を形成する工程と、を含み、前記能動素子は、前記活性領域に設けられ、前記受動素子は、前記不活性領域に設けられ、前記金属層は、前記窒化物半導体層に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。
【0045】
これにより、結晶性の良好な金属層を形成することができ、金属層の電気特性が良化(例えば、低抵抗化)して高周波特性を向上させることができる。また、金属層が不活性領域に設けられるので、金属層を含む受動素子は、高周波動作時のキャリアの変動の影響を受けにくくなる。よって、高周波特性に優れた窒化物半導体装置を製造することができる。
【0046】
本開示の第19態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、第18態様に係る窒化物半導体装置の製造方法であって、前記窒化物半導体層に第1リセス部を形成する工程と、前記第1リセス部内に前記能動素子のソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記窒化物半導体層上に前記能動素子のゲート電極を形成する工程と、前記金属層を形成する前に前記窒化物半導体層に第2リセス部を形成する工程と、を含み、前記金属層を形成する工程では、前記第2リセス部の底面に前記金属層を形成する。
【0047】
これにより、第2リセス部によって窒化物半導体層の不活化を容易に行うことができる。
【0048】
本開示の第20態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、第19態様に係る窒化物半導体装置の製造方法であって、前記第1リセス部を形成する工程および前記第2リセス部を形成する工程は、同時に行われる。
【0049】
これにより、第1リセス部および第2リセス部を同一工程で形成することができる。製造工程を簡略化することにより、製造誤差などが生じる可能性を低くすることができ、歩留まりを高めることができる。
【0050】
本開示の第21態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、第19態様または第20態様に係る窒化物半導体装置の製造方法であって、前記金属層を形成する工程および前記ゲート電極を形成する工程は、同時に行われる。
【0051】
これにより、金属層およびゲート電極を同一工程で形成することができる。製造工程を簡略化することにより、製造誤差などが生じる可能性を低くすることができ、歩留まりを高めることができる。
【0052】
本開示の第22態様に係る窒化物半導体装置の製造方法は、第21態様に係る窒化物半導体装置の製造方法であって、前記受動素子は、前記金属層を下部電極として含むキャパシタであり、前記窒化物半導体装置の製造方法は、さらに、前記金属層上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に上部電極を形成する工程と、を含む。
【0053】
これにより、下部電極である金属層の結晶性が良くなるので、下部電極の低抵抗化が実現され、寄生抵抗成分に起因するロスを低減することができる。また、ヒロックなどの異常成長が抑制されるため、絶縁層のカバレッジの低下および電界集中を抑制することができる。よって、キャパシタの耐圧の低下を抑制することができる。
【0054】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0055】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、製造工程、ならびに、製造工程の順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0056】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0057】
また、本明細書において、平行または垂直などの要素間の関係性を示す用語、要素の形状を示す用語、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0058】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を基板の主面に対して垂直な方向とし、基板の主面に平行な方向をx軸方向およびy軸方向としている。
【0059】
なお、本明細書において、基板の「主面」とは、基板の主要な面であり、例えば、面積が最大となる面、または、当該面積が最大になる面の反対側に位置し、最大面積の面と同等の面積を有する面を意味する。主面は通常、平面であるが、微小な凹凸または湾曲が含まれていてもよい。半導体層、金属層または絶縁層などの各層の「主面」についても同様である。
【0060】
また、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。具体的には、z軸の正方向を「上方」とみなし、z軸の負方向を「下方」とみなしている。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0061】
また、本明細書において、「平面視」とは、特に断りの無い限り、基板の主面に対して垂直な方向から見た場合を意味する。具体的には、「平面視」とは、z軸の正側または負側から見た場合を意味する。
【0062】
また、1または複数の元素または組成物からなる層、および、1または複数の元素または組成物によって構成される層とは、当該層が実質的に1または複数の元素または組成物のみを含んでいることを意味する。ただし、当該層には、例えば製造上混入を避けられない元素など他の元素が不純物として、1%以下の割合で含まれていてもよい。
【0063】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0064】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る窒化物半導体装置について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る窒化物半導体装置は、能動素子と、受動素子と、を備える。能動素子は、例えばトランジスタ、トンネルダイオードなどである。受動素子は、例えばキャパシタ、抵抗素子、インダクタなどである。以下ではまず、受動素子としてキャパシタを備える窒化物半導体装置について、
図1Aを用いて説明する。抵抗素子またはインダクタを備える構成については、
図1Bまたは
図1Cを用いて後で説明する。
【0066】
[キャパシタを備える窒化物半導体装置]
図1Aは、受動素子としてキャパシタ20を備える本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の断面図である。
図1Aに示すように、窒化物半導体装置1は、トランジスタ10と、キャパシタ20と、を備える。また、窒化物半導体装置1は、基板110と、窒化物半導体層120と、を備える。
【0067】
トランジスタ10は、能動素子の一例であり、活性領域101に設けられている。キャパシタ20は、受動素子の一例であり、不活性領域102に設けられている。
【0068】
活性領域101および不活性領域102は、平面視で互いに重ならない領域である。本実施の形態では、第2リセス部136の有無によって活性領域101および不活性領域102が区分される。具体的には、第2リセス部136が設けられた領域が不活性領域102であり、第2リセス部136が設けられていない領域が活性領域101である。活性領域101では、チャネル層124のキャリア濃度が1×1015cm-3以上である。不活性領域102では、チャネル層124のキャリア濃度が1×1015cm-3より小さい。
【0069】
トランジスタ10は、
図1Aに示すように、基板110および窒化物半導体層120の各々のうちの活性領域101に位置する部分と、ソース電極140と、ドレイン電極142と、ゲート電極144と、を備える。窒化物半導体層120の活性領域101に位置する部分では、チャネル層124とバリア層126との界面近傍に2DEG125が生じる。トランジスタ10は、2DEG125をチャネルとして含む高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)である。
【0070】
基板110は、窒化物半導体層120を形成するための下地基板である。基板110は、例えば、主面(上面)が(111)面であるSiの単結晶基板である。例えば、基板110の抵抗率は、1kΩcm以上であるが、これに限定されない。基板110の抵抗率は、20Ωcm以下であってもよい。また、基板110は、Siの単結晶基板に限らず、SiC、サファイア(Sapphire)、GaNまたはAlNなどからなる基板であってもよい。
【0071】
窒化物半導体層120は、III族窒化物半導体からなる層である。窒化物半導体層120は、複数の層からなる積層構造を有する。具体的には、
図1Aに示すように、窒化物半導体層120は、バッファ層122と、チャネル層124と、バリア層126と、を含む。
【0072】
窒化物半導体層120は、平面視で活性領域101と不活性領域102とに区分される。本実施の形態では、バッファ層122は、活性領域101と不活性領域102とで同じ構成を有する。チャネル層124は、活性領域101に位置する部分の厚さが、不活性領域102に位置する部分の厚さよりも厚い。バリア層126は、活性領域101に設けられ、不活性領域102には設けられていない。
【0073】
バッファ層122は、基板110の上方で、かつ、チャネル層124の下方に設けられている。具体的には、バッファ層122は、基板110の上面とチャネル層124の下面とにそれぞれ接触して設けられている。バッファ層122は、III族窒化物半導体からなる層である。例えば、バッファ層122は、各々がアンドープのAlxGa1-xNからなる複数の層の積層構造を有する。ここで、xは、0以上1以下である。すなわち、バッファ層122には、AlN層またはGaN層が含まれてもよい。バッファ層122は、CまたはFeがドープされることにより高抵抗化された層を含んでもよい。また、バッファ層122は、超格子構造を含んでもよい。なお、バッファ層122は、GaN層、AlGaN層またはAlN層の単層構造であってもよい。あるいは、バッファ層122は、設けられていなくてもよい。
【0074】
チャネル層124は、基板110の上方に設けられている。具体的には、チャネル層124は、バッファ層122の上面に接触して設けられている。チャネル層124は、III族窒化物半導体からなる層である。例えば、チャネル層124は、GaNからなる層であるが、Inを含んでもよい。
【0075】
本実施の形態では、チャネル層124は、活性領域101と不活性領域102とで厚さが異なっている。具体的には、活性領域101におけるチャネル層124の厚さは、不活性領域102におけるチャネル層124の厚さより厚い。活性領域101におけるチャネル層124の厚さは、例えば150nmである。不活性領域102におけるチャネル層124の厚さは、例えば、活性領域101におけるチャネル層124の厚さの半分以下であるが、10%以下であってもよく、これに限定されない。不活性領域102におけるチャネル層124は、その上面(すなわち、第2リセス部136の底面であり、
図1Aに示す接触面120b)が、活性領域101に生じる2DEG125よりも下方になるような厚さで形成されている。なお、チャネル層124の厚さは、活性領域101と不活性領域102とで均一であってもよい。
【0076】
バリア層126は、チャネル層124の上方に設けられている。例えば、バリア層126は、チャネル層124の上面に接触して設けられている。バリア層126は、III族窒化物半導体からなる層である。例えば、バリア層126は、厚さが13nmのAl0.25Ga0.75Nからなる層であるが、これに限らない。バリア層126を構成するAlGaNのAl組成比は、15%以上100%以下の範囲から選択された値であってもよい。また、バリア層126は、Inを含んでもよい。
【0077】
バリア層126のバンドギャップは、チャネル層124のバンドギャップよりも大きい。バリア層126とチャネル層124との界面近傍には、2DEG125が生じる。本実施の形態では、バリア層126は、不活性領域102には設けられずに活性領域101のみに設けられているので、2DEG125も不活性領域102には生じずに、活性領域101のみに生じる。活性領域101に生じた2DEG125がトランジスタ10のチャネルとして機能する。活性領域101において、チャネル層124のキャリア密度は、常温で1×1015cm-3以上である。なお、常温は、例えば25℃である。
【0078】
窒化物半導体層120には、第1リセス部130および132、ならびに、第2リセス部136が設けられている。第1リセス部130および132、ならびに、第2リセス部136はそれぞれ、バリア層126を貫通し、かつ、チャネル層124の少なくとも一部が除去された凹部である。
【0079】
第1リセス部130は、ソース電極140と2DEG125とのコンタクト抵抗を低減するために設けられている。第1リセス部130の内面には、2DEG125が露出しており、露出した2DEG125にソース電極140が直接接触することにより、コンタクト抵抗を低減することができる。
【0080】
第1リセス部132は、ドレイン電極142と2DEG125とのコンタクト抵抗を低減するために設けられている。第1リセス部132の内面には、2DEG125が露出しており、露出した2DEG125にドレイン電極142が直接接触することにより、コンタクト抵抗を低減することができる。
【0081】
第1リセス部130および132の各々の底面の位置は、チャネル層124とバリア層126との界面よりも下方に位置している。第1リセス部130および132の各々の底面と、チャネル層124とバリア層126との界面とのz軸方向における差は、10nm以下である。
【0082】
第2リセス部136は、窒化物半導体層120を不活化するために設けられている。第2リセス部136の底面(接触面120b)は、活性領域101における窒化物半導体層120の最上面120aよりも下方に位置している。具体的には、第2リセス部136が設けられることにより、不活性領域102ではバリア層126が除去される。不活性領域102では、チャネル層124が窒化物半導体層120の最上層である。その結果、チャネル層124内に2DEG125が発生しないようにでき、不活性領域102におけるチャネル層124のキャリア密度が常温で1×1015cm-3よりも小さくなる。なお、常温は、例えば25℃である。
【0083】
ソース電極140およびドレイン電極142は、平面視において、間にゲート電極144を挟むように互いに離れた位置に設けられている。ソース電極140およびドレイン電極142はそれぞれ、2DEG125と電気的に接続されている。具体的には、ソース電極140は、第1リセス部130内に設けられて2DEG125に接触している。ドレイン電極142は、第1リセス部132内に設けられて2DEG125に接触している。
【0084】
ソース電極140およびドレイン電極142はいずれも、n型の窒化物半導体に対してオーミック接続される金属材料を用いて形成されている。例えば、ソース電極140およびドレイン電極142は、厚さが30nmのTi膜と、当該Ti膜上に設けられた厚さが200nmのAl膜との積層構造を有する多層電極膜である。
【0085】
なお、Ti膜の厚さは、2nm以上40nm以下であってもよく、Al膜の厚さは、100nm以上200nm以下であってもよい。また、ソース電極140およびドレイン電極142は、Ti、Ta、Hf、Zr、Ru、Al、AuおよびWからなる群から選択される1つの元素の金属単体、または、選択される複数の元素の合金であってもよい。また、ソース電極140およびドレイン電極142は、TiN、WN、TaNなどの導電性金属窒化膜を含んでもよい。ソース電極140およびドレイン電極142は、同一工程で形成されるが、異なる工程で異なる材料を用いて形成されてもよい。
【0086】
ゲート電極144は、平面視において、ソース電極140およびドレイン電極142の間に設けられている。本実施の形態では、ゲート電極144は、窒化物半導体層120の最上面120aに接触して設けられている。
【0087】
ゲート電極144は、窒化物半導体層120に対してショットキー接続される金属材料を用いて形成される。例えば、ゲート電極144は、TiN膜と、当該TiN膜上に設けられたAl膜との積層構造を有する多層電極膜である。TiN膜およびAl膜はそれぞれ、キャパシタ20のバリアメタル層152および低抵抗金属層154と同じである。ゲート電極144は、WN、TaN、HfN、Ni、Ti、Ta、W、Au、Pd、Pt、Hf、RuおよびCuからなる群から選択される1つを用いて形成されていてもよい。
【0088】
なお、ゲート電極144と窒化物半導体層120の最上面120aとの間には、絶縁層またはp型の窒化物半導体層が設けられていてもよい。絶縁層は、例えば、SiN、SiO2、SiON、Al2O3などの単層または積層構造を有する。p型の窒化物半導体層は、例えば、p型のGaNまたはAlGaNなどである。p型の窒化物半導体層が設けられている場合、ゲート電極144は、p型の窒化物半導体層に対してオーミック接触されていてもよい。
【0089】
続いて、キャパシタ20について説明する。
図1Aに示すように、キャパシタ20は、下部電極150と、絶縁層160と、上部電極170と、を備える。
【0090】
下部電極150は、不活性領域102で窒化物半導体層120に接する金属層の一例である。下部電極150は、窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。コヒーレント状態およびメタモルフィック状態については、後で説明する。本実施の形態では、下部電極150は、バリアメタル層152と、低抵抗金属層154と、を含む。
【0091】
バリアメタル層152は、低抵抗金属層154に含まれる金属元素(例えば、Cu)が窒化物半導体層120に拡散するのを抑制するために設けられている。バリアメタル層152は、不活性領域102において、窒化物半導体層120に接触している。具体的には、バリアメタル層152は、第2リセス部136の底面であり、かつ、チャネル層124の表面の一部である接触面120bに接触している。
【0092】
バリアメタル層152は、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、NおよびCの少なくとも一方の元素とによって構成されるNaCl型構造を有する。例えば、バリアメタル層152は、TiN、TaN、WN、HfN、TiCおよびTaCからなる群から選択される1つの化合物からなる単層膜であるが、積層膜であってもよい。バリアメタル層152の厚さは、例えば5nm以上200nm以下であり、一例として20nmであるが、これに限らない。
【0093】
低抵抗金属層154は、バリアメタル層152の上方に設けられている。具体的には、低抵抗金属層154は、バリアメタル層152の上面に接触して設けられている。低抵抗金属層154は、バリアメタル層152よりも抵抗が低い金属層である。低抵抗金属層154を下部電極150が含むことにより、下部電極150の寄生抵抗を低減することができる。
【0094】
低抵抗金属層154は、Al、Cu、Au、AgおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される面心立方格子(face-centerd cubic:fcc)構造を有する。低抵抗金属層154は、例えば、Al、Cu、Au、AgおよびPtからなる群から選択される1つの元素からなる単層膜であるが、積層膜であってもよい。低抵抗金属層154の厚さは、バリアメタル層152の厚さよりも大きく、例えば100nm以上1000nm以下であり、一例として500nmであるが、これに限らない。
【0095】
絶縁層160は、下部電極150と上部電極170との間に設けられている。絶縁層160は、高い誘電率および高い絶縁破壊電界を有する膜を用いて形成されている。例えば、絶縁層160は、SiN、AlN、HfN、HfOおよびTa2O5からなる群から選択される1つの化合物からなる単層膜であるが、積層膜であってもよい。絶縁層160の厚さは、特に限定されず、キャパシタ20に要求される容量値や耐圧などに基づいて決定された厚さである。
【0096】
上部電極170は、絶縁層160の上方に設けられている。上部電極170は、Al、Cu、Au、AgおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の元素からなる単層膜であるが、積層膜であってもよい。
【0097】
以上のように、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1では、下部電極150が不活性領域102に設けられるので、高周波動作時のキャリアの変動の影響を受けにくい。よって、高周波特性に優れたキャパシタ20を実現することができる。
【0098】
また、キャパシタ20が備える下部電極150は、窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。この結果、下部電極150の結晶性が高まり、キャパシタ20の高周波特性が向上する。以下では、コヒーレント状態およびメタモルフィック状態について説明する。
【0099】
コヒーレント状態とは、層の格子が歪むことにより、層が下地の層の結晶情報を保持している状態である。メタモルフィック状態とは、層の内部に欠陥を導入することにより、層が全体として下地の層の結晶情報を保持している状態である。すなわち、コヒーレント状態およびメタモルフィック状態のいずれにおいても、層(下部電極150(バリアメタル層152))が下地の層(窒化物半導体層120(チャネル層124))の結晶情報を保持している状態になる。
【0100】
バリアメタル層152および低抵抗金属層154がそれぞれ、チャネル層124に対して、コヒーレント状態またはメタモルフィック状態である。コヒーレント状態またはメタモルフィック状態にするためには、結晶構造と格子定数とが所定の条件を満たすことが求められる。
【0101】
下地の層であるチャネル層124の結晶構造は、
図2Aに示す六方最密(hexagonal close-packed:hcp)構造である。なお、
図2Aは、六方最密(hcp)構造の結晶構造を示す図である。
図2Bは、面心立方格子(fcc)構造の結晶構造を示す図である。
【0102】
hcp構造に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態になる結晶構造は、fcc構造またはNaCl構造である。本実施の形態では、バリアメタル層152がNaCl構造を有し、低抵抗金属層154が
図2Bに示すfcc構造を有する。NaCl構造は、
図2Bに示すfcc構造と実質的に同じとみなすことができる。
【0103】
バリアメタル層152の結晶面の1つである(111)面は、チャネル層124の結晶面の1つである(0002)面に対して、平行かつ同一方位である。また、低抵抗金属層154の結晶面の1つである(111)面は、チャネル層124の結晶面の1つである(0002)面に対して、平行かつ同一方位である。バリアメタル層152および低抵抗金属層154はいずれも、(111)面のみに配向している。
【0104】
具体的には、
図2Bに示す(111)面の三角形(ドットの網掛けが付された領域)の頂点および各辺の中点に位置する6つの元素が、
図2Aに示す6つの元素に対応するように、バリアメタル層152および低抵抗金属層154が形成される。なお、
図2Aでは、(0002)面の代わりに(0001)面で6つの元素を表している。この場合において、格子定数が以下の関係を満たしている。
【0105】
バリアメタル層152の格子定数は、低抵抗金属層154の格子定数より大きく、窒化物半導体層120の、下部電極150との接触面120bにおけるa軸の格子定数の√2倍以下である。すなわち、チャネル層124のa軸の格子定数を“a1”とし、バリアメタル層152の格子定数を“a2”とし、低抵抗金属層154の格子定数を“a3”とすると、以下の不等式(1)を満たす。
【0106】
(1) a1×√2≧a2>a3
【0107】
なお、“√2”は、2の平方根(1.4142・・・)を表している。
【0108】
このように、窒化物半導体層120(チャネル層124)のa軸の格子定数の√2倍を基準として、バリアメタル層152、低抵抗金属層154の順に格子定数を小さくすることにより、低抵抗金属層154での転位の発生を抑制することができる。よって、下部電極150の低抵抗化が可能になる。
【0109】
また、低抵抗金属層154の格子定数a3およびバリアメタル層152の格子定数a2は、チャネル層124の、接触面120bにおけるa軸の格子定数a1の√2倍の90%以上であってもよい。すなわち、各層の格子定数は、以下の不等式(2)および(3)をさらに満たしていてもよい。
【0110】
(2) a3≧a1×√2×0.9
(3) a2≧a1×√2×0.9
【0111】
つまり、チャネル層124の格子定数の√2倍と、バリアメタル層152または低抵抗金属層154の格子定数との差分は、±10%以内である。このような関係を満たすことにより、バリアメタル層152および低抵抗金属層154の各々の結晶性がさらに高くなる。低抵抗金属層154に含まれる転位が低減することで、低抵抗金属層154のさらなる低抵抗化が実現される。また、下部電極150の低抵抗化によって、寄生抵抗成分に起因するロスを低減することができる。また、ヒロックなどの異常成長が抑制されるため、絶縁層160のカバレッジの低下および電界集中を抑制することができる。よって、キャパシタ20の耐圧の低下を抑制することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、バリアメタル層152が設けられているので、低抵抗金属層154とチャネル層124との混晶が抑制される。これにより、チャネル層124内でのキャリアの生成が抑制されるので、動作時のキャリアの変動の影響をキャパシタ20が受けにくくなる。よって、キャパシタ20の高周波特性を向上させることができる。
【0113】
[抵抗素子を備える窒化物半導体装置]
次に、受動素子として抵抗素子を備える窒化物半導体装置について、
図1Bを用いて説明する。
図1Bは、受動素子として抵抗素子21を備える窒化物半導体装置2の断面図である。
図1Bに示すように、窒化物半導体装置2は、トランジスタ10と、抵抗素子21と、を備える。トランジスタ10は、
図1Aに示した窒化物半導体装置1が備えるトランジスタ10と同じである。以下では、窒化物半導体装置1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0114】
図1Bに示す抵抗素子21は、金属層155を含む。金属層155は、不活性領域102で窒化物半導体層120に接している。金属層155は、窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。金属層155は、例えば、バリアメタル層152と同じ材料を用いて形成することができる。あるいは、金属層155は、低抵抗金属層154と同じ材料を用いて形成されてもよい。金属層155の厚さ、材料および線幅などを調整することにより、所望の抵抗値を有する抵抗素子21を形成することができる。
【0115】
窒化物半導体装置2によれば、窒化物半導体装置1の下部電極150と同様に、金属層155の結晶性が良くなる。このため、金属層155のエレクトロマイグレーションに対する耐性が高まる。よって、抵抗素子21の断線または短絡が抑制されるので、抵抗素子21の高周波特性を向上させることができる。
【0116】
[インダクタを備える窒化物半導体装置]
次に、受動素子としてインダクタを備える窒化物半導体装置について、
図1Cを用いて説明する。
図1Cは、受動素子としてインダクタ22を備える窒化物半導体装置3の断面図である。
図1Cに示すように、窒化物半導体装置3は、トランジスタ10と、インダクタ22と、を備える。トランジスタ10は、
図1Aに示した窒化物半導体装置1が備えるトランジスタ10と同じである。以下では、窒化物半導体装置1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0117】
図1Cに示すインダクタ22は、金属層156を含む。金属層156は、不活性領域102で窒化物半導体層120に接している。金属層156は、窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。本実施の形態では、金属層156は、バリアメタル層152と、低抵抗金属層158と、を含む。
【0118】
バリアメタル層152は、
図1Aに示した窒化物半導体装置1が備えるバリアメタル層152と同じである。低抵抗金属層158は、
図1Aに示した窒化物半導体装置1が備える低抵抗金属層154とほぼ同じであり、厚さが異なっている。具体的には、低抵抗金属層158は、低抵抗金属層154に比べて厚さが厚い。例えば、低抵抗金属層158の厚さおよび幅はいずれも3μm以上である。これにより、金属層156をより低抵抗化することができる。
【0119】
インダクタ22は、不活性領域102の接触面120b上に一定の長さで延設されている。例えば、インダクタ22は、平面視で直線状に形成されていてもよく、コイル状に形成されていてもよい。
【0120】
窒化物半導体装置3によれば、窒化物半導体装置1の下部電極150と同様に、金属層156の結晶性が良くなる。このため、金属層156の結晶性が良くなるので、インダクタ22の寄生抵抗成分を低減することができる。よって、寄生抵抗成分に起因するロスを低減することができる。
【0121】
[変形例]
続いて、実施の形態1の複数の変形例について説明する。以下に示す変形例では、実施の形態1に係る窒化物半導体装置1、2および3との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0122】
<変形例1>
図3Aは、受動素子としてキャパシタ20を備える本変形例に係る窒化物半導体装置1Aの断面図である。
図3Aに示すように、窒化物半導体装置1Aでは、窒化物半導体装置1と比較して、第2リセス部136の代わりに第2リセス部136Aが設けられている点が相違する。
【0123】
第2リセス部136Aは、窒化物半導体層120を不活化するために設けられている。第2リセス部136Aの底面(接触面120b)は、活性領域101における窒化物半導体層120の最上面120aよりも下方に位置している。本変形例では、第2リセス部136Aは、バリア層126を貫通していない。すなわち、不活性領域102においても、バリア層126が残存しており、窒化物半導体層120の最上層である。第2リセス部136Aの底面である接触面120bは、バリア層126の表面である。キャパシタ20の下部電極150は、活性領域101の最上面120aよりも低い位置(基板110に近い位置)で、不活性領域102内においてバリア層126と接触している。
【0124】
本変形例では、第2リセス部136Aが設けられることにより、バリア層126の不活性領域102における厚さは、バリア層126の活性領域101における厚さよりも小さい。不活性領域102におけるバリア層126の厚さが小さくなることで、ピエゾ分極が抑制されるので、2DEG125が発生しない。これにより、実施の形態1と同様に、不活性領域102におけるチャネル層124のキャリア密度が常温で1×1015cm-3よりも小さくなる。よって、実施の形態1と同様に、窒化物半導体装置1Aの高周波特性を高めることができる。
【0125】
キャパシタ20の代わりに、抵抗素子21またはインダクタ22を備える場合も同様である。
図3Bは、受動素子として抵抗素子21を備える本変形例に係る窒化物半導体装置2Aの断面図である。
図3Cは、受動素子としてインダクタ22を備える本変形例に係る窒化物半導体装置3Aの断面図である。
図3Bおよび
図3Cに示すように、窒化物半導体装置2Aおよび3Aではそれぞれ、窒化物半導体装置2および3と比較して、第2リセス部136の代わりに第2リセス部136Aが設けられている点が相違する。金属層155および156はいずれも、活性領域101の最上面120aよりも低い位置(基板110に近い位置)で、不活性領域102内においてバリア層126に接触している。これらの抵抗素子21またはインダクタ22を備える窒化物半導体装置2Aおよび3Aについても、実施の形態1と同様に、高周波特性を高めることができる。
【0126】
<変形例2>
図4Aは、受動素子としてキャパシタ20を備える本変形例に係る窒化物半導体装置1Bの断面図である。
図4Aに示すように、窒化物半導体装置1Bでは、窒化物半導体装置1と比較して、第2リセス部136の代わりに第2リセス部136Bが設けられている点が相違する。
【0127】
第2リセス部136Bは、窒化物半導体層120を不活化するために設けられている。第2リセス部136Bの底面(接触面120b)は、活性領域101における窒化物半導体層120の最上面120aよりも下方に位置している。本変形例では、第2リセス部136Bは、バリア層126およびチャネル層124を貫通し、バッファ層122に達している。第2リセス部136Bの底面である接触面120bは、バッファ層122の表面である。不活性領域102には、バリア層126およびチャネル層124が設けられていない。不活性領域102では、バッファ層122が窒化物半導体層120の最上層である。下部電極150は、活性領域101の最上面120aよりも低い位置(基板110に近い位置)で、不活性領域102内においてバッファ層122と接触している。
【0128】
バッファ層122は、アンドープの窒化物半導体層であり、キャリア密度は、常温で1×1015cm-3よりも小さくなる。よって、実施の形態1と同様に、窒化物半導体装置1Bの高周波特性を高めることができる。
【0129】
キャパシタ20の代わりに、抵抗素子21またはインダクタ22を備える場合も同様である。
図4Bは、受動素子として抵抗素子21を備える本変形例に係る窒化物半導体装置2Bの断面図である。
図4Cは、受動素子としてインダクタ22を備える本変形例に係る窒化物半導体装置3Bの断面図である。
図4Bおよび
図4Cに示すように、窒化物半導体装置2Bおよび3Bではそれぞれ、窒化物半導体装置2および3と比較して、第2リセス部136の代わりに第2リセス部136Bが設けられている点が相違する。金属層155および156はいずれも、活性領域101の最上面120aよりも低い位置(基板110に近い位置)で、不活性領域102内においてバッファ層122に接触している。これらの抵抗素子21またはインダクタ22を備える窒化物半導体装置2Bおよび3Bについても、実施の形態1と同様に、高周波特性を高めることができる。
【0130】
なお、バッファ層122には、CまたはFeがドープされた不純物領域が含まれてもよい。下部電極150は、当該不純物領域に接していてもよい。CまたはFeがドープされた不純物領域は高抵抗化する。このため、動作ばらつきが抑制されるので、キャパシタ20の高周波特性を向上させることができる。CまたはFeのドープは、結晶成長時に行われる。このため、イオン注入の場合とは異なり、結晶構造を維持することができる。
【0131】
また、本変形例では、不活性領域102内において、バッファ層122の一部も除去されているが、バッファ層122は除去されていなくてもよい。すなわち、不活性領域102内の接触面120bは、活性領域101内におけるチャネル層124とバッファ層122との界面と同じ高さであってもよい。
【0132】
<変形例3>
図5Aは、受動素子としてキャパシタ20Cを備える本変形例に係る窒化物半導体装置1Cの断面図である。
図5Aに示すように、窒化物半導体装置1Cでは、窒化物半導体装置1と比較して、キャパシタ20の代わりにキャパシタ20Cを備える点が相違する。キャパシタ20Cは、キャパシタ20と比較して、下部電極150の代わりに下部電極150Cを含む。
【0133】
下部電極150Cは、バリアメタル層152と窒化物半導体層120との間に設けられた金属下地層159を含む。金属下地層159は、Ti、Ta、WおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素によって構成される六方最密(hcp)構造を有する。金属下地層159の厚さは、例えば2nm以上50nm以下であり、一例として10nmであるが、特に限定されない。
【0134】
金属下地層159のa軸の格子定数の√2倍は、バリアメタル層152の格子定数以上であり、窒化物半導体層120の、下部電極150Cとの接触面120bにおけるa軸の格子定数の√2倍以下である。例えば、金属下地層159のa軸の格子定数を“a”とした場合、以下の不等式(4)を満たす。
【0135】
(4) a1×√2≧a4×√2≧a2
【0136】
金属下地層159が設けられることにより、下部電極150Cの結晶性を維持しながら、バリアメタル層152と窒化物半導体層120(チャネル層124)との密着性を高めることができる。
【0137】
キャパシタ20の代わりに、抵抗素子またはインダクタを備える場合も同様である。
図5Bは、受動素子として抵抗素子21Cを備える本変形例に係る窒化物半導体装置2Cの断面図である。
図5Cは、受動素子としてインダクタ22Cを備える本変形例に係る窒化物半導体装置3Cの断面図である。
【0138】
図5Bに示す窒化物半導体装置2Cでは、抵抗素子21Cが金属層155Cを含む。金属層155Cは、バリアメタル層152とチャネル層124との間に設けられた金属下地層159を含む。なお、バリアメタル層152は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置2が備える金属層155と同じである。
【0139】
図5Cに示す窒化物半導体装置3Cでは、インダクタ22Cが金属層156Cを含む。金属層156Cでは、バリアメタル層152とチャネル層124との間に設けられた金属下地層159を含む。
【0140】
これらの抵抗素子21Cまたはインダクタ22Cを備える窒化物半導体装置2Cおよび3Cについても、窒化物半導体装置1Cと同様に、金属層155Cおよび156Cの結晶性を維持しながら、金属層155Cおよび156Cの密着性を高めることができる。
【0141】
[製造方法]
続いて、実施の形態1に係る窒化物半導体装置1の製造方法について説明する。
【0142】
図6は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法の第1例を示すフローチャートである。
図7A~
図7Fは、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法の第1例に含まれる各工程を説明するための断面図である。
【0143】
図6および
図7Aに示すように、まず基板110上に窒化物半導体層120を形成する(S10)。具体的には、バッファ層122、チャネル層124およびバリア層126をこの順で形成する。各層の形成は、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法などによるエピタキシャル成長によって、窒化物半導体を結晶成長させることによって行われる。バッファ層122の形成の際には、CまたはFeなどの高抵抗化するための不純物がドープされてもよい。
【0144】
次に、
図7Bに示すように、ソース電極140用の第1リセス部130およびドレイン電極142用の第1リセス部132を形成する(S11)。例えば、フォトリソグラフィによって所定形状のレジストパターンを形成し、当該レジストパターンを利用したドライエッチングなどによって、所定の範囲内のバリア層126とチャネル層124の一部とを除去することによって、第1リセス部130および132を形成する。
【0145】
次に、
図7Cに示すように、第1リセス部130および132内にそれぞれ、ソース電極140およびドレイン電極142を形成する(S12)。例えば、EB(Electron Beam)蒸着またはスパッタリングなどによって、少なくとも第1リセス部130および132を覆うように金属膜を形成し、形成した金属膜をエッチングでパターニングすることにより、ソース電極140およびドレイン電極142を形成する。
【0146】
次に、
図7Dに示すように、窒化物半導体層120上にゲート電極144を形成する(S13)。例えば、EB蒸着またはスパッタリングなどによって、少なくともソース電極140とドレイン電極142との間の領域を覆うように金属膜を形成し、形成した金属膜をエッチングでパターニングすることにより、ゲート電極144を形成する。なお、ゲート電極144の形成工程は、ソース電極140およびドレイン電極142の形成工程の前に行われてもよい。
【0147】
次に、
図7Eに示すように、不活化用の第2リセス部136を形成する(S14)。例えば、フォトリソグラフィによって所定形状のレジストパターンを形成し、当該レジストパターンを利用したドライエッチングなどによって、不活性領域102内のバリア層126とチャネル層124の一部とを除去することによって、第2リセス部136を形成する。不活性領域102では、バリア層126が除去されることによって、チャネル層124内の2DEG125が発生しなくなり、常温でのキャリア密度を1×10
15cm
-3より小さくすることができる。
【0148】
次に、
図7Fに示すように、不活性領域102で窒化物半導体層120に接する金属層(具体的には下部電極150)を形成する(S15)。具体的には、バリアメタル層152および低抵抗金属層154をこの順で接触面120b上に形成する。例えば、EB蒸着またはスパッタリングなどによって、少なくとも不活性領域102内の接触面120bを覆うように金属膜を形成し、形成した金属膜をエッチングでパターニングすることにより、下部電極150を形成する。このとき、窒化物半導体層120(チャネル層124)に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態になるように下部電極150を形成する。具体的には、電極材料の成長速度を遅くする。例えば、スパッタリングの場合には供給するパワーを減らし、EB蒸着の場合、温度を低くし、あるいは、ターゲットと材料との距離を離す。これにより、電極材料の成長速度を遅くすることができ、窒化物半導体層120(チャネル層124)に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態になる下部電極150を形成することができる。
【0149】
次に、不活性領域102内において、金属層(下部電極150)上に絶縁層160を形成し、形成した絶縁層160上に上部電極170を形成する(S16)。絶縁層160は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Depositino)法などによって少なくとも下部電極150を覆うように絶縁膜を成膜した後、成膜した絶縁膜の一部をエッチングで除去することにより形成される。上部電極170は、EB蒸着またはスパッタリングなどによって、少なくとも絶縁層160を覆うように金属膜を形成し、形成した金属膜をエッチングでパターニングすることにより形成される。
【0150】
以上の工程を経て、
図1Aに示すキャパシタ20を備える窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0151】
なお、絶縁層160および上部電極170の形成工程(S16)を省略することで、インダクタ22を備える窒化物半導体装置3を製造することができる。また、絶縁層160および上部電極170の形成工程(S16)を省略し、さらに、金属層の形成工程(S15)では、低抵抗金属層154の形成を省略することにより、抵抗素子21を備える窒化物半導体装置2を製造することができる。
【0152】
上述した窒化物半導体装置1、2および3の製造方法は、一例にすぎず、工程の順序の変更、工程の内容の変更などが行われてもよい。
【0153】
例えば、第2リセス部136の形成工程(S14)では、不活性領域102内のバリア層126の一部のみを除去し、所定の厚さのバリア層126を残存させてもよい。これにより、変形例1に係る窒化物半導体装置1A、2Aまたは3Aを形成することができる。あるいは、第2リセス部136の形成工程では、不活性領域102内のチャネル層124を完全に除去してもよい。また、不活性領域102内のバッファ層122の一部を除去してもよい。これにより、変形例2に係る窒化物半導体装置1B、2Bまたは3Bを形成することができる。
【0154】
また、第2リセス部136の形成は、位置合わせ用のアライメントマークの形成と同時に行われてもよい。アライメントマークの形成は、通常、窒化物半導体層120の形成工程(S10)と第1リセス部130および132の形成工程(S11)との間に行われる。
【0155】
また、金属層(下部電極150)の形成工程(S15)では、バリアメタル層152を形成する前に、金属下地層159を形成してもよい。金属下地層159は、例えば、EB蒸着またはスパッタリングなどによって、少なくとも不活性領域102内の接触面120bを覆うように金属膜を形成し、形成した金属膜をエッチングでパターニングすることにより形成される。これにより、変形例3に係る窒化物半導体装置1C、2Cまたは3Cを形成することができる。
【0156】
また、第1リセス部130および132を形成する工程(S11)と第2リセス部136を形成する工程(S14)とは、同時に行われてもよい。
図8は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法の第2例を示すフローチャートである。
図9Aおよび
図9Bはそれぞれ、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法の第2例に含まれる各工程を説明するための断面図である。
【0157】
図8および
図9Aに示すように、窒化物半導体層120を形成した後、ソース電極140用の第1リセス部130およびドレイン電極142用の第1リセス部132と、不活化用の第2リセス部136とを同時に形成する(S21)。例えば、フォトリソグラフィによって所定形状のレジストパターンを形成し、当該レジストパターンを利用したドライエッチングなどによって、活性領域101における所定の範囲内と不活性領域102内との各々のバリア層126とチャネル層124の一部とを除去することによって、第1リセス部130および132ならびに第2リセス部136を同時に形成する。同時に形成するので、第1リセス部130および132の各々の底面と、第2リセス部136の底面(接触面120b)とは、同じ高さに位置している。
【0158】
その後、
図9Bに示すように、第1リセス部130および132内にそれぞれ、ソース電極140およびドレイン電極142を形成する(S12)。以降の処理は、
図8に示すように、第2リセス部136の形成工程(S14)が省略されている点を除いて、
図6に示した第1例と同じである。
【0159】
第1リセス部130および132、ならびに、第2リセス部136を同時に形成することで、製造工程を簡略化することにより、製造誤差などが生じる可能性を低くすることができ、歩留まりを高めることができる。
【0160】
また、金属層(下部電極150)を形成する工程(S15)とゲート電極144を形成する工程(S13)とは、同時に行われてもよい。
図10は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法の第3例を示すフローチャートである。
【0161】
図10に示すように、窒化物半導体層120の形成(S10)からソース電極140およびドレイン電極142の形成(S12)までの処理は、
図8に示す製造方法の第2例と同じである。ソース電極140およびドレイン電極142を形成した後、ゲート電極144と金属層(下部電極150)とを同時に形成する(S33)。下部電極150は、窒化物半導体層120(チャネル層124)に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態にするため、遅い成長速度で形成される。ゲート電極144の形成速度も同じになる。ゲート電極144と下部電極150とを同時に形成することで、
図7Fに示す構成が得られる。以降、絶縁層160および上部電極170を順に形成することで、
図1Aに示す窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0162】
ゲート電極144と金属層(下部電極150)とを同時に形成することで、製造工程を簡略化することにより、製造誤差などが生じる可能性を低くすることができ、歩留まりを高めることができる。
【0163】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る窒化物半導体装置について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と比較して、窒化物半導体層の表面を保護するパッシベーション膜が設けられている点が主な相違点である。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0164】
図11は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置201の断面図である。
図11に示すように、窒化物半導体装置201は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置1と比較して、キャパシタ20の代わりにキャパシタ220を備える点と、パッシベーション膜180および182を備える点とが相違する。
【0165】
パッシベーション膜180は、窒化物半導体層120の表面を保護するために設けられている。具体的には、パッシベーション膜180は、活性領域101における窒化物半導体層120の最上面120aを覆っている。パッシベーション膜180には、活性領域101において、ソース電極140、ドレイン電極142およびゲート電極144の各々を設けるための開口が形成されている。ソース電極140およびドレイン電極142用の開口は、第1リセス部130および132と平面視で重なる位置に設けられている。また、ゲート電極144用の開口には、窒化物半導体層120の最上面120aが露出しており、ゲート電極144を最上面120a上に接触して設けることができる。なお、ゲート電極144用の開口は設けられていなくてもよく、パッシベーション膜180上にゲート電極144が設けられていてもよい。この場合、パッシベーション膜180をゲート絶縁膜として利用することができる。
【0166】
パッシベーション膜182は、トランジスタ10の表面を保護するために設けられている。具体的には、パッシベーション膜182は、活性領域101内では、ソース電極140、ドレイン電極142およびゲート電極144、ならびに、パッシベーション膜180を覆っている。さらに、パッシベーション膜182は、不活性領域102内において第2リセス部136の内面を覆っている。パッシベーション膜182には、不活性領域102内において、窒化物半導体層120(チャネル層124)の上面(接触面120b)を露出させるための開口183が設けられている。
【0167】
パッシベーション膜180および182はそれぞれ、絶縁性の材料を用いて形成されている。例えば、パッシベーション膜180および182はそれぞれ、SiN、SiO2、SiCなどの単層膜または積層膜であるが、これに限定されない。パッシベーション膜180および182が設けられていることで、電極間の絶縁性、および、電極と金属層(下部電極150)との間の絶縁性を高めることができ、リーク電流を抑制することができる。
【0168】
本実施の形態では、キャパシタ220は、下部電極250と、絶縁層260と、上部電極270と、を含む。下部電極250は、バリアメタル層252と、低抵抗金属層254と、を含む。バリアメタル層252、低抵抗金属層254、絶縁層260および上部電極270はそれぞれ、実施の形態1に係るバリアメタル層152、低抵抗金属層154、絶縁層160および上部電極170に対応しており、各々の形状および配置位置が異なっている。
【0169】
下部電極250は、パッシベーション膜182に設けられた開口183に露出したチャネル層124に接する。下部電極250(バリアメタル層252)の一部は、パッシベーション膜182の上面に設けられている。下部電極250のx軸方向の長さは、開口183のx軸方向の長さよりも長い。下部電極250のうち、平面視においてパッシベーション膜182に重なる部分は、コヒーレント状態およびメタモルフィック状態のいずれでもない。本実施の形態に係る下部電極250は、平面視において、パッシベーション膜182の開口183に重なる範囲において、コヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含んでいる。
【0170】
上部電極270は、平面視において、開口183よりも小さい。平面視において、上部電極270は全体が開口183内に設けられている。すなわち、上部電極270は、下部電極250のうち、コヒーレント状態またはメタモルフィック状態になっている部分と平面視で重なる位置に設けられている。つまり、下部電極250のうち結晶性が高く、低抵抗な部分と対向する位置に上部電極270が設けられており、キャパシタ220として機能する。下部電極250のうち、平面視で開口183に重なる位置ではヒロックなどの異常成長が抑制されるので、絶縁層260のカバレッジの低下および電界集中を抑制することができる。これにより、キャパシタ220の耐圧の低下を抑制することができる。
【0171】
このように、本実施の形態に係る窒化物半導体装置201では、キャパシタ220の高周波特性の低下を抑制しながらトランジスタ10を保護することにより、信頼性を高めることができる。すなわち、本実施の形態によれば、高周波特性に優れた信頼性の高い窒化物半導体装置201を実現することができる。
【0172】
なお、パッシベーション膜182をキャパシタ220の絶縁層260として利用することもできる。
図12は、本実施の形態の変形例に係る窒化物半導体装置201Aの断面図である。
【0173】
図12に示すように、窒化物半導体装置201Aは、実施の形態2に係る窒化物半導体装置201と比較して、パッシベーション膜182およびキャパシタ220の代わりにパッシベーション膜282およびキャパシタ220Aを備える点と、素子分離領域190が設けられている点とが相違する。また、不活性領域102には、第2リセス部136の代わりに、第2リセス部236が設けられている。
【0174】
キャパシタ220Aは、下部電極251と、パッシベーション膜282と、上部電極270と、を含む。パッシベーション膜282の一部が下部電極251と上部電極270との間に設けられている。
【0175】
下部電極251は、下部電極250に対応しており、第2リセス部236を埋めるように設けられている点が相違する。なお、図示していないが、下部電極251は、バリアメタル層と、低抵抗金属層との積層構造を含んでいる。下部電極251は、第2リセス部236の底面である接触面120bでチャネル層124と接している。これにより、下部電極251は、平面視において、第2リセス部236の底面(接触面120b)に重なる範囲において、コヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含んでいる。
【0176】
図12に示す例では、下部電極251は、第2リセス部236の内壁面にも接している。具体的には、下部電極251は、バリア層126にも接しており、バリア層126とチャネル層124との界面近傍に生じる2DEG125に接している。このため、下部電極251とトランジスタ10のチャネルとの電気的な接続を遮断するために、素子分離領域190が設けられている。
【0177】
素子分離領域190は、例えばCまたはFeなどの窒化物半導体を高抵抗化するための不純物が添加された領域である。素子分離領域190は、2DEG125を遮断するように、少なくともチャネル層124に設けられている。例えば、イオン注入により、バリア層126の最表面から、チャネル層124およびバッファ層122にかけて連続するように素子分離領域190が設けられている。本変形例では、不活性領域102には、素子分離領域190も含まれる。言い換えると、トランジスタ10が設けられる活性領域101の2DEG125とは、素子分離領域190によって分離された範囲を不活性領域102とみなしている。
【0178】
素子分離領域190は、イオン注入によって形成されるので、結晶構造が崩れている。このため仮に、素子分離領域190上に下部電極251を形成したとしても、下部電極251が窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態にはならない。本変形例では、第2リセス部236を設けることにより、チャネル層124の一部を露出させ、チャネル層124の露出した面である接触面120b上に下部電極251が設けられている。これにより、下部電極251の結晶性を高めることができ、低抵抗化を実現し、かつ、ヒロックなどの異常成長を抑制することができる。
【0179】
また、本変形例では、パッシベーション膜282がキャパシタ220Aの絶縁層として機能している。キャパシタ220Aの専用の絶縁層を形成する場合に比べて、製造工程を簡略化することができる。よって、製造誤差などが生じる可能性を低くすることができ、歩留まりを高めることができる。
【0180】
なお、実施の形態2および変形例では、窒化物半導体装置201および201Aが、受動素子としてキャパシタを備える例を示したが、実施の形態1と同様に、抵抗素子またはインダクタを備えてもよい。また、実施の形態1に適用される各変形例についても、窒化物半導体装置201および201Aにも適用することができる。
【0181】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係る窒化物半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0182】
また、例えば、不活性領域102には、複数の受動素子が設けられてもよい。例えば、不活性領域102には、キャパシタ20、抵抗素子21およびインダクタ22からなる群から選択される少なくとも1つの素子が複数設けられていてもよい。複数の受動素子同士は、電気的に接続されていてもよく、電気的には分離していてもよい。同様に、活性領域101には、複数の能動素子が設けられていてもよい。
【0183】
また、例えば、第1リセス部130および132は設けられていなくてもよく、ソース電極140およびドレイン電極142はそれぞれ、バリア層126の上面に設けられていなくてもよい。すなわち、ソース電極140およびドレイン電極142は、チャネル層124および2DEG125に接触していなくてもよい。
【0184】
また、例えば、窒化物半導体層120は、チャネル層124およびバリア層126を含んでいなくてもよい。窒化物半導体層120は、Siなどのn型の不純物が添加されたGaN、InGaNなどからなる窒化物半導体層であってもよい。つまり、トランジスタ10は、HEMTでなくてもよく、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの他のFETであってもよい。
【0185】
また、例えば、窒化物半導体層120に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態になる金属層は、ソース電極140またはドレイン電極142と同じ工程で形成されてもよい。
【0186】
また、上記の各実施の形態は、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本開示に係る窒化物半導体装置は、例えば、高出力もしくは高周波用途の電力増幅器、当該電力増幅器が用いられる無線通信基地局もしくは端末機器、または、マイクロ波を利用した電力伝送を行うワイヤレス給電装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0188】
1、1A、1B、1C、2、2A、2B、2C、3、3A、3B、3C、201、201A 窒化物半導体装置
10 トランジスタ
20、20C、220、220A キャパシタ
21、21C 抵抗素子
22、22C インダクタ
101 活性領域
102 不活性領域
110 基板
120 窒化物半導体層
120a 最上面
120b 接触面
122 バッファ層
124 チャネル層
125 2DEG
126 バリア層
130、132 第1リセス部
136、136A、136B、236 第2リセス部
140 ソース電極
142 ドレイン電極
144 ゲート電極
150、150C、250、251 下部電極
152、252 バリアメタル層
154、158、254 低抵抗金属層
155、155C、156、156C 金属層
159 金属下地層
160、260 絶縁層
170、270 上部電極
180、182、282 パッシベーション膜
183 開口
190 素子分離領域
【要約】
窒化物半導体装置(1)は、能動素子(10)と受動素子(20)とを備える窒化物半導体装置であって、平面視で活性領域(101)と不活性領域(102)とに区分される窒化物半導体層(120)と、不活性領域(102)で窒化物半導体層(120)に接する金属層(150)と、を備える。能動素子(10)は、活性領域(101)に設けられ、受動素子(20)は、不活性領域(102)に設けられる。金属層(150)は、窒化物半導体層(120)に対してコヒーレント状態またはメタモルフィック状態を含む。